(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】樹脂製ギヤの製造方法及び樹脂製ギヤ
(51)【国際特許分類】
F16H 55/06 20060101AFI20240207BHJP
F16H 55/17 20060101ALI20240207BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20240207BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F16H55/06
F16H55/17 Z
B29C45/14
B29C33/14
(21)【出願番号】P 2020073873
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤生 勝
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-294459(JP,A)
【文献】特開2016-117221(JP,A)
【文献】特開平07-004498(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02353967(EP,A1)
【文献】中国実用新案第204068556(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0056681(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
F16H 55/17
B29C 45/14
B29C 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金型内に樹脂を射出して
、中心部に形成された貫通孔と、前記貫通孔の周りに形成され、前記中心部からの距離が異なる位置に配置された複数の凹部と、前記貫通孔および前記複数の凹部の周りに形成された複数のリブと、を備えた円板状のベース部を成形する工程と、
(b)金型内に樹脂を射出して外周に歯形部を備え、かつ、前記ベース部の外径よりも大きな内径の環状部を成形する工程と、
(c)前記環状部の内側に前記ベース部が位置するように前記ベース部と前記環状部とを金型内に配置する工程と、
(d)金型内に樹脂を射出して前記ベース部と前記環状部とを接合する接合部を前記ベース部と前記環状部との間に成形する工程と、
を有し、
前記(a)工程~前記(d)工程を1サイクルとし、これを複数回繰り返す樹脂製ギヤの製造方法であって、
複数回繰り返される前記1サイクルには、前記(a)工程と前記(b)工程とを同時に実施する前記1サイクルが含まれ
、
前記(d)工程には、前記接合部の肉厚部分であり、前記ベース部における前記凹部のうち、前記ベース部の外周より外側に突出した部分に、円弧状の凸部を成形する工程が含まれることを特徴とする樹脂製ギヤの製造方法。
【請求項2】
前記(a)工程では、予め金属製シャフトを金型内に配置しておき、前記金属製シャフトをインサート部材として前記金属製シャフトの周りに前記ベース部を一体的に成形することを特徴とする請求項1に記載の樹脂製ギヤの製造方法。
【請求項3】
前記複数回繰り返される前記1サイクルには、前記(a)工程と前記(b)工程と前記(d)工程とを同時に実施する前記1サイクルが含まれることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂製ギヤの製造方法。
【請求項4】
前記同時に実施する前記1サイクルは、回転自在に設けられたターンテーブル上に該ターンテーブルの回転中心に対して等間隔で配置された複数の金型において行われることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製ギヤの製造方法。
【請求項5】
中心部に形成された貫通孔と、前記貫通孔の周りに形成され、前記中心部からの距離が異なる位置に配置された複数の凹部と、前記貫通孔および前記複数の凹部の周りに形成された複数のリブと、を備えた樹脂製の円板状のベース部と、
外周に歯形部を備え、かつ、前記ベース部の外径よりも大きな内径の樹脂製の環状部と、
前記ベース部と前記環状部とを接合する樹脂製の接合部と、
を有し、
前記ベース部は、前記環状部の内側に配置され、
前記接合部は、前記環状部と前記ベース部との間に配置され
、
前記接合部の肉厚部分であり、前記ベース部における前記凹部のうち、前記ベース部の外周より外側に突出した部分には、円弧状の凸部が形成されていることを特徴とする樹脂製ギヤ
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製ギヤの製造方法及び樹脂製ギヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のワイパーなどの動力源となるモータの回転軸の回転に伴って動力を伝達するギヤの一例として、樹脂製ギヤが知られている。
【0003】
上記樹脂製ギヤの製造方法として、特許文献1および2に、樹脂製ギヤを複数の部分に分けて該部分ごとに順次樹脂成形して製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-52791号公報
【文献】特公平4-14861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂製ギヤにおいて、外周に配置されるギヤ部とその内側に配置される本体部とが一体で樹脂成形され、さらに本体部に肉厚が異なる部分が存在すると、肉厚が厚い部分と薄い部分とで樹脂の熱収縮差が発生し、この熱収縮差によってギヤ部の寸法精度が低下する。
【0006】
上記樹脂の熱収縮差のギヤ部への影響を回避する方法として、上記特許文献1および2に記載された樹脂製ギヤの製造方法のように、ギヤ部と本体部とを分けて、まず一方を樹脂成形し、その後、他方を樹脂成形して樹脂製ギヤを製造することが考えられる。
【0007】
しかしながら、樹脂製ギヤを2つの部分に分けて、まず一方を樹脂成形し、その後、他方を樹脂成形して製造すると、樹脂製ギヤの生産性が低くなる。
【0008】
本発明の目的は、生産性が高められた樹脂製ギヤの製造方法および樹脂製ギヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、(a)金型内に樹脂を射出して、中心部に形成された貫通孔と、前記貫通孔の周りに形成され、前記中心部からの距離が異なる位置に配置された複数の凹部と、前記貫通孔および前記複数の凹部の周りに形成された複数のリブと、を備えた円板状のベース部を成形する工程と、(b)金型内に樹脂を射出して外周に歯形部を備え、かつ、前記ベース部の外径よりも大きな内径の環状部を成形する工程と、(c)前記環状部の内側に前記ベース部が位置するように前記ベース部と前記環状部とを金型内に配置する工程と、(d)金型内に樹脂を射出して前記ベース部と前記環状部とを接合する接合部を前記ベース部と前記環状部との間に成形する工程と、を有し、前記(a)工程~前記(d)工程を1サイクルとし、これを複数回繰り返す樹脂製ギヤの製造方法であって、複数回繰り返される前記1サイクルには、前記(a)工程と前記(b)工程とを同時に実施する前記1サイクルが含まれ、前記(d)工程には、前記接合部の肉厚部分であり、前記ベース部における前記凹部のうち、前記ベース部の外周より外側に突出した部分に、円弧状の凸部を成形する工程が含まれる。
【0010】
本発明の他の態様は、中心部に形成された貫通孔と、前記貫通孔の周りに形成され、前記中心部からの距離が異なる位置に配置された複数の凹部と、前記貫通孔および前記複数の凹部の周りに形成された複数のリブと、を備えた樹脂製の円板状のベース部と、外周に歯形部を備え、かつ、前記ベース部の外径よりも大きな内径の樹脂製の環状部と、前記ベース部と前記環状部とを接合する樹脂製の接合部と、を有し、前記ベース部は、前記環状部の内側に配置され、前記接合部は、前記環状部と前記ベース部との間に配置され、前記接合部の肉厚部分であり、前記ベース部における前記凹部のうち、前記ベース部の外周より外側に突出した部分には、円弧状の凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂製ギヤの生産性及び樹脂製ギヤの真円度などの精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1の射出成形装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す射出成形装置を含む射出成形システムの構成を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態1の樹脂製ギヤの構造を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す樹脂製ギヤの構造を示す平面図である。
【
図5】
図4に示すA-A線に沿う切断面を示す拡大断面図である。
【
図6】
図2に示す射出成形システムを用いた樹脂製ギヤの組立ての手順を示す組立て手順図である。
【
図7】本発明の実施の形態2の樹脂製ギヤの構造を示す斜視図である。
【
図8】
図7に示す樹脂製ギヤの構造を示す平面図である。
【
図9】
図8に示すB-B線に沿う切断面を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
図1に示す本実施の形態1の射出成形装置の構造について説明する。
図1に示す射出成形装置20は、ターンテーブル5上に配置された複数の金型内に樹脂を射出して同時に複数の成形部材を成形することが可能な装置である。
【0015】
本実施の形態1では、射出成形装置20によって成形される成形品として、例えば、自動車のリヤワイパーの動力源となるモータの回転軸に係合する
図3に示す樹脂製ギヤ1を取り上げて説明する。
【0016】
まず、
図1に示す本実施の形態1の射出成形装置20について説明する。射出成形装置20は、射出成形が行われる第1回転位置と、射出成形が行われ、かつ回転中心C(
図2参照)の周上において上記第1回転位置に対して所定の角度で位置する第2回転位置と、に往復回転するターンテーブル5を備えている。本実施の形態1では、上記所定の角度が120°の場合について説明する。すなわち、上記第1回転位置と上記第2回転位置とは、ターンテーブル5の回転中心Cの周上において互いに120°の角度を成す位置となっている。
【0017】
また、
図1に示すように、射出成形装置20は、回転自在に設けられたターンテーブル5上に、このターンテーブル5の回転中心Cに対して所定間隔(等間隔)で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8を備えている。本実施の形態1では、ターンテーブル5の回転中心Cの周上において互いが120°を成す角度で配置された第1金型6、第2金型7および第3金型8を備えている場合について説明する。つまり、第1金型6、第2金型7および第3金型8は、ターンテーブル5上にターンテーブル5の回転方向に沿って120°間隔で配置されており、第1金型6、第2金型7および第3金型8は、それぞれ下型である。なお、
図2に示すように、ターンテーブル5上の120°毎に区画された領域である成形位置(射出位置)をそれぞれX成形位置、Y成形位置、Z成形位置とすると、例えば、X成形位置に第1金型6が配置され、Y成形位置に第2金型7が配置され、Z成形位置に第3金型8が配置されている。
【0018】
そして、
図1に示すように、射出成形装置20は、第1金型6、第2金型7および第3金型8に対して型開きおよび型締めをする第4金型9、第5金型10および第6金型11を備えている。第4金型9、第5金型10および第6金型11は、それぞれ上型である。さらに、射出成形装置20は、型締めされた金型内に樹脂を射出する第1射出装置12、第2射出装置13および第3射出装置14を備えている。第1射出装置12は、射出筒12aを有し、かつ、第4金型9の上部に配置され、第2射出装置13は、射出筒13aを有し、かつ、第5金型10の上部に配置され、第3射出装置14は、射出筒14aを有し、かつ、第6金型11の上部に配置されている。
【0019】
すなわち、射出成形装置20においては、第4金型9に第1射出装置12が取り付けられ、第5金型10に第2射出装置13が取り付けられ、さらに第6金型11に第3射出装置14が取り付けられている。そして、第1射出装置12は、射出口12bを有する射出筒12aを備えている。また、第2射出装置13は、射出口13bを有する射出筒13aを備えており、さらに、第3射出装置14は、射出口14bを有する射出筒14aを備えている。
【0020】
そして、射出成形装置20では、ターンテーブル5の往復回転(旋回)動作や金型の型開きおよび型締めの動作、さらに各射出装置からの射出動作等が図示しない制御部によって制御される。具体的には、下型である第1金型6、第2金型7および第3金型8の何れかに対して、上型である第4金型9、第5金型10および第6金型11を接近させたり、離反させたりする動作、使用する各射出装置、使用する樹脂および射出のタイミングなどの射出動作が上記制御部によって制御される。さらに、第1射出装置12、第2射出装置13および第3射出装置14に対して、必要なタイミングで必要な樹脂をそれぞれの射出筒の射出口から射出するようになっている。
【0021】
また、ターンテーブル5の位置制御として、上記制御部は、例えば、ターンテーブル5に対して第1の位置制御および第2の位置制御を実行する制御を行う。上記第1の位置制御が実行されると、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。一方、上記第2の位置制御が実行されると、第1金型6と第5金型10とが対向し、第2金型7と第6金型11とが対向し、かつ、第3金型8と第4金型9とが対向する第2回転位置にターンテーブル5が回転する。
【0022】
次に、
図2に示す本実施の形態1の射出成形システム21について説明する。射出成形システム21では、ターンテーブル5の周囲に、各金型に対して部品や成形品の搬入および搬出(取り出し)を行うハンドリング用の第1ロボット15、第2ロボット16および第3ロボット17が設けられている。
【0023】
さらに、第1ロボット15の近傍には、部品を供給可能な供給機19が設置されている。また、第2ロボット16および第3ロボット17それぞれの近傍には、射出成形された成形品等を梱包可能な梱包機18が設置されている。
【0024】
以上の構成により、射出成形システム21では、樹脂製ギヤ1の製造が行われる。
【0025】
次に、本実施の形態1の樹脂製ギヤ1の構造について、
図3~
図5を用いて説明する。
【0026】
樹脂製ギヤ1は、樹脂製の円板状のベース部2と、外周にギヤ部(歯形部)3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の樹脂製の環状部3と、ベース部2と環状部3とを接合する樹脂製の接合部4と、を有している。つまり、
図4に示すように、環状部3は、その内径Qがベース部2の外径Pよりも大きい(Q>P)ため、ベース部2は、環状部3の内側に配置されている。また、接合部4は、ベース部2と環状部3とを接合する樹脂であるため、環状部3とベース部2との間に配置されている。
【0027】
樹脂製ギヤ1の中央部に位置するベース部2は、その中心部にはギヤフレームに設けられたピン等が挿通される貫通孔2aを有している。また、貫通孔2aの周りには、
図3に示すように、ベース部2の表面から厚さ方向に凹んだ複数の凹部2bが設けられている。これら複数の凹部2bには、この樹脂製ギヤ1と係合するピン部材(図示せず)が配置される。そして、貫通孔2aおよび複数の凹部2bの周囲には、複数のリブ2cや複数の溝2dが設けられている。これら複数のリブ2cは、ベース部2を全域に亘って補強するものであり、さらに複数の溝2dは、凹部2bを形成する壁部の厚さや複数のリブ2cのそれぞれの厚さを略均一な厚さにするものである。これにより、ベース部2の全域に亘る肉厚が略等しくなるようになっており、その結果、ベース部2の樹脂の熱収縮を低減することができる。
【0028】
また、複数の凹部2bには、ベース部2の中心からの距離が2通りまたは3通りあり、中心からの距離が遠い方の凹部2bは、その壁部の一部(
図4のR部)がベース部2の外周より外側に突出している。この突出した部分の壁部(R部)は、ベース部2の直径方向に対する肉厚が薄くなるため、その補強として接合部4に、
図3および
図4に示す凸部4aが設けられている。つまり、凸部4aは、接合部4の肉厚部分であり、ベース部2における2つの凹部2bのベース部2の外周より外側に突出した部分(R部)を補強するため、円弧状となっている。
【0029】
ベース部2の外側に配置された環状部3は、外周側面に複数の歯が形成されたギヤ部3aを備えている。なお、環状部3の内周部(内周の壁面)は、接合部4の円弧状の凸部4aと接している。また、環状部3の内周部と接合部の4の円弧状の凸部4aとの間に隙間を設けてもよい。
【0030】
接合部4は、ベース部2と環状部3とを接合する樹脂である。したがって、接合部4は、環状部3とベース部2との間に配置されているとともに、環状部3の内周部とベース部2の外周部とに接触している。
【0031】
なお、ベース部2、環状部3および接合部4は、それぞれ異なる樹脂からなる部材であってもよいし、全てが同一の樹脂からなる部材であってもよいし、あるいは3つのうちの何れか2つが同じ樹脂からなる部材であってもよい。
【0032】
次に、本実施の形態1の樹脂製ギヤ1の製造方法を、
図6に示す組立て手順を用いて説明する。
【0033】
図6に示す組立て手順では、まず、射出成形装置20のX成形位置で金型内に樹脂を射出して円板状のベース部2を成形し、射出成形装置20のY成形位置で金型内に樹脂を射出して外周にギヤ部(歯形部)3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。さらに、射出成形装置20のZ成形位置で金型内に樹脂を射出してベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。その後、ターンテーブル5を時計方向に120°旋回させる。
【0034】
図6に示す組立て手順を具体的に説明すると、まず、ターンテーブル5の位置制御として、第1の位置制御を行う。これにより、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置20のX成形位置で第1金型6と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のY成形位置で第2金型7と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のZ成形位置で第3金型8と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0035】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて、第1金型6および第4金型9の内部に樹脂を射出し、
図3に示すような樹脂製ギヤ1の円板状のベース部2を成形する。ここでは、樹脂製ギヤ1のベース部2(外周の環状部以外)を成形し、このベース部2を下型である第1金型6に残す。
【0036】
また、射出成形装置20のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第2金型7および第5金型10の内部に樹脂を射出し、
図3に示すような外周にギヤ部(歯形部)3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。ここでは、外周のギヤ部3aを含む環状部3を成形し、この環状部3を上型である第5金型10に残す。
【0037】
そして、射出成形装置20のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第3金型8および第6金型11の内部に樹脂を射出し、
図3に示すようなベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。ここでは、下型である第3金型8のベース部2と、上型である第6金型11の環状部3とを接合部4によって接合して樹脂製ギヤ1を成形する。なお、このZ成形位置で接合されるベース部2と環状部3は、前段の工程で射出成形されて予め準備された部材である。
【0038】
成形完了後、各金型の型開きを行う。そして、第3金型8および第6金型11から、例えば、
図2に示す第3ロボット17によって完成品である樹脂製ギヤ1を取り出すとともに、梱包機18に収容する。
【0039】
このように本実施の形態1の樹脂製ギヤ1の製造方法では、ベース部2を射出成形する工程、環状部3を射出成形する工程および接合部4を射出成形する工程を、回転自在に設けられたターンテーブル5上に該ターンテーブル5の回転中心Cに対して等間隔で配置された複数の金型において実施する。
【0040】
樹脂製ギヤ1を梱包機18に収容した後、ターンテーブル5を、例えば時計方向に120°旋回させる。ここでは、ターンテーブル5の位置制御として、第2の位置制御を行う。これにより、上記第2の位置制御が実行されると、第1金型6と第5金型10とが対向し、第2金型7と第6金型11とが対向し、かつ、第3金型8と第4金型9とが対向する第2回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置20のX成形位置で第3金型8と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のY成形位置で第1金型6と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のZ成形位置で第2金型7と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0041】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて第3金型8および第4金型9の内部に樹脂を射出し、円板状のベース部2を成形する。ここでは、樹脂製ギヤ1のベース部2(外周の環状部以外)を成形し、このベース部2を下型である第3金型8に残す。
【0042】
そして、射出成形装置20のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第1金型6および第5金型10の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。この時、ターンテーブル5を時計方向に120°旋回させたことで、Y成形位置には、下型としてベース部2を収容した第1金型6が配置され、かつ、上型として環状部3を収容した第5金型10が配置されている。そして、第1金型6と第5金型10が型閉(型締め)されたことにより、環状部3の内側にベース部2が位置するようにベース部2と環状部3とが第1金型6および第5金型10の内部に配置された状態となる。そして、第1金型6および第5金型10の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4を成形する。これにより、ベース部2と環状部3とを接合部4によって接合し、樹脂製ギヤ1が成形される。
【0043】
また、射出成形装置20のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第2金型7および第6金型11の内部に樹脂を射出し、外周にギヤ部3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。ここでは、外周のギヤ部3aを含む環状部3を成形し、この環状部3を上型である第6金型11に残す。
【0044】
成形完了後、各金型の型開きを行う。そして、第1金型6および第5金型10から、例えば、
図2に示す第2ロボット16によって完成品である樹脂製ギヤ1を取り出すとともに、梱包機18に収容する。
【0045】
樹脂製ギヤ1を梱包機18に収容した後、ターンテーブル5を、例えば反時計方向に120°旋回させる。ここでは、ターンテーブル5の位置制御として、第1の位置制御を行う。これにより、上記第1の位置制御が実行されると、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置20のX成形位置で第1金型6と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のY成形位置で第2金型7と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のZ成形位置で第3金型8と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0046】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて、第1金型6および第4金型9の内部に樹脂を射出し、円板状のベース部2を成形する。ここでは、樹脂製ギヤ1のベース部2(外周の環状部以外)を成形し、このベース部2を下型である第1金型6に残す。
【0047】
また、射出成形装置20のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第2金型7および第5金型10の内部に樹脂を射出し、外周にギヤ部3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。ここでは、外周のギヤ部3aを含む環状部3を成形し、この環状部3を上型である第5金型10に残す。
【0048】
そして、射出成形装置20のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第3金型8および第6金型11の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。この時、ターンテーブル5を反時計方向に120°旋回させたことで、Z成形位置には、下型としてベース部2を収容した第3金型8が配置され、かつ、上型として環状部3を収容した第6金型11が配置されている。そして、第3金型8と第6金型11が型閉(型締め)されたことにより、環状部3の内側にベース部2が位置するようにベース部2と環状部3とが、第3金型8および第6金型11の内部に配置された状態となる。そして、第3金型8および第6金型11の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4を成形する。これにより、ベース部2と環状部3とを接合部4によって接合し、樹脂製ギヤ1が成形される。
【0049】
成形完了後、各金型の型開きを行う。そして、第3金型8および第6金型11から、例えば、
図2に示す第3ロボット17によって完成品である樹脂製ギヤ1を取り出すとともに、梱包機18に収容する。
【0050】
樹脂製ギヤ1を梱包機18に収容した後、ターンテーブル5を、例えば時計方向に120°旋回させ、X,Y,Zの各成形位置で
図6に示す処理を繰り返して実施する。
【0051】
以上のように、本実施の形態1の樹脂製ギヤ1の製造方法では、ベース部2を射出成形する工程、環状部3を射出成形する工程、ターンテーブル5を120°旋回させて環状部3の内側にベース部2を配置する工程、および接合部4を射出成形してベース部2と環状部3とを接合する工程を1サイクルとし、これらの工程が複数回繰り返して実施される。そして、複数回繰り返される1サイクルには、ベース部2を射出成形する工程と環状部3を射出成形する工程とを同時に実施する1サイクルが含まれる。
【0052】
本実施の形態1では、ベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程と、接合部4を射出成形してベース部2と環状部3とを接合する工程とを同時に実施する1サイクルが連続的に実施される場合を説明している。ただし、樹脂製ギヤ1の組立てとしては、上述のように複数回繰り返される上記1サイクルにおいて、ベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程とを同時に実施する上記1サイクルを含んでいればよい。
【0053】
本実施の形態1の樹脂製ギヤ1の組立てでは、樹脂製ギヤ1を複数の部分に分けて該部分ごとに射出成形して製造する際に、ベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程とを同時に実施することにより、樹脂製ギヤ1の生産性を高めることができる。
【0054】
そして、本実施の形態1では、ベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程と、接合部4を射出成形してベース部2と環状部3とを接合する工程とを同時に実施することにより、樹脂製ギヤ1の生産性をさらに高めることができる。
【0055】
また、樹脂製ギヤ1をベース部2と環状部3とに分けてそれぞれを樹脂成形して製造するため、ベース部2および環状部3のそれぞれの形状の精度を高めることができる。これにより、環状部3の外周のギヤ部3aの複数の歯の肉厚を均一に成形することができる。その結果、樹脂製ギヤ1において高精度なギヤ形状を実現することが可能になる。これにより、ギヤ形状の精度を確保するためのトライ回数や金型改修費等の見極めまでの費用と時間を削減することができる。
【0056】
また、ベース部2の成形と、ギヤ部3aを含む環状部3の成形と、ベース部2と環状部3との接合と、を独立して同時に実施することが可能なため、成形タクトを改善することができる。
【0057】
また、ベース部2の成形と、ギヤ部3aを含む環状部3の成形と、ベース部2と環状部3との接合と、を射出成形装置20から成形品を取出さずに実施するため、静電気による成形品への異物の付着を防止することができる。これにより、除電処理が不要になるとともに異物の付着がない樹脂製ギヤ1の生産が可能になり、樹脂製ギヤ1の品質の向上化を図ることができる。
【0058】
また、ベース部2の成形と、ギヤ部3aを含む環状部3の成形と、ベース部2と環状部3との接合と、を射出成形装置20のターンテーブル5上で実施するため、中間在庫を発生させることなく、樹脂製ギヤ1を生産することが可能になる。これにより、中間在庫を収容するための収容箱や該収容箱内で成形品を仕切るための仕切り板が不要になり、樹脂製ギヤ1の製造コストの低減化を図ることができる。
【0059】
また、ベース部2の成形と、ギヤ部3aを含む環状部3の成形と、ベース部2と環状部3との接合と、を同時に実施するため、一定の時間で樹脂製ギヤ1を成形することができ、樹脂製ギヤ1の各部分における温度バラツキを無くすことができる。その結果、樹脂製ギヤ1の品質の安定化を図ることができる。
【0060】
また、金型において樹脂製ギヤ1を複数個取りとしても、下型と上型の組み合わせが決まるため、金型の組合わせによる成形品(樹脂製ギヤ1)のバラツキを低減することができる。
【0061】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、金属製シャフト22をインサート部材として樹脂製ギヤ31を射出成形するものであり、金属製シャフト22がベース部2に埋め込まれた樹脂製ギヤ31を完成品とするものである。
【0062】
したがって、本実施の形態2では、射出成形装置20によって成形される成形品として、例えば、自動車のフロントワイパーの動力源となるモータの回転軸に係合する
図7に示す樹脂製ギヤ31を取り上げて説明する。
【0063】
次に、樹脂製ギヤ31の構造について、
図7~
図9を用いて説明する。
【0064】
樹脂製ギヤ31は、樹脂製の円板状のベース部2と、外周にギヤ部(歯形部)3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の樹脂製の環状部3と、ベース部2と環状部3とを接合する樹脂製の接合部4と、を有している。つまり、
図8に示すように、環状部3は、その内径Qがベース部2の外径Pよりも大きい(Q>P)ため、ベース部2は、環状部3の内側に配置されている。また、接合部4は、ベース部2と環状部3とを接合する樹脂であるため、環状部3とベース部2との間に配置されている。
【0065】
なお、
図9に示すように、樹脂製ギヤ31の中央部に位置するベース部2は、その中心部に金属製シャフト22が埋め込まれる凹部2eを有している。
【0066】
また、ベース部2の外側に配置された環状部3は、外周側面に複数の歯が形成されたギヤ部3aを備えている。
【0067】
接合部4は、ベース部2と環状部3とを接合する樹脂である。したがって、接合部4は、環状部3とベース部2との間に配置されているとともに、環状部3の内周部とベース部2の外周部とに接触している。
【0068】
なお、ベース部2、環状部3および接合部4は、それぞれ異なる樹脂からなる部材であってもよいし、全てが同一の樹脂からなる部材であってもよいし、あるいは3つのうちの何れか2つが同じ樹脂からなる部材であってもよい。
【0069】
次に、本実施の形態2の樹脂製ギヤ31の製造方法を、
図6に示す組立て手順を用いて説明する。
【0070】
図6に示す組立て手順では、まず、ターンテーブル5の位置制御として、第1の位置制御を行う。これにより、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置20のX成形位置で第1金型6と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のY成形位置で第2金型7と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のZ成形位置で第3金型8と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0071】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて、第1金型6および第4金型9の内部に樹脂を射出し、
図7に示すような樹脂製ギヤ31の円板状のベース部2を成形する。その際、
図2に示す第1ロボット15によって供給機19から
図7の金属製シャフト22を取出し、この金属製シャフト22を予め下型である第1金型6内に配置しておき、金属製シャフト22をインサート部材として金属製シャフト22の周りにベース部2(外周の環状部以外)を一体的に成形する。そして、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を下型である第1金型6に残す。
【0072】
また、射出成形装置20のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第2金型7および第5金型10の内部に樹脂を射出し、
図7に示すような外周にギヤ部(歯形部)3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。ここでは、外周のギヤ部3aを含む環状部3を成形し、この環状部3を上型である第5金型10に残す。
【0073】
そして、射出成形装置20のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第3金型8および第6金型11の内部に樹脂を射出し、
図7に示すようなベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。ここでは、下型である第3金型8のベース部2と、上型である第6金型11の環状部3とを接合部4によって接合して樹脂製ギヤ31を成形する。なお、このZ成形位置で接合されるベース部2と環状部3は、前段の工程で射出成形されて予め準備された部材である。
【0074】
成形完了後、各金型の型開きを行う。そして、第3金型8および第6金型11から、例えば、
図2に示す第3ロボット17によって完成品である樹脂製ギヤ31を取り出すとともに、梱包機18に収容する。
【0075】
このように本実施の形態2の樹脂製ギヤ31の製造方法では、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を射出成形する工程、環状部3を射出成形する工程および接合部4を射出成形する工程を、回転自在に設けられたターンテーブル5上に該ターンテーブル5の回転中心Cに対して等間隔で配置された複数の金型において実施する。
【0076】
樹脂製ギヤ31を梱包機18に収容した後、ターンテーブル5を、例えば時計方向に120°旋回させる。ここでは、ターンテーブル5の位置制御として、第2の位置制御を行う。これにより、上記第2の位置制御が実行されると、第1金型6と第5金型10とが対向し、第2金型7と第6金型11とが対向し、かつ、第3金型8と第4金型9とが対向する第2回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置20のX成形位置で第3金型8と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のY成形位置で第1金型6と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のZ成形位置で第2金型7と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0077】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて第3金型8および第4金型9の内部に樹脂を射出し、円板状のベース部2を成形する。その際、
図2に示す第1ロボット15によって供給機19から
図7の金属製シャフト22を取出し、この金属製シャフト22を予め下型である第3金型8内に配置しておき、金属製シャフト22をインサート部材として金属製シャフト22の周りにベース部2(外周の環状部以外)を一体的に成形する。そして、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を下型である第3金型8に残す。
【0078】
また、射出成形装置20のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第1金型6および第5金型10の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。この時、ターンテーブル5を時計方向に120°旋回させたことで、Y成形位置には、下型として金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を収容した第1金型6が配置され、かつ、上型として環状部3を収容した第5金型10が配置されている。そして、第1金型6と第5金型10が型閉(型締め)されたことにより、環状部3の内側にベース部2が位置するようにベース部2と環状部3とが第1金型6および第5金型10の内部に配置された状態となる。そして、第1金型6および第5金型10の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4を成形する。これにより、ベース部2と環状部3とを接合部4によって接合し、かつ、ベース部2に金属製シャフト22が埋め込まれた樹脂製ギヤ31が成形される。
【0079】
また、射出成形装置20のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第2金型7および第6金型11の内部に樹脂を射出し、外周にギヤ部3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。ここでは、外周のギヤ部3aを含む環状部3を成形し、この環状部3を上型である第6金型11に残す。
【0080】
成形完了後、各金型の型開きを行う。そして、第1金型6および第5金型10から、例えば、
図2に示す第2ロボット16によって完成品である樹脂製ギヤ31を取り出すとともに、梱包機18に収容する。
【0081】
樹脂製ギヤ31を梱包機18に収容した後、ターンテーブル5を、例えば反時計方向に120°旋回させる。ここでは、ターンテーブル5の位置制御として、第1の位置制御を行う。これにより、上記第1の位置制御が実行されると、第1金型6と第4金型9とが対向し、第2金型7と第5金型10とが対向し、かつ、第3金型8と第6金型11とが対向する第1回転位置にターンテーブル5が回転する。そして、射出成形装置20のX成形位置で第1金型6と第4金型9の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のY成形位置で第2金型7と第5金型10の型閉(型締め)を行い、射出成形装置20のZ成形位置で第3金型8と第6金型11の型閉(型締め)を行う。
【0082】
各金型の型締め後、X成形位置では、第1射出装置12を用いて、第1金型6および第4金型9の内部に樹脂を射出し、円板状のベース部2を成形する。その際、
図2に示す第1ロボット15によって供給機19から
図7の金属製シャフト22を取出し、この金属製シャフト22を予め下型である第1金型6内に配置しておき、金属製シャフト22をインサート部材として金属製シャフト22の周りにベース部2(外周の環状部以外)を一体的に成形する。そして、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を下型である第1金型6に残す。
【0083】
また、射出成形装置20のY成形位置では、第2射出装置13を用いて、第2金型7および第5金型10の内部に樹脂を射出し、外周にギヤ部3aを備え、かつ、ベース部2の外径よりも大きな内径の環状部3を成形する。ここでは、外周のギヤ部3aを含む環状部3を成形し、この環状部3を上型である第5金型10に残す。
【0084】
そして、射出成形装置20のZ成形位置では、第3射出装置14を用いて、第3金型8および第6金型11の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4をベース部2と環状部3との間に成形する。この時、ターンテーブル5を反時計方向に120°旋回させたことで、Z成形位置には、下型として金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を収容した第3金型8が配置され、かつ、上型として環状部3を収容した第6金型11が配置されている。そして、第3金型8と第6金型11が型閉(型締め)されたことにより、環状部3の内側にベース部2が位置するようにベース部2と環状部3とが第3金型8および第6金型11の内部に配置された状態となる。そして、第3金型8および第6金型11の内部に樹脂を射出し、ベース部2と環状部3とを接合する接合部4を成形する。これにより、ベース部2と環状部3とを接合部4によって接合し、かつ、ベース部2に金属製シャフト22が埋め込まれた樹脂製ギヤ31が成形される。
【0085】
成形完了後、各金型の型開きを行う。そして、第3金型8および第6金型11から、例えば、
図2に示す第3ロボット17によって完成品である樹脂製ギヤ31を取り出すとともに、梱包機18に収容する。
【0086】
樹脂製ギヤ31を梱包機18に収容した後、ターンテーブル5を、例えば時計方向に120°旋回させ、X,Y,Zの各成形位置で
図6に示す処理を繰り返して実施する。
【0087】
以上のように、本実施の形態2の樹脂製ギヤ31の製造方法においても、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2を射出成形する工程、環状部3を射出成形する工程、ターンテーブル5を120°旋回させて環状部3の内側にベース部2を配置する工程、および接合部4を射出成形してベース部2と環状部3とを接合する工程を1サイクルとし、これらの工程が複数回繰り返して実施される。そして、複数回繰り返される1サイクルには、金属製シャフト22を埋め込んでベース部2を射出成形する工程と環状部3を射出成形する工程とを同時に実施する1サイクルが含まれる。
【0088】
本実施の形態2では、金属製シャフト22を埋め込んでベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程と、接合部4を射出成形してベース部2と環状部3とを接合する工程と、を同時に実施する1サイクルが連続的に実施される場合を説明している。ただし、樹脂製ギヤ31の組立てとしては、上述のように複数回繰り返される上記1サイクルにおいて、金属製シャフト22を埋め込んでベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程とを同時に実施する上記1サイクルを含んでいればよい。
【0089】
本実施の形態2の樹脂製ギヤ31の組立てにおいても、樹脂製ギヤ31を複数の部分に分けて該部分ごとに射出成形して製造する際に、金属製シャフト22を埋め込んでベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程とを同時に実施することにより、樹脂製ギヤ31の生産性を高めることができる。
【0090】
すなわち、ベース部2に金属製シャフト22が埋め込まれた樹脂製ギヤ31であっても、この樹脂製ギヤ31の生産性を高めることができる。
【0091】
そして、本実施の形態2では、金属製シャフト22を埋め込んでベース部2を射出成形する工程と、環状部3を射出成形する工程と、接合部4を射出成形してベース部2と環状部3とを接合する工程と、を同時に実施することにより、ベース部2に金属製シャフト22が埋め込まれた樹脂製ギヤ31の生産性をさらに高めることができる。
【0092】
また、樹脂製ギヤ31を、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2と環状部3とに分けてそれぞれを樹脂成形して製造するため、金属製シャフト22が埋め込まれたベース部2であっても、このベース部2および環状部3のそれぞれの形状の精度を高めることができる。これにより、環状部3の外周のギヤ部3aの複数の歯の肉厚を均一に成形することができる。その結果、樹脂製ギヤ31において高精度なギヤ形状を実現することが可能になる。これにより、ギヤ形状の精度を確保するためのトライ回数や金型改修費等の見極めまでの費用と時間を削減することができる。
【0093】
なお、本実施の形態2の樹脂製ギヤ31の組立ておよび樹脂製ギヤ31によって得られるその他の効果については、実施の形態1の樹脂製ギヤ1の組立ておよび樹脂製ギヤ1によって得られるその他の効果と同様であるため、その重複説明は省略する。
【0094】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態においては、ターンテーブル5における第1回転位置と第2回転位置との成す角度、および第1金型6、第2金型7、第3金型8の配置間隔(回転中心Cの周上の角度)がそれぞれ120°の場合を説明したが、これらの角度は、120°に限らず120°以外の角度であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 樹脂製ギヤ、2 ベース部、2a 貫通孔、2b 凹部、2c リブ、2d 溝、2e 凹部、3 環状部、3a ギヤ部(歯形部)、4 接合部、4a 凸部、5 ターンテーブル、6 第1金型(下型)、7 第2金型(下型)、8 第3金型(下型)、9 第4金型(上型)、10 第5金型(上型)、11 第6金型(上型)、12 第1射出装置、12a 射出筒、12b 射出口、13 第2射出装置、13a 射出筒、13b 射出口、14 第3射出装置、14a 射出筒、14b 射出口、15 第1ロボット、 16 第2ロボット、17 第3ロボット、18 梱包機、19 供給機、20 射出成形装置、21 射出成形システム、22 金属製シャフト、31 樹脂製ギヤ