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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ミスト状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240207BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240207BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/02
A61K8/19
A61K8/29
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019183662
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059506
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 恵
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-108966(JP,A)
【文献】特開平11-079933(JP,A)
【文献】特開2010-090044(JP,A)
【文献】特開2010-018598(JP,A)
【文献】特開2017-178940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸化チタン被覆雲母またはシリカ処理雲母チタンから選ばれる1種以上
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油またはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンから選ばれる1種以上
(C)ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体またはアクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1種以上
を含有し、前記(A)成分の含有量が0.1~4質量%であり、前記(B)成分の含有量が0.1~2質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.1~1質量%であることを特徴とするミスト状化粧料(ただし、エアゾール型化粧料を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミスト状化粧料に関し、特に肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさに優れるミスト状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水の使用方法として、手に化粧水を適量とり顔全体に馴染ませる方法、コットンに化粧水を適量含ませ顔全体に馴染ませる方法、アトマイザーやディスペンサー等の容器に化粧水を詰めてミスト状化粧料として顔全体に適量プッシュする方法などがある。中でも、簡単に広範囲に均一に塗布することができるミスト状化粧料は、市場で認知されており、一定の需要がある。
【0003】
特に顔に使用するミスト状化粧料は、メーキャップ化粧料を塗布した後に使用されることが多いため、霧の細かさや肌に塗布した時の使用感に加えて、肌へのツヤを与えることが求められている。
【0004】
一般的に、肌へのツヤを与える方法として、パール剤等の高輝性粒子を配合することが知られている。高輝性粒子を配合した例として、高輝性粒子、皮膜形成性樹脂、アニオン性高分子、水を含有する液体化粧料(特許文献1)、ミスト状化粧料として、ジェランガムとアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体を含有する化粧料(特許文献2)が開示されているが、パール剤を多く配合することで肌のツヤ感が増す一方で、パール剤の分散性が悪くなることによるミストの詰まりおよび肌上のパール剤の保持力については課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-232917号公報
【文献】特開2012-144503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさに優れるミスト状化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、(A)パール剤、(B)非イオン性界面活性剤、(C)水溶性被膜形成剤を含有するミスト状化粧料に肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさに優れるミスト状化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさに優れるミスト状化粧料を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(A)パール剤、(B)非イオン性界面活性剤、(C)水溶性被膜形成剤を含有するミスト状化粧料である。
【0010】
本発明は、肌のツヤ感を付与する観点から、(A)パール剤を含有する。
【0011】
本発明で用いられる前記(A)成分としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン被覆ガラス末、酸化チタン処理合成金雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、シリカ処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体、酸化鉄被覆雲母、有機顔料処理雲母チタン、無水ケイ酸・ベンガラ処理アルミニウム末等を挙げることができる。前記(A)成分は1種以上を含有してよい。
【0012】
本発明で用いられる前記(A)成分のうち、肌のツヤ感を付与する観点から、酸化チタン被覆雲母およびシリカ処理雲母チタンが好ましい。
【0013】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、好ましくは0.1~4質量%、より好ましくは0.5~2質量%がよい。前記(A)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、肌のツヤ感が得られない恐れがある。前記(A)成分が4質量%を超える場合、パール剤の分散性および肌上のパール剤の保持力が悪くなる恐れがある。
【0014】
本発明は、パール剤の分散性を良好にする観点から、(B)非イオン性界面活性剤を含有する。
【0015】
本発明で用いられる前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルグリセリルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド、アルキル脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグルコシド等が挙げることができる。前記(B)成分は1種以上を含有してよい。
【0016】
本発明で用いられる前記(B)成分のうち、パール剤の分散性の良さの観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0017】
本発明で用いられる前記(B)成分のうち、さらに好ましくは、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が40または60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が20であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好ましい。
【0018】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、0.1~2質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%がよい。前記(B)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、パール剤の分散性が悪くなる恐れがある。前記(B)成分の含有量が2質量%を超える場合、べたつきが生じる恐れがある。
【0019】
本発明は、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさの観点から、(C)水溶性被膜形成剤を含有する。
【0020】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、陰イオン性被膜形成剤、陽イオン性被膜形成剤、両性被膜形成剤、非イオン性被膜形成剤等が挙げられる。前記(C)成分は1種以上を含有してよい。
【0021】
本発明で用いられる前記(C)成分の陰イオン性被膜形成剤としては、例えば、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アルキル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、メチルビニルエーテル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル・クロトン酸共重合体、クロトン酸・酢酸ビニル・ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボロリルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ビニルピロリドン/アクリレーツ/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、スチレン/アクリル酸アミド共重合体、ウレタン-アクリル系共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いられる前記(C)成分の陽イオン性被膜形成剤としては、例えば、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化О-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド共重合体等が挙げられる。
【0023】
本発明で用いられる前記(C)成分の両性被膜形成剤としては、例えば、N-メタクリロイルオキシエチルN,N-ジメチルアンモニウム-α-N-メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、N,Nジメチル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)アミン-N-オキシド・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、イソブチレン/ジエチルアミノプロピルマレイミド/マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いられる前記(C)成分の非イオン性被膜形成剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0025】
本発明の前記(C)成分としては、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさの観点から、非イオン性被膜形成剤および陰イオン性被膜形成剤から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、これら良好な被膜形成剤の中でも、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体およびアクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
【0026】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、0.1~1質量%、より好ましくは0.3~0.5質量%がよい。前記(C)成分の含有量が0.1質量%未満の場合、肌上のパール剤の保持力が得られない恐れがある。前記(C)成分の含有量が1質量%を超える場合、肌のべたつきが悪くなる恐れがある。
【0027】
本発明における20℃条件下によるpHは、弱酸性の観点から4.5~6.5であり、より好ましくは5~6である。
【0028】
本発明における20℃条件下によるpHは、常法にて調製して得られたミスト状化粧料をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、堀場製作所製)にて原液のpHを測定し得られるものである。
【0029】
本発明のミスト状化粧料は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、(A)成分以外の紛体、ビタミン類、キレート剤、pH調整剤、増粘剤、油性成分、保湿剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、酸化防止剤、還元剤、植物性抽出物、生薬抽出物、香料、防腐剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、(B)成分以外の界面活性剤等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものではない。
【0030】
本発明のミスト状化粧料は、液状、ジェル状等の形態で用いられ、ディスペンサー容器に充填され、使用時まで保存される。
【0031】
本発明のミスト状化粧水のミストディスペンサーとしては、特に限定はされないが、例えばミストディスペンサーZ-155-C094-1-060(95-0)、(吐出量0.15mL/1プッシュ、三谷バルブ社製)を用いることができる。
【実施例
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
本明細書に示す評価試験において、ミスト状化粧料に含まれる成分、およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位はすべて質量%であり、これを常法にて調製した。
【0034】
本明細書に示す評価試験において、「肌のツヤ感」、「パール剤の分散性」、「肌上のパール剤の保持力」および「肌のべたつきのなさ」について下記の方法で評価した。
【0035】
「肌のツヤ感」
各ミスト状化粧水を100mL用PET容器に70mL充填し、25℃条件下でミストディスペンサー(Z-155-C094-1-060(95-0):三谷バルブ社製)を用いて、実施例および比較例で得られた各ミスト状化粧料を塗布し、塗布後から5分間経過した後の肌のツヤ感を目視にて評価した。評価は専門のパネラー20名が実施例および比較例のミスト状化粧料10プッシュを顔面全体に塗布し、肌のツヤ感を評価した。
◎:20名中16名以上が肌のツヤ感があると評価した。
○:20名中11名以上15名以下が肌のツヤ感があると評価した。
△:20名中6名以上10名以下が肌のツヤ感があると評価した。
×:20名中5名以下が肌のツヤ感があると評価した。
【0036】
「パール剤の分散性」
各ミスト状化粧水を100mL用PET容器に70mL充填し、25℃条件下でミストディスペンサー(Z-155-C094-1-060(95-0):三谷バルブ社製)を用いて、実施例および比較例で得られた各ミスト状化粧料を、25℃条件下で24時間静置し、パール剤を沈降させた後に、手で振り混ぜて再分散に要する回数で評価した。
◎:10回以内に再分散した。
○:11回以上30回以内で再分散した。
×:31回以上でも再分散しなかった。
【0037】
「肌上のパール剤の保持力」
各ミスト状化粧水を100mL用PET容器に70mL充填し、25℃条件下でミストディスペンサー(Z-155-C094-1-060(95-0):三谷バルブ社製)を用いて、実施例および比較例で得られた各ミスト状化粧料を塗布し、塗布後から5分間経過した後の肌上のパール剤の保持力を目視にて評価した。評価は専門のパネラー20名が実施例および比較例のミスト状化粧料0.5gを顔面全体に塗布し、肌上のパール剤の保持力を評価した。
◎:20名中16名以上が肌上のパール剤の保持力があると評価した。
○:20名中11名以上15名以下が肌上のパール剤の保持力があると評価した。
△:20名中6名以上10名以下が肌上のパール剤の保持力があると評価した。
×:20名中5名以下が肌上のパール剤の保持力があると評価した。
【0038】
「べたつきのなさ」
各ミスト状化粧水を100mL用PET容器に70mL充填し、25℃条件下でミストディスペンサー(Z-155-C094-1-060(95-0):三谷バルブ社製)を用いて、実施例および比較例で得られた各ミスト状化粧料を塗布し、塗布後から5分間経過した後のべたつきを官能にて評価した。評価は専門のパネラー20名が実施例および比較例のミスト状化粧料を20℃に温度調整し、0.5gを20℃の条件下で顔面全体に塗布し、べたつきを評価した。
◎:20名中16名以上がべたつきを感じないと評価した。
○:20名中11名以上15名以下がべたつきを感じないと評価した。
△:20名中6名以上10名以下がべたつきを感じないと評価した。
×:20名中5名以下がべたつきを感じないと評価した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
表1~表4に示す実施例1~27から、肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさについて良好な結果を得ることが確認された。
【0044】
実施例28を使用して各種試験を行っても、肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさのいずれの評価も良好であった。
【0045】
<実施例28>
成 分 含有量(質量%)
(A)酸化チタン被覆雲母(※1) 0.600
(A)シリカ処理雲母チタン(※2) 0.100
(A)シリカ処理雲母チタン(※3) 0.100
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60EO) 1.000
(C)ポリビニルピロリドン 0.300
安息香酸ナトリウム 0.300
1, 3-ブチレングリコール 4.000
エデト酸二ナトリウム 0.100
クエン酸 0.100
クエン酸ナトリウム 0.350
アーチチョークエキス 0.010
植物性スクワラン 0.001
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(10EO) 0.010
香料 0.020
精製水 93.009
合計 100.000
※1:Timiron Supersheen MP-1001(MERCK社製)
※2:Timiron Splendid Violet(MERCK社製)
※3:Timiron Splendid Red(MERCK社製)
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、肌のツヤ感、パール剤の分散性、肌上のパール剤の保持力および肌のべたつきのなさに優れるミスト状化粧料を得ることができる。