IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダニスコ・ユーエス・インクの特許一覧

特許7431172ホスホリラーゼ酵素を用いたβ-1,3グリコシド結合を含むグルカンの合成
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ホスホリラーゼ酵素を用いたβ-1,3グリコシド結合を含むグルカンの合成
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/10 20060101AFI20240206BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20240206BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240206BHJP
【FI】
C12N9/10 ZNA
C12P19/04 Z
C12N15/54
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020558895
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019027426
(87)【国際公開番号】W WO2019209559
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/084036
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ユー、ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】クラリィ、スラブコ
(72)【発明者】
【氏名】ベハブツ、ナタニエル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジェンホン
(72)【発明者】
【氏名】ハウ、ローリー エー
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/092997(WO,A1)
【文献】Y. Yamamoto, et al.,Biosci. Biotechnol. Biochem.,2013年,Vol.77(9),p.1949-1954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも水、α-グルコース-1-ホスフェート(α-G1P)、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む反応組成物であって、前記酵素が、β-1,3-グルカンを合成し、前記アクセプター分子は、セロビオース、p-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド、ラミナリン又はラミナリビオースを含む、反応組成物。
【請求項2】
前記β-1,3-グルカンが、少なくとも90%のβ-1,3グリコシド結合を有する、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項3】
前記β-1,3-グルカンが、少なくとも99%のβ-1,3グリコシド結合を有する、請求項2に記載の反応組成物。
【請求項4】
前記β-1,3-グルカンの重合度(DP)が、少なくとも3である、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項5】
前記β-1,3-グルカンのDPが、少なくとも15である、請求項4に記載の反応組成物。
【請求項6】
前記アクセプター分子が、ラミナリビオースを含む、請求項に記載の反応組成物。
【請求項7】
前記アクセプター分子が、ラミナリンを含む、請求項1に記載の反応組成物。
【請求項8】
β-1,3-グルカンを生成するための方法であって、前記方法が:
(a)少なくとも水、α-グルコース-1-ホスフェート(α-G1P)、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を接触させ、β-1,3-グルカンを生成する工程
を含み、前記アクセプター分子は、セロビオース、p-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド、ラミナリン又はラミナリビオースを含む、方法。
【請求項9】
(b)工程(a)で生成された前記β-1,3-グルカンを単離する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記α-G1Pが、工程(a)において第2の反応を行うことによって供給され、前記第2の反応の生成物が、α-G1Pを含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の反応が、工程(a)が実施される容器と同じ容器で提供され、前記第2の反応が、工程(a)の前に及び/又は工程(a)に続いて実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の反応が、(i)水、(ii)無機ホスフェート、(iii)グルコース-含有二糖、オリゴ糖、又は多糖、及び(iv)二糖、オリゴ糖、又は多糖を加リン酸分解するホスホリラーゼを接触させることによりα-G1Pを生成する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記アクセプター分子が、工程(a)において第3の反応を提供することによって提供され、前記第3の反応の生成物が、前記アクセプター分子を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項14】
前記第3の反応によって提供される前記アクセプター分子が、ラミナリビオースである、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願番号PCT/CN2018/084036号(2018年4月23日出願)の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、酵素反応の分野に属する。例えば、本開示は、β-1,3-グルカンホスホリラーゼを用いた、β-1,3-グルカンの反応及び生成方法に関する。
【0003】
電子的に提出された配列表の参照
配列表の正式な写しは、約156キロバイトのサイズを有して本明細書と同時に提出される、2019年4月10日に作成された20190410_NB41430WOPCT2_SequenceListing.txtのファイル名を有するASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出される。このASCIIフォーマット文献に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
多糖類を様々な用途に使用することが望まれているため、研究者らは、生分解性であり、再生可能に供給される原料から経済的に製造することができる多糖類を探求してきた。このような多糖の1つは、β-1,3-グルカンであり、β-1,3-グリコシド結合を有することを特徴とするグルカンポリマーである。β-1,3-グルカンの異なる形態は、様々な供給源、例えば、藻類、真菌、植物、及び細菌から調製されてきた(Stone,B.A.,2009,Chemistry of Beta Glucans,In Antony Bacic et al.,Eds.,Chemistry,Biochemistry,and Biology of 1-3 Beta Glucans and Related Polysaccharides,Academic Press,Burlington,MA)。酵母及びキノコの細胞壁から単離されたβ-1,3-グルカンは、大きく(100kDaをはるかに超える)及び/又は分枝構造をとり得る。真菌中で分枝形態のβ-1,3-グルカンは、ペンダントβ-1,6-結合グルコース、及び/又は例えばβ-1,6結合によって互いに繰り返し結合したβ-1,3-グルカンのスパンを含み得る。植物由来β-グルカン、カロースは、ほとんどの場合は、β-1,3グリコシド結合及び少量のβ-1,6グリコシド結合を有する。原生生物のメンバーにより産生されるβ-1,3-グルカンとしては、例えば、ラミナリン及びパラミノンが挙げられ、これらはそれぞれ褐藻及びミドリムシによって産生される。パラミノンは分子量が大きく、直鎖β-1,3-グルカンからなるが、ラミナリンは分子量が小さく、β-1,6-結合した分枝を更に含む。細菌β-1,3-グルカンである、カードランは直鎖であり、高分子量(例えば、100kDaを上回る)のものである。これら及びその他のβ-1,3-グルカンの天然形態は、in vivoでβ-1,3-グルカンシンターゼ酵素により比較的大きな量で合成することができ、これは、グルカンポリマー合成用の基質としてUDP-グルコースを利用する(Brownfield、L.et al.,2009,Biochemical and Molecular Properties of Biosynthetic Enzymes for(1,3)-Beta-Glucans in Embryophytes,Chlorophytes and Rhodophytes;Nogami、S.et al.,2009,Biosynthetic Enzymes for(1-3)-Beta-Glucans,(1-3;1-6)-Beta-Glucans from Yeasts:Biochemical Properties and Molecular Biology;Bulone,V.,2009,Biosynthetic Enzymes for(1,3)-Beta-Glucans and(1,3;1,6)-Beta-Glucans in Protozoans and Chromistans:Biochemical Characterization and Molecular Biology;Stanisich,V.A.,2009,Enzymology and Molecular Genetics of Biosynthetic Enzymes for(1,3)-Beta-Glucans:Prokaryotes;Each in Antony Bacic et al.,Eds.,Chemistry,Biochemistry,and Biology of 1-3 Beta Glucans and Related Polysaccharides,Academic Press,Burlington,MA)。
【0005】
単離されたホスホリラーゼ酵素は、in vitroでβ-1,3-グルカンを生成するために使用されてきた(例えば、Yamamoto et al.,2013,Biosci.Biotechnol.Biochem.77:1949-1954;米国特許第8,530,202号明細書)。単離されたグルカンホスホリラーゼを用いたβ-1,3グリコシド結合を含有するグルカンを生成する更なる方法を本明細書にて開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、本開示は、少なくとも水、α-G1P、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む反応組成物であって、酵素が、β-1,3-グルカンを合成する反応組成物に関する。
【0007】
別の実施形態では、本開示は、β-1,3-グルカン(本明細書に開示されるような)を生成するための方法であって、方法が:(a)少なくとも水、α-G1P、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を接触させ、β-1,3-グルカンを生成することと、(b)任意選択的に、工程(a)で生成されたβ-1,3-グルカンを単離することと、を含む方法に関する。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、β-1,3-グルカン(本明細書に開示されるような)を処理する方法であって、方法が:(a)少なくとも17の重合度(DP)を有する最大約40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物を準備することと;(b)水性組成物を少なくとも約75℃まで加熱し、それによって、β-1,3-グルカンを水性組成物に溶解させて、溶液を得ることと;(c)溶解したβ-1,3-グルカン以外の1つ以上の溶質の含有量を減少させる少なくとも1つのプロセスに溶液を供し、それによって、溶液中の溶解したβ-1,3-グルカンの含有量を乾燥重量基準で増加させることと;(d)任意選択的に、β-1,3-グルカンが沈殿して不溶性状態に戻る温度まで溶液を冷却し、任意選択的に、沈殿したβ-1,3-グルカンを単離することと、
を含む方法に関する。
【0009】
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0010】
全ての引用される特許及び非特許文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0011】
特に開示しない限り、本明細書で用いられるような用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、1つ以上(すなわち少なくとも1つ)の言及される特徴を包含することを意図する。
【0012】
存在する場合、特に記載しない限り、全ての範囲は、包括的であり、結合可能である。例えば、「1~5」(すなわち1~5)の範囲が挙げられる場合、挙げられた範囲は、範囲「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などを含むものと解釈されるべきである。
【0013】
本明細書において、用語「糖」及び他の同様の用語は、別段の記載がない限り、単糖及び/又は二糖/オリゴ糖を指す。本明細書において、「二糖」とは、グリコシド結合によって連結されている2つの単糖を有する炭水化物を指す。本明細書において、「オリゴ糖」は、例えばグリコシド結合によって連結されている3~15個の単糖を有する炭水化物を指す。オリゴ糖は、「オリゴマー」と呼ばれる場合もある。二糖/オリゴ糖中に含まれる単糖(例えば、グルコース、及び/又はフルクトース)は、「モノマー単位」、「単糖単位」、又は他の同様の用語を指す場合がある。
【0014】
用語「β-グルカン」、「β-グルカンポリマー」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。β-グルカンは、β-グリコシド結合によって互いに連結されるグルコースモノマー単位を含むポリマーである。本明細書のβ-グルカンは、オリゴ糖又は多糖の形態であり得る。典型的な実施形態では、本明細書のβ-グルカンは、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のβ-グリコシド結合を含む。本明細書のβ-グルカンポリマーの例としては、β-1,3-グルカンが挙げられる。本明細書の糖内に含まれるようなグルコース、β-グルカン、又はその他の炭水化物は、グルコースモノマー単位、グルコースモノマー、グルコース単位、又はその他の同様の用語を指す場合がある。
【0015】
用語「ポリβ-1,3-グルカン」、「β-1,3-グルカン」、「β-1,3-グルカンポリマー」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。β-1,3-グルカンは、少なくともDP3のポリマーであり、グリコシド結合により互いに連結されるグルコースモノマー単位を含み、ここで、少なくとも約90%のグリコシド結合がβ-1,3である。特定の実施形態におけるβ-1,3-グルカンは、約100%のβ-1,3グリコシド結合を有するか、又は少なくとも約90%若しくは95%のβ-1,3グリコシド結合を含む。本明細書のβ-1,3-グルカンの他の結合(存在する場合)のほとんど又は全ては、典型的には、β-1,6(典型的には分枝を形成する)である。
【0016】
用語「グリコシド結合(glycosidic linkage)」、「グリコシド結合(glycosidic bond)」、「結合」などは、本明細書では同じ意味で用いられ、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物などの別の基に連結する共有結合を指す。本明細書で使用される、用語「β-1,3-グリコシド結合」は、隣接したβ-D-グルコース環上の炭素1及び3を介してβ-D-グルコース分子を互いに連結する共有結合のタイプを指す。本明細書におけるグルカンポリマーのグリコシド結合は、「グリコシド結合」とも呼ぶことができる。本明細書では、別途注記のない限り、「β-D-グルコース」を「グルコース」と呼ぶ。
【0017】
本明細書のβ-グルカンのグリコシド結合プロファイルは、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して決定され得る。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)分光法(例えば、13C NMR又はH NMR)を使用する方法を用いて決定され得る。使用し得るこれらの方法及び他の方法は、例えば、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui,Ed.,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本明細書の大きいβ-グルカンポリマーの「分子量」は、重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)として表すことができ、その単位は、ダルトン又はグラム/モルである。或いは、大きいβ-グルカンポリマーの分子量は、DPw(重量平均重合度)又はDPn(数平均重合度)として表すことができる。オリゴ糖などのより小さいβ-グルカンの分子量は、典型的には、「DP」(重合度)として提供され得、これは、単にβ-グルカン内に含まれるグルコースモノマー単位の数を指す。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるなど、これらの様々な分子量の測定値を算出するための様々な手法が当該技術分野で知られている。
【0019】
特に開示しない限り、本明細書で使用する場合、用語「ホスホリラーゼ」、「ホスホリラーゼ酵素」、及び同様の用語は、CAZy(炭水化物活性酵素)データベース(cazy.orgウェブサイト;Cantarel et al.,2009,Nucleic Acids Res.37:D233-238(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)によるグリコシルヒドロラーゼ94(GH94)ファミリーに属する特定のクラスの酵素を指す。このようなホスホリラーゼは、特定のタイプの二糖、オリゴ糖、又は多糖(例えば、β-グルカン)の合成(このような可逆性、は典型的には単離された/in vitro条件下でのみ)、並びにα-グルコース-1-ホスフェート(α-G1P)及び好適なアクセプター(反応基質)からの遊離ホスフェート(反応生成物)を可逆的に触媒することができる。本明細書の「β-1,3-グルカンホスホリラーゼ」(又は「β-1,3-グルカンを合成するホスホリラーゼ酵素」、「1,3-β-D-グルカンホスホリラーゼ」、及び同様の用語)は、β-1,3グリコシド結合-含有オリゴ糖又は多糖の合成並びにα-G1P及び好適なアクセプターからの遊離ホスフェートを触媒する。β-1,3-グルカンホスホリラーゼは、酵素委員会(EC)番号2.4.1.97であり、特定の態様では、次の可逆反応を触媒する:α-G1P+(1,3-β-D-グルコシル)n-1⇔(1,3-β-グルコシル)+ホスフェート;「(1,3-β-D-グルコシル)n-1」は、この反応においてアクセプターとして示されているが、β-1,3-グルカンホスホリラーゼは、本明細書に開示されているような他のアクセプタータイプを使用することができる。特定の態様における、β-1,3-グルカンホスホリラーゼは、配列番号2、4、6、8、10、又は12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む。本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応で使用されるアクセプターに応じて、β-1,3グリコシド結合-含有オリゴ糖又は多糖生成物は、(i)完全にグルコースモノマー単位で構成される(アクセプター自体が特定の態様で1つ以上のグルコース単位のみで構成される場合)か、又は(ii)グルコース単位に加えて非グルコース単糖単位及び/若しくは非糖部分を含む(アクセプター自体がそのような他の単糖単位及び/若しくは部分を含む場合)。これらの生成物タイプのいずれ(i又はii)も、例えば、任意選択的に、アクセプターから合成される(すなわち、生成物の結合プロファイルにはアクセプターの結合を含まない)β-1,3グリコシド結合-含有オリゴ糖又は多糖に関して特徴付けられ得る。
【0020】
用語「アクセプター」、「アクセプター分子」、「アクセプター化合物」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。本明細書の好適なアクセプターは、少なくとも1つのヒドロキシル部分(-OH)を含む有機分子であると考えられ、そのヒドロキシル部分は、本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼの触媒活性を介して、α-G1Pのグルコースの1位とのグリコシド結合(ヒドロキシル部分の酸素原子を含む)の形成を伴い得る(ホスフェート基は、結合形成中に置換される)。好適なアクセプターは、炭水化物又は非炭水化物であり得る。非炭水化物アクセプターの例としては、アルコール、ポリオール、フェノール化合物、及びアミノ酸が挙げられる。炭水化物アクセプターの例としては、二糖、オリゴ糖、及び多糖が挙げられ;いくつかの実施形態における炭水化物アクセプターのモノマー単位の全て又は一部は、グルコース単位であり得る。炭水化物アクセプターの非還元末端は、典型的には、グリコシド結合形成を伴う。用語「初期アクセプター」は、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応物を調製する場合に使用されるようなアクセプターとして特徴づけるために、本明細書では、任意選択的に使用され得る。初期アクセプターはまた、β-1,3-グルカンホスホリラーゼによってそれと結合したグルコースを有していない。β-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応の間に、アクセプターは、典型的には、ホスホリラーゼによるその後のグルコース付加のためのアクセプターとして反復的に機能する。
【0021】
本明細書で使用される「グルコース-1-リン酸」(G1P)は、1-炭素にリン酸基を有するグルコース分子を指す。本明細書のG1Pは、典型的には、α-D-グルコース-1-ホスフェート(α-G1P)であり、これは、アノマー中心にα配置を有するD-グルコピラノースである。特に開示しない限り、本明細書のG1Pは、β-D-グルコース-1-ホスフェート(β-G1P)ではない。
【0022】
「P」と表記し得る「無機ホスフェート」は、溶液中における遊離ホスフェートオンを指し、G1Pなどのリン酸エステルにおいて結合しているホスフェートとは区別される。
【0023】
用語「酵素反応物」、「酵素反応組成物」、「グルカンホスホリラーゼ反応物」、「β-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応物」、及び同様の用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、特に明記されていなければ、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素により実施される反応物を指す。酵素反応物は、一般的に、少なくともα-G1P、アクセプター、及び活性β-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む水溶液/調製物を指す。水、α-G1P、アクセプター、及びβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を接触させる工程が実施されるのは、このような反応である。用語「好適な反応条件下」、及び同様の用語は、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ活性を介した、基質(α-G1P及びアクセプター)のβ-1,3-グルカン(アクセプターから伸長されたもの)及び遊離ホスフェート生成物への変換をサポートする反応条件を指す。特定の実施形態では、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応物は、不溶性β-1,3-グルカン生成物を生成するため、このような生成物は溶液外に存在する(反応物は混合物になる)と理解されるであろう。
【0024】
本明細書で使用される「対照」酵素反応物は、例えば、配列番号2、4、6、8、10、又は12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含まないβ-1,3-グルカンホスホリラーゼを用いる反応物を指す。対照反応物の他の全ての特徴(例えば、基質濃度、温度、pH、時間)は、それと比較される反応物と同じにすることができる。
【0025】
用語「ラミナリビオース」(「β-1,3-グルコビオース」としても知られている)は、本明細書で使用する場合、二糖である3-β-D-グルコシル-D-グルコースを指す。
【0026】
本明細書の用語「ラミナリン」、「ラミナラン」などは、典型的には、β-1,6-結合した分枝(例えば、β-1,3-結合した主鎖の10残基ごとに1つの枝)を有する低分子量の水溶性β-1,3-グルカン(例えば、約40未満のDP)を指す。
【0027】
本明細書の「α-G1P-産生酵素」は、少なくともα-G1Pを含む生成物の合成を触媒することができる酵素を指す。α-G1P-産生酵素の例としては、デンプンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、及びセロデキストリンホスホリラーゼが挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される「デンプンホスホリラーゼ」は、EC番号2.4.1.1のものであり、デンプン及び無機リン酸からα-G1Pを含む生成物への変換を可逆的に触媒することができる。そのような反応は、以下のように記述することもできる:(1,4-α-D-グルコシル)+ホスフェート⇔(1,4-α-D-グルコシル)n-1+α-G1P。
【0029】
本明細書で使用される「デンプン脱分枝酵素」は、デンプンの分枝点でα-1,6結合の加水分解を触媒することができる酵素を指す。本明細書のデンプン脱分枝酵素の例としては、プルラナーゼ及びイソアミラーゼが挙げられる。本明細書で使用される「プルラナーゼ」は、EC番号3.2.1.41のものである。本明細書で使用される「イソアミラーゼ」は、EC番号3.2.1.68のものである。
【0030】
本明細書の用語「スクロース」は、α-1,2-グリコシド結合によって連結されたα-D-グルコース分子及びβ-D-フルクトース分子から構成される非還元二糖を指す。スクロースは、一般に砂糖として知られている。
【0031】
本明細書で使用される「スクロースホスホリラーゼ」は、EC番号2.4.1.7のものであり、スクロース及びホスフェートのフルクトース及びα-G1Pへの変換を可逆的に触媒することができる。そのような反応は、以下のように記述することもできる:スクロース+ホスフェート⇔フルクトース+α-G1P。
【0032】
本明細書で使用される「セロデキストリンホスホリラーゼ」は、EC番号2.4.1.49のものであり、セロデキストリン及びホスフェートのα-G1Pを含む生成物への変換を可逆的に触媒することができる。そのような反応は、以下のように記述することもできる:(1,4-β-グルコシル)+ホスフェート⇔(1,4-β-D-グルコシル)n-1+α-G1P。
【0033】
本明細書では、「セルロース系バイオマス」、「セルロース含有バイオマス」などは同義語として使用され、食品成分又は醗酵基質として直接使用することができない、植物の構造部分(例えば、木部、茎)を含む材料を指す。
【0034】
本明細書では、「エンドグルカナーゼ」及び「ベータ-1,4-エンドグルカナーゼ」は同義語として使用され、セルロース鎖の内部結合を切断し、セルロース鎖をより短くすることができる酵素を指す。このような短鎖は、セロデキストリンホスホリラーゼにとって好適な基質である。
【0035】
本明細書で使用される「ラミナリビオースホスホリラーゼ」は、EC番号2.4.1.31のものであり、下記反応の変換を可逆的に触媒することができる:D-グルコース+α-G1P⇔3-β-D-グルコシル-D-グルコース+ホスフェート。
【0036】
本明細書で使用される「第2の反応」は、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応(「第1の反応」)に追加され、第1の反応に好適なα-G1Pを提供する反応を指す。本明細書の第2の反応は、任意選択的に、「α-G1P-産生反応」として特徴付けることができる。本明細書の少なくとも第1及び第2の反応の組み合わせは、「共役反応」である。本明細書の第2の反応は、典型的には、ホスホリラーゼ及び遊離ホスフェートを使用することにより、α-G1Pを提供し、二糖、オリゴ糖、又は多糖を加リン酸分解し、この加リン酸分解は、少なくともα-G1Pを生成する。
【0037】
本明細書で使用される「第3の反応」は、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応(「第1の反応」)に追加され、第1の反応に好適なアクセプターを提供する反応を指す。本明細書の第3の反応は、任意選択的に、「アクセプター-産生反応」として特徴付けることができる。本明細書の少なくとも第1及び第3の反応の組み合わせは、「共役反応」の別の形態である。本明細書の共役反応の更に別の形態は、第1、第2、及び第3の反応の3つ全てを含む。本明細書の第3の反応は、典型的には、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ(例えば、ラミナリビオースホスホリラーゼ)ではないホスホリラーゼ、G1P(例えば、α-G1P)、及び好適なアクセプター(例えば、グルコース)を使用することにより、アクセプター(例えば、ラミナリビオース)を提供する。
【0038】
本明細書の用語「ナノ濾過」は、低~中程度の高圧(典型的には5~30bar)により溶媒と少量の溶質(例えば、単糖)とが半透過性の膜を通して運ばれ、少量の溶質(例えば、β-1,3-グルカン)が保持される濾過プロセスを指す。本明細書のナノ濾過用の半透過性の膜は、例えば、0.1nm~10nmの孔径及び/又は100~5000ダルトンの分画分子量(MWCO)を有し得る。本明細書の用語「限外濾過」は、大きな溶質(例えば、β-1,3-グルカン)から、溶媒及び小さな溶質を除去するために、典型的には、ナノ濾過よりも大きな孔径を有する半透過性の膜を使用する濾過プロセスを指す。ナノ濾過又は限外濾過ユニットの膜を通過する物質は「透過物」と呼ばれる場合がある一方、膜を透過しない物質は「濃縮物」又は「保持物」と呼ばれる場合がある。
【0039】
用語「体積によるパーセント」、「体積パーセント」、「体積%」、「v/v%」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。溶液中の溶質の体積パーセントは、次式を用いて求めることができる[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%。
【0040】
用語「重量によるパーセント」、「重量パーセント(wt%)」、「重量-重量パーセント(%w/w)」などは、本明細書では同じ意味で用いられる。重量によるパーセントは、組成物、混合物又は溶液中に物質が含まれる場合に質量基準での物質の百分率を指す。
【0041】
「乾燥重量基準」(dwb)、「乾燥固形分基準」(dsb)の用語は、本明細書では同じ意味で用いられる。溶液中の乾燥重量基準での物質(例えば、β-1,3-グルカン)の量は、例えば、溶液中に溶解している全ての物質(例えば、β-1,3-グルカン、フルクトース、スクロース、グルコース、任意選択的に塩及び不純物)中に存在する物質の重量パーセンテージを意味する。例えば、溶液が20%(dwb)の溶解したβ-1,3-グルカンを含む場合、溶液から全ての水を除去して得られる乾燥物質中に20wt%のβ-1,3-グルカンが存在するであろう。
【0042】
本明細書中の溶液の「パーセント乾燥固形分」(パーセントDS)は、溶液中に溶解している全ての物質(すなわち固形物)のwt%を指す。例えば、10wt%のDSを有する100gの溶液は、10gの溶解した物質を含む。
【0043】
本明細書で用いられる用語「水性液体」、「水性流体」などは、水又は水溶液を意味し得る。本明細書の「水溶液」は、1種以上の溶解塩を含むことができ、ここで、いくつかの実施形態では、最大全塩濃度は、約3.5wt%であり得る。本明細書の水性液体は、典型的には、液体中の唯一の溶媒として水を含むが、水性液体は、任意選択的に、水に混和する1種以上の他の溶媒(例えば、極性有機溶媒)を含むことができる。従って、水溶液は、少なくとも約10wt%の水を有する溶媒を含むことができる。
【0044】
本明細書の「水性組成物」は、例えば、少なくとも約10wt%の水を含む液体成分を有する。水性組成物の例としては、例えば、混合物、溶液、分散液(例えば、コロイド分散液)、懸濁液及びエマルションが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用する場合、用語「コロイド分散液」は、分散相及び分散媒体を有する不均一系、すなわち微視的に分散した不溶性粒子が別の物質(例えば、水又は水性溶液などの水性組成物)全体に懸濁していることを指す。本明細書のコロイド分散液の例は、親水コロイドである。例えば親水コロイドなどのコロイド状分散液の粒子の全て又は一部は、本開示の不溶性β-グルカンを含むことができる。用語「分散剤(dispersant)」及び「分散剤(dispersion agent)」は、分散液の形成及び/又は安定化を促進する物質を意味するため、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0046】
「不溶性」、「水不溶性(aqueous-insoluble)」、「水不溶性(water-insoluble)」(及び同様の用語)(例えば、不溶性β-1,3-グルカン)であるグルカンは、水又は他の水性条件で溶解しない(又は認め得るほどに溶解しない)(ここで、水性条件は、任意選択的に、4~9のpH(例えば、pH6~8)(すなわち、非苛性)及び/又は約1~74℃(例えば、20~45℃、又は20~40℃)の温度を有することを更に特徴とする)。対照的に、「可溶性」、「水溶性(aqueous-soluble)」、「水溶性(water-soluble)」などである本明細書のグルカン(例えば、可溶性β-1,3-グルカン)は、これらの条件下でかなり溶解する。本明細書のいくつかの態様では、上記の定義に従って水不溶性であるβ-1,3-グルカンは、少なくとも約75℃の温度で水溶性になる。
【0047】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に関して本明細書で使用する用語「配列同一性」、「同一性」などは、特定の比較ウィンドウにわたって最高一致のために整列させたときに同一である、2つの配列内の核酸残基又はアミノ酸残基を指す。従って、「配列同一性のパーセンテージ」、「同一性パーセント」などは、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定される数値を指すが、このとき、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適アラインメントのための参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して付加又は欠失(すなわちギャップ)を含む可能性がある。パーセンテージは、両方の配列内で同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が発生する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、そのマッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。DNA配列とRNA配列との間の配列相同性を計算するとき、DNA配列のT残基は、RNA配列のU残基と合致し、従ってRNA配列のU残基と「同一である」と見なし得ることは理解されるであろう。第1及び第2のポリヌクレオチドの「相補性パーセント」を決定するために、例えば、(i)第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドの相補配列(又はその逆)間の同一性パーセント、及び/又は(ii)標準的なワトソン・クリック塩基対を作り出すであろう第1及び第2ポリヌクレオチド間の塩基のパーセンテージを決定することによってそれを得ることができる。
【0048】
同一性パーセントは、全てが参照により本明細書に組み込まれる:1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.)Humana:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);及び、5)Sequence Analysis Primer (Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載されるものを含むが、これらに限定されない任意の公知の方法によって容易に決定することができる。
【0049】
同一性パーセントを決定する好ましい方法は、試験する配列同士の最良の一致を付与するように設計される。同一性及び類似性を決定する方法は、例えば、公的に入手可能なコンピュータプログラムにコード化されている。配列アラインメント及び同一性パーセントの算出は、例えば、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイートのMEGALIGNプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を用いて実施することができる。配列の多重アラインメントは、例えば、Clustal Vアラインメント法を含む、様々な種類のアルゴリズムを包含するClustalアラインメント法(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151-153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.,8:189-191(1992)により記載され、また、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイートのMEGALIGN v8.0 プログラム(DNASTAR Inc.)に見出される)を用いて行うことができる。多重アラインメントの場合、デフォルト値はGAP PENALTY=10及びGAP LENGTH PENALTY=10に対応し得る。Clustal法を使用したタンパク質配列のペアワイズアラインメント及び同一性パーセントの計算のためのデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5及びDIAGONALS SAVED=5であり得る。核酸の場合には、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4及びDIAGONALS SAVED=4であり得る。更に、Clustal Wアラインメント法を使用することができ(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151-153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.8:189-191(1992);Thompson,J.D.et al.,Nucleic Acids Research,22(22):4673-4680,1994によって記載されている)、LASERGENEバイオインフォマティクス計算スイートのMEGALIGN v8.0 プログラム(DNASTAR Inc.)で見出すことができる。多重アラインメント(タンパク質/核酸)のデフォルトパラメータは: GAP PENALTY=10/15、GAP LENGTH PENALTY=0.2/6.66、Delay Divergen Seqs(%)=30/30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUBであり得る。
【0050】
本明細書には、様々なポリペプチドアミノ酸配列及びポリヌクレオチド配列が特定の実施形態の特徴として開示されている。本明細書に開示した配列と少なくとも約70~85%、85~90%又は90%~95%同一であるこれらの配列のバリアントを使用又は参照することができる。或いは、バリアントアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列は、本明細書に開示した配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の同一性を有し得る。バリアントアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列は、開示した配列と同一の機能/活性又は開示した配列の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%の機能/活性を有する。メチオニンで始まらない、本明細書に開示した任意のポリペプチドアミノ酸配列は、典型的には、アミノ酸配列のN末端に少なくとも開始メチオニンを更に含み得る。対照的に、メチオニンで始まる、本明細書に開示した任意のポリペプチドアミノ酸配列は、このようなメチオニン残基を任意選択的に欠失し得る。
【0051】
用語「単離された」は、本明細書で使用する場合、天然に存在しない形態又は環境にある物質(又は処理物)を特徴付ける。単離された基質の非限定的な例としては、任意の非天然に生じる基質、例えばβ-1,3-グルカン又は本明細書で合成されるような任意のその他のポリマー(並びに本明細書で開示されているβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ及びこれらの酵素を使用した反応物/処理物のいずれか)などが挙げられる。本明細書に開示される実施形態は、合成物/人工物(人間の介入/関与以外には製造できない)であり、且つ/又は天然に存在しない特性を有すると考えられる。
【0052】
本明細書で使用される「増加した」という用語は、増加した量又は活性が比較される量又は活性より少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%又は200%多い量又は活性を指すことができる。用語「増加した」、「上昇した」、「増強された」、「より多い」、「改善された」などの用語は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0053】
単離されたグルカンホスホリラーゼを用いたβ-1,3グリコシド結合を含有するグルカンを生成するための反応及び方法を本明細書にて開示する。
【0054】
本開示の特定の実施形態は、少なくとも水、α-グルコース-1-ホスフェート(α-G1P)、好適なアクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む反応組成物であって、酵素が、β-1,3-グルカンを合成する反応組成物に関する。有意には、このような酵素反応は、所望する場合、β-1,3-グルカンシンターゼの使用から完全に独立した方法でβ-1,3-グルカンを生成する。
【0055】
本明細書で開示される酵素反応で使用するのに好適なβ-1,3-グルカンホスホリラーゼは、例えば、配列番号2、4、6、8、10、若しくは12と100%同一であるか、若しくは少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.5%同一であるアミノ酸配列を含むか、又はそれらからなることができる。いくつかの態様では、配列番号2、4、6、8、10、又は12と80~99.5%のアミノ酸同一性を有するβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素は、それぞれ、配列番号2、4、6、8、10、又は12のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼの酵素活性の一部(例えば、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%)、又は全てを有し得る。配列番号2、4、6、8、10、又は12を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼの例としては、それぞれ、配列番号14、16、18、20、22、又は24が挙げられる。
【0056】
配列番号2、4、6、8、10、又は12をコードする本明細書のポリヌクレオチド配列(又は同一性がそれと80%以上又は90%以上の関連アミノ酸配列)は、任意選択的に、それぞれ、配列番号1、3、5、7、9、若しくは11と100%同一であるか、又は少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、若しくは99.5%同一であるヌクレオチド配列を含み得る。本明細書のこのような配列の例は、それぞれ、配列番号13、15、17、19、21、又は23である。
【0057】
特定のアミノ酸が互いに類似した構造的特徴及び/又は電荷の特徴を共有する(すなわち、保存されている)場合、本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ配列(及び/又は本明細書に記載の他のタイプのポリペプチド)の1つ以上のアミノ酸は、任意選択的に、以下のように、保存アミノ酸残基で置換されてもよい(「保存的アミノ酸置換」):
1.次の小さい脂肪族の非極性又は弱極性の残基は、相互に置換することができる:Ala(A)、Ser(S)、Thr(T)、Pro(P)、Gly(G);
2.次の極性の負荷電残基及びそれらのアミドは、相互に置換することができる:Asp(D)、Asn(N)、Glu(E)、Gln(Q);
3.次の極性の正荷電残基は、相互に置換することができる:His(H)、Arg(R)、Lys(K);
4.次の脂肪族の非極性残基は、相互に置換することができる:Ala(A)、Leu(L)、Ile(I)、Val(V)、Cys(C)、Met(M);及び
5.次の大きい芳香族残基は、相互に置換することができる:Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)。
【0058】
いくつかの態様では、本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素は、微生物源、例えば、細菌、真菌(例えば、酵母)、又は原生動物から得ることができる(又は得られ得る)。本明細書の細菌の例としては、パエニバチルス(Paenibacillus)種、ゴリリバクテリウム(Gorillibacterium)種、カロラマター(Caloramator)種、クロストリジウム(Clostridium)種、及びラクノクロストリジウム(Lachnoclostridium)種が挙げられる。本明細書のパエニバチルス(Paenibacillus)種の例としては、P.ステリファー(P.stellifer)、P.オドリファー(P.odorifer)、P.エテリ(P.etheri)、P.ソンチ(P.sonchi)、P.リオグランデンシス(P.riograndensis)、P.ボレアリス(P.borealis)、P.ジルンリ(P.jilunlii)、及びP.ティファエ(P.typhae)が挙げられる。本明細書のゴリリバクテリウム(Gorillibacterium)種の例としては、G.マッシリエンス(G.massiliense)、及びG.ティモネンス(G.timonense)が挙げられる。本明細書のカロラマター(Caloramator)種の例としては、C.アウストラリクス(C.australicus)、C.フェルビダス(C.fervidus)、及びC.ミッシェレンシス(C.mitchellensis)が挙げられる。本明細書のクロストリジウム(Clostridium)種の例としては、C.グランティイ(C.grantii)、C.ガングウェンス(C.ganghwense)、及びC.アエスツアリイ(C.aestuarii)が挙げられる。本明細書のラクノクロストリジウム(Lachnoclostridium)種の例としては、L.フィトファーメンタンス(L.phytofermentans)、及びL.マッシリオセネガレンス(L.massiliosenegalense)が挙げられる。
【0059】
本明細書に記載β-1,3-グルカンホスホリラーゼ活性を有する酵素の例は、N末端及び/又はC末端に1~300(又はその範囲の任意の整数[例えば、10、20、30、40、50、75、100、150、200、250])の残基を更に含む本開示のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼアミノ酸配列のいずれかであり得る。そのような付加的残基は、例えば、(N末端又はC末端のいずれかでの)エピトープタグなどの異種配列、又は(N末端での)異種シグナルペプチドであり得る。異種アミノ酸配列がN末端で導入される実施形態では、そのような異種配列は、例えば、β-1,3-グルカンホスホリラーゼの元の開始メチオニンに隣接してもよく、元の開始メチオニンに置き換わってもよい。後者の実施形態では、異種配列のN末端に新しい開始メチオニンが存在し得る。
【0060】
本明細書で開示したβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ活性を有する酵素は、典型的には、N末端シグナルペプチドを欠く。しかしながら、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を生成するための発現系は、任意選択的に、細胞外分泌を指示するN末端シグナルペプチドをコードする配列を更に含む酵素コードポリヌクレオチドを使用することができる。そのような実施形態におけるシグナルペプチドは、分泌プロセス中に酵素から切断される。本明細書に開示されるβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素(例えば、配列番号2、4、6、8、10、及び12)は、シグナルペプチドを伴わないと考えられることから、付加された任意のシグナルペプチドは、酵素とは異種であると考えられ得る。本明細書のシグナルペプチドの例は、細菌種(例えば、B.サブチリス(B.subtilis)などのバチルス(Bacillus)種)又は真菌種由来のシグナルペプチドである。
【0061】
本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼは、例えば、適切に遺伝子操作された微生物株の発酵によって調製することができる。大腸菌(E.coli)、バチルス属(Bacillus)株(例えば、B.サブティリス(B.subtilis))、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、並びにアスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、A.アワモリ(A.awamori))、トリコデルマ(Trichoderma)属(例えば、T.リーセイ(T.reesei))、及びマイセリオプソラ(Myceliophthora)属(例えば、M.サーモフィラ(M.thermophila))(例えば、Adrio及びDemain,Biomolecules 4:117-139,2014を参照されたい(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる))などの微生物種を用いる発酵による組換え酵素の生成は、当該技術分野で周知である。β-1,3-グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、典型的には、酵素のための発現カセットを形成するために異種プロモーター配列と連結され、及び/又はそれに合うようにコドン最適化される。そのような発現カセットは、当該技術分野で周知の方法を使用して、好適なプラスミドに組み込まれるか、又は微生物宿主染色体中に組み込まれ得る。発現カセットは、アミノ酸をコードする配列に続いて転写ターミネーターヌクレオチド配列を含み得る。発現カセットは、プロモーター配列とホスホリラーゼのアミノ酸コード配列との間に、β-1,3-グルカンホスホリラーゼの直接的な分泌のために設計されたシグナルペプチド(例えば、異種シグナルペプチド)をコードするヌクレオチド配列も含み得る。発酵の終わりに、細胞を適宜破壊してもよく(典型的には、分泌のためのシグナルペプチドが採用されない場合)、ホスホリラーゼは、沈殿、濾過、及び/又は濃縮などの方法を使用して単離することができる。或いは、ホスホリラーゼを含む溶解物又は抽出物を更に単離することなしに使用することができる。β-1,3-グルカンホスホリラーゼが分泌される(すなわち、それが発酵ブロス中に存在する)場合、それは、発酵ブロスから単離されたものとして、又は発酵ブロスに含まれるものとして任意選択的に使用され得る。β-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素の活性は、所望する場合、α-G1P及び好適なアクセプターを含有する本明細書の反応物中に酵素を入れた際に、リンの放出を測定するなどの、生化学的アッセイによって確認することができる(例えば、以下の実施例2に記載されたような条件下で)。いくつかの態様では、酵素によるβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ活性1単位を、約10mMのα-G1P、約1mMアクセプター(例えば、セロビオース又はラミナリビオース)、及び約60mMのTris-HClバッファ(約pH 7.0)を含み、約37℃で、約30分間インキュベートした水性反応物中で、1分当たりに無機リン1μmolを放出する酵素の量と定義することができる。無機ホスフェートの放出は、任意選択的に、PiBlue(商標)ホスフェートアッセイキット(BioAssay Systems,Hayward,CA)を用いて測定することができる。本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素は、例えば、セロビオースホスホリラーゼ活性を有しているものと考えられていない。本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素は、オリゴ糖/多糖を生成するため、このような酵素はラミナリビオースを生成しないと理解されるであろう(すなわち、このような酵素は、ラミナリビオースホスホリラーゼではない)。
【0062】
本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応は、β-1,3-グルカンを生成する。いくつかの態様では、本明細書のβ-グルカンを構成するグリコシド結合の約又は少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%は、β-1,3結合である。従って、いくつかの態様では、β-1,3-グルカンは、約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、若しくは0%、又は約それら未満のβ-1,3ではないグリコシド結合を有する。β-1,3-グルカン内に存在するβ-1,3結合のパーセンテージが高くなるほど、ポリマー内で分枝点を形成する特定の結合の発生率は低くなるため、β-1,3-グルカンが直鎖状である確率が高くなることは理解されよう。従って、100%のβ-1,3結合を有するβ-1,3-グルカンは、完全に直鎖状である。特定の実施形態では、β-1,3-グルカンは、分枝点を有していないか、ポリマー内のグリコシド結合のパーセントとして約5%、4%、3%、2%、又は1%未満の分枝点(典型的には、β-1,6)を有する。いくつかの態様では、所与の結合プロファイルは、アクセプターから合成されるβ-1,3-グルカンの結合プロファイルを特徴付ける(すなわち、結合プロファイルは、アクセプターの結合プロファイルを含まない)。ラミナリビオースが初期アクセプター分子として使用される態様では、前述の結合パーセンテージのいずれも、任意選択的に、生成物全体を特徴付けることができる。
【0063】
本明細書のβ-1,3-グルカンは、例えば、およそ又は少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、3~15、3~20、3~25、3~30、5~15、5~20、5~25、5~30、10~15、10~20、10~25、10~30、15~17、15~18、15~19、15~20、15~21、15~22、15~23、15~24、15~25、15~30、16~17、16~18、16~19、16~20、16~21、16~22、16~23、16~24、16~25、16~30、17~18、17~19、17~20、17~21、17~22、17~23、17~24、17~25、17~30、20~25、20~30、又は25~30のDPの分子量を有し得る。いくつかの更なる態様では、DPは、約30、25、24、23、22、21、20、又は19未満であり得る。いくつかの他の態様では、DPは、約、少なくとも約、又は最大約40、50、60、70、80、90、又は100であり得る。いくつかの態様では、任意の上述のDP値(例えば、8以上)は、代わりに、DPw又はDPnで表すことができる。いくつかの態様では、所与の分子量は、アクセプターから合成されるβ-1,3-グルカンの結合プロファイルを特徴付ける(すなわち、分子量は、アクセプターの分子量を含まない)。ラミナリビオースが初期アクセプター分子として使用される態様では、任意の前述の分子量の開示は、任意選択的に、生成物全体を特徴付ける。
【0064】
いくつかの態様におけるβ-1,3-グルカンは、水性条件で不溶性である。このような不溶性は、非苛性水性条件、例えば本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応の条件(下記を参照されたい)などである。DP17又は18の直鎖β-1,3-グルカンは、以下の実施例3において、約37℃で水不溶性であるが、約80~85℃で水溶性であることが示されている。従って、特定の態様では、約75、74、73、72、71、70、65、60、55、又は50℃未満の温度での非苛性水性条件において、少なくとも17又は18のDPを有する直鎖β-1,3-グルカン(典型的には、100%のβ-1,3結合)は不溶性であり、16以下、又は15以下のDPを有する直鎖β-1,3-グルカンは可溶性であると考えられる。少なくとも約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95℃又はそれ以上の温度での非苛性水性条件において、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19以下のDPを有する本明細書の直鎖β-1,3-グルカンは、水溶性であると考えられる。非苛性水性条件(又は本明細書の水性条件)としては、例えば、水、又は約、若しくは少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、98%、99%、若しくは100wt%の水、及び4~9のpH(例えば、pH4~8又は6~8)を有する溶媒を含む水溶液を挙げることができる。
【0065】
本明細書のβ-1,3-グルカンは、典型的には、不活性容器中で(典型的には、無細胞条件下で)(in vitroで)酵素的に誘導され、細胞壁(例えば、植物、真菌、原生動物[例えば、藻類]、又は細菌細胞壁)から誘導されない。いくつかの実施形態は、本明細書に開示された酵素反応プロセス/条件のいずれかによって生成されるか、又は生成可能(入手可能)なβ-1,3-グルカンに関する。
【0066】
好適なアクセプター分子は、本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応で使用され、典型的には、最初に反応物を調製する際に添加されるため、任意選択的に、「初期アクセプター」として特徴付けることができる。
【0067】
いくつかの態様では、アクセプター分子は、単糖、二糖、又はオリゴ糖を含む。更にいくつかの態様では、アクセプターは、単糖、二糖、又はオリゴ糖からなる(例えば、糖アクセプターは、化学的に誘導/置換されていない)。二糖又はオリゴ糖アクセプター分子は、典型的には、1つ以上のグルコースモノマー単位を含む(例えば、モノマー単位の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%はグルコースである)か、又はグルコースモノマー単位のみを含む。二糖又はオリゴ糖は、典型的には、1つ以上のグルコースモノマー単位に加えて、1つ以上の非グルコースモノマー単位を任意選択的に含み得る。いくつかの態様では、二糖又はオリゴ糖は、非グルコースモノマー単位のみを含む。二糖又はオリゴ糖の非グルコースモノマー単位(又は非グルコース単糖アクセプター)は、いくつかの態様では、フルクトース、アラビノース、キシロース、又はガラクトースであり得る。更に、いくつかの態様では、単糖アクセプターは、p-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド又はメチルβ-D-グルコピラノシドであり得る。いくつかの態様では、アクセプターは、グルコース、フルクトース、マンノース、又はグルコサミンではない(それらからならない)。アクセプターは、例えば、直鎖(分枝なし)、又は分枝であり得る。
【0068】
本明細書の二糖又はオリゴ糖アクセプター分子は、β-グリコシド結合及び/又はα-グリコシド結合を含み得る。アクセプターの結合は、例えば、100%のβ-グリコシド結合、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%のβ-グリコシド結合であり得る。二糖又はオリゴ糖アクセプターのグルコースモノマー間のβ-又はα-グリコシド結合は、以下の結合:1,1;1,2;1,3;1,4;及び/又は1,6のうちの1つのタイプ、若しくは2つ以上のタイプを含み得る。説明のために、結合は、全てβ-1,3グルコシド結合、又は全てβ-1,6グルコシド結合、又はβ-1,3とβ-1,6グルコシド結合の混合であり得る。
【0069】
本明細書のオリゴ糖アクセプターは、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、若しくは15モノマー単位を有し得るか、少なくともそれらを有し得るか、又は最大それらを有し得る。本明細書の二糖及びオリゴ糖アクセプター分子の特定例は、ラミナリビオース、セロビオース、ソホロース、ラミナリトリオース、ラミナリテトラオース、ラミナリペンタオース、ラミナリヘキサオース、ラミナリヘプタオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、若しくはゲンチオビオースを含むか、又はそれらからなる。いくつかの態様では、アクセプター分子は、ラミナリビオース又はDP3-15ラミナリオリゴ糖、例えば、ラミナリトリオース、ラミナリテトラオース、ラミナリペンタオース、ラミナリヘキサオース、若しくはラミナリヘプタオースなどを含むか、又はそれらからなる。いくつかの態様では、アクセプターは、本明細書に開示されるような二糖又はオリゴ糖のp-ニトロフェニル又はメチル誘導体であり得る。
【0070】
いくつかの態様では、アクセプター分子は、多糖を含む。更に、いくつかの態様では、アクセプターは、多糖からなる(例えば、多糖アクセプターは、化学的に誘導/置換されていない)。多糖アクセプター分子は、典型的には、1つ以上のグルコースモノマー単位を含む(例えば、モノマー単位の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%はグルコースである)か、又はグルコースモノマー単位のみを含む(すなわち、グルカン)。多糖は、典型的には、1つ以上のグルコースモノマー単位に加えて、1つ以上の非グルコースモノマー単位を任意選択的に含み得る。多糖の非グルコースモノマー単位は、いくつかの態様では、フルクトース、アラビノース、キシロース、又はガラクトースであり得る。
【0071】
本明細書の多糖クセプター分子は、β-グリコシド結合及び/又はα-グリコシド結合を含み得る。多糖アクセプターの結合は、例えば、100%のβ-グリコシド結合(例えば、β-グルカン)、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、若しくは95%のβ-グリコシド結合であり得る。多糖アクセプターのグルコースモノマー間のβ-又はα-グリコシド結合は、以下の結合:1,1;1,2;1,3;1,4;及び/又は1,6のうちの1つのタイプ、若しくは2つ以上のタイプを含み得る。説明のために、結合は、全てβ-1,3グルコシド結合、又はβ-1,3とβ-1,6グルコシド結合の混合であり得る(例えば、ペンダントβ-1,6-結合したグルコース基を有するβ-1,3-グルカン、又はβ-1,6結合によって互いに繰り返し結合したβ-1,3-グルカンのスパン[すなわち、ブランチ-オン-ブランチ(branch-on-branch)])。
【0072】
本明細書の多糖アクセプターは、例えば、約、少なくとも約16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、400、若しくは500のDP又はDPwを有し得る。このDP/DPwは、任意選択的に、これらの値の任意の2つの間の範囲として表すことができる。あくまで例として、DP/DPwは、約16~30、16~40、16~50、16~30、16~40、20~50、25~30、25~40、25~50、30~40、又は30~50であり得る。
【0073】
本明細書の多糖アクセプターの例は、ラミナリン、ミコラミナリン(mycolaminarin)、又はクリソラミナリンを含むか、又はそれらからなることができる。本明細書の多糖アクセプターは、典型的には、水溶性である。
【0074】
いくつかの態様におけるアクセプターは、参照により本明細書に組み込まれるStone,B.A.(2009,Chemistry of Beta-Glucans,In Antony Bacic et al.,Eds.,Chemistry,Biochemistry,and Biology of 1-3 Beta Glucans and Related Polysaccharides,Academic Press,Burlington,MA)で開示されるような、β-グルカン、特に可溶性β-グルカンであり得る。
【0075】
本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応の温度は、所望する場合、制御することができる。いくつかの態様では、温度は、約5℃~約50℃である。いくつかの態様における温度は、約20℃~約42℃である。更にいくつかの態様では、温度は、約20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、又は42℃である。
【0076】
いくつかの態様におけるβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応組成物のpHは、約4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、5.0~8.0、6.0~8.0、5.5~7.5、又は5.5~6.5であり得る。いくつかの態様では、pHは、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5又は8.0であり得る。pHは、好適なバッファ、限定はされないが、ホスフェート(例えば、リン酸ナトリウムバッファ、トリス(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン;例えば、Tris-HCl)、シトレート、又はこれらの組み合わせを含む好適なバッファを添加又は混入することによって調節又は制御することができる。酵素反応物におけるバッファ濃度は、例えば、0mM~約100mM、又は約10、25、50若しくは75mMであり得る。いくつかの態様では、バッファは、トリスを含むか、トリスからなる;この態様及びいくつかの他の態様では、バッファは、任意選択的に、ホスフェートを含まない。
【0077】
本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応物におけるα-G1Pの初期濃度は、例えば、約、又は少なくとも約1~100mMであり得る。また、例えば、α-G1Pの初期濃度は、約、少なくとも約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100mM、又は約10~50mMであり得る。本明細書のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ反応物におけるアクセプターの初期濃度は、例えば、約1~50mMであり得る。いくつかの態様では、アクセプターの初期濃度は、約、又は少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、若しくは50mM、又は約1~10若しくは5-10mMであり得る。更に、くつかの態様では、アクセプターの初期濃度は、約、又は少なくとも約0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5、7.5、若しくは10g/Lであり得る。α-G1P又はアクセプターなどの基質の「初期濃度」は、全ての反応成分が添加された直後の酵素反応物(少なくとも、水、α-G1P、アクセプター、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ)における基質濃度を指す。
【0078】
いくつかの態様における酵素反応物に含まれるβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素(活性酵素)の量は、約0.01~60mg/mLであり得る。例えば、約又は少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、8、10、20、30、40、50、又は60mg/mLの酵素を反応物に使用することができる。本明細書の反応物は、例えば、1種、2種又はそれ以上のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含み得る。いくつかの態様においては、1種又は2種のみのβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素が反応物に含まれる。本明細書の反応組成物は、細胞を含まないことができ、典型的には細胞を含まない(例えば、全細胞が存在しない)。
【0079】
反応組成物は、本明細書に開示される1つ以上の反応条件を適用するのに好適な任意の容器(例えば、不活性容器/コンテナ)内に入れることができる。いくつかの態様における不活性容器は、ステンレス鋼製、プラスチック製又はガラス製(又はこれらの構成要素の2つ以上を含む)であり得、且つ特定の反応物を入れるのに好適なサイズであり得る。不活性容器は、任意選択的に、撹拌装置を装備することができる。いくつかの態様における反応組成物は、生成物/用途物内に含まれ得る:そのような態様におけるβ-1,3-グルカンの生成は、任意選択的に、in situでの生成として特徴付けることができる。in situで生成したβ-1,3-グルカンは、典型的には、任意下流の単離プロセスを行わないが、所望であれば、行うことができる。例えば上記の特徴のいずれかを使用して、本明細書の単離された反応物を特徴付けることができる。
【0080】
いくつかの態様における、反応の終了は、視覚(例えば、不溶性生成物の蓄積がもはや認められない)及び/又は反応物中に基質(α-G1P及び/又はアクセプター)の残存量の測定(例えば、基質濃度が経時的にもはや減少しない)によって決定することができる。本明細書の反応は、例えば、約又は少なくとも約0.5、1、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、36、48、60、72、96、120、144、又は168時間実施され得る。
【0081】
本開示の実施形態は、また、β-1,3-グルカンを生成するための方法であって、
(a)少なくとも水、α-G1P、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を接触させ、β-1,3-グルカンを生成することと、
(b)任意選択的に、工程(a)で生成されたβ-1,3-グルカンを単離することと
を含む方法に関する。
【0082】
本明細書のβ-1,3-グルカンを生成する方法における接触工程は、任意選択的に、本明細書で開示される酵素反応物を準備することと特徴付けることができ、これは、少なくとも水、α-G1P、アクセプター分子、及びβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む。従って、本明細書の酵素反応組成物の任意の特徴は、同様に、本明細書で開示されるβ-1,3-グルカン生成方法を特徴付ける。
【0083】
β-1,3-グルカン生成方法における接触工程は、任意数の方法で行うことができる。例えば、所望量のα-G1P及び/又はアクセプターをまず水に溶解し(任意選択的には緩衝成分などの他の成分もこの調製段階で添加してもよい)、次いで、1種以上のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を添加することができる。反応は、例えば、静置され得るか、又は撹拌(例えば、撹拌器又はオービタルシェーカーによって)され得る。
【0084】
いくつかの態様では、β-1,3-グルカンの単離は、少なくとも遠心分離、濾過、分留、クロマト分離、透析、蒸発、及び/又は希釈の工程を実施することを含み得る。不溶性β-1,3-グルカンの単離としては、例えば、遠心分離又は濾過工程を少なくとも実施することを含むことができ、任意選択的に、遠心分離及び/又は濾過したβ-1,3-グルカンを、水又はその他の水性液体で、1回、2回、又はそれ以上洗浄することを更に含むことができる。洗浄体積は、任意選択的に、β-1,3-グルカンを生成するのに使用される反応組成物の体積の少なくとも約10~100%であり得る。洗浄は、必要に応じて、置換洗浄又はリスラリー洗浄などの様々な方式で行うことができる。本明細書の単離は、任意選択的に、β-1,3-グルカンを乾燥させること、及び/又は不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物(例えば、分散体)を調製することを更に含み得る。
【0085】
乾燥形態で提供される、本発明の単離されたβ-1,3-グルカン生成物は、例えば、2.0、1.5、1.0、0.5、0.25、0.10、0.05、又は0.01wt%以下の水を含み得る。いくつかの態様では、β-1,3-グルカン生成物は、少なくとも1グラム(例えば、少なくとも2.5、5、10、25、50、100、250、500、750、又は1000g)の量で提供され、このような量は、例えば、乾燥量であり得る。
【0086】
単離された(任意選択的に「精製された」と特徴付けられた)本明細書のβ-1,3-グルカンは、例えば、約100%、又は少なくとも約50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、98.5%、99%、99.5%、99.8%、若しくは99.9%のwt%(乾燥重量基準)で組成物中に存在し得る。このような単離されたβ-1,3-グルカン自体は、所望する場合、生成物/用途物において成分(ingredient)/成分(component)として使用され得る。
【0087】
本明細書のβ-1,3-グルカン生成方法を実施するためのα-G1Pは、例えば、単離されたα-G1P(例えば、民間の供給元から入手したα-G1P)を添加することにより直接供給され得る。或いは、α-G1Pは、少なくとも第2の反応を提供することによって供給することができ、第2の反応の生成物はα-G1Pを含む(すなわち、第2の反応は生成物としてα-G1Pを生成する)。
【0088】
いくつかの態様におけるα-G1Pを供給するための第2の反応は、(i)水、(ii)無機ホスフェート、(iii)二糖、オリゴ糖、又は多糖(その全てが、1つ以上のグルコースモノマー単位を含む)、及び(iv)二糖、オリゴ糖、又は多糖を加リン酸分解するホスホリラーゼを接触させることによりα-G1Pを生成する。この態様におけるホスホリラーゼは、本明細書のα-G1P-産生酵素の例である。第2の反応における二糖、オリゴ糖、又は多糖基質のモノマー単位は、例えば、全てグルコース、又は少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%のグルコースであり得る。モノマー単位間のグリコシド結合は、α-及び/又はβ-結合であり得、以下の結合:1,1;1,2;1,3;1,4;及び/又は1,6のうちの1つのタイプ、若しくは2つ以上のタイプを含み得る。二糖又は三糖は、典型的には、本明細書の第2の反応で用いられる。
【0089】
本明細書のα-G1P-産生酵素として好適なホスホリラーゼの例としては、デンプンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、及びセロデキストリンホスホリラーゼが挙げられる。少なくとも水及び無機ホスフェートの存在下で、これらの酵素は、それぞれ、デンプン(任意選択的に、プルラナーゼ及び/又はイソアミラーゼなどのデンプン脱分枝酵素で脱分枝化される)、スクロース、及びセロデキストリン(任意選択的に、セルラーゼ及び/又はエンドβ-1,4-グルカナーゼなどの1つ以上のβ-1,4-エンドグルカナーゼで、並びに任意選択的に、更に溶解多糖モノオキシゲナーゼ及び/又はセロビオヒドロラーゼでセルロース処理することにより調製される)を、α-G1Pを含む生成物に変換する。これらの酵素のいずれも、例えば、植物、微生物(例えば、細菌)、又は真菌(例えば、酵母)起源を有し得る。デンプンホスホリラーゼの例は、米国特許出願公開第2002/0133849号明細書、及びTiwari and Kumar(2012,Biotechnol.Mol.Biol.Rev.7:69-83)に開示されており、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。スクロースホスホリラーゼの例は、米国特許第5716837号明細書、同第7229801号明細書、及び同第7968309号明細書(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。いくつかの態様におけるスクロースホスホリラーゼは、ロイコノストック(Leuconostoc)種(例えば、L.メセンテロイデス(L.mesenteroides))から誘導可能であり得る。セロデキストリンホスホリラーゼの例は、米国特許第8889379号明細書、並びに米国特許出願公開第2014/0087435号明細書、同第2014/0057323号明細書、同第2013/0059340号明細書、及び同第2017/0327857号明細書に開示されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
本明細書のβ-1,3-グルカン生成方法を実施するためのアクセプター分子は、例えば、単離されたアクセプター(例えば、民間の供給元から入手したアクセプター)を直接添加することにより供給され得る。或いは、アクセプター分子は、少なくとも第3の反応物を提供することによって供給することができ、第3の反応の生成物はアクセプター分子を含む(すなわち、第3の反応物は生成物としてアクセプター分子を生成する)。第3の反応物は、典型的には、少なくともβ-1,3-グルカンホスホリラーゼではないホスホリラーゼ、G1P(例えば、α-G1P)、及びホスホリラーゼに好適なアクセプターを含む。例えば、第3の反応物は、ラミナリビオースホスホリラーゼ、α-G1P、及びグルコースを含むことができ、これはラミナリビオースホスホリラーゼのためのアクセプターとして機能し;このような第3の反応物は、ラミナリビオース(並びにホスフェート)を生成する。次いで、このラミナリビオース生成物は、β-1,3-ホスホリラーゼ及びα-G1Pを含む第1の反応においてアクセプターとして機能し得る。別の例として、第3の反応物は、セロビオースホスホリラーゼ、α-G1P、及びグルコースを含み;このような第3の反応物はセロビオース(並びにホスフェート)を生成し、これは、本明細書の第1の反応におけるアクセプターとして機能することができる。前述の開示は、本明細書で開示されるβ-1,3-グルカンホスホリラーゼのためのアクセプターを供給する代替的な方法に関し、アクセプターを供給するこの方法は、同様に、任意のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼを使用する場合に、適用され得る。このような実施形態におけるその他のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼの例としては、ユーグレナ(Euglena)種(例えば、E.グラシリス(E.gracilis)、GENBANKアクセション番号AUO30192.1)、オクロモナス(Ochromonas)種(例えば、O.ダニカ(O.danica)、GENBANKアクセション番号BAU78234.1)、フェルビドバクテリウム(Fervidobacterium)種(例えば、F.ペニボランス(F.pennivorans)、GENBANKアクセション番号BAU78236.1)、及びパエニバチルス(Paenibacillus)種(例えば、P.ポリミキサ(P.polymyxa)、GENBANKアクセション番号BAU78235.1)(その全てのGENBANKアクセション番号は、参照により本明細書に組み込まれる)由来のもの、又はこれらのGENBANKアクセション番号の配列のいずれかと少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であり、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ活性を有するアミノ酸配列を更に含む。任意の他のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼを用いる反応及び方法は、本明細書で開示される反応/方法の特徴のいずれかを有し得る。
【0091】
本明細書の第3の反応のためのアクセプター-産生ホスホリラーゼ(例えば、ラミナリビオースホスホリラーゼ、セロビオースホスホリラーゼ)は、例えば、植物、微生物(例えば、細菌)又は真菌(例えば、酵母)起源を有し得る。いくつかの態様におけるラミナリビオースホスホリラーゼは、パエニバチルス(Paenibacillus)種から誘導可能であり得る。ラミナリビオースホスホリラーゼの例は、Kitakoa et al.(2012,Biosci.Biotechnol.Biochem.76:343-348;1993,Arch.Biochem.Biophys.304:508-514)、及びNihira et al.(2012,Carb.Res.361:49-54)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。セロビオースホスホリラーゼの例は、Hamura et al.(2012,Biosci.Biotechnol.Biochem.76:812-818)、及びReichenbecher et al.(1997,Eur.J.Biochem.247:262-267)(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0092】
いくつかの態様における第2の反応及び/又は第3の反応は、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素反応(第1の反応)が実施されるのと同じ容器で提供することができ、任意選択的に、「共役反応」として特徴付けることができる(例えば、このような態様は、上記で開示されたin situでの反応組成物を含む)。或いは、第2の反応及び/又は第3の反応は、第1の反応が行われる容器の外で(別に)実施され得る。第2の反応及び/又は第3の反応は、例えば、第1の反応の前及び/又は連続的に実施することができる。本明細書の第2の反応及び/又は第3の反応の条件(例えば、時間、温度、pH)は、例えば、第1の反応について開示したとおりであり得る。いくつかの態様では、(i)第1及び第2の反応のみが実施されるか、(ii)第1及び第3の反応のみが実施されるか、又は(iii)第1、第2、及び第3の反応が実施される。3つ全ての反応([iii]のような)が共役反応として実施される場合、いくつかの態様では、(A)第1の反応及び/若しくは第3の反応のホスフェート生成物は、第2の反応で有利に使用することができ、並びに/又は(B)第2の反応のα-G1P生成物は、(第1の反応で使用することに加えて)第3の反応で有利に使用することができることが考えられる。
【0093】
本開示の実施形態は、また、β-1,3-グルカンを処理する方法であって、
(a)少なくとも17のDPを有する最大約40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物を準備することと;
(b)水性組成物を少なくとも約75℃まで加熱し、それによって、β-1,3-グルカンを水性組成物に溶解させて、溶液を得ることと;
(c)溶解したβ-1,3-グルカン以外の1つ以上の溶質の含有量(レベル又は濃度)を減少させる少なくとも1つのプロセスに溶液を供し、それによって、溶液中の溶解したβ-1,3-グルカンの含有量(レベル又は濃度)を乾燥重量基準で増加させることと;
(d)任意選択的に、β-1,3-グルカンが沈殿して不溶性状態に戻る温度まで溶液を冷却し、任意選択的に、沈殿したβ-1,3-グルカンを更に単離することと、
を含む方法に関する。
或いは、β-1,3-グルカンを処理する方法は、所望する場合、β-1,3-グルカンを純化する(refining)、精製する(purifying)、調製する(preparing)、又は処理する(treating)方法として特徴付けることができる。
【0094】
典型的な実施形態では、最大約40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物は、本明細書で開示されるβ-1,3-グルカン合成反応/方法を実施することにより供給され得る。或いは、最大約40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物は、例えば、生物源(例えば、植物、原生生物、真菌、細菌)からβ-1,3-グルカンを単離すること、(及び、任意選択的に、単離したβ-1,3-グルカンを加水分解してその分子量を減らすこと)、又はβ-1,3-グルカンシンターゼ(シンセターゼ)(例えば、参照により本明細書に組み込まれるMiyamoto and Tamari,1973,Agr.BioI.Chem.37:1253-1260を参照のこと)を用いて、in vitroでβ-1,3-グルカンを合成することによって、供給することができる。水性組成物は、非苛性である。本明細書の処理方法に入れられる水性組成物は、例えば、約又は最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含み得る。いくつかの態様では、水性組成物は、約5~40、5~35、5~30、2~25、5~20、10~40、10~35、10~30、10~25、10~20、15~40、15~35、15~30、15~25、15~20、20~40、20~35、20~30、20~25、25~40、25~35、25~30、30~40、30~35、又は35~40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む。本明細書の処理方法に入れられる水性組成物は、例えば、1つ以上の糖(例えば、フルクトース及び/又はグルコースなどの単糖;スクロース、ラミナリビオース、及び/又はセロビオースなどの二糖)、及び/又はその他の分子(例えば、緩衝成分、無機化合物、例えばホスフェートなど)などの溶質を含み得る。本明細書の水性組成物は、例えば、ペースト又はゲルの形態で、色は白であり得る。
【0095】
本明細書の処理方法は、少なくとも17のDPを有する不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物を処理することに関する。17以上のDPの例を、本明細書に開示する。いくつかの態様では、DPは、17又は18から、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30まで(又は17~30の本明細書で任意のDP)である。処理方法における不溶性β-1,3-グルカンは、典型的には、直鎖である。
【0096】
本明細書で開示される処理方法は、水性組成物を少なくとも約75℃まで加熱し、その中で不溶性β-1,3-グルカンを溶解させ、それによって、水性組成物を溶液に変換する工程(b)を含む。加熱は、例えば、約、少なくとも約75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、若しくは100℃未満、又は約それら未満の温度までであり得る。いくつかの態様における加熱は、約75~100、75~95、75~90、75~88、75~86、78~100、78~95、78~90、78~88、78~86、80~100、80~95、80~90、80~88、80~86、82~100、82~95、82~90、82~88、82~86、84~100、84~95、84~90、84~88、又は84~86℃までであり得る。加熱は、任意選択的に、水性組成物のかき混ぜ(例えば、撹拌又は振盪)によって達成され得る。β-1,3-グルカンを溶解させると、水性組成物は、典型的には、感触及び稠度が水に似ている(水と同様に取り扱う)溶液になる。溶液は、典型的には、クリア(clear)/透明(transparent)であるが、β-1,3-グルカン溶解前の水性組成物は、透明ではない(濁っている、不透明、及び/又は白色[例えば、乳白色])。
【0097】
いくつかの態様では、工程(b)で水性組成物を加熱することにより、約3~125mPa(ミリパスカル)の複素粘度を有する水性組成物がもたらされる。加熱した組成物の複素粘度は、例えば、約125、120、115、110、105、104、103、102、101、100、99、98、97、96、95、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、2、若しくは1mPa、又は約それら未満であり得る。また、例えば、加熱した組成物の複素粘度は、約2~20、2~15、2~10、5~20、5~15、5~10、7~20、7~15、7~10、90~105、90~103、90~100、95~105、95~103、95~100、97~105、97~103、又は97~100mPaであり得る。いくつかの態様では、約55~65℃(例えば、60℃)で測定した場合の本明細書の水性組成物の複素粘度は、約80~100、85~100、又は90~100℃の温度(例えば、又は80℃以上の上記の任意の温度)まで加熱すると、約55~65℃(例えば、60℃)で測定した場合、約、又は少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.8%、又は99.9%減少し得る。いくつかの態様における複素粘度は、約3~7、4~6、又は5Hzの周波数(任意選択的には、一定の周波数)で、及び/又は回転レオメータ(例えば、Kinexus(登録商標)レオメータ、Malvern Instruments)を使用して、任意選択的に、振動モードでプレートオンプレートジオメトリーで、測定することができる。いくつかの態様における複素粘度は、Franck(2004,Understanding rheology of structured fluids,Book of TA instruments,pp.1-11),Franck(2003,Ann.Trans.Nordic Rheol.Soc.11:95-100)、又は米国特許第9932503号明細書若しくは同第9913876号明細書(それらは参照により全て本明細書に組み込まれる)に従って測定することができる。
【0098】
本明細書の処理方法の工程(c)は、溶解したβ-1,3-グルカン以外の1つ以上の溶質の含有量(レベル/濃度)を減少させる少なくとも1つのプロセスに溶液を供し、それによって、溶液中の溶解したβ-1,3-グルカンの含有量(レベル/濃度)を乾燥重量基準で増加させる。この処理がなされる温度は、典型的には、少なくとも75℃(又は工程[b]で適用される任意の温度)である。この処理工程は、例えば、ナノ濾過及び/又は限外濾過を含み得る。処理されるβ-1,3-グルカンの分子量に基づいて、適切に、濾過アプローチ及び/又は濾過孔径を選択することができる。本明細書で適用可能であると検討される好適なナノ濾過又は限外濾過方法としては、Catarino et al.(2008,J.Membrane Science 312:34-40)、Machado et al.(2016,J.Food Eng.180:120-128)、米国特許出願公開第2017/0166938号明細書、並びに米国特許第6454946号明細書、同第5254174号明細書、同第5403604号明細書、及び同第9909119号明細書(参照により本明細書全て組み込まれる)により開示されているものが挙げられる。処理工程(c)は、例えば、溶解したβ-1,3-グルカン以外の溶質(例えば、上記参照のこと)のうちの1つ以上を完全に除去する(検出レベル未満まで)か、又は部分的に除去する(例えば、元の溶質の量の少なくとも約85重量%、90重量%、95重量%、99重量%、又は99.5重量%が除去される)と考えられる。いくつかの態様では、処理工程(c)は、溶液中に溶解したβ-1,3-グルカンの含有量を、乾燥重量基準で、約又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%増加させると考えられる。
【0099】
本明細書で開示された処理方法は、任意選択的に、β-1,3-グルカンが沈殿して不溶性状態に戻る温度まで溶液(工程[c]において処理に供された)を冷却し、任意選択的に、沈殿したβ-1,3-グルカンを単離する工程(d)を更に含む。冷却により、例えば、温度を、5℃~50℃(例えば、20~25℃)の間の、本明細書に開示されている任意の温度まで低下させることができる。冷却は、例えば、冷蔵、冷水浴でのインキュベーション、循環冷水ジャケットの使用、及び/又は溶液への冷水の添加を含む、任意数の方法のいずれかで行うことができる。沈殿したβ-1,3-グルカンは、その酵素合成後の不溶性β-1,3-グルカンを単離するために上記のように任意選択的に単離することができる。
【0100】
いくつかの代替的な態様では、方法は、代わりに、上記工程(a)、(b)、及び(d)を含むことができ(冷却及び/又は単離する工程[d]が任意選択的である場合);このような代替的な態様における1つ以上の溶質の除去(工程[c]による)もまた、任意選択的であり、典型的には、実施されない。β-1,3-グルカン純化方法の上記の他の特徴のいずれも、例えば、このような代替的な態様を特徴付けることができる。従って、本明細書のこのような代替的な態様の例は、β-1,3-グルカンを処理、取り扱い(handling)、操作(manipulating)、又は制御(controlling)する方法であって:
(a)少なくとも17のDPを有する最大約40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物を準備することと;
(b)水性組成物を少なくとも約75℃まで加熱し、それによって、β-1,3-グルカンを水性組成物に溶解させることと;
(c)任意選択的に、β-1,3-グルカンが沈殿して不溶性状態に戻る温度まで水性組成物を冷却することと、
を含む方法である。
【0101】
これらの代替的な態様のいくつかでは、冷却工程(c)が実施される;このような方法は、例えば、β-1,3-グルカンが、生成物/用途物に質感及び/又は粘度をもたらす生成物/用途物を調製するために使用することができる。これらの態様の水性組成物中のβ-1,3-グルカンにより示される熱可逆性/熱シフトは、このような生成物/用途物の生成を促進する。従って、この方法により生成される生成物/用途物もまた、開示される。
【0102】
いくつかの更なる代替的な態様では、代わりに、加熱工程(b)は、例えば、約、少なくとも約31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、31~40、31~39、31~38、31~37.5、36~40、36~39、36~38、36~37.5、36.5~38、36.5~37.5、37~38、若しくは37~37.5℃(例えば、平熱又は発熱などのヒト/哺乳類の体温)又は約それら以下の温度で実施することができる。加熱は、例えば、外部のヒト/哺乳類の体表面(例えば、皮膚、爪、毛髪)、ヒト/哺乳類の体の開口部(例えば、口腔、鼻腔、耳腔、直腸腔、尿生殖路)、又は内部のヒト/哺乳類の表面/器官(例えば、消化管、呼吸器系)への暴露(接触)によって実施することができる。このような更なる代替的な態様における水性組成物は、例えば、約又は最大約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、1~20、1~10、1~8、1~5、1~3、2~20、2~10、2~8、2~5、2~3、4~20、4~10、4~8、4~5、8~20、又は8~10wt%の本明細書の不溶性β-1,3-グルカンを含み得る。このような更なる代替的な態様の他の特徴は、例えば、複素粘度(加熱工程[b]の後)、及び/又はβ-1,3-グルカンDPなどの上記で開示したもののいずれかであり得る。このような更なる代替的な態様は、任意選択的に、β-1,3-グルカンの取り扱い、操作、制御、又は触感覚(感触)する方法として特徴付けることができる。様々な水性生成物/用途物は、これらの更なる代替的な態様におけるβ-1,3-グルカンの水性組成物によって示される熱可逆性/熱シフト特性の利点を得ることができ、例えば、ヒト/哺乳類の触覚反応/感度/感覚を生成、誘発、又は刺激する生成物(例えば、触覚反応がβ-1,3-グルカン溶液の状態の変化[非溶解から溶解へ]によって刺激される場合)などである。従って、本明細書のこのような更なる代替的な態様の例は、β-1,3-グルカンの取り扱い、操作、制御、又は触感覚(感触)する方法であって:
(a)少なくとも17のDPを有する最大約20wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物を準備することと;
(b)水性組成物を少なくとも約31~40℃まで加熱し、それによって、β-1,3-グルカンを水性組成物に溶解させることと;
(c)任意選択的に、β-1,3-グルカンが沈殿して不溶性状態に戻る温度まで水性組成物を冷却することと、
を含む方法である。
従って、このような方法(例えば、工程[a]及び[b])を実施するための生成物/用途物もまた、開示されている。
【0103】
本明細書に開示される組成物及び方法の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
1.少なくとも水、α-G1P、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む反応組成物であって、酵素が、β-1,3-グルカンを合成する反応組成物。
2.β-1,3-グルカンが、少なくとも約90%のβ-1,3グリコシド結合を有する、実施形態1に記載の反応組成物。
3.β-1,3-グルカンが、少なくとも約99%のβ-1,3グリコシド結合を有する、実施形態2に記載の反応組成物。
4.β-1,3-グルカンの重合度(DP)が、少なくとも3である、実施形態1、2、又は3に記載の反応組成物。
5.β-1,3-グルカンのDPが、少なくとも約15である、実施形態4に記載の反応組成物。
6.アクセプター分子が、単糖、二糖、又はオリゴ糖を含む、実施形態1、2、3、4、又は5に記載の反応組成物。
7.アクセプター分子が、ラミナリビオースを含む、実施形態6に記載の反応組成物。
8.アクセプター分子が、多糖を含む、実施形態1、2、3、4、又は5に記載の反応組成物。
9.多糖がβ-グルカンを含む、実施形態8に記載の反応組成物。
10.β-グルカンがラミナリンを含む、実施形態9に記載の反応組成物。
11.β-1,3-グルカンを生成するための方法であって(例えば、実施形態1~10のいずれかに記載の反応組成物中で生成されるような)、方法が:(a)少なくとも水、α-G1P、アクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を接触させ、β-1,3-グルカンを生成することと、(b)任意選択的に、工程(a)で生成されたβ-1,3-グルカンを単離することと、を含む方法。
12.α-G1Pが、工程(a)において第2の反応を行うことによって供給され、第2の反応の生成物は、α-G1Pを含む、実施形態11に記載の方法。
13.第2の反応が、工程(a)が実施される容器と同じ容器で提供され、第2の反応が、工程(a)の前に及び/又は工程(a)に続いて実施される、実施形態12に記載の方法。
14.第2の反応が、(i)水、(ii)無機ホスフェート、(iii)グルコース-含有二糖、オリゴ糖、又は多糖、及び(iv)二糖、オリゴ糖、又は多糖を加リン酸分解するホスホリラーゼを接触させることによりα-G1Pを生成する、実施形態12又は13に記載の方法。
15.アクセプター分子が、工程(a)において第3の反応を提供することによって提供され、第3の反応の生成物が、アクセプター分子を含む、実施形態11、12、13又は14に記載の方法。
16.第3の反応によって提供されるアクセプター分子が、ラミナリビオースである、実施形態15に記載の方法。
17.β-1,3-グルカンを処理する方法であって、方法が:(a)少なくとも17の重合度(DP)を有する最大約40wt%の不溶性β-1,3-グルカンを含む水性組成物を準備することと(任意選択的に、実施形態1~10のいずれかに記載の反応組成物、又は実施形態11~16のいずれかに記載の方法を実施することによる);(b)水性組成物を少なくとも約75℃まで加熱し、それによって、β-1,3-グルカンを水性組成物に溶解させて、溶液を得ることと;(c)溶解したβ-1,3-グルカン以外の1つ以上の溶質の含有量を減少させる少なくとも1つのプロセスに溶液を供し、それによって、溶液中の溶解したβ-1,3-グルカンの含有量を乾燥重量基準で増加させることと;(d)任意選択的に、β-1,3-グルカンが沈殿して不溶性状態に戻る温度まで溶液を冷却し、任意選択的に、沈殿したβ-1,3-グルカンを単離することと、
を含む方法。
18.(c)のプロセスが、ナノ濾過及び/又は限外濾過を含む、実施形態17に記載の方法。
【実施例
【0104】
以下の実施例において、本開示を更に例示する。これらの実施例は、本発明の特定の態様を示しているが、単に説明の目的でのみ示されていることが理解されるべきである。上述の考察及びこれらの実施例から、当業者であれば、本明細書に開示した実施形態の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨及び範囲を逸脱しない範囲で、本明細書に開示した実施形態を様々な使用及び条件に適合させるために様々な変更形態及び修飾形態をなし得る。
【0105】
実施例1
推定上のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼのクローニング及び発現
本実施例は、様々な推定上のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素のクローニング及び発現を記載する。
【0106】
6つの推定上のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列を同定した。これらの酵素を、PstGp1(配列番号2)、GmaGp1(配列番号4)、PspGp2(配列番号6)、CauGp1(配列番号8)、CgrGp1(配列番号10)、及びLphGp1(配列番号12)と表示した。これらの酵素の天然遺伝コード配列のそれぞれの配列番号を表1で示す。これらの酵素の各々のアミノ酸配列のアラインメントは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイト上のBLAST searchにより、GENBANKデータベースに対して行われた。表2(下記)は、それぞれのクエリ配列と少なくとも90%のアミノ酸同一性を有する各アラインメントによって提供されるデータベース配列を列挙する。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
PstGp1(配列番号2)、GmaGp1(配列番号4)、PspGp2(配列番号6)、CauGp1(配列番号8)、CgrGp1(配列番号10)、及びLphGp1(配列番号12)をコードする核酸配列を、大腸菌(Escherichia coli)における発現のために各々最適化した。具体的には、コドン最適化核酸配列を合成し、個別に、Generay Biotech Co.(Shanghai,China)により、NdeI及びXhoI部位で、発現ベクターpET30a(Novagen,Madison,WI)に挿入し、発現プラスミドを得た。pET30aへの各挿入により、(LacI-制御されたT7プロモーターの下で)推定上のβ-1,3-ホスホリラーゼ(上記と同じアミノ酸配列)をコードする配列が得られ、その後に2つの追加のアミノ酸(Leu-Glu)(XhoI部位から得られる)及びC末端に6x Hisタグが続いた。各pET30a構築物によりコードされるPstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号14、16、18、20、22、及び24であった;これらのアミノ酸配列の遺伝コード配列のためのそれぞれの配列番号を表1に示す。
【0110】
各発現プラスミドは、個別に、大腸菌(E.coli)BL21(DE3)pLysS(Novagen)に形質転換され、形質転換混合物を、50ppmのカナマイシン及び30ppmのクロラムフェニコールを補充したルリア(Luria)寒天プレートに広げた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びシーケンス分析によって確認されたとおり、正しい発現プラスミドを保持するコロニーを、50ppmのカナマイシン及び30ppmのクロラムフェニコールを補充した5mLのルリアブロスに接種し、次いで、約24時間振盪しながら37℃でインキュベートした。各形質転換体におけるpET30a構築物からの発現を誘導するために、各培養物約1mLを、50ppmのカナマイシン及び30ppmのクロラムフェニコールを補充した25mLのMagicMedia(商標)(Thermo Fisher Scientific)に接種し、次いで、約24時間振盪しながら37℃でインキュベートした。
【0111】
タンパク質発現誘導期間後、遠心分離により細胞を回収し、その後、細胞ペレットを、溶解バッファ(50mMトリス pH7.0、500mM NaCl、10%グリセロール、0.1%TWEEN-20)に再懸濁し、10分間の超音波処理により氷上で溶解した(35%出力、20分、2秒オン/2秒オフ)(SCIENT2-II D、Ningbo Scientz Biotechnology Co.,Ltd)。次いで、溶解物を13000rpmで30分間遠心分離して不純物を取り除いた(BECKMAN COULTER,Avanti J-E)。不純物を除去した溶解物を、50mMトリス pH7.0、500mM NaCl、及び10%グリセロールで予め平衡化したHis Trap(商標)HP(5mL)ヒスチジンタグ付きタンパク質精製カラム(GE Healthcare)に個別に適用した。標的タンパク質を、平衡化バッファ中0~250mMイミダゾールの直線勾配を用いてカラムから溶出させた。標的タンパク質を含む画分をプールし、Amicon ULTRA限外濾過(10kDaカットオフ)デバイスを用いて濃縮及び平衡化バッファとのバッファ交換を行い、使用するまで40%グリセロール中に-20℃で貯蔵した。次いで、精製した各標的タンパク質を、以下の実施例2及び3で記載されるとおり、β-1,3-グルカンホスホリラーゼ活性及び生成物形成について分析した。
【0112】
実施例2
PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1のホスホリラーゼ活性の分析
本実施例は、実施例1、すなわちPstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1で発現される推定上のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼのホスホリラーゼ活性の測定について記載する。
【0113】
PstGp1(配列番号14)、GmaGp1(配列番号16)、PspGp2(配列番号18)、CauGp1(配列番号20)、CgrGp1(配列番号22)、及びLphGp1(配列番号24)の各々のホスホリラーゼ活性を、96ウェルプレート形式の100mL反応物で測定した。各反応物(水系)を、37℃で30分間インキュベートし、約4ppmの前述のタンパク質のうちの1つ、10mMのα-G1P(α-D-グルコース-1-リン酸二ナトリウム塩水和物、Sigma-Aldrich、製品番号G7000)、初期アクセプターとしての1mMのセロビオース(D-[+]-セロビオース、Sigma-Aldrich、製品番号C7252)、及び60mMのTris-HClバッファ、pH7.0が含まれた。各反応物からのリン放出は、PiBlue(商標)試薬(BioAssay Systems,Hayward,CA)を用いて定量化した。ホスホリラーゼ活性1単位を、上記試験条件下で1分当たりに無機リン1μmolを放出する酵素の量と定義した。試験したタンパク質の各々はホスホリラーゼ活性を有し、遊離ホスフェートを放出しながら、セロビオースアクセプターにグルコース(α-G1Pから誘導される)を添加できることを示している。伸長された生成物(すなわち、その非還元末端で1つのグルコースモノマーによって伸長されたセロビオース)自体が、進行中のホスホリラーゼ活性のためのアクセプターとして機能した可能性がある。
【0114】
また、グルコース、p-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド、及びラミナリンを本アッセイを用いて、アクセプター機能について別個に試験した。p-ニトロフェニルβ-D-グルコピラノシド(1mM)及びラミナリン(5mg/mL)は、各々アクセプターとして機能し得るが、グルコース(1mM)はアクセプターとして機能できないことが見出された。
【0115】
これらの結果に基づいて、PstGp1(配列番号2)、GmaGp1(配列番号4)、PspGp2(配列番号6)、CauGp1(配列番号8)、CgrGp1(配列番号10)、及びLphGp1(配列番号12)は、ホスホリラーゼ活性を有すると考えられる。これらの結果は、表2から見て、際立っており、これは、PstGp1、GmaGp1、CauGp1、及びLphGp1が、以前は「仮想タンパク質」としてのみ特徴付けられており、PspGp2及びCgrGp1にはセロビオースホスホリラーゼ活性があると考えられている可能性があることを示す。セロビオースホスホリラーゼ酵素は、セロビオースをグルコース及びα-G1Pに可逆的に変換することが知られている。本データは、遊離ホスフェート放出により示されるように、PstGp1(配列番号2)、GmaGp1(配列番号4)、PspGp2(配列番号6)、CauGp1(配列番号8)、CgrGp1(配列番号10)、及びLphGp1(配列番号12)が、特定のアクセプター化合物を認識して、伸長することができることを示唆する。
【0116】
実施例3
PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1ホスホリラーゼによるβ-1,3-グルカンの生成
本実施例は、PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1ホスホリラーゼを用いて直鎖β-1,3-グルカンを生成する反応について記載しており、それにより、これらのホスホリラーゼの各々がβ-1,3-グルカンホスホリラーゼであることを確認する。
【0117】
α-G1Pは、本実施例の反応(下記)において、スクロースに対するスクロースホスホリラーゼの活性により供給された(遊離ホスフェートを用いて、スクロースホスホリラーゼは、スクロースをフルクトース及びα-G1Pに変換する)。ラミナリビオースは、PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、又はLphGp1の各々のための初期アクセプター化合物としての役割を果たした;ラミナリビオースは、これらのホスホリラーゼの各々によって伸長され(その非還元末端で)、3の重合度(DP)を有するβ-1,3-グルカンを生成した。β-1,3-グルカン(DP3以上)自体もまた、PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、又はLphGp1の各々によって伸長され(その非還元末端で)、より高いDPを有するβ-1,3-グルカンを生成した。ラミナリビオースの初期アクセプターは、これらの反応において、どちらの基質も、ラミナリビオースホスホリラーゼによって使用され、ラミナリビオース及び遊離ホスフェートを生成する、α-G1P(スクロースホスホリラーゼによって供給される)、及びグルコース(直接供給される)に対するラミナリビオースホスホリラーゼの活性により供給された。
【0118】
PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1ホスホリラーゼの各々を試験するために、直前に記載したとおりの個々の共役反応を実施した。各1Lの反応(水系)は、最初にpH7.0の100mMリン酸ナトリウムバッファ、200g/Lのスクロース、1g/Lのグルコース、4mg/Lのロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)スクロースホスホリラーゼ(Sigma-Aldrich、製品番号S0937)、1mg/Lのパエニバチルス(Paenibacillus)のラミナリビオースホスホリラーゼ(Kitakoa et al.,2012,Biosci.Biotechnol.Biochem.76:343-348(これは参照により本明細書に組み込まれる))、及びPstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、又はLphGp1ホスホリラーゼのうちの1つを4mg/L含有する溶液中で、37℃で実施された。1~2日のインキュベーション後、反応の各々において、不溶性グルカンの沈殿が始まった。各反応をさらに3~5日間続けて、完全に変換したが、その時点で不溶性グルカンの蓄積はなかった。
【0119】
各反応で生成された不溶性グルカンを純化するために、次の工程を実行した。まず、不溶性グルカンを10,000rpmで20分間遠心分離することによって各反応物から収集し、その後、上清を除去し、約75wt%の水(約25wt%の固形分)を含有する湿ったペレットを残した。ペレットは不透明な白色で、各々がペーストに似ていた。次いで、各ペレット(約400~500mL)を、水浴にて85℃まで加熱し、約5~10分後、ペレットの液化がもたらされた(すなわち、不溶性β-1,3-グルカンがペレットの水相に溶解)(別の実験では、80℃での加熱もペレットの液化をもたらすことを示した)。各液化ペレット、むしろ溶液は、水のような感触及び稠度であり、黄色っぽい色相でクリア/透明であった。次いで、冷水を添加して総量を1Lにし、その結果、不溶性グルカンが沈殿した。次いで、沈殿した不溶性グルカンを、沈殿工程で使用した水と同じ量を使用して、水で2回洗浄した。不溶性グルカン(水中約25wt%固形分)が高温で水のような状態まで溶解しやすいため、溶解したグルカンの特定の液体処理をすぐに適用できると考えられる。例えば、存在する可能性のある糖(単糖及び/又は二糖)を除去するために、ナノ濾過又は限外濾過を適用することができる。
【0120】
上記ホスホリラーゼによって合成されたβ-1,3-グルカンの加熱された試料の水のような稠度を調査するために、更なる作業を実施した。Kinexus(登録商標)回転レオメータ(Malvern Instruments)を使用して、振動モード(温度の関数として5Hzの一定周波数)にてプレートオンプレートジオメトリーで、試料の粘度遷移を測定した。例えば、ホスホリラーゼPspGp2によって生成されたβ-1,3-グルカン(水中17wt%)について、複素粘度(参照により本明細書に組み込まれるFranck,2004,Understanding rheology of structured fluids,Book of TA instruments,pp.1-11に従って測定した)は、60℃にて約10000mPaから、95℃にて約100mPaへ変化したことが見出された。同様に、ホスホリラーゼCgrGp1によって生成されたβ-1,3-グルカン(水中28wt%)について、複素粘度は、60℃にて約100000mPaから95℃にて約10mPaへ変化した。これらの測定された粘度遷移は非常に劇的であり、非流動ペーストから低粘度流体に変化するこれらの試料の目視観察によく対応していた。
【0121】
次いで、各洗浄された不溶性グルカン生成物のグリコシド結合プロファイルを、NMR(核磁気共鳴、H 600-MHz NMR、DSS/DOを添加した3%LiCl/DMSO、80℃)で分析した。各生成物の結合は、100%がβ-1,3であることが判明した。従って、開示されたPstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1ホスホリラーゼの各々の不溶性グルカン生成物は、直鎖β-1,3-グルカンであった。SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)分析(Aminex(登録商標)HPX-42Aカラム、水の溶離液、0.6mL/分流速、85℃、RI検出器を使用)は、これらの直鎖β-1,3-グルカン生成物が、約17又は18のDPを有することを示した。
【0122】
本実施例の結果は、表2から見て、際立っており、これは、PstGp1、GmaGp1、CauGp1、及びLphGp1は、以前は「仮想タンパク質」としてのみ特徴付けられており、PspGp2及びCgrGp1にはセロビオースホスホリラーゼ活性があると考えられている可能性があることを示す。本データは、PstGp1(配列番号2)、GmaGp1(配列番号4)、PspGp2(配列番号6)、CauGp1(配列番号8)、CgrGp1(配列番号10)、及びLphGp1(配列番号12)が、各々、α-G1P及びラミナリビオースを用いて、直鎖β-1,3-グルカンを合成することができることを示す。そのため、PstGp1、GmaGp1、PspGp2、CauGp1、CgrGp1、及びLphGp1ホスホリラーゼは、β-1,3-グルカンホスホリラーゼである。これらのβ-1,3-グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列が、以前に開示された唯一のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼアミノ酸配列の代表であると考えられている、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)(GENBANKアクセション番号AUO30192.1)、オクロモナス・ダニカ(Ochromonas danica)(GENBANKアクセション番号BAU78234.1)、フェルビドバクテリウム・ペニボランス(Fervidobacterium pennivorans)(GENBANKアクセション番号BAU78236.1)、及びパエニバチルス・ポリミキサ(Paenibacillus polymyxa)(GENBANKアクセション番号BAU78235.1)由来のβ-1,3-グルカンホスホリラーゼアミノ酸配列とそれぞれ、最大約25%、43%、63%、及び50%の配列同一性を有するように見えるため、本実施例の結果は、更に際立っている。本開示の反応のβ-1,3-グルカン生成物-17又は18のDPを有する直鎖-は、水不溶性であることも注目に値する。この観察は、DPが20未満の直鎖β-1,3-グルカン生成物が水溶性であることを示す他の開示と対照的である(例えば、Legentil et al.,2015,Molecules 20:9745-9766;Mishima et al.,2009,J.Biol.Chem.284:28687-28697; Yamamoto et al.,2013,Biosci.Biotechnol.Biochem.77:1949-1954;Ogawa et al.,1973,Carbohydr.Res.29:397-403)。
【0123】
従って、β-1,3-グルカンは、少なくとも水、α-G1P、ラミナリビオースなどの好適なアクセプター分子、及び配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、又は配列番号12を含むβ-1,3-グルカンホスホリラーゼ酵素を含む反応中で合成することができる。不溶性β-1,3-グルカン生成物を含む本実施例の水性組成物は、加熱により、容易に水のような組成物に変換され、これは、例えば、組成物中の非-β-1,3-グルカン成分(例えば、糖)のレベルを低下させる1つ以上の処理工程に影響を受けやすいと考えられる。
【配列表】
0007431172000001.app