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特許7431342粘着性及び電気伝導性に優れた樹脂組成物及びその成形品
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  • 特許-粘着性及び電気伝導性に優れた樹脂組成物及びその成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】粘着性及び電気伝導性に優れた樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240206BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240206BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240206BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20240206BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K3/04
C08L53/00
C08L31/04 S
C08L23/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022548230
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 KR2021005275
(87)【国際公開番号】W WO2021221417
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0051346
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】カン、ウォン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】カン、チョル イ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、ソン ス
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ハン ス
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-302151(JP,A)
【文献】特開平10-045952(JP,A)
【文献】特開平11-228745(JP,A)
【文献】特開2015-183016(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2085500(KR,B1)
【文献】国際公開第2020/195799(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/007353(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0191636(US,A1)
【文献】特表2023-503885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の最大静止摩擦係数はASTM D4521を基準としてtanθ値が1乃至20で、硬度はShore Aを基準として80以下で、表面抵抗値はASTM D257を基準として10乃至10Ω/sqで提供する樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、粘着性樹脂及び炭素充填材を含み、
前記粘着性樹脂は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)及びエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)から選択されたいずれか1つ以上を含むものであり、
前記炭素充填材は、前記粘着性樹脂100重量部に対して、カーボンブラック(carbonblack)5乃至15重量部、及び炭素ナノチューブ(CNT)0.1乃至2重量部を含む
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記粘着性樹脂のメルトインデックス(MI)はASTM D1238を基準として190℃の2.16Kgで0.01乃至1g/10minである
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記粘着性樹脂の比重は0.85乃至1.2g/ccである
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記粘着性樹脂の重量平均分子量は10,000乃至800,000である
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物は粘着性樹脂100重量部に対して、安定剤0.1乃至3重量部を含む
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は粘着性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤0.1乃至5重量部を含む
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は粘着性樹脂100重量部に対して、着色剤1乃至10重量部を含む
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の樹脂組成物を含む
ことを特徴とする成形品。
【請求項9】
前記成形品はシート、パッド、フィルム、包装紙、パイプ、ポーチ、内装材、容器及び電子部品製造用トレイから選択される少なくともいずれか1つである
請求項8に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性及び電気伝導性に優れた樹脂組成物及びその成形品であって、粘着性を付与するために粘着剤をコーティングしたり、伝導性を付与するために帯電防止剤を添加する従来の方式と異なり、高い表面摩擦力を提供できる粘着性樹脂に炭素充填材を含むことで低い表面抵抗を提供して優れた電気伝導性を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会で携帯電話、テレビ、コンピュータなどの電子製品の使用は必須不可欠なもので、その発展の速度はもちろんのこと、その様相も急変している。このような電子製品を製造するために様々な電子部品が使用され、電子製品の迅速な大量生産のために大半が自動化工程で進められている。かかる自動化工程で使用される電子部品の移送のためのトレイ(tray)は通常、伝導性ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂組成物を真空成形して使用されている。これらは比較的工程が簡単かつ生産単価が安価で経済的であるが、電子部品の移送中に低い表面摩擦力によって生じる部品の滑り現象で部品表面にスクラッチが生じ、これは伝導性の喪失につながり静電気問題が生じたり、フィルム表面にスクラッチが生じて不良を誘発する問題点を引き起こす。また、電子部品の移送中に滑りによって部品の位置が変化する現象は自動化工程で生産される最終製品の品質に問題を招く。
【0003】
このような問題を解決するために、自動化生産工程では滑りを防止するためにマット又はパッドなどを主に使用している。この場合、主にマットやパッド表面に粘着性塗料をコーティングして滑り防止機能を付与する場合が大半である。これと関連する技術として、特許文献1を見てみると、優れた摩擦抵抗低減性能を持つ塗料組成物に関する技術を開示している。バインダ樹脂としてエステル化合物と、シリルアクリレート系単量体をラジカル重合性不飽和単量体でさらに含んで分子量及び親水親油バランスを調節することによって長期間均一な摩耗率を示して防汚性及び優れた摩擦抵抗低減性能を持つものを開示している。ただし、上記特許のように塗料組成物をコーティングする場合は時間経過によって塗料の粘着性が弱くなったり塗料が剥がれる問題がある。
【0004】
一方、電子部品生産のための自動化工程で滑り防止とともに必要な静電気防止機能を提供するためには主に帯電防止剤を用いて静電気防止機能を付与している。これと関連する技術として、特許文献2では静電気防止機能に優れたシートを開示している。シート本体の上下部にハイブリッドコーティング液コーティング層を含み、上記ハイブリッドコーティング液は溶媒、ポリウレタン樹脂、アンチブロッキング剤、耐摩耗性向上剤、スリップ防止剤、消泡剤及び静電気防止剤からなることを技術的特徴とする。ただし、上記特許のように静電気防止剤又は帯電防止剤を使用した場合、表面抵抗が1010Ω/sq以上の高い抵抗を示すため、優れた静電気防止性能を提供するには多少限界がある。
【0005】
よって、本発明は上記問題点を解決し、より簡単な工程を提供して加工性を向上させることを目的とする。また、成形後、表面摩擦力に優れた粘着性樹脂に低い表面抵抗で優れた伝導性を持つ樹脂組成物を提供するために長い研究を経て本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】大韓民国公開特許第10-2016-0007099号公報(2016.01.20)
【文献】大韓民国公開特許第10-2017-0033986号公報(2019.03.28)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題点をすべて解決することを目的とする。
【0008】
本発明の目的は、成形後、高い表面摩擦力を提供できる樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、成形後、低い表面抵抗値を提供できる樹脂組成物を提供して、優れた電気伝導性を付与することにある。
【0010】
本発明の目的は、成形品の加工性を単純化して生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の本発明の目的を達成し、後述する本発明の特徴的な効果を実現するための、本発明の特徴的な構成は下記のとおりである。
【0012】
本発明の一実施例によれば、樹脂成形品の最大静止摩擦係数はASTM D4521を基準としてtanθ値が1乃至20で、硬度はShore Aを基準として80以下で、表面抵抗値はASTM D257を基準として10乃至10Ω/sqで提供する樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物は粘着性樹脂100重量部に対して、炭素充填材0.1乃至20重量部を含んで提供される。
【0014】
この場合、粘着性樹脂はエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)及びエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)から選択されたいずれか1つ以上を含んで提供されることができ、炭素充填材はカーボンブラック(carbonblack)及び炭素ナノチューブ(CNT)から選択された少なくともいずれか1つ以上を含んで提供され得る。
【0015】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物を含む成形品が提供される。
【0016】
この場合、上記成形品はシート、パッド、フィルム、包装紙、パイプ、ポーチ、内装材、容器及び電子部品製造用トレイから選択される少なくともいずれか1つである成形品として提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明による樹脂で製造される成形品の場合、高い表面摩擦力を提供して長時間使用しても優れた滑り防止機能を提供できる。
【0018】
本発明による樹脂で製造される成形品の場合、低い表面抵抗を提供して優れた電気伝導性を提供できる。
【0019】
本発明による樹脂を適用して成形した場合、従来の方式に比べて、加工方法が単純で加工性及び生産性の効率性を向上させることができる。
【0020】
本発明による上記成形品を電子部品の製造工程に使用するトレイに適用した場合、部品の移動工程で滑り防止効果(non-slip)及び低い表面抵抗を提供して電子部品及び素材を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による樹脂組成物を含んで成形した成形品(シート)の滑り防止及び静電気防止特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成及び作用をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例示として提示されたものであって、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈されることはできない。
【0023】
ここに記載していない内容は当該技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるものであるので、その説明を省略する。
【0024】
<実施例1:樹脂組成物の製造>
【0025】
粘着性樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(ハンファソリューションズ社製EVA 1834)100重量部に対して、カーボンブラック(Carbon black、Chezacarb AC-60)5重量部、炭素ナノチューブ(CNT、Nanocyl NC7000)を1重量部を含む樹脂組成物を製造した。これを金型のキャビティに充填した後、プレスで圧力を加えた後、冷却固化させて成形品(シート)を製造した。
【0026】
<実施例2>
【0027】
粘着性樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(ハンファソリューションズ社製EVA 1834)100重量部に対して、カーボンブラック(Carbon black)10重量部を使用して樹脂組成物を製造した後、実施例1と同様に成形品を製造した。
【0028】
<実施例3>
【0029】
カーボンブラック(Carbon black)12重量部を使用したことを除いては実施例2と同様に行った。
【0030】
<実施例4>
【0031】
カーボンブラック(Carbon black)15重量部を使用したことを除いては実施例2と同様に行った。
【0032】
<実施例5>
【0033】
粘着性樹脂ポリオレフィンエラストマー(ダウ社製Engage 8137 POE)100重量部に対して、カーボンブラック(Carbon black)12重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に行った。
【0034】
<実施例6>
【0035】
粘着性樹脂オレフィンブロック共重合体(ダウ社製Infuse 9807 OBC)100重量部に対して、カーボンブラック(Carbon black)12重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に進めた。
【0036】
<実施例7>
【0037】
粘着性樹脂エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(ダウ社製Nordel 4725P)100重量部に対して、カーボンブラック(Carbon black)12重量部を使用したことを除いては実施例1と同様に行った。
【0038】
<比較例1>
【0039】
商業的に市販されている伝導性PETシートを備えた。
【0040】
<比較例2>
【0041】
商業的に市販されているPET樹脂層に帯電防止コーティングされたシートを備えた。
【0042】
<実験例1:表面摩擦力測定>
【0043】
実施例と比較例による成形されたパッドをTOYOSEIKI社製Slip Angle Type Friction Testerを使用して最大傾斜角(θ)を測定し、ASTM D4521によって最大静止摩擦係数を求め、その結果を[表1]に示している。
【0044】
最大静止摩擦係数=tan θ
【0045】
<実験例2:表面抵抗測定>
【0046】
ASTM D257方法によって実施例と比較例の成形品の表面抵抗を測定した。その結果を[表1]に示している。
【0047】
<実験例3:硬度測定>
【0048】
Shore Aによって実施例と比較例の成形品の表面抵抗を測定した。その結果を[表1]に示している。
【表1】
【0049】
表1の結果をみると、本発明による樹脂組成物を提供して成形した製品の場合、最大静止摩擦係数のASTM D4521を基準としてtanθ値が1乃至20で、好ましくは1乃至10の範囲で提供できることを確認した。比較例の値に比べて本発明による樹脂組成物の成形品は高い表面摩擦力を提供できることが確認できた。特に、カーボンブラック(Carbon black)が5乃至15重量部で提供される場合、高い摩擦力を提供できることを確認した。
【0050】
また、本発明による樹脂組成物を提供して成形した製品の場合、硬度はShore Aを基準として80以下で提供できる。比較例の値に比べてその値が顕著に低いことが確認でき、成形品は外部変形に対して、優れた抵抗力と衝撃補強効果を提供できることを確認した。
【0051】
また、本発明による樹脂組成物を提供して成形した製品の場合、表面抵抗値は10乃至10Ω/sqの範囲で提供でき、比較例の従来の製品が1010を超えることに比べて顕著に低いことを確認でき、したがって、低い表面抵抗を提供して優れた静電気防止機能を提供して、電気伝導性に優れた樹脂を提供できることを確認できた。
【0052】
したがって、本発明の場合、電子部品の製造工程に使用するトレイに適用した場合、部品の移動工程で滑り防止効果(non-slip)及び低い表面抵抗を提供して電子部品及び素材を保護することができる。加えて、別途の工程を必要とせずに粘着性樹脂自体で摩擦力を提供することにより、製造方法も容易な点から加工方法が単純で加工性及び生産性の効率性を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明が具体的な構成要素などのような特定の事項と限定された実施例によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明が上記実施例らに限定されるわけではなく、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば、かかる記載から多様な修正及び変形を図ることができる。
【0054】
よって、本発明の思想は上記説明された実施例に限られて定められてはならず、後述する特許請求の範囲のみならず、その特許請求の範囲と均等又は等価的に変形されたあらゆるものは本発明の思想の範疇に属すると言える。
【0055】
後述する本発明に対する詳細な説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の多様な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。また、各々の開示された実施例内の個別構成要素の位置又は配置は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変更され得ることが理解されるべきである。したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0056】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例を参照して詳細に説明する。
【0057】
滑り防止性能とは、高い表面摩擦力を提供できることを意味し、摩擦力とは製品の荷重を支持する面とその面の接触面積を最大化して、接触面に発生する運動を妨害する力を付与することを意味する。電子製品を生産するための自動化工程で電子部品移送用トレイ(tray)の場合、移動中に生じる外力に対して極めて脆弱であるため、滑ることなく安定的に移動することが必須である。したがって、本発明は、このような工程で適用可能な高い表面摩擦力とともに優れた電気伝導性を付与する樹脂組成物を提供しようする。
【0058】
本発明の一実施例によれば、樹脂成形品の最大静止摩擦係数はASTM D4521を基準としてtanθ値が1乃至20で、硬度はShore Aを基準として80以下で、表面抵抗値はASTM D257を基準として10乃至10Ω/sqで提供する樹脂組成物が提供される。
【0059】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物は表面摩擦力に優れた粘着性基本樹脂(base resin)に炭素充填材を含んで提供され、この場合、粘着性樹脂100重量部に対して、炭素充填材0.1乃至20重量部を含むことを特徴とする。
【0060】
本発明の一実施例によれば、高い表面摩擦力を提供して滑り防止効果を提供するために粘着性を付与する基本樹脂(base resin)は、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、エチレンブチルアクリレート(EBA)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、スチレンエチレンブタジエンスチレン共重合体(SEBS)、エーテルブロックアミド共重合体(PEBA)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、シリコンゴム、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(ACM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)及びクロロプレンゴム(CR)から少なくとも1つ以上の樹脂を提供できる。好ましくは上記粘着性樹脂はエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)及びエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)から選択されたいずれか1つ以上を含んで提供され得る。
【0061】
上記粘着性樹脂に提供されるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)はエチレンと酢酸ビニル(vinyl acetate)単量体を共重合させて得られる重合体を意味し、一般にエチレン単量体で作られたポリエチレン製品の基本性質に酢酸ビニルの性質が加えられた特性を持つ。エチレン単量体に比べて酢酸ビニル単量体はアセトキシ(acetoxy)基を含んでおり、この含量が高くなるほど極性(polar)の性質を提供する。酢酸ビニルの含有量が増加することにより光学性(光沢度)が良くなり密度は増加するが、結晶化度は低下して柔軟性は増加するようになる。上記エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)の場合、滑り性を示すが酢酸ビニル含量が増加すると摩擦係数が大きくなって滑りにくくなる。したがって、本発明のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)は酢酸ビニル(VA)の含有率が10乃至50重量%であることを特徴とする。含量が10重量%未満の場合は加工が難しい問題点があり、50重量%を超える場合は結晶化度で不利な点がある。したがって、上記範囲10乃至50重量%を提供して、優れた滑り防止(non-slip)効果を提供できる。その上、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)のメルトインデックス(MI)はASTM D1238を基準として190℃の2.16Kgで0.01乃至1g/10minで提供される。また、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。
【0062】
上記粘着性樹脂に提供されるポリオレフィンエラストマー(POE)はエチレンとアルファオレフィンを共重合させて得られる重合体を意味し、アルファオレフィン共単量体の種類及び含量によって基本性質が変わる特性を持つ。アルファオレフィンの含量が増加するほど結晶化度が減少して密度が減少し光学性及び柔軟性は増加する。したがって、本発明のポリオレフィンエラストマー(POE)はアルファオレフィンでブテン及びオクテンを共重合したもので結晶化度34%以下であることを特徴とする。好ましくは結晶化度13乃至24%に0.85乃至0.88g/cm範囲のポリオレフィンエラストマー(POE)であって、メルトインデックス(MI)はASTM D1238を基準として190℃の2.16Kgで0.01乃至1g/10minで提供される。また、上記ポリオレフィンエラストマー(POE)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。
【0063】
上記粘着性樹脂に提供されるオレフィンブロック共重合体(OBC)はエチレンが少量の1-octeneと共重合した結晶性のハードブロック(hard block)と相対的に多量の1-octeneと共重合したソフトブロック(soft block)で構成されたマルチブロック共重合体である。オレフィンブロック共重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)に比べてガラス転移温度が低く融点が高いので、柔軟かつ優れた反発弾性が相対的に広い温度範囲で維持されながらも比重が相対的に低い長所を有する。また、繰り返される変形による反発弾性の減少や永久変形の生成がエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)に比べて小さい。したがって、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)の短所を補完するために代替又は混合して使用される。オレフィンブロック共重合体(OBC)のメルトインデックス(MI)はASTM D1238を基準として190℃の2.16Kgで0.01乃至1g/10minで提供される。また、オレフィンブロック共重合体(OBC)の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供され、密度範囲は0.860~0.890g/ccで提供される。
【0064】
上記粘着性樹脂に提供されるエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)はエチレン、プロピレン、及び非共役ジエンの三元共重合体で構成され、三元共重合体(EPDM Terpolymer)の第3成分である非共役ジエンはゴム架橋の最も一般的な方法である硫黄架橋(Sulfur Crosslink)のための架橋点を提供する。この場合、第3成分としてエチリデンノルボルネン(Ethylidene Norbornene、ENB)を使用する。よって、本発明の場合、エチレン、プロピレン及びエチリデンノルボルネン(ENB)を含んで提供され、さらに詳しくはエチレン40乃至80重量%、プロピレン10乃至50重量%及びエチリデンノルボルネン0.5乃至10重量%を含むエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)が提供される。よって、混練加工性に優れ、圧縮変形に優れた樹脂を提供できる。
【0065】
上述のように、本発明の粘着性樹脂は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリオレフィンエラストマー(POE)、オレフィンブロック共重合体(OBC)及びエチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)から選択されたいずれか1つ以上を含んで溶融混練されることができ、ここで、溶融混練とは80℃乃至150℃の条件で押出機、ニーダー、ロールミールなどを用いて行われることができ、通常の技術者が実施できる適切な加工範囲内で行うことができる。よって、上記粘着性樹脂のメルトインデックス(MI)はASTM D1238を基準として190℃の2.16Kgで0.01乃至1g/10minで提供される。比重の場合、0.85乃至1.2g/ccで提供される。比重が低いほどスティッキー(Sticky)な特性を示すので、本発明の場合、上記粘着性樹脂の比重を上記のように提供して、滑り防止特性を向上させることを助けることができる。また、上記粘着性樹脂の重量平均分子量は10,000乃至800,000g/molで提供される。
【0066】
本発明の一実施例によれば、上記炭素充填材は炭素ナノチューブ(CNT)、グラファイト(Graphite)、カーボンブラック(Carbon Black)、カーボンファイバー(carbon fiber)及びグラフェン(Graphene)から選択される少なくともいずれか1つ以上を含んで提供される。好ましくはカーボンブラック(carbon black)と炭素ナノチューブ(CNT)が提供され得る。従来の帯電防止剤の投入によって静電気防止効果を提供する場合は表面抵抗値が相対的に高いが、それに対して伝導性炭素充填材によって静電気防止効果を提供する場合はより低い表面抵抗値を提供でき、よって、より優れた電気伝導性を提供できる。また、最終製品の引張伸び率、光沢などの物性を向上させ、向上した衝撃補強効果を提供できる。
【0067】
本発明の一実施例によれば、上記粘着性樹脂100重量部に対して、炭素充填材0.1乃至20重量部を含んで提供される。この場合、成形品の表面に別途の工程を施さなくてもそれ自体で高い表面摩擦力を提供できる基本樹脂に炭素充填材を溶融混練して優れた静電気防止性能を同時に提供できる。特に、本発明の場合、摩擦力の高い樹脂に単に伝導性の炭素充填材を含むことで加工工程を単純化できる長所がある。
【0068】
さらに詳しくは、上記粘着性樹脂100重量部に対して、 上記炭素充填材はカーボンブラック(carbonblack)5乃至15重量部又は炭素ナノチューブ(CNT)0.1乃至2重量部又はその混合物で提供され得る。例えば、カーボンブラック(Carbon Black)5乃至15重量部の範囲で提供される場合、加工時の樹脂流れによる内部構造の変化にも所定レベル以上の電気伝導度を維持できる。後述する表1の結果値に照らしてカーボンブラック(Carbon Black)が上記の範囲で提供される場合、優れた表面摩擦力と電気伝導性を提供することが確認できる。また、上記粘着性樹脂100重量部に対して、炭素充填材として炭素ナノチューブ(CNT)を0.1乃至2重量部含むことができる。よって、低い炭素含有量に対して優れた電気伝導度を提供しながらも樹脂の粘着特性を維持して高い表面摩擦力を提供できる。さらには必要に応じて電気伝導度を向上させるために、カーボンブラック(carbonblack)と炭素ナノチューブ(CNT)を混合して提供できる。
【0069】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物は必要に応じて相溶化剤を含んで基本樹脂と炭素充填材の相溶性を向上させることができる。相溶化剤の場合、高分子を混合使用するとき、高分子樹脂間の結合に相溶性を付与して強度、引張、伸び率などの物性が低下する短所を改善させることができる。相溶化剤の場合、0.1乃至20重量部が提供され、好ましくは3乃至15重量部を含んで提供される。3重量部未満の場合は相溶化の効果を期待しにくく、15重量部を超える場合はコストの面から非効率的である。したがって、3乃至15重量部を含んで優れた加工流動性と成形加工を提供して好ましい相溶化効果を提供できる。
【0070】
上記相溶化剤はエチレン-無水エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-アルキルアクリレート-アクリル酸共重合体、無水マレイン酸変性(グラフト)高密度ポリエチレン、無水マレイン酸変性(グラフト)線形低密度ポリエチレン、エチレン-アルキルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体及び無水マレイン酸変性(グラフト)エチレン-ビニルアセテート共重合体から選択された少なくともいずれか1つ以上を含む。さらに、前述した相溶化効果を提供できるものであればこれに限定されない。
【0071】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物を含む樹脂成形品の最大静止摩擦係数はASTM D4521を基準としてtanθ値が1乃至20で提供される。よって、表面の高い摩擦力を提供して置かれた物体が外部衝撃によって動かないように支持できるように助けることができる。
【0072】
また、樹脂成形品の硬度はShore Aを基準として80以下であり、好ましくは60乃至80の範囲で提供できる。よって、成形品は外部変形に対して、優れた抵抗力と衝撃補強効果を提供できる。
【0073】
また、樹脂成形品の表面抵抗値はASTM D257を基準として10乃至10Ω/sqで、比較的低い表面抵抗値を提供して優れた静電気防止を提供できるので、電子部品及び素材を保護できる。特に、従来の滑り防止マット又はパッドの場合、静電気防止機能を付与するために帯電防止剤を含んで製造される場合は表面抵抗値が1010Ω/sqを超えて提供されるが、それに対して、本発明の場合は炭素充填材を含むことで表面抵抗値を10乃至10Ω/sqに減少させることができる。
【0074】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物を含んで製造される成形品が提供される。成形品の製造には射出成形(Injection Molding)、射出ブロー成形(Injection Blow Molding)、真空成形(Vacuum Molding)又はTダイを用いた押出シート成形方法が提供されることができ、上記方法は成形材料を加熱溶融させて予め閉じられた金型のキャビティに射出充填した後、冷却固化させて成形品を得るか、または成形材料を金型に配置した後、加熱してから真空をかけて金型に密着成形する方法で進めることができる。また、通常の技術者が実施できる範囲内で適切な範囲内では変形して行えることは無論である。
【0075】
本発明の一実施例によれば、上記成形品はシート、パッド、フィルム、包装紙、パイプ、ポーチ、内装材、容器、電子部品製造用トレイから選択される少なくともいずれか1つである成形品で提供されることができ、好ましくは電子部品製造用トレイに適用されることができるが、これに限定されない。
【0076】
本発明の一実施例によれば、上記樹脂組成物は安定剤、酸化防止剤及び着色剤から選択される少なくともいずれか1つ以上を必要に応じて加減できるが、これに限定されない。
【0077】
本発明の一実施例によれば、上記安定剤は熱又はUV安定剤が提供され得る。粘着性樹脂100重量部に対して0.1乃至3重量部を含むことができる。
【0078】
上記熱安定剤の場合、金属系熱安定剤と非金属系熱安定剤を使用することができ、上記金属系熱安定剤としては有機スズ系熱安定剤、メルカプチド(mercaptide)系有機スズ熱安定剤、カルボン酸塩系有機スズ熱安定剤、カルボン酸金属塩系熱安定剤が提供され得る。非金属系熱安定剤としてはエポキシ化合物、有機亜リン酸塩類が提供され得る。
【0079】
上記有機亜リン酸系熱安定化剤としてはトリフェニルホスファイト(triphenyl phosphite)、ジフェニルイソデシルホスファイト(diphenyl isodecyl phosphite)、フェニルジイソデシルホスファイト(phenyl diisodecyl phosphite)、トリノニルフェニルホスファイト(trinonyl phenyl phosphite)から選択された少なくともいずれか1つ以上であり得る。
【0080】
上記UV安定剤の場合、ベンゾトリアゾール系、オキサニリド系及びヒンダードアミン系光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizer、HALS)の中から選択された少なくとも1つを含むことができる。特に、上記HALSはラジカルを捕捉するradical scavengerの代表物質であり、UV遮断剤などを使用するにもかかわらず100%UV遮断ができないことにより生じたポリマーラジカルなどを処理して補完するために使用される。主に光沢損失、黄変などを防止する効果を提供する。
【0081】
本発明の一実施例によれば、上記酸化防止剤は樹脂組成物を含んで成形される最終製品の酸化を防止し、酸化防止剤の種類には一次酸化防止剤(primary antioxidant)、二次酸化防止剤(secondary antioxidant)がある。一次酸化防止剤にはヒンダードフェノール(hindered phenol)系、ラクトン(lactone)系が使用され、二次酸化防止剤にはリン(phosphite)系、チオエステル(thioester)系が使用される。一次酸化防止剤の役割はラジカルスカベンジャー(radical scavenger)であって、ヒンダードフェノール(hindered phenol)系は酸素中心ラジカル(oxygen centered radical)を処理する。二次酸化防止剤はヒドロペルオキシド分解剤(hydroperoxide(ROOH) decomposer)として作用する。酸化防止剤は大半の樹脂において一次酸化防止剤と二次酸化防止剤を共に使用することで上昇効果をさらに増加させるので、ヒンダードフェノール(hindered phenol)系、ラクトン(lactone)系及びリン(phosphite)系が適切な割合で混合されて使用されている。フェノール系は2,6-di-t-Butyl-4-methylphenol、2,2-Methylenebis(4-methyl-6-t-butylphenol)などが提供されることができ、リン系の場合はBis(2,4-di-t-butyl)、Tris(2,4-di-t-butylphenyl)-phosphiteなどが提供され得る。酸化防止剤の場合、粘着性樹脂100重量部に対して0.1乃至5重量部を含むことができる。
【0082】
本発明の一実施例によれば、上記着色剤は樹脂組成物に審美性を与えるためのものであって、着色剤としては顔料又は染料などを使用することができ、好ましくは顔料が提供され得る。粘着性樹脂100重量部に対して1乃至10重量部を含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明による樹脂で製造される成形品の場合、高い表面摩擦力を提供して長時間使用しても優れた滑り防止機能を提供できる。
【0084】
本発明による樹脂で製造される成形品の場合、低い表面抵抗を提供して優れた電気伝導性を提供できる。
【0085】
本発明による樹脂を適用して成形した場合、従来の方式に比べて、加工方法が単純で加工性及び生産性の効率性を向上させることができる。
【0086】
本発明による上記成形品を電子部品の製造工程に使用するトレイに適用した場合、部品の移動工程で滑り防止効果(non-slip)及び低い表面抵抗を提供して電子部品及び素材を保護できる。
図1