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特許7431237暗視デバイスのためのプログラム可能な性能構成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】暗視デバイスのためのプログラム可能な性能構成
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
G06F1/26
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021534353
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019066807
(87)【国際公開番号】W WO2020180384
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】16/225,082
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512169604
【氏名又は名称】エルビット システムズ オブ アメリカ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ミハルスキ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】キャッスルベリー,ランサム ハル
(72)【発明者】
【氏名】バルボーニ,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】スミス,アーリン ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】シャボー,レイモン リオ
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/072749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/108180(US,A1)
【文献】米国特許第7141777(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/090291(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/001085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/230707(US,A1)
【文献】特開2018-019152(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107171600(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0196038(US,A1)
【文献】特開2011-018369(JP,A)
【文献】特開2014-179990(JP,A)
【文献】特開2014-92786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗視デバイスのイメージ増倍器用の電源であって、
プロセッサと、
前記プロセッサの制御下で、前記イメージ増倍器に制御電圧を供給するように構成されている電源回路と、
前記プロセッサとの通信する、制御ロジック及び性能パラメータを格納するように構成されたメモリと、
を備え、
前記プロセッサは、前記性能パラメータにしたがって前記制御ロジックを実行し、前記電源回路を制御し、前記制御電圧を前記イメージ増倍器に供給し、かつ、パスワードを用いて取り消し可能ソフトウェアロックを適用するように構成されており、
前記取り消し可能ソフトウェアロックは、前記パスワードなしで、前記性能パラメータが変更されるのを妨げる、
電源。
【請求項2】
前記制御電圧は、前記イメージ増倍器のフォトカソードに供給される制御電圧である、
請求項1記載の電源。
【請求項3】
前記性能パラメータは、前記制御電圧のリフレッシュレートを制御するように構成されている、
請求項1記載の電源。
【請求項4】
前記性能パラメータは、前記制御電圧のためのゲーティングファクタを制御するように構成されている、
請求項1記載の電源。
【請求項5】
前記性能パラメータは、前記制御電圧に固定ゲーティングファクタを適用するように構成されている、
請求項4記載の電源。
【請求項6】
前記性能パラメータは、予め定められた閾値に基づいて前記制御電圧に前記ゲーティングファクタを適用するように構成されている、
請求項4記載の電源。
【請求項7】
前記性能パラメータは、前記暗視デバイスの前記イメージ増倍器のための低光量フォトカソード電圧設定点である、
請求項1記載の電源。
【請求項8】
前記性能パラメータは、前記暗視デバイスの前記イメージ増倍器のための高光量フォトカソード電圧設定点である、
請求項1記載の電源。
【請求項9】
前記制御ロジック及び前記性能パラメータが変更されるのを妨げるハードウェアロック及びソフトウェアロックのうちの1つ、
をさらに備える、
請求項1記載の電源。
【請求項10】
前記ハードウェアロックは、前記メモリを前記暗視デバイスの外部インタフェースに接続するデータバス及びクロックラインのうちの少なくとも1つの経路に配置されたブローヒューズを含む、
請求項9記載の電源。
【請求項11】
暗視デバイスの性能を制御する方法であって、
前記暗視デバイスのメモリ内に複数の性能構成パラメータを格納するステップと、
前記格納するステップの後、前記メモリ内に格納された前記複数の性能構成パラメータのうちの少なくとも一部を変更できないように、前記暗視デバイスにハードウェアロック及びソフトウェアロックのうちの少なくとも1つを適用するステップと、
前記ソフトウェアロックを適用するときに、パスワードを使用して取り消し可能ソフトウェアロックを適用するステップであって、前記取り消し可能ソフトウェアロックは、前記パスワードなしで前記複数の性能パラメータのうちの少なくとも一部が変更されるのを妨げる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記ハードウェアロックを適用するときに、
前記メモリを前記暗視デバイスの外部インタフェースに接続するデータバス及びクロックラインのうちの少なくとも1つの経路に配置されたヒューズをブローするステップ、
をさらに含む、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
所定の回数、間違ったパスワードを受け取った後、
前記パスワードの使用による前記複数の性能構成パラメータのうちの少なくとも一部の変更がもはやできないように、取り消し不可能なソフトウェアロックを適用するステップ、
をさらに含む、
請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記メモリにプログラムコードを格納するステップと、
前記プログラムコードを格納した後、前記メモリに格納された前記プログラムコードを変更できないように、前記ハードウェアロック及び前記ソフトウェアロックのうちの少なくとも1つを前記暗視デバイスに適用するステップ、
請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、
前記プログラムコードは、前記暗視デバイスの光増倍管のためのフォトカソード電圧の固定デューティファクタゲーティング、及び前記暗視デバイスの前記光増倍管のための前記フォトカソード電圧に対するアノード電流制御ゲーティングファクタ、のうちの少なくとも1つを制御する、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記複数の性能構成パラメータは、低光量フォトカソード電圧設定点、高光量フォトカソード電圧設定点、及びフォトカソード電圧のリフレッシュレートのうちの少なくとも1つを含む、
請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視デバイスに関し、暗視デバイスの電源に関し、より具体的には、暗視デバイスの性能を構成するためのデジタル及びソフトウェア技術に関する。
【背景技術】
【0002】
暗視デバイスは、多くの産業用途及び軍事用途に使用され得る。例えば、かかるデバイスは、パイロットのナイトビジョンを強化するため、天体を撮影するため、及び網膜色素変性症(夜盲症)の兵士又は患者にナイトビジョンを提供するために使用される。このデバイスは、しばしば、低強度光を増幅するため、又は非可視光を可視容易な画像(readily viewable images)に変換するために使用されるイメージ増倍器を組み込んでいる。かかるイメージ増倍器の一つは、イメージ増倍管である。
【0003】
イメージ増倍管は、典型的には、真空ハウジング内に配置された、例えば、ガリウムヒ素(GaAs)活性層及びマイクロチャネルプレート(MCP)と共に、フォトカソードを含む。可視及び赤外エネルギーは、例えば、フォトカソードに衝突し、カソード活性層に吸収され、それによって電子/正孔対が生成され得る。生成された電子は真空キャビティ内に放出され、MCPによって増幅される。
【0004】
より具体的には、電子がフォトカソードから出るとき、MCPの入力表面とフォトカソードとの間の電位差によって、MCPの入力表面に向かって電子が加速され、この電位差は、MCP対カソード間隔及びMCP構成(フィルム化又は未フィルム化)に依存し、約200~900ボルトである。電子がMCPの入力表面に衝突すると、二次電子がMCP内で生成される。すなわち、MCPは、入力表面に入る電子1個につき数百個の電子を生成することができる。MCPはまた、その入力表面とその出力表面との間の、典型的には700~1200ボルトの電位差にもさらされる。この電位差は、MCPにおける電子増倍を可能にする。
【0005】
増倍された電子がMCPを出ると、電子は、蛍光体スクリーンとMCPの出力表面との間のさらに別の電位差によって、蛍光体スクリーン(又は他のアノード表面)に向かって真空キャビティを通して加速される。MCPの出力表面の電位(This latter potential)は、約4200~5400ボルトのオーダーであり得る。
【0006】
イメージ増倍管と一体化された又は封入された(potted)電源は、概して、上述の種々の電位差を生成し提供するために、また、イメージ増倍管の種々の構成要素に制御電圧をさらに提供するために使用される。電源及び増倍管は、例えば、比較的低光量条件、比較的高光量条件を含む様々な照明条件下で動作することが期待される。これらのすべての条件を取り扱うために電源を構成し制御することは、困難なことがある。さらに、異なるレベルの性能を有する暗視装置を供給することが望ましい場合がある。例えば、ある場合には、輸出規制を満たすために暗視デバイスの性能を制限又は低下させる必要があり得る。
【発明の概要】
【0007】
本明細書には、暗視デバイスの性能を制御する方法が記載されている。方法は、暗視デバイスのメモリ内に、例えば複数の性能構成パラメータ及び制御アルゴリズムを格納するステップと、格納するステップの後、メモリ内に格納された複数の性能構成パラメータのうちの少なくとも一部を変更できないように、ハードウェアロック及びソフトウェアロックのうちの少なくとも1つを暗視デバイスに適用するステップと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、暗視デバイスの性能を制御する方法は、暗視デバイスのメモリに、制御ロジックと、制御ロジックが実行されるときに制御ロジックによって使用される複数の性能構成パラメータと、を格納するステップと、メモリに格納された制御ロジックの少なくとも一部を変更できないように、暗視デバイス内の物理ヒューズをブローする又は切る(blowing)ステップと、メモリ内に格納された複数の性能構成パラメータのうちの少なくとも一部を変更できないように、暗視デバイスにソフトウェアロックを適用するステップと、を含む。
【0009】
別の実施形態では、暗視デバイスの光増倍器用の電源は、イメージ増倍器に制御電圧を供給するように構成された電源回路と、制御ロジック及び性能を制御するパラメータを格納するように構成されたメモリと、プロセッサと、を備え、プロセッサは、制御ロジックを実行するように構成されており、制御ロジックは、性能パラメータ設定にしたがって、カソード制御電圧にゲーティングデューティファクタを適用し、その結果、暗視デバイスの性能は、ゲーティングデューティファクタの適用のない暗視デバイスの性能に比べて低下する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による、デジタル制御された電源及び関連するイメージ増倍器をブロック図で示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態による出力輝度対光レベルのプロットを示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態による、異なるフォトカソード制御電圧(V1)に応答するフォトカソード電流のプロットを示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態による、フォトカソード制御電圧(V1)及びマイクロチャネルプレート制御電圧(V2)の制御スキームを示す図である。
図5図5は、本発明の実施例による、フォトカソード制御電圧(V1)の印加を制御するために用いるスイッチ構成の回路図である。
図6A図6Aは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給のリフレッシュレートを表すトレースを示す図である。
図6B図6Bは、本発明の実施形態による、低光量レベルでのフォトカソード制御電圧(V1’)を表すトレースを示す図である。
図6C図6Cは、本発明の実施形態による、高光量レベルでのフォトカソード制御電圧(V1’)を表すトレースを示す図である。
図7A図7Aは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧のリフレッシュレートを表すトレースを示す図である。
図7B図7Bは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧の「単純な」ゲートドライブパルシング又はゲーティングを表すトレースを示す図である。
図7C図7Cは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧の「単純な」ゲートドライブパルシング又はゲーティングを表すトレースを示す図である。
図8A図8Aは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧のリフレッシュレートを表すトレースを示す図である。
図8B図8Bは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧の「インテリジェント」ゲートドライブパルシング又はゲーティングを表すトレースを示す図である。
図8C図8Cは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧の「インテリジェント」ゲートドライブパルシング又はゲーティングを表すトレースを示す図である。
図8D図8Dは、本発明の実施形態による、フォトカソード供給電圧の「インテリジェント」ゲートドライブパルシング又はゲーティングを表すトレースを示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態による、セキュリティロック機能を含む、デジタル制御電源を別のブロック図で示す図である。
図10図10は、本発明の実施形態による、暗視デバイスの性能を制御する一連の動作又はプロセスを示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
同様の参照番号は、本開示全体を通じて同様の要素を識別するために使用されている。
【0012】
本発明の実施形態による、デジタル制御された電源及び関連するイメージ増倍器をブロック図で示す図である。具体的には、図1は、デジタル制御電源150によって給電され制御されるイメージ増倍管110を示す。増倍管110は、フォトカソード112と、マイクロチャネルプレート(MCP)114と、蛍光体層118を含むアノード116とを含む。
【0013】
デジタル電源(又は単に「電源」)150は、電源150自身によって使用され、増倍管110に伝達される電力を供給するバッテリ155又は他のエネルギー源を含む。電源150は、特に、制御ロジック180及び状態変数(又は設定)185(以下にさらに説明する)を格納する中央処理ユニット(CPU)160及びメモリ170をさらに含む。バッテリ155は、制御電圧V1、V2、及びV3のそれぞれのために電力を供給し、制御電圧V1、V2、及びV3はそれぞれ、増倍管110の構成要素に印加される。これらの制御電圧の値は、制御ロジック180から受け取った命令にしたがってCPU160によって設定されることができる。
【0014】
可能な実施形態では、CPU160は、フォトカソード112、MCP114及びアノード116への電圧V1、V2、V3の印加をそれぞれ制御する回路を制御する。演算増幅器195は、アノード116に流れる電流I3をセンシングするように構成される。電流I3は、フォトカソード112で受光されている光10の輝度を表し、ここで、V1及びV2は、蛍光体スクリーンの出力輝度を制御するように変更されていない。電流I3の値は、制御ロジック180及びCPU160によって使用されることができ、例えば、V1又はV2の値を調整することができる(例えば、高輝度については高いV1又はV2、低輝度については低いV1又はV2)。
【0015】
デジタル制御電源150の利点は、入力光10の関数として増倍管110の出力輝度を調整する制御スキームを、制御スキームがハードウェアに組み込まれている従来のアナログ電源とは異なり、電源が組み立てられた後に選択できることである。電源150のデジタル制御は、異なるパラメータ又は設定の調整を可能にし、特定の特徴をアクティブにし、及び/又は暗視デバイスが例えば輸出制限に適合することを確実にする。電源150のデジタル制御は、温度及び/又は使用法の観点から性能パラメータを補償するためにも使用されることができる。以下に、電源150によって制御可能な機能及び関連する性能パラメータ/設定について説明する。
【0016】
固定輝度制御
【0017】
電源150及び制御ロジック180の一つの機能は、入力光レベルの関数として増倍管110の出力輝度を制御することであり、増倍されたシーンが過度に明るくなることからユーザを保護することである。これに関して、図2は、本発明の実施形態による出力輝度対光レベルのプロットを示す図である。図示のように、出力輝度は、受光した光の所定のレベルを超えて、(所定の輝度限界の間)ほぼ固定されているが、それにもかかわらず、典型的なアナログ電源の場合には、曲線210によって示されるように、アナログ回路の固有動作のために、わずかに上昇する傾向がある。
【0018】
一方、デジタル制御によって、本発明の実施形態は、曲線210と同様であるが、曲線210のゆっくりとした上昇のない、出力輝度対光レベル曲線220を生成することができる。すなわち、曲線220は、輝度が約1×10-5fc(フットキャンドル)の後も正確に(truly)固定されたままであることを示す。この定常輝度出力は、制御電圧(例えば、フォトカソード制御電圧V1及びMCP制御電圧V2)をドライブし、スクリーン電流(I3)と固定値電流との間のゼロ差を作り出し、所望のスクリーン輝度を達成する制御ロジック180の結果である。制御電圧の操作について以下に説明する。
【0019】
フォトカソードの保護と可聴放出の最小化
【0020】
電源150の別の機能は、増倍管110の感光性光変換層を永久的に損傷し得る明るい光による損傷からフォトカソード112を保護することである。図3は、本発明の実施例による、本発明の実施形態による、異なるフォトカソード制御電圧(V1)に応答するフォトカソード電流のプロットを示す図である。
【0021】
図3に示すように、フォトカソード電流は、デバイス寿命が損なわれることを実験が示す限界310を通過した後でさえ、光レベルに伴って直線的に305上昇する。図4に関連してより詳細に説明されるように、本発明の一実施形態によれば、制御ロジック180は、適切な時間において、フォトカソード電圧V1を高値から低値へ減少させ、フォトカソード電流を制限するように構成されている。一般に、V1のより高い値は、より低い光レベルで所望のSNRを与えるように選択され、一方、V1のより低い値は、より高い光レベルで光電子がMCP内でゲインカスケードを開始できる十分なエネルギーを提供するように(そうでないと増倍管がシャットダウンされ得る)選択される。一旦、V1がより低い制御電圧に下げて調節されると、フォトカソード電圧V1は、その後、フォトカソード電流を所望のレベルに維持するようにゲート制御され得る。いずれかの時点で、ゲーティングのデューティファクタをそれ以上低減することはできず、フォトカソードのカソード電流は、図3に示すように、安全カソード電流範囲310を越えて上昇315し始める。それにもかかわらず、出力輝度は、ユーザに対して増加しない。電源150はさらに、MCP制御電圧V2を調整し、V2が最小値に達するまで出力輝度を適切なレベルに維持するように構成されているからである。
【0022】
図4は、本発明の実施形態による、フォトカソード制御電圧V1及びマイクロチャネルプレート制御電圧V2の制御スキームを示す図である。このスキームでは、1つの可能な実施形態にしたがって、1つの制御要素(V1、V2、カソードデューティファクタ)のみが、任意の所与の時間においてアクティブに制御される。
【0023】
本発明の実施形態によれば、V1及びV2電圧の上側及び下側の電圧設定点は、格納された設定185を介して調整可能である。図4のケースでは、光レベルが、2.0×10-5fcから約5×10-3fcまでに示される、低光量設定点より下の、ある固定値まで増加するにつれて、V2は下降する。V2の最初の調整は、輝度制御のV2範囲である。一旦、この調整範囲が尽きると、V1電圧は最低値に低下する。この時点で、フォトカソードゲーティングのデューティファクタは、出力輝度を維持するために変更される。最後に、デューティファクタの範囲が最小値に達すると、電源150が別の最小値V2に達するまで、V2は再び減少する。このスキームの利点は、かなり高い光レベルまでフォトカソード電圧V1がゲートされないことである。これは、ゲート電圧が、増倍管110からの可聴放出の原因となり得るので、重要である。すなわち、ゲーティングによって引き起こされる静電力はマイクロチャネルプレートを変形させ、デューティファクタのオフ相によって応力が解放されると、プレートはその支持体において応力緩和する(relaxes)。このコンポーネントの移動と摩擦により、可聴放出が発生する可能性がある。ゲート電圧が印加されるときに制限することによって、可聴放出が存在し得る光の範囲が最小化される。上述のV1、V2、及びゲート制御はまた、V1制御電圧を最初に調整するのではなく、電圧V2を最初に調整することによって、より高いレベルのSNRを維持する。V1、V2及びゲート制御ファクタを適用する異なるスキームも可能であり、本発明の範囲内にある。
【0024】
フォトカソード電圧ゲート及び波形操作
【0025】
図5は、本発明の実施例による、フォトカソード制御電圧V1の印加を制御するために用いるスイッチ構成の回路図である。デジタル制御電源150を使用する一つの利点は、種々の電圧をオン又はオフに切り替えるだけでなく、例えばフォトカソード電圧V1及び/又は他の制御電圧の(1つ以上の)波形を操作することができることである。この点に関し、図5は、フォトカソード112をV1電源電圧に接続し、V1に対するゲート機能をさらに提供するためのアプローチを示す。図示されるように、フォトカソード112の接続は、2つの高電圧トランジスタ510、512の間に配置され、2つの制御電圧からフォトカソード112を絶縁することができる。本明細書で示される可能な実施形態では、フォトカソード112のオフ状態は、MCP電圧V2からオフセット(例えば、15ボルト)をマイナスしたものであり、フォトカソード112がハードリセット又は逆バイアス状態になることを確実にする。
【0026】
図5のスイッチ構成の動作では、両方のゲートドライブ(ゲートドライブ1、ゲートドライブ2)が同時にオンにならないように制御され、さもなければ、フォトカソード供給電圧V1はMCP供給電圧V2に短絡される。この回路は、ゲートドライブ1をオンにすることによって供給カソード電圧V1に設定されたゲートフォトカソード電圧(a gated photocathode voltage)V1’を光カソード112に供給することを可能にする。トランジスタ510がオンである限り、フォトカソード電圧は固定される。ゲートドライブ1がオフの場合、ゲートフォトカソード電圧V1’は浮動する。トランジスタ510へのゲートドライブ1信号のサイクリングは、増倍管110の「アップデート周波数」又は「リフレッシュレート」と称され得る。アップデート周波数パラメータ又はリフレッシュレートパラメータは、状態変数又は設定185の1つとして格納され、CPU160によって増倍管110を動作させるために使用され得る。ゲートドライブ2を開くと、ゲートフォトカソード電圧V1’がV2-15Vに引っ張られるか、又はフォトカソード112を逆バイアスする。これは、任意のフォトカソード電流がMCP 114に到達するのを阻止し、効果的に増倍管110の出力を遮断する。
【0027】
電源150の制御ロジック180は、光レベルが変化するにつれてゲート制御に応答してV1’電圧の反応を利用することができる。以下に説明する全ての場合において、ゲートドライブ1が、増倍器電圧をV1にチャージするように、すなわちV1’をV1にセットするように作動する(engaged)と、ゲートドライブ2トランジスタはオフになる。増倍管フォトカソード回路内には、固有のキャパシタンス及び抵抗が存在する。一旦、ゲートドライブ1がオフになると、キャパシタンスのチャージはカソードの光電流によってドレインオフされる。これにより、V1’電圧がV1の初期設定点から低下する。光電流のレベルは、増幅器の電圧がどれくらい速く低下するかを指図する。ゲートドライブ1が作動しない(not engaged)場合、増倍器電圧は、最終的にMCP電圧V2まで減衰する。動作モードの1つは、ほとんどの時間、ゲートドライブ1を開いた状態である。図6A~6Cは、フォトカソード電源のリフレッシュレート(図6A)、低光量レベルでのV1’電圧(図6B)、高光レベルでのV1’電圧(図6C)を表す3つのトレースを示す。これらの全ての場合において、ゲートドライブ2は、使用されない。
【0028】
図7A図7Cは、カソード電源の「シンプル」パルシング又はゲーティング(pulsing or gating)ゲートドライブ2及びリフレッシュレートを表し(図7A)、低光量レベルにおけるV1’電圧をパルシングゲートドライブ2と共に表し(図7B)、高光量レベルにおけるV1’電圧をパルシングゲートドライブ2と共に表す(図7C)3つのトレースを示す。トレースは、ゲートドライブ2に固定された(シンプルな)時間間隔を使用し、例えば輸出管理規則を満たすように、増倍管の性能を低下させたときの、V1’電圧を示す。具体的には、SNRがより重要な低光量条件下では、ゲートドライブ2がパルスされる。これにより、増倍器フォトカソード電圧が逆バイアスになり、増倍管の残りの部分へのフォトカソード信号が遮断され(図7B)、固定デューティファクタによってSNRが効果的に低下する。光レベルが増加するにつれて、この固定ゲートファクタの効果は、より効果的でなくなるが(図7C)、その時点で、十分な信号が存在し、倍増器を有することが比較的重要でなくなる。このゲーティングスキームの実装は、(所望に応じて、所定の暗視デバイスの性能を低下させるために使用することができる)性能選択機能と考えることができる。前述のアプローチは、ゲートドライブ2パルスのタイミングを駆動するフィードバック機構がないので、「シンプルな」ゲートと称される。パルス周波数は固定され、その周波数値は設定185の1つとして記憶される。非常に高い光レベルでは、ゲートドライブ2パルスは、V1’電圧がすでにV2供給電圧まで減衰しているので、増幅管の出力に実質的に影響を及ぼさない。
【0029】
図8A~8Dは、カソード電源のリフレッシュレート(図8A)及び「インテリジェント」パルス又はゲートするゲートドライブ2を表し、最大デューティファクタにおけるV1’電圧をパルシングゲートドライブ2と共に表し(図8B)、中程度(moderate)デューティファクタにおけるV1’電圧をパルシングゲートドライブ2と共に表し(図8C)、デューティファクタ範囲の端部近傍におけるV1’電圧をパルシングゲートドライブ2と共に表す(図8D)トレースを示す。「インテリジェント」ゲートにおいて、CPU160は、出力電流(I3)を評価し、その電流を、フォトカソード放出面に損傷を引き起こす可能性のあるフォトカソード電流に関連する閾値V1’に関連付ける。この場合、フォトカソード電圧が(CΔV1’/Δtの関係による電流に関連する)閾値電圧に向かって下降するにつれて、CPU160はゲートドライブ2を開き、V1’を、フォトカソード電流の流れを停止させる逆バイアスにする(例えば、図8B)。前述したように、インテリジェントゲーティングのこの実装は、ゲーティングが始まるまで可聴放出を生成しない。閾値電圧に達するまで供給がDCモードだからである。最後の2つのトレース(図8C及び8D)は、より高い光条件下でのV1’を示す。これらの場合、破線のV1’トレースは、ゲートドライブ2パルスを実装することによって、どの程度の信号が失われるのかを示すための参照用に表示される。
【0030】
当業者には理解されるように、閾値V1’及び他の調整可能なパラメータを含む異なる設定の使用は、必要なときに最大信号を維持するために電源150にフレキシブル性を加えるが、それでもユーザの目への出力輝度を制限する。あるいは、パラメータは、低光量信号対ノイズはキャップされるが、他のすべてのパラメータは同様であるように設定することができる。全体として、電源150は、以下のパラメータのうちの少なくとも1つ以上を調整するように構成されてもよい:
・ 低光量V1設定点-SNR及びb低光量解像度を制御する。
・ 高光量V1設定点-高光量解像度を制御する
・ 例えば1x10-3fcまでの、選択可能なV1のDC動作-可聴性を制御する
・ V1のリフレッシュレート-高光量解像度、可聴性、フラッシュ応答を制御する
【0031】
電源150は、以下の波形を調整又は操作するように構成されてもよい:
・ V1の固定デューティファクタゲーティング(Fixed duty factor gating of V1)(シンプルゲーティング)
・ ゲーティングファクタ又はV1制御されたアノード電流(I3)-高光量制御(インテリジェントゲート)
・ ソース取り外し可能なV1(フォトカソード電圧の光駆動減衰を提供する)-高光量解像度及び可聴性を制御する
【0032】
図9は、本発明の実施形態による、セキュリティロック機能を含む、デジタル制御電源を別のブロック図で示す図である。図9において、電源910は、情報メモリ(設定)931及びプログラムメモリ(制御ロジック)932を含むメモリと通信するCPU920を含む。CPU920は、制御バス951及び信号バス952を介して電源回路940と通信する。電源回路940は、CPU920の制御下で所望の制御電圧(例えば、V1、V2)を生成するように構成される。この点に関し、制御バス951は、電源回路940がどのようにして制御電圧V1及びV2を設定又は変更すべきかに関する制御信号を搬送することができる。信号バス952は、例えば、I3センシングを含む信号をCPU 920に戻すように搬送することができる。図は概略的なものであり、従って、CPU920と電源回路940との間で通信される信号に適用され得るいかなる信号調整(例えば、図1に示すような演算増幅器)も示さないことに留意されたい。
【0033】
また、図9には、ブートストラップロジック(BSL)読出し専用メモリ960、クロックインタフェース971、及びメモリ931、932を、外部インタフェース(図示せず)を介して初期化することを可能にするシリアルデータバスインタフェース972も示されている。クロックインタフェース971及びシリアルデータバスインタフェース972は、ジェイタグ(Joint Test Action Group:JTAG)又はスパイバイワイヤ(Spy-Bi-Wire)インタフェースとして構成することができる。さらに示されているのは、赤外線入出力(I/O) ポート980であり、これは、同様に、IR外部デバイス(図示せず)を用いたメモリ931のアップデートを可能にする。
【0034】
上述のように、ある種のケースでは、例えば輸出規制を満たすために、暗視デバイスの性能を制限又は低下させる必要がある場合がある。上述のデジタル制御電源150の機能性を考慮すると、所与の暗視デバイスが最適未満の(sub-optimum)性能で動作するように、設定をメモリ931に記憶し、及び/又は、メモリ932に制御ロジックを構成することが可能である。もちろん、かかるデバイスが一旦、製造業者を離れたとしても、それにもかかわらず、ユーザ又はサプライチェーン内の他のエンティティが、デバイスが再びその最大限の可能性を発揮するように、デバイスを再プログラム又は再構成することが可能であろう。性能低下暗視デバイスをアップグレードできないようにするために、いくつかのセキュリティロック機能を電源910に実装することができる。
【0035】
実施形態では、3つの別個のロックが、電源910の格納された設定及び格納された制御ロジックを保護するために実装され得、従って、関連する暗視デバイスの性能が許容できないほどアップグレードされないことを確実にする。
【0036】
第1ロック機能はハードウェアヒューズ981であり、これは、一旦、制御ロジックがメモリ932に入力されるとブローされる。一旦ブローされると、電源910は、新しいプログラミングを受け入れることができず、また直接的なハードウェア接続を介して制御ロジックを回復することもできない。さらに、ヒューズ及びそれに関連するクロックプログラミングポート971は、電源製造プロセスの間、さらなる物理的セキュリティ手段としてカプセル化される。
【0037】
第2ロック機能983及び第3ロック機能984はソフトウェアベースである。これらの2つのロックは、電源910が電源910に結合する(mated )増倍管に特有の新しいパラメータを受け入れるかどうかを制御する。取り消し可能ロック983は、例えば、2つの16ビット長ワードのパスワードで設定することができる。取り消し可能ロック983がオープンなとき、電源910は、例えば、動作モード、V1及びV2の設定点、スクリーン電流(最大I3)、最大ゲイン(最大V2)、V1リフレッシュレート、及び他のパラメータを設定するために使用することができる、IRポート980を介して、IRコマンドを受け入れる。
一旦、取り消し可能ロック983がクローズされると、1つの実施形態によれば、ユーザがプログラム可能なファクタは、最大ゲイン及び制限されたリードバック機能である。誤ったパスワードを使用して、取り消し可能ロック983をクラックしようとするいくつかの試み(例えば、3回)が行われる場合、非取り消し可能ロック984が起動され得る。実施形態では、非取り消し可能ロック984の作動は(engaging)は、IR読取コードの部分を動作不能にする(例えば、設定値は読み取ることができないが、シリアル番号、一般的動作ステータスは動作可能である)。非取り消し可能ロック984の下では、一実施形態では、工場出荷時のコードでさえ、電源910にIRプログラミングポート980を介して新しいパラメータを受け入れるように強制することはできない。取り消し可能ロック983が作動している状態と同様に、電源は、最大ゲイン及び制限されたリードバックコマンドを受け容れることができるが、それ以外は受け入れることができない。
【0038】
ヒューズ982は、製造プロセス中にコードの適切なロードが検証された直後にブローされることができる。
【0039】
図10は、本発明の実施形態による、暗視デバイスの性能を制御する一連の動作又はプロセスを示すフローチャートを示す図である。1002において、プロセスは、暗視デバイスのメモリ内に複数の性能構成パラメータを格納するステップを含む。1004において、プロセスは、格納するステップの後、メモリ内に格納された複数の性能構成パラメータのうちの少なくとも一部を変更できないように、ハードウェアロック及びソフトウェアロックのうちの少なくとも1つを暗視デバイスに適用するステップを含む。
【0040】
要約すると、本明細書に記載する実施形態は、暗視デバイスの性能を制御し、意図された性能レベルが許容できないほど変化しないことを確実にするために、複数の調節可能なパラメータに基づいて、複数の光レベル管理プロセスを提供する光増倍管のためのデジタル制御電源を提供する。
【0041】
開示された発明は、1つ以上の特定の実施例に具体化されたものとして本明細書に図示及び記載されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、特許請求の範囲と均等の範囲内で、様々な修正及び構造的変更を行うことができるため、示された詳細に限定されることを意図するものではない。さらに、実施形態のうちの1つからの種々の特徴を、実施形態の別のものに組み込むことができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載されている開示の範囲と一致する方法で広範に解釈されることが適切である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10