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特許7431174高温空気導入を用いたスルーエア乾燥システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】高温空気導入を用いたスルーエア乾燥システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/16 20060101AFI20240206BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20240206BHJP
   F26B 21/04 20060101ALI20240206BHJP
   F26B 23/00 20060101ALI20240206BHJP
   F26B 23/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
F26B13/16
F26B3/04
F26B21/04 Z
F26B23/00 A
F26B23/02 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020561050
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2019014505
(87)【国際公開番号】W WO2019212612
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】62/665,120
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513020180
【氏名又は名称】ヴァルメット・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジェクター・ミハイル・ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ジューイット・デニス・エドワード
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0223765(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0132598(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0199202(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0118009(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0069551(US,A1)
【文献】米国特許第05584190(US,A)
【文献】特開2008-101283(JP,A)
【文献】特開昭59-009485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/16
F26B 3/04
F26B 21/04
F26B 23/00
F26B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を乾燥又は熱接着するためのスルーエア乾燥機(through air dryer: TAD)システムであって、
所望の温度の加熱空気を受け取るように構成されたフードと、
前記フードに囲まれる有孔シリンダであって、前記所望の温度の加熱空気は、前記有孔シリンダ上に配置された前記物品を通過して当該物品を乾燥又は熱接着する過程で冷却空気になり、前記有孔シリンダは前記冷却空気を流出するように構成される、有孔シリンダと、
空気を加熱して第1の加熱空気を生成するように構成された少なくとも1つの加熱エレメントであって、少なくとも1つの熱交換器、少なくとも1つの電気ヒータ、および/または少なくとも1つの蒸気コイルを含む、少なくとも1つの加熱エレメントと、
前記少なくとも1つの加熱エレメントと流体連通して、前記第1の加熱空気を前記冷却空気の少なくとも一部と合流させることにより混合空気を生成する、少なくとも1つのファンと、
前記混合空気を加熱して第2の加熱空気を生成するように構成される、燃焼ヒータと、
前記第2の加熱空気に作用して、前記フードに流入させるための所望の温度の前記加熱空気を生成させる、混合エレメントと、
を備える、TADシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントによって加熱される前記空気が、周辺空気である、TADシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントによって加熱される前記空気が、前記冷却空気の一部である、TADシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のTADシステムにおいて、前記周辺空気が、前記少なくとも1つの加熱エレメントのうちのグリコール-空気熱交換器を通過する、TADシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントによって加熱される空気が、周辺空気と前記冷却空気の一部とを合せたものである、TADシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、さらに、
第3の加熱空気を生成するように構成された第2の燃焼ヒータと、
前記第3の加熱空気に作用して所望の温度の第4の加熱空気を生成する第2の混合エレメントと、
前記第4の加熱空気を受け取るように構成される第2のフードと、
前記第2のフードに包囲される第2の有孔シリンダであって、前記第4の加熱空気は、前記第2の有孔シリンダ上に配置された第2の物品を通過して当該物品を乾燥又は熱接着することで、第2の冷却空気となる有孔シリンダと、
を備える、TADシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のTADシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントによって加熱される前記空気が、前記冷却空気のうちの少なくとも一部と前記第2の冷却空気のうちの少なくとも一部との組合せである、TADシステム。
【請求項8】
請求項4に記載のTADシステムにおいて、前記冷却空気の一部が空気-グリコール熱交換器のグリコールを加熱するように用いられて、加熱された当該グリコールが前記グリコール-空気熱交換器のコイルに供給される、TADシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のTADシステムにおいて
前記少なくとも1つの熱交換器が、中間加熱空気を生成するグリコール-空気熱交換器を含み
前記少なくとも1つの電気ヒータが、前記中間加熱空気に作用して前記第1の加熱空気を生成する電気ヒータを含む、TADシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、前記第1の加熱空気を前記冷却空気の少なくとも一部と混合することで、前記燃焼ヒータで担うことが必要な燃焼量を減少させる、TADシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、
前記第1の加熱空気を前記冷却空気の少なくとも一部と合流させることが、前記TADシステムのメイン再循環ファンよりも前に行われ
前記少なくとも1つのファンは、空気の流れにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントの上流側に配置される、TADシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のTADシステムにおいて、
前記冷却空気は予め昇温させた周辺空気と混合され、これら冷却空気と予め昇温させた周辺空気との混合空気は、ファンを通過した後、蒸気熱交換器、オイル熱交換器、及び電熱交換器のうちの少なくともいずれかを通過する、TADシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のTADシステムにおいて、前記蒸気熱交換器は空気を182℃にまで加熱する、TADシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のTADシステムであって、前記オイル熱交換器は空気を182℃~290℃にまで加熱する、TADシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のTADシステムであって、前記電熱交換器は空気を290℃~450℃またはそれ以上にまで加熱する、TADシステム。
【請求項16】
請求項1に記載のTADシステムであって、前記燃焼ヒータと前記混合エレメントの間には前記加熱エレメントが位置しないように構成される、TADシステム。
【請求項17】
物品を乾燥又は接着する方法であって、
スルーエア乾燥機(through air dryer: TAD)のフードに、所望の温度の加熱空気を送り込む工程であって、前記フードは有孔シリンダを取り囲んでおり、所望の温度の加熱空気が前記有孔シリンダ上に配置された物品を通過することにより冷却空気となると共に、前記物品を乾燥または熱接着させる工程と、
少なくとも1つの熱交換器、少なくとも1つの電気ヒータ、および/または少なくとも1つの蒸気コイルを含む少なくとも1つの加熱エレメントを用いて第1の空気を加熱することにより、第1の加熱空気を生成する工程と、
前記第1の加熱空気と、前記冷却空気の少なくとも第1の部分と、を組合せて混合空気を生成する工程と、
燃焼ヒータを用いて前記混合空気を加熱することで、第2の加熱空気を生成する工程と、
前記第2の加熱空気を混合して前記加熱空気を生成する工程と
を備える、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、さらに、
前記少なくとも1つの加熱エレメントを用いて周辺空気を加熱することによって前記第1の加熱空気を生成する工程を備える、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、さらに、
前記冷却空気のうちの少なくとも第2の部分を前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入させる工程
を備える、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法において、さらに、
周辺空気を、グリコール-空気熱交換器に通過させることにより、前記第1の加熱空気を生成する工程を備える、方法。
【請求項21】
請求項17に記載の方法において、さらに、
周辺空気と前記冷却空気のうちの第2の部分との組合せを前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入させることにより、前記第1の加熱空気を生成する工程
を備える、方法。
【請求項22】
請求項17に記載の方法において、さらに、
第2の冷却空気を生成する工程と、
少なくとも第3の加熱エレメントを用いて第3の加熱空気を生成する工程と、
前記第3の加熱空気を混合して所望の温度の第4の加熱空気を生成する工程と、
第2の物品を前記第4の加熱空気に晒すことで前記第2の冷却空気を生成する工程と、
を備え、
前記第2の物品を前記第4の加熱空気に晒すことにより、前記第2の物品を乾燥させ又は熱接着させる、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、さらに、
前記冷却空気のうちの第2の部分と前記第2の冷却空気のうちの少なくとも一部との組合せを、前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入させる工程
を備える、方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法において、さらに、
前記冷却空気のうちの第2の部分を用いて、空気-グリコール熱交換器のグリコールを加熱する工程と、
加熱された前記グリコールを前記グリコール-空気熱交換器のコイルに供給する工程とを備える、方法。
【請求項25】
請求項17に記載の方法において、さらに、
周辺空気をグリコール-空気熱交換器に通過させて中間加熱空気を生成する工程と、
前記中間加熱空気を電気ヒータに通過させて前記第1の加熱空気を生成する工程と
を備える、方法。
【請求項26】
請求項17に記載の方法において、少なくとも前記冷却空気の第1の部分と、前記第1の加熱空気とを組合せることで、前記燃焼ヒータで担うことが必要な燃焼量を減少させる、方法。
【請求項27】
請求項17に記載の方法であって、前記第2の加熱空気が前記燃焼ヒータから流出されて混合エレメントへと流入し、その過程で付加的な加熱エレメントを通過することはない、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
「スルーエア技術」は、不織布ウェブ内に加熱空気(heated air)を流通させて繊維又はフィラメントを乾燥又は接着させることが可能なシステムや方法を指すのに用いられる用語である。例には、不織布製品(例えば、ティーバッグ、特殊紙等)の乾燥、ガラス繊維マットやろ紙や樹脂加工不織布の乾燥及び硬化、スパンボンド不織布の熱接着及び乾燥、水流交絡ウェブの乾燥、複合繊維を含む又は含まないジオテキスタイルの熱接着、芯地グレードの乾燥及び硬化、ならびに融着性バインダー繊維を含む吸収性コアの熱接着が含まれる。薄葉紙の乾燥はスルーエア技術の極めて重要な用途であり、スルーエア乾燥に関連するシステムや方法は一般的に「TAD」の頭字語を使って呼称される。一部のスルーエアシステムは、天然ガスバーナを用いて熱エネルギーを当該システムに供給するものである。すなわち、このスルーエアシステムでは、物品(material)に対して当該物品を乾燥又は接着させることが可能な温度の空気を曝露させるのに、天然ガスバーナを使って当該空気の加熱を行い得る。
【0002】
「背景技術」の欄で上述したように、TADシステムは、スルーエア技術システムという広義の上位概念(genus)のうちの重要な下位概念(species)の一つを指している。本明細書に開示する発明は、スルーエア技術のシステムや方法という上位概念に適用可能であるが、本明細書では簡略化のためにTADシステムや方法の文脈で説明するものとし得る。TADシステムに関する大きな課題は、パフォーマンスや制御性や信頼性を損なわずに、TADシステムに大量のエネルギー(例えば、20~60MW)を導入することや、TADシステムの拡張や、圧力低下や、空気混合や、ターンダウン(turndown)や、一般的に使用される熱交換装置で(from)TADに対して目標空気温度を実現することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、カーボンフットプリントを低減したTADシステムを提供する。本開示にかかるTADシステムは、化石燃料の使用に関係した気候変動に対処する(mitigate)ものである。TADシステムは、水力、バイオ燃料、太陽光、風力、熱回収、蒸気/凝縮物の熱交換などといった、代替エネルギー源やその他のカーボンニュートラルなエネルギー源を用い得る。
【0004】
本開示にかかるTADシステムには、以下の利点が含まれる。すなわち、各種熱源や熱交換装置からの段階的なエネルギー印加,低減したカーボンフットプリント,天然ガスバーナをバックアップ用とした従来モードでのTADシステムの動作を可能にする独立したエネルギー供給システム,TAD排気から低位(low grade)の熱を回収出来るという能力,バーナや電熱交換器を含む幾つかの好適なエネルギー源からのエネルギー印加同士を調節出来るという能力,アクセスし易さを含む易保守性(例えば、高温空気導入システムがTADシステムから分離していることにより、TADシステムが動作中であっても、高温空気導入システムに対して保守を実施することが可能となる),TAD供給における温度及び流量の一様性維持,複数のエネルギー源を用いることで各種エネルギー源(例えば、TAD排気からの熱回収、蒸気、凝縮物、ホットオイル、電気、その他の流体流(stream)等)に最も適した温度範囲を活用出来るという能力,TADシステムを再設計又は再構築せずに追加の熱源や熱交換器を付設出来るという能力(例えば、既に設置されているTADシステムコンポーネントと直列に高温空気導入システムコンポーネントを補充することが可能である),既存のTADシステムへの据付けが可能であるという能力,および排気真空排出物(exhaust vacuum discharge)を高温空気導入システムのメイクアップ(make-up:「補充手段」)として利用出来るという能力である。。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示では、カーボンニュートラルなエネルギー源を含む代替エネルギー源を用いた高温空気導入システムが、少なくとも1つのTADシステムへ高温空気を供給するように構成される。本開示にかかるTADシステムは、高温空気導入システムが動作中であるか否かにかかわらず使用することが可能なバーナ系統を備え得る。
【0006】
本開示にかかるTADシステムの一部の態様は、今日知られているTADシステム動作方式(operations)に従って動作し得る。例えば、公知の(known)ファン速度やバーナ出力を利用して、TADのフードに流入される空気の温度や当該フード内への空気の流量が調節され得る。本明細書で説明するように、高温空気導入システムからTADシステム空気流へ空気を導入することにより、空気を所望の温度に加熱するのに必要なバーナのエネルギーが既知の技術に比べて減少し得るほか、ファン速度が既知の技術のものから変わり得る。
【0007】
高温空気導入システムを動作させる間、バーナは、低い火炎出力で乾燥温度を制御するという役割を担い続け(retain)得る。代替的には、高温空気導入システムを動作させない場合には、TADシステムが従来の単独動作モードで動作することになり得る。
【0008】
本開示にかかる高温空気導入システムは、少なくとも1つのTADシステムと併用した際に、最大限の(full degree of)融通性をもたらし得る。当該少なくとも1つのTADシステムは、高温空気導入システムと関係なく使用されてもよいし、高温空気導入システムと協働で使用されてもよい。このような構成により、別個の(different)空気系統を完全に分離させることが可能となって、アクセスや保守や始動やシャットダウンを互いに独立して行うことが出来るようになる。このようなシステム構成により、さらに、高温空気導入なしの従来の動作と高温空気導入有りの動作とのシームレスな切替えが、生産(例えば、物品の乾燥等)に悪影響を及ぼすことなく可能となる。
【0009】
本開示の一態様は、物品を乾燥(又は接着)するシステムに関する。当該システムは、燃焼ヒータ、混合エレメント、フードおよび有孔シリンダにより、第1の空気流を生成するように構成されている。前記燃焼ヒータは、第の加熱空気を生成するように構成されている。前記混合エレメントは、前記第の加熱空気に作用して所望の温度の加熱空気を生成する。本開示との関連での使用に適した混合エレメントの一例は、米国特許第7861437号に記載されている。同文献の全開示内容は、参照をもって本明細書に取り入れたものとする。前記フードは、前記所望の温度の加熱空気を受け取る。前記有孔シリンダは、前記フードに包囲されて冷却空気を流出する。前記システムは、さらに、少なくとも1つの加熱エレメントおよび当該少なくとも1つの加熱エレメントと流体連通した少なくとも1つのファンにより、第2の空気流を生成するように構成されている。前記少なくとも1つの加熱エレメントは、第の加熱空気を生成するように構成されている。前記少なくとも1つのファンは、前記第の加熱空気を前記第1の空気流へ導入させる。前記燃焼ヒータは、前記第の加熱空気と前記冷却空気のうちの少なくとも一部とに作用して前記第の加熱空気を生成する。
【0010】
本開示の他の態様は、物品を乾燥する方法に関する。当該方法は、冷却空気を生成する工程と、少なくとも1つの加熱エレメントを用いて第の加熱空気を生成する工程と、前記冷却空気のうちの少なくとも一部と前記第の加熱空気とを組み合わせて混合空気を生成する工程と、燃焼ヒータを用いて前記混合空気を加熱して加熱空気を生成する工程と、前記加熱空気を混合して所望の温度の加熱空気を生成する工程と、前記所望の温度の加熱空気を前記物品に曝露させることで前記冷却空気を生成する工程と、を備える。
【0011】
本開示は乾燥部(dryers)及び接着部(bonders)を備えたスルーエアシステムとの関連で説明するが、ヤンキー(Yankee)エアシステム、フラットベッドドライヤー、フロータードライヤー、その他のドライヤー、オーブンなどの他のシステムが用いられてもよい。
【0012】
ここで(now)、本開示をより完全に理解するために、添付の図面を用いて行う以下の説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態における、高温空気導入システムを具備した単一のTADシステムの概略図である。
図2】本開示の実施形態における、高温空気導入システムを具備した2つのTADシステムの概略図である。
図3】本開示の実施形態における、高温空気導入システムを具備した単一のTADシステムの動作を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、例えば炭素排出量を低減させると共に薄葉紙のような抄紙ウェブや不織布材のような他の同様の製品から水分を蒸発させるのに必要なエネルギーを供給する高温空気導入システムに接続された、少なくとも1つのTADシステムを含む。高温空気導入システムは、当該少なくとも1つのTADシステムへ高温空気を適切な昇温温度で供給(例えば、導入)することにより、当該少なくとも1つのTADシステム(a TAD (s) of the system’s/systems’)から流出される空気の温度を所望の供給空気乾燥温度にまで上昇させるものであり得る。その所望の供給空気は、当該少なくとも1つのTAD内の乾燥対象の物品に対して供給され得る。TADから流出された冷却空気の空気流であって、当該冷却空気を所望の温度にまで加熱するコンポーネント同士を通過するよう(through)循環させられて、当該所望の温度になってからTADへと挿入される空気流を、本明細書では「再循環空気(recirculated air又はrecirculating air)」と称するものとし得る。
【0015】
本開示にかかる高温空気導入システムを組み込んでも、従来どおりのTADシステム設計部分はほぼ影響を受けることなくそのまま維持され得る。当該高温空気導入システムは、TADシステムの再循環空気との混合が行われるように当該TADシステムに組み込まれ(introduced)得る。TADシステムの再循環空気と前記高温空気導入システムにより供給される空気との混合は、当該TADシステムのメイン再循環ファンに導入される前で行われてもよいし、当該メイン再循環ファンに導入される後で行われてもよい。また、TADシステムの再循環空気と前記高温空気導入システムにより供給される空気との混合は、当該TADシステムの空気加熱(air heater)部に導入される前で行われてもよいし、当該空気加熱部に導入される後で行われてもよい。例えば、前記高温空気導入システムは、TADシステムの再循環空気の流れを基準として少なくとも1つの燃焼ヒータの上流側で、加熱空気を当該再循環空気へと導入し得る。さらなる例として、前記高温空気導入システムは、TADシステムの再循環空気の流れを基準として少なくとも1つの燃焼ヒータの下流側で、加熱空気を当該再循環空気へと導入し得る。好ましい一実施態様において、TADシステムの再循環空気と前記高温空気導入システムにより供給される空気との混合は、当該TADシステムの前記メインファンと空気加熱部との間で行われ得る。
【0016】
前記高温空気導入システムは、当該高温空気導入システムが動作中でなくともTADシステムが動作することが可能であるように、当該TADシステムから分離して実現され得る。これにより、前記高温空気導入システムに対して保守が実施されている間かつ/あるいは当該高温空気導入システムの予期せぬ動作中断がされている間でも、TADシステムは動作中のまま維持することができる。
【0017】
前記高温空気導入システムへ流入された空気の加熱には、複数の(Multiple)熱源が使用され得る。前記高温空気導入システムに流入される空気は、周辺空気(例えば、当該高温空気システムの周囲からの新鮮な空気等)および/またはTADシステムの排気および/またはその他の空気源に由来するものであり得る。前記高温空気導入システムに流入される空気は、単一の空気源(例えば、周辺空気のみ、TADシステムの排気のみ等)に由来するものであってもよいし、複数の空気源からの空気同士の組合せ(例えば、周辺空気とTADシステムの排気との組合せ等)であってもよい。
【0018】
前記高温空気導入システムへ進入する空気を、任意の組合せの熱交換器や他の空気源の導入よりも前に又は後で吸引するように、ファンが用いられてもよい。空気は、所与の組合せの熱源や熱交換器を通過することで(through)所望の導入温度にまで徐々に加熱される。配置構成の一つには、TADシステムの排気を予め昇温させた周辺空気と混合した後、これらをファン、そして、蒸気熱交換器、オイル熱交換器および電熱交換器(すなわち、交換器群)に通過させるという配置構成が含まれる。この配置構成は、例示的なものである。つまり、当業者であれば、前記高温空気導入システムの空気を加熱するのに別の配置構成が使用されてもよいことが分かるであろう。前記高温空気導入システムのこれら一連の加熱エレメントの目的は、各加熱エレメントの最大(例えば、最適)温度出力を活用して段階的に空気の温度を昇温させるというものであり得る。例えば、蒸気熱交換器が空気を約182℃にまで加熱し得て、オイル熱交換器がこの約182℃の空気を約290℃にまで加熱し得て、電熱交換器がこの約290℃の空気を約450℃以上にまで加熱し得る。
【0019】
図1に、高温空気導入システムを具備した単一のTADシステムの例示的な構成を示す。図1及び図2に描かれた線は、本開示にかかるシステムの、考えられ得る(possible)空気の流れを表している。
【0020】
前記TADシステムは、フード106に少なくとも部分的に包囲された有孔(例えば、多孔)シリンダ104、少なくとも1つのメインファン108、少なくとも1つの空気加熱器(air heater)110、および少なくとも1つの混合器(mixer)112を含むTAD100、を備え得る。単一のメインファン108、単一の空気加熱器110および単一の混合器112しか描いていないが、当業者であれば、前記TADシステムが複数のメインファン108および/または複数の空気加熱器110および/または複数の混合器112を備えていてもよいことが分かるであろう。
【0021】
乾燥対象の物品が、フード106内を有孔シリンダ104に沿って運搬される。所望の温度の加熱空気が、フード106に流入されて乾燥対象の前記物品へ曝露させられる。前記物品内を通り抜けて当該物品を乾燥させた空気は、初めに当該物品に接触したときよりも低温になる。前記物品内を通り抜けて低温になった空気は、その後、有孔シリンダ104の孔内を通過してTAD100から冷却空気(又は排気)として流出される。
【0022】
TAD100から流出された前記冷却空気のうちの一部は、当該TAD100へと再循環させられ得る。図示のように、TAD100から流出された前記冷却空気のうちの一部は、メインファン108を通って空気加熱器110へと受け渡され得る。空気加熱器110は、この冷却空気を化石燃料の燃焼によって加熱し得る。空気加熱器110は、その冷却空気を加熱し、加熱空気を混合器112へ流出する。空気加熱器110には、当該技術分野で既知のものや未だ創成(created)されていないものを含む様々な種類の空気加熱エレメントが含まれ得る。例えば、空気加熱器110は、少なくとも1つの電気ヒータおよび/または少なくとも1つの蒸気コイルおよび/または少なくとも1つのグリコール/空気熱交換器および/または燃焼ベースの少なくとも1つの加熱エレメントを含んでなり(include)得る。空気加熱器110で実現されるこれらの少なくとも1つの空気加熱エレメントは、システム構成、および当該空気加熱器110から流出される空気の所望の温度によって決まり得る。混合器112は、空気加熱器110からの加熱空気を受け取って、TAD100へ(具体的には、フード106へ)流入される所望の温度の加熱空気を流出させる。
【0023】
TAD100から流出された前記冷却空気のうちの一部は、排気ファン114の動作によって当該TADシステムから前記高温空気導入システムへ流出され得る。TAD100から流出された前記冷却空気のうちの一部は空気-グリコール熱交換器116へと流入され得て、当該冷却空気(TAD100に流入される空気よりは低温であるが、周辺空気と言えるまでは冷却されていない空気)が当該空気-グリコール熱交換器116のグリコールを加熱する。当該グリコールを加熱した後のこの空気は、空気-グリコール熱交換器116の塔から前記システムの外部環境(an environment of the system)へと流出され得る。流出されたこの空気は、比較的低温で且つ飽和状態(例えば、100%の相対湿度)であり得る。このように空気が流出されることで、前記システムは、蒸発した水分を当該空気によって除去することができると共に、系(前記システム)の空気収支(air system balance)を維持することができる。
【0024】
前記高温空気導入システムは、少なくとも1つの空気加熱エレメントを含み得る。例えば、前記高温空気導入システムは、少なくとも1つのグリコール-空気熱交換器118および電気ヒータ120を含み得る。少なくとも1つのグリコール-空気熱交換器118のコイルは、空気-グリコール熱交換器116からの加熱されたグリコール(例えば、TAD100から流出されて排気ファン114を通過した冷却空気によって加熱されたグリコール)を受け取り得る。前記高温空気導入システムは、さらに、蒸気コイル、当該技術分野で既知のものであるその他の加熱エレメント、未だ創成されていない加熱エレメントなどの少なくとも1つの別の加熱エレメントを含み得る。
【0025】
前記高温空気導入システムの加熱エレメント同士は、各加熱エレメントの最大(例えば、最適)温度出力を活用して段階的に空気の温度を昇温させるように配置及び構成され得る。例えば、前記高温空気導入システムの空気はまず蒸気熱交換器に曝され得て、当該蒸気熱交換器が当該空気を約182℃にまで加熱し得る。この約182℃の空気がオイル熱交換器に曝され得て、当該オイル熱交換器がその空気を約290℃にまでさらに加熱し得る。この約290℃の空気が電熱交換器に曝され得て、当該電熱交換器がその空気を約450℃以上にまでさらに加熱し得る。加熱エレメント同士のこの配置構成は、あくまでも例示的なものである。つまり、当業者であれば、前記高温空気導入システムの加熱エレメントの量、種類および配置構成が、システム構成、および当該高温空気導入システムから流出される空気の所望の温度によって決まり得るということが分かるであろう。
【0026】
また、前記高温空気導入システムは、当該高温空気導入システムの空気を前記TADシステムへ導入させるファン122を含み得る。ファン122は、(空気の流れを基準として)前記高温空気導入システムのどの加熱エレメントよりも上流側に配置されてもよいし、(図示のように)前記高温空気導入システムの加熱エレメント間に配置されてもよいし、(空気の流れを基準として)前記高温空気導入システムのどの加熱エレメントよりも下流側に配置されてもよい。
【0027】
一例において、前記高温空気導入システムに流入される空気は、当該高温空気導入システムの周囲から受け入れる純粋な周辺空気であり得る。これは、ダンパ130を閉じてダンパ140を開くことによって達成され得る。他の例において、前記高温空気導入システムに流入される空気は、前記TADシステムから流出されて場合によっては排気ファン114を通過してから前記高温空気導入システムへ流入される、純粋な冷却空気であり得る。これは、ダンパ140を閉じてダンパ130を開くことによって達成され得る。さらなる例において、前記高温空気導入システムに流入される空気は、当該高温空気導入システムの周囲の周辺空気と前記TADシステムから流出された冷却空気との組合せであり得る。これは、各種ダンパ(130/140)を開くことによって達成され得る。前記空気導入システムへの周辺空気と冷却空気との混合流入の割合は、システム構成(例えば、各ダンパの開閉量等)、空気の速度、当該高温空気導入システムから流出される空気の所望の温度、およびその他の考慮事項を含む、様々な要因によって決まり得る。
【0028】
TAD100、メインファン108、空気加熱器110、混合器112、およびこれらのコンポーネント同士を接続する配管系統(ducting)が、第1の空気流を形成し得る。前記高温空気導入システムの前記加熱エレメント同士、およびファン122が、前記第1の空気流とは異なる第2の空気流を形成し得る。
【0029】
前記高温空気導入システムの前記加熱エレメント同士により生成された加熱空気は、前記TADシステムの前記第1の空気流へと(ファン122の使用及びダンパ126/134の開放によって)導入され得る。前記高温空気導入システムで生成されたこの加熱空気は、前記TADシステムの空気流へと、システム構成および要件に基づいて様々な箇所で導入されてもよい。例えば、前記高温空気導入システムで生成されたこの加熱空気は、前記TADシステムの空気流へと、(図示のように)メインファン108と空気加熱器110との間で導入されてもよいし、空気加熱器110と混合器112との間で導入されてもよいし、別の所望の箇所で導入されてもよい。
【0030】
図2に、高温空気導入システムを具備した2つのTADシステムの例示的な構成を示す。第1のTADシステムは、フード106に少なくとも部分的に包囲された有孔シリンダ104、少なくとも1つのメインファン108、少なくとも1つの空気加熱器110、お
よび少なくとも1つの混合器112を含む、TAD100を備える。第2のTADシステムは、フード202に少なくとも部分的に包囲された有孔シリンダ204、少なくとも1つのメインファン208、少なくとも1つの空気加熱器210、および少なくとも1つの混合器212を含む、TAD200を備える。単一のメインファン208、単一の空気加熱器210および単一の混合器212しか描いていないが、当業者であれば、前記TADシステムが複数のメインファン208および/または複数の空気加熱器210および/または複数の混合器212を備えていてもよいことが分かるであろう。第1のTAD100および第2のTAD200により、物品が図1に関して前述したように乾燥される。
【0031】
図2のシステムは、図1と同様に、TAD100から流出された冷却空気のうちの一部を当該TAD100へと再循環させるように構成されている。このほかにも、TAD100から流出された冷却空気のうちの一部が、当該TADシステムから排気として流出され得る。このような排気(air)は、排気ファン114によって前記高温空気導入システムへと流入され得る。
【0032】
TAD200についても、当該TAD200から流出された一部の空気が(メインファン208、空気加熱器210および混合器212を再循環させられた後に)当該TAD200へ再循環させられ得ると共に一部の冷却空気が排気ファン206によって前記高温空気導入システムへと流入され得るという意味で、同じことが言える。一例において、排気ファン206は、TAD200からの空気を、排気ファン114と空気-グリコール熱交換器116との間に位置した空気流、および前記高温空気導入システムへと導入する。
【0033】
前記システムは、前記高温空気導入システムから流出される加熱空気が(例えば、ダンパ134,214,126が開かれてダンパ142が閉じられたときに)両方のTAD(100/200)に流入され得るように、あるいは、(例えば、ダンパ134,214が開かれてダンパ126,142が閉じられたとき、ダンパ126,134が開かれてダンパ214,142が閉じられたとき等に)一方のTAD(100/200)に流入され得るように、あるいは、(例えば、少なくともダンパ126,214が閉じられてダンパ142が開かれたときに)いずれのTAD(100/200)にも流入され得ないように構成され得る。前記高温空気導入システムから流出される加熱空気をどのように経由させるかの決定は、保守の考慮事項や、前記TADへ挿入される空気の所望の温度(例えば、物品によっては他の物品に比べて低温でも効果的に乾燥し得ることから、そのような用途時には、前記高温空気導入システムからの加熱空気を前記TADの空気流に導入する必要がなくなる)や、その他の考慮事項によって決まり得る。
【0034】
図3に、高温空気導入システムを具備した単一のTADシステムにより実行される処理示す。所望の温度の加熱空気がTAD100のフード106内に導かれて、当該所望の温度の当該加熱空気によって有孔シリンダ104上の物品が乾燥させられる結果、当該所望の温度の当該加熱空気が冷却空気となる(302)。
【0035】
前記高温空気導入システムの少なくとも1つの加熱エレメント(例えば、グリコール-空気熱交換器118および/または電気ヒータ120)により、周辺空気、TAD100から流出された前記冷却空気の一部もしくは全部、または周辺空気とTAD100から流出された前記冷却空気の一部もしくは全部との組合せから、第の加熱空気が生成される(304)。
【0036】
前記高温空気導入システムが、前記第の加熱空気を前記TADシステムの空気流へと導入する。一例では、前記第の加熱空気がTAD100から流出された前記冷却空気のうちの少なくとも一部と組み合わされることで、混合空気が生じる(306)。この実施態様では、空気加熱器110が燃焼によって当該混合空気を加熱することにより、第2の加熱空気が生成される(308)。その後、当該第2の加熱空気が混合器112の作用によって混合されることで、物品を乾燥させるのに用いられる前記所望の温度の前記加熱空気となる(310)。
【0037】
図3に関して説明した上記工程は、図2に示す2つのTADシステムによって実行されてもよい。また、上記では前記方法のステップを特定の順序で説明したが、当業者であれば、本開示を逸脱しない範疇で(without departing)これらのステップが別の順序で実行されてもよいし且つ/或いはこれらのステップのうちの一部が削除又は省略されてもよいことが分かるであろう。
【0038】
前記高温空気導入システムが少なくとも1つのTADシステムに物理的に接続しているため、当該少なくとも1つのTADシステムが動作中に可燃性ガスが前記高温空気導入システムに侵入する可能性がある。そのため、前記高温空気導入システムを始動させる前に、NFPA-86に準拠した点火前パージを行って4回分以上の空気量(air volume)を排気するようにしてもよい。前記少なくとも1つのTADシステムは、前記高温空気導入システムから当該少なくとも1つのTADシステムへ入り得る可燃性ガスが存在しないことを確認するための追加の連動系(interlock)が前記点火前パージの中に確実に含まれるよう制御を変更してもよい。前記少なくとも1つのTADシステムと前記高温空気導入システムは、複数の隔離ダンパ及びブリードオフダンパを用いたブロック/ブリードの二重配置構成によって完全に分離され得る。
【0039】
前記高温空気導入システムの点火前パージは、専用の高温空気導入制御システム又は製作所の分散制御システム(DCS)によって制御され得る。当該制御システムにより、前記高温空気導入システムが前記少なくとも1つのTADシステムから切り離されること、全ての高温空気導入配管がパージされること、周辺空気を前記高温空気導入システム内へ進入するよう利用出来ること、さらには、前記点火前パージ用の空気流が計測及び検証されることが確実となる。前記点火前パージ時の前記高温空気導入システムの空気はファン122によって動きが促され得て、かつ、その空気流は流量計を用いて確認され得る。
【0040】
前記点火前パージが完了した後、前記少なくとも1つのTADシステムが動作中になって定常状態(steady state condition)になると、前記高温空気導入システムが始動させられ得る。前記高温空気導入システムをオンにするには、当該高温空気導入システムの全てのブリードオフダンパ(例えば、システム構成にもよるが128/132,216/220等)が閉じられることで、グリコール-空気熱交換器118から分流煙突(divert stack)にかけて単一の貫通空気流が確立され得る。当該単一の貫通空気流が確立されると、電気ヒータ120が所望の動作になるまで始動させられることで、当該電気ヒータ120(さらに言えば前記高温空気導入システム)から流出される空気の温度がそれ以降一定(又は比較的一定)に維持され得る。
【0041】
前記高温空気導入システムの配管系統と前記少なくとも1つのTADシステムの配管系統との間の接続部に位置したダンパ(システム構成にもよるが126,214)が開かれることにより、前記高温空気導入システムから前記少なくとも1つのTADシステムの空気流へと加熱空気が導入可能となり得る。同時(又はほぼ同時)に、前記高温空気導入システムの前記分流煙突の少なくとも1つのダンパ142が閉じられ得る。前記高温空気導入システムの加熱空気が前記少なくとも1つのTADシステムの空気流に導入されると、当該少なくとも1つのTADシステムの冷却空気(例えば、排気)が前記高温空気導入システムへ導入されるようになって、少なくとも1つのTADシステムの排気エネルギーが回収され得る。
【0042】
前記高温空気導入システムは、周辺空気と少なくとも1つのTADシステムの冷却空気
とを可変に組み合わせて当該少なくとも1つのTADシステムへ流入することが可能であるという意味で可変性が高い。例えば、2つのTADシステムからなる構成では、第1のTADの冷却空気のみが前記高温空気導入システムへと流入可能となるように少なくとも1つのダンパが開放してもよく、第2のTADの冷却空気のみが前記高温空気導入システムへと流入可能となるように少なくとも1つのダンパが開放してもよく、両方のTADの冷却空気が前記高温空気導入システムへと流入可能となるように少なくとも1つのダンパが開放されていてもよい。両方のTADの冷却空気が前記高温空気導入システムへと流入可能となるように前記ダンパが開放される際、これらのダンパは、第1のTADの冷却空気を第2のTADの冷却空気よりも多く前記高温空気導入システムへと流入可能とするように、あるいは、第2のTADの冷却空気を第1のTADの冷却空気よりも多く前記高温空気導入システムへと流入可能とするように、あるいは、第1のTADの冷却空気と第2のTADの冷却空気を同量で前記高温空気導入システムへと流入可能とするように開放され得る。前記少なくとも1つのTADシステムの冷却空気は、前記高温空気導入システムの空気の流れを基準としてグリコール-空気熱交換器118の下流側、ただし、電気ヒータ120よりも上流側で、前記高温空気導入システムへと流入され得る。より好ましくは、前記少なくとも1つのTADシステムの冷却空気が、前記高温空気導入システムの空気の流れを基準としてグリコール-空気熱交換器118の下流側、ただし、電気ヒータ120及びファン122よりも上流側で、前記高温空気導入システムへと流入され得る。
【0043】
前記高温空気導入システムの空気が前記少なくとも1つのTADシステムの空気流へ導入されると、少なくとも1つの空気加熱器(110/210)により実行される加熱および少なくとも1つのメインファン(108/208)の速度を調節することにより、少なくとも1つのフード(106/202)内の空気の温度を所望の温度(例えば、前記高温空気導入システムから空気が導入される以前に少なくとも1つのフード106/202内に生じていた温度)に維持され得る。つまり、前記高温空気導入システムからの加熱空気の導入により、少なくとも1つの空気加熱器(110/210)で担うことが必要な加熱量が減少し得るということが分かる。少なくとも1つの空気加熱器(110/210)が化石燃料の燃焼によって動作する実施態様では、このような構成によって化石燃料の使用を抑制することができる。
【0044】
TADシステムは、乾燥対象(及び/又は既に乾燥済み)の物品が当該TADシステムから速やかに取り除かれる(rapidly taken off)ストックオフ状態を生じ得る。当該TADシステムのフードに流入される空気の温度を安全限界まで素早く低下させてTAD布(TAD fabric)の熱的損傷を防ぐことが重要になる。TAD布とは、前記システム内で乾燥対象(及び/又は既に乾燥済み)の物品を搬送するのに用いられる布類(fabric)のことを指す。
【0045】
前記TADシステムがストックオフ信号を発すると、TAD制御システムが、前記高温空気導入システムの少なくとも1つのダンパ(システム構成にもよるが126,214)を閉じると共に前記分流煙突の少なくとも1つのダンパ142を開放し得る。これにより、急激なストックオフ状態で変化した前記高温空気導入システムの空気の温度や電気ヒータ120の負荷が管理される。ストックオンが発せられて(initiated)且つ前記TADシステムが定常状態を示すと、前記高温空気導入システムの空気が当該TADシステムへと(例えば、少なくとも1つのダンパ(128/214)を開いて前記分流煙突の少なくとも1つのダンパ142を閉じることによって)導入され得る。
【0046】
機械緊急停止(e-stop)指令が受信されると、前記高温空気導入システムのコンポーネントが強制的に安全状態に移行させられ(forced into)得る。これには、電気ヒータ120への給電を遮断し、かつ/あるいは、ファン122を停止させ、かつ/あるいは、前記空気導入システムの全ての隔離ダンパ(例えば、126/130/134/136/2
14/218等)を閉じて、かつ/あるいは、前記分流煙突の少なくとも1つのダンパ142を開放し、かつ/あるいは、前記高温空気導入システムの全てのブリードオフダンパ(例えば、128/132/216/220等)を開くことが含まれ得る。このダンパ構成により、前記高温空気導入システム内に十分な自然通風が確実に存在することになるので、電気ヒータ120の過熱が阻止される。
【0047】
前記高温空気導入システムは、前記少なくとも1つのTADシステムとは独立してシャットダウンし得る。前記高温空気導入システムをシャットダウンさせる手順は、前記分流煙突の少なくとも1つのダンパ142を開放し、かつ/あるいは、当該高温空気導入システムの全ての隔離ダンパ(例えば、126/130/134/136/214/218等)を閉じて、かつ/あるいは、当該高温空気導入システムの全てのブリードオフダンパ(例えば、128/132/216/220等)を開き、かつ/あるいは、電気ヒータ120への給電印加を徐々にゼロにまで(例えば、プログラムされた漸減(ramp)に従って)減らすことを含み得る。また、ファン122の速度は、当該ファン122が停止するまで徐々に低下(例えば、漸減(ramped))させられ得る。
【0048】
本開示について具体的な実施形態を用いて詳細に説明したが、これまでの説明を考慮すれば、数多くの代替案、変更及び変形が当業者にとって明白であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲には、このような全ての代替案、変更及び変形が本開示の真正な精神及び範囲内のものとして包含されていると考えられたい。
なお、本発明は実施の態様として以下の内容を含む。
[態様1]
物品を乾燥又は接着するシステムであって、
第1の加熱空気を生成するように構成された燃焼ヒータ、
前記第1の加熱空気に作用して所望の温度の第2の加熱空気を生成する混合エレメント、
前記第2の加熱空気を受け取るフード、および
前記フードに囲まれて冷却空気を流出する有孔シリンダ
を含む、第1の空気流を生成する第1のコンポーネント群と、
第3の加熱空気を生成するように構成された少なくとも1つの加熱エレメント、および
前記少なくとも1つの加熱エレメントと流体連通して前記第3の加熱空気を前記第1の空気流へ導入させる少なくとも1つのファン
を含む、第2の空気流を生成する第2のコンポーネント群と、
を備える、システム。
[態様2]
態様1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入される空気が、周辺空気である、システム。
[態様3]
態様1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入される空気が、前記冷却空気のうちの少なくとも副次的な部分である、システム。
[態様4]
態様3に記載のシステムにおいて、周辺空気が、前記少なくとも1つの加熱エレメントのうちのグリコール-空気熱交換器を通過する、システム。
[態様5]
態様1に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入される空気が、周辺空気と前記冷却空気のうちの少なくとも副次的な部分との組合せである、システム。
[態様6]
態様1に記載のシステムにおいて、さらに、
第4の加熱空気を生成するように構成された第2の燃焼ヒータ、前記第4の加熱空気に作用して所望の温度の第5の加熱空気を生成する第2の混合エレメント、前記第5の加熱空気を受け取る第2のフード、および前記第2のフードに包囲されて第2の冷却空気を流出する第2の有孔シリンダを含む、第3の空気流を生成する第3のコンポーネント群、
を備える、システム。
[態様7]
態様6に記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの加熱エレメントに流入される空気が、前記冷却空気のうちの少なくとも一部と前記第2の冷却空気のうちの少なくとも一部との組合せである、システム。
[態様8]
態様4に記載のシステムにおいて、前記冷却空気のうちの少なくとも一部が空気-グリコール熱交換器のグリコールを加熱するように用いられて、加熱された当該グリコールが前記グリコール-空気熱交換器のコイルに供給される、システム。
[態様9]
態様1に記載のシステムにおいて、前記第2のコンポーネント群が、さらに、中間加熱空気を生成するグリコール-空気熱交換器、および前記中間加熱空気に作用して前記第3の加熱空気を生成する電気ヒータを含む、システム。
[態様10]
態様1に記載のシステムにおいて、前記第2の加熱空気を前記第1の空気流へ導入することで、前記燃焼ヒータで担うことが必要な燃焼量を減少させる、システム。
[態様11]
態様1に記載のシステムにおいて、前記燃焼ヒータが、前記第3の加熱空気と前記冷却空気のうちの少なくとも一部とに作用して前記第1の加熱空気を生成する、システム。
[態様12]
態様1に記載のシステムにおいて、前記混合エレメントが、前記第1の加熱空気と前記第3の加熱空気とに作用して前記所望の温度の前記第2の加熱空気を生成する、システム。
[態様13]
物品を乾燥又は接着する方法であって、
冷却空気を生成し、少なくとも第1の加熱エレメントを用いて第1の加熱空気を生成し、前記第1の加熱空気を混合して所望の温度の第2の加熱空気を生成し、前記第2の加熱空気を前記物品に曝露させて前記冷却空気を生成することにより、第1の空気流を生成する工程と、
少なくとも第2の加熱エレメントを用いて第3の加熱空気を生成し、前記第3の加熱空気を前記第1の空気流へ導入することにより、第2の空気流を生成する工程と、
を備える、方法。
[態様14]
態様13に記載の方法において、さらに、
周辺空気を前記少なくとも第2の加熱エレメントに流入させる工程、
を備える、方法。
[態様15]
請求項13に記載の方法において、さらに、
前記冷却空気のうちの少なくとも一部を前記少なくとも第2の加熱エレメントに流入させる工程、
を備える、方法。
[態様16]
態様13に記載の方法において、さらに、
周辺空気を、前記少なくとも第2の加熱エレメントに含まれるグリコール-空気熱交換器に通過させて、第4の加熱空気を生成する工程、
を備える、方法。
[態様17]
態様13に記載の方法において、さらに、
周辺空気と前記冷却空気のうちの少なくとも一部との組合せを前記少なくとも第2の加熱エレメントに流入させる工程、
を備える、方法。
[態様18]
態様13に記載の方法において、さらに、
第2の冷却空気を生成し、少なくとも第3の加熱エレメントを用いて第4の加熱空気を生成し、前記第4の加熱空気を混合して所望の温度の第5の加熱空気を生成し、前記第5の加熱空気を第2の物品に曝露させて前記第2の冷却空気を生成することにより、第3の空気流を生成する工程、
を備える、方法。
[態様19]
態様18に記載の方法において、さらに、
前記冷却空気のうちの少なくとも一部と前記第2の冷却空気のうちの少なくとも一部との組合せを、前記少なくとも第2の加熱エレメントに流入させる工程、
を備える、方法。
[態様20]
態様16に記載の方法において、さらに、
前記冷却空気のうちの少なくとも一部を用いて、空気-グリコール熱交換器のグリコー
ルを加熱する工程と、
加熱された前記グリコールを前記グリコール-空気熱交換器のコイルに供給する工程と、
を備える、方法。
[態様21]
態様13に記載の方法において、さらに、
周辺空気をグリコール-空気熱交換器に通過させて中間加熱空気を生成する工程と、
前記中間加熱空気を電気ヒータに通過させて前記第3の加熱空気を生成する工程と
を備える、方法。
[態様22]
態様13に記載の方法において、前記第3の加熱空気を前記第1の空気流へ導入することで、前記少なくとも第1の加熱エレメントで担うことが必要な燃焼量を減少させる、方法。
[態様23]
態様13に記載の方法において、さらに、
前記第3の加熱空気と前記冷却空気のうちの少なくとも一部とを組み合わせて混合空気を生成する工程と、
前記混合空気を前記少なくとも第1の加熱エレメントへ流入させる工程と
を備える、方法。
[態様24]
態様13に記載の方法において、さらに、
前記第1の加熱空気と前記第3の加熱空気とを混合して前記所望の温度の前記第2の加熱空気を生成する工程、
を備える、方法。
図1
図2
図3