(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】歯科用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 6/893 20200101AFI20240206BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240206BHJP
A61K 6/831 20200101ALI20240206BHJP
A61K 6/54 20200101ALI20240206BHJP
A61K 6/30 20200101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K6/893
C08F290/06
A61K6/831
A61K6/54
A61K6/30
(21)【出願番号】P 2021534682
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2019085794
(87)【国際公開番号】W WO2020127380
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502289695
【氏名又は名称】デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クレー,ヨアヒム・エー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルム,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シェフラー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エルスナー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ティゲス,トーマス
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-524129(JP,A)
【文献】Polymer,2003年,Vol.44,pp.5131-5136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/893
C08F 290/06
A61K 6/831
A61K 6/54
A61K 6/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、重合性化合物が、以下の式(IIIa
):
【化37】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7は、下記式:
【化38】
(式中、R
8は、水素原子、又はCH
3基であり;
R
9は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基であり、R
8及びR
9は、シス配置であってもトランス配置であってもよい)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7であり、ただし、Aの少なくとも1つは、R
7であり
;そしてnは、1の整数である]によって表され、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程を含み、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(I
a):
【化39】
[式中、
R
2
、R
3
、R
4
及びRは、上記と同義である]で示される化合物であり;そして
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(II
b
*
):
【化40】
[式中、
Z及びR
6
は、上記と同義である]で示される化合物である、製造方法。
【請求項2】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、重合性化合物が、以下の式(IIIb)又は(IIIc):
【化46】
[式中、
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10
基、二価の脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合によりC
1-4
アルキル基により置換されており;
R
6
は、水素原子、C
1-6
アルキル基、C
3-10
シクロアルキル基、C
7
-C
12
アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7
は、下記式:
【化38】
(式中、R
8
は、水素原子、又はCH
3
基であり;
R
9
は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3
若しくは分岐C
3-5
アルキル基であり、R
8
及びR
9
は、シス配置であってもトランス配置であってもよい)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7
であり;Wは、酸素原子であり;Yは、C
1
-C
4
アルキレンである]によって表され、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程を含み、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(Ib):
【化47】
[式中、R
2
、R
3
、R
4
、R
7
、W及びYは、上記と同義である]で示される化合物であり;そして
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(IIa):
【化48】
[式中、Z及びR
6
は、上記と同義である]で示される化合物である、製造方法。
【請求項3】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、重合性化合物が、以下の式(IIId
):
【化49】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し
;
R
2
、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合によりC
1-4アルキル基により置換されており
;
R
6
は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7は、下記式:
【化42】
(式中、R
8は、水素原子、又はCH
3基であり;
R
9は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基であり、R
8及びR
9は、シス配置であってもトランス配置であってもよい)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7であ
り;
X
1は、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;そして
nは、1の整数である]によって表され、
以下の工程:
(a)少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH若しくは-OH基とを有する中間体化合物を生成させる工程;
(b)少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又はOH基とを有する中間体化合物を少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させて、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程
を含み、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(I
a):
【化43】
[式中、
R
2
、R
3
、R
4
及びRは、上記と同義である]で示される化合物であり;そして
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(II
b):
【化50】
[式中、
X
1
、Z及びR
6
は、上記と同義である]で示される化合物である、製造方法。
【請求項4】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、重合性化合物が、以下の式(IIIe):
【化51】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1
-C
18
アルキレン基、非置換若しくは置換C
3
-C
8
シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5
-C
18
アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3
-C
18
ヘテロアリーレン基を表し;
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
R
5
は、一価の脂肪族C
1-10
基、脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
7
は、下記式:
【化42】
(式中、R
8
は、水素原子、又はCH
3
基であり;
R
9
は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3
若しくは分岐C
3-5
アルキル基であり、R
8
及びR
9
は、シス配置であってもトランス配置であってもよい)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7
であり、ただし、Aの少なくとも1つは、R
7
であり;そして
nは、1の整数である]によって表され、
以下の工程:
(a)少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH若しくは-OH基とを有する中間体化合物を生成させる工程;
(b)少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又はOH基とを有する中間体化合物を少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させて、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程
を含み、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(Ia):
【化43】
[式中、R
2
、R
3
、R
4
及びRは、上記と同義である]で示される化合物であり;そして
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(IIc):
【化52】
[式中、R
5
は、上記と同義である]で示される化合物である、製造方法。
【請求項5】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、重合性化合物が、以下の式(IIIf):
【化53】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1
-C
18
アルキレン基、非置換若しくは置換C
3
-C
8
シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5
-C
18
アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3
-C
18
ヘテロアリーレン基を表し;
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
R
5
は、一価の脂肪族C
1-10
基、脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
6
は、水素原子、C
1-6
アルキル基、C
3-10
シクロアルキル基、C
7
-C
12
アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7
は、下記式:
【化42】
(式中、R
8
は、水素原子、又はCH
3
基であり;
R
9
は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3
若しくは分岐C
3-5
アルキル基であり、R
8
及びR
9
は、シス配置であってもトランス配置であってもよい)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7
であり、ただし、Aの少なくとも1つは、R
7
であり;そして
nは、1の整数である]によって表され、
以下の工程:
(a)少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH若しくは-OH基とを有する中間体化合物を生成させる工程;
(b)少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又はOH基とを有する中間体化合物を少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させて、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程
を含み、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(Ia):
【化43】
[式中、R
2
、R
3
、R
4
及びRは、上記と同義である]で示される化合物であり;そして
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(IId):
【化54】
[式中、R
5
及びR
6
は、上記と同義である]で示される化合物である、製造方法。
【請求項6】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、重合性化合物が、以下の式(IIIg):
【化55】
[式中、
R
1
は、非置換若しくは置換C
2-10
アルキル基、非置換若しくは置換C
3
-C
6
シクロアルキル基、非置換若しくは置換C
1
-C
8
シクロアルキルアルキレン、非置換若しくは置換C
5
-C
18
アリール基、非置換若しくは置換C
7
-C
24
アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上により置換されており;
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10
基、二価の脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合によりC
1-4
アルキル基により置換されており;
R
6
は、水素原子、C
1-6
アルキル基、C
3-10
シクロアルキル基、C
7
-C
12
アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7
は、下記式:
【化42】
(式中、R
8
は、水素原子、又はCH
3
基であり;
R
9
は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3
若しくは分岐C
3-5
アルキル基であり、R
8
及びR
9
は、シス配置であってもトランス配置であってもよい)で示される]によって表され、
以下の工程:
(a)少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH若しくは-OH基とを有する中間体化合物を生成させる工程;
(b)少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又はOH基とを有する中間体化合物を少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させて、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程
を含み、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(Ic):
【化56】
[式中、R
1、
R
2
、R
3
及びR
4
は、上記と同義である]で示される化合物であり;そして
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(IIa):
【化57】
[式中、Z及びR
6
は、上記と同義である]で示される化合物である、製造方法。
【請求項7】
少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する中間体化合物が、下記式:
【化58】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し
;
R
2
、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合によりC
1-4アルキル基により置換されており
;
R
6
は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
X
1は、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;そして
nは、1の整数である
]であることを特徴とする、請求項
3記載の製造方法。
【請求項8】
少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する中間体化合物が、下記式:
【化60】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1
-C
18
アルキレン基、非置換若しくは置換C
3
-C
8
シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5
-C
18
アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3
-C
18
ヘテロアリーレン基を表し;
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
R
5
は、一価の脂肪族C
1-10
基、脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;そして
nは、1の整数である]であることを特徴とする、請求項4記載の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する中間体化合物が、下記式:
【化59】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1
-C
18
アルキレン基、非置換若しくは置換C
3
-C
8
シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5
-C
18
アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3
-C
18
ヘテロアリーレン基を表し;
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
R
5
は、一価の脂肪族C
1-10
基、脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
6
は、水素原子、C
1-6
アルキル基、C
3-10
シクロアルキル基、C
7
-C
12
アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;そして
nは、1の整数である]であることを特徴とする、請求項5記載の製造方法。
【請求項10】
少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する中間体化合物が、下記式:
【化61】
[式中、
R
1
は、非置換若しくは置換C
2-10
アルキル基、非置換若しくは置換C
3
-C
6
シクロアルキル基、非置換若しくは置換C
1
-C
8
シクロアルキルアルキレン、非置換若しくは置換C
5
-C
18
アリール基、非置換若しくは置換C
7
-C
24
アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上により置換されており;
R
2
、R
3
及びR
4
は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4
アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10
基、二価の脂環式C
3
-C
6
基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合によりC
1-4
アルキル基により置換されており;
R
6
は、水素原子、C
1-6
アルキル基、C
3-10
シクロアルキル基、C
7
-C
12
アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4
アルキル基、C
1-4
アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されている]であることを特徴とする、請求項6記載の製造方法。
【請求項11】
少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸が、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項3~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を含有する歯科用組成物に関する。少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、有機金属触媒及びイソシアナートを使用することなく、そして少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aと、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bとの間の反応によって得られる。本開示は、歯科用組成物、特に歯科用複合材料、グラスアイオノマー、歯科用セメント、歯科用シーラント、及び歯科用接着剤の製造のための、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々のウレタンメタクリラートが、有機スタニル化合物によって触媒される、ヒドロキシアルキルメタクリラートとジイソシアナートとの反応によって合成されている。ジイソシアナートは有毒物質として知られており、その使用は人や環境に種々の健康上のリスクをもたらす。また、スタニル化合物、例えば、ラウリン酸ジブチルスズの毒性のために、毒性の少ない金属化合物を用いる代替法又は無金属の合成法が望まれる。
【0003】
炭酸エステル-アミン反応は、イソシアナートを使用せずにβ-ヒドロキシウレタンメタクリラートを生成させるための代替法となる。
【0004】
米国特許第5,977,262号は、環状炭酸エステル、第1級アミン、及び触媒有効量の塩基(共役酸が約11以上のpKaを有する)を接触させることを含む、ヒドロキシウレタンの製造方法を開示している。
【0005】
ジアミンと少なくとも2個の環状炭酸エステル官能基を有する分子との反応により、ポリヒドロキシウレタンが生成する。
【0006】
米国特許第8,118,968号は、少なくとも成分(A)及び(B)を含有する結合剤系を開示しており、ここで、(A)は、少なくとも2個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの化合物であり、そして(B)は、少なくとも2個の第1級及び/又は第2級アミン基を有する少なくとも1つの化合物である。成分(A)と成分(B)との間の反応は、触媒量の塩基の存在下で起こる。結合剤系は、二成分接着剤又はシーラントとしての使用に特に適しており、種々の基材への非常に優れた接着性を備えている。
【0007】
米国特許出願2016/0122473号は、単官能性又は多官能性のアクリル化又はメタクリル化ウレタンオリゴマーに関するものであり、ここで、前記ウレタン結合は、イソシアナートを使用することなく、そして環状炭酸エステルとモノアミン又はポリアミンとの間の炭酸エステル-アミン反応によって得られ、次いで環状無水物との反応によるエステル-酸へのウレタン結合に対してβ位のヒドロキシルの変換があり、そしてこの反応の後には、アクリル酸又はメタクリル酸の存在下でのポリエポキシド化合物との反応によるアクリル化又はメタクリル化末端基への前記酸官能基の変換が続く。前記オリゴマーは、コーティング、成形、漏れ止め剤又はシーリング組成物における少なくとも2つの官能基のための架橋性結合剤として、あるいは単官能基の場合、グラフトポリマーの製造のための重合性組成物におけるマクロモノマーとして使用される。環状炭酸エステルとモノアミン又はポリアミンとの間の炭酸エステル-アミン反応は、亜リン酸トリフェニルの存在下で行われる。
【0008】
米国特許出願2017/0342024号は、以下によって得られるアクリル化及び/又はメタクリル化ウレタンオリゴマーを記載している:特定のポリアミンa)とm個の環状炭酸エステル基を有する環状炭酸エステル化合物b)との反応によって、残存反応性アミン-NH-基を有するm個の生成したウレタン基を有する中間体生成物c)を与え、続いて前記生成物c)の前記残存反応性アミン基の各々と、化合物d)のアクリラート基との付加反応[化合物d)は前記アクリラート基に加えて更にp個のアクリラート及び/又はメタクリラート基を有する]によって、前記生成物c)の各残存反応性アミン-NH-基が、前記アクリラート及び/又はメタクリラート基を有する炭素-窒素結合に変換され、そして前記ウレタンオリゴマーが製造されるが、生成した各炭素-窒素結合は、p個のアクリラート及び/又はメタクリラート基を有しており、そして前記ウレタンオリゴマーは、m個のウレタン基と、前記ウレタンに対してα又はβ位にm個のヒドロキシル基を有しており、そしてアクリラート及び/又はメタクリラート中にm×p(n-1)からm×p(2n-2)の範囲の官能基を有する。本発明はまた、前記オリゴマーの2段階での製造方法に、中間体生成物c)に、及び架橋性組成物、特にコーティング組成物、接着剤組成物、3D物体のレイヤーバイレイヤー製造用システムのための組成物、3D印刷システム用組成物、成形組成物、漏れ止め剤組成物、化学シーリング組成物、コンクリート組成物又は複合材料組成物における前記ウレタンオリゴマーの使用に関する。環状炭酸エステルとモノアミン又はポリアミンとの間の炭酸エステル-アミン反応は、亜リン酸トリス(ノニルフェニル)及び2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(BHT)の存在下で行われる。
【0009】
米国特許出願 2018/0120700号は、(a)光重合性不飽和化合物、(b)ヒドロキシウレタン化合物、及び(c)光開始剤を含む、感光性樹脂組成物を記載している。感光性樹脂組成物は、プリント回路基板などの電子部品を製造するためのドライフィルムフォトレジスト用のフォトレジストコーティングとして使用することができる。更には、(b)[CC]/[NH2]が0.5~0.9のヒドロキシウレタン化合物は、ドライフィルムフォトレジスト用の感光性樹脂組成物の解像度、接着性、及び剥離性能を高め、プリント回路基板及び他の電子部品を製造するためのドライフィルムフォトレジストの有効性及び品質を向上させる。環状炭酸エステルとポリアミンとの間の炭酸エステル-アミン反応は、160℃で行われる。
【0010】
日本特許公開 2008-239881号は、放射線硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化物の製造方法及び光半導体を開示している。
【0011】
本発明の目的
本開示の目的は、充填材料、光硬化性セメント及びグラスアイオノマーとして、齲蝕を防止するための小窩裂溝シーラントとして、歯組織及び/又は歯槽骨と重合性複合材料との間の接着剤として有用な歯科用組成物、特に歯科用複合材料を提供することであり、これによって歯科用組成物は、優れた貯蔵安定性及び長期の機械的耐性を有する。
【0012】
発明の要約
本開示の第1の態様において、以下:
(a)少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物であって、以下の工程:
(i)少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物又は少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH若しくは-OH基とを有する中間体化合物を生成させる工程;
(ii)少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又はOH基とを有する中間体化合物を少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と場合により反応させて、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程
を含む製造方法によって得られる、重合性化合物;並びに
(b)充填剤及び溶媒の少なくとも1つ
を含む歯科用組成物であって、
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物が、式(IIIa)~(IIIg):
【0013】
【化1】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し;
R
1は、非置換若しくは置換C
2-10アルキル基、非置換若しくは置換C
3-C
6シクロアルキル基、非置換若しくは置換C
1-C
8シクロアルキルアルキレン、非置換若しくは置換C
5-C
18アリール基、非置換若しくは置換C
7-C
24アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上により置換されており;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7は、下記式:
【0014】
【化2】
(式中、R
8は、水素原子、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基であり;
R
9は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基である)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7であり;
Wは、酸素原子であり;Yは、C
1-C
4アルキレンであり;X
1は、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;そしてnは、1~5の整数である]のうちの1つである、歯科用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の目的、特徴、及び利点はまた、以下の説明を図面と併せて読むと明らかになろう:
【
図1】
図1aは、クラウンなどの歯科用品を製造するための3D印刷プロセスのための本発明の実施態様による歯科用組成物の使用を示している。
図1bは、クラウンなどの歯科用品を製造するための3D印刷プロセスのための本発明以外の比較実施態様による歯科用組成物の使用を示している。
【0016】
発明の詳細な説明
本開示で使用される用語の幾つかは以下に定義される:
「アルキル」という用語は、特に断りない限り、1~18個の炭素原子を有するモノラジカルの分岐又は非分岐飽和炭化水素鎖のことをいう。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-デシル、ドデシル、テトラデシルなどの基によって例示することができる。アルキル基は、アルケニル、アルコキシ、及びヒドロキシルから選択される1個以上の置換基で更に置換されていてもよい。
【0017】
「アルキレン」という用語は、特に断りない限り、1~18個の炭素原子の直鎖飽和二価炭化水素ラジカル又は3~18個の炭素原子の分岐飽和二価炭化水素ラジカルのことをいい、例えば、メチレン、エチレン、2,2-ジメチルエチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、ブチレンなど、好ましくはメチレン、エチレン、又はプロピレンのことをいう。
【0018】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子に結合したアルキル基を含有する官能基である。C1-4アルコキシ基は、1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、及びtert-ブトキシを包含することができる。
【0019】
「アリーレン」という用語は、「アリール」の二価部分構造である。「アリール」という用語は、C5-C18員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、又は二複素環系のことをいう。広義には、本明細書に使用されるとき「アリール」は、0~4個のヘテロ原子を包含してもよい5、6、7、8、9、及び10員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどを包含する。環構造にヘテロ原子を有するこれら「アリール」基はまた、「ヘテロアリール」又は「ヘテロ環」又は「ヘテロ芳香族」と呼ばれることもある。芳香環は、1つ以上の環位置で、1個以上の置換基であって、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(又は4級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分構造、-CF3、-CN、及びこれらの組合せを包含するが、これらに限定されない置換基で置換されることが可能である。
【0020】
「アリール」という用語はまた、2個以上の炭素が2個の隣接する環(即ち、「縮合環」)に共通である、2個以上の環を有する多環式環系であって、環の少なくとも1個が芳香族であり、例えば、他の環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又は複素環であり得る、多環式環系を包含する。複素環の例は、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、及びキサンテニルを包含するが、これらに限定されない。
【0021】
「ヘテロアリーレン」という用語は、「ヘテロアリール」の二価部分構造である。
【0022】
「アラルキレン」という用語は、「アラルキル」の二価部分構造である。「アラルキル」という用語は、式:-Ra-アリールのラジカルであって、Raが、上記と同義のアルキレン、例えば、メチレン、エチレンなどである、ラジカルのことをいう。アリール部分は、アリール基に関して上記のとおり場合により置換されている。
【0023】
「シクロアルキレン」という用語は、「シクロアルキル」の二価部分構造である。「シクロアルキル」という用語は、単環式又は多環式シクロアルキルラジカルのことをいう。単環式シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルを包含する。多環式シクロアルキルラジカルの例は、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルなどを包含する。本明細書に特に明記されない限り、「シクロアルキル」という用語は、アルキル、ハロ、オキソ又はアルキレン鎖から選択される1個以上の置換基によって、場合により置換された、単環式又は多環式シクロアルキルラジカルを包含するものである。
【0024】
「シクロアルキルアルキレン」という用語は、基:-Ra-シクロアルキル-であって、Raが、上記と同義のアルキレン、例えば、メチレン、エチレンなどである、基のことをいう。本明細書に使用されるときC1-C8シクロアルキルアルキレンは、C1-C8アルキレン基を介して結合したシクロアルキルのことをいう。
【0025】
「二価炭化水素ラジカル」という用語は、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素ラジカルのことをいい、エチレン、メチルメチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン及びオクタデシレンなどのアルキレンラジカル;ビニレン、アリレン及びブタジエニレンなどのアルケニレンラジカル;シクロブチレン、シクロペンチレン及びシクロヘキシレンなどのシクロアルキレンラジカル;シクロペンテニレン及びシクロヘキセニレンなどのシクロアルケニレンラジカル;フェニレン及びキシリレンなどのアリーレンラジカル;ベンジレンのようなアラルキレンラジカル;並びにトリレンなどのアルキアリーレンラジカルを包含する。
【0026】
「重合性部分構造」という用語は、付加重合、特にフリーラジカル重合が可能な、炭素-炭素二重結合などの任意の二重結合のことをいう。
【0027】
本開示に関連して「(メタ)アクリラート」という用語は、アクリラート並びに対応するメタクリラートのことをいうものである。
【0028】
本開示に関連して「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル並びに対応するメタクリルのことをいうものである。
【0029】
本開示は、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を含有する歯科用組成物に関する。少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、金属及びイソシアナートを使用せずに、少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aと、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bとの間の反応によって得られる。本開示は、歯科用組成物、特に歯科用複合材料、グラスアイオノマー、歯科用セメント、歯科用シーラント、及び歯科用接着剤の製造のための、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の使用に関する。
【0030】
「充填剤及び溶媒の少なくとも1つ」という句は、「充填剤のみ」、「溶媒のみ」、又は「充填剤及び溶媒の両方」を意味すると理解されるべきである。
【0031】
1つの実施態様において、少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、5員、6員又は7員環を有する環状炭酸エステルであってよい。
【0032】
1つの実施態様において、少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(I):
【0033】
【化3】
[式中、
R
1は、水素を表すか、m価のC
1-22炭化水素基であって、場合により1~12個の酸素又は硫黄原子を包含し、そして場合によりC
1-4アルキル基又は(メタ)アクリラート基により置換されている、炭化水素基を表し;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Wは、酸素原子、-O-C=O-又は直接結合であり;
Qは、直接結合又は1~4個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキレンであり;
Yは、直接結合、非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基であり;ここで、各非置換又は置換された基は、場合により1~6個の酸素原子、窒素原子又は硫黄原子の少なくとも1個を包含し;ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基により置換されており;そして
mは、1~6の整数である]で示される化合物である。
【0034】
その好ましい実施態様において、R1は、場合により2~4個の酸素若しくは硫黄原子を含有し、そして場合によりC1-4アルキル基により置換されている、飽和脂肪族C1-16炭化水素鎖であるか、又は場合によりC1-4アルキル基により置換されている、二重結合を有する不飽和炭化水素である。
【0035】
式(I)において、R1は、m価のC1-22炭化水素基である。R1は、一価(m=1)、二価(m=2)、三価(m=3)、四価(m=4)、五価(m=5)、又は六価(m=6)であってよい。炭化水素基は、脂肪族又は芳香族エーテル結合、ケト基、カルボン酸基、ヒドロキシル基又はエステル基又はアミド基の形で、炭化水素基中に1~12個の酸素原子を含有してもよい。炭化水素基は、脂肪族又は芳香族チオエーテル結合、チオケト基、チオカルボン酸基、チオール基又はチオエステル基の形で、炭化水素基中に1~12個の硫黄原子を含有してもよい。
【0036】
式(I)の1つの実施態様において、R1は、非置換又は置換C1-10アルキル基、非置換又は置換C3-C6シクロアルキル基、非置換又は置換C1-C8シクロアルキルアルキレン、非置換又は置換C5-C18アリール基、非置換又は置換C7-C24アラルキル基であってよく、ここで、各置換された基は、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上によって置換されていてもよい。
【0037】
本明細書に開示される歯科用組成物の特定の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ia):
【0038】
【化4】
[式中、R
2、R
3及びR
4は、上記と同義であり;そして
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表す]で示される二環式炭酸エステルであってよい。
【0039】
本明細書に開示される歯科用組成物の1つの実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ib):
【0040】
【化5】
[式中、R
2、R
3、R
4、Y及びWは、上記と同義であり;そして
R
7は、下記式:
【0041】
【化6】
(式中、R
8は、水素原子、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基であり;そして
R
9は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基である)で示される]で示される単環式炭酸エステルであってよい。
【0042】
本明細書に開示される歯科用組成物の別の実施態様において、式(I)の化合物は、式(Ic):
【0043】
【化7】
[式中、R
2、R
3及びR
4は、上記と同義であり、そして
R
1は、非置換又は置換C
2-10アルキル基、非置換又は置換C
3-C
6シクロアルキル基、非置換又は置換C
1-C
8シクロアルキルアルキレン、非置換又は置換C
5-C
18アリール基、非置換又は置換C
7-C
24アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上によって置換されている]で示される単環式炭酸エステルであってよい。
【0044】
式(I)の化合物は、以下の化合物から選択されてもよい:
【0045】
【0046】
1つの実施態様において、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(II):
【0047】
【化9】
[式中、
R
5は、(r+1)価の脂肪族C
2-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素又は硫黄原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
L
1及びL
2は、独立して同一であるか又は異なる、1~4個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;
X
1は、直接結合、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;
X
2は、酸素原子であり;
p及びqは、0~4の整数であり;そして
rは、1~6の整数である]で示される化合物である。
【0048】
「第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個」という句は、「第1級アミン官能基のみ」、「第2級アミン官能基のみ」、又は「第1級アミン官能基及び第2級アミンの両方」を意味すると理解されるべきである。
【0049】
式(II)の1つの実施態様において、R5は、(r+1)価の脂肪族C2-10基、脂環式C3-C6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基である。R5は、二価(r=1)、三価(r=2)、四価(r=3)、五価(r=4)、六価(r=5)又は七価(r=6)であってよい。
【0050】
本明細書に開示される歯科用組成物の特定の実施態様において、式(II)の化合物は、式(IIa):
【0051】
【化10】
[式中、R
6は、上記と同義であり;そして
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素又は硫黄原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されている]で示されるジアミンであってよい。
【0052】
本明細書に開示される歯科用組成物の特定の実施態様において、式(II)の化合物は、式(IIb):
【0053】
【化11】
[式中、R
6、X
1及びZは、上記と同義である]で示される化合物であってよい。
【0054】
本明細書に開示される歯科用組成物の特定の実施態様において、式(II)の化合物は、式(IIc):
【0055】
【化12】
[式中、R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基である]で示されるモノアミンであってよい。
【0056】
本明細書に開示される歯科用組成物の特定の実施態様において、式(II)の化合物は、式(IId):
【0057】
【化13】
[式中、R
5及びR
6は、上記と同義である]で示されるアミンであってよい。
【0058】
式(II)の化合物は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、Jeffamine T403、Jeffamine T3000、Jeffamine T5000、アミノアルコール、プロパノールアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N,N’-ジベンジル-1,9-ジアミノ-5-オキサノナン、N,N’-ジベンジル-1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン、N,N’-ジエチル-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-プロピレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、又はベンジルアミンから選択されてもよい。
【0059】
本明細書に開示される歯科用組成物の1つの実施態様において、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、歯科用組成物の総重量に基づいて1~99%の量で存在してもよい。代わりに、歯科用組成物の総重量に基づいて、2~95%の範囲に、あるいは、5~90%又はその間の任意の値、範囲、若しくは部分的範囲の範囲に存在してもよい。
【0060】
1つの実施態様において、工程(ii)が存在する場合、少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸は、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される。
【0061】
1つの実施態様において、工程(ii)が存在する場合、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する中間体化合物は、下記式:
【0062】
【化14】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し;
R
1は、非置換若しくは置換C
2-10アルキル基、非置換若しくは置換C
3-C
6シクロアルキル基、非置換若しくは置換C
1-C
8シクロアルキルアルキレン、非置換若しくは置換C
5-C
18アリール基、非置換若しくは置換C
7-C
24アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上により置換されており;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;X
1は、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;そしてnは、1~5の整数である]のうちの1つである。
【0063】
1つの実施態様において、組成物は、更に重合性モノマーを含む。
【0064】
1つの実施態様において、組成物は、更に重合開始剤、好ましくは熱開始剤、レドックス開始剤又は光開始剤を含む。
【0065】
1つの実施態様において、重合開始剤は、歯科用組成物の総重量に基づいて0.1~5重量%の量で存在する。
【0066】
1つの実施態様において、少なくとも1つの充填剤は、歯科用組成物の総重量に基づいて0.5~85重量%の量で存在する。
【0067】
1つの実施態様において、歯科用組成物は、歯科用複合材料、グラスアイオノマー、歯科用セメント、歯科用シーラント、及び歯科用接着剤からなる群より選択される。
【0068】
本発明の目的はまた、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物であって、以下の式(IIIa)~(IIIc):
【0069】
【化15】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7は、下記式:
【0070】
【化16】
(式中、R
8は、水素原子、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基であり;
R
9は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基である)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7であり;Wは、酸素原子であり;Yは、C
1-C
4アルキレンであり;そしてnは、1~5の整数である]によって表される、本発明の重合性化合物の製造方法であって、
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程を含む製造方法によって解決され、ここで
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(I):
【0071】
【化17】
[式中、
R
1は、水素を表すか、m価のC
1-22炭化水素基であって、場合により1~12個の酸素又は硫黄原子を包含し、そして場合によりC
1-4アルキル基又は(メタ)アクリラート基により置換されている、炭化水素基を表し;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Wは、酸素原子、-O-C=O-又は直接結合であり;
Qは、直接結合又は1~4個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキレンであり;
Yは、直接結合、非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基であり;ここで、各非置換又は置換された基は、場合により1~6個の酸素原子、窒素原子又は硫黄原子の少なくとも1個を包含し;ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基により置換されており;そして
mは、1~6の整数である]で示される化合物であり;そしてここで
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(II):
【0072】
【化18】
[式中、
R
5は、(r+1)価の脂肪族C
2-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素又は硫黄原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
L
1及びL
2は、独立して同一であるか又は異なる、1~4個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;
X
1は、直接結合、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;
X
2は、酸素原子であり;p及びqは、0~4の整数であり;そして
rは、1~6の整数である]で示される化合物である。
【0073】
本開示の態様において、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法が記載される。
【0074】
本明細書に開示される歯科用組成物の1つの実施態様において、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、スキーム-1に示されるとおり単一工程で製造され得る:
【0075】
【化19】
[式中、R
2、R
3、R
4、Z、R
6、R
7、W、Yは、上記と同義であり;そしてAは、水素原子である]。
【0076】
スキーム-1に示されるとおり、式(Ib)の化合物a当量及び式(IIa)の化合物b当量を溶媒に溶解し、反応温度で撹拌する。
【0077】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法の幾つかの実施態様において、重合性部分構造が早期重合するのを防ぐために重合開始剤を加えてもよい。
【0078】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法の特定の実施態様において、重合開始剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル(TEMPO)、フェノチアジン及びガルビノキシルラジカルからなる群より選択される。
【0079】
重合開始剤は、式(Ib)の化合物の総モル数に基づいて0.01mol%~0.5mol%の量で存在してよい。
【0080】
少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法の幾つかの実施態様において、溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群より選択される。
【0081】
反応温度は、例えば、20℃~60℃(30℃~55℃など)であってよい。
【0082】
歯科用組成物の特定の実施態様において、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、以下のスキーム-2に示されるとおり単一工程で製造され得る:
【0083】
【化20】
[式中、R
2、R
3、R
4、R、Z、R
6は、上記と同義であり、そしてAは、水素原子である]。
【0084】
スキーム-2に示されるとおり、式(Ia)の二環式炭酸エステルc当量及び式(IIb*)の化合物d当量を溶媒に溶解し、反応温度で撹拌することにより、式(IIIa)の少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させることができる。
【0085】
本発明の目的はまた、下記式式(IIId)~(IIIg):
【0086】
【化21】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し;
R
1は、非置換若しくは置換C
2-10アルキル基、非置換若しくは置換C
3-C
6シクロアルキル基、非置換若しくは置換C
1-C
8シクロアルキルアルキレン、非置換若しくは置換C
5-C
18アリール基、非置換若しくは置換C
7-C
24アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上により置換されており;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
R
7は、下記式:
【0087】
【化22】
(式中、R
8は、水素原子、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基であり;
R
9は、水素原子、-COOH基、又はCOOH基で置換された直鎖C
1-3若しくは分岐C
3-5アルキル基である)で示され;
Aは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7であり;
X
1は、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;そして
nは、1~5の整数である]によって表される、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物の製造方法であって、
以下の工程:
(a)少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aを、第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bと反応させて、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH若しくは-OH基とを有する中間体化合物を生成させる工程;
(b)少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又はOH基とを有する中間体化合物を少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させて、少なくとも1個の場合により誘導体化されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させる工程
を含む製造方法による、代替法で解決され、ここで
少なくとも1個の環状炭酸エステル基を有する少なくとも1つの成分Aは、式(I):
【0088】
【化23】
[式中、
R
1は、水素を表すか、m価のC
1-22炭化水素基であって、場合により1~12個の酸素又は硫黄原子を包含し、そして場合によりC
1-4アルキル基又は(メタ)アクリラート基により置換されている、炭化水素基を表し;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Wは、酸素原子、-O-C=O-又は直接結合であり;Qは、直接結合又は1~4個の炭素を有する直鎖若しくは分岐鎖アルキレンであり;
Yは、直接結合、非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基であり;ここで、各非置換又は置換された基は、場合により1~6個の酸素原子、窒素原子又は硫黄原子の少なくとも1個を包含し;ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基により置換されており;そして
mは、1~6の整数である]で示される化合物であり;ここで
第1級アミン官能基及び第2級アミン官能基の少なくとも1個を有する少なくとも1つの成分Bは、式(II):
【0089】
【化24】
[式中、
R
5は、(r+1)価の脂肪族C
2-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素又は硫黄原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
L
1及びL
2は、独立して同一であるか又は異なる、1~4個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖アルキレンであり;
X
1は、直接結合、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;X
2は、酸素原子であり;p及びqは、0~4の整数であり;そしてrは、1~6の整数である]で示される化合物である。
【0090】
1つの実施態様において、少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸は、アクリル酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸及びフマル酸からなる群より選択される。
【0091】
【化25】
[式中、R
2、R
3、R
4、R、X
1、Z、R
6、R
7は、上記と同義であり;そしてAは、独立して同一であるか又は異なり、そして水素原子又はR
7である]。
【0092】
スキーム3に描かれるとおり、式(Ia)の二環式炭酸エステルc当量を式(IIb)の化合物e当量と反応させることにより、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する式(IIId*)の中間体化合物を生成させることができる。式(IIId*)の中間体化合物を次に、少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させることにより、式(IIId)の少なくとも1個の場合により誘導体されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させることができる。
【0093】
1つの特別な実施態様において、少なくとも1個の場合により誘導体されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、以下のスキーム4に示されるとおり製造され得る:
【0094】
【化26】
[式中、R
2、R
3、R
4、Rは、上記と同義であり;R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;Aは、独立して同一であるか又は異なり、そしてR
7と同一である(ここで、R
7は、上記と同義である)]。
【0095】
スキーム4に描かれるとおり、式(Ia)の二環式炭酸エステルc当量を式(IIc)の化合物f当量と反応させることにより、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH基とを有する式(IIIe*)の中間体化合物を生成させることができる。式(IIIe*)の中間体化合物を次に、少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させることにより、式(IIIe)の少なくとも1個の場合により誘導体されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させることができる。重合性化合物は、以下のスキーム-5に示されるとおり製造され得る:
【0096】
【化27】
[式中、R
2、R
3、R
4、R
6は、上記と同義であり;R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;そしてAは、独立して同一であるか又は異なり、そしてR
7である(ここで、R
7は、上記と同義である)]。
【0097】
スキーム5に描かれるとおり、式(Ia)の二環式炭酸エステルc当量を式(IId)の化合物f当量と反応させることにより、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH基とを有する式(IIIf*)の中間体化合物を生成させることができる。式(IIIf*)の中間体化合物を次に、少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させることにより、式(IIIf)の少なくとも1個の場合により誘導体されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させることができる。
【0098】
別の実施態様において、少なくとも1個の場合により誘導体されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物は、以下のスキーム6に示されるとおり製造され得る:
【0099】
【化28】
[式中、R
1、R
2、R
3、R
4、Z、R
6、R
7は、上記と同義である]。
【0100】
スキーム6に描かれるとおり、式(Ic)の単環式炭酸エステルh当量を式(IIa)の化合物b当量と反応させることにより、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する式(IIIg*)の中間体化合物を生成させることができる。式(IIIg*)の中間体化合物を次に、少なくとも1つの不飽和モノ-又はポリカルボン酸と反応させることにより、式(IIIg)の少なくとも1個の場合により誘導体されたβ-ヒドロキシウレタン単位を有する重合性化合物を生成させることができる。
【0101】
1つの実施態様において、少なくとも1個のβ-ヒドロキシウレタン単位と残存-NH又は-OH基とを有する中間体化合物は、下記式:
【0102】
【化29】
[式中、
Rは、二価の非置換若しくは置換C
1-C
18アルキレン基、非置換若しくは置換C
3-C
8シクロアルキレン基、非置換若しくは置換アラルキレン基、非置換若しくは置換C
5-C
18アリーレン基、又は非置換若しくは置換C
3-C
18ヘテロアリーレン基を表し;
R
1は、非置換若しくは置換C
2-10アルキル基、非置換若しくは置換C
3-C
6シクロアルキル基、非置換若しくは置換C
1-C
8シクロアルキルアルキレン、非置換若しくは置換C
5-C
18アリール基、非置換若しくは置換C
7-C
24アラルキル基であり、ここで、各置換された基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アリール基又はアリールオキシ基の1個以上により置換されており;
R
2、R
3及びR
4は、互いに独立しており、そして水素又はC
1-4アルキル基を表し;
Zは、二価の脂肪族C
2-10基、二価の脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここで、各基は、場合により酸素原子を含有し、そして場合によりC
1-4アルキル基により置換されており;
R
5は、一価の脂肪族C
1-10基、脂環式C
3-C
6基又は7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり;
R
6は、水素原子、C
1-6アルキル基、C
3-10シクロアルキル基、C
7-C
12アラルキル基、又は(メタ)アクリル基であり;ここで、各基は、C
1-4アルキル基、C
1-4アルコキシ基、又はヒドロキシル基の1個以上によって場合により置換されており;
X
1は、酸素原子、又はR
6により置換された窒素原子であり;そして
nは、1~5の整数である]のうちの1つである。
【0103】
充填剤
本開示の歯科用組成物は、充填剤を包含してもよい。
【0104】
適切な充填剤粒子の例は、ケイ酸ストロンチウム、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、ホウケイ酸バリウム、フルオロアルミノホウケイ酸バリウムガラス、アルミノホウケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、フルオロリンケイ酸カルシウムアルミノナトリウム、ケイ酸ランタン、アルミノケイ酸塩、及び前記充填剤の少なくとも1つを含む組合せを包含するが、これらに限定されない。充填剤粒子は、窒化ケイ素、二酸化チタン、ヒュームドシリカ、コロイド状シリカ、石英、カオリンセラミック、カルシウムヒドロキシアパタイト、ジルコニア、及びこれらの混合物を更に含むことができる。ヒュームドシリカの例は、DeGussa AGのOX-50(平均粒径40nm)、DeGussa AGのAerosil R-972(平均粒径16nm)、DeGussa AGのAerosil 9200(平均粒径20nm)を包含し、他のAerosilヒュームドシリカは、Aerosil 90、Aerosil 150、Aerosil 200、Aerosil 300、Aerosil 380、Aerosil R711、Aerosil R7200、及びAerosil R8200、並びにCabot CorpのCab-O-Sil M5、Cab-O-Sil TS-720、Cab-O-Sil TS-610を包含する場合がある。
【0105】
本明細書に開示される組成物に使用される充填剤粒子は、これらを有機化合物とブレンドする前に表面処理されることがある。シランカップリング剤又は他の化合物を使用する表面処理は、充填剤粒子を有機樹脂マトリックス内により均一に分散させることができ、そして物理的及び機械的特性も向上させるため、有益である。適切なシランカップリング剤は、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシオクチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びこれらの混合物を包含する。
【0106】
充填剤粒子は、約0.002ミクロン~約25ミクロンの粒径を有することができる。1つの実施態様において、充填剤は、アルミノフルオロホウケイ酸バリウムガラス(BAFG、平均粒径 約1ミクロンを有する)のようなミクロンサイズの放射線不透過性充填剤と、Degussa AGのOX-50(平均粒径 約40nmを有する)などのヒュームドシリカのようなナノ充填剤粒子との混合物を含むことができる。ミクロンサイズのガラス粒子の濃度は、セメント組成物の約50重量%~約75重量%の範囲であることができ、そしてナノサイズの充填剤粒子は、セメント組成物の約1重量%~約20重量%の範囲であることができる。
【0107】
本開示の歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量に基づいて0.5~85重量%の量で少なくとも1つの充填剤を包含してもよい。
【0108】
本開示の歯科用組成物は、複合材料であってよく、そして約30~約85重量%の量で充填剤材料を包含してもよい。
【0109】
本開示の歯科用組成物は、接着剤であってよく、そして約50~約65重量%の量で充填剤を包含してもよい。
【0110】
本開示の歯科用組成物は、シーラントであってよく、そして約10~約50重量%の量で充填剤を包含してもよい。
【0111】
本開示の歯科用組成物は、セメントであってよく、そして約50~約85重量%の量で充填剤を包含してもよい。
【0112】
開始剤
開始剤は、熱又は光による開始を調節するために、ラジカル重合などの連鎖成長重合にしばしば使用される。
【0113】
熱重合開始剤は、熱に曝露されるとラジカル又はカチオンを発生させる化合物である。例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)などのアゾ化合物及び過酸化ベンゾイル(BPO)などの有機過酸化物は、周知の熱ラジカル開始剤であり、そしてベンゼンスルホン酸エステル及びアルキルスルホニウム塩は、熱カチオン開始剤として開発されている。有機及び無機化合物を使用して、重合を開始するラジカルを発生させることができる。ラジカルは、熱的条件又は周囲のレドックス条件によって発生し得る。一部の開始剤の分解速度は、pH及びアミンの存在によって変化する。
【0114】
更なるフリーラジカル開始剤は、有機光開始剤を包含してもよい。適切な光開始剤は、タイプI及びタイプIIを包含する。これらは、独立して、又は異なる光開始剤と追加の共開始剤との混合物として使用することができる。幾つかの好ましい光増感剤は、カンファーキノン、ベンジル(benzil)、フリル(furil)、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン及び他の環状α-ジケトンなどの、約300nm~約800nm(好ましくは、約400nm~約500nm)の範囲内の一部の光を吸収するモノケトン類及びジケトン類(例えば、α-ジケトン)を包含してもよい。これらのうちカンファーキノンが典型的には好ましい。好ましい電子供与体化合物は、促進剤としての置換アミン類、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルを包含する。
【0115】
フリーラジカル光重合性組成物を重合するための他の適切な光開始剤は、典型的には約380nm~約1200nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドの種類を包含してもよい。約380nm~約450nmの機能波長範囲を持つ好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤は、アシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
【0116】
約380nmを超え約450nm以下の波長範囲で照射されたときにフリーラジカル開始が可能な市販のホスフィンオキシド光開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE 907)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR 1173)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの25:75重量混合物(IRGACURE 1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの1:1重量混合物(DAROCUR 4265)、及び2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィン酸エチル(LUCIRIN LR8893X)を包含してもよい。
【0117】
歯科用組成物の1つの実施態様において、開始剤は、歯科用組成物の0.1重量%~約5重量%の量で存在してもよい。
【0118】
重合性モノマー
歯科用組成物の1つの実施態様において、重合性モノマーは、歯科用組成物の10重量%~約95重量%の量で存在してもよい。
【0119】
重合性モノマーは、アクリラート、メタクリラート、エチレン系不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸のC2-8ヒドロキシルアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のC1-24アルキルエステル若しくはシクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のC2-18アルコキシアルキルエステル、オレフィン又はジエン化合物、モノエステル/ジエステル、モノエーテル、付加物、TPH樹脂、SDR樹脂及び/又はBPAフリー樹脂からなる群より選択されてもよい。
【0120】
具体的なアクリラートモノマーの例は、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸グリシジル、グリセロールモノ-及びジアクリラート、エチレングリコールジアクリラート、ポリエチレングリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジアクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリトリトール及びジペンタエリトリトールのモノ-、ジ-、トリ-アクリラート、モノ-、ジ-、トリ-、及びテトラ-アクリラート、1,3-ブタンジオールジアクリラート、1,4-ブタンジオールジアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、2,2’-ビス[3-(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリラート]プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3-(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリラート]プロパン、ジペンタエリトリトールペンタアクリラートエステル及びジペンタエリトリトールペンタアクリラートエステルを包含するが、これらに限定されない。
【0121】
具体的な従来のメタクリラートモノマーの例は、メタクリラート類、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸グリシジル、ビスフェノールAのジグリシジルメタクリラート(2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン)(BisGMA)、グリセロールモノ-及びジメタクリラート、ジメタクリル酸エチレングリコール、ポリエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート(TEGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ペンタエリトリトール及びジペンタエリトリトールのモノ-、ジ-、トリ-、及びテトラ-メタクリラート、1,3-ブタンジオールジメタクリラート、1,4-ブタンジオールジメタクリラート、リン酸ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](BisMEP)、l,6-ヘキサンジオールジメタクリラート、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシフェニル)]プロパン、2,2’-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3-(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリラート]プロパンを包含するが、これらに限定されない。
【0122】
エチレン系不飽和化合物の例は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能基アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能基メタクリル酸エステル、ハロゲン及びヒドロキシ含有メタクリル酸エステル、並びにこれらの組合せを包含するが、これらに限定されない。このようなフリーラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸アリル、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリラート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリラート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、ビス[1-(2-アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌラートトリ(メタ)アクリラートなどのモノ-、ジ-又はポリ-(メタ)アクリラート(即ち、アクリラート類及びメタクリラート類);(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類(即ち、アクリルアミド類及びメタクリルアミド類);ウレタン(メタ)アクリラート;ポリエチレングリコールのビス(メタ)アクリラート、並びに塩素-、臭素-、フッ素-、及びヒドロキシル基含有モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシルプロピルを包含する。
【0123】
カルボキシル基含有不飽和モノマーの例は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸などを包含するが、これらに限定されない。
【0124】
(メタ)アクリル酸のC2-8ヒドロキシルアルキルエステルの例は、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシルプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルを包含するが、これらに限定されない。
【0125】
(メタ)アクリル酸のC1-24アルキルエステル又はシクロアルキルエステルの例は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-、sec-、又はt-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、及びメタクリル酸シクロヘキシルを包含するが、これらに限定されない。
【0126】
(メタ)アクリル酸のC2-18アルコキシアルキルエステルの例は、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、及びメタクリル酸エトキシブチルを包含するが、これらに限定されない。
【0127】
オレフィン又はジエン化合物は、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、イソプレン、クロロプロペン、フッ素含有オレフィン及び塩化ビニルを包含するが、これらに限定されない。
【0128】
モノエステル類の例は、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリブチレングリコール)と不飽和カルボン酸(好ましくはメタクリル酸)とのモノエステル、酸無水物基含有不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸又はイタコン酸無水物)とグリコール(例えば、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール又はネオペンチルグリコール)とのモノエステル又はジエステルを包含してもよい。
【0129】
モノエーテル類の例は、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリブチレングリコール)とヒドロキシル基含有不飽和モノマー(例えば、メタクリル酸2-ヒドロキシル)とのモノエーテルを包含してもよい。
【0130】
付加物の例は、不飽和カルボン酸とモノエポキシ化合物との付加物、(メタ)アクリル酸グリシジル(好ましくはメタクリル酸グリシジル)と一塩基酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、p-t-ブチル安息香酸又は脂肪酸)との付加物を包含してもよいが、これらに限定されない。
【0131】
配合された組成物において、場合により追加の添加剤が包含されていてもよい:紫外線安定剤、蛍光剤、乳白剤、顔料、粘度調整剤、フッ化物放出剤、重合阻害剤など。フリーラジカル系の典型的な重合阻害剤は、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、第3級ブチルヒドロキニン(TBHQ)、ヒドロキノン、フェノール、ブチルヒドロキシアニリンなどを包含してもよい。阻害剤は、フリーラジカル捕捉剤として作用して、組成物中のフリーラジカルを捕捉し、そして組成物の貯蔵安定性を延長する。重合阻害剤は、存在する場合、歯科用組成物の約0.001重量%~約1.5重量%、例えば、歯科用組成物の約0.005重量%~約1.1重量%、又は約0.01重量%~約0.08重量%の量で存在してもよい。組成物は、1つ以上の重合阻害剤を包含してもよい。
【0132】
歯科用組成物の用途及び重合が達成される方法に応じて、セメントの種々の成分は別々に包装されていてもよい。例えば、レドックスに基づくシステムの場合、歯科用組成物の成分は、2つの別のパッケージに分けられる:最初のパッケージは、コポリマー、コモノマー、開始剤及び水を含有し、そして2番目のパッケージは、反応性充填剤及びアクチベーターを含有する。別の実施態様において、最初のパッケージは、全ての固体材料(例えば、コポリマー、コモノマー、反応性充填剤)と必要に応じて還元剤を含有し、そして2番目のパッケージは、水と必要に応じて開始剤を含有する。光開始の場合、光開始剤は、歯科用組成物の固体部分(例えば、ペースト)又は液体部分のいずれかに包含されていてよい。
【0133】
本開示の1つの実施態様において、組成物は、ペースト状材料として単一パッケージとして提供される。
【0134】
歯科用接着剤は、少なくとも1つの溶媒を更に含有するセルフプライミング接着剤の形態であってもよい。少なくとも1つの溶媒は、水、エタノール、i-プロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン及びこれらの混合物からなる群より選択される。
【0135】
歯科用組成物の1つの実施態様において、少なくとも1つの溶媒は、歯科用組成物の総重量に基づいて0~70重量%の量で存在する。
【0136】
本開示の組成物は、一成分接着組成物であっても、又はパックの混合時に接着剤組成物を提供するように適合された2剤システムであってもよい。2剤システムにおいて、開始剤、共開始剤及び阻害剤は、好ましくは、組成物の重合性成分から分離されて、単独で化学硬化を促進するか、又は化学光に曝露時の硬化と合わせて化学硬化を促進して重合の二重硬化モードを提供する。歯科用接着剤の自己硬化を促進する物質の例は、例えば、BPO、DHEPT及び芳香族スルフィン酸塩を包含する。
【0137】
以下の非限定的な例は、本発明の実施態様を説明し、本発明の理解を容易にするために提供されるが、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0138】
TMH-HUDMAの合成
TMHDA(CAS 25620-58-0)0.5961g(3.766mmol)、2-メチル-2-プロペン酸(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルエステル(CAS 13818-44-5)1.4022g(7.532mmol)及びBHT(ブチルヒドロキシトルエン)0.0017g(0.0075mmol)をTHF 10ml中に一緒に溶解し、40℃で6時間撹拌した。次に、THFを真空蒸留した。わずかに黄色の高粘度液体1.998g(3.766mmol)を得た。Mn=530.61g/mol。
【0139】
応用例1
実施例1のTMH-HUDMA 15g、トリエチレングリコールジメタクリラート(TGDMA)9g、アルミノケイ酸バリウムガラス75.00g、カンファーキノン0.50g及びジエチルアミノ安息香酸エチルエステル0.5gを混合して、歯科用修復材料を形成する。歯科用修復材料を窩洞に入れる。可視光を歯科用修復材料に当てて、ISO 4049により試験される曲げ強度110MPa、縦弾性係数8GPa及び重合収縮ΔV=2.3%を有する歯科用修復ポリマーを形成する。
【0140】
DMPDAと炭酸エチレンの反応生成物(A)の合成
【0141】
【0142】
不活性条件下で、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(DMPDA)10.0g(97.9mmol)を炭酸エチレン(CAS 96-49-1)17.4g(196.4mmol)と共に最初に仕込む。次に混合物を80℃で47時間撹拌する。生成物Aは黄色の油状物として留まる。これはNMR上クリーンであり、更なる精製なしに反応させる。収量:26.9g(96.7mmol、99%)。
【0143】
DMPDA-HUDMA(B)の合成
A 13.1g(47.1mmol)、新たに蒸留されたメタクリル酸無水物33.7mL(226.1mmol)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)345mg(2.8mmol)及びBHT 62mg(0.28mmol)をピリジン(KOH上で保存)70mLに溶解する。次に混合物を50℃で17時間撹拌する。橙色の反応混合物をDCM(ジクロロメタン)300mLで希釈して、1M HCl(2×150mL)及び水(150mL)で洗浄する。有機相をNa
2SO
4で乾燥させ、溶媒を真空で除去する。次にこれを80℃及び圧力2×10
-2mbarで乾燥させる。粗生成物(赤色のゲル状固体)を酢酸エチル100ml及び飽和NaHCO
3溶液100mlに溶解して、室温で4日間撹拌する。次に、混合物を水300mlと混合して、DCM(3×300ml)で抽出する。合わせた有機相をMgSO
4で乾燥させ、溶媒を真空で除去する。高真空下で乾燥後、生成物Bは橙色の油状物として留まる。
収量:13.5g(32.6mmol、69%)。
M
n=414.46g/mol
【数1】
=1.479
【0144】
応用例2及び比較例1
液体の製造
表1に要約された使用原材料を秤量し、磁気撹拌機により23℃で均一に混合された。
【0145】
【0146】
この結果は、最終的に達成される粘度の有意な低下を示す。このことは、最終製品がより液体状態を維持し、これによって最終製品が粘性になりすぎるリスクを冒すことなく、熟練ユーザーはより多量の充填剤を使用できるため、非常に有利である。最終製品が粘性になりすぎると、この応用が大幅に妨げられることになる。より多量の充填剤を使用できれば、最終製品の機械的及び熱力学的特性に、望ましく必要な方向で影響を与えることができる。
【0147】
応用例3及び比較例2
応用例3
EBPADMA 8.26g(80mol-%)、HUDMA(B)1.74g(20mol-%)、カンファーキノン0.0017g及びジメチルアミノ安息香酸エチルエステル0.0024gを磁気撹拌機で一晩均一に混合した。
【0148】
比較例2
EBPADMA 8.09g(80mol-%)、UDMA樹脂1.91g(20mol-%)、カンファーキノン0.0016g及びジメチルアミノ安息香酸エチルエステル0.0023gを磁気撹拌機で一晩均一に混合した。
【0149】
曲げ強度、屈折率及び粘度の測定結果を表2に要約する。
【0150】
【0151】
【0152】
応用例4及び比較例3
応用例4
当技術分野で公知のとおり、光硬化性メタクリラートに基づくモノマー混合物6.72gを、HUDMA(B)1.68gと混合した。次にメタクリラート樹脂を歯科用ガラス混合物21.60gに配合した。ペーストの押出し性を改善するために、EXAKTモデル80E 3ロールミルを使用して材料を処理し、続いて脱気した。次に得られたペーストを使用して、押出しに基づく3Dプリント工程によって歯冠を3Dプリントした(
図1a)。65℃で材料を押出すのに必要な圧力は2.4barであった。23℃での材料の粘度は95±3Pasであった。
【0153】
比較例3
当技術分野で公知のとおり、光硬化性メタクリラートに基づくモノマー混合物8.4gを、実施例3で使用したものと同じ歯科用ガラス混合物21.60gに配合した。ペーストの押出し性を改善するために、EXAKTモデル80E 3ロールミルを使用して材料を処理し、続いて脱気した。次に得られたペーストを使用して、押出しに基づく3Dプリント工程によって歯冠を3Dプリントした(
図1b)。65℃で材料を押出すのに必要な圧力は3.0barであった。23℃での材料の粘度は192±2Pasであった。
【0154】
図1a及び1bは、歯冠などの歯科用オブジェクトを製造するための歯科用3Dプリント工程に使用されることに関する、特許請求された歯科用組成物の能力を明らかにしている。歯科用組成物の最終的に達成される粘度を半分に下げるのに、20%のHUDMA(B)の適用で十分であった。それぞれの組成物の他の成分は保持されている。これにより、必要な圧力が20%削減されている。
図1a及び1bに示されるとおり、最終的な結果(歯冠の品質)は変化していない。
【0155】
本発明の原理は、特定の詳細な実施態様に関連して説明されており、例示の目的で提供されているが、その種々の変形は、明細書を読めば当業者には明白なものとなることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される発明は、添付の特許請求の範囲に入るような変形に及ぶものであることが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。