(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240207BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240207BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240207BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240207BHJP
【FI】
B28B1/30 101
B32B7/06
B32B9/00 A
H01G13/00 351Z
(21)【出願番号】P 2022191491
(22)【出願日】2022-11-30
【審査請求日】2023-09-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木立 佳織
(72)【発明者】
【氏名】貝塚 朋芳
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-207106(JP,A)
【文献】特開2017-77688(JP,A)
【文献】特開2022-153487(JP,A)
【文献】特開2022-82601(JP,A)
【文献】特開2015-21083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/00-1/54
B32B 7/06
B32B 9/00-9/06
B32B 27/00-27/42
H01G 13/00-13/06
C04B 35/00-35/84
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗布する工程、
b)前記a)工程において塗布されたセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを形成する工程、
c)前記b)工程において形成されたセラミックグリーンシートを前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムから剥離する工程、及び
d)前記c)工程において剥離されたセラミックグリーンシートを複数積層する工程、
を有し、
前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムが基材と、前記基材の少なくとも一方に設けられた剥離剤層とを有し、前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下である、
セラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項2】
工程b)と工程c)との間に前記セラミックグリーンシート上に内部電極を印刷する工程を有する、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックグリーンシートの製造方法によりセラミックグリーンシートを製造する工程を有する、セラミック製品の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックグリーンシートを焼成する工程を有する、請求項3に記載のセラミック製品の製造方法。
【請求項5】
前記セラミック製品が積層セラミックコンデンサ、又は多層セラミック基板である、請求項
3に記載のセラミック製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーンシートの製造方法に関し、より具体的には、グリーンシートの剥離が容易であるとともに、グリーンシートの汚染が効果的に抑制され、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板等の製造にあたり高い位置精度を要するセラミック製品の製造に特に好適に用いられる、セラミックグリーンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状のセラミック部材の製造においては、従来よりセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを用いたセラミックグリーンシートの製造方法が採用されている。例えば、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板といった積層セラミック製品を製造するには、セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上にセラミックグリーンシートを成形し、得られたセラミックグリーンシートを複数枚積層して焼成することが行われている。
近年、電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板の小型化および多層化が進んでいる。多層化実現のためセラミックグリーンシートは薄膜化が求められ、薄膜化したセラミックグリーンシートにおけるピンホールや厚みむら等の欠陥の発生を防止し、薄膜化したセラミックグリーンシートを剥離フィルムから剥離するときの破断を効果的に抑制する等の観点から、基材と特定の成分の剥離剤層とを有するセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムであって、剥離剤層の基材とは反対側の面における算術平均粗さ(Ra)、及び最大突起高さ(Rp)がそれぞれ所定値以下であり、かつ、基材の剥離剤層とは反対側の面における算術平均粗さ(Ra)、及び最大突起高さ(Rp)がそれぞれ所定の数値範囲内である、セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板の小型化および多層化にあたっては、積層の際に非常に高い位置精度も求められるが、セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの剥離剤層からの汚染物質により位置ずれが発生し位置精度を低下させる場合があり、その解決が求められている。この様な汚染物質は、剥離剤層中に残存する未反応のシリコーン成分等であると推定されるが、単に剥離剤層の製造におけるシリコーン成分の使用量を低減すると、グリーンシートの剥離性が低下するため、グリーンシートへの汚染物質の移行の低減とグリーンシートの易剥離性とを両立することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2013/145865 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術背景に鑑み、本発明は、基材と剥離剤層とを有するセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを用いたセラミックグリーンシートの製造方法であって、グリーンシートの剥離が容易であるとともに、グリーンシートの汚染が効果的に抑制された、セラミックグリーンシートの製造方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、基材と、前記基材の少なくとも一方に設けられた剥離剤層とを有するセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムにおいて、前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角を所定値以下であるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを使用し、これを特定の工程を有するセラミックグリーンシートの製造方法に適用することで、従来技術の限界を超えた高い水準で、グリーンシートへの汚染物質の移行の低減とグリーンシートの易剥離性とをバランスさせることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
a)セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗布する工程、
b)前記a)工程において塗布されたセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを形成する工程、
c)前記b)工程において形成されたセラミックグリーンシートを前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムから剥離する工程、及び
d)前記c)工程において剥離されたセラミックグリーンシートを複数積層する工程、
を有し、
前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムが基材と、前記基材の少なくとも一方に設けられた剥離剤層とを有し、前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下である、
セラミックグリーンシートの製造方法、に関する。
【0007】
以下、[2]から[5]は、いずれも本発明の好ましい一態様又は一実施形態である。
[2]
工程b)と工程c)との間に前記セラミックグリーンシート上に内部電極を印刷する工程を有する、[1]に記載のセラミックグリーンシートの製造方法。
[3]
[1]又は[2]に記載のセラミックグリーンシートの製造方法によりセラミックグリーンシートを製造する工程を有する、セラミック製品の製造方法。
[4]
前記セラミックグリーンシートを焼成する工程を有する、[3]に記載のセラミック製品の製造方法。
[5]
前記セラミック製品が積層セラミックコンデンサ、又は多層セラミック基板である、[3]又は[4]に記載のセラミック製品の製造方法。
【0008】
更に、以下、[1’]から[8’]は、いずれも本発明において用いることができるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの一例である。
[1’]
基材と、前記基材の少なくとも一方に設けられた剥離剤層とを有するセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムであって、
前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下である、上記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
[2’]
前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が10°から33°である、[1’]に記載のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
[3’]
前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面の水滑落角が85°以下である、[1’]又は[2’]に記載のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
[4’]
前記剥離剤層が硬化性組成物の硬化物を含有し、該硬化性組成物が少なくとも1種の、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)を含み、且つ該反応性化合物(a)の合計量が、質量比率で該剥離剤層の50%以上であることを特徴とする[1’]から[3’]のいずれか一項に記載のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
[5’]
前記硬化性組成物が、前記反応性化合物(a)として、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基、並びにシロキサン骨格を有する反応性シリコーン(a1)少なくとも1種と、該反応性シリコーン(a1)と同じ反応性官能基を有する反応性化合物(a2)少なくとも1種と、を含有する、[4’]に記載のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
[6’]
前記硬化性組成物が、更に1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する膜形成性化合物(a3)を含有する、[5’]に記載の硬化性組成物。
[7’]
前記基材の前記剥離剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が1から70nmである、[1’]から[6’]のいずれか一項に記載のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
[8’]
積層セラミックコンデンサ、又は多層セラミック基板の製造に用いる、[1’]から[7’]のいずれか一項に記載のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上に形成したセラミックグリーンシートの剥離が容易であるとともに、セラミックグリーンシートの汚染を効果的に抑制することができる等、高い実用的価値を有する技術的効果を従来技術の限界を超えた高いレベルで同時に実現するものであり、各種セラミック製品の製造に好適に使用することができる。例えば、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板等の、薄膜化したセラミック層で構成され、製造にあたり高い位置精度を要するセラミック製品の製造においては、特に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、a)セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗布する工程、
b)前記a)工程において塗布されたセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを形成する工程、
c)前記b)工程において形成されたセラミックグリーンシートを前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムから剥離する工程、及び
d)前記c)工程において剥離されたセラミックグリーンシートを複数積層する工程、
を有し、
前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムが基材と、前記基材の少なくとも一方に設けられた剥離剤層とを有し、前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下である、
セラミックグリーンシートの製造方法、である。
すなわち、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムは、基材と剥離剤層とを有する。本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムは、基材と剥離剤層とを有していればよく、それ以外の層を有していても、有していなくともよい。したがって、本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムは、基材及び剥離剤層のみからなっていてもよく、基材及び剥離剤層に加えて、帯電防止層、等のそれ以外の層を有していてもよい。
以下、上記各層について説明する。
【0012】
基材
本発明のセラミックグリーンシートの製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを構成する基材には特に制限はなく、従来当該技術分野における基材として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのプラスチックからなるフィルムが挙げられ、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等によるセラミックスラリー塗工不良等を効果的に防止することができる。
【0013】
また、この基材においては、その少なくとも一方の面に設けられる剥離剤層との密着性を向上させる目的で、酸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、これらの表面処理法は、基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果および操作性の面から好ましく用いられる。
基材の厚さには特に制限は無く、機械的強度や製造及び使用における取り扱いの容易さ等から適宜厚さを設定すればよいが、通常10~300μmであり、好ましくは12~200μmであり、特に好ましくは15~125μmである。
【0014】
基材の剥離剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.1から70nmであることが好ましく、1~60nmであることが好ましい。
基材の剥離剤層側の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1から70nmであると、基材のハンドリング、導通不良抑制等の点で好ましい。また、表面の算術平均粗さ(Ra)が1から70nmである基材は比較的容易かつ安価に入手可能なので、本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの入手容易性や製造コストの観点からも好ましい。
【0015】
基材の剥離剤層側と反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)は、5~70nmであることが好ましく、10~60nmであることが特に好ましい。
基材の剥離剤層側と反対側の表面の算術平均粗さ(Ra)が上記下限値以上であることで、本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの巻き取り時等におけるブロッキングを効果的に抑制することができるともに、上記上限値以下であることで、剥離剤層の表面を平滑にすることが容易になる。
【0016】
剥離剤層
本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを構成する剥離剤層の材質には特に制限はなく、基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下であるという条件を満たす限りにおいて、任意の材料を使用することができる。
セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの製造上の容易性や、ジヨードメタン滑落角等を適宜制御する観点からは、硬化性組成物を基材上に塗布して硬化させることにより剥離剤層を形成することが好ましく、光硬化性及び/又は熱硬化性の硬化性組成物を塗布して硬化させることにより剥離剤層を形成することが特に好ましい。すなわち、本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム中の剥離剤層は、硬化性組成物の硬化物を含有することが好ましい。
【0017】
硬化性組成物
本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムにおいて剥離剤層の形成に好ましく用いられる硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)を少なくとも1種含有することが好ましい。
(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)を少なくとも1種含有する硬化性組成物を用いることで、容易に、かつジヨードメタン滑落角等の制御性良く、本実施形態に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムの剥離剤層を形成することができる。
【0018】
上記硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)を1種類のみ含有していてもよく、2種類以上の(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)を含有していてもよい。剥離剤層の硬化性、剥離性、滑落角等の各種特性を制御する観点からは、2種類以上の反応性化合物(a)を組み合わせて使用することが好ましく、特に後述の反応性シリコーン(a1)と架橋性化合物(a2)とを組み合わせて使用することが好ましく、更に膜形成性化合物(a3)を組み合わせることが好ましい。
【0019】
上記硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)のみで構成されていてもよく、溶剤、ラジカル開始剤、カチオン開始剤、レベリング剤、帯電防止剤、染料、顔料等の、それ以外の成分を含有してもよい。
(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)の使用量は、合計で、剥離剤層の質量の50質量%以上であることが好ましく、60から96質量%であることが特に好ましい。
【0020】
反応性化合物(a)
本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム中の剥離剤層の形成に好ましく用いられる反応性化合物(a)は、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する。(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有することで、硬化性組成物に光硬化性及び/又は熱硬化性を付与することができる。
【0021】
反応性化合物(a)は1以上の反応性官能基を有していればよいが、光硬化性及び/又は熱硬化性の観点からは、2以上の反応性官能基を有することが好ましく、2から15個の反応性官能基を有することが好ましく、2から10個の反応性官能基を有することがより好ましい。反応性化合物(a)が2以上の反応性官能基を有する場合、同種の反応性官能基を2以上有していてもよく、異種の反応性官能基の組み合わせを合計で2以上有していてもよい。
反応性化合物(a)は、硬化性等の観点からは活性エネルギー線を用いる場合には(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、熱硬化を併用する場合には水酸基あるいはエポキシ基を含有する材料を適宜選択することが出来る。
【0022】
反応性化合物(a)の好ましい例として、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基、並びにシロキサン骨格を有する反応性シリコーン(a1)、該反応性シリコーン(a1)と同じ反応性官能基を有しする反応性化合物(a2)、及び1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する膜形成性化合物(a3)を挙げることができる。
硬化性組成物においては、反応性シリコーン(a1)及び反応性化合物(a2)を組み合わせて使用することが好ましく、更に膜形成性化合物(a3)を組み合わせて使用することが好ましい。
【0023】
反応性シリコーン(a1)
上記硬化性組成物は、反応性化合物(a)として(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基、並びにシロキサン骨格を有する反応性シリコーン(a1)を含有することが好ましい。
反応性シリコーン(a1)を使用することで、剥離剤層の表面に所望の剥離性を付与し、セラミックグリーンシートの剥離を一層容易にすることができる。
反応性シリコーン(a1)は、(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有し、かつシロキサン骨格を有していればよく、それ以外の制限は課されない。
(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有することで、活性エネルギー線の照射により、または別途の反応工程(例えば加熱工程)により、反応性官能基が反応して、シロキサン骨格が架橋構造に組み込まれ、固定されることとなる。これにより、反応性シリコーン(a1)が剥離剤層上に成形されたセラミックグリーンシートを汚染することを一層有効に抑制することができる。
反応性官能基としては、エポキシ基が特に好ましい。
【0024】
反応性官能基は、シロキサン骨格の片末端に導入されていてもよいし、両末端に導入されていてもよいし、側鎖に導入されていてもよい。(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基は、反応性シリコーン(a1)1分子中に2以上導入されていることが好ましく、。2以上の反応性官能基を有する場合には、同種の反応性官能基を2以上有していてもよく、異なる反応性官能基の組み合わせを合計で2以上有していてもよい。
(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる反応性官能基に加えて、ビニル基、マレイミド基、カルボキシル基、イソシアネート基等を更に有していてもよい。
【0025】
反応性シリコーン(a1)の分子量には特に制限は無いが、適切な剥離性と汚染抑制との観点から、5,000から100,000であることが好ましく、10,000から70,000であることが特に好ましい。
【0026】
上記硬化性組成物において、反応性シリコーン(a1)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記硬化性組成物における反応性シリコーン(a1)の含有量には特に制限は無いが、剥離剤層の全質量を基準として、0.1から20質量%であることが好ましく、0.2から15質量%であることが特に好ましい。
【0027】
架橋性化合物(a2)
上記硬化性組成物は、反応性化合物(a)として、上記反応性シリコーン(a1)と同じ反応性官能基を有し、好ましくは反応性官能基当量が2000g/mol以下である、反応性化合物(a2)を含有することが好ましい。反応性化合物(a2)を反応性シリコーン(a1)との組み合わせにおいて使用することが特に好ましい。
反応性化合物(a2)は反応性シリコーン(a1)等に対する架橋剤として機能し、硬化性組成物の効果を促進し、反応性シリコーン(a1)等を架橋構造に組み込み固定することができる。これにより、セラミックグリーンシートの汚染を一層有効に抑制することができる。
【0028】
反応性化合物(a2)の反応性官能基当量は2000g/mol以下であることが好ましく、1000g/mol以下であることがより好ましく、500g/mol以下であることが更に好ましく、300g/mol以下であることが特に好ましい。
反応性官能基当量は2000g/mol以下であることにより、適切な架橋性能を実現するのに十分な数の(メタ)アクリロイル基、水酸基、及び/又はエポキシ基を有することになる。
反応性化合物(a2)は、反応性官能基((メタ)アクリロイル基、水酸基、及び/又はエポキシ基)を合計で1以上有することが好ましく、2から15個有することが好ましく、2から6個有することが特に好ましい。反応性官能基の数が上記範囲内にあることで、一層適切な架橋性能を実現することができる。
【0029】
架橋性化合物(a2)の分子量には特に制限は無いが、架橋性能等の観点から、150から3500であることが好ましく、150から1500であることが特に好ましい。
架橋性化合物(a2)はシロキサン骨格を有していてもよく、この場合反応性シリコーン(a1)のシロキサン骨格とともに、剥離剤層に十分なシロキサン骨格を導入することで、一層好ましい剥離性能を実現することができる。
【0030】
上記硬化性組成物において、架橋性化合物(a2)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記硬化性組成物における架橋性化合物(a2)の含有量には特に制限は無いが、剥離剤層の全質量を基準として、0.08から99質量%であることが好ましく、0.4から50質量%であることが特に好ましい。また、反応性シリコーン(a1)の使用量を基準とした場合、反応性シリコーン(a1)100質量部に対して、81から9900質量部使用することが好ましく、85から1000質量部使用することが特に好ましい。
【0031】
膜形成性化合物(a3)
上記硬化性組成物における反応性化合物(a)として、膜形成性能に優れる化合物を使用することも好ましい。膜形成性能に優れる化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、水酸基を有する化合物のいずれであってもよいが、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する膜形成性化合物(a3)を使用することが好ましい。
すなわち、上記硬化性組成物は、反応性化合物(a)として、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する膜形成性化合物(a3)を含有することが好ましい。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する膜形成性化合物(a3)を含有することで、硬化性組成物を活性エネルギー線の照射によって硬化させることができる。
膜形成性化合物(a3)は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。膜形成性化合物(a3)は、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、多官能の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に、二官能以上の(メタ)アクリレートモノマーおよび(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、さらには、三官能以上の(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。三官能以上であることで、硬化性組成物の硬化性が優れたものとなり、また、得られる剥離剤層の表面の剥離性もより優れたものとなる。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、ポリエーテルアクリレート系オリゴマー、ポリブタジエンアクリレート系オリゴマー、シリコーンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
【0035】
ポリエステルアクリレート系オリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0036】
エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、エポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。
【0037】
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0038】
ポリエーテルアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0039】
膜形成性化合物(a3)の(メタ)アクリロイル基当量にも特に制限は無いが、硬化性の観点から100~500g/molであることが好ましく、100~300g/molであることが特に好ましい。
【0040】
上記硬化性組成物において、膜形成性化合物(a3)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記硬化性組成物における膜形成性化合物(a3)の含有量には特に制限は無いが、剥離剤層の全質量を基準として、50から90質量%であることが好ましく、60から85質量%であることが特に好ましい。
【0041】
剥離剤層は、基材の少なくとも一方の面に剥離剤層の原料、好ましくは上記の硬化性組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥し、光等の活性エネルギー線の照射により硬化させることで形成することができる。反応性化合物(a)の反応性官能基が熱により反応するものである場合には、このときの乾燥により反応を起こさせ、好ましくはシロキサン骨格を有する反応性化合物(a)を架橋構造に組み込むことができる。硬化性組成物の塗布方法には特に制限は無く、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等が使用できる。
【0042】
活性エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。活性エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で10~1000mJ/cm2が好ましく、特に20~500mJ/cm2が好ましい。また、電子線の場合には、0.1~50kGy程度が好ましい。
【0043】
本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを構成する剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角は、33°以下である。
剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下であることで、他の本発明の技術的特徴とも相俟って、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上に形成したセラミックグリーンシートの剥離の容易性と、セラミックグリーンシートの汚染の抑制とを高いレベルで両立できる等、実用上高い価値を有する優れた技術的効果を実現することができる。
剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下であることで、セラミックグリーンシートの剥離の容易性と、セラミックグリーンシートの汚染の抑制とを一層高いレベルで両立できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、付着エネルギーの指標である剥離剤層の滑落角が剥離剤層の表面状態と密接な関係が有るところ、同様に剥離剤層の表面状態と密接な関係を有し得る剥離性や、セラミックグリーンシート及びその他の被着体への汚染とも相関が有り、特定の液体(ジヨードメタン)の滑落角が中でも高い相関を有し、このため剥離性及び耐汚染性を両立し得るジヨードメタン滑落角の最適値が存在しているものと推定される。
【0044】
剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角は、当該技術分野において従来公知の方法で測定することができ、例えば市販の接触角・滑落角測定装置を用いて測定することができる。より具体的には、本願明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0045】
剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角は、10°から33°であることが好ましく、15°から30°であることが特に好ましい。
剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角は、剥離剤層を構成する材料の種類及び使用量や、剥離剤層の塗工量を調整することで、適宜調整することができる。特に(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)、中でも反応性シリコーン(a1)と同じ反応性官能基を有し、好ましくは反応性官能基当量が2000g/mol以下である、反応性化合物(a2)、の反応性官能基当量及び使用量を調整することで、適宜調整することができる。
【0046】
本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムは、その剥離剤層の基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が上記条件を満たしていればよく、それ以外の制限は特に課せられないが、剥離剤層の基材とは反対側の面の水滑落角が85°以下であることが好ましく80°以下であることがより好ましく、75°以下であることがさらに好ましい。
剥離剤層の基材とは反対側の面の水滑落角が85°以下であることで、他の本実施形態の技術的特徴とも相俟って、本実施形態のセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上に形成したセラミックグリーンシートの剥離の容易性と、セラミックグリーンシートの汚染の抑制とを一層高いレベルで両立できる等、実用上高い価値を有する優れた技術的効果を実現することができる。
剥離剤層の基材とは反対側の面の水滑落角が85°以下であることで、セラミックグリーンシートの剥離の容易性と、セラミックグリーンシートの汚染の抑制とを一層高いレベルで両立できるメカニズムは必ずしも明らかではないが、付着エネルギーの指標である剥離剤層の滑落角が剥離剤層の表面状態と密接な関係が有るところ、同様に剥離剤層の表面状態と密接な関係を有し得る剥離性や、セラミックグリーンシート及びその他の被着体への汚染とも相関が有り、水素結合力を有する特定の液体(水)の滑落角が中でもジヨードメタンに次ぐ高い相関を有し、このため剥離性及び耐汚染性を両立し得る水滑落角の最適値が存在しているものと推定される。
【0047】
剥離剤層の基材とは反対側の面の水滑落角は、当該技術分野において従来公知の方法で測定することができ、例えば市販の接触角・滑落角測定装置を用いて測定することができる。より具体的には、本願明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0048】
剥離剤層の基材とは反対側の面の水接触角は、剥離剤層を構成する材料の種類及び使用量や、剥離剤層の塗工量を調整することで、適宜調整することができる。特に(メタ)アクリロイル基、水酸基、及びエポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有する反応性化合物(a)、中でも反応性シリコーン(a1)と同じ反応性官能基を有し、好ましくは反応性官能基当量が2000g/mol以下である、反応性化合物(a2)、の反応性官能基当量及び使用量を調整することで、適宜調整することができる。
【0049】
剥離剤層の厚さは、0.05~2μmであることが好ましく、特に0.2~1.5μmであることが好ましい。剥離剤層の厚さが0.05μm以上であることは、剥離剤層表面の平滑性や、セラミックグリーンシートのピンホールや厚みむらの抑制の観点から好ましい。剥離剤層の厚さが2μm以下であることは、剥離剤層の硬化収縮によるカールの発生を抑制する観点から好ましい。また、ブロッキングや帯電の抑制の観点からも好ましい。
【0050】
それ以外の層
本発明の製造方法に用いるセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムは、上述の基材と剥離剤層以外の層を有していてもよく、例えば保護層、接着層、帯電防止層等を有していてもよい。
基材と剥離剤層とは直接積層されていてもよく、接着層等のそれ以外の層を介して積層されていてもよい。
【0051】
セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム
本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、以上詳述したセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを用いることで、他の本発明の技術的特徴とも相俟って、剥離フィルム上に形成したセラミックグリーンシートの剥離が容易であるとともに、セラミックグリーンシートの汚染を効果的に抑制することができるので、各種セラミック製品に用いるセラミックグリーンシートの製造において好適に使用することができ、例えば積層セラミックコンデンサ、又は多層セラミック基板に用いるセラミックグリーンシートの製造に好適に使用することができる。
【0052】
セラミックグリーンシートの製造方法
本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、以下の工程を有する製造方法である。
a)上記にて詳述したセラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗布する工程
b)前記a)工程において塗布されたセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを形成する工程
c)前記b)工程において形成されたセラミックグリーンシートを前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムから剥離する工程
d)前記c)工程において剥離されたセラミックグリーンシートを複数積層する工程
上記にて詳述した特定のセラミックグリーンシート製造用剥離フィルムを用いること、及び上記特定の工程a)からd)を有することで、本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、セラミックグリーンシートの剥離が容易であるとともに、セラミックグリーンシートの汚染を効果的に抑制することができる等、高い実用的価値を有する技術的効果を従来技術の限界を超えた高いレベルで同時に実現することができる。
【0053】
上記製造方法により得られたセラミックグリーンシートを焼成することで、各種セラミック製品を製造することができる。
積層セラミックコンデンサの製造にあたっては、上記工程b)と工程c)との間にグリーンシート上に内部電極を印刷する工程を設けることが好ましい。その後、工程c)(剥離)、工程d)(積層)、圧着、切断分離、焼成、外部電極形成工程を経て、積層セラミックコンデンサを製造することができる。
本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、積層セラミックコンデンサ、多層セラミック基板等の各種記セラミック製品の製造において、あるいはその一工程として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これにより何ら限定
されるものではない。
【0055】
以下の実施例/比較例において、物性/特性の評価は下記の方法で行った。
(水の滑落角)
接触角・滑落角測定装置(協和界面科学社製DM-500)を用い、試料剥離フィルムの剥離剤層表面(基材とは反対側の面)上に6μLの超純水の水滴を滴下し、断続的に1度/秒のスピードでステージを傾けた後、5秒静止させ、水滴が動き出した角度を滑落角の値とした。測定は5回行い、5回の平均値を水の滑落角とした。
(ジヨードメタンの滑落角)
6μLの超純水に代えて2.1μLのジヨードメタンを使用したことを除くほか、上述の水の滑落角の測定と同様にして、ジヨードメタンの滑落角を測定した。
【0056】
(背面汚染)
寺西化学工業製の油性マジックインキ(大型・赤 筆記線幅:5×8mm)を用いて、基材の剥離剤層側と反対側に線幅8mm×長さ70mmの線を引き、1分後に中心の50mm長さ部分を観察した線幅結果に基づき、以下の基準に従い評価した。
5:残存する線幅が90%以上
4:残存する線幅が70%以上90%未満の個所がある
3:残存する線幅が50%以上70%未満の個所がある
2:残存する線幅が20%以上50%未満の個所がある
1: 残存する線幅が0%以上20%未満の個所がある
(テープ剥離力)
剥離サンプルを水平台の上に剥離剤層を上にして載置し、その剥離剤層側に粘着テープ「No.31B」(銘柄名、日東電工株式会社製)を貼り付けて200mm×50mmの大きさにカットし、さらにその粘着テープの上から20g/cm2となるように荷重を載せ、70℃で20時間エージングした。
その後、引張試験機にて引張速度300mm/分で180°剥離を行い、剥離が安定した領域における平均剥離荷重を粘着テープ幅で除した値を剥離力として求めた。
【0057】
実施例/比較例で剥離剤層に用いた樹脂等の各構成成分の詳細は、以下のとおりである。
・(a3)多官能アクリレート1
新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステル A9300
3官能イソシアヌルアクリレートモノマー (トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート)
・(a1)エポキシ変性シリコーン1
荒川化学工業株式会社製、商品名:シリコリース UV POLY201
ジメチルシリコン、脂環エポキシシリコンブロック共重合体
・(a2)エポキシ変性シリコーン2
信越化学株式会社製、商品名:信越シリコーン KR-470
脂環式エポキシ基含有環状シロキサン4官能オリゴマー
・(a2)エポキシ変性シリコーン3
信越化学株式会社製、商品名:信越シリコーン X-22-169AS
両末端型/脂環式エポキシ変性シリコーンオイル
・(a2)エポキシ変性シリコーン4
信越化学株式会社製、商品名:信越シリコーン X-22-169B
両末端型/脂環式エポキシ変性シリコーンオイル
・(a2)エポキシ変性シリコーン5
信越化学株式会社製、商品名:信越シリコーン KF-102
側鎖型/脂環式エポキシ変性シリコーンオイル
・カチオン開始剤1
三新化学工業株式会社製 商品名:サンエイド SI-100
・ラジカル開始剤1
IGM RESINS製 商品名:Esacure ONE
α-ヒドロキシケトンタイプ光重合開始剤
【0058】
[実施例1]
多官能アクリレート1、エポキシ変性シリコーン1、エポキシ変性シリコーン2、カチオン開始剤1、及びラジカル開始剤1を表1に示す質量比で配合して、剥離剤層用の硬化性組成物を調製した。
基材として、厚さ約30μm、表面の算術平均粗さ(Ra)が約20nmであるポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、基材の1面上に上記で調整した硬化性組成物を塗布し、100℃×15秒乾燥した後に高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射(積算光量:約40mJ/cm2)して硬化させて剥離剤層を形成し、基材と該基材の一方に設けられた剥離剤層とを有する、剥離フィルムを製造した。
上記で製造された剥離フィルムについて、上記の方法で、水及びジヨードメタンの滑落角、背面汚染、並びにテープ剥離力を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例2から5、及び比較例1]
剥離剤層用の硬化剤組成物の配合を表1に示すものに変更したことを除くほか、実施例1と同様にして剥離フィルムを製造し、評価した。
結果を表1に示す。
【0060】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のセラミックグリーンシートの製造方法は、その上に形成したセラミックグリーンシートの剥離が容易であるとともに、セラミックグリーンシートの汚染を効果的に抑制することができる等、高い実用的価値を有する技術的効果を従来技術の限界を超えた高いレベルで同時に実現するものであり、各種セラミック製品の製造に好適に使用することができるので、電気電子産業、電子部品産業、機械産業、自動車産業をはじめとする産業の各分野において高い利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0062】
11:セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム
12:剥離剤層
13:基材
【要約】
【課題】基グリーンシートの剥離が容易であるとともに、グリーンシートの汚染が効果的に抑制された、セラミックグリーンシートの製造方法を提供する。
【解決手段】a)セラミックグリーンシート製造用剥離フィルム上にセラミックスラリーを塗布する工程、b)前記a)工程において塗布されたセラミックスラリーからセラミックグリーンシートを形成する工程、c)前記b)工程において形成されたセラミックグリーンシートを前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムから剥離する工程、及びd)前記c)工程において剥離されたセラミックグリーンシートを複数積層する工程、を有し、前記セラミックグリーンシート製造用剥離フィルムが基材と、前記基材の少なくとも一方に設けられた剥離剤層とを有し、前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面のジヨードメタン滑落角が33°以下である、セラミックグリーンシートの製造方法。
【選択図】
図1