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特許7431431災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システム
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  • 特許-災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20240207BHJP
   G01C 7/02 20060101ALI20240207BHJP
   G01F 23/60 20060101ALI20240207BHJP
   G08B 27/00 20060101ALI20240207BHJP
   G08B 21/10 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E02D17/20 106
G01C7/02
G01F23/60 Z
G08B27/00 Z
G08B21/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019162463
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021038624
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】519322967
【氏名又は名称】株式会社ASK
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】岩本 庄司
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-083601(JP,A)
【文献】特開2009-287927(JP,A)
【文献】特開2014-222174(JP,A)
【文献】登録実用新案第3200347(JP,U)
【文献】特開昭59-206522(JP,A)
【文献】特開2011-047676(JP,A)
【文献】特開2017-067554(JP,A)
【文献】特開平11-101638(JP,A)
【文献】特開2000-283800(JP,A)
【文献】登録実用新案第3052911(JP,U)
【文献】特開2016-011557(JP,A)
【文献】国際公開第2007/073110(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0053830(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/20
G01C 7/02
G01F 23/60
G08B 27/00
G08B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大雨により発生する土砂災害の予兆を、地盤変位を計測することにより事前に察知することができる災害予知装置であって、
一端側に蓋部材を備えており内部に距離センサを設置した円筒体と、
前記円筒体を斜面側に固定するための前記円筒体の側面に設置した1つの固定部材と、
前記円筒体と抜き差し自在に形成された第二円筒体と、
前記第二円筒体の上下方向を安定させるための設置台を備えることを特徴とする災害予知装置。
【請求項2】
前記距離センサは通信機能を備えており、中央制御部と通信することで、測定データから異常事態発生と判断した中央制御部から、各世帯単位で危険を知らせる警告機能を備えていることを特徴とする請求項1に記載の災害予知装置を利用した災害予知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中豪雨等により発生する、斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)、土石流等の土砂災害の予兆を事前に察知することにより、地域住民に事前に警告して災害が発生する前に避難指示することで、尊い人命を救うことができる災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本は山地が多く(国土の約6割)平地が狭いため、山の斜面や谷の出口など、土砂災害の起こりやすい場所にも多くの人が住んでおり、土砂災害による大きな被害が出る原因となっている。地表の斜面を構成する岩石や土砂は重力の作用を受けており、例えば、大雨により多量の水分を吸収することにより不安定になると(滑り面上に載っている)岩石や土砂は下方へ移動する。これらの現象は全て一括りにして、マスムーブメント、斜面移動等という用語で専門的には定義される。
【0003】
大雨が続き土砂災害が発生しそうな時に、その現場状況を確認することは、行政側が負担するのであれば、人件費が掛かるし、それより何よりその行為自体が危険であるので全く好ましくない。実際、河川や用水路等が氾濫するかどうかを確認に行った人が流されてしまい死亡する例も毎年のように見られる。このような状況において、現場から離れていても(遠隔地であっても)、安価でしかも確実に被害を予知し事前に警告することで、甚大な災害が発生する前に避難指示を出すことができる災害予知装置が希求されているという現状がある。さらなる要求として、地域単位ではなく、世帯単位で差し迫った身近な危険を警告することができる、即ち、極めて木目細かく対応することができる災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムが希求されているという現状がある。
【0004】
特許文献1には、従来にない作用効果を発揮する画期的な地盤変位計測装置を提供することを目的として、被計測地域における「移動部位」と「不動部位」との間に「這わせ状態、若しくは、埋設状態」で架設された、適宜な柔軟性を具備して架設部位の形状に順応するフレキシブル構造体により形成された計測棒体を設置した地盤変位計測装置(特許文献1:発明の名称)が開示されている。即ち、「移動部位」が移動した際、(「移動部位」と一緒に移動した)計測棒体が、接続される計測器により(計測棒体の)移動量を計測することができる、地滑りや土砂崩れ等の地盤変位を計測するための装置(地盤変位計測装置:特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-215888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る地盤変位計測装置(特許文献1:発明の名称)は、被計測地域における「移動部位」と「不動部位」との間に計測棒体を斜面に沿って這わせるように架設するものである。即ち、地滑りや土砂崩れ等が発生した際の計測棒体の移動を計測することで地盤の変位量を計測するものである。計測棒体には線熱膨張率を制御(温度変化の影響の少ない材質を選択)する必要があることから、高価な炭素繊維(特許文献1:請求項2参照)が採用されている。このような態様であれば、地盤変位計測装置を設置するのにコストが掛かり、当然のことながら、地盤変位計測装置を維持するのにもコストが掛かるため、例えば、限界集落のようなコストを掛けにくい地域に設置するのには適していない。
【0007】
本発明の目的は、安価でしかも確実に災害を予測し警告することで、できるだけ早く災害から逃れることができ、しかも地域単位ではなく、家屋単位で差し迫った身近な危険を察知し、警告することができる、即ち、木目細かく対応することができる災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、大雨等により発生する用水路、側溝等の水嵩の急激な増加状況から斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)、土石流等の土砂災害の予兆を事前に察知することができる災害予知装置であって、一端側に蓋部材を備えており内部に距離センサを設置した円筒体と、前記円筒体を側壁に固定するための固定部材と、前記円筒体の内部に挿入できる程度の外径を備えた浮球体と、前記浮球体を支えるドーナツ形状の浮球体受け部材を備える災害予知装置であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、大雨等により発生する斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)等の土砂災害の予兆を、地盤変位を計測することにより事前に察知することができる災害予知装置であって、一端側に蓋部材を備えており内部に距離センサを設置した円筒体と、前記円筒体を斜面側に固定するための固定部材と、前記円筒体と抜き差し自在に形成された第二円筒体と、前記第二円筒体の上下方向を安定させるための設置台を備えることを特徴とする災害予知装置であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2に記載された発明において、前記距離センサは通信機能を備えており、中央制御部と通信することで、測定データから異常事態発生と判断した中央制御部から、各世帯単位で危険を知らせる警告機能を備えている災害予知装置を利用した災害予知システムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る災害予知装置(の一つの形態)は、大雨等により発生する用水路、側溝等の水嵩の急激な増加状況から、その上流にある斜面等の斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)やそれに伴う土石流等の土砂災害の予兆を事前に察知することができる災害予知装置である。一端側に蓋部材を備えており、内部に距離センサを設置した円筒体と、円筒体を側壁に固定するための固定部材と、円筒体の内部に挿入できる程度の外径を備えた浮球体と、浮球体を支えるドーナツ形状の浮球体受け部材を備えている。
【0012】
災害予知装置は、用水路、側溝の側壁等に円筒体を固定することにより設置する。大雨により用水路、側溝等の水嵩が増加すると、円筒体の内部に浮き沈み自在に設置された浮球体は、水嵩が増した分だけ上方に移動する。そうすると、円筒体の内部に設置した距離センサは、浮球体との距離が短くなったことを察知する。距離センサと浮球体との距離が短くなる程度(即ち、用水路、側溝等の水嵩の増加レベル)が短時間で相当量であれば、土砂災害の予兆であり、災害の危機が迫っていると言える。
【0013】
災害予知装置(のさらなる形態)は、大雨等により発生する斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)等の土砂災害の予兆を、地盤変位量を計測することにより事前に察知することができる災害予知装置である。災害予知装置は、一端側に蓋部材を備えており、内部に距離センサを設置した円筒体と、円筒体を斜面側に固定するための固定部材と、円筒体と抜き差し自在に形成された第二円筒体と、第二円筒体の上下方向を安定させるための設置台を備えている。
【0014】
斜面崩壊が発生する可能性が考えられる斜面の斜面側に、円筒体を固定部材により固定し、斜面に隣接する地面側に第二円筒体を設置台上に置くことにより設置する。斜面崩壊が起こる際は、斜面において、滑り面上に載っている岩石や土砂の滑動しようとする力が、滑り面の剪断強度を上回った場合に発生するので、斜面に(崩壊の兆しとしての)亀裂が発生する方向に斜面が移動する。即ち、斜面側の滑動しようとする岩石や土砂が下方向に移動する。そうすると、円筒体に設置した距離センサは、設置台との距離が短くなったことを察知する。そのレベルが短時間で相当量であれば、斜面崩壊の危機が迫っていると言える。尚、地面側が崩落する場合は、円筒体に設置した距離センサは、設置台との距離が長くなったことを察知することになるが、そのレベルが短時間で相当量であれば、地面崩落の危機が迫っていると言える。
【0015】
さらに、災害予知装置を利用した災害予知システムにおいて、距離センサは通信機能を備えており、中央制御部と通信することができる。測定データを解析した結果、土砂災害発生の予兆であると判断した中央制御部が、差し迫った土砂災害の危険を家屋単位(地域単位で知らせることができるのは言うまでもない)で知らせる警告機能を備えている。中央制御部は、災害予知装置から送信された測定データを解析し、土石流、斜面崩壊等の危険を察知したら、直ちに、危険を察知した災害予知装置を設置した箇所に隣接した家屋の住民に対し(災害予知装置を設置した箇所付近に在住する地域住民に対し)、電話回線等を利用して土砂災害警報を発することにより、避難指示を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る災害予知装置(水嵩感知用)である。
図2】災害予知装置(地盤変位感知用)である。
図3】災害予知装置(水嵩感知用)を設置した状態を示す図である。
図4】災害予知装置(地盤変位感知用)を設置した状態を示す図である。
図5】災害予知装置を利用した災害予知システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<災害予知装置の構造>
以下、本発明に係る災害予知装置の一実施形態について、図1図5に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係る災害予知装置(水嵩感知用)1の全体図である。
【0018】
本発明に係る災害予知装置(水嵩感知用)1は、大雨等により発生する用水路、側溝等の水嵩の急激な上昇状況(距離センサ4による距離の測定値が急激に減少する:図1点線で記載された部分を参照されたし)から上流地域における斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)、及び土石流等の土砂災害の予兆を事前に察知することができる災害予知装置(水嵩感知用)1である。災害予知装置1は、図1に記載したように、一端側に蓋部材3を備えており内部上端付近に距離センサ4を設置した円筒体5と、円筒体5を用水路、側溝等の側壁(若しくは側壁付近にある固定物)に固定するための固定部材6と、円筒体5の内部に押し込むことなく挿入できる程度の外径を備えた浮球体7と、設置時の浮球体7を下から支えるドーナツ形状の浮球体受け部材部材8を備えている。
【0019】
災害予知装置(水嵩感知用)1(災害予知装置(地盤変位感知用)2も同様である)は、屋外に設置されることを前提に製品開発がなされており、距離センサ4を使用して、浮球体7,又は設置台10までの正確な距離を測定する(その後、通信する)ことが発明の重要なポイントとなっている。従って、円筒体5内部に虫等が、円筒体5内部に侵入して来て(最悪の場合は巣等を作る)と浮球体7,又は設置台10までの正確な距離を測定することができなくなってしまう。
【0020】
そのため、災害予知装置1(水嵩感知用)(災害予知装置(地盤変位感知用)2も同様である)は、開放された箇所を無くすべきだし、機能性を考慮しつつも、できるだけ隙間が生じないように工夫されている。例えば、蓋部材3は螺子式で、蓋部材3の下側外周と円筒体5の上端側の内周に、互いに螺子込める形状のネジ溝が形成されている。尚、蓋部材3と円筒体5の素材は、屋外での用途と機能(含むコスト)を考慮すると、塩化ビニル製であることが好ましいが、本発明同様の機能を発揮することができれば、これに限定されることはない。
【0021】
距離センサ4は、浮球体7、又は設置台10との距離を正確に測定することができる。即ち、災害予知装置1(水嵩感知用)(災害予知装置(地盤変位感知用)2も同様である)は、ミリ単位の精度(必要であれば、これ以上の精度を実現することもできる)を持つ精密な距離センサ4にて、距離センサ4と浮球体8、又は設置台10との距離を測定する。
【0022】
距離センサ4は、距離測定時と中央制御部との通信時に電力を消費することになるが、近々災害が予想されるときの測定(及び通信)の頻度は、1時間に10回~30回でも良いし、必要であれば、さらに頻度を増すように設定することができる。一方、晴天が続き土砂災害等が全く予想できない時は、測定の頻度を1週間に1回程度またはそれ以下にすることで、距離センサ4の電池を長持ちさせることができる(電池交換までの通信回数は4000回~5000回)。
【0023】
固定部材6はある程度の強度(耐候性、寸法安定性等も含む)を必要とするので、金属製(錆びないようにステンレス製)であることが望ましいし、錆びないように表面をコーティングしても良い。浮球体7は、全体として水に浮く程度の比重を有することが必要である。浮球体7は、30mm~60mm程度の厚みを持った円盤形状でも良いが、水に浮いた状態での安定性を考慮すると、完全な球体であることが、浮球体7自体が(円盤形状である場合のように傾くことがなく)回転等によっても距離センサ4からの距離が不変である故、距離センサ4からの距離を測定するという観点から望ましい。例えば、軟式テニスボールのようなゴム製の球体であっても良いし、中空のプラスチック性の球体であっても良い。浮球体7の外径は、円筒体5の内部で浮球体7が自由に回転できる程度の外径であることが必要であり、即ち、円筒体5の内径よりも小さくなる必要があり、用途やハンドリング性等を考慮して、浮球体7の外径は、円筒体5の内径の90%~98%であることが望ましい。
【0024】
浮球体受け部材8は、用水路、側溝等の水嵩が低い時に、自重で落ちてしまう浮球体7を下から支えるためのものである。従って、浮球体受け部材8は、円筒体5の下端に取り付けることになるが、浮球体7の径よりも小さい内径(浮球体7の径の1/2~3/5)を有するドーナツ形状であれば良い。尚、使用時において、水嵩が低い時は、浮球体7と浮球体受け部材8は、浮球体7に自重があるため、浮球体受け部材8との間に隙間が生じないので、虫等の侵入を防ぐことができる。用水路、側溝等の水嵩が高いとき(水嵩が円筒体5の下端よりも高いとき)は、虫等が侵入することができるような隙間が生じないことは言うまでもない。
【0025】
図2は、本発明に係る災害予知装置(地盤変位感知用)2の全体図である。災害予知装置(地盤変位感知用)2は、一端側に蓋部材3を備えており、内部に距離センサ4を設置した円筒体5と、円筒体5を斜面側(例えば、斜面に設置された落石防止ネット、グランドアンカー等の固定物)に固定するための固定部材6と、円筒体5と抜き差し自在に形成された第二円筒体9と、第二円筒体9の上下方向を安定させるための設置台10を備えている。
【0026】
蓋部材3と円筒体5と第二円筒体9は塩化ビニル製、蓋部材3は螺子式であり、蓋部材3の下側外周と円筒体5の上端側の内周に、互いに螺子込める形状のネジ溝が形成されている。第二円筒体9の上下方向を安定させるための設置台10は、設置する場所の地面を平らになるように均した上で、(設置台10として)煉瓦、ブロック等を敷置することになる。災害予知装置(地盤変位感知用)2の第二円筒体9と設置台10との間に、災害予知装置(地盤変位感知用)2を設置する。尚、第二円筒体9と設置台10との間は隙間が生じないように設置するので、距離センサ4による測定の阻害となる虫等の侵入を防ぐことができる。
【0027】
<災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムの使用方法>
図3は、災害予知装置(水嵩感知用)1を設置した状態を示す図である。図4は、災害予知装置(地盤変位感知用)2を設置した状態を示す図である。図5は、災害予知装置1,2を利用した災害予知システムを説明するための図である。
【0028】
災害予知装置(水嵩感知用)1は、用水路や側溝等の側壁(若しくは側壁付近にある固定物)に設置する。図3に記載したように、用水路や側溝に沿って家屋が隣接していることも多く、これらの家屋は土石流による災害が起こりうる地域に存在する家屋であると言える。災害予知装置(水嵩感知用)1により、水嵩の急激な増加を土石流が発生する前に感知し、その後、時間を待たずに直ちに発生すると思われる土石流災害を家屋に在住する住民に土石流警報として知らせ、避難指示を出す。
【0029】
災害予知装置(地盤変位感知用)2は、崖崩れが発生する蓋然性が高い箇所に設置する。図3に記載したように、斜面と家屋が隣接していることも多く、この家屋は斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)による災害が起こりうる地域に存在する家屋であると言える。予知装置(地盤変位感知用)2により、短時間における地盤の急激な変動を斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)が発生する前に感知し、その後、時間を待たずに直ちに発生すると思われる斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)災害を家屋に在住する住民に斜面崩壊警報として知らせ、避難指示を出す。
【0030】
具体的には、図5に記載したように、災害予知装置(水嵩感知用)1、及び予知装置(地盤変位感知用)2から測定データを受信した中央制御部が該測定データを解析し、解析の結果としての災害の危険を予測する。災害の危険を予測した中央制御部は、災害予知装置(水嵩感知用)1、及び予知装置(地盤変位感知用)2付近にある各家屋に家屋単位で災害警報を出し、避難を促すことになる。尚、家屋単位ではなく、地域単位で避難を促すことができるのは言うまでもない。
【0031】
距離センサ4の測定頻度(及び通信頻度)は、自由に変更することができる。即ち、晴天が続き災害が発生する怖れが少ない時は、1週間に1回程度の測定(及び通信)でも良いが、測定データを頻繁に採る必要がある災害発生が懸念される期間においては、1時間に10回~30回でも良いし、必要であれば、さらに頻度を多くなるように設定することができる。尚、複数回測定し、(通信時に)それらの複数の測定データを纏めて送信することも可能である。
【0032】
<災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムの効果>
用水路や側溝の水嵩の急激な上昇は、間接的に上流側における斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)、土石流等の土砂災害の予兆であるといえる。即ち、用水路や側溝の水嵩の短時間での急激な上昇と土砂災害には相当の因果関係があると考えられる。
【0033】
災害予知装置(水嵩感知用)1は、用水路、側溝の側壁(若しくは側壁付近にある固定物)に円筒体を固定することにより設置する。大雨により用水路、側溝等の水嵩が増加すると、円筒体5の内部に浮き沈み自在に設置された浮球体7は、水嵩が増した分だけ上方に移動する。そうすると、円筒体5の内部に設置した距離センサ4は、浮球体7との距離が短くなったことを察知する。その増加レベルが短時間で相当量の増加量であれば、土砂災害の予兆であり、災害の危機が迫っていると言える。
【0034】
一方、斜面を構成する土塊や岩盤は、重力や摩擦力等の作用の結果、滑り面(図4参照)において「斜面を移動させようとする力」よりも、それに「抵抗する力」が大きい状態で安定している。ここで、前者が大きくなったり後者が小さくなったりすると、バランスが崩れて斜面崩壊を生じる。斜面崩壊は、滑り面上に載っている地塊の「斜面を移動させようとする力」が、滑り面の「抵抗する力」を上回りバランスが崩れる(斜面に亀裂が入る、地面にひび割れやズレができる)までには一定の時間を要し、避難するための時間が確保できる程度に進行する。即ち、斜面崩壊が発生するまでには、ある程度の猶予がある。従って、災害発生の予兆さえ感知して、事前に警告することができれば、事前に避難することができるという思想である。
【0035】
災害予知装置(地盤変位感知用)2は、斜面崩壊が起こると可能性が考えられる場所の斜面側に円筒体、地面側に第二円筒体を設置台上に置くことにより設置する。斜面崩壊が起こる際は、斜面において、滑り面上に載っている地塊が滑動しようとする力が、滑り面の剪断強度を上回った場合に発生するので、斜面に崩落の兆しとして亀裂が発生する方向に斜面が移動する。即ち、斜面側が下方向に移動する。そうすると、円筒体に設置した距離センサは、設置台との距離が短くなったことを察知する。そのレベルが短時間で相当量の増加量であれば、斜面崩壊の危機が迫っていると言える。
【0036】
災害発生を警告するシステムとして、現状では(気象庁では)過去の災害のデータ等から土砂災害等が発生するかどうかを「土砂災害警戒判定メッシュ情報」という形にてネット上で公表している。即ち、メッシュで区切られた地域単位において、災害発生の危険があるかどうかの情報が限界であった。これに対して、本発明に係る災害予知装置を利用した災害予知システムでは、例えば、斜面の下側に隣接する家屋単位に警告することもできる。即ち、災害に対して(木目細やかに)個別に対応することができる。
【0037】
具体的には、家屋に隣接する裏山(家屋の住人が所有者であることもある)の斜面が崩れる危険があれば、個別(家屋の住人)に警報を出すことができるのであって、ピンポイントで災害を予知し、警告することができる。即ち、限界集落のような所であっても、災害予知装置(水嵩感知用)1、及び災害予知装置(地盤変位感知用)2は、安価に設置することができるし、限界集落の中の一軒家であっても通信回線があれば(電話回線を設置することができる状況であれば)、個別に警報を出すことができる。尚、電話回線のような通信回線がない地域であっても衛星通信を利用すれば、衛星通信は世界のほぼ全域をカバーしているため(地球上のどこからでも通信できるので)通信回線が整備されていない地域であっても、本発明に係る災害予知装置を利用した災害予知システムを利用することができる。
【0038】
<災害予知装置の変更例>
本発明に係る災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムは、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、蓋部材、距離センサ、円筒体、固定部材、浮球体、浮球体受け部材、第二円筒体、設置台等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、災害予知装置の基本構造は、必ずしも円筒体である必要はなく、中空の角柱形状等(浮球体受け部材も中空の角柱形状に合わせた形状)であっても良い。また、災害予知装置(水嵩感知用)においては、増水した時に、円筒体の下側に複数の穴部(φ10mm~φ30mm)を設けて流水が円筒体の内部に入り込み易くしても良い。
【0039】
さらに、災害予知装置(地盤変位感知用)においては、円筒体の内側に第二円筒体を嵌め込む態様(図2参照)ではなく、第二円筒対体の内側に円筒体を嵌め込む態様であっても良いし、災害予知装置を利用した災害予知システムについても、電話回線以外の通信手段を利用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係る災害予知装置、及び災害予知装置を利用した災害予知システムは、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、集中豪雨等により発生する、斜面崩壊(崖崩れ、土砂崩れ)、土石流等の土砂災害における防災関連装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・災害予知装置(水嵩感知用)
2・・災害予知装置(地盤変位感知用)
3・・蓋部材
4・・距離センサ
5・・円筒体
6・・固定部材
7・・浮球体
8・・浮球体受け部材
9・・第二円筒体
10・・設置台
図1
図2
図3
図4
図5