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特許7431242水系電着によって適用される電池電極コーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】水系電着によって適用される電池電極コーティング
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240206BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240206BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20240206BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20240206BHJP
   H01G 11/36 20130101ALI20240206BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20240206BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20240206BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20240206BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20240206BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240206BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240206BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20240206BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240206BHJP
   C08K 5/29 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/13
H01G11/30
H01G11/46
H01G11/36
H01G11/40
H01G11/38
H01G11/86
H01G11/74
C08L33/04
C08L101/00
C08K3/24
C08K3/04
C08K5/29
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021535707
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 IB2019060882
(87)【国際公開番号】W WO2020128807
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-17
(31)【優先権主張番号】16/227,320
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399074983
【氏名又は名称】ピーピージー・インダストリーズ・オハイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PPG Industries Ohio,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘルリング, スチュアート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オークス, ランドン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, カート ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ランディス, チャド エー.
(72)【発明者】
【氏名】モヒン, ジェイコブ ダブリュー.
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533159(JP,A)
【文献】特表2017-513198(JP,A)
【文献】特開平09-074053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/84
H01M 10/00-10/39
H01G 11/00-11/86
C08L 33/04
C08L 101/00
C08K 3/24
C08K 3/04
C08K 5/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤であって、ここで、前記pH依存性レオロジー改質剤が、架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含み、前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和カルボン酸、C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および前記架橋用モノマーの残基を含む構成単位を含む、結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、
を含む、電着可能なコーティング組成物であって、前記電着可能なコーティング組成物は、基材の上に電気コーティングされることを特徴とする、
電着可能なコーティング組成物。
【請求項2】
水と、総組成物の4.25重量%の前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤と、の組成物が、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、3~12のpH範囲内での3pH単位のpH値の増加にわたり、少なくとも500cpsの粘度の増加を有し得る、請求項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項3】
前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、
20~65重量%の前記モノエチレン性不飽和カルボン酸、
20~80重量%の前記C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および
0.1~3重量%の前記架橋用モノマー
の残基を含む構成単位を含む、請求項1または2に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項4】
架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤であって、ここで、前記pH依存性レオロジー改質剤が、疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含む、結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、
を含む、電着可能なコーティング組成物であって、前記電着可能なコーティング組成物は、基材の上に電気コーティングされることを特徴とし、
前記疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和カルボン酸、C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、およびノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基を含む構成単位を含む、
着可能なコーティング組成物。
【請求項5】
前記疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、前記疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、
2~70重量%の前記モノエチレン性不飽和カルボン酸、
20~80重量%の前記C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および
0.5~60重量%の前記モノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマー
の残基を含む構成単位を含む、請求項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項6】
架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、
を含む、電着可能なコーティング組成物であって、前記電着可能なコーティング組成物は、基材の上に電気コーティングされることを特徴とし、ここで、前記pH依存性レオロジー改質剤が、酸膨潤性レオロジー改質剤を含む、
電着可能なコーティング組成物。
【請求項7】
架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、
を含む、電着可能なコーティング組成物であって、前記電着可能なコーティング組成物は、基材の上に電気コーティングされることを特徴とし、ここで、前記結合剤が、非フッ素化有機フィルム形成ポリマーをさらに含む、
電着可能なコーティング組成物。
【請求項8】
前記非フッ素化有機フィルム形成ポリマーが、多糖類、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項9】
前記電気化学的活性物質が、LiCoO、LiNiO、LiFePO、LiFeCoPO、LiCoPO、LiMnO、LiMn、Li(NiMnCo)O、Li(NiCoAl)O、炭素被覆LiFePO、硫黄、LiO、FeFおよびFeF、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項10】
前記電気化学的活性物質が、グラファイト、チタン酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項11】
前記導電剤が、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、炭素繊維、フラーレン、およびそれらの組み合わせを含む、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項12】
架橋剤をさらに含む、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項13】
前記架橋剤が、カルボジイミドを含む、請求項12に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項14】
前記電着可能なコーティング組成物が、
(a)0.1重量%~10重量%の前記pH依存性レオロジー改質剤と、
(b)0.02重量%~2重量%の前記架橋剤と、
(c)45重量%~99重量%の前記電気化学的活性物質と、
(d)必要に応じて、0.5重量%~20重量%の前記導電剤と、
(e)必要に応じて、0.1重量%~9.9重量%の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーと、を含み、前記重量%が、前記電着可能な組成物の総固形分重量に基づいたものである、請求項12に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項15】
前記電着可能なコーティング組成物のVOCが、500g/L以下である、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項16】
請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物を電気コーティングすることによって基材の上で生成されるコーティングが、電着によって適用されない同様の質量負荷で比較コーティング組成物から生成されるコーティングより少なくとも10%大きい90°剥離強度を有し、前記90°剥離強度が、剥離強度試験方法に従って測定される、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項17】
前記電着可能なコーティング組成物が、フルオロポリマーを含まないか、またはフルオロポリマーが結合剤固形分の総重量に基づいて5重量%未満の量で存在する、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項18】
前記電着可能なコーティング組成物が、セルロース系物質を含まないか、またはセルロース系物質が前記電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて5重量%未満の量で存在する、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項19】
前記pH依存性レオロジー改質剤が、アミド、グリシジル、およびヒドロキシル基を含まないか、またはアミド、グリシジル、およびヒドロキシル基が前記pH依存性レオロジー改質剤の総重量に基づいて1重量%未満の量で存在する、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項20】
前記pH依存性レオロジー改質剤が、芳香族ビニルモノマーを含む構成単位の残基を含まないか、または芳香族ビニルモノマーを含む構成単位の残基が前記pH依存性レオロジー改質剤の総重量に基づいて0.1重量%未満の量で存在する、請求項1、6または7のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物。
【請求項21】
基材をコーティングする方法であって、
請求項1~20のいずれか1項に記載の電着可能なコーティング組成物を、前記基材の少なくとも一部分の上に電気コーティングすることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着可能なコーティング組成物および水系電着によって適用される電池電極コーティングを対象とする。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス業界では、より小型でより軽量の電池を動力源とするより小型の装置を製造する傾向が見られる。炭素質物質などの負極およびリチウム金属酸化物などの正極を有する電池により、比較的高い電力および低重量が得られ得る。かかる電極を生成するための結合剤は、通常、溶媒系スラリーまたは水系スラリーの形態で、負極または正極と組み合わされる。溶媒系スラリーは、安全、健康、および環境面での危険性がある。多くの有機溶媒は、毒性および可燃性であり、揮発性の性質があり、発癌性であり、リスクを軽減し、環境汚染を低減するための特別な製造管理を必要とする。また、水系スラリーでは、しばしば、不十分な接着性および/または不十分な電池性能を有する、不満足な電極が生成される。一度適用されると、結合した成分は、電極内の相互接続性を失うことなく、充電および放電サイクル中の大きい体積の膨張および収縮に耐えることができる。電極中の活性成分の相互接続性は、特に充電および放電サイクル中の電池性能において非常に重要である。これは、電子が電極を通って移動する必要があり、リチウムイオンの移動には、電極内の粒子間の相互接続性が必要であるためである。特に、発癌性物質の使用および環境汚染を伴うことなく、電池性能を改善し、かつコーティングの集電体への接着を改善することが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書には、架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、電気化学的活性物質および/または導電剤と、水性媒体と、を含む電着可能なコーティング組成物が開示される。
【0004】
また、本明細書には、基材をコーティングする方法も開示され、当該方法は、基材の上に電着可能なコーティング組成物を電気コーティングすることを含み、電着可能なコーティング組成物は、pH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、電気化学的活性物質および/または導電剤と、水性媒体と、を含む。
【0005】
コーティングされた基材および電気貯蔵装置が本明細書にさらに開示される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
上述のように、本発明は、架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化エトキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、電気化学的活性物質および/または導電剤と、水性媒体と、を含む電着可能なコーティング組成物を対象とする。
【0007】
本発明では、「電着可能なコーティング組成物」という用語は、印加された電位の影響下で導電性基材の上に堆積され得る組成物を指す。
【0008】
本発明では、電着可能なコーティング組成物には、結合剤が含まれる。結合剤は、コーティング組成物の基材の上への電着時に、電着可能なコーティング組成物の粒子、例えば電気化学的活性物質、導電剤、またはその両方等を一緒に結合する役割を果たす。結合剤は、フィルム形成ポリマーを含み、必要に応じて、フィルム形成ポリマー上に存在する官能基と反応する官能基を含む架橋剤をさらに含み得る。フィルム形成ポリマーおよび架橋剤は、有機化合物を含み得る。
【0009】
本発明では、結合剤のフィルム形成ポリマーは、pH依存性レオロジー改質剤を含む。pH依存性レオロジー改質剤は、フィルム形成ポリマーおよび/または結合剤の一部分または全てを含み得る。本明細書で使用される場合、「pH依存性レオロジー改質剤」という用語は、組成物のpHに基づいて可変のレオロジー効果を有するポリマー等の有機化合物を指す。pH依存性レオロジー改質剤は、組成物のpHの変化によって誘発されるpH依存性レオロジー改質剤の顕著な体積変化の原理に基づいて、組成物の粘度に影響を与え得る。例えば、pH依存性レオロジー改質剤は、あるpH範囲では可溶性であり得、特定のレオロジー特性を提供してもよく、臨界pH値では(かつ、pH依存性レオロジー改質剤の種類に基づいて、それ以上または以下で)不溶性であり得、凝集してもよく、これにより、レオロジー改質剤の体積の減少による組成物の粘度の低下が引き起こされる。pH依存性レオロジー改質剤の存在による組成物のpHと粘度との関係は、非線形であり得る。pH依存性レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物が使用される電着の種類に応じて、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤または酸膨潤性レオロジー改質剤を含み得る。例えば、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤は、陰イオン電着のために使用されてもよく、一方で、酸膨潤性レオロジー改質剤は、カソード電着のために使用されてもよい。
【0010】
本明細書で使用される場合、「アルカリ膨潤性レオロジー改質剤」という用語は、組成物のpHが増加するにつれて、組成物の粘度を増加させる(すなわち、組成物を増粘させる)レオロジー改質剤を指す。アルカリ膨潤性レオロジー改質剤は、約2.5以上、例えば、約3以上、例えば、約3.5以上、例えば、約4以上、例えば、約4.5以上、例えば、約5以上のpHで粘度を増加させ得る。
【0011】
アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の非限定的な例としては、アルカリ膨潤性エマルション(ASE)、疎水基変性型アルカリ膨潤性エマルション(HASE)、スターポリマー、および本明細書に記載のpH値などの低pHでpHトリガーされたレオロジー変化を提供する他の物質が挙げられる。アルカリ膨潤性レオロジー改質剤は、エチレン性不飽和モノマーの残基を含む構成単位を有する付加ポリマーを含み得る。例えば、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤は、(a)2~70重量%(20~70重量%など、25~55重量%など、35~55重量%など、40~50重量%など、45~50重量%など)のモノエチレン性不飽和カルボン酸、(b)20~80重量%(35~65重量%など、40~60重量%など、40~50重量%など、45~50重量%など)のC~Cアルキル(メタ)アクリレート、および(c)0~3重量%(0.1~3重量%など、0.1~2重量%など)の架橋用モノマーのうちの少なくとも1つ、ならびに/または(d)0~60重量%(0.5~60重量%など、10~50重量%など)のモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基を含んでもよく、本質的にそれらから構成されてもよく、またはそれらから構成される構成単位を有する付加ポリマーを含んでもよく、重量%は、付加ポリマーの総重量に基づいたものである。ASEレオロジー改質剤は、(a)および(b)を含んでもよく、必要に応じて、さらに(c)を含んでもよく、HASEレオロジー改質剤は、(a)、(b)および(d)を含んでもよく、必要に応じて、さらに、(c)を含んでもよい。(c)が存在する場合、pH依存性レオロジー改質剤は、架橋pH依存性レオロジー改質剤と称され得る。酸基が低pHで高いプロトン化度を有する(すなわち、中和されていない)場合、レオロジー改質剤は水に不溶性であり、組成物を増粘させないが、酸がより高いpH値で実質的に脱プロトン化されている(すなわち、実質的に中和されている)場合、レオロジー改質剤は可溶性または分散性(ミセルまたはマイクロゲルなど)になり、組成物を増粘させる。
【0012】
(a)モノエチレン性不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸などのC~Cモノエチレン性不飽和カルボン酸、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。
【0013】
(b)C~Cアルキル(メタ)アクリレートは、C~Cアルキル(メタ)アクリレートなどのC~Cアルキル(メタ)アクリレートを含み得る。C~Cアルキル(メタ)アクリレートは、非置換C~Cアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0014】
(c)架橋用モノマーは、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、ビスフェノールAジアリルエーテル、メチレンビスアクリルアミド、アリルスクロースなどのポリエチレン性不飽和モノマー、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。
【0015】
(d)モノエチレン性不飽和アルキル化エトキシレートモノマーは、ポリ(アルキレンオキシド)鎖の重合性基、疎水性基、および二価ポリエーテル基を有するモノマー、例えば、約5~150個のエチレンオキシド単位、例えば6~10個のエチレンオキシド単位、および必要に応じて0~5個のプロピレンオキシド単位を有するポリ(エチレンオキシド)鎖を含み得る。疎水性基は、典型的には、6~22個の炭素原子を有するアルキル基(ドデシル基など)または8~22個の炭素原子を有するアルカリール基(オクチルフェノールなど)である。二価ポリエーテル基は、典型的には、疎水性基を重合性基に連結する。二価ポリエーテル基連結基および疎水性基の例は、ビシクロヘプチルポリエーテル基、ビシクロヘプテニルポリエーテル基、または分枝C~C50アルキルポリエーテル基であり、ビシクロヘプチルポリエーテル基またはビシクロヘプテニルポリエーテル基は、1つ以上の環炭素原子上で1つの炭素原子当たり1つまたは2つのC~Cアルキル基で必要に応じて置換されてもよい。
【0016】
上述したモノマーに加えて、pH依存性レオロジー改質剤は、他のエチレン性不飽和モノマーを含み得る。例えば、ヒドロキシル、アミノ、アミド、グリシジル、チオールおよび他の官能基等で置換された置換アルキル(メタ)アクリレートモノマー、フッ素を含有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、芳香族ビニルモノマー等が挙げられる。あるいは、pH依存性レオロジー改質剤は、かかるモノマーを実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、pH依存性レオロジー改質剤は、そのモノマーを実質的に含まないか、または本質的に含まず、そのモノマーの構成単位が存在するとしても、そのモノマーの構成単位は、pH依存性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、それぞれ0.1重量%未満または0.01重量%未満の量で存在する。
【0017】
pH依存性レオロジー改質剤は、アミド、グリシジルまたはヒドロキシル官能基を実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、pH依存性レオロジー改質剤は、アミド、グリシジル、またはヒドロキシル官能基を実質的に含まないか、または本質的に含まず、かかる基が存在するとしても、かかる基は、pH依存性レオロジー改質剤に存在する官能基の総数に基づいて、1%未満または0.1%未満の量で存在する。
【0018】
pH依存性レオロジー改質剤は、上述の量で存在する、メタクリル酸、エチルアクリレート、および架橋用モノマーの残基の構成単位を含み得るか、本質的にそれから構成され得るか、またはそれから構成され得る。
【0019】
pH依存性レオロジー改質剤は、上述の量で存在する、メタクリル酸、エチルアクリレート、およびモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基の構成単位を含み得るか、本質的にそれから構成され得るか、またはそれから構成され得る。
【0020】
pH依存性レオロジー改質剤は、上述の量で存在する、メタクリル酸、エチルアクリレート、架橋用モノマー、およびモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーを含み得るか、本質的にそれから構成され得るか、またはそれから構成され得る。
【0021】
市販のpH依存性レオロジー改質剤として、アクリソルASE-60などのアルカリ膨潤性エマルション、アクリソルHASE TT-615、およびアクリソルDR-180 HASEなどの疎水基変性型アルカリ膨潤性エマルション(各々がダウケミカル社から市販)、ならびにATRPソリューションズ社からfracASSIST(登録商標)プロトタイプ2などの原子移動ラジカル重合によって製造されるものを含むスターポリマーが挙げられる。
【0022】
組成物のpH値の範囲にわたるアルカリ膨潤性レオロジー改質剤の影響を示す例示的な粘度データは、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用し、#4スピンドルを使用して、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の一部の非限定的な例について得られた。アルカリ膨潤性レオロジー改質剤のアクリソルASE-60、アクリソルHASE TT-615、およびアクリソルDR-180 HASEを、脱イオン水の溶液中で4.25%の固形分で特性評価した。低pHでのポリマーの溶解性が限られているため、0.81%の固形分でスターポリマー(fracASSIST(登録商標)プロトタイプ2)を検討した。ジメチルエタノールアミン(「DMEA」)の添加により、pHを調節した。pH値の範囲にわたるセンチポイズ(cps)単位における粘度測定値を、以下の表1に示す。
【表1-1】
【0023】
表1に示されるように、水および総組成物の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤の組成物は、3~12のpH範囲内での3pH単位のpH値の増加にわたり、少なくとも500cpsの粘度の増加、例えば、少なくとも1,000cpsの増加、例えば、少なくとも2,000cpsの増加、例えば、少なくとも3,000cpsの増加、例えば、少なくとも5,000cpsの増加、例えば、少なくとも7,000cpsの増加、例えば、少なくとも8,000cpsの増加、例えば、少なくとも9,000cpsの増加、例えば、少なくとも10,000cpsの増加、例えば、少なくとも12,000cpsの増加、例えば、少なくとも14,000cpsの増加、またはそれより大きい粘度の増加を有し得る。例えば、表1のアクリソルASE-60アルカリ膨潤性レオロジー改質剤について示すように、約3.5から約6.5へのpHの増加は、組成物の粘度の約19,000cpsの増加をもたらす。水および総組成物の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤の組成物は、対応するpH値の減少にわたる対応する組成物の粘度の減少をもたらし得る。
【0024】
表1に示されるように、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の4.25重量%の溶液(溶液の総重量に基づく重量%)は、約pH4から約pH7まで測定した場合、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、少なくとも1,000cpsの粘度増加、例えば、少なくとも1,500cps、例えば少なくとも1,900cps、例えば少なくとも5,000cps、例えば少なくとも10,000cps、例えば少なくとも15,000cps、例えば少なくとも17,000cpsの粘度増加を有してもよい。水および総組成物の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤の組成物は、対応するpH値の減少にわたる対応する組成物の粘度の減少をもたらし得る。
【0025】
表1に示されるように、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の4.25重量%の溶液(溶液の総重量に基づく重量%)は、約pH4から約pH6.5まで測定した場合、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、少なくとも1,000cpsの粘度増加、例えば、少なくとも1,500cps、例えば少なくとも1,900cps、例えば少なくとも5,000cps、例えば少なくとも10,000cps、例えば少なくとも15,000cps、例えば少なくとも17,000cpsの粘度増加を有してもよい。水および総組成物の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤の組成物は、対応するpH値の減少にわたる対応する組成物の粘度の減少をもたらし得る。
【0026】
表1に示されるように、水および総組成物の0.81重量%でのスターポリマーのアルカリ膨潤性レオロジー改質剤の組成物は、約pH4から約pH6.5まで測定した場合、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、少なくとも400cpsの粘度増加、例えば、少なくとも600cps、例えば、少なくとも800cps、例えば少なくとも1,000cps、例えば少なくとも1,200cps、例えば少なくとも1,400cps、例えば少なくとも2,000cps、例えば少なくとも2,200cpsの粘度増加を有してもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「スターポリマー」という用語は、中央コアに接続された複数の(3つ以上の)直鎖から構成される一般的な構造を有する分岐ポリマーを指す。ポリマーのコアは、原子、分子、または巨大分子であり得る。鎖、または「アーム」は、可変長の有機鎖を含み得る。アームの長さおよび構造が全て等価であるスターポリマーは、均質であるとみなされ、長さおよび構造が可変であるポリマーは、不均質であるとみなされる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「酸膨潤性レオロジー改質剤」という用語は、高pHでは不溶性であり組成物を増粘させず、低pHでは可溶性であり組成物を増粘させる、レオロジー改質剤を指す。酸膨潤性レオロジー改質剤は、約4以下、例えば、約4.5以下、例えば、約5以下、例えば、約6以下のpHで粘度を増加させ得る。
【0029】
pH依存性レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物中に、結合剤固形分の総固形分重量に基づいて、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも30重量%、例えば、少なくとも40重量%、例えば、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも60重量%、例えば、少なくとも70重量%、例えば、少なくとも75重量%、例えば、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも85重量%、例えば、少なくとも90重量%、例えば、少なくとも93重量%、例えば、少なくとも95重量%、例えば、100重量%の量で存在し得、かつ100重量%以下、例えば、99重量%以下、例えば、95重量%以下、例えば、93重量%以下の量で存在し得る。pH依存性レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物中に、結合剤固形分の総固形分重量に基づいて、10重量%~100重量%、例えば、20重量%~100重量%、例えば、30重量%~100重量%、40重量%~100重量%、50重量%~100重量%、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、75重量%~100重量%、80重量%~100重量%、85重量%~100重量%、90重量%~100重量%、93重量%~100重量%、95重量%~100重量%、例えば、50重量%~99重量%、例えば、75重量%~95重量%、例えば、87重量%~93重量%の量で存在し得る。
【0030】
pH依存性レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物中に、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば、少なくとも0.2重量%、例えば、少なくとも0.3重量%、例えば、少なくとも1重量%、例えば、少なくとも1.5重量%、例えば、少なくとも2重量%の量で存在し得、かつ10重量%以下、例えば、5重量%以下、例えば、4.5重量%以下、例えば、4重量%以下、例えば、3重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1重量%以下の量で存在し得る。pH依存性レオロジー改質剤は、電着可能なコーティング組成物中に、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、例えば、0.2重量%~10重量%、例えば、0.3重量%~10重量%、例えば、1重量%~7重量%、例えば、1.5重量%~5重量%、例えば、2重量%~4.5重量%、例えば、3重量%~4重量%の量で存在し得る。
【0031】
驚くべきことに、電着可能なコーティング組成物中の本明細書の量でのpH依存性レオロジー改質剤の使用により、電着による電極の生成が可能となることが発見された。pH依存性レオロジー改質剤を含まない比較可能な電着可能なコーティング組成物では、電着によって電極を生成することができなかった。いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、レオロジー改質剤のpH依存性は、電着可能なコーティング組成物の電着を補助するものと考えられる。なぜなら、コーティングされる電極の表面における電着浴のpHは、電着浴の残りの部分と比較して有意差があり、コーティングされる電極の表面における、またはコーティングされる電極の表面に近接するpH依存性レオロジー改質剤の体積の著しい減少を引き起こし、コーティングされる電極の表面上でのpH依存性レオロジー改質剤および電着可能なコーティング組成物の他の成分の凝集を誘発するためである。例えば、アノード電着におけるアノード表面におけるpHは、堆積浴の残りの部分と比較して著しく低減される。同様に、カソード電着における表面カソードにおけるpHは、電着浴の残りの部分より著しく高い。静止状態の電着浴に対する、電着中にコーティングされる電極の表面におけるpHの差は、少なくとも6単位、例えば、少なくとも7単位、例えば、少なくとも8単位であってもよい。
【0032】
電着可能なコーティング組成物のpHは、組成物が使用される電着の種類、ならびに電着可能なコーティング組成物に含まれる添加剤、例えば顔料、フィラー等に依存する。例えば、アニオン性電着可能なコーティング組成物は、約6~約12、例えば、約6.5~約11、例えば、約7~約10.5のpHを有していてもよい。対照的に、カチオン性電着可能なコーティング組成物は、約4.5~約10、例えば、約4.5~約5.5、例えば、約8~約9.5のpHを有していてもよい。
【0033】
本発明では、電着可能なコーティング組成物は、水を含む水性媒体をさらに含む。本明細書で使用される場合、「水性媒体」という用語は、水性媒体の総重量に基づいて、50重量%を超える水を含む液体媒体を指す。かかる水性媒体は、水性媒体の総重量に基づいて、50重量%未満の有機溶媒、または40重量%未満の有機溶媒、または30重量%未満の有機溶媒、または20重量%未満の有機溶媒、または10重量%未満の有機溶媒、または5重量%未満の有機溶媒、または1重量%未満の有機溶媒、または0.8重量%未満の有機溶媒、または0.1重量%未満の有機溶媒を含み得る。水は、水性媒体の総重量に基づいて、50重量%を超える、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも85重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも99重量%、例えば少なくとも99.9重量%、例えば100重量%を含む。水は、水性媒体の総重量に基づいて、50.1重量%~100重量%、例えば、70重量%~100重量%、例えば、80重量%~100重量%、例えば、85重量%~100重量%、例えば、90重量%~100重量%、例えば、95重量%~100重量%、例えば、99重量%~100重量%、例えば、99.9重量%~100重量%を含んでよい。水性媒体は、1つ以上の有機溶媒をさらに含み得る。好適な有機溶媒の例としては、アルキル基中に1~10個の炭素原子を含有する、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、およびジプロピレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばこれらのグリコールのモノエチル及びモノブチルエーテルなどの酸素化有機溶媒が挙げられる。他の少なくとも部分的に水混和性の溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびジアセトンアルコールなどのアルコールが挙げられる。電着可能なコーティング組成物は、特に、水性分散液等の分散液の形態で提供され得る。
【0034】
有機溶媒は、多くの場合、所望の範囲内で粘度を変化させるために、水系配合物に添加される。電着可能なコーティング組成物または他の水系配合物に添加される有機溶媒により、粘度変化を実現するためにポリマーの膨潤が誘発され得る。本明細書に記載のpH依存性レオロジー改質剤の使用により、組成物の環境影響を低減するために所望の粘度標的を満たすために必要とされる有機溶媒の総量の低減が可能となり得る。したがって、電着可能なコーティング組成物における上述のpH依存性レオロジー改質剤の使用により、過去に製造された水系配合物よりも低い揮発性有機含有物(VOC)を有する電着可能なコーティング組成物の製造が可能となり得る。本発明で使用する場合、「揮発性有機含有物」または「VOC」という用語は、250℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。本明細書で使用される場合、「沸点」という用語は、通常沸点とも称される、101.325kPa(1.01325バールまたは1気圧)の標準大気圧での物質の沸点を指す。揮発性有機含有物は、揮発性有機溶媒を含む。本明細書で使用する場合、「揮発性有機溶媒」という用語は、250℃未満、例えば、200℃未満の沸点を有する有機化合物を指す。例えば、本発明の電着可能なコーティング組成物のVOCは、500g/L以下、例えば、300g/L以下、例えば、150g/L以下、例えば、50g/L以下、例えば、1g/L以下、例えば、0g/Lであり得、0~500g/L、例えば、0.1~300g/L、例えば、0.1~150g/L、例えば、0.1~50g/L、例えば、0.1~1g/Lの範囲であり得る。VOCは、以下の式に従って計算され得る。
【数1】
【0035】
有機溶媒は、存在する場合、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、30重量%未満、例えば、20重量%未満、例えば、10重量%未満、例えば、5重量%未満、例えば、3重量%未満、例えば、1重量%未満、例えば、0.5重量%未満、例えば、0.3重量%未満、例えば、0.1重量%未満、例えば、0.0重量%の量で存在し得る。
【0036】
水は、電着可能なコーティング組成物中に存在する水の総量が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも40重量%、例えば、少なくとも45重量%、例えば、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも55重量%、例えば、少なくとも60重量%、例えば、少なくとも65重量%、例えば、少なくとも70重量%、例えば、少なくとも75重量%、例えば、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも85重量%、例えば、少なくとも90重量%、例えば、少なくとも95重量%であり、かつ、99重量%以下、例えば、95重量%以下、例えば、90重量%以下、例えば、85重量%以下、例えば、80重量%以下、例えば、75重量%以下の量で存在し得るように、水性媒体中に存在する。水は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、40重量%~99重量%、例えば、45重量%~99重量%、例えば、50重量%~99重量%、例えば、60重量%~99重量%、例えば、65重量%~99重量%、例えば、70重量%~99重量%、例えば、75重量%~99重量%、例えば、80重量%~99重量%、例えば、85重量%~99重量%、例えば、90重量%~99重量%、例えば、40重量%~90重量%、例えば、45重量%~85重量%、例えば、50重量%~80重量%、例えば、60重量%~75重量%の量で存在し得る。
【0037】
電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、60重量%以下、例えば、55重量%以下、例えば、50重量%以下、例えば、45重量%以下、例えば、40重量%以下、例えば、35重量%以下、例えば、30重量%以下、例えば、25重量%以下、例えば、20重量%以下、例えば、15重量%以下、例えば、10重量%以下、例えば、5重量%以下、例えば、1重量%以下の固体含有量を有し得る。電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~60重量%、例えば、0.1重量%~55重量%、例えば、0.1重量%~50重量%、例えば、0.1重量%~45重量%、例えば、0.1重量%~40重量%、例えば、0.1重量%~35重量%、例えば、0.1重量%~30重量%、例えば、0.1重量%~25重量%、例えば、0.1重量%~20重量%、例えば、0.1重量%~15重量%、例えば、0.1重量%~10重量%、例えば、0.1重量%~5重量%、例えば、0.1重量%~1重量%の固体含有量を有し得る。
【0038】
電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物として使用する前に、水および必要に応じて有機溶媒で希釈される濃縮物の形態でパッケージ化され得る。希釈すると、電着可能なコーティング組成物は、本明細書に記載の固体および水含有量を有するべきである。
【0039】
本発明では、電着可能なコーティング組成物は、必要に応じて、電気化学的活性物質をさらに含み得る。電着可能なコーティング組成物中に含有される電気化学的活性物質を構成する物質は、特に限定されず、目的の電気貯蔵装置の種類に従って好適な物質を選択することができる。
【0040】
電気化学的活性物質は、正極の活性物質として使用するための物質を含み得る。正極のための電気化学的活性物質は、リチウムを取り込み得る物質(リチウムインターカレーション/脱インターカレーションによる取り込みを含む)、リチウム変換可能な物質、またはそれらの組み合わせを含み得る。リチウムを取り込み得る電気化学的活性物質の非限定的な例としては、LiCoO、LiNiO、LiFePO、LiFeCoPO、LiCoPO、LiMnO、LiMn、Li(NiMnCo)O、Li(NiCoAl)O、炭素被覆LiFePO、およびそれらの組み合わせが挙げられる。電気化学的活性物質中に存在する遷移金属の比率は、変化し得る。例えば、Li(NiMnCo)O(「NMC」と称される場合がある)は、1:1:1、5:3:2、6:2:2、および8:1:1のNi:Mn:Coの比率を有し得る。リチウム変換可能な物質の非限定的な例には、硫黄、LiO、FeFおよびFeF、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0041】
電気化学的活性物質は、負極の活性物質として使用するための物質を含み得る。負極のための電気化学的活性物質は、グラファイト、チタン酸リチウム(LTO)、リン酸バナジウムリチウム(LVP)、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0042】
電気化学的活性物質は、電着可能なコーティング組成物中に、電着可能な組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも45重量%、例えば、少なくとも70重量%、例えば、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも90重量%、例えば、少なくとも91重量%の量で存在し得、かつ99重量%以下、例えば、98重量%以下、例えば、95重量%以下の量で存在し得る。電気化学的活性物質は、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、45重量%~99重量%、例えば、70重量%~98重量%、例えば、80重量%~95重量%、例えば、90重量%~95重量%、例えば、91重量%~95重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0043】
本発明の電着可能なコーティング組成物は、必要に応じて、導電剤をさらに含み得る。導電剤の非限定的な例には、活性炭、アセチレンブラックおよびファーネスブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、フラーレン、およびそれらの組み合わせなどの炭素質物質が含まれる。グラファイトは、負極のための電気化学的活性物質および導電剤の両方として使用され得るが、グラファイトが電気化学的活性物質として使用される場合、導電性物質は典型的には省略されることに留意されたい。
【0044】
導電剤はまた、高い表面積、例えば100m/gを超えるBET表面積を有する任意の活性炭素を含み得る。本明細書で使用される場合、「BET表面積」という用語は、定期刊行物「The Journal of the American Chemical Society」,60,309(1938)に記載されるBrunauer-Emmett-Teller法に基づいて、ASTM D3663-78標準に従って窒素吸着によって決定される比表面積を指す。一部の実施例では、導電性炭素は、100m/g~1,000m/g、例えば150m/g~600m/g、例えば100m/g~400m/g、例えば200m/g~400m/gのBET表面積を有し得る。一部の実施例において、導電性炭素は、約200m/gのBET表面積を有し得る。好適な導電性炭素物質はCabot Corporationから市販のLITX200である。
【0045】
導電剤は、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.5重量%~20重量%、例えば、1重量%~20重量%、例えば、2重量%~10重量%、例えば、2.5重量%~7重量%、例えば、3重量%~5重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0046】
上述したように、結合剤は、必要に応じて、架橋剤をさらに含み得る。架橋剤は、水性媒体中に可溶性または分散性であり、pH依存性レオロジー改質剤の活性水素基、および組成物中に必要に応じて存在する任意の他の樹脂性フィルム形成ポリマーと反応性であり得る。好適な架橋剤の非限定的な例としては、アミノプラスト樹脂、ブロックポリイソシアネート、カルボジイミド、およびポリエポキシドが挙げられる。
【0047】
架橋剤として使用するためのアミノプラスト樹脂の例は、メラミンまたはベンゾグアナミン等のトリアジンをホルムアルデヒドと反応させることによって形成されるものである。これらの反応生成物は、反応性N-メチロール基を含有する。通常、これらの反応性基を、それらの混合物を含むメタノール、エタノール、またはブタノールでエーテル化して、それらの反応性を調節する。アミノプラスト樹脂の化学調製および使用については、Dr.Oldringによって編集された「The Chemistry and Applications of Amino Crosslinking Agents or Aminoplast」,Vol.V,Part II,page21 ff.;John Wiley&Sons/Cita Technology Limited, London,1998を参照されたい。これらの樹脂は、MAPRENAL MF980等のMAPRENAL(登録商標)の商標、ならびにCytec Industriesから市販されているCYMEL303およびCYMEL1128等のCYMEL(登録商標)の商標で市販されている。
【0048】
ブロックポリイソシアネート架橋剤は、典型的には、イソシアネート基がイプシロン-カプロラクタムおよびメチルエチルケトキシム等の物質と反応する(「ブロックされる」)、そのイソシアナト二量体および三量体を含む、トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートである。硬化温度において、ブロック剤は、ブロックを外して、(メタ)アクリルポリマーに関連するヒドロキシル官能基と反応性であるイソシアネート官能基を曝露する。ブロックポリイソシアネート架橋剤は、DESMODUR BLとしてCovestro社から市販されている。
【0049】
カルボジイミド架橋剤は、モノマーもしくはポリマー形態、またはそれらの混合物であり得る。カルボジイミド架橋剤は、以下の構造を有する化合物を指す。
R-N=C=N-R’
式中、RおよびR’はそれぞれ個別に、脂肪族、芳香族、アルキル芳香族、カルボン酸、または複素環式基を含み得る。市販のカルボジイミド架橋剤の例としては、例えば、CARBODILITE V-02-L2、CARBODILITE SV-02、CARBODILITE E-02、CARBODILITE SW-12G、CARBODILITE V-10、およびCARBODILITE-05などの日清紡ケミカル社から市販されているCARBODILITEの商品名で販売されるものが挙げられる。
【0050】
ポリエポキシド架橋剤の例は、他のビニルモノマーと共重合したグリシジルメタクリレートから調製されたもの等のエポキシ含有(メタ)アクリルポリマー、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の多価フェノールのポリグリシジルエーテル、ならびに3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-メチル)アジペート等の脂環式ポリエポキシドである。
【0051】
架橋剤は、0重量%~30重量%、例えば、5重量%~20重量%、例えば、5重量%~15重量%、例えば、7重量%~12重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得、重量%は、結合剤固形分の総重量に基づいたものである。
【0052】
架橋剤は、0重量%~2重量%、例えば、0.1重量%~1重量%、例えば、0.2重量%~0.8重量%、例えば、0.3重量%~0.5重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得、重量%は、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいたものである。
【0053】
本明細書で使用される場合、「結合剤固形分」という用語は、「樹脂固体」と同義に使用され得、pH依存性レオロジー改質剤、ならびに存在する場合、架橋剤、非フッ素化有機フィルム形成ポリマー、および接着プロモーターを含む。本明細書で使用される場合、「結合剤分散体」という用語は、水性媒体中の結合剤固形分の分散体を指す。
【0054】
結合剤は、10重量%~100重量%、例えば、50重量%~95重量%、例えば、70重量%~93重量%、例えば、87重量%~92重量%の量のpH依存性レオロジー改質剤、および存在する場合、0重量%~30重量%、例えば、5重量%~15重量%、例えば、7重量%~13重量%の量の架橋剤を含んでもよく、それらから本質的に構成されてもよく、またはそれらから構成されてもよく、重量%は、結合剤固形分の総重量に基づいたものである。
【0055】
結合剤は必要に応じて、非フッ素化有機フィルム形成ポリマーをさらに含み得る。非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、本明細書に記載のpH依存性レオロジー改質剤とは異なる。非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、多糖類、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0056】
非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、存在する場合、結合剤固形分の総重量に基づいて、0重量%~90重量%、例えば、20重量%~60重量%、例えば、25重量%~40重量%の量で存在し得る。
【0057】
非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、存在する場合、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも0重量%~9.9重量%、例えば、0.1重量%~5重量%、例えば、0.2重量%~2重量%、例えば、0.3重量%~0.5重量%の量で存在し得る。
【0058】
電着可能なコーティング組成物はまた、本明細書に記載の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーのいずれかまたは全てを実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。
【0059】
結合剤固形分は、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、例えば、0.2重量%~10重量%、例えば、0.3重量%~8重量%、例えば、0.5重量%~5重量%、例えば、1重量%~3重量%、例えば、1.5重量%~2.5重量%、例えば、1重量%~2重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0060】
電着可能なコーティング組成物の総固形分は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、例えば、少なくとも1重量%、例えば、少なくとも3重量%、例えば、少なくとも5重量%、例えば、少なくとも7重量%、例えば、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%、例えば、少なくとも30重量%、例えば、少なくとも40重量%であり得、かつ例えば、60重量%以下、例えば、50重量%以下、例えば、40重量%以下、例えば、30重量%以下、例えば、25重量%以下、例えば、20重量%以下、例えば、15重量%以下、例えば、12重量%以下、例えば、10重量%以下、例えば、7重量%以下、例えば、5重量%以下であり得る。電着可能なコーティング組成物の総固形分は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~60重量%、例えば、0.1重量%~50重量%、例えば、0.1重量%~40重量%、例えば、0.1重量%~30重量%、例えば、0.1重量%~25重量%、例えば、0.1重量%~20重量%、例えば、0.1重量%~15重量%、例えば、0.1重量%~12重量%、例えば、0.1重量%~10重量%、例えば、0.1重量%~7重量%、例えば、0.1重量%~5重量%、例えば、1重量%~60重量%、例えば、1重量%~50重量%、例えば、1重量%~40重量%、例えば、1重量%~30重量%、例えば、1重量%~25重量%、例えば、1重量%~20重量%、例えば、1重量%~15重量%、例えば、1重量%~12重量%、例えば、1重量%~10重量%、例えば、1重量%~7重量%、例えば、1重量%~5重量%であり得る。
【0061】
電着可能なコーティング組成物は、例えば、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、45重量%~99重量%、例えば、70重量%~98重量%、例えば、80重量%~95重量%、例えば、90重量%~95重量%、例えば、91重量%~95重量%の電気化学的活性物質と、0.5重量%~20重量%、例えば、1重量%~20重量%、例えば、2重量%~10重量%、例えば、2.5重量%~7重量%、例えば、3重量%~5重量%の量の導電剤と、0.1重量%~10重量%、例えば、0.2重量%~10重量%、例えば、0.3重量%~10重量%、例えば、1重量%~7重量%、例えば、1.5重量%~5重量%、例えば、2重量%~4.5重量%、例えば、3重量%~4重量%の量のpH依存性レオロジー改質剤と、ならびに必要に応じて、0重量%~2重量%、例えば、0.1重量%~1重量%、例えば、0.2重量%~0.8重量%、例えば、0.3重量%~0.5重量%の量の架橋剤と、少なくとも0重量%~9.9重量%、例えば、0.1重量%~5重量%、例えば、0.2重量%~2重量%、例えば、0.3重量%~0.5重量%の量の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーと、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、40重量%~99重量%、例えば45重量%~99重量%、例えば50重量%~99重量%、例えば60重量%~99重量%、例えば65重量%~99重量%、例えば70重量%~99重量%、例えば75重量%~99重量%、例えば80重量%~99重量%、例えば85重量%~99重量%、例えば90重量%~99重量%、例えば40重量%~90重量%、例えば45重量%~85重量%、例えば50重量%~80重量%、例えば60重量%~75重量%の水と、を含んでもよく、本質的にそれらから構成されてもよく、またはそれらから構成されてもよい。
【0062】
電着可能なコーティング組成物は、必要に応じて、接着プロモーターをさらに含み得る。接着プロモーターは、酸官能性ポリオレフィンまたは熱可塑性物質を含み得る。
【0063】
酸官能性ポリオレフィン接着プロモーターは、エチレン-アクリル酸コポリマーまたはエチレン-メタクリル酸コポリマーなどのエチレン-(メタ)アクリル酸コポリマーを含み得る。エチレン-アクリル酸コポリマーは、エチレン-アクリル酸コポリマーの総重量に基づいて、10重量%~50重量%、例えば、15重量%~30重量%、例えば、17重量%~25重量%、例えば、約20重量%のアクリル酸、およびエチレン-アクリル酸コポリマーの総重量に基づいて、50重量%~90重量%、例えば、70重量%~85重量%、例えば、75重量%~83重量%、例えば、約80重量%のエチレンを含む構成単位を含み得る。かかる付加ポリマーの市販の例としては、ダウケミカル社から市販されているPRIMACOR5980iが挙げられる。
【0064】
接着プロモーターは、結合剤固形分(接着プロモーターを含む)の総重量に基づいて、1重量%~60重量%、例えば、10重量%~40重量%、例えば、25重量%~35重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0065】
電着可能なコーティング組成物は、必要に応じて、pH調整剤をさらに含み得る。pH調整剤は、酸または塩基を含み得る。酸は、例えば、リン酸または炭酸を含み得る。塩基は、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、またはジメチルエタノールアミン(DMEA)を含み得る。電着可能なコーティング組成物のpHを所望のpH範囲に調整するのに必要な任意の好適な量のpH調整剤が使用され得る。
【0066】
本発明はまた、(a)pH依存性レオロジー改質剤、(b)導電剤、および(c)水を含む水性媒体を含むか、本質的にそれらから構成されるか、またはそれらから構成される電着可能なコーティング組成物であって、水が、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも40重量%の量で存在する、電着可能なコーティング組成物を対象とする。pH依存性レオロジー、架橋剤、および水性媒体は、上記と同じ物質であってもよく、上記と同じ量で存在してもよい。
【0067】
導電剤は、上述のものと同じであり得る。導電剤は、電着可能なコーティング組成物中に、電着可能な組成物の総固形分重量に基づいて、少なくとも45重量%、例えば、少なくとも70重量%、例えば、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも90重量%、例えば、少なくとも91重量%の量で存在し得、かつ99重量%以下、例えば、98重量%以下、例えば、95重量%以下の量で存在し得る。導電剤は、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、45重量%~99重量%、例えば、70重量%~98重量%、例えば、80重量%~95重量%、例えば、90重量%~95重量%、例えば、91重量%~95重量%の量で電着可能なコーティング組成物中に存在し得る。
【0068】
(a)pH依存性レオロジー改質剤、(b)導電剤、および(d)水を含む水性媒体を含むか、本質的にそれらから構成されるか、またはそれらから構成される電着可能なコーティング組成物は、架橋剤、非フッ素化有機フィルム形成ポリマー、接着プロモーター、およびpH調整剤を含む、上述の任意の成分を、上述の量でさらに含んでもよい。
【0069】
本発明は、基材をコーティングするための方法も対象とする。電着可能なコーティング組成物は、任意の導電性基材の上に電着され得る。好適な基材は、金属基材、金属合金基材、および/またはニッケルめっきされたプラスチックなどの金属化された基材を含む。さらに、基材は、例えば、炭素繊維または導電性炭素を含む物質などの複合物質を含む非金属導電性物質を含んでもよい。本発明では、金属または金属合金は、冷間圧延鋼、高温圧延鋼、亜鉛金属でコーティングされた鋼、亜鉛化合物、または亜鉛合金、例えば、電気亜鉛めっき鋼、溶融亜鉛めっき鋼、亜鉛めっき鋼、亜鉛合金でめっきされた鋼を含み得る。1XXX、2XXX、3XXX、4XXX、5XXX、6XXX、7XXXまたは8XXXシリーズのアルミニウム合金、A356シリーズのクラッドアルミニウム合金および鋳造アルミニウム合金も基材として使用され得る。AZ31B、AZ91C、AM60B、またはEV31Aシリーズのマグネシウム合金も基材として使用され得る。本発明で使用される基材は、チタンおよび/またはチタン合金も含み得る。他の好適な非鉄金属には、銅およびマグネシウム、ならびにこれらの物質の合金が含まれる。基材は、導電性物質を含む集電体の形態であってもよく、導電性物質は、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、およびそれらの合金などの金属、ならびにステンレス鋼を含んでもよい。他の好適な導電性基材としては、導電性炭素、導電性プライマーでコーティングされた物質、多層電池電極の調製のための予め作製された電池電極、導電性多孔質ポリマー、および導電性複合物質を含む多孔質ポリマーが挙げられる。基材はまた、電気絶縁多孔質ポリマーを含んでもよく、基材は、例えば、米国特許出願公開第2016/0317974号の段落[0054]~[0058]に開示されている方法および装置によって、導電性バッキングを使用してコーティングされる。
【0070】
基材をコーティングするための方法は、上記の電着可能なコーティング組成物を基材の少なくとも一部分に電着させることと、コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させて、基材の上に少なくとも部分的に硬化したコーティングを形成することと、を含み得る。本発明では、本方法は、(a)本発明の電着可能なコーティング組成物を基材の少なくとも一部分の上に電着させることと、(b)コーティングされた基材を、基材の上の電着可能なコーティングを硬化させるのに十分な時間および温度まで加熱することと、を含み得る。
【0071】
本発明の方法では、コーティングは、電着プロセスを介して、基材の少なくとも一部分の上にまたは少なくとも一部分を覆って適用される。かかるプロセスでは、電極および対電極(アニオン性電着中のカソードなど)を含む電気回路中の電極(アニオン性電着中のアノードなど)として機能する導電性基材(前述のもののいずれかなど)が、本発明の電着可能なコーティング組成物中に浸漬される。電流が電極間を通過することにより、コーティングが基材の上に堆積される。印加電圧は、様々な電圧であり得、例えば1ボルトのような低電圧から数千ボルトのような高電圧までであり得るが、多くの場合、50~500ボルトである。電流密度は、多くの場合、1平方フィート当たり0.5アンペア~15アンペアである。組成物中の基材の滞留時間は、10~180秒であり得る。
【0072】
電気コーティング後、基材は浴から取り出され、オーブンでベークされ得る。例えば、コーティングされた基材は、400℃以下、例えば300℃以下、例えば275℃以下、例えば255℃以下、例えば225℃以下、例えば200℃以下、例えば100℃~400℃、例えば200℃~400℃、例えば240℃~300℃の温度で、例えば10~60分間ベークされ得る。他の事例において、電気コーティングおよび基材を浴から取り出した後、コーティングされた基材は、単純に、周囲条件下で乾燥させることができる。本明細書で使用される場合、「周囲条件」は、10~100%の相対湿度、および5~80℃、場合によっては10~60℃、さらに他の場合には15~40℃などの、-10~120℃の範囲の温度を有する大気を指す。
【0073】
本発明はまた、集電体と、集電体上に形成されたフィルムとを有する電極であって、フィルムが、上述の電着可能なコーティング組成物から堆積される、電極も対象とする。電極は、正極であっても負極であってもよく、上記の電着可能なコーティング組成物を集電体の表面に堆積させてコーティングフィルムを形成し、その後、コーティングフィルムを乾燥および/または硬化することによって製造されてもよい。
【0074】
電極のコーティングフィルムは、架橋されたコーティングを含み得る。本明細書で使用される場合、「架橋されたコーティング」という用語は、pH依存性レオロジー改質剤の官能基が架橋剤の官能基と反応して、結合剤の成分分子を架橋する共有結合を形成したコーティングを指す。接着プロモーターおよび非フッ素化有機フィルム形成ポリマーは、存在する場合、架橋剤の官能基と反応する官能基を有してもよく、コーティングを架橋する役割を果たしてもよい。
【0075】
集電体は、導電性物質を含んでよく、導電性物質は、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、およびそれらの合金などの金属、ならびにステンレス鋼を含んでよい。例えば、集電体は、メッシュ、シート、または箔の形態のアルミニウムまたは銅を含んでもよい。集電体の形状および厚さは特に限定されないが、集電体は、約0.001~0.5mmの厚さを有し得、例えば、約0.001~0.5mmの厚さを有するメッシュ、シート、または箔であり得る。
【0076】
加えて、集電体は、本発明の電着可能なコーティング組成物を堆積する前に、前処理組成物で前処理され得る。本明細書で使用される場合、「前処理組成物」という用語は、集電体と接触すると、集電体表面と反応し、化学的に変化させ、それに結合して保護層を形成する組成物を指す。前処理組成物は、IIIB族および/またはIVB族金属を含む前処理組成物であり得る。本明細書で使用される場合、「IIIB族および/またはIVB族金属」という用語は、例えば、Handbook of Chemistry and Physics,63rd edition(1983)に示されているように、CAS元素周期表のIIIB族またはIVB族にある元素を指す。該当する場合、金属自体が使用され得るが、IIIB族金属化合物および/またはIVB金属化合物も使用され得る。本発明で使用する場合、「IIIB族および/またはIVB族金属化合物」という用語は、CAS元素周期表のIIIB族またはIVB族にある少なくとも1つの元素を含む化合物を指す。集電体を前処理するための好適な前処理組成物および方法は、米国特許第9,273,399号の第4欄、第60行~第10欄、第26行に記載されており、その引用部分は、参照により本明細書に組み込まれる。前処理組成物を使用して、正極または負極を生成するために使用される集電体を処理することができる。
【0077】
リチウムイオン電気貯蔵装置のための電極を調製するために、電気化学的活性物質、導電剤、pH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤、および任意の成分を含む電着可能なコーティング組成物は、成分を組み合わせて電着可能なコーティング組成物を形成することによって調製される。これらの物質は、撹拌機、ビーズミル、または高圧ホモジナイザーなどの既知の手段を用いて撹拌することによって一緒に混合することができる。かかる組成物を調製するための例示的な方法は、以下の実施例に提示される。
【0078】
電着後に形成されるコーティングの厚さは、少なくとも1ミクロン、例えば、1~1,000ミクロン(μm)、例えば、10~500μm、例えば、50~250μm、例えば、75~200μmであり得る。
【0079】
適用後のコーティングフィルムの乾燥および/または架橋は、適用可能であれば、例えば、高温、例えば、少なくとも50℃、例えば、少なくとも60℃、例えば、50~400℃、例えば、100~300℃、例えば、150~280℃、例えば、200~275℃、例えば、225~270℃、例えば、235~265℃、例えば、240~260℃で加熱することによって行うことができる。加熱時間は、ある程度温度に依存する。一般的に、温度が高いほど、硬化に必要な時間は短くなる。典型的には、硬化時間は、少なくとも5分間、例えば5~60分の間である。硬化フィルム中の結合剤が架橋される(該当する場合)ように、すなわち、カルボン酸基およびヒドロキシル基などの、pH依存性レオロジー改質剤および非フッ素化有機フィルム形成ポリマー(存在する場合)上の共反応性基と、アミノプラストのN-メチロールおよび/またはN-メチロールエーテル基などの架橋剤の反応性基、ブロックポリイソシアネート架橋剤のイソシアナト基との間に共有結合が形成されるように、温度および時間は十分でなければならない。架橋結合剤は、以下に言及される電解質の溶媒に対して実質的に耐溶剤性を有し得る。コーティングフィルムを乾燥させる他の方法として、周囲温度乾燥、マイクロ波乾燥および赤外線乾燥が挙げられ、コーティングフィルムを硬化させる他の方法として、電子ビーム硬化およびUV硬化が挙げられる。
【0080】
本発明では、本発明の電着可能なコーティング組成物を使用して電着によって生成される電極は、他の方法、例えば、キャスティングによって適用される同等の水性コーティング組成物よりも向上した接着力を有し得る。例えば、コーティングの基材への90°剥離強度接着性は、機械的に駆動される90°剥離ステージを備えたMark-10(モデルDC4060)電動試験スタンドを使用して測定されてもよい。コーティングされた基材の12.7mmのストリップが切断され、接着テープを使用してステージに固定され得る。剥離強度は、基材からコーティングフィルムを剥離するために必要な力として測定され得る。剥離ステージの横方向の移動は、剥離ヘッドの垂直移動と同じ速度で能動的に駆動することで、90°の剥離を確実に行い、剥離強度の正確かつ再現可能な測定を行うことができる。この試験方法は、本明細書では、剥離強度試験方法(PEEL STRENGTH TEST METHOD)と称され得る。90°剥離強度接着は、剥離強度試験方法に従って測定した場合、同様の質量負荷の比較コーティング組成物よりも少なくとも10%、例えば、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、例えば、少なくとも100%大きくてもよい。本明細書で使用される場合、「比較コーティング組成物」という用語は、pH依存性レオロジー改質剤を含まず、別様で、本発明の電着可能なコーティング組成物と同様の量の成分を有する水性組成物を指す。本明細書で使用される場合、「同様の質量負荷で」という用語は、0.1mg/cm以内の負荷を有するコーティングを指す。
【0081】
90°剥離強度接着は、剥離強度試験方法に従って測定した場合、2.15g/cmの質量負荷で、少なくとも100N/m、例えば、少なくとも125N/m、例えば、少なくとも135N/m、例えば、少なくとも145N/m、例えば、少なくとも155N/m、例えば、少なくとも165N/m、例えば、少なくとも175N/m、例えば、少なくとも180N/mであり得る。
【0082】
本発明はまた、電気貯蔵装置を対象とする。本発明による電気貯蔵装置は、本発明の電着可能なコーティング組成物から調製される上記の電極のうちの1つ以上を使用することによって製造され得る。電気貯蔵装置は、電極、対電極、および電解質を含む。電極、対電極、またはその両方は、一方の電極が正極であり、一方の電極が負極である限り、本発明の電極を含み得る。本発明による電気貯蔵装置は、セル、電池、電池パック、二次電池、コンデンサ、およびスーパーコンデンサを含む。
【0083】
電気貯蔵装置は、電解液を含み、一般的に使用される方法に従って、セパレータなどの部品を使用することによって製造することができる。より具体的な製造方法として、負極および正極は、それらの間のセパレータと共に組み立てられ、得られたアセンブリは、電池の形状に従って圧延または屈曲され、電池容器に入れられ、電解液が電池容器に注入され、電池容器が密封される。電池の形状は、コイン、ボタンまたはシート、円筒形、正方形または平坦であり得る。
【0084】
電解液は液体であってもゲルであってもよく、電池として効果的に機能することができる電解液は、負極活物質および正極活物質の種類に従って電気貯蔵装置に使用される既知の電解液の中から選択され得る。電解液は、好適な溶媒中に溶解させた電解質を含有する溶液であり得る。電解質は、リチウムイオン二次電池のための従来既知のリチウム塩であり得る。リチウム塩の例としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、LiB(C、LiCFSO、LiCHSO、LiCSO、Li(CFSON、LiBCHSOLiおよびCFSOLiが挙げられる。上記電解質を溶解するための溶媒は、特に限定されず、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートおよびジエチルカーボネート等のカーボネート化合物、γ-ブチルラクトン等のラクトン化合物、トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフランおよび2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル化合物、ならびにジメチルスルホキシド等のスルホキシド化合物が挙げられる。電解液中の電解質の濃度は、0.5~3.0モル/L、例えば0.7~2.0モル/Lであり得る。
【0085】
リチウムイオン電気貯蔵装置の放電中、リチウムイオンが負極から放出され、電流を正極に伝え得る。このプロセスには、脱インターカレーションとして知られるプロセスが含まれ得る。充電中、リチウムイオンは、正極中の電気化学的活性物質から負極に移動し、負極中に存在する電気化学的活性物質に埋め込まれる。このプロセスには、インターカレーションとして知られるプロセスが含まれ得る。
【0086】
電着可能なコーティング組成物は、一過性接着プロモーターを実質的に含まない場合があるか、本質的にそれを含まない場合があるか、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、「一過性接着プロモーター」という用語は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスファミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、およびテトラエチル尿素を指す。本明細書で使用される場合、一過性接着プロモーターを実質的に含まない電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の一過性接着プロモーター(存在する場合)を含む。本明細書で使用される場合、一過性接着プロモーターを本質的に含まない電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、0.1重量%未満の一過性接着プロモーター(存在する場合)を含む。存在する場合、一過性接着プロモーターは、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満、例えば、0.9重量%未満、例えば、0.1重量%未満、例えば、0.01重量%未満、例えば、0.001重量%未満の量で存在し得る。存在する場合、一過性接着プロモーターは、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、2重量%未満、例えば、1重量%未満、例えば、0.1重量%未満、例えば、0.01重量%未満、例えば、0.001重量%未満の量で存在し得る。
【0087】
本発明では、電着可能なコーティング組成物は、フルオロポリマーを実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、フルオロポリマーという用語は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ化ビニリデンの残基を含むポリマーおよびコポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「ポリフッ化ビニリデンポリマー」は、高分子量ホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーを含む、ホモポリマー、コポリマー、例えばバイナリーコポリマー、およびターポリマーを含む。かかる(コ)ポリマーとしては、少なくとも50モル%、例えば、少なくとも75モル%、および少なくとも80モル%、ならびに少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(別名、ビニリデン二フッ化物)の残基を含有するものが挙げられる。フッ化ビニリデンモノマーは、本発明のフルオロポリマーを生成するために、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、フッ化ビニル、ペンタフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、およびフッ化ビニリデンと容易に共重合するであろう任意の他のモノマーから構成される群から選択される少なくとも1つのコモノマーと共重合してもよい。フルオロポリマーはまた、PVDFホモポリマーを含んでもよい。本明細書で使用される場合、電着可能なコーティング組成物は、フルオロポリマーを実質的に含まないか、または本質的に含まず、フルオロポリマーが存在するとしても、フルオロポリマーは、結合剤固形分の総重量に基づいて、それぞれ5重量%未満または0.2重量%未満の量で存在する。
【0088】
本発明では、電着可能なコーティング組成物は、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、および/またはポリアクリロニトリル誘導体を実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。
【0089】
電着可能なコーティング組成物は、グラフェンオキシドを実質的に含まない場合がある。本明細書で使用される場合、電着可能な組成物は、グラフェンオキシドを実質的に含まないか、または本質的に含まず、グラフェンオキシドが存在するとしても、グラフェンオキシドは、電着可能なコーティング組成物の総固形分重量に基づいて、それぞれ5重量%未満または1重量%未満の量で存在する。
【0090】
pH依存性レオロジー改質剤は、カルボン酸アミドモノマー単位の残基を実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、pH依存性レオロジー改質剤は、カルボン酸アミドモノマー単位を実質的に含まないか、または本質的に含まず、カルボン酸アミドモノマー単位が存在するとしても、カルボン酸アミドモノマー単位は、pH依存性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、それぞれ0.1重量%未満または0.01重量%未満の量で存在する。
【0091】
電着可能なコーティングは、イソホロンを実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。
【0092】
電着可能なコーティングは、セルロース誘導体を実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。セルロース誘導体の非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロースおよびその塩(CMC)が挙げられる。CMCは、無水グルコース環上のヒドロキシル基の一部分がカルボキシメチル基で置換されたセルロースエーテルである。
【0093】
電着可能なコーティングは、多官能性ヒドラジド化合物を実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能な組成物は、多官能性ヒドラジド化合物を実質的に含まないか、または本質的に含まず、多官能性ヒドラジド化合物が存在するとしても、多官能性ヒドラジド化合物は、電着可能なコーティング組成物の総結合剤固形分重量に基づいて、それぞれ0.1重量%未満または0.01重量%未満の量で存在する。
【0094】
電着可能なコーティングは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴムまたはアクリルゴムを実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能な組成物は、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはアクリルゴムを実質的に含まないか、または本質的に含まず、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはアクリルゴムが存在するとしても、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、またはアクリルゴムは、電着可能なコーティング組成物の総結合剤固形分重量に基づいて、それぞれ5重量%未満または1重量%未満の量で存在する。
【0095】
電着可能なコーティングは、ポリ(メタ)アクリル酸の総重量に基づいて、70重量%を超える(メタ)アクリル酸官能性モノマーを有するポリ(メタ)アクリル酸を実質的に含まなくてもよく、本質的に含まなくてもよく、または完全に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能な組成物は、ポリ(メタ)アクリル酸を実質的に含まないか、または本質的に含まず、ポリ(メタ)アクリル酸が存在するとしても、ポリ(メタ)アクリル酸は、電着可能なコーティング組成物の総結合剤固形分重量に基づいて、それぞれ5重量%未満または1重量%未満の量で存在する。
【0096】
電着可能なコーティング組成物は、脂肪族共役ジエンモノマー単位および芳香族ビニルモノマー単位の残基を含有する粒子状ポリマーを実質的に含まなくてもよく、本質的にそれを含まなくてもよく、または完全にそれを含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、電着可能な組成物は、かかる特定のポリマーを実質的に含まないか、または本質的に含まず、特定のポリマーが存在するとしても、特定のポリマーは、結合剤固形分の総重量に基づいて、それぞれ5重量%未満または1重量%未満の量で存在する。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、広義に、オリゴマーならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を指す。「樹脂」という用語は、「ポリマー」と交換可能に使用される。
【0098】
「アクリル」および「アクリレート」という用語は、別段明確に示されない限り、(そうすることで意図した意味が変わる場合を除き)交換可能に使用され、アクリル酸、無水物、およびそれらの誘導体、例えば、それらのC~Cアルキルエステル、低級アルキル置換アクリル酸、例えば、C~C置換アクリル酸、例えば、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸等、ならびにそれらのC~Cアルキルエステルを含む。「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」という用語は、示される物質、例えば(メタ)アクリレートモノマーのアクリル/アクリレートおよびメタクリル/メタクリレート形態の両方をカバーすることを意図している。「(メタ)アクリルポリマー」という用語は、1種以上の(メタ)アクリルモノマーから調製されるポリマーを指す。
【0099】
本明細書で使用する場合、分子量は、ポリスチレン標準物質を使用するゲル透過クロマトグラフィーによって決定する。別段明記されない限り、分子量は、重量平均ベースである。
【0100】
「ガラス転移温度」という用語は、T.G.Fox,Am.Phys.Soc.(Ser.II)1,123(1956)およびJ.Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook 3rd edition,John Wiley,New York,1989.によるモノマー電荷のモノマー組成に基づいてFoxの方法によって計算されたガラス転移温度である理論値である。
【0101】
本明細書で使用される場合、別段定義されない限り、「実質的に含まない」という用語は、成分が存在するとしても、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、5重量%未満の量で存在することを意味する。
【0102】
本明細書で使用される場合、別段定義されない限り、「本質的に含まない」という用語は、成分が存在するとしても、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、1重量%未満の量で存在することを意味する。
【0103】
本明細書で使用される場合、別段定義されない限り、「完全に含まない」という用語は、成分が、電着可能なコーティング組成物中に存在しないこと、すなわち、電着可能なコーティング組成物の総重量に基づいて、0.00重量%であることを意味する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「総固形分」という用語は、本発明の電着可能なコーティング組成物の不揮発性成分を指し、具体的には、水性媒体を除外する。総固形分は、少なくとも結合剤、電気化学的活性物質および/または導電剤、存在する場合、接着プロモーター、ならびに架橋剤を含む。
【0105】
詳細な説明の目的のために、本発明が、相反することが明示的に指定されている場合を除き、様々な代替的な変形およびステップシーケンスを想定し得ることが理解されるべきである。さらに、任意の動作例以外、または別途明記される場合、値、量、パーセンテージ、範囲、部分範囲、端数を表すものなどの全ての数は、用語が明示的に現れなくても、「約」という語によって前置きされているかのように読み取られ得る。したがって、相反することが示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、かつ、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有意な桁の数に照らし合わせて、かつ通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。クローズエンドまたはオープンエンドの数値範囲が本明細書に記載される場合、数値範囲内または数値範囲に包含される全ての数、値、量、パーセンテージ、部分範囲、および端数は、これらの数、値、量、パーセンテージ、部分範囲、および端数がそれらの全体が明示的に書き出されたかのように、本出願の元の開示に具体的に含まれ、かつそれに属するものとみなされるべきである。
【0106】
本発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、どのような数値であっても、それぞれの試験測定における標準偏差に必然的に起因する誤差を本質的に含む。
【0107】
本明細書で使用される場合、別段明記されない限り、複数の用語は、その単数の対応物を包含することができ、別段明記されない限り、その逆もまた同様である。例えば、本明細書では、「1つ(an)」の電気化学的活性物質、「1つ(an)」の導電剤、「1つ(a)」のpH依存性レオロジー改質剤、「1つ(a)」の架橋剤を参照しているが、これらの成分の組み合わせ(すなわち、複数)を使用することができる。加えて、本明細書では、「および/または」がある特定の例で明示的に使用され得るが、別段の明記がない限り、「または」の使用は、「および/または」を意味する。
【0108】
本明細書で使用される場合、「含む」、「含有する」、および同様の用語は、本出願の文脈において「含む」と同義であることが理解され、したがって、オープンエンドであり、追加の非記載または非列挙の要素、物質、構成成分、または方法ステップの存在を除外しない。本明細書で使用される場合、「から構成される」は、任意の不特定の要素、構成成分、または方法ステップの存在を除外するために、本出願の文脈において理解される。本明細書で使用される場合、「から本質的に構成される」は、特定の要素、物質、構成成分、または方法ステップ、記載されているものの「基本的かつ新規の特徴に物質的に影響を及ぼさないもの」を含むように、本出願の文脈において理解される。
【0109】
本明細書で使用される場合、「上(on)」、「上(onto)」、「上に適用される(applied on)」、「上に適用される(applied onto)」、「上に形成される(formed on)」、「上に堆積される(deposited on)」、「上に堆積される(deposited onto)」という用語は、表面上に形成される、重ねられる、堆積される、または提供されるが必ずしも表面と接触しないことを意味する。例えば、基材「上に堆積される」電着可能なコーティング組成物は、電着可能なコーティング組成物と基材との間に位置する同じまたは異なる組成物の1つ以上の他の介在コーティング層の存在を排除しない。
【0110】
本発明の特定の実施形態は詳細に説明されているが、本開示の全体的な教示に照らして、それらの詳細に対する様々な修正例および代替例を開発することができることが当業者によって理解されるであろう。したがって、開示される特定の構成は、単に例示であり、添付の特許請求の範囲の全範囲ならびにそのいずれかおよび全ての等価物を与えるべき本発明の範囲について限定するものではないことを意図している。
【0111】
態様
したがって、上記を鑑みて、本発明は、これらに限定されないが、特に、以下の態様に関する。
【0112】
1.
架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、を含む、電着可能なコーティング組成物。
2.pH依存性レオロジー改質剤が、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤、疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤、またはスターポリマーを含む、態様1に記載の電着可能なコーティング組成物。
3.水と、総組成物の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤と、の組成物が、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、3~12のpH範囲内での3pH単位のpH値の増加にわたり、少なくとも500cpsの粘度の増加を有し得る、態様2に記載の電着可能なコーティング組成物。
4.pH依存性レオロジー改質剤が、架橋用モノマーの残基を含む架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含む、態様1~3のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
5.架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和カルボン酸、C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および架橋用モノマーの残基を含む構成単位を含む、態様4に記載の電着可能なコーティング組成物。
6.架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、
20~65重量%のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
20~80重量%のC~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および
0.1~3重量%の架橋用モノマーの残基を含む構成単位を含む、態様5に記載の電着可能なコーティング組成物。
7.pH依存性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基を含む疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含む、態様1~3のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
8.疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和カルボン酸、C~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、およびモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基を含む構成単位を含む、態様1~3または7のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
9.疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、
2~70重量%のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
20~80重量%のC~Cアルキル(メタ)アクリレートモノマー、および
0.5~60重量%のモノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基を含む構成単位を含む、態様8に記載の電着可能なコーティング組成物。
10.架橋用モノマーが、1つのモノマー当たり少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む、態様1~6のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
11.pH依存性レオロジー改質剤が、酸膨潤性レオロジー改質剤を含む、態様1に記載の電着可能なコーティング組成物。
12.架橋剤をさらに含む、態様1~11のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
13.架橋剤が、カルボジイミドを含む、態様12に記載の電着可能なコーティング組成物。
14.結合剤が、非フッ素化有機フィルム形成ポリマーをさらに含む、態様1~13のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
15.非フッ素化有機フィルム形成ポリマーが、多糖類、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせを含む、態様14に記載の電着可能なコーティング組成物。
16.電気化学的活性物質が、LiCoO、LiNiO、LiFePO、LiFeCoPO、LiCoPO、LiMnO、LiMn、Li(NiMnCo)O、Li(NiCoAl)O、炭素被覆LiFePO、硫黄、LiO、FeFおよびFeF、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe、またはそれらの組み合わせを含む正極活性物質、あるいはグラファイト、チタン酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン、もしくはそれらの組み合わせを含む負極活性物質を含む、態様1~15のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
17.導電剤が、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、炭素繊維、フラーレン、およびそれらの組み合わせを含む、態様1~16のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
18.電着可能なコーティング組成物が、
(a)0.1重量%~10重量%のpH依存性レオロジー改質剤と、
(b)0.02重量%~2重量%の架橋剤と、
(c)45重量%~99重量%の電気化学的活性物質と、
(d)必要に応じて、0.5重量%~20重量%の導電剤と、
(e)必要に応じて、0.1重量%~9.9重量%の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーと、を含み、重量%が、電着可能な組成物の総固形分重量に基づいたものである、態様1~17のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
19.電着可能なコーティング組成物のVOCが、500g/L以下である、態様1~18のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
20.態様1~13のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物を電着することによって基材の上で生成されるコーティングが、電着によって適用されない同様の質量負荷で比較コーティング組成物から生成されるコーティングより少なくとも10%大きい90°剥離強度を有し、90°剥離強度が、剥離強度試験方法に従って測定される、態様1~19のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
21.態様1~19のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物を電気コーティングすることによって基材の上で生成されるコーティングが、剥離強度試験方法に従って測定した場合、2.15mg/cmの質量負荷で、90°剥離強度が少なくとも100N/mである、態様1~20のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
22.電着可能なコーティング組成物が、フルオロポリマーを実質的に含まない、態様1~21のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
23.結合剤が、pH依存性レオロジー改質剤およびカルボジイミド架橋剤から本質的に構成される、態様1~22のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
24.電着可能なコーティング組成物が、セルロース系物質、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、およびそれらの塩を実質的に含まない、態様1~23のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
25.電着可能なコーティング組成物が、多官能性ヒドラジド化合物を実質的に含まない、態様1~24のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
26.電着可能なコーティング組成物が、脂肪族共役ジエンモノマー単位および芳香族ビニルモノマー単位の残基を含有する粒子状ポリマーを実質的に含まない、態様1~25のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
27.pH依存性レオロジー改質剤が、アミド、グリシジル、およびヒドロキシル基を実質的に含まない、態様1~26のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
28.pH依存性レオロジー改質剤が、芳香族ビニルモノマーを含む構成単位の残基を実質的に含まない、態様1~27のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物。
29.基材をコーティングする方法であって、
電着可能なコーティング組成物を基材の上に電気コーティングすることを含み、電着可能なコーティング組成物が、
pH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、を含む、方法。
30.結合剤が、非フッ素化有機フィルム形成ポリマーをさらに含む、態様29に記載の方法。
31.非フッ素化有機フィルム形成ポリマーが、多糖類、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせを含む、態様30に記載の方法。
32.結合剤が、結合剤の総重量に基づいて、
5重量%~99重量%のpH依存性レオロジー改質剤と、
1重量%~94重量%の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーと、を含む、態様24または態様25に記載の方法。
33.結合剤が、架橋剤をさらに含む、態様29~32のいずれか1つに記載の方法。
34.架橋剤が、カルボジイミド、アミノプラスト、オキサザリン、ポリイソシアネート、またはそれらの組み合わせを含む、態様33に記載の方法。
35.電気化学的活性物質が、LiCoO、LiNiO、LiFePO、LiFeCoPO、LiCoPO、LiMnO、LiMn、Li(NiMnCo)O、Li(NiCoAl)O、炭素被覆LiFePO、またはそれらの組み合わせを含む、態様29~34のいずれか1つに記載の方法。
36.電気化学的活性物質が、硫黄、LiO、FeFおよびFeF、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe、またはそれらの組み合わせを含む、態様29~34のいずれか1つに記載の方法。
37.電気化学的活性物質が、グラファイト、チタン酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン、またはそれらの組み合わせを含む、態様29~34のいずれか1つに記載の方法。
38.pH依存性レオロジー改質剤が、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含む、態様29~37のいずれか1つに記載の方法。
39.水と、総組成物の4.25重量%のアルカリ膨潤性レオロジー改質剤と、の組成物が、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、3~12のpH範囲内での3pH単位のpH値の増加にわたり、少なくとも500cpsの粘度の増加を有し得る、態様38に記載の方法。
40.pH依存性レオロジー改質剤が、酸膨潤性レオロジー改質剤を含む、態様29~37のいずれか1つに記載の方法。
41.導電剤が、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、炭素繊維、フラーレン、およびそれらの組み合わせを含む、態様29~40のいずれか1つに記載の方法。
42.電着可能なコーティング組成物が、
(a)0.1重量%~10重量%のpH依存性レオロジー改質剤と、
(b)45重量%~99重量%の電気化学的活性物質と、
(c)必要に応じて、0.5重量%~20重量%の導電剤と、
(d)必要に応じて、0.02重量%~2重量%の架橋剤と、
(e)必要に応じて、0.1重量%~10重量%の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーと、を含み、重量%が、電着可能な組成物の総固形分重量に基づいたものである、態様29~41のいずれか1つに記載の方法。
43.電着可能なコーティング組成物のVOCが、500g/L以下である、態様29~42のいずれか1つに記載の方法。
44.態様23~37のいずれか1つの方法によって基材の上で生成されるコーティングが、電着によって適用されない同様の質量負荷で比較コーティング組成物から生成されるコーティングよりも少なくとも10%大きい90°剥離強度を有し、90°剥離強度が、剥離強度試験方法に従って測定される、態様29~43のいずれか1つに記載の方法。
45.態様23~38のいずれか1つの方法によって基材の上で生成されるコーティングが、剥離強度試験方法に従って測定した場合、少なくとも2.15mg/cmの質量負荷で、90°剥離強度が少なくとも100N/mである、態様29~43のいずれか1つに記載の方法。
46.30Vの印加電圧および対電極と基材との間の2.7cmの間隔を使用して電気コーティングされた場合、方法が、少なくとも0.04mg/cm/秒の電着可能なコーティング組成物の質量堆積速度を有する、態様29~43のいずれか1つに記載の方法。
47.電着可能なコーティング組成物が、フルオロポリマーを実質的に含まない、態様29~46のいずれか1つに記載の方法。
48.電着可能なコーティング組成物が、態様1~28のいずれか1つに記載の電着可能なコーティング組成物である、態様29~47のいずれか1つに記載の基材をコーティングする方法。
49.集電体と、態様29~48のいずれか1つに記載の方法により集電体の少なくとも一部分の上に形成されたコーティングと、を含む、コーティングされた基材。
50.集電体が、アルミニウム、銅、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、導電性炭素、導電性プライマーコーティング、または多孔質ポリマーを含む、態様49に記載のコーティングされた基材。
51.コーティングされた基材が、正極を含む、態様49または態様50に記載のコーティングされた基材。
52.コーティングされた基材が、負極を含む、態様49または態様50に記載のコーティングされた基材。
53.
(a)態様49~52のいずれか1つに記載のコーティングされた基材を含む電極と、
(b)対電極と、
(c)電解質と、を含む、電気貯蔵装置。
54.電気貯蔵装置が、セルを含む、態様53に記載の電気貯蔵装置。
55.電気貯蔵装置が、電池パックを含む、態様53に記載の電気貯蔵装置。
56.電気貯蔵装置が、二次電池を含む、態様53に記載の電気貯蔵装置。
57.電気貯蔵装置が、コンデンサを含む、態様53に記載の電気貯蔵装置。
58.電気貯蔵装置が、スーパーコンデンサを含む、態様53に記載の電気貯蔵装置。
【0113】
本発明を例示するのは以下の実施例であるが、これらは本発明をそれらの詳細に限定するとみなされるべきではない。別段明記されない限り、以下の実施例における、ならびに本明細書の全体を通して、全ての部単位およびパーセンテージは、重量によるものである。
【実施例
【0114】
実施例1-電着可能なコーティング組成物の調製および電着による適用:プラスチックカップに、10.954gのダウケミカル社のアルカリ膨潤性エマルジョンHASE TT-615(固体物質3.26g、総固形分の4.0重量%)、エタノール5.076g、および水65.9gを添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロン社から得たリン酸鉄リチウム正極電気化学的活性物質75.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック3.26g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。最後に、ダウケミカル社の9.0gのヘキシルセロソルブグリコールエーテルおよびダウケミカル社の3.0gのダワノールPnBグリコールエーテルを組成物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。
【0115】
電着可能なコーティング組成物を、定常撹拌下で634.0gの水を添加することによって、総固形分の10%に希釈した。30分間の撹拌の後、電気コーティングを実施した。溶液に3cm浸漬した4cm×6cmの炭素被覆アルミホイルに、組成物に3cm浸漬した4cm×6cmのアルミニウム対電極から2.7cmの間隔で30Vを印加した。電着プロセス中、一定の撹拌が維持された。10秒、20秒、および30秒での堆積では、0.18mg/cm/秒の質量堆積速度が得られた。コーティングされた基材を、ボックスオーブン中で60℃で15分間ベークし、続いて、246℃で10分間追加のベークを行った。Innovative Machine Corporationのカレンダープレスを使用して、コーティングされた基材を35%の多孔度にプレスした。
【0116】
基材への電池コーティングの接着性を、機械的に駆動される90°剥離ステージを備えたMark-10(モデルDC4060)電動試験スタンドを使用して測定した。実施例1からフィルムの12.7mmのストリップが切断され、接着テープを使用してステージに固定された。剥離強度を、基材からフィルムを剥離するために必要な力として測定した。剥離ステージの横方向の移動は、剥離ヘッドの垂直移動と同じ速度で能動的に駆動することで、90°の剥離を確実に行い、剥離強度の正確かつ再現可能な測定を行う。この試験方法は、本明細書では、剥離強度試験方法と称される。電気コーティングフィルムの90°剥離強度は、3.36mg/cmの質量負荷で26.1N/mであった。
【0117】
比較実施例2-コーティング組成物の調製およびドローダウン法による基材への適用:プラスチックカップに、10.954gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社のアクリソルHASE TT-615、3.26gの固体物質、4重量%の総固形分)、エタノール5.076g、および水65.9gを添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロンから得られたリン酸鉄リチウム正極電気化学的活性物質75.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック3.26g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。最後に、ダウケミカル社の9.0gのヘキシルセロソルブグリコールエーテルおよびダウケミカル社の3.0gのダワノール PNBグリコールエーテルを添加し、スラリーを2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。
【0118】
スラリーを、間隙高さ50μmの自動引き出しテーブルを使用して、炭素被覆されたアルミホイル上にキャストした。試料を、ボックスオーブン中で60℃で15分間ベークし、続いて、246℃で10分間追加のベークを行った。Innovative Machine Corporationのカレンダープレスを使用して、試料を35%の多孔度にプレスした。
【0119】
実施例1と同じ方法を使用して、コーティングを接着性について試験した。電気コーティングフィルムの90°剥離強度は、3.05mg/cmの質量負荷で14N/mであった。
【0120】
実施例1および比較実施例2は、実施例1のコーティング組成物と比較実施例2のコーティング組成物との間の唯一の違いが、比較実施例2のドローダウンスラリーによる配合および適用と比較して、実施例1の電気コーティングのための配合および適用であったにもかかわらず、ドローダウンによって適用されるコーティングに比べて、電着によって適用されるコーティングの接着性が著しく改善することを実証するものである。
【0121】
実施例3-電着可能なコーティング組成物の調製および電着による適用:プラスチックカップに、9.86gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社から市販されているアクリソルHASE TT-615、固体物質2.93g、総固形分の3.6重量%)、エタノール5.076g、水65.9g、および架橋剤0.815g(日清紡ケミカル社から市販されているCARBODILITE V-02-L2、固体物質0.33g、総固形分の0.40重量%)を添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロンから得られたリン酸鉄リチウム正極電気化学的活性物質75.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック3.26g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。最後に、ダウケミカル社の9.0gのヘキシルセロソルブグリコールエーテルおよびダウケミカル社の3.0gのダワノールPnBグリコールエーテルを組成物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。
【0122】
組成物を、定常撹拌下で634.0gの水の添加によって、総固形分の10%に希釈した。30分間撹拌した後、実施例1に記載されるのと同じ方法を使用して、電気コーティングを行った。10秒、20秒、および30秒での堆積では、0.09mg/cm/秒の質量堆積速度が得られた。フィルムを245℃の温度で10分間ベークし、Innovative Machine Corporationのカレンダープレスを使用して35%の多孔度にプレスした。
【0123】
実施例1と同じ方法を使用して、3つの異なる質量負荷でのコーティングを接着性について試験した。結果は、以下の表1に示す。
【表1-2】
【0124】
比較実施例4-コーティング組成物の調製およびドローダウン法による基材への適用:プラスチックカップに、9.86gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社から市販されているアクリソルHASE TT-615、固体物質2.93g、総固形分の3.6重量%)、エタノール5.076g、水65.9g、および架橋剤0.815g(日清紡ケミカル社から市販されているCARBODILITE V-02-L2、固体物質0.33g、総固形分の0.40重量%)を添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロン社から得たリン酸鉄リチウム正極電気化学的活性物質75.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック3.26g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。最後に、ダウケミカル社の9.0gのヘキシルセロソルブおよびダウケミカル社の3.0gのダワノールPNBを組成物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。スラリーを、間隙高さ50μmの自動引き出しテーブルを使用して、炭素被覆されたアルミホイル上にキャストした。試料を、ボックスオーブン中で60℃で15分間ベークし、続いて、246℃で10分間追加のベークを行った。試料を35%の多孔度に調整した。
【0125】
実施例1と同じ方法を使用して、3つの異なる質量負荷でのコーティングを接着性について試験した。結果は、以下の表2に含まれる。
【表2】
【0126】
コーティングの質量負荷が増加するにつれて、コーティングの接着力が低下することが予想される。表1および2に示されるように、電着によって生成されるコーティングは、同様の(またはそれ以上の)質量負荷を有するコーティングの90°剥離強度接着性に関して、ドローダウンによって生成されるコーティングをそれぞれ上回る。例えば、電着によって生成された2.15mg/cm質量負荷コーティングは、ドローダウンによって生成された1.75mg/cmのより低い負荷レベルと比較して、剥離強度が大幅に向上した。同様に、3.56mg/cmの質量負荷を有する電着により製造されたコーティングは、ドローダウンにより製造された3.2mg/cmコーティングの2倍の剥離強度を有した。これらの結果は、実施例3のコーティング組成物と比較実施例4のコーティング組成物との間の唯一の違いが、比較実施例4のドローダウンスラリーによる配合および適用と比較して、実施例3の電気コーティングの配合および適用であったにもかかわらず得られた。
【0127】
コインセル中の電極としてのコーティングされた基材の評価:実施例1および比較実施例2で製造された正極をリチウム金属負極と対合させてコインセルを製造した。セラミックコーティングされた厚さ20μmのセルガードセパレータをセパレータとして使用した。電解質は、3:7の比率のEC:EMC中の1.2M LiPFから構成された。コインセルを316ステンレス鋼ケーシングを使用して、直径1cmの正極を直径1.5cmのリチウムアノードおよび60μlの電解質溶液と対合させて製造した。電池の試験は、0.1Cで単一の形成ステップを使用し、続いて、表3に指定される各速度で3つのサイクルを使用して、アービン電池テスター上で実施された。電池サイクリングは、速度の検討が完了した後、電池を1Cでサイクリングすることにより特性評価された。
【表3】
表3.0.1C~1.6Cの速度でおよび1.0Cで50サイクル後にサイクルした半電池リチウムイオン電池の電池容量。
【0128】
表3に提供されるデータは、架橋剤を含まない実施例1の電着可能なコーティング組成物から生成された電極上に架橋剤を含む、実施例3の電着可能なコーティング組成物の電着によって生成された電極を使用して、改善された電池性能を実証するものである。
【0129】
実施例5-電着可能なコーティング組成物の調製および電着による適用:プラスチックカップに、3.286gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社から市販されているアクリソルHASE TT-615、固体物質1.09g、3.6重量%の総固形分)、水23.0g、および架橋剤0.272g(日清紡ケミカル社から市販されているCARBODILITE V-02-L2、0.11gの固体物質、0.40重量%の総固形分)を添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロン社から得たリン酸鉄リチウム正極電気化学的活性物質25.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック1.09g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。電着可能なコーティング組成物を、定常撹拌下で219.0gの水を添加することによって、総固形分の10%に希釈した。実施例1にあるように、電気コーティングを実施した。10秒、20秒、および30秒での堆積では、0.11mg/cm/秒の質量堆積速度が得られた。
【0130】
比較実施例6-コーティング組成物の調製およびドローダウン法による基材への適用:プラスチックカップに、3.286gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社からのアクリソルHASE TT-615、固体物質1.09g、3.6重量%の総固形分)、水23.0g、および日清紡ケミカル社から得たCARBODILITE V-02-L2(0.40重量%)0.272g(固体物質0.11g)を添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロン社から得たリン酸鉄リチウムカソード物質25.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器内で混合した。次に、カーボンブラック1.09g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。スラリーを、間隙高さ100μmの自動引き出しテーブルを使用して、炭素被覆されたアルミホイル上にキャストした。
【0131】
表面エネルギーの評価:30秒の堆積時間を用いた実施例5の電気コーティングフィルムおよび比較実施例6のドローダウンフィルムを、水接触角分析に基づいて表面エネルギーの評価のために評価した。試料を、測定の前に245℃のボックスオーブンで10分間ベークした。水の接触角を、ドロップ形状分析器(KRUSS GmbHから市販されているDSA100)を使用して測定した。ASTM D7334-08に従って測定手順を実施し、液体ごとに3滴から2回の測定値を収集した。2.0μLの滴下体積を使用した。試験時の温度および湿度は、それぞれ75°Fおよび3%であった。実施例5からの電気コーティングフィルムの水接触角は120.7°であり、比較実施例6からのドローダウンフィルムの水接触角は115.5°であった。水接触角分析により、実施例5の電気コーティングされたフィルムが、比較実施例6のドローダウン法によって適用されるフィルムよりも高い表面エネルギーを有したことが示される。
【0132】
実施例7-電着可能なコーティング組成物の調製および電着による適用:プラスチックカップに、3.49gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社から市販されているアクリソルASE-60、固体物質0.98g、3.6重量%の総固形分)、水23.0g、および架橋剤0.272g(日清紡ケミカル社から市販されているCARBODILITE V-02-L2、0.11gの固体物質、0.40重量%の総固形分)を添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロン社から得た25.0g(総固形分の92重量%)のリチウムニッケルマンガンコバルトオキシド(LiNi0.6Co0.2Mn0.2、NCM622)の正極電気化学的活性物質を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック1.09g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。スラリーを、定常撹拌下で219.0gの水の添加によって、総固形分の10%に希釈した。30分間撹拌した後、実施例1の手順に従って電気コーティングを実施した。10秒、20秒、および30秒での堆積では、0.91mg/cm/秒の質量堆積速度が得られた。
【0133】
実施例8-0VOCの電着可能なコーティング組成物の調製および電極堆積による適用:プラスチックカップに、3.286gのpH依存性レオロジー改質剤(ダウケミカル社から市販されているアクリソルHASE TT-615、固体物質1.09g、3.6重量%の総固形分)、水23.0g、および架橋剤0.272g(日清紡ケミカル社から市販されているCARBODILITE V-02-L2、0.11gの固体物質、0.40重量%の総固形分)を添加した。この混合物を、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、ゲロン社から得たリン酸鉄リチウム正極電気化学的活性物質25.0g(総固形分の92重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。次に、カーボンブラック1.09g(イメリス社から市販されているSUPER P、総固形分の4.0重量%)を混合物に添加し、2000RPMで5分間遠心混合器中で混合した。電着可能なコーティング組成物を、定常撹拌下で219.0gの水を添加することによって、総固形分の10%に希釈した。30分間撹拌した後、実施例1の手順に従って電気コーティングを実施した。10秒、20秒、および30秒での堆積では、0.11mg/cm/秒の質量堆積速度が得られた。
【0134】
本明細書に記載および例示される広範な発明概念から逸脱することなく、上記開示に照らして多数の修正例および変形例が可能であることが当業者によって理解されるであろう。したがって、前述の開示は、本出願の様々な例示的な態様を例示するに過ぎず、本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内にある多数の修正例および変形例が、当業者によって容易に行われ得ることが理解されるべきである。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
架橋用モノマーおよび/またはモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、
を含む、電着可能なコーティング組成物。
(項2)
前記pH依存性レオロジー改質剤が、アルカリ膨潤性レオロジー改質剤、疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項3)
水と、総組成物の4.25重量%の前記アルカリ膨潤性レオロジー改質剤と、の組成物が、#4スピンドルを使用し、20RPMで動作するブルックフィールド粘度計を使用して測定される、3~12のpH範囲内での3pH単位のpH値の増加にわたり、少なくとも500cpsの粘度の増加を有し得る、上記項2に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項4)
前記アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤を含む、上記項2に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項5)
前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和カルボン酸、C ~C アルキル(メタ)アクリレートモノマー、および前記架橋用モノマーの残基を含む構成単位を含む、上記項4に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項6)
前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、前記架橋アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、
20~65重量%の前記モノエチレン性不飽和カルボン酸、
20~80重量%の前記C ~C アルキル(メタ)アクリレートモノマー、および
0.1~3重量%の前記架橋用モノマー
の残基を含む構成単位を含む、上記項5に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項7)
前記疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、モノエチレン性不飽和カルボン酸、C ~C アルキル(メタ)アクリレートモノマー、および前記モノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマーの残基を含む構成単位を含む、上記項5に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項8)
前記疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤が、前記疎水基変性型アルカリ膨潤性レオロジー改質剤の総重量に基づいて、
2~70重量%の前記モノエチレン性不飽和カルボン酸、
20~80重量%の前記C ~C アルキル(メタ)アクリレートモノマー、および
0.5~60重量%の前記モノエチレン性不飽和アルキルアルコキシレートモノマー
の残基を含む構成単位を含む、上記項5に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項9)
前記pH依存性レオロジー改質剤が、酸膨潤性レオロジー改質剤を含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項10)
前記結合剤が、非フッ素化有機フィルム形成ポリマーをさらに含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項11)
前記非フッ素化有機フィルム形成ポリマーが、多糖類、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、キサンタンガム、またはそれらの組み合わせを含む、上記項10に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項12)
前記電気化学的活性物質が、LiCoO 、LiNiO 、LiFePO 、LiFeCoPO 、LiCoPO 、LiMnO 、LiMn 、Li(NiMnCo)O 、Li(NiCoAl)O 、炭素被覆LiFePO 、硫黄、LiO 、FeF およびFeF 、Si、アルミニウム、スズ、SnCo、Fe 、またはそれらの組み合わせを含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項13)
前記電気化学的活性物質が、グラファイト、チタン酸リチウム、リン酸バナジウムリチウム、ケイ素、ケイ素化合物、スズ、スズ化合物、硫黄、硫黄化合物、リチウム金属、グラフェン、またはそれらの組み合わせを含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項14)
前記導電剤が、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、炭素繊維、フラーレン、およびそれらの組み合わせを含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項15)
架橋剤をさらに含む、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項16)
前記架橋剤が、カルボジイミドを含む、上記項15に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項17)
前記電着可能なコーティング組成物が、
(a)0.1重量%~10重量%の前記pH依存性レオロジー改質剤と、
(b)0.02重量%~2重量%の前記架橋剤と、
(c)45重量%~99重量%の前記電気化学的活性物質と、
(d)必要に応じて、0.5重量%~20重量%の前記導電剤と、
(e)必要に応じて、0.1重量%~9.9重量%の非フッ素化有機フィルム形成ポリマーと、を含み、前記重量%が、前記電着可能な組成物の総固形分重量に基づいたものである、上記項15に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項18)
前記電着可能なコーティング組成物のVOCが、500g/L以下である、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項19)
上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物を電気コーティングすることによって基材の上で生成されるコーティングが、電着によって適用されない同様の質量負荷で比較コーティング組成物から生成されるコーティングより少なくとも10%大きい90°剥離強度を有し、前記90°剥離強度が、剥離強度試験方法に従って測定される、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項20)
前記電着可能なコーティング組成物が、フルオロポリマーを実質的に含まない、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項21)
前記電着可能なコーティング組成物が、セルロース系物質を実質的に含まない、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項22)
前記pH依存性レオロジー改質剤が、アミド、グリシジル、およびヒドロキシル基を実質的に含まない、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項23)
前記pH依存性レオロジー改質剤が、芳香族ビニルモノマーを含む構成単位の残基を実質的に含まない、上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物。
(項24)
基材をコーティングする方法であって、
上記項1に記載の電着可能なコーティング組成物を、前記基材の少なくとも一部分の上に電気コーティングすることを含む、方法。
(項25)
集電体と、上記項24に記載の方法により前記集電体の少なくとも一部分の上に形成されたコーティングと、を含む、コーティングされた基材。
(項26)
前記集電体が、アルミニウム、銅、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、導電性炭素、導電性プライマーコーティング、または多孔質ポリマーを含む、上記項25に記載のコーティングされた基材。
(項27)
前記コーティングされた基材が、正極を含む、上記項25に記載のコーティングされた基材。
(項28)
前記コーティングされた基材が、負極を含む、上記項25に記載のコーティングされた基材。
(項29)
(a)上記項25に記載のコーティングされた基材を含む電極と、
(b)対電極と、
(c)電解質と、を含む、電気貯蔵装置。
(項30)
前記電気貯蔵装置が、セルを含む、上記項29に記載の電気貯蔵装置。
(項31)
前記電気貯蔵装置が、電池パックを含む、上記項29に記載の電気貯蔵装置。
(項32)
前記電気貯蔵装置が、二次電池を含む、上記項29に記載の電気貯蔵装置。
(項33)
前記電気貯蔵装置が、コンデンサを含む、上記項29に記載の電気貯蔵装置。
(項34)
前記電気貯蔵装置が、スーパーコンデンサを含む、上記項29に記載の電気貯蔵装置。
(項35)
基材をコーティングする方法であって、
電着可能なコーティング組成物を前記基材の上に電気コーティングすることを含み、前記電着可能なコーティング組成物が、
pH依存性レオロジー改質剤を含む結合剤と、
電気化学的活性物質および/または導電剤と、
水性媒体と、を含む、方法。