(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】内燃機関及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
F02M 33/00 20060101AFI20240207BHJP
F02M 27/02 20060101ALI20240207BHJP
F02B 37/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F02M33/00 C
F02M27/02 V
F02B37/00 302E
(21)【出願番号】P 2021558514
(86)(22)【出願日】2020-03-21
(86)【国際出願番号】 ES2020070199
(87)【国際公開番号】W WO2020193833
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-14
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】521437024
【氏名又は名称】ユニベルシダード ポリテクニカ デ バレンシア
(73)【特許権者】
【識別番号】514325066
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インベスティガシオネス シエンティフィカス(シーエスアイシー)
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】アルナウ マルティネス,フランシスコ ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ベナへス カルボ,ヘスス ビセンテ
(72)【発明者】
【氏名】カタラン マルティネス,ディヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】デサンテス フェルナンデス,ホセ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-クエヴァス ゴンサレス,ルイス ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】セッラ アルファロ,ホセ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】セラーノ クルス,ホセ ラモン
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-195420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0247886(US,A1)
【文献】国際公開第2018/203024(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第19710839(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第108331625(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 33/00
F02M 27/02
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気を酸化剤として吸引し、炭化水素を燃料として用いるタイプの
内燃機関としてのエンジンであって、前記エンジンは:
中間冷却を伴う空気圧縮と、窒素の一部を混合することによって再加熱を伴う窒素膨張とを有する第1の再生ブレイトンサイクルであって、
前記空気圧縮による圧縮空気からO
2を分離するMIEC膜を備え、
吸引されて前記MIEC膜を通った後の大気にはN
2が含まれず、
前記MIEC膜からのO
2
が枯渇した空気が大気に放出され、前記空気圧縮の一部が前記エンジンの少なくとも1つの第1シリンダで実行される、後続の燃焼への関与を防ぐ、第1の再生ブレイトンサイクルと;
中間冷却を伴う圧縮を有する第2のブレイトンサイクルであって、前記第1の
再生ブレイトンサイクルとバイナリ方式で組み合わされ、前記エンジンの少なくとも1つの第2のシリンダで酸素燃焼によって実行されるオットーサイクルとディーゼルサイクルとから選択されたサイクルと入れ子になる、第2のブレイトンサイクルと;を備え、
前記第2のブレイトンサイクルは、
クランクシャフトを介して前記少なくとも1つの第1のシリンダと前記少なくとも1つの第2のシリンダとの結合による機械エネルギーと、排気ガスからの熱エネルギーとを前記第1の
再生ブレイトンサイクルに伝達し;
前記第1の
再生ブレイトンサイクルは、前記MIEC膜から前記第2のブレイトンサイクルに圧縮されたO
2を供給し;
これにより、前記大気中へのNOxの排出を、前記MIEC膜でのN
2の分離によって防止する、内燃機関。
【請求項2】
2つの第1のシリンダを備えることを特徴とする、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
2つの第2のシリンダを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記第1の
再生ブレイトンサイクルによって生成された前記正味の機械エネルギーが、コンプレッサC1を介して前記第2のブレイトンサイクルを過給するために用いられることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のエンジン。
【請求項5】
前記MIEC膜が大気から分離された純粋なO
2を生成することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のエンジン。
【請求項6】
前記MIEC膜がCO
2で希釈されたO
2を生成することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のエンジン。
【請求項7】
前記O
2を希釈する前記CO
2が大気から得られることを特徴とする、請求項6に記載のエンジン。
【請求項8】
前記O
2を希釈する前記CO
2が、前記第2のブレイトンサイクルにおける炭化水素を用いた燃焼によって生成されることを特徴とする、請求項6に記載のエンジン。
【請求項9】
各圧縮ステップの後に常に冷却ステップが存在することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載のエンジン。
【請求項10】
各冷却の前に再生を実行する前記第1
の再生ブレイトンサイクル及び第2のブレイトンサイクルを組み合わせることによって、すべての残留源から熱が回収されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載のエンジン。
【請求項11】
前記第2のブレイトンサイクルによって生成された前記機械エネルギーが、生成された前記CO
2を液化するまで圧縮するために更に使用することを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載のエンジン。
【請求項12】
前記CO
2が少なくとも7.5MPaに圧縮されることを特徴とする、請求項11に記載のエンジン。
【請求項13】
前記第2のブレイトンサイクルはオットーサイクルと入れ子になり、前記エンジンが少なくとも1つの追加のピストン、並びに前記エンジンの導管に蓄積された過剰なCO
2を吸引及び圧縮するために、
前記追加のピストンの入口にある第1のチェックバルブ及び前記追加のピストンの下流にある第2のチェックバルブを備えることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のエンジン。
【請求項14】
前記第2のブレイトンサイクルはディーゼルサイクルと入れ子になり、前記第2のシリンダの排気行程を用いて前記CO
2を圧縮するが、前記圧縮はCO
2の排出及び実質的に純粋なO
2の吸入を可能にする前記第1及び第2のチェックバルブの使用によって行われ、前記O
2はCO
2選択的分離膜の同伴ガスとして用いられることを特徴とする、請求項11または12に記載のエンジン。
【請求項15】
前記実質的に純粋なO
2又は前記CO
2で希釈されたO
2を後続の圧縮の前に更に強く冷却するための真空ブレイトンサイクル(VBC)を更に備えることを特徴とする、請求項5または6に記載のエンジン。
【請求項16】
生成された前記液化CO
2を貯蔵するための第1のタンクを備えることを特徴とする、請求項11~15のいずれかに記載のエンジン。
【請求項17】
前記第1のタンクに貯蔵された前記CO
2は、第2のタンクから前記エンジンの前記第2のシリンダに燃料を送り込むために使用され、第1のタンクと第2のタンクの両方は可撓性膜によって分離された同一のタンク内にあることを特徴とする、請求項16に記載のエンジン。
【請求項18】
前記MIEC膜が、混合酸素イオン-電子キャリア伝導を有する結晶性セラミック材料に基づくことを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載のエンジン。
【請求項19】
前記MIEC膜が、混合酸素イオン-電子キャリア伝導を有する結晶性セラミック材料に基づくことを特徴とする、請求項1~18のいずれかに記載のエンジン。
【請求項20】
前記エンジンは圧縮着火(CI)エンジンであり、ターボアセンブリは、前記第1のシリンダを過給するために使用され、前記MIEC膜の前記O
2生成の調整は、前記エンジンの前記サイクルにおける作動流体の有効圧縮比を調整するために使用されることを特徴とする、
請求項1~12、14~18のいずれかに記載のエンジン。
【請求項21】
請求項1に記載の内燃機関の作動方法であって、前記方法は:
中間冷却を伴う空気圧縮と、窒素の一部を混合することによって再加熱を伴う窒素膨張とを有する第1の再生ブレイトンサイクルであって、
前記空気圧縮による圧縮空気からO
2を分離するステップを備え、
吸引されて前記MIEC膜を通った後の大気にはN
2が含まれず、
前記MIEC膜からのO
2
が枯渇した空気が大気に放出され、後続の燃焼への関与を防ぐ、第1の再生ブレイトンサイクルと;
中間冷却を伴う圧縮を有する第2のブレイトンサイクルであって、前記第1の
再生ブレイトンサイクルとバイナリ方式で組み合わされ、酸素燃焼によって実行されるオットーサイクルとディーゼルサイクルとから選択されたサイクルと入れ子になる、第2のブレイトンサイクルと;を備え、
前記第2のブレイトンサイクルは、機械エネルギーと、排気ガスからの熱エネルギーとを前記第1の
再生ブレイトンサイクルに伝達し;
前記第1の
再生ブレイトンサイクルは、前記分離から前記第2のブレイトンサイクルに圧縮されたO
2を供給し;
これにより、前記大気中への前記NOxの排出は、N
2の分離によって防止される、内燃機関の作動方法。
【請求項22】
前記第1の
再生ブレイトンサイクルによって生成された前記正味の機械エネルギーが、前記第2のブレイトンサイクルを過給するために使用されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の
再生ブレイトンサイクルが大気から分離された純粋なO
2を生成することを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の
再生ブレイトンサイクルがCO
2で希釈されたO
2を生成することを特徴とする、請求項21または22に記載の方法。
【請求項25】
前記O
2を希釈する前記CO
2が大気から得られることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記O
2を希釈する前記CO
2が、前記第2のブレイトンサイクルにおいて炭化水素との燃焼によって生成されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
各圧縮ステップの後に常に冷却ステップが存在することを特徴とする、請求項21~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
各冷却の前に再生を実行する前記第1
の再生ブレイトンサイクル及び第2のブレイトンサイクルを組み合わせることによって、すべての残留源から熱が回収されることを特徴とする、請求項21~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第2のブレイトンサイクルによって生成された前記機械エネルギーが、生成された前記CO
2を液化するまで圧縮するために更に使用されることを特徴とする、請求項21~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記CO
2が少なくとも7.5MPaに圧縮されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のブレイトンサイクルは、前記エンジンの導管に蓄積された過剰なCO
2を吸引及び圧縮するステップを備えることを特徴とする、オットーサイクルと入れ子になる、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記第2のブレイトンサイクルはディーゼルサイクルと入れ子になり、CO
2を圧縮するステップを備え、CO
2の排出及び実質的に純粋なO
2の吸入を可能にし、後者はCO
2選択的分離膜の同伴ガスとして用いられることを特徴とする、請求項29または30に記載のエンジン。
【請求項33】
前記実質的に純粋なO
2、又は前記CO
2で希釈されたO
2を後続の圧縮の前に更に強く冷却するための真空ブレイトンサイクル(VBC)を更に備えることを特徴とする、請求項23または24に記載の方法。
【請求項34】
生成された液化CO
2を貯蔵するステップを備えることを特徴とする、請求項29~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記貯蔵されたCO
2を使用して、燃料を前記エンジンの前記シリンダに圧送することを備えることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の分野、より具体的には、炭化水素を燃焼し、健康に有害なガスを排出しない内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
MIEC膜
混合イオン-電子伝導(MIEC)膜は、膜の両側の間にある酸素の化学ポテンシャル勾配により、結晶構造の特性を介して酸素イオンが一方の側からもう一方の側へ拡散する一種の高密度セラミック膜である。この膜の酸素選択性は100%である。Air Products&Chemicals Inc.によると、この膜は高温(通常、700度から1000度の範囲)で作動し、保持側に高い空気圧(1MPaから2MPa)が供給され、透過側に真空が供給される。この結果、純酸素生成(製造)用のMIEC膜技術のマーケティングに大きな進歩をもたらしてきた。
【0003】
酸素イオンの輸送は、電子又は電子正孔(電子キャリア)の輸送と同時に行われるため、材料は膜の作動条件下で十分な電子伝導性を備えていなければならない。膜を通る酸素輸送の原因となる駆動力は、膜の両側の酸素分圧の差である。それにより、膜を通る酸素の流れは、膜の厚さに加えて、温度及び酸素分圧の差によって決定される。
【0004】
イオン輸送膜の酸素分離プロセスにおけるもう1つの重要なステップは、ガス交換である。前述のように、選択的分離層を通る輸送は、酸素イオンと電子キャリアの拡散で構成される。したがって、以下の2つの表面反応、すなわち、ガス状酸素が吸着され、フィードガス、一般には圧縮空気、に曝される膜の表面で酸素イオンに変換される第1の反応と、酸素イオンが分子状酸素に変換されて脱着される第2の反応が必要である。様々な理由で、これらの輸送ステップは制限的であり、膜を通る透過流の減少をもたらす可能性がある。考えられる様々な理由の中で、以下を強調することができる:(1)選択的分離層の厚さが非常に薄いため、固体を通る拡散はガス交換よりもはるかに高速である。通常、この限界寸法は「特性長」と呼ばれ、拡散係数と、作動条件下での表面ガス交換反応の速度定数と、膜の表面と接触するガスの組成との間の比率である。(2)膜の表面は、酸素活性化反応に対して有意な触媒活性を持っていない。(3)膜の一つ又は複数の表面と接触しているガス状雰囲気は、分子状酸素の吸着/脱着及び反応O2+2e-→O-2による放出を妨げる。産業の観点から関連するプロセスでは、透過ガスとフィードガスとの両方が通常、CO2やSO2などのかなりの量の酸性ガスを出し、その酸性ガスは表面を不動態化又は不活性化し、酸素のガス交換反応に関与する吸着及び反応中心と競い合うため、前述の反応を妨げる。この有害な影響は、プロセスの作動温度が特に850度を下回ると、またSO2とCO2の濃度が高くなると顕著になる。SO2ガスの濃度が5ppmを超えると、膜を通る酸素の透過に深刻な影響をもたらすため、SO2ガスの影響は特にマイナスである。
【0005】
膜の両側の酸素分圧の差は、以下の2つのアクションを介して、すなわち:(a)圧縮ステップを介して空気圧を上げることによって;及び/又は(b)透過ガス中の酸素分圧を下げることによって、達成できる。この酸素分圧を下げることは、真空を適用すること、同伴ガス流によって透過ガス中の酸素を希釈すること、又は同伴チャンバー内で酸素を消費することによって可能である。この後者のオプションは、通常、燃焼炉又はボイラーからの出口ガスを再循環させると同時に、作動温度を上げることから構成される。同様に、第2のオプションに沿って、完全な又は部分的な燃焼生成物を生成しセラミック膜と接触して直接的に熱を放出するために膜を透過する酸素を消費する還元ガス(一般にはメタン又は他の炭化水素)を通すことが可能である。
【0006】
MIEC膜を理解するために、通常、結晶構造、相組成、化学組成、形状、及び緻密層構成に基づく5つの分類基準が使用される。
【0007】
MIEC膜は、その結晶構造を考慮すると、ペロブスカイト、高度なペロブスカイトに由来する膜、及び蛍石に分類できる。ほとんどのMIEC膜は、ペロブスカイト型の結晶構造(ABO3)を有している。ここで、Aは大きなサイズの陽イオンで、Bは小さな陽イオンである。ペロブスカイトは、12個の格子間空間にAイオンが配置されたBO6八面体で構成された結晶格子である。一部のMIECは、An+1BnO3n+1 (n=1,2,3,・・・)の式を持つルドルスデン・ポッパー(R-P)膜など、ペロブスカイトのような結晶構造を有している。この相の結晶構造は、いくつかのペロブスカイトブロック(n)が軸cに沿ってAO層で変更されたBO6八面体と共有されるコーナーを有している、ペロブスカイトの結晶構造に類似している。一部のMIECは蛍石構造を持ち、標準的な例はCeO2をベースにした材料である。
【0008】
膜が1種類の結晶相しかない場合、それらは単相膜である。大部分のペロブスカイト膜は単相膜であり、例えば、La1-xSrxCo1-yFeyO3-δ (0<x<1; 0<y<1)である。膜が2相であり、両方が酸素透過に寄与する場合、それらは2相膜である。例としては、酸素イオンを輸送するための蛍石YSZと、電子を輸送するための金属相Pdを含むYSZ-Pd膜がある。膜に2つ以上の相があり、そのうちの1つだけが酸素透過に寄与する場合、それらは複合材料で作られた膜である。不活性相は、材料のいくつかの特性(例えば機械的強度)を改善するために追加される。例えば、複合材料SrCo0.8Fe0.2O3-δ-SrSnO3は2つのペロブスカイトを含み、SrSnO3相は酸素透過に対して不活性であるが、膜の機械的特性を改善する。
【0009】
ペロブスカイト型の膜の開発当初には、Coをベースにした膜は酸素伝導率が高いため(例えば、Ba0.5Sr0.5Co0.8Fe0.2O3-δ)、結晶位置BのサイトにCoを組み込んだものに焦点を当てた研究が行われた。それにもかかわらず、コバルト陽イオンは、Co-O結合が弱いために、より低い原子価状態に容易に還元され、還元環境では不安定になる。したがって、Coのないペロブスカイトが開発されてきた。例えば、BaCe0.05Fe0.95O3-δは、Coをベースとしたそれぞれのペロブスカイトと比較して低い酸素伝導率を示すが、高温のH2中でも高い安定性を示す。
【0010】
最も一般的な形状は、平面、管状、中空糸の膜である。最後に、高密度層の構成を考慮すると、膜が膜の完全性を支持するのに十分な厚さを示す単一の膜層で構成されている場合、それらは自己支持型膜である。高密度膜層が多孔質層を示す場合、膜の完全性が多孔質層によって支持されるため、より薄い厚さを使用することができ、それらは非対称膜である。
【0011】
実用上、イオン輸送を介して高温で酸素を分離するための膜は、一般に以下の成分で形成される:
i.一般に、分離層が作られるのと同じ材料、或いは分離層と互換性のある(セラミック又は金属)材料のいずれかで作られた多孔質支持体。互換性があるということは、温度に応じて同様の膨張プロファイルを持ち、高温で両方の相の間で、一般に膜の劣化や破損が発生する結果となる第3相が生じるような反応が起こらないことを意味する。支持体の多孔度は通常20%から60%で構成され、その厚さは可変で、通常2mm未満である。
【0012】
ii.非多孔質の層又はフィルムで、好ましくは150μm未満の厚さのものは、多孔質の支持体上に位置決めされる。この層は酸化物又は酸化物の混合物で構成され、酸素イオンと電子キャリアを同時に輸送することができる。
【0013】
iii.イオン伝導性と電子伝導性を併せ持つ材料でできた、好ましくは100μmと10μmとの間の厚さの多孔質層であり、同時に、酸素の吸着/脱着及びその解離とイオン化のための触媒活性が非多孔質層に付着している。この触媒層は、ガス状酸素を取り込んで除去するプロセスを改善することを可能にする。
【0014】
場合によっては、特に多孔質支持体が触媒活性を示さないか、又は酸素イオン若しくは電子キャリアの輸送を可能にしないときには、多孔質支持体と非多孔質分離層との間に、ガス交換ステップを改善する機能を有する追加の多孔質触媒層が存在する。一般に、多孔質支持体の比表面積は通常大きいが、多孔質支持体及び追加の多孔質触媒層の特性はかなり類似している。
【0015】
必要に応じて、別の追加の非多孔質層(v)も必要になる場合がある。この層は、非多孔質層と多孔質層との間に位置決めされ、層(iii)、又は多孔質層と接触するガスと接触して起こりうる相互作用又は劣化反応に対する分離層の保護として機能する。この追加の層は、酸素イオン及び酸素キャリアの輸送を可能にすると同時に、隣接する層及び接触しているガスと熱的及び化学的に互換性がなければならない。
【0016】
酸素燃焼
酸素燃焼は、従来の燃焼プロセスで行われているように、酸化剤として高純度のO2の流れを空気の代わりに使用することで構成され、それによってより低い燃料消費量でより高い火炎温度に到達し、燃焼を改善する。酸素に富む酸化剤を使用することで、CO2と水蒸気とを主成分とする組成の燃焼ガスを得ることができる。酸素燃焼プロセスの出口ガス中の高濃度のCO2は、その潜在的な分離を可能とする(例えば、文書US20070175411A1、US20070175411A1、US9702300B2、CN102297025Aを参照のこと)。
【0017】
シリコーン又はポリスルホンをベースとした酸素膜は、空気を濃縮するために適用することもでき、21%の酸素濃度をより高い値、通常は24%以上に上げることができる。
【0018】
酸素燃焼は、CO2を回収するための最も費用対効果の高い技術の一つを目指しているが、その主な欠点は、O2の需要が高く、その取得に伴うコストがかかることである。この技術の大きな課題は、必要な大量の供給を成功させるためのO2の生成にある。
【0019】
膜反応器では、以下の目的、すなわち:試薬の選択的抽出、触媒の保持、試薬の投与、触媒の支持;のために膜が導入される。これはすべて、熱力学的平衡によって制限されたシステムでの反応効率の向上を必要とし、二次反応の防止、触媒を不活性化する可能性のある化合物からの触媒の保護などを行う。
【0020】
CO
2
膜
現在、CO2の選択的通過を可能にする多種多様な材料がある。これらの材料は、高度なポリマーから様々なタイプの無機材料にまで及ぶ。この区別化にもかかわらず、いわゆる混合マトリックス膜にはこれらの材料の組み合わせがあり、一般にポリマーマトリックスとマトリックス内に分散した無機粒子とで構成される。このタイプの技術は、CO2の回収に柔軟性を提供し、燃焼の前後に作用することを可能にする。ただし、このタイプの材料は一般に、N2、O2、H2など、より多くのガスを透過するこの適用では、主な透過がCO2に関連している必要があり、更に、O2とN2の透過率は無視してよい。CO2を残りのガスから分離するための様々な技術がある:
【0021】
ポリマー膜によるCO
2
分離技術
ガス流からCO2を選択的に分離できる様々なポリマーがある。CO2の回収のためのポリマーの適用は、ポリマーの低コスト並びに合成及び処理の容易さのために経済的観点から魅力的であるが、化学的、機械的、及び熱的安定性のために、並びに低い透過性のために一般に限られた材料となる。CO2/N2の相互選択性については、標準の上限である50が設定されている。一般に、このタイプの材料は、低温及び中圧(1barから5bar)で機能する。
【0022】
利用可能な様々なポリマーの中で、以下の点を強調する必要がある:(i)420バーラーの透過性と35度で18のCO2/CH4に対する選択性(selectivity)を備えた架橋ポリエチレン酸化物(XLPEO)(barrer=10-10 cm3(STP)・cm/(cm2・s・cmHg))、(ii)Pebaxなどのポリアミドをベースにしたポリマーで、132バーラー及び約6度から25度及び3気圧のCO2/N2選択性を有する。(iii)41GPUから104GPUの透過性を備えたポリアミド(PVAm)をベースとしたポリマーで、CO2とN2の湿潤混合物を使用した25度及び2気圧で100から197の範囲のCO2/N2選択性を備える(GPU=10-6 cm3(STP)/(cm2・s・cmHg))。とりわけ、PolarisTM及びPolyactiveの製品は、この技術の商業的な例である。
【0023】
空気中のCO2濃度は約0.035%、N2濃度は約78%であるため、空気からCO2を分離するには高い選択性が必要であることに注意する必要がある。
【0024】
b. 無機膜によるCO
2
分離技術
溶融炭酸塩をベースにした膜を個別に考えると、ガス流からCO2を分離するための無機材料をベースとした膜のグループには、(Pdをベースとした)金属膜、シリカをベースにした膜、炭素膜、及びゼオライトをベースにした膜が含まれる。
【0025】
金属膜は、パラジウムとその合金をベースにしている。これらの材料は高いH2の透過性を示す。したがって、それらは基本的に予燃焼システムでH2を分離するために使用される。このタイプの膜は、予燃焼時にCO2を回収するシステムの成熟した技術である。ただし、これらの材料の安定性は、産業システムに実装するために改善しなければならない。
【0026】
CO2の分離には、多孔質無機膜(シリカ、ゼオライト、有機金属フレームワーク(MOF)、炭素膜をベースにした膜)を適用できる。
【0027】
ゼオライトは、均質な多孔質構造と最小チャネル(通路)直径を特徴とするアルミノケイ酸塩である。これらの材料の分離は、表面拡散又はモレキュラーシーブ(分子ふるい操作)によって行われる。3つの分離形態が区別される:(i)分子の吸着力は似ているがサイズが異なる場合であって、サイズの小さい分子の方が透過しやすい場合;(ii)分子が異なる吸着力で同様のサイズを持ち、膜がより高い吸着力を持つ分子に対して選択的である場合;(iii)分子の吸着力とサイズの両方が異なる場合であって、メカニズムは、吸着力間の競争力と拡散係数との間の組み合わせである場合;これにより、CO2/N2、及び/又はCO2/CH4の選択性は、第3の形態でガスを分離することによって低温で、又は第1の形態によって高温で最大化できる。ゼオライトの中では、9.5Kから303K(-263.65度から29.85度)のCO2/N2選択性、3・10-7 mol/(m2・s・Pa)のCO2透過性を有するZSM-5と、4・10-7 mol/(m2・s・Pa)のCO2透過性、303K(29.85度)でのCO2/N2とCO2/CH4の選択性が、それぞれ100と21を有するY型ゼオライトとを強調する必要がある。
【0028】
シリカをベースにした膜は、様々な雰囲気及び条件での化学的、熱的、及び機械的安定性が高いため、CO2/N2とH2/CO2とを分離する大きな可能性を有している。このタイプの膜の挙動は、他の要因の中でもとりわけ、その合成方法によって高度に調整される。シリカのタイプ、合成方法、条件にもよるが、透過性は3・10-10 から 5・10-7 mol/(m2・s・Pa)の範囲であり、選択性はCO2/N2では60、CO2/CH4では325、CO2/H2では670に達する。
【0029】
高炭素含有量のアモルファスミクロポーラス材料で構成された炭素膜は、その耐熱性、腐食環境での化学的安定性、高いガス透過性、及びポリマー膜と比較して優れた選択性により、ガス分離用途の有望な材料として浮上している。CO2の分離を考慮すると、これらの材料は、CO2透過性が2000バーラーから10000バーラーを有するCO2/CH4に対して100の選択性に達し、CO2透過性が5バーラーを有するCO2/N2に対して10の選択性に達する。
【0030】
c. 溶融炭酸塩をベースにした膜によるCO
2
分離技術
イオン性(酸素)―電子伝導性セラミックと同様の材料を使用して、CO2の選択的通過を可能にする溶融炭酸塩をベースにした材料が開発されてきた。ただし、このタイプの膜は、これまでに発表された様々な論文で観察されたCO2の流量が少ないため、まだ工業用途にはほど遠い。
【0031】
レシプロ内燃機関
レシプロ内燃機関は、大型輸送と乗客輸送の両方の陸上及び海上の車両にとって最も重要な技術である。それらの設計と補助機械(ターボ機械、燃料噴射システム、追加のポンプと熱交換器)の両方が、過去1世紀に、いくつかのタイプの燃料用に大幅に最適化されてきた。4ストロークレシプロエンジンは、比出力が高く、汚染ガスやアコースティックエミッションに関する様々な規制に準拠する能力があり、平均比消費量が少ないため、陸上輸送をリードしている。
【0032】
それにもかかわらず、CO2排出量を制限する必要性、更には大気中のCO2を除去する必要性、及び過密な都市環境での大気質を改善する必要性は、燃焼及び燃焼負荷更新の最新コンセプトを有するこれらのエンジンの技術的限界に圧力をかけている。
【0033】
エンジンの酸素燃焼
酸素燃焼システムを車両用エンジンに統合すると、前述の利点(効率の向上と排出量の減少)が拡大するが、スペースが車両の寸法に制限されるため、酸素の生成方法が複雑になる。酸化剤として酸素を使用するエンジンを考慮して、いくつかの代替案が提案されている:
(i)車両に酸素の貯蔵。このシステムは、車外で酸素を生成するという問題を提起しているため、車内には酸素貯蔵システム用のスペースがあれば十分である。いくつかの研究は、スペースを減らすために車両に液体の形で酸素を貯蔵することを提案している(とりわけ、文書CN201835947U及びDE3625451A1を参照のこと)。しかし、これは、酸素及び酸素を液相に保つために低温を必要とする貯蔵システムのコストを増加させるであろう。他の研究では、圧縮酸素を車内のタンクに貯蔵するというアイデアが提案されている(文書US3425402)。それにもかかわらず、このタイプの解決策では、他の場所で酸素を生成する必要がある。そのため、貯蔵システム(液相と気相との両方)の費用に加えて、酸素の稼働費を考慮する必要がある。これらすべての追加コストを考慮すると、事前のこの代替案は実行可能ではなく、酸素の生成と貯蔵に関する現在の技術の改善が必要になるだろう。
【0034】
(ii)空気と関連して代替源から酸素の生成。文書US3709203は、アルカリ金属過塩素酸塩の熱分解から酸素を生成することを説明している: 文書US3961609Aによると、酸素は水の電気分解によって生成される:及び、文書US2775961Aによると、酸素は過酸化水素から生成される。ただし、これらのシステムには高い酸素需要が必要なため、これらの解決策を車両のエンジンに統合することは、現在の技術に関して実行可能で競争力があるとは考えられない。
【0035】
(iii)空気から酸素の生成:
フィルタリングシステム(文書US3961609A)又はPSA吸着(文書WO2005083243)の導入。このタイプの解決策には、酸素需要を満たすために非常に大規模なシステムが必要になるという欠点がある。
【0036】
シリコーン又はポリスルホンをベースとした膜の使用(文書US20030024513A1、US5636619A、US5678526、US5636619、US2006/0042466A1、CN101526035A)。しかしながら、このタイプのシステムは、純粋な酸素を生成するためよりも空気中の酸素を濃縮するために提案されており、その結果、プロセスに許容できる程度の純度を達成するために必要な膜面積は(大きすぎて)、プロセスを実行不可能にするだろう。
【0037】
セラミック導体をベースにした膜の使用。(c1)セラミック酸素イオン伝導性電解質による電気化学セルの使用(文書US20090139497A1)。それにもかかわらず、このシステムは電気エネルギーの需要を必要とし、それは必然的にエンジンから取り出されなければならず、それによってシステム効率が低下する。(c2)酸素が空気流から選択的に分離される混合酸素イオン電子伝導膜の使用(文書US20130247886A1)。このプロセスでは、温度を約700度から1000度に保つために大量の熱が必要である。そのために、このシステムはエンジン出口ガスからの熱を使用する。
【発明の概要】
【0038】
本発明の目的は、上記の最新技術に関して利点をもたらす内燃機関を提供することである。より具体的には、本発明は、添付の請求項1に定義される内燃機関を開示し、それが大気へのNOxの排出を減少させるか、又は防止さえするので、汚染を減少する。
【0039】
従属請求項は、先行技術に関して追加の利点を提供する本発明のエンジンの追加の実施の形態を開示する。
【0040】
より具体的には、その最も広い態様において、本発明は、大気を酸化剤として吸引し、炭化水素を燃料として使用するタイプの内燃機関を開示し、以下:
中間冷却を伴う空気圧縮と、窒素の一部を混合することによって再加熱を伴う窒素膨張とを有する第1の再生ブレイトンサイクルであって、吸引した空気流がN2を含まないように、O2を圧縮空気から分離するMIEC膜を備え、MIEC膜から除外された、(O2が)枯渇した空気(膜に受け入れられなかった、膜を透過した酸素が不足している残った空気)は、排気ガス流に直接送られ、空気圧縮の一部がエンジンの少なくとも1つの第1のシリンダで行われる後続の燃焼への関与を防ぐ、第1の再生ブレイトンサイクルと;
中間冷却を伴う圧縮を有する第2のブレイトンサイクルであって、第1のブレイトンサイクルとバイナリ方式で組み合わされ(同じものに熱を伝達する)、エンジンの少なくとも1つの第2のシリンダでの酸素燃焼によって実行されるオットーサイクルとディーゼルサイクルとから選択されたサイクルと入れ子になる(合成される)、第2のブレイトンサイクルと;を備える。
【0041】
ここで、第2のブレイトンサイクルは、クランクシャフトを介して、少なくとも1つの第1のシリンダと少なくとも1つの第2のシリンダとを結合することによって機械エネルギーを伝達し、排気ガスから第1のブレイトンサイクルに熱エネルギーを伝達する。
【0042】
ここで、第1のブレイトンサイクルは、MIEC膜から第2のブレイトンサイクルへ圧縮されたO2を供給する。
【0043】
これにより、大気中へのNOxの排出は、MIEC膜でのN2の分離によって防止される。
【0044】
当業者が容易に理解するように、本明細書でエンジンが「第1のブレイトンサイクルを備える」、及び同様の表現で言及される場合、エンジンが「第1のブレイトンサイクルを実行するために必要な手段を備える」ことを意味すると解釈されなければならない。そのような場合、本発明は、手段の特定の組み合わせに限定されることを意図せず、前述のブレイトンサイクル(又は同様のもの)を実行するのに適した任意の手段が本発明によってカバーされることを理解されなければならない。
【0045】
別の態様によると、本発明は、大気を酸化剤として吸引し、炭化水素を燃料として使用するタイプの内燃機関の作動方法も開示し、この方法は、以下:
中間冷却を伴う空気圧縮と、窒素の一部を混合することによって再加熱を伴う窒素膨張と、を有する第1の再生ブレイトンサイクルであって、O2を圧縮空気から分離するステップを備え、吸引した空気流がN2を含まないように、分離から除外された、(O2が)枯渇した空気は、排気ガス流へ直接送られ、後続の燃焼への関与を防ぐ、第1の再生ブレイトンサイクルと;
中間冷却を伴う圧縮を有する第2のブレイトンサイクルであって、第1のブレイトンサイクルとバイナリ方式で組み合わされ(熱を同じものに伝達する)、酸素燃焼によって実行されるオットーサイクルとディーゼルサイクルとから選択されたサイクルと入れ子になる、第2のブレイトンサイクルと;を備える。
【0046】
ここで、第2のブレイトンサイクルは、機械エネルギーと、排気ガスからの熱エネルギーを第1のブレイトンサイクルへ伝達する。
【0047】
ここで、第1のブレイトンサイクルは、分離から圧縮されたO2を第2のブレイトンサイクルへ供給する。
【0048】
これにより、大気中へのNOxの排出は、N2の分離によって防止される。
【0049】
以下でより詳細に説明するように、本発明は、混合酸素イオン-電子伝導性セラミック材料をベースにした膜を統合し、その結果、O2を主な残留熱源(シリンダの出口の排気ガスなど)から分離するためにMIEC膜に必要なすべてのエネルギーが回収され、酸素燃焼によって生じる温度の上昇は、熱を無駄にすることなく膜に必要な温度を供給するために利用される。本発明は、適切な圧力条件を達成するために、レシプロエンジンにおけるシリンダの高い圧縮能力(25MPaまで)を利用することも意図している。本発明による好ましい実施の形態の少なくともいくつかで提供される以下のプロセスには、高圧が必要である:膜のO2生産性を最大化するために、空気とO2との間の分圧の差を最大化する:大気中のCO2の空気からの分離を最大化する; 最後に、CO2を液化するまで圧縮する(臨界圧力7.5MPaを超える)。
【0050】
エンジン過給システムのターボ機械は、低い圧縮比(海面での最大圧力は0.6MPa未満)のため、空気を分離する前に圧縮するプロセスのためには、又は(文書US20130247886A1とは異なり)CO2の高密度化のためには、本発明では、使用されない。0.6MPaを超える圧力用のターボアセンブリのターボチャージャの開発はなく、この圧力値の付近では非常に非効率的である。
【0051】
また、等温圧縮プロセスと比較して等エントロピー及び不可逆圧縮プロセスの効率がはるかに低いため、ターボチャージャの空気圧縮に関連付けられた温度も利用されない(文書US20130247886A1とも異なる)。しかし、本発明において、圧縮空気は、プロセスが可能な限り最も等温である(したがって最も効率的である)ために、次の圧縮ステップに進む前に常に冷却される。この冷却は、水を使用して給気を冷却する(一般にWCAC)熱交換器を使用するか、熱を圧力に変換する真空ブレイトンサイクル(VBC)を使用して行われる。VBCとWCACはどちらも、流体から熱を取り除き、次の圧縮の前に環境に熱を伝達する。これは、一見エネルギー消費のように見えるが、実際には、次の圧縮ステップの投資となる。そのことは、空気圧縮プロセスは4ストロークで行われるので空気がシリンダ内に長時間留まり、その滞留時間がエンジンの冷却液に対することで空気の冷却に寄与するならば、4ストロークエンジンシリンダで可能な限り最高の機械的圧縮比を得ようとさえする。この高圧での空気の冷却により、プロセスは等温に近くなり、また、より効率的になる。エンジンの4ストロークのこの革新的な使用法は、このようなシリンダでの燃焼が行われたことはないので、本文書で初めて説明される。
【0052】
すべてのプロセスで最大のエネルギー効率を追求する最後の理由は、以下の特性の少なくとも1つを示す酸素燃焼エンジン/ドライブアセンブリを実現することである:それは、汚染ガスを全く排出しない又はほとんどの汚染ガスを排出しない。燃焼で生成されたCO2を閉じ込め、大気中のCO2の全部又は一部を環境から除去する。コンパクトで軽量なので、自己輸送が可能である。そして最後に、それは燃料消費の点で現在の内燃機関と競争力がある。
【0053】
この後者の目的を達成するために、本発明は、その好ましい実施の形態の1つにおいて、エンジンの給気を調整するための完全に新規なシステムを説明する。このシステムは、均一に混合された酸素燃焼を有する火花点火(SI)エンジンにおいて、エンジンの給気を調整するためのフロースロットルバタフライバルブを回避する。これは、(文書US20130247886A1で提案されているように)燃焼シリンダを過給するためではなく、膜の前で空気を圧縮するシリンダを過給するためにターボアセンブリを使用することによって行われ、MIECからのO2生成の調整を使用して給気を調整する。スロットルの使用を回避することで、給気の調整中に予混合燃焼を行うSIエンジンのポンプ損失がなくなる。ポンプ損失は、このエンジンの主な非効率の点である。予混合燃焼を有するSIエンジンで酸素燃焼が回避する第2の非効率の点は、排気ガス温度を制御するための混合気の濃縮(理論空燃比を超える:l<1)である。この温度制御は、本発明において、燃料を使用する代わりに、O2と燃料との混合気を、MIECにおいてO2側をスイープするために使用される純粋なCO2で希釈することによって実行される。ターボアセンブリとMIECとの提案された配置により、O2生成速度の制御とCO2による希釈速度の制御との両方を独立して実行できる。このターボ機械と膜との配置により、圧力の制御は、調整弁内の圧力の非効率的な積層ではなく、タービン内の流れを拡大することによって実行されるため、これまで最先端で説明されてきたものよりも効率的に両方の制御を実行できる(これは、例えば文書US20130247886A1で提案されているものである)。
【0054】
更に、その好ましい実施の形態の1つにおいて、本発明は、レシプロエンジンの燃焼サイクル中に液体CO2を使用することを提案する。これにより、超臨界エンジン(燃料を、その温度と圧力で臨界境界点を超えて超臨界状態で使用するエンジン)サイクルでCO2を液化するために必要なエネルギーの大部分を、O2サイクルと同時に且つ共役に作用するこの流体で回収することができる。両方のサイクルは、基本的に熱状態を増加させるプロセスと流体を膨張させるプロセスのいくつかのプロセスを共有している。この場合に説明された超臨界CO2サイクルも、そのプロセスのいくつかを共有する共役O2サイクルも、本発明以前の情報源によって説明されてこなかった。
【0055】
CO2の液化の間、その後にCO2を保管して関連する処理センターに移動するために、CO2から分離する必要のある一定の割合(移動する物質の総質量の約2%)の液体水が生成される。本発明と文書US20130247886A1との間の更なる違いは、高圧下で分離された水からのエネルギーが、タービンの1つにおいて蒸気状態で利用及び膨張されることである。この使用には、一方では液体の噴出ではなく蒸気の形で水を放出するという利点があり、他方ではエネルギー消費を減らしてO2を分離するために膜内の必要な空気圧を達成するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明は、例として提供されるその好ましい実施の形態を示す以下の図面を参照してよりよく理解され、いかなる方法でも本発明を限定するものとして解釈されるべきではない:
【
図1】
図1は、本発明の第1の好ましい実施の形態による、予混合酸素燃焼エンジンの図を示し、均質で理論混合気、高比出力、高効率を有し、空気からO
2を分離するためのMIECを備え、健康に有害なガスを排出しないが、プラスの正味CO
2排出量を伴う。
【
図2a】
図2aは、本発明の第2の好ましい実施の形態による、予混合酸素燃焼エンジンの図を示し、均質で理論混合気、高比出力、高効率を有し、健康に有害なガスを排出せず、空気からO
2を分離するためのMIECを備え、CO
2を分離するためのポリマー膜、及びマイナスの正味CO
2排出量を伴う。
【
図2b】
図2bは、
図2aに示したエンジンの代替案による、予混合酸素燃焼エンジンの図を示し、均質で理論混合気、高比出力、高効率を有し、健康に有害なガスを排出せず、空気からO
2を分離するためのMIECを備え、空気からCO
2を分離するための溶融炭酸塩をベースとした膜を備え、及びマイナスの正味CO
2排出量を伴う。
【
図3】
図3は、本発明の第3の好ましい実施の形態による、拡散酸素燃焼エンジンの図を示し、層状且つ希薄混合気、高比出力、高効率を有し、空気からO
2を分離するためのMIECを備え、健康に有害なガスを排出しないが、プラスの正味CO
2排出量を伴う。
【
図4a】
図4aは、本発明の第4の好ましい実施の形態による、拡散酸素燃焼エンジンの図を示し、層状且つ希薄混合気、高比出力、高効率を有し、健康に有害なガスを排出せず、 空気からO
2を分離するためのMIECを備え、空気からCO
2を分離するためのポリマー膜を備え、及びマイナスの正味CO
2排出量を伴う。
【
図4b】
図4bは、
図4aのエンジンの代替による、拡散酸素燃焼エンジンの図を示し、層状且つ希薄混合気、高比出力、高効率を有し、健康に有害なガスを排出せず、 空気からO
2を分離するためのMIEC、及び空気からCO
2を分離するための溶融炭酸塩をベースとした膜を備え、及びマイナスの正味CO
2排出量を伴う。
【
図5a】
図5aは、真空ブレイトンサイクル(VBC)の図を示す。
【
図5b】
図5bは、特定の状況に対して理想化及び計算された真空ブレイトンサイクル(VBC)のT-s図を示す。
【
図6】
図6は、
図4a及び4bの実施の形態4に対応するO
2ディーゼルサイクルと入れ子になる超臨界O
2サイクルを示す。
【
図7】
図7は、
図4a及び
図4bの実施の形態4に対応する中間冷却を伴うブレイトン圧縮サイクルと入れ子になるO
2ディーゼルサイクルを示す。
【
図8】
図8は、異なる給気の程度及びEGR率に基づく、すなわち、
図1の実施の形態によるエンジンの燃焼温度の調整のグラフを示す。
【
図9】
図9は、異なる給気の程度、すなわち、
図1の実施の形態によるエンジンの燃焼温度の調整中のMIECの効率のグラフを示す。
【
図10】
図10は、
図1の実施の形態による、エンジンの全給気時及び部分給気時の有効トルクのグラフを示す。
【
図11】
図11は、
図1の実施の形態による、エンジンの全給気時及び部分給気時の比消費量のグラフを示す。
【
図12】
図12は、
図1の実施の形態による、エンジンの全給気時及び部分給気時の有効出力のグラフを示す。
【
図13】
図13は、
図1の実施の形態による、エンジンの燃焼シリンダ内のサイクルの結果のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
上記のように、本発明は、酸化剤として大気を吸引し、燃料として炭化水素を使用するタイプの内燃機関を開示し、以下を備える:
中間冷却を伴う空気圧縮と、窒素の一部を混合することによる再加熱を伴う窒素膨張と、を有する第1の再生ブレイトンサイクルであって、圧縮空気からO2を分離するMIEC膜(6)を備え、吸引された空気流にN2が含まれず、MIEC膜(6)から除外された、(O2が)枯渇した空気が排気ガス流に直接送られ、空気の圧縮の一部がエンジンの少なくとも1つの第1のシリンダ(4)、好ましくは2つの第1のシリンダ(4)で実行される、後続の燃焼への関与を防ぐ。
【0058】
中間冷却を伴う圧縮を有する第2のブレイトンサイクルであって、第1のブレイトンサイクルとバイナリ方式で組み合わされ、エンジンの、少なくとも1つの第2のシリンダ(14)、好ましくは2つの第2のシリンダ(14)で酸素燃焼によって実行されるオットーサイクルとディーゼルサイクルとから選択されたサイクルと入れ子になる。
【0059】
ここで、第2のブレイトンサイクルは、クランクシャフト(25)を介して少なくとも1つの第1のシリンダ(4)と少なくとも1つの第2のシリンダ(14)との結合による機械エネルギーと排気ガスからの熱エネルギーとを第1のブレイトンサイクルに伝達する。
【0060】
ここで、第1のブレイトンサイクルは、MIEC膜(6)から第2のブレイトンサイクルに圧縮されたO2を供給する。
【0061】
これにより、大気中へのNOxの排出は、MIEC膜(6)でのN2の分離によって防止される。
【0062】
好ましい実施の形態によると、第1のブレイトンサイクルによって生成された正味の機械エネルギーは、コンプレッサC1(10)を介して第2のブレイトンサイクルを過給するために使用される。
【0063】
別の好ましい実施の形態によると、MIEC膜(6)は、大気から分離された純粋なO2を生成する。「純粋な」という用語(例えば、「純粋なO2」のようにガス流に適用される)は、本明細書においては厳密な限定的な意味で解釈されてはならない。例えば、この場合、生成されたO2の流れは100%純粋ではない可能性があるが、むしろCO2などの少量も含まれている可能性もある。しかし、この純粋なO2(又は実質的に純粋なO2)流はN2から分離されており、その結果、後続の酸素燃焼におけるNOxの生成が防止され、更にはNOxの大気への排出が防止される。
【0064】
別の好ましい実施の形態によると、MIEC膜(6)は、CO2で希釈されたO2を生成する。この場合、O2を希釈するCO2は、大気から取得するか、第2のブレイトンサイクルで炭化水素と燃焼させることによって生成することができる。
【0065】
別の好ましい実施の形態によると、各圧縮ステップの後に常に冷却ステップが存在する。
【0066】
別の好ましい実施の形態によると、熱は、各冷却の前に再生を実行する第1及び第2のブレイトンサイクルを組み合わせることによって、すべての残留源から回収される。
【0067】
別の好ましい実施の形態によると、第2のブレイトンサイクルによって生成された機械エネルギーは、生成されたCO2を液化するまで圧縮するために更に使用される。そのCO2は、例えば、少なくとも7.5MPaに圧縮することができる。更に、第2のブレイトンサイクルはオットーサイクルと入れ子になることができ、エンジンは少なくとも1つの追加のピストン(22)並びにエンジンの導管に蓄積された過剰なCO2を吸引及び圧縮するチェックバルブ(入口の第1のチェックバルブ(33)及び下流の第2のチェックバルブ(19))を備える。
【0068】
この最後の好ましい実施の形態の別の代替案によると、第2のブレイトンサイクルはディーゼルサイクルと入れ子になり、第2のシリンダ(14)の排気行程は、CO2の排出と実質的に純粋なO2の吸入とを可能にする第1及び第2のチェックバルブ(33、19)の使用によってCO2を圧縮するために使用される。この実質的に純粋なO2は、CO2選択的分離膜の同伴ガスとして使用される。
【0069】
別の好ましい実施の形態によると、エンジンは、後続の圧縮の前に、実質的に純粋なO2、又はCO2で希釈されたO2をより強く冷却するための真空ブレイトンサイクル(VBC)を更に備える。
【0070】
別の好ましい実施の形態によると、エンジンは、生成された液化CO2を貯蔵するための第1のタンク(20)を備える。第1のタンク(20)に貯蔵されたCO2は、第2のタンク(27)からエンジンの第2のシリンダ(14)に燃料を圧送するために使用でき、第1及び第2のタンク(20、27)の両方が1つで、且つフレキシブル膜で分離された同じタンク(今日の圧縮着火エンジンの最も普及しているタイプであるコモンレールタイプの噴射システムで使用されている低圧ポンプに代わるもの)及び/又は外部CO2ロジスティクスネットワークのポンプに移動することができる。
【0071】
別の好ましい実施の形態によると、MIEC膜(6)は、混合酸素イオン-電子キャリア伝導を有する結晶性セラミック材料をベースにしている。
【0072】
エンジンが火花点火(SI)エンジンである別の好ましい実施の形態によると、ターボアセンブリは、第1のシリンダ(4)を過給するために使用され、MIEC膜(6)のO2生成の調整は、エンジン給気を調整するために使用される。
【0073】
エンジンが圧縮着火(CI)エンジンである別の好ましい実施の形態によると、ターボアセンブリは、第1のシリンダ(4)を過給するために使用され、MIEC膜(6)のO2生成の調整は、エンジンのサイクルにおける作動流体(混合気)の有効圧縮比を調整するために使用される。
【0074】
別の態様では、本発明は、大気を酸化剤として吸引し、炭化水素を燃料として使用するタイプの内燃機関の作動方法を開示する。この方法は、以下を含む:
中間冷却を伴う空気圧縮と、窒素の一部を混合することによる再加熱を伴う窒素膨張と、を有する第1の再生ブレイトンサイクルは、吸引した気流がN2を含まないように、圧縮空気からO2を分離するステップを備え、分離から除外された、(O2が)枯渇した空気は排気ガス流に直接送られて、後続の燃焼への関与を防ぐ。
【0075】
中間冷却を伴う圧縮を有する第2のブレイトンサイクルは、第1のブレイトンサイクルとバイナリ方式で組み合わされ、酸素燃焼によって実行されるオットーサイクルとディーゼルサイクルとから選択されたサイクルと入れ子になる。
【0076】
ここで、第2のブレイトンサイクルは、機械エネルギー及び熱エネルギーを排気ガスから第1のブレイトンサイクルに伝達する。
【0077】
ここで、第1のブレイトンサイクルは、分離から第2のブレイトンサイクルまでの圧縮されたO2を供給する。
【0078】
これにより、大気中へのNOxの排出は、N2の分離によって防止される。
【0079】
この方法の好ましい実施の形態によると、第1のブレイトンサイクルによって生成された正味の機械エネルギーは、第2のブレイトンサイクルを過給するために使用される。
【0080】
この方法の好ましい実施の形態によると、第1のブレイトンサイクルは、大気から分離された純粋なO2を生成する。或いは、第1のブレイトンサイクルではCO2で希釈されたO2が生成される。この場合、O2が希釈されるCO2は、大気から取得することも、第2のブレイトンサイクルで炭化水素と燃焼させることによって生成することもできる。
【0081】
この方法の好ましい実施の形態によると、各圧縮ステップの後に常に冷却ステップが存在する。
【0082】
この方法の好ましい実施の形態によると、熱は、各冷却の前に再生を実行する第1及び第2のブレイトンサイクルを組み合わせることによって、すべての残留源から回収される。
【0083】
この方法の好ましい実施の形態によると、第2のブレイトンサイクルによって生成された機械エネルギーは、生成されたCO2を液化するまで圧縮するために更に使用される。例えば、CO2は少なくとも7.5MPaに圧縮することができる。更に、第2のブレイトンサイクルはオットーサイクルと入れ子になることができ、この方法は、エンジンの導管に蓄積された過剰なCO2を吸引及び圧縮するステップを備える。
【0084】
別の代替案によると、第2のブレイトンサイクルはディーゼルサイクルと入れ子になり、この方法は、CO2を圧縮するステップを備え、CO2の排出及び実質的に純粋なO2の吸入を可能にし、後者はCO2選択的分離膜の同伴ガスとして使用される。
【0085】
好ましい実施の形態によると、この方法は、後続の圧縮の前に、実質的に純粋なO2、又はCO2で希釈されたO2をより強く冷却するための真空ブレイトンサイクル(VBC)を更に備える。
【0086】
好ましい実施の形態によると、この方法は、生成された液化CO2を貯蔵するステップを備える。液化CO2は、燃料をエンジンのシリンダに圧送するために使用することができ、及び/又は外部CO2ロジスティクスネットワークのポンプに移動することができる。
【0087】
本発明によって開示される教示を更に説明し、限定しないために、添付図を参照して、本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明を以下に提供する。
【0088】
実施の形態1:ガス排出を汚染せず、CO
2
の回収を伴わない、予混合気を有する火花点火(SI)エンジン
実施の形態1は、CO2を回収しない(均質な)予混合気を有する火花点火(SI)エンジンについて示す。実施の形態1は、正味の機械動力を生成するための、亜音速で、混合気の自己着火を伴わないデフラグレーション燃焼(爆燃)のプロセスに基づく。
【0089】
エンジンの給気の程度(最大トルクのパーセンテージ)は、MIEC膜(6)のO2生成速度によって制御される。これにより、空気流を絞るためにバタフライバルブを絞る必要がなくなるため、ポンピング損失が減少する。
【0090】
燃焼温度は、酸化剤(O2)と燃料(HxCyOz)との混合気を実際の燃焼と予冷からのCO2とH2Oとで希釈することによって制御される。これにより、このタスクのために(調整して)燃料を使用することはない(今日のSIエンジンでは標準的な方法である)。
【0091】
実施の形態1は、エンジンによって排出されたCO2を回収することを提案していない。ただし、現在のSIエンジンに比べてエネルギー効率が向上し、発生源(燃焼室)及びMIEC膜(6)での汚染ガス(CO、THC、PM、及びNOx)の排出が除去され、排気ガスを浄化するための後処理の必要性を最小限に抑える。これは、エンジンの製造コストを大幅に節約することを意味する。現在、ガスの浄化のための後処理は、パワーアセンブリの総コストの30%程度と推定されている。更に、酸素燃焼により、確実に、コールドスタートプロセス中の汚染ガスの排出が最小限に抑えられる。これは、排気ガスの浄化に必要な大規模な後処理システムを加熱(アクティブ化)するために必要な時間を考えると、今日のエンジンでは実現しない。
【0092】
実施の形態1を、
図1に示す。実施の形態1では、大気は、コンプレッサ(C2)(2)によって吸引され、フィルタ(1)を通ってエンジンに入る。コンプレッサC2(2)はターボアセンブリの一部であり、可変ジオメトリータービン(VGT2)(8)に機械的に結合されている。コンプレッサC2(2)は、タービンVGT2(8)によってMIEC膜(6)で除外されたN
2、CO
2、及びH
2Oから回収されたエネルギーを使用して空気を移動し、CO
2及びH
2Oはエンジンの第2のシリンダ(14)に再循環されない。これ(CO
2及びH
2O)は、触媒MIEC膜(15)から出る導管を通って循環し、MIEC膜(6)の除外気体がくる導管と合流する。定格条件下では、コンプレッサC2(2)の出口の空気の圧力及び温度は、約0.4MPa及び473K(199.85度)である。空気は、エンジンの第1の給気のウォータークーラ(WCAC)(3)を通過する。第1のWCACクーラ(3)の出口では、温度が約323K(49.85度)に低下する。これにより、エンジンの第1のシリンダ(4)での後続の圧縮がより等温になる。
【0093】
その後、空気はエンジンの第1のシリンダ(4)の半分によって吸引される。実施の形態1は、4シリンダ、4ストロークエンジンを示すので、空気を吸引する2つのシリンダがある。第1のシリンダ(4)は、空気を約0.9MPa及び473K(199.85度)に圧縮するポンプのように機能する。第1のシリンダ(4)は、好ましくは、エンジンの残りのシリンダと同一であり、クランクシャフト(25)、カムシャフト、及びバルブタイミングギアを共有し、燃料がそのシリンダの中に噴射されないという独特の特異性を有する。4ストロークエンジンであるため、空気は第1のシリンダ(4)内で4ストロークの間留まり、エンジン冷却水(約363K(89.85度))で圧縮及び冷却される。これは、圧縮をより等温にすることに貢献する。この第1のシリンダ(4)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンとを始動するための始動システムとして機能する。そのために、そのシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0094】
第1のシリンダ(4)の出口で、空気は第1の再生熱交換器(23)で加熱され、圧力が約0.87MPaに下がり、温度が約573K(299.85度)に上がる。そのために、CO2、H2O、及びN2の流れからの熱エネルギーを使用する。このN2、CO2、及びH2Oの流れは、タービンVGT2(8)の下流にある導管(30)から排出される。このN2、CO2、及びH2Oの流れは、エンジンによって移動されるガスの総流量の約100%に相当し、約800K(526.85度)の温度と0.1MPaの圧力(の状態)である第1の再生熱交換器(23)の出口で、空気は第2の再生熱交換器(5)で加熱され、圧力が約0.85MPaに下がり、温度が約673K(399.85度)に上がる。そのために、MIEC膜(6)によって生成されたO2と、MIEC膜(6)で交換されたO2とを同伴し、同伴チャンバー内のO2の分圧を下げるために使用される排気ガスからの熱エネルギーを使用する。
【0095】
第2の再生熱交換器(5)の出口で、空気は触媒MIEC膜(15)(この膜には、環境からのO2による、COとHCの、CO2とH2Oへの完全な酸化を促進する触媒がある)で再び加熱され、圧力が約0.8MPaに下がり、温度が約723K(449.85度)に上がる。そのために、第2のシリンダ(14)の燃焼からの排気ガスからの熱エネルギーを使用する。触媒MIEC膜(15)では、排気ガスが熱を空気に伝達し(再生熱交換器のように機能)、ガスフロー全体がCO2とH2Oのみで構成されるまでCOとHCの両方が酸化する。このエンジンのガスを浄化するための後処理の必要性が20%減少する。これは、この排気ガスの流れが、エンジンによって移動される排気ガスの総流量の約20%に相当するためである。触媒MIEC膜(15)の後、0.8 MPaの圧力の空気がMIEC膜(6)に入り、そこでMIEC膜(6)の作動温度(約1173 K(899.85度))に達するが、その温度は、第2のシリンダ(14)の酸素燃焼プロセスから発生し、MIEC膜(6)で交換されたO2をスイープするために使用される排気ガスとの熱交換の結果である。第2のシリンダ(14)の酸素燃焼プロセスから生じるこの排気ガスの流れは、排気ガスの流量の約80%に相当する。
【0096】
MIEC膜(6)からの除外気体は、基本的に0.8MPa及び1173K(899.85度)でのN2である:これは、システムによって移動されるガスの質量の約80%に相当し、タービンVGT1(71)又はコントロールバルブ(72)を通過する。タービンVGT1(71)及びコントロールバルブ(72)は、タービンVGT1(71)が機械的に連結されているコンプレッサC1(10)と共にターボアセンブリの一部である。タービンVGT1(71)は、MIEC膜(6)から除外されたN2の流れからのエネルギーを利用し、そのエネルギーを回収してコンプレッサC1(10)を動かす。コントロールバルブ(72)は、コンプレッサC1(10)へのエネルギーの流れを調整する。コンプレッサC1(10)は、MIEC膜(6)からの同伴ガスの出口から来るCO2、H2O、及びO2の混合気を移動する。コンプレッサC1(10)は、エンジンからのガス流量の約95%を移動する。結果として、コントロールバルブ(72)は、O2を希釈するために使用されるCO2及びH2Oの流れを調整し、したがって、燃焼温度及び排気ガス燃焼温度を調整する。結論として、第2のシリンダ(14)の出口でのエンジンの排気ガスの温度は、コントロールバルブ(72)によって調整され、定格条件下で約1273K(999.85度)の値に調整される。
【0097】
コントロールバルブ(72)は通常、コンプレッサC1(10)の圧力を調整するために部分的に開いて作動する。MIEC膜(6)で除外されたN2の一部は、タービンVGT1(71)を循環し、膨張して冷却される。除外されたN2の他の部分は、冷却されることなく、実際のコントロールバルブ(72)を通って循環する。N2のこの他の部分は、タービンVGT1(71)の下流で、冷たい膨張したN2と混合し、再加熱し、よって温度を上昇させる。
【0098】
コントロールバルブ(72)及び/又はタービン(71)を通過した後、MIEC膜(6)から除外されたN2(空気流の約80%)は、第2のチェックバルブ(19)からのCO2及びH2Oと混合され、及び両方の流れは、コンプレッサC2(2)を動かすために使用される可変ジオメトリータービンVGT2(8)で利用される。タービンVGT2(8)に対するおよその定格入口条件は、0.3MPa及び873K(599.85度)である。タービンVGT2(8)の可変形状は、燃焼エンジンの給気の程度を調整するために使用される。タービンVGT2(8)が閉じると、MIEC膜(6)を通る空気流とMIEC膜(6)の作動圧力とが増加する。したがって、1時間あたりのO2の生成量と、理論混合比の条件下で噴射できる燃料の量が増加する。タービンVGT2(8)が開くと、逆のことが起こる。タービンVGT2(8)の最小サイズ(最小開口部)は、レシプロエンジンのシリンダ容量に応じて選択され、エンジンの各回転速度でシステムの最大出力を設定する。タービンVGT2(8)の最大開口部は、各回転速度でのレシプロエンジンの最小給気(アイドル)を決定する。タービンVGT2(8)は、ウェイストゲート(又はWG)バルブを構成することもできる。タービンVGT2(8)又はそのウェイストゲートバルブが最大に開かれると、コンプレッサC2(2)のエネルギーがゼロに減少し、それによってMIEC膜の作動圧力と移動された空気の流量の両方が減少する。
【0099】
エンジン給気を更にゼロに下げるまで減少させるには、タービンVGT1(71)を避けてコントロールバルブ(72)を開くことで、コンプレッサC1(10)のエネルギーがゼロに減少する。この場合、MIEC膜(6)への、(CO2を見られる)排気ガスの流れが抑制される。これは、MIEC膜(6)の両側のO2の分圧に等しくなり、O2生成の流れを抑制し、この実施の形態1のエンジン給気をアイドル状態のままにする(ことである)。
【0100】
タービンVGT2(8)の出口で、約0.1MPaの圧力と約800K(526.85度)の温度のN2、CO2、及びH2Oの混合気が第1の再生熱交換器(23)を通過して、この(健康に有害なガスを含まない)ガス状の混合気を大気中に排出する前に、その熱を空気に伝達する。
【0101】
MIEC膜(6)によって交換されたO2と、O2をスイープしてその分圧を下げるために使用されるCO2とH2Oとの混合気は、MIEC膜(6)の対応する端から、コンプレッサC1(10)によって吸引され、第2の燃焼シリンダ(14)へ出る。この混合気は、それぞれ約0.3MPa及び1173K(899.85度)の定格圧力及び温度で排出され、エンジンによって移動される空気の流量の約105%に相当する。CO2、H2O、及びO2の混合気の熱は、最初に第2の再生熱交換器(5)で回収され、第1の再生熱交換器(23)の出口で空気を加熱する。第2の再生熱交換器(5)の出口には、約0.25MPa及び673K(399.85度)の定格条件がある。この流れは、別のターボアセンブリに機械的に結合されたコンプレッサ(C3)(12)を動かすために使用される第2の再生熱交換器(5)の出口にある可変ジオメトリータービン(VGT3)(16)で利用される。コンプレッサC3(12)は、タービンVGT3(16)によって回収されたエネルギーを用いて、使用中のターボ過給機などの第2のシリンダ(14)を過給するために使用される。タービンVGT3(16)は、コンプレッサC3(12)の出口の圧力を、エンジンのどの作動条件下でも定格値0.6MPaで一定に保つために閉じられる。タービンVGT3(16)の出口では、流れの定格条件は約0.1MPa及び473K(199.85度)である。第2のシリンダ(14)に(送り)続けられる酸化混合気は、第2のWCACクーラ(9)で323K(49.85度)に冷却される。次に、コンプレッサC1(10)で0.3MPa及び473K(199.85度)に圧縮されるが、すでに説明したように。このコンプレッサC1(10)の条件は、排気ガスの温度を約1273K(999.85度)に保つためにコントロールバルブ(72)によって課される条件である。コンプレッサC1(10)の後、CO2、H2O、及びO2の混合気は第3のWCACクーラ(11)で再び323K(49.85度)に冷却され、コンプレッサC3(12)で0.6MPa及び473K(199.85度)に圧縮される。そのために、すでに説明したように、コンプレッサC3(12)の出口の圧力を0.6MPaと等しくなるように調整するタービンVGT3(16)のエネルギーが使用される。最後に、混合気は、第2のシリンダ(14)によって吸引される前に、第4のWCACクーラ(13)で323K(49.85度)に再び冷却される。この実施の形態で2が存在するのは、本実施の形態の説明の冒頭で確立されたように、例として使用された4シリンダ、4ストロークエンジンの半分であるためである。
【0102】
第2のシリンダ(14)では、炭化水素HxCyOzが燃料ポンプ(26)を使用して、O2と理論混合比に釣り合うようにCO2、H2O、及びO2の混合気に噴射される。その第2のシリンダ(14)では、火花点火予混合燃焼サイクル、及びオットーサイクルと同様のサイクルが実行される。第2のシリンダ(14)は、同じクランクシャフト(25)に結合されているため、MIEC膜(6)に空気を移動する第1のシリンダ(4)を動かすエネルギーを生成する。第2のシリンダ(14)は、エンジンが結合されている車両、又は発電機、又はシャフトを介した機械エネルギーの入力を必要とする任意の用途を動かすために使用される余剰の正味の機械エネルギーを生成する。これらの第2のシリンダ(14)は、ターボ機械アセンブリが空気流、O2の流れ、及びサイクルのターボ機械を始動するための始動システムとしても機能する。そのために、第2のシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。したがって、第1のシリンダ(4)と第2のシリンダ(14)との両方が始動システムとして機能し、レシプロエンジンで使用される従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0103】
第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、及び第4のWCACクーラ(13)の水への熱の伝達に加えて、分岐(29)と第2のチェックバルブ(19)とを介した、余剰排気ガス(すなわち、非再循環排気ガス)の大気への排出とともに(第1の再生熱交換器(23)、第2の再生熱交換器(5)、及び触媒MIEC(15)で生成される)再生で伝達される熱は、提案された熱力学サイクルが熱力学の第二法則に準拠し、したがって実行可能であるために必要な低温源への熱の完全な伝達を表す。次に、第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、第4のWCACクーラ(13)、及び(第1の再生熱交換器(23)、第2の再生熱交換器(5)、及び触媒MIEC(15)で生成される)再生での熱の伝達は、一方では、作動流体の全体的な圧縮プロセスをより等温にするために、他方では、空気から分離するために排気ガスからエネルギーを回収するために、熱力学サイクルのエクセルギーの破壊を最小限に抑えることに貢献する。等温圧縮の近似とシステムのガスから熱を抽出するための再生熱交換器の使用は、MIEC膜(6)で空気から分離されたN2サイクルを、エリクソンサイクルとして知られるカルノーサイクルに等しい成果を伴うサイクルに近似する。CO2+H2O+O2の混合気のサイクルは、中間の圧縮と膨張とを伴う閉じたブレイトンサイクルに同質化できるが、第2のシリンダ(14)ではオットーサイクルと入れ子になる。そのことは、これまで文献に記載されていなかった。本質的に、オットーサイクルと(N2サイクルに熱を送ることにより、エリクソンサイクルなどの最大効率の理想的なサイクルを近似するための熱力学的原理に準拠する)N2サイクルに関連するバイナリとで入れ子になる準クローズドブレイトンサイクルは、バイナリサイクルの新しい実施の形態であり、最大効率の他の理想的なサイクルであるカルノーサイクルの原則に準拠している。
【0104】
最後に、炭化水素(燃料)が酸化性混合気(CO2、H2O、O2)と燃焼した結果、CO2、H2O、及び程度は少ないが未燃のTHCとCOとの混合気が第2のシリンダ(14)の出口で生成される。
【0105】
排気ガスの非再循環部分のガスは、分岐(29)を通って迂回し、タービンVGT2(8)の入口で排出される。この余剰分はCO2、H2O、CO、及び未燃の全炭化水素(THC)の混合気である排気ガスの約20%に相当する。分岐(29)の下流と第2のチェックバルブ(19)の上流とは、触媒MIEC膜(15)で、排気ガスは約1273K(999.85度)の温度で流入し、エンジンによって移動される空気流の100%まで熱を伝達する。これにより、その温度は約623 K(349.85度)まで大幅に低下する。同時に、触媒MIEC膜(15)で生成される化学反応により、COとTHCは、燃焼から残ったO2で酸化されてCO2とH2Oの蒸気を形成する。この場合も、酸素燃焼により第2のシリンダ(14)でのNOxの生成が防止されるため、触媒膜(15)で形成されるH2OとCO2の混合気には、有害ガスが含まれていない(COなし、THCなし、NOxなし)。したがって、混合気は健康に有害なガスなしで排出される。
【0106】
触媒MIEC膜(15)の下流では、CO2とH2Oとの混合気がタービンVGT2(8)の入口にある第2のチェックバルブ(19)から排出される。第2のチェックバルブ(19)は、約0.11MPaの圧力で設定され、過渡プロセス中に空気又はN2が酸化性ガスの混合気に入ることができるのを防ぐことに役立つ。したがって、第2のチェックバルブ(19)の上流には、閉じられて大気から分離された容積が形成される。この容積は、エンジンが停止した後にCO2+H2O+O2の酸化混合気を蓄積するためのシステムとして機能するN2を含まない導管の回路によって形成される。この蓄積された混合気は、MIEC膜(6)によって生成された余剰のO2がすでに存在するため、エンジンの遅い始動を可能とする。これは、第2のシリンダ(14)で燃焼を開始するために使用できる。最後に、N2、CO2、及びH2Oの混合気は、すでに説明したように、導管(30)を介して大気中に排出され、前もって第1の再生熱交換器(23)を通過してその熱を抽出する。
【0107】
残りの非余剰排気ガス(すなわち、再循環排気ガス)は、その流量の約80%を占める。この余剰でない混合気は、MIEC膜(6)を通過するために、コンプレッサC1(10)、コンプレッサC3(12)、及び実際の第2のシリンダ(14)によって吸引される。MIEC膜(6)では、再循環された排気ガスが、一方では、MIEC膜(6)の生産性を向上させるために、膜を通過するO2をスイープしてその分圧を下げるという間接的な機能を実行して、他方では、酸化性混合気中のO2の割合を減らす直接的な機能を実行する。これにより、第2のシリンダ(14)の出口で約1273K(999.85度)の燃焼ガスの温度が制御される。これにより、サイクルはMIEC膜(6)の出口で閉じられ、混合気は第2の再生熱交換器(5)の入口に戻り、その熱を空気に伝達する。
【0108】
説明したプロセスでは、エンジンは効率的な方法で作動し、空燃比を常に理論混合比に近づけ、流量を制限せずに給気を調整するが、コンプレッサC2(2)及び膜の生産性によって移動される空気をむしろ調整する。O2の生産性は、第1のシリンダ(4)が第2のシリンダ(14)と同じシャフト上で機械的に結合されているため、エンジンの加速に瞬時に反応する。したがって、エンジンの動的応答は、ターボ過給エンジンに典型的なターボチャージャの遅れを経験しない。最後に、エンジンは、第2のチェックバルブ(19)からのCO2とH2Oとの混合気、及びタービンVGT2(8)の出口からのN2、H2O、及び大気中のCO2の混合気のみを大気中に排出する。すなわち、人や動物の呼吸過程に有害な健康に有害なガスを排出しない。
【0109】
実施の形態2:ガス排出を汚染することなく、生成されたCO
2
を回収し、大気中のCO
2
を除去する、予混合気を有する火花点火(SI)エンジン
実施の形態2は、大気及び生成されたCO2を回収する(均質な)予混合気を有する火花点火(SI)エンジンについて示す。したがって、大気からCO2を除去するエンジンのカテゴリーに含まれる(排出率<0)。実施の形態2は、正味の機械的動力を生成するための、亜音速で、混合気の自己着火を伴わないデフラグレーション燃焼のプロセスに基づく。
【0110】
エンジンの給気の程度(最大トルクのパーセンテージ)は、MIEC膜(6)のO2生成速度によって制御される。これにより、空気流を絞るためにバタフライバルブを絞る必要がなくなるため、ポンピング損失が減少する。
【0111】
燃焼温度は、酸化剤(O2)と燃料(HxCyOz)との混合気を実際の燃焼と予冷からのCO2とH2Oとで希釈することによって制御される。これにより、このタスクに(調整して)燃料を使用することはない(今日のSIエンジンでは、高い回転速度と最大出力での標準的な方法である)。
【0112】
実施の形態2は、エンジンによって排出されたCO2を回収し、大気中のCO2の含有量を可能な限り効率的に減少させることを提案する。更に、発生源(燃焼室)又はMIEC膜で汚染ガス(CO、THC、PM、及びNOx)の排出を除去し、排気ガスを浄化するための後処理の必要性を最小限に抑える。これは、エンジンの製造コストを大幅に節約できることを意味する。現在、ガスの浄化のための後処理は、パワーアセンブリの総コストの30%程度と推定されている。更に、酸素燃焼により、コールドスタートプロセス中にも汚染ガスが排出されないことが保証される。これは、排気ガスを浄化するための後処理システムを加熱(アクティブ化)するのに必要な時間を考えると、今日のエンジンでは実現しない。
【0113】
実施の形態2は、空気流からCO
2を抽出するために使用される技術に応じて、
図2a及び2bに示す。実施の形態2では、大気は、コンプレッサ(C2)(2)によって吸引され、フィルタ(1)を通ってエンジンに入る。コンプレッサC2(2)はターボアセンブリの一部であり、可変ジオメトリータービン(VGT2)(8)に機械的に結合される。コンプレッサC2(2)は、タービンVGT2(8)によって回収されたエネルギーを使用して、
図2aの場合はMIEC膜(6)で除外されたN
2+H
2Oから、又は
図2bの場合はCO
2膜(28)で除外されたN
2+H2Oから空気を移動する。定格条件下では、コンプレッサC2(2)の出口の空気の圧力及び温度は、約0.4MPa及び473K(199.85度)である。空気は、エンジンの第1の給気ウォータークーラ(WCAC)(3)を通過する。第1のWCACクーラ(3)の出口では、温度が約323K(49.85度)に低下する。これにより、エンジンの第1のシリンダ(4)での後続の圧縮がより等温になる。
【0114】
図2aの実施の形態では、空気は、第1のWCACクーラ(3)の出口での作動温度で約2000の全体的なCO
2/N
2の選択性を有するCO
2ポリマー膜(28)内でCO
2が浄化される。これは、膜を通過するCO
2がセパレータ(17)からの水蒸気によって同伴され、CO
2膜(28)を透過した大気CO
2の分圧を下げるという事実の結果として
図2aで達成される。
図2aでは、大気中のCO
2とCO
2膜(28)をスイープするために使用される水とが、真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段でO
2と燃焼生成物との流れとともにプールされる。すなわち、これは、VBCサイクルの内部の詳細を示し、以下で説明される
図5aに示されるように、第5のWCACクーラ(31)の出口で生成される。
【0115】
図2bに示す別の好ましい実施の形態では、空気は、第1のWCACクーラ(3)の出口でいかなるCO
2膜にも遭遇せず、したがって、空気中のCO
2の含有量は変化しない。実施の形態2のこの他のバージョンの場合、このCO
2は下流で収集される。
【0116】
その後、空気はエンジンの第1のシリンダ(4)によって吸引される。実施の形態2では、5シリンダ、4ストロークエンジンが描かれており、空気を吸引する2つのシリンダが存在する。第1のシリンダ(4)は、空気を約0.9MPa及び473K(199.85度)に圧縮するポンプのように機能する。第1のシリンダ(4)は、好ましくは、エンジンの残りのシリンダと同一であり、クランクシャフト(25)、カムシャフト、及びバルブタイミングギアを共有し、燃料がそのシリンダの中に噴射されないという独特の特異性を有する。4ストロークエンジンであるため、空気は第1のシリンダ(4)内で4ストロークの間留まり、エンジン冷却水(約363K(89.85度))で圧縮及び冷却される。これは、圧縮をより等温にすることに貢献する。これらの第1のシリンダ(4)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンとを始動するための始動システムとして機能する。そのために、第1のシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0117】
第1のシリンダ(4)の出口で、空気は第1の再生熱交換器(23)で加熱され、圧力が約0.87MPaに下がり、温度が約573K(299.85度)に上がる。 そのために追加のピストン(22)の出口でのCO2とH2Oとの流れからの熱エネルギーを使用する。 第1の再生熱交換器(23)の出口で、空気は第3の再生熱交換器(24)で加熱され、圧力が約0.85MPaに下がり、温度が約673K(399.85度)に上がる。そのために、約800K(526.85度)の温度とタービンVGT2(8)の出口からの0.1MPaの圧力でのN2の流れからの熱エネルギーを使用する。
【0118】
第3の再生熱交換器(24)の出口で、空気は触媒MIEC膜(15)で再び加熱され、圧力が約0.8MPaに下がり、温度が約723 K(449.85度)に上がる。そのために、第2のシリンダ(14)の燃焼からの排気ガスからの熱エネルギーを使用する。触媒MIEC膜(15)では、排気ガスが熱を空気に伝達し(再生熱交換器のように機能し)、ガスフロー全体がCO2とH2Oのみで構成されるまでCOとHCとの両方が酸化する。これにより、このエンジンのガスを浄化するための後処理の必要性が20%減少する。これは、この排気ガスの流れが、エンジンによって移動される排気ガスの総流量の約20%に相当するためである。触媒MIEC膜(15)の後、空気は第2の再生熱交換器(5)で再び加熱され、圧力は約0.8MPaに下がり、温度は約873K(599.85度)に上がる。そのために、MIEC膜(6)によって空気から得られたO2と、MIEC膜(6)を通過するO2とを同伴し、同伴チャンバー内のO2の分圧を下げるために使用されるCO2からの熱エネルギーを使用する。
【0119】
第2の再生熱交換器(5)の後、0.8MPa及び873K(599.85度)の空気は、O2MIEC膜(6)に噴射され、そこで酸素燃焼プロセスから発生しO2側をスイープするために使用されるCO2及びH2Oとの熱交換の結果として、MIEC膜(6)の作動温度(約1173K(899.85度))に到達する。
【0120】
図2bの実施の形態の場合、O
2MIEC膜(6)で除外された、O
2が枯渇した空気は、約1173K(899.85度)及び0.8MPaで(作動温度で約2500の全体的なCO
2/N
2の選択性を持つ溶融炭酸塩をベースとした)CO
2膜(28)に入る。ここで、大気中のCO
2はN
2+H
2Oの流れから分離される。これは、CO
2がセパレータ(17)からの水蒸気によってスイープされ、膜を透過した大気中のCO
2の分圧を下げるという事実の結果として達成される。
図2bでは、透過した大気中のCO
2は、MIEC膜(6)によって生成されたO
2と、第2のシリンダ(14)の燃焼から生成されたCO
2とH
2Oとの混合気とプールされ、MIEC膜(6)をスイープし、O
2の分圧を下げるために使用される。
【0121】
図2aに示す好ましい実施の形態の他のバージョンでは、O
2MIEC膜(6)からの除外気体は、下流のいかなるCO
2膜にも遭遇しない。というのは、上述したように、空気はすでにCO
2膜(28)内でCO
2を浄化しているからである。
【0122】
図2aの実施の形態の場合のO
2MIEC膜(6)からの除外気体、及び
図2bの実施の形態のCO
2膜(28)からの除外気体は、両方とも実質的に大気中のCO
2を含まず、0.75MPa及び1173K(899.85度)の大気中のN
2+H
2Oである。その除外気体のそれぞれは、システムによって移動され、タービンVGT1(71)及び/又はコントロールバルブ(72)を通過する空気の質量の約80%を表す。
【0123】
タービンVGT1(71)及びコントロールバルブ(72)は、タービンVGT1(71)が機械的に連結されているコンプレッサC1(10)と共にターボアセンブリの一部である。タービンVGT1(71)は、MIEC膜(6)から除外されたN2の流れからのエネルギーを利用し、そのエネルギーを回収してコンプレッサC1(10)を動かす。コントロールバルブ(72)は、コンプレッサC1(10)へのエネルギーの流れを調整する。コンプレッサC1(10)は、MIEC膜(6)のスイープするCO2を移動するため、CO2、H2O、及びO2の混合気を移動する。コンプレッサC1(10)は、エンジンのガス流量の約95%を移動する。結果として、コントロールバルブ(72)は、O2を希釈するために使用されるCO2及びH2Oの流れを調整し、したがって、燃焼温度及び排気ガス燃焼温度を調整する。結論として、第2のシリンダ(14)の出口でのエンジンの排気ガスの温度は、コントロールバルブ(72)によって調整され、定格条件下で約1273K(999.85度)の値に調整される。
【0124】
コントロールバルブ(72)は通常、コンプレッサC1(10)の圧力を調整するために部分的に開いて作動する。MIEC膜(6)で除外されたN2の一部は、タービンVGT1(71)を循環し、膨張して冷却される。除外されたN2の他の部分は、冷却されることなく、実際のコントロールバルブ(72)を通って循環する。N2のこの他の部分は、タービンVGT1(71)の下流で、冷たい膨張したN2と混合し、再加熱し、よって温度を上昇させる。
【0125】
コントロールバルブ(72)及び/又はタービン(71)を通過した後、MIEC膜(空気流の80%)からのN2+H2Oの除外気体は、可変ジオメトリータービンVGT2(8)で利用され、そのタービンを使用してコンプレッサC2(2)を動かす。タービンVGT2(8)に対するおよその定格入口条件は、0.3MPa及び823K(549.85度)である。タービンVGT2(8)の可変形状は、燃焼エンジンの給気の程度を調整するために使用される。タービンVGT2(8)が閉じると、MIEC膜(6)を通る空気流とMIEC膜(6)の作動圧力が増加する。したがって、1時間あたりのO2の生成量と、理論混合比の条件下で噴射できる燃料の量が増加する。タービンVGT2(8)が開くと、逆のことが起こる。タービンVGT2(8)の最小サイズ(最小開口部)は、レシプロエンジンのシリンダ容量に応じて選択され、エンジンの各回転速度でのシステムの最大出力を設定する。タービンVGT2(8)の最大開口部は、各回転速度でのレシプロエンジンの最小給気(アイドル)を決定する。タービンVGT2(8)は、ウェイストゲート(又はWG)バルブを構成することもできる。タービンVGT2(8)又はそのウェイストゲートバルブが最大に開かれると、コンプレッサC2(2)のエネルギーがゼロに減少し、それによってMIEC膜の作動圧力と移動された空気の流量との両方が大幅に減少する。
【0126】
エンジン給気を更に、ゼロに下げるまで減少させる場合には、タービンVGT1(71)を避けてコントロールバルブ(72)を開き、コンプレッサC1(10)のエネルギーをゼロに減少させる。この場合、MIEC膜(6)へのCO2とH2Oの流れは抑制される。これは、MIEC膜(6)の両側のO2の分圧に等しくなり、O2生成の流れを抑制し、この実施の形態2のエンジン給気をアイドル状態のままにすることである。
【0127】
タービンVGT2(8)の出口で、圧力約0.1MPa、温度約800K(526.85度)のN2とH2Oとの混合気が第3の再生熱交換器(24)を通過して、この(健康に有害なガスを含まない)ガスの混合気を大気中に排出する前に、その熱を空気に伝達する。
【0128】
MIEC膜(6)によって交換されたO
2と、膜を通過するO
2をスイープしてその分圧を下げるために使用されるCO
2とH
2Oとの混合気は、MIEC膜(6)の対応する端から、 コンプレッサC1(10)によって吸引され、第2の燃焼シリンダ(14)へ出る。大気中のCO
2を収集するための溶融炭酸塩の膜に基づく実施の形態2のバージョン(
図2b)の場合、この時点で(MIEC膜(6)の出口において)、混合気(MIEC膜(6)によって交換されるO
2と、膜を通過するO
2をスイープしてその分圧を下げるために使用されるCO
2とH
2Oの混合気)は、次に、大気中のCO
2及びそれをスイープするために使用される水蒸気と混合される。この混合気は、それぞれ約0.1MPa及び1173K(899.85度)の定格圧力及び温度で排出され、エンジンによって移動される空気の流量の約80%に相当する。CO
2、H
2O、及びO
2の混合気の熱は、最初に第2の再生熱交換器(5)で回収され、触媒MIEC膜(15)の出口で空気を加熱する。第2の再生熱交換器(5)の出口には、約0.08MPa及び723K(449.85度)の定格条件がある。
【0129】
次に、混合気は、真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段を通って流れる。真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段は、混合気の温度を圧力に変換し、第2の再生熱交換器(5)によって引き起こされた圧力損失を回復することによって混合気を冷却する機能を有する。真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段は、それがターボアセンブリを形成するコンプレッサC3(12)と機械的に結合されたタービンVGT3(16)からなる。タービンVGT3(16)の出口とコンプレッサC3(12)の入口との間には、第5のWCACクーラ(31)がある。大気中のCO
2を収集するためのポリマー膜に基づく実施の形態2のバージョン(
図2a)の場合、それは、燃焼からのO
2とCO
2が大気中のCO
2とそれをスイープするために使用される水と混合される、第5のWCACクーラ(31)の出口にある。
図2bでは、この時点で大気中のCO
2が酸化性混合気の一部になっている。真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段の内部の詳細は、
図5aで見ることができ、その作動サイクルは、
図5bのT-sダイヤグラムで見ることができる。CO
2、H
2O、及びO
2の混合気は、タービンVGT3(16)でそのエネルギーを利用するように膨張し、第5のWCACクーラ(31)で冷却され、わずかな給気損失を維持し、タービンVGT3(16)と機械的に結合されているコンプレッサC3(12)で圧縮される。コンプレッサC3(12)の出口では、混合気はタービンVGT3(16)の入口よりも低温で高圧になっている。
【0130】
コンプレッサC3(12)の出口での酸化性混合気の定格条件は、約0.1MPa及び523K(249.85度)である。酸化性混合気は、第2のシリンダ(14)へ通り抜け、第2のWCACクーラ(9)で323K(49.85度)に冷却される。すでに説明したように、次に、コンプレッサC1(10)で0.3MPa及び473K(199.85度)に圧縮される。コンプレッサC1(10)の条件は、排気ガスの温度を約1273 K(999.85度)に保つためにコントロールバルブ(72)によって課される条件である。コンプレッサC1(10)の後、CO2、H2O、及びO2の混合気は、第2のシリンダ(14)によって吸引される前に、第3のWCACクーラ(11)で323K(49.85度)に再び冷却される。このシリンダは、実施の形態2の説明の冒頭で確立されたように、例として使用される4ストロークエンジンの5つのシリンダのうちの2つである。
【0131】
第2のシリンダ(14)では、炭化水素HxCyOzが燃料ポンプ(26)を使用して、O2と理論混合比でCO2、H2O、及びO2の酸化混合気に噴射される。その第2のシリンダ(14)では、火花点火予混合燃焼サイクル、及びオットーサイクルと同様のサイクルが実行される。第2のシリンダ(14)は、MIEC膜(6)と追加のピストン(22)に空気を移動する第1のシリンダ(4)を動かすエネルギーを生成する。これらのシリンダはすべて同じクランクシャフト(25)に結合されているため、圧縮して残留CO2とH2Oを高密度化する。第2のシリンダ(14)は、エンジンが結合されている車両、又は発電機又はシャフトを介した機械エネルギーの入力を必要とする任意の用途を動かすために使用される余剰の正味の機械エネルギーを更に生成する。この第2のシリンダ(14)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンを始動するための始動システムとして機能する。そのために、第2のシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0132】
第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、第4のWCACクーラ(13)、第5のWCACクーラ(31)、及び第6のWCACクーラ(18)の水への熱の伝達に加えて、余剰のCO2とH2Oの高密度化と回収とともに(第1の再生熱交換器(23)、第2の再生熱交換器(5)、第3の再生熱交換器(24)、及び触媒MIEC(15)で生成された)再生で伝達される熱は、提案された熱力学サイクルが熱力学の第二法則に準拠し、したがって実行可能であるために必要な低温源への熱の完全な伝達を表す。次に、第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、第4のWCACクーラ(13)、第5のWCACクーラ(31)、及び第6のWCACクーラ(18)、並びに(第1の再生熱交換器(23)、第2の再生熱交換器(5)、第3の再生熱交換器(24)、及び触媒MIEC(15)で生成された)再生における熱の伝達は、一方では作動流体の全体的な圧縮プロセスをより等温にすることにより、他方では空気からの分離のために排気ガスからエネルギーを回収することにより、熱力学的サイクルのエクセルギーの破壊を最小限に抑えることに貢献する。等温圧縮の近似とCO2+H2Oから熱を抽出するための再生熱交換器の使用は、MIEC膜(6)のN2サイクルを、エリクソンサイクルとして知られるカルノーサイクルに等しい成果を伴うサイクルに近似する。CO2+H2O+O2の混合気のサイクルは、中間の圧縮と膨張を伴う閉じたブレイトンサイクルに同質化できるが、第2のシリンダ(14)ではオットーサイクルと入れ子になる。これは、これまで文献に記載されていなかった。本質的に、オットーサイクルと(N2サイクルに熱を送ることにより、エリクソンサイクルなどの最大効率の理想的なサイクルを近似するための熱力学的原理に準拠する)N2サイクルに関連するバイナリと入れ子になる準クローズドブレイトンサイクルは、バイナリサイクルの新しい実施の形態であり、最大効率の他の理想的なサイクルであるカルノーサイクルの原理に準拠している。
【0133】
炭化水素(燃料)を酸化性混合気(CO2、H2O、O2)で燃焼させた結果、CO2、H2O、未燃THC、及びCOの混合気が第2のシリンダ(14)の出口で生成される。一方では、これらの排気ガスの80%は、MIEC膜(6)を通過するために、コンプレッサC1(10)と第2のシリンダ(14)自体によって吸引される。MIEC膜(6)では、一方で、O2をスイープしてその分圧を下げる機能を実行して、MIEC膜(6)のO2の輸送を改善する;他方、CO2との混合気は、レシプロ内燃機関(RICE)の材料で許容できる限界まで燃焼温度を下げる。したがって、MIEC膜(6)の出口でサイクルが閉じられ、混合気は、その熱を空気に伝達するために、第2の再生熱交換器(5)の入口に戻る。説明したプロセスでは、エンジンは、空燃比を常に理論混合比に近づけることと、流れを絞らずにその給気を調整することとの両方によって効率的に作動するが、むしろ膜のO2の生成を調整する。膜の生産性は、第1シリンダ(4)が第2のシリンダ(14)と同じシャフト上で機械的に結合されているため、エンジンの加速に瞬時に反応する。したがって、エンジンの動的応答は、ターボアセンブリの機械的慣性によるターボ過給RICEラグによって調整されない。
【0134】
他方、CO2、H2O、未燃THC、COの混合気である排気ガスの残りの20%は、触媒MIEC膜(15)での燃焼から残ったO2によって酸化される。ここでは、約1273K(999.85度)の温度で入り、エンジンによって移動される空気流の100%に熱を伝達する。これにより、温度は約703K(429.85度)に大幅に低下する。同時に、触媒MIEC膜(15)で生成される化学反応により、COとTHCは、燃焼から残ったO2によって酸化されてCO2とH2O蒸気になる。また、この場合も、酸素燃焼により、第2のシリンダ(14)でのNOxの生成が防止される。したがって、混合気は健康に有害なガスなしで(COなし、THCなし、及びNOxなしで)排出される。
【0135】
次に、追加のピストン(22)からの逆流の出口を防ぐために、第1のチェックバルブ(33)が取り付けられる。追加のピストン(22)はクランクシャフト(25)によって動かされ、この20%の流量(前述の残りの20%の排気ガス)を7.5MPaに圧縮する。7.5MPaの圧力は、第2のチェックバルブ(19)とその設定スプリングによって調整される。圧縮は、追加のピストン(22)の4ストロークで、吸気バルブが開いてCO2とH2O蒸気の混合気を吸引してから、排気バルブが開いて同じものを排出するまで、準等温方式で実行される。7.5MPaに圧縮された混合気は、約673K(399.85度)の温度で排出され、その混合気が追加のピストン(22)内でまだガス状態にあることを保証するため、7.5MPaでの水の飽和温度である573K(299.85度)を超えて維持する必要がある。
【0136】
混合気は、最初に第1の再生熱交換器(23)で冷却され、次に第4のWCACクーラ(13)で473K(199.85度)に冷却されるため、H2Oは液体状態に移行する。7.5MPa及び473K(199.85度)での液体の水の質量は、エンジンによって移動する質量の総流量の約2%に相当する。次に、液体の水は、セパレータ(17)内のCO2ガスから分離され、セパレータ(17)は、出口に圧力積層弁を備えた慣性セパレータとすることができる。水が気体状態に保たれている場合は、ポリマー膜をセパレータ(17)として使用することもできる。約0.1MPaの圧力、473K(199.85度)で分離された水からのエネルギーが利用され、CO2膜(28)の駆動流体として使用される。水蒸気は、CO2側をスイープし、希釈により分圧を下げる。燃焼から生じるH2Oの回路を大気と接続する第3のチェックバルブ(32)は、水蒸気の圧力を調整し、気圧に等しく保つ。更に、連続するエンジンの燃焼で生成された過剰な水蒸気を大気中にパージすることができる。
【0137】
H2Oが分離された後、すでに高純度の過剰なCO2は、第6のWCACクーラ(18)で、臨界温度である303K(29.85度)未満に冷却される。液体CO2は第2のチェックバルブ(19)を通過し、温度が303K(29.85度)未満に制御された第1のタンク(20)に7.5MPaで貯蔵される。このタンクがいっぱいになると、エンジンの自律性は終了する。タンクは、必要に応じて、車両の空調によって作られるような冷却回路を使用して、CO2の臨界未満の温度(<303K(29.85度))に保たれる。タンクはサービスステーションで排出され、燃料タンクと交換される。液体CO2は、(e-Diesel、Blue-crudeなどと呼ばれる合成燃料のように)再び炭化水素に変換され、製品として化学産業に供給され、冷却液として冷却産業に供給されるか、制御された溜め桝に貯蔵される。ただし、大気中には排出されない。大気中へのCO2の非排出は、本実施の形態2が大気中のCO2を除去し、その燃焼プロセスで生成されたCO2を排出しなかったので、マイナスの正味排出を有するエンジンであると決定することを可能にする。
【0138】
実施の形態3:層状混合気及び拡散燃焼を有し、O
2
生成速度によって制御される有効可変圧縮比を有し、ガス排出物を汚染せず、CO
2
を回収しない、圧縮着火(CI)エンジン
実施の形態3は、汚染物質の排出がなく、CO2の回収がない層状混合気(拡散燃焼)を備えた圧縮着火(CI)エンジンについて示す。正味の機械動力を生成するために、実施の形態3は、拡散燃焼プロセスに基づき、予混合気のデトネーションによる自己着火及び燃料流の移動量によって制御される燃焼速度を伴う。
【0139】
過給の程度は、サイクルの有効圧縮比を介して、各形態の最大トルクのパーセンテージに影響を与える。この有効圧縮比は可変であり、MIEC膜のO2生成速度によって制御される。これは、エンジンのシリンダ容量を減らすことができ、ターボ機械とシリンダ内との空気の効果的な圧縮プロセスが等温プロセスに近づくことができる、サイズ縮小のコンセプトを表している。
【0140】
燃焼温度は、酸化剤(O2)と燃料(HxCyOz)の予冷された混合気を燃焼自体からのCO2とH2Oとで希釈することによって制御される。高率の排気ガス再循環(EGR)を有するこの混合気は、分圧を下げることにより、O2MIEC膜(6)でのO2生成速度を高めるのにも役立つ。
【0141】
実施の形態3は、エンジンによって排出されたCO2を回収することを提案せず、むしろ、排気ガスを浄化するための後処理を必要とせずに、発生源(燃焼室)又はMIEC膜における汚染ガス(CO、THC、PM、及びNOx)排出を除去することを提案する。これは、エンジンの製造コストを大幅に節約できることを表している。現在、ガス浄化のための後処理は、パワーアセンブリの総コストの30%程度と推定されている。更に、酸素燃焼により、確実に、コールドスタートプロセスでも汚染ガスが排出されない。これは、排気ガスを浄化するための後処理システムを加熱(アクティブ化)するのに必要な時間を考えると、今日のエンジンでは実現しない。
【0142】
実施の形態3を、
図3に示す。実施の形態3では、大気は、コンプレッサ(C2)(2)によって吸引され、フィルタ(1)を通ってエンジンに入る。コンプレッサC2(2)はターボアセンブリの一部であり、可変ジオメトリータービン(VGT2)(8)に機械的に結合される。コンプレッサC2(2)は、タービンVGT2(8)によってMIEC膜(6)で除外されたN
2から回収されたエネルギーを使用して空気を移動する。定格条件下では、コンプレッサC2(2)の出口の空気の圧力及び温度は、約0.4MPa及び473K(199.85度)である。空気は、エンジンの第1の給気のウォータークーラ(WCAC)(3)を通過する。第1のWCACクーラ(3)の出口では、温度が約323K(49.85度)に低下する。これにより、エンジンの第1のシリンダ(4)での後続の圧縮がより等温になる。
【0143】
その後、空気はエンジンの第1のシリンダ(4)の半分によって吸引される。実施の形態3は、4シリンダ、4ストロークエンジンを示すので、空気を吸引する2つのシリンダがある。第1のシリンダ(4)は、空気を約0.8MPa及び473K(199.85度)に圧縮するポンプのように機能する。第1のシリンダ(4)は、好ましくは、エンジンの残りのシリンダと同一であり、クランクシャフト(25)、カムシャフト、及びバルブタイミングギアを共有し、燃料がそのシリンダの中にに噴射されないという独特の特異性を有する。4ストロークエンジンであるため、空気は第1のシリンダ(4)内に4ストロークの間留まり、エンジン冷却水(約363K(89.85度))で圧縮及び冷却される。これは、圧縮をより等温にすることに貢献する。これらの第1のシリンダ(4)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンを始動するための始動システムとして機能する。そのために、第1のシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0144】
第1のシリンダ(4)の出口で、空気は第1の再生熱交換器(23)で加熱され、圧力は0.77MPaに下がり、温度は約673K(399.85度)に上がる。そのために、CO2、H2O、N2の流れからの熱エネルギーを使用する。このN2、CO2、及びH2Oの流れは、タービンVGT2(8)の下流にある導管(30)を通って大気中に排出される。このN2、CO2、及びH2Oの流れは、エンジンによって移動される空気の総流量の約80%に相当し、約800K(526.85度)の温度と0.1MPaの圧力である。第1の再生熱交換器(23)の出口で、空気は第2の再生熱交換器(5)で加熱され、温度が約973 K(699.85度)に上がる。そのために、MIEC膜(6)によって生成されたO2、及びMIEC膜(6)をスイープしO2の分圧を下げるために使用されるCO2からの熱エネルギーを使用する。第2の再生熱交換器(5)の後、0.75MPaの圧力の空気は、MIEC膜(6)に入り、そこで、酸素燃焼プロセスから発生し、O2をスイープするために使用されるCO2及びH2Oとの熱交換の結果として、MIEC膜(6)の作動温度(約1223K(949.85度))に達する。
【0145】
MIEC膜(6)からの除外気体は、基本的に0.7MPa及び1173K(899.85度)でN2である:これは、システムによって移動され、タービンVGT1(71)及び/又はコントロールバルブ(72)を通過する空気の質量の約80%に相当する。タービンVGT1(71)及びコントロールバルブ(72)は、タービンVGT1(71)が機械的に連結されているコンプレッサC1(10)と共にターボアセンブリの一部である。タービンVGT1(71)は、MIEC膜(6)から除外されたN2の流れからのエネルギーを利用し、そのエネルギーを回収してコンプレッサC1(10)を動かす。コントロールバルブ(72)は、コンプレッサC1(10)へのエネルギーの流れを調整する。コンプレッサC1(10)は、MIEC膜(6)のスイープするCO2+H2Oを移動するため、CO2、H2O、及びO2の混合気を移動する。コンプレッサC1(10)は、エンジンのガス流量の約95%を移動する。結果として、コントロールバルブ(72)は、O2を希釈するために使用されるCO22及びH2Oの流れを調整し、したがって、燃焼温度及び排気ガス燃焼温度を調整する。結論として、第2のシリンダ(14)の出口でのエンジンの排気ガスの温度はコントロールバルブ(72)によって調整され、定格条件下で約1223K(949.85度)の値に調整される。
【0146】
コントロールバルブ(72)は通常、コンプレッサC1(10)の圧力を調整するために部分的に開いて作動する。MIEC膜(6)で除外されたN2の一部は、タービンVGT1(71)を循環し、膨張して冷却される。除外されたN2の他の部分は、冷却されることなく、実際のコントロールバルブ(72)を通って循環する。N2のこの他の部分は、タービンVGT1(71)の下流で、冷たい膨張したN2と混合し、再加熱し、よって温度を上昇させる。
【0147】
コントロールバルブ(72)及び/又はタービン(71)を通過した後、MIEC膜(6)からのN2の除外気体(空気流の80%)は、可変ジオメトリータービンVGT2(8)で利用され、そのタービンを使用してコンプレッサC2(2)を動かす。タービンVGT2(8)に対するおよその定格入口条件は、0.3MPa及び823K(549.85度)である。タービンVGT2(8)の可変形状は、MIEC膜(6)によって移動する空気の流量を調整するため、更には生成されるO2の流量を調整するために使用される。タービンVGT2(8)が閉じると、MIEC膜(6)を通る空気流とMIEC膜(6)の作動圧力が増加する。したがって、1時間あたりのO2の生成量(生成速度は同じ)と、理論混合条件下で噴射される可能性のある燃料の量が増加する。タービンVGT2(8)が開くと、逆のことが起こる。タービンVGT2(8)の最小サイズ(最小開口部)は、レシプロエンジンのシリンダ容量に応じて選択され、エンジンの各回転速度でのシステムの最大出力を設定する。タービンVGT2(8)の最大開口部は、各回転速度でのレシプロエンジンの最小O2流量(アイドル)を決定する。タービンVGT2(8)は、ウェイストゲート(又はWG)バルブを構成することもできる。タービンVGT2(8)又はそのウェイストゲートバルブが最大に開かれると、コンプレッサC2(2)のエネルギーがゼロに減少し、それによってMIEC膜の作動圧力と移動された空気の流量との両方が大幅に減少する。
【0148】
エンジンのO2の流量を更に、ゼロに下げるまで減少させる場合には、コントロールバルブ(72)を開き、タービンVGT1(71)を避けて、コンプレッサC1(10)のエネルギーをゼロに減少させる。これは、MIEC膜(6)の両側のO2の分圧に実質的に等しく、O2生成速度を最小化し、この実施の形態3のエンジンの給気をアイドル状態のままにする。
【0149】
コントロールバルブ(72)は、生成速度に作用することでO2の流れの定性的調節を提供し、タービンVGT2(8)は、空気の移動流量に作用することで定量的調節を行うと言える。両方の制御は、その容積圧縮比を変更することなく、第2のシリンダ(14)の上死点でのシリンダの有効圧縮比の非常に広く非常に微調整された調節を提供する。これは、レシプロエンジンでは可変圧縮比として一般に知られている。
【0150】
タービンVGT2(8)の出口で、約0.1MPaの圧力と約800K(526.85度)の温度のN2、CO2、及びH2Oの混合気が第1の再生熱交換器(23)を通過して、 この(健康に有害なガスを含まない)ガスの混合気を大気中に排出する前に、空気にその熱を伝達する。
【0151】
MIEC膜(6)によって生成されたO2と、その膜をスイープしてO2の分圧を下げるために使用されるCO2及びH2Oの混合気とは、MIEC膜(6)の対応する端からコンプレッサC1(10)によって吸引され、第2の燃焼シリンダ(14)へ出る。この混合気は、それぞれ約0.35MPa及び1223K(949.85度)の定格圧力及び温度で排出され、エンジンによって移動される空気の流量の約115%に相当する。CO2、H2O、及びO2の混合気の熱は、最初に第2の再生熱交換器(5)で回収され、第1の再生熱交換器(23)の出口から来る空気を加熱する。第2の再生熱交換器(5)の出口では、酸化性混合気の定格条件は約0.3MPa及び700K(426.85度)である。この圧力と温度は、別のターボアセンブリで機械的に結合されているコンプレッサ(C3)(12)を動かすために使用される可変ジオメトリータービン(VGT3)(16)で利用される。コンプレッサC3(12)は、タービンVGT3(16)によって回収されたエネルギーを使用して、使用中のターボ過給機などの第2のシリンダ(14)を過給するために使用される。タービンVGT3(16)は、コンプレッサC3(12)の下流の圧力を一定且つ0.6MPaに等しく保つように調整される。
【0152】
タービンVGT3(16)の下流では、タービンVGT3(16)の出口での定格条件は約0.1MPa及び473K(199.85度)である。タービンVGT3(16)の出口には、CO2、H2O蒸気、及びO2の余剰混合気を汚染ガスなしで(COなし、THCなし、NOxなし)大気に排出する分岐がある。これは、COとTHCを触媒してH2O蒸気とMIEC膜(6)で生成されるCO2に変換し、酸素燃焼によってNOxの生成を防止することで実現される。
【0153】
排出は、0.11MPaの圧力で設定された第2のチェックバルブ(19)を介して実行され、過渡プロセス中に空気又はN2が酸化性ガスの混合気に入るのを防ぐ。したがって、第2のチェックバルブ(19)の上流には、閉じられて大気から分離された回路が形成されている。この容積は、エンジンが停止した後にCO2+H2O+O2の酸化混合気を蓄積するためのシステムとして機能するN2を含まない導管の回路によって形成される。この蓄積された混合気は、MIEC膜(6)によって生成された余剰のO2がすでに存在するため、エンジンの後の始動を可能とする。これは、第2のシリンダ(14)で燃焼を開始するために使用できる。
【0154】
分岐(29)と第2のチェックバルブ(19)とを使用すると、タービンVGT3(16)の出口の定格圧力条件は0.11MPaで、温度は473K(199.85度)である。第2のシリンダ(14)へ進む非余剰混合気は、第2のWCACクーラ(9)で323K(49.85度)に冷却される。次に、コンプレッサC1(10)で0.3MPa及び473K(199.85度)に圧縮される。コンプレッサC1(10)の条件は、すでに説明したように、排気ガスの温度を約1223K(949.85度)に保つためにコントロールバルブ(72)によって課される条件である。コンプレッサC1(10)の後、CO2、H2O、及びO2の混合気は第3のWCACクーラ(11)で再び323K(49.85度)に冷却され、コンプレッサC3(12)で0.6MPa及び473K(199.85度)に圧縮される。そのために、すでに説明したように、0.6MPaに等しいコンプレッサC3(12)の出口の圧力を調整するタービンVGT3(16)のエネルギーが使用される。最後に、混合気は第4のWCACクーラ(13)で再び323K(49.85度)に冷却されてから、第2のシリンダ(14)に吸引される。この実施の形態では2が存在するのは、本実施の形態3の説明の冒頭で確立されたように、例として使用された4シリンダ、4ストロークエンジンの半分であるためである。
【0155】
第2のシリンダ(14)では、炭化水素HxCyOzが燃料ポンプ(26)を使用して大気中のCO2とO2の酸化混合気に噴射される。炭化水素は、拡散燃焼エンジンの給気を調整するために、O2との理論混合よりも少ない割合で、望ましい方法と量とで噴射される。その第2のシリンダ(14)において、拡散燃焼サイクル、圧縮着火サイクル、及び基本的にO2及び燃焼生成物、すなわちエンジンに入る空気の約80%の量によって実行されるディーゼルサイクルと同様のサイクル、が実行される。
【0156】
第2のシリンダ(14)は、同じクランクシャフト(25)に結合されているため、MIEC膜(6)のために空気を移動する第1のシリンダ(4)を動かすエネルギーを生成する。第2のシリンダ(14)は、エンジンが結合されている車両、又は発電機、又はシャフトを介した機械エネルギーの入力を必要とする任意の用途を動かすために使用される余剰の正味の機械エネルギーを生成する。この第2のシリンダ(14)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンを始動するための始動システムとして機能する。第2のシリンダは、そのためにレシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0157】
第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、及び第4のWCACクーラ(13)の水への熱の伝達は、並びに第2の再生熱交換器(5)及び第1の再生熱交換器(23)のMIEC膜(6)での熱の伝達、最後に、分岐(29)を介した余剰酸化混合器の大気への排出は、熱力学サイクルが熱力学の第二法則に準拠し、したがって実行可能であるために必要な低温源への熱の完全な伝達を表す。次に、第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、第4のWCACクーラ(13)、及び(第2の再生熱交換器(5)及び第1の再生熱交換器(23)で生成される)再生での熱の伝達は、一方では、作動流体の全体的な圧縮プロセスをより等温にするために、他方では、空気から分離するために排気ガスからエネルギーを回収するために、熱力学サイクルのエクセルギーの破壊を最小限に抑えることに貢献する。等温圧縮の近似とCO2、N2、及びH2Oから熱を抽出するための再生熱交換器の使用は、MIEC膜(6)でのN2サイクルを、エリクソンサイクルとして知られるカルノーサイクルに等しい成果を伴うサイクルに近似する。CO2、H2O、及びO2の混合気のサイクルは、中間の圧縮と膨張とを伴う閉じたブレイトンサイクルに同質化できるが、第2のシリンダ(14)ではディーゼルサイクルと入れ子になる。これは、これまで文献に記載されていなかった。本質的に、ディーゼルサイクルと(N2サイクルに熱を送ることにより、エリクソンサイクルなどの最大効率の理想的なサイクルを近似するための熱力学的原理に準拠する)N2サイクルに関連するバイナリとで入れ子になる準クローズドブレイトンサイクルは、バイナリサイクルの新しい実施の形態であり、最大効率の他の理想的なサイクルであるカルノーサイクルの原則に準拠している。
【0158】
最後に、炭化水素(燃料)が酸化性混合気(CO2、H2O、O2)と燃焼した結果、排気ガスと呼ばれるCO2、H2O、及び未燃のTHCとCOの混合気が第2のシリンダ(14)の出口で生成される。第2のシリンダ(14)の出口では、この排気ガスの最大圧力及び温度はそれぞれ0.6MPa及び1223K(949.85度)である。排気ガスの混合気は、MIEC膜(6)を通過し、コンプレッサC1(10)、コンプレッサC3(12)、そして最終的には第2のシリンダ(14)自体によって吸引される。MIEC膜(6)では、一方で、排気ガスの混合気が膜をスイープする機能を果たし、O2の分圧を下げ、MIEC膜(6)の生産性を向上させ、燃焼温度が現在のRICEの材料技術と互換性があるまでO2を希釈する。他方、排気ガスの混合気は触媒作用を受け、O2と反応して、燃焼プロセスから生じるTHCとCOをCO2とH2Oに変換する。したがって、MIEC膜(6)の出口で、サイクルが閉じられ、混合気は、その熱を空気に伝達するために、第2の再生熱交換器(5)の入口に戻る。
【0159】
説明したプロセスでは、エンジンは、タービンVGT2(8)での有効圧縮比を、給気の程度とエンジンの回転速度に応じて最も効率的な比率に調整する最適な方法で作動する。膜の生産性は、第1のシリンダ(4)が第2のシリンダ(14)と同じシャフト上で機械的に結合されているため、エンジンの加速に瞬時に反応する。したがって、エンジンの動的応答は、その機械的慣性によるターボチャージャの加速遅れの影響を受けない。最後に、エンジンは、分岐管(29)を通って、第2のチェックバルブ(19)を介してCO2、H2O、及びO2の混合気を大気中に排出し、タービンVGT2(8)の出口を介してN2+大気CO2のみを排出する。すなわち、人や動物に悪影響を与える汚染ガスを排出しない。両方の排気ガスは同じ排気導管(30)で混合され、第2のチェックバルブ(19)とタービンVGT2(8)の下流で、エンジンからのすべての排気ガスが共通の排気部にプールされる。
【0160】
実施の形態4:層状混合気及び拡散燃焼を有し、O
2
生成速度によって制御される有効な可変圧縮比を有し;ガス排出を汚染せず、生成されたCO
2
を回収し大気中のCO
2
を除去する、圧縮着火(CI)エンジン
実施の形態4は、大気中のCO2及びエンジン自体によって生成されたCO2の回収を伴う、層状混合気(拡散燃焼)を有する圧縮着火(CI)エンジンについて示す。したがって、大気からCO2を除去するエンジンのカテゴリーに含まれる(排出率<0)。正味の機械的動力を生成するために、実施の形態4は、拡散燃焼プロセスに基づいており、予混合気のデトネーションによる自己着火及び噴射される燃料流(及びこの場合は液体CO2)の移動量によって制御される燃焼速度を伴う。
【0161】
過給の程度は、サイクルの有効圧縮比を介して、各形態の最大トルクのパーセンテージに影響を与える。この有効圧縮比は可変であり、MIEC膜のO2生成速度によって制御される。このことは、エンジンのシリンダ容量を減らすことができ、ターボ機械とシリンダ内の空気の効果的な圧縮プロセスが等温プロセスに近づくことができる、サイズ縮小のコンセプトを表している。
【0162】
燃焼温度は、酸化剤(O2)と燃料(HxCyOz)との混合気を燃焼自体からの液体CO2で希釈し、超臨界条件に高密度化することによって制御される。大量のCO2が必要なため、これは追加の革新を意味する。というのは、シリンダ内で(以下の)2つのサイクルが共存するからである:(i)一方は、燃焼温度を制御するために使用されるCO2によって実行される超臨界CO2熱力学サイクル、それと同時に、(ii)O2酸化剤及びその生成物によって実行されるディーゼルサイクル。このことは、これまで公開された文献には記載されていない。
【0163】
実施の形態4は、エンジンによって排出されたCO2を回収し、使用される空気中の大気CO2の含有量を可能な限り効率的に低減することを提案する。更に、このことは、発生源(燃焼室)での汚染ガス(CO、THC、PM、NOx)の排出を除去し、排気ガスを浄化するための後処理の必要性を最小限に抑え、エンジンの製造コストを大幅に節約することを意味する。現在、ガス浄化のための後処理は、パワーアセンブリの総コストの30%程度と推定される。更に、酸素燃焼により、コールドスタートプロセス中にも汚染ガスが排出されないことが保証される。これは、排気ガスを浄化するための後処理システムを加熱(アクティブ化)するのに必要な時間を考えると、今日のエンジンでは実現しない。
【0164】
実施の形態4を、
図4a及び4bに示す。実施の形態4では、大気は、コンプレッサ(C2)(2)によって吸引され、フィルタ(1)を通ってエンジンに入る。コンプレッサC2(2)はターボアセンブリの一部であり、可変ジオメトリータービン(VGT2)(8)に機械的に結合されている。コンプレッサC2(2)は、MIEC膜(6)で除外されたN
2+H
2OのタービンVGT2(8)によって回収されたエネルギーを使用して空気を移動する。定格条件下では、コンプレッサC2(2)の出口の空気の圧力及び温度は、約0.4MPa及び473K(199.85度)である。空気は、エンジンの第1の給気ウォータークーラ(WCAC)(3)を通過する。第1のWCACクーラ(3)の出口では、温度が約323K(49.85度)に低下する。これにより、エンジンの第1のシリンダ(4)で後続の圧縮がより等温になる。
【0165】
図4aの実施の形態では、空気中のCO
2の含有量は、CO
2ポリマー膜(28)において減少し、第1のWCACクーラ(3)の出口での作動温度で約2000の全体的なCO
2/N
2の選択性を有する。これは、CO
2が第3のWCACクーラ(11)の下流で及びO
2分離のためにMIEC膜(6)から取り出された純粋なO
2によって同伴されるという事実の結果として、
図4aで達成される。O
2は、膜モジュールの同伴チャンバー内の透過した大気CO
2の分圧を下げる。
図4aでは、収集された大気CO
2と、膜をスイープするために使用されたO
2とは、第1のチェックバルブ(33)に送られ、第2のシリンダ(14)によって吸引される。
【0166】
図4bに示すこの実施の形態の第2のバージョンでは、大気中のCO
2は、溶融炭酸塩をベースにしたCO
2膜(28)によって分離され、その結果、第1のWCACクーラ(3)の出口で、空気は、CO
2膜に遭遇しない。
【0167】
その後、空気はエンジンの第1のシリンダ(4)の半分によって吸引される。実施の形態4は、4シリンダ、4ストロークエンジンを示し、空気を吸引する2つのシリンダがある。第1のシリンダ(4)は、空気を約1.5MPa及び473K(199.85度)に圧縮するポンプのように機能する。第1のシリンダ(4)は、好ましくは、エンジンの残りのシリンダと同一であり、クランクシャフト(25)、カムシャフト、及びバルブタイミングギアを共有し、燃料がそのシリンダの中に噴射されないという独特の特異性(unique singularity)を有する。4ストロークエンジンであるため、空気は第1のシリンダ(4)内に4ストロークの間留まり、エンジン冷却水(約363K(89.85度))で圧縮及び冷却される。このことは、圧縮をより等温にすることに貢献する。この第1のシリンダ(4)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンを始動するための始動システムとして機能する。そのために、第1のシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0168】
第1のシリンダ(4)の出口で、空気は第1の再生熱交換器(23)で加熱され、圧力が1.47MPaに下がり、温度が約673K(399.85度)に上がる。そのために、H
2O、及びN
2の流れからの熱エネルギーを使用する。このN
2及びH
2Oの流れは、タービンVGT2(8)から排出される。このN
2及びH
2Oの流れは、エンジンによって移動するガスの総流量の約90%に相当し、約800K(526.85度)の温度と0.1MPaの圧力(の状態で)ある。第1の再生熱交換器(23)の出口で、空気は第2の再生熱交換器(5)で加熱され、圧力が1.45MPaに下がり、温度が約723K(449.85度)に上がる。そのために、
図4aでは、MIEC膜(6)によって生成されたO
2からの熱エネルギーを使用する。
図4bでは、MIEC膜(6)によって生成されたO
2と、CO
2膜(28)で生成されたCO
2とからの熱エネルギーがそのために使用される。O
2は空気の流量の約20%を占めるため、温度はあまり上昇しない。
【0169】
第2の再生熱交換器(5)の出口で、空気は触媒MIEC膜(15)で加熱され、圧力が1.4MPaに下がり、温度が約1123K(849.85度)に上がる。そのために第2のシリンダ(14)の燃焼からの排気ガスからの熱エネルギーを使用する。触媒MIEC膜(15)では、排気ガスが熱を空気に伝達し(再生熱交換器のように機能)、ガスフロー全体がCO
2とH
2Oのみで構成されるまでCOとHCの両方(COとHCは排気ガスの組成の1%未満であるため、
図4aと4bには明示的に示されていない)が酸化される。このCO
2とH2Oの流れは、非常に高い圧力(7.5MPa)でエンジンによって移動する排気ガスの総流量の約100%に相当するため、その密度は大幅に増加するので、このエンジンのガスの酸化に必要な触媒MIEC膜(15)のサイズが縮小される。
【0170】
触媒MIEC膜(15)の後、1.4MPa及び1123K(849.85度)の空気がO2MIEC膜(6)に噴射され、そこでO2が分離される。
【0171】
図4bに示される溶融炭酸塩をベースにした膜による空気からの大気CO
2の分離に基づく実施の形態の場合、O
2MIEC膜(6)での除外気体を代表するN
2、H
2O、及び大気中のCO
2は、約1123K(849.85度)及び1.35MPaでCO
2膜(28)に入る。この場合、大気CO
2がN
2+H
2Oの流れから分離される、作動温度で約2500の全体的なCO
2/N
2の選択性を持つ溶融炭酸塩膜である。そのために、MIEC膜(6)によって生成された純粋なO
2が同伴流として使用される。このO
2は、MIEC膜(6)から第2の燃焼シリンダ(14)へ出ると、コンプレッサC1(10)によって生成された0.05MPaの真空によって吸引され、最初にCO
2膜(28)の大気CO
2側を通過する。これにより、O
2は、CO
2膜(28)からCO
2をスイープし、CO
2の分圧を下げるために使用される。
【0172】
空気から大気中のCO
2を分離するためにポリマー膜が使用されるこの実施の形態の第1のバージョン(
図4aに示す)では、O
2MIEC膜(6)からの除外気体は、下流のいかなるCO
2膜にも遭遇しない。というのは、
図4aのCO
2ポリマー膜(28)のCO
2含有量を減らすために、空気がすでに処理されているからである。
図4aの実施の形態の場合のO
2MIEC膜(6)からの除外気体、又は
図4bの実施の形態のCO
2膜(28)からの除外気体は、両方とも実質的に大気中のCO
2を含まず、ほとんどが1.35MPa及び1123K(849.85度)のN
2+H
2Oで構成されている。処理された空気から大気中のCO
2を分離するためのこれらの方法は、記載されたエンジンに大気からCO
2を除去し、そのエンジンはマイナスのCO
2排出速度を有すると見なすことができる。実際、タービンVGT2(8)の出口で排出されるN
2+H
2Oの流れのCO
2含有量は最小限(空気入口含有量の<1-5%)であり、燃焼で生成されたCO
2は、以下に説明するように、液化されてシステムに回収される。
【0173】
膜からの各除外気体は、システムによって移動された空気の質量の約80%に相当し、タービンVGT1(71)及び又はコントロールバルブ(72)を通過する。タービンVGT1(71)及びコントロールバルブ(72)は、タービンVGT1(71)が機械的に連結されているコンプレッサC1(10)と共にターボアセンブリの一部である。タービンVGT1(71)は、MIEC膜(6)から除外されたN
2の流れからのエネルギーを利用し、そのエネルギーを回収してコンプレッサC1(10)を動かす。コントロールバルブ(72)は、コンプレッサC1(10)へのエネルギーの流れを調整する。コンプレッサC1(10)は、
図4aの場合、MIEC膜(6)で生成された純粋なO
2を移動する。コンプレッサC1(10)は、
図4bの場合、MIEC膜(6)+CO
2で生成された純粋なO
2を移動する。そのため、空気流の約20%を移動し、MIEC膜(6)のO
2側で発生する真空を制御して、O
2の圧力を下げ、膜の生産性を高める。結果として、コントロールバルブ(72)は、O
2生成速度を調整し、したがって、サイクルに閉じ込められたO
2の質量及び第2のシリンダ(14)におけるサイクルの最大圧力を調整する。
【0174】
コントロールバルブ(72)は通常、コンプレッサC1(10)の圧力を調整するために部分的に開いて作動する。MIEC膜(6)で除外されたN2の一部は、タービンVGT1(71)を循環し、膨張して冷却される。除外されたN2の他の部分は、冷却されることなく、実際のコントロールバルブ(72)を通って循環する。N2のこの他の部分は、タービンVGT1(71)の下流で、冷たい膨張したN2と混合し、再加熱し、よって温度を上昇させる。
【0175】
コントロールバルブ(72)及び/又はタービン(71)を通過した後、MIEC膜(6)からのN2+H2Oの除外気体(空気流の80%)は、コンプレッサC2(2)を動かすために使用される可変ジオメトリータービンVGT2(8)で利用される。タービンVGT2(8)に対するおよその定格入口条件は、0.35MPa及び823K(549.85度)である。タービンVGT2(8)の可変形状は、MIEC膜(6)によって移動する空気の流量を調整するため、更には生成されるO2の流量を調整するために使用される。タービンVGT2(8)が閉じると、MIEC膜(6)を通る空気流とMIEC膜(6)の作動圧力が増加する。したがって、1時間あたりのO2の生成量(生成速度と同じ)と、理論混合比の条件下で噴射できる燃料の量が増加する。タービンVGT2(8)が開くと、逆のことが起こる。タービンVGT2(8)の最小サイズ(最小開口部)は、レシプロエンジンのシリンダ容量に応じて選択され、エンジンの各回転速度でシステムの最大出力を設定する。タービンVGT2(8)の最大開口部は、各回転速度でのレシプロエンジンの最小O2流量(アイドル)を決定する。タービンVGT2(8)は、ウェイストゲート(又はWG)バルブを構成することもできる。タービンVGT2(8)又はそのウェイストゲートバルブが最大に開かれると、コンプレッサC2(2)のエネルギーがゼロに減少し、それによってMIEC膜の作動圧力と移動する空気の流量の両方が大幅に減少する。
【0176】
エンジンの流量を更に、ゼロに下げるまで減らす場合は、タービンVGT1(71)を避けてコントロールバルブ(72)を開き、コンプレッサC1(10)のエネルギーをゼロに減少する。これは、MIEC膜(6)の両側のO2の分圧に等しくなり、O2生成速度をキャンセルし、この実施の形態4のエンジン給気をアイドル状態のままにする。
【0177】
これにより、コントロールバルブ(72)は、生成速度に作用することによってO2の流れの定性的調節を提供し、タービンVGT2(8)は、空気の移動流量に作用することによって定量的調節を提供する。両方の制御は、その容積圧縮比を変更することなく、第2のシリンダ(14)の上死点でのシリンダの有効圧縮比の非常に広く非常に微調整された調節を提供する。これは、レシプロエンジンでは可変圧縮比として一般に知られている。
【0178】
タービンVGT2(8)の出口で、圧力約0.1MPa、温度約800K(526.85度)のN2とH2Oとの混合気が第1の再生熱交換器(23)を通過して、この(今は健康に有害なガスを含まない)ガスの混合気を大気中に排出する前に、その熱を空気に伝達する。
【0179】
図4aの場合の純粋なO
2又は
図4bの場合の大気CO
2で希釈されたO
2は、約0.05MPaと1123K(849.85度)のそれぞれ定格圧力と温度でMIEC膜(6)とCO
2膜(28)を出る。これは酸化流であり、エンジンによって移動される空気の流量の約20%に相当する。
【0180】
この酸化流の熱は、最初に第2の再生熱交換器(5)で回収されて、第1の再生熱交換器(23)の出口から来る空気を加熱する。第2の再生熱交換器(5)の出口では、O2の定格条件は約0.048MPa及び700K(426.85度)である。
【0181】
次に、混合気は、真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための
手段を通って流れる。真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段は、混合気の温度を圧力に変換し、第2の再生熱交換器(5)によって引き起こされた圧力損失を回復することによって混合気を冷却する機能を有する。真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段は、それがターボアセンブリを形成するコンプレッサC3(12)と機械的に結合されたタービンVGT3(16)からなる。タービンVGT3(16)の出口とコンプレッサC3(12)の入口との間には、第5のWCACクーラー(31)がある。真空ブレイトンサイクル(VBC)(21)を実行するための手段の内部の詳細は、
図5a)に見ることができ、その動作サイクルは、
図5b)のT-sダイアグラムに見ることができる。CO
2、H
2O、及びO
2の混合気は、タービンVGT3(16)でそのエネルギーを利用するように膨張し、第5のWCACクーラ(31)を用いて一定圧力で冷却され、タービンVGT3(16)と機械的に結合されたコンプレッサC3(12)で圧縮される。コンプレッサC3(12)の出口では、混合気はタービンVGT3(16)の入口よりも低温で高圧になっている。
【0182】
コンプレッサC3(12)の出口での酸化性混合気の定格条件は、約0.08MPa及び473K(199.85度)である。酸化性混合気は、第2のシリンダ(14)への経路を継続し、第2のWCACクーラ(9)で323K(49.85度)に冷却される。すでに説明したように、次に、コンプレッサC1(10)で0.25MPa及び473K(199.85度)に圧縮される。コンプレッサC1(10)の条件は、MIEC膜(6)の生産性を維持するためにコントロールバルブ(72)によって課される条件である。コンプレッサC1(10)の後、流体酸化剤は、第3のWCACクーラ(11)で323K(49.85度)に再び冷却される。
【0183】
図4aの実施の形態では、流体酸化剤は純粋なO
2であり、手前のCO
2の分圧を下げ、空気流からCO
2を除去する膜の効果を最大化するために約2000のCO
2/N
2の選択性を有するCO
2ポリマー膜(28)でCO
2を同伴するために使用される。
図4bの実施の形態では、流体酸化剤は、今回は、第3のWCACクーラ(11)の出口で大気圧CO
2を用いてO
2希釈される。
【0184】
次に、流体酸化剤は、第1のチェックバルブ(33)を通過して、第2のシリンダ(14)からの逆流の出口を防ぐ。第1のチェックバルブ(33)の後、混合気は、本実施の形態4の説明の冒頭で確立されたように、例として使用される4ストロークエンジンの4つのうちの2つある第2のシリンダ(14)によって吸引される。
【0185】
第2のシリンダ(14)では、炭化水素HxCyOzが燃料ポンプ(26)を使用してO2の酸化混合気に(空気からのCO2とともに)噴射される。燃料ポンプ(26)は、以下に説明するように、液体CO2が蓄積される第1のタンク(20)から可撓性膜で分離された第2のタンク(27)から燃料を吸引する。第2のタンク(27)に蓄積された炭化水素が徐々に消費されると、膜は炭化水素側の容積を減らし、CO2側の容積を増やして、第1のタンク(20)の側に炭化水素を蓄積できるようにする。燃料ポンプ(26)によって吸引された炭化水素は、拡散燃焼エンジンの給気を調整するために、O2に対して理論混合未満の割合で、望ましい方法及び量で第2のシリンダ(14)に噴射される。第2のシリンダ(14)では、拡散燃焼サイクル、圧縮着火サイクル、並びに基本的にO2及び燃焼生成物、すなわち、エンジンを循環する質量の20%によって実行されるディーゼルサイクルと同様のサイクルが実行される。
【0186】
レシプロエンジンの材料及び冷却技術と互換性のある限界まで燃焼温度を調整するには、第2のシリンダ(14)に大量の液体CO2を噴射する必要がある。この量は、第2のシリンダ(14)によって移動される質量の約80%であり、臨界温度(<303K(29.85度))より低い温度及びシリンダ内の高圧(約80MPa)で液体CO2ポンプ(35)によって噴射される。CO2は、必要に応じて、車両の空調によって作られるような冷却回路を使用して、ポンプ内で臨界未満の温度(<303K(29.85度))に保たれる。噴射されたCO2は、以前の燃焼プロセスで以前に回収され、液化されている。CO2は、第2のシリンダ内で蒸発し、膨張して、O2とその生成物以外の超臨界熱力学サイクルを実行する。これについては以下で説明する。
【0187】
第2のシリンダ(14)は、MIEC膜(6)のために空気を移動する第1のシリンダ(4)を動かし、排出中にCO2を超臨界圧に圧縮するエネルギーを生成する。これらのシリンダはすべて同じクランクシャフト(25)上で結合しているためである。膜の生成率は、第1のシリンダ(4)が第2のシリンダ(14)と同じシャフト上で機械的に結合されているため、エンジンの加速に瞬時に反応する。したがって、エンジンの動的応答は、従来のターボ過給エンジンで発生するようなターボチャージャの遅れ(その機械的慣性による)の影響を受けない。第2のシリンダ(14)は、エンジンが結合されている車両、又は発電機又はシャフトを介した機械エネルギーの入力を必要とする任意の用途を動かすために使用される余剰の正味の機械エネルギーを更に生成する。これらの第2のシリンダ(14)は、ターボ機械アセンブリがサイクルエアフローとタービンを始動するための始動システムとして機能する。そのために、第2のシリンダは、レシプロエンジンで使用されるタイプの従来の始動モータによってシステムが始動するまで動く。
【0188】
第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、及び第4のWCACクーラ(13)、第5のWCACクーラ(31)、及び第6のWCACクーラ(18)の水への熱の伝達は、MIEC膜(6)と触媒MIEC膜(15)、及び第2の再生熱交換器(5)と第1の再生熱交換器(23)での熱の伝達、及び最後に余剰のCO2とH2Oの残りの緻密化と回収とともに、熱力学サイクルが熱力学の第二法則に準拠し、したがって実行可能であるために必要な低温源への熱の完全な伝達を表す。次に、第1のWCACクーラ(3)、第2のWCACクーラ(9)、第3のWCACクーラ(11)、第4のWCACクーラ(13)、第5のWCACクーラ(31)、及び第6のWCACクーラ(18)及び(第2の再生熱交換器(5)及び第1の再生熱交換器(23)で生成される)再生での熱の伝達は、一方では、作動流体の全体的な圧縮プロセスをより等温にするために、他方では、空気から分離するために排気ガスからエネルギーを回収するために、熱力学サイクルのエクセルギーの破壊を最小限に抑えることに貢献する。等温圧縮の近似と、O2及びCO2+H2Oから熱を抽出するための第2の再生熱交換器(5)及び第1の再生熱交換器(23)の使用は、MIEC膜(6)で空気及びN2のサイクルを、エリクソンサイクルとして知られるカルノーサイクルに等しい成果を伴うサイクルに近似する。O2の混合気のサイクルは、中間の圧縮と膨張を伴う閉じた超臨界CO2サイクルに同質化できるが、第2のシリンダ(14)ではディーゼルサイクルと入れ子になる。これは、これまで文献に記載されていなかった。本質的に、ディーゼルサイクルと(N2サイクルに熱を送ることにより、エリクソンサイクルなどの最大効率の理想的なサイクルを近似するための熱力学的原理に準拠する)N2サイクルに関連するバイナリとで入れ子になる超臨界CO2サイクルは、バイナリサイクルの新しい実施の形態であり、最大効率の他の理想的なサイクルであるカルノーサイクルの原則に準拠している。
【0189】
炭化水素(燃料)と酸化性混合気(大気中のCO2+O2)との燃焼の結果、CO2、H2O、未燃THC、O2、及びCOの混合気が第2のシリンダ(14)の出口で生成される。この混合気は、触媒MIEC膜(15)での燃焼で残ったO2で酸化され、約1273K(999.85度)の温度と7.5MPaの圧力で入る。ガスは、エンジンによって移動される空気流の100%に熱を伝達する。これにより、ガスの温度は約753K(479.85度)まで大幅に低下する。同時に、触媒MIEC膜(15)で生成される化学反応により、COとTHCは、燃焼から残ったO2で酸化されてH2O蒸気とCO2になる。また、酸素燃焼により、第2のシリンダ(14)でのNOxの生成が防止される。取り込まれたO2と第2のシリンダ(14)の燃料の比率は理論混合比ではなく、かなり高いため、給気を調整するオプションとして、COとTHCを酸化した後でもO2が残っている可能性がある。
【0190】
7.5MPaの圧力は、第2のチェックバルブ(19)とその設定スプリングによって調整される。第2のシリンダ(14)の排気弁を開き、排気ガスの混合気を排出すると、圧縮が瞬時に行われる。7.5MPaに圧縮されたガスは、混合気が第2のシリンダ(14)内でまだガス状態にあることを保証するために、7.5MPaでの水の飽和温度である573K(299.85度)を超えて維持する必要がある。
【0191】
混合気は、H2Oが液体状態に移行するために、第4のWCACクーラ(13)で523K(249.85度)に冷却される。次に、液体の水は、セパレータ(17)でCO2ガスから分離される。セパレータ(17)は、出口に圧力積層弁を備えた慣性セパレータとすることができる。水が気体状態に保たれている場合は、ポリマー膜をセパレータ(17)として使用することもできる。7.5MPa及び473K(199.85度)での水の質量は、エンジンによって移動される質量の総流量の約10%に相当する。分離された水は、タービンVGT2(8)の入口でN2+H2Oと混合される。これにより、セパレータ(17)の下流の圧力は、タービンVGT2(8)の膨張によって設定される。これにより、抽出された水の温度と質量とからのエネルギーを利用して、タービンVGT2(8)でそのエネルギーの一部を回収することができる。
【0192】
最後に、CO2+O2残留物は、第6のWCACクーラ(18)で、その臨界温度である303K(29.85度)未満に冷却される。液体CO2は第2のチェックバルブ(19)を通過し、温度が303K(29.85度)未満に制御された第1のタンク(20)に7.5MPaで貯蔵される。タンクは、必要に応じて、車両の空調によって作られるような冷却回路を使用して、CO2の臨界未満の温度(<303K(29.85度))に保たれる。タンク内の圧力が7.5MPaを超えると、タンク内に蓄積された可能性のあるO2ガスが第4のチェックバルブ(34)を介して大気中にパージされる。第2のタンク(27)の燃料が空になるか、第1のタンク(20)が満たされると、どちらか早い方でエンジンの自律性が終了する。両方のタンクは、柔軟な膜によって分離されている。CO2は、サービスステーションの第1のタンク(20)から排出され、第2のタンク(27)を満たす燃料と交換される。液体CO2は再び炭化水素に変換されるか、制御された溜め桝に貯蔵されるが、大気中に排出されることはない。酸素燃焼プロセスで生成されたCO2の回収とともに吸入空気でのCO2の含有量の減少は、本実施の形態4が、大気のCO2を除去し、燃焼過程で生成されたCO2を排出しなかったのでマイナスの正味排出(物)を有するエンジンであると決定することを可能にする。
【0193】
液体CO
2はCO
2ポンプ(35)で第2のシリンダ(14)に再び噴射され、燃焼温度を制御し続けるため、これまで説明されていないが、
図6のp-h、T-s、p-vダイアグラムにそれぞれ示されている新しい熱力学的サイクルが実行される。このサイクルは、シリンダに含まれる質量の約80%に相当するCO
2によるエネルギーの観点に関連している。CO
2サイクルの説明は以下のとおりである:
(1)ポンプの入口に対応するステーション。CO
2ポンプ(35)の入口では、CO
2は約7.5MPa及び298K(24.85度)の熱力学的条件にある。
【0194】
(2)ポンプの出口に対応するステーション。CO
2ポンプ(35)の出口では、CO
2は約80MPa及び303K(29.85度)の熱力学的条件にある。ステーション(1)と(2)との間のプロセスは、CO
2ポンプで実行され、そのようなプロセスの間、CO
2は液体状態に保たれ、ポンプ内で実質的に等温的に圧縮される。CO
2は、必要に応じて、車両の空調によって作られるような冷却回路を使用して、圧縮中に臨界未満の温度(<303K(29.85度))に保たれる。
図6のステーション(2‘)は、液体CO
2がインジェクターノズルを出て、約20MPaの第2のシリンダ(14)の圧力まで膨張する瞬間に対応する。
【0195】
(3)炭化水素燃焼プロセスの終了に対応するステーション。ステーション(3)で、サイクルの最大温度と最大圧力に到達する。条件は約1800K(1526.85度)及び20MPaである。このプロセスは、第2のシリンダ(14)で実行される。CO2は、圧縮行程の最後に炭化水素と一緒に噴射される。CO2は、噴射ノズルの上流80MPaから第2のシリンダ(14)の最大圧力20MPaまで噴射されるとすぐに膨張する。第2のシリンダ(14)の圧力は、ステーション(2‘)と(3)との間のプロセス中、CO2の継続的な噴射の結果として、膨張ストロークにもかかわらず、20MPaでほぼ一定に保たれる。炭化水素の燃焼により、温度は1800K(1526.85度)に上昇する。
【0196】
(4)CO2噴射プロセスの終了に対応するステーション。(3)と(4)との間のプロセスは、わずかに減少する圧力での温度低下を表す。(4)の条件は1173K(899.85度)及び18MPaである。噴射されたCO2で燃焼生成物が希釈されたため、温度が下がった。(3)と(4)との間のプロセス中に、燃焼がなく、シリンダ内の容積が増加したため、圧力が低下した。
【0197】
(5)シリンダの下死点に対応するステーション。(4)と(5)との間のプロセスは、燃焼やCO2の噴射なしでシリンダ内の容積の増加が続くことを表す。これは、冷却と圧力との低下を表す。(5)の条件は約873K(599.85度)及び0.3MPaである。(4)と(5)との間のプロセスは、バルブが閉じているシリンダで引き続き発生するため、外部から隔離されたシステムである。(5)では、シリンダの容積膨張が終了し、排気バルブが開き、排気ガス又は排出プロセスが開始される。
【0198】
(6)排気プロセスの終了に対応するステーション。排気バルブが開くと、第2のチェックバルブ(19)によって排出領域が7.5MPaに加圧されるため、シリンダ内のガスが瞬時に再圧縮される。(5)と(6)との間のプロセスは、圧力と温度が約7.5MPa及び1273K(999.85度)に瞬間的に上昇することを表す。
【0199】
サイクルは、7.5MPaの一定圧力での冷却プロセスで閉じられる。このプロセスでは、CO2は、超臨界圧力ラインに従って気体状態から液体状態に遷移する。このサイクルが終了すると、298K(24.85度)及び7.5MPaの初期条件で再びステーション(1)に戻る。この冷却プロセスは、排気ガス排出プロセス中に、一定の圧力条件下で、排気バルブが開いている間中、シリンダ内で部分的に行われる。残りの冷却は、触媒MIEC膜(15)と第4のWCACクーラ(13)及び第6のWCACクーラ(18)で生成される。液化CO2の塊の一部は、前述のサイクルを再度実行するためにシリンダ内に再噴射され、残りのCO2は、適切な収集及び処理ステーションに送られるまで、第1のタンク(20)に蓄積される。
【0200】
図6に示すように、熱力学的状態(4)と(5)との間のプロセスラインが熱力学的状態(6)と(1)との間のプロセスラインと交差する熱力学的状態は、ポイント(7)である。ポイント(7)の熱力学的状態は、サイクルの特定の条件に依存し、プラスの正味の機械的仕事を生成するサイクルの部分(1.2.3.4.7.1)とマイナスの正味の機械的仕事を生成する、すなわち仕事を消費するサイクルの部分(7.5.6.7)との間に分離頂点を確立する。
【0201】
CO
2はシリンダから放出される質量の約80%に相当するが、燃料と反応するO
2である質量の約20%がもう1つある。O
2とその燃焼生成物によって実行されるサイクルは、第2のシリンダ(14)内のCO
2サイクルと入れ子になる。これはこれまで文献で提案されていなかったサイクルであるため、
図7でも詳細に説明されている。このサイクルのステップは以下のとおりである:
(a)第2のシリンダ(14)の吸気口の熱力学的条件に対応するステーション。この条件は、第1のチェックバルブ(33)の下流にある。熱力学的条件は、約0.3MPa及び323K(49.85度)である。この瞬間、第2のシリンダ(14)のピストンは下死点にある。第2のシリンダ(14)の吸気バルブが閉じられ、O
2圧縮プロセスが開始される。
【0202】
(b)第2のシリンダ(14)の圧縮プロセスの終了時の熱力学的条件に対応するステーション。この状態条件は、第2のシリンダ(14)のピストンの上死点で発生する。熱力学的条件は、約11MPa及び573K(299.85度)である。状態(a)と(b)との間のプロセスでは、シリンダの壁に熱が伝達され、その上に閉じ込められたO2(サイクルの質量の約20%)のポリトロープ圧縮が発生する。条件(b)では、可燃性炭化水素と液体状態のCO2の噴射が開始される。
【0203】
(c)可燃性炭化水素燃焼プロセスの終了時の熱力学的条件に対応するステーション。この条件は、第2のシリンダ(14)のピストンの上死点の後に発生する。熱力学的条件は、約200MPa及び1800K(1526.85度)である。(b)と(c)との間のプロセスは、燃料の噴射、圧縮自己着火、及びそれらの拡散燃焼を含み、噴射された流れの移動量の結果として燃焼速度が制御される。(b)と(c)との間のプロセスには、燃焼プロセスの温度を制御し、圧力を一定に保ち、確立された約200MPaに等しくするのに役立つ液体CO
2の噴射の開始も含まれる。これらの条件は、
図6のCO
2サイクルの熱力学的状態(3)の条件と一致する。これらの条件では、両方の(O
2及びCO
2)サイクルが同時に発生する。
【0204】
(d)CO
2噴射プロセス終了時の熱力学的条件に対応するステーション。これらの状態は、第2のシリンダ(14)のピストンの膨張行程中に発生する。熱力学的条件は約1173K(899.85度)及び18MPaである。この条件は、
図6のCO
2サイクルの熱力学的状態(4)の条件と一致する。この条件下では、両方の(O
2及びCO
2)サイクルが同時に発生する。
図7の状態(c)と(d)との間のプロセスは、
図6で説明した状態(3)と(4)との間のプロセスと同じである。このプロセスは、噴射されるCO
2の量に応じて多かれ少なかれ延長される。これは、今度は燃焼生成物の望ましい最終温度と燃焼の安定性に依存する。
図7にポイント(d‘)で示されている理想的なケースは、このプロセスを拡張ストロークの下死点まで延長することである。このケースは、O
2及びCO
2サイクルでの最大の仕事産出量を表すため理想的である。
【0205】
(e)第2のシリンダ(14)のピストンのストロークの下死点での熱力学的条件に対応するステーション。これらの状態は第2のシリンダ(14)の膨張プロセスの最後に発生する。熱力学的条件は約873K(599.85度)及び0.3MPaである。この条件は、
図6のCO
2サイクルの熱力学的状態(5)の条件と一致する。この条件下では、両方の(O
2とCO
2)サイクルが同時に発生する。
図7の状態(d)と(e)との間のプロセスは、
図6で説明した状態(4)と(5)との間のプロセスと同じである。
【0206】
(f)第2のシリンダ(14)のピストンのストロークの下死点で排気バルブを開いたときの熱力学的条件に対応するステーション。排気バルブが開くと、第2のチェックバルブ(19)によって排出領域が7.5MPaに加圧されるため、シリンダ内のガスが瞬時に再圧縮される。これらの条件は、
図6のCO
2サイクルの熱力学的状態(6)の条件と一致する。これらの条件下では、両方の(O
2とCO
2)サイクルが同時に発生する。
図7の状態(e)と(f)との間のプロセスは、
図6で説明した状態(5)と(6)との間のプロセスと同じである。(e)と(f)との間のプロセスは、圧力及び温度が約7.5MPa及び1273K(999.85度)に瞬間的に上昇することを表す。
【0207】
(g)第2のシリンダ(14)のピストンが排気行程の上死点にあるときの燃焼ガスの排出が完了したときの熱力学的条件に対応するステーション。ステーション(f)と(g)の間のプロセスでは、ガスは、一定の圧力条件下で、排気バルブが開いている間、閉じられるまでシリンダから排出される。熱力学的条件は、約7.5MPa及び1173K(899.85度)である。これらの条件下では、両方の(O
2及びCO
2)サイクルが同時に発生する。
図7の状態(f)と(g)との間のプロセスは、一定の圧力での特定のストレッチ中に、状態(6)と(1)との間の
図6で説明されているプロセスと一致する。このステーションでは、O
2サイクル及びCO
2サイクルが再び分離される。
【0208】
(h)第1のチェックバルブ(33)の下流にある、第2のシリンダ(14)の吸入圧力までの圧力降下プロセスの終了に対応するステーション。このステーションは、第2のシリンダ(14)の吸気行程のある時点で発生する。(g)と(h)との間のプロセスで、燃焼室のデッドボリュームに閉じ込められたCO
2は、第1のチェックバルブ(33)が開く状態まで膨張した。このプロセスは、第1のチェックバルブ(33)が閉じた状態で発生する。このプロセスは、O
2の燃焼から発生するCO
2によってのみ実行され、
図7のサイクルからのみ実行され、
図6で説明されているCO
2サイクルとは無関係である。熱力学的条件は、約0.3MPa及び773K(499.85度)である。
【0209】
サイクルは、
図7の熱力学的条件(a)で再び閉じられる。(h)と(a)との間のプロセスは、第1のチェックバルブ(33)が、約0.3MPa及び323K(49.85度)の本質的に一定の圧力及び温度条件で、開いた状態で発生する。(h)と(a)との間のプロセスは、シリンダの吸気口からのO
2の吸気で構成され、システムの空気の質量の約20%の吸気口に相当する。
【0210】
図7に示すように、熱力学的状態(d)と(e)との間のプロセスラインが熱力学的状態(f)と(g)との間のプロセスラインと交差する熱力学的状態は。ポイント(i)である。ポイント(i)は
図6の熱力学的状態(7)と一致する。ポイント(i)の熱力学的状態は、
図7のサイクルの特定の条件に依存し、プラスの正味の機械的仕事を生成するサイクルの部分(i、j、b、c、d、i)と
図6で説明されているように、マイナスの正味の機械的仕事を生成する、すなわち仕事を消費するサイクルの一部(i、e、f、i)との間に分離頂点を確立する。上記のように、
図7のポイント(d‘)は、ポイント(f)と(i’)とが一致する記述されたサイクルの理想的な状況を表している。この場合、面積(i‘、f、e、i’)はゼロであり、プラスの仕事とマイナスの仕事の絶対差として理解されるので、生成される正味の仕事が最大化される。
【0211】
図7のO
2サイクルには、頂点がポイント(j)である仕事を消費する別の領域がない。
図7に示すように、ポイント(j)は、熱力学的状態(a)と(b)との間のプロセスラインが熱力学的状態(f)と(g)との間のプロセスラインと交差する熱力学的状態である。ポイント(j)の熱力学的状態は、
図7のサイクルの特定の条件に依存し、プラスの正味の機械的仕事を生成するサイクルの部分(i、j、b、c、d、i)と マイナスの正味の機械的仕事を生成する、すなわち仕事を消費するサイクルの他の部分(j、g、h、a、j)との間に分離頂点を確立する。
【0212】
理論的な事前設計モデリングが行われ、それに基づいていくつかの計算が実行された。その結果は、添付の
図8から13のグラフに示される。モデルには、要素間の理想的な接続と、任意の操作ポイントでのターボ機械と熱交換器の一定の効率が想定されていた。
【0213】
エンジンのシリンダ及びコンプレッサへの一定の閉じ込められた空気質量及び可変速度のガス燃料噴射、並びに理論空燃比も仮定された。検討した燃料はC8H18(PCIから42MG/kg)であった。
【0214】
ターボチャージャの最大圧縮比を4:1に固定し、最大冷却水温度を90度、最大排気ガス温度を1055度に設定した。
【0215】
図8から13のグラフ及び前述の説明から観察できるように、本発明では、NOx排出が防止され、大気中に排出する代わりにCO
2を隔離する可能性が提供される。更に、吸気ラインにバタフライバルブを必要とせずに給気を調整し、シリンダ容量の単位あたりの高効率と比出力が得られる。
【0216】
本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明が提供されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される保護の範囲から逸脱することなく、修正及び変形がそれに適用できることを理解するであろう。