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  • 特許-電線加工装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電線加工装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
H01B13/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021130720
(22)【出願日】2021-08-10
(65)【公開番号】P2023025459
(43)【公開日】2023-02-22
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇人
(72)【発明者】
【氏名】八木 淳
(72)【発明者】
【氏名】巖 哲央
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-174012(JP,A)
【文献】特開2000-113749(JP,A)
【文献】特開2017-208174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の櫛歯を有する櫛形治具と、
前記複数の櫛歯で、少なくとも一本の電線を挟んだ状態で、前記櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる駆動機構と、
を備え
前記櫛形治具は、複数の第1櫛歯を有する第1櫛形治具及び複数の第2櫛歯を有する第2櫛形治具を含み、
前記駆動機構は、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具が、前記少なくとも一本の電線を挟んで互いに対向するようにそれぞれ配置された状態で、前記複数の第1櫛歯と前記複数の第2櫛歯とがかみ合うように前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を互いに近接させて、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に対して前記電線の延在方向に相対移動させることで、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる、
電線加工装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記櫛形治具が、前記複数の櫛歯で、前記少なくとも一本の電線の端部を挟んだ状態で、前記櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる、
請求項1に記載の電線加工装置。
【請求項3】
記駆動機構は、記複数の第1櫛歯と前記複数の第2櫛歯とが、隣接する前記第1櫛歯間の凹部に前記第2櫛歯が進入し且つ隣接する前記第2櫛歯間の凹部に前記第1櫛歯が進入してかみ合うように前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を互いに近接させる、
請求項1又は2に記載の電線加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リールに巻かれた状態の電線を引き出して加工する際、電線をローラーで挟み込みながら送り出すことで、電線の巻き癖を矯正している(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1は、リールから繰り出された電線をローラーで挟み込んで矯正し、矯正された電線をカッタ―部で所定長に切断して電線端部の被覆を剥ぐ電線製造方法において、カッタ―部で切断する位置の前後において、ローラーの押圧力を低減する技術を開示している。特許文献1の技術は、電線の切断位置の前後で押圧力を低減することで、電線の変位(伸び縮み)を抑制し、電線端部での被覆位置の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-208174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、リールから引き出された電線全体の絡みや巻き癖(曲がり癖)は矯正し得るものの、電線端部ではローラーの押圧力が低減されるため、電線端部のばらつきや癖を矯正するのには向いていない。また、特許文献1の技術では、電線を送りながら矯正するため、矯正用のローラーや送りベルトを配置するためのスペースが必要となる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、省スペースで電線の癖を矯正できる電線加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電線加工装置は、下記を特徴としている。
複数の櫛歯を有する櫛形治具と、
前記複数の櫛歯で、少なくとも一本の電線を挟んだ状態で、前記櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる駆動機構と、
を備え
前記櫛形治具は、複数の第1櫛歯を有する第1櫛形治具及び複数の第2櫛歯を有する第2櫛形治具を含み、
前記駆動機構は、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具が、前記少なくとも一本の電線を挟んで互いに対向するようにそれぞれ配置された状態で、前記複数の第1櫛歯と前記複数の第2櫛歯とがかみ合うように前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を互いに近接させて、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に対して前記電線の延在方向に相対移動させることで、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる、
電線加工装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電線加工装置によれば、省スペースで電線の癖を矯正できる。
【0008】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1実施形態の電線加工装置の要部を模式的に示す図である。
図2図2は、図1に示した櫛形治具が電線の癖を矯正する様子を示す図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態の電線加工装置の要部を模式的に示す図である。
図4図4は、図3に示した第1櫛形治具及び第2櫛形治具が閉じた状態を示す図である。
図5図5は、図3に示した第1櫛形治具及び第2櫛形治具が閉じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。以下の実施形態では、各電線の端末を揃えた状態で供給された複数の電線の端部をコネクタに圧接する電線加工装置において、コネクタへの挿入前に、櫛形治具によって電線端部の癖を矯正する例を示す。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の電線加工装置の要部を模式的に示す図である。図2は、図1に示した櫛形治具30が電線Wの癖を矯正する様子を示す図である。電線加工装置は、複数のリールにそれぞれ巻かれた電線を検尺し、所定長に切断し切断端末を揃える。図1は、所定長に切断された複数の電線Wが各電線端Eを揃えた状態で並列に配置された様子を示す。複数の電線Wは、端部にばらつきや癖があるため、この状態では複数の電線Wをコネクタに正しく挿入できない場合がある。そこで、櫛形治具30を用いて複数の電線Wのばらつきや癖を矯正する。
【0012】
櫛形治具30は、複数の櫛歯31を有し、図示しない駆動機構によって、図1に矢印Aで示す上方向、及び下方向、並びに電線Wに沿った前後方向に移動される。
【0013】
駆動機構は、図1に示す原点位置から櫛形治具30を上昇させて、図2に示すように、各電線Wが2つの櫛歯31の間にそれぞれ配置されて、2つの櫛歯31で一本の電線Wを挟んだ状態となる位置に、櫛形治具30を移動させる。この状態において、櫛形治具30は、複数の櫛歯31によって電線Wをくわえ込む。次に駆動機構は、櫛形治具30を、図2の矢印B、Cに示す前後方向に移動させて、櫛歯31を電線Wに摺動させる。その後、駆動機構は、櫛形治具30を原点位置(図1参照)に戻す。
【0014】
このように、櫛形治具30が複数の電線Wをくわえ込み、電線Wの延在方向に沿って前後方向にスライドすることで、電線Wの端部のばらつきや癖が矯正される。この構成によれば、電線端部を集中的に矯正でき、電線を送りながらローラーで挟み込んで電線の癖を矯正する場合と比べて、省スペースで加工が可能となる。また、第1実施形態の電線加工装置は、櫛形治具30によって電線端部のばらつきや癖が矯正された電線Wを、コネクタの電線挿入口に正しく挿入できる。
【0015】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態の電線加工装置の要部を模式的に示す図であり、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35が開いた状態を示す。図4及び図5は、図3に示した第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35が閉じた状態を示す図である。
【0016】
第2実施形態の電線加工装置は、複数の櫛歯(第1櫛歯)31を有する第1櫛形治具33と、複数の櫛歯(第2櫛歯)31を有する第2櫛形治具35と、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を移動させる駆動機構40と、を備える。電線加工装置は、複数の電線Wを並列に配置された状態で保持している。
【0017】
第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35は、並列に配置された複数の電線Wを挟んで互いに対向するように、複数の電線Wの上下側にそれぞれ配置される。また、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35は、図5に示すように、コネクタ45を保持するコネクタ保持部50の手前側に配置される。
【0018】
第1櫛形治具33は、複数の電線Wの配列方向、すなわち図4における左右方向に延びる平板部34と、平板部34の下端部に設けられた複数の櫛歯31とを有する。第2櫛形治具35は、複数の電線Wの配列方向に延びる平板部36と、平板部36の上端部に設けられた複数の櫛歯31とを有する。
【0019】
駆動機構40は、図4に示すように、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35の側方に設けられ、第1櫛形治具33の平板部34と、第2櫛形治具35の平板部36とを、互いに近接・離間するように、例えばシリンダにより、上下方向に駆動する。駆動機構40は、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を上下方向に移動させることで、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を開閉する。駆動機構40は、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を、図3に示す開いた状態から、第1櫛形治具33の複数の櫛歯31と第2櫛形治具35の複数の櫛歯31とがかみ合うように第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を互いに近接させて、閉じた状態とする。
【0020】
閉じた状態において、各電線Wは、第1櫛形治具33の2つの櫛歯31の間、かつ、対応する第2櫛形治具35の2つの櫛歯31の間にそれぞれ配置される。すなわち、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35は、複数の櫛歯31によって電線Wをくわえ込む。
【0021】
また、駆動機構40は、電線Wの延在方向に沿った前後方向に第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を移動可能である。駆動機構40は、複数の電線Wを間に挟んで閉じた状態の第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を、電線Wの延在方向に沿って前後方向に移動させて、複数の櫛歯31を複数の電線Wに摺動させる。さらに、駆動機構40は、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35をコネクタ保持部50に対して近接させることができる。
【0022】
駆動機構40の動作の一例を説明する。駆動機構40は、電線Wの電線端Eから一定距離離間した所定位置に複数の櫛歯31が接触するように、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を閉じ(図4参照)、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35をコネクタ保持部50に近接させる。このとき、櫛歯31が電線端Eまで電線Wに摺動する。次に、駆動機構40は、コネクタ保持部50と第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35とを、電線Wの後方(図4の手前側)に向かって移動させる。このとき、電線Wは、電線端部の癖が第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35によって矯正されながら、コネクタ45の電線挿入口から内部に挿入される。このように、電線加工装置は、電線端部のばらつきや癖が矯正された電線Wをコネクタ45に挿入し接続できる(図5参照)。電線Wの挿入完了後、駆動機構40は、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35を原点位置(図3参照)に戻す。
【0023】
上述したように、第2実施形態の電線加工装置によれば、第1櫛形治具33及び第2櫛形治具35が櫛歯31の間に複数の電線Wを一本一本挟み込んで、櫛歯31が前後にスライドすることで、電線Wの端部のばらつきや癖が矯正される。この構成によれば、電線端部を集中的に矯正でき、電線を送りながらローラーで挟み込んで電線の癖を矯正する場合と比べて、省スペースで加工が可能となる。また、第2実施形態の電線加工装置は、櫛形治具30によって電線端部のばらつきや癖が矯正された電線Wを、コネクタ45の電線挿入口に正しく挿入できる。
【0024】
また、第2実施形態の電線加工装置によれば、一本の電線Wに対して、第1櫛形治具33の櫛歯31と第2櫛形治具35の櫛歯31とが互いにかみ合った状態でスライドするため、電線Wの癖を効果的に矯正できる。
【0025】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。例えば、上記実施形態では、電線Wの端部に櫛歯31を摺動させたが、電線Wの端部以外に櫛歯31を摺動させて、電線Wの癖を矯正してもよい。また、上記実施形態では、電線加工装置が、電線Wの癖を矯正した後、電線Wをコネクタに挿入したが、電線加工装置は、電線の矯正後、端末の皮剥き等種々の加工を行うことができる。
【0026】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る電線加工装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
【0027】
[1] 複数の櫛歯(31)を有する櫛形治具(30、第1櫛形治具33、第2櫛形治具35)と、
前記複数の櫛歯で、少なくとも一本の電線を挟んだ状態で、前記櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる駆動機構(40)と、
を備える電線加工装置。
【0028】
上記[1]の構成の電線加工装置によれば、電線を送ることなく、櫛形治具を複数の電線に摺動させることで電線の癖を矯正できるため、ローラーで挟み込んで電線の癖を矯正する場合と比べて、省スペースで電線の癖を矯正できる。
【0029】
[2] 前記駆動機構(40)は、前記櫛形治具が、前記複数の櫛歯で、前記少なくとも一本の電線の端部を挟んだ状態で、前記櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる、
上記[1]に記載の電線加工装置。
【0030】
上記[2]の構成の電線加工装置によれば、櫛形治具を複数の電線の端部に摺動させることで電線の癖を矯正できるため、省スペースで、電線端部の癖やばらつきを矯正できる。
【0031】
[3] 前記櫛形治具は、複数の第1櫛歯を有する第1櫛形治具(33)及び複数の第2櫛歯を有する第2櫛形治具(35)を含み、
前記駆動機構は、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具が、前記少なくとも一本の電線を挟んで互いに対向するようにそれぞれ配置された状態で、前記複数の第1櫛歯と前記複数の第2櫛歯とがかみ合うように前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を互いに近接させて、前記第1櫛形治具及び第2櫛形治具を前記少なくとも一本の電線に摺動させる、
上記[1]又は[2]に記載の電線加工装置。
【0032】
上記[3]の構成の電線加工装置によれば、一本の電線に対して、第1櫛形治具の第1櫛歯と第2櫛形治具の第2櫛歯とが互いにかみ合った状態でスライドするため、電線の癖を効果的に矯正できる。
【符号の説明】
【0033】
30 櫛形治具
31 櫛歯
33 第1櫛形治具
34、36 平板部
35 第2櫛形治具
40 駆動機構
45 コネクタ
50 コネクタ保持部
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5