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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A01D34/64 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020091234
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021185757
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157762(JP,A)
【文献】特開2001-269034(JP,A)
【文献】特開2020-5554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/64
A01D 34/13
A01D 34/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラを有する走行部、及び草刈り作業を行う作業部を備え、
前記クローラは、ベルト部、一対の外側ラグ部、及び前記一対の外側ラグ部の間に配置された内側ラグ部を有し、
前記ベルト部の表面を基準としたとき、
前記外側ラグ部は、左右方向において一定の高さh1を有する頂面を有し、
前記内側ラグ部は、左右方向において一定の高さh2を有する頂面を有し、
前記外側ラグ部の頂面の高さh1は、前記内側ラグ部の頂面の高さh2よりも高い、草刈り機。
【請求項2】
前記走行部は、第1クローラ及び第2クローラを含み、
前記第1クローラは、第1外側ラグ部及び第1内側ラグ部を有し、
前記第2クローラは、第2外側ラグ部及び第2内側ラグ部を有する、請求項1に記載の草刈り機。
【請求項3】
前記外側ラグ部は、前記頂面に連続すると共に前記頂面よりも内側に形成された傾斜面をさらに有し、
前記外側ラグ部の傾斜面は、前記内側ラグ部の頂面よりも高い位置に形成される、請求項1又は2に記載の草刈り機。
【請求項4】
前記外側ラグ部の背面視において、前記ベルト部の表面と前記外側ラグ部の傾斜面とがなす角αは、10°以上70°以下である、請求項3に記載の草刈り機。
【請求項5】
前記外側ラグ部の背面視における前記ベルト部の表面と前記外側ラグ部の傾斜面とがなす角αは、前記内側ラグ部の背面視における前記ベルト部の表面と前記内側ラグ部の傾斜面とがなす角βよりも小さい、請求項3又は4に記載の草刈り機。
【請求項6】
前記外側ラグ部及び前記内側ラグ部は、弾性部材で構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の草刈り機。
【請求項7】
前記走行部及び前記作業部を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部による制御に応じて前記走行部により自走する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草刈り機に関する。特に、自走式の草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦の天面又は法面に生えた雑草等を除去するためには、定期的に畦の草刈り作業を行う必要があった。特許文献1には、無線通信による遠隔操作によって畦の上を走行しながら、天面及び法面の草刈り作業を行う草刈作業機が開示されている。特許文献1に記載された草刈り機は、走行部に一対のクローラベルトを有しており、これら一対のクローラベルトを用いて畦の上を走行できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-157762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された草刈り機は、クローラベルトに設けられたラグ(突起部)がすべて同じ高さで設けられているため、畦の天面に起伏があった場合には、バランスを崩しやすいという問題がある。また、例えば、畦の幅が走行部の幅よりも狭い場合、クローラベルトの外側端部が畦の天面からはみ出してしまう状況があり得る。この場合、畦の肩部(天面と法面との境界部)が崩れたり欠けたりすると、すぐにバランスを崩してしまうおそれがある。さらに、一度バランスを崩して草刈り機の姿勢が斜めになってしまうと、再び元の姿勢に戻る(畦の上に戻る)のが困難となり、遠隔操作による草刈作業を中断せざるを得なくなるという問題がある。
【0005】
本発明の一実施形態の課題は、畦の上を安定して走行可能な草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態における草刈り機は、クローラを有する走行部、及び草刈り作業を行う作業部を備え、前記クローラは、ベルト部、一対の外側ラグ部、及び前記一対の外側ラグ部の間に配置された内側ラグ部を有し、前記ベルト部の表面を基準としたとき、前記外側ラグ部の頂面の高さは、前記内側ラグ部の頂面の高さよりも高い。
【0007】
前記走行部は、第1クローラ及び第2クローラを含み、前記第1クローラは、第1外側ラグ部及び第1内側ラグ部を有し、前記第2クローラは、第2外側ラグ部及び第2内側ラグ部を有していてもよい。
【0008】
前記外側ラグ部は、前記内側ラグ部の頂面よりも高い位置に、内側に面する傾斜面を有していてもよい。この場合、前記外側ラグ部の側面視において、ベルト部の表面と前記傾斜面とがなす角αは、10°以上70°以下(好ましくは、20°以上50°以下)であってもよい。また、前記外側ラグ部の側面視におけるベルト部と前記傾斜面とがなす角αは、前記内側ラグ部の側面視における前記ベルト部と前記内側ラグ部の傾斜面とがなす角βよりも小さくてもよい。
【0009】
前記外側ラグ部及び前記内側ラグ部は、弾性部材(代表的にはゴム)で構成されていてもよい。
【0010】
前述の草刈り機は、前記走行部及び前記作業部を制御する制御部をさらに備えていてもよい。本発明の一実施形態における草刈り機は、前記制御部による制御に応じて前記走行部により畦の上を自走してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、畦の上を安定して走行可能な草刈り機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の草刈り機の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態の草刈り機の構成を示す左側面図である。
図3】第1実施形態の草刈り機の構成を示す背面図である。
図4】第1実施形態の草刈り機におけるクローラの構成を説明するための図であり、(A)は、走行部の背面図であり、(B)は、クローラベルトの拡大断面図である。
図5】第2実施形態の草刈り機の構成を示す背面図である。
図6】第3実施形態の草刈り機におけるクローラの構成を説明するための図であり、(A)は、走行部の背面図であり、(B)は、クローラベルトの拡大断面図である。
図7】第4実施形態におけるクローラベルトの構成を説明するための上面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の草刈り機について説明する。但し、本発明の草刈り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号又は同一の符号の後にアルファベットを付し、その繰り返しの説明は省略する。また、進行方向に対する左右の位置に同一又は類似の部材が設けられている場合、当該部材の符号の後にL(左側の部材)又はR(右側の部材)を付する。左右の部材を特に区別しない場合は、L及びRを省略して説明する場合がある。
【0014】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、「上」は、草刈り機が畦に対して草刈り作業を行いながら進行する状態において、畦から垂直に遠ざかる方向を示し、「下」は、「上」とは反対の方向を示す。また、説明の便宜上、「前」は、走行部に対して作業部が位置する方向を示し、「後」は、「前」とは反対の方向を示す。また、「左」又は「右」は、草刈り機の「前」に対する「左」又は「右」を示す。
【0015】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、草刈り機の各構成部位の左右方向の長さは「幅」と呼ぶ。また、平面視における草刈り機の中心線(進行方向に平行で、かつ、草刈り機の中心を通る線)を基準としたとき、相対的に、中心線に近い側を「内側」と呼び、中心線から遠い側を「外側」と呼ぶ。
【0016】
<第1実施形態>
[草刈り機の構成]
本実施形態の草刈り機100は、前進しながら畦の草刈り作業を行う自走式の草刈り機である。具体的には、リモートコントローラにより遠隔制御され、畦の上を自走して草刈り作業を行う草刈り機である。
【0017】
図1は、第1実施形態の草刈り機100の構成を示す平面図である。図2は、第1実施形態の草刈り機100の構成を示す左側面図である。図3は、第1実施形態の草刈り機100の構成を示す背面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態の草刈り機100は、機体10、走行部20、作業部30、制御部40、第1リンク機構50L及び50R、並びに第2リンク機構60を含む。機体10と走行部20とは第1リンク機構50L及び50Rによって連結される。機体10と作業部30とは第2リンク機構60によって連結される。本実施形態の草刈り機100は、制御部40による制御に応じて走行部20により自走することができる。
【0019】
機体10は、草刈り機100の骨格をなすフレームである。機体10は、金属材料(例えば、鋼材、アルミニウム材)、繊維強化プラスチック(FRP)材料等を用いて構成することができるが、この例に限られるものではない。
【0020】
走行部20は、草刈り機100の走行手段として機能する。本実施形態の走行部20は、図3に示すように、左右一対のクローラ20L及び20Rを有する。クローラ20Lは、草刈り機100の進行方向に向かって左側の走行手段であり、クローラ20Rは、右側の走行手段である。なお、クローラ20Rの構造は、クローラ20Lと同じであるため、ここではクローラ20Lに着目して説明する。
【0021】
図2に示すように、クローラ20Lは、クローラベルト21L、駆動輪22L、従動輪23L及びクローラフレーム24Lを含む。クローラベルト21Lは、駆動輪22L及び従動輪23Lに架け渡され、駆動輪22Lの回転に従って回転する。本実施形態において、クローラベルト21Lは、弾性部材(具体的にはゴム)で構成され、後述する複数のラグ部(突出部)を有している。駆動輪22Lは、制御部40に設けられたバッテリ42を電源として駆動する駆動部45(図3参照)から伝達された動力により回転する。本実施形態では、駆動部45として、モータを用いる。駆動輪22Lの回転による動力は、クローラベルト21Lを介して従動輪23Lに伝達する。クローラフレーム24Lは、駆動輪22L及び従動輪23Lをそれぞれ回転可能に支持する。クローラ20L及び20Rの詳細な構成については後述する。
【0022】
作業部30は、畦に生えた雑草等の草を刈る作業(草刈り作業)を行う草刈り手段として機能する。作業部30は、ケーシング31、刃部32及び駆動部33を含む。ケーシング31は、刃部32を覆う筐体であり、土、小石、草などの周囲への飛散を防ぐとともに、刃部32を固定するフレームとしても機能する。刃部32は、複数の草刈り刃で構成された部位であり、複数の草刈り刃が回転することにより畦に生えた草を刈る。駆動部33は、刃部32を回転させるための動力を発生する部位である。本実施形態では、駆動部33としてモータを用い、駆動部33の電源として、制御部40に設けられたバッテリ42を用いる。
【0023】
制御部40は、走行部20及び作業部30を制御する機能を有する。本実施形態の制御部40は、バッテリ42、コントローラ43及びカバー部材44を含む。バッテリ42は、作業部30を駆動する駆動部33の電源、及び、走行部20を駆動する駆動部45の電源として機能する。また、バッテリ42は、第1リンク機構50L及び50R、並びに第2リンク機構60を動作させるための電源としても機能する。コントローラ43は、走行部20及び作業部30を制御する中枢となる部位であり、例えば、演算装置、メモリ、及び通信回路等を備えた電子回路基板を有する。コントローラ43は、リモートコントローラ(図示せず)から取得した信号に基づく制御を実行する機能を有する。しかしながら、この例に限らず、コントローラ43は、草刈り機100に設けられた各種センサ(図示せず)から取得した信号に基づく制御、GNSS(全球測位衛星システム)を用いた位置制御、サーバ等から取得した指令に基づく制御などの各種制御を実行する機能を有していてもよい。カバー部材44は、バッテリ42及びコントローラ43を保護する役割を有する。
【0024】
第1リンク機構50L及び50Rは、機体10と走行部20との間に設けられ、機体10と走行部20との間の位置関係を相対的に変化させる機能を有する。第1リンク機構50Lは、草刈り機100の進行方向に向かって左側のリンク機構であり、クローラ20Lに連結される。第1リンク機構50Rは、右側のリンク機構であり、クローラ20Rに連結される。
【0025】
第1リンク機構50Lは、リンクアーム51L、リンクアーム52L及び電動シリンダ53Lを含む。第1リンク機構50Rは、リンクアーム51R、リンクアーム52R及び電動シリンダ53Rを含む。なお、第1リンク機構50Rの構造は、第1リンク機構50Lと同じであるため、ここでは第1リンク機構50Lに着目して説明する。
【0026】
第1リンク機構50Lにおいて、リンクアーム51Lは、一端がクローラフレーム24Lに回動可能に連結され、他端が電動シリンダ53Lに回動可能に連結される。また、図2に示すように、リンクアーム51Lは、屈曲部を有し、当該屈曲部において機体10に回動可能に連結される。リンクアーム52Lは、一端がクローラフレーム24Lに連結され、他端が機体10に連結される。これにより、リンクアーム51L、リンクアーム52L、クローラフレーム24L及び機体10によって平行リンクが構成される。したがって、電動シリンダ53Lを伸縮させて平行リンクを動作させることにより、機体10と走行部20との間の位置関係を変化させることができる。
【0027】
本実施形態の草刈り機100は、電動シリンダ53L及び53Rをそれぞれ独立に制御することが可能である。すなわち、機体10とクローラ20Lとの間の距離と、機体10とクローラ20Rとの間の距離とを異ならせることができる。そのため、畦の起伏や畦の一部の崩れ等によって機体10が傾きそうになった場合、一方のクローラを他方よりも下げることにより、機体10の姿勢を維持することが可能である。
【0028】
第2リンク機構60は、機体10と作業部30との間に設けられ、機体10と作業部30との間の位置関係を相対的に変化させる機能を有する。第2リンク機構60は、リンクアーム61、リンクアーム62、作業部側ブラケット63、機体側ブラケット64及び電動シリンダ65を含む。作業部側ブラケット63は、作業部30の後端に固定され、機体側ブラケット64は、機体10の前端に固定される。リンクアーム61は、一端が作業部側ブラケット63に連結され、他端が電動シリンダ65に連結される。また、図2に示すように、リンクアーム61は、屈曲部を有し、当該屈曲部において機体側ブラケット64に回動可能に連結される。リンクアーム62は、一端が作業部側ブラケット63に連結され、他端が機体側ブラケット64に連結される。これにより、リンクアーム61、リンクアーム62、作業部側ブラケット63及び機体側ブラケット64によって平行リンクが構成される。したがって、電動シリンダ65を伸縮させて平行リンクを動作させることにより、機体10と作業部30との間の位置関係を変化させることができる。
【0029】
[走行部の構成]
本実施形態の草刈り機100の走行部20の構成について図3及び図4を用いて説明する。前述のように、本実施形態の草刈り機100は、走行部20として、一対のクローラ20L及び20Rを有する。図3に示すように、クローラ20L及び20Rは、それぞれクローラベルト21L及び21Rを含む。クローラベルト21Lは、外側ラグ部21La、内側ラグ部21Lb及びベルト部21Lcを有する。図3に示すように、外側ラグ部21La及び内側ラグ部21Lbは、ベルト部21Lcの上に、ベルト部21Lcの周回方向に複数配置される。クローラベルト21Rも同様の構造を有しており、外側ラグ部21Ra、内側ラグ部21Rb及びベルト部21Rcを有する。具体的には、走行部20は、一対の外側ラグ部21La及び21Ra、並びに、一対の外側ラグ部21La及び21Raの間に配置された内側ラグ部21Lb及び21Rbを有する。
【0030】
本実施形態では、クローラベルト21L及び21Rが、それぞれ高さの異なるラグ部を有している。具体的には、クローラベルト21Lにおいて、ベルト部21Lcの表面を基準としたとき、外側ラグ部21Laの頂面の高さは、内側ラグ部21Lbの頂面の高さよりも高い。同様に、クローラベルト21Rにおいて、ベルト部21Rcの表面を基準としたとき、外側ラグ部21Raの頂面の高さは、内側ラグ部21Rbの頂面の高さよりも高い。つまり、本実施形態の草刈り機100は、内側から外側に向かって徐々に高さが高くなるように、高さの異なる少なくとも二種類のラグ部が設けられている。
【0031】
図3に示すように、外側ラグ部21La及び21Raは、それぞれ内側から外側に向かって徐々に高さが高くなる略台形形状を有している。すなわち、クローラ20Lの外側ラグ部21La及びクローラ20Rの外側ラグ部21Raが、それぞれ畦200の形状に沿うように構成されている。なお、「畦の形状に沿う」とは、図3に示すように、凸状の畦の外形に合わせた凹状の空間が形成されるという意味であり、厳密に、畦の外形に一致又は相似する凹状の空間が形成されることまで限定するものではない。例えば、畦の外形は略台形状であるため、凹状の空間も畦の形状に合わせた略台形状となる。
【0032】
本実施形態では、クローラベルト21L及び21Rの構成材料として弾性部材(具体的には、ゴム)を用いている。つまり、外側ラグ部21La及び21Ra、並びに内側ラグ部21Lb及び21Rbも弾性部材で構成されている。そのため、より畦200の形状に沿いやすくなっている。
【0033】
図4は、第1実施形態の草刈り機100におけるクローラ20L及び20Rの構成を説明するための図である。具体的には、図4(A)は、走行部20の背面図であり、図4(B)は、クローラベルト21Lの拡大断面図である。クローラベルト21Rの構成は、クローラベルト21Lと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0034】
図4(A)及び図4(B)において、ベルト部21Lcの表面71を基準としたときの、外側ラグ部21Laの頂面72の高さを「h1」とし、内側ラグ部21Lbの頂面73の高さを「h2」とする。前述のとおり、高さh1と高さh2との間には、h1>h2の関係がある。つまり、外側ラグ部21Laの頂面72と内側ラグ部21Lbの頂面73との間には、距離H(=h1-h2)の差がある。
【0035】
このとき、図4(B)に示すように、外側ラグ部21Laの傾斜面74は、少なくとも一部が内側ラグ部21Lbよりも高い位置にある。傾斜面74は、外側ラグ部21Laを構成する面のうち、草刈り機100の内側に面する傾斜面である。すなわち、本実施形態では、外側ラグ部21Laと内側ラグ部21Lbとの間に高さの差(距離H)を設け、その高さの分だけ外側ラグ部21Laに、内側に面する傾斜面74が設けられている。これにより、図3に示したように、外側ラグ部21Laの頂面72及び傾斜面74、並びに内側ラグ部21Lbの頂面73が畦200の形状に沿う構成となっている。なお、傾斜面74は、内側ラグ部21Lbよりも高い位置にあればよいが、傾斜面74の長さ(斜辺の長さ)が短すぎると畦200の肩部への当たりが強すぎてしまうため、傾斜面74の下端は、内側ラグ部21Lbの頂面73とほぼ同じ高さにあることが好ましい。
【0036】
図4(B)に示すように、本実施形態では、ベルト部21Lcの表面71と外側ラグ部21Laの傾斜面74とがなす角αを10°以上70°以下(好ましくは、20°以上50°以下)とする。この角αは、ベルト部21Lcの表面71と内側ラグ部21Lbの傾斜面75とがなす角βよりも小さい。このように、本実施形態のクローラ20Lは、外側ラグ部21Laの内側に面する傾斜面74と、内側ラグ部21Lbの外側に面する傾斜面75とが互いに異なる角度の傾斜面を有し、傾斜面74の方が傾斜面75に比べてベルト部21Lcの表面71に対する傾きが小さい構成となっている。
【0037】
ここで、外側ラグ部21Laと外側ラグ部21Raとの間の幅を「L1」とする。本実施形態の草刈り機100は、畦200の天面201の幅が幅L1と略一致する場合を想定した設定となっている。換言すれば、走行部20の左右方向の幅(全幅)を「L2」とした場合、走行部20の幅L2は、畦200の天面201の幅(この場合、略L1)よりも2つの外側ラグ部21La及び21Raの幅の分だけ広い。
【0038】
このような構造とした場合、草刈り機100が畦200の上を走行する際には、天面201の上に内側ラグ部21Lb及び21Rbが位置し、畦200の肩部(天面201と法面202との境界部)に外側ラグ部21La及び21Raの傾斜面74が位置する。したがって、草刈り機100は、内側ラグ部21Lb及び21Rbにより天面201の上を走行し、畦200の起伏等によりバランスを崩して斜めになった場合、相対的に低い側の外側ラグ部21La又は21Raが畦200の法面202に当接して機体を支えたり、高い側の外側ラグ部21La又は21Raが畦200の肩部に引っ掛かって機体を支えたりすることができる。
【0039】
以上のとおり、本実施形態の草刈り機100は、内側ラグ部21Lb及び21Rbよりも高さのある外側ラグ部21La及び21Raを設けたクローラ20L及び20Rを有する。そして、草刈り機100の走行部20の形状を、畦200の形状に沿わせた形状とすることにより、畦200の上を走行中に機体のバランスを崩した場合においても、外側ラグ部21La又は21Raで機体を支え、姿勢を維持する、又は、姿勢の立て直しを早めることができる。したがって、本実施形態によれば、畦200の上を安定して走行可能な草刈り機100を提供することができる。
【0040】
(変形例1)
本実施形態では、畦200の天面201の幅が、外側ラグ部21Laと外側ラグ部21Raとの間の幅L1と略一致する場合を例として説明したが、この例に限定されるものではない。すなわち、外側ラグ部21Laと外側ラグ部21Raとの間の幅L1は、畦200の天面201の幅よりも広くてもよいし狭くてもよい。例えば、幅L1が畦200の天面201の幅よりも広い場合、機体のバランスを崩したとしても、従来の同じ高さのラグ部を備えたクローラに比べて、早いタイミングで外側ラグ部21La又は21Raが畦200の法面202に当接するため、より早く姿勢を立ち直らせることができる。逆に、幅L1が畦200の天面201の幅よりも狭い場合、通常は、外側ラグ部21La及び21Raにより天面201の上を走行する。他方、バランスを崩して外側ラグ部21La又は21Raが畦200の天面201から外れた場合、その時点で外側ラグ部21La又は21Raが畦200の法面202に当接するため、より早く姿勢を立ち直らせることができる。
【0041】
(変形例2)
本実施形態では、外側ラグ部21La及び21Raの傾斜面74を直線状とした例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、傾斜面74は、凹部を構成する湾曲面に代えてもよい。畦200の肩部は、一般的に湾曲しているため、外側ラグ部21La及び21Raの内側に面する部分を湾曲面とすることにより、クローラ20L及び20Rの形状を、さらに畦200の形状に沿うようにすることができる。
【0042】
(変形例3)
本実施形態では、リモートコントローラによる制御に基づいて自走する草刈り機を例示したが、この例に限られるものではない。本実施形態のクローラの構成は、人が操作するタイプの草刈り機に対しても適用可能である。例えば、人が手で押して畦の上を移動させるタイプの草刈り機であっても、本実施形態の構成を有するクローラを適用すれば、畦の上を安定して移動させることができる。
【0043】
(変形例4)
本実施形態では、リモートコントローラによる制御に基づいて自走する草刈り機を例示したが、この例に限られるものではない。本実施形態のクローラの構成は、センサ情報、位置情報等に基づいて自己の走行経路を自動制御する自走式の草刈り機に対しても適用可能である。このような草刈り機は、無人走行となる場合が多いため、本実施形態の構成を有するクローラにより畦の上を安定に移動できることは大きなメリットである。
【0044】
(変形例5)
本実施形態では、外側ラグ部21La及び21Ra、並びに内側ラグ部21Lb及び21Rbが、それぞれ弾性部材である例を示したが、これに限られるものではない。具体的には、外側ラグ部21La及び21Raと、内側ラグ部21Lb及び21Rbとは、異なる材質で構成されていてもよい。例えば、外側ラグ部21La及び21Raが、ゴム等の弾性部材で構成され、内側ラグ部21Lb及び21Rbが、鉄もしくは鉄合金等の金属部材で構成されていてもよい。
【0045】
(変形例6)
本実施形態では、外側ラグ部21Laと内側ラグ部21Lbとをクローラベルト21Lの周回方向(すなわち、草刈り機の進行方向)と直交する方向に対して略平行に配置した例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、外側ラグ部21La及び内側ラグ部21Lbの少なくとも一方が、クローラベルト21Lの周回方向と直交する方向に対して斜めに配置されていてもよい。
【0046】
(変形例7)
本実施形態では、作業部30の刃部32を回転させるための動力源として、駆動部33(具体的には、モータ)を使用する例を示した。しかし、この例に限らず、刃部32を回転させるための動力源として、エンジンを用いることも可能である。例えば、草刈り機100に対してエンジンを搭載し、エンジンから出力された動力を、ベルト等を介して刃部32へ伝達することが可能である。
【0047】
また、刃部32の動力源として搭載したエンジンを発電機として使用することにより、バッテリ42の電力消費分を蓄電することが可能である。具体的には、ベルト等を介してオルタネータにエンジンの動力を伝達し、オルタネータによって動力を電気エネルギーに変換してバッテリ42に蓄電することができる。
【0048】
さらに、本変形例では、刃部32を回転させる動力源としてエンジンを用いる例を示したが、単に、発電機としてエンジンを用いることも可能である。すなわち、図1に示した草刈り機100のように、バッテリ42を電源として、駆動部33により刃部32を駆動し、駆動部45により走行部20を駆動しつつ、バッテリ42の蓄電用に別途エンジンを使用することも可能である。この場合、小型のエンジンを搭載するだけで足りるため、草刈り機の小型化を図りつつ、大出力のバッテリを用いることができる。
【0049】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の走行部を有する草刈り機100aについて説明する。具体的には、走行部が、単一のクローラ20aで構成された例について説明する。なお、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を付して表し、詳細な説明を省略する。
【0050】
図5は、第2実施形態の草刈り機100aの構成を示す背面図である。図5に示すように、草刈り機100aは、走行部としてクローラ20aを有する。クローラ20aは、クローラベルト26を備え、クローラベルト26は、外側ラグ部26La及び26Ra、内側ラグ部26b、並びにベルト部26cを有する。なお、図示は省略するが、クローラ20aは、第1実施形態と同様に、駆動輪、従動輪及びクローラフレームを含む。
【0051】
本実施形態において、外側ラグ部26La及び26Ra、並びに内側ラグ部26bの役割は、第1実施形態と同様である。すなわち、草刈り機100aが畦200の上を走行する際には、天面201の上に内側ラグ部26bが位置し、肩部に外側ラグ部26La及び26Raの傾斜面74が位置する。したがって、草刈り機100aは、内側ラグ部26bにより天面201の上を走行し、畦200の起伏等によりバランスを崩した場合、外側ラグ部26La又は26Raが畦200の法面202に当接して機体を支えることができる。
【0052】
<第3実施形態>
第1実施形態では、外側ラグ部21La及び21Raと、内側ラグ部21Lb及び21Rbとが、それぞれ別の部材として設けられた例を示したが、これに限られるものではない。例えば、外側ラグ部21Laと内側ラグ部21Lbとが一体となっていてもよい。同様に、外側ラグ部21Raと内側ラグ部21Rbとが一体となっていてもよい。
【0053】
図6は、第3実施形態の草刈り機におけるクローラ25L及び25Rの構成を説明するための図である。具体的には、図6(A)は、走行部25の背面図であり、図6(B)は、クローラベルト27Lの拡大断面図である。クローラベルト27Rの構成は、クローラベルト27Lと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を付して表し、詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、図6(A)及び図6(B)に示すように、外側ラグ部27Laと内側ラグ部27Lbとは一体形成されている。図6(A)に示すように、外側ラグ部27La及び内側ラグ部27Lbは、ベルト部27Lcの上に、ベルト部27Lcの周回方向に複数配置される。この場合においても、第1実施形態と同様に、ベルト部27Lcの表面71を基準としたとき、外側ラグ部27Laの頂面72の高さは、内側ラグ部27Lbの頂面73の高さよりも高い。そのため、外側ラグ部27Laは、草刈り機100の内側に面する傾斜面74を有する。
【0055】
<第4実施形態>
第1実施形態では、クローラベルト21Lについて、外側ラグ部21Laと内側ラグ部21Lbとをクローラベルト21Lの周回方向と直交する方向に並べて配置した例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、外側ラグ部と内側ラグ部とが千鳥配置されていてもよい。
【0056】
図7は、第4実施形態におけるクローラベルト28Lの構成を説明するための上面模式図である。図7に示すように、外側ラグ部28Laと内側ラグ部28Lbとが互いに千鳥状に、クローラベルト28Lの周回方向に対して複数配置されている。外側ラグ部28La及び内側ラグ部28Lbの少なくとも一方は、クローラベルト28Lの周回方向と直交する方向に対して斜めに配置されていてもよい。なお、クローラベルト28Rの構成は、クローラベルト28Lと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0057】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態(変形例を含む。)を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0058】
前述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0059】
10…機体、20、25…走行部、20a、20L、20R、25L、25R…クローラ、21L、21R、26、27L、27R、28L…クローラベルト、21Lc、21Rc、26c、27Lc、27Rc、28Lc…ベルト部、21La、21Ra、26La、26Ra、27La、27Ra、28La…外側ラグ部、21Lb、21Rb、26b、27Lb、27Rb、28Lb…内側ラグ部、22L…駆動輪、23L…従動輪、24L…クローラフレーム、30…作業部、31…ケーシング、32…刃部、33…駆動部、40…制御部、42…バッテリ、43…コントローラ、44…カバー部材、45…駆動部、50L、50R…第1リンク機構、51L、51R、52L、52R…リンクアーム、53L、53R…電動シリンダ、60…第2リンク機構、61、62…リンクアーム、63…作業部側ブラケット、64…機体側ブラケット、65…電動シリンダ、71…表面、72、73…頂面、74、75…傾斜面、100、100a…草刈り機、200…畦、201…天面、202…法面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7