(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】生分解性樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/04 20060101AFI20240206BHJP
B29B 7/38 20060101ALI20240206BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240206BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240206BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240206BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08L23/04
B29B7/38
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CES
C08J5/18 CFD
C08L67/02
C08L101/00
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2022533130
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(86)【国際出願番号】 KR2020014257
(87)【国際公開番号】W WO2021112396
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0159946
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ユ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ユ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジェ ギュ
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067128(JP,A)
【文献】特開2008-213870(JP,A)
【文献】特表2007-520591(JP,A)
【文献】特表2017-513974(JP,A)
【文献】特表2023-504657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/04
B29B 7/38
C08J 5/18
C08L 67/02
C08L 101/00
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン
40乃至
60重量%、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)以外の生分解性樹脂
20乃至
40重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)
15乃至
30重量%を含む
生分解性樹脂組成物であり、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)以外の生分解性樹脂は、熱可塑性デンプン(TPS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリコハク酸ブチレン(PBS)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、セルロース、及びキチンから選択される少なくともいずれか一つ以上を含み、
60日間の埋め立ての条件(温度58℃及び含水率50%)で埋め立て前後重量変化量が20%以上である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中間密度ポリエチレン(MDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、及びエチレン
酢酸ビニル共重合体(EVA)から選択される少なくともいずれか一つ以上を含む
請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性デンプンは、米デンプン、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、及びこれらの変性デンプンから選択される少なくともいずれか一つ以上を含む
請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンの重量平均分子量は100,000乃至1,000,000である
請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の重量平均分子量は10,000乃至100,000である
請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
前記生分解性樹脂組成物の
融点は100℃乃至130℃であり、溶融指数はASTM D1238基準に190℃の2.16Kgで0.01乃至10g/10minである
請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちいずれかに記載の生分解性樹脂組成物を含む
ことを特徴とする生分解性フィルム。
【請求項8】
前記フィルムは、工業用フィルム、食品用フィルム、農業用フィルム、生活用フィルムから選択される少なくともいずれか一つ以上に適用される
請求項7に記載の生分解性フィルム。
【請求項9】
ポリエチレン
40乃至
60重量%、
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)以外の生分解性樹脂
20乃至
40重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)
15乃至
30重量%を含んで、溶融ブレンディング法で製造される
生分解性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)以外の生分解性樹脂は、熱可塑性デンプン(TPS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリコハク酸ブチレン(PBS)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、セルロース、及びキチンから選択される少なくともいずれか一つ以上を含み、
60日間の埋め立ての条件(温度58℃及び含水率50%)で埋め立て前後重量変化量が20%以上である
ことを特徴とする生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記溶融ブレンディングは
、バレルの設定温度が160℃乃至210℃で行われる
請求項9に記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記溶融ブレンディングは、圧出器、ニーダ、ブラベンダープラスチコーダー、ミキシングロール、及び混合器から選択される少なくともいずれか一つ以上を使用する
請求項9に記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記圧出器は、一軸圧出器、二軸圧出器、一軸スクリュー及び二軸スクリュー圧出器から選択されるいずれか一つ以上を使用する
請求項11に記載の生分解性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性樹脂組成物及びその製造方法に関し、より詳しくは、ポリエチレン、生分解性樹脂、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含むことで、生分解性を向上させた技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック(plastic)は、優れた物性と共に安価で軽い特性のため天然素材が有する限界を逸脱してプラスチックを中心とする多様な高分子物質が開発され、現代科学文明を構築してきた。プラスチックは強く、軽く、堅くてよく分解されないという特性があり、このような性質のため産業用素材から使い捨て素材に至るまで多様に使用されている。プラスチックのような合成樹脂の強靭性及び耐久性をより向上させるために長く研究が行われており、このような努力は今も続けられている。しかし、日増しに深刻になっているプラスチック廃棄物による環境汚染が問題になっており、例えば、猛毒性のダイオキシンの検出、環境ホルモンの漏出などのため環境にやさしいプラスチックに対する社会的な要求だけでなく、非分解性プラスチックの使用に対する各国の法律的規制の基準も次第に強化されている。これを解決するために生分解性高分子の開発が非常に重要な事項として扱われており、プラスチック工業においても重要な分野として注目を浴びている。
【0003】
一般に、分解性プラスチックは、米国のASTM(American Society for Testing and Materials)によると、特定環境条件で一定期間化学的構造が相当変化されてその性質変化を標準試験方法で測定可能なプラスチックのことをいい、光分解性、生崩壊性、生分解性プラスチックに分けられる。
【0004】
より詳しくは、光分解性プラスチックとは、光酸化またはケトン光分解などの形態で光によって分解されるプラスチックのことをいう。しかし、光分解性プラスチックは光によって分解されるため、光が遮断された地中に埋め立てたら分解されないという短所がある。生崩壊性プラスチックとは、非分解性の一般的な汎用樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)にデンプンなどのような生分解性物質を一定量添加して製造した部分分解性プラスチックであって、韓国では生分解性プラスチックとの混同を避けるために生崩壊性プラスチックという用語を使用して別途に区分している。生分解性プラスチックとは、一般にプラスチック自体がバクテリア、藻類、カビのような自然界に存在する微生物によって水と二酸化炭素、または水とメタンガスに完全に分解されるプラスチックのことをいう。
【0005】
従来は高分解性プラスチックまたは生崩壊性プラスチックが主に使用されていたが、最近は生分解性プラスチックの開発が重要な事項として扱われている。これは原料の面から天然の植物資源を使用して従来の石油系プラスチックと区別されるだけでなく、自然界内で微生物によって水と二酸化炭素のみに完全に分解される清浄性を提供することができるため、世界的な傾向も生分解性プラスチックが主流になって開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、非混和性のポリマー成分のポリマーブレンドを含む熱可塑性フィルム組成物を開示している。前記組成物は、可塑化された天然ポリマー、ポリオレフィン、生分解性ポリマー、及び同じポリマー分子に相溶化剤を含む。可塑化された天然成分及び生分解性ポリマー成分が多数相を、ペトロリアム-ベースのオレフィンポリマーが少数相を形成する。また、前記組成物は再生可能な天然ポリマー成分を含むフィルムに製造可能であることを言及している。
【0007】
他の例として、特許文献2は、(i)生分解性樹脂、(ii)グルコース単位の水酸基(-OH基)のうち少なくとも一つがシランで疏水化処理されたデンプン、(iii)生分解性高分子に無水マレイン酸(MA)をグラフトさせたグラフト共重合体、エポキシ化されたオイル、及びエポキシ基を有する多官能性化合物からなる群より選択されるいずれか一つまたは2つ以上の相溶化剤を含むマルチングフィルム用樹脂組成物とそのフィルムについて開示している。それによってフィルムの加工性及びマルチング機能性を改善することができ、フィルムの引張強度及び引張伸び率が向上されることを特徴とする。
【0008】
前記特許の場合、殆ど2成分の樹脂を含むことで完全な生分解性を示すことが難しいというところに多少の限界がある。そのため、より良好な物性と共に優れた生分解性を提供するために開発研究が依然として必要とされている。本発明もこのような要求を満足するために、長年の研究の末完成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許広報 第10-2018-0023037号(2018.03.06)
【文献】韓国公開特許広報 第10-2017-0075052号(2017.07.03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を全て解決することを目的とする。
【0011】
本発明の目的は、生分解性樹脂組成物の相溶性を向上させ、それによってポリエチレンの分解性を向上させることである。
【0012】
本発明の目的は、前記生分解性樹脂組成物を含むフィルムを提供して、工業用、食品用、農業用など多様な分野に適用することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したような本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のようである。
【0014】
本発明の一実施例によると、ポリエチレン10乃至70重量%、生分解性樹脂10乃至60重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)10乃至50重量%を含む生分解性樹脂組成物が提供される。
【0015】
本発明の一実施例によると、前記樹脂組成物が含まれる生分解性フィルムが提供される。前記フィルムは、工業用、食品用、農業用、生活用フィルムから選択される少なくともいずれか一つ以上に適用される。
【0016】
本発明の一実施例によると、ポリエチレン10乃至70重量%、生分解性樹脂10乃至60重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)10乃至50重量%を含んで、溶融ブレンディング法で製造される生分解性樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の一実施例によると、前記溶融ブレンディングは、圧出器、ニーダー、ブラベンダープラスチコーダー、ミキシングロール、及び混合器から選択される少なくともいずれか一つ以上を使用して提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による生分解性樹脂組成物は、ポリエチレン、生分解性樹脂、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む3成分の組み合わせで提供されて相溶性を向上させることで、ポリエチレンの分解性を向上させる効果を提供する。
【0019】
本発明による生分解性樹脂組成物を含むフィルムの場合、工業用、食品用、農業用など多様な分野に適用されて、優れた生分解性を提供することで環境問題の解決に寄与する効果を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1による分子量減少を示すデータ値である。
【
図2】実施例2による分子量減少を示すデータ値である。
【
図3】実施例3による分子量減少を示すデータ値である。
【
図4】比較例1による分子量減少を示すデータ値である。
【
図5】比較例2による分子量減少を示すデータ値である。
【
図6】比較例と実施例による樹脂組成物を含むフィルムの分解性を比較する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施例を介して本発明の構成及び作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味にもこれによって本発明が制限されない。
ここに記載されていない内容は、この技術分野で熟練した者であれば技術的に十分に類推できるものであるためその説明を省略する。
【0022】
実施例1
【0023】
LLDPE(Hanwha Chemical社製M2010EA)45重量%、PBAT(GIOSOLTEC社製SOLPOL-1000)15重量%、及びTPS(Daesang社製BIONYL)40重量%を混合し、下記表1のように混合物を製造した。
【0024】
製造された前記混合物を圧出器に入れ、190℃のミキシングゾーン温度で加熱して生分解性樹脂組成物を製造し、直ちに圧出してブローンフィルム(blown film)を製造した。この際、前記ブローンフィルムの加工条件は、スクリュー(screw)が40mmφ、ダイ(die)が75mmφ、ダイギャップ(die gap)が2mmである。スクリューの速度は180rpmである。
【0025】
実施例2
【0026】
PBAT(GIOSOLTEC社製SOLPOL-1000)25重量%及びTPS30重量%を含むことを除いては実施例1と同じく行った。
【0027】
実施例3
【0028】
PBAT(GIOSOLTEC社製SOLPOL-1000)40重量%及びTPS15重量%を含むことを除いては実施例1と同じく行った。
【0029】
比較例1
【0030】
生分解性樹脂組成物はLLDPE(Hanwha Chemical社製M2010EA)45重量%及びTPS(Daesang社製BIONYL)55重量%含むことを除いては実施例1と同じく行った。
【0031】
比較例2
【0032】
生分解性樹脂組成物はLLDPE(Hanwha Chemical社製M2010EA)45重量%及びPBAT(GIOSOLTEC社製SOLPOL-1000)55重量%含むことを除いては実施例1と同じく行った。
【0033】
【0034】
実験例
【0035】
前記表1による組成比を有する実施例と比較例によるフィルムを土壌に埋め立て、埋め立て前後の分子量、重量、及び厚さ率の変化を観察した。埋め立ての条件は微生物の増殖が活性化される一定な温度と含水量が重要であり、標準堆肥条件下で恒温恒湿器を利用して、温度58℃及び含水率50℃に維持した。
【0036】
また、埋め立てた日から60日後に実験を行った。次に、分子量の減少に対しては
図1乃至
図5に示し、フィルムの重量変化及び厚さ率変化に対しては
図6に示した。
【0037】
本発明の実施例による結果である
図1乃至
図3の結果を参照すると、埋め立て60日後、分子量が比較例1及び比較例2の結果である
図4及び
図5に比べ著しく減少したことを確認した。特に、実施例2と3の場合、1.00E+05から1.004E+04にグラフ値が移動したことが分かる。これはポリエチレンの分子量が1,000,000g/molであることから、分子量の大きな減少による優れたポリエチレンの分解効果を確認することができる。また、難分解性であるポリエチレンの含量が45重量%で比較的に高いにもかかわらず、優れた生分解性を提供することが分かる。
【0038】
併せて、
図6の結果を見ると、本発明による実施例1乃至3の場合、比較例1と2に比べフィルムの厚さの変化率が2倍以上高いことを確認した。また、重量変化量は20%以上で、優れた生分解効果を確認した。
【0039】
よって、本発明の場合、ポリエチレン、生分解性樹脂、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の3成分を含む樹脂組成物を提供して相溶性を向上させ、それによってポリエチレンの分解性を向上させる効果を提供する。
【0040】
また、本発明による生分解性樹脂組成物を含むフィルムの場合、工業用、食品用、農業用など多様な分野に適用されて、優れた生分解性を提供することで環境問題の解決に寄与することが期待される。
【0041】
これまで本発明が具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものであって、本発明は前記実施例に限らず、本発明の属する技術分野における通常的な知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正及び変形を図ることができるはずである。
【0042】
よって、本発明の思想は上述した実施例に限って決められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等にまたは等価的に変形された全てのものは本発明の思想の範疇に属するといえる。
【0043】
後述する本発明に関する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は、当業者が本発明を十分に実施し得るように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的な必要はない。例えば、ここに記載されている特定の形状、構造、及び特性は、一実施例に関して本発明の精神及び範囲を逸脱しないながらも他の実施例として具現されてもよい。また、それぞれの開示された実施例内の個別の構成要素の位置または配置は、本発明の精神及び範囲を逸脱しないながらも変更され得る。よって、後述する詳細な説明は限定的な意味で取られるものではなく、本発明の範囲は、適切に説明されるのであれば、その請求項が主張するものと均等な全ての範囲と共に添付した請求項によってのみ限定される。
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施し得るようにするために、本発明の好ましい実施例を参照して詳細に説明する。
【0044】
本発明の生分解性(Biodegradable)とは、バクテリア、藻類、カビのような微生物によって水とCO2またはCH4に分解されるプラスチックを意味する。プラスチックなどの成形製品の物理的瓦解だけでなく、高分子の主鎖の切断による分子量の減少が起こることを意味する。
【0045】
本発明の一実施例によると、ポリエチレン、生分解性樹脂、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む3成分のコンパウンド組み合わせによる生分解性樹脂組成物が提供される。
【0046】
ポリエチレンは安価で機械的物性と加工性に優れるが、難分解性のため環境において環境汚染の主な原因となっている。よって、本発明ではポリエチレンの優れた機械的物性と加工性を維持しながらも生分解性を向上させるために、生分解性樹脂及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含んで提供される。
【0047】
本発明の一実施例によると、ポリエチレン10乃至70重量%、生分解性樹脂10乃至60重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)10乃至50重量%を含む生分解性樹脂組成物が提供される。好ましくは、ポリエチレン20乃至65重量%、生分解性樹脂15乃至40重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15乃至40重量%を含んで提供されるが、より好ましくはポリエチレン40乃至60重量%、生分解性樹脂20乃至40重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15乃至30重量%を含んで提供される。
【0048】
前記ポリエチレンの含量が65重量%を超過したら生分解性分解効果に問題があり、20重量%未満であれば通常のプラスチックが提供する優れた機械的物性及び加工性の提供に限界がある。前記生分解性樹脂の含量が40%を超過したら、引張強度(Tensile Strength)、伸び率(Elongation)、及び落下衝撃強度などが減少する問題があり、15%未満であれば経済的な部分で不利である。そして、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が40%を超過したらポリエステルとの相溶性及び加工性で限界があり、15重量%未満であればそれによる生分解効果が微々である。よって、3成分の組み合わせが前記範囲で提供されれば、前記範囲で生分解性が優秀に提供されることが分かる。これは、後述する図面の結果を基に確認することができる。
【0049】
本発明の一実施例によると、前記ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE、High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン(VLDPE、Very-low-density polyethylene)、低密度ポリエチレン(LDPE、Low Density polyethylene)、中間密度ポリエチレン(MDPE、Medium Density Polyethylene)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE、Linear Low Density Polyethylene)、及びエチレンビニル共重合体(EVA、Ethylene-Vinyl Acetate copolymer)から選択される少なくともいずれか一つ以上を含んで提供される。好ましくは、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)が提供されて優れた耐衝撃性と耐久性などを提供する。
【0050】
本発明の一実施例によると、前記ポリエチレンの重量平均分子量は数十万乃至数百万で提供され、重量平均分子量は100,000乃至1,000,000で提供されるが、好ましくは100,000乃至300,000で提供される。
【0051】
本発明の一実施例によると、前記生分解性樹脂は、熱可塑性デンプン(TPS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリコハク酸ブチレン(PBS)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、セルロース、及びキチンから選択される少なくともいずれか一つ以上を含んで形成されるが、好ましくは、熱可塑性デンプン(TPS)を提供する。
【0052】
前記ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリコハク酸ブチレン、ポリグリコール酸は脂肪族ポリエステルに当たり、これらは微生物による生分解性が優秀で、生体適合性などの特性を提供する。特に、ポリグリコール酸の場合、高強度及び高耐熱性などの機械的物性に優れるため医療用に特に多く活用されている。
【0053】
前記ポリヒドロキシアルカン酸はポリエステルに当たり、優れた生分解性と好気、嫌気、堆肥条件のどの条件でも分解性に優れることが特徴である。また、ポリヒドロキシ酪酸は天然ポリエステルであってポリヒドロキシアルカン酸に属し、D-3-ヒドロキシ-酪酸が直線上に連結された単一重合体であって、非常に多様な細菌が細胞内で合成するエネルギー貯蔵部としてデンプン(starch)またはグリコーゲン(glycogen)のような生物学的機能を提供する。
【0054】
前記セルロース、キチンと天然高分子系高分子の場合、生分解度に優れ供給が容易で、無毒性のような特性のため環境にやさしい素材として提供される。
【0055】
前記熱可塑性デンプンは植物から得られるが、アミロースとアミロペクチンの2つの成分からなる顆粒状の物質のことをいい、例えば、米デンプン、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、及びこれらの変性デンプンから選択される少なくともいずれか一つ以上を含んで提供される。変性デンプンは、デンプンに物理的または化学的処理をしたα-デンプン、酸処理デンプン、酸化デンプン、陽性デンプン、エステルデンプン、エーテルデンプンなどのように提供される。前記デンプン場合、生分解性に優れ、アミロースとアミロペクチンからなるが、アミロースのグルコースはヒドロキシ(-OH)基を含んでおり、親水性と水素結合を含んでいる。
【0056】
本発明の一実施例によると、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の場合、生分解性樹脂であると共に相溶下剤の役割を提供する。通常、ポリオレフィンは化学的性質が非極性であって、極性を有する熱可塑性デンプンとの混錬性が少なく、相溶性が問題となっていた。前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を導入することで、相溶性を向上させながらもベース樹脂であるポリエチレンの優れた生分解性を同時に提供することができる。
【0057】
本発明の一実施例によると、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の重量平均分子量は10,000乃至100,000で提供されるが、好ましくは20,000乃至50,000で提供される。
【0058】
本発明の一実施例によると、前記生分解性樹脂組成物の溶融温度は100℃乃至130℃であり、前記樹脂組成物の溶融指数はASTM D1238基準に190℃の2.16Kgで0.01乃至10g/10minで提供される。前記溶融温度は通常的に測定される方法である示差走査熱量計(DSC、Differential Scanning Calorimetry)、または動的粘弾性測定(DMA、dynamic mechanical analysis)で測定され、前記溶融指数(MI)はASTM D1238によって測定される。
【0059】
本発明の一実施例によると、生分解性樹脂組成物含む生分解性フィルムが提供される。
【0060】
前記フィルムの場合、工業用フィルム、食品用フィルム、農業用フィルム、生活用フィルムから選択される少なくともいずれか一つ以上に提供されるが、従来プラスチックが提供する機械的物性はそのまま提供しながらも生分解性は向上されて提供される。それによって後述する
図6を参照すると、フィルムの優れた分解性を確認することができる。よって、フィルムの使用後、一定条件を備えた施設(Compost)で堆肥化される。また、あいにく燃焼させるとしても、発生熱量が低いためダイオキシンなどの有害物質の放出を最小化することができる。
【0061】
本発明の一実施例によると、前記フィルムの厚さは20乃至40μmで提供されるが、好ましくは30μmで提供される。
【0062】
一方、前記組成物を含んで、生分解性樹脂組成物に対する製造方法は以下のようである。また、上述した生分解性樹脂組成物と同じ内容が適用され、重複する範囲内で説明を省略する。
【0063】
本発明の一実施例によると、ポリエチレン10乃至70重量%、生分解性樹脂10乃至60重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)10乃至50重量%を含んで、溶融ブレンディング法で製造される生分解性樹脂組成物の製造方法が提供される。好ましくは、ポリエチレン20乃至65重量%、生分解性樹脂15乃至40重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15乃至40重量%を含んで提供されるが、より好ましくはポリエチレン40乃至60重量%、生分解性樹脂20乃至40重量%、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)15乃至30重量%を含んで提供される。
【0064】
本発明の一実施例によると、前記溶融ブレンディングは、圧出器、ニーダー(Kneader)、ブラベンダープラスチコーダー(Brabender Plasticorder)、ミキシングロール(Mixing Roll)、及び混合器から選択される少なくともいずれか一つ以上を使用して提供される。
【0065】
本発明の一実施例によると、前記圧出器は、一軸圧出器、二軸圧出器、一軸スクリュー及び二軸スクリュー圧出器から選択されるいずれか一つ以上を使用して提供される。好ましくは、二軸圧出器を提供して優れた混錬性と容易な加工性を提供する。
【0066】
本発明の一実施例によると、前記溶融ブレンディングで投入するようになる各種原料物質によって工程条件を最適化して工程を行う。溶融温度は100℃乃至300℃が提供されるが、好ましくは160℃乃至210℃が提供され、圧出器スクリューの回転速度は40rpm乃至700rpmで提供されるが、好ましくは100rpm乃至200rpmで提供される。