(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ駆動システム及び流体圧アクチュエータ駆動方法
(51)【国際特許分類】
F15B 21/06 20060101AFI20240207BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20240207BHJP
F15B 1/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F15B21/06
B01J7/00 Z
F15B1/02 Z
(21)【出願番号】P 2020046919
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥井 学
(72)【発明者】
【氏名】圓城 竜斗
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-130109(JP,A)
【文献】特開2017-215036(JP,A)
【文献】特開2006-084030(JP,A)
【文献】特開2008-075739(JP,A)
【文献】特開昭57-153952(JP,A)
【文献】特開2002-357315(JP,A)
【文献】特開2022-142448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00-15/28
F15B 20/00-21/12
B01J 4/00- 7/02
F15B 1/02
F01K 25/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化によって可燃性の気体を生じさせる、気体生成装置と、
前記気体生成装置によって生じる前記気体の圧力によって駆動される、第1流体圧アクチュエータと、
前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼装置と、を有
し、
前記第1流体圧アクチュエータは、弾性筒状体又はシリンダを用いて流体圧を往復運動に変える往復駆動式流体圧アクチュエータで構成される、流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項2】
前記エネルギーを利用する、エネルギー利用デバイスを有する、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項3】
前記エネルギー利用デバイスは、前記第1流体圧アクチュエータを有する、請求項2に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項4】
前記エネルギー利用デバイスは、第2流体圧アクチュエータを有する、請求項2又は3に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項5】
前記エネルギーを蓄積する、エネルギー蓄積装置を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項6】
前記エネルギー蓄積装置は、前記エネルギーを加圧気体として蓄積可能な、圧力容器を有する、請求項5に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項7】
前記第1流体圧アクチュエータは人工筋アクチュエータで構成される、請求項1~6の何れか1項に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項8】
前記気体の飽和蒸気圧は、1MPa以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項9】
前記気体はジメチルエーテルである、請求項1~8の何れか1項に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項10】
前記ジメチルエーテルを燃焼させる時の空気とジメチルエーテルのモル比である空燃比は、0.05~0.11mol%である、請求項9に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項11】
前記空燃比は、0.06~0.09mol%である、請求項10に記載の流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項12】
相変化によって可燃性の気体を生じさせる、気体生成装置と、
前記気体生成装置によって生じる前記気体の圧力によって駆動される、第1流体圧アクチュエータと、
前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼装置と、を有し、
前記気体はジメチルエーテルである、流体圧アクチュエータ駆動システム。
【請求項13】
相変化によって可燃性の気体を生じさせ、前記気体の圧力によって第1流体圧アクチュエータを駆動する、第1駆動ステップと、
前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼ステップと、を有
し、
前記第1流体圧アクチュエータは、弾性筒状体又はシリンダを用いて流体圧を往復運動に変える往復駆動式流体圧アクチュエータで構成される、流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項14】
前記エネルギーを利用する、エネルギー利用ステップを有する、請求項
13に記載の流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項15】
前記エネルギー利用ステップは、前記第1流体圧アクチュエータを再び駆動する、再駆動ステップを有する、請求項
14に記載の流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項16】
前記エネルギー利用ステップは、第2流体圧アクチュエータを駆動する、第2駆動ステップを有する、請求項
14又は
15に記載の流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項17】
前記エネルギーを蓄積する、エネルギー蓄積ステップを有する、請求項
13~
16の何れか1項に記載の流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項18】
前記エネルギー蓄積ステップは、前記エネルギーを加圧気体として蓄積する、加圧気体蓄積ステップを有する、請求項
17に記載の流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項19】
相変化によって可燃性の気体を生じさせ、前記気体の圧力によって第1流体圧アクチュエータを駆動する、第1駆動ステップと、
前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼ステップと、を有し、
前記気体はジメチルエーテルである、流体圧アクチュエータ駆動方法。
【請求項20】
相変化によって可燃性の気体を生じさせ、前記気体の圧力によって第1流体圧アクチュエータを駆動する、第1駆動ステップと、
前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼ステップと、
前記エネルギーを利用する、エネルギー利用ステップと、を有し、
前記エネルギー利用ステップは、前記第1流体圧アクチュエータを再び駆動する、再駆動ステップを有する、流体圧アクチュエータ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧アクチュエータ駆動システム及び流体圧アクチュエータ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体又は固体からの相変化によって気体を生じさせ、前記気体の圧力によって流体圧アクチュエータを駆動するように構成される、流体圧アクチュエータ駆動システムが、特許文献1により提案されている。このような流体圧アクチュエータ駆動システムは、流体圧アクチュエータの動力源となる気体の供給源の軽量化を可能にし、それにより、システム全体の軽量化を可能にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような流体圧アクチュエータ駆動システムは、エネルギー効率を更に高めることができれば望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、エネルギー効率を高めることができる流体圧アクチュエータ駆動システム及び流体圧アクチュエータ駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、相変化によって可燃性の気体を生じさせる、気体生成装置と、前記気体生成装置によって生じる前記気体の圧力によって駆動される、第1流体圧アクチュエータと、前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼装置と、を有する。
【0007】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記エネルギーを利用する、エネルギー利用デバイスを有することが好ましい。
【0008】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記エネルギー利用デバイスが、前記第1流体圧アクチュエータを有することが好ましい。
【0009】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記エネルギー利用デバイスが、第2流体圧アクチュエータを有することが好ましい。
【0010】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記エネルギーを蓄積する、エネルギー蓄積装置を有することが好ましい。
【0011】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記エネルギー蓄積装置が、前記エネルギーを加圧気体として蓄積可能な、圧力容器を有することが好ましい。
【0012】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記第1流体圧アクチュエータが人工筋アクチュエータで構成されることが好ましい。
【0013】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記気体の飽和蒸気圧が、1MPa以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記気体がジメチルエーテルであることが好ましい。
【0015】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記ジメチルエーテルを燃焼させる時の空気とジメチルエーテルのモル比である空燃比が、0.05~0.11mol%であることが好ましい。
【0016】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動システムは、上記構成において、前記空燃比が、0.06~0.09mol%であることが好ましい。
【0017】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動方法は、相変化によって可燃性の気体を生じさせ、前記気体の圧力によって第1流体圧アクチュエータを駆動する、第1駆動ステップと、前記第1流体圧アクチュエータの駆動によって排出される前記気体を燃焼させ、エネルギーを発生させる、燃焼ステップと、を有する。
【0018】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動方法は、上記構成において、前記エネルギーを利用する、エネルギー利用ステップを有することが好ましい。
【0019】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動方法は、上記構成において、前記エネルギー利用ステップが、前記第1流体圧アクチュエータを再び駆動する、再駆動ステップを有することが好ましい。
【0020】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動方法は、上記構成において、前記エネルギー利用ステップが、第2流体圧アクチュエータを駆動する、第2駆動ステップを有することが好ましい。
【0021】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動方法は、上記構成において、前記エネルギーを蓄積する、エネルギー蓄積ステップを有することが好ましい。
【0022】
本発明の流体圧アクチュエータ駆動方法は、上記構成において、前記エネルギー蓄積ステップが、前記エネルギーを加圧気体として蓄積する、加圧気体蓄積ステップを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エネルギー効率を高めることができる流体圧アクチュエータ駆動システム及び流体圧アクチュエータ駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態である流体圧アクチュエータ駆動システムを示す、概念図である。
【
図2】ジメチルエーテルが燃焼したときの仕事量を説明するための図である。
【
図3】ジメチルエーテルが気化したときの仕事量を説明するための図である。
【
図4】
図1に示す流体圧アクチュエータ駆動システムに適用可能な、エネルギー利用デバイスを示す、概念図である。
【
図5】
図1に示す流体圧アクチュエータ駆動システムに適用可能な、エネルギー蓄積装置を示す、概念図である。
【
図6】燃焼試験に用いた器具を説明するための図である。
【
図7】燃焼試験において検出した点火時の圧力変化を示す、グラフである。
【
図8】燃焼試験において検出した点火時のピーク圧力を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を例示説明する。なお、各図において対応する要素に同一の符号を付す。
【0026】
図1に示す本発明の一実施形態である流体圧アクチュエータ駆動システム1は、相変化によって可燃性の気体を生じさせる、気体生成装置2と、気体生成装置2によって生じる気体の圧力によって駆動される、第1流体圧アクチュエータ3と、第1流体圧アクチュエータ3の駆動によって排出される気体を燃焼させ、エネルギーEを発生させる、燃焼装置4と、を有する。
【0027】
気体生成装置2が生じさせる気体は、ジメチルエーテル(DME)2aである。気体生成装置2は、液相のジメチルエーテル2aと、これを収容する容器2bとで構成される。気体生成装置2は、容器2bから第1調節弁2cを介して第1流体圧アクチュエータ3に気相のジメチルエーテル2aを供給するように構成される。第1調節弁2cは、容器2bから第1流体圧アクチュエータ3へのジメチルエーテル2aの供給が可能な状態と不能な状態とを切替えることができる。第1調節弁2cは、図示しないコンピュータなどの制御手段によって駆動される。
【0028】
第1流体圧アクチュエータ3は、流体の供給によって径方向に膨張すると共に軸方向に収縮する一方、流体の排出によって径方向に収縮すると共に軸方向に伸長するように構成された、人工筋アクチュエータで構成される。なお、第1流体圧アクチュエータ3は、人工筋アクチュエータ以外のアクチュエータで構成してもよい。例えば、第1流体圧アクチュエータ3は、シリンダとピストンで区画された少なくとも1つの流体室に流体圧を作用させることで駆動可能な、シリンダ型流体圧アクチュエータで構成してもよい。
【0029】
ここで、シリンダ型流体圧アクチュエータとしては、対向する流体室に交互に流体圧を作用させて往復運動を生じさせる方式のものや、流体圧で一方向へ駆動し、ばねによって復元力を得る方式のものなどが挙げられる。また、人工筋アクチュエータとしては、弾性筒状体の外側がスリーブ状に編み込まれた繊維コードで覆われた、マッキベン(McKibben)型人工筋アクチュエータや、弾性筒状体の内部に、該弾性筒状体の軸方向に延在する複数の繊維コードが埋設された、軸方向繊維強化型人工筋アクチュエータなどが挙げられる。
【0030】
なお、第1流体圧アクチュエータ3は、上記のような、流体圧を往復運動(直線運動)に変える往復駆動式流体圧アクチュエータに限らず、流体圧を回転運動に変える回転駆動式流体圧アクチュエータなどで構成してもよい。
【0031】
燃焼装置4は、第1流体圧アクチュエータ3から排出されるジメチルエーテル2aを燃焼させ、エネルギーEを発生させる。燃焼装置4は、第1流体圧アクチュエータ3から排出されるジメチルエーテル2aを導入可能な、燃焼室4aと、燃焼室4a内で点火可能な、点火装置4bと、を有する。燃焼装置4は、第1流体圧アクチュエータ3から第2調節弁4cを介して燃焼室4aに気相のジメチルエーテル2aを供給するように構成される。また、燃焼装置4は、燃焼室4aに導入されるジメチルエーテル2aに大気を混合可能な、可変絞り4dを有する。点火装置4b、第2調節弁4c及び可変絞り4dは、図示しないコンピュータなどの制御手段によって駆動される。
【0032】
ジメチルエーテル2aの燃焼の反応式は、次のとおりである。
C2H6O+3O2→2CO2+3H2O+熱量Q
熱量Q=mCVΔT=31.7MJ/Kg
ただし、m:1molのジメチルエーテルと反応する空気の質量
CV:空気の定積比熱=0.72J/(g・K)
ΔT:温度の増加量
【0033】
したがって、温度25℃、大気圧0.1MPaの標準状態において1molのジメチルエーテル2aが燃焼し、着火時点で定積変化した後に断熱変化した場合の仕事量(
図2中にハッチングで示す面積に相当)は、63MJである。つまり、燃焼装置4は、標準状態で1molのジメチルエーテル2aを燃焼させることにより、63MJのエネルギーEを発生させることができる。
【0034】
また、標準状態において液相のジメチルエーテル2aが1molの気相のジメチルエーテル2aに変化し、気化時に定圧変化、気化後に断熱変化した場合の仕事量(
図3中にハッチングで示す面積に相当)は、31MJである。
【0035】
したがって、流体圧アクチュエータ駆動システム1は、燃焼装置4を有することにより、エネルギー効率を、理論上(63+31)/31倍、つまり3倍に高めることができる。
【0036】
後述する燃焼試験の結果から、燃焼装置4によりジメチルエーテル2aを燃焼させる時の、空気とジメチルエーテル2aのモル比である空燃比は、0.05~0.11mol%であることが好ましく、より好ましくは0.06~0.09mol%である。
【0037】
ジメチルエーテル2aの飽和蒸気圧は、0.62MPaである。気体生成装置2が生じさせる可燃性の気体は、その飽和蒸気圧の低さや環境適合性等の観点からジメチルエーテル2aであることが好ましい。しかし、気体生成装置2が生じさせる可燃性の気体はジメチルエーテル2aに限らず、例えば、飽和蒸気圧が0.9MPaであるプロパンであってもよい。ジメチルエーテル2a以外の気体を用いる場合、容器2bの耐圧性能確保等のための大型化、重量化を招かないために、その気体の飽和蒸気圧は1MPa以下であることが好ましい。
【0038】
図4に示すように、流体圧アクチュエータ駆動システム1は、燃焼装置4が発生させるエネルギーEを利用する、エネルギー利用デバイス5を有してもよい。
図4に示すエネルギー利用デバイス5は、第2流体圧アクチュエータ6を有する。より具体的に、
図4に示すエネルギー利用デバイス5は、第2流体圧アクチュエータ6である。第2流体圧アクチュエータ6は、燃焼装置4の燃焼室4aでの着火により生じる排気の圧力によって駆動可能である。
【0039】
第2流体圧アクチュエータ6は、
図4に示すように人工筋アクチュエータで構成することができる。なお、第2流体圧アクチュエータ6は、人工筋アクチュエータ以外のアクチュエータで構成してもよい。例えば、第2流体圧アクチュエータ6は、シリンダ型流体圧アクチュエータで構成してもよい。第2流体圧アクチュエータ6は、往復駆動式流体圧アクチュエータに限らず、回転駆動式流体圧アクチュエータなどで構成してもよい。
【0040】
エネルギー利用デバイス5は、第2流体圧アクチュエータ6に代えて、又は加えて、第1流体圧アクチュエータ3を有してもよい。より具体的に、エネルギー利用デバイス5は、第1流体圧アクチュエータ3であってもよいし、第1流体圧アクチュエータ3と第2流体圧アクチュエータ6であってもよい。つまり、エネルギー利用デバイス5は、燃焼装置4の燃焼室4aでの着火により生じる排気の圧力によって第1流体圧アクチュエータ3を再び駆動するように構成してもよい。
【0041】
エネルギー利用デバイス5は、燃焼装置4の燃焼室4aでの着火により生じる排気の圧力によってプランジャーポンプを駆動し、このプランジャーポンプの駆動によって空気を加圧し、この加圧された空気の圧力によって第1流体圧アクチュエータ3及び/又は第2流体圧アクチュエータ6を駆動するように構成してもよい。
【0042】
なお、エネルギー利用デバイス5は、第1流体圧アクチュエータ3及び/又は第2流体圧アクチュエータ6を有するものに限らない。
【0043】
図5に示すように、流体圧アクチュエータ駆動システム1は、エネルギーEを蓄積する、エネルギー蓄積装置7を有してもよい。
図5に示すエネルギー蓄積装置7は、エネルギーEを加圧気体として蓄積可能な、圧力容器7aである。つまり、エネルギー蓄積装置7は、エネルギーEにより加圧気体を製造する。すなわち、エネルギーEの少なくとも一部は、加圧気体として蓄積される。圧力容器7aは、エネルギーEを圧縮空気として蓄積可能であってもよい。例えば、燃焼装置4の燃焼室4aでの着火により生じる排気の圧力によってプランジャーポンプを駆動し、このプランジャーポンプの駆動によって空気を圧縮し、この圧縮した空気を逆止弁を介して圧力容器7aに供給するように構成してもよい。
【0044】
圧力容器7aに蓄積される加圧気体は、エネルギー利用デバイス5を構成する第1流体圧アクチュエータ3及び/又は第2流体圧アクチュエータ6を駆動するために用いてもよい。
【0045】
エネルギー蓄積装置7は、エネルギーEを加圧気体として蓄積可能な、圧力容器7aを有するものに限らない。例えば、エネルギー蓄積装置7は、エネルギーEを電気として蓄積可能な、電池を有してもよい。電池は、燃焼装置4の燃焼室4aでの着火により生じる排気の圧力によって発電機が発電した電気を蓄積可能であってもよい。電池に蓄積される電気を、エネルギー利用デバイス5としての電気機械を駆動するために用いてもよい。
【0046】
本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動システム1を用いて、本発明の一実施形態である流体圧アクチュエータ駆動方法を実施することができる。
【0047】
本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動方法は、相変化によって可燃性の気体(ジメチルエーテル2a)を生じさせ、気体の圧力によって第1流体圧アクチュエータ3を駆動する、第1駆動ステップと、第1流体圧アクチュエータ3の駆動によって排出される気体を燃焼させ、エネルギーEを発生させる、燃焼ステップと、を有する。第1駆動ステップは、気体生成装置2と第1流体圧アクチュエータ3により行われる。燃焼ステップは、燃焼装置4により行われる。
【0048】
本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動方法は、燃焼ステップを有することにより、エネルギー効率を、前述したように理論上3倍に高めることができる。
【0049】
本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動方法は、エネルギーEを利用する、エネルギー利用ステップを有してもよい。エネルギー利用ステップは、エネルギー利用デバイス5によって行われる。
【0050】
エネルギー利用ステップは、第1流体圧アクチュエータ3を再び駆動する、再駆動ステップを有してもよい。エネルギー利用ステップは、第2流体圧アクチュエータ6を駆動する、第2駆動ステップを有してもよい。
【0051】
本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動方法は、エネルギーEを蓄積する、エネルギー蓄積ステップを有してもよい。エネルギー蓄積ステップは、エネルギー蓄積装置7によって行われる。
【0052】
エネルギー蓄積ステップは、エネルギーを加圧気体として蓄積する、加圧気体蓄積ステップを有してもよい。加圧気体蓄積ステップは、エネルギーEを圧縮空気として蓄積する、圧縮空気蓄積ステップであってもよい。加圧気体蓄積ステップは、圧力容器7aによって行われる。エネルギー蓄積ステップは、エネルギーEを電気として蓄積する、蓄電ステップを有してもよい。エネルギー蓄積ステップは、電池によって行われる。
【0053】
なお、本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動システム1は、相変化によって可燃性の気体を生じさせる、気体生成装置2と、気体生成装置2によって生じる気体の圧力によって駆動される、第1流体圧アクチュエータ3と、第1流体圧アクチュエータ3の駆動によって排出される気体を燃焼させ、エネルギーEを発生させる、燃焼装置4と、を有するものである限り、種々の変更が可能である。
【0054】
また、本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動方法は、相変化によって可燃性の気体を生じさせ、気体の圧力によって第1流体圧アクチュエータ3を駆動する、第1駆動ステップと、第1流体圧アクチュエータ3の駆動によって排出される気体を燃焼させ、エネルギーEを発生させる、燃焼ステップと、を有するものである限り、種々の変更が可能である。例えば、本実施形態の流体圧アクチュエータ駆動方法は、本実施形態である流体圧アクチュエータ駆動システム1以外の流体圧アクチュエータ駆動システムを用いて実施してもよい。例えば、第1駆動ステップにおいて相変化によって生じさせる可燃性の気体はジメチルエーテル2aに限らない。また、第1流体圧アクチュエータ3及び/又は第2流体圧アクチュエータ6は、人工筋アクチュエータで構成されるものに限らない。
【0055】
燃焼装置4によりジメチルエーテル2aを燃焼させる時の最適な空燃比を調査するために、
図6に示す器具8を用いて燃焼試験を行った。器具8は、短辺が1.0cm、長辺が1.3cmの長方形の開口9aを備える半密閉容器9と、半密閉容器9内で点火可能な点火装置4bと、半密閉容器9内の圧力を測定する圧力センサ10とを有するものとした。気化させたジメチルエーテル2aを、空燃比が0.05mol%、0.06mol%、0.07mol%、0.08mol%、0.09mol%、0.10mol%及び0.11mol%になるように半密閉容器9内に所定量供給し、点火装置4bで着火させた時の燃焼圧力を圧力センサ10で測定した。
【0056】
その結果を
図7及び
図8に示す。なお、
図7において、横軸は時間(秒)、縦軸は燃焼圧力(MPa)を表す。また、
図8において、横軸は空燃比(mol%)、縦軸は燃焼時のピーク圧力(MPa)を表す。
【0057】
図7及び
図8に示す燃焼試験の結果から、空燃比が0.05~0.11mol%である場合に燃焼が可能であることが確認された。また、特に空燃比が0.06~0.09mol%である場合に、燃焼時のピーク圧力が高いことが分かる。この結果は、ジメチルエーテル2aの理論空燃比が0.067mol%であることに整合する。
【0058】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
1 流体圧アクチュエータ駆動システム
2 気体生成装置
2a ジメチルエーテル
2b 容器
2c 第1調節弁
3 第1流体圧アクチュエータ
4 燃焼装置
4a 燃焼室
4b 点火装置
4c 第2調節弁
4d 可変絞り
5 エネルギー利用デバイス
6 第2流体圧アクチュエータ
7 エネルギー蓄積装置
7a 圧力容器
8 器具
9 半密閉容器
9a 開口
10 圧力センサ
E エネルギー