(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】レンバチニブ及びエベロリムスを含む併用療法のためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20240206BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240206BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240206BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240206BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240206BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61K31/47
A61K31/436
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P13/12
A61P35/04
C12Q1/68
(21)【出願番号】P 2021518673
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019039012
(87)【国際公開番号】W WO2020071457
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】船橋 泰博
(72)【発明者】
【氏名】箕嶋 幸範
(72)【発明者】
【氏名】兼清 道雄
(72)【発明者】
【氏名】松木 正尋
(72)【発明者】
【氏名】安達 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】児玉 耕太郎
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517904(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194348(WO,A1)
【文献】Correlative serum biomarker analyses in the phase 2 trial of lenvatinib-plus-everolimus in patients with metastatic renal cell carcinoma,British Journal Cancer,英国,2020年08月,237-246
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
A61K 31/47
A61K 31/436
A61P 13/12 -43/00
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対する、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象の応答を予測する方法であって、
少なくとも1つのタンパク質の対照発現レベルと比較して低い、前記タンパク質のベースライン発現レベルが、前記ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む前記併用療法に対して応答性であることを予測するために、
前記ヒト対象から得られた
血液試料中における、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベルを測定するか又は測定しているステップを含み、
前記対照発現レベルは、予め定められたカットオフ値であり、
前記予め定められたカットオフ値は、
(1)カットオフなしと比較して高い陽性予測値で腫瘍応答を予測する受信者動作特性(ROC)分析又はパーセンタイル分析に基づいて決定されるタンパク質の発現レベルである、又は
(2)生存期間を予測するシミュレーションモデル又はパーセンタイル分析に基づいて決定されるタンパク質の発現レベルである
、方法。
【請求項2】
前記
血液試料が
、血清試料、又は血漿試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのタンパク質の前記ベースライン発現レベルが、前記
血液試料中の前記少なくとも1つのタンパク質の量を測定することによって決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのタンパク質の前記ベースライン発現レベルが、前記
血液試料中の前記少なくとも1つのタンパク質をコードするmRNAの量を測定することによって決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩が、レンバチニブメシル酸塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記腎細胞癌が、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対する、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象の応答を予測する方法であって、
複合バイオマーカースコアに基づいて、前記ヒト対象が前記併用療法に対して応答性であると決定するために、
前記ヒト対象から得られた
血液試料中における、少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルを測定するか又は測定しているステップと、
各タンパク質のスコアをそのベースライン発現レベルに基づいて決定するステップと、
前記スコアを合計して複合バイオマーカースコアを得るステップと、
を含み、
前記少なくとも5つのタンパク質が、
(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は
(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18P、ANG-2及びVEGF
を含み、
(a)前記ベースライン発現レベルが、前記併用療法に応答するより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、各タンパク質の前記スコアはより大きく、対照複合バイオマーカースコアと等しいか若しくはそれより高い前記複合バイオマーカースコアは、前記ヒト対象がレンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む前記併用療法に対して応答性であることを予測するか、又は
(b)前記ベースライン発現レベルが、前記併用療法に応答するより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、各タンパク質の前記スコアはより小さく、対照複合バイオマーカースコアと等しいか若しくはそれより低い前記複合バイオマーカースコアは、前記ヒト対象がレンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む前記併用療法に対して応答性であることを予測する
ものであり、
前記対照複合バイオマーカースコアは、予め定められたカットオフ値であり、
前記予め定められたカットオフ値は、
(1)各タンパク質のスコアは、カットオフなしと比較して高い陽性予測値で腫瘍応答を予測するROC分析又はパーセンタイル分析に基づいて決定される、複合バイオマーカースコアである、又は、
(2)生存期間を予測するシミュレーションモデル又はパーセンタイル分析に基づいて決定される複合バイオマーカースコアである
、方法。
【請求項8】
各タンパク質の前記スコアが、前記タンパク質の各々の前記ベースライン発現レベルに基づく2進値である、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記2進値が0又は1である、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記より良好な治療成績が、より長い全生存期間又はより長い無増悪生存期間である、請求項7~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記
血液試料が
、血清試料、又は血漿試料である、請求項7~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも5つのタンパク質の前記ベースライン発現レベルが、前記
血液試料中の前記少なくとも5つのタンパク質の各々の量を測定することによって決定される、請求項7~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも5つのタンパク質の前記ベースライン発現レベルが、前記
血液試料中の前記少なくとも5つのタンパク質の各々をコードするmRNAの量を測定することによって決定される、請求項7~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記腎細胞癌が、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌である、請求項7~
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも5つのタンパク質が、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2からなる、請求項7~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも5つのタンパク質が、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aからなる、請求項7~
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩が、レンバチニブメシル酸塩である、請求項7~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対する、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象の応答を予測する方法であって、
複合バイオマーカースコアに基づいて、前記ヒト対象が前記併用療法に対して応答性であると決定するために、
前記ヒト対象から得られた
血液試料中における、IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質のベースライン発現レベルを測定するか又は測定しているステップと、
各タンパク質のスコアをそのベースライン発現レベルに基づいて決定するか又は決定しているステップと、
前記スコアを合計すること又は合計したことで複合バイオマーカースコアを得るステップと
を含み、
(a)前記ベースライン発現レベルが、前記併用療法に応答するより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、各タンパク質の前記スコアはより大きく、対照複合バイオマーカースコアと等しいか若しくはそれより高い前記複合バイオマーカースコアは、前記ヒト対象がレンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む前記併用療法に対して応答性であることを予測するか、又は
(b)前記ベースライン発現レベルが、前記併用療法に応答するより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、各タンパク質の前記スコアはより小さく、対照複合バイオマーカースコアと等しいか若しくはそれより低い前記複合バイオマーカースコアは、前記ヒト対象がレンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む前記併用療法に対して応答性であることを予測する
ものであり、
前記対照複合バイオマーカースコアは、予め定められたカットオフ値であり、
前記予め定められたカットオフ値は、
(1)各タンパク質のスコアは、カットオフなしと比較して高い陽性予測値で腫瘍応答を予測するROC分析又はパーセンタイル分析に基づいて決定される、複合バイオマーカースコアである、又は、
(2)生存期間を予測するシミュレーションモデル又はパーセンタイル分析に基づいて決定される複合バイオマーカースコアである
、方法。
【請求項19】
各タンパク質の前記スコアが、前記タンパク質の各々の前記ベースライン発現レベルに基づく2進値である、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記2進値が0又は1である、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記より良好な治療成績が、より長い全生存期間又はより長い無増悪生存期間である、請求項
19又は
20に記載の方法。
【請求項22】
前記
血液試料が
、血清試料、又は血漿試料である、請求項
18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質の各々の前記ベースライン発現レベルが、前記タンパク質の各々の量を測定することによって決定される、請求項
18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質の各々の前記ベースライン発現レベルが、前記タンパク質の各々をコードするmRNAの量を測定することによって決定される、請求項
18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記腎細胞癌が、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌である、請求項
18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも2つのタンパク質が、IL-18BP及びANG-2からなる、請求項
18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩が、レンバチニブメシル酸塩である、請求項
18~26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、一般的にはバイオマーカー及び腎細胞癌に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]腎細胞癌(RCC)は、成人において最も一般的な種類の腎臓がんであり、診断される腎臓がんの約90パーセントからなる。
【0003】
[0003]レンバチニブメシル酸塩はレンビマ(LENVIMA)(登録商標)として、米国食品医薬品局により、局所再発性若しくは転移性、進行性、放射性ヨウ素不応性の分化甲状腺がん、切除不能の肝細胞癌を有する患者を治療するため、又はエベロリムスと併用して進行腎細胞癌患者を治療するために認可されている。
【0004】
[0004]多くの抗腫瘍治療は、重度の悪心、嘔吐、又は重篤な疲労といった、望ましくない副作用に関連付けられている。そのような副作用は、特に複数の抗腫瘍剤が併用療法として使用される場合には、制御する必要がある。また、抗腫瘍治療は成功を収めているが、抗腫瘍治療を受けるすべての患者において著しい臨床応答をもたらすわけではなく、効果的でない治療に関連する望ましくない副作用、遅延、及びコストが生じる。したがって、特に抗腫瘍剤が併用療法で使用される場合に、抗腫瘍剤の投与前に、抗腫瘍剤に対する対象の応答を予測するために使用することのできるバイオマーカーが、大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
[0005]本出願は、少なくとも部分的には、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象を同定又は選択するために使用することのできる、バイオマーカーの同定に基づく。治療前のヒト対象から得られた生物学的試料中における、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベル(「ベースラインレベル」)は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象の有用な予測因子と同定される。さらに、治療前のヒト対象から得られた生物学的試料中における、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質の発現レベル(「ベースラインレベル」)に基づく複合バイオマーカーは、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象の有用な予測因子と同定される。さらに、治療前のヒト対象から得られた生物学的試料中における、IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質の発現レベル(「ベースラインレベル」)に基づく複合バイオマーカーは、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象の有用な予測因子と同定される。したがって、本明細書に記載される複合バイオマーカースコアを含めたバイオマーカー及び組成物は、例えば、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法から利益を得ることができる腎細胞癌を有する患者又は患者のサブセットを同定、層別化、及び/又は選択するのに有用である。さらに、本明細書に記載される方法は、例えば、腎細胞癌を患っているか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象に適切な治療様式(例えば、レンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法、又は代替的な腎細胞癌療法)を選択するのに有用である。
【0006】
[0006]一態様において、本開示は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象を同定する方法を提供する。本方法は、併用療法の投与前に対象から得られた生物学的試料をアッセイするステップ、並びに、生物学的試料中におけるIL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベルが、対照と比較して低いことを決定するステップを含む。生物学的試料中におけるIL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベルが低い対象は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるものと同定される。代替的には、本方法は、併用療法の投与前に対象から得られた生物学的試料をアッセイするステップ、並びに、生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアが、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にあることを決定するステップを含む。生物学的試料中でそのような複合バイオマーカースコアを有する対象は、併用療法に対して応答性であるものと同定される。ある特定の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。一部の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2を含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。一部の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。他の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。
【0007】
[0007]第2の態様において、本開示は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法の投与のために、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象を選択する方法を特徴とする。本方法は、ヒト対象から得られた生物学的試料を、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベルについてアッセイするステップを含む。生物学的試料中におけるIL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベルが対照と比較して低いと決定された場合、対象は、併用療法の投与のために選択される。ある特定の実施形態では、本方法は、併用療法をヒト対象に投与するステップをさらに含む。代替的には、本方法は、ヒト対象から得られた生物学的試料を、生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルについてアッセイするステップを含む。複合バイオマーカースコアが、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象が併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にあることが決定された場合、対象は、併用療法の投与のために選択される。ある特定の実施形態では、本方法は、併用療法をヒト対象に投与するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、本方法は、生物学的試料を、生物学的試料中における、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルについてアッセイするステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、生物学的試料を、生物学的試料中におけるHGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2を含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルについてアッセイするステップを含む。一部の実施形態では、本方法は、生物学的試料を、生物学的試料中におけるTIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルについてアッセイするステップを含む。他の実施形態では、本方法は、生物学的試料を、生物学的試料中におけるIL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質のベースライン発現レベルについてアッセイするステップを含む。
【0008】
[0008]第3の態様において、本開示は、腎細胞癌を治療する方法を提供する。本方法は、治療前の腎細胞癌を有するヒト対象から得られた生物学的試料を用意するステップと、生物学的試料中で、対照と比較して低い、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベルを測定するステップと、治療有効量のレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスをヒト対象に投与するステップとを含む。代替的には、本方法は、治療前の腎細胞癌を有するヒト対象から得られた生物学的試料を用意するステップと、生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを測定するステップと、治療有効量のレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスをヒト対象に投与するステップとを含み、ここで、複合バイオマーカースコアは、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象が併用療法に対して応答性であることを示す。ある特定の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。一部の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2を含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。一部の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。他の実施形態では、複合バイオマーカースコアは、生物学的試料中における、IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される。
【0009】
[0009]第4の態様において、本開示は、腎細胞癌を治療する方法を提供する。本方法は、腎細胞癌を有するヒト対象に、治療有効量のレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法を投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対照と比較して低い、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベル、又は、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にある、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有するものと同定されている。ある特定の実施形態では、対象は、ヒト対象から得られた生物学的試料中で、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のより低い発現レベルを有するものと同定されている。ある特定の実施形態では、対象は、ヒト対象から得られた生物学的試料中における、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有するものと同定されており、ここで、ある範囲内の複合バイオマーカースコアは、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象が併用療法に対して応答性であることを示す。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象から得られた生物学的試料中における、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2を含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有するものと同定されており、ここで、ある範囲内の複合バイオマーカースコアは、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象が併用療法に対して応答性であることを示す。
【0010】
[0010]一部の実施形態では、対象は、ヒト対象から得られた生物学的試料中における、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有するものと同定されており、ここで、ある範囲内の複合バイオマーカースコアは、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象が併用療法に対して応答性であることを示す。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象から得られた生物学的試料中における、IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有するものと同定されており、ここで、ある範囲内の複合バイオマーカースコアは、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象が併用療法に対して応答性であることを示す。
【0011】
[0011]第5の態様において、本開示は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象を治療する方法を特徴とする。本方法は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法をヒト対象に投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対象から得られた生物学的試料中で、対照と比較して低い、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベルを有するか、又は、ヒト対象は、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にある、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有する。ある特定の実施形態では、本方法は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法をヒト対象に投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対象から得られた生物学的試料中で、対照と比較して低い、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベルを有する。一部の実施形態では、本方法は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法をヒト対象に投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にある、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、又は(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有する。一部の実施形態では、本方法は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法をヒト対象に投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にある、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2を含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有する。一部の実施形態では、本方法は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法をヒト対象に投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にある、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有する。他の実施形態では、本方法は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法をヒト対象に投与するステップを含み、ここで、ヒト対象は、対照複合マーカースコアと比較して、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す範囲内にある、IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを有する。
【0012】
[0012]上述の複合バイオマーカースコアは、
生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルを測定するステップと、
各タンパク質のスコアをそのベースライン発現レベルに基づいて決定するステップと、
スコアを合計して複合バイオマーカースコアを得るステップと
によって計算することができる。
【0013】
[0013]一実施形態では、ベースライン発現レベルが、併用療法に応答するより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より大きな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合があり、ここで、対照複合バイオマーカースコアと等しいか又はそれより高い複合バイオマーカースコアは、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。一実施形態では、ベースライン発現レベルが、併用療法に応答するより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より小さな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合があり、ここで、対照複合バイオマーカースコアと等しいか又はそれより低い複合バイオマーカースコアは、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。
【0014】
[0014]一実施形態では、各タンパク質のスコアは、タンパク質の各々のベースライン発現レベルに基づく2進値である。一実施形態では、2進値は0又は1である。
【0015】
[0015]一実施形態では、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲は、タンパク質の各々について、ベースライン発現レベルを対照発現レベルと比較することによって決定される。
【0016】
[0016]一実施形態では、少なくとも5つのタンパク質は、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2を含む。別の実施形態では、少なくとも5つのタンパク質は、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む。さらに別の実施形態では、少なくとも5つのタンパク質は、HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2からなる。さらに別の実施形態では、少なくとも5つのタンパク質は、TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aからなる。
【0017】
[0017]一実施形態では、少なくとも2つのタンパク質は、IL-18BP及びANG-2を含む。別の実施形態では、少なくとも2つのタンパク質は、IL-18BP及びANG-2からなる。
【0018】
[0018]以下の実施形態は、上記態様のすべてについて想定される。
【0019】
[0019]一実施形態では、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩は、レンバチニブメシル酸塩である。
【0020】
[0020]一実施形態では、腎細胞癌は、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌である。
【0021】
[0021]一部の実施形態では、生物学的試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、腎細胞癌アーカイブ腫瘍試料、及び腎細胞癌生検試料からなる群から選択される。
【0022】
[0022]一部の実施形態では、対照又は対照発現レベルは、予め定められたカットオフ値である。一実施形態では、予め定められたカットオフ値は、カットオフなしと比較して高い陽性予測値で腫瘍応答を予測する受信者動作特性(ROC)分析又はパーセンタイル分析に基づいて決定されるタンパク質の発現レベルであり、ここで、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高いタンパク質の発現レベルは、高発現レベルであり、予め定められたカットオフ値より低い値は、低発現レベルである。腫瘍応答は、奏効率(ORR)、臨床的有効率(CBR)、又は最大腫瘍縮小率である。別の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、生存期間を予測するシミュレーションモデル又はパーセンタイル分析に基づいて決定されるタンパク質の発現レベルであり、ここで、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高いタンパク質の発現レベルは、タンパク質の高発現レベルであり、予め定められたカットオフ値より低い値は、タンパク質の低発現レベルである。この文脈において、生存期間は、無増悪生存期間(PFS)又は全生存期間(OS)である。一部の実施形態では、ORR、CBR、又はPFS及びOSは、Eisenhauer,E.A.ら、Eur.J.Cancer 45:228~247(2009)に記載されているRECIST 1.1 Response Criteriaによって定義される。
【0023】
[0023]一部の実施形態では、対照複合バイオマーカースコアは、予め定められたカットオフ値である。一実施形態では、予め定められたカットオフ値は、複合バイオマーカースコアであり、ここで、各タンパク質のスコアは、カットオフなしと比較して高い陽性予測値で腫瘍応答を予測するROC分析又はパーセンタイル分析に基づいて決定され、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高い複合バイオマーカースコアは、高い複合バイオマーカースコアであり、予め定められたカットオフ値より低い複合バイオマーカースコアは、低い複合バイオマーカースコアである。腫瘍応答は、ORR、CBR、又は最大腫瘍縮小率である。別の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、生存期間を予測するシミュレーションモデル又はパーセンタイル分析に基づいて決定される複合バイオマーカースコアであり、ここで、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高い複合バイオマーカースコアは、高い複合バイオマーカースコアであり、予め定められたカットオフ値より低い複合バイオマーカースコアは、低い複合バイオマーカースコアである。この文脈において、生存期間は、PFS又はOSである。
【0024】
[0024]一部の実施形態では、本方法は、試験結果を対象の医療提供者に伝達するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、本方法は、対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるか応答性でないかを示すよう、対象の医療記録を修正するステップをさらに含む。特定の実施形態では、医療記録は、コンピュータ可読媒体で作成される。ある特定の実施形態では、本方法は、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現プロファイル、又は、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアが、対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法に対して応答性であることを予測する場合、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法を対象に処方するステップをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現プロファイル、又は、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアが、対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む療法に対して応答性であることを予測する場合、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法を対象に投与するステップをさらに含む。
【0025】
[0025]一実施形態では、タンパク質の発現レベルは、タンパク質の量を測定することによって決定される。一実施形態では、タンパク質の量は、免疫学的方法によって測定することができる。一部の実施形態では、免疫学的方法は、酵素イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、電気化学発光イムノアッセイ、ラテックス比濁イムノアッセイ、ラテックス測光イムノアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、及びウエスタンブロッティングからなる群から選択される。別の実施形態では、タンパク質の量は、酵素イムノアッセイによって測定される。
【0026】
[0026]第6の態様において、本開示は、ヒト対象の腎細胞癌の治療においてエベロリムスと併用するためのレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を提供し、ここで、ヒト対象は、上述の方法により、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である対象と同定されている。一部の実施形態では、レンバチニブの薬学的に許容される塩は、レンバチニブメシル酸塩である。一実施形態では、腎細胞癌は、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌である。
【0027】
[0027]第7の態様において、本開示は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象が、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測するのに使用される、タンパク質検出剤を提供する。一実施形態では、タンパク質検出剤は、タンパク質に結合する抗体である。一部の実施形態では、レンバチニブの薬学的に許容される塩は、レンバチニブメシル酸塩である。
【0028】
[0028]第8の態様において、本開示は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象が、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測するのに使用される、タンパク質検出剤を備える、キットを特徴とする。ある特定の実施形態では、タンパク質検出剤は、タンパク質に結合する抗体である。ある特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体はポリクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、検出可能な薬剤とコンジュゲートされている。一実施形態では、検出可能な薬剤は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ビオチン、蛍光性部分、放射性部分、ヒスチジンタグ、又はペプチドタグである。一実施形態では、検出可能に標識された抗体が、マイクロプレート上にコーティングされている。ある特定の実施形態では、マイクロプレートは、96ウェルマイクロプレートである。ある特定の実施形態では、キットは、任意選択で、1つ又は複数の濃縮標準、1つ又は複数の緩衝液(例えば、洗浄緩衝液)、1つ又は複数の希釈剤(例えば、アッセイ希釈剤及び/又は較正希釈剤)、及び対象から得られた生物学的試料中のタンパク質にタンパク質検出剤が特異的に結合するかどうかの検出を容易にする1つ又は複数の試薬(例えば、着色試薬、停止液)を含む。一部の実施形態では、レンバチニブの薬学的に許容される塩は、レンバチニブメシル酸塩である。
【0029】
[0029]別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実践又は試験においては、本明細書に記載される方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を使用することができるが、例示的な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において引用されるすべての公開文献、特許出願、特許、及び他の参考文献は、全体として参照によって組み込まれる。矛盾のある場合には、本出願が定義を含めて優先する。材料、方法、及び例は単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0030】
[0030]本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】CBS分析(5バイオマーカー)における、LEN/EVEアーム及びEVEアームのCBS分類(0~2対3~5)によるPFSのカプランマイヤー(K-M)プロットである。
【
図2】CBS分析(5バイオマーカー)における、LEN/EVEアーム及びEVEアームのCBS分類(0~2対3~5)によるOSのK-Mプロットである。
【
図3】CBS分析(2バイオマーカー)における、LEN/EVEアーム及びEVEアームのCBS分類(0対1~2)によるPFSのK-Mプロットである。
【
図4】CBS分析(2バイオマーカー)における、LEN/EVEアーム及びEVEアームのCBS分類(0対1~2)によるOSのK-Mプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0032]本開示は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である腎細胞癌対象(例えばヒト患者)を同定する方法及びそのための組成物を提供する。本開示は、腎細胞癌(例えば、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌)を有するか、腎細胞癌を有することが疑われるか、又は発症するリスクがあり、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の投与が推奨される対象を同定するための予測バイオマーカーとしての、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベル、又は、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアを提供する。本明細書に記載される、複合バイオマーカースコアを含めたバイオマーカー、組成物、及び方法は、腎細胞癌を患っているか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象に適切な治療的様式(例えば、レンバチニブ若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法、又は代替的な腎細胞癌療法)を選択するのに有用である。さらに、本出願は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法から利益を得ることができる腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある患者を選択する方法、並びに治療の方法を提供する。
【0033】
[0033]定義
「対象」という用語は、ヒト、チンパンジー、オランウータン、ゴリラ、ヒヒ、サル、マウス、ラット、ブタ、ウマ、イヌ、及びウシを含むがこれらに限定されない哺乳動物を意味する。
【0034】
[0034]「併用療法」という用語は、2種以上の薬物を患者に同時に投与する療法を意味する。2種以上の薬物は、同時か、実質的に同時か、又は順次投与してもよい。いくつかの場合では、2種以上の薬物は、一緒に(例えば、1つの錠剤又はカプセルに)製剤することができる。他の場合では、2種以上の薬物は、共製剤されない(例えば、別々の錠剤又はカプセルとして投与される)。
【0035】
[0035]「レンバチニブ」という用語は、4-(3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミドを意味する。この化合物は、米国特許第7,253,286号の実施例368(コラム270参照)に開示されている。米国特許第7,253,286号は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。「レンバチニブ化合物」という用語は、「レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩」を意味する。レンバチニブの薬学的に許容される塩の一例は、レンバチニブメシル酸塩である。レンバチニブメシル酸塩はE7080とも言う。レンバチニブメシル酸塩はレンビマ(登録商標)として、米国食品医薬品局により、局所再発性若しくは転移性、進行性、放射性ヨウ素不応性の分化甲状腺がん、切除不能の肝細胞癌を有する患者を治療するため、又はエベロリムスと併用して進行腎細胞癌患者を治療するために認可されている。
【0036】
[0036]「薬学的に許容される塩」は、塩の種類に関して特に限定されるものではない。そのような塩の例としては、限定するものではないが、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、臭化水素酸塩、及びヨウ化水素酸塩などの無機酸付加塩、酢酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩などの有機カルボン酸付加塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロキシメタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、及びタウリン塩などの有機スルホン酸付加塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、プロカイン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン塩、及びフェネチルベンジルアミン塩などのアミン付加塩、並びにアルギニン塩、リジン塩、セリン塩、グリシン塩、アスパラギン酸塩、及びグルタミン酸塩などのアミノ酸付加塩が挙げられる。一実施形態では、薬学的に許容される塩は、メタンスルホン酸塩(「メシル酸塩」)である。4-(3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキサミドのメタンスルホン酸塩形態(すなわち、メシル酸塩)は、全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,612,208号に開示されている。
【0037】
[0037]「エベロリムス」という用語は、(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-12-{(1R)-2-[(1S,3R,4R)-4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メトキシシクロヘキシル]-1-メチルエチル}-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23,29,35-ヘキサメチル-11,36-ジオキサ-4-アザ-トリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-2,3,10,14,20-ペンタオンを意味する。この化合物は、米国特許第5,665,772号に開示されている。米国特許第5,665,772号は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。エベロリムスは、アフィニトール(AFINITOR)(登録商標)として、米国食品医薬品局により、スニチニブ又はソラフェニブによる治療の不成功後の進行腎細胞癌といった様々な疾患の治療のために認可されている。
【0038】
[0038]「タンパク質」という用語は、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味し、長さ又は翻訳後修飾にかかわらない。典型的には、本明細書に記載されるタンパク質は、調製物中の総タンパク質の少なくとも60重量%、例えば、試料中の総タンパク質の60重量%を構成する場合、「単離されている」。一部の実施形態では、本明細書に記載されるタンパク質は、調製物中の総タンパク質の少なくとも75重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも99重量%からなる。
【0039】
[0039]「VEGF標的療法」という用語は、血管内皮成長因子(VEGF)受容体(複数可)に作用する抗腫瘍剤の投与を含む任意の療法を意味する。VEGF標的療法に使用される抗腫瘍剤の非限定的な例は、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ、アキシチニブ、バタラニブ及びチボザニブである。
【0040】
[0040]「療法に応答する/応答性である」という用語は、療法を投与される対象が、提供される療法に対して正の応答を示すことを意味する。そのような正の応答の非限定的な例は、腫瘍サイズの減少、腫瘍転移の減弱、又は治療後の生存期間の延長である。併用療法に対して応答性であると予測される対象には、併用療法は、好ましい治療として推奨可能である。併用療法が好ましい治療として推奨可能である状況の非限定的な例は、2種の特定の薬物を含む併用療法が、2種の薬物を含み、そのうちの少なくとも1種が当該2種の特定の薬物とは異なる他の併用療法(複数可)よりも効果的であると予測される状況や、2種の特定の薬物を含む併用療法が、当該2種の薬物の一方又は各々を用いる単独療法よりも効果的であると予測される状況である。一実施形態では、この状況は、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスの併用療法が、エベロリムスの単独療法よりも効果的であると予測される場合であり、これらはいずれも、進行腎細胞癌の療法として米国食品医薬品局によって認可されている。
【0041】
[0041]対象由来の試料中のタンパク質の「ベースラインレベル」という用語は、エベロリムス及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の併用療法を対象に投与する前の試料中の当該タンパク質の量を意味する。
【0042】
[0042]「単一バイオマーカー分析」という用語は、治療に対する患者の応答性の同定、予測、又は選択の決定が、単一のバイオマーカーの発現レベルによってなされる分析を意味する。1つより多くのバイオマーカーが分析される場合、決定は各タンパク質についてなされる。より詳細に述べると、本開示の単一バイオマーカー分析は、生物学的試料中におけるIL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を使用して、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象が、本明細書において開示されるレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるかどうかを同定又は予測する分析である。
【0043】
[0043]「複合バイオマーカースコア分析」という用語は、治療に対する患者の応答性の同定、予測、又は選択の決定が、複数のタンパク質の発現レベルの総合的評価によってなされる分析を意味する。複合バイオマーカースコア分析に使用されるタンパク質は、所望の治療成績との関連性があるタンパク質から選択することができる。より詳細に述べると、本開示の複合バイオマーカースコア分析は、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアを使用して、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがあるヒト対象が、本明細書において開示されるレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるかどうかを同定又は予測する分析である。複合バイオマーカースコアは、
生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルを測定するか又は測定しているステップと、
各タンパク質のスコアをそのベースライン発現レベルに基づいて決定するか又は決定しているステップと、
スコアを合計すること又は合計したことで複合バイオマーカースコアを得るステップと
によって計算することができる。
【0044】
[0044]医師は、ベースライン発現レベルの測定、スコアの決定、若しくは複合バイオマーカースコアの計算を自身で行ってもよいし、又は他の医師若しくは医療提供者に依頼してもよい。
【0045】
[0045]一実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より高いスコアが各タンパク質に割り当てられる場合がある。そのような場合、対照複合バイオマーカースコアと等しいか又はそれより高い複合バイオマーカースコアは、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。別の実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より低いスコアが各タンパク質に割り当てられる場合がある。そのような場合、対照複合バイオマーカースコアと等しいか又はそれより低い複合バイオマーカースコアは、ヒト対象がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。
【0046】
[0046]タンパク質の各々のベースライン発現レベルに基づくスコアは、2進値であり得る。2進値は、任意の値とすることができる。2進値は、ゼロ及び正数から選択することができる。2進値は、ゼロ及び正の整数から選択することもできる。2進値の一例は、0又は1である。より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲は、タンパク質の各々について、ベースライン発現レベルを対照発現レベルと比較することによって決定することができる。HGF、MIG、IL-18BP、IL-18、ANG-2、TIMP-1、M-CSF、及びVEGF-Aについては、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲は、各タンパク質の対照発現レベルより低い数値範囲であり得る。複合バイオマーカースコア分析に使用されるタンパク質は、所望の治療成績との関連性(例えば強い関連性又は相関性)があるタンパク質から選択される。所望の治療成績との関連性があるタンパク質は、当該技術分野において公知の統計学的方法によって決定することができる。例えば、単変量コックス回帰分析及びログランク検定を使用した中央値カットオフポイントを用いる二分分析を行って、所望の治療成績との関連性がある候補バイオマーカーを同定することができ、最も強い関連性があるいくつかの候補バイオマーカーを、複合バイオマーカースコア分析のために選択することができる。「少なくとも5つのタンパク質」は、(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む5つより多くのタンパク質、又は(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aの5つのタンパク質であってもよい。「少なくとも2つのタンパク質」は、IL-18BP及びANG-2を含む2つより多くのタンパク質、又はIL-18BP及びANG-2の2つのタンパク質であってもよい。複合バイオマーカースコア分析の方法の1つは、Vossら、Br J Cancer.2016年3月15日;114(6):642~9に記載されている。
【0047】
[0047]IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の対照と比較して低いベースライン発現レベル(例えば、タンパク質又はmRNAの発現)は、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す/予測する。例えば、療法による治療前の対象から得られた生物学的試料中におけるIL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の(対照と比較して)低いベースライン発現レベルは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。
【0048】
[0048]ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より大きな値が各タンパク質値のスコアとして割り当てられるとき、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアで、対照複合バイオマーカースコアと比較して高いスコアは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す/予測する。例えば、療法による治療前の対象から得られた生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアで、対照複合マーカースコアと比較して高いスコアは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。
【0049】
[0049]ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より小さな値が各タンパク質値のスコアとして割り当てられるとき、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアで、対照複合バイオマーカースコアと比較して低いスコアは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを示す/予測する。例えば、療法による治療前の対象から得られた生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアで、対照複合マーカースコアと比較して低いスコアは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測する。
【0050】
[0050]ある特定の実施形態では、対象が療法による治療後に部分奏効を示す場合、対象は、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に応答すると決定される。「部分奏効」は、ベースライン最長径(LD)和を基準とした、標的病変のLD和における少なくとも30%の減少を意味する。一部の実施形態では、対象が療法による治療後に腫瘍縮小を示す場合、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に応答すると決定される。「最大腫瘍縮小率」(MTS)は、ベースライン直径和を基準とした、標的病変の直径和の変化率を意味する。他の実施形態では、対象が全生存期間を示す場合、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に応答すると決定される。「全生存期間」(OS)とは、無作為化から、原因を問わない死亡までの時間を意味する。「無作為化」は、患者の療法計画を決定する際、患者を試験群又は対照群に無作為化することを意味する。一部の実施形態では、対象が全生存期間と腫瘍縮小の両方を示す場合、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に応答すると決定される。他の実施形態では、対象が無増悪生存期間を示す場合、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に応答すると決定される。「無増悪生存期間」(PFS)とは、無作為化の日から、疾患進行又は死亡のいずれか早い方の最初の記録日までの時間を意味する。一部の実施形態では、対象が無増悪生存期間と腫瘍縮小の両方を示す場合、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に応答すると決定される。
【0051】
[0051]本開示は、エベロリムスのみを含む単独療法よりも、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の後に延命効果(例えば、OS)を有する可能性が高い、腎細胞癌を有する対象を同定する方法を提供する。本方法では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法での治療前に得られた対象の生物学的試料をアッセイし、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベル、又は
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質の発現レベルを測定する。IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、対照と比較して低いベースライン発現は、対象が、エベロリムスのみを含む単独療法よりも、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の後に延命効果(例えば、OS)を有する可能性が高いことを示す。ベースライン発現レベルが該数値範囲に入る場合に、より大きな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合には、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアで、対照複合バイオマーカースコアと比較して高いスコアは、対象が、エベロリムスのみを含む単独療法よりも、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の後に延命効果を有する可能性が高いことを示す。ベースライン発現レベルが該数値範囲に入る場合に、より小さな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合には、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合マーカースコアで、対照複合バイオマーカースコアと比較して低いスコアは、対象が、エベロリムスのみを含む単独療法よりも、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の後に延命効果(例えば、OS)を有する可能性が高いことを示す。
【0052】
[0052]ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、12、18又は24mg(レンバチニブ遊離塩基として各々計算される)の経口投与量で1日1回投与することができる。
【0053】
[0053]ある特定の実施形態では、エベロリムスを、本発明の対象に、5又は10mgの経口投与量で1日1回投与することができる。
【0054】
[0054]ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、18mgの経口投与量で1日1回、エベロリムス1日1回経口5mgと共に投与することができる。ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、12mgの経口投与量で1日1回、エベロリムス1日1回経口5mgと共に投与することができる。ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、24mgの経口投与量で1日1回、エベロリムス1日1回経口5mgと共に投与することができる。ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、18mgの経口投与量で1日1回、エベロリムス1日1回経口10mgと共に投与することができる。ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、12mgの経口投与量で1日1回、エベロリムス1日1回経口10mgと共に投与することができる。ある特定の実施形態では、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)を、本発明の対象に、24mgの経口投与量で1日1回、エベロリムス1日1回経口10mgと共に投与することができる。
【0055】
[0055]タンパク質の量は、免疫学的アッセイなど、当該技術分野において公知の任意の方法を使用して測定することができる。そのような方法の非限定的な例としては、酵素イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、電気化学発光イムノアッセイ、ラテックス比濁イムノアッセイ、ラテックス測光イムノアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、及びウエスタンブロッティングが挙げられる。ある特定の実施形態では、タンパク質の量は、酵素イムノアッセイによって測定される。
【0056】
[0056]対照
上述のように、本発明の方法は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象由来の生物学的試料中におけるタンパク質のベースライン発現レベルを測定するか又は測定しているステップを含む場合があり、ここで、対照と比較したタンパク質の発現レベルは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用治療に対して応答性である(又は併用治療から利益を得る)ことを予測するか、又は、対照と比較したタンパク質の発現レベルは、複合マーカースコアを計算するために使用される。ある特定の実施形態では、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象由来の生物学的試料中における、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベルが、対照よりも低い場合、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるものと同定される。複合バイオマーカースコア分析を使用するある特定の実施形態では、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
の各タンパク質のベースライン発現レベルが、対照と比較して、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、特定のスコアが割り当てられる。一実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より大きな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合がある。別の実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より小さな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合がある。
【0057】
[0057]この文脈において、「対照」という用語は、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない対象から得られた試料(例えば、同じ組織のもの)を含む。そのような、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない対象には、併用療法に応答すると予測されるが、併用療法に対するその応答が、エベロリムスによる単独療法に対する予測される応答と比べて著しく良好ではない対象が含まれ得る。また、「対照」という用語には、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でないことが分かっている対象から過去に得られ、併用療法の必要性を予測しようとする対象から採取される試験試料と将来比較するための参照として使用される試料(例えば、同じ組織のもの)も含まれる。
【0058】
[0058]一部の実施形態では、「陽性対照」が「対照」の代わりに使用される場合がある。特定の細胞型又は組織における「陽性対照」発現レベルは、代替的には、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるものと同定されている1体又は複数の対象の分析によって、予め定められていてもよい。この予め定められた参照値(併用療法に対して応答性であるものと同定されている複数の対象から得られた発現レベルの平均又は中央値であり得る)を、次いで、試験試料との比較において、「陽性対照」発現レベルとして使用してもよい。そのような比較において、分析されているIL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の発現レベルが、予め定められた陽性対照参照と同じか、又は比較可能である場合、対象は、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であると予測される。複合バイオマーカースコア分析を適用する実施形態では、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
の各バイオマーカーのベースライン発現レベルが、予め定められた陽性対照参照と同じか、又は比較可能である場合、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入るため、特定のスコアが割り当てられる。一部の実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より大きな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合がある。他の実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より小さな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられる場合がある。
【0059】
[0059]ある特定の実施形態では、「対照」は、予め決められたカットオフ値である。
【0060】
[0060]対照バイオマーカースコア
上述のように、複合バイオマーカースコア分析を使用する本発明の方法は、スコアを合計することによって複合バイオマーカースコアを決定するステップを含む場合があり、合計されるスコアの各々は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象由来の生物学的試料中における、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて決定され、ここで、対照複合バイオマーカースコアと比較した複合バイオマーカースコアは、対象がレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用治療に対して応答性である(又は併用治療から利益を得る)ことを予測する。ある特定の実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より大きな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられ、かつ、複合バイオマーカースコアが対照と等しいか又はそれより高いとき、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるものと同定される。ある特定の実施形態では、ベースライン発現レベルが、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲に入る場合に、より小さな値が各タンパク質のスコアとして割り当てられ、かつ、複合バイオマーカースコアが対照と等しいか又はそれより低いとき、対象は、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるものと同定される。この文脈において、「対照複合バイオマーカースコア」という用語は、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない対象から得られた試料(例えば、同じ組織のもの)の複合バイオマーカースコアを含む。そのような、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない対象には、併用療法に応答すると予測されるが、併用療法に対するその応答が、エベロリムスによる単独療法に対する予測される応答と比べて著しく良好ではない対象が含まれ得る。また、「対照複合バイオマーカースコア」という用語には、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でないことが分かっている対象から過去に得られ、併用療法に対する応答性を予測しようとする対象から採取される試験試料と将来比較するための参照として使用される試料(例えば、同じ組織のもの)の複合バイオマーカースコアも含まれる。
【0061】
[0061]一部の実施形態では、「陽性対照複合バイオマーカースコア」が「対照複合バイオマーカースコア」の代わりに使用される場合がある。特定の細胞型又は組織の「陽性対照複合バイオマーカースコア」は、代替的には、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるものと同定されている1体又は複数の対象の分析によって、予め定められていてもよい。この予め定められた参照値(併用療法に対して応答性であるものと同定されている複数の対象から得られた複合バイオマーカースコアの平均又は中央値であり得る)を、次いで、試験試料との比較において、「陽性対照複合バイオマーカースコア」として使用してもよい。そのような比較において、分析されている、
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
の発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアが、予め定められた参照陽性対照複合バイオマーカースコアと同じか、又は比較可能である場合、対象は、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であると予測される。
【0062】
[0062]ある特定の実施形態では、「対照複合バイオマーカースコア」は、予め決められたカットオフ値である。
【0063】
[0063]カットオフ値
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法は、タンパク質の発現レベルが、予め決められたカットオフ値を上回るか又は下回るかを決定するステップを含む。
【0064】
[0064]本明細書に記載される単一バイオマーカー分析を使用する方法及び組成物によれば、タンパク質の参照ベースライン発現レベルは、カットオフ値として同定され、このカットオフ値を上回るか又は下回るかが、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の必要性を予測する。さらに、複合バイオマーカースコア分析を使用する方法及び組成物によれば、タンパク質の参照ベースライン発現レベルは、カットオフ値として同定され、このカットオフ値を上回るか又は下回るかが、各バイオマーカータンパク質についての、より良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲を定義する。いくつかのカットオフ値は、臨床的相関性が、カットオフのいずれの側の数値範囲においても有意性を維持し得るという点で絶対的なものではないが、特定の試料種類について、タンパク質の発現レベルの最適なカットオフ値を選択すること(例えば、H-スコアを変化させて)は可能である。本明細書に記載される方法で使用するために決定されるカットオフ値は、例えば、発現レベルの公表されている範囲と比較してもよいが、使用される方法論及び患者集団に対して個別化することもできる。最適なカットオフ値の改良は、使用される統計学的方法の洗練、並びに異なる試料種類の参照レベル値を決定するために使用される試料の数及び供給源に応じて決定され得ることが理解される。したがって、確立されたカットオフ値は、定期的な再評価又は方法論若しくは集団分布の変化に基づき、上方に調整することもでき、下方に調整することもできる。
【0065】
[0065]タンパク質の参照発現レベルは、種々の方法によって決定することができる。参照レベルは、例えば、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であるか、又はレンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない、対象(例えば、患者)の集団における、目的のタンパク質の発現レベルの比較によって決定することができる。これは例えば、患者コホート全体がグラフ表示され、第1の軸がタンパク質の発現レベルを表し、第2の軸が、タンパク質の1つ又は複数の発現レベルが試料に含まれるコホート内の対象の数を表す、ヒストグラム分析によって達成することができる。次いで、これらの個別の群を最もよく識別する発現レベルに基づき、タンパク質の参照発現レベルの決定を行うことができる。参照レベルは、あらゆる対象に等しく適用可能な単一の数の場合もあり、又は参照レベルは、対象の特定の分集団に応じて変化する場合もある。例えば、老齢の対象は、同じがんについて、若齢の対象とは異なる参照レベルを有し得る。さらに、より進行した疾患(例えば、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌)を有する対象は、軽度の形態の疾患を有する対象とは異なる参照値を有し得る。
【0066】
[0066]予め定められたカットオフ値は、ROC分析に基づいて決定されるタンパク質発現レベル又は複合バイオマーカースコアであり得る。ROC曲線は、臨床試験のカットオフ値を決定するために使用される。2つの患者群があり、確立された標準技術を使用することにより、一方の群が、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であると分かっており、他方の群が、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でないと分かっている状況を考慮されたい。2群の全メンバーの生物学的試料を使用した測定が、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法の必要性を試験するために使用される。
【0067】
[0067]本開示の単一バイオマーカー分析では、試験により、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である対象のすべてではなく、一部が見出される。試験によって見出された、併用療法に対して応答性である対象の、併用療法に対して応答性である(確立された標準技術によって分かっている)対象の総数に対する比が、真陽性率である(感度としても知られる)。本開示の単一バイオマーカー分析では、試験により、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない対象のすべてではなく、一部が見出される。試験によって見出された、併用療法に対して応答性でない対象の、併用療法に対して応答性でない(確立された標準技術によって分かっている)対象の総数に対する比が、真陰性率である(特異度としても知られる)。期待されるのは、上記試験のROC曲線分析により、偽陽性及び偽陰性の数を最小限に抑えるカットオフ値が見出されることである。
【0068】
[0068]本開示の複合バイオマーカースコア分析では、試験により、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法のより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲にタンパク質発現レベルが入る対象のすべてではなく、一部が見出される。試験によって見出された、より良好な治療成績を有する対象の、より良好な治療成績を有する(確立された標準技術によって分かっている)対象の総数に対する比が、真陽性率である(感度としても知られる)。本開示の複合バイオマーカースコア分析では、試験により、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法のより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関する数値範囲にタンパク質発現レベルが入らない対象のすべてではなく、一部が見出される。試験によって見出された、より良好な治療成績を有しない対象の、併用療法によるより良好な治療成績を有しない(確立された標準技術によって分かっている)対象の総数に対する比が、真陰性率である(特異度としても知られる)。期待されるのは、上記試験のROC曲線分析により、偽陽性及び偽陰性の数を最小限に抑えるカットオフ値が見出されることである。
【0069】
[0069]本開示の複合バイオマーカースコア分析では、試験により、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性である対象のすべてではなく、一部が見出される。試験によって見出された、併用療法に対して応答性である対象の、併用療法に対して応答性である(確立された標準技術によって分かっている)対象の総数に対する比が、真陽性率である(感度としても知られる)。本開示の複合バイオマーカースコア分析では、試験により、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性でない対象のすべてではなく、一部が見出される。試験によって見出された、併用療法に対して応答性でない対象の、併用療法に対して応答性でない(確立された標準技術によって分かっている)対象の総数に対する比が、真陰性率である(特異度としても知られる)。期待されるのは、上記試験のROC曲線分析により、偽陽性及び偽陰性の数を最小限に抑えるカットオフ値が見出されることである。
【0070】
[0070]ROCは、識別閾値を変化させた際の、バイナリークラス層別システムの性能を示すプロット図である。ROCは、様々な閾値設定のもとで、陽性のうちの真陽性の割合を、陰性のうちの偽陽性の割合に対してプロットすることによって作成される。
【0071】
[0071]一実施形態では、タンパク質の発現レベルは、ある陽性予測値で腫瘍応答を予測するROC分析に基づいて決定され、ここで、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高いタンパク質の発現レベルは、タンパク質の高発現レベルであり、予め定められたカットオフ値より低い値は、タンパク質の低発現レベルである。陽性予測値は、真陽性である陽性試験結果の割合であり、試験対象である基礎状態を陽性試験が反映する確率を反映する。ROC曲線を構築し、陽性予測値を決定する方法は、当該技術分野において周知である。ある特定の実施形態では、腫瘍応答は、ORR、CBR、又は最大腫瘍縮小率である。
【0072】
[0072]同様に、複合バイオマーカースコアは、ROC分析に基づいて決定される。
【0073】
[0073]別の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、生存期間を予測するシミュレーションモデルに基づいて決定されるタンパク質の発現レベルであってもよく、ここで、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高いタンパク質の発現レベルは、タンパク質の高発現レベルであり、予め定められたカットオフ値より低い値は、タンパク質の低発現レベルである。一部の実施形態では、生存期間はPFSである。他の実施形態では、生存期間はOSである。
【0074】
[0074]別の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、生存期間を予測するシミュレーションモデルに基づいて決定される複合バイオマーカースコアであってもよく、ここで、予め定められたカットオフ値と等しいか又はそれより高い複合バイオマーカースコアは、高い複合バイオマーカースコアであり、予め定められたカットオフ値より低い値は、低い複合バイオマーカースコアである。一部の実施形態では、生存期間はPFSである。他の実施形態では、生存期間はOSである。
【0075】
[0075]ある特定の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、対象集団の20thパーセンタイル~80thパーセンタイルの範囲内である。一部の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、対象集団の20thパーセンタイル~75thパーセンタイル、25thパーセンタイル~80thパーセンタイル、又は25thパーセンタイル~75thパーセンタイルの範囲内である。一部の実施形態では、予め定められたカットオフ値は、対象集団の中央値、第1三分位値、第2三分位値、第1分位値、第3分位値、第1五分位値、第2五分位値、第3五分位値、又は第4五分位値である。
【0076】
[0076]生物学的試料
本明細書に記載される方法において好適な生物学的試料には、測定しようとするタンパク質を含む、任意の生体液、細胞、組織、又はそれらの画分が含まれる。生物学的試料は、例えば、ヒト対象から得られた検体であってもよいし、又はそのような対象に由来してもよい。例えば、試料は、生検によって得られた組織切片、アーカイブ腫瘍組織、又は組織培養下にあるか若しくは組織培養に適合させた細胞であり得る。また、生物学的試料は、血液、血漿、血清などの生体液、又は基質(例えば、ガラス、ポリマー、紙)に吸収させた試料であってもよい。生物学的試料は、腎細胞癌組織試料を含む場合もある。特定の実施形態では、生物学的試料は、対象において腫瘍又は前癌性病変を含むことが疑われる領域から得られた腫瘍細胞(複数可)又は腫瘍組織である。例えば、生物学的試料は、腎細胞癌腫瘍試料であり得る。所望の場合、生物学的試料をさらに分画して、特定の細胞型を含む画分にしてもよい。例えば、血液試料を分画して、血清にするか、又は赤血球細胞若しくは白血球細胞(白血球)などの特定の種類の血液細胞を含む画分にしてもよい。所望の場合、試料は、組織と流体試料の組合せなど、対象由来の試料の組合せであってもよい。
【0077】
[0077]生物学的試料は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象から得ることができる。ある特定の実施形態では、対象は、進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌を有する。一部の実施形態では、対象は、再発性腎細胞癌を有する。他の実施形態では、対象は、切除不能の進行腎細胞癌又は転移性腎細胞癌を有する。他の実施形態では、対象は、ステージIII腎細胞癌を有する。ある特定の実施形態では、対象は、ステージIV腎細胞癌を有する。
【0078】
[0078]生物学的試料を得るためには任意の好適な方法を用いてよいが、例示的な方法としては、例えば、静脈切開術、細針吸引生検法が挙げられる。試料は、例えば、顕微解剖(例えば、レーザーキャプチャー顕微解剖(LCM)又はレーザー顕微解剖(LMD))によって収集することもできる。
【0079】
[0079]試料中の分子(例えば、核酸又はタンパク質)の活性又は完全性を保存する試料を得る方法及び/又は試料を保管する方法は、当業者には周知である。例えば、生物学的試料を、試料中の分子(例えば、核酸又はタンパク質)を保存するか、又は分子の変化を最小限に抑える、緩衝液及び/又は阻害剤、例えばヌクレアーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、及びホスファターゼ阻害剤のうちの1つ若しくは複数などの1つ又は複数の追加の薬剤とさらに接触させてもよい。そのような阻害剤には、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(P-アミノエチルエーテル)N,N,N1,N1-テトラ酢酸(EGTA)などのキレート剤、フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)、アプロチニン、ロイペプチン、アンチパインなどのプロテアーゼ阻害剤、及びリン酸塩、フッ化ナトリウム、バナジン酸塩などのホスファターゼ阻害剤が含まれる。分子を単離するために好適な緩衝液及び条件は、当業者には周知であり、例えば、特性評価しようとする試料中の分子の種類に応じて異なり得る(例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(付録47)、John Wiley & Sons、New York(1999);Harlow及びLane、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988);Harlow及びLane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1999);Tietz Textbook of Clinical Chemistry、第3版、Burtis及びAshwood編、W.B.Saunders、Philadelphia(1999)を参照されたい)。試料は、妨害物質の存在を排除するか又は最小限に抑えるために処理してもよい。例えば、生物学的試料を分画又は精製して、目的外の1つ又は複数の材料を除去してもよい。生物学的試料を分画又は精製する方法としては、限定するものではないが、液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、又はアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法が挙げられる。本明細書に記載される方法で使用する場合、試料は、種々の物理的状態にあってよい。例えば、試料は、液体若しくは固体であってもよく、液体に溶解若しくは懸濁していてもよく、エマルション若しくはゲル中にあってもよく、又は材料に吸収されていてもよい。
【0080】
[0080]タンパク質の発現レベルの決定
タンパク質の発現レベルは、タンパク質自体、又はタンパク質をコードするmRNAを測定することによって決定することができる。
【0081】
[0081]一実施形態では、タンパク質の発現は、タンパク質の量又は濃度を測定することによって決定することができる。タンパク質の量又は濃度を決定する方法は、当該技術分野において周知である。一般的に使用されている方法は、目的の標的タンパク質に特異的な抗体の使用を含む。例えば、タンパク質発現を決定する方法としては、限定するものではないが、ウエスタンブロット又はドットブロット分析、免疫組織化学(例えば、定量的免疫組織化学)、免疫細胞化学、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT;Coligan,J.E.ら編(1995)Current Protocols in Immunology.Wiley、New York)、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、電気化学発光イムノアッセイ、ラテックス比濁イムノアッセイ、ラテックス測光イムノアッセイ、免疫クロマトグラフィーアッセイ、及び抗体アレイ分析が挙げられる(例えば、各々の開示内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20030013208号及び同第2004171068号を参照されたい)。タンパク質発現を検出するための上記方法及び追加の方法の多くに関するさらなる詳細は、例えば、Sambrookら(上掲)に見出すことができる。
【0082】
[0082]一例において、タンパク質の発現レベルは、ウエスタンブロッティング技術を使用して決定することができる。例えば、ライセートを生物学的試料から調製してもよいし、又は、生物学的試料自体をLaemmli緩衝液と接触させ、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供してもよい。サイズにより分離された、SDS-PAGE分離後のタンパク質を、次いで、フィルター膜(例えば、ニトロセルロース)に移し、そのタンパク質に特異的な、検出可能に標識された抗体を使用した、イムノブロッティング技術に供してもよい。検出可能に標識された抗体の結合量は、生物学的試料中のタンパク質の量を示す。
【0083】
[0083]別の例では、イムノアッセイを使用してタンパク質発現レベルを測定することができる。上記のように、イムノアッセイは、検出部分(例えば、蛍光剤又は酵素)を有する抗体を用いて行うことができる。生物学的試料由来のタンパク質は、固相基質(例えば、マルチウェルアッセイプレート、ニトロセルロース、アガロース、セファロース、コード化粒子、又は磁気ビーズ)に直接コンジュゲートしてもよいし、又は、特異的結合ペアの第1のメンバー(例えば、ビオチン又はストレプトアビジン)にコンジュゲートして、特異的結合ペアの第2のメンバー(例えば、ストレプトアビジン又はビオチン)に結合すると固相基質に結合するようにしてもよい。このように固相基質に結合することにより、タンパク質を、検出抗体と接触させる前に、生物学的試料の他の妨害成分又は無関係の成分から分けて精製することができ、またその後には、未結合の抗体を洗浄することもできる。この場合も上記と同様に、検出可能に標識された抗体の結合量は、生物学的試料中のタンパク質の量を示す。
【0084】
[0084]抗体の形態に関して特に制限はなく、本開示は、モノクローナル抗体だけでなくポリクローナル抗体も含む。ウサギなどの動物をタンパク質又はタンパク質の断片で免疫化することによって得られる抗血清、並びにあらゆるクラスのポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、ヒト抗体、及び遺伝的組換えによって生成されたヒト化抗体も含まれる。
【0085】
[0085]インタクトタンパク質又はインタクトタンパク質の部分ペプチドを、免疫化のための抗原として使用してもよい。タンパク質の部分ペプチド、例えば、タンパク質のアミノ(N)末端断片及びカルボキシ(C)末端断片を用いてもよい。
【0086】
[0086]発現させようとするタンパク質又はタンパク質の断片(例えば、免疫学的断片)をコードする遺伝子を、既知の発現ベクターに挿入し、本明細書に記載されるベクターで宿主細胞を形質転換することにより、標準的方法を使用して、所望のタンパク質又はタンパク質の断片が宿主細胞の外部又は内部から回収される。このタンパク質を感作抗原として使用することができる。また、本発明のタンパク質を発現する細胞、細胞ライセート、又は化学合成されたタンパク質を感作抗原として使用してもよい。
【0087】
[0087]感作抗原によって免疫化される哺乳動物は制限されないが、細胞融合に使用される親細胞との適合性を考慮して動物を選択することが好ましい。一般的に、げっ歯目、ウサギ目、又は霊長目に属する動物が使用される。使用することのできる、げっ歯目に属する動物の例としては、例えば、マウス、ラット、及びハムスターが挙げられる。使用することのできる、ウサギ目に属する動物の例としては、例えば、ウサギが挙げられる。使用することのできる、霊長目に属する動物の例としては、例えば、サルが挙げられる。使用されるサルの例としては、狭鼻下目(旧世界ザル)、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)、アカゲザル、マントヒヒ、及びチンパンジーが挙げられる。
【0088】
[0088]さらに、本開示の抗体は、測定しようとするタンパク質に結合する限り、抗体断片又は修飾抗体であってもよい。例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、又はH鎖Fv及びL鎖Fvがリンカーによって好適に結合している一本鎖Fv(scFv)(Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:5879~5883、(1988))を、抗体断片として用いてもよい。
【0089】
[0089]抗体は、蛍光物質、放射性物質、及び発光物質などの様々な分子にコンジュゲートされていてもよい。そのような部分を抗体に結合させる方法は、当該技術分野において既に確立されており、常法となっている(例えば、米国特許第5,057,313号及び同第5,156,840号を参照されたい)。
【0090】
[0090]抗体の抗原結合活性をアッセイする方法の例としては、例えば、吸光度測定、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び/又は免疫蛍光法が挙げられる。例えば、ELISAを使用する場合、本発明のバイオマーカーによってコードされるタンパク質を、本開示の抗体でコーティングしたプレートに加え、次いで、抗体試料、例えば、抗体産生細胞の培養上清、又は精製された抗体を加える。次いで、アルカリホスファターゼなどの酵素で標識された、一次抗体を認識する二次抗体を加え、プレートをインキュベートし、洗浄し、p-ニトロフェニルホスフェートなどの酵素基質を加えた後の抗原結合活性を評価するために、吸光度を測定する。タンパク質として、タンパク質断片、例えば、C末端を含む断片、又はN末端を含む断片を使用してもよい。本発明の抗体の活性を評価するには、BIAcore(GE Healthcare)を使用してもよい。
【0091】
[0091]これらの方法を使用することにより、本発明の抗体と、測定しようとするタンパク質を含むと推定される試料とが接触し、上述の抗体とタンパク質との間で形成された免疫複合体を検出又はアッセイすることにより、タンパク質が検出又はアッセイされる。
【0092】
[0092]質量分析に基づく定量化アッセイ法、例えば、限定するものではないが、安定同位体で標識された内部標準と組み合わせた多重反応モニタリング(MRM)に基づく手法は、タンパク質を定量的に測定するためのイムノアッセイに代わる方法である。これらの手法は抗体の使用を必要としないため、費用効率よく、かつ時間効率よく分析を行うことができる(例えば、Addonaら、Nat.Biotechnol.、27:633~641、2009;Kuzykら、Mol.Cell Proteomics、8:1860~1877、2009;Paulovichら、Proteomics Clin.Appl.、2:1386~1402、2008を参照されたい)。さらに、MRMには優れたマルチプレックス能力があるため、多数のタンパク質の定量化を並行して同時に行うことができる。これらの方法の基礎理論は確固たるものになっており、薬物代謝、及び低分子の薬物動態分析に広く利用されている。
【0093】
[0093]種々の好適な方法を用いて、遺伝子のmRNA発現の検出及び/又は遺伝子のmRNA発現のレベルの測定を行うことができる。例えば、mRNA発現は、ノーザンブロット若しくはドットブロット分析、逆転写酵素PCR(RT-PCR;例えば、定量RT-PCR)、in situハイブリダイゼーション(例えば、定量的in situハイブリダイゼーション)、又は核酸アレイ(例えば、オリゴヌクレオチドアレイ又は遺伝子チップ)分析を使用して決定することができる。そのような方法の詳細は、以下に記載され、また例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual Second Edition第1巻、第2巻、及び第3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、New York、USA、1989年11月;Gibsonら(1999)Genome Res.、6(10):995~100i;及びZhangら(2005)Environ.Sci.Technol.、39(8):2777~2785;米国特許出願公開第2004086915号;欧州特許第0543942号;及び米国特許第7,101,663号に記載されており、これらの各々の開示内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
[0094]一実施形態では、生物学的試料中のmRNA集団の各集団の存在又は量は、全mRNAを生物学的試料から単離し(例えば、Sambrookら(上掲)及び米国特許第6,812,341号を参照されたい)、単離したmRNAをアガロースゲル電気泳動に供して、mRNAをサイズにより分離することによって決定することができる。サイズにより分離されたmRNAを、次いで、ニトロセルロース膜などの固体支持体に移す(例えば、拡散させる)。次いで、目的のmRNA配列に相補的で、対応するmRNA集団に結合することでmRNA集団を検出可能にする、1つ又は複数の検出可能に標識されたポリヌクレオチドプローブを使用して、生物学的試料中のmRNA集団の存在又は量を決定することができる。検出可能な標識としては、例えば、蛍光標識(例えば、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、アロフィコシアニン(APC)、又はフィコエリトリン)、発光標識(例えば、ユウロピウム、テルビウム、Quantum Dot Corporation、Palo Alto、CAの供給によるキュードット(Qdot)(商標)ナノ粒子)、放射性標識(例えば、1251、1311、35S、32P、33P、又は3H)、及び酵素標識(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼ)が挙げられる。
【0095】
[0095]別の実施形態では、生物学的試料中のmRNAの各集団の存在又は量は、核酸(又はオリゴヌクレオチド)アレイ(例えば、以下の「アレイ及びキット」に記載するアレイ)を使用して決定することができる。例えば、生物学的試料から単離したmRNAを、例えば、ランダムヘキサマー又はオリゴ(dT)プライマーによる第1鎖合成を用いるRT-PCRを使用して、増殖させることができる。アンプリコンは、短いセグメントに断片化することができる。RT-PCRステップを使用してアンプリコンを検出可能に標識してもよいし、又は、任意選択で、RT-PCRステップの後にアンプリコンを検出可能に標識してもよい。例えば、種々の好適な技術(例えば、上掲のSambrookら参照)のうちのいずれかを使用して、検出可能な標識を酵素的に(例えば、ニックトランスレーション、又はT4ポリヌクレオチドキナーゼなどのキナーゼによって)、又は化学的に、アンプリコンにコンジュゲートしてもよい。次いで、検出可能に標識されたアンプリコンを、複数のポリヌクレオチドプローブセットと接触させ、ここで、各セットは、対応するアンプリコンに特異的な(かつ結合可能な)1つ又は複数のポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド)プローブを含み、複数のポリヌクレオチドプローブセットは、各々が異なるアンプリコンに対応する多くのプローブセットを含む。
【0096】
[0096]一般的に、プローブセットは、固体支持体に結合しており、各プローブセットの位置は、固体支持体において予め決められている。検出可能に標識されたアンプリコンが、プローブセットのうち対応するプローブに結合することにより、生物学的試料中の標的mRNAの存在又は量が示される。核酸アレイを使用してmRNA発現を検出する追加の方法は、例えば、米国特許第5,445,934号、同第6,027,880号、同第6,057,100号、同第6,156,501号、同第6,261,776号、及び同第6,576,424号に記載されており、これらの開示内容は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0097】
[0097]検出可能な標識を検出及び/又は定量化する方法は、標識の性質に左右される。適切な酵素(検出可能な標識が酵素である場合;上記参照)によって触媒される反応の生成物は、限定するものではないが、蛍光性、発光性、若しくは放射性である場合もあれば、又は可視光若しくは紫外光を吸収する場合もある。そのような検出可能な標識を検出するのに好適な検出器の例としては、限定するものではないが、x線フィルム、放射能カウンター、シンチレーションカウンター、分光光度計、比色計、蛍光光度計、ルミノメーター、及びデンシトメーターが挙げられる。
【0098】
[0098]応答プロファイルの作成
本明細書に記載される方法は、腎細胞癌を有する対象の、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対する応答プロファイルを生成するために使用することもできる。応答プロファイルには、例えば、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩による治療の前に測定することが必要なタンパク質のベースライン発現レベルを示す情報、及び/又は任意の腎細胞癌の組織学的分析が含まれ得る。結果として得られる情報(レンバチニブ療法応答プロファイル)は、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象(例えば、ヒト患者)が、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対して応答性であることを予測するために使用され得る。
【0099】
[0099]レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)の応答プロファイルは、電子形態(例えば、コンピュータ、又はDVD、CD、若しくはフロッピーディスクなどの他の電子式(コンピュータ可読)媒体に記憶された患者電子記録)であっても書面形態であってもよいことが理解される。レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)の応答プロファイルは、数体の(例えば、2、3、4、5、10、20、30、50、又は100体以上の)対象(例えば、ヒト患者)に関する情報を含む場合もある。そのような複数対象の応答プロファイルは、例えば、対象コホートの特定の特徴の分析(例えば、統計学的分析)に使用することができる。
【0100】
[0100]レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に対する対象の応答性は、いくつかの方法で分類することができ、分類は、対象の疾患、疾患の重症度、及び対象に投与される特定の薬物に左右される。ごく簡単に言えば、応答性は、治療前と比較した病状のあらゆる減弱であり、非応答性は、治療前と比較して病状の変化がまったくないことである。腎細胞癌を有する対象(例えば、ヒト)の応答性は、限定するものではないが、腫瘍サイズ、臨床的有用性(CB)、PFS、OS、最大腫瘍縮小率MTS、又はORRなど、いくつかの客観的臨床証拠のうちの1つ又は複数に基づいて分類することができる。
【0101】
[0101]「臨床的有用性」は、次の状態、すなわち完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、又は6か月以上のPFSを伴う安定疾患(SD)のうちの1つがあることを意味する。「完全奏効」は、すべての標的病変の完全な消失を意味する。「部分奏効」は、ベースラインLD和を基準とした、標的病変のLD和における少なくとも30%の減少を意味する。「進行性疾患」(PD)は、治療開始以降に記録された最小のLD和を基準とした、標的病変のLD和における少なくとも20%の増加か、又は1つ若しくは複数の新たな病変の出現を意味する。「安定疾患」は、治療開始以降で最小のLD和を基準として、PRに適格とするのに十分な標的病変の縮小も、PDに適格とするのに十分な増加もないことを意味する。
【0102】
[0102]「全生存期間」(OS)は、無作為化から、原因を問わない死亡までの時間と定義される。「無作為化」は、患者の療法計画を決定する際、患者を試験群又は対照群に無作為化することを意味する。
【0103】
[0103]「無増悪生存期間」(PFS)とは、無作為化の日から、疾患進行又は死亡のいずれか早い方の最初の記録日までの時間を意味する。
【0104】
[0104]「最大腫瘍縮小率」(MTS)は、ベースライン直径和を基準とした、標的病変の直径和の変化率を意味する。
【0105】
[0105]「奏効率」(ORR)は、CR又はPRのいずれかを有する対象を、SD又はPDのいずれかを有する対象と比較するものである。
【0106】
[0106]「より良好な治療成績」は、腫瘍サイズ、CB、PFS、OS、MTS率、又はORRに基づいて評価することができる。一実施形態では、より良好な治療成績は、より長いPFS又はより長いOSである。
【0107】
[0107]キット
本出願は、キットも提供する。ある特定の実施形態では、キットは、測定が必要なタンパク質又はその濃度若しくは発現レベルを検出するために使用することができる、1つ又は複数の抗体を含み得る。キット中の抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよく、検出可能な標識にさらにコンジュゲートされていてもよい。キットは、任意選択で、生物学的試料中における測定が必要なタンパク質の検出及び/又は濃度測定のための説明を含んでいてもよい。
【0108】
[0108]キットは、任意選択で、例えば、対照(例えば、測定が必要なタンパク質の濃度標準)を含んでいてもよい。場合により、対照は、単一バイオマーカー分析の場合はレンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の必要性を予測するタンパク質の発現レベル若しくは発現レベル範囲、又は複合分析の場合はより良好な治療成績を有するヒト対象集団と相関するタンパク質の発現レベル若しくは発現レベル範囲を含む、付属物(例えば、付属書類、又はCD、DVD、若しくはフロッピーディスクなどの電子媒体)であってもよい。複合分析のためのキットは、任意選択で、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法の必要性を予測する対照複合バイオマーカースコア値又は範囲を含む付属物を含み得る。
【0109】
[0109]一部の実施形態では、キットは、生物学的試料を処理するための1つ又は複数の試薬(例えば、較正試薬、緩衝液、希釈剤、着色試薬、反応停止用試薬)を含み得る。例えば、キットは、生物学的試料からタンパク質を単離するための試薬、及び/又は生物学的試料中の測定が必要なタンパク質の存在及び/又は量を検出するための試薬(例えば、タンパク質に結合する抗体及び/又はタンパク質に結合する抗体に結合する抗体)を含み得る。
【0110】
[0110]ある特定の実施形態では、キットは、少なくとも1つのマイクロプレート(例えば、96ウェルプレート;すなわち、8ウェル12列)を含む。マイクロプレートは、対応するプレートカバーを備えていてもよい。マイクロプレートは、ポリスチレン又は任意の他の好適な材料でできていてもよい。マイクロプレートは、測定しようとするタンパク質の存在を同定するために使用される抗体が、各ウェル内部にコーティングされていてもよい。抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされていてもよい。キットはまた、少なくとも1つの接着剤ストリップを含んでいてもよい。
【0111】
[0111]一部の実施形態では、キットは、例えば、発現プロファイル又はマイクロアレイ分析の結果を分析するためのソフトウェアパッケージを含んでいてもよい。
【0112】
[0112]本明細書に記載されるキットはまた、任意選択で、レンバチニブ化合物及びエベロリムスを含む併用療法を投与するための説明を含んでいてもよく、ここで、IL-18BP、ICAM-1、FGF-21及びM-CSFからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質のベースライン発現レベル、又は
(A)(i)HGF、MIG、IL-18BP、IL-18及びANG-2、若しくは(ii)TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2及びVEGF-Aを含む少なくとも5つのタンパク質、又は
(B)IL-18BP及びANG-2を含む少なくとも2つのタンパク質
のベースライン発現レベルに基づいて計算される複合バイオマーカースコアは、腎細胞癌を有するか、有することが疑われるか、又は発症するリスクがある対象が、レンバチニブ化合物(例えば、レンバチニブメシル酸塩)及びエベロリムスを含む併用療法に応答性であることを予測する。
【実施例】
【0113】
[0113]実施例1:レンバチニブ及び/又はエベロリムスによる治療を受けた患者におけるバイオマーカー発現レベルの測定
[0114]レンバチニブのフェーズ2試験を、VEGF標的療法後の転移性腎細胞癌(RCC)患者において行った。VEGF標的療法の既往がある転移性腎細胞癌患者に、疾患進行又は管理できない毒性の発現まで、レンバチニブメシル酸塩(「レンバチニブ」)、エベロリムス、又はこれらの併用を供与した。合計153名の対象を、次の投与を受ける3つの治療アームに無作為化した:
1)レンバチニブ18mg/日(レンバチニブ遊離塩基として;以下同様とする)+エベロリムス5mg/日(アームA[LEN/EVE治療アーム]、N=51)、
2)レンバチニブ24mg/日(アームB[LEN治療アーム]、N=52)、又は
3)エベロリムス10mg/日(アームC[EVE治療アーム]、N=50)。
【0114】
各サイクルは、4週間(28日間)からなった。
【0115】
[0115]バイオマーカー評価のための血液試料を、サイクル1第1日(治療前)に、3つすべての治療アームの対象から収集した(LEN/EVE、N=49;LEN、N=51;EVE、N=47;合計、N=147)。145名の対象の試料(すべての治療意図[ITT]集団の94.8%;LEN/EVE、N=49;LEN、N=50;EVE、N=46)中、表1に示す40の候補バイオマーカーを、19の予め構成されたCustomMAPイムノアッセイパネルを使用してアッセイし、Myriad RBM(Austin、TX、USA)において、メーカーによるマルチプレックスフローサイトメトリーに基づくプラットフォーム(Multi-Analyte Profile(MAP))によって測定した。以下の実施例に記載する相関分析で結果をさらに分析した。
【0116】
【0117】
[0117]実施例2:PFS及びOSの単一バイオマーカー分析
【0118】
[0118]各血清バイオマーカーのベースラインレベルについて、3つのアームの各々で、単変量コックス回帰を使用して、PFSとの相関分析を行った。連続値をとるバイオマーカーのハザード比(HR)は、1標準偏差での測定値間のハザードの比(標準偏差当たりのHR)として計算した。血清IL-18BPのベースラインレベルは、LEN/EVEアームにおいてPFSと関連していた(表2)。以下の表において、FDRは偽発見率を意味し、MSTは生存時間中央値を意味し、CIは信頼区間を意味する。
【0119】
【0120】
[0120]IL-18BPについて、二分分析を行って、低レベル及び高レベルの対象における血清バイオマーカーのベースラインレベルを、3つのアームにおけるPFSと相関させた。カットオフポイントは、中央値、第1三分位値、第2三分位値、第1四分位値、又は第3四分位値であった。選択されたカットオフポイントの各々を用い、単変量コックス回帰及びログランク検定を使用して、各群とPFSとの間の関連性を探索した。第2三分位値カットオフポイントにおいて、LEN/EVEアームでは、高IL-18BP群のPFS中央値(5.6か月)は、低群のPFS中央値(17.5か月)より短かった(表3)。治療アーム、ベースラインレベル、及びPFSを用いる多変量コックス回帰分析は、EVEアームと比較して、第2三分位値カットオフポイントでの交互作用を示した(交互作用P値=0.0389)。これらの結果は、低いIL-18BPレベルが、EVEアームのPFSと比較して長いLEN/EVEアームのPFSを予測する役割を果たした可能性があることを示唆した。
【0121】
【0122】
[0122]各血清バイオマーカーのベースラインレベルについて、3つのアームの各々で、単変量コックス回帰を使用して、OSとの相関分析を行った。連続値をとるバイオマーカーのハザード比(HR)は、1標準偏差での測定値間のハザードの比(標準偏差当たりのHR)として計算した。血清FGF-21、ICAM-1、及びM-CSFのベースラインレベルは、LEN/EVEアームにおいてOSと関連していた(表4)。
【0123】
【0124】
[0124]FGF-21、ICAM-1、及びM-CSFについては、単変量コックス回帰及びログランク検定を使用し、中央値カットオフポイントで二分分析を行って、低レベル及び高レベルの対象における血清バイオマーカーのベースラインレベルを、3つのアームにおけるOSと相関させた。FGF-21、ICAM-1、及びM-CSFの低いベースラインレベルは、LEN/EVEアームにおいてより長いOSと関連していた(表5)。治療アーム、ベースラインレベル、及びOSを用いる多変量コックス回帰分析は、EVEアームと比較して、中央値カットオフポイントでの交互作用を示した(FGF-21、ICAM-1、及びM-CSFのそれぞれの交互作用P値=0.0223、0.0039、及び0.0362)。これらの結果は、低いFGF-21、ICAM-1、及びM-CSFのレベルが、EVEアームのOSと比較して長いLEN/EVEアームのOSを予測する役割を果たした可能性があることを示唆した。
【0125】
【0126】
[0126]実施例3:PFSの複合バイオマーカースコア分析(5マーカー)
【0127】
[0127]2016年のVossら(Br J Cancer.2016年3月15日;114(6):642~9)に従い、中央値によるカットオフ分析においてベースラインレベルがLEN/EVEアームのPFSと最も強い関連性を示した、5つの選択されたバイオマーカー(HGF、MIG、IL-18BP、IL-18、及びANG-2)を使用し、複合バイオマーカースコア(CBS)分析を行った(表6)。
【0128】
【0129】
[0129]CBSに統合される各バイオマーカーについて、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、単一バイオマーカーカットオフ分析でより長い生存期間に関連することが決定されている範囲に入る場合には、1の値を割り当て、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、より短い生存期間に関連する範囲に分類された場合には、0の値を割り当てた。個々の値(5つのバイオマーカーの各々で0対1)の和を、各対象のCBS(0~5の範囲)として算出した。次いで、患者をCBSによって低群及び高群(0対1~5、0~1対2~5、0~2対3~5、0~3対4~5、及び0~4対5)に二分した。各治療アームにおける選択された二分点の各々を用い、単変量コックス回帰及びログランク検定を使用して、各群とPFSとの間の関連性を探索した。治療アーム、ベースラインレベル、及びPFSを用いる多変量コックス回帰分析により、交互作用P値を推定した。また、各群と奏効率(ORR)との間の関連性を、フィッシャーの正確検定を使用して探索した。
【0130】
[0130]LEN/EVEアームでは、CBS低群とCBS高群との間でPFSに有意差があったが、EVEアームでは、CBS低群とCBS高群との間でPFSに有意差はなかった(
図1)。LEN/EVEアームでは、PFSは、高いCBSスコア(3~5)を有する患者において、低いCBSスコア(0~2)を有する患者よりも長かった(mPFS:高CBSで20.1か月、低CBSで5.6か月、HR:0.279、P値:0.0022)。高いCBSスコア(3~5)を有する患者では、PFSは、LEN/EVEアームにおいて、EVEアームよりも長かった(mPFS:LEN/EVEで20.1か月、EVEで3.6か月、HR:0.186、P値:<0.0001、表7)。
【0131】
[0131]多変量コックス回帰分析は、LEN+EVE対EVEのPFSとCBS群との間の有意な交互作用を示した(P=0.0154)。
【0132】
[0132]高いCBSスコア(3~5)を有する患者では、ORRは、LEN/EVE(57.1%)において、EVEアーム(5.0%)よりも高かった(P値=0.0002、表7)。
【0133】
【0134】
[0134]これらのデータの示すところによれば、高いCBSは、PFSの利益と相関し、このスコアを使用して、EVE単独療法と比較して併用療法から明らかに利益を得る患者を同定することができる。
【0135】
[0135]実施例4:OSの複合バイオマーカースコア分析(5マーカー)
【0136】
[0136]実施例3と同様に、ベースラインレベルが中央値によるカットオフ分析においてLEN/EVEアームのOSとの最も強い関連性を示した、5つの選択されたバイオマーカー(TIMP-1、M-CSF、IL-18BP、ANG-2、及びVEGF-A)を使用し、CBS分析を行った(表8)。
【0137】
【0138】
[0138]CBSに統合される各バイオマーカーについて、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、単一バイオマーカーカットオフ分析でより長い生存期間に関連することが以前に決定されている範囲に入る場合には、1の値を割り当て、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、より短い生存期間に関連する範囲に分類された場合には、0の値を割り当てた。個々の値(5つのバイオマーカーの各々で0対1)の和を、各対象のCBS(0~5の範囲;高=好ましい生存期間)として算出した。次いで、患者をCBSによって低群及び高群に二分した(0対1~5、0~1対2~5、0~2対3~5、0~3対4~5、及び0~4対5)。各治療アームにおける選択された二分点の各々を用い、単変量コックス回帰及びログランク検定を使用して、各群とOSとの間の関連性を探索した。治療アーム、ベースラインレベル、及びOSを用いる多変量コックス回帰分析により、交互作用P値を推定した。また、各群と奏効率(ORR)との間の関連性を、フィッシャーの正確検定を使用して探索した。
【0139】
[0139]LEN/EVEアームでは、CBS低群とCBS高群との間でOSに有意差があったが、EVEアームでは、CBS低群とCBS高群との間でOSに有意差はなかった(
図2)。LEN/EVEアームでは、OSは、高いCBSスコア(3~5)を有する患者において、低いCBSスコア(0~2)を有する患者よりも長かった(OS中央値(mOS):高CBSで評価不可能(NE)、低CBSで12.6か月、HR=0.150、P値<0.0001)。高いCBSスコア(3~5)を有する患者では、OSは、LEN/EVEアームにおいて、EVEアームよりも長かった(mOS:LEN/EVEでNE、EVEで17.4か月、HR:0.331、P値:0.0079、表9)。
【0140】
[0140]多変量コックス回帰分析は、LEN+EVE対EVEのPFSとCBS群との間の有意な交互作用を示した(P=0.0125)。
【0141】
[0141]高いCBSスコア(3~5)を有する患者では、ORRは、LEN/EVE(63.0%)において、EVEアーム(5.3%)よりも高かった(P値<0.0001、表9)。
【0142】
【0143】
[0143]これらのデータの示すところによれば、高いCBSは、OSの利益と相関し、このスコアを使用して、EVE単独療法と比較して併用療法から明らかに利益を得る患者を同定することができる。
【0144】
[0144]実施例5:PFSの複合バイオマーカースコア分析(2マーカー)
【0145】
[0145]IL-18BP及びANG-2は、実施例3及び4において、PFS及びOSのCBS分析のために選択したバイオマーカーに共通していた。これら2つのバイオマーカーを使用して、PFSのCBS分析(2マーカー)を行った。
【0146】
[0146]CBSに統合される各バイオマーカーについて、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、単一バイオマーカーカットオフ分析でより長い生存期間に関連することが決定されている範囲に入る場合には、1の値を割り当て、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、より短い生存期間に関連する範囲に分類された場合には、0の値を割り当てた。個々の値(2つのバイオマーカーの各々で0対1)の和を、各対象のCBS(0~2の範囲)として算出した。次いで、患者をCBSによって低群及び高群(0対1~2及び0~1対2)に二分した。各治療アームにおける選択された二分点の各々を用い、単変量コックス回帰及びログランク検定を使用して、各群とPFSとの間の関連性を探索した。治療アーム、ベースラインレベル、及びPFSを用いる多変量コックス回帰分析により、交互作用P値を推定した。また、各群と奏効率(ORR)との間の関連性を、フィッシャーの正確検定を使用して探索した。
【0147】
[0147]LEN/EVEアームでは、CBS低群とCBS高群との間でPFSに有意差があったが、EVEアームでは、CBS低群とCBS高群との間でPFSに有意差はなかった(
図3)。LEN/EVEアームでは、PFSは、高いCBSスコア(1~2)を有する患者において、低いCBSスコア(0)を有する患者よりも長かった(mPFS:高CBSで17.5か月、低CBSで5.6か月、HR=0.364、P値=0.0130)。高いCBSスコア(1~2)を有する患者では、PFSは、LEN/EVEアームにおいて、EVEアームよりも長かった(mPFS:LEN/EVEで17.5か月、EVEで5.5か月、HR:0.254、P値:<0.0001、表10)。
【0148】
[0148]多変量コックス回帰分析は、LEN+EVE対EVEのPFSとCBS群との間の有意な交互作用を示さなかった(P=0.2297)。
【0149】
[0149]高いCBSスコア(1~2)を有する患者では、ORRは、LEN/EVE(54.3%)において、EVEアーム(6.9%)よりも高かった(P値<0.0001、表10)。
【0150】
【0151】
[0151]実施例6:OSの複合バイオマーカースコア分析(2マーカー)
【0152】
[0152]IL-18BP及びANG-2は、実施例3及び4において、PFS及びOSのCBS分析のために選択したバイオマーカーに共通していた。これら2つのバイオマーカーを使用して、OSのCBS分析(2マーカー)を行った。
【0153】
[0153]CBSに統合される各バイオマーカーについて、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、単一バイオマーカーカットオフ分析でより長い生存期間に関連することが決定されている範囲に入る場合には、1の値を割り当て、それぞれのベースラインのバイオマーカーレベルが、より短い生存期間に関連する範囲に分類された場合には、0の値を割り当てた。個々の値(2つのバイオマーカーの各々で0対1)の和を、各対象のCBS(0~2の範囲)として算出した。次いで、患者をCBSによって低群及び高群(0対1~2及び0~1対2)に二分した。各治療アームにおける選択された二分点の各々を用い、単変量コックス回帰及びログランク検定を使用して、各群とOSとの間の関連性を探索した。治療アーム、ベースラインレベル、及びOSを用いる多変量コックス回帰分析により、交互作用P値を推定した。
【0154】
[0154]LEN/EVEアーム及びEVEアームにおいて、CBS低群とCBS高群との間でOSに有意差があった(
図4)。LEN/EVEアームでは、OSは、高いCBSスコア(1~2)を有する患者において、低いCBSスコア(0)を有する患者よりも長かった(mOS:高CBSで32.1か月、低CBSで11.9か月、HR=0.213、P値<0.0001)。EVEアームでは、OSは、高いCBSスコア(1~2)を有する患者において、低いCBSスコア(0)を有する患者よりも長かった(mOS:高CBSで17.5か月、低CBSで11.4か月、HR=0.461、P値=0.0294)。高いCBSスコア(1~2)を有する患者では、OSは、LEN/EVEアームにおいて、EVEアームよりも長かった(mOS:LEN/EVEで32.1か月、EVEで17.5か月、HR:0.504、P値:0.0359、表11)。
【0155】
[0155]多変量コックス回帰分析は、LEN+EVE対EVEのOSとCBS群との間の有意な交互作用を示さなかった(P=0.2125)。
【0156】
【0157】
[0157]他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は本発明の範囲を例示することを意図しており、限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点、及び改変形態は、続く特許請求の範囲内にある。