(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】整線装置及びラック
(51)【国際特許分類】
H05K 7/18 20060101AFI20240207BHJP
H05K 7/02 20060101ALI20240207BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20240207BHJP
F16B 21/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H05K7/18 E
H05K7/02 Q
H02G3/30
F16B21/02 Z
(21)【出願番号】P 2020022127
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591144280
【氏名又は名称】摂津金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】十河 陽平
【審査官】原田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3220197(JP,U)
【文献】特開2020-012509(JP,A)
【文献】特開平07-212057(JP,A)
【文献】特開2018-185488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
H05K 7/02
H02G 3/30
F16B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装着孔を有するパネル体と、
装着孔に着脱自在かつ片持ち支持状態に装着される整線バーとを具備し
、
整線バーの前部に、正面視放射状又はフランジ状を呈する突出部を設けた整線装置。
【請求項2】
前記装着孔は正面視非真円形状を呈し、
前記整線バーは装着孔に差し込み可能な背面視非真円形状の差し込み部を後端側に有し、
差し込み部の外周面にはその周方向に延びる係合溝が設けられ、
差し込み部を装着孔に差し込み、装着孔の内側に係合溝が位置する状態で整線バーを軸回りに回転させると、係合溝が装着孔に係合するように構成した請求項1に記載の整線装置。
【請求項3】
前記装着孔は正面視正方形状を呈し、前記差し込み部は背面視正方形状を呈する請求項2に記載の整線装置。
【請求項4】
前記整線バーは、相互に幅の異なる複数の係合溝を
整線バーの軸方向に相互に離して有する請求項1~3の何れか一項に記載の整線装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の整線装置
を備えたラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ラックに搭載(収容)される電子機器(ラック搭載機器)に繋がれる通信用や電源用のケーブルを整線するための整線装置及びラックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、一つのラックには上下多段に複数の電子機器が搭載され、各機器に繋がった種々のケーブルはラック外にまで引き回される。そして、各機器からの多数のケーブルをラック内において乱雑な状態で放置してあると、ケーブルどうしが不規則に絡み合い、メンテナンス時にケーブルが誤って抜かれ易くなるし、ケーブルどうしの重なりや絡まり等に起因して思わぬストレスがかかり断線し易くもなる。さらに、使用に伴って発熱する電子機器の冷却のためにラック内に効率的に冷気を取り込む技術は確立されているが、乱雑な状態で放置された多数のケーブルは冷気の流れを妨げ易く、この妨げによって冷却効果が低減してしまう懸念もある。こうした背景から、ラック内のケーブルの整線化が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、通信データ量や消費電力量の増加によりラック搭載機器に繋がれるケーブル量は増加する一方で、機器を収容するラック内のスペースの拡張を図るのは困難であることが多い。そのため、スペースの限られたラック内にて多数のケーブルを整線する重要性はますます高まっているところ、本発明者は、特に整線ルートの自由度の向上及び整線ルートの変更の容易化が有効であると考え、鋭意研究の結果、本発明をなすに至った。
【0004】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、整線ルートの自由度の向上及び整線ルートの変更の容易化に資する整線装置及びラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る整線装置は、複数の装着孔を有するパネル体と、装着孔に着脱自在かつ片持ち支持状態に装着される整線バーとを具備し、整線バーの前部に、正面視放射状又はフランジ状を呈する突出部を設けた(請求項1)。
【0006】
上記整線装置において、前記装着孔は正面視非真円形状を呈し、前記整線バーは装着孔に差し込み可能な背面視非真円形状の差し込み部を後端側に有し、差し込み部の外周面にはその周方向に延びる係合溝が設けられ、差し込み部を装着孔に差し込み、装着孔の内側に係合溝が位置する状態で整線バーを軸回りに回転させると、係合溝が装着孔に係合するように構成してもよい(請求項2)。
【0007】
上記整線装置において、前記装着孔は正面視正方形状を呈し、前記差し込み部は背面視正方形状を呈するようにしてもよい(請求項3)。
【0008】
上記整線装置において、前記整線バーは、相互に幅の異なる複数の係合溝を整線バーの軸方向に相互に離して有していてもよい(請求項4)。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るラックは、請求項1~4の何れか一項に記載の整線装置を備えた(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、整線ルートの自由度の向上及び整線ルートの変更の容易化に資する整線装置及びラックが得られる。
【0011】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の整線装置では、パネル体の適宜の箇所に適宜のピッチで複数の装着孔を設けておき、任意の装着孔に整線バーを装着することにより、高い自由度をもって整線ルートを定めることができ、整線対象(例えばケーブル)の増減やレイアウト変更等に応じて整線バーの増減や位置変更を行うことにより、整線ルートの変更も容易に行うことができる。
【0012】
請求項2、3に係る発明の整線装置では、所定厚みのパネル体に所定形状の装着孔さえ設けてあれば、その位置に整線バーをツールレスで装着することができ、整線に関する作業性の向上に寄与するものとなる。
【0013】
請求項1に係る発明の整線装置では、整線バーによって案内される整線対象が整線バーの前方に抜けてしまうことは突出部によって防止されるので、整線バーによる整線効果の確実化を図ることができる。
【0014】
請求項4に係る発明の整線装置では、厚みの異なる複数のパネル体に整線バーを装着可能とすることができ、汎用性に優れたものとなる。
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る整線装置が設けられるラックの構成を示す斜視図である。
【
図2】前記整線装置を設けたラックの構成を示す斜視図である。
【
図3】前記ラックの要部の構成を示す斜視図である。
【
図4】前記ラックの要部の構成を示す部分拡大斜視図である。
【
図5】(A)~(D)は前記整線装置の整線バーの構成を示す平面図、正面図、側面図及び背面図、(E)は(B)のE-E線断面図、(F)及び(G)は(C)のF-F線断面図及びG-G線断面図、(H)は(A)のH部拡大図である。
【
図6】(A)及び(B)は、前記整線バーの構成を示す相互に異なる方向からの斜視図である。
【
図7】(A)及び(B)は、前記整線バーの変形例の構成を示す相互に異なる方向からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0018】
図1に示すラック1は、その内部に、上下方向に延びる機器取付用フレーム2が設けられ、機器取付用フレーム2には、
図2に示すように、サーバー等の電子機器3が取り付けられる。そして、本例の整線装置は、
図2~
図4に示すように、ラック1内に設けられるパネル体4と、複数の整線バー5とを具備している。
【0019】
本例では、パネル体4として、電子機器3の側方の位置(機器取付用フレーム2の外側に連なる位置)において上下方向に延びる一つの垂直パネル4Aと、上下に隣り合う電子機器3の間を水平方向に延びる複数の水平パネル4Bとを設けてある。そして、垂直パネル4Aには、多数の装着孔6を千鳥状に設けてあり、具体的には、上下方向に等間隔に並ぶ装着孔6の列を3列設けてある。また、水平パネル4Bには、その長手方向に等間隔に並ぶ複数の装着孔6の列を1列設けてある。
【0020】
整線バー5は、
図5(A)~(H)及び
図6(A)及び(B)に示す構造を有し、装着孔6に着脱自在かつ片持ち支持状態に装着されるように構成してある。
【0021】
すなわち、装着孔6は
図3に示すように正面視正方形状(非真円形状の一例)を呈し、整線バー5は装着孔6に差し込み可能な背面視正方形状(非真円形状の一例)の差し込み部7を後端側に有する(
図5(A)、(C)、(D)及び(H)参照)。差し込み部7は、その背面視形状が装着孔6の正面視形状と略同形状であり、寸法を装着孔6よりもやや小さくしてある。そして、差し込み部7の外周面にはその周方向に延びる二つの係合溝8が設けられ、差し込み部7を装着孔6に差し込み、装着孔6の内側にいずれか一方の係合溝8が位置する状態で整線バー5を軸回りに回転させると、当該係合溝8が装着孔6に係合するように構成してある。
【0022】
上記係合を実現するために、本例では、
図5(F),(G)に示すように、各係合溝8の底に、ストレート部分9とカーブ部分10とが周方向に交互に並ぶように四つずつ設け、ストレート部分9は差し込み部7の外面(差し込み部7の背面視正方形の各角)から内側に退いた位置にあり、カーブ部分10は差し込み部7の外面(差し込み部7の背面視正方形の各辺中央)にほぼ連なる位置にあるようにしている。つまり、差し込み部7を装着孔6に差し込む際、差し込み部7の向きを装着孔6の向きに合致させる必要があり、この差し込み後、差し込み部7を軸回りに回転させると、装着孔6の正方形状の縁の各辺中央部が差し込み部7の係合溝8のストレート部分9の外側の隙間に受け入れられることになる。この受け入れの際、装着孔6の縁が係合溝8の底(特にカーブ部分10)に適宜に当接し、この当接によって整線バー5は装着孔6にある程度しっかりと保持された状態となる。
【0023】
そして、このように係合溝8のストレート部分9の外側の隙間に受け入れられた装着孔6の縁を挟持するために、
図5(H)に示すように、係合溝8において各ストレート部分9の外側の隙間を前後から挟み込む側面の少なくとも一方に、係合溝8内に迫り出す迫り出し部11をそれぞれ(すなわち計四つ)設けてある。各迫り出し部11の迫り出し量は、係合溝8の周方向の一方に向かって徐々に大きくなるようにしてある。そして、本例の迫り出し部11は、係合溝8のストレート部分9の外側の隙間のみに収まらず、カーブ部分10の外側の隙間に若干はみだすようにしてあるが、係合溝8のストレート部分9の外側の隙間に収まるように設けてもよい。また、本例では、係合溝8の前後側面のうち、後ろ側の側面のみに迫り出し部11を設けているが、前側の側面のみに設けても、両側面に設けてもよい。
【0024】
すなわち、本例の整線バー5は、所定厚みのパネル体4に所定形状の装着孔6さえ設けてあれば、その位置にツールレスで装着することができる。そして、本例の整線装置では、パネル体4の適宜の箇所に適宜のピッチで複数の装着孔6を設けておき、任意の装着孔6に整線バー5を装着することにより、高い自由度をもって整線ルートを定めることができ、ラック1に収容する電子機器3の増減や機種変更等に応じて整線バー5の増減や位置変更を行うことにより、整線ルートの変更も容易に行うことができる。
【0025】
ここで、二つの係合溝8は、
図5(A)、(C)及び(H)に示すように、その幅(整線バー5の前後方向の幅)が相互に異なるようにしてあり、これにより、厚みの異なる二種のパネル体4のいずれにも装着可能となっている。なお、係合溝8の幅は、パネル体4の厚みに応じて適宜に決めればよく、例えば1mmと2mmの幅の係合溝8を設けることが考えられる。
【0026】
また、整線バー5に相互に幅の異なる二つの係合溝8を設ける場合、幅の小さい係合溝8と幅の大きい係合溝8のいずれを前方(突出部12側)に位置させてもよいが、後ろ側の係合溝8を装着孔6に装着した際、前側の係合溝8は装着孔6の外側に露出することになるので、この露出した前側の係合溝8を目立ちにくくして外観の向上を図るという点からは、幅の小さい係合溝8を前方に位置させるのが好ましい。
【0027】
ただし、本例では、
図5(A)及び(C)に示すように、整線バー5において差し込み部7の前方に連なる本体部5aの外径を差し込み部7の外径よりも一回り大きくしてあり、かつ、前側の係合溝8を本体部5aに沿わせて設けてあるので、前側の係合溝8は上述したように露出した際に殆ど目立つことはない。
【0028】
また、本例では、整線バー5の前部に、整線バー5の径外方向に突出する突出部12を設けている。これにより、
図2~
図4に示すように、電子機器3に繋がり整線バー5によって案内される各種のケーブル13が整線バー5の前方に抜けてしまうことは突出部12によって防止されるので、整線バー5による整線効果の確実化を図ることができる。
【0029】
なお、突出部12は、整線バー5を装着孔6に装着した状態で少なくとも上向きに突出していることが望ましく、本例では、整線バー5を装着孔6に装着する際のハンドリング性を考慮して正面視略十文字状としてあるが(
図5(B)及び(D)参照)、例えば他の放射状やフランジ状としてもよい。
【0030】
本例では、
図5(B)及び(E)に示すように、整線バー5の前面に取付用穴(例えばねじ穴)14を設けてあり、装着孔6に整線バー5を装着した後、任意の整線バー5の取付用穴14を利用して整線バー5の前方に適宜のパネル部材等を取り付けるようにしてもよく、この場合、取り付けたパネル部材等によってケーブル13の脱落防止やいたずら防止対策を行うようにすることができる。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0032】
例えば、上記実施の形態では、迫り出し部11を計四つ設けているが、これに限らず、例えば三つまたは二つとしてもよい。二つとする場合、整線バー5の装着状態安定性を考慮すると、係合溝8において相互に背向する二つのストレート部分9の外側の隙間に対応する位置にそれぞれ迫り出し部11を設けるのが好ましい。
【0033】
上記実施の形態では、整線バー5に相互に幅の異なる二つの係合溝8を設けているが、これに限らず、相互に幅の異なる三つ以上の係合溝8を設けるようにしてもよく、逆に係合溝8を一つのみとしてもよい。
【0034】
上記実施の形態では、整線バー5を一部品にて構成しており、成型部品とすることにより安価製造を可能としている。しかし、これに限らず、例えば
図7(A)及び(B)に示すように、差し込み部7を含む基端部品15Aと、本体部5aを含む中間部品15Bと、突出部12を含む先端部品15Cとの三部品に分け、これらを連結すると整線バー5になるように構成してもよい。そして、この場合、中間部品15Bを押し出し成型品(筒状部品)とし、かつその両端がそれぞれ基端部品15A、先端部品15Cの各雄部16を差し込み接続可能な雌部17となるような縦断面形状を付与してあれば、現場にて中間部品15Bを任意の長さに切断することにより、整線バー5の長さを調整することができる。
【0035】
また、
図7(A)及び(B)に示す例では整線バー5を三つの部品15A~15Cによって構成するが、例えば、雄部16を一端側に有し、雌部17を他端側に有する適宜長さの連結部品(図示していない)を別途設け、この連結部品を基端部品15Aと中間部品15Bの間の位置や中間部品15Bと先端部品15Cの間の位置に連結するようにして整線バー5を延長可能としてもよく、この場合、各位置に設ける連結部品は一つのみでもよいし、複数連結したものであってもよい。
【0036】
このように、整線バー5の長さを可変(短縮可能あるいは延長可能)とすれば、ラック1に収容するケーブル13の量の多少や増減に対してより柔軟かつ適切に対応する整線の実現が可能となる。
【0037】
上記実施の形態では、整線バー5の差し込み部7を装着孔6に差し込んで回転させると、装着孔6の縁が係合溝8の底に当接するとともに、係合溝8の前後の側面(迫り出し部11及びこの迫り出し部11に対向する側面)が装着孔6の縁を挟持するようにしてあるが、前者の当接又は後者の挟持のいずれか一方のみで装着孔6に対する整線バー5の装着が十分に行えると考えられる場合には、他方の構成を省略してもよい。
【0038】
上記実施の形態では、装着孔6を正面視正方形状とし、差し込み部7を背面視正方形状としてあるが、これに限らず、例えば、それぞれを正六角形状、正八角形状等の正方形状以外の偶数正多角形状としたり、奇数正多角形状としたり、正多角形状ではない多角形状としたり、楕円形状としたり、その他、直線と曲線を適宜に組み合わせた辺で構成した形状としてもよい。要は、差し込み部7を装着孔6に差し込んで回転したときに、装着孔6の縁に対してその内側から当接する部分と、当該縁を前後から挟持する部分との少なくとも一方(好ましくは両方)を差し込み部7が有するようにしてあればよく、両者6,7を略同一形状としてあっても全く異なる形状としてあってもよい。
【0039】
なお、本明細書で挙げた上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 ラック
2 機器取付用フレーム
3 電子機器
4 パネル体
4A 垂直パネル
4B 水平パネル
5 整線バー
5a 本体部
6 装着孔
7 差し込み部
8 係合溝
9 ストレート部分
10 カーブ部分
11 迫り出し部
12 突出部
13 ケーブル
14 取付用穴
15A 基端部品
15B 中間部品
15C 先端部品
16 雄部
17 雌部