(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】抗体修飾キメラ抗原受容体修飾T細胞及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240206BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240206BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240206BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240206BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240206BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240206BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240206BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240206BHJP
A61K 47/68 20170101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K16/28
C07K14/725
C07K19/00
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K47/68
(21)【出願番号】P 2020555283
(86)(22)【出願日】2018-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2018124692
(87)【国際公開番号】W WO2019129177
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】201711462801.X
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520233869
【氏名又は名称】上海細胞治療集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CELL THERAPY GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】銭 其軍
(72)【発明者】
【氏名】金 華君
(72)【発明者】
【氏名】江 ▲ヅ▼青
(72)【発明者】
【氏名】何 周
(72)【発明者】
【氏名】游 術梅
(72)【発明者】
【氏名】唐 熙
(72)【発明者】
【氏名】李 林芳
(72)【発明者】
【氏名】王 超
(72)【発明者】
【氏名】崔 連振
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107034235(CN,A)
【文献】特表2016-508728(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001085(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/136829(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/165683(WO,A1)
【文献】IgG Fc engineering to modulate antibody effector functions,Protein Cell, 2017年10月6日,(p.1-11),DOI 10.1007/s13238-017-0473-8
【文献】Molecular Therapy, 2015年,Vol.23, No.4,p.757-768,doi:10.1038/mt.2014.208
【文献】Clin. Cancer Res., 2017年11月15日,Vol.23, No.22,p.6982-6992,doi: 10.1158/1078-0432.CCR-17-0867
【文献】Molecular Therapy, 2015年,Vol.23, No.4,p.769-778,doi:10.1038/mt.2015.4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/10
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 35/17
A61K 39/395
A61K 48/00
A61K 47/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、抗原結合配列と、突然変異型Fcフラグメントとを含む抗体を発現する、或いは前記抗体のコード配列またはその発現ベクターを含有するT細胞であって、前記突然変異型Fcフラグメントはそのアミノ酸配列が配列番号1の269~497位のアミノ酸残基に示されるもの、又はそのコード配列が配列番号2の805~1491位の塩基配列に示されるものであって;
前記T細胞はキメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞であ
って、
前記抗原結合配列は、抗原と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片から由来するものであり、或いは腫瘍微小環境で機能するタンパク質のリガンドまたは該タンパク質に結合するその断片から由来するものであり、前記抗原と特異的に結合する抗体はCD40一本鎖抗体またはPD-1一本鎖抗体であり、前記リガンドはCD47のリガンドであり、前記CD47リガンドのアミノ酸配列は配列番号5の21~138位のアミノ酸残基に示されるものであり、又は前記CD47リガンドのコード配列は配列番号6の60~414位の塩基配列に示されるものであることを特徴とする、T細胞。
【請求項2】
前記T細胞のゲノムには、前記抗体の発現フレームが組み込まれることを特徴とする、請求項1に記載のT細胞。
【請求項3】
前記シグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドである
ことを特徴とする、請求項1に記載のT細胞。
【請求項4】
前記軽鎖シグナルペプチドのアミノ酸配列は配列番号1の1~20位のアミノ酸配列に示されるもの、又は前記軽鎖シグナルペプチドのコード配列は配列番号2の1~60位の塩基配列に示されるものである
ことを特徴とする、請求項3に記載のT細胞。
【請求項5】
前記CD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号1の21~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は前記CD40一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号1の161~268位のアミノ酸残基に示されるものである;前
記CD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域のコード配列は配列番号2の60~438位の塩基配列に示されるものであり、及び/或その重鎖可変領域のコード配列は配列番号2の481~804位の塩基配列に示されるものである;
前記PD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号3の21~131位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は前記PD-1一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号3の147~266位のアミノ酸残基に示されるものである;前記PD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域のコード配列は配列番号4の60~393位の塩基配列に示されるものであり、及び/或その重鎖可変領域のコード配列は配列番号4の439~798位の塩基配列に示されるものである;
ことを特徴とする、請求項
1に記載のT細胞。
【請求項6】
前記
任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、抗原結合配列と、突然変異型Fcフラグメントとを含む抗体はCD40抗体、PD-1抗体またはCD47抗体である;
ただし、前記CD40抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~497位に示されるもの、または配列番号1に示されるものであり、前記PD-1抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~495位に示されるもの、または配列番号3に示されるものであり、前記CD47抗体のアミノ酸配列は配列番号5の21~367位に示されるもの、または配列番号5に示されるものである;或いは
ただし、前記CD40抗体のコード配列は配列番号2の60~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号2に示されるものであり;或いは、前記PD-1抗体のコード配列は配列番号4の60~1485位の塩基配列に示されるもの、または配列番号4に示されるものであり;或いは、前記CD47抗体のコード配列は配列番号6の60~1104位の塩基配列に示されるもの、または配列番号6に示されるものである;
ことを特徴とする、請求項1に記載のT細胞。
【請求項7】
前記T細胞のゲノムには、前記抗体の発現フレームおよび前記キメラ抗原受容体の発現フレームが組み込まれたことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項8】
前記キメラ抗原受容体は下記抗原の1種または多種を認識する、標的とする、または特異的に結合するものである:CD19、CD20、CEA、GD2、FR、PSMA、PMEL、CA9、CD171/L1-CAM、IL-13Rα2、MART-1、ERBB2、NY-ESO-1、MAGEファミリータンパク質、BAGEファミリータンパク質、GAGEファミリータンパク質、AFP、MUC1、CD22、CD23、CD30、CD33、CD44v7/8、CD70、VEGFR1、VEGFR2、IL-11Rα、EGP-2、EGP-40、FBP、GD3、PSCA、FSA、PSA、HMGA2、胎児型アセチルコリン受容体、LeY、EpCAM、MSLN、IGFR1、EGFR、EGFRvIII、ERBB3、ERBB4、CA125、CA15-3、CA19-9、CA72-4、CA242、CA50、CYFRA21-1、SCC、AFU、EBV-VCA、POA、β2-MGおよびPROGRP;
ことを特徴とする、請求項1に記載のT細胞。
【請求項9】
前記キメラ抗原受容体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチド配列と、抗原認識領域と、ヒンジ領域と、膜貫通領域と、細胞内共刺激シグナル領域と、細胞内シグナル領域とを含む;ただし、
前記シグナルペプチドは、CD8シグナルペプチド、CD28シグナルペプチド、CD4シグナルペプチドおよび軽鎖シグナルペプチドから選ばれるものである;
前記抗原認識領域は、標的抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合するアミノ酸配列である;
前記ヒンジ領域は、CD8の細胞外ヒンジ領域、IgG1 Fc CH2CH3ヒンジ
領域、IgDヒンジ領域、CD28の細胞外ヒンジ領域、IgG4 Fc CH2CH3ヒンジ領域およびCD4の細胞外ヒンジ領域から選ばれるものである;
前記膜貫通領域は、CD28膜貫通領域、CD8膜貫通領域、CD3ζ膜貫通領域、CD134膜貫通領域、CD137膜貫通領域、ICOS膜貫通領域およびDAP10膜貫通領域である;
前記細胞内共刺激シグナル領域は、共刺激シグナル分子の細胞内ドメインであり、CD28、CD134/OX40、CD137/4-1BB、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ、誘導性T細胞共刺激因子およびDNAX活性化タンパク質10の細胞内ドメインから選ばれるものである;及び/又は
前記細胞内シグナル領域は、CD3ζ細胞内シグナル領域またはFcεRIγ細胞内シグナル領域である;
ことを特徴とする、請求項
8に記載のT細胞。
【請求項10】
前記シグナルペプチドのアミノ酸配列は、配列番号7の1~21位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の1~22位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号11の1~20位のアミノ酸残基に示されるものである;または前記シグナルペプチドのコード配列は、配列番号8の1~63位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の1~66位の塩基配列に示されるもの、または配列番号12の1~60位の塩基配列に示されるものである;
前記抗原認識領域は、CD19、メソテリン、EGFRまたはムチンを認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体であり、或いはErbB受容体ファミリーを認識する、標的とする、または特異的に結合するアミノ酸配列からなるものである;
前記ヒンジ領域のアミノ酸配列は、配列番号7の264~308位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の273~500位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17の264~318位のアミノ酸残基に示されるものである;または前記ヒンジ領域のコード配列は、配列番号8の790~924位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の817~1500位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18の790~954位の塩基配列に示されるものである;
前記膜貫通領域のアミノ酸配列は、配列番号7の309~332位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の501~528位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17の319~344位のアミノ酸残基に示されるものである;または前記膜貫通領域のコード配列は、配列番号8の925~996位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の1501~1584位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18の955~1032位の塩基配列に示されるものである;
前記細胞内共刺激シグナル領域のアミノ酸配列は、配列番号7の333~374位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の529~569位のアミノ酸残基に示されるものである;または前記細胞内共刺激シグナル領域のコード配列は、配列番号8の997~1122位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の1585~1707位の塩基配列に示されるものである;
及び/又は
前記細胞内シグナル領域のアミノ酸配列は、配列番号7の375~486位のアミノ酸残基に示されるものである;または前記細胞内シグナル領域のコード配列は、配列番号8の1123~1458位の塩基配列に示されるものである;
ことを特徴とする、請求項
9に記載のT細胞。
【請求項11】
前記CD19を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7の22~128位のアミノ酸残基に示されるものであってもよく、及び/又はその重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7の144~263位のアミノ酸残基に示されるものであってもよい;
前記メソテリン抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体は、
メソテリンの領域IまたはIIIに対する一本鎖抗体である;
前記ErbB受容体ファミリーを認識する、標的とする、または特異的に結合する抗原認識領域は、天然のT1Eとヘリン(Herin)の融合タンパク質を含む;ただし、T1Eはヒトトランスフォーミング成長因子αN末端の7個のアミノ酸と、上皮成長因子(EGF)C末端の48個のアミノ酸からなるものである;
前記ムチン抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と重鎖可変領域のアミノ酸配列は、Muc1の膜近傍末端のアミノ酸配列に対する抗体から由来するものである;
前記EGFRを認識する、標的とする、または特異的に結合する抗原認識領域は、EGFR特異的抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなる一本鎖抗体である;
ことを特徴とする、請求項
10に記載のT細胞。
【請求項12】
前記メソテリン領域IIIに対する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9の23~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9の162~272位のアミノ酸残基に示されるものである;
前記T1Eのアミノ酸配列は配列番号13の23~77位のアミノ酸残基に示されるものである;前記ヘリンのアミノ酸配列は配列番号13の93~171位のアミノ酸残基に示されるものである;
前記Muc1の膜近傍末端のアミノ酸配列は配列番号24に示されるものである;
前記EGFR特異的抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなる一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17の23~129位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17の145~263位のアミノ酸残基に示されるものである;
前記ErbB受容体ファミリーを認識する、標的とする、または特異的に結合する抗原認識領域は配列番号13の23~171位のアミノ酸残基に示されるものである;
前記前記ムチン抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号15の23~133位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号15の149~269位のアミノ酸残基に示されるものである;
ことを特徴とする、請求項
11のいずれか一項に記載のT細胞。
【請求項13】
前記キメラ抗原受容体は下記のものから選ばれるものである、ことを特徴とする、請求項
11に記載のT細胞。
(1)そのアミノ酸配列は配列番号7の22~486位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号7に示されるものである;またはそのコード配列は、配列番号8の64~1458位の塩基配列に示されるもの、または配列番号8に示されるものである、CD19を標的とするキメラ抗原受容体;
(2)そのアミノ酸配列は配列番号9の23~681位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9に示されるものである;またはそのコード配列は、配列番号10の67~2043位の塩基配列に示されるものである;または配列番号10に示されるものである;或いは、そのアミノ酸配列は配列番号11の21~679位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号11に示されるものである;またはそのコード配列は、配列番号12の61~2037位の塩基配列に示されるもの、または配列番号12に示されるものである、メソテリンを標的とするキメラ抗原受容体;
(3)そのアミノ酸配列は配列番号13の23~580位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号13に示されるものである;またはそのコード配列は、配列番号14の67~1740位の塩基配列に示されるもの、または配列番号14に示されるものである、ErbBファミリーを標的とする抗原認識領域;
(4)そのアミノ酸配列は配列番号15の23~678位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号15に示されるものである;またはそのコード配列は、好ましくは配
列番号16の67~2034位の塩基配列に示されるもの、または配列番号16に示されるものである、ムチンを標的とするキメラ抗原受容体;
(5)そのアミノ酸配列は配列番号17の23~497位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17に示されるものである;またはそのコード配列は、好ましくは配列番号18の67~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18に示されるものである、EGFRを標的とするキメラ抗原受容体
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載のT細胞或いは前記T細胞およびそれが発現する抗体を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか一項に記載のT細胞
の、悪性腫瘍を治療または予防するための薬物の製造における使用。
【請求項16】
前記悪性腫瘍は、急性Bリンパ球性白血病、慢性Bリンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫から選ばれるものであり;或いはメソセリン、少なくとも1つのEGFRファミリーメンバータンパク質、Muc1抗原、EGFR及び/又はCD47を癌細胞表面で異常発現する悪性腫瘍であり;或いはCD40またはPD1によって仲介される悪性腫瘍であることを特徴とする、請求項
15に記載の使用。
【請求項17】
下記のベクターで請求項1~
13のいずれか一項に記載のT細胞をトランスフェクトする工程を含むことを特徴とする、T細胞の製造方法。
(1)前記キメラ抗原受容体の発現フレームを前記T細胞のゲノムに導入させるための、トランスポザーゼコード配列を含むベクター、および
(2)前記抗体の発現フレームを前記T細胞のゲノムに組み込むための、トランスポザーゼコード配列を含まないベクター
【請求項18】
質量で、(1)と(2)に記載のベクターの比率は1~7:1~7であることを特徴とする、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体修飾キメラ抗原受容体修飾T細胞及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor T
cell、CAR-T)治療技術は、間違いなく腫瘍免疫細胞療法の分野での希望の星である。CAR-T技術は、ある抗原分子を認識する抗体可変領域の遺伝子配列と、Tリンパ球免疫受容体の細胞内領域配列とを遺伝子工学技術でスプライスした後、レトロウイルスやレンチウイルスベクター、トランスポゾンやトランスポザーゼシステムを介して、或いは直接にmRNAとしてリンパ球へ形質導入し、且つ融合タンパク質を細胞表面に発現させることにより、Tリンパ球が非MHC制限様式で特定の抗原を認識できるようにし、その腫瘍認識・殺傷能を高めるものである。
【0003】
CARの構造は、1989年にイスラエルのEshhar研究チームによって初めて提案されてから、約30年の開発を経って、CAR構造によって修飾されたT細胞が腫瘍免疫療法に優れた治療効果を持つことは証明されていた。1世代目のCAR受容体には、細胞外の腫瘍抗原を特異的に認識する断片(一本鎖可変フラグメント、single-chain variable fragment、scFv)が含まれており、細胞内活性化シグナルはCD3ζシグナルチェーンによって伝達される。しかしながら、1世代目のCAR受容体には、T細胞の共刺激シグナルが欠けているため、T細胞は瞬時的な効果しか発揮できず、生体内で短時間しか存在できず、サイトカインを少量しか分泌しない。2世代目のCAR受容体には、例えばCD28、CD134/OX40、CD137/4-1BB、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(lymphocyte-specific protein tyrosine kinase、LCK)、誘導性T細胞共刺激因子(inducible T-cell co-stimulator、ICOS)及びDNAX活性化タンパク質10(DNAX-activation protein 10、DAP10)等のドメインのような共刺激シグナル分子の細胞内ドメインが追加され、T細胞の増殖能及びサイトカイン分泌能が高められ、IL-2、IFN-γ及びGM-CSFが増加したことにより、腫瘍微小環境の免疫抑制は打ち破られ、AICD(活性化誘導細胞死、activation induced cell death、AICD)は延長される。3世代目のCAR受容体には、共刺激構造のCD28とITAMシグナルチェーンの間に4-1BBのような二次共刺激分子がさらに融合されたため、トリプルシグナルCAR受容体が生み出され、3世代目のCAR受容体によって改造されたT細胞は、より優れたエフェクター機能と生体内生存時間を持っている。一般的に使用される典型的なCAR-T構造は、2世代目のCAR受容体であり、その構造は具体的に、腫瘍抗原を認識する抗体一本鎖可変領域(scFv)、ヒンジ領域、膜貫通領域、および細胞内刺激シグナルドメインの4つの部分に分けられる。CAR構造のヒンジ領域は、正確な立体配座を形成し、二量体を形成する役割を担う。ヒンジ領域の長さとアミノ酸配列特徴は、CARの立体配座を決定すると共に、その腫瘍細胞表面抗原結合能も決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、GD2、FR-α、L1-CAM、HER2、EGFR、EGFRvIII、VEGFR-2、IL-13Rα2、FAP、メソテリン、c-MET、PSMA、CEA、GPC3、EphA2、MUC1、CAIX(炭酸脱水酵素IX)等を含む複数の標的に対するCAR-T細胞は、固形腫瘍治療のための臨床試験が行われている。そのうち、
一部の臨床試験は比較的に良好な結果が得られた;例えば、GD2に対するCAR-T細胞で高リスク神経芽細胞腫を治療する臨床試験(19例患者)において、8例の患者では、CAR-T細胞を戻した後に腫瘍が完全に退縮し、3例の未退縮患者では、CAR-T細胞を戻した6週間後の観察時点で完全な応答を示し、1名の完全応答患者では、192週目にもCAR-T細胞が検出できた;HER2に対するCAR-T細胞でHER2陽性固形腫瘍を治療する臨床試験(合計で19例、そのうちの骨肉腫が16例)において、4例では無増悪生存状態を12週間~14ヶ月維持し、そのうちの3例では腫瘍が退縮し、1例では90%以上退縮した。しかしながら、一般的に言えば、固形腫瘍のCAR-T療法は、血液腫瘍に比べて治療効果に大きな差があり、その原因は主に、下記のものを含む:
1、免疫を抑制する微小環境
固形腫瘍組織には、Treg細胞、腫瘍関連線維芽細胞、骨髄由来未熟DC細胞、M2型マクロファージ等、並びにそれらで分泌されるIL-6、IL-10、IDO、VEGF、TGFβ等のサイトカインを含む免疫抑制の微小環境が存在し、これらの細胞及びそれらで分泌されるサイトカインは、直接的な又は間接的な方式でT細胞の機能を抑制できる。放射線療法や化学療法による腫瘍微小環境の破壊、免疫チェックポイント抗体(例えばPD1/PDL1)又は負の免疫調節因子(例えばIDO小分子阻害剤)による関連のシグナル伝達経路の特異的な遮断、関連酵素の阻害剤のエピジェネティックな修飾による免疫微小環境の全体的な調整、正の免疫調節因子(例えばIL-12)の過剰発現、(例えばFAP陽性腫瘍関連線維芽細胞をターゲトとするCAR-Tによる)腫瘍間質細胞の直接標的除去等の策は全て、固形腫瘍の免疫抑制の微小環境に作用し、浸潤したCAR-T細胞の生存能と殺傷効果を高めることができる。
2、適切なCAR-T治療標的の欠乏
固形腫瘍は高度に不均一であり、異なる患者、同じ患者の異なる病巣、および同じ病巣の異なる腫瘍細胞の間ではいずれも高度に相違している。このような高度な不均一性により、標的腫瘍治療は、汎用的で広域的な望ましい標的の欠乏という不利な境地に陥り、固形腫瘍の治療におけるCAR-T細胞の治療効果は制限されてしまう。そこで、CAR-T細胞の殺傷範囲を拡大させるために、ある学者は、異なる腫瘍関連抗原に結合する2種類のscFvを直列に接続し、2つの標的を同時に認識して結合できる新しいCARを構築し、CAR-T細胞の治療効果を効果的に向上させるTanCARの設計概念を提案した。
3、生体内で有効量に到達することの困難さ
T細胞で腫瘍細胞を殺傷するには、クラスター化の必要があり、1つの腫瘍細胞を殺傷するには、いくつかのT細胞の協力が必要であるため、エフェクター細胞が特定の数に到達しなければ、腫瘍細胞を効果的に殺傷することができない。したがって、T細胞は特定の標的の腫瘍細胞に接触すると、急速に増殖し、直接接触と傍分泌経路を介して殺傷機能を増幅することができる。CAR-T細胞は静脈内で投与され、血液腫瘍の場合には、腫瘍細胞と非常に簡単に接触でき、CAR-T細胞の数は急速に増幅し、ひいては過剰に増幅してサイトカインストームを形成するため、治療効果は比較的に良好であるが、固形腫瘍の場合には、血液循環中の腫瘍細胞の数は限られており、CAR-T細胞は刺激を受けるために腫瘍部位に到達する必要があり、有効量に到達することは困難である。
【0005】
したがって、CAR-T、特に腫瘍膜抗原を広域的に認識できるCAR-T細胞に、T細胞の増殖や生存などの機能を直接的または間接的に刺激する抗体を発現させることができれば、固形腫瘍CAR-T治療の難題を効果的に乗り越え、治療効果を大幅に向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、抗原結合配列と、突然変異型Fcフラグメントとを含む抗体を発現する、或いは前記抗体のコード配列またはその発現ベ
クターを含有するT細胞であって、前記突然変異型Fcフラグメントは、配列番号25に示されるIgG4 Fcフラグメントの17位および79位に相応する位置でのアミノ酸残基がそれぞれEおよびQに突然変異された突然変異型Fcフラグメントであることを特徴とするT細胞を提供する。
【0007】
一つ又は複数の実施形態において、前記突然変異型Fcフラグメントは突然変異型IgG4 Fcフラグメントであり、そのアミノ酸配列は配列番号1の269~497位のアミノ酸残基に示されるものが好ましく、そのコード配列は配列番号2の805~1491位の塩基配列に示されるものが好ましい。
【0008】
一つ又は複数の実施形態において、前記T細胞のゲノムには、前記抗体の発現フレームが組み込まれた。
【0009】
一つ又は複数の実施形態において、前記シグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドであり、そのアミノ酸配列は配列番号1の1~20位のアミノ酸配列に示されるものが好ましく、そのコード配列は配列番号2の1~60位の塩基配列に示されるものが好ましい。
【0010】
一つ又は複数の実施形態において、前記抗原結合配列は、抗原と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば一本鎖抗体)から由来するものであり、或いは腫瘍微小環境で機能するタンパク質のリガンドまたは該タンパク質に結合するその断片から由来するものである;好ましくは、前記抗体はアゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体である。
【0011】
一つ又は複数の実施形態において、前記アゴニスト抗体は、下記抗原に対する抗体から選ばれるものである:CD28、CD137、CD134、CD40、CD40L、ICOS、HVEM、CD2、CD27、CD30、GITR、LIGHT、DR3、SLAM、CD226、CD80およびCD86。
【0012】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンタゴニスト抗体は、下記抗原に対する抗体から選ばれるものである:PD-1、CTLA4、PDL1、PDL2、PDL3、TIM3、LAG3、CD47、BTLA、TIGIT、CD160、LAIR1、B7-H1、B7-1、VSIRおよびCD244;好ましくは、前記リガンドはCD47のリガンドである。
【0013】
一つ又は複数の実施形態において、前記アゴニスト抗体はCD40一本鎖抗体である;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号1の21~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は前記CD40一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号1の161~268位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~268位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0014】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンタゴニスト抗体はPD-1一本鎖抗体である;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号3の21~131位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は前記PD-1一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号3の147~266位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~266位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0015】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD47リガンドのアミノ酸配列は配列番号5の21~138位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0016】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域のコード配列は配列番号2の60~438位の塩基配列に示されるものであり、及び/或その重鎖可変領域のコード配列は配列番号2の481~804位の塩基配列に示されるものである;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体のコード配列は配列番号2の60~804位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0017】
一つ又は複数の実施形態において、前記PD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域のコード配列は配列番号4の60~393位の塩基配列に示されるものであり、及び/或その重鎖可変領域のコード配列は配列番号4の439~798位の塩基配列に示されるものである;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体のコード配列は配列番号2の60~798位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0018】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD47リガンドのコード配列は配列番号6の60~414位の塩基配列に示されるものであってもよい。
【0019】
一つ又は複数の実施形態において、前記抗体はCD40抗体、PD-1抗体またはCD47抗体である。
【0020】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD40抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~497位に示されるもの、または配列番号1に示されるものであり、前記PD-1抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~495位に示されるもの、または配列番号3に示されるものであり、前記CD47抗体のアミノ酸配列は配列番号5の21~367位に示されるもの、または配列番号5に示されるものである。
【0021】
一つ又は複数の実施形態において、前記抗体のコード配列は配列番号2の60~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号2に示されるものであり;或いは、配列番号4の60~1485位の塩基配列に示されるもの、または配列番号4に示されるものであり;或いは、配列番号6の60~1104位の塩基配列に示されるもの、または配列番号6に示されるものである。
一つ又は複数の実施形態において、前記T細胞はキメラ抗原受容体を発現するCAR-T細胞であり、ただし、前記T細胞のゲノムには、前記抗体の発現フレームおよび前記キメラ抗原受容体の発現フレームが組み込まれた。
一つ又は複数の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は下記抗原の1種または多種を認識する、標的とする、または特異的に結合するものである:CD19、CD20、CEA、GD2、FR、PSMA、PMEL、CA9、CD171/L1-CAM、IL-13Rα2、MART-1、ERBB2、NY-ESO-1、MAGEファミリータンパク質、BAGEファミリータンパク質、GAGEファミリータンパク質、AFP、MUC1、CD22、CD23、CD30、CD33、CD44v7/8、CD70、VEGFR1、VEGFR2、IL-11Rα、EGP-2、EGP-40、FBP、GD3、PSCA、FSA、PSA、HMGA2、胎児型アセチルコリン受容体、LeY、EpCAM、MSLN、IGFR1、EGFR、EGFRvIII、ERBB3、ERBB4、CA125、CA15-3、CA19-9、CA72-4、CA242、CA50、CYFRA21-1、SCC、AFU、EBV-VCA、POA、β2-MGおよびPROGRP;好ましくは、CD19、メソテリン、EGFR、ムチンまたはErbB受容体ファミリーを認識する、標的とする、または特異的に結合するキメラ抗原受容体である。
【0022】
一つ又は複数の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチド配列と、抗原認識領域と、ヒンジ領域と、膜貫通領域と、細胞内共刺激シグナル領域と、細胞内シグナル領域とを含む;ただし、前記シグナルペプチドは、CD8
シグナルペプチド、CD28シグナルペプチド、CD4シグナルペプチドおよび軽鎖シグナルペプチドから選ばれるものである;前記抗原認識領域は、標的抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合するアミノ酸配列である;前記ヒンジ領域は、CD8の細胞外ヒンジ領域、IgG1 Fc CH2CH3ヒンジ領域、IgDヒンジ領域、CD28の細胞外ヒンジ領域、IgG4 Fc CH2CH3ヒンジ領域およびCD4の細胞外ヒンジ領域から選ばれるもので、好ましくは長さが50個のアミノ酸残基以上、より好ましくは長さが80個のアミノ酸以上のヒンジ領域である;好ましくは、前記ヒンジ領域はCD8αヒンジ領域またはIgG4 Fc CH2CH3ヒンジ領域である;前記膜貫通領域は、CD28膜貫通領域、CD8膜貫通領域、CD3ζ膜貫通領域、CD134膜貫通領域、CD137膜貫通領域、ICOS膜貫通領域およびDAP10膜貫通領域である;好ましくはCD8膜貫通領域またはCD28膜貫通領域である;前記細胞内共刺激シグナル領域は、共刺激シグナル分子の細胞内ドメインであり、CD28、CD134/OX40、CD137/4-1BB、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ、誘導性T細胞共刺激因子およびDNAX活性化タンパク質10の細胞内ドメインから選ばれるもので、好ましくはCD137/4-1BBの細胞内ドメインまたはCD28の細胞内ドメインである;及び/又は前記細胞内シグナル領域は、CD3ζ細胞内シグナル領域またはFcεRIγ細胞内シグナル領域である;好ましくはCD3ζ細胞内シグナル領域である。
【0023】
一つ又は複数の実施形態において、前記シグナルペプチドのアミノ酸配列は、配列番号7の1~21位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の1~22位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号11の1~20位のアミノ酸残基に示されるものである;前記抗原認識領域は、CD19、メソテリン、EGFRまたはムチンを認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体であり、或いはErbB受容体ファミリーを認識する、標的とする、または特異的に結合するアミノ酸配列からなるものである;前記ヒンジ領域のアミノ酸配列は、配列番号7の264~308位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の273~500位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17の264~318位のアミノ酸残基に示されるものである;前記膜貫通領域のアミノ酸配列は、配列番号7の309~332位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の501~528位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17の319~344位のアミノ酸残基に示されるものである;前記細胞内共刺激シグナル領域のアミノ酸配列は、配列番号7の333~374位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9の529~569位のアミノ酸残基に示されるものである;及び/又は前記細胞内シグナル領域のアミノ酸配列は、配列番号7の375~486位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0024】
一つ又は複数の実施形態において、前記シグナルペプチドのコード配列は、配列番号8の1~63位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の1~66位の塩基配列に示されるもの、または配列番号12の1~60位の塩基配列に示されるものである;前記ヒンジ領域のコード配列は、配列番号8の790~924位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の817~1500位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18の790~954位の塩基配列に示されるものである;前記膜貫通領域のコード配列は、配列番号8の925~996位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の1501~1584位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18の955~1032位の塩基配列に示されるものである;前記細胞内共刺激シグナル領域のコード配列は、配列番号8の997~1122位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10の1585~1707位の塩基配列に示されるものである;及び/又は前記細胞内シグナル領域のコード配列は、配列番号8の1123~1458位の塩基配列に示されるものである。
【0025】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD19を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7の22~128位
のアミノ酸残基に示されるものであってもよく、及び/又はその重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号7の144~263位のアミノ酸残基に示されるものであってもよい;好ましくは、前記一本鎖抗体のアミノ酸配列は、配列番号7の22~263位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0026】
一つ又は複数の実施形態において、前記メソテリン抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体は、メソテリンの領域IまたはIIIに対する一本鎖抗体であり、好ましくはメソテリン領域IIIに対する一本鎖抗体である;好ましくは、メソテリン領域IIIに対する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9の23~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又はメソテリン領域IIIに対する一本鎖抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号9の162~272位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記メソテリン抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号9の23~272位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0027】
一つ又は複数の実施形態において、前記ErbB受容体ファミリーを認識する、標的とする、または特異的に結合する抗原認識領域は、天然のT1Eとヘリン(Herin)の融合タンパク質を含む;ただし、T1Eはヒトトランスフォーミング成長因子α(TGFα)N末端の7個のアミノ酸と、上皮成長因子(EGF)C末端の48個のアミノ酸からなるものであり、好ましくは、T1Eのアミノ酸配列は配列番号13の23~77位のアミノ酸残基に示されるものである;前記ヘリンは、ハースタチン(Herstatin)の8番目のイントロンによってコードされる79個のアミノ酸であり、好ましくは、前記ヘリンのアミノ酸配列は配列番号13の93~171位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記抗原認識領域は配列番号13の23~171位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0028】
一つ又は複数の実施形態において、前記ムチン抗原を認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列と重鎖可変領域のアミノ酸配列は、Muc1の膜近傍末端のアミノ酸配列に対する抗体から由来するものであり、好ましくは、該Muc1の膜近傍末端のアミノ酸配列は配列番号24に示されるものである;好ましくは、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号15の23~133位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号15の149~269位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号15の23~269位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0029】
一つ又は複数の実施形態において、前記EGFRを認識する、標的とする、または特異的に結合する抗原認識領域は、EGFR特異的抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなる一本鎖抗体である;好ましくは、前記一本鎖抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17の23~129位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は重鎖可変領域のアミノ酸配列は配列番号17の145~263位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号17の23~263位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0030】
一つ又は複数の実施形態において、前記キメラ抗原受容体はN末端からC末端まで、任意に含まれてもよいシグナルペプチド配列と、抗原認識領域と、CD8αヒンジ領域若しくはIgG4 CH2CH3ヒンジ領域と、CD8膜貫通領域若しくはCD28膜貫通領域と、4-1BB若しくはCD28の細胞内ドメインと、およびCD3ζ細胞内シグナル領域と、を順次に含む。
【0031】
一つ又は複数の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は下記のものから選ばれるものである:
(1)そのアミノ酸配列は配列番号7の22~486位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号7に示されるものであり、そのコード配列は、好ましくは配列番号8の64~1458位の塩基配列に示されるもの、または配列番号8に示されるものである、CD19を標的とするキメラ抗原受容体;
(2)そのアミノ酸配列は配列番号9の23~681位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9に示されるものであり、そのコード配列は、好ましくは配列番号10の67~2043位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10に示されるものであり、或いは、そのアミノ酸配列は配列番号11の21~679位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号11に示されるものであり、そのコード配列は、好ましくは配列番号12の61~2037位の塩基配列に示されるもの、または配列番号12に示されるものである、メソテリンを標的とするキメラ抗原受容体;
(3)そのアミノ酸配列は配列番号13の23~580位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号13に示されるものであり、そのコード配列は、好ましくは配列番号14の67~1740位の塩基配列に示されるもの、または配列番号14に示されるものである、ErbBファミリーを標的とする抗原認識領域;
(4)そのアミノ酸配列は配列番号15の23~678位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号15に示されるものであり、そのコード配列は、好ましくは配列番号16の67~2034位の塩基配列に示されるもの、または配列番号16に示されるものである、ムチンを標的とするキメラ抗原受容体;
(5)そのアミノ酸配列は配列番号17の23~497位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17に示されるものであり、そのコード配列は、好ましくは配列番号18の67~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18に示されるものである、EGFRを標的とするキメラ抗原受容体。
【0032】
本発明はさらに、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、抗原結合配列と、突然変異型Fcフラグメントとを含む抗体であって、前記突然変異型Fcフラグメントは、配列番号25に示されるIgG4 Fcフラグメントの17位および79位に相応する位置でのアミノ酸残基がそれぞれEおよびQに突然変異された突然変異型Fcフラグメントであることを特徴とする抗体を提供する。
【0033】
一つ又は複数の実施形態において、前記突然変異型Fcフラグメントは突然変異型IgG4 Fcフラグメントであり、そのアミノ酸配列は配列番号1の269~497位のアミノ酸残基に示されるものが好ましく、そのコード配列は配列番号2の805~1491位の塩基配列に示されるものが好ましい。
【0034】
一つ又は複数の実施形態において、前記シグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドであり、そのアミノ酸配列は配列番号1の1~20位のアミノ酸配列に示されるものが好ましく、そのコード配列は配列番号2の1~60位の塩基配列に示されるものが好ましい。
【0035】
一つ又は複数の実施形態において、前記抗原結合配列は、抗原と特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片(例えば一本鎖抗体)から由来するものであり、或いは腫瘍微小環境で機能するタンパク質のリガンドまたは該タンパク質に結合するその断片から由来するものである;好ましくは、前記抗体はアゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体である;好ましくは、前記アゴニスト抗体は、下記抗原に対する抗体から選ばれるものである:CD28、CD137、CD134、CD40、CD40L、ICOS、HVEM、CD2、CD27、CD30、GITR、LIGHT、DR3、SLAM、CD226、CD80およびCD86;好ましくは、前記アンタゴニスト抗体は、下記抗原に対する抗体から選ばれるものである:PD-1、CTLA4、PDL1、PDL2、PDL3、TIM
3、LAG3、CD47、BTLA、TIGIT、CD160、LAIR1、B7-H1、B7-1、VSIRおよびCD244;好ましくは、前記リガンドはCD47のリガンドである。
【0036】
一つ又は複数の実施形態において、前記アゴニスト抗体はCD40一本鎖抗体である;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号1の21~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は前記CD40一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号1の161~268位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~268位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0037】
一つ又は複数の実施形態において、前記アンタゴニスト抗体はPD-1一本鎖抗体である;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号3の21~131位のアミノ酸残基に示されるものであり、及び/又は前記PD-1一本鎖抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列は配列番号3の147~266位のアミノ酸残基に示されるものである;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~266位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0038】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD47リガンドのアミノ酸配列は配列番号5の21~138位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0039】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域のコード配列は配列番号2の60~438位の塩基配列に示されるものであり、及び/或その重鎖可変領域のコード配列は配列番号2の481~804位の塩基配列に示されるものである;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体のコード配列は配列番号2の60~804位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0040】
一つ又は複数の実施形態において、前記PD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域のコード配列は配列番号4の60~393位の塩基配列に示されるものであり、及び/或その重鎖可変領域のコード配列は配列番号4の439~798位の塩基配列に示されるものである;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体のコード配列は配列番号2の60~798位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0041】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD47リガンドのコード配列は配列番号6の60~414位の塩基配列に示されるものであってもよい。
【0042】
一つ又は複数の実施形態において、前記抗体はCD40抗体、PD-1抗体またはCD47抗体である。
【0043】
一つ又は複数の実施形態において、前記CD40抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~497位に示されるもの、または配列番号1に示されるものであり、前記PD-1抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~495位に示されるもの、または配列番号3に示されるものであり、前記CD47抗体のアミノ酸配列は配列番号5の21~367位に示されるもの、または配列番号5に示されるものである。
【0044】
一つ又は複数の実施形態において、前記抗体のコード配列は配列番号2の60~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号2に示されるものであり;或いは、配列番号4の60~1485位の塩基配列に示されるもの、または配列番号4に示されるものであり;或いは、配列番号6の60~1104位の塩基配列に示されるもの、または配列番号6に示されるものである。
【0045】
本発明はさらに、本文に記載の抗体のコード配列またはその相補的配列から選ばれる核酸配列を提供する。
【0046】
本発明はさらに、本文に記載の核酸配列を含む核酸構築物を提供する;好ましくは、前記核酸構築物は発現フレームまたはベクターである。
【0047】
一つ又は複数の実施形態において、前記核酸構築物は、発現ベクター、または前記発現フレームを宿主細胞ゲノムに挿入させるための組み込みベクターである。
【0048】
一つ又は複数の実施形態において、前記組み込みベクターは、5’LTRと3’LTRの間に、作動可能に連結されるプロモーターと、本文に記載の抗体のコード配列と、ポリアデニル化シグナル配列とを含み、且つトランスポザーゼコード配列を含まない組み込みベクターである。
【0049】
本発明はさらに、本文に記載のベクターと、任意のトランスフェクション試薬とを含む組成物を提供する;好ましくは、前記組成物は、本文に記載の組み込みベクターと、キメラ抗原受容体の発現フレームを宿主細胞ゲノムに挿入させるための組み込みベクターとを含む;好ましくは、前記キメラ抗原受容体は本文のいずれかの実施形態に限定されるものである。
【0050】
一つ又は複数の実施形態において、組成物におけるキメラ抗原受容体の発現フレームを宿主細胞ゲノムに挿入させるための前記組み込みベクターと、本文に記載の抗体の発現フレームを宿主細胞ゲノムに挿入させるための組み込みベクターの質量比は1~7:1~7、例えば1~5:1~5、好ましくは1~3:1~3、より好ましくは1~2:1~2、さらに好ましくは1~2:1である。
【0051】
本発明はさらに、本文に記載のベクターと、任意のトランスフェクション試薬とを含むキットを提供する;好ましくは、前記キットは、本文に記載の抗体の発現フレームを宿主細胞ゲノムに挿入させるための組み込みベクターと、キメラ抗原受容体の発現フレームを宿主細胞ゲノムに挿入させるための組み込みベクターとを含む;好ましくは、前記キメラ抗原受容体は本文のいずれかの実施形態に限定されるものである;
【0052】
一つ又は複数の実施形態において、前記キットは本文に記載の組成物を含む。
【0053】
本発明はさらに、本文に記載のT細胞或いは前記T細胞およびそれが発現する本文に記載の抗体を含む医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明はさらに、本文に記載の核酸配列または核酸構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0055】
本発明はさらに、本文に記載のT細胞、抗体、核酸配列、核酸構築物および宿主細胞の、悪性腫瘍を治療または予防するための薬物の製造における使用を提供する。
【0056】
一つ又は複数の実施形態において、前記悪性腫瘍は、急性Bリンパ球性白血病、慢性Bリンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫および多発性骨髄腫から選ばれるものであり;或いはメソセリン、少なくとも1つのEGFRファミリーメンバータンパク質、Muc1抗原、EGFR及び/又はCD47を癌細胞表面で異常発現する悪性腫瘍であり;或いはCD40またはPD1によって仲介される悪性腫瘍である。
【0057】
本発明はさらに、下記のベクターで前記T細胞をトランスフェクトする工程を含むT細
胞の製造方法を提供する:
(1)前記キメラ抗原受容体の発現フレームを前記T細胞のゲノムに導入させるための、トランスポザーゼコード配列を含むベクター、および
(2)前記抗体の発現フレームを前記T細胞のゲノムに組み込むための、トランスポザーゼコード配列を含まないベクター;
好ましくは、質量で、(1)と(2)に記載のベクターの比率は1~7:1~7、例えば1~5:1~5、好ましくは1~3:1~3、より好ましくは1~2:1~2、さらに好ましくは1~2:1である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】CD19CAR-分泌量比較:CD19抗原による刺激下で、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカイン分泌の変化。
【
図2】CD19CAR T細胞およびCD19CAR-αCD40 T細胞の増殖アッセイ。
【
図3】マウスRaji-luc異種移植片モデルに対するCD19CAR T細胞、CD19CAR-αCD40-wt T、CD19CAR-αCD40 T細胞の治療効果。
【
図4】子宮頸癌細胞Hela、卵巣癌細胞SK-OV-3および胃癌細胞HGC-27に対するmesoCAR-αCD40 T細胞の殺傷。
【
図5】メソテリン抗原による刺激下で、mesoCAR-αCD40のIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカイン分泌の変化。
【
図6】mesoCAR T細胞およびmesoCAR-αCD40 T細胞の増殖アッセイ。
【
図7】SK-OV-3卵巣癌マウス異種移植片モデルに対するmesoCAR T細胞およびmesoCAR-αCD40 T細胞の治療効果。
【
図8】EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の増殖速度の対比。
【
図9A】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;9Aは老化表現型CD40を表し、9Bと9Cはそれぞれ活性化表現型CD69とCD107αを表す。
【
図9B】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;9Bと9Cはそれぞれ活性化表現型CD107αを表す。
【
図9C】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;9Bと9Cはそれぞれ活性化表現型CD107αを表す。
【
図9D】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;9Dはメモリー表現型を表す。
【
図10】ヒト肝癌細胞HCCLM3、ヒト肺変性癌細胞Calu-6およびヒト非小細胞肺癌H23を含むものに対するEHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の殺傷の対比。
【
図11】EGFR抗原による刺激下で、EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカイン分泌の変化。
【
図12】EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40-wt T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞、Mock-T細胞およびPBS空白対照でそれぞれマウスを治療した後の異なる日の腫瘍細胞蛍光値の変化。
【
図13】Muc1CAR T細胞とMuc1CAR-αCD40 T細胞の増殖速度の対比。
【
図14A】Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-αCD40 T細胞の細胞表現型測定・解析;
図14Aは老化表現型PD1、LAG3および活性化表現型CD25を表す。
【
図14B】Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-αCD40 T細胞の細胞表現型測定・解析;14Bはメモリー表現型を表す。
【
図15】ヒト肝癌細胞HCCLM3及びヒト非小細胞肺癌H23を含むものに対するMuc1CAR T細胞とMuc1CAR-αCD40 T細胞の殺傷の対比。
【
図16】Muc1抗原による刺激下で、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-αCD40 T細胞のIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカイン分泌の変化。
【
図17】Muc1CAR T細胞、Muc1CAR-αCD40-wt T細胞、Muc1CAR-αCD40 T細胞、Mock-T細胞およびPBS空白対照でそれぞれマウスを治療した後の異なる日の腫瘍細胞蛍光値の変化。
【
図18】CD19CAR-anti PD1多能性T細胞の殺傷効果アッセイ。
【
図19】CD19CAR-anti PD1多能性T細胞はインビトロでT細胞の殺傷活性を増強できる。
【
図19-1】CD19CAR-anti PD1多能性T細胞はインビトロでT細胞の殺傷活性を増強できる(
図19の続きである)。
【
図20】CD19CAR-anti PD1 T細胞のインビボ殺傷機能アッセイ。
【
図21】子宮頸癌細胞Hela、卵巣癌細胞SK-OV-3および胃癌細胞HGC-27に対するmesoCAR-antiPD1 T細胞の殺傷。
【
図22】メソテリン抗原による刺激下で、mesoCAR-antiPD1のIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカイン分泌の変化。
【
図23】SK-OV-3卵巣癌マウス異種移植片モデルに対するmeso3CAR T細胞およびmesoCAR-antiPD1 T細胞の治療効果。
【
図24】EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の増殖速度の対比。
【
図25A】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;25Aは老化表現型PD1を表す。
【
図25B】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;25Bと25Cはそれぞれ活性化表現型CD69とCD107αを表す。
【
図25C】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;25Bと25Cはそれぞれ活性化表現型CD69とCD107αを表す。
【
図25D】EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のT細胞の細胞表現型測定・解析;25Dはメモリー表現型を表す。
【
図26】ヒト肝癌細胞HCCLM3、ヒト肝癌細胞Hep3Bおよびヒト非小細胞肺癌H23を含むものに対するEHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の殺傷の対比。
【
図27】EGFR抗原による刺激下で、EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカイン分泌の変化。
【
図28】EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1-wt T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞、Mock-T細胞およびPBS空白対照でそれぞれマウスを治療した後の異なる日の腫瘍細胞蛍光値の変化。
【
図29A】Muc1CAR-anti PD1多能性T細胞はインビトロでT細胞の殺傷活性を増強できる。29A:T細胞の殺傷活性を間接的に反映する標識CD107α、活性化標識CD25および除去標識LAG3のフローサイトメトリーによる検出;
【
図29B】29B:T細胞のメモリー表現型を反映する標識タンパク質CD45RO、CD62LおよびCCR7のフローサイトメトリーによる検出。
【
図29C】29C:T細胞CD3/CD4/CD8の比率のフローサイトメトリーによる検出。
【
図29D】29D:Muc1CAR-anti PD1多能性T細胞、Muc1CAR-T細胞およびMock T細胞がMuc1抗原によって刺激された後のIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-αおよびIFN-γサイトカインの変化の、複数因子検出キットによる検出。
【
図30】Muc1CAR-anti PD1多能性T細胞の殺傷効果アッセイ。
【
図31】PD-1抗体を発現するMuc1CAR T細胞のインビボ機能研究。
【
図32】Mock T細胞、EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR T細胞のCD47発現のフローサイトメトリーによる検出。
【
図33】異なる腫瘍細胞に対するαCD47-EGFR-CAR T細胞の殺傷。
【
図34】αCD47-EGFR-CAR T細胞上澄を異なる腫瘍細胞と共培養した後、腫瘍細胞表面のCD47はブロックされる。
【
図35】腫瘍細胞表面のCD47のブロッキングは、それに対するマクロファージの貪食作用を向上させることができる。
【
図36】αCD47-EGFR-CAR T細胞のマウス生体内の抗腫瘍効果。
【
図37】Mock、Meso3CARおよびαCD47-Meso3CAR T細胞のCD47発現のフローサイトメトリーによる検出。
【
図38】αCD47-Meso3CAR T細胞の腫瘍細胞株に対する殺傷。
【
図39】αCD47-Meso3CAR T細胞上澄を異なる腫瘍細胞と共培養した後、腫瘍細胞表面のCD47はブロックされる。
【
図40】腫瘍細胞表面のCD47のブロッキングは、それに対するマクロファージの貪食作用を向上させることができる。
【
図41】αCD47-Meso3CAR T細胞のインビボでの抗腫瘍効果。
【0059】
なお、図中の縦座標の「カウント(Count)」は「細胞数」である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の範囲内であれば、本発明の上記各技術的特徴および以下(例えば実施例)で具体的に開示される各技術的特徴は、互いに組み合わせて、好ましい技術方案を構成してもよいことは理解されるべきである。
【0061】
以下、本発明が関わる一部の用語について解釈する。
【0062】
本発明において、用語の「発現フレーム」とは、一つの遺伝子の発現に必要な全要素を意味し、作動可能に連結されるプロモーターと、遺伝子コード配列とを含む。
用語の「コード配列」は本文において、核酸配列中の、そのタンパク質産物(例えばCAR、一本鎖抗体、ヒンジ領域および膜貫通領域)を直接に決定するアミノ酸配列の部分と定義される。コード配列の境界は通常、mRNA 5’末端のオープンリーディングフレームの上流に近接するリボソーム結合部位(原核細胞の場合)と、mRNA 3’末端のオープンリーディングフレームの下流に近接する転写ターミネーター配列とで決定される。コード配列は、DNA、cDNAおよび組換え核酸配列を含んでもよいが、それらに限定されない。
用語の「Fc」、即ち抗体の結晶化可能フラグメント(fragment crystallizable、Fc)とは、、抗体分子「Y」構造の幹部分末端に位置し、抗体重
鎖定常領域CH2とCH3ドメインのペプチドフラグメントを含み、抗体がエフェクター分子または細胞と相互作用する部位を指す。
用語の「共刺激分子」とは、抗原提示細胞表面に存在し、Th細胞における共刺激分子受容体に結合し、共刺激シグナルを産生する分子を指す。リンパ球の増殖には、抗原の結合だけでなく、共刺激分子のシグナルを受信することも必要とされる。共刺激シグナルのT細胞への伝達は主に、抗原提示細胞表面に発現される共刺激分子CD80、CD86と、T細胞表面のCD28分子の結合によるものである。B細胞の共刺激シグナルの受信は、一般的な病原体成分(例えばLPS)、または補体成分、または活性化された抗原特異的Th細胞表面のCD40Lによるものであってもよい。
用語の「リンカー」またはヒンジとは、異なるタンパク質やポリペプチド同士を連結するポリペプチド断片であり、連結されるタンパク質やポリペプチドにそれぞれの立体配座を保持させ、タンパク質やポリペプチドの機能または活性を維持することを目的とする。例示的なリンカーは、G及び/又はSを含有するリンカー、及び例えばフーリン2Aペプチドを含む。
用語の「特異的結合」とは、抗体または抗原結合断片と、対する抗原との間の反応を指す。ある実施形態において、ある抗原と特異的に結合する抗体(またはある抗原に対して特異性を有する抗体)とは、抗体が約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9Mまたは10-10M未満、或いはそれ以下の親和力(KD)で該抗原と結合する。「特異的に認識する」または「を標的とする」とは、類似の意味を有する。
用語の「薬学的に許容される補助剤」とは、薬理学的に及び/又は生理学的に被験者及び活性成分に適合するビヒクル及び/又は賦形剤を指し、それらは本分野で公知されるもので(例えばレミントン薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、Genn
aro AR編集、第19版、ペンシルベニア州マック出版社(Pennsylvania: Mack Publishing Company)、1995を参照)、且つpH調節剤、界面活性剤、アジュバント、イオン強度増強剤を含むが、それらに限定される。例えば、pH調節剤は、リン酸塩緩衝液を含むが、それらに限定されない;界面活性剤は、陽イオン、陰イオンまたは非イオン系界面活性剤、例えばTween-80を含むが、それらに限定されない;イオン強度増強剤は、塩化ナトリウムを含むが、それらに限定されない。
用語の「有効量」とは、被験者において本発明に記載の疾患または病症を治療、予防、軽減及び/又は緩和できる投与量を指す。
用語の「疾患及び/又は病症」とは、本発明に記載の疾患及び/又は病症に関わる前記被験者の身体状態を指す。
用語の「被験者」または「患者」とは、患者、或いは本発明に記載の疾患または病症を治療、予防、軽減及び/又は緩和するために本発明にかかる医薬組成物を受ける他の動物、特に例えばヒト、イヌ、サル、ウシ、ウマのような哺乳動物を指してもよい。
用語の「キメラ抗原受容体」(CAR)とは、腫瘍細胞表面抗原を認識する特異的な分子(例えば抗体)を免疫細胞(例えばT細胞)にアンカーし、免疫細胞が腫瘍抗原またはウイルス抗原を認識して腫瘍細胞またはウイルスに感染された細胞を殺傷できるようにする人工的に改変された受容体である。CARは通常、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、腫瘍細胞膜抗原に結合する一本鎖抗体のようなポリペプチドと、ヒンジ領域と、膜貫通領域と、細胞内シグナル領域と、を順次に含む。通常、腫瘍細胞膜抗原に結合するポリペプチドは、中等の親和力で腫瘍細胞に広範に発現される膜抗原に結合できる。腫瘍細胞膜抗原に結合するポリペプチドは、天然ポリペプチドであっても、人工的に合成されるポリペプチドであってもよい;好ましくは、人工的に合成されるポリペプチドは一本鎖抗体またはFab断片である。
用語の「一本鎖抗体」(scFv)とは、抗体軽鎖可変領域(VL領域)アミノ酸配列と重鎖可変領域(VH領域)アミノ酸配列とがヒンジを介して連結されてなるもので、抗
原結合能を有する抗体断片を指す。ある実施形態において、目的の一本鎖抗体(scFv)は目的の抗体から由来するものである。目的の抗体は、ヒト・マウスキメラ抗体とヒト化抗体を含むヒト抗体であってもよい。抗体は分泌型であっても、膜結合型であってもよい;膜結合型が好ましい。
用語の「作動可能に連結される」または「作動可能に連結する」とは、DNA調節配列(例えばエンハンサー、プロモーター等)が、目的のタンパク質のコード配列の発現を可能にするように該コード配列と連結することを指す。
【0063】
1、突然変異型Fcフラグメント
研究によって示されたように、PD-1アンタゴニスト抗体やCD40アゴニスト抗体などのIgG4 Fcフラグメントは、単球/マクロファージによって容易に認識され貪食されるが、本発明は、該IgG4 Fcフラグメントについて塩基突然変異改変を行うことで、T細胞自身で発現する抗体はADCC応答を引き起こすことなく良好に機能できるようになる。
具体的には、本発明の例示的なIgG4 Fcフラグメントは、配列番号1の269~497位のアミノ酸残基に示される配列を有するもので、ただし、野生型のIgG4 Fcフラグメント(配列番号25)に比べて、本発明のIgG4 Fcフラグメントは17位でLからEへの突然変異が生じ、79位でNからQへの突然変異が生じた。
【0064】
本発明は、他の抗体または免疫グロブリン種類から由来し、IgG4 Fc(配列番号25)の17位に相応する位置でのアミノ酸残基がEへ突然変異し、且つ79位に相応する位置でのアミノ酸残基がQへ突然変異したFcフラグメントも含む。前記抗体または免疫グロブリン(Ig)種類は、本分野で周知されるIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEを含むが、それらに限定されず、ただし、前記IgGはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含み;IgAはIgA1およびlgA2を含む。よって、ある実施形態において、本発明は、配列番号25に示されるIgG4 Fcフラグメントの17位に相応する位置でのアミノ酸残基がEであり、79位に相応する位置でのアミノ酸残基がQである突然変異型抗体Fcフラグメントを適用する。ある実施形態において、本発明は膜結合型Igの突然変異Fcフラグメントを適用する。
【0065】
ある実施形態において、本発明は配列番号1の269~497位のアミノ酸残基に示されるFcフラグメントを適用し、その例示的なコード配列は配列番号2の805~1491位の塩基配列に示される。
【0066】
2、抗原結合配列
本文において、用語の「抗原結合配列」は、抗原と特異的に結合できる抗体またはその抗原結合断片、例えば一本鎖抗体も含むが、腫瘍微小環境で機能するタンパク質のリガンドまたは該タンパク質に結合するその断片も含む。
【0067】
本発明に適用されるCAR-T細胞が発現する抗体は、腫瘍治療に用いられる各種の抗体であってもよく、アゴニスト抗体とアンタゴニスト抗体を含む。
【0068】
本発明に適用されるアゴニスト抗体は、本分野で周知される各種のアゴニスト抗体であってもよく、下記抗原に対する抗体を含むが、それらに限定されない:CD28、CD137、CD134、CD40、CD40L、ICOS、HVEM、CD2、CD27、CD30、GITR、LIGHT、DR3、SLAM、CD226、CD80およびCD86。ある実施形態において、本発明に適用されるアゴニスト抗体はCD40の抗体である。好ましくは、前記CD40抗体は一本鎖抗体である。例示的なCD40一本鎖抗体の軽鎖可変領域(VL領域)アミノ酸配列は配列番号1の21~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の60~438位の塩基配列に
示されるものである;例示的なCD40一本鎖抗体の重鎖可変領域(VH領域)アミノ酸配列は配列番号1の161~268位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の481~804位の塩基配列に示されるものである。前記軽鎖可変領域と重鎖可変領域はGSを含有するヒンジ領域によって連結されてもよく、例示的なヒンジ領域の配列は、配列番号1の147~160位のアミノ酸残基に示されるものである。ある実施形態において、本発明に適用されるCD40一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~268位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の60~804位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0069】
本発明に適用されるアンタゴニスト抗体は、本分野で周知される各種の免疫チェックポイントアンタゴニスト抗体、例えば下記抗原に対する抗体を含むが、それらに限定されない:PD-1、CTLA4、PDL1、PDL2、PDL3、TIM3、LAG3、CD47、BTLA、TIGIT、CD160、LAIR1、B7-H1、B7-1、VSIRおよびCD244。ある実施形態において、本発明に適用されるアンタゴニスト抗体はPD-1またはCD47の抗体である。ある実施形態において、前記PD-1抗体は一本鎖抗体である。例示的なPD-1一本鎖抗体の軽鎖可変領域(VL領域)アミノ酸配列は配列番号3の21~131位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号4の60~393位の塩基配列に示されるものである;例示的なPD-1一本鎖抗体の重鎖可変領域(VH領域)アミノ酸配列は配列番号3の147~266位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号4の439~798位の塩基配列に示されるものである。前記軽鎖可変領域と重鎖可変領域はGSを含有するヒンジ領域によって連結されてもよく、例示的なヒンジ領域の配列は、配列番号3の132~146位のアミノ酸残基に示されるものである。ある実施形態において、本発明に適用されるPD-1一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~266位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号4の60~798位のアミノ酸残基に示されるものである。
【0070】
ある実施形態において、本文に適用される抗原結合配列は、腫瘍微小環境で機能する(例えば腫瘍細胞の成長と移動、貪食逃避等に関連する)タンパク質のリガンド、特に癌細胞表面に発現されるCD47のようなタンパク質のリガンドである。ある実施形態において、本発明に適用されるCD47リガンドのアミノ酸配列は配列番号5の21~138位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号6の60~414位の塩基配列に示されるものである。
【0071】
3、CAR-T細胞が発現する抗体
本発明において、CAR-T細胞によって発現される抗体は通常、本文に記載の抗原結合配列および前記突然変異型Fcフラグメントを含む。両者は直接に連結してもよく、或いは適切なリンカーを介して互いに結合しても良い。
【0072】
ある実施形態において、本発明の抗体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体と、および本文に記載の突然変異型Fcフラグメントとを含む。例えば、本発明の抗体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、下記抗原に対する抗体から選ばれるものと、および本文に記載の突然変異型Fcフラグメントとを含む:CD28、CD137、CD134、CD40、CD40L、ICOS、HVEM、CD2、CD27、CD30、GITR、LIGHT、DR3、SLAM、CD226、CD80およびCD86。或いは、本発明の抗体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、下記抗原に対する抗体から選ばれるものと、および本文に記載の突然変異型Fcフラグメントとを含む:PD-1、CTLA4、PDL1、PDL2、PDL3、TIM3、LAG3、CD47、BTLA、TIGIT、CD160、LAIR1、B7-H1、B7-1、VSIRおよびCD244。好ましくは、前記抗原結合配列は、
前記抗原に対する抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなる一本鎖抗体であり、または癌細胞表面に発現されるタンパク質のリガンドである。
【0073】
ある実施形態において、前記抗体はさらにシグナルペプチド配列を含む。シグナルペプチドは、新たに合成されたタンパク質の分泌経路への輸送を誘導する短いペプチド鎖(長さが5~30個のアミノ酸)であり、一般的には、新たに合成されたポリペプチド鎖においてタンパク質の膜貫通輸送(位置決め)を指導するためのN-末端のアミノ酸配列(N末端に存在しない場合もある)を指し、タンパク質を細胞における異なる膜構造を含有する細胞内小器官内へ誘導する役割を担う。シグナルペプチドは、分泌型シグナルペプチドであっても、膜結合型シグナルペプチドであってもよい。
【0074】
適切なシグナルペプチドは何でも本発明に適用できる。ある実施形態において、シグナルペプチドはCD8シグナルペプチド、CD28シグナルペプチド、CD4シグナルペプチドまたは軽鎖シグナルペプチドであってもよい。ある実施形態において、本発明の抗体におけるシグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドであり、その例示的なアミノ酸配列は配列番号1の1~20位のアミノ酸残基に示されるものであり、例示的なコード配列は配列番号2の1~60位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、本発明の抗体におけるシグナルペプチドはCD8シグナルペプチドであり、その例示的なアミノ酸配列は配列番号7の1~21位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の1~63位の塩基配列に示されるものである;或いは、配列番号9の1~22位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の1~66位の塩基配列に示されるものである。
【0075】
ある実施形態において、本発明の抗体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、CD40一本鎖抗体と、本文に記載の突然変異型Fcフラグメントとを含むCD40抗体である;好ましくは、前記シグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドである;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の60~438位の塩基配列に示されるものである;好ましくは、前記CD40一本鎖抗体の重鎖可変領域(VH領域)アミノ酸配列は配列番号1の161~268位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の481~804位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、前記CD40一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号1の21~268位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の60~804位のアミノ酸残基に示されるものである。ある実施形態において、前記突然変異型Fcフラグメントのアミノ酸配列は配列番号1の269~497位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の805~1491位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、本発明のCD40抗体のアミノ酸配列は、配列番号1の21~497位に示されるもの、または配列番号1に示されるものであり、その例示的なコード配列は、配列番号2の60~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号2に示されるものである。
【0076】
ある実施形態において、本発明の抗体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、PD-1一本鎖抗体と、本文に記載の突然変異型Fcフラグメントとを含むPD-1抗体である;好ましくは、前記シグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドである;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号3の21~131位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号4の60~393位の塩基配列に示されるものである;好ましくは、前記PD-1一本鎖抗体の重鎖可変領域(VH領域)アミノ酸配列は配列番号3の147~266位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号4の439~798位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、前記PD-1一本鎖抗体のアミノ酸配列は配列番号3の2
1~266位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号4の60~798位のアミノ酸残基に示されるものである。ある実施形態において、前記突然変異型Fcフラグメントのアミノ酸配列は配列番号3の267~495位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号2の799~1485位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、本発明のPD-1抗体のアミノ酸配列は、配列番号3の21~495位に示されるもの、または配列番号3に示されるものであり、その例示的なコード配列は、配列番号4の60~1485位の塩基配列に示されるもの、または配列番号4に示されるものである。
【0077】
ある実施形態において、本発明の抗体は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、CD47のリガンド配列と、本文に記載の突然変異型Fcフラグメントとを含むCD47抗体である;好ましくは、シグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドである;好ましくは、前記リガンドのアミノ酸配列はアミノ酸配列の配列番号5の21~138位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号6の60~414位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、前記突然変異型Fcフラグメントのアミノ酸配列は配列番号5の139~367位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号6の415~1101位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、本発明のCD47抗体のアミノ酸配列は、配列番号5の21~367位に示されるもの、または配列番号5に示されるものであり、その例示的なコード配列は、配列番号6の60~1104位の塩基配列に示されるもの、または配列番号6に示されるものである。
【0078】
4、キメラ抗原受容体(CAR)
本発明は、T細胞で発現できる任意のキメラ抗原受容体に関し、下記抗原の1種または多種に対する、標的とする、または特異的に結合するキメラ抗原受容体を含むが、それらに限定されない:CD19、CD20、CEA、GD2(B4GALNT1、β1,4-アセチル-アミノガラクトシルトランスフェラーゼ1とも呼ばれる)、FR(フラビンレダクターゼ)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、PMEL(プレメラノソームタンパク質)、CA9(炭酸脱水酵素IX)、CD171/L1-CAM、IL-13Rα2、MART-1(ムチン-Aとも呼ばれる)、ERBB2、NY-ESO-1(CTAG1B、癌/精巣抗原1Bとも呼ばれる)、MAGE(黒色腫関連抗原E1)ファミリータンパク質、BAGE(B黒色腫抗原ファミリー)ファミリータンパク質、GAGE(成長ホルモン放出因子)ファミリータンパク質、AFP(α-フェトプロテイン)、MUC1(ムチン1、細胞表面関連)、CD22、CD23、CD30、CD33、CD44v7/8、CD70、VEGFR1、VEGFR2、IL-11Rα、EGP-2、EGP-40、FBP、GD3(ST8SIA1、ST8α-N-アセチル-セラミドα-2、8-シアル酸転移酵素1とも呼ばれる)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、FSA(KIAA1109とも呼ばれる)、PSA(KLK3、カリクレイン関連ペプチダーゼ3とも呼ばれる)、HMGA2、胎児型アセチルコリン受容体、LeY(FUT3とも呼ばれる)、EpCAM、MSLN(メソセリン)、IGFR1、EGFR、EGFRvIII、ERBB3、ERBB4、CA125(MUC16、ムチン16とも呼ばれる、細胞表面関連)、CA15-3、CA19-9、CA72-4、CA242、CA50、CYFRA21-1、SCC(SERPINB3とも呼ばれる)、AFU(FUCA1とも呼ばれる)、EBV-VCA、POA(VDR、ビタミンD(1,25-ジヒドロビタミンD3)受容体とも呼ばれる)、β2-MG(β-2-ミクログロブリン)およびPROGRP(GRPガストリン放出ペプチド)。
【0079】
本発明のキメラ抗原受容体は通常、任意に含まれてもよいシグナルペプチド配列と、抗原認識領域と、ヒンジ領域と、膜貫通領域と、細胞内共刺激シグナル領域と、細胞内シグナル領域とを含む。
【0080】
本発明に適用されるキメラ抗原受容体におけるシグナルペプチドは、以上に説明されたように、分泌型シグナルペプチドであっても、膜結合型シグナルペプチドであってもよく、CD8シグナルペプチド、CD28シグナルペプチド、CD4シグナルペプチドおよび軽鎖シグナルペプチドを含むが、それらに限定されない。ある実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体におけるシグナルペプチドは軽鎖シグナルペプチドであり、その例示的なアミノ酸配列は配列番号11の1~20位のアミノ酸残基に示されるものであり、例示的なコード配列は配列番号12の1~60位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、本発明の抗体におけるシグナルペプチドはCD8シグナルペプチドであり、その例示的なアミノ酸配列は配列番号7の1~21位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の1~63位の塩基配列に示されるものである;或いは、配列番号9の1~22位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の1~66位の塩基配列に示されるものである。
【0081】
抗原認識領域は一本鎖抗体(scFv)であってもよい。一本鎖抗体は、本分野で常用の標的抗原を認識するscFvであってもよく、以上に記載の抗原の1種または多種を認識する、標的とする、または特異的に結合する抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなるscFvを含むが、それらに限定されない。ある実施形態において、本発明の標的抗原を認識するアミノ酸配列は、CD19、メソテリン、EGFRまたはムチンを認識する、標的とする、または特異的に結合する一本鎖抗体である。ある実施形態において、本発明の抗原認識領域は、ErbB受容体ファミリーを標的とするアミノ酸配列からなるものである。
【0082】
例えば、CD19を認識する一本鎖抗体の軽鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号7の22~128位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の64~384位の塩基配列に示されるものである。CD19を認識する一本鎖抗体の重鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号7の144~263位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の430~789位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、CD19を認識する一本鎖抗体の例示的なアミノ酸配列は配列番号7の22~263位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の64~789位の塩基配列に示されるものである。
【0083】
メソテリン抗原を認識する例示的なscFvは、本分野で周知されるメソテリン抗原に対する一本鎖抗体であってもよい。好ましくは、該一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と重鎖可変領域アミノ酸配列は、メソテリンの膜近傍末端のアミノ酸配列に対する抗体から由来するものである。好ましくは、本文に記載の抗メソテリン一本鎖抗体は、メソテリンの領域IまたはIIIに対する一本鎖抗体である。好ましくは、該一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と重鎖可変領域アミノ酸配列は、メソテリンの領域IまたはIIIのアミノ酸配列に対する抗体から由来するものである。ある実施形態において、メソテリン領域Iのアミノ酸配列は配列番号21に示されるものであり;メソテリン領域IIIのアミノ酸配列は配列番号22に示されるものである。抗メソテリン領域I一本鎖抗体の例示的なアミノ酸配列は配列番号23に示されるものである。抗メソテリン領域III一本鎖抗体の軽鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号9の23~146位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の67~438位のヌクレオチド配列に示されるものである;抗メソテリン領域III一本鎖抗体の重鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号9の162~272位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の484~816位のヌクレオチド配列に示されるものである。ある実施形態において、本発明に記載のメソテリン抗原を認識するscFvのアミノ酸配列は配列番号9の23~272位のアミノ酸残基に示される
ものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の67~816位の塩基配列に示されるものである。本文において、特に断らない限り、メソテリンとは、膜にアンカーしているメソテリン断片を指す。
【0084】
本発明において、例示的なErbB受容体ファミリーを標的とする抗原認識領域は、天然のT1Eとヘリンの融合タンパク質を含む。本文において、T1Eは、ヒトトランスフォーミング成長因子α(TGFα)N末端の7個のアミノ酸と、上皮成長因子(EGF)C末端の48個のアミノ酸からなるキメラポリペプチドである。好ましくは、T1Eのアミノ酸配列は配列番号13の23~77位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号14の67~231位の塩基配列に示されるものである。本文において、ヘリンとは、ハースタチンの8番目のイントロンによってコードされる79個のアミノ酸を指す。好ましくは、そのアミノ酸配列は配列番号13の93~171位のアミノ酸残基に示されるものである。本発明は、ヘリンアミノ酸をコードするコドンを最適化する。よって、本発明にとって好ましいヘリンのヌクレオチド配列は、配列番号14の277~513位の塩基配列に示されるものである。通常、T1Eとヘリンは剛直リンカー配列を介して連結できる。剛直リンカー配列の例示的な一例は、EAAAKを単位とする2つまたは複数の反復配列であり、本文ではEAAAKリンカーとも呼ばれる。例示的な剛直リンカー配列は配列番号13の78~92位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号14の232~276位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、本文に記載の抗原認識領域は配列番号13の23~171位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号14の67~513位の塩基配列に示されるものである。
【0085】
本発明において、ムチン(Muc1)抗原を認識する例示的な抗原認識領域は、ムチンのscFvであってもよく、該一本鎖抗体は、本分野で周知されるMuc1抗原に対する一本鎖抗体であってもよい。ある実施形態において、該一本鎖抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と重鎖可変領域アミノ酸配列は、Muc1の膜近傍末端のアミノ酸配列に対する抗体から由来するものである。ある実施形態において、該Muc1の膜近傍末端のアミノ酸配列は配列番号24に示されるものである。抗Muc1一本鎖抗体の軽鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号15の23~133位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号16の67~399位の塩基配列に示されるものである。抗Muc1一本鎖抗体の重鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号15の149~269位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号16の445~809位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、ムチン抗原を認識する一本鎖抗体の例示的なアミノ酸配列は配列番号15の23~269位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号16の67~807位の塩基配列に示されるものである。
【0086】
本発明において、EGFRを認識する例示的な抗原認識領域は、EGFR特異的抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域からなる一本鎖抗体であってもよく、該一本鎖抗体は、本分野で周知されるEGFRに対する一本鎖抗体であってもよい。EGFRを認識する一本鎖抗体の軽鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号17の23~129位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号18の67~387位の塩基配列に示されるものである。EGFRを認識する一本鎖抗体の重鎖可変領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号17の145~263位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号18の433~789位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、EGFRを認識する一本鎖抗体の例示的なアミノ酸配列は配列番号17の23~263位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号18の67~789位のヌクレオチド配列に示されるものである。
【0087】
本文において、ヒンジ領域とは、免疫グロブリン重鎖CH1とCH2機能領域の間の領域を指し、該領域は豊富なプロリンを含有し、αヘリックスを形成せず、伸長やある程度の歪みを起こしやすく、抗体の抗原結合部位と抗原エピトープとの間の相補的結合に有利である。本文に適用されるヒンジ領域は、CD8の細胞外ヒンジ領域、IgG1 Fc CH2CH3ヒンジ領域、IgDヒンジ領域、CD28の細胞外ヒンジ領域、IgG4 Fc CH2CH3ヒンジ領域およびCD4の細胞外ヒンジ領域から選ばれる任意の1種または多種であってもよい。ヒンジ領域は、長さが50個のアミノ酸残基以上のヒンジ領域が好ましく、長さが80個のアミノ酸残基以上のヒンジ領域がより好ましい。ある実施形態において、本文はCD8αヒンジ領域またはIgG4 Fc CH2CH3ヒンジ領域を適用する。ある実施形態において、CD8αヒンジ領域のアミノ酸配列は配列番号7の264~308位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の790~924位の塩基配列に示されるものである;他の実施形態において、CD8αヒンジ領域のアミノ酸配列は配列番号17の264~318位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号18の790~954位の塩基配列に示されるものである。IgG4 CH2CH3ヒンジ領域の例示的なアミノ酸配列は配列番号9の273~500位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の817~1500位の塩基配列に示されるものである。
【0088】
膜貫通領域は、CD28膜貫通領域、CD8膜貫通領域、CD3ζ膜貫通領域、CD134膜貫通領域、CD137膜貫通領域、ICOS膜貫通領域およびDAP10膜貫通領域の中の1種であってもよい。ある実施形態において、膜貫通領域はCD8膜貫通領域であり、その例示的なアミノ酸配列は配列番号7の309~332位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列配列番号8の925~996位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、CD8膜貫通領域のアミノ酸配列は配列番号17の319~344位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号18の955~1032位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、膜貫通領域はCD28膜貫通領域であり、そのアミノ酸配列は配列番号9の501~528位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列配列番号8の1501~1584位の塩基配列に示されるものである。
【0089】
細胞内共刺激シグナル領域は、CD28、CD134/OX40、CD137/4-1BB、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)およびDNAX活性化タンパク質10(DAP10)の細胞内ドメインから選ばれる共刺激シグナル分子の細胞内ドメインを含む。ある実施形態において、共刺激シグナル分子の細胞内ドメインはCD137/4-1BBの細胞内ドメインである;好ましくは、前記CD137/4-1BBのアミノ酸配列は配列番号7の333~374位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の997~1122位の塩基配列に示されるものである。ある実施形態において、細胞内共刺激シグナル領域はCD28細胞内ドメインであり、その例示的なアミノ酸配列は配列番号9の529~569位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列配列番号10の1585~1707位の塩基配列に示されるものである。
【0090】
細胞内シグナル領域は、免疫受容体チロシン活性化モチーフが好ましく、CD3ζ細胞内シグナル領域またはFcεRIγ細胞内シグナル領域であってもよく、CD3ζ細胞内シグナル領域が好ましい;好ましくは、前記CD3ζ細胞内シグナル領域のアミノ酸配列は配列番号7の375~486位のアミノ酸残基に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の1123~1458位の塩基配列に示されるものである。
【0091】
ある実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体はN末端からC末端まで、任意に含まれてもよいシグナルペプチド配列と、抗原認識領域と、CD8αヒンジ領域若しくはI
gG4 CH2CH3ヒンジ領域と、CD8膜貫通領域若しくはCD28膜貫通領域と、4-1BB若しくはCD28の細胞内ドメインと、およびCD3ζ細胞内シグナル領域と、を順次に含む。好ましくは、本発明のキメラ抗原受容体は:そのアミノ酸配列は配列番号7の22~486位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号7に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号8の64~1458位の塩基配列に示されるもの、または配列番号8に示されるものである、CD19を標的とするキメラ抗原受容体;そのアミノ酸配列は配列番号9の23~681位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号9に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号10の67~2043位の塩基配列に示されるもの、または配列番号10に示されるものであり、或いは、そのアミノ酸配列は配列番号11の21~679位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号11に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号12の61~2037位の塩基配列に示されるもの、または配列番号12に示されるものである、メソテリンを標的とするキメラ抗原受容体;そのアミノ酸配列は配列番号13の23~580位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号13に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号14の67~1740位の塩基配列に示されるもの、または配列番号14に示されるものである、ErbBファミリーを標的とする抗原認識領域;そのアミノ酸配列は配列番号15の23~678位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号15に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号16の67~2034位の塩基配列に示されるもの、または配列番号16に示されるものである、ムチンを標的とするキメラ抗原受容体;或いは、そのアミノ酸配列は配列番号17の23~497位のアミノ酸残基に示されるもの、または配列番号17に示されるものであり、その例示的なコード配列は配列番号18の67~1491位の塩基配列に示されるもの、または配列番号18に示されるものである、EGFRを標的とするキメラ抗原受容体。
【0092】
本文のキメラ抗原受容体を形成するシグナルペプチド、抗Muc1一本鎖抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域、ヒンジ領域、膜貫通領域、細胞内共刺激シグナル領域および細胞内シグナル領域等の上記各部分は、互いに直接に連結してもよいが、リンカー配列を介して連結してもよい。リンカー配列は、抗体に適切に用いられる本分野で周知されるリンカー配列、例えばGおよびSを含有するリンカー配列であってもよい。リンカーの長さは3~25個のアミノ酸残基、例えば3~15、5~15、10~20個のアミノ酸残基であってもよい。ある実施形態において、リンカー配列はポリグリシンリンカー配列である。リンカー配列におけるグリシンの数は特に制限されないが、通常は2~20個、例えば2~15、2~10、2~8個である。グリシンとセリンの他に、リンカーはさらに他の既知のアミノ酸残基、例えばアラニン(A)、ロイシン(L)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)等を含んでも良い。
【0093】
5、核酸配列、核酸構築物およびベクター並びにそれらの製造方法
本発明は、本文に記載の抗体のコード配列またはその相補的配列である核酸配列も含む。核酸配列は、DNA形態またはRNA形態であってもよい。DNAは一本鎖または二本鎖であってもよい。
【0094】
より具体的には、本発明は、任意に含まれてもよいシグナルペプチドと、本文に記載の抗原結合配列と、前記突然変異型Fcフラグメントを含む抗体のコード配列またはその相補的配列を含む。例示的なコード配列は、配列番号2またはその60~1491位の塩基配列に示されるコード配列;配列番号4またはその60~1485位の塩基配列に示されるコード配列;及び配列番号6またはその60~1104位の塩基配列に示されるコード配列を含むが、それらに限定されない。
【0095】
本発明は、本文に記載のキメラ抗原受容体のコード配列またはその相補的配列も含む。
例示的なキメラ抗原受容体のコード配列は、N末端からC末端まで、任意に含まれてもよいシグナルペプチド配列と、抗原認識領域と、CD8αヒンジ領域若しくはIgG4 CH2CH3ヒンジ領域と、CD8膜貫通領域若しくはCD28膜貫通領域と、4-1BB若しくはCD28の細胞内ドメインと、およびCD3ζ細胞内シグナル領域と、を順次に含むキメラ抗原受容体をコードするコード配列。例示的なコード配列は、配列番号8またはその64~1458位の塩基配列に示されるコード配列、配列番号10またはその67~2043位の塩基配列に示されるコード配列、配列番号12またはその61~2037位の塩基配列に示されるコード配列、配列番号14またはその67~1740位の塩基配列に示されるコード配列、配列番号16またはその67~2034位の塩基配列に示されるコード配列、および配列番号18またはその67~1491位の塩基配列に示されるコード配列を含む。
【0096】
本発明は、本発明に記載の抗体またはキメラ抗原受容体のコード配列またはその相補的配列を含む核酸構築物も含む。
【0097】
ある実施形態において、前記核酸構築物は、作動可能に連結されるプロモーター配列と、抗体またはキメラ抗原受容体のコード配列またはその相補的配列と、任意に含まれてもよいポリアデニル化シグナル配列とを含む発現フレームである。プロモーター配列は通常、本文に記載のコード配列と作動可能に連結される。プロモーターは、選択される宿主細胞中で転写活性を示す任意のヌクレオチド配列であってもよく、突然変異プロモーター、短く切断されたプロモーターおよびヘテロプロモーターを含み、且つ該宿主細胞と同種または異種の細胞外または細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から獲得できる。発現フレームは通常、宿主細胞によって認識されて転写を終結させる配列である転写ターミネーター配列を含む。ターミネーター配列は、本文に記載のコード配列の3’末端と作動可能に連結される。選択される宿主細胞中で機能するターミネーターは何でも本発明に適用できる。
【0098】
ある実施形態において、前記核酸構築物はベクターである。ベクターの種類は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを含むが、それらに限定されない。ベクターは発現ベクターであってもよいが、真核発現ベクターが好ましい。発現ベクターはウイルスベクターとして細胞に提供することができる。ベクターに用いられるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスを含むが、それらに限定されない。ベクターは前記コード配列またはその相補的配列を宿主細胞へ組み込むための組み込みベクターであってもよい。
【0099】
適切なベクターは通常、少なくとも1種の有機体中で機能する複製起点と、プロモーター配列と、便利な制限酵素部位、および1つまたは複数の選択的なマーカーと、を含む。例えば、ある実施形態において、本発明は、複製開始部位と、3’LTRと、5’LTRと、本文に記載の抗体またはキメラ抗原受容体のコード配列と、および任意の選択的なマーカーとを含むレトロウイルスベクターを適用する。
【0100】
本文において、適切なプロモーターは、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列を含むが、それに限定されない。該プロモーター配列は、それと作動可能に連結される任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動できる強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターのもう一つの例は伸長因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、EBウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、およびヒト遺伝子プロモーター、例えばアクチニンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーターとクレアチ
ンキナーゼプロモーターを含む他の構成的プロモーター配列も適用できるが、それらに限定されない。さらに、誘導型プロモーターの適用も考えられる。誘導型プロモーターの適用は、発現が望ましい場合に誘導型プロモーターと作動可能に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、発現が望ましくない場合に発現をオフにすることのできる分子スイッチを提供する。誘導型プロモーターの例は、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターを含むが、それらに限定されない。
【0101】
ある実施形態において、CN201510021408.1に開示された各種のプロモーター配列を適用でき、該出願の配列番号5に示されるmCMVエンハンサー、hCMVエンハンサーとEF1αプロモーターを含むCCEFプロモーター;配列番号7に示されるCD3eエンハンサー、mCMVエンハンサー、hCMVエンハンサーとEF1αプロモーターを含むTCEFプロモーター;配列番号8に示されるmCMVエンハンサー、hCMVエンハンサーとイントロン含有EF1αプロモーターを含むCCEFIプロモーター;配列番号3に示される含CD3eエンハンサーとイントロン含有EF1αプロモーターを含むTEFIプロモーター;並びに配列番号3に示される含CD3eエンハンサー、mCMVエンハンサー、hCMVエンハンサーとイントロン含有EF1αプロモーターを含むTCEFIプロモーターを含むが、それらに限定されない。該出願の全内容は、参照により本文に組み込まれる。
【0102】
選択的なマーカーは、ウイルスベクターに感染された細胞群から発現細胞を容易に同定・選択できるように、選択的なマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のいずれか一方または両方を含む。有用な選択的なマーカー遺伝子は、例えばneo等のような抗生物質耐性遺伝子を含む。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼまたは緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子を含む。
【0103】
ある実施形態において、本文に記載のキメラ抗原受容体のコード配列と前記抗体のコード配列をそれぞれ、標的核酸配列を宿主細胞のゲノムに組み込むためのベクター(組み込みベクターとも呼ばれる)、特にトランスポゾンベクターにクローンしてもよい。ある実施形態において、該トランスポゾンベクターは、piggybac、sleeping beauty、frog prince、Tn5またはTyから選ばれる転置因子を含む真核発現ベクターである。このようなトランスポゾンベクターは、相応のトランスポゾンの5’逆位末端反復配列(5’LTR)と、相応のトランスポゾンの3’逆位末端反復配列(3’LTR)とを含む。トランスポザーゼは、piggybac、sleeping
beauty、frog prince、Tn5またはTyトランスポゾンシステムから由来するトランスポザーゼであってもよい。異なるトランスポゾンシステムから由来するトランスポザーゼを適用する場合、前記ベクターにおける5’LTRと3’LTRの配列も相応に該トランスポゾンシステムに適合な配列に変更され、これは当業者によって容易に決定できる。ある実施形態において、5’LTRt3’LTRの間には、相応のプロモーター配列と、CARまたは抗体のコード配列と、ポリアデニル化シグナル配列とを含む本発明のCARまたは抗体の発現フレームがある。
【0104】
ある実施形態において、トランスポザーゼはpiggybacトランスポゾンシステムから由来するトランスポザーゼである。よって、これらの実施形態において、トランスポゾンの5’逆位末端反復配列と3’逆位末端反復配列はそれぞれ、piggybacトランスポゾンの5’逆位末端反復配列と3’逆位末端反復配列である。ある実施形態において、トランスポゾンの5’逆位末端反復配列はCN 201510638974.7(その内容は参照により本文に組み込まれる)の配列番号1に示されるものである。ある実施形態において、トランスポゾンの3’逆位末端反復配列はCN 20151063897
4.7の配列番号4に示されるものである。ある実施形態において、piggybacトランスポザーゼはc-myc核局在化シグナルコード配列を含むトランスポザーゼである。ある実施形態において、piggybacトランスポザーゼのコード配列はCN 201510638974.7の配列番号5に示されるものである。
【0105】
トランスポザーゼコード配列のプロモーターは、本分野で公知のトランスポザーゼコード配列の発現制御用の各種のプロモーターであってもよい。ある実施形態において、CMVプロモーターでトランスポザーゼコード配列の発現を制御する。CMVプロモーターの配列はCN 201510638974.7の配列番号6に示されるものである。
【0106】
ある実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体のコード配列を含むベクターは、CN 201510638974.7に開示されたpNB328ベクターである。本分野の常法を用いて、本発明のキメラ抗原受容体のコード配列を製造し、且つそれを適切なベクターにクローンすることができる。
【0107】
ある実施形態において、標的遺伝子を宿主細胞のゲノムに組み込むための前記ベクターはトランスポザーゼコード配列を含まない。例えば、pNB328ベクターを元に、トランスポザーゼコード配列を除去すると、このようなベクターを獲得できる。通常、このようなベクターを用いて本発明に記載の抗体の発現フレームを宿主細胞のゲノムに組み込むことができる。
【0108】
本分野で周知される方法、例えばPCR増幅法を用いて、本文に記載の核酸配列を獲得できる。例えば、本文に開示されたヌクレオチド配列を根拠としてプライマーを設計し、且つ市販のcDNAライブラリーまたは当業者にとって既知の常法によって作製されるcDNAライブラリーを鋳型として、関連配列を増幅して獲得できる。配列が長い場合、2回又は複数回のPCR増幅を行い、その後に各回で増幅された断片を正確な順序でライゲートすることが多い。
【0109】
遺伝子クローニング操作では、適切な制限部位を設計することがしばしば必要であり、発現されるアミノ酸配列の末端に1つまたは複数の無関係な残基を必然的に導入するが、これは標的配列の活性に影響しないことは理解すべきである。融合タンパク質の構築、組換えタンパク質の発現の促進、宿主細胞外へ自動的に分泌される組換えタンパク質の取得、または組換えタンパク質の精製の便利化を目的として、組換えタンパク質のN-末端、C-末端、または該タンパク質における他の適切な領域内には、いくつかのアミノ酸を追加する必要がしばしばあり、例えば、適切なリンカーペプチド、シグナルペプチド、リーダーペプチド、末端伸長などが含まれるが、それらに限定されない。よって、本文のCARのアミノ末端またはカルボキシル末端はさらに、タンパク質タグとして、1つまたは複数のポリペプチド断片を含んでもよい。適切なタグは何でも本文に適用できる。例えば、前記タグはFLAG、HA、HA1、c-Myc、Poly-His、Poly-Arg、Strep-TagII、AU1、EE、T7、4A6、ε、B、gEおよびTy1であってもよい。これらのタグはタンパク質に対する精製に適用できる。
【0110】
6、宿主細胞およびその製造
本発明はさらに、本文に記載の核酸構築物を含む、または本文に記載の抗体及び/又はキメラ抗原受容体を発現する宿主細胞を提供する。
【0111】
本発明の宿主細胞は、本分野で周知される抗体の発現に適切な各種の細胞、例えば293またはCHO細胞であってもよい。このような宿主細胞は本文に記載の抗体の発現ベクターを含んでもよい。
【0112】
ある実施形態において、本発明の宿主細胞は、本文に記載の抗体とキメラ抗原受容体を同時に発現するための細胞であり、本文に記載の抗体とキメラ抗原受容体のコード配列または発現フレームを含み、好ましくは、そのゲノムには、2つの発現フレーム、即ち本文に記載の抗体の発現フレームとキメラ抗原受容体の発現フレームが組み込まれる。好ましくは、このような細胞はT細胞である。目的のT細胞は、末梢血Tリンパ球、細胞傷害性T細胞(CTL)、ヘルパーT細胞、サプレッサー/制御性T細胞、γδT細胞、およびサイトカイン誘導性キラー細胞(CIK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)等の混合細胞集団のT細胞を含むが、それらに限定されない。
【0113】
好ましくは、前記T細胞には、そのゲノムにキメラ抗原受容体の発現フレームを組み込むための、トランスポザーゼコード配列を含むベクターと、そのゲノムに本文に記載の抗体の発現フレームを組み込むための、トランスポザーゼコード配列を含まないベクターと、が導入された。より好ましくは、前記T細胞には、pNB328ベクターを骨格ベクターとして構築される、キメラ抗原受容体の発現フレームを含むベクターと、pS328ベクター(pNB328に比べてトランスポザーゼコード配列を含まないもの)を骨格ベクターとして構築される、本文に記載の抗体の発現フレームを含むベクターと、が導入された。ある実施形態において、T細胞のゲノムにキメラ抗原受容体の発現フレームを組み込むための、トランスポザーゼコード配列を含む前記ベクターは、5’LTRと、プロモーターと、CD8シグナルペプチドまたは軽鎖シグナルペプチドのコード配列と、抗原認識領域のコード配列と、CD8αヒンジ領域またはIgG4 CH2CH3ヒンジ領域のコード配列と、CD8またはCD28膜貫通領域のコード配列と、4-1BBまたはCD28細胞内ドメインのコード配列と、CD3ζ細胞内シグナル領域のコード配列と、ポリアデニル化シグナル配列と、3’LTRと、トランスポザーゼのコード配列およびそのプロモーターと、を順次に含む;T細胞のゲノムに本文に記載の抗体のコード配列を組み込むための、トランスポザーゼコード配列を含まない前記ベクターは、5’LTRと3’LTRの間に、プロモーターと、軽鎖シグナルペプチドまたはCD8シグナルペプチドのコード配列と、抗体のコード配列と、ポリアデニル化シグナル配列と、を順次に含む。好ましくは、前記抗原認識領域は、CD19、メソテリン、ムチン、EGFRまたはErbBファミリーを標的とする抗原認識領域であり、好ましくは、そのアミノ酸とコード配列は上記のようである。好ましくは、前記抗体は抗PD-1抗体、抗CD47抗体または抗CD40抗体であり、好ましくは、そのアミノ酸配列とコード配列は上記のようである。
【0114】
通常のトランスフェクション方法を用いて本発明のベクターを目的の細胞に導入することができ、これらの導入方法は、ウイルス形質導入、マイクロインジェクション、パーティクルボンバードメント、遺伝子銃形質転換およびエレクトロポレーションを含むが、それらに限定されない。ある実施形態において、エレクトロポレーションによって本文に記載のベクターを目的の細胞にトランスフェクトする。好ましくは、トランスフェクションの時、キメラ抗原受容体のコード配列を含むベクターと抗体のコード配列を含むベクターの質量比は1~7:1~7、例えば1~5:1~5、好ましくは1~3:1~3、より好ましくは1~2:1~2、さらに好ましくは1~2:1である。
【0115】
7、組成物とキット
本発明はさらに、本文に記載のベクターを含む、好ましくは本文に記載のキメラ抗原受容体を発現するベクターと本文に記載の抗体を発現するベクターを含む組成物を提供する。該組成物は、少なくともトランスフェクション用のベクターの提供のために用いられる。
【0116】
本発明の組成物において、本文に記載のキメラ抗原受容体を発現するベクターと本文に記載の抗体を発現するベクターの質量比は1~7:1~7、例えば1~5:1~5、好ましくは1~3:1~3、より好ましくは1~2:1~2、さらに好ましくは1~2:1で
ある。該組成物はさらに適切な試薬を含んでもよく、トランスフェクション用の試薬を含むが、それらに限定されない。
【0117】
本発明はさらに、本文に記載のキメラ抗原受容体を発現するベクターと本文に記載の抗体を発現するベクターを含むキット、或いは本文に記載の組成物を含むキットを提供する。キットにはさらに、前記ベクターを細胞に導入するための試薬及び/又は機器が配置されてもよい。
【0118】
本発明の組成物はさらに、本文に記載のT細胞或いは前記T細胞およびそれが発現する本文に記載の抗体を含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、適切な薬学的に許容されるビヒクルや補助剤を含んでもよい。適切なビヒクルや補助剤は、緩衝液や浸透圧調節剤等を含むが、それらに限定されない。医薬組成物は治療または予防有効量のT細胞を含む。患者の病状等の要素に応じてT細胞の治療または予防有効量を決定できる。
【0119】
8、方法と使用
本発明はさらに、本文に記載の抗体、そのコード配列または相補的配列、核酸構築物および宿主細胞の、悪性腫瘍を治療または予防するための薬物の製造における使用を提供する。前記腫瘍は、前記抗体と特異的に結合する抗原に関連する腫瘍を含むが、それらに限定されない。本発明はさらに、悪性腫瘍を治療または予防するための、本文に記載の抗体、そのコード配列または相補的配列、核酸構築物および宿主細胞を含む。
【0120】
本発明はさらに、本文に記載のT細胞、または前記T細胞およびそれが発現する抗体、またはその医薬組成物の、悪性腫瘍を治療または予防するための薬物の製造における使用を提供する。本発明はさらに、悪性腫瘍を治療または予防するための、本文に記載のT細胞、または前記T細胞およびそれが発現する抗体、またはその医薬組成物を含む。
【0121】
本発明はさらに、その必要のある対象に治療または予防有効量の本発明に記載のT細胞またはその医薬組成物を投与することを含む、悪性腫瘍を治療または予防する方法を提供する。
【0122】
本発明のT細胞、または前記T細胞およびそれが発現する抗体、またはその医薬組成物、または本発明に記載の方法によって治療または予防できる悪性腫瘍(癌)とは、前記T細胞が発現する抗体及び/又はキメラ抗原受容体により治療または予防できる悪性腫瘍であってもよい。例えば、キメラ抗原受容体はCD19を標的とするキメラ抗原受容体である場合、悪性腫瘍は悪性B細胞リンパ腫であってもよいが、急性Bリンパ性白血病(B-ALL)、慢性Bリンパ性白血病(B-CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)および多発性骨髄腫(MM)を含む。前記キメラ抗原受容体はメソテリンを標的とする場合、悪性腫瘍は、その癌細胞の表面でメソテリンが異常に発現されている癌であってもよいが、好ましくは腺癌、中皮腫、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、胆管癌、胆嚢癌、食道癌、黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、頭頸部扁平上皮癌、直腸癌、ホジキンリンパ腫、膵臓癌または前立腺癌であってもよい;より好ましくは、前記癌はメソテリンおよびCA125/MUC16が共に高発現される癌である。前記キメラ抗原受容体はErbBファミリーを標的する時、前記悪性腫瘍は、癌細胞の表面で少なくとも1つのEGFRファミリーメンバータンパク質が異常に発現される癌、例えば肝癌、腺癌、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、胆管癌、非小細胞癌、胆嚢癌、食道癌、黒色腫、膵臓癌、尿路上皮癌、頭頸部癌または前立腺癌であってもよい。前記キメラ抗原受容体はムチンを標的する時、前記悪性腫瘍は、癌細胞の表面でMuc1抗原が異常に発現される癌、例えば肝癌、腺癌、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、胆管癌、非小細胞癌、胆嚢癌、食道癌、黒色腫、膵臓癌、尿路上皮癌、頭頸部癌または前立腺癌であってもよい。前記キ
メラ抗原受容体はEGFRを標的する時、前記悪性腫瘍は、癌細胞の表面でEGFRが異常に発現される癌、例えばグリア細胞癌、腎臓癌、腺癌、肺癌、結腸癌、結腸直腸癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、胃癌、胆管癌、胆嚢癌、食道癌、膵臓癌または前立腺癌であってもよい。抗体がCD40抗体である場合、適切な悪性腫瘍は、CD40によって仲介される悪性腫瘍であり、非小細胞癌、黒色腫、尿路上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-およびH)および頭頸部癌などを含むが、それらに限定されない;抗体がPD-1抗体である場合、適切な悪性腫瘍は、PD-1によって仲介される悪性腫瘍であり、黒色腫、結腸癌、前立腺癌、非小細胞肺癌および腎臓細胞癌などの固形腫瘍を含むが、それらに限定されない。抗体がCD47抗体である場合、適切な悪性腫瘍は、癌細胞表面にCD47が発現される任意の腫瘍を含む。
【0123】
以下、実施例を参照して、本発明にかかる実施形態について詳細に説明する。当業者に理解されるように、以下の実施例は本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。実施例で技術や条件が具体的に示されていない場合、本分野の文献に記載の技術や条件(例えばJ.Sambrookらが編集し、Huang Peitangらが翻訳した「分子クローニング:実験マニュアル」、第3版、科学出版社を参照)、または製品の取扱説明書に従う。
【0124】
使用される試薬や機器は、メーカーが明記されない場合、いずれも市販されている普通の製品である。
【0125】
実施例1:組換えプラスミドの構築
上海Generay Biotech社に下表1に示される各外因性遺伝子(抗体またはCAR)の合成を依頼し、且つそれらの上流にマルチクローニング部位(BglII-XbaI-EcoRI-BamHI)を導入し、それらの下流に制限酵素切断部位(SalI-NheI-HindIII-SpeI)を導入し、それらをEcoR1+SalIで二重酵素切断されたpNB328ベクターまたはpS328ベクターに挿入し(pNB328の構造および配列はCN 201510638974.7を参照し、その全内容は参照により本文に組み込まれる;pNB328に比べて、pS328はトランスポザーゼコード配列が欠けている;キメラ抗原受容体の遺伝子はpNB328ベクターに挿入され、抗体の配列はpS328ベクターに挿入された)、組換えプラスミドを構築した。
【0126】
【表1】
*:配列番号19は2Aのヌクレオチド配列を示し、配列番号20はIRESのヌクレオチド配列を示す;前記外因性遺伝子配列のその他の部分の配列は表中の同じ名の外因性遺伝子の配列と同一である;
**:野生型IgG4Fc配列は配列番号25に示され、突然変異型IgG4Fcに比べて、L17E(CTGからGAGへの突然変異)、N79Q(AACからCAGへの突然変異)の突然変異が存在するが、その他の配列は同一である。
【0127】
実施例2:CAR-T細胞の構築
フィコール分離法を利用して、患者の血液から末梢血単核細胞(PBMC)を分離して獲得した。PBMCを2~4時間付着培養したが、付着しなかった浮遊細胞はナイーブT細胞であり、浮遊細胞を15ml遠心チューブに収集し、1200rpmで3分間遠心し、上澄を捨て、生理食塩水を加え、1200rpmで3分間遠心し、生理食塩水を捨て、そしてこのステップを繰り返した。
1.5ml遠心チューブを取り、5×106個の細胞を入れ、1200rpmで3分間遠心し、上澄を捨て、エレクトロポレーションキット(Lonza社より)を取り、エレ
クトロポレーション試薬を100ul加え、下表2に示すように異なる組換えプラスミドを加えた。細胞をそれぞれ再懸濁して均一に混合した;混合液をエレクトロポレーションカップに移し、エレクトロポレーターに入れ、所要なプログラムを選択し、電気ショックを与えた;キットのマイクロピペットを用いて、エレクトロポレーションされた細胞懸濁液を培地(2%FBSを含むAIM-V培養液)の入れた6ウェルプレ
ートに移し、均一に混合し、37℃、5%CO2インキュベーターに入れて培養し、6時間後に刺激因子IL-2、抗CD28抗体および相応の抗原(CD19、メソテリン、EGFRまたはムチン)または抗CD3抗体を加え、37℃、5%CO2で3~4日間培養し、相応のT細胞を獲得した。
2種類の組換えプラスミドを導入した場合、各種の組換えプラスミドの使用量を4ugとした;1種の組換えプラスミドのみを導入した場合,その使用量を6ugとした。
【0128】
【0129】
実施例3:CAR-T細胞の陽性率および抗体分泌
1、CAR-T細胞陽性率のフローサイトメトリーによる検出
実施例2で得られたCAR-T細胞を収集し、それぞれを一部分に1×106個の細胞の量で2つの部分に分け、生理食塩水で2回洗浄し、細胞を100ulの生理食塩水で再懸濁し、1つの部分には1ugのビオチン結合抗原(CD19、メソセリン、EGFRまたはムチン)を加え、もう1つの部分には加えず、4℃で30分間インキュベートした。生理食塩水で2回洗浄し、細胞をもう一回100ulの生理食塩水で再懸濁し、1ulのストレプトマイシン-PE抗体を加え、4℃で30分間インキュベートした。生理食塩水で2回洗浄し、第二抗体のみを加えたものを対照として機器で検出し、結果は下表3に示す。
【0130】
【0131】
2、実施例2で得られたCAR-T細胞の抗体発現量のELISAによる検出
[1] コーティング液で相応の抗原(CD40、PD1またはCD47)を0.5ug
/ml(5ul+1mlコーティング液)に希釈し、マイクロプレートを100ul/ウェルで4℃で一晩コーティングした。
[2] PBSTで5回、毎回3分間洗浄し、200ul/ウェルで吸水紙で叩いて乾燥させた。
[3]各ウェルにブロッキング液を100ul加え、37℃で1時間インキュベートした。
[4] PBSTで5回、毎回3分間洗浄し、200ul/ウェルで吸水紙で叩いて乾燥させた。
[5]サンプルと標準サンプルを100ul/ウェル加え、重複ウェルと対照ウェルを設け、37℃で1時間インキュベートした。
[6]PBSTで5回、毎回3分間洗浄し、200ul/ウェルで吸水紙で叩いて乾燥させた。
[7]ブロッキング液でIgG F4 HRPを100ul/ウェルで1:30000希釈し、37℃で45分間インキュベートした。
[8]PBSTで5回、毎回3分間洗浄し、200ul/ウェルで吸水紙で叩いて乾燥させた。
[9]発色液TMBを100ul/ウェル加え、37℃で遮光で10~15分間発色した。
[10] 停止液を50ul/ウェル加えて反応を停止した。
【0132】
マイクロプレートリーダーで450nmにおけるOD値を計測し、標準曲線をプロットし、CD40抗体濃度を算出した。結果は下表4に示す。
【0133】
【0134】
実施例4:異なるプラスミド配合でのテスト
実施例2の方法を採用して、実施例1で構築したプラスミドの組み合わせで、下表5に示される使用量配合(1ug+7ug、2ug+6ug、3ug+5ug、4ug+4ug、5ug+3ug、6ug+2ug、7ug+1ug)に従ってCAR-T細胞を構築した。実施例3に記載の方法を採用して、異なる使用量配合で構築したCAR T細胞の陽性率および抗体分泌量を計測した(方法は実施例3と同じであった)。
【0135】
【0136】
例示的な結果は下表6と7に示す。
【0137】
【0138】
【0139】
結果から分かるように、陽性率と抗体分泌量の結果を併せてみれば、5ugのpNB328-EHCAR-EK-28TIZと3ugのpS328-αCD40を用いて構築したEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞は、効果が最高であった(陽性率は60%を超え、抗体分泌量は230ng/mlを超えた);他のプラスミドの組み合わせの中で、4ug+4ugを用いた効果は良好であった。
【0140】
実施例5:CD19抗原による特異的刺激下でのCD19CARとCD19CAR-αCD40 T細胞のサイトカイン放出の対比
96ウェルプレートを2ug/mlのCD19抗原で4℃で一晩コーティングし、PB
Sで3回洗浄し、実施例2で構築したCD19CARとCD19CAR-αCD40 T細胞および対照としてのMock T細胞を1×10
5個加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。BD社のCBA Human Th1/Th2サイトカインキットIIにより、これらの3種類のT細胞がCD19抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ヒトIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ捕捉磁気ビーズを混合し、渦励振盪で捕捉磁気ビーズを均一に混合し、チューブ毎に均一に混合された磁気ビーズを50ul入れた;
(2)50ulのヒトTh1/Th2サイトカイン標準サンプル(倍加希釈5000pg/ml、2500pg/ml、1250pg/ml、625pg/ml、312.5pg/ml、156pg/ml、80pg/ml、40pg/ml、20pg/ml、0pg/ml)および50ulの被験サンプル(希釈剤で2倍に希釈されたもの)を加えた;
(3)チューブ毎にヒトTh1/Th2-II-PE検出抗体を50ul加えた;
(4)室温で遮光で3時間インキュベートした;
(5)チューブ毎に洗浄緩衝液を1ml加え、200で5分間遠心し、上澄を捨てた;
(6)チューブ毎に洗浄緩衝液を300ul加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで蛍光値を検出した。
結果は
図1に示す。
【0141】
実施例6:CD19CARおよびCD19CAR-αCD40 T細胞増殖アッセイ
実施例2で構築して8日目に培養したCD19CAR T細胞、CD19CAR -αCD40 T細胞およびMock T細胞をそれぞれ3×10
5個の細胞を取り、12ウェルプレートに置いて、いずれも1mlの培養体積で培養した。
2. 白色で非透光性の96ウェルプレートを用意し、3群の細胞からそれぞれ細胞含有培養液を100μL取って、異なるウェルに加えたと共に、細胞非含有培養液を取って、空白対照とした。次に、各ウェルに100μLのCellTiter-Glo試薬を加え、シェーカーで2分間均一に混合し、室温で10分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーでLuc蛍光値を読み取った。使用されたCellTiter-Glo発光細胞生存試験(Luminescent Cell Viability Assay)キットはPromega社から購入した。
3. 培養の9、10、11、12、13日目に、毎日12ウェルプレートで培養された細胞からサンプリングし、上記の手順で検出し、蛍光値に基づいて細胞増殖曲線をプロットした。
結果から分かるように、CD19CAR-αCD40 T細胞はCD19CAR T細胞よりも良好な増殖効果を有し、具体的な結果は
図2に示す。
【0142】
実施例7:CD19CAR T細胞およびCD19CAR-αCD40 T細胞のインビボ機能実験
実験では、北京Biosafety Biotechnology社より提供され、SPFレベルの動物実験室で飼育された4~6週齢の平均体重22~27gの12匹のNSG完全免疫不全マウスが使用された。
ヒトB細胞リンパ腫Raji-luc細胞をインビトロで培養し、対数増殖期にある増殖細胞を取り、遠心して細胞を収集した後、PBS液で再懸濁し、3000gで室温で2分間遠心し、上澄を捨て、もう一回PBS液で再懸濁した後、遠心で細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を5×10
7個/mlに調整した。前記Raji-luc細胞をマウスの右側のリブ裏側に0.1ml/匹で皮下接種した。接種後約10日で、腫瘍のサイズをインビボイメージャーで観察することにより、NSG免疫不全マウスを無作為に5つの群に分けることができた。それぞれPBS群、Mock T群、CD19CAR T群、CD19CAR-αCD40-wt T群、CD19CAR-αCD40 T群とし、各群に相応の(実施例2からの)T細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100
ulのPBSを投与し、投与経路は尾静脈注射であった。毎日マウスの生存状態を観察し、且つ7~8日おきにインビボイメージャーでマウス腫瘍の変化を観察した。
結果は
図3に示す。
【0143】
実施例8:mesoCAR TとmesoCAR-αCD40 T細胞の殺傷機能の対比
リアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザーにより、実施例2で構築したmesoCAR T細胞およびmesoCAR-αCD40 T細胞のインビトロで腫瘍細胞に対する殺傷効果を検出した。 具体的には、MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、上記の2種類のCAR-T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:子宮頸癌細胞Hela、卵巣癌細胞SK-OV-3、胃癌HGC-27(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、Mock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した;
結果は
図4に示すように、CD40抗体を自己発現するmesoCAR-αCD40 T細胞の細胞殺傷機能は、mesoCAR T細胞単独での細胞殺傷機能と実質的に同じであり、抗体の発現はCAR-T機能に影響を与えなかった。
【0144】
実施例9:メソテリン抗原による特異的刺激下でのmesoCARとmesoCAR-αCD40 T細胞のサイトカイン放出の対比
96ウェルプレートを2ug/mlのメソテリン抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、実施例2で構築したmeso3CAR T細胞とmesoCAR-αCD40 T細胞および対照としてのMock T細胞を1×10
5個加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。BD社のCBA Human Th1/Th2サイトカインキットIIにより、これらの3種類のT細胞がメソテリン抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ヒトIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF、IFN-γ捕捉磁気ビーズを混合し、渦励振盪で捕捉磁気ビーズを均一に混合し、チューブ毎に均一に混合された磁気ビーズを50ul入れた;
(2)50ulのヒトTh1/Th2サイトカイン標準サンプル(倍加希釈5000pg/ml、2500pg/ml、1250pg/ml、625pg/ml、312.5pg/ml、156pg/ml、80pg/ml、40pg/ml、20pg/ml、0pg/ml)および50ulの被験サンプル(希釈剤で2倍に希釈されたもの)を加えた。
(3)チューブ毎にヒトTh1/Th2-II-PE検出抗体を50ul加えた;
(4)室温で遮光で3時間インキュベートした;
(5)チューブ毎に洗浄緩衝液を1ml加え、200で5分間遠心し、上澄を捨てた;
(6)チューブ毎に洗浄緩衝液を300ul加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで蛍光値を検出した;
結果は
図5に示すように、CD40抗体を自己発現するmesoCAR-αCD40 T細胞のサイトカイン分泌量は、mesoCAR T細胞単独でのサイトカイン分泌量と有意差がなかった。
【0145】
実施例10:mesoCARおよびmesoCAR-αCD40 T細胞増殖アッセイ
実施例2で8日目に培養したmesoCAR、mesoCAR-αCD40 T細胞およびMock T細胞をそれぞれ3×10
5個取り、12ウェルプレートに置いて、いずれも1mlの培養体積で培養した。
2. 白色で非透光性の96ウェルプレートを用意し、3群の細胞からそれぞれ細胞含有培養液を100μL取って、異なるウェルに加えたと共に、細胞非含有培養液を取って、空白対照とした。次に、各ウェルに100μLのCellTiter-Glo試薬を加え、シェーカーで2分間均一に混合し、室温で10分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーでLuc蛍光値を読み取った。使用されたCellTiter-Glo発光細胞生存試験(Luminescent Cell Viability Assay)キットはPromega社から購入した。
3. 培養の9、10、11、12、13日目に、毎日12ウェルプレートで培養された細胞からサンプリングし、上記の手順で検出し、蛍光値に基づいて細胞増殖曲線をプロットした。
結果は
図6に示すように、mesoCAR-αCD40 T細胞はmesoCAR T細胞よりも良好な増殖効果を有した。
【0146】
実施例11:卵巣癌マウス異種移植片モデルに対するmesoCARおよびmesoCAR-αCD40 T細胞の治療効果
1:Biosafety Biotechnology社より提供され、SPFレベルの動物実験室で飼育された4~6週齢の平均体重22~27gの20匹のNSG完全免疫不全マウスが使用された。
2:ヒト卵巣癌細胞SK-OV-3-lucをインビトロで培養し、対数増殖期にある付着増殖細胞を取り、0.25%トリプシンで消化し、遠心して細胞を収集した後、PBSで再懸濁し、1000rmpで室温で2分間遠心し、上澄を捨て、もう一回PBS液で再懸濁した後、遠心で細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を5×10
7個/mlに調整した。
3:OVCAR-3-luc細胞をマウスの右側のリブ裏側に0.1ml/匹で皮下接種した。接種後7日で、蛍光強度をインビボイメージャーで観察し、且つ腫瘍のサイズをノギスで計測することにより、NSG免疫不全マウスを無作為に、それぞれPBS群および実施例2で得られたMock T群、mesoCAR T群、mesoCAR-αCD40-wt T群、mesoCAR-αCD40 T群という5つの群に分けることができた。各群に相応のT細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、投与経路は尾静脈注射であった。
4:毎日マウスの生存状態を観察し、且つ4日おきにインビボイメージャーでマウス腫瘍の変化を観察した。
結果は
図7に示す。
【0147】
実施例12:EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の増殖速度の対比
実施例2で8日目に培養したEHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞およびMock T細胞をそれぞれ3×10
5個取り、12ウェルプレートに置いて、いずれも1mlの培養体積で培養した。白色で非透光性の96ウェルプレートを用意し、3群の細胞からそれぞれ細胞含有培養液を80μL取って、異なるウェルに加えたと共に、80μLの栄養液を元の12ウェルプレートに追加した。次に、96ウェルプレートに80μLのCellTiter-Glo試薬を加え、シェーカーで2分間均一に混合し、室温で10分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーでLuc蛍光値を読み取った。使用されたCellTiter-Glo発光細胞生存試験(Luminescent Cell Viability Assay)キットはPromega社から購入した。培養の9、10、11、12、13日目に、毎日1
2ウェルプレートで培養された細胞からサンプリングし、上記の手順で検出し、蛍光値に基づいて細胞増殖曲線をプロットした。
結果は
図8に示すように、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の増殖速度はEHCAR-EK-28TIZ T細胞よりも有意に早いことから、CD40抗体の発現はCAR-T細胞の増殖を促進できることが分かった。
【0148】
実施例13:EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の細胞表現型測定・解析
実施例2で得られた2種類のEHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞を収集し、数をカウントした後、それぞれ1×10
6個の細胞/チューブで6本の1.5ml EPチューブに入れ、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、上澄を捨てた;そのうち、2本のチューブにはそれぞれ、活性化T細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗CD107α-PEおよび抗CD69-PEが添加され、1本のチューブには、メモリーT細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗CD45RO-PECy5+抗CD197-FITC+抗CD62L-PEが添加され、1本のチューブには、サプレッサーT細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗PD1-PEが添加され、残りの2本のチューブにはそれぞれ、アイソタイプコントロールフローサイトメトリー用抗体であるIgG1-PEおよびIgG1-PE+IgG2a-PECy5+IgG2a-PEが添加され、各抗体(いずれもJackson ImmunoResearchから購入)は2μl添加された;沈殿物を軽くフリックして均一に混合させた;室温で遮光で30分間インキュベートした後、PBSで1回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、上澄を捨て、400μlの生理食塩水を加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
実験結果からみれば、フローサイトメトリー検出により、EHCAR-EK-28TIZおよびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の老化表現型PD1の発現量は殆ど同様である(
図9A);EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の活性化表現型CD69とCD107αの発現量は、EHCAR-EK-28TIZ細胞よりも高い(
図9Bおよび9C);同時に、CD62L(L-セレクチン)はセントラルメモリーT細胞のマーカーであり、CD197はエフェクターメモリーT細胞のマーカーであり、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞におけるエフェクターT細胞の割合は、EHCAR-EK-28TIZ細胞およびMock-T細胞よりも有意に高かった(
図9D)。これらの結果から、CD40抗体の発現はCAR-T細胞の活性化を促進し、その免疫殺傷機能を増強できることが分かった。
【0149】
実施例14:EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の殺傷機能の対比
MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、実施例2得られた2種類のEHCAR-EK-28TIZ T細胞とEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:ヒト肝癌細胞HCCLM3、ヒト肺変性癌細胞Calu-6およびヒト非小細胞肺癌H23(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を
一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、pNB328空ベクターが導入されたMock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した;
結果は
図10に示す。CD40抗体を自己発現するEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の多種の腫瘍細胞に対する殺傷効果は、EHCAR-EK-28TIZ
T細胞および対照T細胞よりも有意に高かった。
【0150】
実施例15:EGFR抗原による特異的刺激下でのEHCAR-EK-28TIZ T細胞とEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のサイトカイン放出の対比
96ウェルプレートを5ug/mlのEGFR抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、実施例2で得られたEHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞および対照としての(pNB328空ベクターが導入された)Mock T細胞を1×10
5個(100ul体積)加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。これらの3種類のT細胞がEGFR抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出した。
結果は
図11に示すように、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40のIL-2およびIFN-γ分泌量はEHCAR-EK-28TIZ T細胞およびMock-Tよりも有意に高いことから、CD40アゴニスト抗体の自己発現はCAR-T細胞からのサイトカインの分泌を促進できることが分かった。
【0151】
実施例16:EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40-wt T細胞およびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞のインビボ抗腫瘍効果
4~6週齢のNSGマウスを20匹購入し、1群につき4匹で、5つの群に平均に分け、肝癌細胞株HCCLM3-LUCを1×10
7個/匹で接種し、腫瘍形成後10日で、それぞれPBS、実施例2で得られたMock-T、EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞、およびEHCAR-EK-28TIZ-αCD40-wt T細胞を尾静脈注射し、各群に相応のT細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与した。マウス生体内の腫瘍蛍光の変化を観察して記録した。
結果から分かるように、PBS、Mock-T、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40-wt T細胞は腫瘍モデルに治療効果を有しないが、EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞は抗腫瘍効果を有し、EHCAR-EK-28TIZ-αCD40 T細胞の効果は有意に高かった。具体的には
図12に示す。
【0152】
実施例17:Muc1CAR TとMuc1CAR-αCD40 T細胞の増殖速度の対比
実施例2で8日目に培養したMuc1CAR T細胞、Muc1CAR-αCD40 T細胞およびMock T細胞の数をカウントし、それぞれ3×10
5個の細胞を取り、12ウェルプレートに置いて、いずれも1mlの培養体積で培養した。白色で非透光性の96ウェルプレートを用意し、3群の細胞からそれぞれ細胞含有培養液を80μL取って、異なるウェルに加えたと共に、80μLの栄養液を元の12ウェルプレートに追加した。次に、96ウェルプレートに80μLのCellTiter-Glo試薬を加え、シェーカーで2分間均一に混合し、室温で10分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーでLuc蛍光値を読み取った。使用されたCellTiter-Glo発光細胞生存試験(Luminescent Cell Viability Assay)キットはPromega社から購入した。培養の9、10、11、12、13日目に、毎日12ウェルプレートで培養された細胞からサンプリングし、上記の手順で検出し、蛍光値に基づいて細胞増殖曲線をプロットした。
結果は
図13に示すように、Muc1CAR-αCD40 T細胞の増殖速度はMuc1CAR T細胞よりも有意に早いことから、CD40抗体の発現はCAR-T細胞の増殖を促進できることが分かった。
【0153】
実施例18:Muc1CAR TとMuc1CAR-αCD40 T細胞の細胞表現型測定・解析
実施例2で得られた2種類のMuc1CAR T細胞およびMuc1CAR-αCD40 T細胞を収集し、数をカウントした後、それぞれ1×10
6個の細胞/チューブで7本の1.5ml EPチューブに入れ、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、上澄を捨てた;そのうち、1本のチューブには、活性化T細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗CD25-PEが添加され、1本のチューブには、メモリーT細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗CD45RO-PECy5+抗CD197-FITC+抗CD62L-PEが添加され、2本のチューブにはそれぞれ、サプレッサーT細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗PD1-PEおよび抗LAG3-Alexa Fluor 647が添加され、残りの3本のチューブにはそれぞれ、アイソタイプコントロールフローサイトメトリー用抗体であるIgG1-PE、IgG1-PE+IgG2a-PECy5+IgG2a-PEおよびIgG1 Alexa Fluor 647が添加され、各抗体(いずれもJackson ImmunoResearchから購入)は2μl添加された;沈殿物を軽くフリックして均一に混合させた;室温で遮光で30分間インキュベートした後、PBSで1回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、上澄を捨て、400μlの生理食塩水を加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
実験結果からみれば、フローサイトメトリー検出により、Muc1CAR-αCD40
T細胞の老化表現型PD1およびLAG3の発現量はいずれもMuc1CAR T細胞よりも低く、活性化表現型CD25の発現量はMuc1CAR T細胞よりも高い(
図14A);同時に、CD62L(L-セレクチン)はセントラルメモリーT細胞のマーカーであり、CD197はエフェクターメモリーT細胞のマーカーであり、Muc1CAR-αCD40 T細胞におけるエフェクターT細胞の割合は、Muc1CAR T細胞およびMock-T細胞よりも有意に高かった(
図14B)。これらの結果から、CD40抗体の発現はCAR-T細胞の活性化を促進し、その免疫殺傷機能を増強できることが分かった。
【0154】
実施例19:Muc1CAR TとMuc1CAR-αCD40 T細胞の殺傷機能の対比
MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、実施例2得られた2種類のMuc1CAR T細胞とMuc1CAR-αCD40 T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:ヒト肝癌細胞HCCLM3およびヒト非小細胞肺癌H23(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、pNB328空ベクターが導入されたMock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した。
結果は
図15に示す。CD40抗体を自己発現するMuc1CAR-αCD40
T細胞の多種の腫瘍細胞に対する殺傷効果は、Muc1CAR T細胞および対照T細
胞よりも有意に高かった。
【0155】
実施例20:Muc1抗原による特異的刺激下でのMuc1CAR TとMuc1CAR-αCD40 T細胞のサイトカイン放出の対比
96ウェルプレートを5ug/mlのMuc1抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、実施例2で得られたMuc1CAR T細胞とMuc1CAR-αCD40 T細胞および対照としての(pNB328空ベクターが導入された)Mock T細胞を1×10
5個(100ul体積)加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。これらの3種類のT細胞がMuc1抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出した。
結果は
図16に示すように、Muc1CAR-αCD40 T細胞のIL-2、TNFαおよびIFN-γ分泌量はMuc1CAR T細胞およびMock-Tよりも有意に高いことから、CD40アゴニスト抗体の自己発現はCAR-T細胞からのサイトカインの分泌を促進できることが分かった。
【0156】
実施例21:Muc1CAR-T、Muc1CAR-αCD40-wt T細胞およびMuc1CAR-αCD40 T細胞のインビボ抗腫瘍効果
4~6週齢のNSGマウスを20匹購入し、1群につき4匹で、5つの群に平均に分け、肝癌細胞株HCCLM3-LUCを1×10
7個/匹で接種し、腫瘍形成後10日で、それぞれPBS、実施例2で構築したMock-T、Muc1CAR-T、Muc1CAR-αCD40 T細胞、およびMuc1CAR-αCD40-wt T細胞を尾静脈注射し、各群に相応のT細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、マウス生体内の腫瘍蛍光の変化を観察して記録した。
結果から分かるように、PBS、Mock-T、Muc1CAR-αCD40-wt T細胞は腫瘍モデルに治療効果を有しないが、Muc1CAR-TおよびMuc1CAR-αCD40 T細胞は抗腫瘍効果を有し、Muc1CAR-αCD40 T細胞の効果は有意に高かった。具体的には
図17に示す。
【0157】
実施例22:Mock T細胞、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞のインビトロで培養腫瘍細胞に対する殺傷実験
MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、DELFIA EuTDA細胞傷害性試験によってCAR-T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)Raji細胞を遠心で収集し、PBSで1回洗浄した;
(2)遠心で細胞沈殿物を収集し、1640培地で細胞を再懸濁し、数をカウントし、細胞密度を1×10
6/mlに調整した;
(3)上記の細胞を2~4ml取り、5ulの蛍光強化リガンドを加え、37℃、5%CO
2インキュベーターに20分間置いた;
(4)PBSで細胞を3~5回洗浄した;
(5)遠心で細胞沈殿物を収集し、1640培地で細胞を再懸濁し、数をカウントし、細胞密度を5×10
4/mlに調整し、細胞懸濁液を100ul取って96ウェルプレートに加えた;
(6)実施例2で構築したMock T細胞、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞をカウントし、異なるエフェクター/ターゲット比4:1で、細胞懸濁液を100ul取って相応に上記Raji細胞に加え、且つ高対照群(腫瘍細胞+リシスバッファーによる溶解)、低対照群(腫瘍細胞のみを含む)、空白対照群(培地のみを含む)を設置した;
(7)37℃、5%CO
2インキュベーターに20分間置いて、3時間共培養した;
(8)20ulの培養上澄を96ウェル空白プレートに移した;
(9)ユーロピウム溶液を200ul加えた;
(10)室温で振とうで15分間均一に混合した;
(11)マイクロプレートリーダーで時間分解蛍光検出により数値を読み取った;
結果は
図18に示すように、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞は、腫瘍細胞に対して強い殺傷効果を有し、且つ殺傷効果は同等であった。
【0158】
実施例23:フローサイトメトリー検出によるMock T細胞、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞活性化表現型およびサイトカイン分泌の分別
1、実施例2で構築した懸濁のMock T細胞、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞を収集し、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、アイソタイプコントロール抗体IgG1-PE、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD69-PE、抗KLRG1-PE、抗PD1-PE;アイソタイプコントロール抗体IgG1-PC5、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD107-PC5;アイソタイプコントロール抗体IgG1 FITC、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD62L-FITC;アイソタイプコントロール抗体IgG1-PC5、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD45RO-PC5;アイソタイプコントロール抗体IgG1-PE、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CCR7-PEをそれぞれ2ul加えた。沈殿物を軽くフリックして均一に混合させ、室温で遮光で30分間インキュベートした後、PBSで1回洗浄し、400μlのPBSを加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
結果は
図19(1枚目と2枚目の図)に示すように、CD19CAR-antiPD1
T細胞が分泌するPD-1一本鎖抗体は、T細胞表面のPD-1タンパク質を良好にブロックことができ、且つCD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1
T細胞はいずれも、インビトロで顕著な殺傷活性を有すると共に、メモリーTの形成も促進でき、活性化標識CD69はMock T細胞よりも有意に高かったが、除去標識LAG3はMock T細胞よりも有意に低かった。
2、24ウェルプレートを5ug/mlのCD19抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、Mock T細胞、CD19CAR T細胞またはCD19CAR-antiPD1 T細胞を3×10
5個加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。BD
TMCBA Human Th1/Th2サイトカインキットIIにより、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞がCD19抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出した:
(1)ヒトIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ捕捉磁気ビーズを混合し、渦励振盪で捕捉磁気ビーズを均一に混合し、チューブ毎に50ulの混合磁気ビーズを入れた;
(2)50ulのヒトTh1/Th2サイトカイン標準サンプル(倍加希釈5000pg/ml、2500pg/ml、1250pg/ml、625pg/ml、312.5pg/ml、156pg/ml、80pg/ml、40pg/ml、20pg/ml、0pg/ml)および50ulの被験サンプル(希釈剤で2倍に希釈されたもの)を加えた;
(3)チューブ毎にヒトTh1/Th2-II-PE検出抗体を50ul加えた;
(4)室温で遮光で3時間インキュベートした;
(5)チューブ毎に洗浄緩衝液を1ml加え、200で5分間遠心し、上澄を捨てた;
(6)チューブ毎に洗浄緩衝液を300ul加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで蛍光値を検出した;
結果は
図19(3枚目の図)に示すように、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞が分泌したIL-2、TNF-αおよびIFN-γはMock T細胞に比べて大幅に向上したが、3種類の細胞が分泌したIL-4、IL-6およびIL-10は有意差がなかった。
3、CD19CAR T細胞およびCD19CAR-antiPD1 T細胞を1×1
0
6個収集し、それぞれ1.5ml EPチューブに入れ、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、α-CD3CD4CD8抗体を2ul加え、室温で遮光で30分間インキュベートし、PBSで1回洗浄し、400ulのPBSを加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
結果は
図19(4枚目の図)に示すように、CD19CAR T細胞、CD19CAR-antiPD1 T細胞およびMock TにおけるCD3
+CD4
+、CD3
+CD8
+細胞が占める百分率は有意差がなかった。
【0159】
実施例24:CD19CAR T細胞、CD19CAR-antiPD1 T細胞およびCD19CAR-antiPD1-wt T細胞のインビボ機能実験
実験では、北京Biosafety Biotechnology社より提供され、SPFレベルの動物実験室で飼育された4~6週齢の平均体重22~27gの12匹のNSG完全免疫不全マウスが使用された。
【0160】
ヒトB細胞リンパ腫Raji-luc細胞をインビトロで培養し、対数増殖期にある増殖細胞を取り、遠心して細胞を収集した後、PBS液で再懸濁し、3000gで室温で2分間遠心し、上澄を捨て、もう一回PBS液で再懸濁した後、遠心で細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を5×10
7個/mlに調整した。前記Raji-luc細胞をマウスの右側のリブ裏側に0.1ml/匹で皮下接種した。接種後約10日で、腫瘍のサイズをインビボイメージャーで観察することにより、NSG免疫不全マウスを無作為に5つの群に分けることができた。それぞれPBS群、Mock T群、CD19CAR T群、CD19CAR-antiPD1 T群およびCD19CAR-antiPD1-wt T群(実施例2で構築したT細胞)とし、各群に相応のT細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、投与経路は尾静脈注射であった。毎日マウスの生存状態を観察し、且つ7~8日おきにインビボイメージャーでマウス腫瘍の変化を観察した。
結果は
図20に示す。
【0161】
実施例25:meso3CAR TとmesoCAR-antiPD1 T細胞の殺傷機能の対比
リアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザーにより、実施例2で構築したmeso3CAR T細胞およびmesoCAR-antiPD1 T細胞のインビトロで腫瘍細胞に対する殺傷効果を検出した。
具体的には、MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、上記の2種類のCAR-T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:子宮頸癌細胞Hela、卵巣癌細胞SK-OV-3、胃癌HGC-27(いずれもアメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、プラスミドが導入されないMock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した。
結果は
図21に示すように、PD1抗体を自己発現するmesoCAR-antiPD1 T細胞の細胞殺傷機能は、meso3CAR T細胞単独での細胞殺傷機能と実質的に同じであり、抗体の発現はCAR-T機能に影響を与えなかった。
【0162】
実施例26:メソテリン抗原による特異的刺激下でのmeso3CARとmesoCAR-antiPD1 T細胞のサイトカイン放出の対比
96ウェルプレートを2ug/mlのメソテリン抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、実施例2で構築したmeso3CARとmesoCAR-antiPD1 T細胞および対照としてのMock T細胞をそれぞれ1×10
5個加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。BD
TMCBA Human Th1/Th2サイトカインキットIIにより、これらの3種類のT細胞がメソテリン抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ヒトIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ捕捉磁気ビーズを混合し、渦励振盪で捕捉磁気ビーズを均一に混合し、チューブ毎に均一に混合された磁気ビーズを50ul入れた;
(2)50ulのヒトTh1/Th2サイトカイン標準サンプル(倍加希釈5000pg/ml、2500pg/ml、1250pg/ml、625pg/ml、312.5pg/ml、156pg/ml、80pg/ml、40pg/ml、20pg/ml、0pg/ml)および50ulの被験サンプル(希釈剤で2倍に希釈されたもの)を加えた;
(3)チューブ毎にヒトTh1/Th2-II-PE検出抗体を50ul加えた;
(4)室温で遮光で3時間インキュベートした;
(5)チューブ毎に洗浄緩衝液を1ml加え、200で5分間遠心し、上澄を捨てた;
(6)チューブ毎に洗浄緩衝液を300ul加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで蛍光値を検出した。
結果は
図22に示すように、PD1抗体を自己発現するmesoCAR-antiPD1 T細胞のサイトカイン分泌量は、meso3CAR T細胞単独でのサイトカイン分泌量と有意差がなかった。
【0163】
実施例27:卵巣癌マウス異種移植片モデルに対するmeso3CARおよびmesoCAR-antiPD1 T細胞の治療効果
1、Biosafety Biotechnology社より提供され、SPFレベルの動物実験室で飼育された4~6週齢の平均体重22~27gの25匹のNSG完全免疫不全マウスが使用された。
2、ヒト卵巣癌細胞SK-OV-3-lucをインビトロで培養し、対数増殖期にある付着増殖細胞を取り、0.25%トリプシンで消化し、遠心して細胞を収集した後、PBSで再懸濁し、1000rmpで室温で2分間遠心し、上澄を捨て、もう一回PBS液で再懸濁した後、遠心で細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を5×10
7個/mlに調整した。
3、SK-OV-3-luc細胞をマウスの右側のリブ裏側に0.1ml/匹で皮下接種した。接種後7日で、蛍光強度をインビボイメージャーで観察することにより、NSG免疫不全マウスを無作為に5つの群に分けることができた。各群に相応のT細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、投与経路は尾静脈注射であった。
4、毎日マウスの生存状態を観察し、且つ4日おきにインビボイメージャーでマウス腫瘍の変化を観察した。
結果は
図23に示すように、SK-OV-3卵巣癌マウス異種移植片モデルにおいて、MesoCAR-antiPD1 T細胞はMeso3CAR T細胞よりも有意に良好な治療効果を有したが、Meso3CAR-wt-antiPD1 T細胞は効果をあまり有しなかった。
【0164】
実施例28:EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の増殖速度の対比
実施例2で8日目に培養したEHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-E
K-28TIZ-antiPD1 T細胞およびMock T細胞をそれぞれ3×10
5個取り、12ウェルプレートに置いて、いずれも1mlの培養体積で培養した。白色で非透光性の96ウェルプレートを用意し、3群の細胞からそれぞれ細胞含有培養液を80μL取って、異なるウェルに加えたと共に、80μLの栄養液を元の12ウェルプレートに追加した。次に、96ウェルプレートに80μLのCellTiter-Glo試薬を加え、シェーカーで2分間均一に混合し、室温で10分間インキュベートし、マイクロプレートリーダーでLuc蛍光値を読み取った。使用されたCellTiter-Glo発光細胞生存試験(Luminescent Cell Viability Assay)キットはPromega社から購入した。培養の9、10、11、12、13日目に、毎日12ウェルプレートで培養された細胞からサンプリングし、上記の手順で検出し、蛍光値に基づいて細胞増殖曲線をプロットした。
結果は
図24に示すように、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の増殖速度はEHCAR-EK-28TIZ T細胞よりも有意に早いことから、PD1抗体の発現はCAR-T細胞の増殖を促進できることが分かった。
【0165】
実施例29:EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の細胞表現型測定・解析
実施例2で得られた2種類のEHCAR-EK-28TIZ T細胞およびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞を収集し、数をカウントした後、それぞれ1×10
6個の細胞/チューブで6本の1.5ml EPチューブに入れ、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、上澄を捨てた;そのうち、2本のチューブにはそれぞれ、活性化T細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗CD107α-PEおよび抗CD69-PEが添加され、1本のチューブには、メモリーT細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗CD45RO-PECy5+抗CD197-FITC+抗CD62L-PEが添加され、1本のチューブには、サプレッサーT細胞の表現型を検出するためのフローサイトメトリー用抗体である抗PD1-PEが添加され、残りの2本のチューブにはそれぞれ、アイソタイプコントロールフローサイトメトリー用抗体であるIgG1-PEおよびIgG1-PE+IgG2a-PECy5+IgG2a-PEが添加され、各抗体(いずれもJackson ImmunoResearchから購入)は2μl添加された;沈殿物を軽くフリックして均一に混合させた;室温で遮光で30分間インキュベートした後、PBSで一回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、上澄を捨て、400μlの生理食塩水を加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
実験結果からみれば、フローサイトメトリー検出により、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の老化表現型PD1の発現量は、EHCAR-EK-28TIZよりも有意に低い(
図25A);EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の活性化表現型CD69とCD107αの発現量は、EHCAR-EK-28TIZ細胞よりも高い(
図25Bおよび25C);同時に、CD62L(L-セレクチン)はセントラルメモリーT細胞のマーカーであり、CD197はエフェクターメモリーT細胞のマーカーであり、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞におけるエフェクターT細胞の割合は、EHCAR-EK-28TIZ細胞およびMock-T細胞よりも有意に高かった(
図25D)。これらの結果から、PD1抗体の発現はCAR-T細胞の除去を阻害し、CAR-T細胞の活性化を促進し、その免疫殺傷機能を増強できることが分かった。
【0166】
実施例30:EHCAR-EK-28TIZとEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の殺傷機能の対比
MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、実施例2得られた2種類のEHCAR-EK-28TIZ T細胞とEHCAR-EK-28
TIZ-antiPD1 T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:ヒト肝癌細胞HCCLM3、ヒト肝癌細胞Hep3Bおよびヒト非小細胞肺癌H23(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、pNB328空ベクターが導入されたMock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した;
結果は
図26に示す。PD1抗体を自己発現するEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の多種の腫瘍細胞に対する殺傷効果は、EHCAR-EK-28TIZ T細胞および対照T細胞よりも有意に高かった。
【0167】
実施例31:EGFR抗原による特異的刺激下でのEHCAR-EK-28TIZ T細胞とEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のサイトカイン放出の対比
96ウェルプレートを5ug/mlのEGFR抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、実施例2で得られたEHCAR-EK-28TIZ T細胞とEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞および対照としての(pNB328空ベクターが導入された)Mock T細胞を1×10
5個(100ul体積)加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。これらの3種類のT細胞がEGFR抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出した、
結果は
図27に示すように、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞のIL-2およびIFN-γ分泌量はEHCAR-EK-28TIZ T細胞およびMock-Tよりも有意に高いことから、PD1抗体の自己発現はCAR-T細胞からのサイトカインの分泌を促進できることが分かった。
【0168】
実施例32:EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1-wt T細胞およびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1
T細胞のインビボ抗腫瘍効果
4~6週齢のNSGマウスを20匹購入し、1群につき4匹で、5つの群に平均に分け、肝癌細胞株HCCLM3-LUCを1×107個/匹で接種し、腫瘍形成後10日で、PBS、Mock-T、EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1-wt T細胞、およびEHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞を尾静脈注射し、各群に相応のT細胞を1×107個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、マウス生体内の腫瘍蛍光の変化を観察して記録した。
【0169】
結果から分かるように、PBS、Mock-T、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1-wt T細胞は腫瘍モデルに治療効果を有しないが、EHCAR-EK-28TIZ T細胞、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞は良好な抗腫瘍効果を有し、EHCAR-EK-28TIZ-antiPD1 T細胞の効果は有意に高かった。具体的には
図28に示す。
【0170】
実施例33:異なる患者から由来のPBMC細胞がMuc1CAR遺伝子およびPD-1抗体遺伝子で修飾された後、T細胞ゲノムにおけるMuc1CARのゲノム発現レベルの検出
実施例2で得られたMock T細胞、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞のゲノムDNAを(キット法で)抽出し、実験手順については、キットに添付されている取扱説明書を参照し、Mock T細胞、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞のDNA濃度を測定し、リアルタイム蛍光定量PCRでMuc1CARゲノムの発現レベルを検出し、反応プログラムは、50℃、2min→95℃、10min→95℃、15s→60℃、1min、40サイクルであった。得られたMuc1CARゲノムのCT値およびアクチンのCT値から、相応の計算式により、絶対コピー数含有量を算出した。
結果からみれば、PBトランスポザーゼシステムを介して、Muc1CARゲノムはT細胞のゲノムに組み込まれており、具体的には下表8に示す:
【0171】
【0172】
実施例34:フローサイトメトリー検出によるMock T細胞、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞活性化表現型およびサイトカイン分泌の分別。
1、実施例2で得られた懸濁のMock T細胞、Muc1CAR T細胞、およびpNB328-Muc1CARとpS328-m279Vプラスミドが導入されたMuc1CAR-antiPD1 T細胞を収集し、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、アイソタイプコントロール抗体IgG1-PE、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD25-PE、抗LAG3-PE、抗PD1-PE;アイソタイプコントロール抗体IgG1-PC5、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD107-PC5;アイソタイプコントロール抗体IgG1 FITC、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD62L-FITC;アイソタイプコントロール抗体IgG1-PC5、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CD45RO-PC5;アイソタイプコントロール抗体IgG1-PE、蛍光フローサイトメトリー用抗体である抗CCR7-PEをそれぞれ2ul加え、沈殿物を軽くフリックして均一に混合させ、室温で遮光で30分間インキュベートした後、PBSで1回洗浄し、400μlのPBSを加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
結果からみれば、Muc1CAR-antiPD1 T細胞が分泌するPD-1一本鎖抗体は、T細胞表面のPD-1タンパク質を良好にブロックことができ、且つMuc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞はいずれも、インビトロで顕著な殺傷活性を有すると共に、メモリーTの形成も促進でき、活性化標識CD25はMock T細胞よりも有意に高かったが、Muc1CAR-antiPD1 T細胞の除去標識LAG3はMock T細胞およびMuc1CAR T細胞よりも有意に低く、具体的には
図29A、29Bに示す。
2、実施例2で得られたMuc1CAR T細胞、およびpNB328-Muc1CA
RとpS328-m279Vプラスミドが導入されたMuc1CAR-antiPD1 T細胞を1×10
6個収集し、それぞれ1.5ml EPチューブに入れ、PBSで2回洗浄し、1200rpmで5分間遠心し、α-CD3CD4CD8抗体を2ul加え、室温で遮光で30分間インキュベートし、PBSで1回洗浄し、400ulのPBSを加え、細胞をフローサイトメトリー用チューブに移し、機器で検出した。
結果からみれば、Muc1CAR T細胞、Muc1CAR-antiPD1 T細胞およびMock TにおけるCD3
+CD4
+、CD3
+CD8
+細胞が占める百分率は有意差がなく、具体的には
図29Cに示す。
3、24ウェルプレートを5ug/mlのMuc1抗原で4℃で一晩コーティングし、PBSで3回洗浄し、実施例2で得られたMock T細胞、Muc1CAR T細胞、およびpNB328-Muc1CARとpS328-m279Vプラスミドが導入されたMuc1CAR-antiPD1 T細胞を3×10
5個加え、24時間培養した後、細胞上澄を収集した。BD
TMCBA Human Th1/Th2サイトカインキットIIにより、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞がMuc1抗原による刺激を受けた後のサイトカインの分泌状況を検出した:
(1)ヒトIL-2、IL-4、IL-6、IL-10、TNF-α、IFN-γ捕捉磁気ビーズを混合し、渦励振盪で捕捉磁気ビーズを均一に混合し、チューブ毎に均一に混合された磁気ビーズを50ul入れた;
(2)50ulのヒトTh1/Th2サイトカイン標準サンプル(倍加希釈5000pg/ml、2500pg/ml、1250pg/ml、625pg/ml、312.5pg/ml、156pg/ml、80pg/ml、40pg/ml、20pg/ml、0pg/ml)および50ulの被験サンプル(希釈剤で2倍に希釈されたもの)を加えた;
(3)チューブ毎にヒトTh1/Th2-II-PE検出抗体を50ul加えた;
(4)室温で遮光で3時間インキュベートした;
(5)チューブ毎に洗浄緩衝液を1ml加え、200gで5分間遠心し、上澄を捨てた;
(6)チューブ毎に洗浄緩衝液を300ul加えて細胞を再懸濁し、フローサイトメトリー用チューブに移し、フローサイトメーターで蛍光値を検出した。
結果からみれば、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞が分泌したIL-2、TNF-αおよびIFN-γはMock T細胞に比べて大幅に向上したが、3種類の細胞が分泌したIL-4、IL-6およびIL-10は有意差がなく、具体的には
図29Dに示す。
【0173】
実施例35:Mock T細胞、Muc1CAR T細胞およびMuc1CAR-antiPD1 T細胞のインビトロで培養腫瘍細胞に対する殺傷実験
MHCクラスIタイピングが一致するエフェクター細胞とターゲット細胞を選択し、リアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:子宮頸癌細胞Hela、肝癌細胞HCC-LM3、肺癌細胞A549(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞(実施例2で得られたMock T細胞、Muc1CAR
T細胞、およびpNB328-Muc1CARとpS328-m279Vプラスミドが導入されたMuc1CAR-antiPD1 T細胞)を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、プラスミドが導入されないMock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察し
た。
結果から分かるように、PD-1抗体を発現するMuc1CAR T細胞は3種類の腫瘍細胞に対する殺傷はいずれも、Muc1CAR T細胞よりも優れた。具体的には
図30に示す。
【0174】
実施例36:PD-1抗体を発現するMuc1CAR T細胞のインビボ機能研究
ステップ1:北京Vitalstar Biotechnology社より提供され、SPFレベルの動物実験室で飼育された4~6週齢の平均体重22~27gの15匹のNSG完全免疫不全マウスが使用された。
ステップ2:ヒト子宮頸癌細胞Helaをインビトロで培養し、対数増殖期にある付着増殖細胞を取り、0.25%トリプシンで消化し、遠心して細胞を収集した後、PBSで再懸濁し、3000gで室温で2分間遠心し、上澄を捨て、もう一回PBS液で再懸濁した後、遠心で細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を5×10
7個/mlに調整した。
ステップ3:Hela-luc細胞をマウスの右側のリブ裏側に0.1ml/匹で皮下接種した。接種後約10日で、腫瘍のサイズをインビボイメージャーで観察することにより、NSG免疫不全マウスを、1群につき5匹で、、無作為に4つの群に分け、それぞれPBSおよび実施例2で得られたMock T細胞、Muc1CAR T細胞、pNB328-Muc1CARとpS328-m279V-wtが導入されたMuc1CAR-antiPD1-wt T細胞、およびpNB328-Muc1CARとpS328-m279Vプラスミドが導入されたMuc1CAR-antiPD1 T細胞(1×10
7個/匹)、PBS群に100ulのPBSを投与した。投与経路は尾静脈注射であった。
ステップ4:毎日マウスの生存状態を観察し、且つ10日おきにインビボイメージャーでマウス腫瘍の変化を観察した。
結果は
図31に示す。
【0175】
実施例37:Mock T細胞、EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR T細胞のCD47発現の検出
実施例2で構築したMock T細胞、EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR T細胞を収集し、BD社のフローサイトメトリー用抗体であるマウス抗ヒトCD47-FITCでCD47の発現を検出し、フローサイトメトリー方法は実施例3と同様であった。
結果は
図32に示すように、αCD47-EGFR-CAR Tが分泌したCD47抗体は細胞自体のCD47発現をブロックできた。
【0176】
実施例38:Mock T細胞、EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR T細胞の腫瘍細胞に対する殺傷効果
肺癌細胞株H23、卵巣癌細胞株SKOV3、膵癌細胞株ASPC-1という3種類のEGFR陽性細胞をターゲット細胞として選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、実施例2で得られたMock T細胞、EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:肺癌細胞株H23、卵巣癌細胞株SKOV3、膵癌細胞株ASPC-1(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、pNB328空ベクターが導入されたMock T細胞を対照として、
ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した。
結果は
図33に示す。EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR
T細胞のインビトロ殺傷活性はMock T細胞よりも有意に高く、且つCD47抗体の自己発現はCAR-T細胞の殺傷機能に影響を与えなかった。
【0177】
実施例39:αCD47-EGFR-CAR T細胞培養上澄は腫瘍細胞表面のCD47をブロックできる
実施例2で得られたαCD47-EGFR-CAR T細胞の培養上澄を、肺癌細胞株H23、卵巣癌細胞株SKOV3、膵癌細胞株ASPC-1のそれぞれと共培養し、24時間後に腫瘍細胞を収集し、αCD47-EGFR-CAR T細胞上澄と共培養されないものを対照として、CD47の発現を検出した。フローサイトメトリー検出方法は実施例3と同様であった。
結果は
図34に示すように、αCD47-EGFR-CAR T細胞上澄におけるCD47抗体は腫瘍細胞表面のCD47をブロックできた。
【0178】
実施例40:腫瘍細胞表面のCD47のブロッキングは、それに対するマクロファージの貪食作用を向上させることができる
1. マクロファージの分離と培養:フィコール密度勾配遠心分離法で末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、37℃、5%CO
2インキュベーターで4時間付着培養し、付着しなかった細胞を予熱した培地で洗い流し、AIM-V培地およびrhGM-CSF(最終濃度1000U/ml)を添加した。2日間おきに半分の量で液体を取替え、7日間培養し、付着細胞としてマクロファージを得た。
2. 腫瘍細胞に対するマクロファージの貪食作用:腫瘍細胞をHoechst染料で青色に染色し、マクロファージをCM-Dilで赤色に染色し、具体的な染色方法は染料の取扱説明書を参照した。染色された2種類の細胞を混合し、2つの部分に分け、1つの部分には実施例2で構築したEGFR-CAR T細胞の培養上澄を対照として加え、もう1つの部分には実施例2で構築したαCD47-EGFR-CAR T細胞の培養上澄を加え、共焦点顕微鏡で貪食作用を観察し、且つカウントで貪食効率を統計した。
結果は
図35に示すように、αCD47-EGFR-CAR T細胞の培養上澄が加えられた群では、そのマクロファージの貪食作用が対照群よりも有意に高かった。
【0179】
実施例41:αCD47-EGFR-CAR T細胞のインビボ抗腫瘍効果
4~6週齢のNSGマウスを20匹購入し、1群につき4匹で、5つの群に平均に分け、肺癌細胞株H23を1×10
7個の細胞/匹で接種し、腫瘍形成後10日で、それぞれPBSおよび実施例2で得られたMock-T細胞、EGFR-CAR T細胞、wt-αCD47-EGFR-CAR T細胞、およびαCD47-EGFR-CAR T細胞を尾静脈注射し、各群に相応のT細胞を1×10
7個/100ulで注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、腫瘍サイズを観察して記録した。結果から分かるように、PBS、Mock T細胞、wt-αCD47-EGFR-CAR T細胞は腫瘍モデルに治療効果を有しないが、EGFR-CAR T細胞およびαCD47-EGFR-CAR T細胞はいずれも良好な抗腫瘍効果を有し、且つαCD47-EGFR-CAR T細胞の効果がより優れた。具体的には
図36に示す。
【0180】
実施例42:Mock、Meso3CARおよびαCD47-Meso3CAR T細胞のCD47発現の検出
実施例2で構築したMock T細胞、Meso3CAR T細胞およびαCD47-Meso3CAR T細胞を収集し、BD社のフローサイトメトリー用抗体であるFITC-マウス抗ヒトCD47でPD1の発現を検出し、フローサイトメトリー方法は実施例3と同様であった。
結果は
図37に示すように、αCD47-Meso3CAR Tが分泌したCD47抗
体は細胞表面のCD47発現をブロックできた。
【0181】
実施例43:Mock、Meso3CARおよびαCD47-Meso3CAR T細胞の腫瘍細胞に対する殺傷効果
胃癌細胞株Hgc27、卵巣癌細胞株SKOV3、膵癌細胞株ASPC-1という3種類のEGFR陽性細胞をターゲット細胞として選択し、ACEA社のリアルタイムラベルフリー細胞機能アナライザー(RTCA)を用いて、実施例2で得られたMock、Meso3CARおよびαCD47-Meso3CAR T細胞のインビトロ殺傷活性を検出し、具体的な手順は以下のようであった:
(1)ゼロ調整:各ウェルに50μlのDMEMまたは1640培地を加え、機器に入れ、ステップ1を選択し、ゼロを調整した;
(2)標的細胞プレーティング:胃癌細胞株Hgc27、卵巣癌細胞株SKOV3、膵癌細胞株ASPC-1(アメリカ菌株保存機関ATCCから購入)を、検出電極を備えたプレートに1ウェルあたり10
4個の細胞/50μlでプレーティングし、数分間放置し、細胞が安定になったら機器に入れ、ステップ2を開始し、細胞を培養した;
(3)エフェクター細胞の添加:ターゲット細胞を24時間培養した後、ステップ2を一時停止し、エフェクター細胞を50μl/ウェル加え、エフェクター/ターゲット比を4:1に設定し、pNB328空ベクターが導入されたMock T細胞を対照として、ステップ3を開始し、共培養を24時間継続した後、細胞増殖曲線を観察した。
結果は
図38に示す。Meso3CARおよびαCD47-Meso3CAR T細胞のインビトロ殺傷活性はMock T細胞よりも有意に高く、且つCD47抗体の発現はCAR-T細胞の殺傷機能に影響を与えなかった。
【0182】
実施例44:αCD47-Meso3CAR T細胞培養上澄は腫瘍細胞表面のCD47をブロックできる
実施例2で得られたαCD47-Meso3CAR T細胞の培養上澄を、胃癌細胞株Hgc27、卵巣癌細胞株SKOV3、膵癌細胞株ASPC-1のそれぞれと共培養し、24時間後に腫瘍細胞を収集し、αCD47-Meso3CAR T細胞上澄と共培養されないものを対照として、CD47の発現を検出した。フローサイトメトリー検出方法は上記と同様であった。
結果は
図39に示すように、αCD47-Meso3CAR T細胞上澄におけるCD47抗体は腫瘍細胞表面のCD47をブロックできた。
【0183】
実施例45:腫瘍細胞表面のCD47のブロッキングは、それに対するマクロファージの貪食作用を向上させることができる
1、マクロファージの分離と培養:フィコール密度勾配遠心分離法で末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、37℃、5%CO
2インキュベーターで4時間付着培養し、付着しなかった細胞を予熱した培地で洗い流し、AIM-V培地およびrhGM-CSF(最終濃度1000U/ml)を添加した。2日間おきに半分の量で液体を取替え、7日間培養し、付着細胞としてマクロファージを得た。
2、腫瘍細胞に対するマクロファージの貪食作用:腫瘍細胞をHoechst染料で青色に染色し、マクロファージをCM-Dilで赤色に染色し、具体的な染色方法は染料の取扱説明書を参照した。染色された2種類の細胞を混合し、2つの部分に分け、1つの部分には実施例2で構築したMeso3CAR T細胞の培養上澄を対照として加え、もう1つの部分には実施例2で構築したαCD47-Meso3CAR T細胞の培養上澄を加え、共焦点顕微鏡で貪食作用を観察し、且つカウントで貪食効率を統計した。
結果からみれば、αCD47-Meso3CAR T細胞の培養上澄が加えられた群では、そのマクロファージの貪食作用が対照群よりも有意に高かった。統計結果は
図40に示す。
【0184】
実施例46:αCD47-Meso3CAR T細胞のインビボ抗腫瘍効果
4~6週齢のNSGマウスを20匹購入し、1群につき4匹で、5つの群に平均に分け、肺癌細胞株H23を1×10
7個/匹で接種し、腫瘍形成後10日で、それぞれPBSおよび実施例2で得られたMock、Meso3CAR、wt-αCD47-Meso3CAR、αCD47-Meso3CAR T細胞を(1×10
7個/匹で)尾静脈注射し、PBS群に100ulのPBSを投与し、腫瘍サイズを観察して記録した。
結果から分かるように、PBS、Mock、wt-αCD47-Meso3CAR T細胞は腫瘍モデルに治療効果を有しないが、αCD47-Meso3CAR T細胞は良好な抗腫瘍効果を有した。
具体的には
図41に示す。