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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】熱中症発症検知装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20240207BHJP
【FI】
A61B5/352
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020097152
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021186461
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】太田 鴻志
(72)【発明者】
【氏名】久保 孝富
(72)【発明者】
【氏名】山川 俊貴
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-019821(JP,A)
【文献】特開2018-083018(JP,A)
【文献】特開2015-112423(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0198112(US,A1)
【文献】特開2017-113382(JP,A)
【文献】特開2020-021191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/03
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータを取得する取得部と、
前記取得部において取得したRRIデータをもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた第1指標データを生成する生成部と、
前記複数種類の指標のそれぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する熱中症発症検知モデルを使用して、前記生成部において生成した前記第1指標データから算出される前記管理値をもとに、前記被検者における熱中症の発症を検知する検知部とを備え、
前記熱中症発症検知モデルは、熱中症を発症していない提供者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータをもとに生成された第2指標データであって、かつ心拍に関する前記複数種類の指標それぞれについての指標値が含まれた第2指標データに対して主成分分析がなされることによって生成されている熱中症発症検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記熱中症発症検知モデルを使用して、前記第1指標データに対して主成分分析を実行することにより主成分得点および予測誤差を算出してから、前記主成分得点および前記予測誤差をもとにT統計量およびQ統計量を前記管理値として算出し、
前記検知部は、前記T統計量および前記Q統計量の少なくとも1つが管理領域を外れた場合、前記被検者における熱中症の発症を検知する請求項1に記載の熱中症発症検知装置。
【請求項3】
被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータを取得する取得部と、
前記取得部において取得したRRIデータをもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた第1指標データを生成する生成部と、
前記生成部において生成した前記第1指標データを自己符号化器に入力して得られた第1出力データと、前記第1指標データとをもとに、前記被検者における熱中症の発症を検知する検知部とを備え、
前記自己符号化器は、熱中症を発症していない提供者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータをもとに生成された第2指標データであって、かつ心拍に関する前記複数種類の指標それぞれについての指標値が含まれた第2指標データを入力して得られた第2出力データと、前記第2指標データとが近くなるように学習されている熱中症発症検知装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記第1出力データと、前記第1指標データとの差異がしきい値よりも大きい場合に、前記被検者における熱中症の発症を検知する請求項3に記載の熱中症発症検知装置。
【請求項5】
前記複数種類の指標には、前記RRIデータの標準偏差を前記RRIデータの平均値で除算したCVが含まれる請求項1から4のいずれかに記載の熱中症発症検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱中症発症検知技術であり、特に熱中症の発症を検知する熱中症発症検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者について計測した心拍パターンからてんかん性発作の兆候を予測する装置が提案されている。しかしながら、実際には、てんかん性発作を予測する心拍パターンは知られていない。そこで、心拍に関する複数種類の指標を主成分分析することによって生成した発作兆候検知モデルを使用して、てんかん性発作の兆候の有無が識別される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-112423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温暖化の進展に伴って、熱中症発症者数が増加している。そこで、熱中症の発症を容易に検知することが求められる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされており、熱中症の発症を容易に検知する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の熱中症発症検知装置は、被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータを取得する取得部と、取得部において取得したRRIデータをもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた第1指標データを生成する生成部と、複数種類の指標のそれぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する熱中症発症検知モデルを使用して、生成部において生成した第1指標データから算出される管理値をもとに、被検者における熱中症の発症を検知する検知部とを備える。熱中症発症検知モデルは、熱中症を発症していない提供者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータをもとに生成された第2指標データであって、かつ心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値が含まれた第2指標データに対して主成分分析がなされることによって生成されている。
【0007】
本開示の別の態様もまた、熱中症発症検知装置である。この装置は、被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータを取得する取得部と、取得部において取得したRRIデータをもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた第1指標データを生成する生成部と、生成部において生成した第1指標データを自己符号化器に入力して得られた第1出力データと、第1指標データとをもとに、被検者における熱中症の発症を検知する検知部とを備える。自己符号化器は、熱中症を発症していない提供者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータをもとに生成された第2指標データであって、かつ心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値が含まれた第2指標データを入力して得られた第2出力データと、第2指標データとが近くなるように学習されている。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、熱中症の発症を容易に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)-(b)は、本実施例1に係る熱中症発症検知システムの構成を示す図である。
図2図1(a)の第1情報処理装置の構成を示す図である。
図3図3(a)-(i)は、図2の生成部において生成されるHRV指標データの一例を示す図である。
図4図2の構築部における処理概要を示す図である。
図5図1(b)の第2情報処理装置の構成を示す図である。
図6図6(a)-(c)は、図5の第2情報処理装置における処理概要を示す図である。
図7図5の第2情報処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施例2に係る第1情報処理装置の構成を示す図である。
図9図8の学習部における自己符号化器の構成を示す図である。
図10】実施例2に係る第2情報処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
本開示を具体的に説明する前に、概要を述べる。本実施例は、被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRI(R-R Interval)データから熱中症の発症を検知する熱中症発症検知システムに関する。温暖化の進展に伴い、毎年のように初夏から秋にかけて熱中症関連の話題がニュースを騒がせている。今後、高齢化と地球温暖化が進展するにつれて、さらに熱中症発症者数が増加することが予想され、熱中症対策が求められる。熱中症は立ちくらみや気分が悪くなるなどのI度(軽度)の症状・徴候を認めた時点で、休息や水分補給など速やかに適切な対処ができれば、本来は救急搬送や死亡までは至ることはない。したがって、熱中症発症前に発症を予知してアラートするシステムがあれば、熱中症による被害を大幅に軽減できるはずである。
【0012】
熱中症リスク評価基準として、暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature; WBGT)が一般的であり、環境省のウェブWebサイトでも毎日各地域のWBGTが公開されている。WBGTは温度・日射・気温から計算される値で、これが28度を超えると熱中症患者が著しく増加する。しかしながら、WBGTはあくまで環境を評価するものに過ぎず、熱中症発症リスクはそれぞれの人の体調や暑熱環境耐性、置かれている状況や活動などによって大きく異なるため、WBGTに代わる新たなリスク評価が求められる。そこで、各人が身に付けたセンサで身体状態を測定し、センサ情報を解析して近い将来に熱中症になる可能性をリアルタイムに判定できれば、熱中症発症前にアラームを発報することで発症を回避できるようになる。
【0013】
熱中症では、I度で頻脈、大量発汗、めまい、立ちくらみ、気分が悪くなるなどの症状が起きるが(日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン」、2015)、これは自律神経系と関わりのある症状であり、個人の自律神経活動を定量化できれば、WBGTの代替になりうる可能性がある。自律神経活動を反映する生理指標として、心拍変動(Heart rate Variability; HRV)が知られている。これは心拍の間隔が1拍毎にミリ秒のオーダでわずかに変動するという現象である。自律神経系は循環、呼吸、消化、発汗・体温調節や代謝などを制御しているため、多くの疾患が自律神経活動と関係しており、HRV解析は様々な疾患の診断に活用できる。熱中症は深部体温が異常上昇することで発症するが、実際に深部体温とHRV変化に関係があることも報告されている。直腸温など深部体温を継続的にモニタすることは困難であるが、HRVをモニタすることで熱中症発症前に兆候を捉えることができると期待される。
【0014】
本実施例は、HRVデータと熱中症を結びつける数理モデル、特に熱中症発症を予測できるアルゴリズムを示す。熱中症発症予測アルゴリズムの開発には、健常期と熱中症前兆期双方のHRVデータが求められる。しかしながら、熱中症好発環境下でデータ収集を試みても、やはり熱中症前兆期のHRVデータを大量に採取するのは困難である。そこで、本実施例では、健常状態のHRVデータのみから何らかの異常を検出し、それが熱中症発症前兆期を表しているのかを判定する異常検知AIを示す。具体的には、収集した健常期HRVデータより、機械学習の一種である異常検知手法を用いて学習させ、明らかに健常期HRVデータとは異なるHRVデータが測定されたときに、アラームを発報する。異常検知手法として、例えば、多変量統計的プロセス管理(Multivariate Statistical Process Control; MSPC)が使用される。
【0015】
図1(a)-(b)は、熱中症発症検知システム1000の構成を示す。熱中症発症検知システム1000は、(1)熱中症の発症の検知に必要なモデル(以下、「熱中症発症検知モデル」という)を構築するモデル構築動作と、(2)構築した熱中症発症検知モデルを用いて熱中症の発症を検知する発症検知動作とを実行する。図1(a)は、モデル構築動作を実行するための熱中症発症検知システム1000の構成を示す。熱中症発症検知システム1000は、複数の電極100、心拍センサ200、第1情報処理装置300aを含む。提供者10は、モデルを構築するために必要な心電信号を提供する人であり、かつ循環器系に疾患のない人である。また、モデルの構築には、提供者10が熱中症を発症していないときの心電信号が使用される。提供者10は、複数存在する。
【0016】
提供者10の体表には3つの電極100が取り付けられる。3つの電極100は、例えばプラス電極と、マイナス電極と、接地電極とから構成される。3つの電極100は心拍センサ200に接続される。心拍センサ200は、3つの電極100を介して提供者10について計測した心電信号からR波を抽出する。例えば、R波はmsecオーダで抽出される。また、心拍センサ200は、Bluetooth(登録商標) LE等の無線通信機能を有し、抽出したR波を示す信号を無線送信する。
【0017】
第1情報処理装置300aは、例えばコンピュータである。第1情報処理装置300aは、Bluetooth(登録商標) LE等の無線通信機能を有し、心拍センサ200から無線送信されるR波を示す信号を受信する。第1情報処理装置300aは、R波を示す信号をもとに、熱中症発症検知モデルを生成する。熱中症発症検知モデルの生成については後述する。
【0018】
図1(b)は、熱中症の発症を検知するための熱中症発症検知システム1000の構成を示す。熱中症発症検知システム1000は、複数の電極100、心拍センサ200、第2情報処理装置300bを含む。被検者20は、熱中症の発症の検知対象なる人である。被検者20の体表には3つの電極100が取り付けられる。心拍センサ200は、3つの電極100を介して被検者20について計測した心電信号からR波を抽出する。心拍センサ200は、抽出したR波を示す信号を無線送信する。
【0019】
第2情報処理装置300bは、例えばスマートフォンである。第2情報処理装置300bは、Bluetooth(登録商標) LE等の無線通信機能を有し、心拍センサ200から無線送信されるR波を示す信号を受信する。第2情報処理装置300bは、第1情報処理装置300aにおいて生成された熱中症発症検知モデルを予め記憶しており、熱中症発症検知モデルを使用しながら、R波を示す信号をもとに熱中症の発症を検知する。第1情報処理装置300aと第2情報処理装置300bは情報処理装置300として一体的に構成されてもよい。以下では、(1)モデル構築動作、(2)発症検知動作の順に説明する。
【0020】
(1)モデル構築動作
図2は、第1情報処理装置300aの構成を示す。第1情報処理装置300aは、通信部310、取得部320、生成部330、構築部340、記憶部350を含む。通信部310は、心拍センサ200から無線送信されたR波を示す信号を受信する。通信部310は、受信した信号からR波を示すデータ(以下、「R波データ」という)を生成して取得部320に出力する。R波データは、例えば、R波を示す信号の振幅がしきい値電圧以上である場合に「1」となり、しきい値電圧以上でない場合に「0」となるデジタルデータである。つまり、R波データは、心電信号におけるR波に対応する期間が「1」に設定され、それ以外の期間が「0」に設定された矩形パルス列である。
【0021】
取得部320は、通信部310からR波データを受けつける。取得部320は、R波データをもとに、R波の間隔を示すRRI変数の時系列データであるRRIデータを取得する。RRIデータでは、被検者20の心電信号におけるR波の間隔が示される。その際、取得部320は、R波データから、時間的に隣り合う2つの矩形パルスの立下り時刻の時間間隔をRRI変数として算出し、算出した当該RRI変数を時系列に並べることにより、RRIデータを生成する。具体的に説明すると、取得部320は、まず、R波データについて、R波が検出された第1時刻と、直前にR波が検出された第2時刻との間の時間間隔を、上記第1時刻におけるRRI値として算出していく。これにより、RRI値の経時変化を示すデータが生成される。その後、取得部320は、RRI値の経時変化を示すデータについてスプライン補間を行い等間隔にサンプリングすることで、時間的に等間隔に並んだRRI値の経時変化を示すデータをRRIデータとして生成する。つまり、取得部320が、心電信号から得られる時間間隔が異なる経時データについて、スプライン補間(補間処理)を行い等間隔にサンプリングすることにより、時間的に等間隔に並んだRRIデータを生成する。取得部320は、RRIデータを生成部330に出力する。
【0022】
生成部330は、取得部320において取得したRRIデータ(RRI変数)をもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた指標データ(以下、「HRV(Heart Rate Variability)指標データ」という)を生成する。HRV指標データは、RRI平均値、RRI標準偏差、RMSSD、トータルパワー、NN50、pNN50、LF、HF、LF/HF比率、CVの10種類のHRV指標を含む。これらのHRV指標データは、時間領域のHRV指標データと、周波数領域のHRV指標データとに分類される。RRI平均値、RRI標準偏差、RMSSD、トータルパワー、NN50、pNN50、CVは、時間領域のHRV指標データである。一方、LF、HF、LF/HF比率は、周波数領域のHRV指標データである。時間領域のHRV指標データは、RRIデータから直接算出され、周波数領域のHRV指標データは、RRIデータから得られるパワースペクトルから算出される。
【0023】
時間領域のHRV指標データのうち、RRI平均値は、時間窓内(例えば、時刻t-180sec~時刻t)におけるRRI値の平均値である。RRI標準偏差は、時間窓内に含まれるRRIデータの標準偏差である。RMSSDは、時間窓内に含まれるRRIデータについて、時間的に隣り合う2つのRRIデータの差分値の二乗平均の平方根である。トータルパワーは、時間窓内に含まれるRRIデータの2乗和である。NN50は、時間窓内に含まれるRRIデータについて、時間的に隣り合う2つのRRIデータのペアのうち、その差分が50msecを超えるペアの数である。pNN50は、NN50を、時間窓内におけるRRIデータの総数で除して得られる値である。CVは、RRI標準偏差をRRI平均値で除算して得られる値である。
【0024】
周波数領域のHRV指標データに関して、生成部330は、時間窓(時刻t(第1時刻)と時刻t-180sec(第3時刻)との間)に含まれるRRIデータに対応するパワースペクトルを算出する。生成部330は、パワースペクトルにおける0.15Hz~0.4Hz(第1周波数帯域)の積分値をHFとして生成する。生成部330は、パワースペクトルにおける0.04~0.15Hz(第2周波数帯域)の積分値LFとして生成する。LF/HF比率は、LFをHFで除算して得られる値であり、ストレス状態になるほど大きくなる。
【0025】
ここでは、これらのHRV指標データを生成する処理を説明する。生成部330は、時間窓の長さをWに設定する。また、RRIデータのデータ総数は、L(Lは正の整数)であるとする。生成部330は、RRIデータの取得開始時刻から時間窓W以上の時間が経過した時刻t[l](≧W)の中から、時刻が最小となる時刻t[l0]を選択する。ここで、時刻t[l]は、l番目のRRIデータに対応する時刻を示す。また、l番目のRRIデータに対応する時刻と、l+1番目のRRIデータに対応する時刻との間隔は、時間Δtである。生成部330は、時刻t[l]-W+Δt~時刻t[l](l≧l0)の間に対応するRRIデータを切り出す。生成部330は、切り出したRRIデータから前述の複数種類の指標値が含まれたHRV指標データを生成する。生成部330は、生成したHRV指標データに含まれる複数種類の指標値のそれぞれに対して、時間窓毎に、トータルパワーで正規化する。これに続いて、生成部330は、切り出す対象となるRRIデータを変更するために、データ番号lを1だけインクリメントし、同様の処理を繰り返す。
【0026】
図3(a)-(i)は、生成部330において生成されるHRV指標データの一例を示す。図3(a)がトータルパワーを示し、図3(b)がRRI平均値を示し、図3(c)がRRI標準偏差を示し、図3(d)がpNN50を示し、図3(e)がRMSSDを示し、図3(f)がNN50を示し、図3(g)がLFを示し、図3(h)がHFを示し、図3(i)がLF/HF比率を示す。これらの図において、「A1」は熱中症症状を申告したタイミングを示し、「B1」は、「A1」で申告した熱中症症状に対して休憩を申告したタイミングを示す。また、「A2」は熱中症症状を申告したタイミングを示し、「B2」は、「A2」で申告した熱中症症状に対して休憩を申告したタイミングを示す。図示のごとく、熱中症症状・休憩を申告した前後でHRV指標に変化がある。図2に戻る。このようなHRV指標データは、複数の提供者10のそれぞれに対して生成される。生成部330は、複数の提供者10のそれぞれに対するHRV指標データを構築部340に出力する。
【0027】
構築部340は、生成部330において生成したHRV指標データに対して主成分分析を実行することによって、熱中症発症検知モデルを生成する。その前処理として、構築部340は、複数の提供者10のHRV指標データを使用して、HRV指標毎に平均値を算出する。また、構築部340は、HRV指標データに含まれる複数種類のHRV指標のそれぞれに対して平均値を減算することによって、新たなHRV指標データ(以下、これもまた「HRV指標データ」という)を生成する。
【0028】
次に、構築部340は、主成分分析処理により、複数のHRV指標から主成分と呼ばれる新たな合成変数を生成する。HRV指標データを表すデータ行列をX∈RN×Pと示す。ここで、PはHRV指標の種類の数を表し、Nは各HRV指標に含まれるデータ数を示す。HRV指標が10種類の場合、P=10となる。各HRV指標は、平均0に中心化されている。さらに、各HRV指標がトータルパワーで除算されることによって、各HRV指標に対する正規化がなされてもよい。
【0029】
データ行列Xの特異値分解は次のように示される。
【数1】
UとVとは直交行列であり、対角行列Sの対角要素には、特異値srが降順に並ぶ。採用する主成分の数をRとすると、第r主成分は、負荷量行列Vの第r列vrで与えられる。第r列vrは、P次元のベクトルで表される。
【0030】
また、第r主成分得点trは次のように示される。
【数2】
urは、行列Uの第r列を示す。R個の主成分それぞれに対応する主成分得点をまとめると、次のように示される。
【数3】
【0031】
HRV指標の個数Pよりも主成分の個数Rのほうが小さい場合、HRV指標データを表現するための空間がP次元からR次元へ圧縮される。この場合、P次元空間の基底が、主成分となり、主成分得点がR次元空間における座標となる。R次元空間におけるデータ行列をX’∈RN×Rとすると、X’とP次元空間におけるデータ行列Xとの間には次の関係が成立する。
【数4】
【0032】
P次元からR次元に圧縮したことにより失われる情報は、予測誤差と呼ばれる。この予測誤差を示すデータ行列Eは次のように示される。
【数5】
【0033】
構築部340は、時刻t、時刻t-Δt、時刻t-2ΔtにおけるHRV指標データから構成される30個のHRV指標(30次元のデータ)を使用して、主成分分析処理を行う。例えば、構築部340は、主成分数を「4」に設定し、時間Δtを1secに設定する。この場合、HRV指標データを表現するための空間が、30次元から4次元に圧縮されることになる。
【0034】
これに続いて、構築部340は、主成分分析処理により得られる主成分得点および予測誤差からT統計量およびQ統計量(管理値)を算出する。T統計量は、主成分分析により得られる主成分得点から次のように算出される。
【数6】
σ(tr)は、第r主成分得点trの標準偏差であり、T統計量は、R次元空間の原点からのマハラノビス距離に対応する。
【0035】
Q統計量は、主成分分析により得られる主成分得点から次のように算出される。
【数7】
式(7)は、式(5)で表される予測誤差の2乗ノルムに相当する。
【0036】
図4は、構築部340における処理概要を示す。ここでは、一例として、第1主成分から第3主成分により構成される3次元の空間を想定する。3次元空間の原点は、データの平均値を示す。このような3次元空間において、正常なデータが存在すべき平面が部分空間500と示される。T統計量は、部分空間500でのサンプルと原点のマハラノビス距離を示し、Q統計量は、部分空間500とサンプルの2乗距離を示す。図2に戻る。
【0037】
構築部340は、T統計量およびQ統計量に対する管理限界を決定する。これにより、T統計量およびQ統計量それぞれに対して管理限界以下である管理領域が設定される。例えば、T統計量に対する管理限界は、正常時のT統計量の91.5%に設定され、Q統計量に対する管理限界は、正常時のQ統計量の91.5%に設定される。ここで、91.5%に限定されない。最終的に、構築部340は、生成した熱中症発症検知モデルと、T統計量およびQ統計量それぞれに対する管理領域とを記憶部350に記憶する。熱中症発症検知モデルは、式(6)および式(7)の関係式で表現され、負荷量行列Vを含む。
【0038】
(2)発症検知動作
図5は、第2情報処理装置300bの構成を示す。第2情報処理装置300bは、通信部310、取得部320、生成部330、記憶部350、検知部360、通知部370を含む。通信部310は、これまでと同様に、心拍センサ200から無線送信されたR波を示す信号を受信し、受信した信号をもとにR波データを生成する。通信部310は、R波データを取得部320に出力する。取得部320も、これまでと同様に、通信部310からR波データを受けつけ、R波データをもとにRRIデータを取得する。取得部320は、RRIデータを生成部330に出力する。
【0039】
生成部330は、取得部320において取得したRRIデータ(RRI変数)をもとに、HRV指標データを生成する。発作検知動作において生成されるHRV指標データを「第1HRV指標データ」と呼ぶ場合、モデル構築動作において生成されるHRV指標データは「第2HRV指標データ」と呼ばれる。HRV指標データは、これまでと同様に、RRI平均値、RRI標準偏差、RMSSD、トータルパワー、NN50、pNN50、LF、HF、LF/HF比率、CVの10種類のHRV指標を含む。しかしながら、モデル構築動作では、規格化の後に、切り出す対象となるRRIデータを変更して、HRV指標データの生成処理が繰り返されていたが、発症検知動作では、このようなHRV指標データの生成処理の繰り返しがなされない。具体的には、生成部330は、RRIデータを取得する毎に、当該RRIデータに対応する時刻と、当該時刻から前述の時間窓分だけ過去の時刻との間におけるRRIデータを用いて、各HRV指標を生成する。例えば、生成部330は、180secの時間窓を設定した場合、時刻tにおけるRRIデータを取得すると、時刻t-180sec+Δtから時刻tまでの間のRRIデータから時刻tにおける各HRV指標を生成する。生成部330は、被検者20に対するHRV指標データを検知部360に出力する。
【0040】
記憶部350は、モデル構築動作において生成された熱中症発症検知モデルと、T統計量およびQ統計量のそれぞれに対する管理領域とを記憶する。検知部360は、記憶部350に記憶した熱中症発症検知モデルを使用して、生成部330において生成したHRV指標データから算出される管理値をもとに、被検者20における熱中症の発症を検知する。具体的に説明すると、検知部360は、熱中症発症検知モデルを使用して、時刻t、時刻t-Δt、時刻t-2Δtにおける30個のHRV指標を含むHRV指標データに対して主成分分析を実行することにより主成分得点および予測誤差を算出してから、主成分得点および予測誤差をもとにT統計量およびQ統計量を管理値として算出する。前述のごとく、熱中症発症検知モデルは、式(6)および式(7)の関係式で表現される。
【0041】
検知部360は、T統計量およびQ統計量の少なくとも1つが管理領域を判定期間以上外れ続けた場合、被検者20における熱中症の発症を検知する。判定期間は、例えば、30秒に設定されるが、これに限定されない。検知部360におけるこのような処理はMSPCである。
【0042】
通知部370は、例えばスピーカから構成され、検知部360において熱中症の発症が検知された場合に、検知部360から駆動信号が入力されて鳴動する。通知部370は、スピーカに限定されず、例えば、光を点滅させることにより提供者10に熱中症の発症を知らせてもよい。図6(a)-(c)は、第2情報処理装置300bにおける処理概要を示す。図6(a)は、RRIデータの時間変化を示し、図6(b)は、T統計量の時間変化を示し、図6(c)は、Q統計量の時間変化を示す。これらの図において、「C」は熱中症症状を申告したタイミングを示す。熱中症症状を申告したタイミング「C」の20分前までに、鳴動期間600において通知部370からの鳴動がなされている。
【0043】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他のLSI(Large Scale Integration)で実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ハードウエアとソフトウエアの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0044】
以上の構成による第2情報処理装置300b動作を説明する。図7は、第2情報処理装置300bによる処理手順を示すフローチャートである。取得部320は、RRIデータを取得する(S10)。生成部330は、HRV指標データを生成する(S12)。検知部360は、T統計量、Q統計量を算出する(S14)。T統計量、Q統計量の少なくとも1つが判定期間以上にわたって管理領域外であれば(S16のY)、通知部370は熱中症の発症を通知する(S18)。T統計量、Q統計量の少なくとも1つが判定期間以上にわたって管理領域外でなければ(S16のN)、ステップ18はスキップされる。
【0045】
本実施例によれば、提供者のHRV指標データに対して主成分分析がなされることによって生成された熱中症発症検知モデルを使用して、被検者のHRV指標データから算出される管理値をもとに、被検者における熱中症の発症を検知するので、熱中症の発症を容易に検知できる。また、提供者の通常時における心電信号を使用するので、熱中症発症検知モデルを容易に生成できる。また、熱中症発症検知モデルが容易に生成されるので、熱中症の発症を容易に検知できる。また、T統計量およびQ統計量のそれぞれを独立して監視するので、熱中症の発症が現れたことに伴う、指標データ間の相関関係の変化を検知することができる。また、指標データ間の相関関係の変化が検知されるので、熱中症の発症の検知精度を向上できる。また、複数種類のHRV指標にCVが含まれるので、熱中症の発症の検知精度を向上できる。
【0046】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータから熱中症の発症を検知する熱中症発症検知システムに関する。実施例1では、異常検知手法としてMSPCを使用するが、実施例2は、異常検知手法として自己符号化器(オートエンコーダ)を使用する。実施例2に係る熱中症発症検知システム1000、第2情報処理装置300bは、図1(a)-(b)、図5と同様のタイプである。ここでは、実施例1との差異を中心に説明する。
【0047】
実施例2では、実施例1のモデル構築動作の代わりに学習動作が実行される。ここでは、(1)学習動作、(2)発症検知動作の順に説明する。
(1)学習動作
図8は、第1情報処理装置300aの構成を示す。第1情報処理装置300aは、通信部310、取得部320、生成部330、記憶部350、学習部380を含む。通信部310、取得部320、生成部330は、実施例1と同一である。学習部380は、自己符号化器の学習を実行する。その前処理として、学習部380は、複数の提供者10のHRV指標データを使用して、HRV指標毎に平均値を算出する。また、学習部380は、HRV指標データに含まれる複数種類のHRV指標のそれぞれに対して平均値を減算することによって、新たなHRV指標データ(以下、これもまた「HRV指標データ」という)を生成する。学習部380は、このような前処理を省略してもよい。
【0048】
次に、学習部380は、HRV指標データを使用して自己符号化器を学習する。図9は、学習部380における自己符号化器の構成を示す。図9に示された自己符号化器は一例であり、4層以上の自己符号化器であってもよい。自己符号化器は、複数のノード700を含むニューラルネットワークであり、入力を訓練データとして使用して学習することによって、各ノード700の係数を導出する。ここでは、自己符号化器の入力がx、x、・・・、xと示され、自己符号化器の出力がX、X、・・・、Xと示される。x、x、・・・、xは、HRV指標データに含まれる複数種類のHRV指標のそれぞれを示す。学習部380は、HRV指標データに含まれる複数種類のHRV指標を入力と出力に設定することによって、各ノード700の係数を導出する。つまり、自己符号化器は、HRV指標データを入力して得られた出力データと、HRV指標データとが近くなるように学習される。学習部380は、導出した各ノード700の係数を記憶部350に記憶する。
【0049】
(2)発症検知動作
図5の第2情報処理装置300bにおける通信部310、取得部320、生成部330は、実施例1と同一である。検知部360は、図9に示された自己符号化器の各ノード700に、記憶部350に記憶した係数を設定する。検知部360は、生成部330において生成したHRV指標データを自己符号化器に入力することによって、出力データを取得する。発症検知動作において生成されるHRV指標データ、出力データを「第1HRV指標データ」、「第1出力データ」と呼ぶ場合、学習動作において生成されるHRV指標データ、出力データは「第2HRV指標データ」、「第2出力データ」と呼ばれる。
【0050】
検知部360は、HRV指標データと出力データとの差異を導出する。差異は、例えば、HRV指標データと出力データとの間で互いに対応する成分の差分の2乗を計算し、差分の2乗値を加算することによって導出される。検知部360は、差異としきい値とを比較し、差異が判定期間以上にわたってしきい値よりも大きい場合に、被検者20における熱中症の発症を検知する。判定期間は、例えば、実施例1と同様に設定される。このように、検知部360は、出力データとHRV指標データとをもとに、被検者20における熱中症の発症を検知する。
【0051】
以上の構成による第2情報処理装置300b動作を説明する。図10は、第2情報処理装置300bによる処理手順を示すフローチャートである。取得部320は、RRIデータを取得する(S50)。生成部330は、HRV指標データを生成する(S52)。検知部360は、自己符号化器から出力データを取得する(S54)。HRV指標データと出力データとの差異が判定期間以上にわたってしきい値よりも大きければ(S56のY)、通知部370は熱中症の発症を通知する(S58)。HRV指標データと出力データとの差異が判定期間以上にわたってしきい値よりも大きくなければ(S56のN)、ステップ58はスキップされる。
【0052】
本実施例によれば、提供者の通常時のHRV指標データと出力データとが近くなるように学習されている自己符号化器に、被検者のHRV指標データを入力して得られた出力データと、被検者のHRV指標データとをもとに、熱中症の発症を検知するので、熱中症の発症を容易に検知できる。また、被検者のHRV指標データと出力データとの差異がしきい値よりも大きい場合に、被検者における熱中症の発症を検知するので、熱中症の発症を容易に検知できる。
【0053】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の熱中症発症検知装置は、被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータを取得する取得部と、取得部において取得したRRIデータをもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた第1指標データを生成する生成部と、複数種類の指標のそれぞれについての指標値から少なくとも1つの管理値を算出する熱中症発症検知モデルを使用して、生成部において生成した第1指標データから算出される管理値をもとに、被検者における熱中症の発症を検知する検知部とを備える。熱中症発症検知モデルは、熱中症を発症していない提供者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータをもとに生成された第2指標データであって、かつ心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値が含まれた第2指標データに対して主成分分析がなされることによって生成されている。
【0054】
この態様によると、第2指標データに対して主成分分析がなされることによって生成された熱中症発症検知モデルを使用して、第1指標データから算出される管理値をもとに、被検者における熱中症の発症を検知するので、熱中症の発症を容易に検知できる。
【0055】
検知部は、熱中症発症検知モデルを使用して、第1指標データに対して主成分分析を実行することにより主成分得点および予測誤差を算出してから、主成分得点および予測誤差をもとにT統計量およびQ統計量を管理値として算出し、検知部は、T統計量およびQ統計量の少なくとも1つが管理領域を外れた場合、被検者における熱中症の発症を検知してもよい。この場合、T統計量およびQ統計量のそれぞれを独立して監視するので、熱中症の発症が現れたことに伴う、指標データ間の相関関係の変化を検知することができる。
【0056】
本開示の別の態様もまた、熱中症発症検知装置である。この装置は、被検者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータを取得する取得部と、取得部において取得したRRIデータをもとに、心拍に関する複数種類の指標のそれぞれについての指標値が含まれた第1指標データを生成する生成部と、生成部において生成した第1指標データを自己符号化器に入力して得られた第1出力データと、第1指標データとをもとに、被検者における熱中症の発症を検知する検知部とを備える。自己符号化器は、熱中症を発症していない提供者の心電信号におけるR波の間隔が示されたRRIデータをもとに生成された第2指標データであって、かつ心拍に関する複数種類の指標それぞれについての指標値が含まれた第2指標データを入力して得られた第2出力データと、第2指標データとが近くなるように学習されている。
【0057】
この態様によると、第2出力データと、第2指標データとが近くなるように学習されている自己符号化器に第1指標データを入力して得られた第1出力データと、第1指標データとをもとに、被検者における熱中症の発症を検知するので、熱中症の発症を容易に検知できる。
【0058】
検知部は、第1出力データと、第1指標データとの差異がしきい値よりも大きい場合に、被検者における熱中症の発症を検知してもよい。この場合、第1出力データと、第1指標データとの差異がしきい値よりも大きい場合に、被検者における熱中症の発症を検知するので、熱中症の発症を容易に検知できる。
【0059】
複数種類の指標には、RRIデータの標準偏差をRRIデータの平均値で除算したCVが含まれる。この場合、複数種類の指標にCVが含まれるので、熱中症の発症の検知精度を向上できる。
【0060】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0061】
10 提供者、 20 被検者、 100 電極、 200 心拍センサ、 300 情報処理装置、 310 通信部、 320 取得部、 330 生成部、 340 構築部、 350 記憶部、 360 検知部、 370 通知部、 380 学習部、 500 部分空間、 600 鳴動期間、 700 ノード、 1000 熱中症発症検知システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10