(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】スクリュ機械及び混練方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/76 20190101AFI20240206BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20240206BHJP
B29B 7/84 20060101ALI20240206BHJP
B29C 48/57 20190101ALI20240206BHJP
B29C 48/58 20190101ALI20240206BHJP
B29C 48/625 20190101ALI20240206BHJP
【FI】
B29C48/76
B29B7/38
B29B7/84
B29C48/57
B29C48/58
B29C48/625
(21)【出願番号】P 2022151459
(22)【出願日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 真伸
(72)【発明者】
【氏名】安倍 賢次
(72)【発明者】
【氏名】岡本 暢彦
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337213(JP,A)
【文献】特開平10-034730(JP,A)
【文献】特開昭59-118438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/38,7/84
B29C 48/57,48/58,48/625,48/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって軸線周りに回転駆動され基端側から先端側へ材料を搬送するスクリュと、
前記スクリュが挿入されるシリンダが形成されるバレルと、
前記バレルに形成される第一ベント孔から排出されようとする前記材料を前記シリンダ内に押し戻す第一ベントスタッファ装置と、
前記バレルに形成される第二ベント孔から排出されようとする前記材料を前記シリンダ内に押し戻す第二ベントスタッファ装置と、を備え、
前記バレルは、
前記シリンダ内へ前記材料を投入するための供給口と、
前記シリンダ内の前記材料を前記バレル外に吐出するための吐出口と、を有し、
前記スクリュは、
前記供給口から前記シリンダ内に供給される前記材料を混練する第一混練部と、
前記第一混練部から前記スクリュの前記先端側に向けて離れた位置に設けられる第二混練部と、を有し、
前記第一ベント孔は、前記スクリュの軸線方向における前記第一混練部と前記第二混練部との間において前記シリンダに開口し、
前記第二ベント孔は、前記スクリュの前記第二混練部よりも前記スクリュの軸線方向の前記先端側において前記シリンダに開口し、
前記第一ベントスタッファ装置及び前記第二ベントスタッファ装置のそれぞれは、
軸線回りに回転駆動され前記材料を前記シリンダ内に押し戻すためのスクリュ部材と、
前記スクリュ部材が挿入されるサイドシリンダ及び当該サイドシリンダに開口する通気口を有するハウジングと、を有し、
前記第一ベントスタッファ装置は、
前記通気口を通じて前記第一ベント孔を大気開放するように構成され、
前記第二ベントスタッファ装置は、真空ポンプを有し、前記第二ベント孔
及び前記ハウジングの前記通気口を通じて前記シリンダ内の気体を前記真空ポンプにより吸引するように構成される、
スクリュ機械。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリュ機械であって、
前記第一混練部は、前記第二混練部よりも充満率が低い、
スクリュ機械。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリュ機械であって、
前記スクリュは、螺旋状のフライトが外周に形成されて前記材料を前記先端側へ向けて搬送する移送部をさらに有し、
前記第一混練部を構成する複数のディスクには、前記移送部の前記フライトのねじれと同方向のねじれを有する順送りディスクが含まれる一方、前記移送部の前記フライトとは反対方向のねじれを有する逆送りディスクは含まれず、
前記第二混練部を構成する複数のディスクには、前記順送りディスク及び前記逆送りディスクの両方が含まれる、
スクリュ機械。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリュ機械であって、
前記第一ベントスタッファ装置及び前記第二ベントスタッファ装置のそれぞれの中心位置を、単一の前記スクリュ部材を備える場合には当該スクリュ部材の中心軸の位置、複数の前記スクリュ部材を備える場合には前記スクリュ部材のうち最も軸間距離が離れた二軸の中央位置とした場合に、
前記スクリュの前記基端側における前記バレルの端部から前記第一ベントスタッファ装置の前記中心位置までの前記スクリュの軸線方向に沿った長さをL1、前記スクリュの径をDとしたとき、L1/Dが21以上32以下であり、
前記スクリュの前記先端側における前記バレルの端部から前記第二ベントスタッファ装置の前記中心位置までの前記スクリュの軸線方向に沿った長さをL2、前記スクリュの径をDとしたとき、L2/Dが5以上11以下である、
スクリュ機械。
【請求項5】
請求項1に記載のスクリュ機械であって、
前記材料としてセルロースナノファイバーと樹脂材との混合材料を混練し吐出する、
スクリュ機械。
【請求項6】
スクリュ機械によってセルロースナノファイバーと樹脂材とが混合された材料を混練する混練方法であって、
回転によって軸線方向の先端側に向けて前記材料を搬送するスクリュが挿入されるバレルのシリンダに対し前記バレルに設けられる供給口を通じて前記材料を供給する工程と、
前記供給口から供給された前記材料を前記スクリュの第一混練部に導いて前記第一混練部によって前記材料を混練する工程と、
前記第一混練部によって混練された前記材料を前記スクリュの第二混練部に導いて前記第二混練部によって前記材料を混練する工程と、
前記第二混練部によって混練された前記材料を前記バレルに形成される吐出口を通じて吐出する工程と、
前記スクリュの軸線方向において前記第一混練部と前記第二混練部との間において前記シリンダに開口する第一ベント孔を通じて、第一ベントスタッファ装置によって前記第一ベント孔から排出されようとする前記材料を前記シリンダ内に押し戻しつつ前記シリンダ内の気体を除去する工程と、
前記スクリュの前記第二混練部よりも前記スクリュの軸線方向の前記先端側において前記シリンダに開口する第二ベント孔を通じ、第二ベントスタッファ装置によって前記第二ベント孔から排出されようとする前記材料を前記シリンダ内に押し戻しつつ前記シリンダ内の気体を除去する工程と、を含み、
前記第一ベントスタッファ装置及び前記第二ベントスタッファ装置のそれぞれは、
軸線回りに回転駆動され前記材料を前記シリンダ内に押し戻すためのスクリュ部材と、
前記スクリュ部材が挿入されるサイドシリンダ及び当該サイドシリンダに開口する通気口を有するハウジングと、を有し、
前記第一ベント孔を通じて気体を除去する工程では、前記第一ベントスタッファ装置が
前記通気口を通じて前記第一ベント孔を大気開放することで気体を除去し、
前記第二ベント孔を通じて気体を除去する工程では、前記第二ベントスタッファ装置の真空ポンプによって前記第二ベント孔
及び前記ハウジングの前記通気口を通じて気体を吸引することで気体を除去する、
混練方法。
【請求項7】
請求項6に記載の混練方法であって、
前記第一混練部は、前記第二混練部よりも充満率が低い、
混練方法。
【請求項8】
請求項7に記載の混練方法であって、
前記スクリュは、螺旋状のフライトが外周に形成されて前記材料を前記先端側へ向けて搬送する移送部を有し、
前記第一混練部を構成する複数のディスクには、前記移送部の前記フライトのねじれと同方向のねじれを有する順送りディスクが含まれる一方、前記移送部の前記フライトとは反対方向のねじれを有する逆送りディスクは含まれず、
前記第二混練部を構成する複数のディスクには、前記順送りディスク及び前記逆送りディスクの両方が含まれる、
混練方法。
【請求項9】
請求項6に記載の混練方法であって、
前記第一ベントスタッファ装置及び前記第二ベントスタッファ装置のそれぞれの中心位置を、単一の前記スクリュ部材を備える場合には当該スクリュ部材の中心軸の位置、複数の前記スクリュ部材を備える場合には前記スクリュ部材のうち最も軸間距離が離れた二軸の中央位置とした場合に、
前記スクリュの基端側における前記バレルの端部から前記第一ベントスタッファ装置の
前記中心位置までの前記スクリュの軸線方向に沿った長さをL1、前記スクリュの径をDとしたとき、L1/Dが21以上32以下であり、
前記スクリュの前記先端側における前記バレルの端部から前記第二ベントスタッファ装置の
前記中心位置までの前記スクリュの軸線方向に沿った長さをL2、前記スクリュの径をDとしたとき、L2/Dが5以上11以下である、
混練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュ機械及び混練方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒状または粉体状の材料をスクリュによって搬送しながら混練・溶融させて吐出するスクリュ機械として種々のものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、第1端部に吐出口が形成されたシリンダと、シリンダ内で回転するスクリュと、シリンダの第2端部側に取付けられ、当該シリンダ内に被混練物を供給するホッパと、を備え、スクリュの軸方向の中間部には、移送される被混練物を圧縮しつつ発熱させる圧縮部が設けられ、シリンダには、圧縮部の下流側に配置されシリンダの外部と連通する脱気孔が設けられるスクリュ機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなスクリュ機械では、材料の供給時に混入する気体や材料に含まれる水分が気化して生じる水蒸気といったバレル内の気体を除去するためのベント孔(脱気孔)がバレルに設けられることがある。
【0005】
ベント孔を通じて気体を除去するには、ベント孔を大気開放する方法(いわゆる大気開放ベント)と、真空ポンプによりベント孔を通じて気体を吸引する方法(いわゆる真空ベント)と、が知られている。真空ベントでは、気体の除去量を大きくすることができる一方、材料が溶融されておらず粉体状であると、気体と共に材料も吸引されるおそれがある。
【0006】
また、スクリュ機械において、材料に含まれる気体量が多いと、ベント孔から気体と共に材料も排出されるおそれがある。これを抑制するためには、スクリュ機械への材料投入量を減らすことも考えられるが、その場合には、スクリュ機械による材料の吐出量が減少し、生産性の低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、生産性を向上させることが可能なスクリュ機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、スクリュ機械は、駆動源によって軸線周りに回転駆動され基端側から先端側へ材料を搬送するスクリュと、スクリュが挿入されるシリンダが形成されるバレルと、バレルに形成される第一ベント孔から排出される材料をシリンダ内に押し戻す第一ベントスタッファ装置と、バレルに形成される第二ベント孔から排出される材料をシリンダ内に押し戻す第二ベントスタッファ装置と、を備え、バレルは、シリンダ内へ材料を投入するための供給口と、シリンダ内の材料をバレル外に吐出するための吐出口と、を有し、スクリュは、供給口からシリンダ内に供給される材料を混練する第一混練部と、第一混練部13からスクリュの先端側に向けて離れた位置に設けられてシリンダ内の材料を混練する第二混練部14と、を有し、第一ベント孔は、スクリュの軸線方向における第一混練部と第二混練部14との間においてシリンダに開口し、第二ベント孔は、スクリュの第二混練部よりもスクリュの軸線方向の先端側においてシリンダに開口し、第一ベントスタッファ装置及び第二ベントスタッファ装置のそれぞれは、軸線回りに回転駆動され材料をシリンダ内に押し戻すためのスクリュ部材と、スクリュ部材が挿入されるサイドシリンダ及び当該サイドシリンダに開口する通気口を有するハウジングと、を有し、第一ベントスタッファ装置は、通気口を通じて第一ベント孔を大気開放するように構成され、第二ベントスタッファ装置は、真空ポンプを有し、第二ベント孔及び通気口を通じてシリンダ内の気体を真空ポンプにより吸引するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
この態様によれば、第一混練部によって混練され第二混練部には達していない第一混練部と第二混練部との間に粉体状の材料が存在していても、第一ベント孔では真空ベントではなく大気開放ベントが行われるため、粉体状の材料が真空ポンプによって吸引されることを回避できる。さらに、第一ベント孔及び第二ベント孔では、それぞれ第一ベントスタッファ装置及び第二ベントスタッファ装置によって材料の排出が抑制される。したがって、第一ベント孔及び第二ベント孔において材料の排出を抑制しつつ気体の除去を行うことができるため、スクリュ機械による生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る押出機の全体構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る押出機を示す断面図であり、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る押出機を示す断面図であり、
図1におけるIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るスクリュ機械について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0012】
本実施形態のスクリュ機械は、バレル20のシリンダ21内に供給される粒状または粉体状の材料をスクリュ10a,10bによって搬送しながら混練し、混練された材料をバレル20の吐出口23から押し出して成形する押出機である。以下では、本実施形態のスクリュ機械を「押出機100」として説明する。本実施形態では、材料は、セルロースナノファイバー(CNF)と樹脂材(例えば、ポリプロピレン)とを混合した複合材料(混合材料)である。
【0013】
押出機100は、
図1及び
図2に示すように、一対のスクリュ10a,10bと、一対のスクリュ10a,10bが挿入されるシリンダ21を有するバレル20と、一対のスクリュ10a,10bをシリンダ21内で回転させる駆動源としての第一モータ30と、を備える。このように、押出機100は、一対のスクリュ10a,10bを備える、いわゆる二軸混練押出機である。なお、押出機100は、二軸混練押出機に限定されず、例えば、一軸(単軸)又は三軸以上の多軸の押出機でもよい。
【0014】
バレル20は、
図1に示すように、複数のバレルユニット20aを一方向に沿って連結することで形成される。バレル20は、一方向に延びるように形成され、その長手方向に沿って一対の挿通孔21a,21b(
図2参照)が形成される筒状部材である。一対の挿通孔21a,21bは、互いに連通しており、一対の挿通孔21a,21bによってシリンダ21が形成される。
【0015】
バレル20の長手方向の一端にあるバレルユニット20aには、シリンダ21内に材料を供給するための供給口22がシリンダ21に開口して形成される。本実施形態では、CNFと樹脂材とが予め混ぜ合わされた状態の材料が、供給口22を通じて供給される。図示は省略するが、材料を供給するフィーダからホッパを通じて供給口22に材料が供給される。
【0016】
バレル20の長手方向の他端にあるバレルユニット20aには、溶融及び混練された材料により生成された混練物を吐出するための吐出口23がシリンダ21に開口して形成される。以下では、シリンダ21において供給口22側(
図1中右側)をシリンダ21の「上流」、吐出口23側(
図1中左側)をシリンダ21の「下流」とも称する。供給口22を通じてシリンダ21内に供給された材料は、スクリュ10a,10bによって下流に向けて搬送され、吐出口23を通じてバレル20外に吐出される。
【0017】
また、バレル20には、
図1から
図3に示すように、シリンダ21内の気体をシリンダ21外へ排出し除去するための第一ベント孔24及び第二ベント孔25が形成される。なお、本実施形態では、第一ベント孔24及び第二ベント孔25以外に、例えばオープンベントを行うベント孔は設けられていない。つまり、バレル20は、シリンダ21をバレル20の外部に連通して気体の通過を許容する孔としては、供給口22、吐出口23、第一ベント孔24、及び第二ベント孔25のみが形成される。
【0018】
また、図示は省略するが、バレル20には、バレル20を加熱する加熱装置、バレル20を冷却する冷却装置、バレル20の温度を検出する温度センサなどが設けられる。
【0019】
一対のスクリュ10a,10bは、
図2に示すように、互いに同様の形状を有して平行に延びて設けられており、互いに噛み合った状態でバレル20のシリンダ21内に挿入される。一対のスクリュ10a,10bは、減速部35を介して第一モータ30(
図1参照)によって、それぞれの中心軸(軸線)回りに同一方向に回転される。つまり、一対のスクリュ10a,10bは、互いに同期して回転される。以下では、一対のスクリュ10a,10bを総称して単に「スクリュ10」とし、具体的構成について説明する。
【0020】
スクリュ10は、
図1に示すように、第一モータ30に連結される基端から先端に向けて、バレル20の長手方向に沿って設けられる軸部材である。スクリュ10の基端が、シリンダ21の上流に位置し、先端がシリンダ21の下流に位置する。
【0021】
スクリュ10は、シリンダ21内の材料を下流に向けて移送する第一移送部11a、第二移送部11b、及び第三移送部11cと、シリンダ21内の材料を混練する第一混練部13及び第二混練部14と、バレル20の外部に突出する端部15と、を有する。本実施形態では、シリンダ21の上流から下流に向けて第一移送部11a、第一混練部13、第二移送部11b、第二混練部14、及び第三移送部11cの順で設けられる。なお、以下では、第一移送部11a、第二移送部11b、及び第三移送部11cを区別しないときは、「移送部11」として総称する。
【0022】
移送部11は、外周に螺旋状のフライト12(スクリュ羽根)を有する。供給口22からシリンダ21に供給された材料は、回転するスクリュ10の第一移送部11aによって下流側の第一混練部13に向けて移送される。つまり、供給口22は、第一移送部11aに臨むようにバレル20に形成される。
【0023】
第二移送部11bは、第一混練部13と第二混練部14との間に設けられるものであり、第一混練部13によって混練された材料を第二混練部14に向けて搬送する。
【0024】
第三移送部11cは、第二混練部14によって混練・溶融された材料を吐出口23へ向けて搬送する。
【0025】
第一混練部13及び第二混練部14は、互いにスクリュ10の軸線方向に離間して設けられる。第二混練部14が、相対的に下流側(スクリュ10の先端側)に設けられる。第一混練部13は、長手方向(スクリュ10の軸方向)に並ぶ複数のディスク(ニーディングディスク)13aによって構成される。同様に、第二混練部14は、長手方向に並ぶ複数のディスク14aによって構成される。
【0026】
ディスクとしては、移送部11のフライト12のねじれと同方向のねじれを有する順送りディスク、移送部11のフライト12のねじれとは反対方向のねじれを有する逆送りディスク、及びねじれを有していない中立ディスクを利用することができる。
【0027】
順送りディスクは、移送部11と同様に、シリンダ21の上流から下流に向けて(言い換えると、スクリュ10の基端側から先端側に向けて)材料を搬送するものである。逆送りディスクは、移送部11及び順送りディスクとは反対方向に材料を搬送するものである。よって、逆送りディスクは、上流から下流に向けて搬送される材料流れを制動するように機能する。中立ディスクは、ねじれがないため、材料を混練する能力のみを有し材料を搬送させる能力を持たないディスクである。
【0028】
第一混練部13を構成する各ディスク13aは、順送りディスク及び中立ディスクのいずれかであって、少なくとも一つの順送りディスクが第一混練部13には含まれる。つまり、第一混練部13には、逆送りディスクが含まれていない。また、第一混練部13は、順送りディスクのみによって構成されてもよい。
【0029】
第二混練部14を構成する各ディスク14aは、順送りディスク、逆送りディスク、及び中立ディスクのいずれかであって、少なくとも一対の順送りディスク及び逆送りディスクが第二混練部14に含まれる。
【0030】
第一混練部13は、搬送された材料を混練する一方で、完全には溶融させない程度の充満率となるように構成される。第二混練部14は、第一混練部13よりも充満率が大きくなるように構成され、搬送された材料を混練し、バレル20から伝達される熱や混練により生じる熱によって材料を溶融させる。
【0031】
なお、充満率とは、スクリュ10とシリンダ21との間の空間に対してスクリュ10が搬送する材料が占める体積の割合を表すものである。例えば、第一混練部13の充満率は、スクリュ10の径方向において第一混練部13とシリンダ21との間に形成される空間の体積(第一混練部13を収容する部分のシリンダ21の体積と第一混練部13全体の体積の差)によって、当該空間内に実際に含まれる材料の体積を除したものである。
【0032】
スクリュ10の端部15は、スクリュ10の軸線方向において第一混練部13とは反対側において第一移送部11aに接続される。端部15は、バレル20の上流側の端部におけるバレルユニット20aを挿通し、後述する減速部35を介して第一モータ30のモータ軸31に連結される。
【0033】
第一モータ30は、電動モータであり、図示しないコントローラによって作動が制御される。第一モータ30のモータ軸31は、減速部35に連結され、モータ軸31の回転は、減速部35を介して一対のスクリュ10a,10bに伝達される。これにより、一対のスクリュ10a,10bが第一モータ30によって回転駆動される。
【0034】
減速部35は、複数の歯車によって構成される歯車機構(図示省略)によって第一モータ30のモータ軸31の回転を減速して一対のスクリュ10a,10bに伝達する。減速部35には、スクリュ10の端部15が連結される。減速部35の歯車機構の構成は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明及び図示は省略する。
【0035】
押出機100は、
図2及び
図3に示すように、第一ベント孔24から排出されようとする材料をシリンダ21に押し戻す第一ベントスタッファ装置40と、第二ベント孔25から排出されようとする材料をシリンダ21に押し戻す第二ベントスタッファ装置41と、をさらに備える。
【0036】
第一ベント孔24は、
図1に示すように、スクリュ10の軸線方向における第一混練部13と第二混練部14との間の中央に設けられる。より具体的には、第一ベント孔24は、第一混練部13と第二混練部14との間の中央に位置するバレルユニット20aに形成されるものであり、第一ベント孔24の中心が、第一混練部13と第二混練部14との間の中央位置と略一致する。
【0037】
第二ベント孔25は、第二混練部14を収容する最も下流側のバレルユニット20aに対して、下流側から隣接するバレルユニット20aに設けられる。これにより、スクリュ10の軸線方向において、第二ベント孔25は、第二混練部14に対して隣接するように設けられる。
【0038】
第一ベントスタッファ装置40と第二ベントスタッファ装置41とは、第一ベントスタッファ装置40が第一ベント孔24を通じて大気開放ベントするのに対し、第二ベントスタッファ装置41が第二ベント孔25を通じて真空ベントするものである点で相違し、その他の構成は同様である。よって、第一ベントスタッファ装置40と第二ベントスタッファ装置41とで共通の構成については、第一ベントスタッファ装置40を例に説明し、第二ベントスタッファ装置41については第一ベントスタッファ装置40と同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0039】
第一ベントスタッファ装置40は、
図2に示すように、一対のスクリュ部材としてのサイドスクリュ45a,45bと、サイドスクリュ45a,45bが挿入されるサイドシリンダ47aが形成されるハウジング47と、一対のサイドスクリュ45a,45bを軸線周りに回転させる駆動源としての第二モータ48と、を有する。
【0040】
詳細な図示は省略するが、一対のサイドスクリュ45a,45bは、互いに同様の形状を有して平行に延びて設けられており、スクリュ10の軸線方向において並んでいる。一対のサイドスクリュ45a,45bは、互いに噛み合った状態でハウジング47のサイドシリンダ47aに挿入される。一対のサイドスクリュ45a,45bは、第二モータ48によって、それぞれの中心軸(軸線)回りに同一方向に回転される。つまり、一対のサイドスクリュ45a,45bは、互いに同期して回転される。以下では、一対のサイドスクリュ45a,45bを総称して単に「サイドスクリュ45」とし、具体的構成について説明する。
【0041】
サイドスクリュ45は、
図2に示すように、基端が第二モータ48に連結され、先端がバレル20の第一ベント孔24に挿入されるように設けられる軸部材である。サイドスクリュ45は、スクリュ10と略同一水平面上において、スクリュ10に対して略垂直となるように設けられる。
【0042】
スクリュ10と同様に、サイドスクリュ45の外周には、螺旋状のフライト46(スクリュ羽根)が設けられる。フライト46は、サイドスクリュ45の軸方向の一部領域に設けられる。なお、これに限定されず、フライト46は、サイドスクリュ45の軸方向の全体にわたって設けられてもよい。
【0043】
第二モータ48によってサイドスクリュ45が回転することにより、第一ベント孔24からシリンダ21外に排出された材料は、サイドスクリュ45によってシリンダ21内に押し戻される。つまり、サイドスクリュ45は、回転されることで材料をシリンダ21に向けて搬送させる能力を発揮する。第二モータ48は、電動モータであり、図示しないコントローラによって作動が制御される。
【0044】
ハウジング47は、第一ベント孔24を覆うようにボルト等(図示省略)によってバレル20に取り付けられる。ハウジング47は、バレル20に接触(メタルタッチ)しており、これにより、ハウジング47とバレル20との間は、材料が流出しないようにシールされている。バレル20のシリンダ21と同様、図示は省略するが、ハウジング47のサイドシリンダ47aは、それぞれ一対のサイドスクリュ45a,45bが挿入され互いに連通する挿通孔によって構成される。ハウジング47がバレル20に取り付けられた状態で、ハウジング47のサイドシリンダ47aは、第一ベント孔24に連通する。ハウジング47には、サイドシリンダ47aに連通するように通気口47bが形成される。通気口47bは、大気開放される孔である。通気口47bは、サイドスクリュ45のフライト46が形成されていない部分に臨むように形成されている。
【0045】
第一ベントスタッファ装置40においては、スクリュ10の基端側におけるバレルユニット20aの端部からスクリュ10の軸線方向における第一ベントスタッファ装置40の中心位置O1までのスクリュ10の軸線方向に沿った長さをL1、スクリュ10の径をDとしたとき、L1/Dは、21以上32以下となるように設定される。スクリュ10の軸線方向における第一ベントスタッファ装置40の中心位置O1とは、互いに平行な第一ベントスタッファ装置40の一対のサイドスクリュ45a,45bの中心軸に対する、スクリュ10の軸線方向に沿った中央位置に相当する。本実施形態では、第一ベントスタッファ装置40の中心位置O1は、第一ベント孔24の中心位置と略一致する。なお、第一ベントスタッファ装置40の中心位置は、第一ベントスタッファ装置40が単軸の場合は、サイドスクリュ45の中心軸の位置に相当し、三軸以上の多軸の場合にはサイドスクリュ45のうち最も軸間距離が離れた二軸の中央位置に相当する。中心位置については、後述する第二ベントスタッファ装置41も同様である。また、スクリュ10の径Dは、例えば、φ48[mm]のものが利用できる。
【0046】
第二ベントスタッファ装置41は、
図3に示すように、第一ベントスタッファ装置40の構成に加えて、気体を吸引する真空ポンプ49を有している。
【0047】
第二ベントスタッファ装置41のハウジング47に形成される通気口47bは、大気開放されず、図示しない配管を通じて真空ポンプ49に接続される。よって、バレル20の第二ベント孔25も、大気開放されずに真空ポンプ49に接続される。
【0048】
真空ポンプ49は、図示しない駆動源によって駆動され、第二ベントスタッファ装置41のハウジング47の通気口47bを通じてハウジング47内のサイドシリンダ47aの気体を吸引する。これにより、ハウジング47内のサイドシリンダ47aに連通する第二ベント孔25を通じてバレル20のシリンダ21内の気体が、真空ポンプ49により吸引される。真空ポンプ49は、公知の構成を採用できるため、詳細な説明及び図示は省略する。
【0049】
第二ベントスタッファ装置41においては、スクリュ10の先端側におけるバレル20の端部からスクリュ10の軸線方向における第二ベントスタッファ装置41の中心位置O2までのスクリュ10の軸線方向に沿った長さをL2としたとき、L2/Dは、5以上11以下となるように設定される。スクリュ10の軸線方向における第二ベントスタッファ装置41の中心位置O2とは、互いに平行な第二ベントスタッファ装置41の一対のサイドスクリュ45a,45bの中心軸に対する、スクリュ10の軸線方向に沿った中央位置に相当する。なお、本実施形態では、第二ベントスタッファ装置41の中心位置は、第二ベント孔25の中心位置と略一致する。
【0050】
次に、押出機100の作用について説明する。
【0051】
押出機100を稼働させると、第一モータ30は、一対のスクリュ10が同一方向に同一速度で回転するように制御される。また、第一ベントスタッファ装置40及び第二ベントスタッファ装置41のサイドスクリュ45が第二モータ48によって回転されると共に、第二ベントスタッファ装置41の真空ポンプ49が稼働される。
【0052】
供給口22を通じてシリンダ21内に供給される材料は、スクリュ10の第一移送部11aによって下流に向けて長手方向に移送される。
【0053】
第一移送部11aによって下流に搬送された材料は、第一混練部13によって混練される。第一混練部13は、充満率が第二混練部14よりも低く、材料を完全に溶融させない程度に設定される。このため、第一混練部13に導かれる材料は、第一混練部13によって混練されることで加熱される一方、その多く(少なくとも一部)が溶融されずに固体(粉体)の状態のままとなる。
【0054】
第一混練部13によって混練された材料は、第二移送部11bによって第二混練部14に向けて下流側へ搬送される。
【0055】
第二混練部14では、材料が混練されて完全に溶融される。第二混練部14によって溶融された材料は、第三移送部11cによって吐出口23に向けて搬送され、吐出口23を通じて吐出される。
【0056】
ここで、供給口を通じてシリンダ内に材料を供給するのに伴い、材料と共に気体(エア)がシリンダ内に混入することがある。また、材料に含まれる水分が、加熱されることで蒸気化する。このようにして材料内に気体が含まれると、その分材料をシリンダ内に供給できなくなる。つまり、シリンダからのエアの戻りによって材料の供給が阻害される。
【0057】
特に、CNFと樹脂材との複合材料は、水分量が低いとCNFの凝集が生じるおそれがあることから、比較的水分量が多い。本実施形態に係る押出機100で使用される材料としては、例えば、CNFの配合比率が50~70%、材料の水分率が3~7%のものが想定される。このような場合には、材料中の気体の量が特に多くなる。
【0058】
このため、本実施形態では、バレル20に形成される第一ベント孔24及び第二ベント孔25を通じて材料内の気体の除去が行われる。
【0059】
しかしながら、材料に含まれる気体の量が多い場合、気体と共に材料も第一ベント孔24及び第二ベント孔25から排出される、いわゆるベントアップやフレークアップと呼ばれる現象が生じるおそれがある。そこで、本実施形態では、第一ベント孔24及び第二ベント孔25には、それぞれ第一ベントスタッファ装置40及び第二ベントスタッファ装置41が設けられる。第一ベントスタッファ装置40及び第二ベントスタッファ装置41は、サイドスクリュ45が回転することで、第一ベント孔24及び第二ベント孔25からシリンダ21外に排出される材料をシリンダ21内に押し戻す。その一方で、シリンダ21内の気体は、サイドスクリュ45間の噛み合い隙間やサイドスクリュ45とサイドシリンダ47aとの間の小さな隙間を通じて、通気口47bまで導かれ、シリンダ21外に排出される。このため、特に水分量が多い材料であっても、第一ベント孔24及び第二ベント孔25からのベントアップを防止しつつ、効果的にシリンダ21内の気体を除去することができる。
【0060】
また、材料に含まれる水分量(ひいては気体量)が多い場合、供給口から供給された材料を第一混練部において充分に溶融させるように構成すると、材料に含まれる気体が混練部を通過しにくくなる。つまり、材料を完全に溶融させるために第一混練部の充満率を比較的高く設定すると、それに伴い材料中の水分(水蒸気)が第一混練部を通過しにくくなる。これにより、材料に含まれる気体や水蒸気が供給口に向けて逆流し、供給口からシリンダへの材料の供給が阻害されるおそれがある。
【0061】
本実施形態では、第一混練部13では、充満率が第二混練部14よりも低く、材料を完全には溶融させない程度に構成される。これにより、材料中の水蒸気が第一混練部13を通過し第一ベント孔24に導かれやすくなり、供給口22への水蒸気の逆流が抑制される。
【0062】
さらに、第一混練部13で材料を完全に溶融させないため、第一ベントスタッファ装置40は、真空ベントではなく大気開放ベントを行うように構成される。材料は、第一混練部13では完全に溶融されないため、固体(粉体)状態で第二移送部11bにより搬送される。第一ベント孔24を通じて真空ベントした場合には、固体状態の材料が気体と共に真空ポンプ49によって吸引されるおそれがある。したがって、第一ベント孔24では、大気開放ベントを行うように構成することで、第一ベント孔24を通じた材料の排出を抑制しつつ、気体の除去を行うことができる。
【0063】
また、第一混練部13及び第二混練部14付近は、混練に伴って他部よりも圧力が高くなるため、第一混練部13及び第二混練部14付近に第一ベント孔24を設けると、圧力によって気体と共に材料も第一ベント孔24から排出されるおそれがある。このため、第一ベント孔24をスクリュ10の軸線方向において第一混練部13と第二混練部14との略中央に位置するように設けることで、混練による圧力によって材料が第一ベント孔24から排出されることを抑制できる。
【0064】
第二混練部14では、材料が完全に溶融されるため、第二ベント孔25では、真空ベントを行っても溶融した材料は吸引されにくい。よって、第二ベント孔25では、真空ベントを行う構成とすることで、シリンダ21内の気体を効果的に除去することができる。
【0065】
なお、第一ベント孔24の位置は、少なくともスクリュ10の軸線方向において第一混練部13と第二混練部14との間であればよく、第一混練部13と第二混練部14との間のシリンダ21に対して少なくとも一部が臨んでいればよい。また、第二ベント孔25は、第二混練部14よりも下流のシリンダ21に対して少なくとも一部が臨んでいればよい。
【0066】
また、第二ベント孔25は、軸線方向において第二混練部14に対して下流側から隣接する位置に設けられるため、第二混練部14を通過した直後の材料に臨む。このため、第二混練部14による混練の圧力によって気体が第二ベント孔25を通じて排出されやすくなり、気体を効果的に除去することができる。
【0067】
また、押出機100では、第一ベントスタッファ装置40が設けられる第一ベント孔24と、第二ベントスタッファ装置41が設けられる第二ベント孔25と、を通じてシリンダ21内の気体を充分に除去できるため、これら以外のベント孔は、バレル20に形成されていない。気体の除去をより効果的に行うためには、ベント孔の数を増加させることも考えられるが、ベント孔の数を増加させると、バレル20の全長が長くなり、これにより、材料の搬送距離も長くなる。材料の搬送距離が長くなることで、材料に含まれる樹脂材への熱影響が大きくなり、品質に対して影響を及ぼすおそれがある。本実施形態では、第一ベント孔24及び第二ベント孔25以外のベント孔を設けないことで、バレル20の寸法の大型化を抑制し、シリンダ21内の気体を除去しつつ、材料への熱影響を抑制することができる。
【0068】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0069】
押出機100は、第一モータ30によって軸線周りに回転駆動され基端側から先端側へ材料を搬送するスクリュ10と、スクリュ10が挿入されるシリンダ21が形成されるバレル20と、バレル20に形成される第一ベント孔24から排出されようとする材料をシリンダ21内に押し戻す第一ベントスタッファ装置40と、バレル20に形成される第二ベント孔25から排出されようとする材料をシリンダ21内に押し戻す第二ベントスタッファ装置41と、を備え、バレル20は、シリンダ21内へ材料を投入するための供給口22と、シリンダ21内の材料をバレル20外に吐出するための吐出口23と、を有し、スクリュ10は、供給口22からシリンダ21内に供給される材料を混練する第一混練部13と、第一混練部13からスクリュ10の先端側に向けて離れた位置に設けられ第一混練部13よりも充満率が高い第二混練部14と、を有し、第一ベント孔24は、スクリュ10の軸線方向における第一混練部13と第二混練部14との間においてシリンダ21に開口し、第二ベント孔25は、スクリュ10の第二混練部14よりもスクリュ10の軸線方向の先端側においてシリンダ21に開口し、第一ベントスタッファ装置40は、第一ベント孔24を大気開放するように構成され、第二ベントスタッファ装置41は、真空ポンプ49を有し、第二ベント孔25を通じてシリンダ21内の気体を真空ポンプ49により吸引するように構成される。
【0070】
また、本実施形態に係る混練方法は、押出機100によってセルロースナノファイバーと樹脂材とが混合された材料を混練するものである。本実施形態の混練方法は、回転によって軸線方向の先端側に向けて材料を搬送するスクリュ10が挿入されるバレル20のシリンダ21に対しバレル20に設けられる供給口22を通じて材料を供給する工程と、供給口22から供給された材料をスクリュ10の第一混練部13に導いて第一混練部13によって材料を混練する工程と、第一混練部13によって混練された材料をスクリュ10の第二混練部14に導いて第二混練部14によって材料を混練する工程と、第二混練部14によって混練された材料をバレル20に形成される吐出口23を通じて吐出する工程と、スクリュ10の軸線方向において第一混練部13と第二混練部14との間においてシリンダ21に開口する第一ベント孔24を通じて、第一ベントスタッファ装置40によって第一ベント孔24から排出されようとする材料をシリンダ21内に押し戻しつつシリンダ21内の気体を除去する工程と、スクリュ10の第二混練部14よりもスクリュ10の軸線方向の先端側においてシリンダ21に開口する第二ベント孔25を通じ、第二ベントスタッファ装置41によって第二ベント孔25から排出されようとする材料をシリンダ21内に押し戻しつつシリンダ21内の気体を除去する工程と、を含み、第一ベント孔24を通じて気体を除去する工程では、第一ベントスタッファ装置40が第一ベント孔24を大気開放することで気体を除去し、第二ベント孔25を通じて気体を除去する工程では、第二ベントスタッファ装置41の真空ポンプ49によって第二ベント孔25を通じて気体を吸引することで気体を除去する。
【0071】
これらの構成によれば、また、第二混練部14に達していない第一混練部13と第二混練部14との間に粉体状の材料が存在していても、第一ベント孔24では真空ベントではなく大気開放ベントが行われるため、粉体状の材料が真空ポンプ49によって吸引されることも回避できる。さらに、第一ベント孔24及び第二ベント孔25では、それぞれ第一サイドスタッファ装置及び第二サイドスタッファ装置によって材料の排出が抑制される。したがって、供給口22への気体の逆流を抑制しつつ、第一ベント孔24及び第二ベント孔25での材料の排出も抑制されるため、スクリュ機械による生産性を向上させることができる。
【0072】
また、押出機100では、第一混練部13は、第二混練部14よりも充満率が低い。
【0073】
また、押出機100では、スクリュ10は、螺旋状のフライト12が外周に形成されて材料を先端側へ向けて搬送する移送部11をさらに有し、第一混練部13を構成する複数のディスク13aには、移送部11のフライト12のねじれと同方向のねじれを有する順送りディスクが含まれる一方、移送部11のフライト12とは反対方向のねじれを有する逆送りディスクは含まれず、第二混練部14を構成する複数のディスク14aには、順送りディスク及び逆送りディスクの両方が含まれる。
【0074】
これらの構成によれば、第一混練部13の充満率が第二混練部14よりも低いため、第一混練部13での材料の溶融は抑えられ、供給口22に向けた気体の逆流が抑制される。
【0075】
また、押出機100では、バレル20は、スクリュ10の軸線方向に沿って連結される複数のバレルユニット20aによって構成され、第一ベント孔24は、第一混練部13と第二混練部14との間の中央に位置するバレルユニット20aに形成され、第二ベント孔25は、第二混練部14が収容されるバレルユニット20aに対してスクリュ10の先端側に隣接するバレルユニット20aに形成される。
【0076】
また、押出機100では、スクリュ10の基端側におけるバレル20の端部からスクリュ10の軸線方向における第一ベントスタッファ装置40の中心位置O1までのスクリュ10の軸線方向に沿った長さをL1、スクリュ10の径をDとしたとき、L1/Dが21以上32以下であり、スクリュ10の先端側におけるバレル20の端部からスクリュ10の軸線方向における第二ベントスタッファ装置41の中心位置O2までのスクリュ10の軸線方向に沿った長さをL2、スクリュ10の径をDとしたとき、L2/Dが5以上11以下である。
【0077】
これらの構成では、第一ベント孔24が第一混練部13と第二混練部14との間の中央に設けられるため、混練による圧力によって溶融されていない材料が第一ベント孔24から排出されることを抑制することができる。また、第二ベント孔25は、第二混練部14の下流側に隣接して設けられるため、材料中の気体だけを混練の圧力により効果的に排出することができる。このように、これらの構成では、材料の排出を抑制しつつ材料中の気体を効果的に除去することができる。
【0078】
次に、本実施形態の変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。また、各変形例において、上記実施形態と同様の構
成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0079】
上記実施形態では、押出機100は、材料に含まれる水分量が多いCNFと樹脂材の複合材料の混練・溶融に用いられる。押出機100が利用できる材料は、これに限定されるものではなく、種々の材料に対して適用が可能であるが、上述のように、水分量が多い材料に対して特に有用である。
【0080】
また、上記実施形態では、材料は、CNFと樹脂材とが混合された状態で一つのフィーダから供給口22を通じてバレル20のシリンダ21内に供給される。これに対し、CNFを供給口22のホッパに供給するフィーダと樹脂材を供給口22のホッパに供給するフィーダとをそれぞれ設けて、供給口22のホッパ内又はシリンダ21内でCNFと樹脂材とを混合するようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、真空ポンプ49の構成を除き、第一ベントスタッファ装置40と第二ベントスタッファ装置41とは、互いに同様の構成である。これに対し、第一ベントスタッファ装置40と第二ベントスタッファ装置41とは、同様の構成でなくてもよい。例えば、第一ベントスタッファ装置40及び第二ベントスタッファ装置41のサイドスクリュ45は、同一の形状でなくてもよい。
【0082】
サイドスクリュ45は、外周のフライト46のピッチを小さくする、又は、フライト46が設けられる部分の長さ(フライト長さ)を長くすることで、材料を押し戻す能力(搬送能力)が向上する。サイドスクリュ45のフライト46のピッチ又は長さは、材料の性状等に応じて任意に設定することができる。また、通気口47bは、サイドスクリュ45のフライト46に臨む位置に設けられていてもよい。
【0083】
また、第一ベントスタッファ装置40及び第二ベントスタッファ装置41のサイドスクリュ45は、互いに異なる作動条件(回転速度)で作動されるものでもよい。サイドスクリュ45の回転速度を増加させることで、材料を押し戻す能力を向上させることができる。
【0084】
また、第一ベントスタッファ装置40及び第二ベントスタッファ装置41は、それぞれ一対のサイドスクリュ45a,45bを有する二軸のものであるが、押出機100と同様、一軸又は三軸以上の多軸のものでもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0086】
100 押出機
10 スクリュ
11 移送部
12 フライト
13 第一混練部
13a ディスク
14 第二混練部
14a ディスク
20 バレル
20a バレルユニット
21 シリンダ
22 供給口
23 吐出口
24 第一ベント孔
25 第二ベント孔
40 第一ベントスタッファ装置
41 第二ベントスタッファ装置
49 真空ポンプ
【要約】
【課題】押出機の生産性を向上させる。
【解決手段】押出機100は、バレル20に形成される第一ベント孔24から排出されようとする材料をシリンダ21内に押し戻す第一ベントスタッファ装置と、バレル20に形成される第二ベント孔25から排出されようとする材料をシリンダ21内に押し戻す第二ベントスタッファ装置と、を備え、スクリュ10は、供給口22からシリンダ21内に供給される材料を混練する第一混練部13と、第一混練部13からスクリュ10の先端側に向けて離れた位置に設けられ第一混練部13よりも充満率が高い第二混練部14と、を有し、第一ベントスタッファ装置は、第一混練部13と第二混練部14との間の第一ベント孔24を大気開放するように構成され、第二ベントスタッファ装置は、第二混練部14よりも先端側の第二ベント孔25を通じて真空ポンプにより気体を吸引する。
【選択図】
図1