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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】パッケージング構造
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1333 20060101AFI20240206BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20240206BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20240206BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20240206BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20240206BHJP
   C07D 209/48 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G02F1/1333
C08G59/14
C08G59/42
C08F299/02
C08F20/36
C07D209/48
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022131137
(22)【出願日】2022-08-19
(65)【公開番号】P2023059232
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】110138097
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】17/578,080
(32)【優先日】2022-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】曾紀輔
(72)【発明者】
【氏名】鄭昭▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】謝添壽
(72)【発明者】
【氏名】周菁慧
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-012721(JP,A)
【文献】特開2020-204014(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117686(WO,A1)
【文献】特開昭60-077652(JP,A)
【文献】特開昭55-104345(JP,A)
【文献】特開2020-186208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
C08F 20/00- 20/70
G02F 1/00- 1/39
C07D 209/48
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学デバイスと、
前記電気光学デバイスの周辺縁部に塗布されたシーラントと、
を含むパッケージング構造であって、
前記シーラントが組成物を硬化させることにより形成され、前記組成物が、
第1のオリゴマーと、
アクリル酸基を含む化合物と液状芳香族エポキシ樹脂とを反応させることにより形成される第2のオリゴマーと、
マルチーアクリレート基を含む化合物と、
開始剤と、
硬化剤と、
を含み、
前記第1のオリゴマーが、二酸モノマーと(a)エポキシ樹脂または(b)メタクリル酸グリシジルとを反応させることにより形成され、前記(a)エポキシ樹脂は(a1)液状芳香族エポキシ樹脂を含み、前記二酸モノマーが下記のいずれかの化学構造を有する、パッケージング構造。

【化5】
(式中、Xは下記のうちのいずれかである。

【化6】
かつ、各R1は独立にCH3、CH2F、CHF2またはCF3である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野はオリゴマー、組成物およびパッケージング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現在主流の消費者用電子製品には液晶ディスプレイ技術が用いられており、それらの再生資源には主に、パネル組立て工程時における不良品および電子機器廃棄物が含まれる。廃棄パネルの再生利用または不良品の再加工のいずれかにかかわらず、2枚のガラス基板(例えばCF基板およびTFT基板)は、後続の工程に先立って完全に分離しておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2003/0100681A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0092869A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシーラントは硬化後に分解し得ないため、剥離可能な(detachable)シーラント材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1実施形態は、二酸モノマー(diacid monomer)と(a)エポキシ樹脂または(b)メタクリル酸グリシジルとを反応させることにより形成されるオリゴマーであって、該二酸モノマーが下記のいずれかの化学構造を有するオリゴマーを提供する。
【0006】
【化1】
【0007】
式中、Xは下記のうちのいずれかである。
【0008】
【化2】
【0009】
かつ、各R1は独立にCH3、CH2F、CHF2またはCF3である。
【0010】
本開示の1実施形態は、第1のオリゴマーと、アクリル酸基を含む化合物と液状芳香族エポキシ樹脂とを反応させることにより形成される第2のオリゴマーと、マルチーアクリレート基(multi-acrylate groups)を含む化合物と、開始剤と、硬化剤とを含む組成物であって、該第1のオリゴマーが、二酸モノマーと(a)エポキシ樹脂または(b)メタクリル酸グリシジルとを反応させることにより形成され、該二酸モノマーが下記のいずれかの化学構造を有する、組成物を提供する。
【0011】
【化3】
【0012】
式中、Xは下記のうちのいずれかである。
【0013】
【化4】
【0014】
かつ、各R1は独立にCH3、CH2F、CHF2またはCF3である。
【0015】
本開示の1実施形態は、電気光学デバイスと、該電気光学デバイスの周辺縁部に塗布されるシーラントとを含むパッケージング構造であって、該シーラントが組成物を硬化させることにより形成され、該組成物が、第1のオリゴマーと、アクリル酸基を含む化合物と液状芳香族エポキシ樹脂とを反応させることにより形成される第2のオリゴマーと、マルチーアクリレート基を含む化合物と、開始剤と、硬化剤とを含み、該第1のオリゴマーが、二酸モノマーと(a)エポキシ樹脂または(b)メタクリル酸グリシジルとを反応させることにより形成され、該二酸モノマーが下記のいずれかの化学構造を有する、パッケージング構造を提供する。
【0016】
【化5】
【0017】
式中、Xは下記のうちのいずれかである。
【0018】
【化6】
【0019】
かつ、各R1は独立にCH3、CH2F、CHF2またはCF3である。
【0020】
以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【発明の効果】
【0021】
組成物中のオリゴマーがイミド基(193nmから355nmのレーザー波長を吸収できる)を含む主鎖を備えるため、シーラントがレーザー(例えば、約355nm)に照射されて分解可能となり、これによりパッケージング構造が解体(disassembling)されるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の特定の詳細が示される。ただし、これら特定の詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは明らかであろう。
【0023】
本開示のいくつかの実施形態では、オリゴマー、組成物、パッケージング構造、パッケージング構造を解体する(disassembling)方法が提供される。いくつかの実施形態では、電気光学デバイス中の基板は、分解可能なシーラントにより接着されている。本開示におけるシーラントを形成するのに用いる組成物中、オリゴマーの主なセグメントは、193nmから355nmのレーザーエネルギーを吸収するように、イミド分子構造を含む。いくつかの実施形態において、オリゴマーはアクリレート基またはエポキシ基の分子セグメントを有しており、これによりオリゴマーがレーザーパルスエネルギーを吸収できるようになる。このために、シーラントの体積が急速に膨張する、および/または樹脂の一部分子鎖が切れるが、このことはシーラントを基板からリフトオフ(lifting off)させるのに有利となる。
【0024】
また、組成物は、液晶ディスプレイプロセス用のシーラント材料として用いられる。シーラント材料は、初めに液晶と接触するときには硬化していない。一般に、シーラント材料中のイオンの純度(ion purity)(例えば、塩素イオン濃度)はパネルの表示品質に多大な影響を与える。本開示のシーラント材料は、イオンに関連する問題が生じないようにすることができる。シーラント材料をUVおよび熱硬化した後に、液晶中に溶解しているシーラント材料は無い。
【0025】
本開示の1実施形態は、二酸モノマーと(a)エポキシ樹脂または(b)メタクリル酸グリシジルとを反応させることにより形成されるオリゴマーを提供する。二酸モノマーは下記のいずれかの化学構造を有する。
【0026】
【化7】
【0027】
式中、Xは下記のうちのいずれかである。
【0028】
【化8】
【0029】
かつ、各R1は独立にCH3、CH2F、CHF2またはCF3である。
【0030】
いくつかの実施形態において、(a)エポキシ樹脂には、室温(例えば、約18℃から35℃)で液体状態となる(a1)液状芳香族エポキシ樹脂が含まれる。例えば、(a1)液状芳香族エポキシ樹脂にはビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせが含まれる。ビスフェノールAエポキシ樹脂は下記の化学構造を有する。
【0031】
【化9】

【0032】
ビスフェノールFエポキシ樹脂は下記の化学構造を有する。
【0033】
【化10】
【0034】
いくつかの実施形態において、(a)エポキシ樹脂には(a2)液状脂肪族エポキシ樹脂がさらに含まれる。液状脂肪族エポキシ樹脂は、室温(例えば、約18℃から35℃)で液体状態となる。例えば、(a2)液状脂肪族エポキシ樹脂には、C3-10アルキレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、下記の構造を有する1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)が含まれる。
【0035】
【化11】
【0036】
いくつかの実施形態において、(a)エポキシ樹脂は(a1)液状芳香族エポキシ樹脂であり、二酸モノマーと(a1)液状芳香族エポキシ樹脂とのモル比は1:2から1:8または1:2.5から1:5である。(a1)液状芳香族エポキシ樹脂の量が少なすぎると、二酸モノマーとエポキシ樹脂とが均一相を形成するのが難しくなる。(a1)液状芳香族エポキシ樹脂の量が多すぎると、オリゴマーの粘度が高くなりすぎてシーラント材料として使えなくなる。いくつかの実施形態において、(a)エポキシ樹脂は(a1)液状芳香族エポキシ樹脂および(a2)液状脂肪族エポキシ樹脂の組み合わせであり、このうち二酸モノマーと(a1)液状芳香族エポキシ樹脂とのモル比は1:2から1:8または1:2.5から1:5であり、二酸モノマーと(a2)液状脂肪族エポキシ樹脂とのモル比は1:2から1:7または1:3から1:6である。(a1)液状芳香族エポキシ樹脂の量が少なすぎると、二酸モノマーとエポキシ樹脂とが均一相を形成するのが難しくなる。(a1)液状芳香族エポキシ樹脂の量が多すぎると、オリゴマーの粘度が高くなりすぎてシーラント材料として使えなくなる。(a2)液状脂肪族エポキシ樹脂の量が少なすぎると、二酸モノマーとエポキシ樹脂とが短時間で均一相を形成するのが難しくなる。(a2)液状脂肪族エポキシ樹脂の量が多すぎると、オリゴマー中の二酸モノマーの含有量が少なくなりすぎて、レーザーによる分解プロセスが容易に進まなくなる。
【0037】
いくつかの実施形態では、オリゴマーは、二酸モノマーと(b)メタクリル酸グリシジルとを反応させることにより形成され、このうち二酸モノマーと(b)メタクリル酸グリシジルとのモル比は1:10から1:20または1:15から1:18である。(b)メタクリル酸グリシジルの量が少なすぎると、二酸モノマーとエポキシ樹脂とが均一相を形成するのが難しくなる。(b)メタクリル酸グリシジルの量が多すぎると、オリゴマー中の二酸モノマーの含有量が少なくなりすぎて、レーザーによる分解プロセスが容易に進まなくなる。(b)メタクリル酸グリシジルは下記の化学構造を有する。
【0038】
【化12】
【0039】
いくつかの実施形態において、オリゴマーの重量平均分子量は300,000g/molから800,000g/molであり得る。オリゴマーの重量平均分子量が低すぎると、硬化したシーラント材料の機械特性が悪くなる。オリゴマーの重量平均分子量が高すぎると、オリゴマーが加工し難くなる。いくつかの実施形態において、オリゴマーの両端はエポキシ基であり、オリゴマーはエポキシバインダー樹脂として用いられ得る。
【0040】
本開示の1実施形態は、第1のオリゴマーと、アクリル酸基を含む化合物と液状芳香族エポキシ樹脂とを反応させることにより形成される第2のオリゴマーと、マルチーアクリレート基を含む化合物と、開始剤と、硬化剤とを含む組成物を提供する。第1のオリゴマーは上に記載したオリゴマーであってよく、その詳細な説明はここに繰り返さない。
【0041】
いくつかの実施形態において、組成物の粘度は250,000cpsから400,000cpsであってよい。
【0042】
第2のオリゴマー(アクリル酸基を含む化合物と液状芳香族エポキシ樹脂とを反応させることにより形成されたもの)中、アクリル酸基を含む化合物はアクリル酸であってよく、液状芳香族エポキシ樹脂はビスフェノールAエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂であってよい。アクリル酸基を含む化合物と液状芳香族エポキシ樹脂とのモル比は1:1.05から1:1.5または1:1.05から1:1.33であり得る。液状芳香族エポキシ樹脂の量が少なすぎると、シーラント材料の熱硬化時に第2のオリゴマーを第1のオリゴマーと効率よく反応させることができない。液状芳香族エポキシ樹脂の量が多すぎると、シーラント材料のUV硬化時におけるUV反応転化率(reaction conversion ratio)が不十分となる。いくつかの実施形態において、第2のオリゴマーの重量平均分子量は100,000g/molから500,000g/molであってよい。第2のオリゴマーの重量平均分子量が低すぎると、硬化したシーラント材料の機械特性が悪くなる。第2のオリゴマーの重量平均分子量が高すぎると、第2のオリゴマーが加工し難くなる。いくつかの実施形態において、第1のオリゴマーと第2のオリゴマーとの重量比は1:1から1:10または1:1.5から1:6である。第2のオリゴマーの量が少なすぎると、シーラント材料のUV硬化時におけるUV反応転化率が不十分となる。第2のオリゴマーの量が多すぎると、シーラント材料がレーザー分解プロセスに不利なものとなる。
【0043】
いくつかの実施形態において、マルチーアクリレート基を含む化合物は、ペンタ‐/ヘキサ‐アクリル酸ジペンタエリスリトール(dipentaerythritol penta-/hexa-acrylate,DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate,TMPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(pentaerythritol tetraacrylate,PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(dipentaerythritol pentaacrylate,DPEPA)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ethoxylated trimethylolpropane triacrylate,SR454)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate,SR444)、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、第1のオリゴマーとマルチーアクリレート基を含む化合物との重量比は1:0.05から1:0.5または1:0.09から1:0.38であってよい。マルチーアクリレート基を含む化合物の量が少なすぎると、シーラント材料のUV硬化時におけるUV反応転化率が不十分となる。マルチーアクリレート基を含む化合物の量が多すぎると、硬化したシーラント材料の機械特性が悪くなる。
【0044】
いくつかの実施形態において、開始剤は光開始剤、熱開始剤、またはこれらの組み合わせであってよく、照射または加熱されてラジカルを生じ、二重結合を重合させることができるものである。いくつかの実施形態において、第1のオリゴマーと開始剤との重量比は1:0.01から1:0.4または1:0.06から1:0.15である。開始剤の量が少なすぎると、シーラント材料のUVまたは熱硬化時におけるUVまたは熱反応転化率が不十分となる。開始剤の量が多すぎると、硬化したシーラント材料の機械特性が悪くなる。
【0045】
いくつかの実施形態において、硬化剤は樹脂をさらに架橋および硬化させることができる。例えば、硬化剤は、2-フェニルイミダゾール(2-phenyl imidazole,2PZ)、ジアミノジフェニルスルホン(diaminodiphenyl sulfone,DDS)、三フッ化ホウ素アミン錯体(boron trifluoride-amine complex,BF3-MEA)、ジシアンジアミド(dicyandiamide,DICY)、またはこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態において、第1のオリゴマーと硬化剤との重量比は1:0.03から1:0.18であり得る。硬化剤の量が少なすぎると、シーラント材料の熱硬化時における硬化転化率(curing conversion ratio)が不十分となる。硬化剤の量が多すぎると、シーラント材料の保存の安定性が悪くなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、必要とされる特性に応じて、他の補助剤、例えば無機フィラー、難燃剤、レベリング剤、その他の適した補助剤、またはこれらの組み合わせを、組成物に任意で加えることができる。
【0047】
本開示の1実施形態は、電気光学デバイスと、電気光学デバイスの周辺縁部に塗布されたシーラントとを含むパッケージング構造であって、シーラントが上述した組成物を硬化させることにより形成される、パッケージング構造を提供する。いくつかの実施形態において、電気光学デバイスには液晶ディスプレイ、量子ドット発光ダイオード(quantum dot light-emitting diode)ディスプレイ、有機発光ダイオード(organic light-emitting diode)ディスプレイ、または太陽電池が含まれる。組成物中のオリゴマーがイミド基(193nmから355nmの波長のレーザーを吸収できる)を含む主鎖を備えるため、シーラントが355nmのレーザーに照射されて分解可能となり、これによりパッケージング構造が解体され得るようになる。電気光学デバイスが液晶ディスプレイであるとき、本開示のシーラント材料は、液晶の組成に影響せず、かつUV硬化および熱硬化プロセス後に液晶中に溶解しない。本開示の組成物は、液晶ディスプレイ用のシーラントとして用いられるのみならず、他のディスプレイ(例えば、量子ドット発光ダイオードディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、もしくはその他の適したディスプレイ)または太陽電池用のシーラントとしても用いられるが、それは当該シーラントが基板に対して高い接着力を有すると共に、レーザーに照射された後に分解し得るためである、という点に留意されたい。
【0048】
本開示はまた、パッケージング構造を解体(disassembling)する方法であって、前記パッケージング構造を準備する工程と、シーラントにレーザーを照射しシーラントを分解してパッケージング構造を解体する工程と、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態において、レーザー波長は355nmであり、レーザー強度は20μJ/cm2から120μJ/cm2であり得る(外部電源(Power external):50kHz)。レーザー強度が低すぎると、パッケージング構造を有効に解体できない。レーザー強度が高すぎると、ITOガラスおよびTFT基板が平らにプレスされ(flat-ironed)てしまう可能性があり、これによりITOの抵抗が高まり、TFT基板の金属導体が断線してしまうかもしれない。そうすると、解体された基板は再度利用できなくなってしまう。
【0049】
以下に、当業者が容易に理解できるよう、例示的な実施形態を詳細に説明する。本発明概念は、ここに示される例示的な実施形態に限定されることなく、様々な形式で具体化され得る。明確とするために、周知の部分についての説明は省き、全体を通して類似する参照番号は類似する構想要素を指すものとする。
【実施例
【0050】
合成例1-1
【0051】
4-アミノ安息香酸2モル部、ビスフェノールA二無水物(4,4’-Bisphenol A dianhydride,BPADA)1モル部、および触媒量のイソキノリンをγ-ブチロラクトン(GBL)の溶媒に加えてから、200℃まで加熱し、4時間反応させてモノマーABPを形成した。そのモノマーABPは、以下に示される化学構造を有していた。
【0052】
【化13】
【0053】
合成例1-2
【0054】
1,2,4-トリメリット酸無水物(Trimellitic anhydride,TMA)2モル部、4,4’-オキシジアニリン(4,4’-oxydianiline,ODA)1モル部、および触媒量のイソキノリンをGBLの溶媒に加えてから、200℃まで加熱し、4時間反応させてモノマーODTを形成した。そのモノマーODTは、以下に示される化学構造を有していた。
【0055】
【化14】
【0056】
合成例1-3
【0057】
p-アミノ安息香酸2モル部、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene) diphthalic anhydride,6FDA)1モル部、および触媒量のイソキノリンをGBLの溶媒に加えてから、200℃まで加熱し、4時間反応させてモノマーA6Fを形成した。そのモノマーA6Fは、以下に示される化学構造を有していた。
【0058】
【化15】
【0059】
合成例1-4
【0060】
TMA 2モル部、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane,BAPP)1モル部、および触媒量のイソキノリンをGBLの溶媒に加えてから、200℃まで加熱し、4時間反応させてモノマーBATを形成した。そのモノマーBATは、以下に示される化学構造を有していた。
【0061】
【化16】
【0062】
合成例2-1
【0063】
15重量部のモノマーABP(0.02モル当量(equivalent mole))、15重量部のビスフェノールFエポキシ樹脂(0.09モル当量)、および15重量部の1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(HDGE,0.07モル当量)を混合してから、150℃まで加熱し、4時間反応させてABPバインダー樹脂を形成した。
【0064】
合成例2-2
【0065】
15重量部のモノマーODT(0.03モル当量)、15重量部のビスフェノールFエポキシ樹脂(0.09モル当量)、および30重量部のHDGE(0.13モル当量)を混合してから、150℃まで加熱し、2時間反応させてODTバインダー樹脂を形成した。
【0066】
合成例2-3
【0067】
15重量部のモノマーA6F(0.02モル当量)および15重量部のビスフェノールFエポキシ樹脂(0.09モル当量)を混合してから、150℃まで加熱し、3時間反応させてA6Fバインダー樹脂を形成した。
【0068】
合成例2-4
【0069】
15重量部のモノマーBAT(0.03モル当量)、15重量部のビスフェノールFエポキシ樹脂(0.09モル当量)、および30重量部のHDGE(0.13モル当量)を混合してから、150℃まで加熱し、2時間反応させてBATバインダー樹脂を形成した。
【0070】
合成例2-5
【0071】
15重量部のモノマーABP(0.02モル当量)、50重量部のメタクリル酸グリシジル(GMA、0.35モル当量)、および0.02重量部の触媒トリフェニルホスフェート(TPP)を混合してから、130℃まで加熱し、4時間反応させてABPアクリレートエポキシバインダー樹脂を形成した。
【0072】
合成例2-6
【0073】
80.75重量部のビスフェノールFエポキシ樹脂(0.475モル当量)、35.52重量部のアクリル酸(AA、0.45モル当量)、0.291重量部の触媒TPP、および0.078重量部の熱抑制剤(thermal inhibitor)ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を混合してから、110℃まで加熱し、5時間反応させてアクリレートバインダー樹脂を形成した。
【0074】
合成例2-7
【0075】
15重量部のモノマーABP(0.02モル当量)および30重量部の水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂(0.136モル当量)を混合してから、130℃まで加熱して反応させた。しかしながら、その反応混合物はゲル状となり、さらに使用することのできないものとなった。
【0076】
実施例1
【0077】
ABPバインダー樹脂(第1のオリゴマー)5g、アクリレートバインダー樹脂(合成例2-6、第2のオリゴマー)30g、ペンタ‐/ヘキサ‐アクリル酸ジペンタエリスリトール(DPHA)1.88g、無機フィラーとしてのタルク5.33g、フリーラジカル光開始剤のIRGACURE819(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)0.65g、フリーラジカル熱開始剤のベンゾイルパーオキサイド(BPO)0.7g、および熱硬化剤の2-フェニルイミダゾール(2PZ)0.87gを混合し、室温で研磨してから、撹拌して脱泡し、樹脂組成物を得た。ブルックフィールド粘度計(Brookfield viscometer)により、25℃で、コーンスピンドル#CP-52を用い、回転速度1.0rpmでその樹脂組成物の粘度を測定したところ、その粘度は約250,000cpsであった。その樹脂組成物をガラス基板上に塗布して厚さ約50μmの塗布層を形成してから、365nmおよび1500mJ/cm2の紫外線照射にさらし、次いでオーブンに入れて120℃で30分硬化した。硬化した層の波長355nmの光の透過率を、Agilent8453 Spectrophotometer(UV-VIS計器)を用いて測定した。
【0078】
その樹脂組成物をディスペンサーでITOガラス基板の辺縁部に塗布してから、そのITOガラスをもう1つのITOガラス基板に貼り合わせてプレスした。その積層サンプル(laminated sample)を365nmおよび1500mJ/cm2の紫外線照射にさらし、次いで120℃のオーブンに30分入れて、2枚のITOガラス基板を接着するシーラントを形成した。そのサンプルを、引張速度20mm/minとしてデュアルコラム引張機(dual-column tensile machine)(QC Teck)中でテストして、シーラントの接着力を意味する、その引張りせん断強度を測定した。その後、KYO Nano DPSS Dot Beam Type LLOにより、波長355nmおよび1ヘルツあたりの強度70μJ/cm2(Power external:50kHz)のレーザーをシーラントに印加してシーラントをリフトオフさせ、リフトオフ率を算出した。
【0079】
実施例2
【0080】
実施例2は実施例1と類似しており、実施例2ではABPバインダー樹脂5gをABPバインダー樹脂20gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約450,000cpsであった。
【0081】
実施例3
【0082】
実施例3は実施例1と類似しており、実施例3ではABPバインダー樹脂5gをODTバインダー樹脂5gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約380,000cpsであった。
【0083】
実施例4
【0084】
実施例4は実施例1と類似しており、実施例4ではABPバインダー樹脂5gをA6Fバインダー樹脂10gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約350,000cpsであった。
【0085】
実施例5
【0086】
実施例5は実施例1と類似しており、実施例5ではABPバインダー樹脂5gをBATバインダー樹脂5gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約280,000cpsであった。
【0087】
実施例6
【0088】
実施例6は実施例1と類似しており、実施例6ではABPバインダー樹脂5gをABPアクリレートエポキシバインダー樹脂15gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約350,000cpsであった。
【0089】
実施例7
【0090】
実施例7は実施例1と類似しており、実施例7ではABPバインダー樹脂5gを、ABPバインダー樹脂5gおよびABPアクリレートエポキシバインダー樹脂15gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約300,000cpsであった。
【0091】
実施例8
【0092】
実施例8は実施例1と類似しており、実施例8ではABPバインダー樹脂5gをABPバインダー樹脂22gに替え、かつDPHA 1.88gをDPHA 2.88gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約300,000cpsであった。
【0093】
比較例1
【0094】
比較例1は実施例1と類似しており、比較例1ではABPバインダー樹脂5gをビスフェノールFエポキシ樹脂5gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約200,000cpsであった。
【0095】
比較例2
【0096】
比較例2は実施例1と類似しており、比較例2ではABPバインダー樹脂5gをビスフェノールFエポキシ樹脂15gに替えた点が異なる。樹脂組成物の他の構成成分およびシーラントを測定する方法は実施例1と同様とした。樹脂組成物の粘度は約120,000cpsであった。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例および比較例が示すように、本開示におけるシーラントを形成するのに用いる組成物は、それぞれ特定の構造のエポキシバインダーを有していたため、シーラントはレーザーの照射前には許容範囲の接着力を有し、かつレーザーの照射後には高いリフトオフ率を有していた。
【0099】
開示された方法および材料に様々な変更や変化を加え得るということは、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単に例示として認められるということが意図されており、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。