(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】砂杭造成装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/284 20060101AFI20240206BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G01F23/284
E02D3/10 104
(21)【出願番号】P 2023068293
(22)【出願日】2023-04-19
(62)【分割の表示】P 2018236269の分割
【原出願日】2018-12-18
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深田 久
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 憲史
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 健一
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066589(JP,A)
【文献】特開平07-090836(JP,A)
【文献】特許第2688290(JP,B2)
【文献】特開2003-041566(JP,A)
【文献】特開平06-073724(JP,A)
【文献】特表2003-506704(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0179584(US,A1)
【文献】中国実用新案第204007793(CN,U)
【文献】PRODUCT DATA SHEET: Non-contacting Rader Level Gauge KRG-10,日本,東京計器株式会社,2016年01月,https://www.tokyokeiki.jp/products/detail.html?pdid=98
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00-23/80
G01S 7/00-7/42,13/00-13/95
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂杭造成用円形中空管内にマイクロ波を用いた電波式砂面計を付設し、砂杭造成用円形中空管内の砂面位置を常時検出可能としたものであって、該マイクロ波の伝播時間測定方式がパルス式であり、マイクロ波の周波数は、20~30GHz帯であり、該砂杭造成用円形中空管の内面には、材料導入管の材料投入部の開口部の段差及び中空管の長さ管同士の継ぎ目の段差が、
マイクロ波発信受信点から指向長さ(H)
(但し、(H)=(r)/tan(θ/2)であり、且つ(r)<D/2であり、符号(r)はマイクロ波の径方向の広がり長さの1/2を言い、θはマイクロ波の広がり角度で5~8度であり、Dは指向長さ(H)における中空管の内径(最小内径)を示す。)までに存在することを特徴とする砂杭造成装置。
【請求項2】
マイクロ波を送受信するためのアンテナが、ホーンアンテナであることを特徴とする請求項1記載の砂杭造成装置。
【請求項3】
マイクロ
波の周波数は、
24~28GHz帯であることを特徴とする請求項1又は2記載の砂杭造成装置。
【請求項4】
上部周側面に、材料導入管接合部を有し、材料導入管接合部よりも上方位置の該砂杭造成用中空管内にマイクロ波信号を発射し、更に反射波を検出するアンテナユニット部を設置したことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の砂杭造成装置。
【請求項5】
反射波は、設定された閾値により、不要な反射ノイズがマスキングされ、砂面からの反射波だけを識別する補正がされたものであることを特徴する請求項1~4のいずれか1項に記載の砂杭造成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤中に砂杭を造成して地盤を安定させるための中空管を備える杭造成装置であり、該砂杭の材料として供給された土砂の管内位置を電波式砂面計で常時検出可能にした砂杭造成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤中に多数の砂杭を造成して地盤を安定させるための砂杭造成装置において、該砂杭の材料として供給された土砂の管内位置を検出することは、均一で、高品質の砂杭を施工効率を高めて造成する点で重要なことである。従来、このような中空管内の土砂の管内位置を検出する方法として、導波管方式や電波方式の非接触式砂面計や、重錘方式(サウンジング方式)の接触式砂面計を使用した例が知られている。
【0003】
電波方式として、例えば、特開2003-41566号公報には、中空管と、該中空管内に砂等の杭材料を供給する材料導入管を該中空管の側周面に付設してなる材料供給装置と、該中空管を地盤に貫入及び引き抜きする貫入機とからなる砂杭等の造成装置において、前記材料導入管内に開閉弁を設置し、且つ該中空管の材料導入管接合部よりも上方位置の該中空管内に高周波掃引信号を発射し、更に反射波を検出するアンテナユニット部を設置し、該中空管内の砂面位置を常時検出可能とした電波式砂面計を備えた砂杭等の造成装置が開示されている。この電波式砂面計によれば、連続波レーダ方式を採用したため、砂杭造成用中空管の異径管同士の接続があっても、ほとんど測定に悪影響しない。また、中空管内の空気を急激に排気する際、空気の膨張に伴う温度低下により、霧が発生しても、霧の影響を受けることがなく、施工を中断することがない。
【0004】
導波管方式として、例えば、特開平8-41854号公報には、砂杭造成用中空管に高周波信号を伝搬する同軸導波管変換器部の中心導体を砂杭造成用中空管の中心に向けて約4分の1波長で折り返して先端を砂杭造成用中空管の内壁に接続し、導波管短絡器として砂杭造成用中空管と略並行に配置された板状導体を用いた砂面位置検出装置が開示されている。この砂面位置検出装置によれば、砂杭造成用中空管の上方から投下される材料砂の降下を同軸導波管変換器部で妨げることなく、スムーズに下方へ材料砂を供給できる。
【0005】
しかし、特開2003-41566号公報に示される連続波レーダ方式の砂面計は、実験レベルでの砂面レベルの測定が可能となったものの、実際には、ホッパー、スイベル、ケーシング内部からの反射ノイズの影響を受けるという問題、ケーシング内部への砂の付着による反射レベルの減衰などの問題が表面化すると共に、構造が複雑であり、故障などのトラブルの発生や、取り扱いの複雑さやメンテナンス性の悪さ、コストの高さなどから、実用化には至っていない。また、マイクロ波の伝播時間測定方式が連続レーダー方式であるため、回路構成が複雑で、消費電力が大となるという問題もある。また、特開平8-41854号公報に示すような導波管方式の中空管は、装置が大きくなるため、一般的な砂杭造成に用いられることの多い、直径400mm程度のパイプの中には取り付けられず、また、測定原理上、パイプの径が途中で変化するとその対策も必要となっていた。
【0006】
このように、非接触式砂面計は取り扱いが難しく、現在もワイヤーを使用した重錘方式の砂面計が主流となっている。重錘方式は、ワイヤロープで吊したおもりをモータで定期的に巻上げ巻下げし、降下中のおもりが粉粒面に接触するとワイヤロープの張力が減少するため、これを検出し、ワイヤロープの繰り出し長さから砂面のレベルを求めるものである。この砂面計はおもりを機械的に上下させるので、粉塵、ミスト、蒸気、ガス、温度、圧力、タンク形状などの影響を受けない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-41566号公報
【文献】特開平8-41854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、重錘方式においては、材料砂を投入する際に、埋もれてしまわないように、投入される砂と干渉しない高さまで巻き上げ、投入後再度巻き下げが必要であり、待ち時間が発生するという問題がある。また、ワイヤーも切れてしまう可能性もあり、切れた場合、数100kgのワイヤーの巻取り装置を交換する作業は、手間も大きくなるなど、問題も多い。また、砂杭造成時、管内を圧縮空気で加圧する際、重錘方式では、ワイヤーが管内から管外の巻き取り装置に繋がっているため、気密性に欠けるという問題もある。
【0009】
従って、本発明の目的は、管内の配管など複雑な形状による反射ノイズの影響、ケーシング内部への砂の付着による反射レベルの減衰などの影響を受けず、連続的に、正確な土砂の位置(砂面)を測定できる省電力、省配線が可能な非接触式砂面計を備えた砂杭造成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、砂杭造成用中空管内にマイクロ波を用いた電波式砂面計を付設し、砂杭造成用中空管内の砂面位置を常時検出可能としたものであって、該マイクロ波の伝播時間測定方式がパルス式であることを特徴とする砂杭造成装置を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、マイクロ波を送受信するためのアンテナが、ホーンアンテナであることを特徴とする前記砂杭造成装置を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、マイクロの周波数は、20~100GHz帯であることを特徴とする前記砂杭造成装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上部周側面に、材料導入管接合部を有し、材料導入管接合部よりも上方位置の該砂杭造成用中空管内にマイクロ波信号を発射し、更に反射波を検出するアンテナユニット部を設置したことを特徴とする前記砂杭造成装置を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、反射波は、設定された閾値により、不要な反射ノイズがマスキングされ、砂面からの反射波だけを識別する補正がされたものであることを特徴する前記砂杭造成装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マイクロ波の伝播時間測定がパルス式であり、常にレーダ波を出力する連続式に比べて、消費電力が小さい。消費電力が小さいことで、電力線2本に電気信号を重畳することができ、配線の簡素化が図れる。また、管内の配管など複雑な形状による反射ノイズの影響、中空管内部への砂の付着による反射レベルの減衰などの影響を受けず、連続的に、正確な土砂の位置(砂面)を測定できる。また、連続波式のように、周波数を可変にする装置や外付けの比較的大きなアンプなどの付属装置も不要であり、故障のリスクが軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における砂杭造成装置の概略図である。
【
図2】
図1の砂杭造成装置の部分拡大断面図である。
【
図3】
図1の砂杭造成装置で使用する電波式砂面計のブロック図である。
【
図4】
図1の砂杭造成装置で使用する電波式砂面計の測定結果とマスキング結果であり、横軸がアンテナユニット部の先端からの深度(m)、縦軸が反射波の強さ(dB)を示す。
【
図5】破線が中空管先端の軌跡、実線が砂面の変化の軌跡を示し、左縦軸が深度(m)、右縦軸が中空管内における砂面高さ(m)、横軸が時間(分)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態におけるマイクロ波を用いた電波式砂面計を備えた砂杭造成装置を
図1及び
図2を参照して説明する。
図1において、砂杭造成装置10は中空管1と、中空管1内に砂等の杭材料を供給する材料導入管81を中空管1の側周面に付設してなる材料投入装置9と、中空管1を地盤に貫入及び引き抜きする昇降装置6を有する。材料導入管81には材料供給装置8であるホッパーが付設され、外部からの材料投入を容易にしている。材料導入管81には更に、材料投入ホッパーからの脱気を防止するため開閉弁が設置されている。
図1中、符号7はオーガーモーター、5はスイベル、41は材料砂、42はドレーン部、43はコンパクション部を示す。また、中空管1には、必要に応じて、圧縮空気送入管、急速排気装置を付設してもよい。
【0018】
マイクロ波を用いた電波式砂面計2は、中空管内に設置されるマイクロ波パルスを発射し、更に反射波を検出するアンテナユニット部2aと、中空管外部に設置される演算ユニット部2bから構成され、アンテナユニット部2aは中空管1の材料導入管接合部811よりも上方位置であって、昇降装置6の直下の中空管1内中心軸上に支持板で固定されている。電波式砂面計2のアンテナユニット部2aは当該位置に設置されるため、杭材料が降りかかることがなく、且つ砂面を直下とすることができる。
【0019】
電波式砂面計2は、マイクロ波の伝播時間測定方式がパルス式である。パルス式とすることで、連続波式に比して、消費電力は小さくて済む。また、連続波式は、周波数を可変にするために、別途の外付けアンプなどの付属装置も必要となり、故障のリスクが高まると同時に操作も複雑となるが、パルス式は、これらの付属装置は不要となり、故障リスクが減り、且つ安価となる。また、パルス式とすることで、2線伝送方式が可能となる。すなわち、電力線2本にアナログ信号を重畳させることができるため、省配線化が図れる。パルス式において、測定間隔は、0.5~2.0秒の範囲で適宜決定される。測定間隔が長い場合、多くのデータを採ることができ、精度が高まる。一方、測定時間が短い場合、採るデータが少なくなり、精度が低下する。
【0020】
電波式砂面計2は、マイクロ波を送受信するためのアンテナが、ホーンアンテナである。これにより、マイクロ波発信部の直近から、圧縮空気を噴射し、ホーンアンテナ内部を螺旋状に圧縮空気で清掃することで、マイクロ波発信装置部やホーンアンテナ内部への粉塵の付着を防止することができる。また、ホーンアンテナを採用することで、設計、製造が他のアンテナに比して容易であり、指向性が高く、強い反射強度が得られ易い。
【0021】
電波式砂面計2は、マイクロ波の周波数は、20~100GHz帯、20~30GHz帯、好ましくは24~28GHz、特に26GHzのものが、指向性が高まり反射ノイズの影響をうけにくくなる点で好ましい。なお、周波数が大き過ぎると、管内の砂塵や霧の影響を受け測定が困難となる。本発明は、そのバランスを考慮すると周波数20~30GHz、特に24~28GHzが好適なものである。また、周波数を高くすることで、中空管内に設置するアンテナユニット部2aを小型化することができる。
【0022】
電波式砂面計2において、マイクロ波の周波数を上記好ましい範囲とすることにより、指向性が高まり反射ノイズの影響を受け難くなる又は受けない点について、
図2を参照して説明する。
図2中、符号(H)は、マイクロ波発信受信点(アンテナ先端部)211から指向性の高いマイクロ波が配管内部の段差などの影響を受けない箇所までの長さ(以下、単に「好適指向長さ」と言う。)。符号(r)はマイクロ波の径方向の広がり長さの1/2を言う。この際、(r)、(θ)及び(H)は、下式(1);
(r)=(H)×tan(θ/2) (1)
(式中、θは、マイクロ波の広がり角度を示す。)で表される。
一方、砂杭造成装置10は、砂杭材料導入管接合部から下方に向けて、砂投入部の開口部の段差111、その開口部の段差近傍の第1フランジ接続部の段差112、第1フランジ接続部の段差112より下方でスイベル5より上方の第2フランジ段差113及びスイベル5より下方の管継ぎ目の第3フランジ段差114を有し、好適指向長さ(H)は、マイクロ波発信受信点211からスイベル5までの長さが好ましく、特にマイクロ波発信受信点211からスイベル5の下方で、且つ第3フランジの段差114より上方が好ましく(
図2参照)、更に中空管の先端までの長さが好ましい。従って、(r)<D/2(Dは、好適指向長さ(H)の中空管の内径(最小内径))を満たせば、砂投入部の開口部の段差111、第1フランジ接続部の段差112、第2フランジ段差113及び第3フランジ段差114からの反射ノイズの影響は受けず、砂面からの反射波を主に検出することになる。なお、マイクロ波の広がり角度(θ)は、マイクロ波の周波数が24~28GHzであれば、8度と高い指向性を示し、好適指向長さ(H)において、(r)=D/2となる。従って、(H)を基準とした場合、(θ)は、8度、特に5~8度の高い指向性を示すものを選択することになる。なお、好適指向長さ(H)が適用される中空管は、
図2の中空管に限定されず、スイベルの無いもの、フランジ段差が無いものであってもよい。
【0023】
図3に示すように、電波式砂面計2のアンテナユニット2aにおいて、先ず、トリガー回路24では、マイクロ波パルスを生成するタイミングを制御するためのトリガー信号を生成する。生成されたトリガー信号31は、発信回路25と信号処理回路27に入力される。距離計測の原理として、トリガー信号31が信号処理回路27に入力されてから、IF信号(中間信号)36が信号処理回路27に入力されるまでの時間を、距離に換算することになる。
【0024】
発信回路25にトリガー信号31が入力されると、発信回路25でマイクロ波パルスが2種類生成される。生成された2種類のマイクロ波パルス32、35は、HYB(ハイブリッド)(アナログ信号分岐装置)26とミキシング回路28にそれぞれ入力される。HYBに入力されたマイクロ波パルス32は、同軸導波変換器を通って、ホーンアンテナ29から放射される。
【0025】
放射されたマイクロ波が測定対象である砂面に反射して、ホーンアンテナ29が反射波を受信すると、再びHYB26を通り、今度はミキシング回路28へ入力される。ここで、マイクロ波は周波数が高く、そのままでは信号処理が出来ないため、ミキシング回路28で信号処理が可能な周波数まで信号変換を行う。発信回路25で生成されたマイクロ波パルス35と、ミキシング回路28へ入力されたマイクロ波パルスから信号処理が可能な周波数まで落としたIF信号(中間周波数)を生成する。ミキシング回路28は、周波数変換回路とも言われる。ミキシング回路28から出力されたIF信号が、信号処理回路27に入力される。信号処理回路27において、トリガー信号31が信号処理回路27に入力(と同時に、マイクロ波が生成)されてから、IF信号が信号処理回路27に入力されるまでの時間を計測し、この時間(t)から距離を算出する。
【0026】
距離の換算式としては、下記式(2);
L =C・t/2 (2)
(式(2)中、Lは空間距離、Cは伝搬速度(光速)、tは伝搬時間(往復)を示す。)により、上記の計測した時間(t)を測定し、この時間から距離換算する。
【0027】
生成されたマイクロ波がHYB26にくると、ミキシング回路28には通さず、ホーンアンテナ29へ通し、ホーンアンテナ29からの受信マイクロ波がHYBにくると、発信回路25には通さずにミキシング回路28へ通す。演算ユニット部2bの信号変換器22には、信号処理回路27から計測アナログ信号4~20mAが送られる。信号変換器22により変換された信号は、施工モニターである品質管理装置23aと、調整時のみ使用するパソコン23bに送られる。得られた反射波は、設定された閾値により、反射ノイズをマスキングすれば、素早く正確な結果を得ることができる。マスキングは、実際に計測された反射波から、不要な反射波を覆い隠し、砂面からの反射波だけを識別できるようにする補正手法である。
【0028】
(実施例)
次に、本発明の砂杭造成装置を使用した締固め砂杭造成工法について、
図4及び
図5を参照して説明する。使用した電波式砂面計は、マイクロ波を送受信するためのアンテナがホーンアンテナであり、マイクロの周波数が26GHz(θ=8度)であり、マイクロ波の伝播時間測定方式が2.0秒毎に測定するパルス式である。先ず、
図4のマスキング結果について説明する。
図4中、横軸「0m」は、アンテナユニット部の先端を意味する。先ず、事前に巻き尺などの機械式測定器で、
図1及び
図2の砂杭造成装置の中空管内にアンテナ先端から17.7mに砂面が存在することを確認した。また、管継手のフランジなどの段差も、同様に測定し、3.5m、10m、17mにその存在を確認した。次いで、この状態において、マイクロ波を発信して測定した。計測された波形が符号52であり、事前測定結果から、符号521が砂面からの反射波、符号522~524の波形が、内壁の段差による反射ノイズであることが判った。次いで、不要な反射波522~524を覆い隠し、砂面の反射波521を覆わないように、マスキングをした。その波形が符号51である。実際のマスキング作業では、事前の機械式計測とマイクロ波での計測を比較し、マスキングを行う作業を1セットとし、これを砂面高さを変えて数セット行い、最終的なマスキングのラインを設定した。このように、電波式砂面計2によれば、材料導入管の継ぎ目凹凸、スイベルの継ぎ目凹凸、ジェット配管、中空管の長さ管同士の溶接継ぎ目などの複雑な凹凸の反射ノイズは検出されるものの、砂面の反射波に比して小さく、ほとんど影響されずに、砂面を測定することができた。このため、砂杭の材料として供給された土砂の管内位置を検出でき、中空管から出される砂杭材料の体積が判り、均一で、高品質の砂杭を施工効率を高めて造成することができる。また、実測値に対して、マスキングをすることで、砂面からの反射波のみを計測することができる。
【0029】
次に、実際の締固め砂杭造成工法を実施し、砂面の測定を行った。その結果を、
図5に示す。
図5中、右縦軸(m)は、中空管内の砂面の高さを示し、「0m」は中空管内の砂が無しの状態を示し、「10m」は、中空管の先端から10mまで砂が入っている状態を示す。先ず、中空管を所定の深度まで貫入した。この状態において、電波式砂面計2はON状態であった。その後、中空管1を適宜の長さ引き抜き、該引き抜き跡にホッパーから投入された中空管1内の砂杭材料を排出する引き抜き工程と、中空管1を再貫入する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、軟弱地盤中に締固め砂杭を造成した。引き抜き工程において、中空管1の上方から供給される圧縮空気で砂杭材料を地中に排出した。
【0030】
このような締固め砂杭造成工法において、中空管1内は、加圧と減圧を繰り返すため、水蒸気等が発生し、また、砂杭材料を投入する際、粉塵などが巻き上がる。また、中空管1内は、材料導入管の継ぎ目凹凸、スイベルの継ぎ目凹凸、貫入補助用のジェット配管、中空管の長さ管同士の溶接継ぎ目などの複雑な凹凸が存在している。
【0031】
図5において、実線54が電波式砂面計2で測定された中空管1内における砂面位置(右縦軸に対応)の結果及び時間経過に伴う変化(軌跡)を示し、破線53は中空管1の先端位置(左縦軸)の変化(軌跡)を示す。
図5中、先ず、先端(下端)から6mまで砂杭材料が入っている中空管1を、地表から深さ4mまで貫入した。次いで、X領域において、中空管1の引き抜きと貫入が都合4回、繰り返された。引き抜き時に、砂杭材料は中空管1の先端から吐出されるため、中空管1の砂杭材料は、先端から約2mとなるまで減った。これにより、中空管長さ4m分の砂杭材料が、中空管から吐出されたことが判った。符号55の時点で、ホッパー8から砂杭材料を投入し、中空管1の砂杭材料は、先端から約8mとなるまで増えた。次いで、Y領域において、中空管1の引き抜きと貫入が都合6回、繰り返された。同様に、引き抜き時、砂杭材料は中空管1の先端から吐出されるため、中空管1の砂杭材料は、先端から約2mとなるまで減った。これにより、中空管長さ約6.0m分の砂杭材料が、中空管から吐出されたことが判った。若干の砂杭材料投入待ちの状態が続き、その後、符号56の時点で、ホッパー8から砂杭材料が投入され、中空管1の砂杭材料は、先端から約8mとなるまで増えた。次いで、Z領域において、中空管1の引き抜きと貫入が都合6回、繰り返された。同様に、引き抜き時、砂杭材料は中空管1の先端から吐出されるため、中空管1の砂杭材料は、先端から約2mとなるまで減った。これにより、中空管長さ約6m分の砂杭材料が、中空管から吐出されたことが判った。
【0032】
締固め砂杭造成工法で使用する中空管内においては、加圧と減圧を繰り返すため、水蒸気等が発生し、また、砂杭材料を投入する際、粉塵などが巻き上がるものの、これらの影響を受けず砂面を測定できた。また、中空管内部への砂の付着による反射レベルの減衰などの影響を受けず砂面を測定できた。
【0033】
本発明の砂杭造成装置で使用する電波式砂面計は、マイクロ波の伝播時間測定がパルス式であり、常にレーダ波を出力する連続式に比べて、消費電力が小さい。消費電力が小さいことで、電力線2本に電気信号を重畳することができ、配線の簡素化が図れる。また、管内の配管など複雑な形状による反射ノイズの影響、ケーシング内部への砂の付着による反射レベルの減衰などの影響を受けず、連続的に、正確な土砂の位置(砂面)を測定できる。また、連続波式のように、周波数を可変にするための別途アンプなどの付属装置も不要であり、故障のリスクが軽減できる。
【0034】
また、本発明で使用する電波式砂面計は、マイクロの周波数が20~30GHz帯であり、指向性が高まり反射ノイズの影響をうけ難い。また、周波数を30GHzを超えると、管内の砂塵や霧の影響を受け測定が困難となるが、その悪影響もない。また、周波数が高いため、中空管内に設置するアンテナユニット部2aを小型化することができる。
【0035】
また、本発明で使用する電波式砂面計は、現在主流の重錘式に比べて、100kgのようなワイヤー巻取り装置や取付台が不要であり、軽量化が図れる。また、重錘式は、ワイヤー導入穴が不要であり、気密性が確保できる。また、中空管の高所に重量物がないため、施工機の安定性が高まる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、軟弱地盤中に多数の砂杭を造成して地盤を安定させるための砂杭造成装置において、砂杭の材料として供給された土砂の管内位置を正確に素早く検出でき、均一で、高品質の砂杭を施工効率を高めて造成することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 中空管
2 マイクロ波を用いた電波式砂面計
2a アンテナユニット部
2b 演算ユニット部
5 スイベル
6 昇降装置
7 オーガーモーター
8 材料供給装置(ホッパー)
9 材料投入装置
10 砂杭造成装置
81 材料導入管
811 材料導入管接合部