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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】集電体、電極および非水電解質電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/80 20060101AFI20240206BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M4/80 C
H01M4/66 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022566848
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2021042798
(87)【国際公開番号】W WO2022118692
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020199271
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307046545
【氏名又は名称】クラレクラフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】城谷 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】小畑 創一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 秀治
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/146133(WO,A1)
【文献】特開2013-253213(JP,A)
【文献】特開2012-109224(JP,A)
【文献】国際公開第2010/103927(WO,A1)
【文献】特開2004-193062(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026974(WO,A1)
【文献】特開2010-073500(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109390590(CN,A)
【文献】特開2014-201862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元の多孔性構造を有する導電性体であって、通気度が0.1~600cc/cm/秒であるとともに、厚さが5μm以上100μm未満である、集電体。
【請求項2】
前記導電性体が、金属皮膜を備えた非導電性構造体であることを特徴とする請求項1に記載の集電体。
【請求項3】
前記非導電性構造体が、平均繊維径が5μm以下の不織布である、請求項2に記載の集電体。
【請求項4】
前記導電性体が、目付が1.0~50g/mの繊維状構造体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項5】
前記導電性体が、不織布状構造体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項6】
前記導電性体が、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルのメルトブローン不織布と、当該不織布上に形成された金属皮膜とを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項7】
前記金属皮膜が銅、ニッケル、金、銀、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成される、請求項2または6、または請求項2に従属する場合の請求項3から5のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項8】
前記導電性体が、タテ方向の裂断長が10km以上、かつヨコ方向の裂断長が6km以上の繊維状構造体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の集電体。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の集電体及び該集電体の少なくとも一つの表面に設置される電極材料層を含む電極。
【請求項10】
請求項9に記載の電極を備える非水電解質電池。
【請求項11】
電極の製造方法であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の集電体の少なくとも一つの表面に電極材料層を設置する、電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、日本国で2020年12月1日に出願した特願2020-199271の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本出願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、非水電解質電池に用いる集電体および電極、ならびに非水電解質電池に関する。
【背景技術】
【0003】
非水電解質電池は、水の分解電圧に制限されることなく使用することが可能であり、有機溶媒を使用した非水電解質を採用している。非水電解質電池は、例えば、小型で軽量であり、エネルギー密度が高く、さらに繰り返し充放電が可能なリチウムイオン二次電池などとして、その特性を活かして急速に需要を拡大している。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が比較的大きいことから携帯電話やノート型パーソナルコンピュータ、電気自動車などの分野で利用されている。これらの非水電解質電池には、用途の拡大や発展に伴い、低抵抗化、高容量化、機械的特性や生産性の向上、安全性の向上など、より一層の改良が求められている。
【0004】
非水電解質電池は、主に正極と、負極と、電解質と、セパレータからなる。上記の非水電解質電池の改良への需要に伴い、これらの各部材において改良が行われている。
【0005】
このうち、正極及び負極(以下、併せて「電極」とも言う)は、主に、活性材料(活物質)、導電剤、バインダー及び集電体からなるが、それぞれの成分において、上記需要に対する改良が試みられている。
【0006】
例えば集電体における改良例として、特許文献1には、三次元構造を有する発泡状金属または繊維状金属焼結体から構成されている集電体に、リチウムと合金を形成することが可能な元素を含有する負極材料を堆積して薄膜を形成した電極を用いることで、前記負極材料が集電体に縛り付けられ、充放電サイクルの進行によって前記負極材料が膨張・収縮を繰り返すことがあっても、集電体との接触が保持されて負極の内部抵抗の増大が抑制され、また導電性ネットワークが崩壊することがなく電池の初期容量を保持できることが開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、メッキが施されたスパンボンド不織布を集電体として用いることで、繊維が連続しているため、内部抵抗が低い電池が得られることが開示されている。
【0008】
さらに、特許文献3には、金属繊維の不織布から成るシート状の集電体上に担持された活物質層を備えた電極を用いて電池を作製した際、電解液が貫通孔内に容易に浸入し、これに伴い、貫通孔を形成する内壁面から電極内に電解液が浸透するため、イオン導電性が著しく向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-071305号公報
【文献】特開2003-282066号公報
【文献】特開2012-195182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の集電体は、厚さ450~600μmの発泡状金属または繊維状金属焼結体に負極材料からなる薄膜を形成したものをプレス等で半分程度の厚さまで圧縮して用いているため、100μm未満の厚さとする場合、圧縮に際して、発泡状金属や繊維状金属が極度に変形してしまい、三次元構造を高度に制御することが困難である。
【0011】
また、上記の特許文献2および3の集電体は、いずれも基材の厚さが100μm以上のものであり、電池の小型化・薄膜化の需要に対して十分に対応したものではなく、また、さらなる抵抗低減の需要に対しても十分な性能とは言えないものであった。
【0012】
本発明の目的は、上記課題に鑑みて、低減された厚さの中で特定の多孔性構造(好ましくは多孔性複合構造)を有する集電体、および内部抵抗を十分に低減でき、かつ良好な充放電特性を有する、電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を有する電極を構築することによって、前記課題が解決することを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含してもよい。
【0014】
[1] 三次元の多孔性構造を有している導電性体であって、通気度が0.1~600cc/cm/秒(好ましくは1cc/cm/秒以上、より好ましくは10cc/cm/秒以上、好ましくは500cc/cm/秒以下が好ましく、400cc/cm/秒以下)であるとともに、厚さが100μm未満(好ましくは80μm未満、より好ましくは60μm未満、さらに好ましくは40μm未満、特に30μm未満)である、集電体。
[2] 前記導電性体が、金属皮膜を備えた非導電性構造体であることを特徴とする[1]に記載の集電体。
[3] 前記非導電性構造体が、平均繊維径が5μm以下の不織布である、[2]に記載の集電体。
[4] 前記導電性体が、三次元の多孔性複合構造として、目付が1.0~50g/mの繊維状構造体である、[1]から[3]のいずれかに記載の集電体。
[5] 前記導電性体が、不織布状構造体である、[1]から[4]のいずれかに記載の集電体。
[6] 前記導電性体が、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルのメルトブローン不織布と、当該不織布上に形成された金属皮膜とを備えることを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の集電体。
[7] 前記金属皮膜が銅、ニッケル、金、銀、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属で構成される、[2]または[6]、または[2]に従属する場合の[3]から[5]のいずれかに記載の集電体。
[8] 前記導電性体が、タテ方向の裂断長が10km以上、かつヨコ方向の裂断長が6km以上の繊維状構造体である、[1]から[7]のいずれかに記載の集電体。
[9] [1]から[8]のいずれかに記載の集電体及び該集電体の少なくとも一つの表面に設置される電極材料層を含む電極。
[10] [9]に記載の電極を備える非水電解質電池。
【0015】
なお、請求の範囲および/または明細書に開示された少なくとも2つの構成要素のどのような組み合わせも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲に記載された請求項の2つ以上のどのような組み合わせも本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の集電体は、厚さが薄いだけではなく、特定の三次元の多孔性構造を有しているため、当該集電体を備える電極は、厚さを薄くできるだけでなく、電極抵抗を十分に低減でき、かつ良好な充放電特性を有する非水電解質電池に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[集電体]
本発明の集電体は、三次元の多孔性構造(以下、三次元多孔性構造、または単に多孔性構造とも記載する場合がある)を有している導電性体である。このため導電性を確保でき、集電体として機能することができる。
ここで、三次元の多孔性構造とは、空隙が三次元空間に分布する多孔性を有する構造を意味している。
また、本発明の集電体は、通気度が0.1~600cc/cm/秒であるとともに、厚さが100μm未満であることを特徴とする。
【0018】
集電体が、通気度により把握可能な特定の多孔性構造を有することにより、すなわち、集電体の通気度が0.1~600cc/cm/秒であるときに、電極の充放電特性を落とさずに電極抵抗を低減できることを本発明者は見出した。これは以下の理由によるものと推定される。すなわち、集電体と電極材料層の界面では電子遷移が制限されるため、大きな抵抗を生じている。そこで、集電体を三次元の多孔性構造とすることで、集電体と電極材料層の界面に電解液が浸透できるためイオン導電性が確保され、その結果電極抵抗が低減する。このとき、集電体の通気度と電解液の浸透性との間に相関があり、通気度を0.1~600cc/cm/秒に調整することで電解液の浸透性が高くなり、その結果イオン電導性が高くなることで電極抵抗が低減できるものと推定される。
【0019】
また、該集電体の通気度が0.1~600cc/cm/秒であることによって、所望の電池性能を得ることができる。集電体の通気度が下限未満であると、電解液の浸透性が低く、イオン拡散性が低下してしまうため十分に抵抗が低減しない。このため、集電体の通気度は0.1cc/cm/秒以上が必要であり、1cc/cm/秒以上が好ましく、10cc/cm/秒以上がより好ましい。一方、集電体の通気度が上限を超えると、多孔性構造の機械強度が低減することで耐久性や電極生産安定性等に支障が出る。また、活物質との接触率が低下することで、逆に導電性が低下することもある。このため、集電体の通気度は600cc/cm/秒以下が必要であり、500cc/cm/秒以下が好ましく、400cc/cm/秒以下がより好ましい。
【0020】
本発明では、集電体の厚さが100μm未満であることによって、集電体に由来する電極の厚さが増加するのを抑えることができ、薄い非水電解質電池においても十分な容量を発現する電極を提供できる。
【0021】
該集電体の厚さが薄いことで、上記の通気度に到達しやすくなることに加えて、集電体に由来する厚さ増加を抑えることができ、その結果、単位体積あたりの充放電容量が高い電池を得ることができる。このため、集電体の厚さは100μm未満である必要があり、80μm未満であることが好ましく、60μm未満であることがより好ましく、40μm未満がさらに好ましく、30μm未満がもっとも好ましい。また、集電体の厚さの下限に特に制限はないが、電池製造時および電池取扱時の破断を避ける観点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0022】
(三次元多孔性構造)
以上の要件を満たす三次元多孔性構造を実現するために、集電体として、織物・不織布(紙を含む)等の繊維状構造体や、発泡ウレタン等の樹脂発泡体等を用いて構成することができる。この中でも、上記の通気度を薄い厚さで達成しやすいという観点から繊維状構造体を適用するのが好ましい。
【0023】
多孔性構造として繊維状構造体を適用する場合、上記のような薄い厚さであっても電池製造時、および電池取扱時の破断を避けるために、繊維状構造体の強度は高い方が好ましい。具体的には、タテ方向の裂断長が10km以上、かつヨコ方向の裂断長が6km以上である繊維状構造体を適用することが好ましい。ここで、タテ方向は、流れ方向(MD:Machine Direction)に沿った方向、ヨコ方向は、流れ方向に垂直な幅方向(TD:Transverse Direction)を指す。ここで、「流れ方向」とは、繊維状構造体の製造時における当該繊維状構造体の進行方向に沿う方向を指す。また、上限は特に限定されず、繊維状構造体の種類に応じて適宜設定することができるが、例えば、タテ方向の裂断長は100km以下であってもよく、ヨコ方向の裂断長は50km以下であってもよい。
また、不織布状構造体の場合、不織布の裂断長が低すぎると、金属被覆加工時の工程張力によって破断してしまい、裂断長が高すぎても、切断、打ち抜き加工性が悪くなるといった不具合が生じる。したがって、本発明における不織布のタテ方向の裂断長は10~100kmの範囲内であることが好ましく、20~50kmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明におけるヨコ方向の裂断長は6~50kmの範囲内であることが好ましく、10~30kmの範囲内であることがより好ましい。
【0024】
三次元多孔性構造として繊維状構造体を適用する場合、集電体の目付が1.0~50g/mであってもよい。所定の通気度および厚みを有する集電体において、集電体の目付が小さいほど、通気度を高め、集電体の厚さを薄くできることから、15g/m以下であることが好ましく、12g/m以下であることがより好ましく、10g/m以下であることがさらに好ましい。また、集電体の機械的強度という観点からは目付が大きいほど好ましく、1.0g/m以上が好ましく、2.0g/m以上がより好ましく、3.0g/m以上がさらに好ましい。
【0025】
多孔性構造を有する導電性体を得るための方法に限定はなく、電極に用いられる公知の導電性を有する素材で多孔性導電性体を形成してもよいし、後述のとおり、非導電性の多孔性構造を有する構造体(以下、非導電性多孔性構造体と称する場合がある)にめっき等の手法で金属皮膜を形成して複合化し、非導電性多孔性構造体に導電性を付与してもよい。導電性体の種類は特に限定はないが、特定の範囲の通気度・厚さを達成しやすくするためには、金属皮膜を備えた非導電性多孔性構造体(特に非導電性繊維)を適用することが好ましい。好ましくは、導電性体は、非導電性多孔性構造体(特に非導電性繊維)に対して金属皮膜が形成されて複合化した、三次元の多孔性複合構造を有する導電性体であってもよい。
【0026】
三次元の多孔性複合構造を有する導電性体が金属皮膜を備える非導電性構造体である場合、非導電性構造体としては、特に限定されず、公知の樹脂発泡体であってもよく、非導電性繊維であってもよい。非導電性繊維としては、例えばポリオレフィン系繊維、セルロース系繊維、(メタ)アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、塩化ビニル系繊維、スチレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ウレタン系繊維などが挙げられる。これらの繊維のうち、前記の強度を発現させる観点から、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル繊維等のポリエステル系繊維が好ましく適用できる。中でも、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル繊維等のポリエステル系繊維が特に好ましく適用できる。
【0027】
前記溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル繊維を構成する溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂である。本明細書において、溶融液晶形成性は、溶融相において光学的異方性(液晶性)を示す性質を示し、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルとは、溶融液晶形成性を示すポリエステルを意味する。「溶融液晶形成性」であることは、例えば、試料をホットステージに載せ窒素雰囲気下で加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、例えば芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等に由来する反復構成単位からなり、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位は、その化学的構成については特に限定されるものではない。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族アミノカルボン酸に由来する構成単位を含んでいてもよい。例えば、好ましい構成単位としては、表1に示す例が挙げられる。
【0028】
【表1】
【0029】
Yは、それぞれ独立して、1~芳香族環又はシクロ環において置換可能な最大数の範囲で置換し得る置換基であり、具体的には、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基などの炭素数1から4のアルキル基など)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基など)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、アラルキル基[ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)など]、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、及びアラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基など)から選択される置換基である。
【0030】
より好ましい構成単位としては、下記表2、表3及び表4に示す例(1)~(18)に記載される構成単位が挙げられる。なお、式中の構成単位が、複数の構造を示しうる構成単位である場合、そのような構成単位を二種以上組み合わせて、ポリマーを構成する構成単位として使用してもよい。
【0031】
【表2】
【表3】
【表4】
【0032】
表2、3及び4の構成単位において、nは1又は2の整数で、それぞれの構成単位n=1、n=2は、単独で又は組み合わせて存在してもよく及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基[ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等]、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)等であってよい。これらのうち、好ましい 及びY としては、水素原子、塩素原子、臭素原子又はメチル基が挙げられる。
【0033】
また、Zとしては、下記式で表される置換基が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
これらの中でも、本発明で使用される溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルとしては、パラヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とが主成分となる構成、又はパラヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸とテレフタル酸とビフェノールとが主成分となる構成が好ましい。
【0036】
溶融液晶形成性ポリエステルを含んでなる不織布は、メルトブローン法により得られるメルトブローン不織布であることが好ましい。メルトブローン法は公知の方法を採用することができ、例えば、溶融した溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを、一列に配列した複数のノズル孔から溶融ポリマーとして吐出し、オリフィスダイに隣接して設備した噴射ガス口から高温高速空気を噴射せしめて、吐出された溶融ポリマーを細繊維化し、次いで繊維流をコレクタであるコンベヤネット上等に捕集して不織布を製造する方法である。耐熱性を付与するために、得られた不織布に加熱処理を行うこともできる。この時の加熱温度は、<溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルの融点-40℃>以上、<溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルの融点+20℃>以下の温度であることが好ましく、3時間以上加熱処理を行なうことが好ましい。加熱処理時の加熱媒体として用いる気体は、窒素、酸素、アルゴン、炭酸ガスなど混合気体または空気などが挙げられるが、コスト面から、酸素または空気がより好ましい。加熱処理は目的により、緊張下、無緊張下のどちらで行ってもよい。
【0037】
溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルとしては、310℃での溶融粘度が20Pa・s以下であることが好ましい。310℃での溶融粘度が20Pa・sを超えると極細繊維化が困難であったり、重合時のオリゴマー発生、重合時、造粒時のトラブル発生などの理由から好ましくない。一方、溶融粘度が低すぎる場合も繊維化が困難であり、310℃において5Pa・s以上の溶融粘度を示すことが望ましい。この溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルの310℃における溶融粘度は、たとえばメルトインデクサー(宝工業株式会社製:L244)を用いて測定された値を指す。
【0038】
なお、上記溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルには必要に応じて、着色剤、無機フィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの通常使用されている添加剤および熱可塑性エラストマーを本発明の機能を阻害しない範囲(例えば、10重量%以下)で加えることができる。
【0039】
繊維状構造体のうち、製造工程の複雑さの回避、強度の維持、柔軟性の維持の観点、金属皮膜形成時の接触点の制御の観点から、不織布状構造体であることが好ましい。不織布の種類としては、湿式法や乾式法によって形成された不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ニードルパンチ法によって形成された不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、繊維径が小さく、長い繊維を使うことが好ましく、メルトブローン不織布が好ましい。特に、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを用いて形成されるメルトブローン不織布と、当該不織布上に形成された金属皮膜とを備えた導電性不織布を導電性体として適用すると、前記の厚さの薄い集電体を得ることができる。
【0040】
具体的には、当該不織布を構成する繊維の平均繊維径が0.1~5μmの範囲内であることが好ましい。平均繊維径が0.1μm未満では風綿が発生し繊維塊になりやすく、また、平均繊維径が10μmを超えると地合が粗くなり、金属被覆時の導電性が不十分となるためである。メルトブローン不織布を構成する繊維の平均繊維径は、好ましくは0.5~4μmの範囲内であり、さらに好ましくは1~3μmの範囲内である。なお、本発明におけるメルトブローン不織布を構成する繊維の平均繊維径は、不織布を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維径を測定した値の平均値を指す。
【0041】
三次元の多孔性構造において不織布を適用する場合には、このような溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とするメルトブローン不織布を用いることが好ましい。
【0042】
(金属皮膜)
本発明の導電性体が金属皮膜を備えた非導電性構造体である場合の金属皮膜としては、製造工程の複雑さの回避、強度の維持、柔軟性の維持の観点、金属皮膜形成時の接触点の制御の観点から、好ましくは繊維状構造体、特に不織布状構造体への金属皮膜であることが好ましい。金属皮膜は、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウムのいずれかを含むことが好ましい。中でも、導電性の高さ、金属被覆の形成容易性などの点から、銅、ニッケル、金、アルミニウムのいずれかを含む積層皮膜が特に好ましい。これらの中でも、経済性、導電性が高い点において、銅、ニッケル、アルミニウムは特に好ましい金属皮膜である。これらの金属皮膜は、複数の層で形成されてもよく、例えば、非導電性構造体に第1の金属層を形成し、さらに、第1の金属層に第2の金属層を形成してもよい。
【0043】
本発明の導電性体の表面抵抗値は、金属皮膜の種類や厚さによって変わりうるが、十分な導電性を確保する観点から、表面抵抗値は10-3~10Ω/□の範囲内であることが好ましく、10-3~10-1Ω/□の範囲内であることがより好ましい。
【0044】
金属皮膜を形成する方法としては、電気メッキ、無電解メッキ、スパッタリング、真空蒸着など、従来公知の方法を用いることができるが、高い導電性が得やすいとの観点から無電解メッキによる方法が好ましい。無電解メッキの方法としては従来公知の方法を用いることができ、特に制限はないが、基材となる非導電性構造体(例えば、不織布の繊維表面)に触媒を付与した後、金属塩、還元剤、緩衝剤を溶解した化学メッキ浴に浸漬することによって金属皮膜を形成する方法が一般的である。
【0045】
本発明の集電体(導電性体)における金属皮膜の厚さは、集電体が特定の通気度および厚さを達成することができる限り特に限定されず、例えば、0.05~10μmの範囲内、0.1~5μmの範囲内にあってもよいが、上述の表面抵抗値を付与しつつ、集電体の通気度を制御する観点からは、4μm以下、または2μm以下であることがより好ましい。金属皮膜の厚さが0.05μmより小さいと十分な導電性が得られず、一方、金属皮膜の厚さが10μmより大きいと集電体の柔軟性や可撓性が損なわれるので好ましくない。
【0046】
金属皮膜を形成する場合、例えば、通気度が0.2~800cc/cm/秒である非導電性構造体に対して、金属皮膜を形成し、通気度が0.1~600cc/cm/秒である集電体を形成してもよい。
【0047】
例えば、非導電性構造体(例えば、非導電性のメルトブローン不織布)は、通気度が0.2~800cc/cm/秒であることが好ましい。非導電性構造体の通気度が800cc/cm/秒を超えると集電体の通気度を前述の範囲に設定しにくくなり、その結果、所望の抵抗低減が実現しにくくなる。このため、800cc/cm/秒以下であることが好ましく、700cc/cm/秒以下であることがより好ましく、600cc/cm/秒以下であることがさらに好ましい。また、非導電性構造体の通気度の下限値については特に制限されるものではないが、機械的強度や金属被覆後の導電性確保という観点から0.2cc/cm/秒以上であることが好ましく、1cc/cm/秒以上であることがより好ましい。
【0048】
また、非導電性構造体(例えば、非導電性のメルトブローン不織布)は、その厚さが5μm以上、100μm未満の範囲内であることが好ましい。非導電性構造体の厚さが5μm未満である場合には、電池製造時および電池取扱時の破断しやすくなる傾向にあり、また、非導電性構造体の厚さが100μm以上であると集電体の薄膜化の需要に満足できなくなる。したがって、非導電性構造体の厚さは5μm以上、100μm未満の範囲内であることが好ましく、7~30μmの範囲内であることがより好ましく、9~20μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0049】
[電極]
本発明の電極は、集電体及び該集電体の少なくとも一つの表面に設置される電極材料層を含むものである。ここで、集電体の表面に電極材料層が設置されるとは、電極材料層が、集電体に隣接する部分を有することを意味しており、電極材料層の一部が集電体内部に侵入している場合も含んでいる。
【0050】
[負極]
本発明の集電体を用いた負極は、該集電体および該集電体の上に形成された負極活物質層(電極材料層)を含み、上記負極活物質層は負極活物質を含む。
【0051】
負極活物質は、特に限定されることなく、既知の負極活物質を用いることができる。例えば、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0052】
上記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素物質であって、例えばリチウムイオン二次電池で一般に使用される炭素系負極活物質であれば如何なるものでも使用可能であり、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用してもよい。上記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、上記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。これらは、事前にリチウムをインターカレーションした状態で使用することもできる。
【0053】
上記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金が使用されてもよい。
【0054】
上記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si-Q合金(上記Qは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であって、Siではない)、Sn、SnO、Sn-R(上記Rは、アルカリ金属、アルカリ土金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiOを混合して使用してもよい。上記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用してもよい。
【0055】
上記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0056】
上記負極活物質層における負極活物質の含量は、負極活物質層全体重量(またはスラリーの固形分全体重量)に対して95重量%~99重量%であってもよい。
【0057】
上記負極活物質層はまたバインダーを含み、選択的に導電材(導電助剤)をさらに含んでもよい。上記負極活物質層でバインダーの含量は、負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。また導電材をさらに含む場合には、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用してもよい。
【0058】
上記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を集電体に良好に付着させる役割を果たす。上記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0059】
上記非水溶性バインダーの例としては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
上記水溶性バインダーの例としては、スチレン-ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン-ブタジエンラバー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレンと炭素数が2~8のオレフィン共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、炭素数が2~8のオレフィンとマレイン酸の共重合体、もしくはこれらのアルカリ金属塩等、またはこれらの組み合わせが挙げられる。また、これらの水溶バインダーは、抵抗低減を目的として、金属を含む塩基性物質と部分的に中和して適用してもよい。
【0061】
上記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに使用してもよい。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用してもよい。上記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用してもよい。このような増粘剤使用含量は、バインダー100重量部に対して0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0062】
上記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用してもよい。
【0063】
負極は、後述する正極と同様に、溶媒とともに負極用スラリーを調製して、集電体に適用してもよいが、例えば、上記活物質と、必要に応じて導電材、バインダーなどとを混錬してシート状に成型して、負極活物質層として上記集電体上に設置して成型することもできるし、インク状の活物質、導電材、バインダーのスラリーを、集電体に塗工、乾燥することによって成型し、負極活物質層とすることもできる。
負極活物質層の厚さは、製法によって、また求める電池の性能によって異なるため、限定されるものではなく、通常10μm~200μm、より好ましくは、20μm~150μm、電池の電気容量、正極との配合を考慮して、25μm~130μmに成型する。
【0064】
[正極]
本発明の集電体を用いた正極は、該集電体および該集電体の上に形成された正極活物質層(電極材料層)を含み、上記正極活物質層は正極活物質を含む。
【0065】
正極活物質としては、特に限定されることなく、既知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、Co-Ni-Mnのリチウム含有複合酸化物、Ni-Mn-Alのリチウム含有複合酸化物、Ni-Co-Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、Li1+xMn2-x4(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni0.17Li0.2Co0.07Mn0.56]O2、LiNi0.5Mn1.54等の金属酸化物、硫黄、ニトロキシルラジカルを有する化合物やポリマー、オキシラジカルを有する化合物やポリマー、窒素ラジカルを有する化合物やポリマー、フルバレン骨格を有する化合物やポリマー等の有機ラジカルが挙げられる。また、リチウムイオンキャパシタのような静電的な吸着による電池を構成する場合には、活性炭、メソポーラス炭素、欠陥性酸化チタン導電性セラミクスのような高比表面積を有する炭素材料、無機材料が挙げられる。
【0066】
これらの正極活物質は1種単独で、または、2種以上を組み合わせて用いることができる。そして上述した中でも、二次電池の電池容量などを向上させる観点からは、正極活物質としてリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2);リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2);Co-Ni-Mnのリチウム含有複合酸化物、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1など;Ni-Co-Alのリチウム含有複合酸化物、例えばLiNi0.8Co0.1Al0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05などを用いることが好ましい。
【0067】
なお、正極活物質の粒径は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質と同様とすることができる。通常、0.1μm~40μmの範囲、より好ましくは、0.5μm~20μmの範囲の粒径のものが使用される。
【0068】
上記正極活物質層における正極活物質の含有量は、正極活物質層全体重量(またはスラリーの固形分全体重量)に対して90~40重量%であってもよい。
【0069】
正極用スラリーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を集電体に良好に付着させるためのバインダーを含有することが好ましい。バインダーの例としては、負極用バインダーとして記載された、非水溶性バインダー、水溶性バインダーが挙げられるが、例えばポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリレイテッドスチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用してもよいが、これに限定されない。これは単独で使用しても、混合して使用しても構わない。
正極用スラリーにおいて、上記バインダーの含有量は、スラリー中の固形分全体重量に対して5~10重量%であってもよい。
【0070】
正極用スラリーは、集電体上に形成される正極の導電性をより高めるため、導電材(導電助剤)をさらに含有してもよい。導電材としては、構成される電気化学素子において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。導電材の具体的な例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用してもよく、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上混合して使用してもよい。
正極用スラリーにおいて、上記導電材の含有量は、スラリー中の固形分全体重量に対して1~10重量%であってもよい。
【0071】
正極用スラリーに用いる溶媒としては、例えば、有機溶媒を用いることができ、中でも後述するバインダーを溶解可能な極性有機溶媒が好ましい。
具体的には、有機溶媒としては、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、アセチルピリジン、シクロペンタノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルホルムアミド、メチルエチルケトン、フルフラール、エチレンジアミンなどを用いることができる。これらの中でも、取扱い易さ、安全性、合成の容易さなどの観点から、N-メチルピロリドン(NMP)が最も好ましい。
なお、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
前記溶媒の使用量としては、正極用スラリー中の固形分濃度が、好ましくは1~80重量%、より好ましくは5~70重量% 、さらに好ましくは10~60重量%の範囲となる量である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、正極活物質、及び含有するその他の成分を均一に分散させることができるため、好適である。
【0073】
正極用スラリーの製造方法としては、上述の正極活物質、及び必要に応じその他の成分を、上述の溶媒中で混合することによって製造できる。混合方法には特に制限は無く、例えば、ディスパー、ミル、ニーダーなどの一般的な混合装置を用いることができる。例えば、20分以上120分以下攪拌することが好ましい。
【0074】
混合する際の温度としても特に制限されるものではなく、例えば、0℃~160℃の範囲、より好ましくは、20℃~80℃の範囲で行われる。低すぎる温度は粘度が高く、塗工することが出来なくなるため好ましくなく、高すぎる温度では、有機溶媒の揮発、付随する粘度変化など安全性、機器操作性の観点から好ましくない。
【0075】
上記正極は、正極用スラリーを用いて作成されたものであって、集電体と正極活物質層を含む。上記正極活物質層は、上記活物質と、必要に応じて導電材、バインダーなどとを混錬してシート状に成型して、正極活物質層として集電体上に設置して成型することもできるし、正極用スラリーを上記集電体上に塗布(塗工)、乾燥することによって形成し、正極活物質層とすることもできる。
【0076】
正極用スラリーを集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、正極用スラリーを集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚さは、乾燥して得られる正極合材層の厚さに応じて適宜に設定しうる。
【0077】
集電体上の正極用スラリーを乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上の電気化学素子正極用スラリーを乾燥することで、集電体上に正極活物質層を形成し、集電体と正極活物質層とを備える正極を得ることができる。
【0078】
好ましくは、乾燥工程は、乾燥温度100℃以上160℃以下で大気圧下もしくは減圧下で、1時間から12時間にわたって集電体上の正極用スラリーを乾燥させることで実施される。
【0079】
なお、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、正極活物質層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、正極活物質層と集電体との密着性を向上させることができる。
【0080】
正極活物質の厚さは、製法によって、また求める電池の性能によって異なるため、限定されるものではなく、通常10μm~200μm、より好ましくは、20μm~150μm、電池の電気容量、負極との配合を考慮して、25μm~130μmに成型する。
【0081】
[非水電解質電池]
本発明の非水電解質電池は、上記電極を少なくとも備えている。非水電解質電池は、典型的には、正極、負極、電解質およびセパレータを備えている。なお、非水電解質電池において、本発明の集電体は、正極または負極の双方に用いられていてもよく、いずれか一方に用いられていてもよい。本発明の集電体がいずれか一方の電極のみに用いられる場合、本発明の集電体を用いない方の電極では、集電体として、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある公知または慣用の集電体(例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔など)が用いられてもよい。
【0082】
[電解質]
電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を少なくとも含むものが好ましい。
【0083】
上記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。
【0084】
非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非陽子性溶媒を使用してもよい。上記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用されてもよく、上記エステル系溶媒としては、n-メチルアセテート、n-エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノライド、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトンなどが使用されてもよい。上記エーテルとしては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用されてもよく、上記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用されてもよい。また、上記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用されてもよく、上記非陽子性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合方向環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類スルホラン類などが使用されてもよい。
【0085】
上記非水性有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用されてもよく、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能に応じて適切に調節してもよい。
【0086】
また、上記カーボネート系溶媒の場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して使用することがよい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1~1:9の体積比で混合して使用することが電解液の性能でより優秀に示され得る。
【0087】
上記リチウム塩は、有機溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウムイオン二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、例えばLiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCFSO、LiN(SO、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは、自然数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)などが挙げられる。これらは単独でまたは二種以上を混合して使用してもよい。リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が0.1M未満であれば、電解質の電導度が低くなって電解質性能が低下する傾向があり、2.0Mを超える場合には電解質の粘度が増加してリチウムイオンの移動性が減少する傾向がある。
【0088】
上記電解質は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたはエチレンカーボネート系化合物を寿命向上剤としてさらに含んでもよい。
【0089】
上記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上剤を上記電解質に対してさらに使用する場合、その使用量は適切に調節してもよい。
【0090】
[セパレータ]
本発明の非水電解質電池において、正極と負極の間にセパレータが存在してもよい。このようなセパレータとしては、公知または慣用のセパレータであればよく、例えば、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリフッ化ビニリデン膜またはこれらの2層以上の多層膜が使用されてもよく、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜が使用されてもよい。
【0091】
以下に実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例により何等限定されるものではない。なお本発明における実施例および比較例の物性は以下の方法により測定されたものを意味する。
【0092】
[平均繊維径(μm)]
試料片(不織布)中の任意の点に対し、走査型電子顕微鏡にて、1000倍で拡大撮影し、100本の繊維径を測定した値の平均値を試料片の平均繊維径とした。
【0093】
[裂断長(km)]
島津製作所製オートグラフを使用し、JIS L 1906に準じ、試料片(不織布)のタテ方向、ヨコ方向それぞれ3箇所の引張り強力(N/15mm)を測定し、その平均値から以下式により、裂断長を算出した。なお、ここで、測定幅は15mmである。
裂断長=<強力(N)/測定幅(mm)/目付(g/m)/9.8>×1000
【0094】
[目付け(g/m)]
JIS L 1906に準じ、実施例および比較例において作製された試料(不織布)の幅1mあたりから、縦20cm×横20cmの試料片を3枚採取し、各試料片の質量を電子天秤にて測定し、3枚の試料片の質量の平均値を試験片面積400cmで除して、単位面積当たりの質量を算出し、不織布の目付けとした。
【0095】
[厚さ(μm)]
JIS L 1906に準じ、目付け測定で作製したのと同じ3枚の試料片を用い、各試料片において、直径16mm、荷重20gf/cmのデジタル測厚計((株)東洋精器製作所製:B1型)で各5箇所の厚さを測定し、15点の平均値を不織布または集電体の厚さとした。
【0096】
[通気度(cc/cm/秒)]
JIS L 1096の6.27.1(A法:フラジール法)に準じ、目付け測定で作製したのと同じ3枚の試料片を用い、各試料片おいて、通気度測定器(TEXTEST製(スイス):FX3300)を使用し、測定面積38cm、測定圧力125Paの条件で通気度を測定し、3枚のそれぞれで得られた通気度の平均値を不織布または集電体の通気度とした。
【0097】
[表面抵抗値(Ω/□)]
集電体の表面抵抗値は、抵抗値測定器(MULTIMETER3478A、ヒューレット・パッカード社製)を使用し、JIS-K-7194に準拠して四端子四探針法により測定した。
【0098】
[溶融液晶性ポリエステル繊維の融点 ℃]
示差走査熱量計(島津製作所製、DSC-60A)を用いて、溶融液晶性ポリエステル繊維の熱挙動を観察して得た。すなわち、溶融液晶性ポリエステル繊維を20℃/分の速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を50℃/分の速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、溶融液晶性ポリエステル繊維の融点として記録した。
【0099】
[実施例1]
(1)パラヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合物からなり、融点300℃、310℃での溶融粘度が15Pa・sである溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを、二軸押し出し機により押し出し、ノズル孔径(直径)0.15mm、L/D=30、幅1mあたり孔数1500(ノズル孔同士の間隔:0.67mm)のノズルを有するメルトブローン不織布製造装置に供給し、単孔吐出量0.10g/分、樹脂温度330℃、熱風温度330℃、ノズル幅1mあたり18Nmで吹き付けて目付けが15g/mの不織布を得た後、空気中にて300℃で6時間加熱処理した。その後、得られた不織布を110℃に加熱した金属ロールと表面のショアD硬度が86°の樹脂製の弾性ロール(由利ロール株式会社製)の間に通し、線圧120kg/cmで加圧カレンダーを用い、連続的に処理した。得られたメルトブローン不織布の平均繊維径は2.8μmであり、タテ方向の引張り強力は57N/15mm、ヨコ方向の引張り強力は29N/15mmであり、タテ方向の裂断長は26km、且つ、ヨコ方向の裂断長は13kmであり、目付けは上述のように15g/mであり、厚さは23μmであり、通気度は32cc/cm/秒のメルトブローン不織布を得た。
【0100】
(2)上記(1)で得られたメルトブローン不織布の繊維表面にパラジウム触媒を付与し、硫酸銅と酒石酸カリウム・ナトリウム(ロッシェル塩)を含む無電解銅メッキ液に浸漬、水洗し、不織布表面に銅皮膜を形成させた。続いて、電気ニッケルメッキ液に浸漬し、電解メッキにてニッケルを被覆させた後に水洗、乾燥すると、銅皮膜上に更にニッケル皮膜が積層形成された導電性不織布が得られた。また、この導電性不織布の通気度、厚さ、表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
【0101】
[実施例2]
実施例1と同じ方法にて、目付が9g/mのメルトブローン不織布を製造した。得られたメルトブローン不織布の平均繊維径は2.8μmであり、タテ方向の引張り強力は33N/15mm、ヨコ方向の引張り張力は16N/15mmであり、タテ方向の裂断長25km、且つ、ヨコ方向の裂断長は12kmであり、厚さは15μmであり、通気度は68cc/cm/秒のメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布を用いて、実施例1と同様にして導電性不織布を得た。また、この導電性不織布の通気度、厚さ、表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
【0102】
[実施例3]
実施例1と同じ方法にて、目付が4g/mのメルトブローン不織布を製造した。得られたメルトブローン不織布の平均繊維径は2.8μmで、タテ方向の引張り強力は11N/15mm、ヨコ方向の引張り張力は5N/15mmであり、タテ方向の裂断長は19km、且つ、ヨコ方向の裂断長は9kmであり、厚さは13μmであり、通気度は204cc/cm/秒のメルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布を用いて、実施例1と同様にして導電性不織布を得た。また、この導電性不織布の通気度、厚さ、表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
【0103】
[実施例4]
不織布としてポリエチレンテレフタレート(PET)メルトブローン不織布(目付9.1g/m、厚さ12μm、融点255℃、通気度12cc/cm/秒、平均繊維径3.3μm)を用いた以外は、実施例1と同じ方法にて導電性不織布を作成した。また、この導電性不織布の通気度、厚さ、表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
【0104】
[比較例1]
(1)パラヒドロキシ安息香酸と6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸との共重合物からなり、融点300℃、310℃での溶融粘度が15Pa・sである溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを、二軸押し出し機により押し出し、Tダイにより、成型し、厚さ11μmのフィルムとした。
(2)実施例1と同じ方法にて、導電皮膜を形成したフィルムを作成した。この導電性フィルムの通気度、厚さ、表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
【0105】
[比較例2]
不織布としてポリエチレンテレフタレート(PET)不織布(目付80g/m、厚さ48μm、融点255℃、通気度0.09cc/cm/秒、平均繊維径3.3μm)を用いた以外は、実施例1と同じ方法にて導電性不織布を作成した。また、この導電性不織布の通気度、厚さ、表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
【0106】
[実施例5]
<負極用バインダー組成物>
負極用バインダー組成物として水溶性のリチウム変性イソブテン-無水マレイン酸共重合樹脂(平均分子量325,000、中和度0.5、開環率96%)の10wt%水溶液を調製した。該樹脂の10wt%水溶液に対し、モノアミン類としてジエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製)を、ポリアミン類としてポリエチレンイミン(PEI、和光純薬工業株式会社製、平均分子量10000)を100:2.98:3.17の重量比にて混合し、バインダー組成物を含むバインダー水溶液を得た。
【0107】
<負極用スラリーの作製>
電極用スラリー作製は負極活物質として天然黒鉛(DMGS、上海杉杉科技有限公司製)100重量部に対して、負極用バインダー組成物の10wt%水溶液をポリビニルアルコールクラレ製を固形分として3.125重量部、および導電材(導電付与剤)としてカーボンブラック(「Super-P」、ティムカル社製)を固形分として1.041重量部を専用容器に投入し、遊星攪拌器(ARE-250、シンキー製)を用いて混練した。スラリー粘度調整のため、混練時に水を94.3重量部添加して再度混練することによって電極塗工用スラリーを作製した。スラリー中の活物質と導電材とバインダーとの組成比は固形分として、黒鉛粉末:導電材:バインダー=100:1.041:3.125である。
【0108】
<電池用負極の作製>
得られたスラリーを、バーコーター(T101、松尾産業製)を用いて、集電体上に塗工し、80℃で30分間熱風乾燥機(ヤマト科学製)にて一次乾燥後、ロールプレス(宝泉製)を用いて圧延処理を行なった。その後、電池用電極(φ14mm)として打ち抜き後、120℃で3時間減圧条件の二次乾燥によってコイン電池用電極を作製した。このコイン電池用電極と同じ3枚の試料片を用い、各試料片において、JIS L 1906に準じ、直径16mm、荷重20gf/cmのデジタル測厚計((株)東洋精器製作所製:B1型)で各3箇所の厚さを測定し、9点の平均値を電極厚さとした。
【0109】
<電池の作製>
上記で得られた電池用負極をアルゴンガス雰囲気下のグローブボックス(美和製作所製)に移送した。正極には金属リチウム箔(厚さ0.2mm、φ16mm)を用いた。また、セパレータとしてポリプロピレンセパレータ膜(セルガード#2400、ポリポア製)を使用して、電解液は六フッ化リン酸リチウム(LiPF)のエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)にビニレンカーボネート(VC)を添加した混合溶媒系(1M-LiPF、EC/EMC=3/7vol%、VC2wt%)を用いて注入し、コイン電池(2032タイプ)を作製した。
【0110】
<充放電特性試験>
作製したコイン電池は、市販充放電試験機(TOSCAT3100、東洋システム製)を用いて充放電試験を実施した。コイン電池を25℃の恒温槽に置き、充電はリチウム電位に対して0Vになるまで活物質量に対して0.1C(約0.5mA/cm)の定電流充電を行い、更にリチウム電位に対して0.02mAの電流まで0Vの定電圧充電を実施した。このときの容量を充電容量(mAh/g)とした。次いで、リチウム電位に対して0.1C(約0.5mA/cm)の定電流放電を1.5Vまで行い、このときの容量を放電容量(mAh/g)とした。
【0111】
<インピーダンス>
上記で作製したコイン電池を用いて、電気化学測定装置(ソーラトロン社製「1255WB型高性能電気化学測定システム」)を用い、25℃で、0Vを中心に10mVの振幅を与え、周波数10mHz~1MHzの周波数で定電圧交流インピーダンスを測定し、周波数1kHzにおける実部抵抗をインピーダンス抵抗として測定した。
【0112】
[実施例6]
実施例5において、実施例1の集電体に代え、実施例2の集電体を使用した以外は、実施例5と同様に行った。
【0113】
[実施例7]
実施例5において、実施例1の集電体に代え、実施例3の集電体を使用した以外は、実施例5と同様に行った。
【0114】
[実施例8]
実施例5において、実施例1の集電体に代え、実施例4の集電体を使用した以外は、実施例5と同様に行った。
【0115】
[比較例3]
実施例5において、実施例1の集電体に代え、比較例1の集電体を用いた以外は、実施例5と同様に行った。
【0116】
[比較例4]
実施例5において、実施例1の集電体に代え、比較例2の集電体を用いた以外は、実施例5と同様に行った。
【0117】
各実施例および各比較例における集電体の物性の評価結果ならびに電極および電池特性の評価結果を、それぞれ以下の表5、表6に示す。実施例1~4の集電体を用いて作製した電池(実施例5~8)は、抵抗が低く、放電容量・充放電効率が高いものであったが、比較例1,2の集電体を用いて作製した電池(比較例3,4)は抵抗が高く、放電容量・充放電効率が低いものであった。特に、比較例3,4は、実施例5~8と同じスラリーを用いているにもかかわらず、インピーダンス抵抗が大きいものであった。
また、実施例1~4の集電体を用いた場合、集電体の多孔性構造によりスラリーの一部が集電体の内部に入り込み、電極全体の厚みを低減することができ、さらに、(電極全体の厚さ)-(集電体の厚さ)の値を(活物質層の厚さ)と捉えた場合、実施例5~8では、いずれも活物質層の厚さが比較例3,4よりも小さいにもかかわらず、抵抗が低く、放電容量・充放電効率が高いものであった。
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
以上の実施例では、ボタン電池の負極に本発明に係る電極を適用した場合を示したが、本発明はこれに限るものではない。上記に代えて、ボタン電池の正極に本発明に係る電極を適用してもよい。また、非水電解質電池は「ボタン電池」に限るものではなく、円筒形等の他の形状の電池としてもよい。
【0121】
また、上記の実施例では、電解質は液体状であるとしたが、これに限るものではなく、ゲル状等の他の形態の電解質を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の電極によれば、厚さを薄くすることができ、電極抵抗を十分に低減でき、かつ良好な充放電特性を得ることができるため、目的に応じて、携帯電話、スマートウォッチなどの携帯情報端末用情報端末やノート型パーソナルコンピュータ、ウェアラブル端末などの様々な分野で、小型で軽量な非水電解電池に利用することができる。
【0123】
以上のとおり、本発明の好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。