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特許7431422カーボンナノ構造体の堆積のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】カーボンナノ構造体の堆積のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/186 20170101AFI20240207BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20240207BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20240207BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C01B32/186
C23C16/26
C23C16/505
C23C16/54
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022534353
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2019084734
(87)【国際公開番号】W WO2021115596
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】513114342
【氏名又は名称】インスティテュート ヨージェフ ステファン
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ザプロトニック・ロック
(72)【発明者】
【氏名】モーゼティック・ミラン
(72)【発明者】
【氏名】プリムク・グレガー
(72)【発明者】
【氏名】ベセル・エーレンカー
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】小田 修
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にカーボンナノ構造体の層を堆積する方法であって、前記カーボンナノ構造体は前記基板上に立設するランダム配向グラフェンシートのアレイからなり、前記方法は、
処理チャンバを供給するステップであって、該処理チャンバがチャンバ壁を有し、該処理チャンバが基板位置ゾーンを有する、ステップと、
前記処理チャンバにおける前記基板位置ゾーンで基板を供給するステップであって、前記チャンバ壁の内部表面がサンプル位置ゾーンに面する、ステップと、
前記処理チャンバを排気するステップと、
前記処理チャンバに3~100Paの範囲の圧力で処理ガスを供給するステップであって、該処理ガスが少なくとも95%以上の一酸化炭素ガスを含む、ステップと、
前記処理チャンバにおいて少なくとも1秒の期間、気体プラズマを生成及び持続させるステップであって、該気体プラズマが少なくとも0.1MWm-3の電力密度を有する、ステップと、
前記基板を500℃よりも高い温度まで加熱するステップと、
前記チャンバ壁の前記内部表面を200℃未満の温度に維持するステップと、
前記基板上に前記カーボンナノ構造体の層を成長させるステップと、
を含み、
圧力によって除算される前記電力密度が少なくとも0.1MWm -3 /Paである、方法。
【請求項2】
基板上にカーボンナノ構造体の層を堆積する方法であって、前記カーボンナノ構造体は前記基板上に立設するランダム配向グラフェンシートのアレイからなり、前記方法は、
処理チャンバを供給するステップであって、該処理チャンバがチャンバ壁を有し、該処理チャンバが基板位置ゾーンを有する、ステップと、
前記処理チャンバにおける前記基板位置ゾーンで基板を供給するステップであって、前記チャンバ壁の内部表面がサンプル位置ゾーンに面する、ステップと、
固体または液体であり、且つ、凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料を、前記処理チャンバにおける前記基板位置ゾーンで又は前記処理チャンバにおける前記基板位置ゾーンに隣接して供給するステップと、
前記処理チャンバを排気するステップと、
前記処理チャンバに3~100Paの範囲の圧力で処理ガスを供給するステップであって、該処理ガスが92%以上の酸素及び/又は水蒸気を含む、ステップと、
前記処理チャンバにおいて少なくとも1秒の期間、気体プラズマを生成及び持続させるステップであって、該気体プラズマが少なくとも0.1MWm-3の電力密度を有する、ステップと、
前記基板を500℃よりも高い温度まで加熱するステップと、
前記カーボン含有前駆体材料を500℃よりも高い温度まで加熱するステップと、
前記チャンバ壁の前記内部表面を200℃未満の温度に維持するステップと、
前記基板上に前記カーボンナノ構造体の層を成長させるステップと、
を含み、
圧力によって除算される前記電力密度が少なくとも0.1MWm -3 /Paである、方法。
【請求項3】
前記処理ガスが酸素からなる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記処理ガスが水蒸気からなる、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料が固体であり、かつグラファイトである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料が固体であり、かつポリマーである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料が液体であり、かつポリマー又はタールである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基板が気体プラズマの中を移動し、その結果として連続様式での堆積を可能とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノ構造体の堆積のための方法及び装置に関する。これらは、ここでは(「カーボンナノウォ-ル」と呼ばれることもある)多層グラフェンシートといわれることもある。それらは、グラフェンメッシュ及び/又は3次元グラフェンメッシュといわれることもある。有利なことに、本発明の実施形態は、高い表面積対質量比の材料の堆積を可能とする。堆積された材料は、放射線吸収デバイス、燃料電池、光起電力デバイス、スーパーキャパシタ及びスーパーバッテリなどの多くの用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
2次元グラファイト材料は、電気化学及び光電デバイス、マイクロエレクトロニクス並びに光学などの多くの用途において有用である。基板上に垂直に配向され、又はナノシートのメッシュを形成するグラフェンシートの薄膜の形態でのグラフェン材料は、特に重要である。そのような薄膜は、(例えば)マイクロメートルのオーダーの厚さを有し得る。それらは、通常、各々が約1平方マイクロメートル未満の表面積及び数ナノメートル~数十ナノメートルのオーダーの厚さを有する多くのグラフェンシートからなる。隣り合うシート間の距離を数十ナノメートル~数マイクロメートルの範囲とすることができる。そのような薄膜内のグラフェンシートの総表面積は、そのような膜でコーティングされた生成物の幾何学的面積よりも桁違いに大きい。
【0003】
グラフェンシートは電気的及び熱的に伝導性であり、よってそのような薄膜は、触媒作用、電池及びコンデンサ内などにおいて、大きな表面積対質量比並びに良好な電気及び熱伝導性が有益となるいずれの用途においても需要が高い。そのような薄膜は恐らく光量子の最も効率的な吸収体となるため、それらは光触媒作用及び光起電力技術において並びに光吸収体に対して非常に望ましい。
【0004】
カーボンナノストリップ、カーボンナノメッシュ、カーボンナノウォール、垂直配向グラフェンシート、多層グラフェンシート、多層カーボンナノウォールなどを含む上述のタイプの材料に関して、当技術分野では様々な表現が採用されている。
【0005】
グラフェンシートの薄膜の堆積についての最初の科学的報告は、おそらくは論文、Y.Wu他、Carbon nanowalls grown by microwave plasma enhanced chemical vapour deposition、Adv.Mater.14(2002)64-67となる。著者らは、気体状前駆体(水素と混和したメタン)を用いた。プラズマ条件に応じて、メタン分子が解離してCHラジカルを形成した。ラジカルは、適切な触媒(ニッケル及び鉄)の表面に接着し、ランダム配向グラフェンシートの形態でそこに蓄積した。この手順は、Wu他による先駆的な研究以来、多くの著者によって適切な変更を加えて使用されてきた。
【0006】
様々な用途に適したグラフェンシートからなる薄膜のプラズマ刺激堆積における最近の進歩を以下のように考察する。
【0007】
Yeh及びHsu「Method and system for growth of graphene nanostripes by plasma enhanced chemical vapour deposition、米国特許出願公開第2019/093227号」は、メタン、水素及びアルゴンにジクロロベンゼンを添加してカーボンナノストリップの成長を容易にした。ジクロロベンゼンの少量の混和物がカーボンナノウォールの薄膜の堆積に有用であることが見出され、一方で、大量の混和物がカーボンナノメッシュの成長を容易にする。Ifuku他「Graphene structure forming method and graphene structure forming apparatus、米国特許出願公開第2019/085457号」は、遠隔プラズマ供給源を用いて炭化水素前駆体を解離した。様々な実施形態が開示されたが、グラフェンナノシートの薄膜の堆積に関して、アルゴン及び水素を主ガスとして有するカーボン含有前駆体としてエチレンを用いた場合に最良の結果が観察された。適切な圧力は1~600Paであり、基板温度は400~800℃であった。
【0008】
Holbner他「Toroidal plasma processing apparatus、欧州特許第2974558号」は、ダイヤモンドからグラフェンまでの種々のカーボン材料の薄膜の堆積のための強力なプラズマ供給源を開示した。彼らは、古典的なガス混合物(メタン、アルゴン及び水素)を約5~10kWの放電電力で使用した。任意の基板上で成長する材料のタイプは、種々のパラメータに依存した。
【0009】
二酸化炭素内で生成されたプラズマを用いたナノカーボンの堆積を開示する文献において、いくつかの報告がある。Toyoshimaは、マイクロ波プラズマによって励起されたCOを用いてカーボンナノチューブ、カーボンオニオン及び他のナノカーボンを生成した「米国特許出願公開第2015/0007773号」。水素を担体ガスとして用いた。CO分子は、プラズマ条件に応じてO原子及びC原子に解離した。O原子は水素と反応して水蒸気を形成し、一方で、炭素をマイクロ波反応器のガラス壁に堆積した。最良の結果は、H内の低い濃度のCOに対して報告された。マイクロ波プラズマ及び二酸化炭素を用いる同様のデバイスも、水素の代わりに水蒸気が担体ガスとして用いられることを除いて、国際公開第2016/024301号に開示されている。
【0010】
中国特許出願公開第109179388号は、グラフェンシートを堆積するために、第1のステップで基板の水素化が用いられ、次のステップで一酸化炭素が用いられることを除いて、米国特許出願公開第2015/0007773号と同様の方法を開示する。
【0011】
Mori他「Synthesis of carbon nanowalls by plasma-enhanced chemical vapour deposition in a CO/H2 microwave discharge system、Diamond&Related Materials 20(2011)1129-1132」は、単結晶シリコン基板上のカーボンナノウォールの成長速度が比較的高いことを開示している。Mori他は、花状の構造体に優先してカーボンナノウォールを形成するために、ガス流内に約8%のH2を含むことが必要であることを観察した。本発明者らは、高品質のカーボンナノウォールは、Mori他の開示において、比較的短い時間量(約60秒まで)でのみ成長すると考えている。より長い堆積時間では、コーティングは、明らかにアモルファスカーボン、ダイヤモンド微結晶、煤及び/又は黒鉛粒を含み、品質が低下する。
【0012】
Saito他「Diamond synthesis from CO-H mixed gas plasma、Y.Saito、K.Sato、K.Gomi、H.Miyadera、J.Mater.Sci.25(1990)p.1246」は、純粋なCOを用いるカリフラワー状の構造体の成長を報告した。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、任意の基板上にカーボンナノ構造体の形成に対するさらに向上したアプローチを提供するために考案され、上記の用途において特定の有用性を有し、かつ向上した特性を有し得る。
【0014】
第1の態様では、本発明は、基板上にカーボンナノ構造体の層を堆積する方法を提供し、カーボンナノ構造体は基板上に立設するランダム配向グラフェンシートのアレイからなり、方法は、
処理チャンバを供給するステップであって、処理チャンバがチャンバ壁を有し、処理チャンバが基板位置ゾーンを有する、ステップと、
処理チャンバにおける基板位置ゾーンで基板を供給するステップであって、チャンバ壁の内部表面がサンプル位置ゾーンに面する、ステップと、
処理チャンバを排気するステップと、
処理チャンバに1~1000Paの範囲の圧力で処理ガスを供給するステップであって、処理ガスが一酸化炭素ガスを含む、ステップと、
処理チャンバにおいて少なくとも1秒の期間、気体プラズマを生成及び持続させるステップであって、気体プラズマが少なくとも0.1MWm-3の電力密度を有する、ステップと、
基板を500℃よりも高い温度まで加熱するステップと、
チャンバ壁の内部表面を300℃未満の温度に維持するステップと、
基板上にカーボンナノ構造体の層を成長させるステップと、
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、処理ガスは、実質的にCOガスのみからなる。したがって、本方法では担体ガスを使用しないことが可能であり、場合によっては好ましい。しかし、実用的なシステムでは、処理チャンバが、いくらかの残留大気、特に水を含み得ることが理解されるはずである。HOは、プラズマ条件においてH、OH及びOに解離する。H原子は、プラズマに面するいずれの材料の表面におけるH分子とも結合しやすい。したがって、実用的な条件において、処理チャンバに水素が存在し得る。好ましくは、存在する水素の量は、8%未満、より好ましくは7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下である。COに関して、好ましくは、処理ガスは、少なくとも95%のCO(より好ましくは、少なくとも96%又は少なくとも97%)からなり、残りは不純物である。
【0016】
第2の態様では、本発明は、基板上にカーボンナノ構造体の層を堆積する方法を提供し、カーボンナノ構造体は基板上に立設するランダム配向グラフェンシートのアレイからなり、方法は、
処理チャンバを供給するステップであって、処理チャンバがチャンバ壁を有し、処理チャンバが基板位置ゾーンを有する、ステップと、
処理チャンバにおける基板位置ゾーンで基板を供給するステップであって、チャンバ壁の内部表面がサンプル位置ゾーンに面する、ステップと、
凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料を、処理チャンバにおける基板位置ゾーンで又は処理チャンバにおける基板位置ゾーンに隣接して供給するステップと、
処理チャンバを排気するステップと、
処理チャンバに1~1000Paの範囲の圧力で処理ガスを供給するステップであって、処理ガスが酸素及び/又は酸素含有ガスを含む、ステップと、
処理チャンバにおいて少なくとも1秒の期間、気体プラズマを生成及び持続させるステップであって、気体プラズマが少なくとも0.1MWm-3の電力密度を有する、ステップと、
基板を500℃よりも高い温度まで加熱するステップと、
カーボン含有前駆体材料を500℃よりも高い温度まで加熱するステップと、
チャンバ壁の内部表面を300℃未満の温度に維持するステップと、
基板上にカーボンナノ構造体の層を成長させるステップと、
を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、処理ガスは、O、CO、COの1以上からなる。
【0018】
第3の態様では、本発明は、第1及び/又は第2の態様による方法を行うための装置を提供する。
【0019】
第4の態様では、本発明は、第1の態様又は第2の態様による方法によって取得され又は取得可能な、基板上のカーボンナノ構造体の層を提供する。
【0020】
カーボンナノ構造体は、例えば空気中で、500℃以上の温度などの中程度の温度までの加熱に有利にも耐え得る。本方法は基板が500℃よりも高温に加熱されることを必要とすることを考慮すると、基板は、使用に際して処理チャンバの環境においてそのような温度に耐えることができる材料で形成されるべきである。
【0021】
本発明の方法は、一般的に、カーボンナノ構造体の迅速な堆積を可能とし、大きな基板に拡張可能である。
【0022】
発明の本方法により堆積された材料の形態学的詳細は、特定の実施形態に依存する。
【0023】
好都合なことに、本発明の方法は、グラフェンシートの核形成又は成長のための触媒が存在しなくても実行可能である。
【0024】
カーボンナノ構造体の層は、好ましくは、基板上に立設する少なくとも80wt%のランダム配向グラフェンシートからなる。より好ましくは、カーボンナノ構造体の層は、基板上に立設する少なくとも85wt%、少なくとも90wt%、少なくとも95wt%、又は少なくとも98wt%のランダム配向グラフェンシートからなる。アモルファスカーボンなどの非グラフェンカーボンは避けることが好ましい。
【0025】
上記のように、処理チャンバにおいて気体プラズマを維持するために使用される放電の電力密度は、少なくともかつ好ましくは、0.1MWm-3(立方メートルあたりメガワット)よりも高い。より好ましくは、電力密度は、少なくとも0.3MWm-3である。さらにより好ましくは、電力密度は、少なくとも1MWm-3である。好適な電力密度は、処理チャンバ内の圧力の変化とともに変動可能である。例えば、5Pa未満の圧力では、電力密度は、好ましくは少なくとも0.1MWm-3である。5~10Paの圧力では、電力密度は少なくとも0.3MWm-3であることが好ましい。10Paを超える圧力では、電力密度は少なくとも1MWm-3であることが好ましい。
【0026】
いくつかの実施形態では、圧力によって除算される電力密度は、少なくとも0.1MWm-3/Paである。
【0027】
理解されるように、プラズマの電力密度は、前進電力及び反射電力を測定することによって測定され得る。プラズマによって吸収される電力は、高周波発生器の前進電力から反射電力を差し引いたものである。双方とも、パワーメーターによって測定可能である。
【0028】
第1又は第2の態様では、処理ガスの圧力は、少なくとも3Paであり得る。いくつかの実施形態では、処理ガスの圧力は、100Paまでとなり得る。本開示において定義される圧力の範囲内で動作することによって、カーボンナノ構造体の層の向上した迅速な堆積が可能となると考えられる。
【0029】
基板を(例えば、レーザーを用いて)独立して加熱することは可能であるが、基板がプラズマによって加熱可能となることが好ましい。これにより、処理はコーティングの工業規模の製造に一層適したものとなる。
【0030】
第2の態様では、処理ガスは酸素からなり得る。あるいは、第2の態様では、処理ガスは、二酸化炭素からなり得る。あるいは、第2の態様では、処理ガスは、水蒸気からなり得る。より一般に、処理ガスは、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気及び付随的不純物(例えば、8%以下、より好ましくは7%以下、6%以下、5%以下、4%以下又は3%以下の付随的不純物)の1以上からなり得る。
【0031】
第2の態様では、凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料は、固体であり得る。適切な固体カーボン含有前駆体材料は、グラファイト及び固体ポリマーを含む。
【0032】
第2の態様では、凝縮形態でのカーボン含有前駆体材料は、液体であり得る。適切な液体カーボン含有前駆体材料は、液体ポリマー及びタールを含む。
【0033】
本発明の任意の態様では、基板が気体プラズマの中を移動し、それにより連続様式での堆積を可能とするように、基板が移動するように構成され得る。
【0034】
本発明の他の態様は、上述されたものなどのカーボンナノ構造体からなるコーティングの生成に関し、上記方法は、以下の、加熱された基板を供給するステップと、上述のように本発明の態様のいずれかによって上記加熱された基板を改変するステップと、それによりコーティングを取得するステップと、を備える。
【0035】
チャンバ壁の内部表面は、290℃以下、280℃以下、270℃以下、260℃以下、250℃以下、240℃以下、230℃以下、220℃以下、210℃以下、200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、110℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下又は50℃以下の温度に維持され得る。本発明者らは、理論に拘束されることを望まずに、特にアモルファスカーボン、ダイヤモンド結晶、煤及び/又は黒鉛粒などの不要なカーボンの含有量に関して、並びにカーボンナノウォールの厚さ及びそれらの直立配向に関して、処理チャンバの壁の温度が基板上で成長するカーボンナノ構造体の層の品質に影響を与えると考える。
【0036】
本発明は(執筆時点では未公開である)国際出願番号PCT/EP2018/065365号に開示された研究を基礎とし、その内容は参照によりその全体がここに取り込まれる。
【0037】
本発明の好適な、及び/又は任意選択的な特徴は、文脈がそれ以外を要求しない限り、単独で、又は任意の組合せで、本発明の任意の態様と組合せられ得る。
【0038】
ここで、本発明の原理を説明する実施形態は、添付の図面を参照して開示される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、実施例1により堆積したカーボンナノ構造体の層の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図2図2は、実施例2により堆積したカーボンナノ構造体の層の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図3図3は、実施例3により堆積したカーボンナノ構造体の層の走査型電子顕微鏡画像を示す。
図4図4は、第1の態様の実施形態によるバッチ処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。
図5図5は、第2の態様の実施形態によるバッチ処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。
図6図6は、連続処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。
図7図7は、連続処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。
図8図8は、第1の態様による実施形態に対応する概略的なフロー図を示す。
図9図9は、第2の態様による実施形態に対応する概略的なフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の態様及び実施形態を、添付図面を参照してここに述べる。更なる態様及び実施形態が、当業者には明らかとなる。この書類で言及する全ての文献は、参照によりここに取り込まれる。
【0041】
本開示は、カーボンナノ構造体の層の成長における炭素原子の供給源として一酸化炭素(CO)を採用することを目的とする。一酸化炭素は、1個の酸素原子及び1個の炭素原子を含む化合物である。酸素原子及び炭素原子は強く結合する。一酸化炭素の解離エネルギーは11eVよりも高く、そのことにより、COは最も強力な結合分子の1つとなる。CO分子における原子の分離は極めて吸熱的な反応であり、したがって熱平衡状態における数千℃未満の温度では発生しない。
【0042】
グラファイトは、固体カーボンの一般的な状態とみなされることが多い。分子Oは、周囲条件での酸素の一般的な状態である。グラファイトとO分子の間の反応は適度に発熱的であるが、ポテンシャル障壁が大きいため、室温では発生しない。したがって、酸素含有雰囲気中のグラファイトのCO又はCOへの酸化は、高温でのみ発生するが、1000℃を超える温度でも酸化の確率は低いままである。
【0043】
ポテンシャル障壁は、原子状酸素(O)によるグラファイトの酸化でははるかに低い。しかし、O原子は周囲条件で安定ではないため、O原子によるグラファイトの酸化は大きな関心事とはなっていない。
【0044】
したがって、固体カーボン(グラファイト)、酸素及び一酸化炭素は、安定した物質であり、実用的な温度では有意には反応しない。実際に、COは、C原子及びO原子に解離するよりも、酸素(又は他の多くの酸素含有化合物)と再結合してCOを形成しやすい。したがって、解離生成物(C原子及びO原子)がエントロピーの最小化に基づいて速やかにCO分子に結合するために、COのC原子及びO原子への解離は、エネルギー的に不利であり、化学的にはほとんど不可能であるとみなされる。本発明者らは、これがカーボンナノ構造体を構築するためのC原子の供給源としてのCOの適用を文献が詳細に考慮しない最も可能性の高い理由であると考える。
【0045】
本発明者らは、理論に拘束されることを望まずに、COのC原子及びO原子への表面解離が、C原子及びO原子のCO分子への結合よりも膨大である具体的な条件が保証されれば、カーボンナノ構造体を構築するためにCO分子を用いることができると考える。上述したように、そのような条件は、熱平衡において実際には不可能である。しかし、低圧でのプラズマ条件によって熱非平衡が可能となるので、C原子及びO原子のCO分子への結合よりもCO分子のC原子及びO原子への解離を支持するそのような具体的な条件を満たすことは理論的に可能である。そのようなプラズマ条件では、CO分子がCOイオンへと部分的にイオン化し、遅い電子が付着してCOイオンを形成し、CO分子が種々の電子、振動及び回転状態に励起されると考えられる。したがって、気相中のCO分子の熱力学的な挙動は、非平衡プラズマ条件に応じた表面効果の熱力学とは異なる。
【0046】
CO分子は、プラズマ電子との衝突によって振動状態に励起される。衝突が頻繁である場合、CO分子の相当量が電子状態にも励起され、そのうちのいくつかはミリ秒より長い寿命(例えば、半減期)を有する準安定状態であることが知られている。そのような高励起状態のCO分子が固体材料に接触する場合、いくつかのタイプの非弾性反応が起こり得る。理論に拘束されることを望まずに、低い表面温度では、妥当な位置エネルギーのCO分子が主に弾性衝突を起こすと考えられ、これは、それらが位置エネルギーを失うことなく、ただ表面から反射されることを意味する。高い表面温度では、例えば、約200℃の温度では、CO分子は表面への接触に応じてクエンチされるため、それらの位置エネルギーが失われる。さらに高い表面温度、例えば、約500℃よりも高い温度では、CO分子は、気相でのそれらの位置エネルギーが十分に高い場合には、C原子及びO原子に解離する。高温表面におけるCO分子の解離の可能性は、表面温度とともに増加する。高温表面におけるCO分子の解離に不可欠な条件は、基板に隣接する気相中のCO分子の高い位置エネルギーである。例えば、気相でのCO分子は、6eV(これは第1の準安定状態の位置エネルギー)よりも、又は8eV(第2の電子励起状態の位置エネルギー)よりもさらに高い位置エネルギーを有しているべきである。
【0047】
6eV又は8eVもの位置エネルギーは、非常に高い温度、例えば、5000℃よりも高い温度でのみ熱力学的平衡になると取得可能である。既知の固体材料は全てそのような高温へ加熱すると溶融するため、そのような高温は実用的ではない。
【0048】
非平衡条件において、CO分子の高い位置エネルギーは、例えば、500℃未満の低いガス温度でも可能である。ガスの非平衡状態は、ガスがプラズマの状態にある気体放電で得られる。高い位置エネルギーの少なくとも1つのCO分子状態は準安定であるため、6eVよりも高い位置エネルギーを有する高濃度のCO分子による条件を確立することができる。そのような条件は、高い電力密度、例えば、約0.1MWm-3以上の気体放電において満たされる。
【0049】
高い位置エネルギーのCO分子は、約1000Paまでの圧力範囲では、低又は中程度のガス圧力での気相においてかなり安定すると考えられる。それらは、より高い圧力では気相衝突で熱化される(位置エネルギーを失う)。したがって、本発明の好適な実施によると、圧力の有用な範囲の上限は、約1000Paである。
【0050】
高い位置エネルギーのCO分子は、処理チャンバの表面との衝突でそれらのエネルギーを失うこともあり、失わないこともある。表面効果は低い圧力でより顕著である。したがって、発明の本方法による圧力の有用な範囲の好適な下限は、約1Pa又はより一般的には2、3、4若しくは5Paなど、数Paである。
【0051】
CO分子が気体プラズマ条件に応じて取得する位置エネルギーの表面損失は、表面温度に依存する。低温では損失が膨大ではないため、CO分子は、それが処理チャンバの壁の内部表面とのいくつかの衝突を受けていても、その位置エネルギーを保持し得る。したがって、処理チャンバの好適な表面温度は、約200℃未満である。表面温度が約200~500℃の範囲にある場合、CO分子はその位置エネルギーを失い、無効となる。したがって、処理チャンバの壁の内部表面の温度は、冷却によって、その温度を200℃未満、好ましくは50℃未満の温度へと制御される。
【0052】
高い位置エネルギーのCO分子に面する高温の表面によって、そのような分子のC原子及びO原子への表面解離が容易となる。効果は、グラフェンメッシュ(又は同様の構造体)の成長に有益である。したがって、基板の表面は、高温、好ましくは500℃よりも高く加熱され、高い位置エネルギーのCO分子の熱依存性の表面解離による利益を得る。上述のように、処理チャンバの他の壁が冷却され、したがって高い位置エネルギーのCO分子の損失が表面のクエンチングによって防止される。このようにして、可能な限り多くのCO分子が基板表面における解離に用いられ、ここで、C原子はグラフェンメッシュ(カーボンナノ構造体)の構成要素となる。
【0053】
高い位置エネルギーのCO分子の表面解離の生成物でもある原子状酸素は、基板の表面に化学吸着してO分子を形成するO原子と結合し得る。表面温度が低く、又は中程度であっても若しくは高くても、グラファイトの分子状酸素による酸化の反応の確率は低いため、この効果は有益であるとみなされる。酸化の確率(グラファイト様材料の分子状酸素による酸化)は、表面温度の上昇とともに増加し、最終的に、非常に高温で、高い位置エネルギーのCO分子の表面解離の確率に到達する。この効果は有害であり、したがって、電力密度は、高い位置エネルギーのCO分子の基板への大量流束を確保するのに十分に高く維持される必要がある。約1MWm-3以上の電力密度は、基板温度が1000℃の場合であっても、基板表面における高い位置エネルギーのCO分子の高い解離速度を保証するのに有益であることが見出された。
【0054】
気相からの酸素によるカーボン材料の酸化速度は、任意のカーボン材料の温度の上昇とともに増加する。本発明の第2の態様の実施形態では、一片のカーボン含有材料が処理チャンバ内に配置され、高温まで加熱される。そのような高温のカーボン含有材料は、材料が酸素原子の放熱源だけでなく、同様に追加的なCO分子の供給源ともなるため、有益である。したがって、第2の態様におけるカーボン含有材料の温度は、好ましくは約500℃よりも高い。
【0055】
3次元グラフェンメッシュの成長は、堆積条件を上述のように制御した場合に、異なる種類のガラス、金属及びグラファイトを含む多数の基板上で観察された。まさに実施例として提供される(以下に報告される)実験において、担体ガス又はCO、CO若しくはO以外のいずれの他のガスも使用されなかった。
【0056】
本発明の実施形態は、本発明の第1の態様の実施形態を用いる場合には60nm/sよりも速く、本発明の第2の態様の実施形態を用いる場合には100nm/sよりも速い、一般的な成長速度のグラフェンメッシュの迅速な堆積を可能とする。成長速度は、SEMを用いて断面においてカーボンナノ構造体の堆積層をイメージングしてカーボンナノ構造体の高さを決定することによって決定可能であり、そして成長速度は成長時間の知見に基づいて決定される。
【0057】
ここで、我々は、図面のより詳細な説明に移る。図面では、様々な実施形態における同様の特徴を同一の符号で示す。
【0058】
図4は、第1の態様の実施形態による、バッチ処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。処理チャンバ1は、最初は室温である。基板2が基板位置に設置された後、処理チャンバ1は真空ポンプ3を用いて約1Paの圧力まで排気される。圧力が1Paに達すると、バルブ4を閉じることによって、真空ポンプ3は処理チャンバ1から分離される。そして、一酸化炭素が、処理チャンバ1で所望の圧力(通常、5~100Pa)に達するまで、容器5からリークバルブ6を通じて処理チャンバ1に漏出される。そして、プラズマが、処理チャンバ1によって点火され、成長が完了するまで(通常、グラフェンメッシュの所望の厚さに応じて10~200秒)放電発生器7によって持続される。そして、処理チャンバ1及び基板2は、次の堆積に対してシステムが準備されるまで、200℃未満、好ましくは50℃未満の温度まで冷却される。一般的な短時間の堆積の観点から、処理チャンバ自体の熱質量は、処理チャンバの壁の内部表面の温度が堆積時に200℃未満のままであることを保証するのに十分である。
【0059】
本発明の実施形態は、純粋なHモードの誘導結合プラズマを用いる。そのようなプラズマは、かなり小さな容積に集中しやすく、処理チャンバの端部フランジから離れて、高い電力密度が巨大となることを可能とする。処理チャンバの壁は、膨張する圧縮空気の1以上のジェットを用いてその外部表面で冷却され、膨張がガスの断熱冷却を引き起こす。ガスジェットは、高密度プラズマがRFコイル内に形成される処理チャンバ(通常、実施形態では石英管)に向けられる。
【0060】
図5は、第2の態様の実施形態による、バッチ処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。処理チャンバ1は、最初は室温である。基板2及び一片の固体カーボン含有材料8が設置された後、処理チャンバ1は真空ポンプ3を用いて約1Paの圧力まで排気される。なお、固体カーボン含有材料は、液体カーボン含有ポリマー又はタールなどの液体で置換されてもよい。1Paの圧力に達すると、バルブ4を閉じることによって、真空ポンプ3は処理チャンバ1から分離される。そして、二酸化炭素又は酸素を含む任意のガスが、処理チャンバ1で所望の圧力(通常、5~100Pa)に達するまで、容器5からリークバルブ6を通じて処理チャンバ1に漏出される。そして、プラズマが、処理チャンバ1によって点火され、成長が完了するまで(通常、グラフェンメッシュの所望の厚さに応じて10~100秒)放電発生器7によって持続される。そして、処理チャンバ1、基板2及び一片のカーボン含有材料8は、次の堆積に対してシステムが準備されるまで、200℃未満、好ましくは50℃未満の温度まで冷却される。
【0061】
図6は、連続処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適したデバイスの概略図を示す。処理チャンバ1は、常に200℃未満、好ましくは室温に近い温度に維持される。必要であれば、これは、積極的冷却手段を用いて達成される。基板2は、ロールツーロール又は同様のデバイス9を用いて処理チャンバを通じて移動するシートのような無限材料である。一片の固体カーボン含有材料8も、処理チャンバ1内に位置する。なお、固体カーボン含有材料は、液体カーボン含有ポリマー又はタールなどの液体で置換されてもよい。基板2がロール9に設置された後、処理チャンバ1は真空ポンプ3を用いて約1Paの圧力まで排気される。1Paの圧力に達すると、バルブ4を閉じることによって、真空ポンプ3は処理チャンバ1から分離される。そして、酸素を含むガス(一実施形態では二酸化炭素)が、容器5からリークバルブ6を通じて処理チャンバ1に漏出されて処理チャンバ1での所望の圧力(通常、5~100Pa)を維持する。あるロールから他のロール9に基板が移動する間、プラズマは放電発生器7によって処理チャンバ1内に常に持続される。堆積ゾーン10での基板の温度は、500℃よりも高い。
【0062】
図7は、連続処理において3次元グラフェンメッシュを堆積するのに適した更なるデバイスの概略図を示す。処理チャンバ1は、常に200℃未満、好ましくは室温に近い温度に維持される。基板2は、ロールツーロール(roll-to-roll)又は同様のデバイス9を用いて処理チャンバを通じて移動するシートのような無限材料である。一片の固体カーボン含有材料8も、処理チャンバ1内に浸漬される。なお、固体カーボン含有材料は、液体カーボン含有ポリマー又はタールなどの液体で置換されてもよい。基板2がロール9に設置された後、処理チャンバ1は真空ポンプ3を用いて約1Paの圧力まで排気される。1Paの圧力に達すると、バルブ4を閉じることによって、真空ポンプ3は処理チャンバ1から分離される。そして、酸素を含むガス(一実施形態では二酸化炭素)が、容器5からリークバルブ6を通じて処理チャンバ1に漏出されて処理チャンバ1での所望の圧力(通常、5~100Pa)を維持する。あるロールから他のロール9に基板が移動する間、プラズマは放電発生器7によって処理チャンバ1内に常に持続される。堆積ゾーン10での基板の温度は、500℃よりも高い。図6図7の間の差異は、図6の構成は均一プラズマを用いた処置を可能とするのに対し、図7では基板及び/又はカーボン材料を中程度の密度のプラズマに曝露しつつ高密度プラズマをコイル内の容積に閉じ込めるという点にある。
【0063】
基板に隣接するプラズマの密度は、カーボンナノ構造体の成長に対して大きな効果を有すると考えられる。プラズマ密度は、電力密度の増加とともに増加する。低い電力密度では、成長は観察されない。Hモードは、誘導結合高周波放電のために用いられる。これは、プラズマがコイル内で濃縮されることを意味する。実際に、図7におけるコイルと輸送ベルトの間の距離は最小となるべきである。なお、図7は、概略である。実際に、コイルと輸送ベルトの間の距離は、わずか数ミリメートルまでとなる。
【0064】
以下の実施例では、Ti基板を用いた。他の実験では、本発明者らは、ニッケル、鉄、シリコンウェーハ、石英ガラス及びグラファイト基板を用いて同様の結果を達成した。
【実施例1】
【0065】
3次元グラフェンメッシュを、第1の態様の実施形態に対応する処理により、図4に示すような装置を用いてチタン基板に堆積した。約1000℃に加熱された(チタン)基板の純粋な一酸化炭素ガスとの接触による圧力は20Paであり、放電発生器の周波数は13.56MHzであり、電力密度は7MWm-3であった。堆積時間は、30秒であった。チタン基板上に堆積された3次元グラフェンメッシュを走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージングした。図1に、一般的な生成物のSEM画像を表す。
【実施例2】
【0066】
3次元グラフェンメッシュを、二酸化炭素及び固体カーボン含有前駆体材料としての一片のグラファイトを用いることによる第2の態様の実施形態に対応する処理により、図5に示すような装置を用いてチタン基板に堆積した。約1000℃に加熱された(チタン)基板の二酸化炭素ガスとの接触による圧力は30Paであり、放電発生器の周波数は13.56MHzであり、電力密度は3.5MWm-3であった。堆積時間は、25秒であった。チタン基板上に堆積された3次元グラフェンメッシュを走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージングした。図2に、一般的な生成物のSEM画像を表す。
【実施例3】
【0067】
3次元グラフェンメッシュを、酸素及び固体カーボン含有前駆体材料としての一片のポリエチレンテレフタレートを用いることによる第3の態様の実施形態に対応する処理により、図5に示すような装置を用いてチタン基板に堆積した。約1000℃に加熱された(チタン)基板の酸素ガスとの接触による圧力は30Paであり、放電発生器の周波数は13.56MHzであり、電力密度は3.5MWm-3であった。堆積時間は、25秒であった。チタン基板上に堆積された3次元グラフェンメッシュを走査型電子顕微鏡(SEM)でイメージングした。図3に、一般的な生成物のSEM画像を表す。
【0068】
上記の具体的形態で又は開示される機能を実行するための手段、又は開示される結果を得るための方法若しくは処理の観点で表現された上記の説明、以下の特許請求の範囲又は添付図面において開示される特徴は、別個に又はその特徴のいずれかの組合せにおいて、その多様な形態において本発明を実現するのに適宜利用され得る。
【0069】
本発明を上述の例示的実施形態との関連で説明したが、本開示が与えられれば、当業者には多数の均等な変形例及び変更例が明らかとなるはずである。したがって、上記で記載された本発明の例示的実施形態は、限定ではなく例示的であると考えられる。記載された実施形態に対する種々の変更が、本発明の主旨及び範囲から離れることなくなされ得る。
【0070】
疑義を回避するため、ここに与えられるいずれの理論的説明も、読者の理解を向上する目的で与えられるものである。本発明者らは、これらの理論的説明に拘束されることを望まない。
【0071】
ここに用いられるいずれの見出しも、組織化のみを目的とし、記載される主題の限定として解釈されるべきでない。
【0072】
以降の特許請求の範囲を含み、本明細書全体を通じて、文脈がそれ以外を要件としない限り、文言「備える」及び「含む」並びに「備える」、「備えている」及び「含んでいる」などの変化形は、記載される整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の包含を意味するが、他の任意の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるはずである。
【0073】
本願及び添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、明らかにそれ以外を述べていない限りは複数形も含むことが留意されるべきである。範囲は、ある「約」特定値から及び/又は他の「約」特定値までとしてここでは表現され得る。そのような範囲が表現される場合には、他の実施形態は、一方の特定値から及び/又は他方の特定値までを含む。同様に、先行する「約」を用いるによって値が概数として表現される場合には、特定値が他の実施形態を構成することが理解されるはずである。数値との関連における用語「約」は、任意選択的であり、例えば+/-10%を意味する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9