(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】マルチキャビティ構造を有する正極材料、その製造方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240206BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240206BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240206BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/052
C01G53/00 A
(21)【出願番号】P 2023526391
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 CN2022092146
(87)【国際公開番号】W WO2022237823
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202111620078.X
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517232741
【氏名又は名称】ベイジン イースプリング マテリアル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ヨンチァン
(72)【発明者】
【氏名】スン,リーグオ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,シュエチュェン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ヤーフェイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イェンビン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/061399(WO,A1)
【文献】特開2020-177860(JP,A)
【文献】中国特許第112242516(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 10/052
C01G 53/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の一次粒子が集合して形成したものであり、かつ、前記一次粒子の一部が配向成長して支持構造を形成し、前記支持構造が互いに重なり合って前記正極材料の内部に複数のキャビティを形成し、
前記支持構造の厚さが50nm以上であり、前記支持構造の長さが80~2000nmであり、
前記キャビティの数が3~12であり、
前記正極材料の組成は式(2)で示されることを特徴とするマルチキャビティ構造を有する正極材料。
Li
1+aNi
1-x-y-zCo
xMn
yM
zO
2 式(2)
(ここで、-0.8≦a≦0.3、0<x≦0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1であり、
MはLa、Cr、Mo、Ca、Fe、Hf、Ti、Zn、Y、Zr、W、Nb、Sm、V、Mg、B、Al、Sr及びBaから選択される1種又は複数種である。)
【請求項2】
前記支持構造の厚さが70~800nmであり、前記支持構造の長さが100~1500nmである請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
-0.5≦a≦0.2、0.10≦x≦0.40、0.10≦y≦0.40である請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
0.005≦z≦0.080である請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
MはW、Mo、Zr、Nb、Ti、Y及びAlから選択される1種又は複数種である請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
前記正極材料のK90の変化率が式(3)を満たし、及び/又は、
前記正極材料の粒度分布の割合増加量が式(4)を満たす請求項1に記載の正極材料。
A
K90=(K90’-K90)/K90×100%≦50% 式(3)
(ここで、K90及びK90’はそれぞれ破砕前と30kN圧力印加後の材料のK90粒度分布である。)
△D
≦1=D
≦1’-D
≦1≦20% 式(4)
(ここで、D
≦1’及びD
≦1はそれぞれ破砕前と30kN圧力印加後の材料の1μm未満の粒度の分布割合である。)
【請求項7】
不活性ガス保護下で、Ni、Co、Mn可溶性塩を含有する水溶液と、錯化剤と沈殿剤とを混合して共沈反応を行い、核が2.0μm以下であるNi
1-x-yCo
xMn
y(OH)
2水酸化物前駆体を得るステップ(1)と、
前記Ni
1-x-yCo
xMn
y(OH)
2水酸化物前駆体と、リチウム源と、任意のM元素含有化合物とを混合して焼結処理を行い、次に、焼結後の材料を破砕して篩分けし、正極材料Li
1+aNi
1-x-yCo
xMn
yO
2又はLi
1+aNi
1-x-y-zCo
xMn
yM
zO
2を得るステップ(2)と、
を含むことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記Ni
1-x-yCo
xMn
y(OH)
2水酸化物前駆体の核が0.8~1μmであり、及び/又は、
前記Ni
1-x-yCo
xMn
y(OH)
2水酸化物前駆体のD
50が2~8μmである
請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(1)では、前記共沈反応は核形成段階と成長段階を含み、
前記核形成段階の条件は、前記錯化剤の濃度9~20g/L、pH 9~13、核形成段階の時間1~8h、温度30~70℃、撹拌速度60~90rpmを含み、
前記成長段階の条件は、前記錯化剤の濃度10~30g/L、pH 9~13、成長段階時間20~200h、温度30~70℃、撹拌速度20~70rpmを含む
請求項
7に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップ(2)では、前記焼結は昇温段階と、恒温焼結段階と、降温段階と、を含み、
前記昇温段階の条件は、昇温速度0.5~5℃/min、時間2~20hを含み、
前記恒温焼結段階の条件は、温度600~1000℃、時間5~30hを含む
請求項
7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記錯化剤は硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム及びアンモニア水から選択される1種又は複数種であり、及び/又は、
前記沈殿剤は水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムであり、及び/又は、
前記M元素含有化合物はM元素の酸化物、硝酸塩、硫酸塩及び塩化物のうちの1種又は複数種であり、及び/又は、
前記リチウム源は炭酸リチウム、水酸化リチウム及び硝酸リチウムから選択される1種又は複数種である
請求項
7に記載の製造方法。
【請求項12】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の正極材料を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2021年12月23日に提出された中国特許出願202111620078.Xの利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本発明は、リチウムイオン電池の正極材料の技術分野に関し、具体的には、マルチキャビティ構造を有する正極材料、その製造方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車産業の発展に伴い、世界の自動車保有量が絶えずに増大し、石油という再生不可能な化石燃料の消費量も絶えずに増加し、さらに自動車排気ガスの大量排出も深刻な環境汚染をもたらしている。リチウムイオン電池を使った新エネルギー車は、化石燃料への依存度が低く、環境汚染が少ないことから、近年注目を集めている。
【0004】
現在、純電気自動車EVは航続距離が短く、充電時間が長すぎるなどの問題を存在しており、消費者のニーズを満たすことができていない。ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicel)やプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicel)などのガソリン電気両用のモデルは、従来の車の内燃機関と電気自動車のモータを同時に動力として利用でき、ガソリン車と電気自動車の長所を併せ持つことから市場で人気があり、近年急速に発展している。
【0005】
HEVやPHEVモデルは電池の瞬時出力電力に対する要件が高いため、リチウムイオン正極材料にも高出力電力特性が求められる。材料の出力電力を向上させるためには、材料と電解液との接触面積をできるだけ大きくして、充放電中のLi+の移動距離を減少させる必要がある。材料の粒子径を小さくすると電解液との接触面積が大きくなるが、材料の粒子径を小さくしすぎると材料の充放電の過程で過剰な微粉が発生し、材料の寿命が悪くなる。
【0006】
CN106450278Aは中空微小球構造の三元正極材料、その製造方法及び使用を開示し、中空構造の正極材料を製造することにより、材料と電解液との接触面積を増加させ、さらに材料の特性を改善する。中空構造の正極材は電力特性をある程度上げることができる反面、材料の強度が悪くなる。一方で、強度が低いと、電池の極板を製造するロールプレスプロセスにおいて材料がひび割れて粉砕され、材料の寿命と保存特性が大幅に低下してしまい、他方で、充放電時、特にハイレートでの充放電では、材料が急激に膨張収縮して強度がさらに低下し、その結果、材料が粉末化してサイクル寿命が急速に悪化する。
【0007】
CN112242516Bは、内部が疎で多孔質であり、外部の一次粒子の隙間が大きく、粒子内部に直接到達する貫通孔が部分的に存在するリチウムイオン電池用三元正極材料を開示している。この疎な多孔質で貫通孔が存在する材料は、比表面積が大きく、電解液との接触面積を増加させることができ、材料の反応インピーダンスを減少させることができる。しかし、正極材料を電池に使用する過程では、圧力が作用すると、その疎な多孔質の構造は強度が悪く、粉末化して変形しやすく、使用性が悪くなる。そのため、この三元正極材料は高性能と長寿命という2つの特徴を併せ持つことができない。
【0008】
そのため、高強度正極活物質の研究開発が重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、正極材料の強度が悪く、正極材料のサイクル寿命が低いという従来技術に存在する欠点を解決するために、粒子強度が顕著に向上し、長寿命の利点があり、また、インピーダンスが低下し、電力特性が向上するマルチキャビティ構造を有する正極材料、その製造方法、及びリチウムイオン電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様は、
複数の一次粒子が集合して形成したものであり、かつ、前記一次粒子の一部が配向成長して支持構造を形成し、前記支持構造が互いに重なり合って前記正極材料の内部に複数のキャビティを形成するマルチキャビティ構造を有する正極材料を提供する。
【0011】
本発明の第2態様は、
不活性ガス保護下で、Ni、Co、Mn可溶性塩を含有する水溶液と、錯化剤と、沈殿剤とを混合して共沈反応を行い、核が2.0μm以下であるNi1-x-yCoxMny(OH)2水酸化物前駆体を得るステップ(1)と、
前記Ni1-x-yCoxMny(OH)2水酸化物前駆体と、リチウム源と、任意のM元素含有化合物とを混合して焼結処理を行い、次に、焼結後の材料を破砕して篩分けし、正極材料Li1+aNi1-x-yCoxMnyO2又はLi1+aNi1-x-y-zCoxMnyMzO2を得るステップ(2)と、を含む前記正極材料の製造方法を提供する。
【0012】
本発明の第3態様は、前記正極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上記技術案によれば、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明の正極材料は、電解液との接触面積を大幅に増加させ、Li+の拡散経路を短縮し、インピーダンスを低下させ、電力特性を向上させる。
(2)本発明の正極材料は、材料粒子の強度を著しく向上させることができ、良好な電力特性を有すると同時に、サイクル特性も大幅に向上する。
(3)本発明の正極材料はM元素を含み、該元素は、バルク相構造安定性を向上させることにより、マイクロクラックの発生を抑制して一次粒子の強度を著しく向上させる一方で、一次粒子の配向成長を誘導して粒子内部にマルチキャビティ支持構造を形成し、最終的に材料の強度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例3で製造される正極材料のSEM断面概略図である。
【
図2】本発明の比較例1で製造される正極材料のSEM断面概略図である。
【
図3】本発明の実施例3及び比較例1で製造される正極材料のサイクル特性の比較概略図である。
【
図4】本発明の実施例3で製造される正極材料の圧力印加前及び30kN圧力印加後の数量分布の概略図である。
【
図5】本発明の比較例1で製造される正極材料の圧力印加前及び30kN圧力印加後の数量分布の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々の点値の間、及び個々の点値の間は、互いに組み合わされて1つ又は複数の新しい数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されるものとみなされるべきである。
【0016】
前記の通り、本発明の第1態様は、複数の一次粒子が集合して形成したものであり、かつ、前記一次粒子の一部が配向成長して支持構造を形成し、前記支持構造が互いに重なり合って前記正極材料の内部に複数のキャビティを形成するマルチキャビティ構造を有する正極材料を提供する。
【0017】
本発明者らは、本発明の正極材料は複数のキャビティを内部に有し、正極材料と電解液との接触面積を著しく増加させ、Li+の拡散経路を短縮し、正極材料のインピーダンスを低下させ、正極材料の電力特性を向上させることができることや、正極材料は複数のキャビティを内部に有し、キャビティ間には支持構造があり、正極材料の粒子強度を著しく向上させ、良好な電力特性を持つと同時に、サイクル特性も大幅に向上することを見出した。
【0018】
本発明によれば、前記キャビティの数は、2以上、好ましくは3~12、より好ましくは、5~7である。
【0019】
本発明によれば、前記支持構造の厚さは50nm以上であり、前記支持構造の長さは80~2000nmであり、好ましくは、前記支持構造の厚さは70~800nmであり、前記支持構造の長さは100~1500nmであり、より好ましくは、前記支持構造の厚さは210~320nmであり、前記支持構造の長さは830~1300nmである。
【0020】
本発明では、上記の特定構造を有するキャビティ及び支持構造を採用することにより、正極材料のインピーダンスを低下させる一方、正極材料の粒子強度を顕著に向上させ、サイクル特性も大幅に向上させる。
【0021】
本発明によれば、前記正極材料の組成は式(1)で示される。
Li1+aNi1-x-yCoxMnyO2 式(1)
(ここで、-0.8≦a≦0.3、0<x≦0.5、0≦y≦0.5、
好ましくは、-0.5≦a≦0.2、0.15≦x≦0.40、0.10≦y≦0.40。)
【0022】
本発明によれば、好ましくは、前記正極材料の組成は式(2)で示される。
Li1+aNi1-x-y-zCoxMnyMzO2 式(2)
(ここで、0≦z≦0.1、好ましくは、0.005≦z≦0.080であり、
ここで、MはLa、Cr、Mo、Ca、Fe、Hf、Ti、Zn、Y、Zr、W、Nb、Sm、V、Mg、B、Al、Sr及びBaから選択される1種又は複数種であり、好ましくは、MはW、Mo、Zr、Nb、Ti、Y及びAlから選択される1種又は複数種である。)
【0023】
本発明によれば、M元素を添加することによって、バルク相構造安定性を向上させることにより、マイクロクラックの発生を抑制して材料の一次粒子の強度を向上させる一方で、一次粒子の配向成長を誘導して、材料内部にマルチキャビティ支持構造を形成し、最終的に材料の粒子強度を向上できる。
【0024】
本発明によれば、前記正極材料は粒子強度が高いため、所定の圧力を受けていても、壊れや粉末化が発生するのではなく、本体の形態をよく維持することができる。本発明では、好ましくは、前記正極材料のK90の変化率が式(3)を満たす。
AK90 =(K90’-K90)/K90×100%≦50% 式(3)
(ここで、K90及びK90’はそれぞれ破砕前及び30kN圧力印加後の材料のK90粒度分布であり、
より好ましくは、AK90≦30%、さらに好ましくは、AK90≦20%である。)
【0025】
本発明によれば、前記正極材料の粒度分布割合の増加量が式(4)を満たす。
△D≦1=D≦1’-D≦1≦20% 式(4)
(ここで、D≦1’及びD≦1はそれぞれ破砕前及び30kN圧力印加後の材料の1μm未満の粒度の分布割合であり、
より好ましくは、△D≦1≦12%、さらに好ましくは、△D≦1≦10%である。)
【0026】
本発明では、正極材料を製造するときに使用される前駆体は2.0μm以下の核を有する。該核はよく結晶化しており、サイズが小さい緻密構造であり、核を構成する結晶繊維が太く、繊維スタックの密度が高く、この結晶繊維がリチウムと配合して焼結した場合、大きな中空構造が形成されにくく、一方、粒子内部にマルチキャビティ支持構造が形成されやすい。
【0027】
本発明の第2態様は、
不活性ガス保護下で、Ni、Co、Mn可溶性塩を含有する水溶液と、錯化剤と、沈殿剤とを混合して共沈反応を行い、核が2.0μm以下であるNi1-x-yCoxMny(OH)2水酸化物前駆体を得るステップ(1)と、
前記Ni1-x-yCoxMny(OH)2水酸化物前駆体と、リチウム源と、任意のM元素含有化合物とを混合して焼結処理を行い、次に、焼結後の材料を破砕して篩分けし、正極材料Li1+aNi1-x-yCoxMnyO2又はLi1+aNi1-x-y-zCoxMnyMzO2を得るステップ(2)と、を含む前記正極材料の製造方法を提供する。
【0028】
本発明者らは、前記前駆体の製造方法において、合成時の回転数及び錯化剤の濃度を調整することで、前駆体の結晶化速度、結晶配向などを制御し、ステップ(1)で得られた水酸化物前駆体の核を小さくすることを見出した、具体的には、核とは、前駆体の中心が2.0μm以下である結晶構造を意味し、核はよく結晶化しており、サイズが小さい緻密構造であり、核を構成する結晶繊維が太く、繊維スタックの密度が高く、この結晶繊維がリチウムと配合して焼結した場合、大きな中空構造が形成されにくく、一方、粒子内部にマルチキャビティ支持構造が形成されやすい。
【0029】
本発明によれば、好ましくは、前記Ni1-x-yCoxMny(OH)2水酸化物前駆体のD50は2~8μm、好ましくは、3~8μmである。
【0030】
本発明によれば、核は、好ましくは0.3~2μm、より好ましくは0.8~1μmであり、内部結晶構造はサイズが小さい緻密構造である。
【0031】
本発明によれば、ステップ(1)では、前記共沈反応は核形成段階と成長段階を含む。
【0032】
本発明では、前記核形成段階の条件は、前記錯化剤の濃度9~20g/L、pH 9~13、核形成段階時間 1~8h、温度30~70℃、撹拌速度60~90rpm、好ましくは、前記錯化剤の濃度10~18g/L、pH 9.5~13、核形成段階時間2~8h、温度35~60℃、撹拌速度70~80rpmを含む。
【0033】
本発明では、前記成長段階の条件は、前記錯化剤の濃度10~30g/L、pH 9~13、成長段階時間20~200h、温度30~70℃、撹拌速度20~70rpm、好ましくは、前記錯化剤の濃度12~25g/L、pH 10~13、成長段階時間25~150h、温度35~65℃、撹拌速度25~65rpmを含む。
【0034】
本発明によれば、総反応時間は5~200hに制御される。
【0035】
本発明によれば、ステップ(1)では、不活性ガスは窒素ガス及び/又はアルゴンガスである。
【0036】
本発明によれば、ステップ(1)では、該方法は、共沈反応により得られた反応物を老化、濾過、洗浄、乾燥するステップをさらに含む。本発明では、老化、濾過、洗浄、乾燥は特に限定されず、当業者に公知の一般的な方法であればよい。
【0037】
本発明によれば、ステップ(2)では、前記焼結は、昇温段階と、恒温焼結段階と、降温段階と、を含み、
本発明によれば、前記昇温段階の条件は、昇温速度0.5~5℃/min、時間2~20h、好ましくは、昇温速度0.5~4℃/min、時間5~20hを含む。
【0038】
本発明によれば、前記恒温焼結段階の条件は、温度600~1000℃、時間5~30h、好ましくは、温度630~980℃、時間5~25h、より好ましくは、温度805~900℃、時間15~18hを含む。
【0039】
本発明によれば、ステップ(2)では、焼結温度は600~1000℃であり、焼結雰囲気は乾燥空気又は酸素ガスのうちの1種又は2種であり、総焼結時間は5~30hである。
【0040】
本発明によれば、前記錯化剤は硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム及びアンモニア水から選択される1種又は複数種である。
【0041】
本発明によれば、前記沈殿剤は水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムである。
【0042】
本発明によれば、前記M元素含有化合物はM元素の酸化物、硝酸塩、硫酸塩及び塩化物のうちの1種又は複数種である。
【0043】
本発明によれば、前記リチウム源は炭酸リチウム、水酸化リチウム及び硝酸リチウムから選択される1種又は複数種である。
【0044】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、前記正極材料の製造方法は、
所定濃度のNi、Co、Mn可溶性塩の水溶液を調製し、その後、それぞれ沈殿剤、錯化剤と撹拌しながら反応釜に加え、所定の反応温度を維持して、不活性ガス保護下で、共沈によりNi1-x-yCoxMny(OH)2水酸化物前駆体を得るステップ(1)と、
上記で得られた水酸化物前駆体と、リチウム源と、M元素含有化合物とを均一に混合し、雰囲気炉に入れて焼結を行い、焼結後の材料を破砕して篩分けし、正極材料Li1+aNi1-x-y-zCoxMnyMzO2を得るステップ(2)と、を含む。
【0045】
本発明の第3態様は、前記正極材料を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0046】
本発明では、前記リチウムイオン電池は好ましくはボタン電池、より好ましくは2025型ボタン電池である。
【0047】
具体的には、本発明では、ボタン電池の作製は以下を含む。
【0048】
(1)正極板
まず、正極材料9.2mg、アセチレンブラック0.5mg及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)0.3mgを混合したものをアルミ箔上に塗布してベークし、100Mpaの圧力で直径12mm、厚さ120μmにプレス成形し、その後、正極板を真空オーブンに入れて120℃で12hベークする。
【0049】
(2)負極板
負極として直径17mm、厚さ1mmのLi金属片、セパレータとして厚さ25μmのポリエチレン多孔質膜、電解液として1M LiPF6を電解質とした炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)との等量混合液を用いる。
【0050】
(3)組み立て
その後、該正極板、セパレータ、負極板及び電解液を、水含有量と酸素含有量がいずれも5ppm未満のArガスグローブボックスにて組み立てて、2025型ボタン電池を作製する。
【0051】
以下、実施例によって本発明について詳細に説明する。
【0052】
以下の実施例及び比較例では、
1)初期放電比容量
ボタン電池を作製してから24h放置し、開回路電圧が安定になった後、正極の電流密度を20mA/gとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、4.3Vで30min定電圧充電し、その後、同じ電流密度でカットオフ電圧3.0Vまで放電し、このようなプロセスを再度1回繰り返し、このときの電池を活性化済み電池とする。
2)サイクル特性のテスト方法
活性化済み電池について、2Cの電流密度を用いて3.0~4.3Vの電圧区間、温度45℃で、80回サイクルして、材料の高温容量維持率を調べた。
3)レート特性のテスト方法
活性化済み電池について、3.0~4.3Vの電圧区間で、20mA/g(0.1C)の電流密度で充電し、40 mA/g(0.2C)、100 mA/g(0.5C)、200 mA/g(1C)、400 mA/g(2C)、1000mA/g(5C)、2000mA/g(10C)の電流密度のそれぞれで放電し、電池のレート特性をテストする。
4)インピーダンス特性のテスト方法
活性化済み電池について、HPPCテスト方法により、25℃、3C電流で、10%~90%SOCでの電池のインピーダンスをそれぞれテストする。
【0053】
実施例1
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
(1)硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンのモル比が0.33:0.33:0.34の1.5mol/L混合溶液を調製し、該混合溶液、錯化剤としてアンモニア水溶液、沈殿剤として水酸化ナトリウム溶液を反応釜に投入して、窒素ガスを保護ガスとして導入し、アンモニアの濃度を10g/L、pHを12.0、回転数を70rpmに制御して、この条件を3h維持すると、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である0.9μmの核の成長を完了した。次に、アンモニア含有量を16g/Lに向上させ、pHを11.5に低下させ、回転数を55rpmに下げて、粒子D50が4.0μmに成長するまでこの条件を維持すると、反応を停止した。反応物を老化、洗浄、乾燥して、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である前駆体Ni0.33Co0.33Mn0.34(OH)2を得た。
(2)以上の前駆体と炭酸リチウムとを1:1.1のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、10hかけて25℃から900℃に昇温し、900℃で15h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi0.33Co0.33Mn0.34O2を得た。
SEM断面概略図から分かるように、キャビティの数cは5であり、また、支持構造の平均厚さwは210nm、支持構造の平均長さLは830nmである。
【0054】
実施例2
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
(1)硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンのモル比が0.50:0.20:0.30の1.5mol/L混合溶液を調製し、該混合溶液、錯化剤としてアンモニア水溶液、沈殿剤として水酸化ナトリウム溶液を反応釜に投入して、窒素ガスを保護ガスとして導入し、アンモニアの濃度を10g/L、pHを12.0、回転数を70rpmに制御して、この条件を3h維持すると、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である0.8μmの核の成長を完了した。次に、アンモニア含有量を16g/Lに向上させ、pHを11.5に低下させ、回転数を55rpmに下げて、粒子D50が4.0μmに成長するまでこの条件を維持すると、反応を停止した。反応物を老化、洗浄、乾燥して、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である前駆体Ni0.5Co0.2Mn0.3(OH)2を得た。
(2)以上の前駆体と炭酸リチウムとを1:1.1のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、10hかけて25℃から860℃に昇温し、860℃で15h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2を得た。
SEM断面概略図から分かるように、キャビティの数cは7であり、また、支持構造の平均厚さwは270nm以上、支持構造の平均長さLは1200nmである。
【0055】
実施例3
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
(1)硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンのモル比が0.55:0.15:0.30の1.5mol/L混合溶液を調製し、該混合溶液、錯化剤としてアンモニア水溶液、沈殿剤として水酸化ナトリウム溶液を反応釜に投入して、窒素ガスを保護ガスとして導入し、アンモニアの濃度を10g/L、pHを12.0、回転数を70rpmに制御して、この条件を3h維持すると、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である1.1μmの核の成長を完了した。次に、アンモニア含有量を16g/Lに向上させ、pHを11.5に低下させ、回転数を55rpmに下げて、粒子D
50が4.0μmに成長するまでこの条件を維持すると、反応を停止した。反応物を老化、洗浄、乾燥して、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である前駆体Ni
0.55Co
0.15Mn
0.3(OH)
2を得た。
(2)以上の前駆体と炭酸リチウムとを1:1.1のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、10hかけて25℃から850℃に昇温し、850℃で15h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi
0.55Co
0.15Mn
0.3O
2を得た。
図1は本発明の実施例3で製造される正極材料のSEM断面概略図であり、
図1から分かるように、キャビティの数cは6であり、また、支持構造の平均厚さwは320nm以上、支持構造の平均長さLは960nmである。
また、
図4は本発明の実施例3で製造される正極材料の圧力印加前及び30kN圧力印加後の数量分布の概略図であり、
図4から分かるように、破砕前後に、材料の粒度分布には明らかな変化がなく、このことから、本発明による支持構造は材料の構造安定性の維持に対して積極的な役割を果たすことが実証された。
【0056】
実施例4
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
(1)硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンのモル比が0.55:0.15:0.30の1.5mol/L混合溶液を調製し、該混合溶液、錯化剤としてアンモニア水溶液、沈殿剤として水酸化ナトリウム溶液を反応釜に投入して、窒素ガスを保護ガスとして導入し、アンモニアの濃度を10g/L、pHを12.0、回転数を70rpmに制御して、この条件を3h維持すると、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である1.0μmの核の成長を完了した。次に、アンモニア含有量を16g/Lに向上させ、pHを11.5に低下させ、回転数を55rpmに下げて、粒子D50が4.0μmに成長するまでこの条件を維持すると、反応を停止した。反応物を老化、濾過、洗浄、乾燥して、内部結晶構造がサイズの小さい緻密構造である前駆体Ni0.55Co0.15Mn0.3(OH)2を得た。
(2)以上の前駆体と炭酸リチウムと酸化タングステンとを1:1.1:0.005のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、10hかけて25℃から850℃に昇温し、850℃で15h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi0.545Co0.15Mn0.3W0.005O2を得た。
SEM断面概略図から分かるように、キャビティの数cは5であり、また、支持構造の平均厚さwは270nm、支持構造の平均長さLは1300nmである。
【0057】
実施例5
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
以下の点を除いて、実施例4と同様な方法で正極材料を製造した。
ステップ(2)では、以上の前駆体と炭酸リチウムとジルコニアとを1:1.1:0.005のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、12hかけて25℃から850℃に昇温し、850℃で18h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi0.545Co0.15Mn0.3Zr0.005O2を得た。
SEM断面概略図から分かるように、キャビティの数cは7であり、また、支持構造の平均厚さwは270nm、支持構造の平均長さLは1100nmである。
【0058】
実施例6
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
以下の点を除いて、実施例4と同様な方法で正極材料を製造した。
ステップ(2)では、以上の前駆体と炭酸リチウムと酸化ニオブとを1:1.1:0.005のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、15hかけて25℃から845℃に昇温し、845℃で15h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi0.545Co0.15Mn0.3Nb0.005O2を得た。
SEM断面概略図から分かるように、キャビティの数cは6であり、また、支持構造の平均厚さwは310nm、支持構造の平均長さLは970nmである。
【0059】
実施例7
本実施例では、本発明の方法で製造される正極材料を説明する。
以下の点を除いて、実施例4と同様な方法で正極材料を製造した。
ステップ(2)では、以上の前駆体と炭酸リチウムと酸化チタンとを1:1.1:0.005のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、12hかけて25℃から840℃に昇温し、840℃で17h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、マルチキャビティ支持構造を有する高電力正極材料LiNi0.545Co0.15Mn0.3Ti0.005O2を得た。
SEM断面概略図から分かるように、キャビティの数cは7であり、また、支持構造の平均厚さwは290nm、支持構造の長さLは950nmである。
【0060】
比較例1
(1)硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンのモル比が0.55:0.15:0.30の1.5mol/L混合溶液を調製し、該混合溶液、錯化剤としてアンモニア水溶液、沈殿剤として水酸化ナトリウム溶液を反応釜に投入して、窒素ガスを保護ガスとして導入し、アンモニアの濃度を8g/L、pHを12.0、回転数を50rpmに制御して、この条件を10h維持すると、2.5μmの核の成長を完了した。次に、アンモニア含有量を16g/Lに向上させ、pHを11.5に低下させ、回転数を50rpmにして、粒子D
50が4.0μmに成長するまでこの条件を維持すると、反応を停止した。反応物を老化、濾過、洗浄、乾燥して、前駆体Ni
0.55Co
0.15Mn
0.3(OH)
2を得た。該前駆体の内部結晶構造は疎な構造である。実施例3と比べて、比較例1では、前駆体の核形成段階においてアンモニア濃度及び回転数が低く、その結果、前駆体核の結晶性が劣化し、構造が疎になり、核形成段階が長くなり、疎な核が大きくなる。
(2)以上の前駆体と炭酸リチウムとを1:1.1のモル比で混合して、混合材料を雰囲気炉に入れて、大気雰囲気で焼結した。焼結は、10hかけて830℃に昇温し、830℃で15h保温し、次に、室温に自然降温することを含む。材料を破砕して篩分けし、中空構造を有する高電力正極材料LiNi
0.55Co
0.15Mn
0.3O
2を得た。上記前駆体の核構造が疎であるため、リチウムと配合して焼結するときに、本来の結晶構造が維持されにくく、溶融収縮が発生しやすく、その結果、正極材料の内部に大きな中空構造が形成される。
また、
図2は本発明の比較例1で製造される正極材料のSEM断面概略図であり、
図2から分かるように、前記正極材料の内部は中空構造である。
また、
図3は本発明の実施例3及び比較例1で製造される正極材料のサイクル特性の比較概略図であり、ここで、4.3V~3.0V@45℃、2C/2Cとは、電池のサイクルの条件として、45℃の温度、4.3V~3.0Vの電圧範囲では、充放電電流がすべて2Cであることを意味し、実施例3の高温サイクル容量維持率が顕著に向上し、このことから、本発明によるマルチキャビティ支持構造は材料の構造安定性を維持し、材料の寿命を改善するのに積極的な役割を果たすことが実証された。
また、
図5は本発明の比較例1で製造される正極材料の圧力印加前及び30kN圧力印加後の数量分布の概略図であり、
図5から分かるように、破砕前後に、正極材料の粒度分布の変化が大きく、破砕後の材料が多くの微細粉末を発生させ、さらに、中空構造の正極材料の構造強度が悪い。
【0061】
テスト例1
実施例及び比較例で製造される正極材料の特性をテストし、結果を表1に示す。
【表1】
表1から分かるように、本発明の方法で製造されるマルチキャビティ構造を有する正極材料は、ニッケルとコバルトとマンガンの比が同じ中空構造の正極材料と比べて、レートが同じである場合、高温サイクル容量維持率が顕著に向上し、インピーダンスが低下し、このことから、本発明によるマルチキャビティ支持構造は材料の構造安定性を維持し、材料の寿命を改善するのに積極的な作用を果たすことが実証された。また、W、Zr、Nb及びTi元素をドープすることにより、材料のレート特性、サイクル特性及びインピーダンス特性をさらに改善する。
【0062】
テスト例2
実施例1~7及び比較例1で製造される正極材料を粉末圧縮テスタに入れて、30kNの圧力を印加し、次に、マルバーンレーザー粒度分析装置を用いて、サンプル圧縮前後の粒度分布をそれぞれテストし、以下の表2に記載のデータを得た。
【表2】
表2から分かるように、本発明の方法で製造されるマルチキャビティ支持構造を有する正極材料は、ニッケルとコバルトとマンガンの比が同じ中空構造の正極材料と比べて、30kN圧力印加後、粒度分布の変化がより小さく、発生させる微細粉末も少なく、粒子強度がより向上する。
【0063】
以上の詳細な説明は本発明の好適な実施形態を説明しているが、本発明はこれらに限定されない。本発明の技術的構想を逸脱することなく、本発明の技術案について複数種の簡単な変形を行うことができ、このような変形は各技術的特徴を任意の適切な方式で組み合わせることを含み、これらの簡単な変形及び組み合わせも本発明で開示された内容とみなすべきであり、すべて本発明の特許範囲に属する。