(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】基準位置設定方法及び操作検出装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0346 20130101AFI20240206BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G06F3/0346 421
G06F3/041 520
G06F3/041 532
(21)【出願番号】P 2021513514
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008769
(87)【国際公開番号】W WO2020208974
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2019074783
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆義
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-253255(JP,A)
【文献】特開2014-170511(JP,A)
【文献】特開2018-173987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0346
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像として表示された操作面における操作を検出するための基準位置を設定する基準位置設定方法であって、
3個のマーカーが三角形の頂点を成すように前記
3個のマーカーを
表示する前記操作面を
、表示部の画面を通して空中に表示する工程と、
各前記マーカーに接近する対象物をセンサが検出することによって、前記センサから前記操作面に向かって延びる第1Z軸、並びに前記第1Z軸と交差する第1X軸及び第1Y軸を有するセンサ座標系における各前記マーカーの座標値を取得する工程と、
前記取得する工程において取得した各前記座標値を、前記操作面に平行な面において互いに交差する第2X軸及び第2Y軸を有する仮座標系における各座標値に変換する工程と、
前記変換する工程において変換した各前記座標値を、前記操作面において前記第2X軸及び第2Y軸とそれぞれ平行な方向に延びる第3X軸及び第3Y軸を有するスクリーン座標系における各座標値に変換する工程と、
を備え、
前記仮座標系における各座標値に変換する工程では、
前記センサ座標系に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、前記センサ座標系を前記仮座標系に変換し、
前記スクリーン座標系における各座標値に変換する工程では、
前記仮座標系に対して、前記第2X軸及び第2Y軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに前記仮座標系の拡大又は縮小を行うことによって、前記仮座標系を前記スクリーン座標系に変換
し、前記表示部の画面に対して前記操作面が傾いた状態で、前記3個のマーカーを用いて前記スクリーン座標系における各座標値を取得する、基準位置設定方法。
【請求項2】
前記仮座標系における各座標値に変換する工程では、
前記
3個のマーカーのうち1個のマーカーの前記センサ座標系における座標値を前記仮座標系の原点とする、請求項1に記載の基準位置設定方法。
【請求項3】
前記仮座標系における各座標値に変換する工程では、
前記
3個のマーカーのうち1個のマーカーの前記センサ座標系における座標値を前記仮座標系の前記第2X軸上の座標値とすると共に、前記
3個のマーカーのうち他の1個のマーカーの前記センサ座標系における座標値を前記仮座標系の前記第2Y軸上の座標値とする、請求項1又は2に記載の基準位置設定方法。
【請求項4】
虚像として表示された操作面における操作を検出するための基準位置を設定する操作検出装置であって、
3個のマーカーが三角形の頂点を成すように前記
3個のマーカーを
表示する前記操作面を
、画面を通して空中に表示する表示部と、
各前記マーカーに接近する対象物を検出することによって、前記操作面に向かって延びる第1Z軸、並びに前記第1Z軸と交差する第1X軸及び第1Y軸を有するセンサ座標系における各前記マーカーの座標値を取得するセンサと、
前記センサ座標系における各前記マーカーの座標値を、前記操作面に平行な面において互いに交差する第2X軸及び第2Y軸を有する仮座標系における各座標値に変換する第1座標変換部と、
前記仮座標系における各前記マーカーの座標値を、前記操作面において前記第2X軸及び第2Y軸とそれぞれ平行な方向に延びる第3X軸及び第3Y軸を有するスクリーン座標系における各座標値に変換する第2座標変換部と、
を備え、
前記第1座標変換部は、
前記センサ座標系に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、前記センサ座標系を前記仮座標系に変換し、
前記第2座標変換部は、
前記仮座標系に対して、前記第2X軸及び第2Y軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに前記仮座標系の拡大又は縮小を行うことによって、前記仮座標系を前記スクリーン座標系に変換
し、前記表示部の画面に対して前記操作面が傾いた状態で、前記3個のマーカーを用いて前記スクリーン座標系における各座標値を取得する、操作検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操作を検出するための基準位置を設定する基準位置設定方法及び操作検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、仮想物体が表示される実空間内の座標を入力するための空間座標入力装置を開示する。この空間座標入力装置では、仮想物体を立体表示するための画像を投影するスクリーンがオペレータの前方に設けられ、磁界を発生する磁界発生装置がオペレータの後方に設けられ、当該磁界を検出する先端部を有する位置入力装置がオペレータによって所持される。位置入力装置は、先端部において磁界を検出した空間座標を制御装置に入力する装置である。オペレータの周囲には、3台のTVカメラを備える光学測定装置が設けられている。
【0003】
前述した空間座標入力装置では、位置入力装置が制御装置に入力した空間座標と、実空間内の実座標との対応関係について、光学測定装置を用いた光学的な計測を行うことによって補正している。具体的には、透明板に一定間隔の目盛りが付与された格子プレートが実空間内に設置される。そして、画像検出のためのマークを有するポインタが格子プレート上における複数の点を指示し、そのポインタのマークに位置入力装置の先端部が配置される。その後、光学測定装置の3台のTVカメラがポインタを撮像することにより、ポインタのマークの位置を示す空間座標値(すなわち、光学座標値)が求められる。更に、位置入力装置の先端部が磁界を検出することにより、ポインタのマークの位置を示す空間座標値(すなわち、磁気座標値)が制御装置に入力される。その後、空間座標入力装置は、磁気座標値を光学座標値に変換する4×4行列を求め、求めた行列を用いて磁気座標値を光学座標値に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した空間座標入力装置では、位置入力装置が制御装置に入力した空間座標と実空間内の実座標との対応関係を補正するための操作として、光学測定装置を用いたキャリブレーションを行っている。しかしながら、この空間座標入力装置では、キャリブレーションを行うために、実空間内に設置される格子プレートと、格子プレート上を指示するポインタのマークを検出するための3台のTVカメラを有する光学測定装置と、を含む大掛かりな器具が必要となる。
【0006】
本開示は、キャリブレーションを行うための大掛かりな器具が不要となり、装置の構成を簡易化できる基準位置設定方法及び操作検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る基準位置設定方法は、虚像として表示された操作面における操作を検出するための基準位置を設定する基準位置設定方法である。この基準位置設定方法は、3個のマーカーが三角形の頂点を成すように3個のマーカーを表示する操作面を、表示部の画面を通して空中に表示する工程と、各マーカーに接近する対象物をセンサが検出することによって、センサから操作面に向かって延びる第1Z軸、並びに第1Z軸と交差する第1X軸及び第1Y軸を有するセンサ座標系における各マーカーの座標値を取得する工程と、取得する工程において取得した各座標値を、操作面に平行な面において互いに交差する第2X軸及び第2Y軸を有する仮座標系における各座標値に変換する工程と、変換する工程において変換した各座標値を、操作面において第2X軸及び第2Y軸とそれぞれ平行な方向に延びる第3X軸及び第3Y軸を有するスクリーン座標系における各座標値に変換する工程と、を備える。仮座標系における各座標値に変換する工程では、センサ座標系に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、センサ座標系を仮座標系に変換する。スクリーン座標系における各座標値に変換する工程では、仮座標系に対して、第2X軸及び第2Y軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに仮座標系の拡大又は縮小を行うことによって、仮座標系をスクリーン座標系に変換し、表示部の画面に対して操作面が傾いた状態で、3個のマーカーを用いてスクリーン座標系における各座標値を取得する。
【0008】
本開示に係る操作検出装置は、虚像として表示された操作面における操作を検出するための基準位置を設定する操作検出装置である。この操作検出装置は、3個のマーカーが三角形の頂点を成すように3個のマーカーを表示する操作面を、表示部の画面を通して空中に表示する表示部と、各マーカーに接近する対象物を検出することによって、操作面に向かって延びる第1Z軸、並びに第1Z軸と交差する第1X軸及び第1Y軸を有するセンサ座標系における各マーカーの座標値を取得するセンサと、センサ座標系における各マーカーの座標値を、操作面に平行な面において互いに交差する第2X軸及び第2Y軸を有する仮座標系における各座標値に変換する第1座標変換部と、仮座標系における各マーカーの座標値を、操作面において第2X軸及び第2Y軸とそれぞれ平行な方向に延びる第3X軸及び第3Y軸を有するスクリーン座標系における各座標値に変換する第2座標変換部と、を備える。第1座標変換部は、センサ座標系に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、センサ座標系を仮座標系に変換する。第2座標変換部は、仮座標系に対して、第2X軸及び第2Y軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに仮座標系の拡大又は縮小を行うことによって、仮座標系をスクリーン座標系に変換し、表示部の画面に対して操作面が傾いた状態で、3個のマーカーを用いてスクリーン座標系における各座標値を取得する。
【0009】
前述した基準位置設定方法及び操作検出装置では、基準位置を設定するための少なくとも3個のマーカーが虚像として操作面に表示される。センサは、操作面に表示された各マーカーに接近する対象物を検出することによって、センサ座標系における各マーカーの座標値を取得する。センサ座標系における各座標値は、仮座標系における各座標値に変換された後、操作面に位置する第3X軸及び第3Y軸を有するスクリーン座標系における各座標値に変換される。ここで、操作面に表示された各マーカーのセンサ座標系における座標値をスクリーン座標系における各座標値に直接変換しようとしても、座標系の変換に必要な変換係数行列を求めるための条件が不足するので、センサ座標系をスクリーン座標系に直接変換することはできない。前述した基準位置設定方法及び操作検出装置では、センサ座標系に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、センサ座標系を仮座標系に変換している。更に、仮座標系に対して、第2X軸及び第2Y軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに仮座標系の拡大又は縮小を行うことによって、仮座標系をスクリーン座標系に変換している。このように、センサ座標系を仮座標系に変換する工程、及び仮座標系をスクリーン座標系に変換する工程の各工程において、座標系の回転を行う処理と、座標系の拡大又は縮小を行う処理とを別々に行っている。これにより、座標系の変換に必要な変換係数行列を求めるための条件を満足することができ、センサ座標系から仮座標系への変換、及び仮座標系からスクリーン座標系への変換をそれぞれ行うことが可能となる。その結果、スクリーン座標系における各マーカーの座標値は、センサ座標系における各マーカーの座標値から得られるので、基準位置を設定するキャリブレーションを行うときに、スクリーン座標系における各マーカーの座標値を実測するための他の計測器具が不要となる。これにより、装置の構成を簡易化することができる。仮に、他の測定器具を用いてスクリーン座標系における各座標値を実測した場合、当該測定器具の測定誤差等により、座標系の変換前後において各マーカーの位置関係が崩れることがある。前述した基準位置設定方法及び操作検出装置によれば、センサ座標系における各マーカーの座標値からスクリーン座標系における各マーカーの座標値が得られるので、座標系の変換の前後において各マーカーの位置関係が崩れることが無い。すなわち、座標系の変換に必要な変換係数行列を精度良く求めることができる。よって、センサ座標系における各マーカーの座標値をスクリーン座標系における各座標値に精度良く変換することができ、キャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0010】
仮座標系における各座標値に変換する工程では、3個のマーカーのうち1個のマーカーのセンサ座標系における座標値を仮座標系の原点としてもよい。この場合、仮座標系における当該1個のマーカーの座標値の成分がゼロとなる。これにより、センサ座標系から仮座標系への変換に伴う処理負荷、及び仮座標系からスクリーン座標系への変換に伴う処理負荷をそれぞれ軽減することができる。
【0011】
仮座標系における各座標値に変換する工程では、3個のマーカーのうち1個のマーカーのセンサ座標系における座標値を仮座標系の第2X軸上の座標値とすると共に、3個のマーカーのうち他の1個のマーカーのセンサ座標系における座標値を仮座標系の第2Y軸上の座標値としてもよい。この場合、仮座標系における当該1個のマーカーの座標値の第2Y軸の成分がゼロとなる。更に、仮座標系における当該他の1個のマーカーの座標値の第2X軸の成分がゼロとなる。これにより、センサ座標系から仮座標系への変換に伴う処理負荷、及び仮座標系からスクリーン座標系への変換に伴う処理負荷をそれぞれ軽減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、キャリブレーションを実行するための大掛かりな器具が不要となり、装置の構成を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る操作検出装置を備える表示装置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の操作検出装置が基準位置を設定する処理を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図1の操作検出装置の制御部の機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、センサ座標系を仮座標系に変換する処理を説明するための図である。
【
図6】
図6は、仮座標系をスクリーン座標系に変換する処理を説明するための図である。
【
図7】
図7は、一実施形態に係る基準位置設定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本開示に係る基準位置設定方法及び操作検出装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化又は誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0015】
本実施形態において、「対象物」は、センサによって検出される対象物であって且つ操作面を操作して機器を動作させるものである。「対象物」は、例えばユーザの指等の棒状物である。「操作面」は、機器を動作させることが可能な面を示している。「操作面」は、例えばスイッチ等のボタンが虚像として表示される平面である。「センサ」は、操作部が対象物によって操作されたことを検出するセンサである。「基準位置」は、操作面が操作されたかどうかを認識するための基準となる位置である。「基準位置」は、例えば、虚像として表示された操作面に対する所定の位置である。当該所定の位置は、虚像として表示された操作面そのものの位置であってもよいし、操作面から所定距離だけ離間した位置であってもよい。
【0016】
図1は、本実施形態に係る操作検出装置2を備える表示装置1を示す斜視図である。表示装置1は、車両と車両の乗員との間においてHMI(Human Machine Interface)を構築する。表示装置1は、例えば、車両の左右方向における中央部に設けられる。
図1に示されるように、表示装置1は、車両の前後方向において表示装置1の後側に設けられる操作検出装置2と、車両の前後方向において表示装置1の前側に設けられる画像表示装置3とを備える。操作検出装置2は、例えば、表示装置1の平坦部1aに設けられており、画像表示装置3は、表示装置1の傾斜部1bに設けられている。平坦部1aは、表示装置1において車両の前後方向及び左右方向の双方に延在する部位である。傾斜部1bは、平坦部1aの前側から斜め上方に延在する部位である。
【0017】
操作検出装置2は、例えば、車両に搭載された各機器(例えば車載用バックカメラ又はエアコン)を動作させる操作面5を虚像Kとして表示する。操作検出装置2は、操作面5に接近する対象物F(
図2参照)を検出するセンサ20を備える。操作面5は、例えば、車載用バックカメラを操作可能な複数のボタン5aを含む長方形状の操作平面である。「操作平面」とは、機器を操作することが可能な平面状のユーザインタフェースを示している。操作検出装置2は、センサ20が対象物Fを検出すると、センサ20が検出した対象物Fの位置に基づいて対象物Fによる操作面5の操作を検出する。操作検出装置2は、検出した操作に基づいて各機器を動作させる。操作検出装置2によれば、虚像Kとして表示された操作面5への対象物Fの接近によって各機器の動作が可能となるため、物理的なボタン等が不要となる。
【0018】
本実施形態において、「接近」するとは、ある物が他の物に接触する場合、及び、ある物が他の物に所定距離まで近づいた場合の両方を含む。操作の例としては、対象物Fによる操作面5の押下操作、タップ操作又はスライド操作等が挙げられるが、操作の種類については特に限定されない。本実施形態では、操作面5の操作としてボタン5aに対する押下操作を例示する。押下操作は、操作面5のボタン5aを押し下げる操作、及び操作面5のボタン5aを押し上げる操作の両方の操作を含む。
【0019】
画像表示装置3は、例えば、車両情報、道路情報及び危険度情報の少なくともいずれかを表示するディスプレイ3aを有する。操作検出装置2及び画像表示装置3が表示する情報は、表示装置1に設けられる音声出力部(不図示)の音声出力によって読み上げられてもよい。音声出力部の音声出力が操作検出装置2及び画像表示装置3の表示に連動することにより、視覚及び聴覚による一層確実な情報の提供が可能となる。
【0020】
図2は、操作検出装置2を示す概略構成図である。
図2に示されるように、操作検出装置2は、表示部10とセンサ20と制御部30とを備える。表示部10は、操作面5を虚像Kとして空中に表示する。表示部10は、空中結像素子であるAI(Aerial Imaging)プレート(登録商標)11と、液晶パネル12とを備えている。AIプレート11は、例えば、特許第4865088号に記載された技術を用いて作製されている。
【0021】
液晶パネル12は、例えば、PC(パーソナルコンピュータ)、タブレット端末、又は携帯電話等の携帯端末のディスプレイである。液晶パネル12は、制御部30から出力される信号に基づいて画像を表示する。AIプレート11は、液晶パネル12に対して斜めに傾斜している。液晶パネル12が表示する画像は、AIプレート11によって、AIプレート11及び液晶パネル12に対して、ユーザ(対象物F)側の位置に虚像Kとして表示される。液晶パネル12に対するAIプレート11の傾斜角度は、可変とされていてもよい。
【0022】
センサ20は、例えば深度センサであり、操作面5を挟んで対象物Fとは反対側に設けられている。例えば、センサ20は、操作面5と対象物Fとを結ぶ仮想直線上、すなわち、虚像Kである操作面5に対して正面位置に設けられている。センサ20は、当該仮想直線に対して垂直な面における対象物Fの位置(すなわち、2次元位置)の情報と、対象物Fからセンサ20までの距離Dの情報とを含む位置データを取得する。センサ20は、取得した位置データを所定の周期(例えば1/30秒)で制御部30に出力する。
【0023】
センサ20は、例えば、対象物Fを含む撮影領域内に存在する物体上の各点とセンサ20との距離を、TOF(Time Of Flight)方式によって測定する。TOF方式では、センサ20は、光線が物体上の各点で反射してセンサ20に到達するまでの光線の飛行時間(すなわち、遅れ時間)を算出する。そして、センサ20は、算出した飛行時間と光の速度とから、センサ20と物体上の各点との距離を測定する。
【0024】
制御部30は、液晶パネル12及びセンサ20に通信可能とされている。制御部30は、例えば、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶部と、入出力部と、ドライバとを備える。制御部30の各機能は、CPUの制御の下で入出力部が動作され、記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みが行われることによって、実現される。制御部30の形態及び配置場所については特に限定されない。
【0025】
制御部30は、例えば、操作面5が操作されたか否かを判定する判定部30aを含んでいる。判定部30aは、センサ20によって検出された対象物Fの位置に基づいて判定を行う。判定部30aは、センサ20から入力された位置データに基づき、対象物Fによって操作面5の操作がなされたか否かを判定する。判定部30aは、対象物Fとセンサ20との距離Dが閾値T以下であるか否かを判定する。判定部30aは、距離Dが閾値T以下であると判定したときに、対象物Fが仮想の判定面6に到達し、操作面5が操作されたと判定する。
【0026】
操作面5が操作されたと判定部30aが判定すると、例えば、前述した車載用バックカメラが動作する。判定面6は、センサ20からの距離が一定である部位に形成された仮想の平面であり、操作面5の近接位置に設けられる。本実施形態では、判定面6の位置は操作面5の位置と一致している。すなわち、判定面6は操作面5に重なっている。しかし、判定面6の位置は、操作面5から所定距離だけ離間した位置であってもよい。
【0027】
以上のように構成された操作検出装置2は、対象物Fによる操作面5の操作を検出するための基準となる基準位置を設定する。この基準位置の設定は、例えば、操作検出装置2の初期動作時、又は操作検出装置2のメンテナンス時に実行される。操作検出装置2は、表示部10によって表示される操作面5に対象物Fを接近させることによって基準位置を設定する。以下では、この基準位置の設定をキャリブレーションと称することがある。このキャリブレーションの実行手順について、
図3、
図4、
図5、及び
図6を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
図3は、操作検出装置2が基準位置を設定する処理を説明するための図である。まず、
図3に示されるように、表示部10は、虚像Kとして3個のマーカーM1,M2及びM3を操作面5に表示する。そして、ユーザは、操作面5に表示された3個のマーカーM1,M2及びM3のそれぞれに対象物Fを接近させる。各マーカーM1,M2及びM3は、キャリブレーションを行うための基準点であり、例えば円形状を呈している。本実施形態において、各マーカーM1,M2及びM3の位置は、各マーカーM1,M2及びM3の中心点を示している。
【0029】
各マーカーM1,M2及びM3は、操作面5において同一直線上に並ばない位置に表示される。すなわち、各マーカーM1,M2及びM3は、操作面5において三角形の頂点を成すように表示される。本実施形態では、各マーカーM1,M2及びM3は、操作面5において直角三角形の頂点を成すように表示される。マーカーM1は、操作面5において直角三角形の直角を成す2辺を繋ぐ頂点に位置する。マーカーM1及びM2を結ぶ直線と、マーカーM1及びM3を結ぶ直線とは、互いに直交する。以下では、説明を容易にするため、「マーカーM1,M2及びM3のそれぞれ」をまとめて「マーカーM」と称することがある。
【0030】
マーカーMに対象物Fが接近すると、センサ20は、マーカーMに接近した対象物Fの位置を検出することによって、センサ座標系C1における座標値としてマーカーMの位置を取得する。センサ座標系C1は、センサ20の位置を基準としたXYZ直交座標系である。センサ座標系C1は、センサ20の位置に原点S1を有しており、互いに直交するX1軸(第1X軸)、Y1軸(第1Y軸)及びZ1軸(第1Z軸)を有している。Z1軸は、原点S1から操作面5に向かって延びている。Z1軸が延びる方向は、例えば、操作面5に垂直な方向である。X1軸及びY1軸のそれぞれが延びる方向は、例えば、操作面5と平行な面に沿った方向である。X1軸、Y1軸及びZ1軸のそれぞれの単位は、例えばm(メートル)である。
【0031】
センサ座標系C1におけるマーカーMの座標値は、仮座標系C2におけるマーカーMの座標値に変換された後、スクリーン座標系C3におけるマーカーMの座標値に変換される。仮座標系C2は、センサ座標系C1におけるマーカーMの座標値をスクリーン座標系C3におけるマーカーMの座標値に変換する過程で用いる仮のXYZ直交座標系である。仮座標系C2は、操作面5上に原点S2を有しており、互いに直交するX2軸(第2X軸)、Y2軸(第2Y軸)及びZ2軸を有している。原点S2の位置は、例えば、操作面5に表示される3個のマーカーM1,M2及びM3のうちの1個の位置である。本実施形態では、仮座標系C2の原点S2の位置は、マーカーM1の位置である。
【0032】
仮座標系C2のZ2軸は、原点S2からセンサ20の反対側に延びている。Z2軸が延びる方向は、例えば、操作面5に垂直な方向であり、センサ座標系C1のZ1軸が延びる方向と一致している。X2軸及びY2軸は、操作面5に平行な面上に位置している。本実施形態では、この平行な面の位置は、操作面5と重なる位置である。X2軸は、操作面5上においてスクリーン座標系C3のX3軸に平行であり、操作面5上においてX3軸からX3軸と直交する方向に所定距離ずれている。
【0033】
仮座標系C2のX2軸は、操作面5上においてマーカーM1及びM2を通っている。すなわち、X2軸は、マーカーM1及びM2を結ぶ直線上に位置している。仮座標系C2のY2軸は、操作面5上においてスクリーン座標系C3のY3軸に平行であり、操作面5上においてY3軸からY3軸と直交する方向に所定距離ずれている。Y2軸は、操作面5上においてマーカーM1及びM3を通っている。すなわち、Y2軸は、マーカーM1及びM3を結ぶ直線上に位置している。
【0034】
スクリーン座標系C3は、操作面5上に原点S3を有しており、互いに直交するX3軸(第3X軸)、Y3軸(第3Y軸)及びZ3軸を有している。スクリーン座標系C3の原点S3は、例えば、長方形状の操作面5の4個の頂点のうち、マーカーM3の近傍に表示される頂点(
図3では操作面5の左上の頂点)に位置している。当該頂点は、操作面5の長辺5b及び短辺5cを繋ぐ頂点である。Z3軸は、原点S3からセンサ20の反対側に延びている。Z3軸が延びる方向は、例えば、操作面5に垂直な方向であり、センサ座標系C1のZ1軸が延びる方向、及び仮座標系C2のZ2軸が延びる方向のそれぞれと一致している。X3軸は、操作面5の長辺5bに重なっており、Y3軸は、操作面5の短辺5cに重なっている。
【0035】
センサ座標系C1におけるマーカーMの座標値から仮座標系C2におけるマーカーMの座標値への変換、及び、仮座標系C2におけるマーカーMの座標値からスクリーン座標系C3におけるマーカーMの座標値への変換は、制御部30によって行われる。
図4は、制御部30の機能的構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、制御部30は、第1座標変換部31と第2座標変換部32とを含んでいる。第1座標変換部31は、センサ20からセンサ座標系C1におけるマーカーMの座標値を受信すると、センサ座標系C1におけるマーカーMの座標値を、仮座標系C2におけるマーカーMの座標値に変換する。第2座標変換部32は、仮座標系C2におけるマーカーMの座標値を、スクリーン座標系C3におけるマーカーMの座標値に変換する。
【0036】
図5は、センサ座標系C1におけるマーカーMの座標値を仮座標系C2におけるマーカーMの座標値に変換する処理を説明するための図である。センサ座標系C1におけるマーカーMの座標値から仮座標系C2におけるマーカーMの座標値への変換は、合同アフィン変換によって行われる。ところで、アフィン変換は、座標系に対して、回転、平行移動、スケーリング、及びスキュー(すなわち、せん断)を含む処理を行う変換である。アフィン変換の前後において線形性は保たれる。つまり、アフィン変換前における座標系で規定される直線は、アフィン変換後における座標系においても曲がらずに直線のまま保たれる。合同アフィン変換は、座標系に対して、前述した処理のうちスケーリング及びスキューを除いた回転及び平行移動のみを行う変換である。上記の「スケーリング」は、座標系の縮尺を拡大又は縮小することを意味する。
【0037】
第1座標変換部31は、センサ座標系C1に対して、例えば、回転及び平行移動のみを行う合同アフィン変換を行うことによって、センサ座標系C1を仮座標系C2に変換する。具体的には、第1座標変換部31は、センサ座標系C1に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、センサ座標系C1を仮座標系C2に変換している。上記の平行移動は、例えば、センサ座標系C1の原点S1から仮座標系C2の原点S2への移動を意味する。上記の回転は、例えば、平行移動前又は平行移動後のセンサ座標系C1の原点S1を中心とする回転を意味する。センサ座標系C1に対して上記の平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことにより、センサ座標系C1は、操作面5と平行な面(本実施形態では操作面5に重なる面)上に位置するX2軸及びY2軸を有する仮座標系C2に変換される。
【0038】
センサ座標系C1から仮座標系C2への合同アフィン変換についてより具体的に説明する。
図3に示されるように、センサ座標系C1における各マーカーM1,M2及びM3の座標値をP1,P2及びP3とし、仮座標系C2における各マーカーM1,M2及びM3の座標値をQ1,Q2及びQ3とする。センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3の成分は、センサ20が対象物Fを検出することにより取得される。仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3の成分は、各座標値P1,P2及びP3の成分から求められる。
【0039】
本実施形態では、仮座標系C2の原点S2はマーカーM1に位置しているので、マーカーM1に対応する座標値Q1の成分は(0,0,0)と表される。仮座標系C2のX2軸はマーカーM2を通っているので、マーカーM2に対応する座標値Q2のX2軸の成分をX2qとすると、座標値Q2の成分は(X2q,0,0)と表される。仮座標系C2のY2軸はマーカーM3を通っているので、マーカーM3に対応する座標値Q3のY2軸の成分をY2qとすると、座標値Q3の成分は(0,Y2q,0)と表される。
【0040】
第1座標変換部31は、未知数であるX2
q及びY2
qを、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3の位置関係から求める。具体的には、第1座標変換部31は、次の式(1)を用いてX2
qを求め、式(2)を用いてY2
qを求める。
【数1】
【数2】
第1座標変換部31は、X2
q及びY2
qを求めることにより、仮座標系C2における各座標値Q2及びQ3の成分を得る。変換前のセンサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3と、変換後の仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3とが求まれば、センサ座標系C1から仮座標系C2への合同アフィン変換を行うための変換係数行列(後に詳述)を求めることができる。第1座標変換部31は、この変換係数行列を求めることによって、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3を、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3に変換する。
【0041】
図6は、仮座標系C2における各マーカーM1,M2及びM3の座標値Q1,Q2及びQ3を、スクリーン座標系C3における各マーカーM1,M2及びM3の座標値R1,R2及びR3に変換する処理を説明するための図である。第1座標変換部31による合同アフィン変換によって、センサ座標系C1は、操作面5上に位置するX2軸及びY2軸を有する仮座標系C2に変換される。その結果、仮座標系C2の原点S2、及びスクリーン座標系C3の原点S3は共に、操作面5上に位置する。よって、仮座標系C2をスクリーン座標系C3に変換するために、仮座標系C2に対してZ2軸が延びる方向に平行移動を行う必要は無く、Z2軸をスケーリングする必要も無い。
【0042】
しかし、仮座標系C2のX2軸及びY2軸は、操作面5上においてスクリーン座標系C3のX3軸及びY3軸からそれぞれずれている。よって、仮座標系C2をスクリーン座標系C3に変換するためには、X2軸の位置及びY2軸の位置を、スクリーン座標系C3におけるX3軸の位置及びY3軸の位置にそれぞれ一致させる必要がある。更に、X2軸の縮尺及びY2軸の縮尺をX3軸の縮尺及びY3軸の縮尺にそれぞれ一致させるために、X2軸及びY2軸のそれぞれをスケーリングする必要がある。
【0043】
そこで、第2座標変換部32は、仮座標系C2に対して、X2軸及びY2軸を含む平面に平行な方向への移動、及び仮座標系C2のスケーリングを行うことによって、仮座標系C2をスクリーン座標系C3に変換する。例えば、座標値R1の成分が(100,300,0)であり、座標値R2の成分が(700,300,0)である場合、仮座標系C2のX2軸上の値をX2とし、スクリーン座標系C3のX3軸上の値をX3とすると、座標値Q2の成分(X2
q,0,0)を含むX2から、X3への変換は、次の式(3)を用いることにより行われる。
【数3】
仮座標系C2のY2軸からスクリーン座標系C3のY3軸への変換についても、同様に行われる。このようにして、第2座標変換部32は、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3をスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3に変換する。
【0044】
次に、
図7を更に参照しながら、本実施形態に係る基準位置設定方法について説明する。
図7は、本実施形態に係る基準位置設定方法の一例を示すフローチャートである。この基準位置設定方法は、操作検出装置2を用いて行われる。まず、表示部10は、操作面5に3個のマーカーM1,M2及びM3を表示する(工程W1)。このとき、表示部10は、3個のマーカーM1,M2及びM3を、三角形の頂点を成すように操作面5に表示する(
図3参照)。そして、ユーザは、3個のマーカーM1,M2及びM3のそれぞれに指等の対象物Fを接近させる。
【0045】
対象物FがマーカーMに接近すると、センサ20が対象物Fを検出する(工程W2)。具体的には、センサ20が、センサ20と対象物Fとの距離Dを含む位置データを検出し、当該位置データを制御部30に出力する(
図2参照)。制御部30がセンサ20から出力された位置データを受信すると、判定部30aは距離Dが閾値T以下であるか否かを判定する。そして、判定部30aは、距離Dが閾値T以下であると判定したときに対象物FのマーカーMへの接近を認識する。対象物FのマーカーMへの接近を判定部30aが認識することにより、センサ20による対象物Fの検出が行われる。センサ20が対象物Fを検出すると、制御部30は、センサ20から出力された位置データに含まれる、センサ座標系C1における各マーカーM1,M2及びM3の座標値P1,P2及びP3を取得する。
【0046】
制御部30がセンサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3を取得すると、第1座標変換部31は、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3を、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3に変換する(工程W3)。具体的には、第1座標変換部31は、センサ座標系C1に対して回転及び平行移動のみを行う合同アフィン変換を行うことによって、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3を、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3に変換する。
【0047】
本実施形態では、
図5に示されるように、第1座標変換部31は、センサ座標系C1に対して平行移動と回転とを行う。第1座標変換部31が上記の平行移動及び回転を行うことにより、センサ座標系C1は、操作面5と平行な面(本実施形態では操作面5に重なる面)に位置するX2軸及びY2軸を有する仮座標系C2に変換される。
【0048】
次に、第2座標変換部32は、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3をスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3に変換する(工程W4)。具体的には、第2座標変換部32は、仮座標系C2に対して、X2軸及びY2軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに仮座標系C2のスケーリングを行うことによって、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3をスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3に変換する。
【0049】
以上のように、第1座標変換部31が、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3を仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3に変換し、第2座標変換部32が、仮座標系C2における各座標値Q1,Q2及びQ3をスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3に変換する。その結果、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3と、スクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3との対応付けが行われ、操作面5上における各位置の座標値を定めるための基準位置が設定される(工程W5)。そして、一連の工程が完了し、キャリブレーションが完了する。キャリブレーションが完了することにより、各機器を動作させるために操作検出装置2を使用することが可能となる。
【0050】
続いて、本実施形態に係る基準位置設定方法及び操作検出装置2の作用効果について、アフィン変換の問題と共に説明する。或るXYZ直交座標系に対してアフィン変換を行う場合において、アフィン変換前の座標値Pの成分を(Xp,Yp,Zp)とし、アフィン変換後の座標値Qの成分を(Xq,Yq,Zq)とすると、座標値Pから座標値Qへのアフィン変換は、次の式(4)によって表される。
【数4】
式(4)において、bは、XYZ直交座標系の平行移動を示す変換係数行列であり、Aは、XYZ直交座標系の回転、スケーリング及びスキューを示す変換係数行列である。座標値Pから座標値Qへのアフィン変換を行うためには、変換係数行列Aの各係数(a
11,a
12,a
13,a
21,a
22,a
23,a
31,a
32,a
33)、及び変換係数行列bの各係数(b
1,b
2,b
3)を求める必要がある。
【0051】
XYZ直交座標系のX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに関して、未知数は4個(すなわち、変換係数行列Aの係数3個、及び変換係数行列bの係数1個)ずつ存在する。従って、座標値Pと座標値Qとの組み合わせが4組あれば、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに関して未知数を全て求めることができる。つまり、アフィン変換前における4個の座標値Pと、アフィン変換後における4個の座標値Qとをそれぞれ取得すれば、変換係数行列A及びbを求めることができる。このアフィン変換を利用して、キャリブレーションを行うことが考えられる。例えば、基準となる4個のマーカーを同一平面上に表示し、或る座標系における各マーカーの位置を示す各座標値Pを、別の座標系における各マーカーの位置を示す各座標値Qにアフィン変換することによって、各座標値Pと各座標値Qとの対応付けを行うことが考えられる。
【0052】
しかし、同一平面(例えば或る座標系のX軸及びY軸を含む平面)上に位置する4個の座標値Pから4個の座標値Qへのアフィン変換を行おうとしても、Z軸の成分が互いに同一となるため、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに関して未知数を求めるための条件が不足する。よって、変換係数行列A及びbを求めることができない。従って、前述したように、センサ座標系C1からスクリーン座標系C3に直接アフィン変換を行おうとしても、変換係数行列A及びbを求めることができないため、センサ座標系C1をスクリーン座標系C3に直接変換することはできない。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る基準位置設定方法及び操作検出装置2では、センサ座標系C1に対して平行移動及び回転の少なくとも一方を行うことによって、センサ座標系C1から仮座標系C2への合同アフィン変換を行っている。更に、仮座標系C2に対して、X2軸及びY2軸を含む平面に平行な方向への移動、並びに仮座標系C2のスケーリングを行うことによって、仮座標系C2をスクリーン座標系C3に変換している。すなわち、センサ座標系C1を仮座標系C2に変換する工程W3、及び仮座標系C2をスクリーン座標系C3に変換する工程W4のそれぞれにおいて、座標系の回転を行う処理と、座標系のスケーリングを行う処理とが別々に行われる。
【0054】
このように、合同アフィン変換によってセンサ座標系C1から仮座標系C2への変換を行った後、前述の式(3)を用いてスケーリング等を行うことにより、仮座標系C2からスクリーン座標系C3への変換が可能となる。つまり、センサ座標系C1から仮座標系C2への変換、及び仮座標系C2からスクリーン座標系C3への変換という二段階の変換を行うことによって、操作面5の操作の基準となるスクリーン座標系C3への変換が可能となる。
【0055】
以上のように、スクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3は、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3から得られるので、キャリブレーションを行うときに、スクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3を実測するための他の計測器具が不要となる。つまり、本実施形態では、キャリブレーションを行うための計測器具がセンサ20のみで済む。このため、装置の構成を簡易化することができる。
【0056】
他の測定器具を用いる場合の例として、定規を用いてスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3を実測し、各座標値R1,R2及びR3を定数としてプログラムに書き込む方法が考えられる。しかし、スクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3を実測する定規の測定誤差等により、座標系の変換前後において各マーカーM1,M2及びM3の位置関係が崩れることがある。
【0057】
各マーカーM1,M2及びM3の位置関係が崩れる他の要因として、センサ座標系C1のX1軸における長さとY1軸における長さとの間に生じる精度差が考えられる。各マーカーM1,M2及びM3が表示される操作面5はAIプレート11によって表示される。AIプレート11が操作面5を表示するときに、スケーリング及びスキューによるベクトル変換が操作面5に対して行われることもある。
【0058】
このような条件下であっても、本実施形態に係る基準位置設定方法及び操作検出装置2によれば、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3からスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3が得られるので、座標系の変換の前後において各マーカーM1,M2及びM3の位置関係が崩れることが無い。すなわち、座標系の変換に用いる変換係数行列A及びbを精度良く求めることができる。よって、センサ座標系C1における各座標値P1,P2及びP3をスクリーン座標系C3における各座標値R1,R2及びR3に精度良く変換することができ、キャリブレーションを精度良く行うことができる。
【0059】
操作面5の長手方向(すなわち、スクリーン座標系C3のX3軸が延びる方向)の解像度と、短手方向(すなわち、スクリーン座標系C3のY3軸が延びる方向)の解像度とが互いに異なっている場合も考えられる。しかし、本実施形態に係る基準位置設定方法及び操作検出装置2によれば、前述した解像度の相違が存在する場合であっても、各マーカーM1,M2及びM3の位置関係が崩れることは無い。
【0060】
本実施形態では、センサ座標系C1におけるマーカーM1の座標値P1を仮座標系C2の原点S2としている。よって、仮座標系C2におけるマーカーM1の座標値P1の成分がゼロとなる。これにより、センサ座標系C1から仮座標系C2への変換に伴う処理負荷、及び仮座標系C2からスクリーン座標系C3への変換に伴う処理負荷をそれぞれ軽減することができる。
【0061】
本実施形態では、センサ座標系C1におけるマーカーM2の座標値P2を仮座標系C2のX2軸上の座標値Q2とすると共に、センサ座標系C1におけるマーカーM3の座標値P3を仮座標系C2のY2軸上の座標値Q3としている。よって、仮座標系C2における座標値Q2のY2軸及びZ2軸のそれぞれの成分がゼロとなる。そして、仮座標系C2における座標値Q3のX2軸及びZ2軸のそれぞれの成分がゼロとなる。これにより、センサ座標系C1から仮座標系C2への変換に伴う処理負荷、及び仮座標系C2からスクリーン座標系C3への変換に伴う処理負荷をそれぞれ軽減することができる。
【0062】
以上、本開示に係る基準位置設定方法及び操作検出装置の実施形態について説明した。しかし、本開示は、前述の実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。例えば、基準位置設定方法の各工程の内容及び順序、並びに、操作検出装置の各部の構成は、各請求項の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0063】
例えば、前述の実施形態では、円形状を呈する3個のマーカーM1,M2及びM3が表示される例について説明した。しかし、マーカーの数は、3個より多くてもよい。マーカーの形状は特に限定されない。例えば、マーカーの形状は、三角形状、四角形状、六角形状若しくは八角形状等の多角形状、又は、楕円形状等の長円形状であってもよい。
【0064】
前述の実施形態では、センサ座標系C1、仮座標系C2及びスクリーン座標系C3がそれぞれ直交座標系である例について説明した。しかし、センサ座標系C1のX1軸、Y1軸及びZ1軸は必ずしも直交している必要はなく、互いに交差していればよい。同様に、仮座標系C2のX2軸、Y2軸及びZ2軸は互いに交差していればよく、スクリーン座標系C3のX3軸、Y3軸及びZ3軸は互いに交差していればよい。前述の実施形態では、センサ座標系C1のZ1軸が延びる方向は、操作面5に垂直な方向である例について説明した。しかし、Z1軸が延びる方向は、操作面5に垂直な方向に対して傾斜した方向であってもよい。センサ座標系C1のX1軸及びY1軸のそれぞれが延びる方向は、操作面5と交差する方向であってもよい。
【0065】
前述の実施形態では、仮座標系C2の原点S2の位置がマーカーM1の位置である例について説明した。しかし、原点S2の位置は、操作面5上におけるマーカーM1以外の位置であってもよく、操作面5以外の位置であってもよい。前述の実施形態では、仮座標系C2のZ2軸が延びる方向が、操作面5に垂直な方向であり、センサ座標系C1のZ1軸が延びる方向と一致している例について説明した。しかし、仮座標系C2のZ2軸が延びる方向は、操作面5に垂直な方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0066】
前述の実施形態では、仮座標系C2のX2軸及びY2軸が操作面5に平行な面上に位置しており、当該平行な面の位置が操作面5と重なる位置である例について説明した。しかし、当該平行な面の位置は、操作面5からずれた位置であってもよい。つまり、X2軸及びY2軸は、操作面5上に位置している必要は無く、操作面5からZ2軸が延びる方向にずれていてもよい。
【0067】
前述の実施形態では、仮座標系C2のX2軸は、操作面5上においてスクリーン座標系C3のX3軸から、X3軸と直交する方向に所定距離ずれている例について説明した。しかし、X2軸は、X3軸と重なっていてもよく、操作面5上においてマーカーM1及びM2以外の位置を通っていてもよい。同様に、仮座標系C2のY2軸はスクリーン座標系C3のY3軸と重なっていてもよく、操作面5上においてマーカーM1及びM3以外の位置を通っていてもよい。
【0068】
前述の実施形態では、スクリーン座標系C3のZ3軸が延びる方向は、例えば、操作面5に垂直な方向であり、センサ座標系C1のZ1軸が延びる方向、及び仮座標系C2のZ2軸が延びる方向とそれぞれ一致している例について説明した。しかし、Z3軸が延びる方向は、操作面5に垂直な方向に対して傾斜した方向であってもよい。
【0069】
前述の実施形態では、空中結像素子が像を空中に結像させるAIプレート11である例について説明した。しかし、空中結像素子は、例えば、ホログラム等、ユーザから見て手前側に立体的な虚像を結像する立体結像素子であってもよく、AIプレート以外の素子であってもよい。
【0070】
前述の実施形態では、表示部10、センサ20及び制御部30を備える操作検出装置2について説明した。しかし、表示部、センサ及び制御部の種類、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、適宜変更可能である。例えば、前述の実施形態では、対象物Fとの距離Dを検出する深度センサであるセンサ20について説明した。しかし、操作検出装置は、深度センサ以外のセンサを備えていてもよい。すなわち、操作検出装置は、センサに代えて、赤外線センサ又は超音波センサ等を備えていてもよく、センサの種類は適宜変更可能である。
【0071】
前述の実施形態では、センサ20が、センサ20と物体上の各点との距離をTOF方式によって測定する例について説明した。しかし、センサと物体上の各点との距離を測定する方式は、TOF方式に限定されない。例えば、センサは、センサと物体上の各点との距離を、Light Coding方式によって測定してもよい。Light Coding方式では、センサは、対象物を含む撮影領域内に存在する物体上の各点にランダムドットパターンで光線を照射する。そして、センサは、物体上の各点から反射した光線を受光し、反射した光線のパターンの歪みを検出することによって、センサと物体上の各点との距離を測定する。
【0072】
操作検出装置は、車両以外の装置に搭載されていてもよい。更に、操作検出装置は、車両以外の各機器を動作させる操作面を虚像として表示する装置であってもよい。基準位置設定方法及び操作検出装置は、車両以外の種々の機器にも適用させることが可能である。基準位置設定方法は、操作検出装置以外の装置を用いて行われてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…表示装置、2…操作検出装置、3…画像表示装置、5…操作面、10…表示部、20…センサ、30…制御部、31…第1座標変換部、32…第2座標変換部、C1…センサ座標系、C2…仮座標系、C3…スクリーン座標系、F…対象物、K…虚像、M1,M2,M3…マーカー、P1,P2,P3,Q1,Q2,Q3,R1,R2,R3…座標値、S1,S2,S3…原点、X1軸…第1X軸、X2軸…第2X軸、X3軸…第3X軸、Y1軸…第1Y軸、Y2軸…第2Y軸、Y3軸…第3Y軸、Z1軸…第1Z軸。