(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】データストレージデバイスの温度を制御するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G11B 33/14 20060101AFI20240206BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G11B33/14 501D
G11B33/14 501A
G05D23/19 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021175801
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2023-06-20
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208205
【氏名又は名称】アクシス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケルヴェステン, グスタフ
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-070485(JP,A)
【文献】特開2003-228972(JP,A)
【文献】特開2008-059650(JP,A)
【文献】特開2002-324392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 33/14
G05D 23/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データストレージデバイス(8)の作動温度を制御する方法であって、
閾値温度(T
th)を前記データストレージデバイスのために設定すること(S1)と、
前記データストレージデバイスの作動中に、前記データストレージデバイスの作動温度(T
op)を複数の時点にて経時的に測定し、これにより、複数の温度測定値を時間関数として取得すること(S2)と、
閾値を上回る温度測定値を経時的に蓄積し、高温度蓄積値(V
high)を形成すること(S3a)と、
閾値を下回る温度測定値を経時的に蓄積し、低温度蓄積値(V
low)を形成すること(S3b)と、
前記低温度蓄積値と前記高温度蓄積値とを比較すること(S4)と、
前記高温度蓄積値(V
high)が前記低温度蓄積値(V
low)に関して高すぎるという前記比較の結果に応答して、作動温度を下げるアクションを始めること(S5)と、
を含む方法。
【請求項2】
前記作動温度を下げるアクションは、冷却装置を起動させること、前記冷却装置のパフォーマンスを上げること、又は、前記データストレージデバイスのパフォーマンスを下げること、の群からの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比較の前記結果が、前記低温度蓄積値が前記高温度蓄積値に関して十分に大きいというものであれば、前記データストレージデバイスのパフォーマンスを上げること(S6)をさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記高温度蓄積値(V
high)は、前記閾値温度を上回る温度測定値の第1の積分値を時間関数として計算することにより形成され、
前記低温度蓄積値(V
low)は、前記閾値温度を下回る温度測定値の第2の積分値を時間関数として計算することにより形成され、
前記低温度蓄積値と前記高温度蓄積値とを比較することは、前記低温度蓄積値と前記高温度蓄積値との間の比を計算することにより行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記蓄積することと、前記比較することとは、
タイマを起動させること(21)と、
前記測定された温度が第1の時点にて前記閾値温度を上回るのであれば、前記測定された温度が前記閾値温度を上回る度数に比例してカウンタ(22)を増やすことと、
前記測定された温度が前記第1の時点にて前記閾値温度を下回るのであれば、前記測定された温度が前記閾値温度を下回る度数に比例して前記カウンタを減らすことと、
を含み、
前記カウンタが所定の閾値カウンタ値を上回るのであれば、前記比較の前記結果は、前記高温度蓄積値が前記低温度蓄積値に関して高すぎるというものである、方法。
【請求項6】
前記測定された作動温度(T
op)を、前記閾値温度よりも高い最高許容温度(T
max)と比較することと、
前記測定された作動温度が前記最高許容温度を上回るのであれば、作動温度を下げるアクションを始めることと
をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定された作動温度が前記閾値温度を上回ってから前記閾値温度を下回った際の第1の時点(t
1)から、前記測定された作動温度が次に前記閾値温度を下回ってから前記閾値温度を上回った際の第2の時点(t
2)までの、第1の時間間隔を測定することと、
前記第1の時間間隔を所定の最短時間間隔と比較することと、
前記第1の時間間隔が前記所定の最短時間間隔よりも短ければ、作動温度を下げるさらなるアクションが必要とされ得ることのインジケーションを発行することと
をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記データストレージデバイスの作動中の誤差をモニターすることと、
誤差の発生に基づいて、前記閾値温度、又は前記作動温度を下げるアクションの少なくとも1つを調整することと
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
データストレージデバイスの作動温度を制御するための温度コントローラであって、
前記温度コントローラは温度センサを含み、
前記温度コントローラはさらに回路を含み、
前記回路は、
閾値温度を前記データストレージデバイスのために設定することと、
前記温度センサを使用して、前記データストレージデバイスの作動温度を前記データストレージデバイスの作動中に複数の時点にて経時的に測定し、これにより、複数の温度測定値を時間関数として取得することと、
閾値を上回る温度測定値を経時的に蓄積し、高温度蓄積値を形成することと、
閾値を下回る温度測定値を経時的に蓄積し、低温度蓄積値を形成することと、
前記低温度蓄積値と前記高温度蓄積値とを比較することと、
前記高温度蓄積値が前記低温度蓄積値に関して高すぎるという前記比較の結果に応答して、作動温度を下げるアクションを始めることと
を実行するよう構成されている、温度コントローラ。
【請求項10】
回路をさらに含み、前記回路は、前記比較の結果が、前記低温度蓄積値が前記高温度蓄積値に関して十分に高いというものであれば、前記データストレージデバイスのパフォーマンスを上げることを実行するよう構成されている、請求項9に記載の温度コントローラ。
【請求項11】
前記高温度蓄積値を形成することは、前記閾値温度を上回る温度測定値の第1の積分値を時間関数として計算することを含み、
前記低温度蓄積値を形成することは、前記閾値温度を下回る温度測定値の第2の積分値を時間関数として計算することを含み、
前記低温度蓄積値と前記高温度蓄積値とを比較することは、前記低温度蓄積値と前記高温度蓄積値との間の比を計算することを含む、請求項9又は10に記載の温度コントローラ。
【請求項12】
さらに回路を含み、
前記回路は、
第1のタイマと、
カウンタと、
を実行するよう構成されており、
前記測定された温度が第1の時点にて前記閾値温度を上回るのであれば、前記測定された温度が前記閾値温度を上回る度数に比例して前記カウンタ
が増や
され、
前記測定された温度が前記第1の時点にて前記閾値温度を下回るのであれば、前記測定された温度が前記閾値温度を下回る度数に比例して前記カウンタ
が減ら
され、
前記カウンタが所定の閾値カウンタ値を上回るのであれば、前記高温度蓄積値が前記低温度蓄積値に関して高すぎると判定
される、請求項9又は10に記載の温度コントローラ。
【請求項13】
さらに回路を含み、
前記回路は、
前記測定された温度が前記閾値温度を上回ってから前記閾値温度を下回った際の第1の時点から、前記測定された温度が次に前記閾値温度を下回ってから前記閾値温度を上回った際の第2の時点までの、第1の時間間隔を測定するための第2のタイマと、
前記第1の時間間隔を所定の最短時間間隔と比較することと、
前記第1の時間間隔が前記所定の最短時間間隔よりも短ければ、作動温度を下げるさらなるアクションが必要とされ得ることのインジケーションを発行することと
を実行するよう構成されている、請求項9から12のいずれか一項に記載の温度コントローラ。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一項に記載の温度コントローラ(30)を含むデータストレージデバイス。
【請求項15】
処理能力を有するデバイス上にて実行されると請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実施する命令が保存されている、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データストレージデバイスにおける温度の制御に関する。これは特に、ハードディスクドライブなどのデータストレージデバイスにおいてパフォーマンス要件と冷却要件とのバランスをとることに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブなどのデータストレージデバイスは通常、作動していないときや、同様に、作動中にそれらが耐えることができる温度に対する限度を有する。ストレージデバイスが作動中でなく、単に保管されている場合、許容温度範囲は一般的に、作動中のそれよりも広く、ストレージデバイスの実際の温度は本質的に、周囲温度の影響を受ける。
【0003】
ハードディスクドライブの許容作動温度範囲はしばしば、0から60℃、又は、0から70℃であり得る。ソリッドステートドライブは、同様の許容作動温度範囲を有する。周囲温度に加えて、作動中のストレージデバイスの実際の温度はまた、ストレージデバイス上のワークロードや、ファンの作動などの冷却活動の影響を受ける。作動温度範囲の限度は一般的に、ストレージデバイスの所望する又は期待する寿命中に信頼性の高い作動を維持できるように設定される。ストレージデバイスの信頼性又は耐久性は、平均故障間隔(mean time between failures又はMTBF)の点において判定され得る。したがって、最低及び最高作動温度は、十分に長いMTBFを確保するように設定され得る。作動中、最低作動温度は実際には、限定的なものにはならない。なぜならストレージデバイスは、それが起動するとすぐに熱を発するからである。より重視されるものは、最高作動温度である。ストレージデバイスを最高作動温度未満に維持するために、ファンなどの冷却装置が、ストレージデバイスの作動温度を下げるために使用され得る。ストレージデバイス上のワークロードを減らすことはまた、周囲温度が最高作動温度を十分に下回っている場合に、作動温度を下げることができる方法である。
【0004】
データストレージデバイスを最高作動温度未満に維持することは、多大な冷却アクションを必要とし得る。これはつまり、パワフルなファンを必要とし得る。これは、ストレージシステムのコストを増やし、大量の電力を消費する。さらに、ファンは摩耗し、ノイズを発する。ストレージデバイスの作動温度を調節することはまた、ストレージデバイス上のワークロードを減らす必要がある場合に、所望するパフォーマンスよりも低いパフォーマンスを導き得る。これはつまり、必要とする利用可能な容量を常に確かなものとすることが可能な、さらなるストレージデバイスに対する要望を導き得る。これにより、ストレージのコストが上がり、さらなるスペースが占められる。
【0005】
より高い作動温度に耐えることができるデータストレージデバイスを設計することは可能であるが、冷却装置及び冗長なストレージデバイス容量などの、追加的コストが必要となる。
【0006】
データストレージデバイスの作動温度を制御する効率的な方法に対する需要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、データストレージデバイスの作動温度を制御する効率的な方法を提供することである。別の目的は、冷却の必要性とストレージデバイスのパフォーマンスとの間のより良好なバランスを提供することを可能にする温度制御方法を提供することである。さらに別の目的は、ストレージデバイスのより良好な使用を可能にする温度制御方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的はまた、ストレージデバイスの作動温度のより効率的な制御を可能にする、ストレージデバイスの作動温度を制御するための温度コントローラを提供することである。さらなる目的は、ストレージデバイスを長期間にわたって安全に作動させつつ、冷却に対する必要性とストレージのパフォーマンスとのバランスをとることを可能にする温度コントローラを提供することである。
【0009】
第1の態様によると、データストレージデバイスの作動温度を制御する方法により、これら及び他の目的が、完全に、又は、少なくとも部分的に、達成される。この方法は、閾値温度をストレージデバイスのために設定することと、データストレージデバイスの作動中に、ストレージデバイスの作動温度を複数の時点にて経時的に測定し、これにより、複数の温度測定値を時間関数として取得することと、閾値を上回る温度測定値を経時的に蓄積し、高温度蓄積値を形成することと、閾値を下回る温度測定値を経時的に蓄積し、低温度蓄積値を形成することと、低温度蓄積値と高温度蓄積値とを比較することと、比較の結果が、高温度蓄積値が低温度蓄積値に関して高すぎるというものであれば、作動温度を下げるアクションを始めることと、を含む。そのような方法は、ストレージデバイスの所望する寿命を確保しながらもストレージ容量の効率的な使用と冷却を行うことができるよう、ストレージデバイスの作動温度を制御することを可能にする。温度閾値を上回る作動温度の期間を、閾値を下回る作動温度の期間と比較することにより、製造業者により指定された最高許容作動温度を下回って常に作動させることに必ずしも制限されることなく、データストレージデバイスの安全な作動を確かなものとすることができる。このようにして、ストレージデバイスはより良好な使用に置かれて得る。
【0010】
このコンテキストにおいて、「高すぎる(too high)」とは、高温度蓄積値と低温度蓄積値との間の比率が基準比率を上回る、又は、高温度蓄積値と低温度蓄積との間の差異が所定の閾値カウンタ値を上回ることを意味する。
【0011】
以下では、データストレージデバイスは時に、ストレージデバイスと単に呼ぶ場合がある。
【0012】
作動温度を下げるアクションは、冷却装置を起動させること、冷却装置のパフォーマンスを上げること、又は、データストレージデバイスのパフォーマンスを下げること、の群からの少なくとも1つであってよい。
【0013】
1つの変形形態では、この方法はさらに、比較の結果が、低温度蓄積値が高温度蓄積値に関して十分に大きいというものであれば、データストレージデバイスのパフォーマンスを上げることを含む。このようにして、そうすることが安全なのであれば、向上したパフォーマンスがデータストレージデバイスから取得され得る。
【0014】
この方法のいくつかの変形形態では、高温度蓄積値は、閾値温度を上回る温度測定値の第1の積分値を時間関数として計算することにより形成される。低温度蓄積値は、閾値温度を下回る温度測定値の第2の積分値を時間関数として計算することにより形成される。低温度蓄積値と高温度蓄積値とを比較することは、低温度蓄積値と高温度蓄積値との間の比率を計算することにより行われる。これは、閾値温度を上回る作動温度の期間を、閾値温度を下回る作動温度の期間と比較し、ストレージデバイス上の熱負荷が高すぎるものでないことを確かなものとできるようにする実際的な方法である。
【0015】
蓄積することと、比較することとは、タイマを起動させることを含んでよい。測定された温度が第1の時点にて閾値温度を上回るのであれば、この方法は、測定された温度が閾値温度を上回る度数に比例してカウンタを増やすことを含んでよい。測定された温度が第1の時点にて閾値温度を下回るのであれば、この方法はその代わりに、測定された温度が閾値温度を下回る度数に比例してカウンタを減らすことを含んでよい。カウンタが所定の閾値カウンタ値を上回るのであれば、比較の結果は続いて、高温度蓄積値が低温度蓄積値に関して高すぎるというものであってよい。
【0016】
この方法はさらに、測定された作動温度を、閾値温度よりも高い最高許容温度と比較することと、、測定された作動温度が最高許容温度を上回るのであれば、作動温度を下げるアクションを始めることと、を含んでよい。したがって、ストレージデバイスの作動温度は、長期間にわたる熱負荷に基づくだけでなく、より直近の熱負荷にも基づいて調節され得、信頼性の高い作動を維持できることを確かなものとする。
【0017】
いくつかの変形形態では、この方法はさらに、測定された作動温度が閾値温度を上回ってから閾値温度を下回った際の第1の時点から、測定された作動温度が次に閾値温度を下回ってから閾値温度を上回った際の第2の時点までの第1の時間間隔を測定することと、第1の時間間隔を所定の最短時間間隔と比較することと、第1の時間間隔が所定の最短時間間隔よりも短ければ、作動温度を下げるさらなるアクションが必要とされ得ることのインジケーションを発行することと、を含む。冷却すること又はワークロードを減らすことなどの作動温度を下げるアクションが続き、作動温度が閾値温度を下回っても、その行われた温度を下げるアクションは、閾値温度を下回る作動温度をいずれの時間の長さにわたって維持するためには不十分な場合があり得る。作動温度をさらに下げて、作動温度に対するアクションがめったに適用され得ないようにすることは、より効率的であり得る。例えば、ファンを5分間にわたって常時運転することは、1分間にわたるファンの運転を短い間隔にて数度行うことよりも、ユーザにとってはさほど煩わしいものではない場合がある。さらに、閾値温度を上回る温度にすぐに戻ることは、データストレージデバイス上のさらなる負担となり得、MTBFが下がるようになる。
【0018】
この方法はさらに、ストレージデバイスの作動中の誤差をモニターすることと、誤差の発生に基づいて、閾値温度又は作動温度を下げるアクションの少なくとも1つを調整することと、を含んでよい。そのようなアプローチは、データストレージデバイス、又は、データストレージデバイスの作動温度を制御するための温度コントローラの設計中に有益であり得る。例えば、製造業者は、それを用いてストレージデバイスがマークされる閾値温度を適合させる場合がある。誤差をモニターすることに基づいて調整を行うことはまた、データストレージデバイスの作動中に行うことができ、温度制御が適合され、ストレージデバイスの安全な作動をより良好に確かなものとすることができるようになる。ストレージデバイスの作動時間が長いほど、それが温度上昇にさらされることが増える場合がある。誤差の発生をモニターすることにより、ストレージデバイスが古くなっても、閾値温度を必要に応じて下方に調整することができる。
【0019】
第2の態様によると、上記の目的は、データストレージデバイスの作動温度を制御するための温度コントローラを用いて、完全に、又は、少なくとも部分的に達成される。温度コントローラは温度センサを含む。温度コントローラはさらに回路を含む。この回路は、閾値温度をストレージデバイスのために設定するための閾値温度設定機能と、温度センサを使用して、ストレージデバイスの作動温度をストレージデバイスの作動中に複数の時点にて経時的に測定し、これにより、複数の温度測定値を時間関数として取得するための温度測定機能と、閾値を上回る温度測定値を経時的に蓄積し、高温度蓄積値を形成するための高温度蓄積機能と、閾値を下回る温度測定値を経時的に蓄積し、低温度蓄積値を形成するための低温度蓄積機能と、低温度蓄積値と高温度蓄積値とを比較するための比較機能と、比較の結果が、高温度蓄積値が低温度蓄積値に関して高すぎるというものであれば、作動温度を下げるアクションを始めるための、作動温度を下げる機能と、を実行するよう構成されている。そのような温度コントローラにより、ストレージデバイスの所望する寿命中に安全な作動を確かなものとし得るような方法にて、ストレージデバイスの作動温度を制御することが可能となり得る。温度コントローラは、作動温度をよりフレキシブルに制御し、作動温度が閾値温度を過剰に長く上回ることのない限り、又は、そのことが履歴的に高すぎることのない限り、作動温度が時に閾値温度を上回ることを可能にし得るようにすることを可能にする。したがって、単なる瞬間的な作動温度ではなく、ストレージデバイス上の寿命にわたる熱負荷が考慮される。これは、ファン及び他の冷却装置をより効率的に使用することを可能にし得、より良好なパフォーマンスをデータストレージデバイスから得ることを可能にし得る。
【0020】
温度コントローラはさらに回路を含んでよい。この回路は、比較の結果が、低温度蓄積値が高温度蓄積値に関して十分に高いというものであれば、ストレージデバイスのパフォーマンスを上げるための、パフォーマンスを上げる機能を実行するよう構成されている。温度コントローラはしたがって、ストレージデバイス上の熱負荷が高すぎることがないことを確かなものとするだけでなく、ストレージデバイスのパフォーマンスが不必要に低くならないことを確かなものとすることも可能にする。
【0021】
高温度蓄積機能は、閾値温度を上回る温度測定値の第1の積分値を時間関数として計算することにより、高温度蓄積値を形成するよう構成されていてよい。低温度蓄積機能は、閾値温度を下回る温度測定値の第2の積分値を時間関数として計算することにより、低温度蓄積値を形成するよう構成されていてよい。そのような実施形態では、比較機能は、低温度蓄積値と高温度蓄積値との間の比率を計算することにより、低温度蓄積値と高温度蓄積値とを比較するよう構成されている。積分値と、それらの積分値の間の比率と、を計算することは、高温度蓄積値が低温度蓄積値に関して高すぎるかを判定する、数学的に明快な方法である。
【0022】
いくつかの実施形態では、温度コントローラはさらに回路を含む。この回路は、第1のタイマ機能と、カウンタ機能と、を実行するよう構成されている。そのような実施形態では、高温度蓄積機能は、測定された温度が第1の時点にて閾値温度を上回るのであれば、測定された温度が閾値温度を上回る度数に比例してカウンタを増やすよう構成されている。低温度蓄積機能は、測定された温度が第1の時点にて閾値温度を下回るのであれば、測定された温度が閾値温度を下回る度数に比例してカウンタを減らすよう構成されている。比較機能は、カウンタが所定の閾値カウンタ値を上回るのであれば、高温度蓄積値が低温度蓄積値に関して高すぎることを判定するよう構成されている。これは、低温度蓄積値に関して高温度蓄積値の挙動をモニターするシンプルで信頼性の高い方法を提供する。
【0023】
温度コントローラはさらに回路を含んでよい。この回路は、測定された温度を最高許容温度と比較するための温度比較機能を実行するよう構成されている。作動温度を下げる機能はさらに、測定された温度が最高許容温度を上回るのであれば、作動温度を下げるアクションを始めるよう構成されていてよい。最高許容温度は閾値温度よりも高い。温度はここで、長期間にわたる熱負荷に基づくだけでなく、それを超えてストレージデバイスの作動が行われるべきでない、より高い温度にも基づいて制御されてよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、温度コントローラはさらに回路を含む。この回路は、測定された温度が閾値温度を上回ってから閾値温度を下回った際の第1の時点から、測定された温度が次に閾値温度を下回ってから閾値温度を上回った際の第2の時点までの第1の時間間隔を測定するための第2のタイマ機能と、第1の時間間隔を所定の最短時間間隔と比較するための時間比較機能と、第1の時間間隔が所定の最短時間間隔よりも短ければ、作動温度を下げるさらなるアクションが必要とされ得ることのインジケーションを発行するためのインジケータ機能と、を実行するよう構成されている。ストレージデバイスは、作動温度が閾値温度をしばしば上回るのであれば、高温度蓄積値と低温度蓄積値との比較により判定されるように、合計熱負荷が履歴的に許容可能であっても、より急速に消耗する場合がある。追加的に、ファンなどの冷却リソースは、作動温度が一度に長期間にわたって閾値温度を下回って維持されていれば、より効率的に使用され得る。
【0025】
温度コントローラはさらに回路を含んでよい。この回路は、ストレージデバイスの作動中に誤差をモニターするための、誤差をモニターする機能と、誤差の発生に基づいて、閾値温度及び作動温度を下げるアクションの少なくとも1つを調整するための調整機能と、を実行するよう構成されている。誤差が許容可能な頻度よりも多く発生すると、閾値温度はより低く設定される必要があり得る。又は、作動温度を下げるアクションは、よりパワフルなものとされる必要があり得る。これは、ストレージデバイス又は温度コントローラの設計中に有益であり得る。これはまた、ストレージデバイスの作動中に有益であり、温度制御の適合を必要に応じて可能にし得る。
【0026】
第3の態様によると、上記の目的は、第2の態様に係る温度コントローラを含むデータストレージデバイスを用いて、完全に、又は、少なくとも部分的に達成される。データストレージデバイスは一般的に、第2の態様の温度コントローラと同じ方法にて、付随する利点と共に具現化され得る。
【0027】
第4の態様によると、上記の目的は、処理能力を有するデバイス上にて実行されると、第1の態様に係る方法を実施する命令が保存されている、非一時的コンピュータ可読記憶媒体を用いて、完全に、又は、少なくとも部分的に達成される。記憶媒体は一般的に、第1の態様の方法と同じ方法において異なり得る。
【0028】
本発明の適用性のさらなる範囲が、以下の詳細説明より明らかとなるであろう。しかし、本発明の好適な実施形態を示す一方で、詳細説明及び具体例は、説明のみの目的に提供されていることが理解されるべきである。なぜなら、本発明の範囲内での種々の変更及び改修が、本詳細説明から当業者に明らかとなるからである。
【0029】
したがって、本発明は、記載するデバイスの特定の構成部品、又は、記載する方法の特定のステップに限定されず、そのようなデバイス及び方法は異なる場合があることが理解されよう。ここに使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定を意図していないこともまた理解されよう。なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されるように、不定冠詞「a」及び「an」、定冠詞「the」、及び「said」は、他の例が文脈により明確に決定づけられない限り、要素が1つ又はそれ以上あることを意味するよう意図していることに注意されたい。したがって、例えば、「あるオブジェクト(an object)」又は「そのオブジェクト(the object)」が引用される場合、これは、いくつかのオブジェクトなどを含んでよい。さらに、「含む(comprising)」という語は、他の要素又はステップを排除しない。
【0030】
本発明を、例示のために、そして、添付の概略図面を参照して、以下にさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、データストレージデバイスを含むシステムの図である。
【
図2a】
図2aは、
図1のデータストレージデバイスにおける作動温度の変動を示すグラフである。
【
図2b】
図2bは、
図1のデータストレージデバイスにおける作動温度を制御するために従来技術の方法が使用された場合の作動温度の変動を示すグラフである。
【
図2c】
図2cは、高温度蓄積値と低温度蓄積値とを示すグラフである。
【
図2d】
図2dは、本発明の方法の変形形態に係る、作動温度の変動を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の変形形態に係る温度制御方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の温度コントローラの実施形態のブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る温度コントローラを含むストレージデバイスの実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、ビデオ監視システム1を示す。そのようなビデオ監視システムのコンテキストにおいて本発明を説明する。本発明はしかし、いずれの方法にてビデオ監視に限定されず、一般的にデータストレージデバイスに適用可能であり、それらはネットワークに接続されることもあればされないこともあることが認められるべきである。
【0033】
ビデオ監視システム1は、ネットワーク3に接続された複数のネットワークカメラ2を含む。ネットワーク3は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、又はセルラーネットワークなどの有線又は無線のいずれの種類のネットワークであり得る。カメラ2により撮像されたビデオは、カメラ2にローカルに保存され得る。より重要なことには、撮像されたビデオは、カメラ2によりネットワーク3を介してコントロールセンター4などのリモートサイトに送信され得る。コントロールセンター4には、受信したビデオを閲覧したり保存したりするための機器がある。ビデオ管理システムを実行するコンピュータ5があり得る。これはオペレータに、受信したビデオをディスプレイ6上にて閲覧する機会を提供する。ビデオは、それが受信されるとライブにて閲覧され得る。代替的に、又は追加的に、受信したビデオは、レコーダ7に保存され得る。
【0034】
ビデオは、例えば、カメラ2が置かれたエリアにて犯罪があったことが報告されると、閲覧又は解析のために後の時点にて回収する必要があり得る。そのような点において、関連するシーンのビデオを関連する時間にカメラが撮像しており、撮像されたビデオがコントロールセンター4に安全に送信されることが重要である。これらの、ビデオの作成の部分はしかし、本発明に対して特定の関連性はなく、したがってさらに説明することをしない。
【0035】
このコンテキストにおいてより重視することは、ビデオのストレージである。レコーダ7は、1つ又はそれ以上のストレージデバイス8を含む。この例では、ストレージデバイスはハードディスクドライブである。関連するビデオが必要な時に利用可能であることを確かなものとできるようにするために、ストレージデバイス8の信頼性の高い作動を確かなものとする必要がある。カメラ2から受信したビデオデータは、ハードディスクドライブ8上に安全に書き込まれる必要がある。さらに、ビデオデータは一度書き込まれると、安全に保存されなければならず、必要な時に回収可能でなければならない。
【0036】
ハードディスクドライブは使用により、時間と共に消耗する。ハードディスクドライブ及び他のデータストレージデバイスのサービス寿命に影響する1つのファクターは、温度である。高い温度は、MTBFを短くする傾向がある。製造業者はしたがって、ハードディスクドライブを保管できる温度と、ハードディスクドライブを作動させることができる温度と、に対する限度を設定する。上述するように、作動中の本質的な課題は、許容作動温度範囲の上限のみである。
【0037】
ハードディスクドライブを過熱から保護するため、作動温度がモニターされる。作動温度が最高許容作動温度を上回ると、温度を下げるアクションがとられる。そのような作動温度を下げるアクションは、冷却ファン又は他の冷却装置をオンにすること、又は、そのような冷却装置のパワーを上げることであり得る。作動温度を下げる他の可能なアクションは、ハードディスクドライブ8のパフォーマンスを下げることを含む、又は、それをオフにすることでさえも含む。レコーダ7において1つを超えるハードディスクドライブ8がある場合、ハードディスクドライブは、送られてくるビデオデータを順番に保存し得る。これにより、データが他のものに書き込まれている間に、1つのハードディスクドライブを冷却することができる。
【0038】
このアプローチは過度に慎重なものであり、作動温度を下げるアクションがより多く、必要以上にとられることを発明者は見いだした。作動温度制御が過剰なものであると、冷却装置のコストが不必要に高くなり、冷却のための電力消費が大きくなる。また、データストレージデバイスのパフォーマンスが下がり、冗長なストレージデバイスのためにコストがより高くなる。製造業者により指定された最高許容作動温度又は閾値温度未満にハードディスクドライブを厳密に維持することよりも、閾値温度を上回る温度負荷が、閾値温度を下回る作動の期間と比較して高すぎることのない限り、作動温度は、その閾値温度を一時的に超えることが許される場合があることを発明者は見いだした。換言すると、ストレージデバイスがその回復のために十分な期間を得るのであれば、閾値温度を上回る作動は限られた期間にわたって許容可能である。したがって、本発明によると、データストレージデバイス上の履歴的な熱負荷をモニターする必要があり、作動温度を下げるアクションを用いての、閾値温度を下回る作動により、閾値温度を上回る作動のバランスをとる必要がある。
【0039】
ストレージデバイス8の温度制御をまず、
図2aを参照してここに説明する。これは、ストレージデバイス8の作動温度が温度制御なくどのように変動し得るかの1つの例を示す。
【0040】
高周囲温度の期間には作動温度Topが上がり、低周囲温度の期間には作動温度Topは下がる。さらに、例えば、大量のビデオデータがハードディスクドライブ8に書き込まれる際、及び、大量のビデオデータがハードディスクドライブ8から読み出される際などの、ストレージデバイス上における高ワークロードの期間には、作動温度Topが上がる。温度制御が適用されなければ、高周囲温度と高ワークロードとの不適当な組み合わせが、ハードディスクドライブ8に弊害をもたらす作動温度を導く場合がある。その結果として、ハードディスクドライブの期待するサービス寿命が短くなる場合があり、データを失ったり、ハードディスクドライブ8の修理又は交換のためのコストがかかったりする。
【0041】
先述するように、温度制御のいくつかの形態が通常、ハードディスクドライブ8などのストレージデバイスを保護するために適用される。
図2bは、ハードディスクドライブ8の作動温度の変動の別の例を示す。追加的に、製造業者により指定された作動温度範囲の上限T
limitを、水平の点線により示す。この例では、ハードディスクドライブ8の作動温度T
opがモニターされ、それが上限T
limitに到達するといつでも、作動温度を下げるアクションがとられる。したがって、ファン又は他の冷却装置が起動され得る、又は、冷却パワーが上げられ得る。代替的に、又は追加的に、ハードディスクドライブ8上のワークロードが減らされ得る。このようにして、作動温度が下がる。作動温度T
opが所定の量だけ下がると、作動温度を下げるアクションは終了する。
【0042】
図2aの調節のない例からわかるように、作動温度は、周囲温度及びワークロードに依存して上下する。作動温度を下げるアクションの適用がなくとも、ワークロード自体が単に減ることにより、及び、周囲温度の低下が自然に起こることにより、上限T
limitを上回った後に、作動温度は時にそれ未満に戻るということが認められるべきである。これは、アクティブな冷却と、データストレージデバイスのパフォーマンスを強制的に下げることと、の必要性を減らす利点として使用され得ることを発明者は見いだした。ハードディスクドライブ8は、上限を上回る熱負荷のバランスが、作動温度範囲の上限を下回る作動により履歴的にとれている限り、高い作動温度であっても限られた期間であれば、その作動を許される場合がある。
【0043】
この熱負荷のバランスをとることを、
図2cを参照してここに説明する。繰り返しになるが、作動温度の変動の1つの例を示す。水平線は、作動温度制御スキームにおいて使用される閾値温度T
thを示す。この閾値温度は、ハードディスクの製造業者により指定された作動温度範囲の上限T
limitと同じであってもよく、又は、そうでなくともよい。閾値温度T
thを下回る網掛けエリアを、V
lowとして記す。これは、閾値温度T
thを下回る温度負荷を示す。一方、閾値温度を上回る網掛けエリアを、V
highとして記す。これは、閾値温度T
thを上回る温度負荷を示す。閾値温度T
thを下回る温度負荷は、低温度蓄積値V
lowにより表され得る。閾値温度T
thを上回る温度負荷は、高温度蓄積値V
highにより表され得る。低温度蓄積値V
lowと高温度蓄積値V
highとは、以下にさらに説明するように、いくつかの異なる方法の1つにて判定され得る。それらがどのように判定又は計算されようとも、それらはなんらかの方法により、作動温度によりハードディスクドライブ8上にもたらされる負荷又はストレスを表す。低温度蓄積値V
lowと高温度蓄積値V
highとはそれぞれ、作動温度T
opがどれぐらいの期間にわたって、及び、どれだけ、閾値温度T
thを下回ったか、又は、これを上回ったかを反映する。
【0044】
作動温度Topは、作動中及び現在の時間t0にてモニターされる。作動温度を下げるアクションに対する潜在的な必要性が、低温度蓄積値Vlowと高温度蓄積値Vhighとの比較に基づいて判定される。高温度蓄積値Vhighが低温度蓄積値Vlowと比較して十分に小さければ、いずれの作動温度を下げるアクションをとる必要がないと判定される。一方、高温度蓄積値Vhighが低温度蓄積値Vlowと比較して高すぎるというものであることがわかると、作動温度を下げるアクションが始まる。したがって、ファンが起動され得る。又は、ファンがすでに起動していれば、その速度が上げられ得る。ハードディスクドライブが、ペルチェ素子などの別の冷却装置を備えていれば、それが同様に起動されてよい、又は、そのような冷却装置のパフォーマンスが上げられてよい。ハードディスクドライブ8の作動温度を下げる別の考えられる方法は、その上のワークロードを減らすことである。したがって、ハードディスクドライブ8への書き込みが一時的に停止されてよく、その代わりに、データは、RAMにバッファされる、又は、別のハードディスクドライブに書き込まれる。同様に、ハードディスクドライブ8からデータを読み出すことが中断され得る。作動温度Topが所定の低温度Tredまで下がると、作動温度を下げるアクションは終了する。
【0045】
低温度蓄積値V
lowと高温度蓄積値V
highとは、経時的に測定された作動温度T
opの積分値として計算されてよい。低温度蓄積値V
lowは、作動温度が閾値温度T
thを下回る場合に、時間関数として、作動温度の積分値として計算される。これは、以下のように表され得る:
【0046】
高温度蓄積値T
highは、作動温度T
opが閾値温度T
thを上回る(又は、これに等しい)場合に、時間関数として、作動温度の積分値として計算される。これは、以下のように表され得る:
【0047】
高温度蓄積値T
highと低温度蓄積値T
lowとの間の比率Rが続いて計算される:
【0048】
比率Rは基準比率Rrefと比較される。計算された比率Rが基準比率Rrefを上回るのであれば、高温度蓄積値Vhighは、低温度蓄積値Vlowと比較して高すぎる。換言すると、ハードディスクドライブ8上の温度負荷は現在の時間t0まで、高すぎとなるまで増えている。これは、利用可能な作動温度を下げるアクションの1つ又はそれ以上により作動温度Topを下げる必要があることを意味する。反対に、計算された比率Rが基準比率Rrefを下回るのであれば、ハードディスクドライブ8上の温度負荷は現在の時間まで、許容可能なものとなっており、作動温度Topを下げる必要はない。
【0049】
低温度蓄積値V
lowと高温度蓄積値V
highとは、数学的に厳密な意味においては、積分値の計算により判定される必要はない。その比較は同様に、厳密に言って、比率の計算として行われる必要はない。実際の実装では、低及び高温度蓄積値V
low、V
highの判定とその比較とは、
図2c及び
図4を参照して以下に説明するように行われてよい。温度コントローラ30におけるタイマ21が好ましくは、ハードディスクドライブ8が作動中となっている時に起動される。1分毎又は5分毎などの所定の時間間隔にて、ハードディスクドライブ8の作動温度T
opが測定される。ハードディスクドライブ8上の温度負荷の追跡を維持するために、カウンタ22が使用される。測定された温度T
opが閾値温度T
thを下回るか上回るかにより、カウンタ22は減らされたり増やされたりする。したがって、測定された作動温度T
opが第1の時点t
1にて閾値温度T
thを上回っていれば、カウンタは1つだけ増やされる。続いて次の測定にて、温度が第2の時点t
2にて依然として閾値温度T
thを上回っていれば、カウンタ22は再度1つだけ増やされる。一方、温度が第2の時点t
2にて閾値温度T
thを下回っていれば、カウンタ22は1つだけ減らされる。熱負荷をより正確にモニターすることのために、タイマ21を増やすことと減らすこととは、作動温度がどれほど閾値温度T
thを上回っているのか、又は、これを下回っているのかに比例して行われる必要がある。例えば、作動温度T
opが第1の時点にて閾値温度T
thを2度(摂氏)上回っていれば、カウンタ22は2つだけ増やされる。作動温度T
opが第2の時点にて閾値温度T
thを1度(摂氏)上回っていれば、カウンタは再度1つだけ増やされる。これにより、第1の時点t
1の前よりも3つ多い値が与えられる。カウンタ22を減らすことは、この増やすことと同じ比例性を用いて行われてもよいし、そのように行われなくともよい。その最もシンプルな形態では、作動温度が第1の時点t
1にて閾値温度T
thを1度(摂氏)下回っていれば、カウンタ22は1つだけ減らされてよい。作動温度T
opが閾値温度を2度(摂氏)下回っていれば、カウンタ22は2つだけ減らされてよい。この比例性はしかし、異なるものでなければならないことが、ハードディスクドライブの信頼性の検討により示され得る。なぜなら、過剰温度の各度数は、違った度数だけオフセットさせる、又は、閾値温度T
thを下回ってマイナスとする必要があり得るからである。単なる1つの例として、閾値温度T
thを1度上回る作動温度T
opでの5分間を、閾値温度T
thを1度下回る作動温度T
opでの5分間を用いて補償することが可能な場合がある。この例を続けると、閾値温度を5度上回る作動温度T
opでの5分間を、閾値温度T
thを5度下回る作動温度T
opでの5分間、又は、閾値温度T
thを1度下回る作動温度T
opでの25分間を用いて補償することが不可能な場合がある。その代わりに、閾値温度T
thを下回るより長い期間を用いて、より高い過剰温度を補償することが必要な場合がある。単なる1つの例として、閾値温度T
thを5度上回る作動温度での5分間は、閾値温度T
thを少なくとも5度下回る10分間、又は、閾値温度T
thを少なくとも1度下回る作動温度T
opでの1時間を用いて補償することが必要な場合がある。
【0050】
高温度蓄積値Vhighと低温度蓄積値Vlowとの比較は、カウンタ値Cを所定の閾値カウンタ値Cthと比較することにより行われる。所与の時点でのカウンタ値Cが所定の閾値カウンタ値よりも高ければ、これは、ハードディスクドライブ8上の履歴的な温度負荷が高すぎなものであり、作動温度を下げるアクションが必要とされていることを示す。繰り返しになるが、カウンタ値Cが閾値カウンタ値Cthよりも低ければ、これは、ハードディスクドライブ上の履歴的な温度負荷が許容可能であることを示す。その場合には、作動温度を下げるアクションは不要である。
【0051】
低及び高温度蓄積値V
low、V
highを判定することと、その比較と、に実際に使用される方法に関わらず、上記の温度制御方法は、
図2dに示すように、最高許容温度T
maxの形態での絶対温度の限度により補充され得る。最高許容温度T
maxは、履歴的な温度負荷がどんなものであろうと、ハードディスクドライブがそれを上回ることが許されない温度である。したがって、最高許容温度T
maxに関する制御は本質的に、本出願の背景技術セクションにおいて説明した従来技術の温度制御のアプローチと同じ方法にて行われる。作動温度T
opが最高許容温度T
maxに到達すると、作動温度を下げるアクションが開始される。これは、作動温度が十分に下がるまで続く。
【0052】
新たな温度制御のアプローチを、
図3のフローチャートの助けを借りてここにまとめる。第1のステップS1では、閾値温度T
thがハードディスクドライブ8のために設定される。これは、ハードディスクドライブ8の製造業者によって予めプログラムされてよい。ストレージドライブの作動中、ステップS2にて、ハードディスクドライブ8の作動温度T
opが複数の時点にて測定される。これにより、作動温度T
opが経時的にモニターされ、複数の温度測定値を時間関数として与える。ステップS2にて測定された作動温度T
opが閾値温度T
thを上回ると、ステップS3aにて、そのような閾値温度測定値が蓄積され、高温度蓄積値V
highを形成する。測定された作動温度T
opがその代わりに閾値温度T
thを下回ると、ステップS3bにて、そのような閾値を下回る温度測定値が蓄積され、低温度蓄積値V
lowを形成する。蓄積ステップS3a及びS3bから測定ステップS2に戻る矢印は、これらのステップが経時的に繰り返され、作動温度T
opの履歴的な記録を作成するために、蓄積値V
low、V
highを更新することを示す。
【0053】
ステップS4では比較が行われる。ここでは、低温度蓄積値Vlowと高温度蓄積値Vhighが比較される。比較の結果が、高温度蓄積値Vhighが低温度蓄積値Vlowに関して高すぎるというものであれば、ステップS5にて、作動温度を下げるアクションが始まる。
【0054】
これまでこのように説明した方法の1つの変形形態では、ハードディスクドライブのパフォーマンスを上げることを可能にする追加的なステップが加えられてよい。オプションのステップS6では、ステップS4での比較の結果が、低温度蓄積値Vlowが高温度蓄積値Vhighに関して十分に大きいというものであれば、データを書き込みする速度、又は、これを読み出す速度が上げられるなど、ハードディスクドライブのパフォーマンスが上げられる。このようにして、ハードディスクドライブ8上の履歴的な熱負荷が低ければ、ユーザは、ハードディスクドライブのより高いパフォーマンスをまかなうことができる。
【0055】
作動温度を下げるアクションがどれほど良好に機能しているかの追跡を維持するために、タイマ21又は追加的なタイマがまた使用されてよい。作動温度がその過程において閾値温度Tthを下回ってから、作動温度が再度閾値温度Tthを上回るまでの時間を測定することにより、ハードディスクドライブが冷却されてから再度過度に早く過熱したかが検出され得る。ハードディスクドライブ8が閾値温度Tthを下回って作動している時間間隔が短い、つまり、それが所定の最短時間間隔よりも短ければ、これは、すでに取られている、作動温度を下げるアクションが不十分であることを意味する場合がある。この効果に対するインジケーションがしたがって発行されてよい。これは、将来における作動温度を下げるアクションを調整することを可能にする。これは、温度制御方法をユーザ入力によって調整できれば、そのハードディスクドライブのユーザと、ハードディスクドライブ、又は、ハードディスクドライブ用の温度コントローラの製造業者と、の双方にとって有益であり得る。なぜならこれは、設計中に入力として使用され得るからである。閾値温度Tthを上回る作動の期間の間の短い間隔は、ハードディスクドライブ8に弊害をもたらすことがある。なぜなら、温度の頻繁な変化は、ハードディスクドライブ上に過剰なストレスを与える場合があるからである。
【0056】
ハードディスクドライブの作動における誤差は、継続して又は定期的にモニターされてよい。誤差が発生した場合、又は、誤差の発生が許容できないほど頻繁にある場合、温度制御スキームに対する調整が行われ得る。したがって、閾値温度Tthが調整され得る。より具体的には、これが下げられ得る。代替的に、又は追加的に、温度を下げるアクションが調整され得る。例えば、冷却パフォーマンスが上げられる、又は、ハードディスクドライブのパフォーマンスがさらに下げられる。
【0057】
本発明の実施形態に係る温度コントローラ30を、
図4を参照してここに説明する。温度コントローラ30は、温度センサ31を有する。温度コントローラ30はまた、多くの機能を実行するよう構成されている回路32を有する。回路32は、中央処理ユニット(central processing unit又はCPU)、マイクロコントローラ、又はマイクロプロセッサなどのプロセッサ33を含んでよい。プロセッサ33は、温度コントローラ30の機能を行うプログラムコードを実行するよう構成されている。これらの機能は、閾値温度T
thをストレージデバイス8のために設定するための閾値温度設定機能34と、温度センサ31を使用して、ストレージデバイスの作動温度をストレージデバイス8の作動中に複数の時点にて経時的に測定するための温度測定機能35と、閾値を上回る温度測定値を経時的に蓄積し、高温度蓄積値V
highを形成するための高温度蓄積機能36と、閾値を下回る温度測定値を経時的に蓄積し、低温度蓄積値V
lowを形成するための低温度蓄積機能37と、低温度蓄積値V
lowと高温度蓄積値V
highとを比較するための比較機能38と、比較の結果が、高温度蓄積値V
highが低温度蓄積値V
lowに関して高すぎるというものであれば、作動温度を下げるアクションを始めるための、作動温度を下げる機能39と、を含む。
【0058】
図4の温度コントローラ30は、上記の方法にしたがって作動する。
【0059】
任意的に、温度コントローラ30には、すでに説明したこれらの方法のバリエーションにしたがって、さらなる機能を実行する回路が備えられてよい。
【0060】
いくつかの実施形態ではしたがって、温度コントローラ30は、パフォーマンスを上げる機能40を実行するよう構成されている回路を含む。このパフォーマンスを上げる機能40は、比較機能38での比較の結果が、低温度蓄積値Vlowが高温度蓄積値Vhighに関して十分に高いというものであれば、ストレージデバイス8のパフォーマンスを上げる。上述するようにこれは、そこでの履歴的な熱負荷が低いことがわかれば、ストレージデバイスからより良好なパフォーマンスを得ることを可能にする。
【0061】
温度コントローラのオプションの温度比較機能41は、作動温度Topを最高許容温度Tmaxと比較することを可能にし得る。これにより、作動温度が最高許容温度Tmaxを上回るのであれば、作動温度を下げるアクションが始まることを確かなものとし、ハードディスクドライブ8へのダメージを防ぐ。
【0062】
温度コントローラ30はまた、温度制御方法に関して上述するように、カウンタを増やすアプローチを行って、低及び高温度測定値を蓄積することと、低及び高温度蓄積値Vlow、Vhighを比較することと、のために、第1のタイマ機能42と、カウンタ機能43と、を有してよい。第1のタイマ機能42はタイマ21を採用し得る。カウンタ機能はカウンタ22を採用し得る。
【0063】
温度コントローラ30は任意的に、作動温度Topが、それが下がった後に再度閾値温度Tthをどれほど急速に上回るかの追跡を維持することのために、第2のタイマ機能44と、時間比較機能45と、インジケータ機能46と、を有し得る。したがって、作動温度が閾値温度Tthを下回ってから閾値温度Tthを再度上回るまでの時間間隔が所定の最短時間間隔よりも短いことを時間比較機能45が判定すると、この方法のコンテキストにおいて上述するように、インジケータ機能が、作動温度を下げるさらなるアクションが必要とされ得ることのインジケーションを発行する。第2のタイマ機能44は、第1のタイマ機能が採用するものと同じタイマ21を採用し得る。又はこれは、別のタイマ(図示せず)を採用し得る。
【0064】
図5は、本発明の実施形態に係る温度コントローラ30を含むストレージデバイス8の実施形態のブロック図である。温度コントローラ30をハードディスクドライブに統合することにより、ハードディスクドライブの作動温度の安全な制御が、効率的に確かなものとされ得る。ハードディスクドライブ8がレコーダ7に含まれる場合、温度コントローラは、ハードディスクドライブ8とは別個であるものの、レコーダ7に統合されてよい。これは、レコーダ7が1つを超えるハードディスクドライブ8を有する場合に特に好適であり得る。そのような場合では、1つの温度コントローラ30が、レコーダ7における2つ又はそれ以上のハードディスクドライブ8の作動温度を制御し得る。これは、2つ又はそれ以上のハードディスクドライブに対して作動温度を下げるアクションを連携させることを可能にし、別のハードディスクドライブのパフォーマンスを下げて、安全な作動温度T
opに戻す必要がある場合に、1つのハードディスクドライブを書き込みのために利用可能にすることを確かなものとすることができるようにし得る。ハードディスクドライブの1つを予め冷却することは、そのような場合において、そこへの履歴的な熱負荷がそれを必要とする前に開始することができる。
【0065】
温度コントローラは代替的に、別個に配置されてよく、それらの作動温度を制御する必要がある、1つ又はそれ以上のハードディスクドライブ8に操作的に接続されてよい。
【0066】
温度コントローラ30は、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェア、又は、それらのいずれの組み合わせにて具現化されてよい。ソフトウェアとして具現化される場合、温度コントローラは、処理能力を有するデバイス上にて実行されると、上記の温度制御方法を実施するコンピュータコード又は命令の形態にて提供されてよい。そのようなデバイスは、例えば、中央処理ユニット(central processing unit又はCPU)、グラフィクス処理ユニット(graphics processing unit又はGPU)、集積回路に実装されたカスタムメイド処理デバイス、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit又はASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array又はFPGA)、又は別々のコンポーネントを含む論理回路であってよい、又は、それらを含んでよい。
【0067】
当業者であれば、上記の実施形態を多くの方法にて変更でき、上記の実施形態に示すような、本発明の利点を依然として使用できることが理解されるであろう。温度制御方法と温度コントローラとを、ハードディスクドライブに関して1つの例として主に説明したが、上述するように、SSDなどの他のデータストレージデバイスにも等しく適用可能である。
【0068】
さらに、上記の本説明は初期的に、ビデオ監視システムに向けられているが、これは、データが安全且つ確実に保存される必要があり得るコンテキストを説明するための1つの例である。本発明に係る温度制御のアプローチは決して、ビデオデータのストレージに限定されるものではなく、データをデータストレージデバイスに保存する必要があるいずれの状況に適用可能である。
【0069】
上述するように、温度コントローラと方法とは、ストレージデバイスが作動に供されている時間に、閾値温度を下回り、これを上回る熱負荷の追跡を維持することを開始する。本発明のいくつかの変形形態では、温度制御は、スライドする時間ウィンドウを使用して、例えば、低及び高温度蓄積値が、ストレージデバイスの寿命全体ではなく、最新の時間、日、又は月にわたって蓄積されるように適用されてよい。これは、周囲温度及びワークロードからのストレージデバイス上の温度負荷が等しく安定している、又は周期的である状況において合理的であり得る。また、ストレージデバイスが、延長された時間にわたって完全にシャットオフされていた場合に、又は、これに修理が行われていた、若しくは、回復作業が行われていた場合に、低及び高温度蓄積値の蓄積を再開することが合理的であり得る。
【0070】
本開示はデータストレージデバイスに関するが、開示する温度制御が適用され得る他の電子デバイスもあり得ることに留意されたい。そのような温度制御に対する前提条件は、そのデバイスが、閾値温度を下回る作動の十分な期間を所与として、閾値温度を上回る作動に一時的に耐えることができるタイプのものである、ということである。
【0071】
本発明は従って、ここに示す実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。