(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】自己安定化リンカー結合体
(51)【国際特許分類】
C07D 207/452 20060101AFI20240206BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240206BHJP
【FI】
C07D207/452
A61K47/54
(21)【出願番号】P 2022007056
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2020089453の分割
【原出願日】2013-05-14
【審査請求日】2022-02-18
(32)【優先日】2012-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514076560
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ライオン
(72)【発明者】
【氏名】スベトラナ ドロニナ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ボビー
【審査官】篭島 福太郎
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 207/452
A61K 47/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】
{式中、
Tは、-(C(R
9)(R
10))-であり;
各R
9及びR
10は独立に、H又はC
1-3アルキルであり;
cは、1~4の整数であり;
各R
11及びR
12は独立に、H又はC
1-C
6アルキルである}
の化合物を調製する方法であって、以下:
【化2】
の構造で表される化合物を、以下:
【化3】
{式中、
-(T)
c-NR
11-R
12は、アミンの側鎖であり、-NR
11-R
12は、アミンの側鎖の塩基性基であり、そして-NR
11-R
12は、保護されていないか、または適切に保護されている}
の構造で表されるアミンと接触させ、以下:
【化4】
の構造で表されるマレイン酸を形成させ、それに続く脱水閉環によって式(V)の化合物を形成させる工程を含む、方法。
【請求項2】
式(V)の化合物が、式(Va):
【化5】
の構造で表される、請求項1に記載の方法であって、以下:
【化6】
の構造で表される化合物を、無水マレイン酸と接触させ、以下:
【化7】
の構造で表されるマレイン酸を形成させ、それに続く脱水閉環によって式(Va)の化合物を形成させる工程を含む、方法。
【請求項3】
式(V)の化合物が、式(Vb):
【化8】
の構造で表される、請求項1に記載の方法であって、以下:
【化9】
の構造で表される化合物を、無水マレイン酸と接触させ、以下:
【化10】
の構造で表されるマレイン酸を形成させ、それに続く脱水閉環によって式(Vb)の化合物を形成させる工程を含む、方法。
【請求項4】
式(V)の化合物が、式(Vc):
【化11】
の構造で表される、請求項1に記載の方法であって、以下:
【化12】
の構造で表される化合物を、無水マレイン酸と溶解させ、以下:
【化13】
の構造で表されるマレイン酸を形成させ、それに続く脱水閉環によって式(Vc)の化合物を形成させることを含む、方法。
【請求項5】
無水マレイン酸と接触させ、マレイン酸を形成する工程が、室温で起こる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
無水マレイン酸と接触させ、マレイン酸を形成する工程が、酢酸を含む溶媒中で起こる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記脱水閉環が、125℃の温度で起こる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水閉環が、トルエンを含む溶媒の存在下、トリエチルアミンを用いて起こる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水閉環が、酢酸を含む溶媒の存在下で起こる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記アミンの側鎖の塩基性基が、bocで保護されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式(VI):
【化14】
の構造で表される薬物-リンカー化合物を調製する方法であって、以下:
【化15】
の構造で表される化合物を、以下:
【化16】
の構造で表される化合物と接触させ、式(VIa):
【化17】
の化合物を形成させる工程、および式(VIa)の化合物を式(VI)の化合物に変換する工程を含む、方法。
【請求項12】
前記式(VIa)の化合物を式(VI)の化合物に変換する工程が、トリフルオロ酢酸およびジクロロメタンを含む溶媒中に、式(VIa)の化合物を溶解する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記式(VIa)の化合物が、ジメチルホルムアミドを含む溶媒中で形成される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記式(VIa)の化合物が、ジイソプロピルエチルアミンの存在下で形成される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記式(VIa)の化合物が、ヘキサフルオロホスフェートアザベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウムの存在下で形成される、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記式(VIa)の化合物が、室温で形成される、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記式(VIa)の化合物が、室温で溶解される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
継続性
本出願は、2012年5月15日付で出願された米国特許仮出願第61/647,373号、及び2013年3月5日付で出願された米国特許仮出願第61/773,067号の恩典を請求し、且つ、2013年3月13日付で出願された米国特許出願第13/799,244号の優先権も請求すると共に、それらそれぞれの全体をあらゆる目的のために本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
抗体-薬物結合体(ADC)分野は、選抜患者集団の治療のためのブレンツキシマブ・ベドチン(Brentuximab Vedotin)に対するFDAの承認と、診療所における他の多くのADCの進歩によって著しく発展を遂げた。ADCのリンカー成分は、良好な耐容性を示す投与量にて高活性な最適化された治療薬の開発において重要な特性の一つである。求電子マレイミド官能基は、チオール基との反応の非常に高い特異性と穏やかな条件下での非常に速いチオール付加反応速度により、ADCの調製に際してとても有用であることが判明した。
【化1】
【0003】
生物結合体分野の多くの研究者によって言及されたように、求電子マレイミド官能基と抗体の遊離チオールとの間の反応によるチオ置換産物は、ゆっくりとした排除に供され、そのため、上記反応を逆行させる:
【化2】
【0004】
この可逆反応がADCの精製品で起こるとき、脱離プロセスを通して再生成されたマレイミドとチオールが再び単純に反応し、それにより、完全な結合体が再形成されるので、その反応はほとんどが検知されない。しかし、他のチオールが存在しているときには、正味の効果が、ADCの抗体からその他の利用可能なチオールへのマレイミドの転移となることがある。このプロセスは、血漿中で起こることが記録されたが、そこでは、ADCのマレイミドは血清アルブミンの第34システインに転移した(Alley et al., Bioconjugate Chem. 2008, 19, 759-765)。このプロセスはまた、ADCが余分なシステイン又はグルタチオンの存在下でインキュベートされるときに報告された(Shen et al., Nature Biotech, 30(2): 184-9, 2012)。本発明は、とりわけ、この転移反応を受けない生物結合体(bioconjugates)を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、とりわけ、リンカー、薬物-リンカー、リガンド-薬物結合体、リガンド-リンカー結合体、リガンド-機能性剤結合体、及び機能性剤-リンカー、並びにそれらを調製及び使用する方法を提供する。前記リガンド-薬物結合体は、循環中でも安定していて、腫瘍細胞付近又は腫瘍細胞内に一度放出されたとしても細胞死をもたらすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1-1】ヒトIgG1の鎖間ジスルフィドの還元と、それに続く、自己安定化リンカーと得られたチオールとの結合と、その後のスクシンイミド環の加水分解を示す反応スキーム(上部);並びに、加水分解による抗体結合体の分子量の変化を観察するための質量分析の使用(下部)を提供する。
【
図2-1】エレクトロスプレー質量分析によって自己安定化抗体結合体のスクシンイミド環の加水分解の経時変化を示す。完全に還元したcAC10とマレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAEとの結合体形成を、pH7.2及び22℃で実施し、そして、サンプルを示した時間にLC-MSによる分析にかけた(上部)。加水分解率(%)の得られたデータを、時間に対してプロットし、そして、指数方程式に当てはめて、動力学的パラメーターを決定した(下部)。
【
図3】IgG1抗体及び、マレイミドと塩基性基(1級アミン)との間に様々な間隔を有する自己安定化リンカーを用いて調製した生物結合体に関する加水分解反応速度プロフィールを提供する。結合体形成をpH8及び37℃で実施し、その後、IgG1軽鎖結合体の加水分解を質量分析法によって直ちに観察し、時間の関数としてプロットし、そして、指数方程式に当てはめた。
【
図4】IgG1抗体及び、マレイミドと塩基性基(1級アミン)との間に様々な間隔を有する自己安定化マレイミドリンカーを用いて調製した生物結合体の加水分解反応速度プロフィールを提供する。結合体形成をpH8及び37℃で実施し、その後、IgG1軽鎖結合体の加水分解を質量分析法によって直ちに観察し、時間の関数としてプロットし、そして、指数方程式に当てはめた。
【
図5】IgG1抗体と様々なN置換マレイミドを用いて調製した生物結合体の加水分解反応速度プロフィールを提供する。結合体形成をpH7.4及び22℃で実施し、その後、IgG1軽鎖結合体の加水分解を質量分析法によって直ちに観察し、時間の関数としてプロットし、そして、指数方程式に当てはめた。マレイミド-カプロイル結合体(最も下にある構造物)の加水分解は、遅すぎてこれらの条件下で24時間以内にいずれかの検出可能な加水分解を生じることができない。カルボキサミド電子求引性基(EWG)又は1級アミン(BASE)の存在下が加水分解を促進し、そして、それら2つの組合せ(最も上にある構造物)は、これらの温和条件下で20分未満の半減期で加水分解する結合体をもたらす。
【
図6】α-ジアミノプロピオン酸(α-DPR、白丸)によって、及びβ-ジアミノプロピオン酸(β-DPR、黒丸)を用いて調製した自己安定化マレイミド薬物-リンカーの加水分解反応速度プロフィールを提供する。互いの異性体ではあるが、スクシンイミドに対する塩基性アミノ基と電子求引性カルボキサミドの位置が、スクシンイミド加水分解の速度に17倍の違いをもたらす。
【
図7-1】自己安定化マレイミド-DPR薬物-リンカーを用いて調製したADCに関して、マレイミド-カプロイル薬物-リンカーを用いて調製したADCに対する、過剰なチオールを含むバッファー中でインキュベートしたときの経時的な薬物積込量(drug loading)の変化を示す。インキュベーション後、0日と14日の時点での2種類のADCの逆相クロマトグラムを上のパネルに示した。クロマトグラフィーのピークは、それぞれ非結合体形成軽鎖、1つの薬物を有する軽鎖、非結合体形成重鎖、及び1つ、2つ又は3つの薬物を有する重鎖に相当するL0、L1、H0、H1、H2、及びH
3に割り当てられる。自己安定化マレイミド-DPR薬物-リンカーは、マレイミド-カプロイル薬物-リンカーを用いて調製したもの(白四角)に対して白丸で表される。薬物積込量は、自己安定化薬物-リンカー(白丸)に関して抗体あたり8つで一定に維持されているが、マレイミド-カプロイル薬物-リンカー(白四角)に関しては、14日間で抗体あたり薬物4つまで低下し、マレイミド排除による薬物の損失を反映した。
【
図8】37℃にてラット血漿中でインキュベートしたとき、自己安定化マレイミド-DPR薬物-リンカーやマレイミド-カプロイル薬物-リンカーを用いて調製したADCに関する薬物積込量の経時的変化を示す(R=val-cit-PAB-MMAE)。各時点にてADCサンプルを、Ig選択親和性樹脂によって精製し、そして、それらの薬物積込量をADCの逆相HPLC分析によって評価した。
【
図9】ラット血漿中(白抜き記号)又はヒト血漿中(黒塗り記号)でのインキュベーション中のマレイミド-カプロイル薬物-リンカー(四角)又は自己安定化マレイミドリンカー(丸)を介して抗体に結合された薬物の安定性プロフィールを提供する(R=val-cit-PAB-MMAE)。各時点でADCをプロテインA親和性樹脂上に補足し、そして、そのプロテアーゼ開裂可能リンカーを介して薬物を酵素的に放出させた。次に、放出された薬物を、LC-MS/MSによって定量化し、そして、初期値に対して標準化した。各時点では、t0にて観察された結合体化薬物の割合(%)を反映している。
【
図10】自己安定化マレイミド-DPR薬物-リンカー及びマレイミド-カプロイル薬物-リンカーを用いて調製したADCに関する生体内(ラット)における薬物積込量の減少を示す(R=val-cit-PAB-MMAE)。ADCをi.v.で投与し、各時点からの血漿サンプルをIg選択親和性樹脂によって精製し、そして、それらの薬物積込量をADCの逆相HPLC分析によって評価した。
【
図11】ALCL(Karpas-299細胞株)のマウス異種移植モデルにおけるADCの抗腫瘍活性を示す。ADCを、抗CD30抗体cAC10、及びマレイミド-カプロイル基(黒丸)又は自己安定化マレイミド-DPR基(白丸)のどちらかを介して抗体に連結されたval-cit-PAB-MMAE細胞毒性ペイロードを含む薬物-リンカーを用いて調製した。腫瘍は、約250mm
3の体積にさせ、その後、3回の投与として毎週1mg/kg投与した(投与群あたり6匹のマウス)。自己安定化ADC投与群では、5匹の動物に永続的な退縮が認められたのを含めて、6匹の動物すべてで完全寛解(検出可能な腫瘍がない)が認められた一方で、マレイミド-カプロイルADCでは、完全寛解は全く認められなかった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
略語と定義
別段の記述のない限り、本明細書で用いられる以下の用語及び句は、以下の意味を有するものとする。本明細書で商標名を用いるとき、この商標名には、別段の記述のない限り、この商標名の製品の製剤製品、後発薬物及び(単数若しくは複数の)活性医薬成分が含まれる。
【0008】
用語「電子求引性基」は、反応中心から電子を引き抜く官能基を指す。代表的な電子求引性基としては、これだけに限定されるものではないが、-C(=O)、-CN、-NO2、-CX3、-X、-COOR、-CONR2、-COR、-COX、-SO2R、-SO2OR、-SO2NHR、-SO2NR2、-PO3R2、-P(O)(CH3)NHR、NO、-NR3
+、-CR=CR2、及び-C≡CR{式中、Xは、F、Br、Cl、又はIであり、Rは、各出現ごとに独立に、水素及びC1-6アルキルから成る群から選択される}が挙げられる。代表的な電子求引性基としてはまた、アリール基(例えば、フェニル)及び特定のヘテロアリール基(例えば、ピリジン)も挙げることができる。「電子求引性基」という用語は、電子求引性基でさらに置換されたアリール又はヘテロアリールを含んでいる。好ましい電子求引性基は、-C(=O)、-CN、-NO2、-CX3、及び-Xである。
【0009】
用語「塩基」は、水酸化物イオンを生じさせるように水をその「脱プロトン化」する官能基を指す。代表的な塩基は、アミン及び含窒素複素環化合物である。代表的な塩基としては、-N(R
3)(R
4){式中、R
3及びR
4は、H又はC
1-6アルキル、好ましくはH又はメチルから独立に選択される}、
【化3】
{式中、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、各出現ごとに独立に、水素又はC
1-6アルキル、好ましくはH又はメチルから選択され、そして、eは、0~4である}が挙げられる。いくつかの態様において、塩基は、窒素含有塩基である。
【0010】
用語「抗体」は、本明細書で最も広い意味で使用され、具体的には、所望の生体活性を示すインタクトモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを含む。インタクト抗体は主に可変領域及び定常領域の2つの領域を有する。可変領域は標的抗原と結合し、相互作用する。可変領域には相補性決定領域(CDR)があり、この領域は特定の抗原の特異的結合部位を認識し、これに結合する。定常領域は、免疫系と相互作用することによって認識される(例えば、Janeway et al., 2001, Immuno. Biology, 5th Ed., Garland Publishing, New Yorkを参照)。抗体にはいくつかの種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD及びIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。抗体は、任意の適切な種から誘導することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト又はマウス由来である。抗体は、例えば、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体である。
【0011】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集合から得られる抗体(すなわち、この集団に含まれる個々の抗体が、天然に少量存在する可能な変異以外は同一である抗体)を指す。モノクローナル抗体は、非常に特異的に1個の抗原部位を対象とする。修飾語句「モノクローナル」は、実質的に同種の抗体の集合から得られる抗体の特徴を示すものであればよく、任意の特定の方法によって産生された抗体である必要があるとは解釈されない。
【0012】
「インタクト抗体」は、抗原に結合する可変領域と、軽鎖定常ドメイン(CL)と、重鎖定常ドメイン(抗体のクラスに適してCH1、CH2、CH3及びCH4)とを含むものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であってよい。
【0013】
「抗体フラグメント」は、インタクト抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvフラグメント、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、線形抗体、一本鎖抗体分子、scFv、scFv-Fc、及び抗体フラグメントから作成される(単数若しくは複数の)多特異性抗体フラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製される(単数若しくは複数の)フラグメント、又は標的抗原(例えば、癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原)に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。
【0014】
「抗原」とは、抗体が特異的に結合する物体である。
【0015】
用語「特異的な結合」及び「特異的に結合する」は、その抗体又は抗体誘導体が他のたくさんの抗原と結合するのではなく、対応するその標的抗原と、高度に選択的な様式で、結合することを意味する。典型的には、抗体は少なくとも約1×10-7M、好ましくは10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12Mの親和性で結合し、所定の抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合親和性の少なくとも2倍より大きい親和性で所定の抗原に結合する。
【0016】
用語「阻害する」又は「の阻害」は、計測可能な量の減少又は完全に阻害することを意味する。
【0017】
用語「治療的に有効な量」は、哺乳動物の疾患又は障害を処置するのに有効な薬物の量を指す。癌の場合には、治療的に有効な量の薬物は、癌細胞の数を減らし、腫瘍を小さくし、癌細胞が周囲臓器に浸潤するのを阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止め)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせ、好ましくは止め)、腫瘍増殖をある程度まで阻害し、及び/又は癌に関連する1つ以上の症状をある程度まで軽減することができる。この薬物は、存在する癌細胞の増殖を予防し、及び/又は存在する癌細胞を殺傷する程度まで、細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であってよい。癌治療について、例えば、病気進行までの期間(TTP)の評価及び/又は奏功率(RR)の決定によって有効性を評価することができる。
【0018】
用語「実質的である」又は「実質的に」とは、大部分、すなわち、集団の、混合物若しくはサンプルの>50%、好ましくは集団の50%超、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%を指す。
【0019】
用語「細胞内で開裂された」及び「細胞内開裂」は、リガンド-薬物結合体(例えば、抗体薬物結合体(ADC)など)に対する細胞内の代謝プロセス又は反応を指す。薬物部分(D)とリガンド単位(例えば、抗体(Ab))との間の共有結合(例えば、リンカー)が切れることにより、遊離薬物、又は細胞内で抗体と開裂した結合体の他の代謝物が得られる。薬物-リンカー-リガンド結合体の開裂部分は細胞内代謝物である。
【0020】
用語「細胞毒性」は、薬物-リンカー-リガンド結合体化合物又は薬物-リンカー-リガンド結合体の細胞内代謝物の細胞殺傷効果、細胞増殖抑制効果又は増殖防止効果を指す。細胞毒性活性は、細胞の半数が生存する単位体積あたりの濃度(モル濃度又は重量濃度)であるIC50値で表してよい。
【0021】
用語「細胞毒性剤」は、本明細書で使用される場合、細胞機能を阻害又は予防し、及び/又は細胞を破壊する基質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、60C、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、及び毒素(例えば、低分子毒素又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素)及びこの合成アナログ及び誘導体を含むことが意図される。
【0022】
用語「癌」及び「癌性」は、制御できない細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳動物の病的状態又は障害を指すか、又は記載する。「腫瘍」は、1つ以上の癌性細胞を含む。
【0023】
「自己免疫疾患」は、本明細書では、個体自身の組織又はタンパク質から生じ、個体自身の組織又はタンパク質に対する疾患又は障害である。
【0024】
「患者」の例としては、これだけに限定されるものではないが、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、トリ及び家禽が挙げられる。例示的な実施形態において、患者はヒトである。
【0025】
用語「処置する」又は「処置」は、本文で別段の指示がない限り、治療的処置及び再発を予防するための計測を指し、目的は、望ましくない生理学的変化又は障害(例えば癌の進行又は広がり)を予防又は遅くする(遅らせる)ことである。本発明の目的のために、有益又は望ましい臨床的結果としては、限定されないが、検出可能であるか検出不可能であるかにかかわらず、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行が遅れるか又は遅くなること、疾患状態の改善又は緩和、及び鎮静(部分的又は全体的に)が挙げられる。「処置」は、処置をしない場合に予想される生存期間よりも延命することも意味することもできる。処置の必要なものとしては、この状態又は障害を既に有しているもの、及びこの状態又は障害になるおそれがあるものが挙げられる。
【0026】
癌に関して、用語「処置する」は、以下のいずれか又は全てを包含する:腫瘍細胞、癌細胞、又は腫瘍の成長を予防すること;腫瘍細胞又は癌細胞の複製を予防すること、最終的な腫瘍による負担を減らすこと、又は癌性細胞の数を減らすこと、及びこの疾患に関連する1つ以上の症状を軽減すること。
【0027】
自己免疫疾患に関して、用語「処置する」は、以下のいずれか又は全てを包含する:自己免疫疾患状態に関連する細胞(例えば、限定されないが、自己免疫性抗体を産生する細胞)の複製を予防すること、自己免疫性抗体による負担を減らすこと、及び自己免疫疾患の1つ以上の症状を軽減すること。
【0028】
用語「検出単位」は、本明細書中に使用される場合、検出可能なシグナルを発生するか、又はその発生を誘発するあらゆる分子を指す。画像化装置によって検出できるレポーター分子を有する検出単位としては、これだけに限定されるものではないが、放射活性、常磁性、蛍光性又は放射線不透過性化学物質が挙げられる。いくつかの実施形態において、検出単位は、放射性化合物、化学発光剤、蛍光剤、又は色素体であろう。いくつかの実施形態において、検出単位は、フルオロフォアなどの蛍光分子であろう。
【0029】
用語「安定性単位」は、本明細書中に使用される場合、例えば、患者に投与されたとき、リガンドの全身的滞留を増強することによって、その結合体の安定性を促進する化合物を指す。安定性単位はまた、結合体の水溶性を増強し得る。代表的な安定性単位は、ポリエチレングリコールである。
【0030】
句「医薬的に許容され得る塩」は、本明細書で使用される場合、化合物(例えば、薬物、薬物-リンカー又はリガンド-薬物結合体)の医薬的に許容され得る有機又は無機の塩を指す。この化合物は、少なくとも1つのアミノ基を含有し得る、従って、そのアミノ基との酸付加塩を合成することができる。例示的な塩としては、これだけに限定されるものではないが、硫酸塩、トリフルオロ酢酸、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫化水素酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエート))が挙げられる。医薬的に許容され得る塩は、別の分子(例えば、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオン)の包接物を含んでよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定化する任意の有機部分又は無機部分であってよい。さらに、医薬的に許容され得る塩は、構造中に2個以上の電荷を有する原子を有してよい。電荷を有する複数の原子が医薬的に許容され得る塩の一部分をなしている場合、複数の対イオンを有することができる。したがって、医薬的に許容され得る塩は、電荷を有する1つ以上の原子及び/又は1つ以上の対イオンを有することができる。
【0031】
別段の指示がない限り、用語「アルキル」は、それ自体又は別の用語の一部として、示された炭素原子数を有する、置換された又は非置換の直鎖又は分枝の飽和又は不飽和の炭化水素を指す(例えば、「C1-C8アルキル」は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基を指す)。炭素原子の数が示されていない場合、アルキル基は1~8個の炭素原子を有する。代表的な直鎖の「C1-C8アルキル」基としては、これだけに限定されるものではないが、-メチル、-エチル、-n-プロピル、-n-ブチル、-n-ペンチル、-n-ヘキシル、-n-ヘプチル及び-n-オクチルが挙げられ、分枝-C1-C8アルキルとしては、これだけに限定されるものではないが、-イソプロピル、-sec-ブチル、-イソブチル、-tert-ブチル、-イソペンチル及び-2-メチルブチルが挙げられ、不飽和-C2-C8アルキルとしては、これだけに限定されるものではないが、-ビニル、-アリル、-1-ブテニル、-2-ブテニル、-イソブチレニル、-1-ペンテニル、-2-ペンテニル、-3-メチル-1-ブテニル、-2-メチル-2-ブテニル、-2,3-ジメチル-2-ブテニル、-1-ヘキシル、-2-ヘキシル、-3-ヘキシル、-アセチレニル、-プロピニル、-1-ブチニル、-2-ブチニル、-1-ペンチニル、-2-ペンチニル及び-3-メチル-1-ブチニルが挙げられる。いくつかの実施形態において、アルキル基は非置換である。アルキル基は、1つ以上の基で置換されていてもよい。いくつかの態様において、アルキル基は飽和されている。
【0032】
別段の指示がない限り、「アルキレン」は、それ自体又は別の用語の一部として、所定の炭素原子数、典型的に1~10個の炭素原子を有し、親アルカンの同じ又は2個の異なる炭素原子から2個の水素原子が除去されて誘導される2個の1価ラジカル中心を有する、置換された又は非置換の飽和の分枝又は直鎖又は環状の炭化水素基を指す。典型的なアルキレンラジカルとしては、これだけに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:メチレン(-CH2-)、1,2-エチル(-CH2CH2-)、1,3-プロピル(-CH2CH2CH2-)、1,4-ブチル(-CH2CH2CH2CH2-)など。好ましい態様において、アルキレンは、分岐又は直鎖の炭化水素である(すなわち、それは環状炭化水素ではない)。
【0033】
別段の指示がない限り、「アリール」は、それ自体又は別の用語の一部として、親芳香族環系の1個の炭素原子から1個の水素原子が除去されて誘導される6~20個の炭素原子を有する、置換された又は非置換の1価の炭素環式芳香族炭化水素ラジカルを指す。いくつかのアリール基は、「Ar」として例示的な構造中に示されている。典型的なアリール基としては、これだけに限定されるものではないが、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルが挙げられる。代表的なアリール基は、以下のフェニル基である:
【化4】
【0034】
別段の指示がない限り、「アリーレン」は、それ自体又は別の用語の一部として、2個の共有結合を有する(すなわち、それは2価である)、先に定義したようなアリール基であり、以下の構造である、代表的な基としてフェニルで示されるようにオルト配置、メタ配置又はパラ配置が可能である:
【化5】
【0035】
別段の指示がない限り、「C3-C8複素環」は、それ自体又は別の用語の一部として、3~8個の炭素原子(環メンバーとも呼ばれる)とN、O、P又はSから独立に選択される1~4個のヘテロ原子環メンバーを有する一価の置換された又は非置換の芳香族又は非芳香族単環式又は二環式環系を指し、そして、親環系の環原子からの1つの水素原子の除去によって誘導される。複素環内の1若しくは複数のN、C又はS原子が、酸化されていてもよい。ヘテロ原子を含んでいる環は、芳香族であっても、非芳香族であってもよい。別段の注意がない限り、複素環は、安定構造をもたらすいずれかのヘテロ原子又は炭素原子にてそのペンダント基に取付けられる。C3-C8複素環の代表的な例としては、これだけに限定されるものではないが、ピロリジニル、アゼチジニル、ピペリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェン、インドリル、ベンゾピラゾリル、ピロリル、チオフェニル基(チオフェン)、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリミジニル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、イソチアゾリル、及びイソオキサゾリルが挙げられる。「C3-C8ヘテロアリール」は、芳香族C3-C8複素環である。
【0036】
別段の指示がない限り、「C3-C8ヘテロシクロ」は、それ自体又は別の用語の一部として、先に定義したようなC3-C8複素環基であるが、その複素環基の水素原子の1つが単結合に置換されたものを指す(すなわち、それは2価である)。別段の指示がない限り、「C3-C8ヘテロアリーレン」は、それ自体又は別の用語の一部として、先に定義したようなC3-C8ヘテロアリール基であるが、そのヘテロアリール基の1つ水素原子が単結合に置換されたものを指す(すなわち、それは2価である)。
【0037】
別段の指示がない限り、「C3-C8炭素環」は、それ自体又は別の用語の一部として、親環系の環原子からの1つの水素原子の除去によって得られる、3-、4-、5-、6-、7-又は8-員の1価の置換された又は非置換の飽和又は不飽和の非芳香族単環式又は二環式炭素環である。代表的なC3-C8炭素環としては、これだけに限定されるものではないが、-シクロプロピル、-シクロブチル、-シクロペンチル、-シクロペンタジエニル、-シクロヘキシル、-シクロヘキセニル、-1,3-シクロヘキサジエニル、-1,4-シクロヘキサジエニル、-シクロヘプチル、-1,3-シクロヘプタジエニル、-1,3,5-シクロヘプタトリエニル、-シクロオクチル及び-シクロオクタジエニルが挙げられる。
【0038】
別段の指示がない限り、「C3-C8カルボシクロ」は、それ自体又は別の用語の一部として、先に定義したようなC3-C8炭素環基ではあるが、その炭素環基の水素原子のもう一つが単結合に置換されたものを指す(すなわち、それは2価である)。
【0039】
別段の指示がない限り、用語「ヘテロアルキル」は、それ自体又は別の用語と組合せて、所定の数の炭素原子及び1~10個、好ましくは1~3個の、O、N、Si及びSから成る群から選択されるヘテロ原子から成る、完全に飽和されているか、又は1~3の不飽和度を含んでいる、安定した直鎖若しくは分岐鎖炭化水素、又はその組合せを意味し、前記窒素及び硫黄原子が任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子O、N、及びSは、ヘテロアルキル基の内部のどこかに、又はアルキル基がその分子の残りの部分に取付けられているところに配置され得る。ヘテロ原子Siは、アルキル基がその分子の残りの部分に取付けられているところを含めた、ヘテロアルキル基のどこかに配置され得る。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-NH-CH2-CH2-NH-C(O)-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、Si-(CH3)3、-CH2-CH=N- O-CH3、及び-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられる。例えば、-CH2-NH-OCH3や-CH2-O-Si(CH3)3のように、最大2つのヘテロ原子が連続していてもよい。好ましい実施形態において、C1-C4ヘテロアルキル又はヘテロアルキレンは、1~4個の炭素原子と1又は2個のヘテロ原子を有し、そして、C1-C3ヘテロアルキル又はヘテロアルキレンは、1~3個の炭素原子と1又は2個のヘテロ原子を有する。いくつかの態様において、ヘテロアルキル又はヘテロアルキレンは飽和されている。
【0040】
別段の指示がない限り、用語「ヘテロアルキレン」は、それ自体又は別の置換基の一部として、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-や-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるように、(先に述べたとおり)ヘテロアルキルから得られた2価の基を意味する。ヘテロアルキレン基に関して、ヘテロ原子はまた、鎖の末端のいずれか又はその両方を占めていることもある。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基に関して、連結基の方向は全く含意されていない。
【0041】
「置換アルキル」及び「置換アリール」は、1個以上の水素原子がそれぞれ独立して置換基と交換されたアルキル及びアリールをそれぞれ意味する。典型的な置換基としては、これだけに限定されるものではないが、-X、-R、-O-、-OR、-SR、-S-、-NR2、-NR3、=NR、-CX3、-CN、-OCN、-SCN、-N=C=O、-NCS、-NO、-NO2、=N2、-N3、-NRC(=O)R、-C(=O)R、-C(=O)NR2、-SO3
-、-SO3H、-S(=O)2R、-OS(=O)2OR、-S(=O)2NR、-S(=O)R、-OP(=O)(OR)2、-P(=O)(OR)2、-PO-
3、-PO3H2、-AsO2H2、-C(=O)R、-C(=O)X、-C(=S)R、-CO2R、-CO2
-、-C(=S)OR、-C(=O)SR、-C(=S)SR、-C(=O)NR2、-C(=S)NR2又は-C(=NR)NR2が挙げられ、ここで、各Xは独立してハロゲン:-F、-Cl、-Br又は-Iであり;各Rは独立して、-H、-C1-C20アルキル、-C6-C20アリール、-C3-C14複素環、保護基又はプロドラッグ部分である。上述のアルキレン、炭素環、カルボシクロ、アリーレン、ヘテロアルキル、ヘテロアルキレン、複素環、ヘテロシクロ、ヘテロアリール、及びヘテロアリーレン基も同様に置換されていてもよい。
【0042】
RGは、リンカー単位(すなわち、A、W、Y)又は薬物単位Dの成分のいずれかとの結合できる反応部位(RS)を含む反応基である。RSは、反応基(RG)内の反応部位である。反応基としては、ジスルフィド結合又はチオエーテル結合を形成するためのスルフヒドリル基、ヒドラゾン結合を形成するためのアルデヒド、ケトン、又はヒドラジン基、ペプチド結合を形成するためのカルボキシル又はアミノ基、エステル結合を形成するためのカルボキシル又はヒドロキシ基、スルホンアミド結合を形成するためのスルホン酸、カルバマート結合を形成するためのアルコール、及びスルホンアミド結合又はカルバマート結合を形成するためのアミンが挙げられる。以下の表は、反応基、反応部位、反応部位の反応後に形成できる代表的な官能基を示す。その表に制限されない。表中の指摘したR’及びR’’部分が、実質的に、RGを代表的な官能基のうちの1つに変換する際に提供される、結合形成に適合可能であるいずれかの有機部分(例えばアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、又は置換アルキル、アリール、若しくはヘテロアリール基)であることを、当業者は理解するであろう。本発明の実施形態に適用されるように、R’が場合によって、自己安定化リンカー又は任意の第2リンカーのうちの1若しくは複数の成分を表すことができること、並びにR’’が場合によって、任意の第2リンカー、薬物単位、安定性単位、又は検出単位のうちの1若しくは複数の成分を表すことができることもまた理解される。
【表1】
当然のことながら、いったん反応すると、反応部位RSは、場合によって、リンカー単位又は薬物単位の成分と新しい結合を形成する可能性もある。一度リンカー単位の残りの部分に連結した反応部位RSは、典型的には、反応性を失った。
【0043】
用語「ジラクタム」は、本明細書中で使用される場合、自己安定化リンカーアセンブリ上に存在しているチオ置換スクシンイミドと塩基によるマクロ環化反応から形成される環状アミドを指す。
【0044】
概略
マレイミド(又はチオ置換なスクシンイミド)の加水分解は、求核試薬として作用する水がマレイミド環(又はスクシンイミド環)の求電子カルボニル炭素原子の1つを攻撃する求核付加反応を表す。この反応の速度は、カルボニルの求電子性に影響を受け、そしてそれは、イミド基の窒素上に存在している電子供与性基又は電子求引性基の置換によって変化し得る。また、加水分解反応の速度は、水性溶媒のpHによっても影響を受け、そして、pHが高ければ高いほど水の求核性を効果的に高める。N置換マレイミド上の塩基性基の置換もまた、加水分解の速度を高めることが、本発明者らによって発見された。マレイミド上のN置換基の慎重な操作によって、マレイミド環に対する電子求引性の影響(これにより、その求電子性を増強する)と限局性塩基性度(付近の水の有効な求核性を増強する)の組合せが、親マレイミド又はそのチオ置換スクシンイミド誘導体のいずれかの加水分解反応速度を調整するのに使用され得る。本発明はとりわけ、有効範囲内に収まる加水分解速度を有するN置換マレイミドを提供するが、チオールとそれらの反応は、マレイン酸誘導体へのそれらの加水分解よりも速く起こるが、それは、タンパク質ベースの生物結合体の製造に非常に好適な緩やかな条件下で完全な加水分解を達成するのに十分に速い加水分解速度を有するチオ置換スクシンイミドを生み出す。
【0045】
本発明は、マレイミド近位の塩基性官能基が安定した生物結合体をもたらす、マレイミドとタンパク質チオールとの結合により形成されるチオ置換スクシンイミドの加水分解を触媒するという発見に一部基づいている。近位塩基性基と電子求引性基とをさらに組合せることによって、チオ置換スクシンイミド環の加水分解の速度を、望ましいレベルに合わせられる。加水分解反応速度に影響する設計パラメーターには、塩基性基のpKa、存在するときには電子求引性基の濃度、及びマレイミドカルボニル炭素に対する両基の近接が含まれる。加水分解のパーセンテージに影響する設計パラメーターには、塩基の性質とマレイミドカルボニル炭素への近接が含まれる。
【0046】
概念的に、本発明を制限するものではないが、自己安定化リンカーアセンブリを含むリンカー単位は、本明細書中では自己安定化リンカー又は自己安定化リンカー単位と呼ばれる。リガンド単位との結合前には、自己安定化リンカーはマレイミド基を含む。自己安定化リンカーは、リガンド単位への結合後にそれ自身のチオ置換スクシンイミドの加水分解を触媒するリンカー単位内の塩基へのマレイミド基の近接の効力によって自己安定化する。このことは、以下に図式的に表される:
【化6】
【0047】
当然のことながら、自己安定化リンカーという用語は、安定化前と安定化後のリンカー単位の両方を指す。
【0048】
上記を考慮すると、本発明は、ある実施形態群において、リガンド単位、及び薬物単位、検出単位、又は安定化単位から選択された少なくとも1個の機能性剤、ここで、前記リガンド単位と(単数若しくは複数の)それぞれ機能性剤は、チオエーテル結合を介してリガンド単位に直接結合されたスクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環を含む自己安定化リンカーアセンブリによって接合される;並びに(すなわち、スクシンイミド環の加水分解の速度を高めることによって)自己安定化リンカーアセンブリを欠いているリガンド薬物結合体に対して血漿中でその結合体を安定させるために作動できるように連結された塩基と電子求引性基(スクシンイミドを介してリガンド単位に結合される)を含むリガンド-機能性剤結合体を提供する。いくつかの態様において、電子求引性基は、スクシンイミドの求電子性を増強して、それが水とより反応する状態にするように配置され、塩基は、(例えば、分子内塩基触媒作用機構によって)スクシンイミド環の加水分解を促進するように配置される。いくつかの態様において、塩基がスクシンイミド環と反応するとき形成されたジラクタムが、スクシンイミド環に代わる。別の実施形態群において、機能性剤-リンカー単位が提供されるが、前記リンカー部分が、自己安定化リンカーアセンブリを含んでいる。別の実施形態群において、リガンド-リンカー結合体を提供するが、前記リンカー部分が、自己安定化リンカーアセンブリを含んでいる。いくつかの実施形態において、リンカー部分はさらに、任意の第2リンカーアセンブリ(LO)を含んでいる。
【0049】
いくつかの態様において、リガンド-機能性剤結合体は、リガンド-薬物結合体である。従って、本発明は、ある実施形態群において、リガンド単位、及び少なくとも1個の薬物単位、ここで、前記リガンド単位と(単数若しくは複数の)それぞれ薬物は、チオエーテル結合を介してリガンド単位に直接結合されたスクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環を含む自己安定化リンカーアセンブリによって接合される;並びに(すなわち、スクシンイミド環の加水分解の速度を高めることによって)自己安定化リンカーアセンブリを欠いているリガンド薬物結合体に対して血漿中でその結合体を安定させるために作動できるように連結された塩基と電子求引性基(スクシンイミド環を介してリガンド単位に結合される)を含むリガンド-薬物結合体を提供する。いくつかの態様において、電子求引性基は、スクシンイミドの求電子性を増強して、それが水とより反応する状態にするように配置され、塩基は、(例えば、分子内塩基触媒作用機構によって)スクシンイミド環の加水分解を促進するように配置される。いくつかの態様において、塩基がスクシンイミド環と反応するとき形成されたジラクタムが、スクシンイミド環に代わる。別の実施形態群において、薬物-リンカー単位が提供されるが、前記リンカー部分が、自己安定化リンカーアセンブリを含んでいる。別の実施形態群において、リガンド-リンカー結合体を提供するが、前記リンカー部分が、自己安定化リンカーアセンブリを含んでいる。いくつかの実施形態において、リンカー部分はさらに、任意の第2リンカーアセンブリ(LO)を含んでいる。いくつかの実施形態において、第2リンカーアセンブリは、開裂可能単位、並びに任意に1若しくは複数のストレッチャー及びスペーサー単位を含む放出可能リンカーアセンブリ(LR)である。ある他のある実施形態において、第2リンカーアセンブリは、1若しくは複数のストレッチャー単位とスペーサー単位を含む非放出リンカーアセンブリ(LN)である。さらに他の実施形態において、本発明は、自己安定化リンカーアセンブリを含むリガンド-薬物結合体を使用した癌、免疫疾患、感染症、並びに他の疾患及び障害を治療する方法を提供する。
【0050】
リガンド-機能性剤結合体(又はリガンド-薬物結合体)のリンカー単位は、自己安定化リンカーアセンブリに加えて、それぞれの機能性剤(又は薬物単位)を自己安定化リンカーアセンブリに接合する任意の第2リンカーアセンブリ(LO)をさらに含む。第2リンカーアセンブリは、放出可能リンカーアセンブリであっても、非放出リンカーアセンブリであってもよい。
【0051】
リンカー単位という用語は、自己安定化リンカーアセンブリと任意の第2リンカーアセンブリを含めたリガンド-機能性剤結合体(又はリガンド-薬物結合体)のリンカー一部を指すために本明細書中で使用できる。
【0052】
自己安定化リンカーアセンブリ
自己安定化リンカーは、スクシンイミド環の結合後の加水分解の速度が制御可能であり、所望の範囲内にあるように設計される。この範囲の制限は、リガンド-薬物結合体の製造で生じる問題によって典型的に決定される。一方では、遅過ぎる加水分解は、製造プロセスの容認できない遅延、又はタンパク質骨格に損害を引き起こし得るpH及び温度の攻撃的な条件を必要とするだろう。逆に、水と反応し過ぎるマレイミドは、それが利用可能なタンパク質チオールと反応する前に、対応するマレイン酸誘導体に加水分解され得る(望ましくない経路を参照):
【化7】
こうしたマレイン酸誘導体は、チオールと反応しないので、従って、この反応経路は生物結合体をもたらさない。そのため、適用条件下でチオール添加より速く加水分解を受けるマレイミドは、有用な試薬でない。一般に、チオ置換スクシンイミドの加水分解速度を高める構造的特徴はまた、親マレイミドの加水分解速度も高める。
【0053】
本発明の自己安定化リンカーを設計する際に、塩基性基のpKa、(単数若しくは複数の)電子求引性基の濃度、及びマレイミドへの両基の近接は、相互関連変数であり、マレイミドと対応するチオ置換スクシンイミド生成物の両方の加水分解速度に影響することが理解される。従って、電子求引性基と塩基の位置決定は、塩基のpKaと(単数若しくは複数の)電子求引性基の濃度に依存する。当業者は、フルオロ、トリフルオロメチル、及びニトロなどの特に強い電子求引性基に関して、その基がマレイミドからより遠くてもよいことを理解する。いくつかの実施形態において、加水分解反応は、得られる結合体が加水分解チオ置換スクシンイミド結合体と環化チオ置換ジラクタム結合体の不均一混合物を含むように、マクロ環化反応と競合する可能性がある。好ましい実施形態において、ジラクタムは形成されない。
【0054】
選択された本発明の実施形態
いくつかの実施形態において、リガンド-機能性剤結合体は、式(I):
【化8】
{式中、
Lは、リガンド単位であり;
D’は、薬物単位、検出単位、又は安定性単位であり;
L
Oは、任意の第2リンカーアセンブリであり;そして、
L
SSは、自己安定化リンカーアセンブリであり;
(式中、
M
1は、スクシンイミド環若しくは加水分解スクシンイミドであるか、又はBUと一緒にジラクタムを形成し;
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、且つ、任意の第2リンカーアセンブリ又はD’への取付けに好適な反応部位を任意に含み;
添字m、q、及びrは、それぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は、0、1又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場がC
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであることを条件とし;
添字a及びbは、それぞれ0又は1であり、且つ、a+bの合計は、1であり;そして、
添字pは、1~20の範囲に及ぶ)}又はその塩(例えば、医薬的に許容し得るその塩)によって表される。
【0055】
いくつかの態様において、rが1であるとき、HEはカルボニル基(すなわち、C(=O))を含まない。
【0056】
いくつかの態様において、rはゼロである。いくつかの態様において、aは1であり、且つ、bはゼロである。他の態様において、aはゼロであり、且つ、bは1である。
【0057】
いくつかの態様において、m+q+rは0である。こうした態様において、足場は、C6-10アリーレン又はC4-10ヘテロアリーレンであり、電子求引性基として働く。代表的なアリール及びヘテロアリールとしては、フェニル及びピリジニルが挙げられる。
【0058】
いくつかの態様において、m+q+rは、1又は2である。
【0059】
いくつかの態様において、結合体は、式(I)又はその塩によって表され、式中、aは1であり、且つ、rはゼロである。
【0060】
いくつかの態様において、結合体は、式(I)又はその塩によって表され、式中、LOは、存在し、且つ、放出可能リンカーアセンブリであり、環はC1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレン)である足場を表し、aは1であり、rはゼロであり、そして、m+qの合計は1である。いくつかのこうした態様において、足場は、C1-3アルキレン又はC1-3ヘテロアルキレンである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0061】
いくつかの態様において、結合体は、式(I)又はその塩によって表され、式中、LOは、存在し、且つ、放出可能リンカーアセンブリであり、環はC1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレン)である足場を表し、aは1であり、そして、m及びrはゼロである。いくつかのこうした態様において、足場は、C1-3アルキレン又はC1-3ヘテロアルキレンである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0062】
いくつかの態様において、結合体は、式(I)又はその塩によって表され、式中、LOは、存在し、且つ、放出可能リンカーアセンブリであり、環は、C1、C2、C3、C4直鎖又は分岐鎖アルキレンである足場を表し、aは1であり、rはゼロであり、そして、m+qの合計は1である。
【0063】
いくつかの態様において、結合体は、式(I)又はその塩によって表され、式中、LOは、存在し、且つ、放出可能リンカーアセンブリであり、環は、C1、C2、C3、C4直鎖又は分岐鎖アルキレンである足場を表し、aは1であり、そして、m及びrはゼロである。
【0064】
いくつかの態様において、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2つ以上6つ以下の介在原子があって、そして、電子求引性基と、スクシンイミド環(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、5つ以下の原子、4つ以下の原子、3つ以下の原子、又は2つ以下の介在原子がある。
【0065】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、アルキレン又はヘテロアルキレン鎖は、直鎖であっても、分岐であってもよい。いくつかの態様において、アルキレン又はヘテロアルキレン鎖は、直鎖であろう。他の態様において、それは分岐鎖であろう。
【0066】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、pは、1~20、好ましくは1~12、より一層好ましくは1~10、又は1~8の範囲に及び得る。
【0067】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、M1は、好ましくはスクシンイミド環(すなわち、非加水分解)又は加水分解スクシンイミド環(本明細書中では加水分解スクシンイミドとも呼ばれる)である。
【0068】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、D’は薬物単位Dであってもよく、そして、リガンド-機能性剤結合体は、リガンド-薬物結合体であってもよい。
【0069】
足場自体が任意の第2リンカーアセンブリ又はD’に直接連結されている(例えば、選択した実施形態において、qがゼロであるか、又はqがゼロであり、且つ、rがゼロであるとき)いくつかの態様において、足場は、任意の第2リンカーアセンブリ又はD’への取付けに好適な反応部位を含むであろう。
【0070】
いくつかの実施形態において、自己安定化リンカーアセンブリ(L
SS)は、式(II):
【化9】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表され、式中、波線は、任意の第2リンカーアセンブリのD’又はDへの取付のための位置を指し;式中、//は、リガンド単位への取付位置を示す。上記の自己安定化リンカーアセンブリでは、M
1は、スクシンイミド環若しくは加水分解スクシンイミド環又は塩基がスクシンイミド環と反応するとき形成されたジラクタムを表し、BUは、塩基性単位であり、HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;並びに、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、さらに、任意の第2リンカーアセンブリ、D’、又はDへの取付けに好適な反応部位を任意に含み;そして、添字m、q、及びrは、それぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであるものとする。
【0071】
いくつかの態様において、rが1であるとき、HEはカルボニル基(すなわち、C(=O))を含まない。
【0072】
いくつかの態様において、自己安定化リンカーアセンブリは、rがゼロである式(II)によって表される。
【0073】
いくつかの態様において、m+q+rは0である。こうした態様において、C6-10アリーレン又はC4-10ヘテロアリーレンが、電子求引性基として働く。代表的なアリール及びヘテロアリールとしては、フェニル及びピリジニルが挙げられる。
【0074】
いくつかの態様において、m+q+rは、1又は2である。
【0075】
いくつかの態様において、自己安定化リンカーアセンブリは、式(II)又はその塩によって表され、式中、環はC1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はヘテロアルキレン)である足場を表し、rはゼロであり、そして、m+qの合計は1である。いくつかのこうした態様において、足場は、C1-3アルキレン又はC1-3ヘテロアルキレンである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐アルキレンである。
【0076】
いくつかの態様において、自己安定化リンカーアセンブリは、式(II)又はその塩によって表され、式中、環はC1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はヘテロアルキレン)である足場を表し、そして、m及びrはゼロである。いくつかのこうした態様において、足場は、C1-3アルキレン又はC1-3ヘテロアルキレンである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐アルキレンである。
【0077】
いくつかの態様において、自己安定化リンカーアセンブリは、式(II)又はその塩によって表され、式中、環は、C1、C2、C3、C4直鎖又は分岐鎖アルキレンである足場を表し、aは1であり、rはゼロであり、そして、m+qの合計は1である。
【0078】
いくつかの態様において、自己安定化リンカーアセンブリは、式(II)又はその塩によって表され、式中、環は、C1、C2、C3、C4直鎖又は分岐鎖アルキレンである足場を表し、aは1であり、そして、m及びrはゼロである。
【0079】
いくつかの態様において、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2つ以上6つ以下の介在原子があって、そして、電子求引性基と、スクシンイミド環(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、5つ以下の原子、4つ以下の原子、3つ以下の原子、又は2つ以下の介在原子がある。
【0080】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、アルキレン又はヘテロアルキレン鎖は、好ましくは直鎖又は分岐鎖であろう。いくつかの態様において、アルキレン又はヘテロアルキレン鎖は、直鎖であろう。他の態様において、それは分岐鎖であろう。
【0081】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、M1は、好ましくはスクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環である。
【0082】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、D’は、好ましくはD、薬物単位である。
【0083】
リガンド-機能性剤結合体が式(I):
【化10】
{式中、それぞれ足場、L、M
1、HE、BU、L
O、D’、並びに添字p、a、b、m、q、及びrは、先に規定した意味を有する}又はその塩を有する本発明の実施形態に戻ると、選択される実施形態としては、式中:
1)mが1であり、且つ、q及びrが0であるか;
2)qが1であり、且つ、m及びrが0あるか;
3)rが1であり、且つ、m及びqが0あるか;
4)mが1であり、q及びrが0であり、且つ、aが1あるか;
5)qが1であり、m及びrが0であり、且つ、aが1あるか;
6)rが1であり、m及びqが0であり、且つ、aが1あるか;
7)mが1であり、q及びrが0であり、且つ、D’が薬物単位、Dであるか;
8)qが1であり、m及びrが0であり、且つ、D’が薬物単位、Dであるか;
9)rが1であり、m及びqが0であり、且つ、D’が薬物単位、Dであるか;
10)mが1であり、q及びrが0であり、aが1であり、且つ、D’が薬物単位、Dであるか;
11)qが1であり、m及びrが0であり、aが1であり、且つ、D’が薬物単位、Dであるか;又が
12)rが1であり、m及びqが0であり、aが1であり、且つ、D’が薬物単位、Dである、ものが挙げられる。
【0084】
他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれに基づくものを含めて、塩基性単位(BU)には、一級、二級アミン、又は三級アミンが含まれる。さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれに基づくものを含めて、塩基性単位は、-(C(R9)(R10))XNH2、-(C(R9)(R10))XNHRa、及び-(C(R9)(R10))XNRa
2{式中、xは、0~4の整数(又は1~4)であり、且つ、各Raは独立に、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のRa基は、それらが取付けられた窒素組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成するが、但し、xがゼロであれば、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間に2個以上の介在原子があるものとし、そして、各R9及びR10は、H又はC1-3アルキルから独立に選択される}から成る群から選択される。さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれに基づくものを含めて、塩基性単位は、-(CH2)XNH2、-(CH2)XNHRa、及び-(CH2)XNRa
2{式中、xは、0~6の整数(好ましくは0~4、又は1~4)であるが、但し、xがゼロであれば、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間に2個以上の介在原子があるものとし、そして、各Raは独立に、C1-6アルキル及びC1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のRa基は、それらが取付けられた窒素組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成する}から成る群から選択される。また他の選択される実施形態において、xは、1~4の整数である。さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれに基づくものを含めて、塩基性単位は、-NH2、-CH2NH2、-CH2CH2NH2、-CH2CH2CH2NH2、又は-CH2CH2CH2CH2NH2であるが、但し、塩基性単位が-NH2であれば、塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2個以上の介在原子があるものとする。
【0085】
さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態の2)、5)、8)、及び11)に基づくものを含めて、さらに、前段落の実施形態に基づくものを含めて、HEは、好ましくはカルボニル、スルホニル又はホスホリル部分を含んでいる。
【0086】
また他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれ(例えば、選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれ)に基づくものを含めて、さらに、前段落の実施形態に基づくものを含めて、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2つ以上6つ以下の介在原子があり、且つ、電子求引性基と、スクシンイミド環(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、5つ以下の原子、4つ以下の原子、3つ以下の原子、又は2つ以下の介在原子がある。
【0087】
また他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれ(例えば、選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれ)に基づくものを含めて、さらに、前段落の実施形態に基づくものを含めて、M1は、スクシンイミド環又は加水分解スクシンイミドである。
【0088】
また他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれ(例えば、選択される実施形態の1)、2)、3)、4)、5)、6)、7)、8)、9)、10)、11)、及び12)のそれぞれ)に基づくものを含めて、さらに、前段落の実施形態に基づくものを含めて、環は、C1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレンである(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレンである)足場を表す。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖アルキレンである。
【0089】
また他の選択される実施形態において、リガンド-機能性剤結合体は、式
【化11】
{式中、足場、L、M
1、HE、BU、L
O、D’、及び添字pのそれぞれは、先に規定された意味を有する}又は医薬的に許容し得るその塩を有し、選択される実施形態は、以下のものを含んでいる:
1)塩基性単位(BU)には、一級、二級アミン、又は三級アミンが含まれ、そして、D’は、好ましくは薬物単位Dである。
2)塩基性単位は、-(C(R
9)(R
10))
XNH
2、-(C(R
9)(R
10))
XNHR
a、及び-(C(R
9)(R
10))
XNR
a
2{式中、xは、0~4の整数(又は1~4)であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが取付けられた窒素組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成するが、但し、xがゼロであれば、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間に2個以上の介在原子があるものとし、そして、各R
9及びR
10は、H又はC
1-3アルキルから独立に選択される}から成る群から選択され、そして、D’は、好ましくは薬物単位Dである。
3)塩基性単位は、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2{式中、xは、0~6の整数(好ましくは0~4、又は1~4)であるが、但し、xがゼロであれば、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間に2個以上の介在原子があるものとし、そして、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが取付けられた窒素組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成する}から成る群から選択され、そして、D’は、好ましくは薬物単位Dである。また他の選択される実施形態において、xは、1~4の整数である。
4)塩基性単位は、-NH
2、-CH
2NH
2、-CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、又は-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2であるが、但し、塩基性単位が-NH
2であれば、塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2個以上の介在原子があるものとし、そして、D’は、好ましくは薬物単位Dである。
【0090】
さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、HEは、カルボニル、スルホニル又はホスホリル部分を含み、そして、D’は、好ましくは薬物単位Dである。
【0091】
また他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2つ以上6つ以下の介在原子があり、且つ、電子求引性基と、スクシンイミド環(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、5つ以下の原子、4つ以下の原子、3つ以下の原子、又は2つ以下の介在原子があり、そして、D’は、好ましくは薬物単位(D)である。
【0092】
また他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、M1は、スクシンイミド環又は加水分解スクシンイミドであり、そして、D’は、好ましくは薬物単位(D)である。
【0093】
また他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、環は、C1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレンである(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレンである)足場を表し、そして、D’は、好ましくは薬物単位Dである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐鎖アルキレンである。
【0094】
さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、HEはカルボニルであり、そして、D’は、好ましくは薬物単位(D)である。
【0095】
さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、HEはカルボニルであり、且つ、環は、直鎖C1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレン)である足場を表し、そして、D’は、好ましくは薬物単位(D)である。
【0096】
さらに他の選択される実施形態において、上記の選択される実施形態のそれぞれに基づくものを含めて、HEはカルボニルであり、且つ、環は、分岐鎖C1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレン)である足場を表し、そして、D’は、好ましくは薬物単位(D)である。
【0097】
また他の選択される実施形態において、リガンド-薬物結合体は、式:
【化12】
{式中、リガンド部分は、抗体(Ab)であり、添字pは、1~20(好ましくは1~12)の範囲に及び、且つ、M
1、BU、L
Oは、本明細書中で規定された実施形態のいずれかに記載のとおりであり、そして、Dは、薬物単位である}又は医薬的に許容し得るその塩を有する。例えば、いくつかの態様において、L
Oは、放出可能リンカーアセンブリであり、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2{式中、xは、1~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが取付けられた窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成する}である。また他の態様において、L
Oは、放出可能リンカーアセンブリであり、且つ、BUは、-CH
2NH
2、-CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、又は-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2である。いくつかの態様において、Abは、非抗体タンパク質によって置換されてもよい。M
1は、好ましくはスクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環である。
【0098】
また他の選択される実施形態において、リガンド-薬物結合体は、式:
【化13】
{式中、リガンド部分は、抗体(Ab)であり、添字pは、1~20(好ましくは1~12)の範囲に及び、且つ、M
1、BU、及びL
Oは、本明細書中で規定された実施形態のいずれかに記載のとおりであり、そして、Dは、薬物単位である}又は医薬的に許容し得るその塩を有する。例えば、いくつかの態様において、L
Oは、放出可能リンカーアセンブリであり、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2{式中、xは、1~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが取付けられた窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成する}である。また他の態様において、L
Oは、放出可能リンカーアセンブリであり、且つ、BUは、-CH
2NH
2、-CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、又は-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2である。いくつかの態様において、Abは、非抗体タンパク質によって置換されてもよい。M
1は、好ましくはスクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環である。
【0099】
また他の選択される実施形態において、リガンド-薬物結合体は、式:
【化14】
{式中、リガンド部分は、抗体(Ab)であり、添字pは、1~20(好ましくは1~12)の範囲に及び、且つ、M
1、BU、及びL
Oは、本明細書中で規定された実施形態のいずれかに記載のとおりであり、そして、Dは、薬物単位である}又は医薬的に許容し得るその塩を有する。例えば、いくつかの態様において、L
Oは、放出可能リンカーアセンブリであり、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2{式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが取付けられた窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成する}である。また他の態様において、L
Oは、放出可能リンカーアセンブリであり、且つ、BUは、-CH
2NH
2、-CH
2CH
2NH
2、-CH
2CH
2CH
2NH
2、又は-CH
2CH
2CH
2CH
2NH
2である。いくつかの態様において、Abは、非抗体タンパク質によって置換されてもよい。M
1は、好ましくはスクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環である。
【0100】
本開示によって提供されたさまざまなリガンド-機能性剤結合体及びリガンド-薬物結合体を記載したので、当業者は、成分アセンブリもまた、有用であることを理解するであろう。従って、本発明は、機能性剤-リンカー結合体(例えば、薬物-リンカー結合体)、リンカー、及びリガンド-リンカーアセンブリを提供する。
【0101】
機能性剤-リンカー結合体
別の実施形態において、本発明は、式:
【化15】
{式中、
D’は、薬物単位、検出単位、又は安定性単位であり;
L
Oは、任意の第2リンカーアセンブリであり;そして、
L
SSは、自己安定化リンカーアセンブリであり;
(式中、
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意の第2リンカーアセンブリ又はD’への取付けに好適な反応部位を任意に含み;
添字m、q、及びrは、それぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであり、そして、
添字a及びbは、それぞれ0又は1であり、且つ、a+bの合計は1である)}を有する機能性剤-リンカー結合体(例えば、薬物-リンカー結合体)又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)を提供する。
【0102】
特定の選択される実施形態において、機能性剤-リンカー結合体は、式:
【化16】
又はその塩によって表されるが、他の選択される実施形態において、薬物-リンカー結合体は、式
【化17】
又はその塩によって表されるが、式中、環、HE、BU、L
O、及びD’は、式(I)に関して本明細書中に提供された意味を有し、そして、Dは、薬物単位である。さらに、(式(I)又は本明細書中に提供された結合体のいずれかに関して)環、HE、BU、L
O、及びD’について具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれが、これらの薬物-リンカー結合体に対して同じように適切である。好ましい態様において、D’は、薬物単位、Dである。
【0103】
リンカー
式
【化18】
{式中、
RGは、薬物単位を取付けるのに好適な、L
Oの末端の(反応部位を含む)反応基であり;
L
Oは、存在している任意の第2リンカーアセンブリであり;そして、
L
SSは、自己安定化リンカーアセンブリであり;
(式中、
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意の第2リンカーアセンブリ又は薬物単位への取付けに好適な反応部位を任意に含み;
添字m、q、及びrは、それぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであり、そして、
添字a及びbは、それぞれ0又は1であり、且つ、a+bの合計は1である)}又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)を有するリンカーもまた、本明細書中に提供される。
【0104】
リンカーが検出単位又は安定性単位に取付けられているいくつかの態様において、RGは、薬物単位の代わりに検出単位又は安定性単位との結合を形成することができる反応部位を含む反応基である。
【0105】
特定の選択される実施形態において、リンカーは、式:
【化19】
又はその塩によって表されるが、一方で、他の選択される実施形態において、リンカーは、式:
【化20】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表され、式中、環、HE、BU、L
O、及びRGは、先に規定された意味を有する。さらに、(本明細書中に提供された結合体のいずれかに関する)BU、L
O、及びRGについて具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれは、これらのリンカーに対して同じように適切である。
【0106】
リガンド-リンカー結合体
式
【化21】
{式中、
Lは、リガンド単位であり;
添字pは、1~20の範囲に及び;
RGは、薬物単位を取付けるのに好適な、L
Oの末端の(反応部位を含む)反応基であり;
L
Oは、存在している任意の第2リンカーアセンブリであり;そして、
L
SSは、自己安定化リンカーアセンブリであり;
(式中、
M
1は、スクシンイミド環又は加水分解スクシンイミドであり;
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意の第2リンカーアセンブリ又は薬物単位への取付けに好適な反応部位を任意に含み;
添字m、q、及びrは、それぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであり、そして、
添字a及びbは、それぞれ0又は1であり、且つ、a+bの合計は1である)}又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)を有するリガンド-リンカー結合体もまた、本明細書中に提供される。
【0107】
リガンド-リンカー結合体が薬物単位の代わりに検出単位又は安定性単位に取付けられているいくつかの態様において、RGは、薬物単位の代わりに検出単位又は安定性単位との結合を形成することができる反応部位を含む反応基である。
【0108】
特定の選択される実施形態において、リガンド-リンカー結合体は、式:
【化22】
又はその塩によって表されるが、一方で、他の選択される実施形態において、リガンド-リンカー結合体は、式:
【化23】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表され、式中、Lは、抗体(Ab)であり、且つ、環、HE、M
1、BU、L
O、及びRGは、先に規定された意味を有する。さらに、(本明細書中に提供された結合体のいずれかに関する)Ab、M
1、BU、L
O、及びRGについて具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれは、これらのリガンド-リンカー結合体に対して同じように適切である。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態において、自己安定化リンカーアセンブリは、L
SSに関する構造によって表される代わりに、L
TTによって表され、式(III):
【化24】
又は医薬的に許容し得るその塩を有し、式中、波線は、任意の第2リンカーアセンブリ又は薬物単位の取付位置を示し、そして、式中、//は、リガンド単位への取付位置を示し;
式中、
M
1は、非加水分解若しくは加水分解スクシンイミドであるか、又はM
1は、Bとジラクタムを形成し(例えば、Bがスクシンイミド環と反応するとき形成されるジラクタム)、ここで、前記スクシンイミド又はジラクタムは、チオエーテル結合を介してリガンド単位に結合され;
V、Q、T、及びGは、-(C(R
9)(R
10))-から独立に選択され;
R1は、H又はC
1-3アルキルであり;
R
9及びR
10は、各出現ごとに、H又はC
1-3アルキルから独立に選択され;
Fは、C(E
1)(E
2){E
1及びE
2は、水素若しくは電子求引性基から独立に選択される}であるか、又はE
1とE
2は一緒に(=O)であり;
RSは、任意の第2リンカーアセンブリ又は薬物単位の成分への結合のための反応部位であり;
gは、0~5であり;
mは、0~5であり;
nは、0~5であり;
dは、0又は1であり;
xは、0~4であるが、但し、mが0であれば、xは、1~4であるものとし;そして、
Bは、塩基である。
【0110】
いくつかの態様において、それぞれのリガンド単位に取付けられた1~20個の薬物-リンカーがある。
【0111】
選択される実施形態において、リガンド-薬物結合体は、式:
【化25】
又は医薬的に許容し得るその塩を有する。
【0112】
選択される実施形態において、薬物-リンカーは、式:
【化26】
又は医薬的に許容し得るその塩を有する。
【0113】
選択される実施形態において、リンカーは、式:
【化27】
又は医薬的に許容し得るその塩を有する。
【0114】
選択される実施形態において、リガンド-リンカー結合体は、式:
【化28】
又は医薬的に許容し得るその塩を有する。
式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)又は医薬として許容されるその塩において:
Lは、存在するのであれば、リガンド単位であり;
L
Oは、任意の第2リンカーアセンブリであり;
RGは、存在するのであれば、薬物単位を取付けるのに好適なL
Oの末端の(反応部位を含む)反応基であり;
M
1は、存在するのであれば、非加水分解若しくは加水分解スクシンイミドであるか、又はM
1は、Bとジラクタムを形成し(例えば、塩基がスクシンイミド環と反応するとき形成されるジラクタム)、ここで、前記スクシンイミド又はジラクタムは、チオエーテル結合を介してリガンド単位に結合され;
V、Q、T、及びGは、-(C(R
9)(R
10))-から独立に選択され;
R1は、H又はC
1-3アルキルであり;
R
9及びR
10は、各出現ごとに、H又はC
1-3アルキルから独立に選択され;
Fは、C(E
1)(E
2){E
1及びE
2は、水素若しくは電子求引性基から独立に選択される}であるか、又はE
1とE
2は一緒に(=O)であり;
RSは、任意の第2リンカーアセンブリ又は薬物単位の成分への結合のための反応部位であり;
gは、0~5であり;
mは、0~5であり;
nは、0~5であり;
dは、0又は1であり;
xは、0~4であるが、但し、mが0であれば、xは、1~4であるものとし;
pは、存在するのであれば、1~20の範囲に及び、好ましくは1~12であり;そして、
Bは、塩基である。
【0115】
当然のことながら、(IIIa、IIIb、IIIc、及びIIIdを含めた)式(III)及び医薬として許容されるその塩に関して、電子求引性基は、F(例えば、E1、E2、若しくはE1とE2)又は反応部位RSで表される。例えば、dがゼロであるとき、又はE1及びE2が水素であるとき、反応部位は電子求引性基として機能するであろう。いくつかの態様において、dがゼロであるとき、RSは-C(=O)-である。いくつかの態様において、n、d、及びgがゼロであるか、又はm、n、d、及びgがゼロであり、且つ、RSが-C(=O)-である。
【0116】
リガンド-薬物結合体、薬物-リンカー、リンカー、又はリガンド-リンカー結合体が式(III)(又は場合によって、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、若しくは(IIId))、あるいは医薬として許容されるその塩によって表される代表的な実施形態としては、mがゼロであるもの;mがゼロであり、且つ、nがゼロ、1、2、又は3であるもの;xが1であるもの;xがゼロであり、且つ、nがゼロ、1、2、又は3であるもの;及びmがゼロであり、nがゼロであり、且つ、xが1であるものが挙げられる。代表的な実施形態としては、R9及びR10が水素である本明細書中に記載のものが挙げられる。代表的な実施形態としては、E1及びE2が、H、-CN、-NO2、-CX3{式中、Xはハロゲンである}から独立に選択されるもの、又はE1とE2が一緒に(=O)であるものが挙げられる。残りの置換基は、規定されているとおりである。
【0117】
リガンド-薬物結合体、薬物-リンカー、リンカー、又はリガンド-リンカー結合体が式(III)(又は場合によって、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、若しくは(IIId))、あるいは医薬として許容されるその塩によって表される代表的な実施形態としては:
(i)E
1及びE
2が、水素、-CN、-NO
2、-CX
3、及び-X{式中、Xはハロゲンである}から独立に選択されるもの、又はE
1とE
2が一緒に(=O)であるもの;
(ii)mがゼロであり、且つ、nがゼロ、1、2、又は3であるもの;
(iii)xが1であるもの;
(iv)xが4であるもの;
(v)xがゼロであり、且つ、nがゼロ、1、2、又は3であるもの;
(vi)mがゼロであり、nがゼロであり、且つ、xが1であるもの;
(vii)dが1であり、且つ、gが1~5であるもの;
(viii)dが1であり、且つ、gが2~5であるもの;
(ix)n、d、及びgがゼロであるもの;
(x)m、n、d、及びgがゼロであるもの;
(xi)RSが-C(=O)-であるもの;
(xii)E
1とE
2が一緒に(=O)であるもの;
(xiii)Bが、
【化29】
又は-n(R
3)(R
4){式中、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、H又はC
1-6アルキルから独立に選択され、且つ、eは0~4である}であるもの;
(xiv)Bが、-N(R
3)(R
4){式中、R
3及びR
4は、H又はC
1-6アルキルから独立に選択される}であるもの;
(xv)Bが、(xiii)又は(xiv)にあるようなものであり、且つ、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8が、H又はC
1-3アルキルから独立に選択されるもの;
(xvi)Bが、(xiii)又は(xiv))にあるようなものであり、且つ、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、及びR
8が、H又はメチルから独立に選択されるもの;
(xvii)Bが、(xiii)、(xiv)又は(xvi)にあるようなものであり、且つ、R
3及びR
4が水素であるもの;
(xviii)Bが、(xiii)、(xiv)又は(xvi)にあるようなものであり、且つ、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つが水素であるもの;
(xix)Bが、(xiii)、(xiv)又は(xvi)にあるようなものであり、且つ、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つが水素でないもの;
(xx)R
1、R
9、及びR
10が、H又はメチルから独立に選択されるもの;
(xxi)R
1、R
9、及びR
10が、水素であるもの;
(xxii)R
1、R
9、及びR
10が、H又はメチルから独立に選択されるもの;
(xxiii)開裂可能な単位が存在しているもの;
(xxiv)開裂可能な単位が、存在しており、且つ、式:
-(AA-AA)
1-6-{式中、AAは、各出現ごとに、アミノ酸から独立に選択される}を有するもの;
(xxv)開裂可能な単位が、存在しており、且つ、薬物単位に直接結合されるもの;
(xxvi)開裂可能な単位が、存在しており、且つ、開裂可能なペプチド、ジスルフィド、又はヒドラゾン結合を介して薬物単位に直接結合されもの;
(xxvii)開裂可能な単位が、存在しており、且つ、スペーサー及びストレッチャー単位が、不存在であるもの;
(xxviii)薬物が、オーリスタチンであるもの;
(xxix)M
1が、加水分解又は非加水分解スクシンイミドであるもの;
(xxx)pが、約4であるもの;
(xxxi)pが、約8であるもの;
(xxxii)自己安定化リンカー単位のチオ置換スクシンイミドの加水分解のt1/2が、pH7.4及び22℃にて、約10分~約2.5時間であるもの;
(xxxiii)自己安定化リンカー単位のチオ置換スクシンイミドの加水分解のt1/2が、pH7.4及び22℃にて、約10分~約1時間であるもの;
(xxxiv)自己安定化リンカー単位のチオ置換スクシンイミドの加水分解のt1/2が、pH7.4及び22℃にて、約10分~約30分であるもの;
(xxxv)リガンド単位が抗体であるもの;
(xxxvi)リガンド単位が抗体であり、そして、鎖間ジスルフィドのシステイン残基によってリンカー単位に取付けられるもの;
(xxxvii)リガンド単位がモノクローナル抗体であるもの;
及び(i)~(xxxvii)のあらゆる組合せ又は部分的組合せであるが、但し、前記あらゆる組合せや又は部分的組合せは、互いに矛盾しないものとする(例えば、xxxとxxxiは、約4と約8の両方であるはずがないので矛盾する)。例えば、選択される実施形態において、mがゼロであり、且つ、nが、ゼロ、1、2、又は3である。他の選択される実施形態において、mがゼロであり、nがゼロであり、且つ、xが1である。これらの選択される実施形態のいずれかにおいて、dが1であって、且つ、gが1~5であっても、又はdが1であって、且つ、gが2~5であってもよい。これらの実施形態のいずれかにおいて、(i)、(iii)又は(xi)~(xxxvi)の1若しくは複数が適用できる。
【0118】
リガンド-薬物結合体、薬物-リンカー、リンカー、又はリガンド-リンカー結合体が式(III)(又は場合によって、式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、若しくは(IIId))、あるいは医薬として許容されるその塩によって表される選択される実施形態のそれぞれにおいて、任意の第2リンカーアセンブリは、以下の式:
【化30】
{式中、-A-は、任意のストレッチャー単位であり、添字a’は、0又は1であり;-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は、0又は1であり;そして、-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は、0又は1である}で表され得る。
【0119】
リンカーが、式:
【化31】
{V、T、B、R
1、Q、F、G、m、x、n、d、及びgは、式(III)に関して規定したとおりであり、そして、RGは、第2リンカーアセンブリが不存在であるときには、薬物単位Dへの結合のための、又は第2リンカーアセンブリの成分に結合するための反応部位RSを含む反応基であり、ここで、前記第2リンカーアセンブリの第2リンカーは、以下の式
【化32】
(式中、-A-は、任意のストレッチャー単位であり、添字a’は、0又は1であり;-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は、0又は1であり;そして、-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は、0又は1である)を有する}又は医薬的に許容し得るその塩を有する選択される実施形態もまた、含まれる。
【0120】
更なる本発明の実施形態
リガンドとの結合前及び結合後の代表的な自己安定化リンカーアセンブリ又は医薬として許容されるその塩、そして、結合により形成されるチオ置換スクシンイミドの加水分解は、以下のとおりである:
【化33】
{式中、V、Q、T、m、n、x、及びBは、式(III)又はその他の選択される実施形態に関して先に規定されたとおりのものであり、cは、1~4であり、そして、R
11及びR
12は、各出現ごとに、H又はC
1-C
6アルキルから独立に選択される}。代表的な実施形態において、cは、1又は4である。加水分解チオスクシンイミドの「S」は、リガンド(例えば、抗体)の硫黄原子を表す。波線は、第2リンカーアセンブリ又は薬物単位への結合を示す。代表的な実施形態において、波線は、以下の第2リンカーアセンブリ:
【化34】
{式中、-A-は、任意のストレッチャー単位であり、添字a’は、0又は1であり;-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は、0又は1であり;そして、-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は、0又は1である}
への結合を示す。当然のことながら、2つ以上(例えば、1~20個)の薬物-リンカーが、各リガンドに取付けられてもよい。
【0121】
本発明のいくつかの態様において、自己安定化リンカーアセンブリは、マクロ環化を受けて、以下のようにジラクタムを形成することがあり、式中、Rは、結合体の残りの部分を表す:
【化35】
【0122】
第2リンカーアセンブリ
任意の第2リンカーは、さまざまな連結基を含み得る。具体的に挙げられた実施形態を含めて、本明細書中に提供されたそれぞれの実施形態において、L
Oは、存在し、そして、式:
【化36】
{式中、
-A-は、任意のストレッチャー単位であり、添字a’は、0又は1であり;
-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は、0又は1であり;そして、
-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は、0又は1である}を有し得る。
【0123】
任意の第2リンカーアセンブリは、放出可能リンカーアセンブリ、LRであってもよい。それらの実施形態において、wは1である。ある他の態様において、任意の第2リンカーアセンブリは、非放出リンカーアセンブリである。それらの実施形態において、wは0であり、そして、薬物の放出は、全タンパク質量分解経路(すなわち、非開裂経路)を介している。
【0124】
リガンド単位
本発明のいくつかの実施形態において、リガンド単位が存在している。リガンド単位(L-)とは、標的とする部分に特異的に結合する標的化剤である。リガンドは、特に細胞成分(細胞結合剤)又は着目の他の標的分子に結合する。いくつかの態様において、リガンド単位は、そのリガンド単位が相互作用する特定の標的細胞集団に薬物単位を送達するように働く。リガンドとしては、これだけに限定されるものではないが、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドが挙げられる。好適なリガンド単位としては、例えば、抗体、例えば、完全長抗体とその抗原結合フラグメント、インターフェロン、リンフォカイン、ホルモン、増殖因子とコロニー刺激因子、ビタミン、栄養輸送分子(これだけに限定されるものではないが、トランスフェリンなど)、又はその他の細胞結合性分子若しくは物質が挙げられる。いくつかの態様において、リガンドは、非抗体タンパク質標的化剤である。いくつかの態様において、D’が検出単位又は安定性単位であり、且つ、リガンド単位がタンパク質(例えば、非抗体タンパク質)であるリガンド-機能性剤が提供される。
【0125】
いくつかの態様において、リガンド単位は、リガンドのスルフヒドリル基を介して自己安定化塩基性単位のマレイミドとの結合を形成して、チオ置換スクシンイミドを形成する。そのスルフヒドリル基は、リガンドの自然の状態でリガンド上に存在している、例えば、天然に存在する残基であっても、化学修飾を介してリガンドに導入されてもよい。
【0126】
薬物結合場所が、結合の容易さ、薬物-リンカーの安定性、得られた生物結合体の生物物理特性に対する影響、及び試験管内で細胞毒性を含めた多くのパラメーターに影響し得ることは、生物結合体に関して観察された。薬物-リンカーの安定性に関して、リガンドへの薬物-リンカーの結合場所は、例えば、結合体化薬物-リンカーが、脱離反応を受ける能力、そして、その薬物リンカーについては、生物結合体のリガンドから反応生物結合体の環境内に存在している代替反応性チオール、例えば、血漿中では、アルブミン、遊離システイン、又はグルタチオン中の反応性チオールなどに移される能力に影響し得る。非自己安定化アルキルマレイミドが使用されるのであれば、薬物-リンカーの脱離反応とその後の移動に対して感受性を有する位置にてチオール残基に結合されるとき、本発明の自己安定化リンカーの使用は、特に有益である(例えば、マレイミド-カプロイル薬物リンカー)。こうした位置としては、例えば、鎖間ジスルフィド、並びに選択システイン操作部位が挙げられる。本発明の自己安定化リンカーの使用は、安定した結合と、それぞれのリガンド単位に複数の剤を取付ける能力を提供する。
【0127】
一態様において、リガンド単位は、化学修飾して1つ以上のスルフヒドリル基を導入可能な1つ以上のリジン残基を有する。リジンを修飾するのに使用可能な試薬としては、これだけに限定されるものではないが、N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート(SATA)及び塩酸2-イミノチオラン(Traut試薬)が挙げられる。
【0128】
別の実施形態において、リガンド単位は、化学修飾して1つ以上のスルフヒドリル基を有することが可能な1つ以上の炭水化物基を有することができる。
【0129】
別の実施形態において、リガンドは抗体であり、スルフヒドリル基は鎖間ジスルフィドの低減で作り出される。
従っていくつかの実施形態において、リンカー単位は低減している鎖間ジスルフィドのシステイン残基に結合される。
【0130】
別の実施形態において、スルフヒドリル基は、例えば、システイン残基の導入によって、抗体に化学的に導入される。従って、いくつかの実施形態において、リンカー単位は、導入されたシステイン残基に結合される。
【0131】
有用な非免疫反応性タンパク質、ポリペプチド又はペプチドリガンドとしては、これだけに限定されるものではないが、トランスフェリン、表皮成長因子(「EGF」)、ボンベシン、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、血小板由来成長因子、IL-2、IL-6、形質転換成長因子(「TGF」)(例えばTGF-α及びTGF-β)、ワクシニア成長因子(「VGF」)、インスリン及びインスリン様成長因子I及びII、ソマトスタチン、レクチン及び低密度リポタンパク質由来のアポタンパク質が挙げられる。
【0132】
特に好ましいリガンドは抗体である。有用なポリクローナル抗体は、免疫動物の血清由来の異種の抗体分子の集合である。有用なモノクローナル抗体は、特定の抗原決定因子(例えば、癌細胞抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、タンパク質、ペプチド、炭水化物、化学物質、核酸又はそのフラグメント)に対して同種の抗体の集合である。目的の抗原に対するモノクローナル抗体(mAb)は、培養物中の連続的な細胞株によって抗体分子を産生する当該技術分野で既知の任意の技術を用いて調製することができる。
【0133】
有用なモノクローナル抗体としては、これだけに限定されるものではないが、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、又はキメラヒト-マウス(又は他の種の)モノクローナル抗体が挙げられる。その抗体は、完全長抗体及びその抗原結合フラグメントを含んでいる。ヒトモノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の多くの技術のいずれかによって製造してよい(例えば、Teng et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 80:7308-7312; Kozbor et al., 1983, Immunology Today 4:72-79;及びOlsson et al., 1982, Meth. Enzymol. 92:3-16)。
【0134】
抗体は、機能的に活性なフラグメント、標的細胞(例えば、癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原)に免疫特異的に結合する抗体の誘導体又はアナログ、又は腫瘍細胞又はマトリックスに結合する他の抗体であることができる。この観点で、「機能的に活性な」とは、このフラグメント、誘導体又はアナログが、抗原を認識する抗-抗-イディオタイプの抗体を誘発可能であり、この抗体からこのフラグメント、誘導体又はアナログが誘導されることを意味する。具体的には、例示的な実施形態において、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性は、抗原を特異的に認識するCDR配列に対してC末端にあるフレームワーク及びCDR配列の欠失によって高めることができる。CDR配列が抗原に結合することを決定するために、CDR配列を含有する合成ペプチドを当該技術分野で既知の任意の結合アッセイ法によって抗原を用いた結合アッセイで使用することができる(例えば、BIAコアアッセイ)(例えば、Kabat et al., 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md; Kabat E et al., 1980, J. Immunology 125(3):961-969を参照)。
【0135】
他の有用な抗体としては、抗体フラグメント、例えば、これだけに限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fabフラグメント、Fv、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、scFv、scFv-FV、又は抗体と同じ特異性を有する任意の他の分子が挙げられる。
【0136】
さらに、標準的な組み換えDNA技術で使用するために製造可能なヒト部分及び非ヒト部分の両方を含む組み換え抗体(例えば、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体)は有用な抗体である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種から誘導されている分子(例えば、マウスモノクローナル由来の可変領域及びヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子)である(例えば、米国特許第4,816,567号;及び米国特許第4,816,397号を参照、これらはその全体が本明細書中に参考により組み込まれる)。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)とヒト免疫グロブリン分子のフレームワーク領域とを有する非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、米国特許第5,585,089号、その全体が本明細書中に参考により組み込まれる)。このようなキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野で既知の組み換えDNA技術、例えば、国際特許出願第WO87/02671号;欧州特許公報第0184187号;欧州特許公報第0171496号;欧州特許公報第0173494号;国際特許出願第WO86/01533号;米国特許第4,816,567号;欧州特許公報第012023号;Berter et al., 1988, Science 240:1041-1043; Liu et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443; Liu et al., 1987, J. Immunol. 139:3521-3526; Sun et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218; Nishimura et al., 1987, Cancer. Res. 47:999-1005; Wood et al., 1985, Nature 314:446-449;及びShaw et al., 1988, J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559; Morrison, 1985, Science 229:1202-1207; Oi et al., 1986, BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jones et al., 1986, Nature 321:552-525; Verhoeyan et al., 1988, Science 239:1534;及びBeidler et al., 1988, J. Immunol. 141:4053-4060(これらはそれぞれ全体が本明細書中に参考により組み込まれる)に記載の方法を用いて調製することができる。
【0137】
完全ヒト抗体は特に望ましく、内因性の免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現できるトランスジェニックマウスを用いて産生することができる。
【0138】
抗体としては、すなわち、任意の種類の分子の共有結合によって修飾されているが、この共有結合がその抗原結合の免疫特異性を保持しているアナログ及び誘導体が挙げられる。例えば、これだけに限定されるものではないが、抗体の誘導体及びアナログとしては、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、ホスホリル化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞抗体単位又は他のタンパク質に対する結合などによってさらに修飾されたものが挙げられる。多くの化学修飾のうち任意のものを既知の技術によって行なうことができる。この既知の技術としては、これだけに限定されるものではないが、特異的な化学開裂、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシン存在下での代謝合成などが挙げられる。さらに、アナログ又は誘導体は1つ以上の非天然アミノ酸を含有することができる。
【0139】
抗体は、Fcレセプターと相互作用するアミノ酸残基で修飾(例えば、置換、欠失又は付加)することができる。特に、抗体は、抗-FcドメインとFcRnレセプターとの間の相互作用に関与すると同定されているアミノ酸残基で修飾することができる(例えば、国際特許出願第WO97/34631(その全体が本明細書中に参考により組み込まれる)を参照)。
【0140】
癌細胞抗原に免疫特異的な抗体は、商業的に得られるか、又は当業者に既知の任意の方法(例えば、化学合成又は組み換え発現技術)によって製造することができる。例えば、GenBankデータベース又は類似のデータベース、文献刊行物、又は通常のクローニング及びシーケンシングから癌細胞抗原に免疫特異的な抗体をコードするヌクレオチド配列を得ることができる。
【0141】
特定の実施形態において、癌を処置するための既知の抗体を使用することができる。癌細胞抗原に免疫特異的な抗体は、商業的に得られるか、又は当業者に既知の任意の方法(例えば組み換え発現技術)によって製造することができる。例えば、GenBankデータベース又は類似のデータベース、文献刊行物、又は通常のクローニング及びシーケンシングから癌細胞抗原に免疫特異的な抗体コーディングヌクレオチド配列を得ることができる。
【0142】
別の特定の実施形態において、本発明の組成物及び方法に従って自己免疫疾患を処置するために抗体が使用される。自己免疫抗体の産生に関与する細胞の抗原に免疫特異的な抗体を任意の組織から得ることができ(例えば、大学の科学者又は企業)、又は当業者に既知の任意の方法(例えば、化学合成又は組み換え発現技術)によって製造することができる。別の実施形態において、自己免疫疾患を処置するための免疫特異的な有用な抗体としては、これだけに限定されるものではないが、以下の抗-核抗体が挙げられる;抗-dsDNA;抗-ssDNA、抗-カルジオリピン抗体IgM、IgG;抗-リン脂質抗体IgM、IgG;抗-SM抗体;抗-ミトコンドリア抗体;甲状腺抗体;ミクロソーム抗体;サイログロブリン抗体;抗-SCL-70抗体;抗-Jo抗体;抗-U1RNP抗体;抗-La/SSB抗体;抗-SSA;抗-SSB抗体;抗-壁細胞(perital cell)抗体;抗-ヒストン抗体;抗-RNP抗体;C-ANCA抗体;P-ANCA抗体;抗-セントロメア抗体;抗-Fibrillarin抗体及び抗-GBM抗体が挙げられる。
【0143】
特定の実施形態において、有用な抗体は、活性化したリンパ球で発現するレセプター又はレセプター結合体に結合することができる。レセプター又はレセプター結合体は、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーメンバー、TNFレセプタースーパーファミリーメンバー、インテグリン、サイトカインレセプター、ケモカインレセプター、主要組織適合性タンパク質、レクチン又は相補的な制御タンパク質を含むことができる。適切な免疫グロブリンスーパーファミリーメンバーの非限定例は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD28、CD30、CD70、CD79、CD90、CD152/CTLA-4、PD-I及びICOSである。適切なTNFレセプタースーパーファミリーメンバーの非限定例は、CD27、CD40、CD95/Fas、CD134/OX40、CD137/4-1BB、TNF-R1、TNFR-2、RANK、TACI、BCMA、オステオプロテグリン、Apo2/TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3、TRAIL-R4及びAPO-
3である。適切なインテグリンの非限定例は、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、CD29、CD41、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD103及びCD104である。適切なレクチンの非限定例は、C-型、S-型及びI-型レクチンである。
【0144】
薬物単位、D
薬物単位(D)は、本明細書中で細胞毒性剤、細胞増殖抑制剤、又は免疫抑制剤とも呼ばれる任意の細胞毒性薬物、細胞増殖抑制薬物、又は免疫抑制薬物であってもよい。薬物単位は、リンカー単位との結合を形成できる原子を有する。いくつかの実施形態において、薬物単位Dは、リンカー単位との結合を形成できる窒素原子を有する。他の実施形態において、薬物単位Dは、リンカー単位との結合を形成できるカルボン酸を有する。他の実施形態、薬物単位Dは、リンカー単位との結合を形成できるスルフヒドリル基がで分類する。他の実施形態において、薬物単位Dは、リンカー単位との結合を形成できるヒドロキシル基又はケトンを有する。
【0145】
有用な細胞毒性剤又は免疫抑制剤の種類は、例えば、抗チューブリン剤、オーリスタチン、DNA副溝結合剤、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、シス-プラチン、モノ(白金)、ビス(白金)及び三核白金錯体及びカルボプラチンなどの白金錯体)、アンスラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、抗代謝剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソ尿素、プラチノール、細孔形成化合物、プリン抗代謝剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド又は類似化合物を含む。有用な細胞毒性剤の種類に関する特に具体的な例としては、例えば、DNA副溝結合剤、DNAアルキル化剤、及びチューブリン阻害剤が挙げられる。代表的な細胞毒性剤としては、例えば、オーリスタチン、カンプトテシン、ズオカルマイシン、エトポサイド、メイタンシン、及びマイタンシノイド(例えば、DM1とDM4)、タキサン、ベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン、及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン)、及びビンカアルカロイドが挙げられる。選択ベンゾジアゼピン含有薬物は、WO2010/091150、WO2012/112708、WO2007/085930、及びWO2011/023883に記載されている。
【0146】
個々の細胞毒性剤又は免疫抑制剤は、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カリケアマイシン、カンプトセシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC-1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、デカルバジン、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エストロゲン、5-フルオルデオキシウリジン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メイタンシン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、パリトキシン、プリカマイシン、プロカルビジン、リゾキシン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6-チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP-16及びVM-26を含む。
【0147】
いくつかの典型的な実施形態において、好適な細胞毒性剤は、例えば、DNA副溝結合剤(例えばエンジイン及びレキシトロプシン、CBI化合物、米国特許第6,130,237号も参照)、デュオカルマイシン(米国特許出願公開第20060024317号を参照)、タキサン(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC-1065、SN-38、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレスタスタチン、ネトロプシン、エポチロンA及びB、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、ディスコデルモリド、エリューセロビン及びミトキサントロンを含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、薬物は、抗チューブリン剤である。抗チューブリン剤の例は、タキサン(例えばTaxol(登録商標)(パクリタキセル)、Taxotere(登録商標)(ドセタキセル))、T67(ツラリク)及びビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)を含むがそれらに限定されない。その他の抗チューブリン剤は、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類縁体、エポチロン(例えばエポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、コンブレスタスタチン、ディスコデルモリド及びエリューセロビンを含む。
【0149】
特定の実施形態では、細胞毒性剤は、別の種類の抗チューブリン剤であるメイタンシン又はメイタンシノイドである(ImmunoGen, Inc.;Chari et al., 1992, Cancer Res. 52:127-131及び米国特許番号8,163,888号も参照)。
【0150】
いくつかの実施形態において、薬物単位は、オーリスタチンである。オーリスタチンとしては、これだけに限定されるものではないが、AE、AFP、AEB、AEVB、MMAF、及びMMAEが挙げられる。オーリスタチンの合成及び構造は、米国特許出願公開第2003-0083263号、同第2005-0238649号、同第2005-0009751号、同第2009-0111756号、及び同第2011-0020343号;国際特許出願公開第WO04/010957号、同第WO02/088172号、及び米国特許第7,659,241号及び同第8,343,928号に記載されている;それらのそれぞれ、その全体をあらゆる目的のために参照により本明細書中に援用する。本発明の代表的なオーリスタチンは、チューブリンに結合し、所望の細胞株に対して細胞毒性又は細胞増殖抑制作用を発揮する。
【0151】
代表的なオーリスタチン薬物単位は、以下の式又は医薬的に許容し得るその塩を有し、式中、波線はリンカー単位への取付位置を示す:
【化37】
【0152】
いくつかの実施形態において、薬物は、(ベンゾジアゼピン含有薬物、例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン、及びオキサゾリジノベンゾジアゼピンを含めた)ベンゾジアゼピンである。
【0153】
PBDは、一般構造:
【化38】
を有するものであるが、それらの芳香族A環及びピロロC環の両方で置換基の数、種類及び位置、並びにC環の飽和度が異なっていてもよい。B環にはDNAのアルキル化を担う求電子中心である、N10-C11位に、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、又はカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかが存在する。公知の天然物のすべてが、キラルC11a位に(S)立体配置を有し、C環からA環に向かって見たときに、右回りのねじれをもたらす。これは、B型DNAの小溝に対してイソらせん性に適した三次元形状を与え、結合部位でぴったりと合うフィット性をもたらす。前記小溝に取付物を形成するPBDの能力は、それらがDNAプロセシングを妨げることを可能にするため、抗腫瘍剤としてのその使用を可能にする。これらの分子の生物学的活性が、2つのPBD単位を、フレキシブルなアルキレンリンカーを介して、それらのC8/C’-ヒドロキシル官能基によって一緒に結合させることにより、増強し得る。PBD二量体は、配列選択的なDNA損傷、例えば、その生物学的活性を主に担うと考えられる回帰性5’-Pu-GATC-Py-3’鎖間架橋などを形成すると考えられる。
【0154】
リガンド-薬物結合体が細胞株に対して細胞増殖抑制効果又は細胞毒性効果を発揮するかどうか判断するのに使用される多くの様々なアッセイが存在する。リガンド-薬物結合体が細胞株に対して細胞増殖抑制効果又は細胞毒性効果を発揮する判断するための一例において、チミジン取込みアッセイが使用される。例えば、96ウェルで平板培養された5,000細胞/ウェルの密度の細胞が、72時間培養され、その72時間のうちの最後の8時間、0.5μCiの3H-チミジンに晒され、そして、その培養細胞内への3H-チミジンの取込みがリガンド-薬物結合体の存在下又は不存在下で評価される。同じ条件下で培養されるが、リガンド-薬物結合体と接触させなかった同じ細胞株の細胞と比較して、培養細胞に3H-チミジン取込みの低減があった場合には、リガンド-薬物結合体が、細胞株に対する細胞増殖抑制効果又は細胞毒性の効果を有している。
【0155】
別の例では、リガンド-薬物結合体が細胞株に対して細胞増殖抑制効果又は細胞毒性効果を発揮するかどうかを判断するために、ニュートラルレッド、トリパンブルー、又はALAMAR(商標)ブルーなどの色素取込みを細胞で測定することによって、細胞生存率が評価される(例えば、Page et al., 1993, Intl. J. of Oncology 3:473-476を参照)。こうしたアッセイでは、細胞は色素を含む培地中でインキュベートされ、細胞は洗浄され、そして、(色素の細胞内取込みを反映する)残存色素が分光光度測定で計測される。タンパク結合色素であるスルホロダミンB(SRB)もまた、細胞毒性を評価するのに使用できる(Skehan et al., 1990, J. Nat’l Cancer Inst. 82:1107-12)。好ましいリガンド-薬物結合体としては、細胞株に対して1000ng/ml未満、好ましくは500ng/ml未満、より好ましくは100ng/ml未満、さらに最も好ましくは50未満あるいは10ng/ml未満のIC50値(50%の細胞殺傷をもたらすmAB濃度と規定される)を有するものが挙げられる。
【0156】
リンカーに薬物を連結するための一般的な手法は、当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第8,163,888号、同第7,659,241号、同第7,498,298号、米国特許出願公開第US20110256157号、並びに国際特許出願第WO2011023883号及び同第WO2005112919号を参照。
M1-スクシンイミド
【0157】
チオエーテル結合を介してリガンド単位に結合された非加水分解スクシンイミド(本明細書中ではスクシンイミド環とも呼ばれる)は、以下のとおり表され、式中、Rは、任意に薬物単位、検出単位又は安定性単位に結合されるリンカー単位の残りの部分を表す:
【化39】
【0158】
チオエーテル結合を介してリガンド単位に結合された非加水分解スクシンイミド(本明細書中ではスクシンイミド環とも呼ばれる)は、以下のとおり、2つの位置異性体のうちの1つとして表され、式中、Rは、任意に薬物単位、検出単位又は安定性単位に結合されるリンカー単位の残りの部分を表す:
【化40】
【0159】
非加水分解スクシンイミド及び加水分解スクシンイミドの表示に関して、各リガンドに結合された1~20個、好ましくは1~12個、1~10個又は1~8個の自己安定化リンカーが存在し得ることは、理解されるであろう。いくつかの態様において、各リガンドに結合された1~20個、好ましくは1~12個、1~10個又は1~8個の薬物-リンカーが存在する。さらに、リガンドが取付けられていない本明細書中に記載した結合体に関して、スクシンイミドは、(チオール又はリガンドと反応できる)マレイミドとして飽和形態で存在する。
【0160】
塩基性単位
式(I)、並びに自己安定化リンカー(L
SS)を含む他の式では、塩基性単位(BU)は、原則的に、隣接するスクシンイミド基を加水分解するための水酸化物イオン(又は水)攻撃を容易にする任意の塩基であり得る。従って、BUは、任意の「塩基」を表すが、典型的には、連結アミン又は含窒素複素環を含む基;塩基性単位の塩基として作用するアミン又は含窒素複素環である。代表的なアミンとしては、-N(R
3)(R
4){式中、R
3及びR
4は、H又はC
1-6アルキル、好ましくはH又はメチルから独立に選択される}、
【化41】
{式中、R
5、R
6、R
7、及びR
8は、各出現ごとに、水素又はC
1-6アルキル、好ましくはH又はメチルから独立に選択され、そして、eは0~4である}が挙げられる。上記の式では、波線は、連結基、典型的にアルキレンリンカー-(C(R
9)(R
10))
X-への取付位置を示し、式中、添字xは、0~6(又は1~6)の整数であるが、但し、xが0であれば、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2個以上の介在原子が存在するものとし、そして、R
9及びR
10は、H又はC
1-3アルキルから独立に選択される。いくつかの態様において、アルキレンリンカーは、-(CH
2)
X-であり、式中、添字xは、0~6(又は1~6)の整数であるが、但し、xが0であれば、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)又はジラクタムの窒素原子との間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。添字xは、好ましくは0~4、1~4、又は1~3、又は2~3、又は2~4であるが、しかし、0、1、2、3又は4であってもよい。従って、塩基性単位は、いくつかの実施形態において、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択されるであろうし、式中、xは、0~4、1~4、又は1~3、又は2~3、又は2~4の整数であるが、0、1、2、3又は4であってもよく、そして、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが取付けられた窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニル基を形成する。好ましい態様において、塩基性単位の塩基は、窒素含有塩基であろう。
【0161】
加水分解エンハンサー(HE)と電子求引性基
式(I)、並びに自己安定化リンカー(LSS)を含む他の式の加水分解エンハンサー(HE)は、原則的に、隣接するスクシンイミド基の加水分解を容易にすることができる任意の電子求引性基であり得る。加水分解は、隣接するスクシンイミド基を加水分解するため、又は隣接するスクシンイミド基を加水分解に対してより感受性にするための水酸化物イオン(又は水)攻撃を補助する塩基性単位(BU)によってさらに容易にされる。従って、HEは、反応中心から電子を引き抜く官能基を含み得る。代表的な電子求引性基としては、これだけに限定されるものではないが、-C(=O)、(=O)、-CN、-NO2、-CX3、-X、COOR、-CONR2、-COR、-COX、-SO2R、-SO2OR、-SO2NHR、-SO2NR2、-PO3R2、-P(O)(CH3)NHR、NO、-NR3
+、-CR=CR2、及び-C≡CRが挙げられ、式中、Xは、F、Br、Cl、又はIであり、Rは、各出現ごとに、水素及びC1-6アルキルから成る群から独立に選択される。代表的な電子求引性基としては、アリール基(例えば、フェニル)及び特定のヘテロアリール基(例えば、ピリジン)も挙げられる。用語「電子求引性基」としては、電子求引性基でさらに置換されたアリール又はヘテロアリールが挙げられる。
【0162】
いくつかの実施形態において、HEは、カルボニル、スルホニル又はホスホリル基を含む。いくつかの実施形態において、加水分解エンハンサー(HE)は、-CH2C(O)-、-C(O)-、-C(O)CH2-、-CH2CH2C(O)-、又は-CH2C(O)NH-である。
【0163】
HEが第2リンカーアセンブリ、薬物単位、安定性単位又は検出単位に直接連結されているいくつかの実施形態において、HEは、任意の第2リンカーアセンブリ又は薬物単位への取付けに好適な反応部位を含むであろう。いくつかの態様において、電子求引性基は、電子求引性基、そして、任意の第2次リンカーアセンブリ又は薬物単位への取付のための反応部位(例えば、-C(=O)-)の両方としてそれ自体が作用するであろう。
【0164】
任意の第2リンカーアセンブリ(L
O)
先に述べたように、任意の第2リンカーアセンブリは、式:
【化42】
{式中、-A-は、任意のストレッチャー単位であり、添字a’は、0又は1であり;-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は、0又は1であり;そして、-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は、0又は1である}で表され得る。
【0165】
薬物単位、検出単位、又は安定性単位をリガンド単位に連結する一般的な方法は、当該技術分野で知られており、当該技術分野で知られているリンカーは、自己安定化リンカーアセンブリと使用するために適合され得るか、又は本明細書中に記載した教示を使用して塩基性成分及び/又は電子求引性基を含むように修飾され得る。例えば、オーリスタチン及びメイタンシンADCは現在、癌治療のための臨床開発中である。モノメチルオーリスタチンEは、プロテアーゼ開裂可能なペプチドリンカーによって抗体に結合され、モノメチルオーリスタチンFは、マレイミドカプロン酸によって抗体に直接結合され、DM1は、ジスルフィドによって又はヘテロ二官能性SMCCリンカーによって直接結合され、そして、DM4は、ジスルフィドリンカーによって結合される。これらのリンカーシステムは、自己安定化リンカーアセンブリと使用するために適合され得るか、又は本明細書中に記載した教示を使用して塩基性成分及び/又は電子求引性基を含むように修飾され得、そして、使用されるリンカーシステムにより開裂可能なシステム又は非開裂のシステムによって薬物の放出を提供する。ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ペプチド結合、ヒドラジン結合、エステル結合、又はカルバマート結合が、薬物単位をリンカー単位に接続するのに使用できる結合のすべての例である。ストレッチャー単位、開裂可能単位、及びスペーサー単位が、以下にさらに詳細に記載されている。
【0166】
分岐リンカーもまた、本発明中で企図されている。従って、一態様において、ストレッチャー単位は、以下の式によって表されるとおり、リンカー単位内での分岐、例えば、2つ以上の薬物単位、検出単位又は安定性単位のそれぞれの自己安定化リンカーアセンブリへの取付けを可能にするような方法で設計されている:
【化43】
{式中、波線は、自己安定化リンカーアセンブリへの取付位置を示し、-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は、0又は1であり、uは、2~20(好ましくは2~10)であり;Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;そして、a’は、0又は1である}。各A’、W、Y、及びD’は、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じか又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、D’は薬物単位Dである。
【0167】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有する代表的なリガンド-機能性剤結合体又はリガンド-薬物結合体は、以下の式:
【化44】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)を有し、式中、L、M
1、HE、BU、D’、及び添字p、a、b、m、q、及びrのそれぞれは、式(I)及び式(I)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、Dは薬物単位であり、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、A、W、Y又はD’(又は場合によってD)への取付けに好適な反応部位を任意に含み;-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びD’(又は場合によってD)は、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。これらの選択される実施形態のそれぞれにおいて、環は、C
1-8アルキレン又はC
1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC
1-4アルキレン又はC
1-4ヘテロアルキレン)あるいはC
1-3アルキレン又はC
1-3ヘテロアルキレンである足場を表すことができる。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0168】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有するリガンド-機能性剤結合体は、以下の式:
【化45】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表されることができ、式中、L、M
1、HE、BU、D’、及び添字pのそれぞれは、式(I)及び式(I)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、A、W、Y又はD’への取付けに好適な反応部位を任意に含み、-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びD’は、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、a’は0であり、且つ、Aは存在していても、不存在であってもよい。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。いくつかの好ましい実施形態において、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択され、式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが付けている窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニルを形成するが、但し、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)の窒素原子の間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。いくつかのこうした態様において、Xは0~4であり、且つ、各R
aはC
1-6アルキルである。
【0169】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有するリガンド-薬物結合体は、以下の式:
【化46】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表されることができ、式中、L、M
1、HE、BU、及び添字pのそれぞれは、式(I)及び式(I)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、Dは薬物単位であり、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、A、W、Y又はDへの取付けに好適な反応部位を任意に含み、-W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びDは、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、a’は0であり、且つ、Aは存在していても、不存在であってもよい。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。いくつかの好ましい実施形態において、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択され、式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが付けている窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニルを形成するが、但し、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)の窒素原子の間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。いくつかのこうした態様において、Xは0~4であり、且つ、各R
aはC
1-6アルキルである。
【0170】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有する機能性剤-リンカー結合体は、以下の式:
【化47】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表されることができ、式中、HE、BU、D’、及び添字p、a、b、m、q、及びrのそれぞれは、式(I)及び式(I)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、A、W、Y又はD’への取付けに好適な反応部位を任意に含み;W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びD’は、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、a’は0であり、且つ、Aは存在していても、不存在であってもよい。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。いくつかの好ましい実施形態において、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択され、式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが付けている窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニルを形成するが、但し、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)の窒素原子の間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。いくつかのこうした態様において、Xは0~4であり、且つ、各R
aはC
1-6アルキルである。これらの選択される実施形態のそれぞれにおいて、環は、C
1-8アルキレン又はC
1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC
1-4アルキレン又はC
1-4ヘテロアルキレン)あるいはC
1-3アルキレン又はC
1-3ヘテロアルキレンである足場を表すことができる。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。これらの選択される実施形態のそれぞれにおいて、D’はDであってよい。
【0171】
いくつか態様において:
【化48】
は:
【化49】
によって表される。いくつかのこうした態様において、D’はDである。いくつかの好ましい実施形態において、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択され、式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが付けている窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニルを形成するが、但し、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)の窒素原子の間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。いくつかのこうした態様において、Xは0~4であり、且つ、各R
aはC
1-6アルキルである。
【0172】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有するリガンド-リンカー結合体は、以下の式:
【化50】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表されることができ、式中、L、M
1、HE、BU、及び添字p、a、b、m、q、及びrのそれぞれは、式(I)及び式(I)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、A、W、Y又はDへの取付けに好適な反応部位を任意に含み;RGは、薬物単位(又はその代わりに検出単位又は安定性単位)を取付けるのに好適である:
【化51】
の末端の反応基(反応部位を含む)であり、W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びDは、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、a’は0であり、且つ、Aは存在していても、不存在であってもよい。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。これらの選択される実施形態のそれぞれにおいて、環は、C
1-8アルキレン又はC
1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC
1-4アルキレン又はC
1-4ヘテロアルキレン)あるいはC
1-3アルキレン又はC
1-3ヘテロアルキレンである足場を表すことができる。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0173】
いくつか態様において:
【化52】
は:
【化53】
によって表される。いくつかの好ましい実施形態において、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択され、式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが付けている窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニルを形成するが、但し、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)の窒素原子の間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。いくつかのこうした態様において、Xは0~4であり、且つ、各R
aはC
1-6アルキルである。
【0174】
分岐又は非分岐リンカーは、以下の式:
【化54】
又はその塩(例えば、医薬的に許容され得る塩)によって表されることができ、式中、足場、HE、BU、及び添字a、b、m、q、及びrのそれぞれは、式(I)及び式(I)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、A、W、Y又はDへの取付けに好適な反応部位を任意に含み;RGは、薬物単位(又はその代わりに検出単位又は安定性単位)を取付けるのに好適である:
【化55】
の末端の反応基(反応部位を含む)であり、W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びDは、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、a’は0であり、且つ、Aは存在していても、不存在であってもよい。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。これらの選択される実施形態のそれぞれにおいて、環は、C
1-8アルキレン又はC
1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC
1-4アルキレン又はC
1-4ヘテロアルキレン)あるいはC
1-3アルキレン又はC
1-3ヘテロアルキレンである足場を表すことができる。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0175】
いくつか態様において:
【化56】
は:
【化57】
によって表される。いくつかの好ましい実施形態において、BUは、-(CH
2)
XNH
2、-(CH
2)
XNHR
a、及び-(CH
2)
XNR
a
2から成る群から選択され、式中、xは、0~4の整数であり、且つ、各R
aは独立に、C
1-6アルキル及びC
1-6ハロアルキルから成る群から選択されるか、又は2個のR
a基は、それらが付けている窒素と組合せられて、アゼチジニル、ピロリジニル又はピペリジニルを形成するが、但し、塩基性単位の塩基と、スクシンイミド(加水分解されているか、若しくは非加水分解)の窒素原子の間には、2個以上の介在原子が存在するものとする。いくつかのこうした態様において、Xは0~4であり、且つ、各R
aはC
1-6アルキルである。
【0176】
他のいくつかの態様において、分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有するリガンド-薬物結合体は、以下の式:
【化58】
又は医薬的に許容され得る塩を有し、式中、L、M
1、V、R
1、T、B、Q、F、G、及びRS、並びに添字p、m、x、n、d、及びgのそれぞれは、式(III)及び式(III)の選択される実施形態のいずれかに関して規定された意味を有し、Lはリガンド単位であり、W-は、任意の開裂可能単位であり、添字w’は0又は1であり;-Y-は、任意のスペーサー単位であり、添字y’は0又は1であり、Aは、ストレッチャー単位であり、A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;a’は0又は1であり;uは1~20(好ましくは1~10)であり、ここで、uが2~20であるとき、Aは存在し、そして、uが1であるとき、Aは存在していても、不存在であってもよい。各A’、W、Y、及びDは、同じであっても、異なっていてもよい。それぞれの開裂可能単位は、ストレッチャー単位上の同じ又は異なった官能基によってストレッチャー単位(A又はA’のいずれか)に取付けられる。いくつかの態様において、w’は1である。いくつかの態様において、w’は1であり、且つ、a’は0である。リンカーが分岐でない態様において、uは1であり、a’は0であり、且つ、Aは存在していても、不存在であってもよい。リンカーが分岐である他の態様において、uは2~20(好ましくは2~10)である。
【0177】
ストレッチャー単位、開裂可能単位、及びスペーサー単位は、以下により詳細に記載されている。
【0178】
ストレッチャー単位
ストレッチャー単位(-A-)は、存在しているとき、リンカー単位のフレームワークを延長して、自己安定化リンカーアセンブリと薬物単位の間により長い距離を提供する。ストレッチャー単位は、開裂可能単位が存在しているときには、自己安定化リンカーアセンブリを開裂可能単位に連結することができ、開裂可能単位が不存在であるが、スペーサー単位が存在しているときには、自己安定化リンカーアセンブリをスペーサー単位に連結することができ、そして、開裂可能単位とスペーサー単位の両方が不存在であるとき、自己安定化リンカーアセンブリを薬物単位に連結することができる。記載したように、ストレッチャー単位は、2つ以上の開裂可能単位、スペーサー単位、及び/又は薬物単位に取付けることができる。
【0179】
ストレッチャー単位はまた、ストレッチャー単位の成分によって、薬物-リンカーの生理化学特性を変更するようにも働く。いくつかの態様において、ストレッチャー単位は、薬物-リンカーの溶解性を高めるために加えられ、イオン基又は水溶性高分子などの1又は複数の溶解性促進基が加えられる。水溶性としては、典型的には、室温にて水中に可溶性のあらゆるセグメント又は高分子が挙げられるので、ポリ(エチレン)グリコール基、並びにポリエチレンイミンなどの他の重合体が挙げられる。
【0180】
ストレッチャー単位は、1又は複数のストレッチャー基を含んでいてもよい。代表的なストレッチャー基としては、例えば、-NH-C
1-C
10アルキレン-、-NH-C
1-C
10アルキレン-NH-C(O)-C
1-C
10アルキレン-、-NH-C
1-C
10アルキレン-C(O)-NH-C
1-C
10アルキレン-、-NH-(CH
2CH
2O)
S-、-NH-(CH
2CH
2O)
S-CH
2-、-NH-(CH
2CH
2NH)
S-(CH
2)
S、-NH-(CH
2CH
2NH)
S-(CH
2)
S-NH-C(O)-(CH
2)
S、-NH-(C
3-C
8カルボシクロ)-、-NH-(アリーレン-)-、及び-NH-(C
3-C
8ヘテロシクロ-)-が挙げられ式中、各sは独立に、1~10である。リンカー単位又は薬物単位の残りの部分への結合のためのカルボニル基を有する代表的なストレッチャー基は、以下のとおりである:
【化59】
{式中、R
13は、-C
1-C
10アルキレン-、-C
3-C
8カルボシクロ-、-アリーレン-、-C
1-C
30ヘテロアルキレン-、C
3-C
8ヘテロシクロ-、-C
1-C
10アルキレン-アリーレン-、-アリーレン-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8カルボシクロ)-、-(C
3-C
8カルボシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
10アルキレン-(C
3-C
8ヘテロシクロ)-、-(C
8-C
3ヘテロシクロ)-C
1-C
10アルキレン-、-(CH
2CH
2O)
1-10(-CH
2)
1-3、又は-(CH
2CH
2NH)
1-10(-CH
2)
1-3である}。いくつかの実施形態において、R
13は、-C
1-C
10アルキレン-、-C
1-C
30ヘテロアルキレン-である。いくつかの実施形態において、R
13は、-C
1-C
10アルキレン-、-(CH
2CH
2O)
1-10(-CH
2)
1-3、又は-(CH
2CH
2NH)
1-10(-CH
2)
1-3である。いくつかの実施形態において、R
13は、-C
1-C
10アルキレン-ポリエチレングリコール又はポリエチレンイミンである。
【0181】
非開裂薬物放出システムは、当該技術分野で公知であり、ストレッチャー単位及び/又はスペーサー単位として本発明の自己安定化リンカーアセンブリとの使用のために適合させられることができる。非開裂リンカーは、通常安定、且つ、共有結合の様式でのリガンドへの薬物単位の連結が可能であり、そして、実質的に、酸誘発型開裂、光誘発型開裂、ペプチダーゼ又はエステラーゼ誘発型開裂、及びジスルフィド結合開裂に対して耐性を有する。薬物は、タンパク分解性リガンド分解などの代替機構によって非開裂リンカーを含むリガンド薬物結合体から放出される。
【0182】
マイタンシノイド薬物とリガンドの間の非開裂リンカーを形成する架橋試薬は、当該技術分野で周知であり、本明細書中での使用のために適合させることができる。マイタンシノイド薬物とリガンドの間の非開裂リンカーを形成する代表的な架橋試薬には、マレイミド又はハロアセチルベースの部分が含まれる。それらとしては、N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、SMCCの“長鎖”類似体であるN-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、κ-マレイミドウンデカン酸N-スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ-マレイミド酪酸N-スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-(α-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル[AMAS]、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N-スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)-ブチレート(SMPB)、及びN-(p-マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、N-スクシンイミジル-4-(ヨードアセチル)-アミノベンゾエート(SIAB)、N-スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N-スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)及びN-スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。本発明の自己安定化リンカーアセンブリと組合せた使用のための追加のストレッチャー単位は、例えば、米国特許第8,142,784号に見ることができ、その全体をあらゆる目的のために参照により本明細書中に援用する。
【0183】
開裂可能単位
開裂可能単位(-W-)は、存在しているとき、スペーサー単位が不存在であるときには、自己安定化リンカーアセンブリをスペーサー単位に連結することがでるか、又はスペーサー単位が存在しているときには、自己安定化リンカーアセンブリを薬物単位に連結することができる。自己安定化リンカーアセンブリからスペーサー単位又は薬物単位への連結は、ストレッチャー単位が不存在であるときには、自己安定化リンカーアセンブリから直接連結されることができ、又はストレッチャー単位が存在するのであれば、ストレッチャー単位を介して連結されることができる。
【0184】
一部の実施形態において、開裂可能単位は、一方の末端で自己安定化リンカーアセンブリに直接結合され、そして、もう一方の末端で薬物単位に結合される。他の実施形態において、開裂可能単位は、一方の末端でストレッチャー単位に直接結合され、そして、もう一方の末端で薬物単位に結合される。また他の実施形態において、開裂可能単位は、一方の末端でストレッチャー単位に直接結合され、そして、もう一方の末端でスペーサー単位に結合される。またさらに他の実施形態において、開裂可能単位は、一方の末端で自己安定化リンカーアセンブリに直接結合され、そして、もう一方の末端でスペーサー単位に結合される。本明細書中に記載の、具体的に記載した自己安定化リンカーアセンブリのいずれも、これらの実施形態に使用できる。
【0185】
開裂可能単位は、薬物単位又はスペーサー単位と開裂可能な結合を形成することができる。開裂可能な結合を形成するための反応基としては、例えば、ジスルフィド結合を形成するためのスルフヒドリル基、ヒドラゾン結合を形成するためのアルデヒド、ケトン、又はヒドラジン基、ペプチド結合を形成するためのカルボキシル又はアミノ基、及びエステル結合を形成するためのカルボキシル又はヒドロキシ基を挙げることができる。
【0186】
開裂可能単位の性質には、大きなばらつきがあり得る。例えば、開裂可能リンカーとしては、ジスルフィド交換によって開裂可能であるジスルフィド含有リンカー、酸性pHで開裂可能である酸不安定リンカー、及びヒドロラーゼ、ペプチダーゼ、エステラーゼ、及びグルクロニダーゼ(glucoronidases)によって開裂可能であるリンカーが挙げられる。
【0187】
いくつかの態様において、開裂可能単位の構造及び配列は、その単位が標的部位に存在している酵素の作用によって開裂されるようなものである。他の態様において、開裂可能単位は、他の機構によって開裂可能であってもよい。開裂可能単位は、1又は複数の分割部位を含んでいてもよい。
【0188】
いくつかの実施形態において、開裂可能単位は、1つのアミノ酸又は1若しくは複数のアミノ酸の配列を含むであろう。開裂可能単位は、例えば、モノペプチド、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、ヘキサペプチド、ヘプタペプチド、オクタペプチド、ノナペプチド、デカペプチド、ウンデカペプチド又はドデカペプチド単位を含み得る。
【0189】
それぞれのアミノ酸は、天然のものであっても、非天然のものであっても、及び/又はD-若しくはL-異性体であってもよいが、もちろん、開裂可能な結合があることを条件とする。いくつかの実施形態において、開裂可能単位は、天然アミノ酸だけを含むであろう。いくつかの態様において、開裂可能単位は、連続した配列で1~12個のアミノ酸を含むであろう。
【0190】
いくつかの実施形態において、各アミノ酸は独立に、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、バリン、システイン、メチオニン、セレノシステイン、オルニチン、ペニシラミン、β-アラニン、アミノアルカン酸、アミノアルキン酸、アミノアルカン二酸、アミノ安息香酸、アミノヘテロシクロ-アルカン酸、ヘテロシクロ-カルボン酸、シトルリン、スタチン、ジアミノアルカン酸、及びそれらの誘導体から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、各アミノ酸は独立に、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、バリン、システイン、メチオニン、及びセレノシステインから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、各アミノ酸は独立に、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、及びバリンから成る群から選択される。いくつかの実施形態において、各アミノ酸は、タンパク構成アミノ酸又は非タンパク構成アミノ酸から選択される。
【0191】
別の実施形態において、各アミノ酸は独立に、以下のL-(天然)アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、トリプトファン、及びバリンから成る群から選択される。
【0192】
別の実施形態において、各アミノ酸は独立に、以下のこれらの天然アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、トリプトファン、及びバリンのD-異性体から成る群から選択される。
【0193】
いくつかの実施形態において、開裂可能単位と薬物単位との結合は、薬物単位(-D)を遊離するように、腫瘍関連プロテアーゼを含めた1若しくは複数の酵素によって酵素的に開裂されることができ、そして、前記1若しくは複数の酵素は、一実施形態において、薬物(D)を提供するための放出時に生体内でプロトン化される酵素である。
【0194】
有用な開裂可能単位は、特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼによる酵素的開裂に関するそれらの選択性を設計及び最適化され得る。一実施形態において、開裂可能単位と薬物単位又はスペーサー単位との間の連結(結合)は、その開裂がカテプシンB、C及びD、又はプラスミンプロテアーゼによって触媒されるものである。
【0195】
特定の実施形態において、開裂可能単位は、天然アミノ酸だけを含んでいてもよい。他の実施形態において、開裂可能単位は、非天然アミノ酸だけを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、開裂可能単位は、非天然アミノ酸に連結された天然アミノ酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、開裂可能単位は、天然アミノ酸のD-異性体に連結された天然アミノ酸を含んでいてもよい。
【0196】
代表的な開裂可能単位は、ジペプチド-Val-Cit-、-Phe-Lys-又は-Val-Ala-である。
【0197】
いくつかの実施形態において、開裂可能単位には、ペプチドが含まれ、さらに、1~12個のアミノ酸が含まれるであろう。いくつかのこうした実施形態において、ペプチドは薬物単位に直接結合され、そして、スペーサー単位は不存在であろう。いくつかのこうした実施形態において、ストレッチャー単位及びスペーサー単位は不存在であろう。一態様において、ペプチドはジペプチドであろう。
【0198】
いくつかの実施形態において、開裂可能単位-WW-は、-(-AA-)1-12-又は(-AA-AA-)1-6によって表され、式中、AAは、各出現ごとに、天然又は非天然アミノ酸から独立に選択される。一態様において、AAは、各出現ごとに、天然アミノ酸から独立に選択される。当業者は、アミノ酸が、例えば、アミノ酸内に存在している機能性単位、例えば、そのカルボン酸又はアミノ末端によって薬物単位又はスペーサー単位に典型的に連結されることを理解するであろう。
【0199】
いくつかのこうした態様において、リガンド薬物結合体及び薬物-リンカーは、以下の式又はその塩によって表され、式中、L、L
SS、L
TT、A、a’、AA、Y、y’、D、及びpは、本明細書中に記載した実施形態のいずれかで規定されたとおりであり、そして、fは1~12の整数である:
【化60】
【0200】
当然のことながら、上記の式には反映されないが、こうした式は、分岐リンカーを含むように、本明細書中の教示のとおりに修飾され得る、すなわち、複数の薬物単位がそれぞれの自己安定化リンカーアセンブリに取付けられ得る。
【0201】
他の態様において、開裂可能単位は、グルコロニド単位、好ましくは1つ又は2つのグルコロニド単位を含む。いくつかのこうした実施形態において、グルクロニド単位は、グリコシド結合(-O’-)を介して自己犠牲型スペーサーに連結された糖部分(Su)を含む:
-[Su-O’-Y]-
【0202】
グリコシド結合(-O’-)は、典型的には、ヒトによって開裂可能な結合であるリソソームのβ-グルクロニダーゼなどのβ-グルクロニダーゼ開裂部位である。
【0203】
いくつかの態様において、-[Su-O’-Y]-は、以下の式:
【化61】
によって表され、式中、Suは、糖部分であり、-O’-は、グリコシド結合であり;各Rは独立に、水素、ハロゲン、-CN、又は-NO
2であり;式中、窒素原子に隣接した波形の結合は、ストレッチャー単位又はリガンドへの共有結合による取付けを示し、そして、酸素に隣接した波形の結合は、スペーサー単位又は薬物単位への共有結合による取付けを示す。抗体への結合前及び結合後のグルコロニドを含む代表的なリンカー単位は、以下のとおりであり、式中、波線は、薬物単位又はスペーサー単位への取付けを示し、Abは抗体を表し、そして、Sは抗体の硫黄原子である。当然のことながら、2つ以上の自己安定化アセンブリが、各抗体に取付けられてもよい:
【化62】
【0204】
いくつかの実施形態において、開裂可能単位自体は、ジスルフィド又はヒンダードジスルフィドを形成するためにスペーサー単位又は薬物単位の硫黄原子との結合を形成することができる硫黄原子を含むであろう。開裂は、ジスルフィドの2つの硫黄原子の間で起こる。いくつかのこうした実施形態において、硫黄原子の1つが薬物単位から開裂され、そして、更なる放出機構がなければ、別の硫黄原子が薬物単位に取付けられたまま残る。硫黄原子を有する開裂可能単位を含むリンカー単位は、スペーサー単位又は薬物単位の硫黄原子との結合を形成して、ジスルフィド又はヒンダードジスルフィドを形成することができる。
【0205】
代表的なリンカーとしては、例えば、以下の薬物-リンカーが挙げられ、式中、波線は、リンカー単位の残りの部分への取付位置を示し、Dはマイタンシノイド薬物であり、そして、R
a及びR
bは独立に、H又はメチルから選択される:
【化63】
【0206】
さまざまなジスルフィドリンカーが当技術分野で知られており、そして、例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)、SMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、及びSPPを用いて形成できるものを含めて、本発明における使用のために適合させることができる(例えば、Thorpe et al., 1987, Cancer Res. 47:5924-5931; Wawrzynczak et al., In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C. W. Vogel ed., Oxford U. Press, 1987)を参照。同様に、米国特許第4,880,935号も参照)。
【0207】
いくつかの実施形態において、開裂可能なリンカーは、pH感受性であり、そして、例えば、リソソーム内で加水分解される酸不安定性リンカー(例:ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)が含まれるであろうし、使用することもできる(例えば、米国特許第5,122,368号;同第5,824,805号;同第5,622,929号;ubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83:67-123; Neville et al., 1989, Biol. Chem. 264:14653-14661を参照)。そのようなリンカーは、血液のような中性pH条件下では比較的安定であるが、リソソームのおよそのpHであるpH5.5または5.0以下では不安定である。
【0208】
いくつかの実施形態において、開裂可能単位は、薬物単位に直接結合され、スペーサー単位は不存在であり、そして、開裂可能単位は、開裂可能なペプチド結合、ジスルフィド結合、又はヒドラゾン結合を介して薬物単位に連結されるであろう。
【0209】
スペーサー単位
スペーサー単位(-Y-)は、存在しているとき、開裂可能単位を薬物単位に、ストレッチャー単位を薬物単位に、又は自己安定化リンカーアセンブリを薬物単位に連結する。ストレッチャー単位のように、スペーサー単位は、存在しているときには、リンカー単位のフレームワークを延長するように働くこともできる。スペーサー単位は、複数の自己犠牲又は非自己犠牲基を含み得る。いくつかの実施形態において、スペーサー単位は、1若しくは複数の自己犠牲基を含む。この場合、用語「自己犠牲基」は、共有結合によって2つの離間した化学部分を結合させて通常は安定な3つ組分子を形成させることができる二官能化学部分を指す。この部分は、第1の部分との結合が切断されると、第2の化学部分から自然に切り離される。他の実施形態において、スペーサー単位は、自己犠牲型ではない。これらの実施形態において、スペーサー単位の一部又は全部が、薬物単位に結合したままである。
【0210】
いくつかの実施形態において、-Y-は、自己犠牲基であり、自己犠牲基のメチレン炭素原子を介して開裂可能単位に連結され、カーボナート、カルバマート又はエーテル基を介して薬物単位に直接連結される。
【0211】
いくつかの実施形態において、-Yyは、p-アミノベンジルアルコール(PAB)単位であり、そのフェニレン部分は、-C
1-C
8アルキル、-O-(C
1-C
8アルキル)、-ハロゲン、-ニトロ又は-シアノで任意に置換される。別の実施形態において、-Yy-は、カルボナート基であってもよい。非置換PAB単位は、以下のとおりである:
【化64】
【0212】
自己犠牲基の他の例は、2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体及びオルト又はパラ-アミノベンジルアセタールなどのPAB基に電子的に類似の芳香族化合物(Hay et al., 1999, Bioorg. Med. Chem. Lett. 9:2237を参照)を含むがそれらに限定されない。置換及び非置換4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al., 1995, Chemistry Biology 2:223を参照)、適切に置換されたビシクロ[2.2.1]及びビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al., 1972, J. Amer. Chem. Soc. 94:5815を参照)及び2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry et al., 1990, J. Org. Chem. 55:5867を参照)など、アミド結合を加水分解すると環化するスペーサーを用いてよい。グリシンのa-位置換アミン含有薬物の脱離(Kingsbury et al., 1984, J. Med. Chem. 27:1447を参照)も、自己犠牲基の例である。
【0213】
米国特許出願公開第2005-0238649号に、他の好適なスペーサー単位が開示されている。この公開特許の開示を参照によって本明細書に援用する。
【0214】
本組成物及び方法で使用できる代表的なストレッチャー単位、開裂可能単位、スペーサー単位は、WO2004010957、WO2007/038658、WO2005/112919、米国特許第6,214,345号、同第7,659,241号、同第7,498,298号、同第7,968,687号、同第8,163,888号、及び米国特許出願公開第2009-0111756号、同第2009-0018086号、同第2009-0274713号に記載されており、それらのそれぞれを、その全体としてあらゆる目的のために、参照により本明細書中に援用する。
【0215】
結合体が薬物単位の代わりに安定性単位又は検出単位に結合される実施形態において、任意の第2リンカーアセンブリは、典型的に不存在であろう。第2リンカーアセンブリが存在している実施形態において、ストレッチャー単位は、一般に存在するが、開裂可能単位及びスペーサー単位は不存在であろう。ストレッチャー単位は、リンカー単位のフレームワークを延長して、自己安定化アセンブリと検出単位又は安定性単位との間により長い距離を提供する。こうした態様において、ストレッチャー単位は、検出単位又は安定性単位に自己安定化リンカーアセンブリを連結することを可能にする。
【0216】
薬物積込量
1リガンドあたりの自己安定化リンカーの数は、pによって表される。リンカーが分岐でない実施形態において、pは、リガンド分子(例えば、抗体)あたりの薬物-リンカー分子(又は検出-リンカー又は安定性-リンカー分子)の数を表す。文脈によって、pは、リガンドあたりの自己安定化リンカーの平均数(又はリンカーが分岐でない実施形態において、リガンド(例えば、抗体)あたりの薬物-リンカー分子(又は検出-リンカー又は安定性-リンカー分子)の平均数)を表すこともある。変数pは、1~20、典型的に1~12、1~10の範囲に及び、そして、それは、好ましくは1~8である。いくつかの好ましい実施形態において、pが1抗体あたりの自己安定化リンカーの平均数を表すとき、pは約2~約5の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、pは、約2、約4、又は約8である。いくつかの好ましい実施形態において、pが1抗体あたりの薬物-リンカー分子の平均数を表すとき、pは約2~約5の範囲に及ぶ。いくつかの実施形態において、pは、約2、約4、又は約8である。自己安定化リンカーあたりのD’の数は、uによって表される。uは、1~10の範囲に及ぶ。
【0217】
結合反応からの調製の際のリガンド単位あたりの薬物単位の平均数は、質量分析法、ELISAアッセイ、HIC及びHPLCなどの従来の手法によって特徴づけされ得る。pに関する薬物-リンカー-リガンド結合体の量的分布もまた、測定され得る。場合によっては、他の薬物積込量を有するリガンド-薬物結合体からの、pが特定の値を有する均質のリガンド-薬物結合体の分離、精製、及び特徴づけは、逆相HPLC法又は電気泳動などの手段によって達成され得る。
自己安定化リンカーアセンブリ(LSS又はLTT)と加水分解速度
【0218】
自己安定化リンカーアセンブリは、ストレッチャー単位が存在するのであれば、リガンド単位をストレッチャー単位に連結し、ストレッチャー単位が不存在であって、開裂可能単位が存在するのであれば、リガンド単位を開裂可能単位に連結し、ストレッチャー単位及び開裂可能単位が不存在であって、スペーサー単位が存在するのであれば、リガンド単位をスペーサー単位に連結し、又はストレッチャー単位、開裂可能単位、及びスペーサー単位が不存在であれば、リガンド単位をD’(例えば、薬物単位)に連結する。いくつかの実施形態において、ストレッチャー単位、開裂可能単位、及びスペーサー単位は不存在であって、自己安定化リンカーアセンブリはD’(例えば、薬物単位)に直接結合されるであろう。他の実施形態において、ストレッチャー単位、開裂可能単位、及びスペーサー単位の1若しくは複数が存在するであろう。
【0219】
リガンド-薬物結合体の一部が加水分解を受けるときの自己安定化リンカーのチオ置換スクシンイミドにおける加水分解の速度は、加水分解のt1/2を使用することで定量化できる。加水分解のt1/2とは、所定の条件(例えば、pH7.4及び22℃)下で着目の化合物の半分を加水分解する、すなわち、開環を受けるのにかかる時間を指す。本発明のいくつかの実施形態において、自己安定化リンカー単位のチオ置換スクシンイミドの加水分解のt1/2は、以下のアッセイ及び所定の条件を使用して、4時間未満、好ましくは3時間未満、より一層好ましくは、2時間未満、1時間未満、45分未満、30分未満、15分未満である。
【0220】
抗体システインへの結合後のマレイミド薬物リンカーの加水分解反応速度は、加水分解生成物が未加水分解結合体より18ダルトン大きい分子量を有するので、質量分析法によって測定できる。ヒトIgG1の鎖間ジスルフィドの還元は、軽鎖上の1つの還元システインと重鎖上の3つの還元システインを生じる。次に、自己安定化マレイミド薬物-リンカーは、pH7.4及び22℃で還元抗体と結合され、そして、結合軽鎖と重鎖を分離する逆相HPLCカラムを通して高解像度エレクトロスプレー質量分析計に導入される。結合体軽鎖と重鎖の質量が、これにより計測され、そして、標準的な質量分析データ処理ソフトウェア(例えば、MassLynx)によってピーク強度が決定される。経時的に一連の注入をおこなうことによって、原型の質量に相当するピークの消滅、未加水分解結合体及び加水分解結合体の質量に相当するピークの出現が観察でき、ピーク強度が決定され、そして、各時点で加水分解結合体のパーセンテージが計算された。加水分解パーセンテージを時間に対してプロットすることによって、(例えば、PRISMを使用して)t1/2のパラメーターを含む指数現象に関する標準的な方程式に当てはめられる曲線が作成される。
【0221】
いくつかの態様において、自己安定化リンカーは、自己安定化リンカーのマレイミド成分がリガンド単位への結合前に実質的に加水分解を受けないように設計されるであろう。
【0222】
本発明のいくつかの実施形態において、自己安定化リンカーのチオ置換スクシンイミドの加水分解のt1/2は、約7~約7.5(例えば、7.4)のpH及び約22℃の温度にて、約5又は約10分~約24時間、好ましくは約5又は約10分~約12時間、より好ましくは約5又は約10分~約5時間、より好ましくは約5又は10数~約2.5時間、より一層好ましくは約5又は約10分~約1時間、より一層好ましくは約5又は約10分~約30分、より一層好ましくは約5又は約10分~約20分、そして、より一層好ましくは約10分~約15分である。
【0223】
加水分解のt1/2が先に述べられているようないくつかの実施形態において、加水分解は完了する。完全な加水分解は、チオ置換スクシンイミドの90%が加水分解すれば達成されたと見なされる。好ましくは、95%以上、96%、97%、98%、99%又は100%加水分解が達成されるであろう。いくつかの実施形態において、加水分解反応は、ジラクタム形成と競合するので、完全には達成されないであろう。いくつかのこうした実施形態において、反応生成物の少なくとも90%は、加水分解チオ置換スクシンイミドリガンド-薬物結合体又はチオ置換ジラクタムリガンド-薬物結合体のいずれかの組合せになる。好ましくは反応生成物の少なくとも95%以上、96%、97%、98%、99%又は100%が加水分解チオ置換リガンド-薬物結合体又はチオ置換ジラクタムリガンド-薬物結合体のいずれかの組合せになる。加水分解のパーセンテージは、原型の質量に相当するピーク強度、未加水分解結合体及び加水分解結合体の質量に相当するピーク強度を測定し、そして、ピーク強度の合計を使用して、加水分解されたもののパーセンテージと未加水分解のもののパーセンテージを決定することによって、最終時点における結合体に関する質量分光学データから計算できる。
【0224】
加水分解のt1/2、及び/又は加水分解反応の効率によるリガンド-薬物結合体の特徴づけに加えて、リガンド-薬物結合体の安定性は、リガンド-薬物結合体が脱離反応を受ける能力、及び薬物-リンカーに関して、リガンド単位からリガンド-薬物結合体の環境内に存在している代替の反応チオールに移される能力によって特徴づけられる。いくつかの実施形態において、薬物-リンカーは、以下のアッセイ及び所定の条件下ではリガンドからの分離を示さないか、又は実質的に示さない。句「実質的にリガンドからの分離がない」は、サンプル中の薬物-リンカーのうちの40%未満、好ましくは20%未満、より一層好ましくは10%未満、又はより一層好ましくは5%未満又は2%未満しかリガンドから分離しないのであれば達成されたと見なされる。
【0225】
抗体からの酵素開裂リンカーを含む薬物-リンカーの排除は、以下の方法によって生体外血漿で評価できる。結合体は、滅菌血漿中に入れられ、そして、37℃でインキュベートされる。インキュベーション開始時と、1時間~1週間以上の異なった時点において、アリコートが取り出され-80℃で冷凍される。前記の時点の完了時に、サンプルが、プロテインA親和性樹脂上を通過させて、抗体を捕捉させ、そして、その樹脂がバッファーで洗浄され、次に、適当な酵素(例えば、ペプチドベースの開裂可能リンカーにはパパイン又はプロテイナーゼK)を用いた処理によって捕捉抗体から薬物を放出させる。次に、放出された薬物は、標準的なLC-MS法によって定量化され、そして、各時点で計測された薬物の量を、インキュベーション前のアリコートについて計測した薬物の量で割って、各時点で抗体に結合されていた薬物残存のパーセンテージを決定した。このアッセイの精度は、それから放出される薬物が、その質量差の効果によって試験薬物-リンカーから放出された薬物とLC-MSアッセイで独立に検出されるように、同じ薬物-リンカーの同位体標識バージョンを使用して調製された内部標準抗体-薬物結合体を含むことによって改善できる。この同位体標識内部標準抗体-薬物結合体は、プロテインA捕捉ステップの直前に等しい量で各サンプルに追加される。その後、試験ADCから放出された薬物の定量化は、従来のLC-MS技術によって、内部標準からのシグナルに対してレシオメトリック的に実施される。
【0226】
抗体(又は他のリガンド)からのマレイミド薬物-リンカーの排除を評価するための代替法は、親結合体から排除されるすべてのマレイミドと反応するであろう大過剰の小分子チオール(例えば、N-アセチルシステイン、NAC)の存在下でわずかに高いpH(例えば、pH8.0)にてバッファー(例えば、リン酸緩衝食塩水)中で結合体をインキュベートすることである。LC-MSアッセイは、NACに結合された薬物-リンカー又は親リガンド結合体を検出し、そして、定量化するために実施され得る。後者の場合では、リガンド結合体対非結合リガンドの比が計測でき、そして、リガンド結合体が安定していれば、期間を通じて一定に保たれるであろう。追加の方法は、実施例の項に提供される。
【0227】
癌の処置
リガンド-薬物結合体は、腫瘍細胞又は癌細胞の増加を阻害し、腫瘍又は癌細胞のアポトーシスを生じさせ、又は患者の癌を処置するのに有用である。リガンド-薬物結合体を、癌の処置のための種々の設定に従って使用することができる。リガンド-薬物結合体を使用して腫瘍細胞又は癌細胞に対する薬物を送達することができる。理論によって束縛されないが、一実施形態において、リガンド-薬物結合体のリガンド単位は、癌細胞又は腫瘍細胞に関連する抗原に結合するか、又は会合し、リガンド-薬物結合体をレセプター媒介性エンドサイトーシス又は他の取り込み機構を介して腫瘍細胞又は癌細胞内部に入れる(取り込む)ことができる。抗原を腫瘍細胞又は癌細胞に結合することができるか、又は抗原は、腫瘍細胞又は癌細胞と関連する細胞外マトリックスタンパク質であることができる。いったん細胞内に入ると、リンカーシステムの成分により、開裂可能又は非開裂機構を介して、薬物が細胞内で放出される。代替的な実施形態において、薬物又は薬物単位は、腫瘍細胞又は癌細胞の外側でリガンド-薬物結合体から開裂し、次いで薬物又は薬物単位が細胞に浸透する。
【0228】
リガンド-薬物結合体は、結合特異的腫瘍又は癌薬物の標的化を提供し、これにより薬物の全身毒性を低減する。いくつかの実施形態において、リンカー単位は、血液中でのリガンド-薬物結合体を安定化させ、さらに、いったん細胞内で薬物を遊離させる。
【0229】
一実施形態において、リガンド単位は腫瘍細胞又は癌細胞に結合する。
【0230】
別の実施形態において、リガンド単位は、腫瘍細胞又は癌細胞の表面にある腫瘍細胞抗原又は癌細胞抗原に結合する。
【0231】
別の実施形態において、リガンド単位は、腫瘍細胞又は癌細胞に関連する細胞外マトリックスタンパク質である腫瘍細胞抗原又は癌細胞抗原に結合する。
【0232】
特定の腫瘍細胞又は癌細胞に対するリガンド単位の特異性は、最も有効に処置される腫瘍又は癌を決定するのに重要である場合がある。例えば、BR96リガンド単位を有するリガンド薬物結合体は、抗原陽性の癌腫(肺癌、乳癌、直腸癌、卵巣癌及び膵臓癌を含む)を処置するのに有用であり得る。抗-CD30又は抗-CD70結合リガンド単位を有するリガンド-薬物結合体は、悪性血液疾患を処置するのに有用であり得る。
【0233】
リガンド薬物結合体で処置可能な他の特定の種類の癌としては、これだけに限定されるものではないが、表1に開示されるものが挙げられる。
【0234】
表1
固体腫瘍、これだけに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:
線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨性肉腫、骨原性肉種、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、直腸癌、結腸直腸癌、腎臓癌、膵癌、骨癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、食道癌(esophogeal cancer)、胃癌、口腔癌、鼻癌、喉頭癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、膀胱腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌腫、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、小細胞肺癌腫、膀胱癌、肺癌、上皮癌、神経膠腫、多形性膠芽腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起細胞腫、髄膜腫、皮膚癌、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫
血液感染性の癌、これだけに限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:
急性リンパ性白血病「ALL」、急性リンパ性B細胞白血病、急性リンパ性T細胞白血病、急性骨髄芽球性白血病「AML」、急性前骨髄性白血病「APL」、急性単芽球性白血病、急性赤白血病、急性巨核芽球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性非リンパ性白血病(acute nonlymphocyctic leukemia)、急性未分化白血病、慢性骨髄性白血病「CML」、慢性リンパ球性白血病「CLL」、ヘアリー細胞白血病、多発性骨髄腫
急性白血病及び慢性白血病:
リンパ芽細胞白血病、骨髄性(myelogenous)白血病、リンパ球性白血病、骨髄性(myelocytic)白血病
リンパ腫:
ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、真性赤血球増加症
【0235】
癌に対する複数の治療様式
リガンド-薬物結合体を投与することによって、癌(限定されないが、腫瘍、転移が挙げられる)又は制御されない細胞増殖によって特徴付けられる他の疾患又は障害を処置又は予防することができる。
【0236】
他の実施形態において、必要な患者に有効量のリガンド-薬物結合体及び化学療法剤を投与する工程を含む、癌を処置するための方法が提供される。一実施形態において、化学療法剤は、難治性であることがわかっていない癌を処置するものである。別の実施形態において、化学療法剤は、難治性であることがわかっている癌を処置するものである。癌の処置として手術も受ける患者にリガンド-薬物結合体を投与することができる。
【0237】
いくつかの実施形態において、患者は、さらなる治療(例えば、放射線治療)も受ける。特定の実施形態において、リガンド-薬物結合体は、化学療法剤又は放射線治療と同時に投与される。別の特定的な実施形態において、化学療法剤又は放射線治療は、リガンド-薬物結合体の投与前又は投与後に投与される。
【0238】
化学療法剤を一連の期間にわたって投与することができる。(単数若しくは複数の)こうした標準的な治療的化学療法剤の組合せである化学療法剤の任意の1つ又は組合せを投与することができる。
【0239】
さらに、化学療法又は放射線治療が処置される被検体にとって毒性が高すぎる場合(例えば、受け入れがたいか又は耐えられない副作用が生じる場合)に、化学療法又は放射線治療の代替法として、リガンド-薬物結合体を用いて癌を処置する方法が提供される。処置される動物は、場合によって、その処置が受け入れられるか又は耐えられるかに依存して、手術、放射線治療又は化学療法などの別の癌処置法によって処置することができる。
【0240】
自己免疫性疾患の処置
リガンド-薬物結合体は、自己免疫疾患を引き起こす細胞を殺傷するか、複製を阻害するか、又は自己免疫疾患を処置するのに有用である。患者の自己免疫疾患を処置するために種々の設定にしたがってリガンド-薬物結合体を使用することができる。リガンド-薬物結合体を使用して薬物を標的細胞に送達することができる。理論によって束縛されないが、一実施形態において、薬物-リンカー-リガンド結合体は標的細胞の表面にある抗原と会合し、次いで、リガンド-薬物結合体を、レセプター媒介性エンドサイトーシスを介して標的細胞内部に入れる。細胞内に入ると、リンカー単位内の1つ以上の特異的なペプチド配列が開裂し、薬物又は薬物単位を放出する。次いで、放出された薬物又は薬物単位は細胞質ゾル内に自由に移動し、細胞毒性活性又は細胞増殖抑制活性を誘発する。代替的な実施形態において、薬物は標的細胞の外側でリガンド-薬物結合体から開裂し、次いで薬物又は薬物単位が細胞に浸透する。
【0241】
一実施形態において、リガンド単位は自己免疫性抗原に結合する。一実施形態において、この抗原は、自己免疫性状態に関与する細胞の表面にある。
【0242】
別の実施形態において、リガンド単位は、細胞の表面にある自己免疫性抗原に結合する。
【0243】
一実施形態において、リガンド単位は、自己免疫疾患状態に関連する活性化したリンパ球に結合する。
【0244】
さらなる実施形態において、リガンド-薬物結合体は、特定の自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を産生する細胞を殺傷するか、又は増加を阻害する。
【0245】
リガンド-薬物結合体で処置可能な他の特定の種類の自己免疫疾患としては、これだけに限定されるものではないが、Th2リンパ球に関連する障害(例えば、アトピー性皮膚炎、アトピー性ぜんそく、鼻結膜炎、アレルギー性鼻炎、Omenn症候群、全身性硬化症及び移植片対宿主病);Th1リンパ球に関連する障害(例えば、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、Sjorgren症候群、橋本病、Grave病、原発性胆汁性肝硬変、Wegener肉芽腫症及び結核);活性化したBリンパ球に関連する障害(例えば、全身エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチ及びI型糖尿病);及び表2に開示されているものが挙げられる。
表2
活動性慢性肝炎、Addison病、アレルギー性肺胞炎、アレルギー反応、アレルギー性鼻炎、Alport症候群、アナフィラキシー(Anaphlaxis)、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、関節炎、回虫症、アスペルギルス症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、アトピー性鼻炎、Behcet病、鳥飼育者肺、気管支ぜんそく、Caplan症候群、心筋ミオパシー、セリアック病、Chagas病、慢性糸球体腎炎、Cogan症候群、寒冷凝集素症、先天性風疹感染、CREST症候群、クローン病、クリオグロブリン血症、Cushing症候群、皮膚筋炎、円板状狼瘡、Dressier症候群、Eaton-Lambert症候群、エコーウイルス感染、脳脊髄炎、内分泌眼症、エプスタインバーウイルス感染、ウマの吐き気(Equine Heaves)、エリテマトーデス、Evan症候群、Felty症候群、線維筋痛、Fuch毛様体炎、胃の萎縮症、消化管アレルギー、巨細胞動脈炎、糸球体腎炎、Goodpasture症候群、移植片対宿主病、Graves病、Guillain-Barre病、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホシェーンライン紫斑病、特発性副腎萎縮、特発性肺繊維症、IgAネフロパシー、炎症性大腸炎、インスリン依存性糖尿病、若年性関節炎、若年性糖尿病(I型)、Lambert-Eaton症候群、蹄葉炎、扁平苔癬、ルポイド肝炎、狼瘡、リンパ球減少症、Meniere病、混合結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、悪性貧血、多内分泌腺症候群、初老期認知症、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、反復流産、Reiter症候群、リウマチ熱、関節リウマチ、Sampter症候群、住血吸虫症、Schmidt症候群、強皮症、Shulman症候群、Sjorgen症候群、Stiff-Man症候群、交感性眼炎、全身性狼瘡エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎、甲状腺炎、血小板減少症、甲状腺機能亢進症、中毒性表皮剥離症、B型インスリン耐性、I型糖尿病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、白斑、Waldenstromマクログロブリン血症、Wegener肉芽腫症
【0246】
自己免疫性疾患の複数の薬物治療
必要な患者に有効量のリガンド-薬物結合体及び自己免疫疾患を処置するための既知の別の治療薬剤を投与する工程を含む、自己免疫疾患を処置する方法も開示される。
【0247】
感染症の処置
リガンド-薬物結合体は、感染症を引き起こす細胞を殺傷するか、増加を阻害するか、又は感染症を処置するのに有用である。患者の感染症を処置するために種々の設定にしたがってリガンド-薬物結合体を使用することができる。リガンド-薬物結合体を使用して薬物を標的細胞に送達することができる。一実施形態において、リガンド単位は感染症の細胞に結合する。
【0248】
一実施形態において、この結合体は、特定の感染症を引き起こす細胞を殺傷するか、又は増加を阻害する。
【0249】
リガンド-薬物結合体で処置可能な他の特定の種類の感染症としては、これだけに限定されるものではないが、表3に開示されたものが挙げられる。
表3
細菌性疾患:
ジフテリア、百日咳、潜在性菌血、尿路感染症、胃腸炎、蜂巣炎、喉頭蓋炎、気管炎、腺肥大、咽後膿瘍、膿痂疹、膿瘡、肺炎、心内膜炎、敗血症性関節炎、肺炎球菌症、腹膜炎、菌血症、髄膜炎、急性化膿性髄膜炎、尿道炎、子宮頸管炎、直腸炎、咽頭炎、卵管炎、副睾丸炎、淋疾、梅毒、リステリア症、炭疽菌、ノカルジア症、サルモネラ属、腸チフス、赤痢、結膜炎、副鼻腔炎、ブルセラ病、ツラレミア(Tullaremia)、コレラ、腺ペスト、破傷風、壊死性腸炎、放線菌症、混合嫌気性感染症、梅毒、回帰熱、レプトスピラ病、ライム病、ネズミ咬合熱、結核、リンパ節炎、ハンセン病、クラミジア、Chlamydial肺炎、トラコーマ、封入体結膜炎
全身性真菌症:
ヒストプラスマ症、コクシジオイデス症、分芽菌症、スポロトリクム症、クリプトコックス症、全身性カンジダ症、アスペルギルス症、ムコール菌症、菌腫、クロモミコーシス
リケッチア病:
チフス、ロッキー山紅斑熱、エーリキア症、東部地方のダニ媒介性リケッチア症(Eastern Tick-Borne Rickettsioses)、リケッチア痘瘡、Q熱、バルトネラ症
寄生虫病:
マラリア、バベシア症、アフリカ眠り病、シャガス病、リーシュマニア症、ダムダム熱、トキソプラズマ症、髄膜脳炎、角膜炎、アメーバ症、ジアルジア鞭毛虫症、クリプトスポリジウム症、等胞子症、シクロスポリア症、微胞子虫症、回虫症、鞭虫感染症、鉤虫感染症、蟯虫感染症、眼幼虫移行症、旋毛虫病、メジナチュウ病、リンパ管フィラリア症、ロア糸状虫症、糸状虫症、イヌ糸状虫症、住血吸虫症、沼地皮膚症、肺吸虫症、肝吸虫、肝蛭症、肥大吸虫症、オピストルキス症、条虫感染症、水胞体疾患、多包虫症
ウイルス性疾患:
麻疹、亜急性硬化性全脳炎、風邪、おたふく風邪、風疹、バラ疹、第5病、水痘、呼吸器合胞体ウイルス感染、クループ、細気管支炎、感染性単核球症、ポリオ、ヘルパンギナ、手足口病、Bornholm病、性器ヘルペス、陰部疣贅、無菌性髄膜炎、心筋炎、心膜炎、胃腸炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、Reye症候群、川崎症候群、インフルエンザ、気管支炎、ウイルス性の「歩く」肺炎、急性熱性呼吸器疾患、急性咽頭結膜熱、流行性角結膜炎、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)、帯状疱疹、巨細胞封入体症、狂犬病、進行性多病巣性白質脳障害、クル、致死性家族性不眠症、クロイツフェルトヤコブ病、Gerstmann-Straussler-Scheinker病、熱帯性痙性不全対麻痺、西部ウマ脳炎、カリフォルニア脳炎、セントルイス脳炎、黄熱病、デング熱、リンパ球性脈絡髄膜炎、ラッサ熱、出血熱、ハンタウイルス肺症候群、マールブルグウイルス感染、エボラウイルス感染、天然痘
【0250】
感染症の複数の薬物治療
必要な患者にリガンド-薬物結合体及び抗感染症薬剤である別の治療薬剤を投与する工程を含む、感染症を処置する方法が開示される。
【0251】
組成物及び投与方法
本発明は、本明細書中に記載したリガンド-薬物結合体と医薬的に許容し得る担体を含む医薬組成物を提供する。リガンド-薬物結合体は、リガンド単位が結合する抗原の発現に関連している疾患の処置のために、化合物が患者に投与されるのを可能にする任意の形態であってよい。例えば、結合体は、液体又は固体の形態であってよい。好ましい投与経路は非経口である。非経口投与としては、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は輸液技術が挙げられる。一態様において、組成物を非経口的に投与する。一態様において、化合物を静脈内に投与する。
【0252】
本発明はまた、本明細書中に記載したリガンド-機能性剤結合体と医薬的に許容し得る担体を含む医薬組成物も提供する。リガンド-薬物結合体は、疾患の処置のため又は診断目的のために、化合物が患者に投与されるのを可能にする任意の形態であってよい。
【0253】
医薬品組成物は、その組成物を患者に投与したとき化合物を生物利用可能にすることができるように調合してよい。組成物は、1つ以上の用量単位の形をとってよく、例えば、錠剤が一回分の用量単位であってよい。
【0254】
本医薬品組成物を調製する際に用いられる物質は、用いられる量で非毒性であってよい。本医薬品組成物中の活性成分(単数又は複数)の最適用量がさまざまな因子に依存することは、当業者には自明である。関連する因子は、動物の種類(例えばヒト)、化合物の特定の形、投与方法及び使用される組成物を含むがそれらに限定されない。
【0255】
本組成物は、液体の形であってよい。液体は、注射による投薬に有用なことがある。注射投与用の組成物では、界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝液、安定剤及び等張剤の1つ以上も含んでよい。
【0256】
本液体組成物は、溶液、懸濁液又は他の類似形であろうと、以下、すなわち、注射用蒸留水、食塩水、好ましくは生理的食塩水、リンゲル液、等張食塩水、溶媒又は懸濁媒として働いてよい合成モノ又はジグリセリドなどの不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、シクロデキストリン、プロピレングリコール又はその他の溶媒などの無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;アミノ酸、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤;非イオン性界面活性剤、ポリオールなどの洗浄剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの弾力性調節用の剤の1つ以上も含んでよい。非経口組成物は、ガラス、プラスチック又はその他の材料で作られたアンプル、使い捨て注射器又は多回用量バイアル中に封入してよい。生理食塩水がアジュバントの例である。注射用組成物は、好ましくは無菌とする。
【0257】
特定の障害又は病状の治療において有効な結合体の量は、障害又は病状の性質に依存し、標準的な臨床技法によって決定してよい。さらに、任意選択として、インビトロ又はインビボアッセイを使用して最適用量範囲を特定する助けとしてよい。本組成物中に使用される精確な用量は、投与経路及び疾患又は障害の重さにも依存し、担当医及び各患者の状況の判断による必要がある。
【0258】
本組成物は、好適な用量が得られるように化合物の有効な量を含む。通常、この量は、少なくとも組成物の約0.01重量%の化合物である。
【0259】
静脈内投与の場合、本組成物は、動物の体重のkgあたり約0.01から約100mgのリガンド-薬物結合体を含んでよい。一態様では、本組成物は、動物の体重のkgあたり約1から約100mgのリガンド-薬物結合体を含んでよい。別の態様では、投与される量は、約0.1から約25mg/kg体重の化合物の範囲とする。
【0260】
総体として、通常、患者に投与する化合物の用量は、約0.01mg/kg~約100mg/kg対象体重である。いくつかの実施形態において、投与する用量は、約0.01mg/kg~約15mg/kg対象体重の間である。いくつかの実施形態において、投与する用量は、約0.1mg/kg~約15mg/kg対象体重の間である。いくつかの実施形態において、投与する用量は、約0.1mg/kg~約20mg/kg対象体重の間である。いくつかの実施形態において、投与する用量は、約0.1mg/kg~約5mg/kg又は約0.1mg/kg~約10mg/kg対象体重の間である。いくつかの実施形態において、投与する用量は、約1mg/kg~約15mg/kg対象体重の間である。いくつかの実施形態において、投与する用量は、約1mg/kg~約10mg/kg対象体重の間である。いくつかの実施形態において、投与される投薬量は、処置周期を通して、約0.1~4mg/kg、より一層好ましくは0.1~3.2mg/kg、又はより一層好ましくは0.1~2.7mg/kg対象体重の間にある。
【0261】
リガンド-機能性剤結合体、例えば、リガンド-薬物結合体は、任意の簡便な経路、例えば、注入又は急速静脈注射によって、上皮又は皮膚粘膜内壁(例えば口腔粘膜、直腸及び腸の粘膜)経由吸収によって投与してよい。投与は全身投与であってよく、又は局所投与であってよい。さまざまな投薬システム、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、カプセルへのカプセル化が知られ、これらを用いて化合物を投与してよい。特定の実施形態では、2つ以上の化合物又は組成物を患者に投与する。
【0262】
用語「担体」は、化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント又は賦形剤を指す。そのような医薬品担体は、水、及び落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など、石油、動物、植物又は合成起源油を含む油などの液体であってよい。担体は、食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素であってよい。さらに、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤を用いてよい。一実施形態では、患者に投与するとき、本化合物又は組成物及び薬学的に許容される担体は、無菌とする。化合物を静脈内投与するとき、水が担体の例である。特に注射用溶液に用いるとき、食塩水溶液並びにデキストロース及びグリセリン水溶液も液体担体として使用してよい。好適な医薬品担体は、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、フラワー、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどの賦形剤も含む。望むなら、本組成物は、少量のぬれ剤又は乳化剤、あるいはpH緩衝剤を含んでよい。
【0263】
ある実施形態では、動物、特に人間への静脈内投与に適した医薬品組成物として、本結合体を定常手順によって調合する。通常、静脈内投与用の担体又はベヒクルは、無菌等張緩衝水溶液である。必要な場合、本組成物は、溶解剤も含んでよい。静脈内投与用の組成物は、任意選択として、注射部位における痛みを和らげるリグノカインなどの局所麻酔剤を含んでよい。一般に、成分は、別々に、又は一緒に混合して単位用量形として、例えば、活性剤の量を表示するアンプル又は小形試料ビンなどの密封容器中の乾いた冷凍乾燥粉体又は無水濃縮物として、供給する。結合体を注入によって投与する場合、例えば、無菌医薬グレード水又は食塩水を含む注入ビンを用いて分注してよい。結合体を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用蒸留水又は食塩水のアンプルを準備してよい。
【0264】
医薬組成物は、一般に、無菌で、実質的に等張であるように処方され、そして、米国食品医薬品局のすべての適正製造基準(GMP)の規則を完全に順守している。
【0265】
本発明の医薬組成物は、本発明のリガンド薬物結合体と医薬的に許容し得る担体を含む。いくつかの好ましい実施形態において、医薬組成物中に存在しているリガンド薬物結合体のすべて若しくは実質的にすべて、又は50%超が、加水分解チオ置換スクシンイミドを含んでいる。いくつかの好ましい実施形態において、医薬組成物中に存在しているリガンド薬物結合体の55%超、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%が加水分解チオ置換スクシンイミドを含んでいる。
【0266】
リガンド-薬物結合体を調製するための方法
もう一つの態様において、本発明は、自己安定化リンカーを含んでいるリガンド-薬物結合体又はリガンド-機能性剤結合体を調製する方法を提供する。
【0267】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、本明細書中に記載したように、薬物-リンカー又はリンカー単位を準備し、前記の薬物-リンカー又はリンカー単位をリガンド単位のスルフヒドリル基に結合させて、結合体を形成させ、得られた結合体に加水分解反応に供し、チオ置換加水分解スクシンイミドを含んでいるリガンド-薬物結合体を形成するステップを含む。
【0268】
チオ置換スクシンイミド加水分解の速度は、薬物-リンカーのリガンドへの結合後の反応条件を調整することによって、例えば、pH又は温度を調整することによって、操作できる。本発明のいくつかの実施形態において、チオ置換スクシンイミドのすべて、実質的にすべて、又は少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%も、反応条件の操作なしで加水分解される、すなわち、加水分解反応は結合反応と同じ反応条件下で起こる。いくつかの実施形態において、チオ置換スクシンイミドのすべて、実質的にすべて、又は少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%も、結合後20分~4時間、好ましくは結合後20分~2時間、加水分解される。代表的な実施形態において、結合条件は、約7.4のpHと約22°Cの温度である。
【0269】
いくつかの実施形態において、リガンド-薬物結合体を調製するための方法は、自己安定化リンカーを含んでいる薬物-リンカー又はリンカー単位を準備し;前記薬物-リンカー又はリンカーが単位をリガンドのスルフヒドリル基に結合させて、非加水分解チオ置換スクシンイミドを含んでいるリガンド-薬物結合体を形成させ、非加水分解チオ置換スクシンイミドに加水分解反応に供するステップを含み、ここで、前記スクシンイミドのすべて、実質的にすべて、又は少なくとも50%、60%、70%、80%又は85%も、結合後10分~4時間、加水分解される。いくつかの実施形態において、スクシンイミドのすべて、実質的にすべて、又は少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、又は95%も、結合後10分、20分、40分、60分、90分又は120分加水分解される。いくつかの実施形態において、加水分解反応は、結合反応と同じ反応条件下で起こる。代表的な実施形態において、結合条件は、約7.4のpHと約22°Cの温度である。
【0270】
自己安定化リンカーを合成するための方法
本発明は、とりわけ、自己安定化リンカーを提供する。自己安定化リンカー単位を調製する方法は、本発明の範囲内に包含される。
【0271】
マレイミド化合物は、典型的に、1級アミンの無水マレイン酸との反応と、それに続くマレイン酸の脱水閉環によって対応するアミンから調製される。マレイミド化合物の調製の全体的なスキームは、以下のスキームに示されている。
【化65】
【0272】
開始アミンの側鎖に塩基性基を含んでいるマレイミドの調製において、こうした塩基性基は、必要であれば、保護されなければならない。適当な保護基は、マレイミド調製の条件下で安定していなければならず、さらに、後でマレイミド存在下で脱着可能でなければならない。好適な保護基は、これだけに限定されるものではないが、酸に不安定な保護基から成る。「Boc」保護基は、好ましい保護基の1つである。
【0273】
マレイミド調製の第1ステップであるマレイン酸の形成は、非常に容易であり、且つ、化学量論的な過剰量の無水マレイン酸を含んでいる懸濁液にアミンをゆっくりと添加することによって、通常、高い収率で達成される。
【0274】
第2ステップであるマレイン酸の脱水閉環は、当業者に知られている多くの方法で達成できる。例えば、化学脱水剤の使用は、このステップを達成するための十分に確立された方法であった。異性化アルコールと組合せたカルボジイミド、例えば:DCC/HOBtは、マレイミドへのアミド酸の効果的な脱水閉環に使用された。
【0275】
酸触媒の存在下での共沸蒸留の使用を伴った熱脱水閉環は、マレイミドを作り出すための別の周知の方法である。共沸溶媒の使用は、水の副産物の、それが形成されて直ぐの効果的な除去を可能にし、その結果、マレイミドへの反応を駆動する。好適な共沸溶媒としては、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、メシチレンなどが挙げられる。トルエンは、大気圧にて110℃で沸騰するので、最も望ましいと思われる。200℃未満の沸騰温度は、より熱力学的に安定したトランス構造物(フマル酸)へのマレイン酸の熱異性化の可能性を最小限にするために望ましい。
【0276】
極性非プロトン性共溶媒の使用は、全体的な収率の改善、並びに脱水閉環の時間短縮に有益になり得る。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、及びスルホナートを含めた数種類の極性非プロトン溶媒が、有用であると主張された。最も有用な極性非プロトン溶媒は、ジメチルホルムアミドである。
【0277】
米国特許第5,973,166号によると、非プロトン性溶媒の代わりの特定のアミン塩の取込みは、マレイミド形成にとってさらに有益になり得る。
【0278】
溶媒を使用せずに無水マレイン酸と適当なアミンから開始する、ワンステップのマイクロ波支援マレイミド合成もまた、報告された(H. N. Borah, et al., J. Chem. Research (S), 1998, 272-272)。
【0279】
マレイミド形成のための溶媒として水を使用する例は、V. OndrusらによるARKIVOC, 2001 (v) 60-67で報告された。
【0280】
あるいは、マレイミド化合物は、マレイミドと適当なアルコールから、例えば、以下のスキームで示されている光延反応条件を使用することで作り出される(M.A. Walker, Tetrahedron Letters, 1994, v. 35, n 5, pp. 665-668):
【化66】
【0281】
本発明の自己安定化リンカーアセンブリは、本明細書中に記載した教示を当該技術分野で知られている方法と組合せて使用することで、ストレッチャー単位、開裂可能単位、スペーサー単位、又は薬物単位に連結される。リンカー及び薬物-リンカーは、本明細書中に記載した教示を当該技術分野で知られている方法と組合せて使用することで、リガンド単位に結合される。例えば、鎖間ジスルフィドへの結合のために、抗体は、一部又は全部の鎖間ジスルフィドシステイン残基を還元するためにジチオスレイトール(DTT)などの還元剤によって処理されて、高度に求核性のシステインのチオール基が形成され得る。完全に還元された抗体又は部分的に還元された抗体は、それに続いてリンカー単位のマレイミドに結合される。代表的な実施形態において、結合条件は、緩やかな条件である、約7のpHと約22℃の温度である。
【0282】
中間体
本発明は、自己安定化リンカーを作製する際に使用するための中間体を提供する。中間体としては、以下のものが挙げられ、式中、T、c、R
11、及びR
12は、先に記載されたとおりである:
【化67】
モノ-チオ置換又はジ-チオ置換マレイミド又はスクシンイミド自己安定化リンカー
【0283】
モノ-チオ置換スクシンイミドの加水分解速度を増強するように自己安定化リンカーを設計することに加えて、自己安定化リンカーもまた、モノ-チオ置換マレイミド、ジ-チオ置換マレイミド、又はジ-チオ置換スクシンイミドの加水分解速度を増強するために使用され得る。
【0284】
上記を考慮すると、本発明は、ある実施形態群において、リガンド単位、及び薬物単位、検出単位、又は安定性単位から選択された少なくとも1個の機能性剤、ここで、前記リガンド単位と(単数若しくは複数の)それぞれ機能性剤は、スクシンイミド環、マレイミド環、加水分解スクシンイミド環又は加水分解マレイミド環を含む自己安定化リンカーアセンブリによって接合されるが、ここで、前記スクシンイミド環、マレイミド環、加水分解スクシンイミド環又は加水分解マレイミド環は、1つ若しくは2つのチオエーテル結合を介してリガンド単位に直接結合された;並びに(すなわち、スクシンイミド環又はマレイミド環の加水分解の速度を高めることによって)自己安定化リンカーアセンブリを欠いているリガンド-機能性剤結合体に対して血漿中でその結合体を安定させるために作動できるように連結された塩基と電子求引性基を含むリガンド-機能性剤結合体を提供する。いくつかの態様において、電子求引性基は、スクシンイミド又はマレイミドの求電子性を増強して、それが水とより反応する状態にするように配置され、塩基は、(例えば、分子内塩基触媒作用機構によって)スクシンイミド環又はマレイミド環の加水分解を促進するように配置される。
【0285】
いくつかの実施形態において、リガンド-機能性剤結合体は、式(IV)又は(IVa):
【化68】
又はその塩(例えば、医薬的に許容し得るその塩)によって表され;
式中、
Lは、リガンド単位であり;
L
Lは、存在しても不存在であってもよいリガンド単位であり、ここで、L及びL
Lは、同じリガンド単位であっても異なったリガンド単位であってもよく;
D’は、薬物単位、検出単位、又は安定性単位であり;
L
Oは、任意の第2リンカーアセンブリであり;
M
2は、チオエーテル結合を介して少なくとも1つのL又はL
Lに結合されたマレイミド環、加水分解マレイミド、スクシンイミド環、又は加水分解スクシンイミドであり;そして、
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意にL
O、A、W、Y又はD’への取付けに好適な反応部位を含み;
添字m、q、及びrはそれぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであるものとし;
添字pは、1~20の範囲に及び;
-W-は、任意の開裂可能単位であり;
添字w’は0又は1であり;
-Y-は、任意のスペーサー単位であり;
添字y’は0又は1であり;
-A-は、任意のストレッチャー単位であり;
-A’-は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;
a’は0又は1であり;そして、
uは、1~20の範囲に及ぶが、但し、uが2~20であれば、Aが存在するものとし、及びuが1であれば、Aが存在しても不存在であってもよいものとする。
【0286】
L、HE、BU、LO、A、W、及びYは、リガンド-薬物結合体について提供された意味を有する。さらに、環、L、HE、BU、LO、A、W、及びYについての具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれは、同じようにこれらの結合体に対しても適切である。L及びLLは、異なったリガンド単位であっても同じリガンド単位であってもよい。L及びLLが同じリガンド単位である実施形態において、スクシンイミド又はマレイミドは、リガンド単位の同じ又は異なったポリペプチド鎖上のリガンド単位に結合され得る。
【0287】
いくつかの態様において、rが1であるとき、HEはカルボニル基(すなわち、C(=O))を含まない。
【0288】
いくつかの態様において、m+q+rは0、1又は2である。
【0289】
いくつかの態様において、rはゼロである。
【0290】
いくつかの態様において、リガンド-機能性剤結合体は、式(IV)、(IVa)又はその塩によって表され、式中、r及びmはゼロであり、そして、qは1である。
【0291】
いくつかの態様において、リガンド-機能性剤結合体は、式(IV)、(IVa)又はその塩によって表され、式中、環は、C1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレン)である足場を表し、rはゼロであり、そして、m+qの合計は1である。いくつかのこうした態様において、足場は、C1-3アルキレン又はC1-3ヘテロアルキレンである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0292】
いくつかの態様において、リガンド-機能性剤結合体は、式(IV)、(IVa)又はその塩によって表され、式中、環は、C1-8アルキレン又はC1-8ヘテロアルキレン(好ましくはC1-4アルキレン又はC1-4ヘテロアルキレン)である足場を表し、そして、m及びrはゼロである。いくつかのこうした態様において、足場は、C1-3アルキレン又はC1-3ヘテロアルキレンである。いくつかのこうした態様において、アルキレンは、直鎖又は分岐である。
【0293】
いくつかの態様において、リガンド-機能性剤結合体は、式(IV)、(IVa)又はその塩によって表され、式中、環は、C1、C2、C3又はC4直鎖又は分岐鎖アルキレンである足場を表し、rはゼロであり、そして、m+qの合計は1である。
【0294】
いくつかの態様において、リガンド-機能性剤結合体は、式(IV)、(IVa)又はその塩によって表され、式中、環は、C1、C2、C3又はC4直鎖又は分岐鎖アルキレンである足場を表し、そして、m及びrはゼロである。
【0295】
いくつかの態様において、m及びrはゼロであり、そして、
【化69】
は、
【化70】
によって表される。
【0296】
いくつかの態様において、塩基性単位の塩基と(加水分解されているか、若しくは非加水分解)マレイミド又はスクシンイミドの窒素原子の間には、2つ以上6つ以下の介在原子があって、そして、電子求引性基と(加水分解されているか、若しくは非加水分解)マレイミド又はスクシンイミドの窒素原子との間には、5つ以下の原子、4つ以下の原子、3つ以下の原子、又は2つ以下の介在原子しかない。
【0297】
いくつかの態様において、M2は、スクシンイミド環又は加水分解スクシンイミドであり、そして、LLは存在している。いくつかの態様において、M2は、スクシンイミド環又は加水分解スクシンイミド環であり、そして、LLは不存在である。いくつかの態様において、M2は、マレイミド環又は加水分解マレイミドであり、そして、LLは存在している。いくつかの態様において、M2はmマレイミド環である又は加水分解マレイミド環であり、そして、LLは不存在である。いくつかの態様において、M2が、マレイミド環又は加水分解マレイミドであるとき、LLは存在するか、又は不存在であり、そして、M2が、スクシンイミド環又は加水分解スクシンイミドであるとき、LLは存在している。それぞれのこれらの実施形態において、L及びLLが存在しているとき、L及びLLは、同じリガンド単位であっても、異なったリガンド単位であってもよい。L及びLLが存在していて、且つ、同じリガンド単位であるいくつかの態様において、マレイミド又はスクシンイミドは、リガンド単位の同じ又は異なったポリペプチド鎖のリガンド単位に結合され得る。
【0298】
それぞれのこれらの実施形態において、アルキレン又はヘテロアルキレン鎖は、直鎖であっても分岐であってもよい。いくつかの態様において、アルキレン又はヘテロアルキレン鎖は、直鎖である。他の態様において、それは分岐である。
【0299】
それぞれのこれらの実施形態において、pは1~20の範囲に及び、好ましくは1~12であり、より一層1~10又は1~8であり得る。
【0300】
足場自体が、任意の第2リンカーアセンブリ又はD’(例えば、選択された実施形態において、qがゼロであるとき、又はqがゼロであり、且つ、rがゼロであるとき)
に直接連結されるいくつかの態様において、足場は、任意の第2リンカーアセンブリ又はD’への取付けに好適な反応部位を含むであろう。
【0301】
足場自体が、任意の第2リンカーアセンブリ又はD’(例えば、選択された実施形態において、qがゼロであるとき、又はqがゼロであり、且つ、rがゼロであるとき)
に直接連結されるいくつかの態様において、足場は、A又はD’への取付けに好適な反応部位を含むであろう。
【0302】
マレイミド環は、非加水分解形態及び加水分解形態の両方で、以下に例示されるように1つ又は2つのチオエーテル結合を介してリガンド単位に結合され得、そして、スクシンイミド環は、非加水分解形態及び加水分解形態の両方で、以下に例示されるように2つのチオエーテル結合を介してリガンド単位に結合され得、式中、波線は、リンカー結合体又はリンカー機能性剤結合体の残りの部分への取付位置を示す:
【化71】
【0303】
マレイミド環、加水分解マレイミド、スクシンイミド環、又は加水分解スクシンイミドが2つのチオエーテル結合を介してリガンドに結合される実施形態において、pは典型的に、1~10、1~8、又は1~4の範囲に及び、そして、マレイミド又はスクシンイミドは、リガンドの同じ又は異なったポリペプチド鎖に結合され得る。いくつかの態様において、リガンドは抗体である。他の態様において、リガンドは非抗体タンパク質である。
【0304】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有する機能性剤-リンカー結合体は、以下の式:
【化72】
又はその塩(例えば、医薬的に許容し得るその塩)によって表され;
式中、
D’は、薬物単位、検出単位、又は安定性単位であり;
L
Oは、任意の第2リンカーアセンブリであり;
Q及びZは、水素又はハロゲンであり、ここで、Q及びZのうちの少なくとも1つがハロゲンであり;
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意にL
O、A、W、Y又はD’への取付けに好適な反応部位を含み;
添字m、q、及びrはそれぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであるものとし;
W-は、任意の開裂可能単位であり;
添字w’は0又は1であり;
-Y-は、任意のスペーサー単位であり;
添字y’は0又は1であり;
Aは、任意のストレッチャー単位であり;
A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;
a’は0又は1であり;そして、
uは、1~20の範囲に及ぶが、但し、uが2~20であれば、Aが存在するものとし、及びuが1であれば、Aが存在しても不存在であってもよいものとする。
【0305】
いくつかの態様において、ハロゲンは臭素である。
【0306】
HE及びBU、LO、A、W、及びYは、薬物-リンカー結合体について規定された意味を有する。さらに、環、HE、BU、LO、A、W、及びYについて具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれは、同じようにこれらの結合体に対しても適切である。
【0307】
いくつかの態様において、m及びrはゼロであり、且つ:
【化73】
は:
【化74】
によって表される。
【0308】
分岐又は非分岐リンカーのいずれかを有するリガンド-リンカー結合体は、以下の式:
【化75】
又はその(例えば、医薬的に許容し得るその塩)塩によって表され;
式中、
Lは、リガンド単位であり;
L
Lは、存在しても不存在であってもよいリガンド単位であり、ここで、L及びL
Lは、同じリガンド単位であっても異なったリガンド単位であってもよく;
RGは、L
Oの末端の(反応部位を含んでいる)反応基であるか、又は薬物単位、検出単位又は安定性単位を取付けるのに好適である:
【化76】
であり;
L
Oは、そこに存在する任意の第2リンカーアセンブリであり;
M
2は、チオエーテル結合を介して少なくとも1つのL又はL
Lに結合されたマレイミド環、加水分解マレイミド、スクシンイミド環、又は加水分解スクシンイミドであり;そして、
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意にL
O、A、W、Y又はFAへの取付けに好適な反応部位を含み;
添字m、q、及びrはそれぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであるものとし;
添字pは、1~20の範囲に及び;
-W-は、任意の開裂可能単位であり;
添字w’は0又は1であり;
-Y-は、任意のスペーサー単位であり;
添字y’は0又は1であり;
-A-は、任意のストレッチャー単位であり;
-A’-は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;
a’は0又は1であり;そして、
uは、1~20の範囲に及ぶが、但し、uが2~20であれば、Aが存在するものとし、及びuが1であれば、Aが存在しても不存在であってもよいものとする。
【0309】
L、HE、BU、LO、A、W、及びYは、リガンド-薬物結合体について提供された意味を有する。さらに、環、L、HE、BU、LO、A、W、及びYについての具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれは、同じようにこれらの結合体に対しても適切である。
【0310】
いくつかの態様において、r及びmはゼロであり、且つ:
【化77】
は:
【化78】
によって表される。
【0311】
分岐又は非分岐リンカーは、以下の式:
【化79】
又はその塩(例えば、医薬的に許容し得るその塩)によって表され;
式中、
RGは、L
Oの末端の(反応部位を含んでいる)反応基であるか、又は薬物単位、検出単位又は安定性単位を取付けるのに好適である:
【化80】
であり;
L
Oは、そこに存在する任意の第2リンカーアセンブリであり;
Q及びZは、水素又はハロゲンであり、ここで、Q及びZのうちの少なくとも1つのハロゲンであり;
BUは、塩基性単位であり;
HEは、電子求引性基を含む加水分解エンハンサーであり;
環は、C
1-8アルキレン、C
1-8ヘテロアルキレン、C
6-10アリーレン、又はC
4-10ヘテロアリーレンであり得る足場を表し、そして、任意にL
O、A、W、Y又はRGへの取付けに好適な反応部位を含み;
添字m、q、及びrはそれぞれ0又は1であり、且つ、m+q+rの合計は0、1、又は2であるが、但し、m+q+rが0であれば、足場は、C
6-10アリーレン又はC
4-10ヘテロアリーレンであるものとし;
W-は、任意の開裂可能単位であり;
添字w’は0又は1であり;
-Y-は、任意のスペーサー単位であり;
添字y’は0又は1であり;
Aは、任意のストレッチャー単位であり;
A’は、Aの末端の任意のストレッチャー単位成分であり;
a’は0又は1であり;そして、
uは、1~20の範囲に及ぶが、但し、uが2~20であれば、Aが存在するものとし、及びuが1であれば、Aが存在しても不存在であってもよいものとする。
【0312】
HE、BU、LO、A、W、及びYは、リガンド-薬物結合体について提供された意味を有する。さらに、環、HE、BU、LO、A、W、及びYについての具体的に挙げられた選択される実施形態のそれぞれは、同じようにこれらの結合体に対しても適切である。
【0313】
いくつかの態様において、r及びmはゼロであり、且つ:
【化81】
は:
【化82】
によって表される。
【0314】
モノ-若しくはジ-チオ置換ハロマレイミド、並びにジチオ置換スクシンイミドを調製する方法は、リガンドにそれらを結合する方法のように、当該技術分野で公知である、例えば、Ryan et al., Chem. Commun., 2011, 47, 5452-5454及びSmith et al., J. Am. Chem. Soc. 2010, 132(6), 1960-1965を参照。
【実施例】
【0315】
実施例1-代表的な自己安定化要素の合成
マレイル-リジン(boc)OH
【化83】
50ml容の丸底フラスコ内でH-Lys(boc)-OH(246mg、1mmol)及び無水マレイン酸(98mg、1mmol)を、1ml(4vol.)の酢酸中に溶解させ、そして、その溶液を室温で3時間撹拌した。反応混合物を、ロトバップ(rotovap)により油状物質まで濃縮し、そして、生成物を~10mlのジクロロメタンの添加によって沈殿させた。沈殿物を、真空濾過によって回収し、ジクロロメタンで洗浄し、そして、真空オーブン内で一晩乾燥させた。270mgの生成物を白色粉末として回収した(85%の収率)。
【0316】
マレオイル-リジン(boc)-OH
【化84】
マレイル-Lys(boc)-OH(100mg、0.29mmol)を、冷却管を備えた50ml容の丸底フラスコ内でモレキュラーシーブ上、トルエン(3ml)及びトリエチルアミン(224μL)中に懸濁した。溶解性を援助するために、DMA(~150μL)を加えた。溶液を、125℃に加熱し、そして、4時間還流し、その後、その反応は、LCMSによって完了していることが示された。反応混合物を、ロトバップにより濃縮乾固し、DMSO中に再溶解し、そして、調製用HPLCによって精製した。56mgの生成物を、白色粉末として単離した(60%の収率)。
【0317】
マレイル-DPR(boc)OH
【化85】
マレイル-DPR(boc)-OHを、マレイル-リジン(boc)OHと同じ様式で調製した(503mg、67%)。
【0318】
マレオイル-DPR(boc)-OH
【化86】
マレオイル-DPR(boc)-OHを、マレオイル-Lys(boc)と同じ様式で調製した(340mg、71%)。
【0319】
マレイル-ジメチルリジン
【化87】
マレイル-ジメチルリジンを、生成物を、ジクロロメタンの添加後に沈殿させなかったことを除いて、マレイル-lys(boc)-OHと同じ様式で調製した。代わりに、白色フォームを得るまで油状物質を、1:1のジクロロメタン/ヘキサンと共蒸発させ、そして、高真空下で一晩乾燥させた(109mg、99%)。
【0320】
マレオイル-ジメチルリジン
【化88】
10ml容の丸底フラスコ内で、マレイル-ジメチルリジン(100mg)を酢酸(1ml)中に溶解し、そして、4時間還流した。4時間後に、反応混合物を、ロトバップにより濃縮乾固し、そして、高真空下で白色フォームまで乾燥させた。原料のNMRは、6.9ppmの一重項の比率、及び出発物質からのオレフィン陽子に基づき、~80%の変換を示す。
【0321】
実施例2-mDPR-Val-Cit-PAB-MMAEの合成
mDPR-Val-Cit-PAB-MMAEを、ペプチドのカップリングの標準的な方法を使用してVal-Cit-PAB-MMAEにBoc保護mDPRをカップリングすることを用いて調製した。Boc基を、最終段階で取り除いた。
スキーム:
【化89】
Fmoc-Val-Cit-PAB-MMAEの調製
【0322】
MMAE(5.34g、6.94mmol)、Fmoc-Val-Cit-PAB-OCO-pNP(5.0g、6.94mmol)及びHOBt(1.4mmol)を、250ml容の丸底フラスコに入れ、N2でパージし、そして、15mlのDMAで溶解した。次に、DIPEA(2.44ml、14mmol)を加え、そして、その溶液を不活性雰囲気下、室温で一晩撹拌した。生成物を、40分にわたる、30%のMeCN(0.05%のTFA)から100%のMeCN(0.05%のTFA)へのリニアグラジエントを使用した調製用HPLCによって単離した。生成物を含んでいる画分を白色粉末までロトバップにより濃縮した、3.2g(34%)。
【0323】
Val-Cit-PAB-MMAEの調製
7mlのDMF及び7mlのジエチルアミン中の3.2gのFmoc-Val-Cit-PAB-MMAEの溶液を、室温で3時間撹拌した。次に、反応混合物を、ロトバップにより粘度の高い油状物質まで濃縮した。生成物を、ジエチルエーテル(100ml)中で沈殿させ、そして、濾過して、オフホワイト色の粉末として2.0gの生成物を得、そしてそれを、更なる精製なしで使用した。
【0324】
mDPR(boc)Val-Cit-PAB-MMAEの調製
50ml容の丸底フラスコ内で、mDPR(boc)-OH(25mg、0.089mmol)、Val-Cit-PAB-MMAE(100mg、0.089mmol)、及びHATU(41mg、0.107mmol)を、2mlのDMF中に溶解した。DIPEA(34μL)を加え、そして、その溶液を室温にて1時間撹拌した。反応混合物を、1mlのDMSOで希釈し、そして、生成物を、調製用HPLCによって単離した(70mg、56%)。
【0325】
mDPR-Val-Cit-PAB-MMAEの調製
上記の材料を、2mlの10% TFA/ジクロロメタン中に溶解し、室温にて1時間撹拌した。反応混合物を、濃縮乾固し、1mlのDMSO中で再構成し、そして、調製用HPLCによって精製した(56mg、86%)。
【0326】
実施例3-チオスクシンイミドの加水分解の観察
自己安定化生物結合体のチオスクシンイミドの加水分解は、その結合体への水の添加が、観察可能な結合体の分子量に対して18ダルトンの増大をもたらすので、エレクトロスプレー質量分析によって観察できる。結合体がヒトIgG1抗体の鎖間ジスルフィドを完全に還元し、そして、得られたシステインにマレイミドを結合することを用いて調製されるとき、抗体の各軽鎖は、ただ1つのマレイミド修飾を含み、且つ、各重鎖は3つのマレイミド修飾を含むであろう(
図1、上部を参照)。得られたチオスクシンイミドの完全な加水分解により、そのため、軽鎖の質量は18ダルトン増加し、その一方、重鎖の質量は54ダルトン増加するであろう。これは、本発明の自己安定化マレイミド薬物-リンカー(mDPR-Val-Cit-PAB-MMAE、分子量1289Da)の結合とその後の完全還元抗CD30抗体であるcAC10への加水分解と共に、
図1(下部)に例示されている。重鎖上の1つのN結合型グリコシル化部位の存在は、非結合抗体で観察された質量の不均一をもたらす。
【0327】
実施例4-t1/2加水分解の観察
経時的に自己安定化生物結合体(mDPR-Val-Cit-PAB-MMAE)の質量スペクトルの非加水分解ピーク強度及び加水分解ピーク強度を観察することによって、加水分解速度を評価できる。これは、各時点において加水分解された総集団の割合(パーセント)を時間に対してプロットすることによっておこなわれる(
図2、上部)。次に、これらのデータを指数方程式:
Y=Y
max×(1-e
(-Kt))
に当てはめ、ここで、Yは、時間tにおいて観察された加水分解率(パーセント)であり、Ymaxは、漸近最大加水分解率(%)であり、そして、Kは、加水分解速度定数である。加水分解反応の半減期は:
t
1/2=In(2)/K
と規定される。
【0328】
この手順が還元hIgG1抗体の軽鎖に対して行われるとき、分析は、軽鎖あたり1個の結合部位しかなく、且つ、反応が18ダルトンの質量変化を伴う未加水分解種から加水分解種への単純な進行である場合には、かなり簡単である。重鎖に対するこの分析の実施は、合計3つの結合部位があり、そして、結合体が加水分解を受けた場合に+18、+36、及び+54ダルトンの一群のピークを生じるという事実によって複雑になる。重鎖の分析は、複数のグリコ型の存在によってさらに複雑になる。
図2に示した分析は、最も豊富なグリコ型から生じるピークを評価し(54195Daから54250Daへの遷移)、そして、これらのピークが重鎖グリコ型の集団全体の妥当な代用物であると仮定するだけで実施された。
図2で明白のように、軽鎖及び重鎖について観察された反応速度プロフィールは、非常に類似している。このため、及び先に記載した重鎖に対する加水分解速度の定量化の別の複雑さのせいで、抗体に結合された自己安定化マレイミドの加水分解速度を特徴づけるためのデータの大部分が、軽鎖加水分解の評価から測定された。
【0329】
この方法論の1つの制限は、電界蒸発イオン化過程が、観察ピークでわずかな割合のナトリウム付加物を生じさせる傾向があることであり(
図2のデータを得るのに使用した条件下で約10%)、そのナトリウム付加物は、親質量より22ダルトン大きい観察質量を有する。多くの質量分析計は、この+22の質量を、25,000ダルトンを超える総分子量を有するタンパク質に対する加水分解から生じる+18の質量と識別するのに十分高い解像度を有していない。その結果、早い時点で、加水分解度が低いとき、約+20ダルトンのピークの出現は、実験的に容易に切り離すことができないこれらの2つの効果の組合せである。その結果、最も早い時点における加水分解生成物の割合(パーセント)の見積りはおそらく過大評価であるが、反応が完了に向かうに従って、この効果の程度は減少する。
【0330】
実施例5-自己安定化リンカーアセンブリのマレイミドと塩基性基との間隔の評価
マレイミドに隣接する塩基性アミノ基の存在は、それらのマレイミドで調製したチオスクシンイミドの加水分解を加速し、これにより安定した生物結合体をもたらすであろうと仮定された。マレイミドと塩基性アミノ基との間の距離は、こうした自己安定化単位の設計における重要要素として認識された。この間隔の役割を評価するために、一連のマレイミドを、一般構造:
【化90】
を用いて調製し、ここで、xは、1~4で異なった。これらのマレイミドを、次に、pH8及び37℃で完全に還元したヒトIgG1に結合させ、そしてすぐに、エレクトロスプレー質量分析によって観察して、加水分解反応速度を測定した。塩基性基とマレイミドとの間の距離は、加水分解速度に対して反比例である--すなわち、距離が長いほど、加水分解は遅い。この結果は、マレイミドに近い塩基性アミノ基の配置がマレイミドで調製した生物結合体のスクシンイミド環の高い加水分解速度をもたらすことを示している。しかしながら、ここで試験した最も短い間隔(x=1)でさえ、抗体結合体が、完全な加水分解を達成するために、pH8及び37℃で約5時間維持される必要があるであろう(約5の半減期)。抗体又は他のタンパク質のこうした条件への長期間の暴露は、共有結合の修飾やミスフォールディング事象を潜在的にもたらす可能性があるので、さらに速い加水分解速度を有するマレイミドが求められた。
【0331】
より速い加水分解速度を有する生物結合体を調製するために、一連のマレイミドを、一般構造:
【化91】
を用いて調製し、ここで、x=1~4であり、且つ、R=val-cit-PAB-MMAEである。これらのマレイミドを、次に、pH8及び37℃で完全に還元したヒトIgG1に結合させ、そしてすぐに、エレクトロスプレー質量分析によって観察して、加水分解反応速度を測定した。
図4(上部)に示されているように、この一連の構造的に関連した化合物の中の塩基性基とマレイミドとの間の距離は、加水分解反応の経過に対して重大な影響を及ぼす。先の実施例のように、マレイミドと塩基性アミンとの間の距離が短いほど、加水分解が速かった。塩基性条件(すなわち、高pH条件)がマレイミド及びスクシンイミド環の加水分解速度を高めることが知られているので、おそらく、この効果は、一般的な塩基機構による分子内触媒作用の例である。この一連の化合物の中で、x=2及びx=3を有する化合物は、3時間のインキュベーションの間に完全な加水分解に達しなかったが(プロットは、最高に達成された加水分解に対して標準化されている)、代わりに、それぞれ約80%及び50%にて漸近線に達した。この現象は、スクシンイミド環上の1級アミンの直接的な求核攻撃などの競争反応から生じ得るか、又は二相性加水分解速度につながるマレイミドの異性体不純物に起因し得る。
【0332】
実施例6-加水分解速度
先の実施例では、塩基性基が、その塩基性基と親分子のマレイミドとの間の距離によって、生物結合体内のスクシンイミド環の加水分解の速度に有し得る影響を説明している。しかしながら、電子求引性基又は電子供与性基の存在が環の加水分解の速度に影響を及ぼすことが予想される。なぜなら、これらの前記基のカルボニル炭素における電子密度(そのため、求電子性)に影響を及ぼすからである。実施例5の結合体において、カルボキサミド基は、環の窒素に対してα位で存在している(すなわち、1つの炭素原子が環の窒素とカルボキサミドのカルボニル炭素との間に存在している)。カルボキサミドは弱い電子求引性基であるので、その存在は観察された加水分解速度に影響を及ぼす可能性が高い。観察された加水分解速度に対する塩基性アミノ基と電子求引性カルボキサミド基の相対的な寄与をより理解するために、一連のマレイミドを、pH7.4及び22℃にて還元したヒトIgG1抗体に結合させ、そして、質量分析法によって加水分解速度を測定した(
図5)。これらのマレイミドは、ただα位でカルボキサミドを含んでいるか(三角形)、ただβ位で1級アミンを含んでいるか(逆三角形)、又はカルボキサミドと1級アミンの両方を含んでいる(丸)。マレイミドの近くにいずれかの基も含んでいない対照マレイミドもまた評価したが、その加水分解は、これらの条件下では反応が全く観察されず、データもプロットされないくらい非常に遅い。これらの条件下、塩基と電子求引性基の両方を含む自己安定化マレイミドは、ちょうど12分の加水分解t1/2を有する生物結合体を作り出したが、それに対し、アミンだけを含むマレイミドは、2.5時間のt1/2をもたらし、そして、カルボキサミドだけを含むマレイミドは、24時間のt1/2をもたらした。この結果は、塩基性基と電子求引性基が、望ましい緩やかな条件下での生物結合体の製造に最も便利である非常に速い加水分解速度を有する結合体をもたらすように一致して作用することを示している。ジアミノプロピオニルマレイミドを用いて調製した結合体(丸)は、非常に緩やかな条件下で15分未満のt1/2を有し、且つ、反応が約2時間以内に100%完了に到達する、理想的な加水分解特徴を発揮する。
【0333】
実施例7-自己安定化リンカーアセンブリのマレイミドとカルボキサミド基の間隔の評価
上記の実施例5及び6に示した自己安定化ジアミノプロピオニルマレイミド薬物-リンカーアシッド(self-stabilizing diaminopropionyl maleimido drug-linkers acid)(DPR)を用いて調製した結合体において観察された急速、且つ、完全なスクシンイミド加水分解は、設計における塩基性基と電子求引性基の両方の重要性を示している。第2の、異性体マレイミド薬物-リンカーが、ジアミノプロピオン酸を用いて調製されたのは、得られた結合体の加水分解挙動に対するこれらの2つの成分の役割をさらに評価するためである。構造物は、α-マレイミドDPR及びβ-マレイミドDPRと呼ばれ、そして、それらは、以下に示されている:
【化92】
【0334】
両DPRマレイミドとも、2つの炭素原子によってマレイミド窒素と切り離されている塩基性1級アミンを有している。両者はまた電子求引性カルボキサミド基も有しているが、しかしながら、マレイミド窒素からのカルボキサミドの距離は、1~2つの炭素単位異なっている(それぞれαとβ)。最終的に、塩基性アミンとカルボキサミドとの間隔もまた、1~2つの炭素単位異なる(それぞれβとα)。まとめると、これは、β-DPRでは、α-DPRと比較して、カルボキサミドが、マレイミド環に対してより弱くしか電子求引性影響を発揮しないが、しかし、1級アミンに対してはより強く電子求引性影響を発揮することを意味する。このことは、マレイミドの求電子性と1級アミンの塩基性の両方が低減することによって加水分解反応速度を遅くすると思われる。これらのマレイミド薬物-リンカーを還元された抗体に結合し、スクシンイミド加水分解について観察したとき、α-DPRと比較してβ-DPRで17分の1の遅い加水分解速度を観察した(
図6)。この実施例は、塩基性基と電子求引性基との相対的配置が加水分解速度を「調整」するのにどのように使用できるかを説明している。
【0335】
実施例8~15
自己安定化薬物-リンカーを用いて調製したADCの安定性と薬理活性を評価するために、自己安定化マレイミド-薬物-リンカーを調製した。この薬物-リンカーは、プロテアーゼ開裂可能val-citPAB自己犠牲基を介して細胞毒性剤であるMMAEと結合したマレイミド-DPR基を含んでいる(本明細書中では、マレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAEとも呼ばれる)。比較のために、非自己安定化薬物-リンカーを使用した(本明細書中では、マレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEとも呼ばれる)。これらの剤の唯一の相違点が、マレイミドとval-citリンカーのバリン基との間の単位である。これらの薬物-リンカーのマレイミド単位は、それぞれ無水マレイン酸、モノ保護ジアミノプロピオン酸、及びアミノカプロン酸を使用することで調製できる。
【化93】
【0336】
実施例8-バッファー中でのリガンド-薬物結合体の安定性の評価
標準的なバッファー系では、チオールマレイミド化学反応を使用して調製した生物結合体からのマレイミドの排除は、基本的に検知できない。なぜなら、排除されたマレイミドは、すぐに再びチオールと反応し、そして、完全な結合体の側の足しになる平衡状態をもたらすからである。しかしながら、バッファーへのチオールスカベンジャーの添加は、生物結合体から排除したマレイミドがスカベンジャーと代わりに反応し得るので、持続性で、観察可能なタンパク質からのマレイミドの損失をもたらすシステムを作り出す。こうしたシステムを使用した実験を、非安定化カプロイル薬物-リンカーと一緒に自己安定化ジアミノプロピオニル(DPR)マレイミド薬物-リンカーを用いて調製された抗体-薬物結合体を用いて実施した。ADCを、完全に還元されたヒト化IgG1を使用したマレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAE又はマレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEのいずれかの抗体ごとに8種類の薬物を用いて調製した。薬物積込量は、先に記載したように(Sun 2005)、高分子PLRP-Sカラムによる逆相HPLCによって確認した。自己安定化リンカーの完全なスクシンイミド加水分解はまた、エレクトロスプレー質量分析によっても確認した。これらのADCを、スカベンジャーとしての10mMのN-アセチルシステイン2.5mg/mL含んでいる150mMのTrisバッファー、pH8中に置き、37℃で2週間インキュベートした。インキュベーション中の7つの時点で、それぞれのADCのアリコートを、取り出し、そして、-80℃で冷凍した。タイムコースの完了時に、薬物:抗体比を測定するために、すべてのサンプルを上記逆相HPLC法によって分析した。この試験の結果を
図7に示している。自己安定化DPRマレイミド薬物-リンカーを用いて調製したADCが、このタイムコースにわたって最少の薬物損失を示し(14日間で抗体あたり8.0~7.9の薬物)、その一方で、カプロイルマレイミド薬物-リンカーを用いて調製したADCは、これらの条件下で薬物積込量の約半分を失った(14日間で抗体あたり8.0~3.9の薬物)。
【0337】
実施例9-生体外(Ex Vivo)における血漿中での安定性(逆相法)
実施例8に記載の逆相HPLC法によってヒト以外の血漿サンプル中でのヒト化ADCの薬物積込量の評価は、ヒトFcドメインに選択的に結合するIg選択樹脂(GE Healthcare)を用いてADCをまず単離することによって達成される。ADCを、完全に還元されたヒトIgG1を使用したマレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAE又はマレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEのいずれかの抗体ごとに8種類の薬物を用いて調製した。これらのADC(0.25mg/mL)を、37℃で7日間、無菌のラット血漿中でインキュベートした。インキュベーション中の7つの時点で、50μLのADCのアリコートを、取り出し、そして、-80℃で冷凍した。タイムコースの完了時に、薬物:抗体比を測定するために、ADCを、各サンプルから精製し、そして、逆相HPLC法によって分析した。この試験の結果を
図8に示している。バッファー中で観察されたように、自己安定化マレイミドを用いて調製したADCのラット血漿中でのインキュベーションもまた、マレイミド-カプロイルADCからの薬物の約半分の損失をもたらす条件下で、薬物の観察可能な損失をわずかにもたらすか、又は全くもたらさない。
【0338】
実施例10-生体外における血漿中での安定性(結合薬物法)
生体外においてラット及びヒト血漿中でのADCの安定性を評価するために、第二のアッセイ形式を利用した。ADCを、1抗体あたり4つのチオールのレベルまで部分的に還元したヒトIgG1を使用したマレイミドDPR-val-cit-PAB-MMAE又はマレイミド-カプロイルval-cit-PAB-MMAEのいずれかの抗体あたり4つの薬物を用いて調製した(1抗体あたり4つの薬物を有するADCをもたらす)。これらの2つのADCを、ラット及びヒト血漿中にスパイクさせ、そして、37℃で7日間インキュベートした。インキュベーション中の7つの時点で、アリコートを、取り出し、そして、タイムコースの完了まで-80℃で冷凍した。次に、ADCを、それぞれのサンプルから分離し、先に記載したように、MMAEを、分離したADCからタンパク分解によって放出した(Sanderson 2005)。放出したMMAEを、次に、LC-MS/MSによって定量化し、そして、各ADCについて初期値に対して標準化した(
図9)。ラット及びヒト血漿の両方で、自己安定化マレイミドを用いて調製したADCでは、これらの条件下で薬物をわずかしか又は全く失われなかったが、その一方で、マレイミド-カプロイルADCからは薬物の約半分が失われた。
【0339】
実施例11-試験管内における(in vivo)安定性
上記の実施例10に記載のように、薬物:抗体比は、Ig選択樹脂による精製後の逆相HPLCの分析によってラット血漿中のADCについて計測できる。この方法を、ラットにおける生体内薬物動力学的実験から得られたサンプルに適用した。ADCを、抗体あたり平均4つのチオール(4の薬物:抗体比をもたらす)まで部分的に還元したヒト化IgG1を使用して、マレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAE又はマレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEのいずれかの抗体あたり4つの薬物を用いて調製した。これらのADCを、1抗体あたり4つの薬物を含む種を分離するために、疎水性相互作用クロマトグラフィーによって先に記載したように(Sanderson 2005)さらに精製した。これらのADCを、Sprague-Dawleyラットに10mg/kgで静脈内に投与した。5つの時点で、それぞれの投薬群からの3匹の動物を屠殺し、そして、採血した血液を、血漿に加工し、そして、-80℃で冷凍した。試験完了時点で、すべてのサンプルを、サンプル体積が異なったことを除いて、先に記載したIg選択樹脂法によって加工した。この試験の各時点における薬物:抗体比を、
図10にプロットしている。生体外でラット血漿において観察されたとおり、自己安定化マレイミドを用いて調製したADCは、最小限の薬物損失しか示さず、1抗体あたり4.1の薬物の初期値から、7日後に1抗体あたり3.6の薬物の値まで低下した(12%の低下)。この同じ時間枠の間、マレイミド-カプロイルリンカーを用いて調製したADCの薬物:抗体比は、3.9の初期値から1.5の値まで下がった(61%の低下)。これは、生体外で観察された自己安定化薬物-リンカーの増強した安定性が、生体内環境にも置き換わることを説明している。
【0340】
実施例12-薬物動態
マレイミド-カプロイルADCはマレイミド排除による薬物損失の傾向があるが、それに対して、自己安定化マレイミドADCはそうではないので、その2種類のADCの等量投与後に、抗体結合薬物への暴露がより大きくなると予測するのは、当然である。この予測を確認するために、ADCを、抗体あたり平均4つのチオール(4の薬物:抗体比をもたらす)まで部分的に還元したヒトIgG1を使用して、マレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAE又はマレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEのいずれかの抗体あたり4つの薬物を用いて調製した。これらの2種類のADCを、Sprague-Dawleyラットに2mg/kgで投与し、7つの時点で、血液サンプルを採血し、そして、血漿に加工した。検量線の調製のためのそれぞれのADCの基準と一緒に、これらの血漿サンプルを、先の実施例10に記載したmAb選択樹脂捕捉、そして、パパイン遊離手順に供して、抗体結合MMAEの濃度を計測した。抗体結合薬物の濃度は、自己安定化薬物-リンカーを用いて調製したADCでより高く、違いの程度は時間と共に大きくなった(データ未掲載)。初期の抗体結合薬物の濃度は、重ね合わせることが可能であって、投与量とADCの薬物:抗体比との等価性を反映している。しかしながら、初日のうちに相違が観察され、3日目までには二倍の違いに達していた。これらの高濃度は、マレイミド-カプロイルADCに対して自己安定化ADCに関して、約40%高い抗体結合薬物AUCをもたらした。
【0341】
実施例13-毒物学
毒物学に対する自己安定化マレイミドの影響を評価するために、ADCを、抗体あたり平均4つのチオール(4の薬物:抗体比をもたらす)まで部分的に還元した(いずれかのラット抗原に結合するかわからない)ヒト化IgG1を使用して、マレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAE又はマレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEのいずれかの抗体あたり4つの薬物を用いて調製した。これらのADCを、雌CDRIGSラット(Charles River Laboratories)に10mg/kgで静脈内に投与した(試験物あたり6匹のラットに加えて、6匹のラットにビヒクルだけを与えた)。投薬前と3つの投与後の時点において、毒性のバイオマーカーに関する血液学及び血液生化学検査のために、血液サンプルを採取した。MMAE ADCによって誘発された好中球減少症は、マレイミド-カプロイルADCに比べて自己安定化結合体ではそれほどひどくないように見えた(データ未掲載)。
【0342】
実施例14-放出された薬物の血漿中濃度
先の実施例13に記載の毒物学実験はまた、投与後1時間及び24時間での採血も含んでおり、それを、投与後4日及び7日のサンプルと一緒に、LC-MS/MSによって血漿中の非結合MMAEについて分析した。この分析の結果は、循環MMAEのピーク濃度が、マレイミド-カプロイル-val-cit-PAB-MMAEに対して、自己安定化マレイミド-DPR-val-cit-PAB-MMAE ADCで約2分の1であることを示している(データ未掲載)
【0343】
実施例15-異種移植片活性
ADCの抗腫瘍活性に対する自己安定化薬物-リンカーの影響を評価するために、結合体を、抗CD30抗体であるcAC10を用いて、マレイミド-カプロイル基又は自己安定化マレイミド-DPR基のどちらかを介して抗体に連結されたval-cit-PAB-MMAE細胞毒性ペイロードを含む薬物-リンカーを使用して調製した。これらのADCを、CD30+ヒト悪性腫瘍に関する2つの別々のマウス異種移植モデルで評価した。第1のモデルでは(
図11)、Karpas-299(ヒトALCL)細胞を、雌SCIDマウスの皮下に移植し、そして、約250mm
3の体積に増殖させ、その後、3回の投与として毎週1mg/kg投与した(投与群あたり6匹のマウス)。マレイミド-カプロイルADCを投与した6匹のマウスすべてで、無処置群に対して、多少の腫瘍増殖の遅滞が認められ、そして、2匹の動物では部分的な腫瘍の縮小が認められた;しかしながら、すべての腫瘍が増殖したので、巨大な腫瘍が原因で、群全体を安楽死させた。自己安定化ADC投与群では、5匹の動物に永続的な退縮が認められたのを含めて、6匹の動物すべてで完全寛解(検出可能な腫瘍がない)が認められたが、5匹の動物で、試験過程中の持続的な退縮が認められ、そして、1匹の動物だけ、試験55日目にその腫瘍が再発した後に屠殺した。この試験の結果は、自己安定化薬物-リンカーを用いて調製したADCに関して有意に高い試験管内における抗腫瘍活性を示している。第2のモデルでは、L428(ヒトホジキンリンパ腫)細胞を、が注入した秒に、雌NSGマウスの皮下に移植し、そして、約100mm
3の体積に増殖させ、その後、4回の投与のために4日間毎に1mg/kgにて投与した(投与群あたり6匹のマウス)。両ADC投与群のすべての動物では、処置の間、有意な増殖遅滞が認められたが、しかしながら、すべての腫瘍が、マレイミド-カプロイルと自己安定化ADCとの間に有意な違いなしに、試験28日目以降に増殖を始めた。これにより、異種移植試験において自己安定化ADCで観察された抗腫瘍活性における改善は、モデル依存であるように見える。