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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】水素化反応用触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/043 20060101AFI20240206BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240206BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240206BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20240206BHJP
   C10G 45/36 20060101ALI20240206BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
B01J27/043 Z
B01J37/03 Z
B01J37/04 102
B01J37/18
C10G45/36
C07B61/00 300
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020550578
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 KR2018016310
(87)【国際公開番号】W WO2019132407
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0183458
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ボン シク
(72)【発明者】
【氏名】ミョン、ワン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウィ グン
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】原 賢一
【審判官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-287012(JP,A)
【文献】特開昭64-33105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
C07B61/00
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00,301/00
C10G1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、助触媒及び担体を含む触媒において、
前記助触媒は銅及び硫黄を含み、
前記担体はシリカ及びアルミナのうち選択された1種以上であって、
前記ニッケルの平均結晶サイズは1乃至10nmで、前記触媒は1乃至20μmの平均粒子サイズを持ち、
前記ニッケルに対する前記硫黄のモル比(mole ratio)は1:0.02乃至0.2である
ことを特徴とする水素化反応用触媒。
【請求項2】
前記ニッケルは全体組成物100重量部に対して40乃至80重量部を含み、前記銅は0.1乃至5重量部を含む
請求項1に記載の水素化反応用触媒。
【請求項3】
前記ニッケル重さあたり水素吸着量が0.01乃至0.5(mmol-H/g-Ni)である
請求項1に記載の水素化反応用触媒。
【請求項4】
(a)ニッケル、銅化合物及び担体粉末を蒸溜水に入れて溶解して一次溶液を製造するステップ;
(b)前記一次溶液を沈殿容器に入れて攪拌して50乃至120℃に昇温するステップ;
(c)前記昇温された一次溶液にpH調節剤及び硫黄を含む溶液を30分乃至2時間の間注入して2次溶液を製造し、沈殿によってNiが担持された沈殿物を形成するステップ;
(d)前記沈殿物を洗浄及びろ過した後、100乃至200℃で5乃至24時間加熱して乾燥物を製造するステップ;
(e)前記乾燥物を水素雰囲気で200乃至500℃の温度で還元して還元物を製造するステップを含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の水素化反応用触媒の製
造方法。
【請求項5】
前記(d)ステップで乾燥物を200乃至500℃の温度で空気雰囲気で焼成するステップをさらに含む
請求項4に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【請求項6】
前記(e)ステップで還元物を0.1乃至20%酸素が含まれた窒素混合ガスで不動化して粉末触媒を製造するステップをさらに含む
請求項4に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【請求項7】
前記沈殿はpH7~9で行われる
請求項4に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項4ないし7のいずれかに記載の方法によって製造された水素化反応用触媒を使用して芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物のオレフィンを選択的に水添する
ことを特徴とする水素化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化反応用触媒及びその製造方法に関し、さらに詳しくは硫黄を助触媒として含むことで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素添加反応時、オレフィンと芳香族の相対的水素化速度を変化させてオレフィンを選択的に水素化する水素化反応用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低級オレフィン(すなわち、エチレン、プロピレン、ブチレン及びブタジエン)及び芳香族化合物(すなわち、ベンゼン、トルエン及びキシレン)は石油化学及び化学産業で広範囲に用いられる基本的な中間生成物である。熱クラッキング、又はスチーム熱分解は典型的にスチームの存在下で、そして酸素の不在下で、これらの物質を形成させるための工程の主な類型である。供給源料はナフサ、ケロシン及びガスオイルといった石油ガス及び蒸留水を含むことができる。この時、ナフサなどを熱分解することで、エチレン、プロピレン、ブタン及びブタジエンを含むC4留分、分解ガソリン(ベンゼン、トルエン及びキシレンを含む)、分解ケロシン(C9以上の留分)、分解重油(エチレンボトム油(bottom oil))及び水素ガスのような物質を生成することができ、留分などから重合して石油樹脂を製造できる。
【0003】
しかし、石油樹脂は一部に不飽和結合を含んで品質が低下する場合がある。この時、水素を添加する水素化工程を通れば不飽和結合が除去されて色が明るくなり石油樹脂特有の臭いが減る等品質を改善できる。また、不飽和結合が除去された石油樹脂は無色、透明でwater white樹脂と呼ばれ、熱及び紫外線安全性などに優れた高級樹脂として流通されている。
【0004】
C5留分とC9留分及びジシクロペンタジエン(DCPD)などが共重合された石油樹脂は芳香族含有量によってethylene-vinylacetate(EVA)、styrene-isoprene-styrene(SIS)、styrene-butadiene-styrene(SBS)などといったスチレン系の高分子との商用性が調節される特徴を持つ。したがって、石油樹脂の水素化反応時に芳香族含有量を制御しwater-white樹脂にするためには樹脂のオレフィン部分を選択的に水素化することが必要とされる。
【0005】
したがって、不飽和された石油樹脂供給原料を水素化させるために多様な触媒が研究されてきており、特に芳香族不飽和炭化水素からオレフィンを選択的に水素化するためにはパラジウム(Pd)、白金(Pt)などの貴金属触媒を用いることが知られており、パラジウム触媒が他の金属触媒に比べて活性及び選択性に優れ選択的水素化触媒として用いられている。しかし、パラジウム系触媒は水素化を液相の存在下に実施する場合、パラジウムが損失されPd錯体化合物が形成されるという問題がある。その他、Ni系触媒を使用した場合、芳香族が共に水添され芳香族グループを含む不飽和炭化水素の選択的水素化反応に使用することが難しい問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1にはアルミナ(Al)担体に担持された硫黄を含むニッケル触媒について開示されているが、芳香族/オレフィン選択水添用途の触媒でなく、銅を含まないため、本発明とは構成要素が異なる。特許文献2はγ-Alに担持された硫黄を含むNi-W又は硫黄を含むNi-Mo触媒で、石油樹脂を水素化する触媒に関するが、芳香族/オレフィン選択水添用途の触媒でなく、本発明ではタングステン(W)又はモリブデン(Mo)を含まないため異なる。特許文献3にはNi、WS及びMoSを含む触媒で、fat又はfatty acid水添用途に関するもので、オレフィン水添についてのみ提示されており、芳香族/オレフィン選択水添用途でなく、本発明とはその構成要素が異なる。
また、水素化触媒として活性金属をシリカ、アルミナ又は活性炭素などに担持した形態が多様に研究されてきた。
【0007】
特許文献4にはニッケルと硫黄を含む触媒を選択的水素化に使用することを記載しているが、担持体の種類と粉末状、そして黄が促進剤として用いられることに関する記載はない。特許文献5にはニッケルと硫黄がシリカ又はアルミナ担体に担持された水素化触媒に関して記載しているが、硫黄が促進剤に含まれることと粉末状の形態及び芳香族/オレフィン選択水添に関する記載はない。
【0008】
よって、本発明者らは研究により銅及び硫黄を助触媒として含む構成のニッケル触媒を開発して上記文献で解決していない芳香族/オレフィンの選択的水素化の問題を解決しつつ簡単な工程によって触媒を製造することができ、製造された触媒を芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素化反応に適用する場合、芳香族/オレフィン水添選択性が高い水素化方法を確立した。また、このように開発された触媒を使用して容易にwater white樹脂を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国登録特許第5,223,470号
【文献】米国登録特許第4,328,090号
【文献】米国登録特許第3,687,989号
【文献】大韓民国公開特許第10-2010-0100834号
【文献】日本特開平10-0502865号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点をすべて解決することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、硫黄を助触媒として含むことで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素添加反応時、オレフィンと芳香族の相対的水素化速度を変化させてオレフィンを選択的に水素化する水素化反応用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、オレフィンを選択的に水添することで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素の芳香族含有量を調節できる水素化反応用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素化反応時に芳香族含有量を制御し、water-white樹脂を容易に製造できる水素化反応用触媒及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0015】
本発明による水素化反応用触媒は、ニッケル、助触媒及び担体を含む触媒において、前記助触媒は銅及び硫黄を含み、前記担体はシリカ及びアルミナのうち選択された1種以上であって、 前記ニッケルの平均結晶サイズは1乃至10nmで、1乃至20μmの平均粒子サイズを持つことを特徴とする。
【0016】
前記ニッケルは全体組成物100重量部に対して40乃至80重量部を含み、前記銅は0.1乃至5重量部を含むことができる。前記ニッケルに対する前記硫黄のモル比(mole ratio)は1:0.02乃至0.2であることを特徴とする。
【0017】
前記ニッケル重さあたり水素吸着量が0.01乃至0.5(mmol-H/g-Ni)であることを特徴とする。
【0018】
本発明による水素化反応用触媒の製造方法は、ニッケル、銅化合物及び担体粉末を蒸溜水に入れて溶解して一次溶液を製造するステップ;前記一次溶液を沈殿容器に入れて攪拌して50乃至120℃に昇温するステップ;前記昇温された一次溶液にpH調節剤及び硫黄を含む溶液を30分乃至2時間の間注入して2次溶液を製造し、沈殿によってNiが担持された沈殿物を形成するステップ;前記沈殿物を洗浄及びろ過した後、100乃至200℃で5乃至24時間加熱して乾燥物を製造するステップ;及び前記乾燥物を水素雰囲気で200乃至500℃の温度で還元して還元物を製造するステップを含むことを特徴とする。
【0019】
前記乾燥物を水素雰囲気で還元する前に200乃至500℃の温度で空気雰囲気で焼成するステップをさらに含むことができる。
【0020】
前記還元物を0.1乃至20%酸素が含まれた窒素混合ガスで不動化して粉末触媒を製造するステップをさらに含むことができる。
【0021】
前記沈殿は7乃至9のpHで行われることを特徴とする。
【0022】
本発明によって製造された水素化反応用触媒を使用して芳香族グループを含む不飽和炭化水素のオレフィンを選択的に水添することを特徴とする選択的水素化方法である。
【0023】
前記選択的水素化方法で製造される水素添加された石油樹脂は30以下のAPHA値を持つことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明による水素化反応用触媒及びその製造方法は、硫黄を助触媒として含むことで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素添加反応時、オレフィンに比べて芳香族水添速度を大幅に減少させてオレフィンを選択的に水素化する効果がある。
【0025】
なお、本発明は、オレフィンを選択的に水添することで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の芳香族含有量を調節できる効果がある。
【0026】
また、本発明は、石油樹脂の水素化反応時に芳香族含有量を制御してwater-white樹脂を容易に製造できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例及び比較例の芳香族/オレフィン水添選択度を示すグラフである。
図2】実施例及び比較例の水添後のAPHA値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として図示する添付の図面を参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の様々な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、それぞれの開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明されれば、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。図面における類似の参照符号は様々な側面にわたって同じ又は類似の機能を指し示す。
【0029】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
本発明による水素化反応用触媒は、ニッケル、助触媒及び担体を含む触媒において、前記助触媒は銅及び硫黄を含み、前記担体はシリカ及びアルミナのうち選択された1種以上であって、前記ニッケルの平均結晶サイズは1乃至10nmで、さらに好ましくは3乃至7nmであることが好ましい。前記ニッケルの平均結晶サイズが上記範囲から逸脱する場合、触媒活性を低下させる問題が生じる場合がある。また、本発明による触媒は平均粒子サイズが1乃至20μmで、さらに好ましくは3乃至10μmであり得る。触媒の平均粒子サイズが上記範囲未満の場合は、触媒の濾過性が不足する恐れがあり、上記範囲を超える場合、触媒の活性が低下する問題があり得る。
【0031】
前記ニッケルは全体触媒組成物100重量部に対して40乃至80重量部、好ましくは50乃至70重量部、さらに好ましくは55乃至65重量部であり得る。ニッケル含有量が上記範囲未満の場合は、触媒活性が低下する場合があり、超過の場合は、分散性が低下して触媒活性が低くなる問題が生じ得る。
【0032】
前記銅は全体触媒組成物100重量部に対して0.1乃至5重量部を含むことができる。好ましくは0.2乃至2重量部、さらに好ましくは0.5乃至1重量部を含むことができる。銅含有量が上記範囲未満の場合は、ニッケルの還元度減少により触媒活性が低下する場合があり、超過の場合は、活性金属表面のニッケル比率の減少により活性が低下する場合がある。
【0033】
前記ニッケルに対する前記硫黄のモル比(mole ratio)は1:0.02乃至0.2であることができる。好ましくは1:0.04乃至0.15、さらに好ましくは1:0.05乃至0.1であることができる。硫黄の含有量が上記範囲未満の場合は、水素化触媒の選択性が低下する場合があり、超過の場合は、触媒活性が低くなる問題が生じ得る。
【0034】
前記ニッケルの供給源は窒酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物などといった金属塩を含み、最も好ましくは塩化物を含む塩化ニッケル前駆体である。
【0035】
また、銅前駆体は窒酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物及び水酸化物のうち選択された少なくとも1種以上の形態を用いることができ、硫黄前駆体はアルカリ金属硫黄化物、チオフェン及びメルカプタンのうち選択された少なくとも1種以上を使用することができる。
【0036】
本発明による水素化反応用触媒は、触媒に含まれたニッケル重さあたり水素吸着量が0.01乃至0.5(mmol-H/g-Ni)であることを特徴とする。
【0037】
一般に水素添加反応時、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物内に含まれたオレフィン及び芳香族はいずれも触媒反応によって水素化できるため、石油樹脂内の芳香族含有量の調節のためにオレフィンを選択的に水素化できる触媒が必要となる。ニッケル系の触媒を使用する場合、樹脂の芳香族が共に水添され石油樹脂の芳香族含有量を調節することは難しいと知られる。
【0038】
しかし、本発明の一実施例による選択的水素化触媒は、硫黄を助触媒(promoter)として含むことで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素添加反応時、オレフィンに比べて芳香族水添速度を大幅に減少させてオレフィンを選択的に水素化させることができる効果がある。
【0039】
本発明の一実施例による水素化反応用触媒は、ニッケル化合物及び助触媒が溶媒中に混合された後、ここに固体担体を懸濁させてニッケル化合物及び助触媒が沈殿体を形成して前記担体に沈積され得る。前記担体は多孔性シリカ(SiO)及びアルミナ(Al)のうち選択された1種以上であり得る。
【0040】
また、本発明の一実施例による水素化反応用触媒は、蒸留、前処理及び重合によってC5又はC9石油分画及び副産物及びこれらの調合物からなる石油樹脂を水素化できる。
【0041】
芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素化反応時の温度は100乃至400℃、好ましくは200乃至300℃であることができ、圧力は1乃至200bar、好ましくは30乃至100barであることができる。水素化時間は主に温度、触媒の量及び水素化程度によって異なる場合がある。そして、水素化反応は様々な反応器で行われ得るが、好ましくは混合方式によって連続槽型反応器(CSTR)、ループ(loop)反応器、オートクレーブ(autoclave)反応器などで行われ得る。
【0042】
本発明による水素化反応用触媒の製造方法は、ニッケル、銅化合物及び担体粉末を蒸溜水に入れて溶解して一次溶液を製造するステップ;前記一次溶液を沈殿容器に入れて攪拌して50乃至120℃に昇温するステップ;前記昇温された一次溶液にpH調節剤及び硫黄を含む溶液を30分乃至2時間の間注入して2次溶液を製造し、沈殿によってNiが担持された沈殿物を形成するステップ;及び前記沈殿物を洗浄及びろ過した後、100乃至200℃で5乃至24時間加熱して乾燥物を製造するステップ;及び前記乾燥物を水素雰囲気で200乃至500℃の温度で還元して還元物を製造するステップを含むことを特徴とする。
【0043】
前記乾燥物を水素雰囲気で還元して還元物を製造する前に200乃至500℃の温度で空気雰囲気で焼成するステップを選択的にさらに含むことができる。
【0044】
前記還元物を0.1乃至20%の酸素が含まれた窒素混合ガスで不動化して粉末触媒を製造するステップをさらに含むことができる。
【0045】
なお、還元温度は上述のように200乃至500℃、好ましくは300乃至450℃、より好ましくは370乃至430℃の時に最適の活性を示すことができる。
【0046】
また、前記沈殿は塩基添加又は電気化学的手段でpH7以上の環境で行われることができ、好ましくはpH7乃至9であり得る。この時、塩基添加のために塩基性化合物を添加することができ、塩基性添加物は炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又はその水化物を含むことができるが、これに限定されず、好ましくは炭酸ナトリウム又はその水化物を含むことができる。
【0047】
本発明による触媒は粉末、粒子、顆粒の形態であることができ、好ましくは粉末の形態である。
【0048】
本発明による水素化反応用触媒の製造方法は、担体によって表面積、気孔構造及び大きさを最適化することができ、ニッケルの含有量が高く低温でも還元が可能な上、活性が優秀で均一に分散されることができ、さらにはニッケルと担体の副反応を抑制できる。
【0049】
また、本発明によって製造された銅及び硫黄を助触媒として含むニッケル担持触媒を使用して芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の芳香族水添速度をオレフィンに比べて大幅に減少させることによって、オレフィンを選択的に水添できる選択的水素化方法を特徴とする。
【0050】
上記の選択的水素化方法によって製造された水添された石油樹脂は30以下のAPHA値を持つことを特徴とする。
【0051】
APHA colorはHazen scale又はPlatinum-Cobalt(Pt/Co) scaleとも称し、米国公衆衛生学会(American Public Health Association)から名前をとった色参照標準分析方法(ASTMD 1209)で水添石油樹脂の色相をAPHA値で分析する。
【0052】
基準とされるのはPlatinum-Cobalt Stock Solutionで、これはAPHA 500に該当する。これを定量的に希釈したStandard Solutionを用いて1乃至500の段階に細分化した数値として色相を表現する。ここで、希釈剤として用いられるD.I waterはAPHA 0に該当する。APHA Colorは特に黄色度指数(Yellowness Index)と相関関係があるので、Yellownessに対するStandard SolutionのAPHA Color Standard Curveを利用すれば測定試料のAPHA Color値を得ることができる。
【0053】
本発明の選択的水素化方法によって水添された石油樹脂はAPHA値が30以下の値を持ち、芳香族/オレフィン水添比率が0.1乃至1.0であることを特徴とし、水添された石油樹脂の色相及び臭いがほぼ消えたwater-white樹脂であることを特徴とする。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであっていかなる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されてはならない。
【0055】
ここに記載されていない内容は本技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できることであるので、その説明を省略する。
【実施例
【0056】
実施例1
【0057】
200m/gの表面積と28nmの気孔大きさを有する多孔性シリカ粉末1gと塩化ニッケル(243g/lニッケル)及び塩化銅(2.2g/l銅)を蒸溜水に溶解した溶液50mlを沈殿容器に入れて攪拌して80℃に昇温した。80℃に到達した後、黄/ニッケルモル比が0.09になるように炭酸ナトリウム(175g/l)及び硫化ナトリウム(15g/l)が含まれた溶液40mlをsyringe pumpを用いて1時間以内にすべて注入した。沈殿が完了した後のスラリーのpHは7.7であって、これを約1.5Lの蒸溜水で洗浄及びろ過した後、乾燥オーブンを用いて120℃で12時間以上乾燥した。これを小分けした後、水素雰囲気で400℃の温度で還元した。還元した後、粉末を1%酸素が含まれた窒素混合ガスを用いて不動化して水素化触媒を製造した。
【0058】
不動化された触媒のニッケル含有量は、触媒の重量を基準に63.8%、銅の含有量は0.87%、硫黄の含有量は2.8%であって、ニッケル結晶の平均大きさは5.1nmと測定された。触媒の活性テストのための水添反応は230℃の温度で進めた。
【0059】
実施例2
【0060】
水添触媒の硫黄/ニッケルモル比が0.075になるように沈殿剤の炭酸ナトリウム(175g/l)及び硫化ナトリウム(12.5g/l)が含まれた溶液40mlをsyringe pumpを用いて1時間以内にすべて注入した。沈殿が完了した後のスラリーのpHは7.6であった。洗浄及びろ過、乾燥などの残りの方法は実施例1と同じ方法で製造した。
【0061】
不動化された触媒のニッケル含有量は、触媒の重量を基準に62.1%、銅の含有量は0.84%、硫黄の含有量は2.5%であって、ニッケル結晶の平均大きさは5.0nmと測定された。触媒の活性テストのための水添反応は230℃の温度で進めた。
【0062】
実施例3
【0063】
水添触媒の硫黄/ニッケルモル比が0.06になるように沈殿剤の炭酸ナトリウム(175g/l)及び硫化ナトリウム(10g/l)が含まれた溶液40mlをsyringe pumpを用いて1時間以内にすべて注入した。沈殿が完了した後のスラリーのpHは7.7であった。洗浄及びろ過、乾燥などの残りの方法は実施例1と同じ方法で製造した。
【0064】
不動化された触媒のニッケル含有量は、触媒の重量を基準に62.1%、銅の含有量は0.86%、硫黄の含有量は2.2%であって、ニッケル結晶の平均大きさは4.1nmと測定された。触媒の活性テストのための水添反応は230℃の温度で進めた。
【0065】
実施例4
【0066】
水素雰囲気で還元する前に焼成ステップを含むように変更したことを除けば実施例1と同じ方法で水素化触媒を製造した。焼成はマッフル炉で行って、乾燥した粉末を小分けした後、air flow 1000mL/min、heating rate 5℃/minの条件で400℃まで昇温した後、3時間維持した。焼成が終わった粉末の回数率は80%であった。次いで、焼成した粉末を小分けした後、水素雰囲気で400℃の温度で還元した。還元後の粉末は1%酸素が含まれた窒素混合ガスを用いて不動化して水素化触媒を製造した。不動化された触媒のニッケル含有量は、触媒の重量を基準に62.4%、銅の含有量は0.85%、硫黄の含有量は2.9%であって、ニッケル結晶の平均大きさは4.2nmと測定された。触媒の活性テストのための水添反応は230℃の温度で進めた。
【0067】
比較例1
【0068】
硫黄のない触媒を製造するために、沈殿剤の中に硫化ナトリウムを除いた炭酸ナトリウム溶液のみを使用して実施例1と同じ方法で沈殿/洗浄/ろ過/乾燥/還元を順に行った。
【0069】
200m/gの表面積と28nmの気孔大きさを有する多孔性シリカ粉末1gと塩化ニッケル(243g/lニッケル)及び塩化銅(2.2g/l銅)を蒸溜水に溶解した溶液50mlを沈殿容器に入れて攪拌しながら80℃に昇温した。80℃に到達した後、炭酸ナトリウム(175g/l)が含まれた溶液40mlをsyringe pumpを用いて1時間以内にすべて注入した。沈殿が完了した後のスラリーのpHは7.8であって、これを約1.5Lの蒸溜水で洗浄及びろ過した後、乾燥オーブンを用いて120℃で12時間以上乾燥した。これを小分けした後、水素雰囲気で400℃の温度で還元した後、1%酸素が含まれた窒素混合ガスを用いて不動化して水素化触媒を製造した。
【0070】
不動化された触媒のニッケル含有量は、触媒の重量を基準に63.2%、銅の含有量は0.89%であって、ニッケル結晶の平均大きさは5.7nmと測定された。触媒の活性テストのための水添反応は230℃の温度で進めた。
【0071】
比較例2
【0072】
パラジウムが炭素支持体上に5wt%担持された粉末状の商用触媒を購入して選択水添に利用した。触媒は平均大きさ10μmを有し、BET非表面積1,190m/g、全体気孔体積1.1cm/gを有する粉末状である。触媒の活性テストのための水添反応は230℃の温度で進めた。
【0073】
比較例3
【0074】
比較例2に適用した触媒を用いて触媒の活性テストを進めた。活性テストのための水添反応は270℃の温度で進めた。
【0075】
下記表1では実施例1乃至4及び比較例1乃至3の触媒組成物内のニッケル(Ni)の含有量、助触媒種類と含有量を示した。
【0076】
【表1】
【0077】
<実験例>触媒の活性テスト(Activity Test)
【0078】
Hollow shaft攪拌機を含み、1600rpmの攪拌速度を有する300mlオートクレーブを用いた。
【0079】
非水添の石油樹脂をExxsolTM D40に30重量%に溶解した溶液75gを230℃、90barで石油樹脂質量に対して0.5乃至2%触媒を添加して水素化し、色相はASTM D1209で測定した。石油樹脂内のオレフィン含有量に大きく比例する石油樹脂の着色度(APHA値)は水添前は750で、石油樹脂の着色度が30以下の場合、石油樹脂の色及び臭いがほぼ消えたwater-white樹脂になり、この時、残留するオレフィン含有量(NMR%area)は0.1%未満になる。
【0080】
すなわち、APHA値が30以下になるまで水素化反応を進めると、残留するオレフィンがほぼなく、これまで水添された芳香族の量を測定して芳香族/オレフィン水添選択度も比較できるが、この値を測定して触媒活性を比較し、下記表2に示した。
【0081】
【表2】
【0082】
上記表2と図1及び2を参照すれば、本発明によって硫黄を助触媒として含む実施例1乃至4の場合、芳香族/オレフィン水添選択性が比較例1に比べて著しく優秀であることを確認した。また、芳香族/オレフィン水添選択度は添加した硫黄の含有量によって調節できることを確認した。
【0083】
また、本発明によって製造された実施例1乃至4は比較例2及び3のパラジウム触媒と芳香族/オレフィン水添選択度において同等以上の水準を示し、特に比較例3に比べて低温でも活性化がよく行われることを確認した。
【0084】
本発明による水素化反応用触媒及びその製造方法は、硫黄を助触媒として含むことで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素添加反応時、オレフィンに比べて芳香族水添速度を大幅に減少させてオレフィンを選択的に水添できる効果がある。
【0085】
また、本発明は、オレフィンを選択的に水添することで、芳香族グループを含む不飽和炭化水素の芳香族含有量を調節できる。
【0086】
また、本発明は、芳香族グループを含む不飽和炭化水素化合物の水素化反応時に芳香族含有量を制御してwater-white樹脂を容易に製造できる効果がある。
【0087】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されることではなく、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であればこのような記載から様々な修正及び変形を試みることができる。
【0088】
したがって、本発明の思想は上記説明された実施例に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなくこの特許請求の範囲と均等に又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範ちゅうに属すると言える。
図1
図2