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特許7431175Liイオン電池に使用するためのセルロース系自立型フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】Liイオン電池に使用するためのセルロース系自立型フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20240206BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/583 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20240206BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M4/66 A
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/583
H01M4/60
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M10/0566
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/054
H01M50/429
H01M50/44
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2020563789
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 CA2019050657
(87)【国際公開番号】W WO2019218067
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】62/671,612
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/728,301
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラポルト, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジェルフィ, アブデルバスト
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-535787(JP,A)
【文献】特開2017-152337(JP,A)
【文献】特開2007-280657(JP,A)
【文献】特開2017-228456(JP,A)
【文献】特開2016-004786(JP,A)
【文献】特表2017-521841(JP,A)
【文献】特表2018-517256(JP,A)
【文献】国際公開第2016/187699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62、4/66
H01M50/40
H01M10/052、10/054、10/0565、10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 集電体として働く第1の導電性材料であり、前記第1の導電性材料の表面が、少なくとも1種の式I:
【化8】

(式中、
FGはヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、アミン、およびアミド官能基から選択される親水性官能基であり、nは1~5の範囲の整数である)
のアリール基でグラフトされている、第1の導電性材料と、
- セルロース繊維を含むバインダーと、
- 電気化学的活物質と
を含む、自立型電極であって、
前記自立型電極が第1および第2の表面を有する固体フィルムで作製され、
前記第1の導電性材料の濃度が、前記固体フィルムの前記第2の表面から前記第1の表面まで増大し、
前記電気化学的活物質の濃度が、前記固体フィルムの前記第1の表面から前記第2の表面まで増大する、
自立型電極。
【請求項2】
前記第1の導電性材料が炭素繊維を含む、請求項1に記載の自立型電極。
【請求項3】
前記セルロース繊維が未改質セルロース繊維であり、かつ/または前記セルロース繊維が、アルミニウムカチオンを含まず、かつ/または前記セルロース繊維の平均長が、5nmから5mmの間、もしくは250nmから3mmの間、もしくは500nmから3mmの間、もしくは1μmから3mmの間、もしくは100μmから3mmの間、もしくは250μmから3mmの間、もしくは500μmから3mmの間、もしくは750μmから2.5mmの間、もしくは1mmから2.5mmの間である、請求項1または2に記載の自立型電極。
【請求項4】
(i)前記電気化学的活物質が、コアシェル構造の、炭素層でコーティングされた粒子の形態であり、かつ/または(ii)前記電気化学的活物質が、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子、リチウム化金属リン酸塩粒子、炭素系材料および活性有機材料から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項5】
前記炭素層が、請求項1に記載の少なくとも1種の式Iのアリール基でグラフトされている、請求項4に記載の自立型電極。
【請求項6】
(i)正極であり、前記電気化学的活物質が、リチウム化リン酸鉄粒子(LiFePO)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)または3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)を含む;または
(ii)負極であり、前記電気化学的活物質が、チタン酸リチウム(LiTi12)粒子または炭素系材料を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項7】
前記第1の表面が、前記第1の導電性材料を主に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項8】
前記第2の表面が、前記電気化学的活物質を主に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項9】
前記自立型電極が、第2の導電性材料を含み、前記第2の導電性材料の濃度が、前記固体フィルムの前記第1の表面から前記第2の表面まで増大している、請求項1~7のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項10】
前記第2の表面が、前記電気化学的活物質および前記第2の導電性材料を主に含む、請求項9に記載の自立型電極。
【請求項11】
前記第2の導電性材料が、請求項1に記載の少なくとも1種の式Iのアリール基でグラフトされている、請求項9または10に記載の自立型電極。
【請求項12】
前記第2の導電性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブおよびこれらのうちの少なくとも2つの組合せから選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項13】
前記親水性官能基が、カルボン酸またはスルホン酸官能基である、請求項1~12のいずれか一項に記載の自立型電極。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の自立型電極を製造するための方法であって、以下のステップ:
(a)第1の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップと、
(b)セルロース繊維を含む水性混合物に、ステップ(a)で得られた改質された前記第1の導電性材料を分散して、第1の水性分散液を得るステップと、
(c)前記第1の水性分散液を濾過膜上で濾過し、フィルムを得るステップと、
(d)電気化学的活物質を水性媒体に分散し、第2の水性分散液を得るステップと、
(e)前記第2の水性分散液を、ステップ(c)で得られた前記フィルム上で濾過し、前記濾過膜上に自立型電極を生産するステップと、
(f)前記濾過膜から前記自立型電極を剥離するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
ステップ(c)で得られた前記フィルムを乾燥するステップ;および/または
前記自立型電極をカレンダー加工するステップ;および/または
ステップ(f)の前に、セルロース繊維を含む水性混合物を、ステップ(e)で得られた前記自立型電極上で直接濾過することによってセパレータを生産するステップ
をさらに含み、前記電気化学的活物質が炭素層でコーティングされた粒子の形態であり、前記方法が、ステップ(d)の前に、前記炭素層に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(d)が、第2の導電性材料を水性媒体に分散することを含む、請求項14または15に記載に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、ステップ(d)の前に、前記第2の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法の前記グラフトするステップが、
(i)式II:
【化9】

(式中、FGおよびnは請求項1~12のいずれか一項に記載の通りである)
のアニリンとジアゾ化剤を接触させることによってアリールジアゾニウムイオンを生成することと、
(ii)ステップ(i)で生成された前記アリールジアゾニウムイオンを、前記電気化学的活物質の表面上の炭素層の炭素、または前記第1もしくは第2の導電性材料と反応させることと
を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アリールジアゾニウムイオンが、ステップ(i)および(ii)が同時に実施されるように、in situで生成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ジアゾ化剤が、前記炭素に対して0.01~0.04当量の範囲で存在する、かつ/または前記ジアゾ化剤が、式IIの前記アニリンに対して1~4当量の範囲で存在する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記ジアゾ化剤が亜硝酸塩または亜硝酸アルキルである、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記グラフトするステップが酸性水性媒体中または極性非プロトン性溶媒中で実行される、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記負極および正極のうちの少なくとも1つが、請求項1~13のいずれか一項に記載の自立型電極である、電気化学セル。
【請求項24】
セパレータをさらに含む、請求項23に記載の電気化学セル。
【請求項25】
前記セパレータが、セルロース繊維を含む水性混合物を、前記自立型電極上で直接濾過することによって得られている、請求項24に記載の電気化学セル。
【請求項26】
前記電解質が、溶媒中のリチウム塩を含む液体電解質、または溶媒および/もしくは溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含むゲル電解質、または溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含む固体ポリマー電解質である、請求項23~25のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項27】
請求項23~26のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電気化学セルを含む電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用法に基づき、その内容全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる、2018年5月15日出願の米国仮特許出願第62/671,612号、および2018年9月7日出願の米国仮特許出願第62/728,301号の優先権を主張する。
【0002】
技術分野
技術分野は、概して、自立型電極、それらの生産方法、および電気化学セル、例えば、リチウムイオン電池におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池(LIB)の分野の近年の研究は、生産コストを低減させ、性能を向上させることに主に焦点を置いている。LIBを生産するための新規の材料および環境に優しい方法もまた、複数の研究の対象になっている。
【0004】
これに関して、LIBの材料としてセルロースを導入することは非常に有望である。例えば、いくつかの研究は、電池およびスーパーキャパシタ用の可撓性の電極の調製に焦点を置いており、基板(Hu, L. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 106.51 (2009): 21490-21494; Hu, L. et al., Applied Physics Letters 96.18 (2010): 183502;およびHu, L. et al., Advanced Energy Materials 1.6 (2011): 1012-1017を参照されたい)またはバインダー(Nystrom, G. et al. The Journal of Physical Chemistry B 114.12 (2010): 4178-4182;およびPushparaj, V. L. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 104.34 (2007): 13574-13577を参照されたい)としてセルロースを使用している。しかし、生産方法では、常に、有機溶媒、合成バインダー、または高価で処分が容易でない材料(例えば、カーボンナノチューブ(CNT))を使用する。さらに、ほとんどの研究では、より短い繊維を得るため、または分散液のゼータ電位を調節するために、セルロースを改質し変換する。したがって、炭素を添加する前に、凝集剤として硫酸アルミニウム水和物がしばしば使用される(Jabbour, L. et al., Cellulose 20.1 (2013): 571-582を参照されたい)。この凝集剤を使用することにより、アルミニウムカチオンが使用され、セルロース繊維に存在する負電荷が中和される(Anderson, R. E. et al., Journal of Materials Chemistry 20.12 (2010): 2400-2407;およびHubbe, M. A., et al., Paper Technol 45.9 (2004): 27-34を参照されたい)。しかし、この化合物は、電池の内部でさらに反応する場合がある。
【0005】
近年の研究では、水に分散されたミクロフィブリル化セルロースおよび高度に精製されたセルロース繊維が、非常に良好な電気化学的および機械的性能を有する自立型負極を製造するためのバインダーとして有効に使用できることが実証された(Jabbour, L. et al., Journal of Materials Chemistry 20.35 (2010): 7344-7347;およびJabbour, L. et al., Journal of Materials Chemistry 22.7 (2012): 3227-3233を参照されたい)。しかし、直径5~250nmの繊維を得るためには化学的、酵素的および酸加水分解処理が必要であるため、自立型フィルムのコストおよび調製時間が増加する(Jabbour, L. et al., Cellulose 20.4 (2013): 1523-1545を参照されたい)。
【0006】
電極の質量の低減は、LIB産業の別の考慮事項である。集電体は、電極の質量に顕著な影響を及ぼすため、自立型電極はこの点で多大な関心を集めている。例えば、アルミニウム集電体は、活物質の負荷量が約6mg/cmで、リン酸鉄リチウム(LiFePOまたはLFP)電極の総質量の少なくとも40%を占める。アルミニウム集電体の質量を炭素および/または炭素繊維を含む軽量集電体で置き換えることにより、フィルムがより伝導性になり、性能が向上する。さらに、不活性金属集電箔は、セルの全体的な重量を増大させるだけでなく、腐食の問題の影響を受ける場合がある(Zhang, S. S. et al., Journal of Power Sources 109.2 (2002): 458-464を参照されたい)。
【0007】
また、LIBの生産コストを低下させる試みがなされている。コストのモデル化によると、複合電極材料および集電体は、LIBの値段の50%を占める(Wood, D. L. et al., Journal of Power Sources 275 (2015): 234-242を参照されたい)。著者らはさらに、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)分散液のコストは、カルボキシメチルセルロース(CMC)の0.5~1.4USD/kgに比べ、19~23USD/kgであると推定している。
【0008】
また、有機電極は、LIBの次世代の候補になる可能性が高いことが公知である(Armand, M. et al., Nature 451 (2008): 652-657; and Tarascon J. M., Philosophical Transactions of the Royal Society A 368 (2010): 3227-3241を参照されたい)。有機材料は天然の産物またはバイオマスから調製できるため、有機電極は、例えば、電池の製造コストを低減させる可能性がある(Chen, H. et al., ChemSusChem: Chemistry & Sustainability Energy & Materials 1.4 (2008): 348-355を参照されたい)。さらに、無機構造体およびコバルトまたはニッケルなどの金属が存在しないため、有機材料を含む電池は、より環境に優しく、完全に再利用可能である可能性がある。
したがって、従来の電極が直面する欠点の1つまたは複数を有しない自立型電極に対する必要性が存在する。また、より簡潔かつより効率的な自立型電極製造方法に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Hu, L. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 106.51 (2009): 21490-21494
【文献】Hu, L. et al., Applied Physics Letters 96.18 (2010): 183502
【文献】Hu, L. et al., Advanced Energy Materials 1.6 (2011): 1012-1017
【文献】Nystrom, G. et al. The Journal of Physical Chemistry B 114.12 (2010): 4178-4182
【文献】Pushparaj, V. L. et al., Proceedings of the National Academy of Sciences 104.34 (2007): 13574-13577
【文献】Jabbour, L. et al., Cellulose 20.1 (2013): 571-582
【文献】Anderson, R. E. et al., Journal of Materials Chemistry 20.12 (2010): 2400-2407
【文献】Hubbe, M. A., et al., Paper Technol 45.9 (2004): 27-34
【文献】Jabbour, L. et al., Journal of Materials Chemistry 20.35 (2010): 7344-7347
【文献】Jabbour, L. et al., Journal of Materials Chemistry 22.7 (2012): 3227-3233
【文献】Jabbour, L. et al., Cellulose 20.4 (2013): 1523-1545
【文献】Zhang, S. S. et al., Journal of Power Sources 109.2 (2002): 458-464
【文献】Wood, D. L. et al., Journal of Power Sources 275 (2015): 234-242
【文献】Armand, M. et al., Nature 451 (2008): 652-657
【文献】Tarascon J. M., Philosophical Transactions of the Royal Society A 368 (2010): 3227-3241
【文献】Chen, H. et al., ChemSusChem: Chemistry & Sustainability Energy & Materials 1.4 (2008): 348-355
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
一態様によると、本発明の技術は、
- 集電体として働く第1の導電性材料であり、前記第1の導電性材料の表面に、少なくとも1種の式I:
【化1】
(式中、
FGは親水性官能基であり、
nは1~5の範囲の整数であるか、好ましくはnは1~3の範囲であるか、好ましくはnは1もしくは2であるか、またはより好ましくはnは1である)
のアリール基がグラフトされた、第1の導電性材料と、
- セルロース繊維を含むバインダーと、
- 電気化学的活物質と
を含む、自立型電極であって、
自立型電極が第1および第2の表面を有する固体フィルムで作製され、
第1の導電性材料の濃度が、固体フィルムの第2の表面から第1の表面まで増大し、
電気化学的活物質の濃度が、固体フィルムの第1の表面から第2の表面まで増大する、
自立型電極に関する。
【0011】
一実施形態では、本明細書に定義される自立型電極は、第2の導電性材料をさらに含み、前記第2の導電性材料の濃度は、固体フィルムの第1の表面から第2の表面まで増大する。
【0012】
別の実施形態では、第1の導電性材料は炭素繊維を含む。例えば、炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)である。
【0013】
別の実施形態では、セルロース繊維は、未改質セルロース繊維である。例えば、セルロース繊維の平均長は、5nmから5mmの間、または250nmから3mmの間、または500nmから3mmの間、または1μmから3mmの間、または100μmから3mmの間、または250μmから3mmの間、または500μmから3mmの間、または750μmから2.5mmの間、または1mmから2.5mmの間である。
【0014】
別の実施形態では、電気化学的活物質は、コアシェル構造の、炭素層でコーティングされた粒子の形態である。例えば、前記炭素層は、少なくとも1種の式Iのアリール基がグラフトされてもよい。
【0015】
別の実施形態では、電気化学的活物質は、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子、リチウム化金属リン酸塩粒子、炭素系材料および活性有機材料から選択される。例えば、金属は、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびこれらのうちの少なくとも2つの組合せから選択される遷移金属である。
【0016】
一実施形態では、自立型電極は正極である。例えば、電気化学的活物質は、リチウム化リン酸鉄粒子(LiFePOもしくはLFP)を含むか、またはピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)もしくは3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)を含む。
【0017】
別の実施形態では、自立型電極は負極である。例えば、電気化学的活物質は、チタン酸リチウム(LiTi12、LTOとしても公知)粒子または炭素系材料を含む。例えば、炭素系材料は、グラフェンまたはグラファイトである。
【0018】
別の実施形態では、第2の導電性材料は、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブおよびこれらのうちの少なくとも2つの組合せから選択される。例えば、第2の導電性材料は、アセチレンブラック(例えば、Denka(商標)ブラック)、炭素繊維、カーボンナノチューブおよびこれらの組合せから選択される。好ましくは、第2の導電性材料は、炭素繊維、炭素繊維とアセチレンブラック(例えば、Denka(商標)ブラック)の組合せ、または炭素繊維とカーボンナノチューブの組合せを含む。例えば、炭素繊維は、気相成長炭素繊維(VGCF)である。炭素繊維は、少なくとも50重量%の濃度で組合せに存在してもよい。
【0019】
別の実施形態では、第2の導電性材料は、少なくとも1種の式Iのアリール基がさらにグラフトされる。
【0020】
別の実施形態では、親水性官能基は、カルボン酸またはスルホン酸基である。一例では、式Iのアリール基は、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である。
【0021】
別の態様によると、本発明の技術は、本明細書に定義される自立型電極を生産するための方法であって、以下のステップ:
(a)第1の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップと、
(b)セルロース繊維を含む水性混合物に第1の導電性材料を分散して、第1の水性分散液を得るステップと、
(c)第1の水性分散液を濾過膜上で濾過し、フィルムを得るステップと、
(d)電気化学的活物質、および必要に応じて第2の導電性材料を水性媒体に分散し、第2の水性分散液を得るステップと、
(e)第2の水性分散液を、ステップ(c)で得られたフィルム上で濾過し、濾過膜上に自立型電極を生産するステップと、
(f)濾過膜から自立型電極を剥離するステップと
を含む、方法に関する。
【0022】
別の実施形態では、ステップ(c)で得られたフィルムは、第1の導電性材料に富む面およびセルロース繊維に富む面を含み、第1の導電性材料に富む面は濾過膜に面している。
【0023】
別の実施形態では、電気化学的活物質は、炭素層でコーティングされた粒子の形態であり、方法は、ステップ(d)の前に、前記炭素層に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む。
【0024】
別の実施形態では、本明細書に定義される方法は、自立型電極をカレンダー加工するステップをさらに含む。例えば、カレンダー加工するステップは、室温から約80℃の間の温度で実行される。
【0025】
別の実施形態では、本発明の方法は、ステップ(f)の前に、セルロース繊維を含む水性混合物を、ステップ(e)で得られた自立型電極上で直接濾過することによってセパレータを生産するステップをさらに含む。
【0026】
別の実施形態では、本明細書に定義される方法は、ステップ(d)の前に、第2の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む。例えば、方法のグラフトするステップは、
(i)ジアゾ化剤の存在下で、式II:
【化2】
(式中、FGおよびnは本明細書に定義される通りである)
のアニリンからアリールジアゾニウムイオンを生成することと、
(ii)ステップ(i)で生成されたアリールジアゾニウムイオンを、第1もしくは第2の導電性材料、または電気化学的活物質上の炭素層と反応させることと
を含む。
【0027】
別の実施形態では、ジアゾ化剤は、炭素に対して0.01~0.04当量、または炭素に対して約0.03当量の値の範囲で存在する。代替的に、ジアゾ化剤は、式IIのアニリンに対して1~4モル当量、または式IIのアニリンに対して約3モル当量の範囲の量で存在する。例えば、ジアゾ化剤は、亜硝酸ナトリウム(NaNO)または亜硝酸tert-ブチル(t-BuONO)などの亜硝酸塩または亜硝酸アルキルである。
【0028】
別の実施形態では、アリールジアゾニウムイオンは、ステップ(i)および(ii)が同時に実施されるように、in situで生成される。
【0029】
別の態様によると、本発明の技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、負極および正極のうちの少なくとも1つが本明細書に定義される自立型電極である、電気化学セルに関する。代替的に、負極および正極は、いずれも自立型電極である。
【0030】
別の実施形態では、本発明の電気化学セルは、セパレータをさらに含む。例えば、セパレータは、ポリプロピレンセパレータ(PP)、ポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレンセパレータ(PP/PE/PP)またはセルロースセパレータである。好ましくは、セパレータは、セルロースセパレータである。例えば、セルロースセパレータは、セルロース繊維を含む水性混合物を、自立型電極の電気化学的活物質に富む表面上で直接濾過することによって生産される。
【0031】
別の実施形態では、電解質は、溶媒中のリチウム塩を含む液体電解質である。代替形態によると、電解質は、溶媒、および必要に応じて溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含むゲル電解質である。別の代替形態によると、電解質は、溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含む固体ポリマー電解質である。
【0032】
別の態様によると、本発明の技術は、少なくとも1つの本明細書に定義される電気化学セルを含む電池に関する。例えば、電池は、リチウムもしくはリチウムイオン電池、ナトリウムもしくはナトリウムイオン電池またはマグネシウムもしくはマグネシウムイオン電池である。好ましい実施形態では、電池はリチウムイオン電池である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、一実施形態による可撓性の自立型電極の調製方法を示す概略図である。
図2図2は、(A)に導電性材料に富む面、(B)にセルロース繊維に富む面ならびに(C)にフィルムの可撓性および薄い厚さを示す、実施例1(d)に記載のフィルムの写真を示す。
図3図3は、(A)に導電性材料に富む面、(B)に細孔が電気化学的活物質で充填されたセルロース繊維に富む面、(C)に小電極を切断した後であっても、フィルムがインタクトで耐性のままであること、および(D)に実施例1(e)に記載の自立型電極-セパレータフィルムを示す、実施例1(d)に記載の自立型電極の写真を示す。
図4図4は、実施例3に記載の紙電極(破線)と裸の電極(または参照)(実線)のサイクリックボルタンメトリーの結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例1(e)に記載の一体型紙セパレータを用いた自立型電極(破線)およびCelgard(商標)製セパレータを使用した実施例1(d)に記載の自立型電極(実線)で記録した、自立型電極のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
図6図6は、未改質VGCF、VGCF-COOHおよびVGCF-SOHをそれぞれ含有する3種の自立型電極で得た(A)サイクリックボルタンメトリー、および(B)C/10から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。(B)で使用される黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表す。
図7図7は、(A)に未改質VGCFを含む自立型LFP電極、および(B)にVGCF-COOHを含む自立型LFP電極の写真を示す。
図8図8は、(A)VGCF-COOHとDenka-COOHの組合せ、またはVGCF-SOHとDenka-SOHの組合せ、および(B)VGCF-COOHとCNT-COOHの組合せ、またはVGCF-SOHとCNT-SOHの組合せで記録した、C/10から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図9図9は、一方は25℃、他方は50℃の温度でカレンダー加工された、VGCF-COOHとCNT-COOH炭素の混合物を含む2種のLFP電極で得た、(A)にサイクリックボルタンメトリーの結果、および(B)にC/10から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。(B)で使用される黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表す。
図10図10は、改質LFP-COOH材料を用いて作製され、25℃および80℃でカレンダー加工されたLFP電極の、C/10から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図11図11は、異なる量のLTOおよびVGCF-SOHを含む4種の電極で得た(A)サイクリックボルタンメトリーの結果、および(B)C/10から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。(B)で使用される黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表す。
図12図12は、VGCF-COOH、VGCF-COOHとCNT-COOHの混合物、またはVGCF-COOHとDenka-COOHの混合物を含む3種の異なるLTO電極で得た(A)サイクリックボルタンメトリー、および(B)C/10から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。(B)で使用される黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表す。
図13図13は、一方はVGCF-COOHを含有し、他方はVGCF-COOHとCNT-COOHの混合物を含有する2種のLTO電極で記録した、1.2から2.5Vの間対Li/LiでC/2の一定充放電電流での、300サイクルにわたる比容量の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図14図14は、Celgard(商標)ポリマーおよびKodoshi(商標)製紙セパレータを用いたLFP/LTO電池(重量比=1)の、C/24から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図15図15は、異なる量のLFPおよびLTOを用いて作製され、LFP/LTO重量比が1または約0.85であるLFP/LTO電池の、C/24から5Cの間の充放電レートにおける容量対サイクル数の結果を示すグラフである。すべての電極にKodoshi(商標)製紙セパレータを使用した。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図16図16は、1.0から2.5Vの間対LTOでC/2の一定充放電電流での、200サイクルにわたる比容量の結果を示すグラフである。ここで、(A)Celgard(商標)製セパレータ(四角)およびKodoshi(商標)製紙セパレータ(丸)を使用したことを除き同一のLFP/LTO電池、ならびに(B)Kodoshi(商標)製紙セパレータ、ならびに異なる量のLFPおよびLTOを使用し、LFP/LTO重量比が1または約0.85であるLFP/LTO電池について安定性を比較する。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図17図17は、1.0から2.5Vの間対LTOで2Cの一定充放電電流での、1000サイクルにわたる比容量の結果を示すグラフである。LFP/LTO電池では、LFPとLTOの量を変化させ、LFP/LTO重量比は1とし、Kodoshi(商標)製紙セパレータを用いた。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図18図18は、VGCF-SOH、CNT-SOH、および種々の量の3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)の混合物を含有する3種の自立型有機電極で得た、(A)走査速度0.03mV/sでのサイクリックボルタンメトリー、および(B)C/24から5Cの間のレートにおける放電容量およびクーロン効率対サイクル数の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれクーロン効率(%)および放電容量を表すために使用される。
図19図19は、(A)VGCF-SOHおよびPTCDA、ならびに(B)VGCF-SOH、CNT-SOHおよびPTCDAの混合物を含有する2種の自立型有機電極で得た、1.5から3.5Vの間対Li/LiでC/10の一定充放電電流での、サイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれクーロン効率(%)および放電容量を表すために使用される。(A)と(B)の両方の挿入図は、長期サイクル実験前に実施した、様々なCレートでの放電容量の結果を表す。
図20図20は、VGCF-SOH(四角)、およびVGCF-SOHとCNT-SOHの混合物(丸)をそれぞれ含有する2種の自立型PTCDA電極で得た、1.5から3.5Vの間対Li/LiでC/10の一定充放電電流での、サイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれクーロン効率(%)および放電容量を表すために使用される。
図21図21は、VGCF-SOHとCNT-SOHの混合物、および異なる量のPTCDAを含有する3種の自立型PTCDA電極で得た、1.5から3.5Vの間対Li/LiでC/10の一定充放電電流での、サイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれクーロン効率(%)および放電容量を表すために使用される。
図22図22は、一方はVGCF-SOH(四角)、他方はVGCF-SOHとCNT-SOHの混合物(丸)を含有する2種のグラファイト電極で得た、0から1.5Vの間対Li/LiでC/10の一定充放電電流での、サイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれクーロン効率(%)および放電容量を表すために使用される。
図23図23は、(A)VGCF-SOHおよび30mgまたは40mgのグラファイトを含有する2種の電極、ならびに(B)VGCF-SOHおよび30mg、40mgまたは50mgのグラファイト-SOHを含有する3種の電極で得た、0から1.5Vの間対Li/LiでC/10の一定充放電電流での、サイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率の結果を示すグラフである。黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれクーロン効率(%)および放電容量を表すために使用される。
図24図24は、(A)Kodoshi(商標)製紙セパレータおよび過剰のアノード容量を使用したLFP/グラファイト電池の、2から4Vの間対グラファイトでC/24の一定電流で得た第1の充放電、ならびに(B)1Cのレートで実施した、対応する長期サイクル実験を示すグラフである。(B)の黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電の結果を表すために使用される。
図25図25は、(A)種々の量のPTCDAを含む3種の異なるPTCDA/リチウム金属電池の、開回路電位(OCP)~1.5V対Li/LiでC/24の一定電流で得た第1の放電、および(B)これら3種の電池の第1の放電直後に、電位を3時間1.5V対Li/Liに固定して実施したクロノアンペロメトリーの結果を示すグラフである。
図26図26は、(A)Kodoshi(商標)製紙セパレータおよび過剰のアノード容量を使用した2種のプレリチウム化PTCDA/グラファイト電池の、1.5から3.5Vの間対グラファイトでC/24の一定電流で得た第1の充放電、ならびに(B)5Cでの形成後にC/10のレートで同じ電池で実施した、対応する長期サイクル実験の結果を示すグラフである。(B)の黒塗り記号および白抜き記号は、それぞれ充電および放電を表すために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で使用されるすべての技術および科学用語ならびに表現は、本発明の技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ定義を有する。しかしながら、使用されるいくつかの用語および表現の定義を以下に提供する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「およそ」およびその等価物「約」という用語は、~の域、および~付近を意味する。例えば、「およそ」または「約」という用語が数値と関連して使用される場合、用語は、公称値に対して数値を10%または5%の変動分上回って、かつ下回って変更する場合がある。この用語はまた、例えば、測定装置の実験誤差または丸めを考慮に入れる場合がある。
【0036】
本明細書において「大部分は」または「主に」という用語が濃度と関連して使用される場合、別段指定されない限り、用語が体積または重量単位の公称値のいずれに関係するかに応じて、それぞれ50体積%または50重量%より高い濃度を意味する。
【0037】
本明細書に記載される化学構造は、従来の基準に従って描写される。また、描写される炭素原子などの原子が不完全な原子価を含むように思われる場合、原子価は、必ずしも明示的に描写されていなくとも、1つまたは複数の水素原子によって満たされることが想定される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「自立型電極」という表現は、金属集電体を含まない電極を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「有機半導体」という表現は、炭素原子および水素原子を含む、π結合した分子またはポリマーを指す。分子またはポリマーは、ヘテロ原子(例えば、N、SおよびO)をさらに含んでもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、置換または非置換芳香環を指し、寄与する原子は、1つの環または複数の縮合環を形成してもよい。代表的なアリール基は、6~14個の環員を有する基を含む。例えば、アリールは、フェニル、ナフチルなどを含んでもよい。芳香環は、1つまたは複数の環位置が、例えば、カルボキシル(-COOH)またはスルホン酸(-SOH)基、アミン基および他の同様の基で置き換えられていてもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「親水性官能基」という表現は、水分子に引き付けられる官能基を指す。親水性官能基は、一般的に、荷電していてもよく、かつ/または水素結合を形成することが可能である。親水性官能基の非限定的な例は、ヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、アミン、アミドおよび他の同様の基を含む。この表現は、適用可能な場合、これらの基の塩をさらに含む。
【0042】
本出願は、自立型電極、例えば、可撓性の自立型電極について記載する。本出願はまた、自立型電極を作製するための、製紙産業から着想を得た水系濾過方法について記載する。本出願はまた、電気化学セルにおけるこれらの自立型電極の使用について記載する。例えば、本出願は、リチウムイオン電池(LIB)における自立型電極の使用について記載する。
【0043】
本発明の自立型電極およびそれらの製造方法は、以下の要素のうちの1つまたは複数を排除する:集電体(例えば、アルミニウムまたは銅集電体)、コストの高いバインダーまたは有害な溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP))。本発明の方法によって得られる自立型電極はまた、再利用可能であってもよい。
【0044】
本出願の方法は、自立型電極用バインダーとして未改質セルロースを使用する。未改質セルロースは、豊富に存在する、天然の、低コストのポリマーである。さらに、本出願の方法は、比較的簡潔であり、迅速であり、産業生産に容易に拡張可能である。例えば、本発明の方法は、溶媒として水のみを使用する場合がある。
【0045】
本発明の方法はまた、電極材料の調製を促し、かつ/またはその水への分散を容易にしうる水溶性(分散性)炭素の調製を伴う場合がある。例えば、電極へのこれらの改質炭素の分布の向上により、電気化学的性能の向上がもたらされる可能性がある。
【0046】
例として、良好な機械的耐性を有するLFP、グラファイト、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)およびLTO電極を含む、多様な可撓性の自立型電極が本発明の方法によって入手可能であった。本出願の自立型電極は、自立型電極の打ち抜き後であっても、サイクル後も、および/または電気化学セルの開放後であっても、依然として実質的にインタクト(それらの元の状態)である。試験される本発明の自立型正極および/または負極の電気化学的性能は、従来の製造方法に従って金属集電体(例えば、アルミニウムまたは銅集電体)に塗布されたLFPおよび/またはLTO電極について一般的に報告されるものと少なくとも同様である。電気化学セルは、一般的に、長期サイクル時であっても、良好な安定性および実質的に高い比容量を維持する。
【0047】
したがって、本発明の技術は、
- 集電体として働く第1の導電性材料であり、前記第1の導電性材料の表面に、少なくとも1種の式I:
【化3】
(式中、
FGは親水性官能基であり、
nは1~5の範囲の整数であるか、好ましくはnは1~3の範囲であるか、好ましくはnは1もしくは2であるか、またはより好ましくはnは1である)
のアリール基がグラフトされた、第1の導電性材料と、
- セルロース繊維を含むバインダーと、
- 電気化学的活物質と、
- 必要に応じて第2の導電性材料と
を含む、自立型電極であって、
自立型電極が第1の表面および第2の表面を有する固体フィルムからなり、
第1の導電性材料の濃度が、固体フィルムの第2の表面から第1の表面まで増大し、
電気化学的活物質、および必要に応じて第2の導電性材料の濃度が、固体フィルムの第1の表面から第2の表面まで増大する、
自立型電極に関する。
【0048】
一例によると、第1の表面は、第1の導電性材料を主に含む。第1の導電性材料は、気相成長炭素繊維(VGCF)などの炭素繊維を含んでもよい。
【0049】
親水性官能基の例としては、ヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、アミン、アミドおよび他の同様の基が挙げられる。例えば、親水性官能基は、カルボン酸またはスルホン酸官能基である。式Iのアリール基の好ましい例は、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である。
【0050】
バインダーは、セルロース繊維、特に、未改質セルロース繊維を含む。例えば、未改質セルロース繊維は、アルミニウムカチオンを含有しない。前述のように、従来のセルロース繊維は、多くの場合、アジュバントとしての硫酸アルミニウム水和物で改質され、それによりアルミニウムカチオンによってセルロース繊維に存在する負電荷が中和される。本出願のセルロース繊維は硫酸アルミニウム水和物で処理されず、これはこの化合物が、例えば、サイクル時に電池の内部で反応する可能性があるためである。
【0051】
一例によると、セルロース繊維の平均長は、5nmから5mmの間、または250nmから3mmの間、または500nmから3mmの間、または1μmから3mmの間、または100μmから3mmの間、または250μmから3mmの間、または500μmから3mmの間、または750μmから2.5mmの間、または1mmから2.5mmの間である。
【0052】
本発明の自立型電極の第2の表面は、電気化学的活物質、および必要に応じて第2の導電性材料を主に含む。
【0053】
一例によると、電気化学的活物質は、粒子の形態であってもよい。別の例によると、電気化学的活物質は、コアシェル構造の、炭素層でコーティングされた粒子の形態であってもよい。炭素層は、必要に応じて少なくとも1種の式Iのアリール基がさらにグラフトされてもよい。
【0054】
電気化学的活物質の非限定的な例として、金属リン酸塩、リチウム化金属リン酸塩、金属酸化物およびリチウム化金属酸化物などの材料が挙げられ、例えば、金属は、Ti、Fe、Mn、V、Ni、Coおよびこれらの組合せから選択される遷移金属である。例えば、電気化学的活物質は、リチウム化または非リチウム化金属リン酸塩(例えば、LiM’POおよびM’PO、ここでM’はFe、Ni、Mn、Coもしくはこれらの組合せである)、バナジウム酸化物(例えば、LiV、V、LiVなど)、他のリチウム化金属酸化物、例えば、LiMn、LiM”O(M”はMn、Co、Niもしくはこれらの組合せである)、Li(NiM’’’)O(M’’’はMn、Co、Al、Fe、Cr、Ti、Zrなど、もしくはこれらの組合せである)、チタン酸塩もしくはチタン酸リチウム(例えば、TiO、LiTiO、LiTi12、HTi11、HTi、もしくはこれらの組合せ)、または、適合性がある場合、上記の材料の2つもしくはそれよりも多くの組合せを含む。自立型電極が正極である場合、電気化学的活物質は、例えば、リチウム金属リン酸塩粒子(例えば、LiFePO、LFPとしても公知)を含んでもよい。自立型電極が負極である場合、電気化学的活物質は、例えば、チタン酸リチウム粒子(例えば、LiTi12、LTOとしても公知)を含んでもよい。
【0055】
一代替形態によると、電気化学的活物質は、グラフェンまたはグラファイトなどの炭素系材料であってもよい。別の代替形態によると、電気化学的活物質はまた、ポリマーまたはポリ芳香族型の活物質を含む電極材料などの活性有機材料であってもよい。例えば、活性有機材料は、有機半導体であってもよい。
【0056】
活性有機材料の非限定的な例として、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)および3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)などの二無水物系ポリマーが挙げられる。目的の一変形形態によると、二無水物系有機材料はPTCDAである。PTCDAは、例えば、低コストであるため、またはその理論容量が273mAh.g-1であるために選択されてもよい。
【0057】
例によると、二無水物系ポリマーは、式III(a)、III(b)またはIII(c)のものであってもよい:
【化4】
【0058】
例えば、PTCDAを含む自立型正極で得られる電気化学的性能(容量およびクーロン効率)は、PTCDA正極、およびより少ない電気化学的活物質の負荷量について一般的に報告されるものと比べて有意に向上する(Sharma, P. et al., The Journal of Physical Chemistry Letters 4.19 (2013): 3192-3197を参照されたい)。
【0059】
別の例によると、活性有機材料は、アントラキノンなどのキノン誘導体を含んでもよい。
【0060】
別の例によると、第2の導電性材料は、必要に応じて少なくとも1種の式Iのアリール基がグラフトされる。
【0061】
第2の導電性材料の非限定的な例として、カーボンブラック(例えば、Ketjen(商標)炭素)、アセチレンブラック(例えば、Shawinigan炭素およびDenka(商標)炭素)、グラファイト、グラフェン、炭素繊維(例えば、炭素ナノ繊維またはVGCF)およびカーボンナノチューブ(CNT)またはこれらのうちの少なくとも2つの組合せが挙げられる。第2の導電性材料は、アセチレンブラック(例えば、Denka(商標)炭素)、炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブおよびこれらの組合せから選択される少なくとも1つの材料を含んでもよい。例えば、第2の導電性材料は、VGCF、VGCFとDenka(商標)炭素の組合せ、またはVGCFとCNTの組合せを含む。目的の変形形態によると、VGCFが別の導電性材料(例えば、CNTまたはDenka(商標))との組合せで存在する場合、VGCFは、50重量%より多くの濃度で組合せに存在する。
【0062】
第2の態様によると、本発明の技術は、自立型電極を生産するための方法であって、以下のステップ:
(a)第1の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップと、
(b)セルロース繊維を含む水性混合物に、ステップ(a)で得られた改質された第1の導電性材料を分散して、第1の水性分散液を得るステップと、
(c)第1の水性分散液を濾過膜上で濾過し、フィルムを得るステップと、
(d)電気化学的活物質、および必要に応じて第2の導電性材料を水性媒体に分散し、第2の水性分散液を得るステップと、
(e)第2の水性分散液を、ステップ(c)で得られたフィルム上で濾過し、濾過膜上に自立型電極を生産するステップと、
(f)濾過膜から自立型電極を剥離するステップと
を含む、方法に関する。
【0063】
一例によると、導電性材料へのアリール基のグラフトは、スキーム1に例証されるように実行することができる:
【化5】
【0064】
一例によると、電気化学的活物質の表面に存在する炭素層へのアリール基のグラフトは、スキーム2に例証されるように実行することができる:
【化6】
【0065】
スキーム2は、例証として、親水性官能基(FG)としてCOOH基を使用するが、方法は、他の親水性官能基にも当てはまることが理解される。
【0066】
一例によると、方法は、ステップ(d)の前に、第2の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む。導電性材料への式Iのアリール基のグラフトは、スキーム1に例証されるように実行することができる。
【0067】
一般的に、方法のグラフトするステップは、
(i)ジアゾ化剤の存在下で、式II:
【化7】
(式中、FGおよびnは本明細書に定義される通りである)
のアニリンからアリールジアゾニウムイオンを生成することと、
(ii)ステップ(i)で生成されたアリールジアゾニウムイオンを、電気化学的活物質の表面の炭素層と、または第1もしくは第2の導電性材料と反応させることと
を含む。
【0068】
一変形形態によると、アリールジアゾニウムイオンは、in situで生成される、すなわち、ステップ(i)は、ステップ(ii)の電気化学的活物質の炭素層、または代替的に、第1もしくは第2の導電性材料の存在下で実行される。この変形形態では、ジアゾニウムイオンは、形成されるときに、炭素層、または代替的に、第1もしくは第2の導電性材料の炭素と反応する。別の変形形態によると、アリールジアゾニウムイオンはまた、電気化学的活物質または第1もしくは第2の導電性材料の添加前に生成されてもよい。第三の変形形態によると、ジアゾニウムイオンは、電気化学的活物質または第1もしくは第2の導電性材料に添加される前に生成されてもよい。
【0069】
使用されるジアゾ化剤の量は、アニリンに対して1~4モル当量の範囲、好ましくは約3モル当量であってもよい。一例では、使用されるジアゾ化剤の量は、炭素に対して0.01~0.04当量の範囲であってもよい。例えば、ジアゾ化剤は、亜硝酸塩または亜硝酸塩アルキルである。グラフトするステップが第1または第2の導電性材料に実施される場合、ジアゾ化剤は、亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム(NaNO)であってもよい。代替的に、グラフトするステップが電気化学的活物質の炭素層に実施される場合、ジアゾ化剤は、亜硝酸アルキル、例えば、亜硝酸tert-ブチル(t-BuONO)であってもよい。
【0070】
一例によると、グラフトするステップが第1または第2の導電性材料に実施される場合、酸性水性媒体中で実行されてもよい。例えば、水性酸性媒体は、硫酸(HSO)水溶液であってもよい。
【0071】
一例によると、グラフトするステップが電気化学的活物質の表面の炭素層に実施される場合、アセトニトリルなどの極性非プロトン性溶媒中で実行されてもよい。
【0072】
ステップ(c)で得られたフィルムは、第1の導電性材料に富む面、およびセルロース繊維に富む面を含み、第1の導電性材料に富む面は、濾過膜に面している。
【0073】
変形形態によると、方法は、ステップ(c)で得られたフィルムを乾燥するステップをさらに含む。
【0074】
別の例によると、電気化学的活物質は、炭素層でコーティングされた粒子の形態であり、方法は、ステップ(d)の前に、前記炭素層に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む。
【0075】
別の例によると、方法は、自立型電極をカレンダー加工するステップをさらに含む。例えば、カレンダー加工するステップは、室温から約80℃の間の温度、例えば、約25℃~約80℃の範囲で実行されてもよい。例えば、カレンダー加工するステップは、室温で実行されてもよい。代替的に、カレンダー加工するステップは、約50℃~約80℃の範囲の温度で実行されてもよい。
【0076】
別の例によると、方法は、セルロース繊維を含む水性混合物を、ステップ(e)で生産される自立型電極上で直接濾過することによってセパレータを生産するステップをさらに含み、このため、セパレータを生産するステップは、一般的にステップ(f)の前に実施される。
【0077】
第三の態様によると、本発明の技術は、負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、負極および正極のうちの少なくとも1つが本明細書に定義される自立型電極である、電気化学セルに関する。代替的に、負極および正極は、いずれも本明細書に定義される自立型電極である。
【0078】
別の例によると、電気化学セルは、セパレータをさらに含む。セパレータの非限定的な例は、ポチエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン(PP/PE/PP)を含んでもよい。目的の一変形形態によると、セパレータは、PPまたはPP/PE/PPセパレータ(例えば、Celgard(商標)によって開発されたセパレータ)またはセルロースセパレータ(例えば、本発明の方法によって調製されるセパレータもしくはニッポン高度紙工業から市販の紙セパレータ)である。
【0079】
変形形態によると、セパレータは、セルロース繊維を含む水性混合物を、自立型電極の電気化学的活物質に富む面上で直接濾過することによって生産されるセルロースセパレータである。
【0080】
電解質は、通常、電気化学セルの種々の要素との適合性のために選択される。あらゆる種類の電解質、例えば、液体、ゲルまたは固体電解質が企図される。例えば、電解質は、溶媒中のリチウム塩を含む液体電解質であってもよい。代替的に、電解質は、溶媒および/または溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含むゲル電解質であってもよい。別の代替形態によると、電解質は、溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含む固体ポリマー電解質であってもよい。
【0081】
リチウム塩の非限定的な例として、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾレート(LiTDI)、リチウム4,5-ジシアノ-1,2,3-トリアゾレート(LiDCTA)、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ビス(オキサレート)ホウ酸リチウム(LiBOB)、亜硝酸リチウム(LiNO)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、フッ化リチウム(LiF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSOCF)(LiTf)、フルオロアルキルリン酸リチウム Li[PF(CFCF](LiFAP)、テトラキス(トリフルオロアセトキシ)ホウ酸リチウム Li[B(OCOCF](LiTFAB)、ビス(1,2-ベンゼンジオレート(2-)-O,O’)ホウ酸リチウム Li[B(C](LBBB)およびこれらの組合せを挙げることができる。一変形形態によると、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)である。
【0082】
例えば、溶媒は、非水性溶媒である。非水性溶媒の非限定的な例として、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ブチレン(BC)および炭酸ビニレン(VC)などの環状炭酸塩;炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)および炭酸ジプロピル(DPC)などの非環状炭酸塩;γ-ブチロラクトン(γ-BL)およびγ-バレロラクトン(γ-VL)などのラクトン;1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,2-ジエトキシエタン(DEE)、トリメトキシメタンおよびエトキシメトキシエタン(EME)などの非環状エーテル;2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソランおよびこれらの誘導体などの環状エーテル;ホルムアミド、アセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどのアミド;ならびにジメチルスルホキシド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、リン酸トリエステル、スルホラン誘導体、メチルスルホランおよびこれらの混合物などの他の有機溶媒を挙げることができる。目的の一変形形態によると、非水性溶媒は、炭酸エチレン(EC)/炭酸ジエチル(DEC)の混合物(例えば、体積で3:7)である。
【0083】
第四の態様によると、本発明の技術は、少なくとも1つの本明細書に定義される電気化学セルを含む電池に関する。例えば、電池はリチウムイオン電池である。
【0084】
第五の態様によると、本発明の技術は、例えば、自立型有機正極および自立型有機負極を含む、全有機電池に関する。例えば、全有機電池は、PTCDAを含む自立型正極、およびグラファイトを含む自立型負極を含む。
【0085】
PTCDAを含む自立型正極、およびグラファイトを含む自立型負極を含む全有機電池(遷移金属を含まない)を調製し、電気化学的に試験した。これらの全有機電池(PTCDA/グラファイト)は、有機レドックス分子および生体分解性成分を含む。したがって、本発明の技術は、安価かつ生体分解性の電池の概念を実証する。
【0086】
第六の態様によると、本発明の技術は、本質的に生態学的な方法を使用した、本明細書に定義される自立型電極の再利用に関する。再利用された材料に基づく電池もまた、本明細書で企図される。
【実施例
【0087】
以下の非限定的な実施例は例証のためのものであり、本発明の範囲をさらに限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、添付の図を参照することでより良好に理解される。
【0088】
(実施例1)
自立型電極の調製
(a)セルロース繊維を含む水性混合物の調製
400mgのSodra(商標)black Rパルプ繊維を200mlの脱イオン水に分散し、ULTRA-TURRAX(商標)分散機で約15分間激しく混合することにより、セルロース繊維を含む水性混合物を調製した。参考として、Sodra(商標)black Rパルプ繊維は、2.05~2.25mmの範囲の長さの未改質セルロース繊維を含む。
【0089】
次に、混合物を室温に冷却し、200mlの脱イオン水を添加して、混合物1リットルあたり約1gのセルロース繊維の濃度でセルロース繊維を含む水性混合物を得た。
【0090】
(b)水溶性炭素(改質炭素)の調製
水溶性炭素を生産するための以下の方法を、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、Denka(商標)型アセチレンブラックおよびグラファイトに適用した。以下の手順において、炭素という用語は、これらの材料のうちの1つまたは他のものを指すように使用される。
【0091】
5gの炭素を200mlの0.5M硫酸(HSO)水溶液に分散し、0.01当量の、1つの親水性置換基(-SOHまたは-COOH)でp置換されたアニリンを混合物に添加した(すなわち、炭素に対して0.01当量のアニリン)。次いで、アミンが完全に溶解するまで混合物を激しく撹拌した。
【0092】
炭素に対して0.03当量の亜硝酸ナトリウム(NaNO)(例えば、アニリンに対して3当量のNaNO)を添加すると、対応するアリールジアゾニウムイオンがin situで生成し、炭素と反応した。得られた混合物を、室温で終夜反応させた。
【0093】
反応の完了後、真空濾過アセンブリ(ブフナー型)、および孔径が0.22μmのナイロンフィルターを使用して、混合物を真空濾過した。次に、そのように得られた改質炭素粉末を、pHが中性に達するまで脱イオン水で、次にアセトンで連続的に洗浄した。最後に、改質炭素粉末を、使用前に少なくとも1日間、100℃で真空乾燥した。
【0094】
(c)グラフトされた親水性C-LiFePO粒子(改質C-LFP)の調製
典型的に、5gの炭素でコーティングされたLiFePO(2~3重量%の炭素)を200mlのアセトニトリルに分散し、0.01当量の、1つの親水性-COOH置換基でp置換されたアニリンを混合物に添加した(すなわち、炭素に対して0.01当量のアニリン)。その後、アミンが完全に溶解するまで混合物を激しく撹拌した。炭素に対して0.03当量の亜硝酸tert-ブチル(t-BuONO)を添加すると、対応するアリールジアゾニウムイオンがin situで生成し、炭素コーティングと反応した。得られた混合物を、室温で終夜反応させた。
【0095】
反応の完了後、ブフナー型アセンブリ、および孔径が0.22μmのナイロンフィルターを使用して、混合物を真空濾過した。次に、そのように得られた改質粒子粉末を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびアセトンで連続的に洗浄した。最後に、改質C-LFP粒子粉末を、使用前に少なくとも1日間、100℃で真空乾燥した。
【0096】
(d)自立型電極の調製
自立型電極を図1に図示されるように調製した。約30mgのセルロース繊維に対応する、実施例1(a)に記載のセルロース繊維を含む、ある体積の水性混合物をビーカーに添加した。次に、10mgの未改質VGCF炭素繊維、または実施例1(b)に記載のVGCF-SOHもしくはVGCF-COOHをビーカーに添加し、セルロース繊維を含む水性混合物に分散して、第1の水性分散液を得た。次いで、超音波ロッドを使用して第1の水性分散液を撹拌した。グラフトされた親水性VGCF粉末であるVGCF-SOHおよびVGCF-COOHはすぐに水性混合物に可溶化した一方、市販の未改質VGCF炭素繊維は、可溶化するまで少なくとも10分かかった。均質になった第1の水性分散液を、ブフナー型アセンブリ、および孔径が0.22μmのナイロン濾過膜を使用して濾過し、可撓性のフィルムを得た(図2(C)を参照されたい)。例えば、得られたフィルムの導電性材料に富む面(図2(A)を参照されたい)は、集電体として働くことができる。得られたフィルムのもう一方の面は、セルロース繊維に富む面(図2(B)を参照されたい)である。導電性材料に富む面は、混合物の濾過の際に濾過膜に面する。次いで、得られたフィルムを10分間乾燥した。
【0097】
40から70mgの間の量の電気化学的活物質(LFP、PTCDAまたはLTO)を約50mlの脱イオン水に分散した。PTCDAの場合、水に可溶性であるため、PTCDA系自立型電極の調製は簡潔であり、PTCDAはセルロースとVGCF基板の内部に強力に捕捉された。
【0098】
次に、10mgの第2の改質または未改質導電性材料(改質または未改質VGCF、Denka(商標)およびCNT、またはこれらの組合せ)を水性分散液に添加した。ここでもまた、グラフトされた親水性炭素およびグラフトされた親水性炭素でコーティングされたLiFePO粒子は、より容易かつ迅速に水に分散した。次いで、水性分散液を撹拌し、ブフナーアセンブリに予め調製されたフィルムに直接注ぎ、濾過して濾過膜上に自立型電極を得た。
【0099】
その後、自立型電極を濾過膜から剥離した。そして、室温、50℃または80℃で自立型電極をカレンダー加工した。このようにして得られた自立型電極を、電池に使用する前に少なくとも1日間、130℃の温度で真空オーブンに入れた。図3は、本実施例で調製されたLFP電極を示す。図3(A)は、光沢を保持する導電性材料に富む面を示し、図3(B)は、セルロース繊維に富む面(VGCFに富む面の反対側)の細孔が、電気化学的活物質(LFP)で充填されていることを示す。図3(C)は、小電極の打ち抜き後であっても、フィルムが依然としてインタクトで耐性であることを示す。
【0100】
(e)紙セパレータの調製
必要に応じて、紙セパレータが自立型電極上に直接調製されてもよい。濾過膜から自立型電極を剥離するステップの前に、実施例1(a)によって調製された、約30mgのセルロース繊維に対応する、セルロース繊維を含む、ある体積の水性混合物を、自立型電極の電気化学的活物質に富む面上で直接濾過する。図3(D)は、集電体として働くVGCFに富む面を含む本明細書に定義される自立型電極およびセパレータである、一体型LFP電極と紙セパレータを含むフィルムを示す。
【0101】
(実施例2)
フィルムおよび自立型電極の物理的特徴付け
実施例1(d)に記載のフィルムは、厚さが約100μmであった。自立型フィルムをカレンダー加工することにより、厚さが低減した。実際、自立型電極が50および80℃の温度でカレンダー加工されると、厚さがそれぞれ平均20および30%低下したことが観察された。図2に示されるように、フィルムは柔軟であり、折り畳み可能であり、巻取り可能であり、耐性がある。
【0102】
図3(C)は、自立型電極フィルムからの電極の打ち抜きが、フィルムの完全性に実質的に影響を及ぼさなかったことを示す。図3(A)に実証されるように、最初の製造ステップで得られた導電性材料に富む面(図2(A))は、電気化学的活物質を含有する混合物を濾過するステップの後で依然として実質的に変化しなかった。図2(B)に図示されるように、セルロース繊維に富む面の細孔は、第2の濾過ステップで、電気化学的活物質および第2の導電性材料で充填された。
【0103】
このようにして得られた自立型電極は、2つの表面を有するセルロース系固体フィルムから構成される。2つの表面のうちの一方は、第1の導電性材料を主に含み、他方の表面は、電気化学的活物質および第2の導電性材料を主に含む。
【0104】
実施例1(d)に記載の方法は、金属集電体が集電体として働く炭素によって置き換えられるため、非常に興味深いものである。金属集電体の重量は、例えば、より多くのセルロースまたは炭素繊維またはその両方で置き換えられる可能性があるため、金属集電体に塗布されたフィルムのものより多い炭素含有量を有する強固なフィルムが得られる。実際、アルミニウム箔に塗布された電極(約6mgの電気化学的活物質/cm)では、電気化学的活物質(例えば、LFP)は電極の総重量の53重量%を占め、バインダーおよび導電性材料が約6重量%を占めるが、不活性アルミニウム箔は41重量%を占める。
【0105】
実施例1(d)に記載の方法の別の利点は、電気化学的活物質がビーカーに添加され濾過される前に秤量されるため、その量を完全に把握することができることである(図1を参照されたい)。したがって、電池の構成または使用されるカソード/アノード材料に応じて、自立型フィルム中の活物質の量(mg/cm)は比較的容易に適応可能である。
【0106】
(実施例3)
電気化学セルの調製
電気化学セルはすべて、VMPポテンショスタットで制御され、酸素含有量が20ppm未満の、アルゴンが充填されたグローブボックスでアセンブルした。
【0107】
対極として、および参照電極として金属リチウムを用い、EC:DEC(体積で3:7)の混合物中1MのLiPFを含む液体電解質を含浸させたCelgard(商標)-3501セパレータまたはKodoshi(商標)製紙セパレータを用いて、2つの電極を有するLR2032ボタンセル電池をアセンブルした。
【0108】
EC:DEC(体積で3:7)の混合物中1MのLiPFを含む液体電解質を含浸させたCelgard(商標)-3501セパレータまたはKodoshi(商標)製紙セパレータを用いて、自立型正極フィルムおよび自立型負極フィルム(LFP/LTOまたはPTCDA/グラファイト)を含む完成電池をアセンブルした。
【0109】
すべての電極を、フィルムに挿入される電気化学的活物質の量に応じて、質量負荷量が8.4~11.2mg/cmの範囲である小さな円板(面積=1.13cm図2(C)を参照されたい)へと打ち抜いた。
【0110】
また、裸の電極または参照電極を、作用電極としてステンレス鋼スペーサーを使用して試験した。
【0111】
セルロース繊維が電気化学的に不活性であることを検証するために、作用電極としてリチウムを用い、EC:DEC(体積で3:7)の混合物中1MのLiPFを含む液体電解質を含浸させたCelgard(商標)-3501セパレータまたはKodoshi(商標)製紙セパレータを用いて、手製の紙電極を試験した。
【0112】
(実施例4)
電気化学的特性
(a)サイクリックボルタンメトリー実験の条件
参照電極(ステンレス鋼スペーサーのみ)、紙電極(セルロース繊維から構成される)、ならびにLFP、PTCDAおよびLTO自立型電極の電気化学的特性を、サイクリックボルタンメトリーによって比較した。種々の電位窓で、0.03mV.s-1の走査速度を使用した。
【0113】
参照電極(ステンレス鋼スペーサーのみ)および紙電極(セルロース繊維から構成される)では、電位を開回路電位(OCP)~4.2V対Li/Liまで走査し、続いて4.2V~2.0V対Li/Liまで逆方向走査した。
【0114】
LFP自立型電極では、電位を開回路電位(OCP)~4.0V対Li/Liまで走査し、続いて4.0V~2.0V対Li/Liまで逆方向走査した。
【0115】
PTCDA自立型電極では、電位を開回路電位(OCP)~1.5V対Li/Liまで走査し、続いて1.5V~3.5V対Li/Liまで逆方向走査した。
【0116】
LTO自立型電極では、電位を開回路電位(OCP)~1.2V対Li/Liまで走査し、続いて1.2V~2.5V対Li/Liまで逆方向走査した。
【0117】
(b)定電流サイクルおよび長期サイクル実験の条件
定電流モードで、LFP、PTCDA、グラファイトおよびLTO電極について、それぞれ2.0から4.0Vの間、1.5から3.5Vの間、0から1.5Vの間および1.2から2.5Vの間対Li/Liの異なる電流密度で充放電サイクルを実施した。C/10~5Cの範囲の各サイクルレートについて5サイクル記録し、実験は自動的にC/24における2回の形成サイクルから開始した。
【0118】
さらに、LFP/LTO重量比が1~約0.85の範囲であるLFP/LTO電気化学セルも、1.0から2.5Vの間対LTOで、C/24~5Cの範囲の異なるサイクルレートで試験した。
【0119】
C/24における2回の形成サイクルの直後、PTCDA/Li、グラファイト/Li、LTO/Li、LFP/LTO、LFP/LTO電気化学セル、ならびにLFP/グラファイトおよびPTCDA/グラファイト電池について種々のサイクルレートで、C/10、C/2、Cおよび2Cのサイクルレートで長期サイクル実験を実施した。
【0120】
C/24で、開回路電位(OCP)~1.5V対Li/Liまで放電を行うことによって、リチウム負極を使用したボタンセルにおいてPTCDAカソードのプレリチウム化を行い、続いて3時間1.5Vの一定電位でクロノアンペロメトリー実験を行った。ボタンセルを分解し、プレリチウム化PTCDA正極を回収してグラファイト負極を用いてアセンブルした。
【0121】
(c)電気化学的結果
サイクリックボルタモグラムはすべて実施例3(a)に記載の実験条件を使用して記録し、定電流サイクルおよび長期サイクル実験はすべて実施例3(b)に記載の実験条件を使用して記録した。
【0122】
i.参照電極(ステンレス鋼スペーサーのみ)および紙電極(セルロース繊維で作製)の電気化学的特性
未改質セルロース繊維がLIBにおいて電気化学的活物質の支持体として使用可能であることを検証するために、セルロース繊維のみから構成された簡潔な紙電極を調製した。この電極をボタンセルの作用電極として、リチウム金属に対して試験した。図4に示すサイクリックボルタンメトリー実験は、セルロース繊維(破線)が4.2Vの電位まで電気化学的に不活性であり、これによって、このタイプの電極が、LIBに使用するための有望な候補になることを示した。図4に示されるように、2V~4.2V対Li/Liの電位窓での紙電極の電気化学的特性は、作用電極として働くステンレス鋼スペーサーで作製された参照電極の電気化学的特性(実線)と同様であった。紙電極および参照電極について記録された電流は、図5に示される自立型LFP電極で得たものより約4桁低かった。
【0123】
ii.一体型紙セパレータの電気化学的特性
図3(D)に示す電極フィルムに直接堆積した、実施例1(e)に記載の一体型紙セパレータもサイクリックボルタンメトリーによって特徴付けし、紙セパレータの電気化学的特性に対する影響を検証した。図5は、Celgard(商標)製セパレータを用いた自立型LFP電極(実線)と比較した、一体型紙セパレータを用いた自立型LFP電極(不連続線)について得られたサイクリックボルタモグラムを示す。得られたサイクリックボルタモグラムは、2つの電極の分極(ΔE)が同様であり、一体型紙セパレータは、自立型LFP電極の電気化学的特性に実質的に悪影響を及ぼさなかったことを示した。
【0124】
さらに、一体型紙セパレータを用いた自立型LFP電極で記録されたレドックスピークの強度は、Celgard(商標)製セパレータを用いた自立型LFP電極よりわずかに高かった。この結果は、機械的特性の向上およびフィルムの完全性の増強によって説明できる。
【0125】
iii.第2の未改質導電性材料と比べた、第2の改質導電性材料の使用の、自立型LFP電極の電気化学的特性に対する効果
図6(A)は、電気化学的活物質の負荷量が同じであり、同じ方法によって得られた3種の自立型LFP電極で記録されたサイクリックボルタンメトリーの結果を示し、図6(B)は比容量の結果を示す。ただし、3種の異なる炭素、すなわち未改質VGCF(実線)、VGCF-COOH(破線)およびVGCF-SOH(破線)を使用した。図6(A)に示すように、サイクリックボルタモグラムは同様であった。しかし、図6(B)に示される比容量の結果は、改質炭素を含む自立型電極の電気化学的性能が実質的に向上したことを示し、これは2Cおよび5Cのサイクルレートで特に明白である。より低い電流密度(例えば、C/10)では、3種の自立型LFP電極の放電容量は同様であり、約155mAh.g-1であった。サイクルレートを1Cに上昇させると、放電容量は改質VGCFを含む両方の自立型LFP電極で約140mAh.g-1に留まった一方、未改質VGCFを使用すると、約120mAh.g-1の容量が得られた。この容量は、両方の改質自立型LFP電極について5Cのレートで得られる放電容量に一致する。電気化学的性能の向上は、炭素が、セルロース繊維によって作られた空隙をより良好に充填することを可能とする、置換基の親水性の性質に起因する可能性がある。図7は、(A)に未改質VGCFを含む自立型LFP電極、および(B)にVGCF-COOHを含む自立型LFP電極の写真を示す。図7(B)は、セルロース繊維が電極の表面で視認可能であり、電気化学的活物質および第2の導電性材料がセルロース繊維に捕捉された強固なフィルムがもたらされたことを示す。したがって、5Cでは、未改質VGCFおよびVGCF-COOHが使用された場合に、初期放電容量がそれぞれ約50%および77%回復した。
【0126】
iv.第2の導電性材料の性質の、自立型LFP電極の電気化学的特性に対する効果
電極組成において、第2の導電性材料(VGCF)の量の50重量%を別の炭素の種類で(例えば、Denka(商標)またはCNTによって)置き換えた。図8では、改質炭素の異なる混合物を含む自立型電極の比容量を比較する。図8(A)は、VGCF-COOHとDenka-COOHの組合せ(四角)の結果、およびVGCF-SOHとDenka-SOHの組合せ(三角)の結果を示す。図8(B)は、VGCF-COOHとCNT-COOHの組合せ(四角)の結果、およびVGCF-SOHとCNT-SOHの組合せ(丸)の結果を示す。いずれの場合でも、Denka(商標)を使用することにより(図8(A)を参照されたい)、リチウム-イオンフィルムの電気化学的性能が低減した。しかし、第2の導電性材料の量の50重量%をCNTで置き換えた場合に、電気化学的性能の向上が観察された。特に、Denka(商標)炭素を使用すると、1Cのサイクルレートで得られる比容量は約140mAh.g-1であるが、改質CNTを含む自立型LFP電極では、2Cで同じ容量が得られた(図8(B)を参照されたい)。改質CNTの使用に関して、第2の導電性材料としてVGCFのみを含む自立型LFP電極と比較して、電気化学的性能のわずかな向上が観察された。
【0127】
v.カレンダー加工温度の電気化学的特性に対する効果
また、異なる温度での自立型LFP電極のカレンダー加工の効果を試験した。図9(A)は、25℃の温度および50℃の温度でカレンダー加工された同じ電極のサイクリックボルタンメトリーの結果を示し、図9(B)は容量対サイクル数の結果を示す。図9(A)は、異なる温度でカレンダー加工された2つの自立型LFP電極の優れた再現性を示す。第2の導電性材料としてVGCF-COOHとCNT-COOHの組合せを含む自立型LFP電極の結果のみが示されるが、LFP電極がCNT、Denka(商標)炭素またはVGCFのいずれを含んでも、高い再現性が同様に実証された。
【0128】
さらに、図9(B)および10に示されるように、50℃または80℃の温度でカレンダー加工された電極で得られた比容量は、25℃の温度でカレンダー加工された電極のものよりわずかに高い。この結果は、フィルム内の電気化学的活物質と第2の導電性材料の間の電気的接触の向上および伝導性の向上に起因する可能性がある。
【0129】
最後に、自立型電極の厚さは、カレンダー加工温度が上昇するにつれ減少した。したがって、25℃のカレンダー加工温度では一般的に約100μmの厚さが得られた一方、50℃および80℃のカレンダー加工温度では、それぞれ約80μmおよび約70μmの厚さが得られた。導電性材料の性質はカレンダー加工後の厚さに有意な影響を及ぼさないように思われ、厚さはむしろ、使用されるセルロース繊維の量に主に影響されるように思われる。
【0130】
vi.電気化学的活物質の表面改質の、自立型LFP電極の電気化学的特性に対する効果
水溶性炭素の使用は、向上した電気化学的性能を得るため、かつ調製時間を減少させるために特に興味深いものであることが証明された。同列の概念として、電気化学的活物質(例えば、C-LFP)の表面に、実施例1(c)に記載の手順に従い、親水性官能基を含む少なくとも1種のアリール基(例えば、-アリール-COOH)をグラフトした。図10は、改質LFP-COOH材料を用いて作製された、厚さが異なる2つのLFP電極の電気化学的性能を示す。
【0131】
近年の研究により、グラフトされた基の負荷量が高いと、比容量が低下する可能性があることが示唆されている(Delaporte, N. et al., ACS applied materials & interfaces, 7(33), 18519-18529;およびDelaporte, N. et al., Journal of Power Sources, 280, 246-255を参照されたい)。しかし、未改質LFPおよび本発明の方法によって改質されたLFPの比容量は、有利なことに同様であった。したがって、有機種のグラフトは、電気化学的性能に顕著な悪影響を及ぼさなかった。評価されてはいないものの、これはグラフトされた基の数が非常に少ない(<1重量%)ことに起因する可能性がある。
【0132】
したがって、単純に水溶液中で混合することで、炭素およびLFP-COOHの表面が改質され、約10分未満で耐性自立型フィルムが生産できることが実証された。
【0133】
vii.自立型LTO電極の電気化学的特性
また、自立型負極を同様の方法を使用して調製した。より詳細には、LiTi12(LTO)は、LIBに適用するために興味深い電気化学的活物質である。動作電圧が十分に高い電位である(1.55V対Li/Li)ため、この材料は固体電解質界面(SEI)層を形成しない。さらに、リチウムイオンの挿入および脱挿入時に安定したままであるため、LTOはゼロ歪み材料と称される(Zaghib, K. et al., Journal of Power Sources, 248, (2014): 1050-1057を参照されたい)。LFPと同様、LTOは比較的安価な材料であり、したがって低コストLIBの理想的な候補である。
【0134】
図1に記載の方法に従い、様々な負荷量の自立型LTOフィルムを調製した。サイクリックボルタンメトリーおよび比容量の結果を図11に示す。図11(A)に示されるように、フィルムの負荷量が増加すると、ボルタモグラムの酸化還元ピークの強度も増大する。酸化ピークと還元ピークはいずれの場合でも比例的に増大するため、分極は変化しないままである。この電気化学的特性は、この製造技術が、電気化学的活物質の高い負荷量の使用に適合することを実証する。さらに、図11(B)に示される対応する比容量は、2Cのサイクルレートまで極めて同様であった。このサイクルレートでは135mAh.g-1の容量が得られ、これは160mAh.g-1の初期放電容量の約85%を占める。様々な負荷量の電極で、5Cにおいて容量のわずかな変動が観察されたが、約90~100mAh.g-1の容量が回復した。
【0135】
viii.第2の導電性材料の性質の、自立型LTO電極の電気化学的特性に対する効果
電極組成において、第2の導電性材料(VGCF)の量の50重量%を別の炭素の種類(例えば、Denka(商標)またはCNT)で置き換えた。そのような電極の電気化学的性能を図12に示す。図12(A)に示されるように、サイクリックボルタンメトリー実験は、伝導性材料としてVGCF-COOHとCNT-COOHの組合せを使用した場合に(破線)、VGCF-COOHとDenka(商標)-COOHの組合せ(点線)またはVGCF-COOHのみを含む対照(実線)と比較して、より強烈で激しい酸化還元ピークを示した。図12(B)は、様々なサイクルレートでのサイクル実験を示す。VGCF-COOHとCNT-COOHの組合せ(丸)、VGCF-COOHのみを含む対照(四角)およびVGCF-COOHとDenka(商標)-COOHの組合せ(三角)で得たLTO電極について、5Cのサイクルレートで、それぞれ約120、105および95mAh.g-1の容量が得られた。-アリール-COOH基を-アリール-SOHで置き換えた場合、同様の結果が得られた(図12には示さず)。図8に示されるLFP電極のサイクルの結果と同様、Denka(商標)炭素を添加すると、LTO電極の電気化学的性能が減少した。しかし、ここでもまた、少量(第2の導電性材料の量の50重量%)の改質CNTを添加すると、特に高いサイクルレートで電気化学的性能の向上が観察された。
【0136】
ix.第2の導電性材料の性質の、自立型LTO電極の長期サイクルの結果に対する効果
LTO自立型電極のサイクルを、C/2での長期サイクル実験によって評価した。図13は、一方はVGCF-COOHのみを含み、他方はVGCF-COOHとCNT-COOHの組合せを含む2種の異なるLTO電極の、300回の充放電サイクルにわたる容量の保持を示す。300回目のサイクル後、C/2において初期放電容量のほぼ100%が維持された。したがって、電極がそれぞれVGCF-COOHとCNT-COOHの組合せ(丸)およびVGCF-COOHのみ(四角)を含んだ場合、C/2での数百回のサイクルで、約157および150mAh.g-1の容量が得られた。
【0137】
x.電気化学的特性評価のための、自立型LFPおよびLTO電極を含む完成LIBの調製
自立型LFPおよびLTO電極を用いて完成LIBをアセンブルした。負極電気化学的活物質(LTO)は脱リチウム化状態にあり、式(1)に従い3個のリチウムイオンが挿入可能である(Zaghib, K. et al., Journal of Power Sources, (1999) 81, 300-305を参照されたい):
3LiFePO+LiTi12→3FePO+LiTi12 (1)
【0138】
LTO自立型電極の165mAh.g-1の比容量は、LFP自立型フィルムで得られた160mAh.g-1の比容量よりわずかに高いため、LFP/LTP質量比が約1である電気化学セルが使用されてもよい。しかし、市販の電池で一般的に使用されるように、安全性の懸念から、わずかに過剰のLTO材料(LFP/LTO比約0.85)を使用した。
【0139】
xi.セパレータの、自立型LFPおよびLTO電極を含む完成LIBの電気化学的特性に対する効果
図14は、両方の電極に同量の電気化学的活物質を含むが、異なるセパレータを有する2種のLFP/LTO電池の比容量を示す。得られた放電容量は、従来のCelgard(商標)製セパレータ(四角)ではなく、Kodoshi(商標)製紙セパレータ(丸)が使用されたときに高かった。したがって、Celgard(商標)製セパレータを用いてアセンブルされたセルと比較して、紙のみで作製された電池について、C/24~2Cの範囲の各サイクルレートで10mAh.g-1の増加が得られた。結果として、Celgard(商標)製セパレータおよび紙セパレータを使用した電池で、5Cにおいてそれぞれ100および115mAh.g-1が得られた。Celgard(商標)製セパレータを紙セパレータで置き換えることによって、紙セパレータによって得られる向上した電気化学的性質は、エネルギー貯蔵デバイスの価格を低下させる可能性がある。
【0140】
xii.LFP/LTO重量比の、完成LIBの電気化学的特性に対する効果
紙セパレータによって電気化学的性能が顕著に向上するため、異なる量の電気化学的活物質およびKodoshi(商標)製紙セパレータを含有する複数の他のLFP/LTO電池をアセンブルした。図1に図示される方法を使用し、LFPおよびLTOの質量が40から70mgの間である完成LIBを得た。LFP/LTO重量比が1および約0.85である完成LIBを電気化学的に試験した。これらの電極の比容量を図15に報告する。図15によって示されるように、結果は、過剰のLTOが使用されたとき有意な差を示さない。しかし、電池をより高いサイクルレートで使用すると、有意な向上が視認可能である。実際、1および0.85のLFP/LTO重量比を使用した場合、50mgのLFPを用いて作製された2種の電極について5Cで得られた比容量は、それぞれ約105および約115mAh.g-1であった。したがって、これらの条件下で、過剰のLTOを含むLIBでは、高いサイクルレートでより良好な容量の保持が得られた。図15はまた、負極および正極の負荷量が増加すると、特により高いサイクルレートで、得られる比容量がわずかに低下したことを示す。例えば、40mgのLFPおよび40mgのLTOを含む電極フィルムを用いてアセンブルされた電池(四角)は2Cで135mAh.g-1を供給したが、50mgのLFPおよびLTO、ならびに60mgのLFOおよびLTOを含むフィルムが使用された場合、それぞれ125mAh.g-1(丸)および120mAh.g-1未満(星)が得られた。40、50および60mgの電気化学的活物質を含有する電極フィルムでそれぞれ115mAh.g-1、105mAh.g-1および95mAh.g-1が得られたことから、5Cで同じ挙動が観察された。
【0141】
xiii.セパレータの、自立型LFPおよびLTO電極を含む完成LIBでの長期サイクル実験に対する効果
C/24、C/10およびC/5での複数の形成サイクル後のC/2での長期サイクル実験によって、完成LFP/LTO電池のサイクル性を評価した。図16(A)は、電池組成が同じであるが、Celgard(商標)(四角)およびKodoshi(商標)(丸)セパレータを用いてアセンブルした場合の、200回の充放電サイクルにわたる容量の保持を示す。図16(A)に示されるように、Kodoshi(商標)セパレータを使用すると、比容量の増加がもたらされた。紙セパレータおよびCelgard(商標)製セパレータを使用した場合、C/2の第1のサイクルで、それぞれ約140および約130mAh.g-1が得られた。200サイクル後、初期放電容量の約92%が回復した。図16(A)は、紙セパレータでは容量の保持は有意に向上しなかったが、比容量は依然としてより高かったことを示す。いずれの場合でも、サイクル中に容量の漸減が観察されたが、これはLFPに起因する可能性がある。サブマイクロメートルのLFP板を用いて作製された電極(Yang, XF et al., ChemSusChem, (2014) 7 (6), 1618-1622を参照されたい)、および低減したサイズのLFP粒子を含み、1Cでサイクルを行った電極(Lux, SF et al., Journal of the Electrochemical Society (2010) 157.3, A320-A325)について、同様の観察が報告されている。
【0142】
xiv.自立型LFPおよびLTO電極ならびにKodoshi(商標)紙セパレータを含む完成LIBでの長期サイクル実験
紙セパレータ、ならびに実施例1(d)に記載の方法によって調製された自立型負極および正極を用いてアセンブルされた両方の電極を含む複数のLIBの長期サイクル実験を、C/2で記録した。図16(B)に示されるように、これらの実験のLIBは、異なる量のLFPおよびLTOを含んでいた。図16(B)に見られるように、電気化学的活物質の負荷量の増加は、容量の保持、およびわずかに向上した初期放電容量に対して有意な効果をもたらすように思われる。
【0143】
容量の保持および初期放電容量に対する活物質の負荷量の増加の効果を、2Cレートで実施した長期サイクル実験によって確認した(図17)。40および70mgのLFPを含み、LFP/LTO重量比が1であるLFP/LTO電池で、それぞれ121mAh.g-1および130mAh.g-1の初期放電容量が得られた。1000回の充放電サイクルの後、40mgのLFPおよびLTOならびに70mgのLFPおよびLTOを含む電池で、それぞれ初期放電容量の約84%および92%が回復した。
【0144】
xv.自立型PTCDA電極の電気化学的特性
自立型PTCDA電極の電気化学的特性を評価した。図18は、対極および参照電極として金属リチウムを用いた自立型PTCDA電極のサイクリックボルタンメトリーの結果および比容量を示す。図18(A)に示されるように、サイクリックボルタンメトリーの結果により、自立型電極におけるPTCDAの質量が増加すると、ボルタモグラムにおけるレドックスピークの強度はわずかに増大するが、分極が増大することが示される。この挙動は、サイクル数の関数としての比容量の結果によって確認された(図18(B)を参照されたい)。
【0145】
自立型PTCDA電極の放電中、電圧が急激に降下する。開回路電位(OCP)から約2.4V対Li/Liのプラトーへの初期降下は、Liイオンの結合によってPTCDAがリチウムエノラートに変換したことに起因する可能性がある。しかし、2個のリチウムイオンのみがケトン官能基と反応するため、得られた比容量は約137mAh.g-1であり、これは理論値の半分に相当する。他の2個のLiの挿入はそうではなく、0.9~1.3対Li/Liの範囲の電位窓で起こる。それでもなお、深い放電プロセスは構造を損傷し、したがって強力な不可逆性をもたらす場合がある。
【0146】
自立型PTCDA電極を1Cを上回るレートでサイクルさせたとき(図18(B))、活物質の質量負荷量の増加に伴い、放電容量が顕著に減少した。したがって、40、50および60mgの電気化学的活物質を含む自立型PTCDA電極フィルムでは、5Cで、それぞれおよそ110、60およびわずか35mAh.g-1の容量が得られた。しかし、これらの電気化学的性能は、アルミニウム集電体に塗布された電極について一般的に報告されるものより高い。例えば、新規の製造方法に従うと、約6mg.cm-2の自立型PTCDA電極で、1Cで120mAh.g-1を供給することができた。
【0147】
xvi.長期サイクル実験での第2の導電性材料の、自立型PTCDA電極に対する効果
C/24~C/5の範囲の様々なサイクルレートでの複数のサイクル後、C/10での長期サイクル実験によって、自立型PTCDA電極のサイクル性を評価した。図19は、第2の導電性材料の組成を除いて同じ自立型PTCDA電極組成物の、100回の充放電サイクルにわたるサイクル数の関数としての放電容量およびクーロン効率の結果を示す。図19(A)は、第2の導電性材料としてVGCF-COOHを含む自立型PTCDA電極の結果を示し、図19(B)は、VGCF-SOHと少量のCNT-SOHの混合物を含むことを除き、同じ自立型PTCDA電極組成物の結果を示す。PTCDAは導電性が低いため、良好な電気化学的性能に至るためには、電極組成物に多量の伝導性炭素を使用する必要がある可能性がある。ある量のCNT-SOHを添加すると(図19(B))、5Cで約110mAh.g-1の容量が得られたが、第2の導電性材料がVGCF-COOHのみから構成される電極では、わずか80mAh.g-1の容量が供給された(図19(A))。
【0148】
図19に示されるように、クーロン効率(%)はサイクル数とともに顕著に減少する。図19(A)および19(B)はまた、最初の40サイクルの拡大図を示す。いずれの場合でも、クーロン効率は、少量のCNT-SOHを含まない(図19(A))および含む(図19(B))自立型電極で、低サイクルレートでそれぞれ4サイクル後および12サイクル後に、例えば85%に達するまで漸減する。図19(B)に示されるように、クーロン効率は、サイクルレートの増加によって大きく向上する。
【0149】
xvii.自立型PTCDA電極で実行された長期サイクル実験に対する形成サイクルの効果
サイクル性に対する形成サイクルの効果も評価した。5Cで5サイクル後、C/10で長期サイクル実験を開始し、クーロン効率は約100%に達した。長期サイクル実験の終わりに、第2の導電性材料としてVGCF-COOH(図19(A))およびVGCF-SOHとCNT-SOHの混合物(図19(B))を含む電極で、C/10においてそれぞれ初期放電容量の84%および91%が得られたため、100サイクルにわたる良好な安定性が観察された。CNT-SOHを組み込むことによって安定性が向上したが、これはおそらく、主に、正極フィルムの伝導性が高いことが原因である。
【0150】
図19に示されるPTCDA自立型電極のサイクル性を、C/10における、ただし低および中サイクルレート(C/10~2C)での複数の充放電サイクルの実施を伴わない長期サイクル実験によって評価した。図20は、これら2種の電極の100回の充放電サイクルにわたる容量の保持を示す。急速な形成(5Cで5サイクル)により、PTCDAの電解質への移動が妨げられたこと、およびサイクル実験を通してクーロン効率はほぼ100%に留まったことが示された。
【0151】
図20に示されるように、急速な形成(5Cで5サイクル)は、サイクル性に有意な影響を及ぼさなかった。実際、VGCF-COOHを含む電極(四角)およびVGCF-SOHとCNT-SOHの混合物を含む電極(丸)で、C/10での70回の充放電サイクル後、C/10において、初期放電容量の80%および91%が得られた。これらの値は、図19の定電流サイクル実験で計算されたものと同様であった。したがって、電極組成物に少量のCNT-SOHを添加すると、100サイクルにわたる放電容量だけでなくサイクル性も顕著に向上する。第2の導電性材料としてVGCF-COOHを含む自立型フィルムで、80回の充放電サイクル後に観察された容量の急速な減少は、金属リチウム負極の劣化に起因する可能性がある。
【0152】
xviii.PTCDA負荷量の、自立型PTCDA電極で記録された長期サイクル実験に対する効果
電気化学的活物質の負荷量がより高い、すなわち、50および60mgの活物質を含むPTCDA自立型電極のサイクル性も試験した。図21は、電気化学的活物質の負荷量が異なる3種のPTCDA電極の、C/10で100サイクルにわたるサイクル性を比較する。図18に示される結果と同様、活物質の負荷量が増加すると、高サイクルレート、特に5Cで得られた放電容量は、正極フィルムの耐性の増大のために顕著に減少した。40、50および60mgの電気化学的活物質を含む電極で、70回の充放電サイクル後、C/10において、それぞれ初期放電容量の91、92および92%の保持が得られた。
【0153】
しかし、この70回のサイクルの直後、50mg(丸)および60mg(三角)のPTCDAを含む自立型フィルムで、比容量が急速に減少した。例えば、容量の漸減は、主に、金属リチウム負極の劣化に関連する可能性がある。
【0154】
xix.第2の導電性材料の性質の、自立型グラファイト電極の電気化学的特性に対する効果
図22に示されるように、第2の導電性材料として40mgのグラファイトおよびVGCF-SOH(四角)またはVGCF-SOHとCNT-SOHの混合物(丸)を含む自立型グラファイト電極で、C/10において長期サイクル実験を実施した。グラファイトで一般的に観察されるように、第1のサイクル中、クーロン効率は100%より高く、第2の導電性材料としてVGCF-SOHのみ、およびVGCF-SOHとCNT-SOHの混合物を使用した場合、それぞれ120および145%に達した。
【0155】
改質CNT(CNT-SOH)の使用により、複合負極の比表面積が顕著に増大し、これにより電解質がさらに劣化し、金属リチウム負極が劣化した。しかし、改質CNTを含む自立型フィルムの導電性の向上により、改質CNTを含まない電極と比較してサイクル中の安定性が向上し、追加的に75mAh.g-1の供給が可能になる。両方の電極でサイクル中に容量の漸減が観察されたが、これはCNTを含まない複合負極で一層大きかった。
【0156】
xx.電気化学的活物質の表面改質の、自立型グラファイト電極の電気化学的特性に対する効果
図23(A)は、負荷量が異なる(活物質30および40mg)2種のグラファイト電極の長期サイクル実験を示す。図22の結果が示唆するように、容量の減少は自立型フィルムの耐性に関連する可能性がある。フィルムの耐性は、前記自立型フィルムの製造に使用されたグラファイトの量に比例する場合がある。したがって、30mgのグラファイトを含む自立型フィルムでは、C/10での初期放電容量は約380mAh.g-1であり、これはグラファイトの理論容量にほぼ近い。また、サイクル中の容量の減少は、40mgのグラファイトを含む自立型電極に比べ、30mgのグラファイトを含む自立型電極ではあまり顕著でなかった。
【0157】
図23(B)は、アリール-SOHで改質されたグラファイトを用いて調製した3種の電極のサイクル性を示す。図23(A)および23(B)を比較すると、活物質の負荷量が同様である場合、放電容量は、未改質自立型グラファイト電極よりもSOH基で改質された自立型グラファイト電極で有意に高かった。40mgのグラファイトを含む自立型電極および40mgのグラファイト-SOHを含む自立型電極について、C/10における最初の放電で、それぞれ335および405mAh.g-1の放電容量が得られた。活物質の負荷量を50mgまで増加させると、サイクル性および比容量を向上させることができた。
【0158】
図23に示されるように、炭素表面に結合した-SOH基は、電池の全体的な容量を増加させる。これらの基は、例えば、リチウム吸蔵およびイオン伝導性の増大に寄与する可能性がある。図23に示されるように、改質グラファイトが使用された場合、クーロン効率はC/24における最初のサイクルでわずかにより低かった。
【0159】
xxi.自立型LFPおよびグラファイト電極を含む完成LIBの電気化学的特性
完成LFP/グラファイト電池をアセンブルした。LIBのC/24での最初のサイクルの充放電プロファイルを図24(A)に示す。3.25V付近で平坦なプラトーが得られ、分極はわずかであった。最初の放電によりおよそ125mAh.g-1が供給された。図24(A)に示されるように、高い不可逆性のために、クーロン効率は、1Cにおいて最初のサイクルで76%であったが、続くサイクルでは約100%に達した。また、1Cにおいて300サイクルにわたる長期サイクル実験を実施した。図24(B)は、LFP/グラファイトLIBの安定性を示す。300回の充放電サイクル後、比容量は約88mAh.g-1であり、これは1Cで得られた初期放電容量の85%に相当する。クーロン効率は実験全体を通して常に約100%に留まったが、容量の漸減が認識された。
【0160】
xxii.自立型PTCDAおよびグラファイト電極を含む完成LIBの電気化学的特性
自立型PTCDAおよびグラファイト電極を含む全有機PTCDA/グラファイトLIB(遷移金属なし)を調製し、電気化学的に試験した。全有機PTCDA/グラファイトLIBは、有機レドックス分子および生体分解性成分を含む。これらの全有機PTCDA/グラファイトLIBは、安価かつ生体分解性の電池の概念を実証する。
【0161】
PTCDAは酸化形態にあったため、最初のプレリチウム化ステップが必要であった。プレリチウム化は、ボタンセル内にリチウム対極とともにPTCDA自立型フィルムをアセンブルすることによって実施した。図25(A)は、カソードに50および60mgの電気化学的活物質を含む3種のPTCDA/Li電池の、1.5V対Li/Liまでの最初の放電を示す。PTCDAの完全なリチウム化を得るために、電位を3時間1.5Vに維持した(図25(B)を参照されたい)。次に、ボタンセルを分解し、プレリチウム化されたPTCDA自立型電極を回収して、自立型グラファイト電極をアセンブルした。
【0162】
図26は、2種のプレリチウム化PTCDA/グラファイトLIBについて1.5から3.5Vの間対グラファイトで記録された、C/24の一定電流で得られた最初の充放電の結果を示す。グラファイト負極上にSEIが形成されたため、最初の充電の比容量は、PTCDAの理論容量137mAh.g-1より高く、約160mAh.g-1に達した。LIBを放電させると、少量のリチウムがグラファイトによっておそらく不可逆的に消費され、50mgのPTCDAおよび60mgのPTCDAを含む正極で、それぞれわずか104および108mAh.g-1の容量が得られた。これらのLIBのC/10での長期サイクルの結果を図26(B)に示す。グラファイト電極で観察されたように(図23を参照されたい)、完成PTCDA/グラファイトLIBでサイクル中に容量の漸減が観察され、これは、主に、グラファイト負極によるリチウムの消費に起因する可能性がある。利用可能なリチウムの量が増えるため、PTCDAの負荷量が増加するとわずかな向上が観察できる。
【0163】
企図される本発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態のうちの1つまたは別のものに多数の修正を加えることができる。本出願で言及された参考文献、特許または科学論文文献はいずれも、それらの全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
- 集電体として働く第1の導電性材料であり、前記第1の導電性材料の表面に、少なくとも1種の式I:
【化8】

(式中、
FGは親水性官能基であり、nは1~5の範囲の整数であるか、好ましくはnは1~3の範囲であるか、好ましくはnは1もしくは2であるか、またはより好ましくはnは1である)
のアリール基がグラフトされた、第1の導電性材料と、
- セルロース繊維を含むバインダーと、
- 電気化学的活物質と
を含む、自立型電極であって、
前記自立型電極が第1および第2の表面を有する固体フィルムで作製され、
前記第1の導電性材料の濃度が、前記固体フィルムの前記第2の表面から前記第1の表面まで増大し、
前記電気化学的活物質の濃度が、前記固体フィルムの前記第1の表面から前記第2の表面まで増大する、
自立型電極。
(項目2)
第2の導電性材料をさらに含み、前記第2の導電性材料の濃度が、前記固体フィルムの前記第1の表面から前記第2の表面まで増大する、項目1に記載の自立型電極。
(項目3)
前記第1の導電性材料が炭素繊維を含む、項目1または2に記載の自立型電極。
(項目4)
前記炭素繊維が気相成長炭素繊維(VGCF)である、項目3に記載の自立型電極。
(項目5)
前記第1の表面が、前記第1の導電性材料を主に含む、項目1~4のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目6)
前記セルロース繊維が未改質セルロース繊維である、項目1~5のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目7)
前記セルロース繊維がアルミニウムカチオンを含まない、項目1~6のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目8)
前記セルロース繊維の平均長が、5nmから5mmの間、または250nmから3mmの間、または500nmから3mmの間、または1μmから3mmの間、または100μmから3mmの間、または250μmから3mmの間、または500μmから3mmの間、または750μmから2.5mmの間、または1mmから2.5mmの間である、項目1~7のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目9)
前記セルロース繊維の平均長が0.5mmから3mmの間である、項目8に記載の自立型電極。
(項目10)
前記第2の表面が、前記電気化学的活物質、および存在する場合、前記第2の導電性材料を主に含む、項目1~9のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目11)
前記電気化学的活物質が、コアシェル構造の、炭素層でコーティングされた粒子の形態である、項目1~10のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目12)
前記炭素層に、項目1に記載の少なくとも1種の式Iのアリール基がグラフトされた、項目11に記載の自立型電極。
(項目13)
前記電気化学的活物質が、金属酸化物粒子、リチウム化金属酸化物粒子、金属リン酸塩粒子、リチウム化金属リン酸塩粒子、炭素系材料および活性有機材料から選択される、項目1~12のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目14)
前記金属が、チタン(Ti)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびこれらのうちの少なくとも2つの組合せから選択される遷移金属である、項目13に記載の自立型電極。
(項目15)
正極である、項目1~14のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目16)
前記電気化学的活物質が、リチウム化リン酸鉄粒子(LiFePO )を含む、項目15に記載の自立型電極。
(項目17)
前記電気化学的活物質が、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)または3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)を含む、項目15に記載の自立型電極。
(項目18)
前記電気化学的活物質が、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)を含む、項目17に記載の自立型電極。
(項目19)
負極である、項目1~14のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目20)
前記電気化学的活物質が、チタン酸リチウム(Li Ti 12 )粒子を含む、項目19に記載の自立型電極。
(項目21)
前記電気化学的活物質が炭素系材料を含む、項目19に記載の自立型電極。
(項目22)
前記炭素系材料がグラフェンまたはグラファイトである、項目21に記載の自立型電極。
(項目23)
前記炭素系材料がグラファイトである、項目21または22に記載の自立型電極。
(項目24)
前記第2の導電性材料に、項目1に記載の少なくとも1種の式Iのアリール基がグラフトされた、項目2~23のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目25)
前記第2の導電性材料が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブおよびこれらのうちの少なくとも2つの組合せから選択される、項目2~24のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目26)
前記第2の導電性材料が、アセチレンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブおよびこれらのうちの少なくとも2つの組合せから選択される、項目25に記載の自立型電極。
(項目27)
前記第2の導電性材料が炭素繊維を含む、項目26に記載の自立型電極。
(項目28)
前記第2の導電性材料が、炭素繊維とアセチレンブラックの組合せを含む、項目27に記載の自立型電極。
(項目29)
前記第2の導電性材料が、炭素繊維とカーボンナノチューブの組合せを含む、項目27に記載の自立型電極。
(項目30)
前記炭素繊維が、気相成長炭素繊維(VGCF)である、項目25~29のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目31)
前記炭素繊維が、少なくとも50重量%の濃度で前記組合せに存在する、項目25~30のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目32)
前記親水性官能基が、カルボン酸またはスルホン酸官能基である、項目1~31のいずれか一項に記載の自立型電極。
(項目33)
前記式Iのアリール基が、p-安息香酸またはp-ベンゼンスルホン酸である、項目32に記載の自立型電極。
(項目34)
項目1~33のいずれか一項に記載の自立型電極を製造するための方法であって、以下のステップ:
(a)第1の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップと、
(b)セルロース繊維を含む水性混合物に、ステップ(a)で得られた改質された前記第1の導電性材料を分散して、第1の水性分散液を得るステップと、
(c)前記第1の水性分散液を濾過膜上で濾過し、フィルムを得るステップと、
(d)電気化学的活物質、および必要に応じて第2の導電性材料を水性媒体に分散し、第2の水性分散液を得るステップと、
(e)前記第2の水性分散液を、ステップ(c)で得られた前記フィルム上で濾過し、前記濾過膜上に自立型電極を生産するステップと、
(f)前記濾過膜から前記自立型電極を剥離するステップと
を含む、方法。
(項目35)
ステップ(c)で得られた前記フィルムが、導電性材料に富む面およびセルロース繊維に富む面を含み、前記導電性材料に富む面が前記濾過膜に面している、項目34に記載の方法。
(項目36)
ステップ(c)で得られた前記フィルムを乾燥するステップをさらに含む、項目34または35に記載の方法。
(項目37)
前記電気化学的活物質が炭素層でコーティングされた粒子の形態であり、前記方法が、ステップ(d)の前に、前記炭素層に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
ステップ(d)の前に、前記第2の導電性材料に少なくとも1種の式Iのアリール基をグラフトするステップをさらに含む、項目34~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記自立型電極をカレンダー加工するステップをさらに含む、項目34~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記カレンダー加工するステップが、室温から約80℃の間の温度で実行される、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記カレンダー加工するステップが、約25℃で実行される、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記カレンダー加工するステップが、約50℃~約80℃の範囲の温度で実行される、項目40に記載の方法。
(項目43)
ステップ(f)の前に、セルロース繊維を含む水性混合物を、ステップ(e)で得られた前記自立型電極上で直接濾過することによってセパレータを生産するステップをさらに含む、項目34~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記方法の前記グラフトするステップが、
(i)式II:
【化9】

(式中、FGおよびnは項目1~27のいずれか一項に記載の通りである)
のアニリンとジアゾ化剤を接触させることによってアリールジアゾニウムイオンを生成することと、
(ii)ステップ(i)で生成された前記アリールジアゾニウムイオンを、前記電気化学的活物質の表面上の炭素層の炭素、または前記第1もしくは第2の導電性材料と反応させることと
を含む、項目34~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記ジアゾ化剤が、前記炭素に対して0.01~0.04当量、または前記炭素に対して約0.03当量の範囲で存在する、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記ジアゾ化剤が、式IIの前記アニリンに対して1~4当量、または式IIの前記アニリンに対して約3当量の範囲で存在する、項目44または45に記載の方法。
(項目47)
前記ジアゾ化剤が亜硝酸塩または亜硝酸アルキルである、項目44~46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウム(NaNO )である、項目47に記載の方法。
(項目49)
前記亜硝酸アルキルが亜硝酸tert-ブチル(t-BuONO)である、項目47に記載の方法。
(項目50)
前記アリールジアゾニウムイオンが、ステップ(i)および(ii)が同時に実施されるように、in situで生成される、項目44~49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記グラフトするステップが酸性水性媒体中で実行される、項目34~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記酸性水性媒体が硫酸水溶液である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記グラフトするステップが極性非プロトン性溶媒中で実行される、項目34~50のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記極性非プロトン性溶媒がアセトニトリルである、項目53に記載の方法。
(項目55)
負極、正極および電解質を含む電気化学セルであって、前記負極および正極のうちの少なくとも1つが、項目1~33のいずれか一項に記載の自立型電極である、電気化学セル。
(項目56)
前記負極および前記正極の両方が自立型電極である、項目55に記載の電気化学セル。
(項目57)
セパレータをさらに含む、項目55または56に記載の電気化学セル。
(項目58)
前記セパレータが、ポリプロピレンセパレータまたはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン(PP/PE/PP)セパレータまたはセルロースセパレータである、項目57に記載の電気化学セル。
(項目59)
前記セパレータがセルロースセパレータである、項目58に記載の電気化学セル。
(項目60)
前記セパレータが、セルロース繊維を含む水性混合物を、前記自立型電極上で直接濾過することによって得られた、項目59に記載の電気化学セル。
(項目61)
前記電解質が、溶媒中のリチウム塩を含む液体電解質である、項目55~60のいずれか一項に記載の電気化学セル。
(項目62)
前記電解質が、溶媒および/または溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含むゲル電解質である、項目55~60のいずれか一項に記載の電気化学セル。
(項目63)
前記電解質が、溶媒和ポリマー中のリチウム塩を含む固体ポリマー電解質である、項目55~60のいずれか一項に記載の電気化学セル。
(項目64)
項目55~63のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電気化学セルを含む電池。
(項目65)
リチウムもしくはリチウムイオン電池、ナトリウムもしくはナトリウムイオン電池、またはマグネシウムもしくはマグネシウムイオン電池から選択される、項目64に記載の電池。
(項目66)
リチウムイオン電池である、項目64または65に記載の電池。
図1
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