(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】低屈折率層形成用塗液、および反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20240207BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240207BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240207BHJP
【FI】
G02B1/111
C08F290/06
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2023080945
(22)【出願日】2023-05-16
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022196376
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健弘
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-157199(JP,A)
【文献】特開2020-042209(JP,A)
【文献】特開2020-189978(JP,A)
【文献】特開2016-112834(JP,A)
【文献】特開2004-123780(JP,A)
【文献】国際公開第2013/191243(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006497(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/111
C08F 290/06
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が
50~150n
mの中空ポリマー粒子(A)と、
フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115
~150の(メタ)アクリレート化合物(B)と、
平均粒径50~90nmの酸化アルミニウムと、を含み、
前記化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート(b)を含
み、
低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中に、前記酸化アルミニウムを0.4~3質量%含むことを特徴とする、
低屈折率層形成用塗液。
【請求項2】
さらに、(メタ)アクリロイル基当量が
88以上115未満である(メタ)アクリレート化合物(C)を含むことを特徴とする、請求項1記載の低屈折率層形成用塗液。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対し、前記(メタ)アクリレート化合物(C)を20~200質量部含むことを特徴とする、請求項2記載の低屈折率層形成用塗液。
【請求項4】
透明基材上に、請求項1~3いずれか1項記載の低屈折率層形成用塗液の硬化物である低屈折率層を備えた反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折率層形成用塗液、および反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、タッチパネル等の画像表示装置における画像表示面には、外光の映り込みを抑制するために、低屈折率層を有する反射防止フィルムや防眩フィルムが設けられている。
【0003】
反射防止フィルムは、低屈折率層の表面で反射する光と、低屈折率層と低屈折率層に隣接する層(例えばハードコート層や高屈折率層)との界面で反射する光とで、光の干渉効果により視感反射率を低減させるものである。
【0004】
反射防止フィルムはディスプレイの最表面層に積層されることが多く、耐擦傷性や耐摩耗性が求められる。
【0005】
近年、ディスプレイを折り曲げて使用する、フォルダブルディスプレイを備えたスマートフォンやタブレットデバイスが開発されている。フォルダブルディスプレイに積層される反射防止フィルムについては、外観の変化や割れを起こすことなく折り曲げに追従できるような耐屈曲性が求められる。
【0006】
特許文献1では反射防止フィルムの低屈折率層に中空ポリマー粒子を含んでおり、従来の中空シリカ粒子を用いた低屈折率層と比較して耐屈曲性が向上することが明らかとなっている。これは、無機系のシリカに由来する剛性と比較して、有機系のポリマー粒子は柔軟であり、マンドレル試験における耐屈曲性が高いものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スマートフォン等に用いられるフォルダブルディスプレイは、1回の折り曲げのみならず、多数の繰り返し折り曲げ試験に耐えうるような耐屈曲性が求められるが、特許文献1記載の反射防止フィルムは、マンドレル試験による繰り返しの折り曲げ試験では、外観の変化やクラックが発生してしまうという課題があった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、繰り返しの折り曲げ試験への耐久性と耐擦傷性試験への耐久性に優れた反射防止フィルム用の低屈折率層形成用塗液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明に至った。すなわち、第1の発明は平均粒子径が150nm以下の中空ポリマー粒子(A)と、フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以上の(メタ)アクリレート化合物(B)と、を含み、前記化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート(b)を含むことを特徴とする、低屈折率層形成用塗液に関する。
【0011】
また、第2の発明は、さらに、(メタ)アクリロイル基当量が115未満である(メタ)アクリレート化合物(C)を含むことを特徴とする、前記の低屈折率層形成用塗液に関する。
【0012】
また、第3の発明は、前記(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対し、前記(メタ)アクリレート化合物(C)を20~200質量部含むことを特徴とする、前記の低屈折率層形成用塗液に関する。
【0013】
また、第4の発明は、透明基材上に、前記の低屈折率層形成用塗液から形成された低屈折率層を備えた反射防止フィルムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、繰り返し折り曲げ試験への耐屈曲性に優れ、耐擦傷性にも優れた反射防止フィルム用の低屈折率層形成用塗液を提供することができるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明するが、初めに本明細書で用いられる用語について説明する。尚、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、および「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」および「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を表すものとする。また、「(メタ)アクリロイル基当量」を「当量」、「平均粒子径が150nm以下の中空ポリマー粒子(A)」を「中空ポリマー粒子(A)」と称することがある。
また、本明細書において、低屈折率層とは、屈折率1.49以下である層のことを言う。
また、平均粒子径とは、粒度分布測定値から求められる体積基準の粒子径分布において、累積値が50%となる粒子径を表し、動的光散乱法を利用したナノトラック粒子径分布測定装置により求めることができる。
【0016】
また、本発明における(メタ)アクリロイル基当量とは、
「(メタ)アクリレート化合物の分子量(Mw)/同一分子中の(メタ)アクリロイル基の数(f)」により求められる。
複数種の(メタ)アクリレート化合物からなる混合物の平均(メタ)アクリロイル基当量は、下記式(1)により求められる。
平均(メタ)アクリロイル基当量 ={Mw(1)/f(1)}×Q(1)+{Mw(2)/f(2)}×Q(2)+・・・+{Mw(n)/f(n)}×Q(n) 式(1)
式(1)中、nは混合物中の各種(メタ)アクリレート化合物を区別する付番を表し、Mw(n)は各成分nの分子量、f(n)は各成分nのアクリロイル基数、Q(n)は(メタ)アクリレート化合物の総重量中の各成分nの重量%を表す。
また、繰り返しの耐屈曲試験は、繰り返し折り曲げ試験機(ユアサシステム機器株式会社製面状体無負荷U字伸縮試験機)により実施する。また、円筒形マンドレル法による耐屈曲性はJIS K5600-5-1に従って求められる。詳細は、実施例の項に記載する。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
《低屈折率層形成用塗液》
本発明の低屈折率層形成用塗液は、平均粒子径が150nm以下の中空ポリマー粒子(A)と、フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以上である(メタ)アクリレート化合物(B)と、を含み、化合物(B)はウレタン(メタ)アクリレート(b)を含む。
本発明の低屈折率層形成用塗液は、さらに、(メタ)アクリロイル基当量が115未満である(メタ)アクリレート化合物(C)を含むことが好ましい。
【0018】
耐屈曲性と耐擦傷性の両立の観点から、低屈折率層形成用塗液中の(メタ)アクリレート化合物の平均(メタ)アクリロイル基当量は、90~150であることが好ましく、100~140であることがより好ましく、110~130であることがさらに好ましい。
【0019】
<中空ポリマー粒子(A)>
中空ポリマー粒子とは、内部に空隙を有し、外殻が有機ポリマー層からなる粒子である。
中空ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、架橋アクリル系ポリマー、架橋スチレン系ポリマー、ビニル系ポリマー等が挙げられる。低屈折率とできる観点から、架橋アクリル系ポリマーが好ましい。
市販品としては、テクポリマーXX5964Z(平均粒子径80nm、積水化成品工業)等が挙げられる。
【0020】
本発明における中空ポリマー粒子(A)は、平均粒子径が150nm以下である。一般に反射防止フィルム中の低屈折率層の膜厚は、光干渉層としての特性から50~150nm程度であるため、膜厚が150nmの低屈折率層に対して、層中に含まれる中空ポリマー粒子の平均粒子径が150nmを超えると、層表面に形成される凹凸差が大きくなり、光散乱によりヘイズが高くなる。さらにヘイズを低減するためには平均粒子径は100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径の下限値は特に制限されないが、低屈折率化のために、50nm以上であることが好ましい。
【0021】
なお、中空ポリマー粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を利用したナノトラック粒子径分布測定装置により求めることができる。
ナノトラック粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製「ナノトラックUPA」等が挙げられる。
具体的には、解析ソフト「Microtrac」でのローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定できる。
希釈液は、中空ポリマー粒子の分散溶媒の主成分である分散溶媒と同じ分散溶媒を用いることが好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0022】
中空ポリマー粒子(A)の含有率は、屈折率低減のために、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中に10~80質量%であることが好ましい。より好ましくは15~70質量%である。ここで、低屈折率層形成用塗液の不揮発分の質量は、低屈折率層形成用塗液を120℃で20分加熱乾燥した後の残った成分の質量である。以下、特段の断りがない限り同じである。
【0023】
<(メタ)アクリレート化合物(B)>
(メタ)アクリレート化合物(B)は、フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以上である。本発明において、(メタ)アクリレート化合物(B)はウレタン(メタ)アクリレート(b)を含む。
ウレタン(メタ)アクリレート(b)としては、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物(当量137)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの反応物(当量127)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物(当量127)、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
(メタ)アクリレート化合物(B)は、(b)以外の、フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以上の(メタ)アクリレート化合物(b’)を含有できる。
(b)以外の、フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以上の(メタ)アクリレート化合物(b’)としては、
トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(当量143)、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート(当量157)、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
(メタ)アクリレート化合物(B)の(メタ)アクリロイル基当量は115以上であり、上限値は特に限定されないが、耐擦傷性の観点から250以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることがさらに好ましい。
【0026】
<(メタ)アクリレート化合物(C)>
(メタ)アクリレート化合物(C)は、(メタ)アクリロイル基当量が115未満であれば制限されない。
(メタ)アクリレート化合物(C)としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(当量99)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(当量113)、グリセリントリアクリレート(当量85)、グリセリントリメタクリレート(当量99)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(当量99)、ペンタエリスリトールトリメタクリレート(当量113)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(当量88)、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート(当量102)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(当量105)、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(当量96)、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート(当量110)、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;
メチルアクリレート(当量86)、メチルメタアクリレート(当量100)、単官能(メタ)アクリレート化合物;
1,6ヘキサンジオールジアクリレート(当量113)、エチレングリコールジメタクリレート(当量99)、等の二官能(メタ)アクリレート化合物;
等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
耐屈曲性と耐擦傷性の両立の観点から、(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対し、20~200質量部であることが好ましく、20~120質量部であることがより好ましく、20~50質量部であることがさらに好ましい。
【0028】
(メタ)アクリレート化合物(B)と(メタ)アクリレート化合物(C)の合計の含有率は、耐擦傷性と耐屈曲性、低屈折率の両立の観点から、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、10~90質量%であることが好ましく、20~70質量%がより好ましい。
【0029】
<任意成分>
本発明の低屈折率形成用塗液には、さらに様々な添加剤を含有してもよい。添加剤としては、光重合開始剤、無機酸化物微粒子、熱硬化性樹脂、重合禁止剤、レベリング剤、スリップ剤、耐擦傷性無機フィラー、消泡剤、界面活性剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電剤、無機充填剤、等が挙げられる。低屈折率層の耐擦傷性向上のために、無機酸化物微粒子を含むことが好ましい。また、低屈折率層の平滑性向上のために、レベリング剤を含むことが好ましい。
【0030】
(無機酸化物微粒子)
無機酸化物微粒子の平均粒子径は、低屈折率層の耐擦傷性向上の観点で、50~90nmであることが好ましく、より好ましくは65~90nmである。
なお、無機酸化物微粒子の平均粒子径は動的光散乱法を利用したマイクロトラック粒子径分布測定装置等により求めることができる。
マイクロトラック粒子径分布測定装置としては、例えば、日機装株式会社製「ナノトラックUPA」等が挙げられる。
具体的には、無機酸化物微粒子を溶剤に分散させた無機酸化物微粒子分散体を、ローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定できる。
希釈液は、無機酸化物微粒子の分散溶媒の主成分である分散溶媒と同じ分散溶媒を用いることが好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
無機酸化物微粒子としては特に制限されないが、酸化アルミニウム(Al2O3)、またはシリカ(SiO2)微粒子等が挙げられる。
透明性と耐擦傷性の観点から、酸化アルミニウム微粒子が好ましく、さらに耐擦傷性向上のために、酸化アルミニウム微粒子の結晶構造がθ型および/またはα型であることが好ましい。
【0032】
無機酸化物微粒子の含有率は、耐擦傷性と低屈折率化、及び透明性の両立の観点から、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、0.3~5質量%であることが好ましく、0.4~3質量%がより好ましい。
【0033】
(レベリング剤)
レベリング剤としては、表面張力の低下作用を有するものであれば特に制限されないが、例えばアクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられ、耐擦傷性向上のためにはフッ素系レベリング剤であることが好ましい。
レベリング剤の含有率は、低屈折率層形成用塗液の不揮発分100質量%中、0.1~10質量%であることが好ましく、1~6質量%がより好ましい。
【0034】
《反射防止フィルム》
本発明の反射防止フィルムは、透明基材上に本発明の低屈折率形成用塗液により形成された低屈折率層を有する。
これにより、耐擦傷性に優れ、耐屈曲性にも優れた反射防止フィルムとできる。
反射防止フィルムは、ハードコート層、または光学調整層等の他の硬化膜層をさらに有していてもよい。
本発明の反射防止フィルムの視感反射率は1.5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
本発明の反射防止フィルムは耐屈曲性試験にて、曲率半径を1mmとし、前記低屈折率層が外側となるように180°折り曲げた場合に、1万回折り曲げてもクラックが生じないことが好ましい。上記の耐屈曲性を有する反射防止フィルムは、フォルダブルディスプレイ用途に好適である。
なお、前記繰り返し折り曲げ性試験は、50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、100nmの低屈折率層を有する反射防止フィルムを用いて行なったものである。詳細な試験方法は、実施例の欄に記載する。
【0036】
繰り返し折り曲げ試験において、曲率半径を1mmとし、前記低屈折率層が外側となるように180°折り曲げた場合に、1万回折り曲げてもクラックが生じない反射防止フィルムとする方法としては、(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対する(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量を20~200質量部にすることが挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量が、(メタ)アクリレート化合物(B)100質量部に対して200質量部を超えた場合、低屈折率層の剛直性の向上により耐屈曲性が低下することから、繰り返し折り曲げ試験において、曲率半径を1mmとし、前記低屈折率層が外側となるように180°折り曲げた場合に、1万回折り曲げるとクラックが生じる。このような反射防止フィルムは、フォルダブルディスプレイ用途に不適である。
【0037】
[低屈折率層]
低屈折率層は、本発明の低屈折率層形成用塗液から形成され、例えば、低屈折率層形成用塗液を透明基材上等に塗工して乾燥後、硬化させることで得られる。
【0038】
低屈折率層は、屈折率が1.49以下であり、視感反射率の低減のために、屈折率は1.45以下であることが好ましい。
低屈折率層の厚みは、視感反射率低減のために、厚みが80~150nmであることが好ましく、100~140nmであることがより好ましい。
【0039】
[透明基材]
透明基材は、光透過性を有する基材であれば特に制限されず、ガラス、合成樹脂成型物、フィルムなどが挙げられる。
基材の厚みは特に限定されないが、通常50~200μm程度である。
耐屈曲性の観点から、透明基材の種類は合成樹脂成型物、フィルムが好ましい。
【0040】
合成樹脂成型物としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレートを主成分とする共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-メチルメタクリレート共重合体樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂の成型物が挙げられる。
【0041】
また、フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテルフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリルフィルム等が挙げられる。
【0042】
[反射防止フィルムの製造方法]
反射防止フィルムの製造方法は特に制限されないが、例えば、基材上に、低屈折率層形成用塗液により低屈折率層を形成することで、反射防止フィルムが得られる。また、ハードコート層を備える場合には例えば、基材上にハードコート層を形成し、さらにハードコート層上に低屈折率層を積層させることで反射防止フィルムが得られる。その他、基材層とハードコート層間やハードコート層と低屈折率層間にさらに光学調整層などの別の硬化膜層等を有してもよい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は、本発明の技術的範囲を何ら制限するものではない。
また、表中の配合量は、質量%であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、中空粒子の平均粒子径、低屈折率層の膜厚は、下記の方法で測定した。
【0044】
<中空ポリマー粒子の平均粒子径>
動的光散乱法を利用したナノトラック粒子径分布測定装置として、日機装株式会社製「ナノトラックUPA」を用いて測定した。
中空ポリマー粒子をローディングインデックス値が1.0になるように希釈液に添加して測定した。希釈液は中空粒子の分散溶媒に応じて、主成分となる分散溶媒と同じものを用いた。
【0045】
<低屈折率層の膜厚>
光学式非接触膜厚計(FILMETRICS,Inc、F20膜厚測定装置)を用いて、低屈折率層の膜厚を測定した。
【0046】
<ウレタンアクリレートの合成>
(合成例1)ウレタンアクリレート化合物(P1):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Pentaerythritol Triacrylate(Thermo Fisher Scientific株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A)、純度97%以上、分子量298)597質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ株式会社製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRでイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、分子量821、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(b1)(アクリロイル基当量137))100質量%のウレタンアクリレート化合物溶液P1を得た。
【0047】
(合成例2)ウレタンアクリレート混合物(P2):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Pentaerythritol Triacrylate(Thermo Fisher Scientific株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A)、純度97%以上、分子量298)533質量部と、アロニックスM306(東亞合成株式会社製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A(c3))67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A(c4))32.5質量%との混合物)237質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ株式会社製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRでイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量821、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(b1)(アクリロイル基当量137)82.6質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(c3)(PET3A、アクリロイル当量99)9.7質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(c4)(PET4A、アクリロイル基当量88)7.7質量%を含むウレタンアクリレート混合物溶液P2を得た。
【0048】
(合成例3)ウレタンアクリレート混合物(P3):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM306(東亞合成株式会社製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A(c3))67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A(c4))32.5質量%との混合物)950質量部 と、 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュール50M-HDI(住化コベストロ株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI))168質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRでイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量765、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(b2)(アクリロイル基当量127)68.4質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(c3)(PET3A、アクリロイル基当量99)4.0質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(c4)(PET4A、アクリロイル基当量88)27.6質量%を含むウレタンアクリレート混合物溶液P3を得た。
【0049】
(合成例4)ウレタンアクリレート混合物(P4):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM403(東亞合成株式会社製、分子量524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA(c1))55質量%と分子量579のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA(c2))45質量%との混合物)2500質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ株式会社製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRでイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量1273、アクリロイル基を10個有するウレタンアクリレート(b3)(アクリロイル基当量127)46.7質量%、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(c1)(DPPA、アクリロイル基当量105)12.0質量%、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、アクリロイル基当量96)41.3質量%を含むウレタンアクリレート混合物溶液P4を得た。
【0050】
(合成例5)ウレタンアクリレート混合物(P5):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM306(東亞合成株式会社製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A(c3))67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A(c4))32.5質量%との混合物)2150質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ株式会社製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRでイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量821、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(b1)(アクリロイル基当量137)34.6質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(c3)(PET3A、アクリロイル基当量99)36.0質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(c4)(PET4A、アクリロイル基当量88)29.4質量%を含むウレタンアクリレート混合物溶液P5を得た。
【0051】
(合成例6)ウレタンアクリレート混合物(P6):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アロニックスM306(東亞合成株式会社製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A(c3))67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A(c4))32.5質量%との混合物)3100質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ株式会社製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IRでイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量821、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(b1)(アクリロイル基当量137)24.7質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(c3)(PET3A、アクリロイル基当量99)45.0質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(c4)(PET4A、アクリロイル基当量88)30.3質量%を含むウレタンアクリレート混合物溶液P6を得た。
【0052】
(合成例7)ウレタンアクリレート混合物(P7):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、Pentaerythritol Triacrylate(Thermo Fisher Scientific株式会社製、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A)、純度97%以上、分子量298)478質量部と、アロニックスM306(東亞合成株式会社製、分子量298のペンタエリスリトールトリアクリレート(PET3A(c3))67.5質量%と分子量352のペンタエリスリトールテトラアクリレート(PET4A(c4))32.5質量%との混合物)212質量部 と、ネオスタンU-810(日東化成株式会社製、錫触媒)0.1質量部を入れ、液温を50℃にした後、デスモジュールI(住化コベストロ株式会社製、イソホロンジイソシアネート(IPDI))224質量部を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が治まった後、80℃ に昇温し3時間反応させ、FT-IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、室温まで温度を下げ、不揮発分中、分子量821、アクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(b1)(アクリロイル基当量137)89.8質量%、ペンタエリスリトールトリアクリレート(c3)(PET3A、アクリロイル基当量99)2.7質量%、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(c4)(PET4A、アクリロイル当量88)7.5質量%を含むウレタンアクリレート混合物溶液P7を得た。
【0053】
<多官能ポリエステルアクリレートの製造>
(多官能ポリエステルアクリレート混合物溶液(PE)の製造)
撹拌機、還流冷却管、ドライエアー導入管、温度計を備えた4口フラスコに3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物80.0部、水酸基価122mgKOH/gのペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製ペンタエリスリトールトリアクリレート商品名:KAYARAD PET-30、副生成物としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む)250.0部、メチルヒドロキノン0.24部、シクロヘキサノン217.8部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで触媒として1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン1.65部を加え、90℃で8時間撹拌した。その後、メタクリルグリシジルエーテル78.3部、シクロヘキサノン54.0部を加え、次いで触媒として、ジメチルベンジルアミン2.65部を加え、100℃で6時間撹拌し、反応を継続しながら定期的に反応物の酸価を測定し、酸価が5.0mgKOH/g以下になったところで、室温まで冷却して反応を停止させた。得られた樹脂ワニスは淡黄色透明で、不揮発分60%であるポリエステルアクリレート(b4)とペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(不揮発分質量比がポリエステルアクリレート:ペンタエリスリトールテトラアクリレート=76:24)である、多官能ポリエステルアクリレート混合物溶液(PE)を得た。ポリエステルアクリレート(b’1)は、官能基数8、重量平均分子量3500であった。
【0054】
【0055】
<酸化アルミニウム微粒子分散体の製造>
酸化アルミニウム(θ型結晶 一次粒子径 10nm)を35部と、多官能ポリエステルアクリレート混合物溶液PEを不揮発分で14部、有機溶剤としてメチルエチルケトンを25.5部、メトキシブタノールを25.5部混合し、ディスパー攪拌後、サンドミルにて分散処理を行い、θ型結晶の酸化アルミニウム微粒子を含む均一な酸化アルミニウム微粒子分散体を得た。酸化アルミニウム微粒子は、平均粒子径が80nmであった。
【0056】
実施例および比較例の製造に用いた材料は以下のとおりである。
<中空粒子>
・中空ポリマー粒子(a1);テクポリマーXX-5964Z(中空ポリマー粒子、架橋アクリル系樹脂、平均粒子径80nm、不揮発分10%、積水化成品工業株式会社製)
・中空ポリマー粒子(a2);テクポリマーXX-6289Z(中空ポリマー粒子、架橋アクリル系樹脂、平均粒子径65nm、不揮発分10%、積水化成品工業株式会社製)
・中空粒子;スルーリア2320(中空シリカ粒子、平均粒子径50nm、不揮発分20.5%、日揮触媒化成株式会社製)
【0057】
<(メタ)アクリレート化合物(B)>
・プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(b’2);ATM-4P(アクリロイル当量146、 新中村化学社製)
【0058】
<シリカ微粒子>
・反応性シリカ微粒子;MIBK-SD(平均粒子径10nm、不揮発分30%、日産化学株式会社製)
【0059】
<レベリング剤>
・レベリング剤;メガファックRS-90(含フッ素UV反応性オリゴマー、不揮発分10%、DIC株式会社製)
【0060】
<光重合開始剤>
・OMNIRAD907(IGM RESINS株式会社製)
【0061】
[実施例1]
<低屈折率層形成用塗液の調製>
攪拌機付きフラスコに、(メタ)アクリレート化合物(B)としてウレタンアクリレー
トb1が100部となるように、合成例1で得られたウレタンアクリレート化合物溶液P
1を加え、さらに中空粒子(A)として中空粒子(a1)を100部(不揮発分100%
換算値)、光重合開始剤としてOMNIRAD907を5部、及びレベリング剤として含
フッ素(メタ)アクリレート(メガファックRS-90(DIC株式会社製))10部(
不揮発分100%換算値)を加えてよく混合し、有機溶剤としてプロピレングリコールモ
ノメチルエーテルを不揮発分濃度4%となるように調整して低屈折率層形成用塗液を得た
。
ただし、実施例1は参考例である。
【0062】
<反射防止フィルムの製造>
50μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製「ルミラーUH-13」)上に、低屈折率層形成用塗液を、バーコーターを用いて、乾燥後の膜厚が100nmになるように塗工した後、酸素濃度が500ppm以下となるような窒素雰囲気下で、高圧水銀ランプで400mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層を形成し、反射防止フィルムを得た。
【0063】
[実施例2~11、比較例1~5]
表2に示す組成および配合量(不揮発分換算)とした以外は、実施例1と同様にして、
不揮発分濃度4%の低屈折率層形成用塗液をそれぞれ得た。
続いて、それぞれの組成の低屈折率層形成用塗液を用いた以外は、実施例1と同様にし
て、反射防止フィルムを得た。
ただし、実施例2~4、6~11は参考例である。
【0064】
[評価項目および評価方法]
得られた低屈折率層および反射防止フィルムの評価方法は下記の通りである。結果を表2~3に示す。
【0065】
<屈折率の測定>
メトリコン株式会社製「プリズムカプラモデル2010」を用いて、低屈折率層の波長594nmにおける屈折率を求めた。
【0066】
<HZ;ヘイズ値の測定>
作製した反射防止フィルムについて、日本電色工業株式会社製「ヘイズメーターSH7000」により低屈折率層表面のヘイズ値(HZ)を測定した。なお、△および〇が実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
・〇:1.5%以下(良好)
・△:1.5%超過、2.0%以下(実用可)
・×:2.0%超過(実用不可)
【0067】
<耐屈曲性(マンドレル折り曲げ)>
塗膜屈曲試験機(テスター産業、PI―801)を用いて、JIS5600-5-1に従って、円筒形マンドレル法によって測定した。低屈折率層が外側になるように反射防止フィルムをマンドレルに巻き付け、フィルムにクラックが生じるか否かを目視確認した。直径が2mm(曲率半径1mm)の円筒径マンドレルを使用した。
[評価基準]
・〇:クラックが生じなかった(実用可)
・×:クラックが生じた(実用不可)
【0068】
<繰り返し折り曲げ試験>
耐屈曲性試験器(ユアサシステム機器株式会社製面状体無負荷U字伸縮試験機)を用いて行い、低屈折率層が下側になるように装置にセットし、直径2mm幅(曲率半径1mm)、30回/分の速度で折り曲げを実施した。フィルムにクラックが入るまでの折り曲げ回数に応じて、下記基準で評価した。なお、△、〇△、〇および◎が実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
・◎:5万回までクラックが入らなかった(非常に良好)
・〇:3万回以上、5万回未満でクラックが入った(より良好)
・〇△:1万回以上、3万回未満でクラックが入った(良好)
・△:5000回以上、1万回未満でクラックが入った(実用可)
・×:5000回未満でクラックが入った(実用不可)
【0069】
<耐SW性;耐擦傷性>
作製した反射防止フィルムについて、テスター産業株式会社製「学振型摩擦堅牢度試験機」により耐擦傷性を評価した。荷重200gを取り付けた摩擦子(表面積1cm2)にスチールウール#0000を取り付け、低屈折率層の表面(1cm×15cm)を5往復させた。その後、反射防止フィルムのヘイズ値を測定し、下記基準で評価した。なお、△、〇および◎が実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
・◎: ΔHzが1%以下(非常に良好)
・〇: ΔHzが1%超過、2%以下(良好)
・△: ΔHzが2%超過、3%以下(実用可)
・×: ΔHzが3%超過(実用不可)
ここで、「ΔHz=擦傷試験後のヘイズ値-擦傷試験前のヘイズ値」である。
【0070】
<視感反射率の測定>
JIS Z8722に従って、株式会社日立ハイテクサイエンス製「分光光度計U4100」と「5度正反射付属装置」を用いて測定した。フィルムは反射防止層の反対側の面を紙やすりで削った後、黒色インキを塗布して乾燥させることで、裏面からの光の反射ができるだけ影響しないようにして測定した。なお、△、〇および◎が実用上問題ないレベルである。
[評価基準]
◎:0.5%以下(非常に良好)
〇:0.5%超過1.0%以下(良好)
△:1.0%超過1.5%以下(実用可)
×:1.5%超過(実用不可)
【0071】
【要約】
【課題】
繰り返しの折り曲げ試験への耐久性と耐擦傷性試験への耐久性に優れた反射防止フィルム用の低屈折率層形成用塗液を提供すること。
【解決手段】
平均粒子径が150nm以下の中空ポリマー粒子(A)と、フッ素原子を含まず、かつ(メタ)アクリロイル基当量が115以上の(メタ)アクリレート化合物(B)とを含み、前記化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート(b)を含むことを特徴とする、低屈折率層形成用塗液により解決される。
【選択図】なし