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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】原子力プラントの安全系
(51)【国際特許分類】
   G21C 15/18 20060101AFI20240206BHJP
   G21D 3/04 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G21C15/18 M
G21C15/18 W
G21D3/04 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021017653
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120630
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】松崎 隆久
(72)【発明者】
【氏名】池側 智彦
(72)【発明者】
【氏名】千年 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】平野 聖
【審査官】大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-98198(JP,A)
【文献】特開2014-85227(JP,A)
【文献】特開2020-173201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/18
G21D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器に格納された原子炉圧力容器又は蒸気発生器からの蒸気を冷却により凝縮させて再び前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器に戻す非常用復水器を備えた原子力プラントの安全系であって、
前記原子炉格納容器の外部に配置され、冷却水を貯留する水源と、
前記原子炉格納容器の内部に位置すると共に前記水源よりも下方に位置し、前記水源から排出される冷却水を受け止めて貯留することが可能な貯留部と、
前記水源に接続され、前記水源の冷却水を前記貯留部に導く第1ラインと、
前記第1ライン上に設けられ、前記第1ラインを開放状態又は閉止状態に切り換える第1弁と、
一方側は前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器に直接的又は間接的に接続されると共に、他方側は前記水源からの冷却水が前記貯留部に貯留されるときの想定水位よりも低い位置で開口する第2ラインと、
前記第2ライン上に設けられ、前記第2ラインを開放状態又は閉止状態に切り換える第2弁とを備え、
前記第1弁及び前記第2弁は、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器内の圧力の高さに応じて開弁するように構成されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項2】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記非常用復水器は、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器からの蒸気を冷却するための冷却水を貯留する冷却水プールを含み、
前記非常用復水器の前記冷却水プールは、前記水源を兼ねている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項3】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記貯留部は、前記原子炉格納容器の内部に設置されたタンクである
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項4】
請求項3に記載の原子力プラントの安全系において、
前記タンクは、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器から離れた位置に配置されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項5】
請求項4に記載の原子力プラントの安全系において、
前記タンクに接続され、前記水源から前記タンクに排出された冷却水を前記原子炉格納容器の床面に放出可能な第3ラインと、
前記第3ライン上に設けられ、前記第3ラインを閉止する第3弁とを更に備え、
前記第3弁は、前記第3弁の周囲の熱を受けて開弁するように構成されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項6】
請求項3に記載の原子力プラントの安全系において、
前記タンクは、前記水源からの冷却水を貯留したときに、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器の底部が当該冷却水の水面下に位置するように配置されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項7】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記貯留部は、前記原子炉格納容器の床面を含む底部である
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項8】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第1弁は、前記原子炉格納容器の外側に配置されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項9】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第2弁が開弁する圧力は、前記第1弁が開弁する圧力より高くなるように設定されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項10】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第1弁及び前記第2弁は、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器で発生した蒸気の圧力を利用して開弁するように構成されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項11】
請求項10に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第1弁及び前記第2弁は、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器で発生した蒸気が圧力伝送管を介して供給されることで蒸気の圧力により直接的に作動するように構成されている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項12】
請求項10に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第1弁は、弁駆動システムから所定値以上の圧力の気体が供給されることで作動するように構成されており、
前記弁駆動システムは、
前記所定値以上の圧力の気体を供給する気体供給源と、
前記気体供給源からの気体を前記第1弁に導く供給ラインと、
前記供給ラインを閉止するように設けられたラプチャディスクと、
前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器からの蒸気が導入され、当該蒸気の圧力が閾値を超えると前記ラプチャディスクを破断させる破断操作部と、
前記供給ライン上における前記ラプチャディスクよりも前記第1弁側に設けられ、前記気体供給源から供給された気体が前記ラプチャディスクより下流側に流入すると前記供給ラインを連通させるように切り替える切替弁とを有する
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項13】
請求項10に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第2弁は、弁駆動システムから所定値以上の圧力の気体が供給されることで作動するように構成されており、
前記弁駆動システムは、
前記所定値以上の圧力の気体を供給する気体供給源と、
前記気体供給源からの気体を前記第2弁に導く供給ラインと、
前記供給ラインを閉止するように設けられたラプチャディスクと、
前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器からの蒸気が導入され、当該蒸気の圧力が閾値を超えると前記気体供給源からの気体により前記ラプチャディスクを破断させる破断操作部と、
前記供給ライン上における前記ラプチャディスクよりも前記第2弁側に設けられ、前記気体供給源から供給された気体が前記ラプチャディスクより下流側に流入すると前記供給ラインを連通させるように切り替える切替弁とを有する
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【請求項14】
請求項1に記載の原子力プラントの安全系において、
前記第1ライン上に設けられ、前記貯留部に向かう流れを許容する一方、前記水源に向かう流れを阻止する逆止弁を更に備えている
ことを特徴とする原子力プラントの安全系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントの安全系に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、定期検査やプラントの一部に不具合が生じた場合など、プラントを停止させる必要がある場合、反応度制御系である制御棒を炉心に挿入して核分裂反応を停止させることで原子炉を停止させる。原子炉の停止後も、炉心は崩壊熱により発熱するので、崩壊熱を原子炉から系外に放出して除去する必要がある。
【0003】
崩壊熱を系外に放出して原子炉を冷却する装置の1つとして、非常用復水器(以下、ICと称す)がある。ICは、炉心よりも高い位置に設置された冷却水プール内に熱交換器を配置したものである。ICでは、炉心の崩壊熱により発生した蒸気を熱交換器に導いて冷却水プールの冷却水により冷却して凝縮させる。原子炉圧力容器または蒸気発生器からの蒸気を凝縮させることで、原子炉圧力容器または蒸気発生器の温度及び圧力の上昇を抑制している。ICの熱交換器で凝縮した水は重力によって再び原子炉圧力容器または蒸気発生器に供給されるので、崩壊熱の除去を継続することができる。ICの動作には非常用電源や動的機器が必要ないので、プラントの安全性が向上すると共にプラントの設備コストも削減することができる。ICの除熱量は、原子炉圧力容器または蒸気発生器の圧力低下に伴い低下する。そのため、ICによる除熱機能を維持するためには、一般的に、原子炉圧力容器を1MPa以上の圧力に保つ必要がある。
【0004】
沸騰水型原子炉(BWR)では、ICに加えて、原子炉圧力容器を減圧するための自動減圧系を備えているものがある(例えば、特許文献1を参照)。自動減圧系は、原子炉圧力容器の蒸気を原子炉格納容器内に設けた圧力抑制プールに逃がすことで、原子炉圧力容器を減圧するものである。圧力抑制プールでは原子炉圧力容器からの蒸気が冷却水中に排出されて凝縮するので、原子炉格納容器の圧力上昇を抑制することができる。自動減圧系は、主蒸気管に設けられた安全弁を強制的に開くことで原子炉圧力容器を0.5MPa以下に減圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-122689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の沸騰水型原子力発電プラントのように原子炉格納容器内に圧力抑制プールを設けている場合、原子炉格納容器の構造が複雑化するので、コストが増大する。圧力抑制プールを削除することができれば、原子炉格納容器の構造が簡素化されるので、コストを低減することができる。
【0007】
また、原子力プラントのコストを低減するには、注水用ポンプなどの動的機器や非常用電源の削除も重要である。動的機器や非常用電源を削除することで、動的機器や非常用電源そのもののコストを低減することができると共に、それらのメンテナンスに係るコストも低減することができる。
【0008】
特許文献1に記載の沸騰水型原子力発電プラントのように自動減圧系及びICの両方を備えている場合、自動減圧系が誤作動すると、原子炉圧力容器が減圧されてしまうので、ICの除熱機能を有効に活用できない状態が発生する懸念がある。そこで、ICの除熱機能の活用を重視し、安全弁を含む自動減圧系を削除したプラントコンセプトが提案されている。ICの能力を最大限活用するプラントコンセプトでは、圧力抑制プールが削除されていると共に、非常用電源や注水用ポンプが不要なので、コストを低減することが可能である。
【0009】
このプラントコンセプトでは、安全性の観点からICを多重化している。したがって、全てのICが作動しない可能性は極めて低い。しかし、万が一全てのICが作動しなかった場合、このコンセプトのプラントでは、自動減圧系が削除されているので、原子炉圧力容器を減圧することができないことが想定される。原子炉圧力容器を減圧できないと、最終的には、原子炉圧力容器が高圧で破損する恐れがある。したがって、ICが不作動の場合を想定したときに、原子炉圧力容器を減圧することを考える必要がある。
【0010】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、原子炉格納容器の構造を簡素化することができ、かつ、非常用復水器が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器または蒸気発生器を減圧することができる原子力プラントの安全系を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、原子炉格納容器に格納された原子炉圧力容器又は蒸気発生器からの蒸気を冷却により凝縮させて再び前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器に戻す非常用復水器を備えた原子力プラントの安全系であって、前記原子炉格納容器の外部に配置され、冷却水を貯留する水源と、前記原子炉格納容器の内部に位置すると共に前記水源よりも下方に位置し、前記水源から排出される冷却水を受け止めて貯留することが可能な貯留部と、前記水源に接続され、前記水源の冷却水を前記貯留部に導く第1ラインと、前記第1ライン上に設けられ、前記第1ラインを開放状態又は閉止状態に切り換える第1弁と、一方側は前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器に直接的又は間接的に接続されると共に、他方側は前記水源からの冷却水が前記貯留部に貯留されるときの想定水位よりも低い位置で開口する第2ラインと、前記第2ライン上に設けられ、前記第2ラインを開放状態又は閉止状態に切り換える第2弁とを備え、前記第1弁及び前記第2弁は、前記原子炉圧力容器又は前記蒸気発生器内の圧力の高さに応じて開弁するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非常用復水器の不作動により原子炉圧力容器又は蒸気発生器内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇しても、第1弁及び第2弁が開弁することで、冷却水タンクから貯留部に排出された冷却水中に原子炉圧力容器又は蒸気発生器からの蒸気が導入されて凝縮するので、原子炉格納容器に圧力抑制プールを設けることなく、原子炉圧力容器を減圧することができる。すなわち、原子炉格納容器の構造を簡素化することができ、かつ、非常用復水器が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器を減圧することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態を備えた沸騰水型の原子力プラントを示す概略系統図である。
図2図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態の一部を構成するドレン弁及び減圧弁の構造の一例を示す模式図である。
図3図2に示すドレン弁及び減圧弁におけるIC不作動時の作動状態(開弁状態)を示す模式図である。
図4図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態の一部を構成する溶融弁の構造の一例を示す模式図である。
図5図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態における非常用復水器(IC)の作動状態を示す概略系統図である。
図6図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態におけるIC不作動時の作動状態を示す概略系統図である。
図7】本発明の原子力プラントの安全系の第2の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。
図8】本発明の原子力プラントの安全系の第3の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。
図9】本発明の原子力プラントの安全系の第4の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。
図10】本発明の原子力プラントの安全系の第5の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。
図11】本発明の原子力プラントの安全系の第1~第5の実施の形態の一部を構成する減圧弁を駆動するための弁駆動システムの変形例を示すブロック図である。
図12図11に示す減圧弁駆動システムの変形例における減圧弁作動時(開弁時)の状態を示すブロック図である。
図13】本発明の原子力プラントの安全系の第1~第5の実施の形態の一部を構成するドレン弁を駆動するための弁駆動システムの変形例を示すブロック図である。
図14図13に示すドレン弁駆動システムの変形例におけるドレン弁作動時(開弁時)の状態を示すブロック図である。
図15】本発明の原子力プラントの安全系の実施の形態を備えた加圧水型の原子力プラントを示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の原子力プラントの安全系の実施の形態について図面を用いて説明する。以下で説明する第1~第5の実施の形態は、本発明を沸騰水型原子炉(BWR)に適用した例である。
【0015】
[第1の実施の形態]
本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態を備えた原子力プラントの構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態を備えた沸騰水型の原子力プラントを示す概略系統図である。なお、図1はプラントの通常運転時の状態を示している。
【0016】
図1において、原子力プラント1の原子炉格納容器11には、炉心12を内包する原子炉圧力容器13が格納されている。原子炉格納容器11内の圧力は、通常運転時において、原子炉格納容器11の外部の大気圧とほぼ同じとなっている。原子炉圧力容器13は、炉心12の核分裂反応熱又は崩壊熱によって蒸気が発生する領域であり、下側に液相部13aが上側に気相部13b(主に蒸気)が形成される。原子炉圧力容器13には、原子炉圧力容器13で発生した蒸気をタービン(図示せず)に送る主蒸気管14が接続されている。主蒸気管14は、原子炉格納容器11を貫通している。主蒸気管14における原子炉格納容器11の内側及び外側にはそれぞれ、主蒸気管14を遮断可能な主蒸気隔離弁15が設置されている。
【0017】
原子力プラント1は、原子炉に異常が発生したときに原子力プラント1を安全な状態に維持するための安全系として、系外(原子炉格納容器11の外部)に熱エネルギを放出する非常用復水器30(以下、ICと称する)と、IC30が作動しないときに原子炉圧力容器13を減圧する減圧保護系40とを更に備えている。この原子力プラント1は、減圧保護系40を備えることで、原子炉圧力容器13を減圧するための従来構成の圧力抑制プールを含む自動減圧系を削除した構成となっている。
【0018】
IC30は、原子炉圧力容器13からの蒸気を冷却により凝縮させて再び原子炉圧力容器13に戻すものである。IC30は、冷却水を貯留するIC冷却水プール31と、IC冷却水プール31内に配置されたIC熱交換器32と、IC熱交換器32の入口(上側)と主蒸気管14(原子炉圧力容器13の気相部13b)とを接続するIC蒸気供給ライン33と、IC熱交換器32の出口(下側)と原子炉圧力容器13の下部(液相部13aに相当する部分)とを接続するIC戻りライン34とを備えている。IC戻りライン34上には、IC30を起動させるためのIC起動弁35が設置されている。
【0019】
IC冷却水プール31は、原子炉格納容器11の外部に設置され、且つ、炉心12よりも上方の位置、正確には原子炉圧力容器13内の通常水位13cよりも高い位置に配置されている。IC冷却水プール31は、例えば、開口部31aを有しており、大気に開放されている。IC蒸気供給ライン33は、原子炉圧力容器13内の蒸気をIC熱交換器32に供給するものである。IC熱交換器32は、IC蒸気供給ライン33を介して供給される原子炉圧力容器13からの蒸気をIC冷却水プール31内の冷却水により冷却して凝縮させるものである。IC戻りライン34は、IC熱交換器32にて生成された水を原子炉圧力容器13に戻すものである。IC起動弁35は、通常運転中は閉弁している一方、原子炉圧力容器13の圧力が所定値よりも上昇した場合、例えば圧力上昇を検知した信号が入力された場合に開弁するように構成されている。
【0020】
原子力プラント1では、IC30が多重化されており、原子力プラント1の安全性の向上が図られている。例えば、3系統から4系統のIC30(図1中、1系統のみを図示)が設置されている。
【0021】
減圧保護系40は、IC30が作動せずに原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲から逸脱して上昇した場合に、原子炉圧力容器13を減圧させることで原子炉圧力容器13を保護するものであり、原子炉圧力容器13の圧力上昇した蒸気を利用して起動するように構成されている。具体的には、減圧保護系40は、冷却水を貯留する水源としてのIC30のIC冷却水プール31と、原子炉格納容器11の内部に位置すると共にIC冷却水プール31よりも下方に位置する中間タンク41と、IC冷却水プール31と中間タンク41と接続するドレンライン42と、ドレンライン42上に設けられたドレン弁43及び逆止弁44と、主蒸気管14から分岐して中間タンク41に接続された減圧ライン45と、減圧ライン45上に設けられた減圧弁46とを備えている。
【0022】
中間タンク41は、通常運転時では冷却水を貯留していない空の状態に構成されており、IC30が作動しない場合に限ってIC冷却水プール31から排出される冷却水を受け止めて貯留することが可能な貯留部として機能するように設置されたタンクである。中間タンク41は、通常運転時に冷却水を貯留していない分、重量が小さくなっている。このため、中間タンク41は、故障を引き起こす虞のある地震時の荷重が低減されている。中間タンク41は、原子炉圧力容器13から離れた位置に配置されており、例えば、IC冷却水プール31の真下の位置に配置されている。原子炉圧力容器13の下方や周辺は、図示しない制御棒や多数の配管が配置されていること多く、中間タンク41の設置スペースを確保することができない場合に好適である。
【0023】
ドレンライン42は、IC冷却水プール31に貯留されている冷却水の少なくとも一部を中間タンク41に導くものである。例えば、ドレンライン42の一方側はIC冷却水プール31の底部に接続され、他方側は中間タンク41が冷却水タンクからの冷却水を貯留したときの想定水位41aよりも高い位置で開口するように構成されている。ドレンライン42は、例えば、全長に亘って原子炉格納容器11内に配置されている。
【0024】
ドレンライン42上には、上側(上流側)から順に逆止弁44及びドレン弁43が配置されている。逆止弁44及びドレン弁43は、例えば、原子炉格納容器11の内部に配置されている。
【0025】
逆止弁44は、IC冷却水プール31から中間タンク41に向かう流れを許容する一方、中間タンク41からIC冷却水プール31に向かう流れを阻止するように構成されている。逆止弁44は、原子炉格納容器11内の気体がドレンライン42を介して原子炉格納容器11の外部に放出されることを防止するものである。
【0026】
ドレン弁43は、ドレンライン42を開放状態又は閉止状態に切り換えるものである。ドレン弁43は、通常運転時には閉弁しており、原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇したときに開弁する(起動する)ように構成されている。ドレン弁43は、原子炉圧力容器13で発生した蒸気の圧力を利用して開弁するものであり、例えば、原子炉圧力容器13内の蒸気の圧力が圧力伝送管70を介して伝送されることで、当該圧力に応じて開弁状態及び閉弁状態が切り換えられるように構成されている。ドレン弁43の構造については後述する。圧力伝送管70は、原子炉圧力容器13の上部(気相部13b)とドレン弁43の後述の弁開閉機構54(後述の図2及び図3参照)とを接続しており、原子炉圧力容器13の圧力をドレン弁43に伝送する配管である。
【0027】
減圧ライン45は、一方側が原子炉圧力容器13の上部(気相部13b)に主蒸気管14を介して間接的に接続されていると共に、他方側はIC冷却水プール31からの冷却水が中間タンク41に貯留されるときの想定水位41aよりも低い位置で開口するように設置されている。減圧ライン45は、原子炉圧力容器13内の蒸気の一部を中間タンク41に導いて中間タンク41に貯留されるIC冷却水プール31からの冷却水に導入するものである。
【0028】
減圧弁46は、減圧ライン45を開放状態又は閉止状態に切り換えるものである。減圧弁46は、通常運転時には閉止されており、原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇したときに開弁する(起動する)ように構成されている。減圧弁46は、原子炉圧力容器13で発生した蒸気の圧力を利用して開弁するものであり、例えば、原子炉圧力容器13内の圧力が圧力伝送管70を介して伝送されることで、当該圧力に応じて開弁状態及び閉弁状態が切り換えられるように構成されている。減圧弁46は、ドレン弁43よりも高い圧力で開弁するように構成されている。すなわち、減圧弁46は、その起動がドレン弁43の起動よりも遅くなるように構成されている。減圧弁46の構造については後述する。圧力伝送管70は、原子炉圧力容器13の上部(気相部13b)と減圧弁46の後述の弁開閉機構54(後述の図2及び図3参照)とを接続しており、原子炉圧力容器13の圧力を減圧弁46に伝送する配管である。
【0029】
中間タンク41には、床面注水ライン47が接続されている。床面注水ライン47は、IC冷却水プール31から中間タンク41に排出されて貯留された冷却水を原子炉格納容器11の床面11aに放出するものである。床面注水ライン47は、例えば、中間タンク41の底部から原子炉格納容器11の床面11aに向かって延在している。床面注水ライン47は、炉心溶融が発生した場合を想定した構成である。
【0030】
床面注水ライン47上には、床面注水ライン47を閉止する溶融弁48が設けられている。溶融弁48は、例えば、床面注水ライン47における床面11a近傍の端部に配置されている。溶融弁48は、通常時には閉弁しており、溶融弁48の周囲の熱を受けて溶融することで開弁する(起動する)ように構成されている。溶融弁48の構造については後述する。
【0031】
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態の一部を構成するドレン弁及び減圧弁の構造の一例について図2及び図3を用いて説明する。図2図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態の一部を構成するドレン弁及び減圧弁の構造の一例を示す模式図である。図3図2に示すドレン弁及び減圧弁におけるIC不作動時の作動状態(開弁状態)を示す模式図である。ドレン弁および減圧弁の構造は同様なものである。ドレン弁と減圧弁の相違点は、設置される配管が異なること及び作動圧力(開弁圧力)が異なることである。
【0032】
図2において、ドレン弁43及び減圧弁46は、ドレンライン42(減圧弁46の場合、減圧ライン45)に設けられた弁座51と、弁座51に対して接離可能な弁体52と、弁体52を弁座51側(閉弁方向)に付勢する弁ばね53と、弁体52を弁座51に対して変位させる弁開閉機構54とを備えている。弁座51は、ドレンライン42(減圧弁46の場合、減圧ライン45)の流路の一部を構成する開口部51a(図3も参照)を有している。開口部51aは、弁体52が着座することで閉塞される。ドレン弁43及び減圧弁46は、原子力プラント1の通常運転時において、弁体52が弁ばね53の付勢力によって弁座51に押し付けられてドレンライン42(減圧弁46の場合、減圧ライン45)を閉止するように構成されている。弁開閉機構54は、原子炉圧力容器13で発生した蒸気が圧力伝送管70を介して供給されることで蒸気の圧力により直接的に作動するように構成されている。
【0033】
具体的には、弁開閉機構54は、原子炉圧力容器13の圧力が入力されるシリンダチューブ55と、シリンダチューブ55内に摺動可能に配置されたピストン56と、ピストン56と弁体52とを接続するピストンロッド57とを有している。ピストン56は、シリンダチューブ55内を第1室55aと第2室55bとに分離し、第1室55a内の圧力及び第2室55b内の圧力を受けてシリンダチューブ55内で変位する。ピストンロッド57は、ピストン56の第1室55a側からシリンダチューブ55の外側に延在して弁体52に接続されている。シリンダチューブ55の第1室55aには、圧力伝送管70が接続されており、原子炉圧力容器13内の蒸気が供給される。第2室55bは、開口部55cを有しており、シリンダチューブ55の外部(原子炉格納容器11内)に開放されている。
【0034】
シリンダチューブ55内には、図3に示すように、ピストン56が係合するラッチ58が設けられている。ラッチ58は、ピストン56がシリンダチューブ55の第2室55b側に変位して弁体52が離座した状態のときに、ピストン56を機械的に保持するものである。すなわち、ラッチ58は、ドレン弁43または減圧弁46が作動した開弁状態に維持するものである。
【0035】
ドレン弁43及び減圧弁46は、弁ばね53の付勢力を調整することで開弁圧力が調整される。すなわち、ドレン弁43及び減圧弁46は、圧力伝送管70を介して伝送される原子炉圧力容器13内の蒸気の圧力が閾値を超えて上昇した場合に開弁する。ドレン弁43及び減圧弁46の開弁圧力(閾値)は、IC30の作動時における原子炉圧力容器13の最高圧力よりも高くなるように設定されている。この設定により、ドレン弁43及び減圧弁46の誤作動によってIC30の除熱機能の喪失を防止することができる。また、ドレン弁43の開弁圧力は、減圧弁46の開弁圧力より低くなるように設定されている。すなわち、ドレン弁43は、減圧弁46よりも早く起動するように構成されている。
【0036】
何らか理由によりIC30が作動せずに原子炉圧力容器13の圧力が上昇した場合、図2に示すシリンダチューブ55の第1室55aに原子炉圧力容器13内の高圧状態が圧力伝送管70を介して伝送されると、図3に示すように、シリンダチューブ55内のピストン56が弁ばね53の付勢力に抗して第2室55b側に変位する。このピストン56の変位に伴い弁体52が弁座51から離れる方向に変位することで、弁体52により閉塞されていた弁座51の開口部51aが開口する。このように、ドレン弁43及び減圧弁46は、原子炉圧力容器13内の圧力が圧力伝送管70を介してシリンダチューブ55の第1室55aに伝送される構成なので、IC30の不作動などで原子炉圧力容器13の圧力が通常範囲を逸脱した高圧状態になったときに、操作員が操作を行うことなく且つ動的機器を用いることなく自動的に開弁する。また、ピストン56が第2室55b側に変位しラッチ58に係合することで、弁体52の開弁状態を維持することができる。
【0037】
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態の一部を構成する溶融弁の構造の一例について図4を用いて説明する。図4図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態の一部を構成する溶融弁の構造の一例を示す模式図である。
【0038】
図4において、床面注水ライン47の端部には、溶融弁48が設けられている。溶融弁48は、例えば、床面注水ライン47の端部開口を閉塞可能な端栓61と、床面注水ライン47の端部に回動可能に取り付けられたスイングアーム62と、床面注水ライン47の端部に固定されスイングアーム62を支持可能な支持アーム63と、スイングアーム62に回動可能に取り付けられたスイングレバー64と、スイングレバー64にワイヤ65を介して取り付けられたウェイト66と、ウェイト66を床面注水ライン47の端部に取り付ける低融点取付部材67とを備えている。
【0039】
スイングアーム62は、一端側が床面注水ライン47の端部に回動ピン62aを介して回動可能に取り付けられていると共に、他端側が支持アーム63に脱落可能に支持されている。スイングアーム62には、スイングアーム62が支持アーム63に支持されている状態において、端栓61が床面注水ライン47の端部開口を閉塞するように固定されている。支持アーム63は、スイングアーム62の他端側が係合する係合部63aを有している。スイングレバー64は、一端側がスイングアーム62の他端側に回動ピン64aを介して回動可能に取り付けられていると共に、他端側にはワイヤ65の一端部が接合されている。低融点取付部材67は、低融点の金属により形成されており、所定の温度を超えた場合に溶融又は軟化により破断するものである。
【0040】
溶融弁48の周囲の温度が上昇して低融点取付部材67が溶断されると、ウェイト66が自重によって落下し、ウェイト66の落下の衝撃荷重がワイヤ65を介してスイングレバー64に伝えられる。これにより、スイングレバー64が回動ピン64aを中心に支持アーム63を押し出すように回転動作し、その結果、支持アーム63の係合部63aとスイングアーム62との係合が解除される。支持アーム63との係合が解除されたスイングアーム62は、支持アーム63による支持がなくなることで、ウェイト66が垂れ下がる状態になるように回動ピン62aを中心に回転動作する。スイングアーム62の回動に伴い端栓61が床面注水ライン47の開口部から外れ、床面注水ライン47が開口状態となる。このように、原子炉格納容器11内における溶融弁48の近傍の温度が通常範囲を逸脱した高温状態になった場合、溶融弁48は、操作員が操作を行うことなく且つ動的機器を用いることなく自動的に開弁する。
【0041】
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態における動作について図1図6を用いて説明する。図5図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態におけるICの作動状態を示す概略系統図である。図6図1に示す本発明の原子力プラントの安全系の第1の実施の形態におけるIC不作動時の作動状態を示す概略系統図である。
【0042】
図1に示す原子力プラント1では、定期検査などでプラントを停止させる場合やプラントに悪影響を及ぼす可能性のある事象(例えば、地震)が発生した場合や、制御棒の挿入により炉心12の核分裂を停止させることでプラントを停止させる。その際、地震などによってタービン(図示せず)などに不具合が発生している可能性がある場合、主蒸気隔離弁15を閉止し、原子炉圧力容器13から原子炉格納容器11の外部へ蒸気が流出することを防止する。
【0043】
原子炉の停止後も、原子炉圧力容器13内では、炉心12の崩壊熱により蒸気が発生し続ける。この状態が継続すると、原子炉圧力容器13の圧力が上昇する。原子炉圧力容器13の圧力上昇を検知すると、図5に示すように、IC30のIC起動弁35が開弁する(起動する)。IC起動弁35の開弁により、原子炉圧力容器13内の蒸気がIC蒸気供給ライン33を通ってIC熱交換器32に供給される。IC熱交換器32は、周囲のIC冷却水プール31の冷却水によって冷却されているので、IC熱交換器32に流入した蒸気は冷却により凝縮して水に戻る。IC熱交換器32で生じた凝縮水は、IC蒸気供給ライン33の蒸気との密度差により重力でIC戻りライン34を通って原子炉圧力容器13に戻り、再び炉心12の冷却に利用される。
【0044】
このように、IC30は、IC起動弁35が開弁するだけで、原子炉圧力容器13からの蒸気を水に戻して自重により再び原子炉圧力容器13に供給することで炉心12の崩壊熱を除去し続ける。すなわち、IC30は、ポンプ(動的機器)やポンプ駆動用の非常用電源などを用いることなく、炉心12の崩壊熱を系外に放出することができる。
【0045】
IC30は多重化されており、安全性の向上が図られている。しかし、非常に低い可能性ではあるが、全系統のIC30が作動しない場合を想定しておく。この場合、炉心12の崩壊熱を除去することができないので、原子炉圧力容器13の圧力上昇が継続する。
【0046】
このような事態が生じて原子炉圧力容器13の圧力が閾値を超えて上昇した場合、原子炉圧力容器13の圧力が圧力伝送管70を介してドレン弁43に伝送されることで、図6に示すように、ドレン弁43が開弁する(図3も参照)。ドレン弁43の開弁により、通常運転時には空の状態の中間タンク41に対してIC冷却水プール31の冷却水が重力によってドレンライン42を通して排出される。これにより、中間タンク41には、IC冷却水プール31から排出された冷却水が貯留されて水面41bが形成される。
【0047】
さらに、原子炉圧力容器13の圧力が圧力伝送管70を介して減圧弁46に伝送されることで、減圧弁46が開弁する。本実施の形態においては、減圧弁46の開弁圧力がドレン弁43の開弁圧力よりも高くなるように設定されているので、減圧弁46はドレン弁43よりも遅れて開弁することになる。
【0048】
減圧弁46の開弁により、原子炉圧力容器13内の蒸気が主蒸気管14及び減圧ライン45を通って中間タンク41に排出される。これにより、原子炉圧力容器13が減圧され、原子炉圧力容器13の高圧破損を防止することができる。本実施の形態においては、減圧ライン45の端部開口が中間タンク41の水面41bよりも低い位置にある。これにより、原子炉圧力容器13から中間タンク41に排出された蒸気が中間タンク41内に貯留されている冷却水中に導入されて凝縮し、原子炉圧力容器13内の蒸気のエネルギが中間タンク41内の冷却水に移行する。したがって、原子炉圧力容器13の蒸気が原子炉格納容器11内の空間にそのまま放出される場合と比べて、原子炉格納容器11の圧力上昇を抑制することができる。
【0049】
中間タンク41に排出された蒸気が冷却水によって凝縮される際、蒸気中に含まれる放射性物質の大半がスクラビング効果によって中間タンク41内の冷却水によって捕獲され、当該冷却水中に保持される。したがって、この後に、万が一蒸気が原子炉格納容器11の外部に放出されたとしても、原子炉格納容器11外に放出される放射性物質の量を抑制することができる。本実施の形態では、原子炉格納容器11に圧力抑制プールを設けていない。しかし、IC冷却水プール31から排出された冷却水を貯留する中間タンク41が圧力抑制プールと同様な機能を発揮することができる。
【0050】
なお、減圧ライン45を通って中間タンク41に流入する蒸気流量が非常に多い場合、原子炉格納容器11の圧力上昇の速度が速くなる。そのため、原子炉圧力容器13の減圧の速度が可能な限り遅くなるように減圧ライン45の配管径を設計することが好ましい。もしくは、減圧ライン45の中途位置にオリフィス(図示せず)を設けることで、減圧ライン45を通る蒸気流量を制限するように構成することが可能である。また、主蒸気管14に元々設けられている流量制限器(図示せず)を利用して中間タンク41に流入する蒸気流量を制限する構成も可能である。
【0051】
本実施の形態は、中間タンク41に注水する水源として、IC冷却水プール31を用いている。減圧保護系40は、IC30が作動しない場合に作動するものである。したがって、減圧保護系40の作動時には、IC冷却水プール31の冷却水は略全量残存している。活用されていないIC冷却水プール31の冷却水を中間タンク41に注水することで、冷却水を無駄なく利用することができ、中間タンク41に注水する冷却水を貯留するタンクを新たに設ける必要が無い。
【0052】
このように、減圧保護系40は、IC30が作動せずに原子炉圧力容器13内の圧力が閾値を超えて上昇した場合、原子炉圧力容器13の圧力上昇した蒸気によりドレン弁43及び減圧弁46が開弁することで起動し、IC冷却水プール31から中間タンク41に排出された冷却水に原子炉圧力容器13の蒸気を導入する。これにより、原子炉圧力容器13が減圧されて原子炉圧力容器13の高圧破損を防止することができると共に、原子炉格納容器11の圧力上昇を抑制することができる。
【0053】
本実施の形態に係る原子力プラント1は、IC30が不作動のとき、原子炉圧力容器13を減圧する減圧保護系40を備えているが、原子炉圧力容器13内に注水する系統は備えていない。この理由は、原子炉圧力容器13の圧力が7MPa以上なので、原子炉圧力容器13内に重力により注水しようとすると、水源を原子炉圧力容器13よりも700m以上高い位置に配置する必要があり、非現実的であるからである。
【0054】
このため、IC30が作動しない場合には、炉心12が冷却されずに崩壊熱によって溶融する恐れがある。溶融炉心は、原子炉圧力容器13の下部を溶融して破損させる。原子炉圧力容器13の下部が破損すると、溶融炉心が原子炉格納容器11の床面11a上に落下して拡がり、原子炉格納容器11の雰囲気温度を上昇させる。
【0055】
溶融炉心の熱エネルギにより原子炉格納容器11の雰囲気温度が異常な高温になると、溶融弁48が開弁する。溶融弁48の開弁により、中間タンク41内に排出されて貯留されていた冷却水が床面注水ライン47を介して原子炉格納容器11の床面11a上の溶融炉心に放出される。この冷却水により溶融炉心が冷却され、過酷事故が収束する。このように、IC30が作動しない状況でも、操作員が操作を行うことなく溶融弁48が開弁し且つ動的機器を用いることなく冷却水の自重により溶融炉心に注水することで、事故を収束させることができる。
【0056】
上述したように、第1の実施の形態に係る原子力プラント1の安全系は、原子炉格納容器11に格納された原子炉圧力容器13からの蒸気を冷却により凝縮させて再び原子炉圧力容器13に戻すIC30を備えたものであって、原子炉格納容器11の外部に設置され冷却水を貯留する水源としてのIC30のIC冷却水プール31と、原子炉格納容器11の内部に位置すると共にIC冷却水プール31(水源)よりも下方に位置し、IC冷却水プール31(水源)から排出される冷却水を受け止めて貯留することが可能な貯留部としての中間タンク41と、IC冷却水プール31(水源)に接続され、IC冷却水プール31(水源)の冷却水を中間タンク41(貯留部)に導くドレンライン42(第1ライン)と、ドレンライン42(第1ライン)上に設けられ、ドレンライン42(第1ライン)を開放状態又は閉止状態に切り換えるドレン弁43(第1弁)と、一方側は原子炉圧力容器13に間接的に接続されると共に他方側はIC冷却水プール31(水源)からの冷却水が中間タンク41(貯留部)に貯留されたときの想定水位41aよりも低い位置で開口する減圧ライン45(第2ライン)と、減圧ライン45(第2ライン)上に設けられ、減圧ライン45(第2ライン)を開放状態又は閉止状態に切り換える減圧弁46(第2弁)とを備える。ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)は、原子炉圧力容器13内の圧力の高さに応じて開弁するように構成されている。
【0057】
この構成によれば、IC30の不作動により原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇しても、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)が開弁することで、IC冷却水プール31(水源)から中間タンク41(貯留部)に排出された冷却水に原子炉圧力容器13からの蒸気が導入されて凝縮するので、原子炉格納容器11に圧力抑制プールを設けることなく、原子炉圧力容器13を減圧することができる。すなわち、原子炉格納容器11の構造を簡素化することができ、かつ、IC30が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器13を減圧することができる。
【0058】
また、本実施の形態においては、IC30が原子炉圧力容器13からの蒸気を冷却するための冷却水を貯留するIC冷却水プール31を含み、IC冷却水プール31が上述の水源を兼ねている。この構成によれば、中間タンク41に排出する冷却水を予め貯留している減圧保護系40の水源として、冷却水タンクを別途設置する必要がないので、原子力プラント1の安全系の構成を簡略化することができる。
【0059】
また、本実施の形態においては、上述の貯留部が原子炉格納容器11内に設置された中間タンク41(タンク)である。この構成によれば、原子炉格納容器11内に貯留部を容易に確保することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態においては、中間タンク41は、原子炉圧力容器13から離れた位置に配置されている。この構成によれば、中間タンク41の配置位置として、機器が多数配置される原子炉圧力容器13の周辺領域を回避することができるので、中間タンク41の配置スペースを確保しやすい。
【0061】
また、本実施の形態に係る原子力プラント1の安全系は、中間タンク41に接続されIC冷却水プール31(水源)から中間タンク41に排出された冷却水を原子炉格納容器11の床面11aに放出可能な床面注水ライン47(第3ライン)と、床面注水ライン47(第3ライン)上に設けられ床面注水ライン47(第3ライン)を閉止する溶融弁48(第3弁)とを更に備えている。溶融弁48(第3弁)は、溶融弁48(第3弁)の周囲の熱を受けて開弁するように構成されている。
【0062】
この構成によれば、原子炉格納容器11の床面11a上に溶融炉心が拡がってしまった場合でも、溶融炉心の熱により溶融弁48が操作員の操作なしに開弁し、中間タンク41に貯留されている冷却水の自重により動的機器を用いることなく溶融炉心に注水することで、当該事故を収束させることができる。
【0063】
また、本実施の形態においては、減圧弁46(第2弁)の開弁する圧力がドレン弁43(第1弁)の開弁する圧力よりも高くなるように設定されている。この構成によれば、ドレン弁43(第1弁)が開弁してIC冷却水プール31からの冷却水が中間タンク41に貯留された後に、減圧弁46(第2弁)を開弁させることができるので、原子炉圧力容器13の蒸気を中間タンク41の冷却水中に確実に導入して凝縮させることができる。したがって、原子炉圧力容器13の蒸気のエネルギが冷却水中に移行されるので、原子炉格納容器1の圧力上昇を確実に抑制することができる。
【0064】
また、本実施の形態においては、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)が原子炉圧力容器13で発生した蒸気の圧力を利用して開弁するように構成されている。この構成によれば、IC30の不作動により原子炉圧力容器13内の蒸気圧力が上昇したときに、操作員が操作することなくドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)を自動的に開弁させることができる。
【0065】
また、本実施の形態においては、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)は原子炉圧力容器で発生した蒸気が圧力伝送管70を介して供給されることで蒸気の圧力により直接的に作動するように構成されている。この構成によれば、原子炉圧力容器13の蒸気を利用してドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)を駆動させる弁駆動システムとして、圧力伝送管70を使用すればよいので、弁駆動システムを簡素に構成することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係る原子力プラント1の安全系は、ドレンライン42(第1ライン)上に設けられ、中間タンク41(貯留部)に向かう流れを許容する一方、IC冷却水プール31(水源)に向かう流れを阻止する逆止弁44を更に備えている。この構成によれば、原子炉格納容器11内の気体のドレンライン42を介した原子炉格納容器11外への放出を防止することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第2の実施の形態について図7を用いて説明する。図7は本発明の原子力プラントの安全系の第2の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。なお、図7において、図1図6に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、詳細な説明は省略する。
【0068】
図7に示す本発明の第2の実施の形態に係る原子力プラントの安全系が第1の実施の形態と相違する点は、IC冷却水プール31からドレンされる冷却水を貯留する減圧保護系40Aの貯留部として、第1の実施の形態の減圧保護系40の中間タンク41の代わりに、原子炉格納容器11における床面11aを含む底部を用いることである。本実施の形態の減圧保護系40Aは、IC冷却水プール31の冷却水を原子炉格納容器11の床面11aに直接排出し、排出された冷却水を原子炉格納容器11の底部にて貯留させる。
【0069】
具体的には、減圧保護系40Aは、第1の実施の形態と同様な水源としてのIC冷却水プール31と、IC冷却水プール31から原子炉格納容器11の床面11aの近傍まで延在するドレンライン42Aと、ドレンライン42A上に配置された第1の実施の形態と同様なドレン弁43及び逆止弁44と、主蒸気管14から分岐して原子炉格納容器11の床面11aの近傍まで延在する減圧ライン45Aと、減圧ライン45A上に設置された第1の実施の形態と同様な減圧弁46とを備えている。ドレンライン42Aは、IC冷却水プール31に貯留されている冷却水の少なくとも一部を原子炉格納容器11の床面11aに直接注水するものである。減圧ライン45Aは、IC冷却水プール31からの冷却水が原子炉格納容器11の底部に貯留されるときの想定水位11bよりも低い位置で開口するように構成されている。すなわち、減圧ライン45Aは、原子炉格納容器11の底部に貯留されるIC冷却水プール31からの冷却水中に原子炉圧力容器13内の蒸気を導入するものである。
【0070】
本実施の形態においては、全系統のIC30が作動しない場合、第1の実施の形態の場合と同様に、原子炉圧力容器13の圧力が圧力伝送管70を介してドレン弁43に伝送されることでドレン弁43が開弁する。ドレン弁43の開弁により、IC冷却水プール31の冷却水がドレンライン42Aを通して原子炉格納容器11の床面11a上に直接排出され、原子炉格納容器11の底部にIC冷却水プール31から排出された冷却水が貯留される。
【0071】
さらに、第1の実施の形態と同様に、原子炉圧力容器13の圧力が圧力伝送管70を介して伝送されることで減圧弁46がドレン弁43よりも遅れて開弁する。減圧弁46の開弁により、原子炉圧力容器13内の蒸気は減圧ライン45Aを通って原子炉格納容器11の底部に貯留された冷却水中に導入されて凝縮するので、原子炉圧力容器13内の蒸気のエネルギが当該冷却水に移行する。これにより、原子炉圧力容器13が減圧されて原子炉圧力容器13の高圧破損を防止することができると共に、原子炉格納容器11の圧力上昇を抑制することができる。また、蒸気中に含まれる放射性物質の大半が原子炉格納容器11の底部に貯留されている冷却水のスクラビング効果によって捕獲され、冷却水中に保持される。
【0072】
本実施の形態においては、炉心溶融が発生する前に原子炉格納容器11の床面11a上に冷却水が張られる。そのため、炉心溶融が発生した場合、溶融炉心は既に床面11a上に張られている冷却水中に落下するので、微粒化されて粒状に固化する。微粒化された溶融炉心は冷却水との接触面積が増えて効率的に冷却されるので、過酷事故をより迅速に収束することができる。
【0073】
本実施の形態においては、原子炉格納容器11の底部に貯留される冷却水の水面下(想定水位11bよりも低い位置)に減圧ライン45Aが開口するように構成されている。したがって、減圧保護系40Aが作動した場合、原子炉圧力容器13の蒸気が原子炉格納容器11の底部に貯留されている冷却水中に吹き込まれるので、当該冷却水中には多数の気泡(ボイドとも呼ばれる)が含まれた状態となる。水中にボイドが含まれる場合には、溶融炉心の冷却水中への落下による水蒸気爆発の発生リスクを低減ですることができるという知見がある。
【0074】
なお、本実施の形態においては、IC冷却水プール31から原子炉格納容器11の床面11aにドレンする冷却水の水位を原子炉圧力容器13の底面に達するようにIC冷却水プール31の貯留量を設定することで、減圧保護系40Aが作動したときに、IC冷却水プール31から排出された冷却水により原子炉圧力容器13の底部を外部から直接冷却することが可能となる。この場合、炉心溶融が発生しても、溶融炉心を原子炉圧力容器13内に留めた状態で冷却することができ、溶融炉心を原子炉格納容器11の床面11a上に落下させることなく過酷事故を収束させることができる。したがって、溶融燃料の取出しなどの事故後の処理が容易になる。
【0075】
上述した第2の実施の形態に係る原子力プラントの安全系においては、第1の実施の形態の場合と同様に、IC30の不作動により原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇しても、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)が開弁することで、IC冷却水プール31(水源)から原子炉格納容器11の底部(貯留部)に排出された冷却水に原子炉圧力容器13からの蒸気が導入されて凝縮するので、原子炉格納容器11に圧力抑制プールを設けることなく、原子炉圧力容器13を減圧することができる。すなわち、原子炉格納容器11の構造を簡素化することができ、かつ、IC30が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器13を減圧することができる。
【0076】
また、本実施の形態においては、上述の貯留部が原子炉格納容器11の床面11aを含む底部である。この構成によれば、本実施の形態の減圧保護系40Aが第1の実施の形態の減圧保護系40の構成に対して中間タンク41を省略した構成となるので、原子炉格納容器11内の中間タンク41が占有していた空間を有効活用することで、原子炉格納容器11の小型化を図ることができる。
【0077】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第3の実施の形態について図8を用いて説明する。図8は本発明の原子力プラントの安全系の第3の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。なお、図8において、図1図7に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
図8に示す本発明の原子力プラントの安全系の第3の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、IC冷却水プール31からドレンされる冷却水を貯留する減圧保護系40Bの貯留部として、第1の実施の形態の減圧保護系40の中間タンク41の代わりに、原子炉圧力容器13の底部が位置する領域に圧力容器冷却タンク41Bを設置することである。本実施の形態の減圧保護系40Bは、IC冷却水プール31の冷却水を圧力容器冷却タンク41Bに排出し、圧力容器冷却タンク41Bが貯留するIC冷却水プール31からの冷却水により原子炉圧力容器13の底部を外部から直接冷却するように構成されている。
【0079】
具体的には、減圧保護系40Bは、原子炉格納容器11内に配置された圧力容器冷却タンク41Bと、IC冷却水プール31と圧力容器冷却タンク41Bと接続するドレンライン42Bと、ドレンライン42B上の第1の実施の形態と同様なドレン弁43及び逆止弁44と、主蒸気管14から分岐して圧力容器冷却タンク41Bに接続された減圧ライン45Bと、減圧ライン45B上の第1の実施の形態と同様な減圧弁46とを備えている。圧力容器冷却タンク41Bは、水源としてのIC冷却水プール31から排出された冷却水を貯留するものであり、IC冷却水プール31からの冷却水を貯留したときに、原子炉圧力容器13の底部が当該冷却水の水面下に位置するように配置されている。ドレンライン42Bは、IC冷却水プール31に貯留されている冷却水の少なくとも一部を圧力容器冷却タンク41Bに導くものである。減圧ライン45Bは、IC冷却水プール31からの冷却水が圧力容器冷却タンク41Bに貯留されるときの想定水位41aよりも低い位置で開口するように構成されている。すなわち、減圧ライン45Bは、原子炉圧力容器13内の蒸気を圧力容器冷却タンクに貯留されるIC冷却水プール31からの冷却水中に導入するものである。
【0080】
本実施の形態においては、全系統のIC30が作動しない場合、第1の実施の形態の場合と同様に、原子炉圧力容器13の圧力によりドレン弁43が開弁する。ドレン弁43の開弁により、IC冷却水プール31の冷却水がドレンライン42Bを通して圧力容器冷却タンク41Bにドレンされ、圧力容器冷却タンク41BにIC冷却水プール31から排出された冷却水が貯留される。
【0081】
さらに、第1の実施の形態の場合と同様に、原子炉圧力容器13の圧力により減圧弁46がドレン弁43よりも遅れて開弁する。減圧弁46の開弁により、原子炉圧力容器13内の蒸気は減圧ライン45Bを通って圧力容器冷却タンク41Bに貯留された冷却水中に導入されて凝縮するので、原子炉圧力容器13内の蒸気のエネルギが当該冷却水に移行する。これにより、原子炉圧力容器13が減圧されて原子炉圧力容器13の高圧破損を防止することができると共に、原子炉格納容器11の圧力上昇を抑制することができる。また、蒸気中に含まれる放射性物質の大半が圧力容器冷却タンク41Bの冷却水のスクラビング効果によって捕獲され、冷却水中に保持される。
【0082】
本実施の形態においては、圧力容器冷却タンク41Bが原子炉圧力容器13の底部が位置する領域に配置されている。したがって、炉心溶融が発生して溶融炉心が原子炉圧力容器13の底部に落下しても、減圧保護系40Bが既に作動しているので、圧力容器冷却タンク41Bが貯留する冷却水によって原子炉圧力容器13の底部に溜まる溶融炉心を外部から冷却することができる。したがって、溶融炉心を原子炉格納容器11の床面11a上に落下させることなく原子炉圧力容器13内に留めた状態で過酷事故を収束させることができ、溶融燃料の取出しなど、事故後の処理が容易になる。
【0083】
また、本実施の形態においては、溶融炉心が原子炉圧力容器13の底部に落下する前に、圧力容器冷却タンク41Bに貯留されている冷却水は原子炉圧力容器13から減圧ライン45Bを介して放出される蒸気により加熱されている。そのため、溶融炉心が原子炉圧力容器13の底部に落下すると、既に加熱されている圧力容器冷却タンク41Bの冷却水は速やかに沸騰する。したがって、圧力容器冷却タンク41Bの冷却水は、沸騰熱伝達によって原子炉圧力容器13の底部を外部から効率よく冷却することができる。
【0084】
上述した第3の実施の形態に係る原子力プラントの安全系においては、第1の実施の形態の場合と同様に、IC30の不作動により原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇しても、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)が開弁することで、IC冷却水プール31(水源)から圧力容器冷却タンク41B(貯留部)に排出された冷却水に原子炉圧力容器13からの蒸気が導入されて凝縮するので、原子炉格納容器11に圧力抑制プールを設けることなく、原子炉圧力容器13を減圧することができる。すなわち、原子炉格納容器11の構造を簡素化することができ、かつ、IC30が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器13を減圧することができる。
【0085】
また、本実施の形態においては、圧力容器冷却タンク41BがIC冷却水プール31(水源)からの冷却水を貯留したときに原子炉圧力容器13の底部が当該冷却水の水面下に位置するように配置されている。この構成によれば、IC30の不作動により減圧保護系40Bが作動した場合、IC冷却水プール31(水源)から圧力容器冷却タンク41Bに排出されて貯留された冷却水によって原子炉圧力容器13の底部を外部から冷却することができる。
【0086】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第4の実施の形態について図9を用いて説明する。図9は本発明の原子力プラントの安全系の第4の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。なお、図9において、図1図8に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0087】
図9に示す本発明の原子力プラントの安全系の第4の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、減圧保護系40Cのドレン弁43C及び逆止弁44Cが原子炉格納容器11の外部に配置されていることである。具体的には、減圧保護系40Cのドレンライン42Cは、IC冷却水プール31の側壁における底部側から原子炉格納容器11外に延在してから原子炉格納容器11内の中間タンク41まで延在している。ドレン弁43C及び逆止弁44Cは、ドレンライン42C上における原子炉格納容器11の外部に延在している部分に設けられている。ドレン弁43Cが原子炉格納容器11の外部に配置されているので、ドレン弁43Cを駆動するための圧力伝送管70Cの一部分が原子炉格納容器11の外部まで延びている。それ以外の構成及び構造は、第1の実施の形態と同様なものである。
【0088】
上述した第4の実施の形態に係る原子力プラントの安全系においては、第1の実施の形態の場合と同様に、原子炉格納容器11の構造を簡素化することができ、かつ、IC30が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器13を減圧することができる。
【0089】
本実施の形態においては、ドレン弁43C(第1弁)が原子炉格納容器11の外側に配置されている。この構成によれば、ドレン弁43(第1弁)が原子炉格納容器11の内部に配置されている第1の実施の形態の場合よりも、ドレン弁43C(第1弁)へのアクセスが容易となる。したがって、ドレン弁43C(第1弁)を操作員の操作により開弁することが可能となると共に、ドレン弁43C(第1弁)のメンテナンスが容易になる。
【0090】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第5の実施の形態について図10を用いて説明する。図10は本発明の原子力プラントの安全系の第5の実施の形態を備えた原子力プラントを示す概略系統図である。なお、図10において、図1図9に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、詳細な説明は省略する。
【0091】
図10に示す本発明の原子力プラントの安全系の第5の実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、貯留部としての中間タンク41に排出する冷却水を予め貯留する減圧保護系40Dの水源として、IC冷却水プール31の代わりに、冷却水貯留タンク49を別途備えていることである。本実施の形態の減圧保護系40Dは、冷却水貯留タンク49の冷却水を中間タンク41に排出し、中間タンク41が貯留する冷却水貯留タンク49からの冷却水により原子炉圧力容器13の蒸気を凝縮させるものである。具体的には、減圧保護系40Dの冷却水貯留タンク49は、原子炉格納容器11の外部において中間タンク41より高い位置に設置されている。ドレンライン42Dは、冷却水貯留タンク49と中間タンク41とを接続しており、冷却水貯留タンク49の冷却水を中間タンク41に導くものである。減圧保護系40Dのそれ以外の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0092】
本実施の形態においては、全系統のIC30が作動しない場合、第1の実施の形態の場合と同様に、原子炉圧力容器13の圧力によりドレン弁43が開弁し、冷却水貯留タンク49に貯留されている冷却水がドレンライン42Dを通して中間タンク41にドレンされ、中間タンク41に冷却水貯留タンク49から排出された冷却水が貯留される。
【0093】
さらに、第1の実施の形態の場合と同様に、原子炉圧力容器13の圧力により減圧弁46がドレン弁43よりも遅れて開弁し、原子炉圧力容器13内の蒸気が減圧ライン45Bを通って中間タンク41に貯留された冷却水中に導入されて凝縮する。これにより、原子炉圧力容器13が減圧されて原子炉圧力容器13の高圧破損を防止することができると共に、原子炉格納容器11の圧力上昇を抑制することができる。
【0094】
上述した第5の実施の形態に係る原子力プラントの安全系においては、第1の実施の形態の場合と同様に、IC30の不作動により原子炉圧力容器13内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇しても、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)が開弁することで、冷却水貯留タンク49(水源)から中間タンク(貯留部)に排出された冷却水に原子炉圧力容器13からの蒸気が導入されて凝縮するので、原子炉格納容器11に圧力抑制プールを設けることなく、原子炉圧力容器13を減圧することができる。すなわち、原子炉格納容器11の構造を簡素化することができ、かつ、IC30が不作動の場合でも動的機器を用いずに原子炉圧力容器13を減圧することができる。
【0095】
[減圧弁の弁駆動システムの変形例]
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第1~第5の実施の形態の一部を構成する減圧弁を駆動するための弁駆動システムの変形例の構成について図11を用いて説明する。図11は本発明の原子力プラントの安全系の第1~第5の実施の形態の一部を構成する減圧弁を駆動するための弁駆動システムの変形例を示すブロック図である。なお、図11において、図1図10に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0096】
図11に示す減圧弁46の弁駆動システムの変形例が第1~第5の実施の形態の減圧弁46の弁駆動システムと異なる点は、減圧弁46を駆動させる圧力源として、原子炉圧力容器13からの高圧蒸気の代わりに、原子炉圧力容器13の高圧蒸気とは異なる高圧気体を供給する圧力源を用いることである。第1~第5の実施の形態の減圧弁46の弁駆動システムでは、原子炉圧力容器13に直接的に接続された圧力伝送管70を介して、原子炉圧力容器13の圧力が減圧弁46の弁開閉機構54(図2及び図3参照)に伝送されるように構成されている。そのため、原子炉圧力容器13から減圧弁46までの配管の取り回しが難しくなる場合がある。そこで、本変形例の弁駆動システム70E1では、減圧弁46の近傍に配置可能な圧力源を別途設置する。
【0097】
減圧弁46は空気や窒素などの気体により作動する気体作動弁で構成され、減圧弁46を駆動する減圧弁駆動システム70E1は、原子炉圧力容器13内の蒸気の圧力が第2閾値を超えて上昇した場合に原子炉圧力容器13の蒸気とは異なる圧力源を用いて作動させるものである。具体的には、減圧弁駆動システム70E1は、第1所定値以上の圧力の高圧気体G(空気や窒素など)を発生させる高圧気体発生装置71と、高圧気体発生装置71により発生した高圧気体Gを蓄圧する気体蓄圧装置72と、破断可能なラプチャディスク73と、入力される圧力に応じてラプチャディスク73の破断操作を行う流体圧力コンバータ74と、上流側の圧力に応じて流路を切り替える切替弁75とを備えている。
【0098】
高圧気体発生装置71は、第1供給ライン81を介して流体圧力コンバータ74の一次側に接続されている。気体蓄圧装置72は、第1供給ライン81に接続された第2供給ライン82を介して流体圧力コンバータ74の一次側及び高圧気体発生装置71に接続されており、例えば、ボンベを用いることができる。第1供給ライン81上における第2供給ライン82との接続点の上流側及び下流側に第1逆止弁76及び第2逆止弁77が設けられている。流体圧力コンバータ74の一次側は、また、第3供給ライン83を介して減圧弁46の弁開閉機構54(図2及び図3参照)に接続されている。流体圧力コンバータ74は、一次側を介して第2逆止弁77とラプチャディスク73の間を連通させている。高圧気体発生装置71及び気体蓄圧装置72は、第1供給ライン81や第2供給ライン82及び第3供給ライン83を介して第1所定値以上の高圧気体Gを減圧弁46の弁開閉機構54(図2及び図3参照)に供給するものである。
【0099】
流体圧力コンバータ74の二次側は、減圧ライン45に接続された抽気ライン84を介して原子炉圧力容器13に接続されている。抽気ライン84は、減圧ライン45に供給された原子炉圧力容器13からの蒸気を流体圧力コンバータ74に導入するものである。抽気ライン84は、減圧ライン45における減圧弁46の設置位置の近傍に接続することが可能であり、流体圧力コンバータ74までの配管の取り回しが第1の実施の形態の減圧保護系40の圧力伝送管70の場合よりも容易である。流体圧力コンバータ74は、二次側に抽気ライン84を介して入力される流体F1の圧力が第2閾値(第1~第5の実施の形態の減圧弁46の開弁圧力と同じ値)を超えると、高圧気体発生装置71又は気体蓄圧装置72からの気体によりラプチャディスク73を破断させる破断操作部として構成されている。切替弁75は、第3供給ライン83上に設置されている。切替弁75は、第2所定値以上の圧力の気体がラプチャディスク73よりも下流側の第3供給ライン83に流入すると、流路を切り替えて第3供給ライン83を連通させる一方、それ以外の場合は第3供給ライン83を遮断するように構成されている。切替弁75の切替圧力である第2所定値は、高圧気体発生装置71が発生する高圧気体Gの第1所定値よりも十分に低い圧力に設定されている。
【0100】
次に、減圧弁駆動システムの変形例の動作について図12を用いて説明する。図12図11に示す減圧弁駆動システムの変形例における減圧弁作動時(開弁時)の状態を示すブロック図である。図12中、ラプチャディスクの形状は破断状態であることを模式的に示したものである。
【0101】
IC30(図1参照)が作動している場合、炉心12の崩壊熱の除去が継続されるので、原子炉圧力容器13の圧力が異常に上昇することはない。この場合、原子炉圧力容器13から減圧ライン45に供給されている流体F1(蒸気)の圧力が抽気ライン84を介して流体圧力コンバータ74の二次側に入力されても、図11に示すように、ラプチャディスク73が破断されることはない。ラプチャディスク73の正常な状態が維持されていれば、ラプチャディスク73により、高圧気体発生装置71及び気体蓄圧装置72から減圧弁46への高圧気体Gの供給が阻止されている。したがって、IC30が作動している場合、減圧弁46が作動することはない。
【0102】
一方、全系統のIC30が作動せず、原子炉圧力容器13の圧力が第2閾値を超えて上昇した場合、原子炉圧力容器13から抽気ライン84に供給された流体F1(蒸気)の第2閾値を超えた圧力が流体圧力コンバータ74の二次側に入力されることで、図12に示すように、流体圧力コンバータ74が高圧気体発生装置71または気体蓄圧装置72からの高圧気体Gをラプチャディスク73に作用させて破断させる。ラプチャディスク73の破断により、高圧気体発生装置71又は気体蓄圧装置72からの高圧気体Gが第3供給ライン83に流入し、第3供給ライン83が連通するように切替弁75が切り替えられる。切替弁75の切替により、高圧気体Gが減圧弁46の弁開閉機構54(図2及び図3参照)に供給され、減圧弁46が開弁する。減圧弁46の開弁により減圧ライン45が連通することで、原子炉圧力容器13内の蒸気が減圧ライン45を介して中間タンク41内の冷却水中に放出され、原子炉圧力容器13が減圧される。
【0103】
ここで、ラプチャディスク73の破断後に、原子炉圧力容器13から供給される流体F1の圧力が減圧弁46の起動により低下して第2閾値未満に低下したと仮定する。この場合、減圧弁駆動システム70E1では、ラプチャディスク73が既に破断しているので、電源喪失が発生していなければ、高圧気体発生装置71による高圧気体Gの供給が継続される。また、電源喪失が発生した場合であっても、気体蓄圧装置72からの高圧気体Gの供給が継続される。このため、切替弁75の流路切替による第3供給ライン83の連通状態が維持されるので、減圧弁46の開弁状態が維持される。したがって、原子炉圧力容器13からの蒸気の中間タンク41内の冷却水中への放出が継続され、原子炉圧力容器13の圧力上昇を抑制することができる。
【0104】
なお、本変形例の減圧弁駆動システム70E1においては、気体蓄圧装置72に高圧気体Gが蓄積されている。したがって、減圧弁駆動システム70E1が電源を喪失した場合であっても、気体蓄圧装置72の容積に応じた時間に亘って減圧弁46への高圧気体Gの供給を維持することができる。
【0105】
上述したように、本変形例においては、減圧弁46(第2弁)が弁駆動システム70E1から第1所定値(所定値)以上の圧力の気体が供給されることで作動するよう構成されるものである。弁駆動システム70E1は、第1所定値(所定値)以上の圧力の気体を供給する気体供給源としての高圧気体生成装置71及び気体蓄圧装置72と、高圧気体生成装置71及び気体蓄圧装置72(気体供給源)からの気体を減圧弁46(第2弁)に導く供給ライン81、82、83と、供給ライン83を閉止するように設けられたラプチャディスク73と、原子炉圧力容器13からの蒸気が導入され、当該蒸気の圧力が第2閾値(閾値)を超えるとラプチャディスク73を破断させる破断操作部としての流体圧力コンバータ74と、供給ライン81、82、83上におけるラプチャディスク73より減圧弁46(第2弁)側に設けられ、高圧気体生成装置71又は気体蓄圧装置72(気体供給源)から供給された気体がラプチャディスク73より下流側に流入すると第3供給ライン83を遮断状態から連通状態に切り替える切替弁75とを有する。
【0106】
この構成によれば、減圧弁46(第2弁)を駆動する高圧気体生成装置71及び気体蓄圧装置72(気体供給源)を減圧弁46(第2弁)の近傍に配置することができるので、減圧弁46(第2弁)に圧力を供給する配管(供給ライン)の取り回しの自由度を高めることができる。
【0107】
[ドレン弁の弁駆動システムの変形例]
次に、本発明の原子力プラントの安全系の第1~第5の実施の形態の一部を構成するドレン弁を駆動するための弁駆動システムの変形例について図13及び図14を用いて説明する。図13は本発明の原子力プラントの安全系の第1~第5の実施の形態の一部を構成するドレン弁を駆動するための弁駆動システムの変形例を示すブロック図である。図14図12に示すドレン弁駆動システムの変形例におけるドレン弁作動時(開弁時)の状態を示すブロック図である。なお、図13及び図14において、図1図12に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。図14中、ラプチャディスクの形状は破断状態であることを模式的に示したものである。
【0108】
図13に示すドレン弁43の弁駆動システムの変形例が第1~第5の実施の形態のドレン弁43の弁駆動システムと異なる点は、ドレン弁43を駆動させる圧力源として、原子炉圧力容器13からの蒸気の代わりに、原子炉圧力容器13の高圧蒸気とは異なる高圧気体を供給する圧力源を用いることである。ドレン弁43を駆動するドレン弁駆動システム70E2は、減圧弁駆動システム70E1と同様な構成であり、ドレン弁43が設置されている配管(ドレンライン42)と減圧弁46が設置されている配管(減圧ライン45)とが異なることに起因して構成の一部が異なっているのみである。
【0109】
具体的には、ドレン弁駆動システム70E2は、減圧弁駆動システム70E1と同様に、高圧気体発生装置71、気体蓄圧装置72、ラプチャディスク73、流体圧力コンバータ74、切替弁75を備えている。流体圧力コンバータ74の二次側は、主蒸気管14又は減圧ライン45に接続された抽気ライン84E2を介して原子炉圧力容器13に接続されている。流体圧力コンバータ74は、二次側に抽気ライン84を介して入力される流体F1の圧力が第1閾値(第1~第5の実施の形態のドレン弁43の開弁圧力と同じ値)を超えると、高圧気体発生装置71又は気体蓄圧装置72からの気体によりラプチャディスク73を破断させる破断操作部として構成されている。抽気ライン84E2は、主蒸気管14又は減圧ライン45に供給された原子炉圧力容器13からの蒸気を流体圧力コンバータ74に導入するものである。抽気ライン84E2は、ドレン弁43の設置位置の近傍に主蒸気管14又は減圧ライン45の部分に接続することが可能であり、流体圧力コンバータ74までの配管の取り回しが第1の実施の形態の減圧保護系40の圧力伝送管70の場合よりも容易となる。第3供給ライン83E2は、ドレン弁43の弁開閉機構54(図2及び図3参照)に接続されている。
【0110】
全系統のIC30が作動せず、原子炉圧力容器13の圧力が第1閾値を超えて上昇した場合、図14に示すように、原子炉圧力容器13から主蒸気管14又は減圧ライン45に供給されている流体F2(蒸気)の第1閾値を超えた圧力が抽気ライン84E2を介して流体圧力コンバータ74の二次側に入力されるので、ラプチャディスク73が破断する。ラプチャディスク73の破断により、高圧気体発生装置71又は気体蓄圧装置72からの高圧気体Gが第3供給ライン83E2に流入し、第3供給ライン83E2が連通するように切替弁75の流路が切り替えられる。切替弁75の切替により、高圧気体Gがドレン弁43の弁開閉機構54(図2及び図3参照)に供給され、ドレン弁43が開弁する。ドレン弁43の開弁によりドレンライン42が連通することで、IC冷却水プール31又は冷却水貯留タンク49の冷却水がドレンライン42を介して放出される。
【0111】
上述したように、本変形例においては、ドレン弁43(第1弁)が弁駆動システム70E2から第1所定値(所定値)以上の圧力の気体が供給されることで作動するように構成されるものである。弁駆動システム70E2は、第1所定値(所定値)以上の圧力の気体を供給する気体供給源としての高圧気体生成装置71及び気体蓄圧装置72と、高圧気体生成装置71及び気体蓄圧装置72(気体供給源)からの気体をドレン弁43(第1弁)に導く供給ライン81、82、83E2と、供給ライン83E2を閉止するように設けられたラプチャディスク73と、原子炉圧力容器13からの蒸気が導入され、当該蒸気の圧力が第1閾値(閾値)を超えるとラプチャディスク73を破断させる破断操作部としての流体圧力コンバータ74と、供給ライン81、82、83E2上におけるラプチャディスク73よりもドレン弁43(第1弁)側に設けられ、高圧気体生成装置71又は気体蓄圧装置72(気体供給源)から供給された気体がラプチャディスク73より下流側に流入すると第3供給ライン83E2を遮断状態から連通状態に切り替える切替弁75とを有する。
【0112】
この構成によれば、ドレン弁43(第1弁)を駆動する高圧気体生成装置71及び気体蓄圧装置72(気体供給源)をドレン弁43(第1弁)の近傍に配置することができるので、ドレン弁43(第1弁)に圧力を供給する配管(供給ライン)の取り回しの自由度を高めることができる。
【0113】
[その他]
なお、上述した第1~第5の実施の形態においては、本発明を沸騰水型原子炉に適用した例を示したが、本発明を加圧水型原子炉(PWR)にも適用することができる。加圧水型原子炉に適用した実施の形態について図15を用いて説明する。図15は本発明の原子力プラントの安全系の実施の形態を備えた加圧水型の原子力プラントを示す概略系統図である。なお、図15において、図1図14に示す符号と同符合のものは、同様な部分であるので、詳細な説明は省略する。
【0114】
図15において、加圧水型の原子力プラント1Fの原子炉格納容器11F内には、炉心12を内包する原子炉圧力容器23と、蒸気を発生させる蒸気発生器24とが設置されている。原子炉圧力容器23と蒸気発生器24は、冷却水が循環するように接続されている。
【0115】
加圧水型の原子力プラント1Fの安全系としてのIC30Fは、蒸気発生器24からの蒸気を冷却により凝縮させて再び蒸気発生器24に戻すものである。IC30Fの構成機器は、沸騰水型の原子力プラント1のIC30の構成機器と同じである。ただし、IC蒸気供給ライン33は、IC熱交換器32の入口(上側)と蒸気発生器24の上部(気相部24b)とを接続するものである。また、IC戻りライン34は、IC熱交換器32の出口(下側)と蒸気発生器24の下部(液相部24a)とを接続するものである。
【0116】
加圧水型の原子力プラント1Fの安全系としての減圧保護系40Fは、IC30Fが作動せずに蒸気発生器24内の圧力が通常範囲から逸脱して上昇した場合に、蒸気発生器24を減圧させることで蒸気発生器24を保護するものであり、蒸気発生器24の圧力上昇した蒸気を利用して起動するように構成されている。減圧保護系40Fの構成機器は、沸騰水型の原子力プラント1の減圧保護系40の構成機器と同じである。ただし、減圧ライン45は、蒸気発生器24内の蒸気の一部を中間タンク41に貯留される冷却水中に導入するものである。また、ドレン弁43及び減圧弁46は、蒸気発生器24の蒸気の圧力を利用して開弁するように構成されている。圧力伝送管70の一方側は、蒸気発生器24の上部(気相部24b)に接続されている。この減圧保護系40Fの動作は、沸騰水型の原子力プラント1の減圧保護系40の動作と同様である。したがって、加圧水型の原子力プラント1Fの減圧保護系40Fにおいても、沸騰水型の原子力プラント1の減圧保護系40と同様な効果を得ることができる。
【0117】
上述したように、PWRに適用した本実施の形態に係る原子力プラント1Fの安全系は、原子炉格納容器11Fに格納された蒸気発生器24からの蒸気を冷却により凝縮させて再び蒸気発生器24に戻すIC30Fを備えたものであって、原子炉格納容器11Fの外部に設置され、冷却水を貯留する水源としてのIC30FのIC冷却水プール31と、原子炉格納容器11Fの内部に位置すると共にIC冷却水プール31(水源)よりも下方に位置し、IC冷却水プール31(水源)から排出される冷却水を受け止めて貯留することが可能な貯留部としての中間タンク41と、IC冷却水プール31(水源)に接続され、IC冷却水プール31(水源)の冷却水を中間タンク41(貯留部)に導くドレンライン42(第1ライン)と、ドレンライン42(第1ライン)上に設けられ、ドレンライン42(第1ライン)を開放状態又は閉止状態に切り換えるドレン弁43(第1弁)と、一方側は蒸気発生器24に直接的又は間接的に接続され、他方側はIC冷却水プール31(水源)からの冷却水が中間タンク41(貯留部)に貯留されたときの想定水位41aより低い位置で開口する減圧ライン45(第2ライン)と、減圧ライン45(第2ライン)上に設けられ、減圧ライン45(第2ライン)を開放状態又は閉止状態に切り換える減圧弁46(第2弁)とを備える。ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)は、蒸気発生器24内の圧力の高さに応じて開弁するように構成されている。
【0118】
この構成によれば、IC30Fの不作動により蒸気発生器24内の圧力が通常範囲を逸脱して上昇しても、ドレン弁43(第1弁)及び減圧弁46(第2弁)が開弁することで、IC冷却水プール31(水源)から中間タンク41(貯留部)に排出された冷却水に蒸気発生器24からの蒸気が導入されて凝縮するので、原子炉格納容器11Fに圧力抑制プールを設けることなく、蒸気発生器24を減圧することができる。すなわち、原子炉格納容器11Fの構造を簡素化することができ、かつ、IC30Fが不作動の場合でも動的機器を用いずに蒸気発生器24を減圧することができる。
【0119】
また、本発明は上述した第1~第5の実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0120】
例えば、第1~第5の実施の形態及びその他の実施の形態においては、ドレン弁43、43C及び減圧弁46を原子炉圧力容器13又は蒸気発生器24で発生した蒸気の圧力を利用して開弁するように構成する例を示した。しかし、ドレン弁及び減圧弁は、原子炉圧力容器13又は蒸気発生器24で発生した蒸気を利用せずに開弁する構成も可能である。例えば、原子炉圧力容器13や蒸気発生器24の圧力を検出する圧力センサの検出信号に基づき開弁指令を出力することで、ドレン弁及び減圧弁を開弁させるように構成することが可能である。
【0121】
また、第1~第5の実施の形態及びその他の実施の形態においては、減圧ライン45を原子炉圧力容器13又は蒸気発生器24に主蒸気管14を介して間接的に接続した構成の例を示した。しかし、減圧ラインを原子炉圧力容器13又は蒸気発生器24に直接的に接続する構成も可能である。
【符号の説明】
【0122】
11、11F…原子炉格納容器、 11a…床面(貯留部)、 13…原子炉圧力容器、 24…蒸気発生器、 30、30F…非常用復水器、 31…IC冷却水プール(水源)、 41…中間タンク(貯留部;タンク)、 41B…圧力容器冷却タンク(貯留部;タンク)、 42、42A、42B、42C、42D…ドレンライン(第1ライン)、 43、43C…ドレン弁(第1弁)、 44、44C…逆止弁、 45、45A、45B…減圧ライン(第2ライン)、 46…減圧弁(第2弁)、 47…床面注水ライン(第3ライン)、 48…溶融弁(第3弁)、 49…冷却水貯留タンク(水源)、 70…圧力伝送管、 70E1…減圧弁駆動システム(弁駆動システム)、 70E2…ドレン弁駆動システム(弁駆動システム)、 71…高圧気体生成装置(気体供給源)、 72…気体蓄圧装置(気体供給源)、 73…ラプチャディスク73…流体圧力コンバータ(破断操作部)、 75…切替弁、 81…第1供給ライン(供給ライン)、 82…第2供給ライン(供給ライン)、 83、83E2…第3供給ライン(供給ライン)、 11b、41a…想定水位
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