(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】平面形状測定システムの点検装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20240206BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240206BHJP
B21B 38/02 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01B11/25 H
B21C51/00 L
B21B38/02
(21)【出願番号】P 2021093423
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】射場 公平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌之
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-067480(JP,A)
【文献】特開平07-151526(JP,A)
【文献】特開2020-159774(JP,A)
【文献】特開2018-048979(JP,A)
【文献】特開2012-251816(JP,A)
【文献】特開2004-226240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B21C 51/00
B21B 38/00ー38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物体が鋼板である場合の鋼板の搬送方向である第1方向および前記第1方向に直交する第2方向を含む平面に設けられた測定エリア内の前記被測定物体の表面に2本の平行スリット状光を前記第1方向に直交して照射するように設けられた投光装置と、
前記測定エリア内の前記被測定物体の表面の全体を前記第1方向の上流側の斜め方向または下流側の斜め方向から撮像するように設けられた撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された、前記被測定物体の表面の反射画像データの前記2本の平行スリット状光のそれぞれに対応する輝線を、前記第2方向の座標に関連付けられた、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の座標のデータに変換して前記被測定物体の第1表面高さのデータとして出力し、前記輝線ごとの前記第1表面高さのデータの偏差のデータにもとづいて、前記反射画像データの時間変動を軽減した第2表面高さのデータを出力する平面形状測定装置と、
を含む平面形状測定システムの点検装置であって、
前記反射画像データを取得日時とともに記録し、出力可能とする点検画像記録手段と、
前記平面形状測定装置が出力するデータにもとづいて前記平面形状測定システムの点検結果を判定するための判定データを出力する点検判定手段と、
を備え、
前記被測定物体は、前記測定エリアの前記第2方向の長さにわたる長さを有し、平坦な表面を有する板材であり、前記測定エリアに静止して設置されたときに、前記平面形状測定システムの測定精度により検出可能な自身の重量によるたわみを生ずるように設けられた点検用治具であり、
前記判定データは、前記平面形状測定装置が演算して出力した前記点検用治具のたわみ量を含む平面形状測定システムの点検装置。
【請求項2】
前記画像記録手段は、前記2本の平行スリット状光の反射画像データの画像処理演算機能を有し、
前記画像処理演算機能は、前記反射画像データの輝度データを演算して出力する請求項1記載の平面形状測定システムの点検装置。
【請求項3】
前記点検判定手段は、
前記第2方向にわたる前記第1表面高さのデータが所定の範囲内にあるか否かを判定して前記所定の範囲内の座標数を演算し、
前記第2方向にわたる偏差のデータが所定の範囲内にあるか否かを判定して前記所定の範囲内の座標数を演算して、前記判定データとして出力する請求項1または2に記載の平面形状測定システムの点検装置。
【請求項4】
前記第1表面高さのデータにもとづいて前記第2方向にわたる前記被測定物体の形状を表すデータを表示し、
前記第2方向にわたる前記第2表面高さのデータにもとづいて前記被測定物体の擬似的な2次元表面形状のデータを表示するようにデータを変換して出力する点検結果表示手段をさらに備えた請求項1~3のいずれか1つに記載の平面形状測定システムの点検装置。
【請求項5】
前記点検判定手段は、前記点検用治具のたわみ量とあらかじめ設定された基準値とを比較するか、あるいは、前記点検用治具のたわみ量と過去に測定されたたわみ量とを比較することを選択可能とする請求項1~4のいずれか1つに記載の平面形状測定システムの点検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、鉄鋼製造設備において搬送される帯状鋼板の平面形状を測定する平面形状測定システムの点検装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の圧延ライン等において、搬送される帯状鋼板にスリット状光を照射して、その帯状鋼板の表面波高さや急峻度、伸び率等を測定する平面形状測定システムが知られている(たとえば、特許文献1等)。
【0003】
このような平面形状測定システムは、光源、撮像装置および平面形状測定装置を有している。光源は、スリット状光を帯状鋼板に照射する。撮像装置は、スリット状光が照射された帯状鋼板の表面の画像を撮像して画像データを出力する。平面形状測定装置は、出力された画像データを画像処理し、画像処理されたデータに座標変換処理等を施して、その帯状鋼板の平面形状を表す各種数値を計算し、出力する。
【0004】
平面形状測定システムは、定期あるいは不定期に点検が行われ、その健全性が確認される。平面形状測定システムの代表的な点検方法では、表面の波高さや波のピッチ等があらかじめ規定された点検用波板を用いることにより行われる。点検用波板は、平面形状測定システムの測定エリア内に固定され、その表面にスリット状光が照射される。平面形状測定装置は、点検用波板の表面の画像データを取得して、点検用波板の表面形状を表す数値を計算する。計算され、出力された表面形状に関するデータは、点検用波板の基準値と比較され、平面形状測定システムによる計測が健全であるか否かが判定される。
【0005】
点検用波板は、計測の基準となるので、その表面形状を厳密に規定する必要がある。そのため、点検用波板は、金属材料で形成され、高重量とならざるを得ない。また、点検用波板を測定エリアに載置したときに、変形しないように長手方向の寸法が制限される。測定エリアは、平面形状測定システムが設けられる圧延ラインの幅であり、数メートルにおよぶ場合があり、そのような場合には、複数台の点検用波板を測定エリアにわたって正確に並べて固定する必要がある。
【0006】
点検のたびに上述のような点検用波板を配置し固定するのでは、作業性が悪く、多大な労力、時間を要することとなり、改善が求められている。
【0007】
また、上述の点検方法では、平面形状測定装置の出力値より異常の有無を検出することはできるが、平面形状測定システムのどこに異常原因が存在するのか調査が容易でないとの問題も指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、平面形状測定システムの点検を容易に行える平面形状測定システムの点検装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る平面形状測定システムの点検装置は、被測定物体が鋼板である場合の鋼板の搬送方向である第1方向および前記第1方向に直交する第2方向を含む平面に設けられた測定エリア内の前記被測定物体の表面に2本の平行スリット状光を前記第1方向に直交して照射するように設けられた投光装置と、前記測定エリア内の前記被測定物体の表面の全体を前記第1方向の上流側の斜め方向または下流側の斜め方向から撮像するように設けられた撮像装置と、前記撮像装置によって撮像された、前記被測定物体の表面の反射画像データの前記2本の平行スリット状光のそれぞれに対応する輝線を、前記第2方向の座標に関連付けられた、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向の座標のデータに変換して前記被測定物体の第1表面高さのデータとして出力し、前記輝線ごとの前記第1表面高さのデータの偏差のデータにもとづいて、前記反射画像データの時間変動を軽減した第2表面高さのデータを出力する平面形状測定装置と、を含む平面形状測定システムの点検装置である。この点検装置は、前記反射画像データを取得日時とともに記録し、出力可能とする点検画像記録手段と、前記平面形状測定装置が出力するデータにもとづいて前記平面形状測定システムの点検結果を判定するための判定データを出力する点検判定手段と、を備える。前記被測定物体は、前記測定エリアの前記第2方向の長さにわたる長さを有し、平坦な表面を有する板材であり、前記測定エリアに静止して設置されたときに、前記平面形状測定システムの測定精度により検出可能な自身の重量によるたわみを生ずるように設けられた点検用治具である。前記判定データは、前記平面形状測定装置が演算して出力した前記点検用治具のたわみ量を含む。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態では、平面形状測定システムの点検を容易に行える平面形状測定装置の点検装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る平面形状測定システムの点検装置を例示する模式的なブロック図である。
【
図2】
図2(a)は、画像データの一例を模式的に示す図である。
図2(b)は、
図2(a)の画像データに対して実行する画像処理を説明するための模式図である。
【
図3】実施形態の点検装置の動作時の平面形状測定装置の動作を説明するための模式図である。
【
図4】実施形態の平面形状測定システムの点検装置が出力する模式的な点検画面の例である。
【
図5】比較例の平面形状測定システムの点検方法を例示する模式的なブロック図である。
【
図6】比較例の平面形状測定システムの点検方法により出力された点検画面の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0014】
図1は、実施形態に係る平面形状測定システムの点検装置を例示する模式的なブロック図である。
図1には、点検装置10のほか、点検用治具1、平面形状測定装置20、投光装置2および撮像装置3が示されている。平面形状測定装置20、投光装置2および撮像装置3は、平面形状測定システムを構成する。
【0015】
実施形態の点検装置10では、点検用治具1を用いて、平面形状測定装置20を含む平面形状測定システムの異常の有無を点検する。点検用治具1は、平坦な表面を有する板状部材である。点検用治具1は、測定エリア1aの幅方向にわたる十分な長さを有している。そのため、1つの点検用治具1を測定エリア1aに一度載置し、固定することによって、点検のための環境設定を完了させることができる。
【0016】
測定エリア1aの幅が、たとえば5[m]の場合には、点検用治具1の長手方向の長さは、5[m]程度とされ、好ましくは、測定エリア1aの幅方向の全体にわたるように設定される。点検用治具1の短手方向の長さは、2本のスリット状光を照射し、その照射光を反射できる程度の十分な長さとされる。点検用治具1の厚さは、任意とすることができるが、点検用治具1の材質や寸法に応じて適切に設定される。点検用治具1の照射面は、平坦面とされ、好ましくは、照射光の反射時の輝度が十分となるように表面処理されている。重量等の観点から、点検用治具1は、たとえばアルミニウムやその合金で形成され、安定した画像形成等の観点から表面に酸化膜(アルマイト)形成処理がなされたものが用いられる。
【0017】
点検用治具1は、測定エリア1aの幅方向に一定の間隔で設けられた支持部材1b上に固定される。支持部材1bは、測定エリア1aの幅に応じた数が設けられる。この例では、支持部材1bは、点検用治具1の幅方向の両端に1つずつ、合計2つ設けられている。点検用治具1は、支持部材1b間で自身の重量によりたわみを生じ、点検装置10および平面形状測定システムによってそのたわみを測定して、点検用治具1の表面高さの測定値の妥当性の判断を可能にする。点検用治具1の材質や形状等によって生じるたわみの大きさは、平面形状測定装置20の測定精度で検出できるように支持部材1bの設置間隔が設定される。
【0018】
点検装置10は、平面形状測定装置20および撮像装置3に接続されている。投光装置2は、測定エリア1aに載置された点検用治具1の表面に2本のスリット状光を照射する。撮像装置3は、測定エリア1aの全体にわたる領域の画像を撮像するように設けられている。撮像装置3は、測定エリア1aに載置された点検用治具1の表面にスリット状光が照射された画像を撮像し、画像データに変換する。
【0019】
なお、測定エリア1aは、平面形状測定システムの通常の測定動作および点検装置10による点検動作で共通の測定エリアであり、搬送される鋼板や点検用治具1を撮像装置3によって撮像する領域である。より具体的には、測定エリア1aの搬送方向の長さは、2本のスリット状光の反射画像を撮像できるように設定される。スリット状光は、搬送方向にほぼ直交して照射される。測定エリア1aの搬送方向に直交する方向の長さについては、搬送方向に沿って搬送されてくる鋼板の幅にわたってスリット状光の反射画像を含むように設定される。以下では、鋼材の搬送方向に沿う方向をL方向といい、L方向に直交する方向をC方向ということがある。測定エリア1aは、L方向(第1方向)およびC方向(第2方向)の両方を含む平面であるものとする。鋼板が搬送される場合には、鋼板は、L方向の上流側から下流側に搬送される。
【0020】
点検装置10は、撮像装置3によって取得された画像データを点検画像として記録し、記録された画像を過去の取得画像のデータとともに、出力することができる。点検装置10の操作者は、現在取得された画像データや過去に取得された画像データをモニタ等に表示させて、表面形状測定システムの異常の有無を目視で判定することができる。
【0021】
平面形状測定装置20は、撮像装置3に接続されており、撮像装置3から取得した画像データにもとづいて、点検用治具1の幅方向の座標における表面高さの座標を表面高さのデータとして演算し、出力する。点検装置10は、平面形状測定装置20が演算した表面高さのデータを用いて、平面形状測定装置20による演算結果が適切か否かを判定した結果を出力することができる。
【0022】
平面形状測定システムの通常の測定動作では、鋼板が搬送され移動している状態で画像データが取得される。鋼板は、搬送にともなって振動しており、画像データから演算される表面高さのデータには、鋼板の振動による時間変動分が含まれている。そこで、平面形状測定装置20は、近接して平行して照射される2本のスリット状光の反射画像にもとづく表面高さのデータを用いることによって、座標データの時間変動の影響を相殺し、変動分が軽減あるいは除去された表面高さのデータを演算することができる。点検装置10は、平面形状測定装置20のこのような動作が適切であるか否かを判定することができる。
【0023】
実施形態の平面形状測定システムの点検装置10の構成について詳細に説明する。
点検装置10の構成の説明にあたり、
図1を参照して、まず平面形状測定システムの構成について説明する。
平面形状測定システムの通常の測定動作では、鋼板の搬送方向に沿って測定エリア1aに搬送されてきた鋼板(図示せず)の平面形状を測定する。この平面形状測定システムは、特許文献1等に記載されているように、周知の技術を用いて鋼板(図示せず)の表面形状を測定する。より具体的には、平面形状測定装置20、投光装置2および撮像装置3は、以下のように構成され、動作する。
【0024】
投光装置2は、2つの光源2a,2bを有する。光源2a,2bは、測定エリア1a内にほぼ平行なスリット状光を照射する位置に設けられる。たとえば、光源2a,2bは、測定エリア1aの斜め上方に設けられる。光源2a,2bの出射光の光軸は、鋼板の搬送方向に交差するように設定され、好ましくは、鋼板の搬送方向にほぼ直交するように設定される。
【0025】
撮像装置3は、測定エリア1aの全体を撮像できるように、1台以上のカメラを含んでいる。この例では、撮像装置3は、3台のカメラ3a~3cを含んでいる。3台のカメラ3a~3cが出力する画像データをC方向に結合することによって、測定エリア1aのC方向にわたる鋼板の画像データを得ることができる。カメラ3a~3cは、測定エリア1aの斜め上方に設けられる。測定エリア1a上の鋼板の表面の高さを測定するために、カメラ3a~3cの光軸は、C方向から角度を付けて設けられている。C方向からの角度は、L方向の上流側に付けてもよいし、L方向の下流側に付けてもよい。
【0026】
撮像装置3は、カメラ3a~3cによって、鋼板の表面に照射された2本のスリット状光の反射画像が撮像され、画像データとして平面形状測定装置20に送信される。撮像装置3は、2本のスリット状光の反射画像を複数回にわたって撮像する。撮像の回数は、あらかじめ設定されており、たとえば、画像データは、カメラ3a~3cのフレーム周期を数周期にわたって取得される。より具体的な例で説明すると、カメラ3a~3cは、フレーム周期60Hzの画像データ取得を10秒間継続し、600個の画像データをそれぞれ取得する。各画像データには、そのデータの取得日時が関連付けられる。
【0027】
表面座標変換部22は、カメラ3a~3cによって取得された画像データを受信し、画像データごとにスリット状光の座標変換を実行する。座標変換されたデータは、C方向の座標に関連付けられた表面高さのデータとして出力される。なお、平面形状測定装置20の通常の動作では、鋼板がL方向に搬送されるので、C方向にわたるスリット状光の表面高さのデータは、その鋼板のL方向の座標も有することとなる。
【0028】
表面座標変換部22は、2本のスリット状光の表面高さのデータを1組の表面高さデータとして出力する。凹凸形状演算部24は、スリット状光ごとの1組の表面高さデータを入力して、1組の表面高さのデータの偏差を計算する。凹凸形状演算部24は、1組の表面高さデータの偏差を、関連付けられている日時のデータ順に順次積算して配列し、結果を表面形状マップのデータとして出力する。なお、平面形状測定装置20の通常の動作では、時刻ごとに鋼板のL方向の座標が変化するので、凹凸形状演算部24は、C方向座標×L方向座標にわたって、時間変動分が軽減された、鋼板の2次元の表面高さのデータである表面形状マップのデータを出力することになる。
【0029】
凹凸形状演算部24は、表面形状マップのデータにもとづいて、その鋼板の表面形状、たとえば、表面波高さ等を演算し、結果を出力することができる。
【0030】
計測結果表示部26は、表面形状マップのデータや表面形状のデータを所望の形式で出力する。
【0031】
平面形状測定システムは、点検装置10を用いた点検動作においては、あらかじめ設定された期間にわたり、上述の動作をするように設定されている。つまり、点検動作において、点検装置10は、平面形状測定システムを動作させることによって、撮像装置3および平面形状測定装置20から上述の各部の動作によるデータを取得する。点検装置10は、取得したデータにもとづいて、各部が適切に動作しているか否かを判定するためのデータを演算して出力する。
【0032】
点検装置10の構成について説明する。
点検装置10を用いた表面形状測定システムの点検では、L方向に搬送される鋼板に代えて、点検用治具1が測定エリア1aのC方向にわたって、静止状態で載置、固定される。点検用治具1は、上述したように、平面形状測定システムの測定精度で十分に検出できるたわみを生じるように設けられる。点検装置10は、点検画像記録部12および点検判定部14を備える。点検装置10は点検結果表示部16をさらに備える。
【0033】
点検画像記録部(点検画像記録手段)12は、撮像装置3から画像データを取得する。撮像装置3から取得する画像データは、固定された点検用治具1の表面に照射された2本のスリット状光の反射画像を含む画像データである。点検画像記録部12は、画像データを、画像データの取得日時とともに記録する。点検画像記録部12は、画像データの取得日時に関連付けられた画像データを記録し、操作者の指定にもとづいて、所望の画像データを、たとえばデータの取得日時とともに出力することができる。
【0034】
点検画像記録部12は、好ましくは、取得した画像データの画像処理および演算機能を有する。点検画像記録部12は、取得した画像データを画像処理して、スリット状光の反射画像に関するデータを演算して出力する。点検装置10の操作者は、所望の日時の画像データの表示とともに、その画像データの画像処理演算結果を出力することができる。そのため、操作者は、画像データやその画像処理演算結果を目視にて判断することができ、投光装置2や撮像装置3等の画像データを生成する系統や画像データを取得する系統の異常の有無を判定することができる。
【0035】
点検判定部(点検判定手段)14は、表面座標変換部22からC方向座標に関連付けられたスリット状光ごとの表面座標のデータを表面高さのデータ(第1表面高さのデータ)として取得する。点検判定部14は、表面高さのデータにもとづいて、測定の妥当性を判断するためのデータを演算し、結果を出力する。
【0036】
点検判定部14は、凹凸形状演算部24から、2本のスリット状光の表面高さの偏差のデータを取得する。点検判定部14は、C方向にわたる表面高さの偏差のデータの有効性を判定することによって、測定の妥当性を判断することができる。
【0037】
点検判定部14によって、測定の妥当性を判断するためのデータは、たとえば、点検用治具1の幅の測定値、表面高さデータの有効率、表面高さの偏差の有効率、撮像データの安定度および2本のスリット状光のうち少なくとも一方の表面高さデータにもとづくたわみ量等である。
【0038】
点検用治具1の幅の測定値、表面高さの有効率、撮像データの安定度およびたわみ量は、この例では、C方向にわたって出力される表面高さのデータにもとづいて演算される。C方向にわたる表面高さのデータは、表面座標変換部22から出力される。
表面高さの偏差の有効率は、この例では、C方向にわたって出力される表面高さの偏差のデータにもとづいて演算される。C方向にわたる表面高さの偏差のデータは、凹凸形状演算部24から出力される。
【0039】
ここで、表面高さデータの有効率とは、2本のスリット状光のそれぞれについて、C方向の各座標における表面高さのデータが所定範囲内の場合に有効とし、その有効である座標数のC方向全座標数に対する割り合いをいう。
【0040】
また、偏差の有効率とは、2本のスリット状光のC方向の各座標における表面高さの偏差のデータが所定範囲内の場合に有効とし、その有効である座標数のC方向全座標数に対する割り合いをいう。
【0041】
また、撮像データの安定度とは、2本のスリット状光の少なくとも一方について、所定回数分(たとえば、600回分)の撮像データの表面高さのデータの標準偏差をいう。このときの表面高さのC方向の座標は、あらかじめ1つ以上設定され、座標ごと標準偏差について判定される。
【0042】
また、たわみ量とは、C方向両端の座標の1/2の位置の座標における表面高さの座標(中央座標という)と、C方向両端の座標の表面高さの座標を結んだ直線の中央座標における表面高さの座標の差をいう。
【0043】
点検結果表示部16は、操作者の指定にしたがって、点検画像記録部12および点検判定部14によって出力されたデータを所定の形式に変換等して、モニタ等の表示装置(図示せず)にデータを表示させる。
【0044】
また、この例のように、点検結果表示部16は、表面座標変換部22から出力される2本のスリット状光による表面高さのデータを入力し、たとえばC方向にわたって表示することにより点検用治具1のC方向のたわみとして表示させることもできる。
【0045】
また、この例のように、点検結果表示部16は、凹凸形状演算部24から出力されたデータ(第2表面高さのデータ)を時系列に展開して、表面形状マップのデータとして出力することができる。このときの表面形状マップのデータは、点検用治具1が静止しているので、同一のL方向座標について、時間変動分除去演算の実行により、擬似的な2次元状データとして出力される。操作者は、この2次元状データを目視判断することによって、凹凸形状演算部24の処理等に異常があるか否かを判定することができる。
【0046】
実施形態の点検装置10の使用方法および動作について説明する。
実施形態の点検装置10の点検動作では、準備段階と、点検動作段階とを含む。点検動作段階は、準備段階の終了後に実行される。
【0047】
準備段階では、点検用治具1が測定エリア1aに設置される。点検用治具1は、上述したように、測定エリア1aのC方向にわたって点検用治具1が載置され、固定される。なお、たわみ量の基準値があらかじめ測定され、設定される。たわみ量の基準値は、他の測定システムを用いて測定してもよいし、この点検装置10および表面形状測定システムによって計測されてもよい。また、点検装置10には、過去の測定値が記録されるようにしてもよく、点検装置10は、測定値と所定の基準値との比較のほか、測定値と過去の測定値との比較を行うようしてもよく、基準値か過去の測定値かを選択できるようにしてもよい。
【0048】
点検装置10には、他の点検データの判定のための基準値等があらかじめ設定される。
なお、たわみ量を含む点検データの妥当性有無を判定するための基準値は、あらかじめ測定されたデータ等を用いてもよいし、過去に測定され、演算された値を、たとえば統計処理することによって、基準値としてもよい。
【0049】
投光装置2は、2本のスリット状光が点検用治具1の表面に照射されるように設定される。撮像装置3は、測定エリア1a内の点検用治具1を撮像するように設定される。
【0050】
このような状態で、点検動作段階が実行される。点検動作段階では、点検装置10、投光装置2、撮像装置3および平面形状測定装置20を動作させて、点検装置10は、必要なデータを収集し、演算処理等し、出力する。
【0051】
点検装置10の点検データの測定および演算方法について説明する。
まず、点検画像記録部12による点検データの測定および演算方法について説明する。
図2(a)は、画像データの一例を模式的に示す図である。
図2(b)は、
図2(a)の画像データに対して実行する画像処理を説明するための模式図である。
図2(a)には、2本スリット状光の輝線G1,G2を含む画像データDI1の例が模式的に示されている。
図2(a)に示すように、画像データDI1では、2次元状に画素データを含んでおり、2次元の座標を、画像データDI1の行方向および列方向で表している。画素データは、輝度の大きさを表すデータを含んでいる。この例では、画素データは、行方向にほぼ等間隔で配列され列データを構成しているものとする。列データR1~Rnは、列方向にほぼ等間隔で配列されている。なお、撮像装置3は、行方向の上流側(または下流側)に角度をもった位置から反射画像を撮像しているので、輝線G1,G2は、画像データDI1上では、斜め方向に走る輝線として撮像されている。
【0052】
点検画像記録部12は、このような画像データを取得すると、列データR1~Rnごとに輝度データの分布を演算する。
図2(b)では、列データR1に対応する輝度データBR1、列データR2に対応する輝度データBR2が示されており、以降同様にして、n番目の列データRnに対応する輝度データBRnが示されている。
図2(b)の輝度データBR1~BRnのそれぞれは、縦軸が行方向の座標を表しており、横軸が輝度の大きさを表している。
【0053】
図2(b)に示すように、1つの列データの中で、最大の輝度を有する2点の座標に対応する輝度の大きさは、輝線G1,G2の輝度の大きさに対応している。たとえば、輝度データBR1では、BG11,BG21が輝線G1,G2にそれぞれ対応する輝度の大きさを表しており、これを最大輝度点という。点検画像記録部12は、最大輝度点の輝度の大きさを、輝線ごとに列方向に加算して、列数で除することによって、輝線G1の最大輝度点の輝度の平均値および輝線G2の最大輝度点の輝度の平均値を算出して出力する。
【0054】
最大輝度点に挟まれた範囲、すなわち
図2(b)において、円で囲った領域の輝度の大きさは、2本の輝線G1,G2を分離する暗部を表しており、輝線分離領域という。図では、輝線分離領域の輝度の大きさは、BD1~BDnと表されている。点検画像記録部12は、輝線分離領域の輝度の大きさBD1~BDnを列方向に加算して、列数で除することによって、輝線G1,G2の間の輝線分離領域の輝度の平均値を算出して出力する。
【0055】
このように、輝線G1,G2ごとの最大輝度点の輝度の平均値および輝線G1,G2間の輝線分離領域の輝度の平均値は、画像データごとに算出され、出力される。したがって、取得された画像データには、画像データの取得日時のデータのほか、輝線G1,G2ごとの最大輝度点の輝度の平均値および輝線G1,G2間の輝線分離領域の輝度の平均値のデータが関連付けられて記録される。
【0056】
点検画像記録部12が出力するデータは、点検結果表示部16および表示装置を介して、表示される。点検装置10の操作者は、表示装置に表示されたこれらのデータを目視して、異常の有無を判断することができる。点検画像記録部12が出力するデータは、撮像装置3が撮像する点検用治具1の表面を撮像した画像データである。そのため、操作者は、これらのデータを確認することによって、撮像装置3の異常、たとえばカメラ3a~3cのいずれかの故障や、光源2a,2bのいずれかの異常を判断することができる。
【0057】
具体的には、画像データが真っ黒であったり、逆に真っ白であったり、輝度データがゼロであったり、異常値であったりする場合には、その画像データに対応するカメラ3a~3cのいずれかに異常があることが考えられる。
あるいは、画像データ中に輝線が1本しかないような場合には、その輝線に対応する光源の他方の光源に異常があることが考えられる。
さらに、操作者は、現時点で取得したデータのほかに、過去に取得されたデータを同時に出力させ、表示させることができるので、過去のデータとの相対的な比較によっても異常の有無を検知することが可能になる。
【0058】
次に、点検判定部14による点検データの測定および演算方法について説明する。
点検判定部14は、平面形状測定装置20の表面座標変換部22から、2本のスリット状光ごとに座標変換され、演算された表面高さのデータを取得する。
図3は、実施形態の点検装置の動作時の平面形状測定装置の動作を説明するための模式図である。
図3では、表面座標変換部22が入力する画像データおよび表面座標変換部22が出力する表面高さのデータの関係が模式的に示されている。
図3の矢印の上段の図は、3台のカメラ3a~3cがそれぞれ撮像した画像データDI1~DI3を模式的に表している。画像データDI1~DI3中の輝線G1,G2は、スリット状光の反射画像を表している。この例では、カメラ3a~3cは、C方向から角度をもって配置されているので、輝線G1,G2は、画像データには斜めの輝線として記録されている。
図3の矢印の下段の図は、表面座標変換部22が出力する表面高さのデータを模式的に表している。この図では、横軸がC方向の座標を表しており、縦軸が表面高さを表す座標を表している。この例では、輝線G1,G2の表面高さに相違があるように示されている。
【0059】
平面形状測定装置20の表面座標変換部22は、画像データDI1~DI3を入力して、座標変換を施して、C方向座標に関連付けられた輝線G1,G2の表面高さのデータを出力する。点検判定部14は、表面座標変換部22から、輝線G1,G2の表面高さのデータを取得する。点検判定部14は、輝線G1,G2の端部の座標E1,E2の間の距離を演算し、点検用治具1の幅の測定値として出力する。点検判定部14は、あからじめ点検用治具1の幅の基準値を有しており、測定した点検用治具1の幅のデータと基準値とを出力する。測定値と基準値との乖離の有無を判定することによって、表面座標変換部22が適切に動作しているか否かを判定することができる。
【0060】
点検判定部14は、輝線G1,G2のそれぞれの表面高さのデータをC方向の座標ごとに所定の範囲内であるか否かを判定する。図では、所定の範囲内を下限値LL~上限値ULとして示している。点検判定部14は、表面高さのデータが所定の範囲内の場合に有効なデータであるとして、有効データを有する座標数をC方向の全座標数で除することによって、表面高さデータの有効率を演算する。
図3の例の場合には、輝線G1の表面高さのデータ数は、端部の座標E1,E2間の座標の数である。表面高さのデータが所定の範囲内であるとは、異常値を有するデータを排除する目的である。つまり、画像処理や座標変換等によって、輝度データの欠損が生じる場合等があり、そのような異常データが十分に少ない場合に表面座標変換部22の動作が妥当であると判断することが可能になる。
【0061】
点検判定部14は、輝線G1,G2のそれぞれの表面高さのデータの偏差をC方向の座標ごとに演算する。演算されたC方向の座標ごとの表面高さのデータの偏差は、所定の範囲内の場合に有効であるとして、有効である座標数をC方向の全座標数で除することによって、表面高さデータの偏差の有効率を演算する。同一座標に2本の輝線G1,G2の表面高さのデータが正常な範囲内であっても、その偏差を演算した場合に、異常となる場合があり、多数の異常がある場合には、凹凸形状演算部24による表面形状マップの演算結果におよぼすので、そのような異常をあらかじめ検出し、判断することが有用である。なお、この例では、表面高さのデータの偏差のデータは、凹凸形状演算部24から取得されるものとしたが、点検判定部14によって、表面座標変換部22から出力される1組の表面高さのデータの偏差を演算してもよい。
【0062】
点検判定部14は、撮像データの安定度を演算して出力する。撮像データの安定度は、上述したとおり、撮像装置3のフレーム周期のたとえば数周期分の表面高さのデータの変動を演算するものである。点検用治具1は、C方向に十分に長いため、点検用治具1の設置時の振動等がある場合には、正確なデータを取得して点検を行うことが困難となるため、実際の測定状態を把握するために行われる。
【0063】
点検判定部14は、点検用治具1のたわみ量を演算し、あらかじめ設定された基準値と比較することによって、表面座標変換部22の動作が適切に実行されているか否かを判定することができる。
【0064】
図4は、実施形態の平面形状測定システムの点検装置が出力する模式的な点検画面の例である。
図4には、表示装置に表示される点検画面50の例が示されている。
図4に示すように、点検画面50は、この例では、C方向たわみグラフ表示部51、表面形状マップグラフ表示部52、画像データ表示部53および測定結果表示部54を含んでいる。どのようなグラフやデータをどのように配置するかについては、適切なものを任意に選定することができるのはいうまでもない。
【0065】
C方向たわみグラフ表示部51には、その点検時に取得した点検画像のC方向にわたる表面高さデータが、点検結果表示部16によってグラフ化されて表示される。グラフ化のためのデータは、この例では、表面座標変換部22から出力され、そのデータを点検結果表示部16が処理することによって表示される。
表面形状マップグラフ表示部52には、凹凸形状演算部24によって演算されたデータが点検結果表示部16によって2次元グラフ化されて表示される。グラフ化のためのデータは、凹凸形状演算部24から出力され、そのデータを点検結果表示部16が処理することによって表示される。
【0066】
画像データ表示部53には、その点検時に取得した画像データが表示される。この例では、点検画像表示部53aにカメラ3a~3c(図では、CAM1~CAM3がカメラ3a~3cにそれぞれ対応)が撮像した画像データを表示し、同時に、操作者が選択した過去の画像データを記録画像表示部53bに表示することができる。
【0067】
表示した画像データには、その画像データに関連付けられている最大輝度点の輝度の平均値と輝線分離領域の輝度の平均値が同時に表示されている。たとえば、CAM1の240/240/30のうち“240/240”とあるのは、2本の輝線G1,G2それぞれの輝度の平均値を示しており、“30”とあるのは、輝線分離領域の輝度の平均値を表している。
【0068】
測定結果表示部54には、計測板幅として、点検用治具1の幅の測定値54aが示されている。また、幅有効率として、その点検時に取得された画像データのC方向にわたる表面高さの有効率の演算値54bが表示されている。長さ有効率として、その点検時に取得された画像データの2本の表面高さの偏差の有効率の演算値54cが表示されている。また、L方向安定度として、その点検時の撮像データの安定度の演算値54dが表示されている。その点検時のC方向のたわみ量の測定値54eが基準値54fとともに表示されている。
【0069】
点検装置10の操作者は、画像データ表示部53の画像データを目視して、投光装置2や撮像装置3の異常の有無を判断する。また、点検装置10の操作者は、C方向たわみグラフ表示部51、表面形状マップグラフ表示部52および測定結果表示部54を目視して、平面形状測定装置20の異常の有無を判断する。
【0070】
このようにして、平面形状測定システムの点検装置10は、動作し、使用することができる。
【0071】
実施形態の平面形状測定システムの点検装置10の効果について、比較例を参照しつつ説明する。
図5は、比較例の平面形状測定システムの点検方法を例示する模式的なブロック図である。
図5に示すように、平面形状測定システムは、投光装置2、撮像装置3および平面形状測定装置120を備えてなり、点検用波板101の表面高さを測定して、基準値と比較することによって、平面形状測定システムの異常の有無を点検する。
【0072】
投光装置2や撮像装置3の構成については、上述した実施形態の場合と同様であり、説明を省略する。点検用波板101は、測定エリア101aの幅よりも短い幅を有しており、金属材料で形成されている。変形を防止して表面形状を維持するために、十分な厚みを有しており、高重量である。
【0073】
点検用波板101の幅では、測定エリア101aのうち、1台のカメラの撮像エリアしかカバーできない場合には、カメラの台数分の点検用波板101を設置するか、点検用波板101の幅方向の位置をずらして、カメラの台数分の点検作業を繰り返す必要がある。この例では、3台のカメラ3a~3cによって、測定エリア101aをカバーしているので、3個の点検用波板101を設置するか、点検用波板101の設置位置をずらして、3回点検を行う必要がある。
【0074】
高重量の点検用波板101を十分な精度で測定エリア101a内の所望の位置に複数個あるいは複数回配置するのは、多大な工数、労力を要するのは明らかである。
【0075】
比較例の平面形状測定システムの点検方法では、平面形状測定装置120が点検結果表示部28を有しており、点検結果表示部28を介して、表面座標変換部22が演算し、出力したデータを表示装置等に出力する。
【0076】
点検結果表示部28は、データを表示装置に表示させるためのデータ変換を行うだけでなく、点検用波板101の波高さや、波のピッチ等を演算して出力することができる。
【0077】
図6は、比較例の平面形状測定システムの点検方法により出力された点検画面の例である。
図6に示すように、比較例の点検方法では、点検用波板101の表面の測定結果を表面高さのデータとして、点検画面150に表示させることができる。したがって、投光装置2や撮像装置3にハードウェア的な異常がないことがあらかじめ判明している場合に、点検画面150に出力されるデータに異常があると認められるときには、平面形状測定装置120に異常があるものと推定することが可能になる。
【0078】
しかしながら、投光装置2や撮像装置3にハードウェア的な異常がない場合であっても、撮像装置3の露光量等が適切でない場合には、取得される画像データを適切に画像処理できないことがあり得る。取得した画像データを適切に画像処理できない場合にも、点検画面150には、異常値が出力され得る。
【0079】
実施形態の平面形状測定システムの点検装置10では、点検用波板101に代えて、測定精度で検出できるたわみを生じる点検用治具1が用いられる。点検用治具1は、平板であり、測定エリア1aにわたる幅とすることができる。したがって、点検用治具1の測定エリア1aへの設置作業は、1個の点検用治具1を1回設置すれば完了する。そのため、点検用治具1の設置工数や労力を大幅に削減することができる。
【0080】
また、点検用治具1は、測定したたわみを基準値と比較することによって、表面高さのデータの妥当性の判定に利用することができる。
【0081】
点検装置10は、撮像装置3に接続された点検画像記録部12を備えているので、カメラごとの画像データを表示することによって、画像データ上の異常の有無を確認することができる。画像データにおける異常の有無は、画像欠損等の明白なものに限らず、過去の画像データと目視による比較を行うことによって、微細な異常や異常の前兆等を発見することが可能になる。
【0082】
点検画像記録部12は、カメラごとの画像データを画像処理演算することによって、操作者の目視では困難なより微細な異常や異常の前兆等を発見することが可能になる。
【0083】
点検装置10は、平面形状測定装置20が出力する点検用治具1の表面高さのデータにもとづいて、測定の妥当性を判定するためのデータを出力する点検判定部14を備えているので、平面形状測定装置20の異常の有無を容易に判断することができる。
【0084】
点検判定部14は、2本のスリット状光の反射画像にもとづく表面高さのデータの有効率や偏差の有効率を演算することによって、目視では困難な1つの画像データ内の座標単位の異常の有無を測定限度レベルで検出することが可能になる。
【0085】
点検装置10は、点検結果表示部16を備えており、点検判定部14によって演算され、判定された結果を適切に表示できるデータに変換して出力することができる。
【0086】
点検結果表示部16は、平面形状測定装置20が出力するスリット状光の反射画像にもとづく表面高さのデータをC方向にわたってグラフ表示することもできる。また、点検結果表示部16は、表面高さのデータの偏差のデータを時系列に並べてグラフ表示することもできる。そのため平面形状測定装置20の表面座標変換処理や、表面形状マップ再現処理の異常の有無を容易に検出することができる。
【0087】
点検装置10の各構成要素は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してももちろんよいし、ハードウェアとソフトウェアを適宜組み合わせて実現してもよい。点検装置10は、ソフトウェアで構成される場合には、たとえば、コンピュータ装置やプログラマブルロジックコントローラ等の記憶装置に格納されたプログラムを演算処理回路で逐次実行するようにしてもよい。点検装置10の各構成要素は、プログラムの1つ以上のステップにより実現されることができる。
【0088】
以上説明した実施形態によれば、平面形状測定システムの点検を容易に行える平面形状測定システムの点検装置を実現することができる。
【0089】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 点検用治具、2 投光装置、3 撮像装置、10 点検装置、12 点検画像記録部、14 点検判定部、16 点検結果表示部、20 平面形状測定装置、22 表面座標変換部、24 凹凸形状演算部、26 計測結果表示部