(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】タイムアンビギュイティの高速な分析のための無線信号装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 19/01 20100101AFI20240206BHJP
【FI】
G01S19/01
(21)【出願番号】P 2022542674
(86)(22)【出願日】2020-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2020053581
(87)【国際公開番号】W WO2021160256
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】522277467
【氏名又は名称】イーエスエー-ヨーロピアン スペース エージェンシー
【氏名又は名称原語表記】ESA - EUROPEAN SPACE AGENCY
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア モリーナ、 ホセ、 アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルナー、 ステファン
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507504(JP,A)
【文献】特表2015-528906(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0354473(US,A1)
【文献】国際公開第02/088768(WO,A2)
【文献】Matteo Paonni et al.,"Quasi-Pilot Signals: Improving Sensitivity and TTFF without Compromises",Proceedings of the 24th International Technical Meeting of the Satellite Division of The Institute of Navigation (ION GNSS 2011),2011年09月,pp.1254-1263
【文献】Stefan Wallner et al.,"Novel Concepts on GNSS Signal Design serving Emerging GNSS User Categories: Quasi-Pilot Signal",The European Navigation Conference (ENC 2020),2020年10月,pp.1-22,DOI: 10.23919/ENC48637.2020.9317352
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
H04B 1/00-1/76
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送信するように適合された無線信号装置であって、前記無線信号は第1信号成分及び第2信号成分を有し、
前記第1信号成分は、第1プライマリコードにおいて変調されたX
1第1重畳コードシンボルの第1重畳コードを含み、前記第1重畳コードはC
1単位時間の第1重畳コード時間を有し、各第1重畳コードシンボルはS
1単位時間の時間を有し、
前記第2信号成分は、第2プライマリコードにおいて変調されたX
2第2重畳コードシンボルの第2重畳コードを含み、前記第2重畳コードはC
2単位時間の第2重畳コード時間を有し、各第2重畳コードシンボルはS
2単位時間の時間を有し、
前記第1信号成分の重畳コード時間C
1、及び、前記第2信号成分の重畳コード時間C
2
は、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、2NはC
1とC
2の最小公倍数に等しい、前記リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されるか、
又は、
前記第1信号成分の前記重畳コード時間C
1及び前記第2信号成分の重畳コードシンボル時間S
2は、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードシンボルの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、2NはC
1とS
2の最小公倍数に等しい、リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されている、
のいずれかである、無線信号装置。
【請求項2】
無線信号を受信するように適合された無線信号装置であって、前記無線信号は第1信号成分及び第2信号成分を有し、
前記第1信号成分は、第1プライマリコードにおいて変調されたX
1第1重畳コードシンボルの第1重畳コードを含み、前記第1重畳コードはC
1単位時間の第1重畳コード時間を有し、各第1重畳コードシンボルはS
1単位時間を有し、
前記第2信号成分は、第2プライマリコードにおいて変調されたX
2第2重畳コードシンボルの第2重畳コードを含み、前記第2重畳コードはC
2単位時間の第2重畳コード時間を有し、
各第2重畳コードシンボルはS
2
単位時間を有し、
前記第1信号成分の重畳コード時間C
1、及び、前記第2信号成分の重畳コード時間C
2
は、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、2NはC
1とC
2の最小公倍数に等しい、前記リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されるか、
又は、
前記第1信号成分の前記重畳コード時間C
1及び前記第2信号成分の重畳コードシンボル時間S
2は、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードシンボルの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間の
リファレンスコードフェーズオフセットであって、2NはC
1とS
2の最小公倍数に等しい、リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されており、
前記無線信号装置は、
受信された前記第1重畳コードと、前記第2重畳コード又は第2重畳コードシンボルのいずれかとの間のコードフェーズオフセットを登録し、かつ、
前記コードフェーズオフセットに基づき、±N単位時間の範囲内のタイムアンビギュイティを分析する
ようにさらに適合されている、無線信号装置。
【請求項3】
前記リファレンスコードフェーズオフセットDがゼロに等しい、
請求項1又は2に記載の無線信号装置。
【請求項4】
前記第1信号成分及び/又は前記第2信号成分は、符号分割多元接続(CDMA)信号;時分割多元接続(TDMA)信号;及び周波数分割多元接続(FDMA)信号の群から選択される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線信号装置。
【請求項5】
前記第1信号成分及び前記第2信号成分は、同じキャリア周波数で送信又は受信される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の無線信号装置。
【請求項6】
前記第1信号成分及び前記第2信号成分は、異なるキャリア周波数で送信又は受信される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の無線信号装置。
【請求項7】
前記第1信号成分及び/又は前記第2信号成分の重畳コードシンボルは、Yのサブシンボルのシーケンスによってさらに変調され、かつ、各サブシンボルの時間は可変であり時間依存性である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の無線信号装置。
【請求項8】
前記第1信号成分及び前記第2信号成分は、全地球航法衛星システム(GNSS)信号である、
請求項1から7のいずれか一項に無線信号装置。
【請求項9】
前記
第1信号成分及び前記第2信号成分のうちの1つは、現在のGNSSシステムによって送信されるレガシー信号に基づくものである、
請求項8に記載の無線信号装置。
【請求項10】
受信された無線信号に基づいて受信機においてタイムアンビギュイティを分析する方法であって、
前記無線信号は第1信号成分及び第2信号成分を有し、
前記第1信号成分は、複数のX
1コードシンボルの第1コードを含み、前記第1コードはC
1単位時間の時間を有し、各コードシンボルはS
1単位時間の時間を有し、
前記第2信号成分は、複数のX
2コードシンボルの第2コードを含み、前記第2コードはC
2単位時間の時間を有し、各コードシンボルはS
2単位時間の時間を有し、
前記第1信号成分のコード時間C
1、及び、前記第2信号成分のコード時間C
2
は、前記第1コード及び前記第2コードの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、2NはC
1とC
2の最小公倍数に等しい、前記リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されるか、
又は、
前記第1信号成分の前記コード時間C
1及び前記第2信号成分のコードシンボル時間S
2は、前記第1コード及び第2コードシンボルの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間の
リファレンスコードフェーズオフセットであって、2NはC
1とS
2の最小公倍数に等しい、リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されたものであって、
前記方法は、
前記第1信号成分及び前記第2信号成分の各々を取得するステップと、
前記第1コード及び前記第2コードの各々に対してコードシンボル同期及び/又はコード同期を実行するステップと、
同期された前記第1コードと同期された前記第2コードとの間のコードフェーズオフセット、又は、同期された前記第1コードと同期された前記第2コードシンボルとの間のコードシンボルフェーズオフセットを推定するステップと、
時間依存性の前記コードフェーズオフセット又は時間依存性の前記コードシンボルフェーズオフセットに基づいて、±N単位時間の範囲内で受信機のタイムアンビギュイティを分析するステップと、
を有する、
方法。
【請求項11】
前記タイムアンビギュイティを分析するステップは、事前に計算されたルックアップテーブルにおいて、推定されたコードフェーズオフセット又はコードシンボルフェーズオフセットを検索することを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1信号成分又は第2信号成分のコードシンボルは、Yのサブシンボルのシーケンスによってさらに変調され、かつ、各サブシンボルの時間は可変であり時間依存性であり、
前記方法は、
前記第1信号成分又は第2信号成分の各コードシンボルの前記サブシンボルの可変遷移フェージングを推定することと、
±KN単位時間の範囲内で受信機のタイムアンビギュイティを分析することであって、ここで、Kは前記Yのサブシンボルが取り得る状態の数である、前記タイムアンビギュイティを分析することと、
を含む、
請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
複数の前記コードシンボルのサブシンボルの可変遷移フェージングは、週の時間、日の時間、又は、任意の間隔の時間の導出のため、受信機のタイムアンビギュイティの分析を拡張するように推定される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記
第1信号成分及び前記第2信号成分のうちの1つについての前記取得、コード同期、及びコードシンボル同期のうちの1つ又は複数は、他の前記信号成分の取得を支援する、
請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1信号成分及び前記第2信号成分は、同じキャリア周波数で受信され、同じプライマリコードにおいて変調され、前記プライマリコードの単一の取得を必要とする、
請求項10から14のいずれか
一項に記載の方法。
【請求項16】
コード同期又はコードシンボル同期は、
時間的ダイバーシティを利用するため単一又は複数のコード又はコードシンボル遷移を検出することを含む、
請求項10から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コード同期又はコードシンボル同期は、
空間的ダイバーシティを利用するため異なる送信機から受信された1つ又は複数の無線信号から単一又は複数のコード又はコードシンボル遷移を検出することを含む、
請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号によって送信される時間情報の取得及び分析に関する。
【背景技術】
【0002】
全地球航法衛星システム(GNSS)は、送信機から受信機に送信される正確な時間情報に大きく依存する無線システムの一例である。現在のGNSSシステムは、受信されるのに数秒を要し得るナビゲーションメッセージ中の時間マーカー、例えば、週の時間(TOW)情報又はセカンダリ同期パターン(SSP)を拡散する信号の伝送に依存している。
【0003】
したがって、改善された無線信号送信機及び受信機が有利であり、特に、タイムアンビギュイティの高速な分析を可能にする無線システムが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、タイムアンビギュイティの高速な分析を可能にする、無線信号を送信する無線信号装置を提供することである。
【0005】
また、本発明の目的は、無線信号を受信し、タイムアンビギュイティの高速な分析を行う無線信号装置を提供することにある。
【0006】
本発明のさらなる目的は、従来技術の代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面においては、無線信号装置を提供することにより、上述した目的及び他のいくつかの目的を達成することを意図している。無線信号装置は、無線信号を送信するように適合されている。前記無線信号は第1信号成分及び第2信号成分を有する。前記第1信号成分は、第1プライマリコードにおいて変調されたX1第1重畳コードシンボルの第1重畳コードを含み、前記第1重畳コードはC1単位時間の第1重畳コード時間を有し、各第1重畳コードシンボルはS1単位時間の時間を有する。同様に、前記第2信号成分は、第2プライマリコードにおいて変調されたX2第2重畳コードシンボルの第2重畳コードを含み、前記第2重畳コードはC2単位時間の第2重畳コード時間を有し、各第2重畳コードシンボルはS2単位時間を有する。前記第1信号成分の重畳コード時間C1、及び、前記第2信号成分の重畳コード時間C2
が、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、ここで2NはC1とC2の最小公倍数に等しい、前記リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択される。又は、前記第1信号成分の前記重畳コード時間C1及び前記第2信号成分の重畳コードシンボル時間S2は、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードシンボルの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、ここで、2NはC1とS2の最小公倍数に等しい、リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されている。このデバイスによれば、無線信号は、第1信号成分と第2信号成分との間、又は、第1信号成分と第2信号成分の重畳コードシンボルとの間の、時間依存性のコードフェーズオフセットとともに生成され得る。次いで、この時間依存性のコードフェーズオフセットにより、2N単位時間の範囲内のタイムアンビギュイティの解消を可能にするために、受信機によって利用され得る。
【0008】
上述の目的及びいくつかの他の目的はまた、本発明の第2の態様において、無線信号を受信するように適合された無線信号装置を提供することによって達成されることが意図される。無線信号装置は、無線信号を受信するように適合された装置である。前記無線信号は第1信号成分及び第2信号成分を有する。前記第1信号成分は、第1プライマリコードにおいて変調されたX1第1重畳コードシンボルの第1重畳コードを含み、前記第1重畳コードはC1単位時間の第1重畳コード時間を有し、各第1重畳コードシンボルはS1単位時間の時間を有する。同様に、前記第2信号成分は、第2プライマリコードにおいて変調されたX2第2重畳コードシンボルの第2重畳コードを含み、前記第2重畳コードはC2単位時間の第2重畳コード時間を有する。前記第1信号成分の重畳コード時間C1、及び、前記第2信号成分の重畳コード時間C2
が、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、ここで2NはC1とC2の最小公倍数に等しい、前記リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択される。又は、前記第1信号成分の前記重畳コード時間C1及び前記第2信号成分の重畳コードシンボル時間S2は、前記第1重畳コード及び前記第2重畳コードシンボルの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、ここで、2NはC1とS2の最小公倍数に等しい、リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択されている。前記無線信号装置は、さらに、-受信された前記第1重畳コードと、前記第2重畳コード又は第2重畳コードシンボルのいずれかとの間のコードフェーズオフセットを登録し、かつ、前記コードフェーズオフセットに基づき、±N単位時間の範囲内のタイムアンビギュイティを分析するように適合されている。このようにして、無線信号装置は、第1信号成分と第2信号成分との間の変動するコードフェーズオフセットを引き起こす時間で、2つの重畳コード、又は、第2重畳コードシンボルを有する第1重畳コードを利用することによって、タイムアンビギュイティの高速な分析を実行することが可能となる。
【0009】
ある実施形態では、リファレンスコードフェーズオフセットDは、ゼロに等しい。
【0010】
ある実施形態では、前記第1信号成分及び/又は前記第2信号成分は、符号分割多元接続(CDMA)信号;時分割多元接続(TDMA)信号;及び周波数分割多元接続(FDMA)信号の群から選択される。
【0011】
ある実施形態では、前記第1信号成分及び前記第2信号成分は、同じキャリア周波数で送信又は受信される、同じプライマリコードで変調される。
【0012】
ある実施形態では、前記第1信号成分及び前記第2信号成分は、異なるキャリア周波数で送信又は受信される。本発明の一実施形態では、第1及び/又は第2信号成分のプライマリコードは暗号化される。
【0013】
本発明のある実施形態では、第1及び/又は第2信号成分の重畳コードは暗号化される。
【0014】
ある実施形態では、前記第1信号成分及び/又は前記第2信号成分の前記重畳コードシンボルは、Yのサブシンボルのシーケンスによってさらに変調され、かつ、各サブシンボルの時間は可変であり時間依存性である。これは、各重畳コードシンボルにおける「可変遷移フェージング」(VTP)シンボルを変調することと等価である。この場合、各重畳コードシンボルは「VTPシンボル」に相当する。各重畳コードシンボル内のVTPシンボルは、1つ又はいくつかの重畳コードシンボルにおいて、時間間隔、たとえば、週の間隔(TOW)を変調することを可能にする。受信機は、VTPシンボルの取り出しと等価である、サブシンボルの遷移の推定のみに基づいて、時間間隔を取り出すことができる。
【0015】
ある実施形態では、第1及び第2信号成分は全地球航法衛星システム(GNSS)信号である。この技法の適用は、受信機による正確な時間の取得が位置決定を得るために最も重要であるため、GNSSの使用に特に有利である。現在のシステムでは、衛星から送信される次のタイムマーカー情報、例えば、週の時間(TOW)情報を受信機が待つことが必要であり、これには数秒がかかり得る。一方、本発明は、数百ms以内、例えば200ms以内の正確な時間情報を分析することを可能にする。
【0016】
ある実施形態では、信号成分の1つは、現在のGNSSシステムによって送信されているレガシー信号に基づいている。このように、本発明は、現在のレガシー信号と事後的な互換性がある。
【0017】
特定の実施形態において、第1及び第2の信号成分は、欧州ガリレオシステムのコンステレーションの任意の衛星によって送信される。
【0018】
最後に、上記の目的及びいくつかの他の目的はまた、本発明の第3の態様において、受信された無線信号に基づいて受信機における時間の曖昧さを解決する方法を提供することによって達成されることが意図される。前記無線信号は第1信号成分及び第2信号成分を有する。前記第1信号成分は、複数のX1コードシンボルの第1コードを含み、前記第1コードはC1単位時間の時間を有し、各コードシンボルはS1単位時間の時間を有する。同様に、前記第2信号成分は、複数のX2コードシンボルの第2コードを含み、前記第2コードはC2単位時間の時間を有し、各コードシンボルはS2の単位時間の時間を有する。前記第1信号成分のコード時間C1、及び、前記第2信号成分のコード時間C2
が、前記第1コード及び前記第2コードの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、ここで2NはC1とC2の最小公倍数に等しい、前記リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択される。又は、前記第1信号成分の前記コード時間C1及び前記第2信号成分のコードシンボル時間S2は、前記第1コード及び前記第2コードシンボルの開始又は終了が2N単位時間ごとにD単位時間のリファレンスコードフェーズオフセットであって、ここで、2NはC1とS2の最小公倍数に等しい、リファレンスコードフェーズオフセットを有するように選択される。前記方法は、前記第1信号成分及び前記第2信号成分の各々を取得するステップと、前記第1コード及び前記第2コードの各々に対してコードシンボル同期及び/又はコード同期を実行するステップと、を有する。前記方法は、さらに、同期された前記第1符号と同期された前記第2符号との間のコードフェーズオフセット、又は、同期された前記第1コードと同期された前記第2コードシンボルとの間のコードシンボルフェーズオフセットを推定するステップを有する。最後に、前記方法は、時間依存性の前記コードフェーズオフセット又は時間依存性の前記コードシンボルフェーズオフセットに基づいて、±N単位時間の範囲内で受信機のタイムアンビギュイティを分析するステップ、を有する。この方法を使用して、受信機は、第1信号成分と第2信号成分との間の変動する位相差を引き起こす異なる時間で、2つのコード又は第2ゴードシンボルを有する第1コードを利用することによって、タイムアンビギュイティの高速な分析を実行することが可能になる。
【0019】
本方法の特定の実施形態では、第1コードは第1重畳コードであり、及び/又は、第2コードは第2重畳コードである。
【0020】
本発明の一形態では、タイムアンビギュイティを分析することは、事前に計算されたルックアップテーブルにおいて、推定されたコードフェーズオフセット又はコードシンボルフェーズオフセットを検索することを含む。このようにして、コードフェーズオフセット又はコードシンボルフェーズオフセットが、高速かつ計算効率の良い方法でタイムアンビギュイティを分析するために使用され得る。
【0021】
本発明による方法の一形態では、第1又は第2信号成分のコードシンボルは、Yのサブシンボルのシーケンスによってさらに変調される。各サブシンボルの持続時間は可変であり時間依存性である。本方法は、第1信号成分又は第2信号成分のそれぞれのコードシンボルのサブシンボルの可変遷移フェージングを推定することを含む。本方法は、±KN単位時間の範囲内で受信機のタイムアンビギュイティを分析することをさらに含み、Kは、Yのサブシンボルがとり得る可能な状態の数である。
【0022】
本発明による方法の一形態では、複数のコードシンボルのサブシンボルの可変遷移フェージングは、週の時間、日の時間、又は概して、任意の間隔の時間の導出のための受信機のタイムアンビギュイティの分析を拡張するように推定される。本発明による方法の一形態では、第1信号成分及び第2信号成分のうちの1つの取得、コード同期、及び/又は、コードシンボル同期は、他の信号成分の取得の前に実行される。
【0023】
本発明による方法の一形態では、信号成分のうちの1つの取得、コード同期、及びコードシンボル同期のうちの1つ又は複数は、他の信号成分の取得を支援する。このようにして、一方の信号成分を利用して、他方の信号成分についての取得プロセスを容易にすることができる。
【0024】
ある実施形態では、第1信号成分及び/又は第2信号成分は、符号分割多元接続(CDMA)信号である。
【0025】
ある実施形態では、第1信号成分及び/又は第2信号成分は、時分割多元接続(TDMA)信号である。
【0026】
ある実施形態では、第1信号成分及び/又は第2信号成分は、周波数分割多元接続(FDMA)信号である。
【0027】
本発明による方法の一形態では、第1信号成分及び第2信号成分は、同じキャリア周波数で受信され、同じプライマリコードで変調され、プライマリコードの単一の取得を必要とする。
【0028】
代替の形態では、第1信号成分及び第2信号成分は、異なる及び/又は可変のキャリア周波数で受信される。
【0029】
本発明による方法の一形態では、コード同期又はコードシンボル同期は、時間的ダイバーシティを利用するための単一又は複数のコード又はコードシンボル遷移を検出することを含む。
【0030】
本発明による方法の一形態では、コード同期又はコードシンボル同期は、空間的ダイバーシティを利用するために、異なる送信機から受信された1つ又は複数の無線信号からの1つ又は複数のコード又はコードシンボル遷移を検出することを含む。
【0031】
本発明の個々の態様はそれぞれ、他の態様のいずれかと組み合わせることができる。本発明のこれら及び他の態様は、説明される実施形態を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【0032】
次に、本発明による無線信号装置について、添付の図面を参照してより詳細に説明する。図面は、本発明を実施する1つの方法を示し、添付の特許請求の範囲に含まれる他の可能な実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、無線信号装置を含む無線システムを概略的に示す。
【
図2a】
図2aは、本発明の実施形態による重畳コードフェージングを示す。
【
図2b】
図2bは、本発明の実施形態による重畳コードフェージングを示す。
【
図2c】
図2cは、本発明の実施形態による重畳コードフェージングを示す。
【
図2d】
図2dは、本発明の実施形態による重畳コードフェージングを示す。
【
図2e】
図2eは、本発明の実施形態による重畳コードフェージングを示す。
【
図2f】
図2fは、VTP変調された複数の連続するコードシンボルの使用を示す。
【
図3a】
図3aは、本発明による方法のフローチャートである。
【
図3b】
図3bは、本発明による方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例による計算結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ここではGNSSの形態の無線システム1を概略的に示しており、無線システム1は、第1無線信号装置2と第2無線信号装置3とを備え、両者は無線信号を送信するように適合されている(以下では送信機と呼ばれる)。2つの送信機2、3は、この場合、衛星に搭載されているが、他のタイプの無線システムでは例えば地上の機器であってもよい。無線システム1は、無線信号装置4をさらに備えており、この無線信号装置4は、受信ユニット6での信号処理のために、アンテナ5を介して、上記送信機から無線信号を受信するように適合されている。2つの送信機のそれぞれは、第1信号成分と第2信号成分とを有する無線信号を送信するように構成されている。それぞれの信号成分は、プライマリコードにおいて変調された重畳コードシンボルからなる重畳コードを含んでいる。
【0035】
本発明の一実施形態では、第1信号成分の重畳コード時間と、第2信号成分の重畳コード時間とが異なり、かつ、第1重畳コードと第2重畳コードとは2N単位時間ごとに時間的に整列するよう選択されており、ここで、2Nは重畳コード時間の最小公倍数に等しい。
【0036】
本発明の別の実施形態では、第1信号成分の重畳コード時間と第2信号成分の重畳コードシンボル時間が異なり、かつ、第1重畳コードと第2重畳コードシンボルとが2N単位時間ごとに時間的に整列するように選択されており、ここで、2Nは重畳コード時間の最小公倍数に等しい。
【0037】
無線信号装置4は、第1重畳コードと第2重畳コード又は第2重畳コードシンボルとの間の位相差のこの2Nの時間の周期性の知識を利用し、2N単位時間期間の範囲内のタイムアンビギュイティを分析することができる。
【0038】
図2a及び
図2bは、本発明の実施形態の態様による重畳コードフェージングのスキーム20を示している。図示されているものは2つの汎用信号であり、汎用信号のそれぞれは、特定のプライマリコードと特定の重畳コード、又は具体的には、それぞれ、第1重畳コード22及び第2重畳コード24(
図2a)、若しくは、第1信号成分及び第2信号成分の第2重畳コードシンボル(
図2b)によって形成されている。第1重畳コード22は、ここではC
1単位時間であるように示されている重畳コード時間26を含んでいる。同様に、第2重畳コード24(
図2a)又は第2重畳コードシンボル24(
図2b)は、ここではそれぞれC
2又はS
2単位時間であるように示されている重畳コード時間28を含んでいる。この例では、リファレンスコードフェーズオフセットDはゼロに等しい。コードフェーズオフセット30は、重畳コード時間の各期間について展開するように描かれている。これは、コードフェーズオフセット30が、2N単位時間後に重畳コードが整列する32まで、各インスタンスについて異なることを意味する。したがって、2N時間の期間の範囲内の時間は、このコードフェーズオフセット30から直接に分析され得る。適切な重畳コードを選択することで、ある種の受信時間の不確実性を許容するようなコンセプトの調整が可能となる。
【0039】
図2cは、本発明の別の実施形態による、リファレンスコードフェーズオフセットDがゼロとは異なる任意の値であるときの重畳コードフェージングの方式を示している。この形態は、上記の
図2a及び
図2bについて論じた実施形態に対応し、そのため、ここでは相違点のみを論じる。この場合、第1重畳コード及び第2重畳コードは、2N単位時間ごとにD単位時間のコードフェーズオフセットを有する。
【0040】
図2dは、特定のケースの重畳コードフェージングの方式を示しており、ここでは、第1重畳コード22及び第2重畳コード24が同じ搬送周波数において同相で送信されており、これらは同じプライマリコードにおいて変調され、複合重畳コード34となっており、ここで、結果として得られる複合重畳コードの遷移によって、2つの連続する遷移間のコードフェーズオフセットの推定に基づいて、2N単位時間の範囲内の時間を分析が可能となる。
【0041】
図2eは、Yが2つのサブシンボルに等しい特定の場合について、可変遷移フェージング(VTP)方式によって変調されたコードシンボルを示している。この場合、コードシンボルはVTPシンボルに相当する。起こり得る潜在的な遷移の数は、VTPシンボルの範囲内で送信され得る、想定される状態の数Kに等しい。
【0042】
図2fは、VTP変調された複数の連続するコードシンボルの使用を示しており、すなわち、複数の連続するVTPシンボルは、例えば週の時間(TOW)のような時間の間隔の配布のため、それぞれのVTPシンボルに対するK個の想定される状態に基づいて、それぞれが2つのサブシンボルによって形成されている。
【0043】
図3aは、本発明による、受信された無線信号に基づいて受信機におけるタイムアンビギュイティを分析する方法100のフローチャートである。上述したように、無線信号は、第1信号成分と第2信号成分とを含んでいる。無線信号は、
図1及び
図2の両方において上述されており、したがって、ここでは詳細に説明されない。この方法は、第1に、第1信号成分102と第2信号成分104の両方を取得することを含む。第1信号成分の取得後、コード同期106が実行される。同様に、第2信号成分の取得後、コード同期及び/又はコードシンボル同期108が実行される。本方法の一形態によれば、取得102及び/又はコード同期106は、第2信号成分の取得104の前に、第1信号成分において実行される。この場合、第2信号成分の取得104は、取得された又は同期された第1信号成分/コードによって支援され得る。代替的に、第1信号成分及び第2信号成分の取得は、コード/コードシンボルにおいて同期を実行する前に並行して実行されてもよい。第1コード106及び第2コード/コードシンボル108の同期の後に、コード又はコードシンボルフェーズオフセット110が、同期された第1コード及び同期された第2コード又は同期された第2コードシンボルから推定される。最後に、推定されたコードフェーズオフセット又はコードシンボルフェーズオフセット120は、受信機のタイムアンビギュイティを分析するために使用される。タイムアンビギュイティの分析は、例えば、事前に計算されたルックアップテーブルにおいて推定されたコード又はコードシンボルフェーズオフセットを検索することによって実行されてもよい。代替として、タイムアンビギュイティは、フェーズオフセットから直接計算されてもよい。
【0044】
図3bは、週の時間(TOW)を分析するフローチャートであり、この分析は、各コードシンボル(すなわち、各VTPシンボル)のサブシンボルの可変の遷移フェージングの推定に基づくものであり、ここで、1つのVTPシンボルは、複数のVTPシンボルが使用されるとき(±KN単位時間の範囲内のタイムアンビギュイティの分析が全週をカバーしないことを考慮する)、K個の可能な状態のうちの1つをとる。この図の方法フローは、
図3aの方法フローに続き、すなわち、ステップ130はステップ120に続く。
【0045】
図4aは、欧州のガリレオGNSS E1に適用される本発明の実施例200を示す。具体的には、この例は、2つの信号成分のうちの1つとしてのレガシーのガリレオ信号220、例えばE1-Cセカンダリコードに依拠しており、さらに、重畳コードを有する非レガシー(ガリレオ)信号240においてこの新しい特徴を含んでいる。この例では、接続されたユーザ(例えば、位置基準のサービス(LBS)又はモノのインターネット(IOT)の使用事例)において典型的に期待されるように、目標は、接続されたユーザが通常想定する±2秒程度の時間不確実性を有する粗い時間のアシスト受信機について1秒以下のレイテンシで、高速にタイムアンビギュイティを分析することである。ここで、非レガシーガリレオE1信号について考慮する。この信号は、シーケンス{+1,-1}によって構成される低速な重畳コード240を含み、重畳シンボルの持続時間280は192msに等しい(すなわち、重畳コードのトータル時間は384msである)。これにより、E1-Cセカンダリコード220及び重畳コードシンボル240は、4.8秒ごとに整列し、±2.4秒未満の時間不確実性を有する受信機のタイムアンビギュイティを分析することが可能となる。これにより、非レガシーE1信号の重畳コードの「ビット」同期(すなわち、重畳シンボル同期)及びE1-Cの二次コード同期に基づいて、192ms未満のレイテンシ(単一遷移検出アプローチの場合)のタイムアンビギュイティを分析することが可能となる。さらに、これにより、非レガシーE1信号がその目的のために使用されるときにおける、受信機による取得での長いコヒーレント積分時間の利用が可能となる(また、短いコヒーレント積分時間が利用される場合でも、取得感度の遷移によって導入されるより低い損失が可能となる)。
【0046】
同じことが、例えば、ガリレオE5信号に対して行われることが可能であり、この場合においてはE5a/b-Q信号が使用され得る。
【0047】
図4bは、VTP変調コードシンボル(すなわち、VTPシンボル)の例を示しており、この例は、VTPシンボルの遷移が12の可能な遷移位置のうちの1つで起こり得るように、可能な状態の数Kが12に等しい場合である。
【0048】
図4cは、同じ周波数のフェーズで送信されるとともに同じプライマリコードにおいて変調された2つの重畳コードの組合せから得られる複合重畳コードを有する非レガシー信号についての本発明の例を示す。結果として生じるこの複合重畳コードによって、±2.4秒未満の時間不確実性を有するレシーバについて、250ms以内の時間を分析することが可能にとなる。
【0049】
図5は、
図4aに示す本発明の実施例による計算結果300を示す。具体的には、この図は、単一遷移検出310及び複数遷移検出の場合のこの構成におけるタイムアンビギュイティの分析の確率を示している:2スナップショット320、及び、4スナップショット330(特定の環境条件下で注目されるより高いレイテンシを犠牲にしての検出確率をする)。この構成によれば、前述のように、192ms未満の待ち時間での高速な検索が可能となる。これは、ガリレオE1-B SSP(±3秒の時間不確実性に対し3秒未満のレイテンシ)及びGPS L1 C/A(6秒ごとのTOW)について達成された現在の値よりもかなり低い。さらに、これによれば、GNSS受信機によって目標とされる動作点への容易な適合が可能となる(レイテンシと感度とのトレードオフである)。
【0050】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせによって実施することができる。本発明又はその特徴のいくつかは、1つ又は複数のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサ上で動作するソフトウェアとして実装することもできる。
【0051】
本発明の実施形態の個々の要素は、物理的に、機能的に、及び論理的に、単一のユニットで、複数のユニットで、又は別個の機能ユニットの一部としてなど、任意の適切な方法で実装され得る。本発明は、単一のユニットで実施されてもよく、又は異なるユニット及びプロセッサ間で物理的及び機能的に分散されてもよい。
【0052】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されたが、提示された実施例に限定されると解釈されるべきではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に照らして解釈されるべきである。請求項の文脈において、「備える(comprising)」又は「備える(comprises)」という用語は、他の可能な要素又はステップを除外しない。また、「a」又は「an」などの言及は、複数を除外するものとして解釈されるべきではない。図面に示されている要素に関する請求項における参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、異なる請求項において言及される個々の特徴は、場合によっては有利に組み合わせることができ、異なる請求項におけるこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせが不可能かつ有利であることを排除しない。