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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】塀構造及び塀材
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/16 20060101AFI20240207BHJP
   F16B 5/01 20060101ALI20240207BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
E04H17/16 104
F16B5/01
F16B5/02 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020052984
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152288
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第24回 「震災対策技術展」横浜-自然災害対策技術展-、2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】308022302
【氏名又は名称】大林株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】片桐 良夫
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135703(JP,A)
【文献】実開平5-96113(JP,U)
【文献】特開平10-252185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00-17/26
E04B 1/62- 1/99
F16B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製のハニカム構造体に筒部が接合されているパネル芯材、及び、該パネル芯材において少なくとも前記ハニカム構造体のセルが開口している面を被覆しているアルミニウム製の被覆板材を備えている塀パネルユニットの複数が、
それぞれの前記筒部の中心軸が同一線上となるように、基礎部の上に高さ方向に積み重ねられた状態で、
複数の前記塀パネルユニットそれぞれの前記筒部に、少なくとも上端に雄ネジが形成された長棒状部材が挿通されており、
該長棒状部材の下端が前記基礎部に埋設されていると共に、前記長棒状部材の上端で前記雄ネジに雌ネジ部材が螺合していることにより、複数の前記塀パネルユニットが前記基礎部に固定されている
ことを特徴とする塀構造。
【請求項2】
前記筒部は、角筒状の外筒と、該外筒の内部に固着された円筒状の内筒を有しており、
前記長棒状部材は、前記内筒に挿通されている
ことを特徴とする請求項1に記載の塀構造。
【請求項3】
高さ方向に積み重ねられた複数の前記塀パネルユニットの間に、弾性材料による目地層が形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塀構造。
【請求項4】
アルミニウム製のハニカム構造体に筒部が接合されているパネル芯材、及び、該パネル芯材において少なくとも前記ハニカム構造体のセルが開口している面を被覆しているアルミニウム製の被覆板材を備えている塀パネルユニットの複数と、
複数の該塀パネルユニットの高さの合計より長く、前記筒部に挿通される太さで、少なくとも一端に雄ネジが形成されている長棒状部材と、
前記雄ネジに螺合させる雌ネジ部材と、
を具備することを特徴とする塀材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塀構造、及び、該塀構造を構成する塀材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
隣接する住宅との境界、住宅と道路との境界などに設けられ、他者の出入りを防止すると共に視野を遮蔽する塀としては、従来、コンクリートブロック塀や、現場でコンクリートを打設する湿式コンクリート塀が多用されている。また、近年では、プレキャストコンクリートパネルを工場で製造し、現場に輸送して施工する乾式コンクリート塀も用いられている。
【0003】
しかしながら、コンクリートブロック塀は、鉄筋を縦横に配設し、モルタルを充填しながらブロックを積み上げて構築するため、現場での作業に多大な手間と時間を要するものであった。また、湿式コンクリート塀の場合も、縦横に鉄筋を組み上げた上で鉄筋を挟むように型枠を設置して型枠内にコンクリートを流し込み、コンクリートが硬化・乾燥してから型枠を取り外すという現場での作業に、多大な手間と時間を要するものであった。一方、乾式コンクリート塀の場合は、現場でコンクリートを硬化・乾燥させる時間を省き、施工期間を短縮することはできるものの、重量物であるプレキャストコンクリートパネルを輸送して現場で施工するために、大型の輸送車やクレーンを必要とすると共に、多人数の作業者を要するという問題があった。
【0004】
加えて、周辺の道路幅が狭い場所や、余剰の敷地面積が小さい場所など、大型の輸送車やクレーンが進入できない場所には、大型の型枠を要する湿式コンクリート塀や、大型のプレキャストコンクリートパネルを用いた乾式コンクリート塀は施工できないという問題があった。
【0005】
更に、コンクリートブロック塀やコンクリート塀の場合は、倒壊を防止すべく所定の強度を保つために、鉄筋の間隔、塀の高さや厚さ、基礎の根入れ深さ等、種々の基準が法律等で定められているが、現行の基準を満たさない古い塀が、全国には多量に残存している。近年、大規模な地震による甚大な被害が相次いだことにより、現行の基準を満たさない古い塀に対しては、解体・撤去して新たな塀に造り替えることが要請されているが、新たな塀の施工には上記のような問題があるため、塀の造り替えが進んでいないのが実情である。仮に、新たな塀を、労力や時間を低減して、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することができれば、塀の造り替えも促進されると考えられる。
【0006】
一方、金属製や木製のフェンス(網、柵、板囲い)は、労力や時間をさほど要することなく、道路幅や敷地が狭小な場合であっても構築することが可能であるが、塀に重厚感を求める需要者には好まれないという事情がある。
【0007】
そこで、本出願人は過去に、道路幅や敷地が狭小な場合であっても労力や時間を低減して構築することができると共に、重厚感を与える塀構造、及び、その構築のための塀材を提案し、実施している(特許文献1参照)。この塀材は、アルミニウム製のフレームの開口が両側から被覆板材で被覆されていると共に、フレームを構成する一対の横材を貫通する貫通孔を備えている塀パネルユニットと、貫通孔に挿通される長棒状部材を備えている。複数の塀パネルユニットを、それぞれの貫通孔の中心軸が同一先線上となるように高さ方向に積み重ね、貫通孔に挿通した長棒状部材の下端を基礎部に埋設することによって、塀構造が構築される。
【0008】
この特許文献1の塀材は、中空構造で軽量であり、予め工場で製造しておき少人数の作業者で運搬することができるため、施工現場が狭小であっても問題なく、労力や時間を低減して塀構造を構築することができる。また、外観からは塀材が中空構造であることは分からないため、重厚感を与える塀構造を構築することができる。
【0009】
本発明は、同じコンセプトの塀構造及び塀材のバリエーションを増やすための検討の過程で、更に塀には、防火性と、より高い機械的強度を持たせるべきであるという出願人の考えに基づいてなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2018-135703
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、本発明は、道路幅や敷地が狭小な場合であっても労力や時間を低減して構築することができ、重厚感を与えると共に、防火性にも優れ機械的強度がより高い塀構造、及び、該塀構造を構成する塀材の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる塀構造は、
「アルミニウム製のハニカム構造体に筒部が接合されているパネル芯材、及び、該パネル芯材において少なくとも前記ハニカム構造体のセルが開口している面を被覆しているアルミニウム製の被覆板材を備えている塀パネルユニットの複数が、
それぞれの前記筒部の中心軸が同一線上となるように、基礎部の上に高さ方向に積み重ねられた状態で、
複数の前記塀パネルユニットそれぞれの前記筒部に、少なくとも上端に雄ネジが形成された長棒状部材が挿通されており、
該長棒状部材の下端が前記基礎部に埋設されていると共に、前記長棒状部材の上端で前記雄ネジに雌ネジ部材が螺合していることにより、複数の前記塀パネルユニットが前記基礎部に固定されている」ものである。
【0013】
「ハニカム構造体」は、隔壁によって区画されて筒状となったセルの多数からなる構造体であり、セルの形状は、六角形、四角形、三角形など多角形とすることができる。
【0014】
本構成の塀構造を構築する際は、まず、コンクリートの打設等により基礎部を形成する。その際、基礎部には、塀パネルユニットにおける筒部に対応する位置に縦孔を形成しておく。このように形成された基礎部の上に、塀パネルユニットの複数を高さ方向に積み重ねる。このとき、各塀パネルユニットにおける筒部の中心軸が同一線上となるように積み重ねる。その結果、塀パネルユニットそれぞれの筒部が連通する。
【0015】
連通した筒部に、最上段の塀パネルユニットの上方から最下段の塀パネルユニットまで長棒状部材を挿通し、その下端を基礎部の縦孔に挿入し埋設する。そして、長棒状部材の上端の雄ネジに雌ネジ部材を螺合させ、締付ける。これにより、長棒状部材によって、いわば“串刺し”にされた状態で、複数の塀パネルユニットが基礎部に固定された本構成の塀構造が構築される。
【0016】
本構成の塀構造は、塀パネルユニットを構成単位として構築されるものであり、塀パネルユニットは予め工場で製造しておくことができる。また、高さ方向に積層された複数の塀パネルユニットは、長棒状部材と雌ネジ部材によって締結されて基礎部に固定されるため、塀パネルユニット同士を溶接や接着等により固着させる作業を要しない。従って、労力や時間を低減して塀構造を構築することができる。
【0017】
塀パネルユニットのパネル芯材を構成するハニカム構造体は、空隙の多い構造体であり、且つ、アルミニウム製であるため軽量である。また、ハニカム構造体と共にパネル芯材を構成する筒部も中空構造であるため軽量である。加えて、パネル芯材において少なくともハニカム構造体のセルが開口している面を被覆している被覆板材も、アルミニウム製である。従って、塀パネルユニットそれぞれが軽量であるため、サイズの設定により、一人または二人の作業者が人力で運搬することが可能である。そのため、道路幅や敷地面積が狭小で、大型の輸送車やクレーンが進入でできない施工現場であっても、問題なく塀構造を構築することができる。更に、塀パネルユニットそれぞれが軽量であるため、仮に地震等で塀が倒壊したとしても被害を小さくとどめることができると共に、手作業で容易に撤去・運搬することができる。
【0018】
また、被覆板材で被覆された面の方から見れば、空隙の多いハニカム構造体も中空構造である筒部も視認されず、網や柵であるフェンスに比べて厚さが大きいため、重厚感を与える塀を構築することができる。
【0019】
加えて、ハニカム構造体及び被覆板材が共にアルミニウム製であり、アルミニウムは不燃材料として認められている材料であるため、不燃性の塀構造とすることができる。塀や門などのエクステリアを不燃性にしようという姿勢は、従来の当業者にはなかった。これに対し、本出願人は、エクステリアにも“防災”の観点が必要であると考えており、防災のためには、耐震性のみならず防火性も必要であるとの考えから、塀構造を不燃材料で構築するという手段を採用したものである。
【0020】
更に、塀パネルユニットのパネル芯材は金属製(アルミニウム製)のハニカム構造体を備えている。ハニカム構造体は、多数の隔壁が多数の接点で接合された構造体であり非常に機械的強度が高い。従って、金属製のハニカム構造体を備えていることにより、地震により激しく振動したり、台風等で強風を受けたりしても、変形や破断を生じることがない堅固な塀構造を構築することができる。
【0021】
本発明にかかる塀構造は、上記構成に加え、
「前記筒部は、角筒状の外筒と、該外筒の内部に固着された円筒状の内筒を有しており、
前記長棒状部材は、前記内筒に挿通されている」ものとすることができる。
【0022】
本構成では、筒部が外筒と内筒の二重構造であり、外筒が角筒状である。そのため、アルミニウム製のハニカム構造体を直方体とすれば、筒部と強固に接合する操作がし易く、ハニカム構造体と筒部とからなるパネル芯材の形状を、塀構造の芯材として適した形状である直方体に整えやすい。また、外筒の内部に円筒状の内筒が固着されており、この内筒に長棒状部材が挿通されるため、角筒状の外筒をハニカム構造体に合わせたサイズとすることができる一方で、円筒状の内筒を長棒状部材に合わせたサイズとすることができ、長棒状部材のガタツキを低減することが可能となる。
【0023】
本発明にかかる塀構造は、上記構成に加え、
「高さ方向に積み重ねられた複数の前記塀パネルユニットの間に、弾性材料による目地層が形成されている」ものとすることができる。
【0024】
目地層を形成する「弾性材料」としては、ゴムや樹脂ゲルを使用することができる。ここで、「ゴム」としては、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴムなど、一般的に“防振ゴム”と称されている衝撃吸収性、振動吸収性の高いゴムを使用することができる。「樹脂ゲル」としては、イソブチレン系樹脂ゲル、ウレタン系樹脂ゲル、シリコーン系樹脂ゲル、スチレン系樹脂ゲルなど、一般的に“耐震ゲル”と称されている衝撃吸収性、振動吸収性に優れ、粘着性の高い樹脂ゲルを使用することができる。なお、樹脂ゲルは、既にゲル化した材料の他、塀パネルユニットの間に充填する際は流動体であって、その後にゲル化して目地層となるものであっても良い。
【0025】
本構成では、積み重ねられた塀パネルユニットの間に弾性材料による目地層が形成されているため、塀パネルユニット自体は剛体であっても、塀全体として弾性変形することができる。これにより、制振性の高い塀構造を構築することができる。
【0026】
加えて、塀パネルユニットの間には不可避に隙間が生じるところ、目地層の形成によりこの隙間がなくなるため、止水性を有する塀構造となる。例えば、洪水などによって塀の設置面が浸水したとしても、塀で囲まれた住宅などの建築物まで水が浸入するおそれを低減することができる。
【0027】
次に、本発明にかかる「塀材」は、
「アルミニウム製のハニカム構造体に筒部が接合されているパネル芯材、及び、該パネル芯材において少なくとも前記ハニカム構造体のセルが開口している面を被覆しているアルミニウム製の被覆板材を備えている塀パネルユニットの複数と、
複数の該塀パネルユニットの高さの合計より長く、前記筒部に挿通される太さで、少なくとも一端に雄ネジが形成されている長棒状部材と、
前記雄ネジに螺合させる雌ネジ部材と、
を具備する」ものである。
【0028】
これは、上記の塀構造を構築するために使用される塀材である。本構成の塀材を使用することにより、上記の作用効果を発揮する塀構造を構築することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明の効果として、道路幅や敷地が狭小な場合であっても労力や時間を低減して構築することができ、重厚感を与えると共に、防火性にも優れ機械的強度がより高い塀構造、及び、該塀構造を構成する塀材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】(a)本発明の一実施形態の塀構造を構成する塀パネルユニットの分解斜視図であり、(b)塀パネルユニットと長棒状部材との関係を示す説明図である。
図2】(a)塀パネルユニットを高さ方向の中央で切断した横断面図であり、(b)塀パネルユニットを筒部の中心で切断した縦断面図である。
図3】(a)本発明の第一実施形態の塀構造の分解正面図であり、(b)第一実施形態の塀構造の正面図である。
図4】(a)本発明の第二実施形態の塀構造の分解正面図であり、(b)第二実施形態の塀構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態である塀構造、及び、該塀構造を構成する塀材について、図面を用いて説明する。
【0032】
まず、塀材について主に図1及び図2を用いて説明する。本実施形態の塀材は、複数の塀パネルユニット1と、長棒状部材31と、雌ネジ部材32と、カバー部材40とを具備している。ここでは、塀によって区画される二つの領域の一方から他方に向かう方向を奥行き方向と称し、塀パネルユニット1を構成する各部材における奥行き方向の長さを「厚さ」と称する。また、奥行き方向と高さ方向の双方に直交する方向を、横幅方向と称して説明する。
【0033】
塀パネルユニット1は、パネル芯材と被覆板材とを備えている。パネル芯材は、アルミニウム製のハニカム構造体10とアルミニウム製の筒部11とを備えている。本実施形態では、一つのパネル芯材が、三つのハニカム構造体10と二つの筒部11とを備えている。ハニカム構造体10は直方体である。筒部11は、角筒状の外筒11aと円筒状の内筒11bの二重構造であり、外筒11aの厚さ及び高さはハニカム構造体10の厚さ及び高さとそれぞれ等しい。内筒11bの外径は外筒11aの内周面の横幅方向の長さより僅かに短く、内筒11bは外筒11aの中心に嵌入された状態で外筒11aの内周面に固着されている。
【0034】
そして、二つの筒部11はそれぞれ隣接するハニカム構造体10に挟まれた状態で、ハニカム構造体10に固着されている。ハニカム構造体10と筒部11との接合により形成された一つのパネル芯材は、厚さより高さの方が大きく、高さより横幅方向の長さが大きい直方体である。ハニカム構造体10は、セルの軸方向を奥行き方向に一致させた状態で、筒部11と接合されている。
【0035】
被覆板材には、パネル芯材においてハニカム構造体10のセルが開口している一対の側面をそれぞれ被覆している一対の第一被覆板材21と、パネル芯材において横幅方向の端面となる一対の側面をそれぞれ被覆している一対の第二被覆板材22と、パネル芯材の上面及び下面をそれぞれ被覆している一対の第三被覆材とがある。第一被覆板材21、第二被覆板材22、及び、第三被覆板材23は、何れもアルミニウム製である。
【0036】
第三被覆板材23は、横幅方向に開口し高さが低い平たい角筒状であり、その厚さ及び横幅方向の長さは、それぞれパネル芯材の厚さ及び横幅方向の長さと等しい。第三被覆板材23の内周面において奥行き方向の前側となる面と後ろ側となる面には、それぞれ断面C字状で横幅方向に延びるビス受け溝23gが形成されている。一対の第三被覆板材23には、一方をパネル芯材の上面に載置し、他方をパネル芯材の下面に当接させた状態で、内筒11bの中心軸の延長線上となる位置に、円形の孔部23bが貫設されている。
【0037】
第二被覆板材22は長方形の平板であり、その一対の辺の長さはパネル芯材の厚さと等しく、もう一対の辺の長さはパネル芯材の高さと一対の第三被覆板材23それぞれの高さの和に等しい。一対の第三被覆板材23の一方をパネル芯材の上面に載置し、他方をパネル芯材の下面に当接させた状態で、一対の第二被覆板材22それぞれをパネル芯材の横幅方向における端面に当接させ、第二被覆板材22を貫通させたビスを第三被覆板材23のビス受け溝23gに打ち込むことにより、一対の第二被覆板材22、及び、一対の第三被覆板材23、及び、パネル芯材が一体化される。
【0038】
第一被覆板材21は長方形の平板であり、一対の辺の長さはパネル芯材の幅方向の長さと等しく、もう一対の辺の長さはパネル芯材の高さと一対の第三被覆板材23それぞれの高さの和に等しい。一対の第二被覆板材22、及び、一対の第三被覆板材23が留め付けられたパネル芯材において、奥行き方向の前側となる側面と後ろ側となる側面に、それぞれ第一被覆板材21が固着される。
【0039】
これにより、ハニカム構造体10と筒部11との接合により形成された直方体のパネル芯材の外表面が、第一被覆板材21、第二被覆板材22、及び、第三被覆板材23で被覆された塀パネルユニット1が形成される。塀パネルユニット1は、構成材料の全てがアルミニウム製であるため、軽量である。塀パネルユニット1のサイズは、例えば、高さを30cm~60cm、横幅の長さを150cm~350cm、厚さを10cm~30cmとすれば、一枚の塀パネルユニット1を一人または二人の作業者が人力で運搬しやすい。
【0040】
なお、第一被覆板材21の外表面は、不燃性材料で形成された第一被覆板材21の防火性能を低下させることがない防火認定材料である塗料を使用して、塗装することができる。
【0041】
長棒状部材31は、少なくとも上端に雄ネジが形成されていれば良いが、本実施形態では全長に亘り雄ネジが形成されたボルトを使用している。これは、ガラス繊維強化プラスチック製のボルトであり、引張強度が高く、軽量で、錆びたり腐食したりしない利点を有している。本実施形態の長棒状部材31は、直径が32mmとかなり太いボルトである。そして、塀パネルユニット1における孔部23b及び内筒11bの直径は、それぞれ長棒状部材の直径より僅かに大きい。
【0042】
一方、雌ネジ部材32は、長棒状部材31の雄ネジと螺合するネジ溝を内周面に有し、外周面がレンチなどの締結用工具と噛み合う形状に形成されている。
【0043】
カバー部材40は、断面の外形が下方に開口したU字形である長尺部材であり、その開口幅は、塀パネルユニット1の厚さより僅かに大きい。本実施形態では、カバー部材40もアルミニウム製である。
【0044】
次に、上記構成の塀材を使用した第一実施形態の塀構造の構築について、主に図3を用いて説明する。まず、塀を構築するライン(二つの領域の境界線とすべきライン)に沿って、コンクリートを打設し基礎部90を形成する。その際、スリーブ(図示を省略)を基礎部90に埋設することにより、上方に開口した有底の縦孔を基礎部90に形成する。縦孔の間隔は、塀パネルユニット1の横幅方向における内筒11bの間隔(孔部23bの間隔と等しい)と同一とし、縦孔の大きさは長棒状部材31が挿入できる大きさとする。
【0045】
基礎部90が形成されたら、その上に一段目の塀パネルユニット1を載置する。このとき、塀パネルユニット1の内筒11b及び孔部23bの位置を基礎部90の縦孔の位置と一致させる。
【0046】
一段目の塀パネルユニット1の上に、二段目以降の塀パネルユニット1を、塀として所望される高さとなるまで積み重ねる。ここでは、3つの塀パネルユニット1を積み重ねる場合を図示している。高さ方向に積み重ねられる全ての塀パネルユニット1において、内筒11b及び孔部23bの位置を一致させる。
【0047】
所定数の塀パネルユニット1が高さ方向に積み重ねられると、全ての塀パネルユニット1の内筒11b及び孔部23bが、基礎部90の縦孔と連通している状態となる。そこで、最上段の塀パネルユニット1の上方から、孔部23b及び内筒11bに長棒状部材31を挿通し、長棒状部材31の下端を基礎部90の縦孔に挿入する。この状態で、縦孔にコンクリートを充填することにより、長棒状部材31が基礎部90に対して固定される。
【0048】
長棒状部材31の長さは、高さ方向に積み重ねられる所定数の塀パネルユニット1の高さの和、基礎部90に埋設する長さ、及び、雌ネジ部材32の高さの総和より、若干長い設定とする。下端が基礎部90に固定された長棒状部材31の上端は、最上段の塀パネルユニット1より上方まで突出するため、この部分の雄ネジに雌ネジ部材32を留め付ける。その際、最上段の塀パネルユニット1の上面と雌ネジ部材32との間に、ワッシャを介在させても良い。長棒状部材31に対して雌ネジ部材32を締め付けることにより、高さ方向に積み上げられた複数の塀パネルユニット1が締結されて、基礎部90に強固に固定される。
【0049】
全ての長棒状部材31に対する雌ネジ部材32の締め付けが済んだら、最上段の塀パネルユニット1の上方からカバー部材40を取り付ける。これにより、最上段の塀パネルユニット1の上面から突出している長棒状部材31及び雌ネジ部材32が、カバー部材40によって遮蔽された状態となり、外観の良いものとなると共に、孔部23b及び内筒11bに雨水が流入することが防止される。
【0050】
以上のような作業によって、塀パネルユニット1を高さ方向に積層すると共に横幅方向に連設することにより、本実施形態の塀構造が構築される。塀パネルユニット1は予め工場で製造しておくことができる。また、高さ方向に積層された複数の塀パネルユニット1は、長棒状部材31と雌ネジ部材32によって締結されて基礎部90に固定されるため、塀パネルユニット1同士を固着させる作業を要しない。従って、従来のコンクリートブロック塀や湿式コンクリート塀と比べて、労力や時間を大幅に低減して塀構造を構築することができる。
【0051】
また、塀パネルユニット1は、構成部材の全てがアルミニウム製であることに加え、パネル芯材は空隙の多いハニカム構造体10と中空構造である筒部11で形成されているため、非常に軽量である。そして、上記のサイズの設定により、一人または二人の作業者が人力で運搬することが可能である。そのため、道路幅や敷地面積が狭小で、大型の輸送車やクレーンが進入でできない施工現場であっても、問題なく塀構造を構築することができる。また、塀パネルユニット1それぞれが軽量であるため、仮に地震等で塀が倒壊したとしても被害を小さくとどめることができると共に、手作業で容易に撤去・運搬することができる。
【0052】
更に、パネル芯材の構成であるハニカム構造体10は、空隙の多い構造体であるため塀パネルユニット1を軽量とすることに大きく寄与している一方で、多数の隔壁が多数の接点で接合された構造体であって多方向から作用する応力に対抗し、非常に機械的強度が高い。従って、地震により激しく振動したり、台風等で強風を受けたりしても、変形や破断を生じることがない堅固な塀構造を構築することができる。
【0053】
そして、空隙の多いハニカム構造体10をパネル芯材に使用しているものの、パネル芯材の外側面は第一被覆板材21及び第二被覆板材22によって被覆されている。そのため、外観からは中実の塀構造と区別がつかず、厚さは網や柵によるフェンスと比べて大きいため、重厚感を与える塀を構築することができる。
【0054】
更に、高さ方向に積み重ねる塀パネルユニット1の数によって塀の高さを変えることができるため、高さの自由度が高い塀構造を構築することができる。
【0055】
加えて、塀パネルユニット1の構成部材(ハニカム構造体10、筒部11(外筒11a及び内筒11b)、第一被覆板材21、第二被覆板材22、及び、第三被覆板材23)の全てがアルミニウム製であるため、不燃性の塀構造を構築することができる。
【0056】
そして、筒部11の外筒11aが角筒状であり、直方体のハニカム構造体10と厚さ及び高さを揃えているため、筒部11とハニカム構造体10とを接合する作業性がよいと共に、筒部11とハニカム構造体10の接合により形成されるパネル芯材を、外表面に凹凸のないきれいな直方体に整えることができる。
【0057】
また、筒部11は円筒状の内筒11bを有しており、内筒11bの直径は長棒状部材の直径より僅かに大きく設定されているため、内筒11bに挿通させた長棒状部材にガタツキがない利点を有している。
【0058】
次に、第二実施形態の塀構造について、主に図4を用いて説明する、第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。第二実施形態の塀構造が第一実施形態と相違する点は、高さ方向に積み重ねられた塀パネルユニット1の間に、目地層52を備えている点である。
【0059】
目地層52は、ゴムや樹脂ゲルなどの弾性材料によって形成される。ここでは、シート状のゴム51によって目地層52が形成される場合を例として図示している。シート状のゴム51は、横幅方向の長さ及び厚さが塀パネルユニット1と等しく、高さは5mm~20mmとすることができる。シート状のゴム51には、塀パネルユニット1の孔部23b及び内筒11bに対応させた位置に、長棒状部材31を挿通させられる大きさの貫通孔51bが形成されている。
【0060】
複数の塀パネルユニット1を高さ方向に積み重ねる際に、塀パネルユニット1の間にゴム51を挟み、孔部23b、内筒11b、貫通孔51bを挿通させた長棒状部材31の下端を基礎部90に埋設することにより、高さ方向に積み重ねられた複数の塀パネルユニット1の間に目地層52を備えている第二実施形態の塀構造が構築される。
【0061】
第二実施形態の塀構造では、塀パネルユニット1自体は剛体であっても、目地層52の弾性により塀全体として弾性変形することができ、制振性の高い塀構造を構築することができる。特に、本実施形態では、長棒状部材31がガラス繊維強化プラスチック製のボルトであり、弾性的にたわむため、塀の全体がたわむように弾性変形することができる。
【0062】
加えて、本実施形態の塀構造は目地層52を備えていることにより、高さ方向に積み重ねられた塀パネルユニット1の間に空隙がないため、止水性を有している。そのため、洪水などによって塀の設置面が浸水したとしても、塀で囲まれた住宅などの建築物まで水が浸入するおそれを低減することができる。つまり、本実施形態の塀構造は、制振性(耐震性)、防火性に優れていることに加えて、止水性も兼ね備えている、防災性の高い塀構造である。
【0063】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0064】
例えば、高さ方向に積層される塀パネルユニット1の数、塀パネルユニット1一つ当たりのハニカム構造体10や筒部11の数は、上記の数に限定されない。
【0065】
また、上記では、高さ方向に積層される塀パネルユニットの間にシート状の弾性材料(ゴム51)を挟んで目地層52を形成する場合を例示したが、塀パネルユニット1の間に流動性を有する樹脂を充填した後でゲル化させることにより、樹脂ゲルによる目地層52を形成することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 塀パネルユニット
10 ハニカム構造体
11 筒部
11a 外筒
11b 内筒
21 第一被覆板材
22 第二被覆板材
23 第三被覆板材
23b 孔部
31 長棒状部材
32 雌ネジ部材
51 ゴム
51b 貫通孔
52 目地層
90 基礎部
図1
図2
図3
図4