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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】分光画像生成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240207BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240207BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01N21/27 A ZAA
G01N21/64 Z
G01N21/01 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019159556
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021038974
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】井上 修一郎
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0177128(US,A1)
【文献】特表2015-519605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0212748(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106549099(CN,A)
【文献】国際公開第2018/062412(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/025389(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0036877(US,A1)
【文献】NIWA K , et al.,Few-photon color imaging using energy-dispersive superconducting transition-edge sensor spectrometry,SCIENTIFIC REPORTS,2017年04月04日,Vol.7,pp.45660-1 - 45660-7,DOI: 10.1038/srep45660
【文献】DUARTE M F , et al.,Single-Pixel Imaging via Compressive Sampling,IEEE SIGNAL PROCESSING MAGAZINE,2008年03月,Vol.25,pp.83-91,Digital Object Identifier 10.1109/MSP.2007.914730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
G01J 4/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するレーザと、非線形光学過程により前記レーザ光から量子もつれ光子対を生成して出力する非線形光学結晶とを含み、エネルギーが異なる光子対を出力する光源と、
前記光源により出力された光子のうち、第1波長を有する光子を反射させて撮像対象を含む第1光路に導光し、前記第1波長と異なる第2波長を有する光子を通過させて前記撮像対象を含まない第2光路に導光する鏡と、
前記第1光路上に備えられ、前記第1光路に導光された光子を反射して撮像対象を透過させ、前記撮像対象を透過した光子を反射し、前記撮像対象により反射された光子を反射し、又は前記第1光路に導光された光子を前記撮像対象に向けて反射するデジタルマイクロミラーデバイスと、
前記第1光路上に備えられる超伝導転移端センサであって、前記撮像対象を透過した又は前記撮像対象に反射された光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する第1光子検出器と、
前記第2光路上に備えられる超伝導転移端センサであって、前記第2光路に導光される光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する第2光子検出器と、
前記第1光子検出器及び前記第2光子検出器が実行した処理の結果を使用して、量子もつれ光子対ではない光子によるノイズを低減させた、前記撮像対象の分光画像を生成する分光画像生成部と、
を備える分光画像生成装置。
【請求項2】
前記光源は、前記レーザに代えて、光を出力するスーパーコンティニウム光源又はスーパールミネッセンスダイオードを備え、前記非線形光学結晶に代えて、前記光を減衰させて微弱光を出力するフィルタを備える、
請求項1に記載の分光画像生成装置。
【請求項3】
前記光源は、前記レーザに代えて、第一のエネルギーを有する第一の光を出力する第一の発光ダイオードと、前記第一のエネルギーと異なる第二のエネルギーを有する第二の光を出力する第二の発光ダイオードを備え、前記非線形光学結晶に代えて、前記第一の光を減衰させる第一のフィルタと、前記第二の光を減衰させる第二のフィルタとを備える、請求項に記載の分光画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から生物科学等の様々な分野において微弱光イメージング技術が利用されている。微弱光イメージング技術は、撮像対象に微弱光を照射して撮像対象の画像を生成するため、光の照射により撮像対象が受けるダメージが少ないという利点を有する。
【0003】
例えば、微弱光イメージング技術の一例として、特許文献1に開示されている極微弱光多次元イメージングスペクトルシステムが挙げられる。この極微弱光多次元イメージングスペクトルシステムは、アッテネータを含む極微弱光源、デジタルマイクロミラーデバイス及び単一光子検出器を備え、分光画像のイメージングに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-531032号公報
【0005】
しかし、この極微弱光多次元イメージングスペクトルシステムは、単一光子検出器が光子のエネルギーを検出するものではないため、撮像対象の鮮明な分光画像を生成し得ないことがある。また、この極微弱光多次元イメージングスペクトルシステムは、波長が既知である可視光領域の極微弱光を撮像対象に照射し、撮像対象の分光画像を生成することができるものの、撮像対象自体が発光している場合、当該発光を当該分光画像に反映させ得ないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、光の照射により撮像対象が受ける影響を低減しつつ、撮像対象の鮮明な分光画像を生成することができる分光画像生成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、レーザ光を出力するレーザと、非線形光学過程により前記レーザ光から量子もつれ光子対を生成して出力する非線形光学結晶とを含み、エネルギーが異なる光子対を出力する光源と、前記光源により出力された光子のうち、第1波長を有する光子を反射させて撮像対象を含む第1光路に導光し、前記第1波長と異なる第2波長を有する光子を通過させて前記撮像対象を含まない第2光路に導光する鏡と、前記第1光路上に備えられ、前記第1光路に導光された光子を反射して撮像対象を透過させ、前記撮像対象を透過した光子を反射し、前記撮像対象により反射された光子を反射し、又は前記第1光路に導光された光子を前記撮像対象に向けて反射するデジタルマイクロミラーデバイスと、前記第1光路上に備えられる超伝導転移端センサであって、前記撮像対象を透過した又は前記撮像対象に反射された光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する第1光子検出器と、前記第2光路上に備えられる超伝導転移端センサであって、前記第2光路に導光される光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する第2光子検出器と、前記第1光子検出器及び前記第2光子検出器が実行した処理の結果を使用して、量子もつれ光子対ではない光子によるノイズを低減させた、前記撮像対象の分光画像を生成する分光画像生成部と、を備える分光画像生成装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光の照射により撮像対象が受ける影響を低減しつつ、撮像対象の鮮明な分光画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る分光画像生成装置の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る分光画像生成装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照しながら、実施形態に係る分光画像生成装置の一例を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る分光画像生成装置の一例を示す図である。図1に示すように、分光画像生成装置1aは、光源11と、ダイクロイックミラー12と、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)13aと、光子検出器14aと、光子検出器15と、分光画像生成部16とを備える。
【0012】
光源11は、エネルギーが異なる光子を含む微弱光を出力する。例えば、光源11は、エネルギーが互いに異なる光子が含まれている数個から数千個の光子を出力する。ただし、光源11が出力する光子の数は、所定の観測時間内において、必ずしも数個から数千個に限定されるわけではない。また、光源11は、エネルギーが互いに異なる光子を出力する。これらの光子は、例えば、単一光子状態又は光子対状態にある光子であってもよい。
【0013】
また、光源11は、図1に示すように、レーザ111と、チャープ擬似位相整合非線形光学結晶(CQPM-NC:Chirped Quasi-Phase Matching Nonlinear Optical Crystal)112とを備える。レーザ111は、レーザ光を出力する。このレーザ光の波長は、例えば、355nm(ナノメートル)である。チャープ擬似位相整合非線形光学結晶112は、非線形光学過程によりレーザ光から量子もつれ光子対を生成して出力する非線形光学結晶の一例である。例えば、チャープ擬似位相整合非線形光学結晶112は、パラメトリック下方変換(PDC: Parametric Down Conversion)によりレーザ111が出力したレーザ光から超広帯域量子もつれ光子対Pを生成して出力する。超広帯域量子もつれ光子対Pは、例えば、短波長赤外領域に含まれる波長1550nmを有する光子及び可視光領域に含まれる波長460nmを有する光子を含んでいる。また、エネルギー保存則が成立しているため、超広帯域量子もつれ光子対Pのエネルギーは、レーザ111が出力するレーザ光の光子のエネルギーに等しい。
【0014】
ダイクロイックミラー12は、特定の波長を有する光を反射させ、それ以外の波長を有する光を透過させる鏡である。例えば、ダイクロイックミラー12は、750nm以上の波長を有する光を反射させ、750nm未満の波長を有する光を透過させる鏡である。この場合、ダイクロイックミラー12は、超広帯域量子もつれ光子対Pのうち波長1550nmを有する光子を反射させ、波長460nmを有する光子を透過させる。なお、ダイクロイックミラー12の光学的な特性は、光源11が出力する光子のエネルギーに応じて決定される。
【0015】
デジタルマイクロミラーデバイス13aは、多数の可動式のマイクロミラーをCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)プロセスにより作成された集積回路上に格子状に配列したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスである。各マイクロミラーは、分光画像生成装置1aにより生成される分光画像の各画素に相当する。ここで言う分光画像は、可視光領域におけるカラー画像及び赤外画像を含む。
【0016】
各マイクロミラーは、例えば、一辺が数十μm(マイクロメートル)の正方形の鏡面を有しており、各鏡面の裏側に設けられている電極を駆動することにより、当該鏡面をねじれ軸周りに+12度又は-12度傾けることができる。各マイクロミラーは、鏡面が+12度傾いている場合、オン状態であり、鏡面が-12度傾いている場合、オフ状態である。
【0017】
デジタルマイクロミラーデバイス13aは、光源11により出力された光子をオン状態のマイクロミラーで反射して撮像対象Tを透過させる。この光子は、例えば、波長が1550nmであり、ダイクロイックミラー12により反射された光子である。デジタルマイクロミラーデバイス13aは、各マイクロミラーのオン状態とオフ状態とを順次切り替えることにより、複数の光子を順次撮像対象Tに向けて反射させる。具体的には、デジタルマイクロミラーデバイス13aは、撮像対象Tの分光画像を生成するために必要な時間の間、各マイクロミラーのオン状態とオフ状態とを切り替えながら、光子を一つずつ反射させる。また、デジタルマイクロミラーデバイス13aは、各タイミングにおける各マイクロミラーの状態を示すマイクロミラー状態データを分光画像生成部16に送信する。
【0018】
光子検出器14aは、撮像対象Tを透過した光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する超伝導転移端センサ(TES:Transition Edge Sensor)である。この超伝導転移端センサは、常伝導状態から超伝導状態に相転移する転移領域に温度が保たれている超伝導物質を有している。また、超伝導転移端センサは、光子を吸収して抵抗値が増加する際に超伝導物質に流れている電流の変化を超伝導量子干渉計(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)で検出することにより、光子の入射及び当該光子のエネルギーを検出する。また、光子検出器14aは、各タイミングで光子を検出したことを示す第一検出データ及び各光子のエネルギーを示すエネルギーデータを分光画像生成部16に送信する。
【0019】
光子検出器15は、ダイクロイックミラー12を透過した光子及び当該光子のエネルギーを計測する超伝導転移端センサである。或いは、光子検出器15は、ダイクロイックミラー12を透過した光子を検出するアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)又は超伝導ナノワイヤ単一光子検出器(SNSPD:Superconducting Nanowire Single Photon Detector)である。光子検出器15は、光子検出器14aと同様の手段により入射した光子を検出し、当該光子のエネルギーを計測する。また、光子検出器15は、各タイミングで光子を検出したことを示す第二検出データ及び各光子のエネルギーを示すエネルギーデータを分光画像生成部16に送信する。
【0020】
分光画像生成部16は、光子検出器14aが実行した処理の結果を使用して撮像対象Tの分光画像を生成する。具体的には、分光画像生成部16は、上述したマイクロミラー状態データ、第一検出データ、光子検出器14aから受信したエネルギーデータ及び光子検出器15から受信したエネルギーデータを使用して撮像対象Tの分光画像を生成する。また、分光画像生成部16は、分光画像を生成する過程で圧縮センシングを利用することにより、デジタルマイクロミラーデバイス13aがマイクロミラーのオン状態とオフ状態とを切り替える回数が少ない場合でも適切な分光画像を生成し得る。
【0021】
分光画像生成部16は、これら三種類のデータに加えて、上述した第二検出データを使用し、光源11により出力された超広帯域量子もつれ光子対P以外の光子に起因するノイズを低減させた分光画像を生成してもよい。すなわち、分光画像生成部16は、光子検出器14a及び光子検出器15が同時に光子を検出することにより、超広帯域量子もつれ光子対Pではない光子によるノイズを低減させた分光画像を生成してもよい。この場合、光子検出器15は、少なくとも入射した光子を検出することができればよい。なお、超広帯域量子もつれ光子対Pではない光子は、迷光と呼ばれることがある。
【0022】
また、分光画像生成部16が有する機能のうちの一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等の回路部(circuitry)を含むハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働により実現されてもよい。プログラムは、事前にHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等の非一過性の記憶媒体を備える記憶装置に格納されていてもよいし、DVD、CD-ROM等の着脱可能な非一過性の記憶媒体に格納されており、当該記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0023】
以上、実施形態に係る分光画像生成装置1aについて説明した。分光画像生成装置1aは、超広帯域量子もつれ光子対Pに含まれる光子を反射して撮像対象Tを透過させ、当該光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行し、これら二つの処理の結果を使用して撮像対象Tの分光画像を生成する。これにより、分光画像生成装置1aは、撮像対象Tに照射する光の強度を極限まで低減しつつ、撮像対象Tの分光画像を生成することができる。また、分光画像生成装置1aは、古典光をフィルタで減衰させて光子を出力せず、レーザ111及びチャープ擬似位相整合非線形光学結晶112を使用して超広帯域量子もつれ光子対Pを出力する。これにより、分光画像生成装置1aは、撮像対象Tに照射する光の強度をフィルタにより十分に低減させることができず、撮像対象Tに光の照射による影響を与えてしまう事態を回避することができる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、デジタルマイクロミラーデバイス13aが光源11により出力された光子を反射して撮像対象Tを透過させ、光子検出器14aが当該光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する場合を例に挙げたが、これに限定されない。すなわち、図1に示した分光画像生成装置1aだけではなく、図2に示した分光画像生成装置1bでも上述した効果を奏することができる。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る分光画像生成装置の一例を示す図である。図2に示した分光画像生成装置1bは、撮像対象Tを透過した光子のエネルギーを計測して撮像対象Tの分光画像を生成する分光画像生成装置1aと異なり、撮像対象Tにより反射された光子のエネルギーを計測して撮像対象Tの分光画像を生成する。図2に示すように、分光画像生成装置1bは、光源11と、ダイクロイックミラー12と、デジタルマイクロミラーデバイス13bと、光子検出器14bと、光子検出器15と、分光画像生成部16とを備える。
【0026】
デジタルマイクロミラーデバイス13bは、ダイクロイックミラー12により反射された後に撮像対象Tにより反射された光子を反射する。光子検出器14bは、撮像対象Tにより反射された当該光子を検出する処理及び当該光子のエネルギーを計測する処理を実行する。また、分光画像生成装置1bの他の構成要素は、分光画像生成装置1aと同様である。
【0027】
また、図1を参照しながら説明した実施形態及び図2を参照しながら説明した実施形態では、光源11がレーザ111及びチャープ擬似位相整合非線形光学結晶112を備える場合を例に挙げたが、これに限定されない。
【0028】
例えば、光源11は、光を出力するスーパーコンティニウム(SC:Super Continuum)光源又はスーパールミネッセンスダイオード(SLD:Superluminescent Diode)と、当該光を減衰させて上述した微弱光を出力するフィルタとを備えていてもよい。
【0029】
この場合、光子検出器14a及び光子検出器14bは、光子の検出及び当該光子のエネルギーの検出が可能な超伝導転移端センサでなければならない。分光画像生成装置1a及び分光画像生成装置1bは、光源11、光子検出器14a及び光子検出器14bがこのような構成であっても、光の照射により撮像対象Tが受ける影響を低減しつつ、撮像対象Tの鮮明な分光画像を生成することができる。また、この場合、分光画像生成装置1a及び分光画像生成装置1bは、光子検出器14aにより検出される光子と光子検出器15により検出される光子との間に検出時刻や波長の相関が無いため、光子検出器15を省略してよい。
【0030】
なお、スーパーコンティニウム光源は、赤外領域から可視光領域までスーパールミネッセンスダイオードよりも広帯域な光を出力することができるため、広帯域の分光画像、例えば、赤外領域から可視光領域の分光画像が必要な場合には、スーパールミネッセンスダイオードよりも好ましい。
【0031】
また、上述した光源11は、エネルギーが既知であり互いに異なる光子を含む微弱光を出力してもよい。具体的には、光源11は、第一の発光ダイオードと、第二の発光ダイオードと、第一のフィルタと、第二のフィルタとを少なくとも備えていてもよい。ここで、第一の発光ダイオードは、第一のエネルギーを有する第一の光を出力する。第一の光は、例えば、赤色の光である。第二の発光ダイオードは、第一のエネルギーと異なる第二のエネルギーを有する第二の光を出力する。第二の光は、緑色の光である。第一のフィルタは、第一の光を減衰させるフィルタである。第二のフィルタは、第二の光を減衰させるフィルタである。
【0032】
さらに、この場合、光子検出器14a及び光子検出器14bは、光子の検出が可能であればよい。したがって、この場合、光子検出器14aは、超伝導転移端センサであってもよいし、アバランシェフォトダイオード又は超伝導ナノワイヤ単一光子検出器であってもよい。アバランシェフォトダイオード及び超伝導ナノワイヤ単一光子検出器は、光子のエネルギーを検出することはできないが、光子の検出が可能な光子検出器である。また、光子検出器14aがアバランシェフォトダイオード又は超伝導ナノワイヤ単一光子検出器である場合、光源11は、自身が出力した光の波長を示す波長データを分光画像生成部16に送信する必要がある。
【0033】
分光画像生成装置1a及び分光画像生成装置1bは、エネルギーが既知であり互いに異なる光子を含む微弱光が光源11により出力され、光子検出器14a及び光子検出器14bが光子の検出のみを実行する場合でも、光の照射により撮像対象Tが受ける影響を低減しつつ、撮像対象Tの鮮明な分光画像を生成することができる。
【0034】
また、光源11は、第一の発光ダイオード、第二の発光ダイオード、第一のフィルタ及び第二のフィルタに加えて、少なくとも第三の発光ダイオード及び第三のフィルタを備えていてもよい。第三の発光ダイオードは、第一のエネルギー及び第二のエネルギーと異なる第三のエネルギーを有する第三の光を出力する。第三の光は、例えば、青色の光である。第三のフィルタは、第三の光を減衰させるフィルタである。
【0035】
また、上述した実施形態では、分光画像生成装置1a及び分光画像生成装置1bが光子検出器15を備える場合を例に挙げたが、これに限定されない。分光画像生成装置1a及び分光画像生成装置1bは、光源11がレーザ111及びチャープ擬似位相整合非線形光学結晶112を備える場合であっても光子検出器15を備えていなくてもよい。
【0036】
また、分光画像生成装置1aは、光源11から光子検出器14aまでの光路及び光源11から光子検出器15までの光路の少なくとも一方の任意の場所に適宜配置されたレンズ、ミラー等の光学部品を備えていてもよい。同様に、分光画像生成装置1bは、光源11から光子検出器14bまでの光路及び光源11から光子検出器15までの光路の少なくとも一方の任意の場所に適宜配置されたレンズ、ミラー等の光学部品を備えていてもよい。これらの光学部品は、撮像対象Tの分光画像の生成に使用される。
【0037】
また、分光画像生成装置1aは、撮像対象Tを透過した光子を検出する光子検出器14aに撮像対象Tから放出される蛍光に含まれる光子に対する感度を持たせてもよい。これにより、分光画像生成装置1aは、撮像対象Tにより吸収された光子により撮像対象Tから放出された蛍光に含まれる光子のエネルギーを超伝導転移端センサである光子検出器14aにより検出し、分光画像に反映させることができる。この場合、分光画像生成装置1aは、光子検出器15として超伝導転移端センサを採用することにより、光子検出器14aにより検出された光子が撮像対象Tを透過した光子や撮像対象Tにより反射された光子であるか撮像対象Tから放出された蛍光に含まれる光子であるかを判別することができる。
【0038】
同様に、分光画像生成装置1bは、撮像対象Tにより反射された光子を検出する光子検出器14bに撮像対象Tから放出される蛍光に含まれる光子に対する感度を持たせてもよい。これにより、分光画像生成装置1bは、撮像対象Tにより吸収された光子により撮像対象Tから放出された蛍光に含まれる光子のエネルギーを超伝導転移端センサである光子検出器14bにより検出し、分光画像に反映させることができる。この場合、分光画像生成装置1bは、光子検出器15として超伝導転移端センサを採用することにより、光子検出器14aにより検出された光子が撮像対象Tを透過した光子や撮像対象Tにより反射された光子であるか撮像対象Tから放出された蛍光に含まれる光子であるかを判別することができる。
【0039】
また、図1を使用した説明では、デジタルマイクロミラーデバイス13aが光源11により出力された光子を反射して撮像対象Tを透過させる場合を例に挙げたが、これに限定されない。分光画像生成装置1aは、図1に示したデジタルマイクロミラーデバイス13aと撮像対象Tとの順序を入れ替え、デジタルマイクロミラーデバイス13aが撮像対象Tを透過した光子を反射して光子検出器14aに入射させるようにしてもよい。
【0040】
また、図2を使用した説明では、デジタルマイクロミラーデバイス13bが撮像対象T
により反射された光子を反射させる場合を例に挙げたが、これに限定されない。分光画像生成装置1bは、図2に示したデジタルマイクロミラーデバイス13bと撮像対象Tとの順序を入れ替え、デジタルマイクロミラーデバイス13bが光源11により出力された光子を撮像対象Tに向けて反射するようにしてもよい。また、この場合、撮像対象Tにより反射された光子が光子検出器14bに入射するよう、デジタルマイクロミラーデバイス13bの配置及び撮像対象Tの配置が調整される。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、置換及び設計変更の少なくとも一つを加えることができる。また、上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1a,1b…分光画像生成装置、11…光源、12…ダイクロイックミラー、13a,13b…デジタルマイクロミラーデバイス、14a,14b、15…光子検出器、16…分光画像生成部
図1
図2