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特許7431251リチウム電池の純シリコン負極に用いられるリチウム-シリコン化合物結晶多形及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】リチウム電池の純シリコン負極に用いられるリチウム-シリコン化合物結晶多形及びその用途
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20240206BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240206BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240206BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/1395
H01M4/134
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021559708
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2019082449
(87)【国際公開番号】W WO2020206678
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509078089
【氏名又は名称】財團法人國家同▲歩▼輻射研究中心
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】チェン シ-ウェイ
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/073313(WO,A1)
【文献】特表2015-518263(JP,A)
【文献】San-Cheng Lai,Solid Lithium‐Silicon Electrode,J. Electrochem. Soc.,1976年,vol.123,pp.1196-1197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一リチウム-シリコン化合物結晶多形、及び第二リチウム-シリコン化合物結晶多形
を含むリチウム電池の純シリコン負極であって、
前記第一リチウム-シリコン化合物結晶多形は、Li4.1Si_Cmcmを含み、
前記第二リチウム-シリコン化合物結晶多形は、Li13Si_Pbam、LiSi_C12/m1及びLiSi_I41AZの規則格子構造からなる群から1つまたは複数が選択される、ことを特徴とするリチウム電池の純シリコン負極。
【請求項2】
X線吸収スペクトルにおいて、Li4.1Si_Cmcmの吸収ピークは、1847±2eVに現れる、ことを特徴とする請求項1に記載の純シリコン負極。
【請求項3】
1つまたは複数の核種を含むリチウム電池用の純シリコン負極であって、前記核種は、請求項1に記載の前記第一リチウム-シリコン化合物結晶多形を含む、ことを特徴とするリチウム電池用の純シリコン負極。
【請求項4】
前記核種の寸法は、1nm~5,000,000nmである、ことを特徴とする請求項に記載のリチウム電池用の純シリコン負極。
【請求項5】
リチウム電池の純シリコン負極を製造する方法であって、
純シリコン粉体の表面に保護層をメッキし、微小な部位を残して、1つまたは複数の露出表面を生成することと、
単位面積当たりのリチウムイオン濃度が4原子パーセントより高いリチウムフラックスを前記露出表面に接触させるようにリチウム化反応を行うことと、
Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12/m1及びLiSi_I41AZの規則格子構造からなる群から選択された1つまたは複数の構造が得られるように脱リチウム反応を行うことと、
前記リチウム化反応の充電レートまたは脱リチウム反応の放電レートを0.5C~30Cの間に制御し、LiPFを含むEC/DEC+FECの電解液で前記リチウム化反応及び前記脱リチウム反応を行うことを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
中空、多層、多孔質、ナノワイヤ、ナノロッド又はナノ粒子の形態で構成され、前記形態のシェル層の厚さ、膜層の厚さ、型壁の厚さ、線幅は、1~100ナノメートルにある、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用の純シリコン負極。
【請求項7】
CuKα線であるX線による照射下で、X線回折が、12.33±0.1度、20.72±0.1度及び22.6±0.1度での2θピークを含むという特徴を有するLi13Si-_Pbamと、
CuKα線であるX線による照射下で、X線回折が、14.05±0.1度及び23.61±0.1度での2θピークを含むという特徴を有するLiSi_C12/m1と、
CuKα線であるX線による照射下で、X線回折が、18.77±0.1度、19.28±0.1での2θ度ピークを含むという特徴を有するLiSi-I41AZと、からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の純シリコン負極。
【請求項8】
前記リチウム化反応を行う前に、前記純シリコン粉体を基板内の溝に置いて圧密することをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記基板は銅を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リチウム電池用の純シリコン負極を製造する方法であって、
純シリコン粉体の表面に保護層を形成し、前記表面に一つ又は複数の位置に、厚さの不均一な前記保護層を形成することと、
Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12/m1及びLiSi_I41AZの規則格子構造からなる群から選択された1つまたは複数の構造が得られるように、単位面積当たりのリチウムイオン濃度が4原子パーセントより高いリチウムフラックスを前記位置にあるようにプレリチウム化反応を行うことを含み、
リチウム化反応の充電レートまたは脱リチウム反応の放電レートを0.5C~30Cの間に制御し、LiPFを含むEC/DEC+FECの電解液でプレリチウム化反応を行うこと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記保護層を形成するステップに、前記表面の前記位置を前記保護層から露出させることを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リチウム化反応のある期間内にリチウム化反応を純シリコン粉体の前記表面に発生するように制御する、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プレリチウム化反応に、第一電圧と逆の極性を有する第二電圧で脱リチウム反応を行うことをさらに含む、ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム-シリコン化合物結晶多形に関し、特にリチウム電池の純シリコン極に用いられる特別な構造を有するリチウム-シリコン結晶、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車は時流に乗って栄えており、電気自動車の性能も内燃機関を搭載したスーパースポーツカー並みのレベルに向上する。電気自動車の優れた性能は、主にリチウムイオン電池の以下の特性に依存する。1、高いエネルギー密度により、長い航続距離を有し、2、高いパワー密度により、迅速に起動でき、3、充放電に安定性があるため、安全で長く使える。しかしながら、現在の電気自動車に依然として電気容量が不足するという問題が存在し、運転者が走行距離に不安を感じるため、電気自動車の使用を全面的に普及させることができない。これは、車両用リチウム電池の電極材料の電気容量の不足とかなり大きな関係がある。
【0003】
従来、リチウム電池が黒鉛を極材料として採用するが、黒鉛の理論電気容量が僅か372mAh/gであり、車両用リチウム電池の需要を満たすことができない。シリコンの理論電気容量が4200mAh/gであり、黒鉛より約11倍高いため、従来の黒鉛電極の代わりに新しい世代の電池極材料とすることができるとみられている。
【0004】
理論的には、普通の純シリコン極は、完全に充放電後にLi22Si_F23リのチウム-シリコン化合物を形成し、4200mAh/gの理論電気容量を提供する。しかしながら、実際の使用において、熱力学及び動力学の制限のため、普通の純シリコン極は、充放電後にLi15Si_I-43d化合物を形成し、3579mAh/gの理論電気容量を提供することができる。しかしながら、実際に測定した結果、一般的な状況で、純シリコン極は、充電後に理論値には程遠い約1600mAh/gの電気容量しか得ることができず、そして、激しい体積膨張(400%)が発生し、極板の崩壊と電池の失効をもたらす。
【0005】
したがって、実際の使用においてより高い電気容量及びより優れた安定性を示すことができる、改良された純シリコン極を提供することは、リチウム電池の使用において早急に解決すべき問題となる。
【0006】
どのようにリチウム-シリコン化合物の形成を制御し、対応する電気容量を生成するかは、純シリコン極製造の重要な課題である。本発明では、Li22Si_F23、Li15Si_I-43d化合物以外に、いくつかの異なる組成のリチウム-シリコン化合物が存在することが開示されている。Zeilingerらの研究(Chem.Mater.2013、25、4623-4632)において、Li4.1Si_Cmcm化合物が高温安定相であり、温度が481度より高い場合にのみ存在することができることが指摘されている。本発明では、リチウム-シリコン化合物Li4.1Si_Cmcmを初めて合成し、それが常温状態の純シリコン極に存在することができることを実証する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的に基づいて、本発明に提供されるリチウム電池の純シリコン極に用いられるリチウム-シリコン化合物結晶多形は、実質的に図5に示すものと同じX線粉末回折パターン(XRPD)を有し、実質的に図6Aに示すものと同じX線吸収スペクトルを有する。
【0008】
本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記リチウム-シリコン化合物結晶多形は、CuKα線であるX線による照射下で、X線粉末回折(XRPD)が、15.75±0.1度、20.72±0.1度、24.11±0.1度、26.05±0.1度、27.15±0.1度、39.52±0.1度、41.36±0.1度及び43.16±0.1度での2θピークを含むという特徴を有するLi4.1Si_Cmcm規則格子構造と、CuKα線であるX線による照射下で、X線粉末回折(XRPD)が、12.33±0.1度、20.72±0.1度及び22.6±0.1度での2θピークを含むという特徴を有するLi13Si-_Pbam規則格子構造と、CuKα線であるX線による照射下で、X線粉末回折(XRPD)が、14.05度及び23.61度での2θピークを含むという特徴を有するLiSi_C12/m1規則格子構造と、CuKα線であるX線による照射下で、X線粉末回折(XRPD)が、18.77±0.1度、19.28±0.1での2θ度ピークを含むという特徴を有するLiSi-I41AZ規則格子構造と、からなる群から1つまたは複数が選択される。
【0009】
本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記リチウム-シリコン化合物結晶多形は、Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12/m1及びLiSi_I41AZの規則格子構造からなる群から1つまたは複数が選択され、X線吸収スペクトルにおいて、入射光エネルギーは、1847eVの位置に顕著な吸収ピークが現れる。
【0010】
本発明のさらなるに別の態様では、1つまたは複数の核種を含むリチウム電池用の純シリコン極を提供し、該核種は、上記リチウム-シリコン化合物結晶多形を含む。
【0011】
本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記リチウム電池用の純シリコン極は、1つまたは複数の核種を含み、該核種の寸法は、1nm~5,000,000nmである。
【0012】
一方、本発明に係る、上記リチウム電池用の純シリコン極を製造する方法は、純シリコン極材料粉体の表面に保護層をメッキし、微小な部位を残して、露出表面を生成することと、該粉を圧密して銅基板上の溝に置き、粉の分散を防止するように篩で被覆することと、続いて、電解液がEC/DEC+FECであるリチウム化反応及び脱リチウム反応を行うことと、該露出表面に単位面積当たりのリチウムイオン濃度が4原子パーセントより高いリチウムフラックスを生成するように、電圧を制御することと、充放電レートを0.5C~30Cの間(0.5Cの場合、2時間内に充電を完了することに相当し、1Cの場合、1時間内に充電を完了することに相当し、等々)に制御することと、を含む。
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態では、前記リチウム電池用の純シリコン極は、中空、多層、多孔質、ナノワイヤ、ナノロッド又はナノ粒子の形態で構成されてよく、該形態のシェル層の厚さ、膜層の厚さ、型壁の厚さ、線幅は、1~100ナノメートルにある。
【0014】
本発明に係るさらなる方法によれば、純シリコン極を充放電した後、Li4.1Si_Cmcmの最終構造を取得し、異常に高い電気容量を示すことができる。該方法では、純シリコン極に、Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種を有するナノスケール核種を入れ、充放電過程において、核成長理論により、Li4.1Si_Cmcmの最終構造を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特別に設計された純シリコン極は、電気容量が従来の黒鉛電極より6倍以上も高く、普通の純シリコン極よりも優れており、これは、特別に設計された純シリコン極が、充電(リチウム化反応)後に、普通の純シリコン極の最終相Li15Si_I-43dとは顕著に異なる特に増えたリチウムイオン数が異なる最終相Li4.1Si_Cmcm(Li16.4Si_Cmcmに相当)を形成するためである。特別な形態の粉体(例えば中空粉体)に適用されると、優れた構造安定性を同時に示すことができる。したがって、本発明は、純シリコン極の実際の使用時の電気容量を向上させると共に、従来の純シリコン極が充放電を繰り返した後に体積が膨張することで電極が破損して電池が失効するという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】本願披露する実施例により、純シリコン極にLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種を有する核種を入れる製造方法の概略図である。
図1B】本願披露する実施例により、純シリコン極粉体が核種を含む場合の概略図である。
図2】本願披露する実施例により、シリコン系粉体に核種を入れた後のX線吸収スペクトルである。
図3】本願披露する実施例により、リチウム電池が充放電される場合の純シリコン極構造の変化概略図である。
図4A】本願披露する実施例により、Li4.1Si_Cmcmの構造図である。
図4B】本願披露する実施例により、普通に形成されたリチウム-シリコン化合物Li15Si_I-43dである。
図5】本願披露する実施例により、Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのX線回折パターンである。
図6A】本願披露する実施例により、特別に設計したシリコン極のX線吸収スペクトルである。
図6B】本願披露する実施例により、特別に設計したシリコン極に対して理論的に計算した後にシミュレーションされたLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZX線吸収スペクトルである。
図7A】本願披露する実施例により、Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのX線吸収スペクトルである。
図7B】Li17Si_F-43m、Li15Si_I-43d、Li12Si_Pnma、LiSi_R-3mに対して理論的に計算した後にシミュレーションされたX線吸収スペクトルである。
図8】本願披露する実施例により、本発明の結晶で製造されたリチウム電池の純シリコン極の電気容量試験グラフである。
図9】本願披露する実施例により、本発明の極が属するリチウム電池の概略図である。
図10A】本願披露する実施例により、該核種が中空構造の純シリコン極に用いられる場合の概略図である。
図10B】本願披露する実施例により、透過型電子顕微鏡で中空構造の純シリコン極粉体を観察した結果である。
【0017】
[符号の説明]
100-核種を有する純シリコン極粉体、
102-核種、
104-シリコン粉体、
200-リチウム電池、
202-極、
204-極、
206-セパレータ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明をさらに理解するために、以下、実施例を挙げて説明する。
【0019】
プレリチウム化(pre-lithiation)は電気化学反応であり、シリコン極に対してリチウム化(lithiation)反応及び脱リチウム(delithiation)反応を行う。リチウム化反応、脱リチウム反応の後に、シリコン極全体は非晶質構造となり、ナノスケールの核種を残す。本発明では、リチウム化反応を行う前に、まず粉体の表面に特別な保護層を作り、特定の位置を残してリチウム化反応を行う(不均一な粉末をコーティングする)ため、特定の位置でのリチウムフラックス(Liionflux)が相対的に高く、そこに、従来の電極のLi15Si_I-43d結晶構造とは異なるLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、またはLiSi_I41/AZの結晶構造が形成される。
【0020】
図1A図1Bを参照する。本発明では、(シリコン)粉体の表面に保護層をメッキし、微小な部位を残して粉体表面を露出させ、その後に粉体を圧密して銅基板上の溝に置き、粉の分散を防止するように篩で被覆する。次に、電気化学的方式を利用して、電解液がEC/DEC+FECで、電解質がLiPFであるリチウム化反応、脱リチウム反応を行う。リチウム化反応が保護層で部分的に被覆されない位置でしか発生しないため、電圧及び充電レート(0.5C~30Cの間に)を適切に制御して、該位置でかなり高いリチウムフラックス(単位面積当たりのリチウムイオン濃度が4原子パーセントより高い)を生成することができる。高いリチウムフラックスでのリチウム化反応時間を制御することにより、リチウム化反応を表面のみに発生させ、リチウムを粉体の内部に拡散させることがなく、即ち、リチウム化が表面反応により制御され、拡散反応により制御されないように制御することができる。リチウム化反応が完了した後、さらに逆バイアス電圧を印加し、脱リチウム反応を行う。その特別な核種を含む粉を得ることができる。リチウム化反応及び脱リチウム反応が実施されていないシリコン、及び反応後に核種が入れられたシリコンのX線吸収スペクトルは、図2に示すとおりである。
【0021】
図3を参照する。純シリコン極材料粉体が本発明に記載の核種を有すると、充電過程(リチウム化過程)において、核成長理論により、粉体全体にLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種の構造を形成させることができる。
【0022】
本発明では、X線回折スペクトル及びX線吸収スペクトルを利用し、本発明特別に設計された純シリコン極を同定したところ、充電(リチウム化)反応の後に、Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種のリチウム-シリコン化合物を形成する。最終相Li4.1Si_Cmcmと一般的に形成された相Li15Si4_I-43dとの差異について、図4A図4Bを参照する。
【0023】
図5を参照して、X線回折スペクトルについては、波長が0.6888(単位=angstrom)で、エネルギー分解能が10-4(ΔE/E、EはX線エネルギーである)である同期放射X線を利用して行い、かつ二次元検出器を利用して回折シグナルを収集する。その後に、結果を銅ターゲットのX線波長(1.5406、単位=angstrom)に相当する回折パターンに変換し、比較しやすいように、X線波長が0.6888Angstromの回折パターンを、波長が1.5406Angstrom(銅ターゲットから発せられる波長)のに変換する。 図5におけるピークは、本発明の特別に設計されたシリコン極における化合物Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZの存在を示している。
【0024】
X線吸収スペクトルについては、同期放射X線を利用して行い、1770eVから2130eVまでのX線エネルギーで走査すると共に、Lytel検出器を利用してサンプルを透過した後のX線シグナルを収集する。入射X線エネルギーと透過後のX線強度を記録すれば、SiK-edgeのX線吸収スペクトルを得ることができる。図6A図6Bを参照する。X線吸収スペクトルが、X線が原子によって吸収されること、X線が原子によって散乱されること、及び散乱されるX線の間の相互干渉により構成されるため、原子価数、原子周囲環境及び原子構造対称性を反映することができる。また、X線吸収スペクトルを証明と同定するために、X線吸収及び多重散乱にも基づいて、FDMNESを利用してX線吸収スペクトルシミュレーションを行う。X線吸収スペクトルのシミュレーションは、理論計算で原子吸収と多重散乱を考慮した上で行われる。
【0025】
図6A図6Bを参照する。実験により得られた吸収スペクトルは、1847eVに明らかな吸収ピークがある。シミュレーションのスペクトル比較すると、1847eVに位置する吸収ピークがLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZの4種の化合物の吸収ピークのエネルギー位置に相当することが発見され、この4種の化合物のうちの1種また多種の化合物の存在を示し、また、この4種の化合物が同じ原子周囲環境、原子対称関係又は電子構造を有することを示す。該分析結果は、X線回折パターンに対応し、本発明の純シリコン極中にLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種又は多種の化合物が存在することを証明する。Li17Si_F-43m、Li15Si_I-43d、Li12Si_Pnma、LiSi_R-3mの4種の化合物のシミュレーションスペクトル(図7Bを参照)、特に普通の純シリコン極をリチウム化した後に形成されたLi15Si_I-43dシミュレーションスペクトルを見ると、この4種の化合物の最も高い吸収ピークは、1838eV程度にあり、実験スペクトルの吸収ピークとは顕著に異なることがわかる。本発明の純シリコン極中にLi17Si_F-43m、Li15Si_I-43d、Li12Si_Pnma、LiSi_R-3mの4種の化合物が存在しないことを示す。また、上記4種の構造は、本発明の純シリコン極をリチウム化した後に形成されたLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZの4種の化合物とは原子周囲環境、原子対称関係又は電子構造の面で顕著に異なることを示す。
【0026】
図2を参照する。X線吸収スペクトルを利用して同定することにより、核種の存在を明確に発見することができる。核種構造は、Li4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種である。核種と上記4種の化合物とは、同じ原子周囲環境、原子構造対称性又は電子構造を有する。
【0027】
図2図3を参照する。純シリコン極材料粉体が本発明に記載の核種を有すると、充電過程(リチウム化過程)において、核成長理論により、粉体全体にLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種の化合物を形成させることができる。核種は、上記4種の化合物と同じ原子周囲環境、原子構造対称性又は電子構造を有する。
【0028】
図8を参照する。純シリコン極でLi4.1Si_Cmcm、Li13Si_Pbam、LiSi_C12m1、LiSi_I41/AZのうちの1種または多種の化合物が形成され、Li4.1Si_Cmcm最終相のため、純シリコン極の電気容量を大幅に向上させることができる。本発明の特別な純シリコン極を利用し、ポールピースに組み立てて半電池に製造した後(電解液はEC+DEC+10%FECである)、充放電試験(充放電レートは0.1Cである)を行う。250回の充放電サイクルを経た後、本発明の純シリコン極は依然として約2500mAh/gの電気容量を保有することができることが発見される。従来の黒鉛電極と比較して、電気容量の向上は6倍を超える。普通の純シリコン極で充電した後に形成されたLi15Si_I-43d化合物と比較して、電気容量も顕著に向上する。
【0029】
図9を参照する。本発明をリチウム電池の製造に用いる際の概略図である。リチウム電池200は、極202と、極204と、極202と極204との間に位置するセパレータ206とを含む。
【0030】
図10A図10Bを参照する。本発明に記載の特別な核種を製造するための方法は、様々な形態(例えば中空粉体)のシリコン極に使用されてもよい。
【0031】
前記のように、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の特許の実施範囲を限定するものではなく、即ち、本発明の特許出願の保護範囲及び発明の内容に基づいて行われた簡単な均等変化及び修飾は、いずれも本発明の特許の範囲内に属する。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B