(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】耐高温Casタンパク質の使用および標的核酸分子の検出方法とキット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20240207BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240207BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240207BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20240207BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6827 Z
C12Q1/34
(21)【出願番号】P 2021517096
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 CN2019089856
(87)【国際公開番号】W WO2019233385
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】201810560284.8
(32)【優先日】2018-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520474794
【氏名又は名称】シャンハイ トロ バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI TOLO BIOTECHNOLOGY COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】Room 246,Block A,2F,420 Fenglin Road,Xuhui District,Shanghai 200032,China
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,シユアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジン
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107488710(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0211058(US,A1)
【文献】Molecular Cell,2015年,Vol.60,p.385-397
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-1/70
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体に標的核酸分子が存在するかを検出する方法(ただし、インビボでのヒトの診断を除く)であって、
(i)標的核酸分子を検出するための検出用組成物を提供する工程であって、前記検出用組成物が
(a)Cas12b、
(b)Cas12bの標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、および
(c)1本鎖DNAである核酸プローブを含み、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAであり、標的DNAはRNA逆転写によるDNAを含むことがあり、
前記検出用組成物がさらに被験検体を含み、
前記検出用組成物がさらに
(e1)標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ、
(e2)任意的に逆転写用逆転写酵素、および
(e3)dNTPを含む、前記工程、および
(ii)前記検出用組成物における核酸プローブがCas12bによって切断されたかを検出する工程であって、前記の切断はトランス1本鎖DNAのトランス切断である、前記工程
を含み、
ここで、前記核酸プローブがCas12bによって切断された場合、前記検体に標的核酸分子が存在することを表すが、前記核酸プローブがCas12bによって切断されない場合、前記検体に標的核酸分子が存在しないことを表し、
検出において、標的核酸分子の核酸増幅反応、および、トランス切断反応が含まれ、前記核酸増幅反応とトランス切断反応とが同時に行われるワンステップ反応が用いられ、前記検出用組成物の温度が48~70℃に維持され、前記核酸増幅反応の核酸増幅方法はLAMP増幅である
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
SNPを検出する方法(ただし、インビボでのヒトの診断を除く)であって、
(i)SNPを検出するための検出用組成物を提供する工程であって、前記SNPを検出するための検出用組成物が第一の検出用組成物および第二の検出用組成物を含み、
ここで、第一の検出用組成物は、以下の構成:
(a1)Cas12b、
(b1)Cas12bの標的核酸分子への特異的結合をガイドする第一のガイドRNA、および
(c1)1本鎖DNAである核酸プローブを含み、
第二の検出用組成物は、以下の構成:
(a2)Cas12b、
(b2)Cas12bの標的核酸分子への特異的結合をガイドする第二のガイドRNA、および
(c2)1本鎖DNAである核酸プローブを含み、
前記第一の検出用組成物および第二の検出用組成物は、それぞれ独立して、さらに
(e1)標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ、
(e2)任意的に逆転写用逆転写酵素、および
(e3)dNTPを含み、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAであり、標的DNAはRNA逆転写によるDNAを含むことがあり、
そして、前記の第一のガイドRNAおよび第二のガイドRNAは前記SNP部位を含む同一の核酸配列領域に対するもので、かつ第一のガイドRNAは当該SNP部位の野生型(または無突然変異の)核酸配列に対するもので、前記第二のガイドRNAは当該SNP部位の突然変異型核酸配列に対するものである、前記工程
(ii)前記第一の検出用組成物および第二の検出用組成物における核酸プローブがCas12bによって切断されたかを検出する工程であって、前記の切断はトランス1本鎖DNAのトランス切断である、前記工程、
を含み、
検出において、標的核酸分子の核酸増幅反応、および、トランス切断反応が含まれ、前記核酸増幅反応とトランス切断反応とが同時に行われるワンステップ反応が用いられ、前記第一の検出用組成物および第二の検出用組成物の温度が48~70℃に維持され、前記核酸増幅反応の核酸増幅方法はLAMP増幅である
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項3】
標的核酸分子がssDNAである場合、前記の標的核酸分子の検出部位は前記第二のガイドRNAのPAM配列の下流の9番目または10~16番目のいずれかに位置することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
標的核酸分子がssDNAである場合、前記の標的核酸分子の検出部位は前記第二のガイドRNAのPAM配列の下流の10~14番目のいずれかに位置することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
標的核酸分子がssDNAである場合、前記の標的核酸分子の検出部位は前記第二のガイドRNAのPAM配列の下流の10~12番目のいずれかに位置することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記の検出部位が前記第二のガイドRNAのPAM配列の下流の9番目に位置する場合、前記の検出部位はGであることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記の標的核酸分子の検出部位は前記第二のガイドRNAのPAM配列の下流の1~12番目に位置することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記の標的核酸分子の検出部位は前記第二のガイドRNAのPAM配列の下流の1、3、10番目に位置することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記SNPを検出するための検出用組成物が、さらに、一つのブランク対照用組成物を含み、前記ブランク対照用組成物は、
(a3)Cas12b、および
(c3)1本鎖DNAである核酸プローブを含む
ことを特徴とする、請求項
2に記載の方法。
【請求項10】
検体に標的核酸分子が存在するかを検出する方法(ただし、インビボでのヒトの診断を除く)であって、
(i)検出用組成物を提供する工程であって、前記検出用組成物が以下の構成:
(a)Cas12b、
(b)Cas12bの標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、
(c)1本鎖DNAである核酸プローブ、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAであり、標的DNAはRNA逆転写によるDNAを含むことがあり、
(d)緩衝液、
(e1)標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ、
(e3)dNTP、および
(f)被験検体を含む、前記工程、
(ii)検体中の核酸分子がRNAである場合、前記検出用組成物中のRNAを逆転写および増幅反応させることにより、逆転写および増幅した検出用組成物を得る工程、
(iii)上記工程(ii)で得られた前記検出用組成物における核酸プローブがCas12bによって切断されたかを検出する工程であって、前記の切断はトランス1本鎖DNAのトランス切断である、前記工程
を含み、
ここで、前記核酸プローブがCas12bによって切断された場合、前記検体に標的核酸分子が存在することを表すが、前記核酸プローブがCas12bによって切断されない場合、前記検体に標的核酸分子が存在しないことを表し、
検出において、標的核酸分子の核酸増幅反応、および、トランス切断反応が含まれ、前記核酸増幅反応とトランス切断反応とが同時に行われるワンステップ反応が用いられ、前記検出用組成物の温度が48~70℃に維持され、前記核酸増幅反応の核酸増幅方法はLAMP増幅である
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項11】
前記検出用組成物は、(e2)逆転写用逆転写酵素を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記の検出は、定性検出または定量検出を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記定量検出は、絶対定量検出であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記定量検出は、デジタルPCR技術と合わせて行われる定量検出であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記の標的核酸分子はメチル化核酸配列、または前記メチル化核酸配列が非メチル化Cからウラシルへの変換を経て得られた核酸配列であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物技術の分野に属し、具体的に、耐高温Casタンパク質の使用および標的核酸分子の検出方法とキットに関する。
【背景技術】
【0002】
迅速核酸分子検出は公衆健康、環境検出、刑事捜査などの分野における非常に重要な技術である。核酸分子検出は、ヒト、動植物などの病原体感染の有無の検出だけでなく、遺伝病や癌のリスクの検出、セルフメディケーションへの補助・参考、水中における微生物汚染の有無の検出などにも施用することができる。現在、既に多くの核酸検出方法、たとえばリアルタイムPCR、FISHハイブリダイゼーション技術(Fluorescence in situ hybridization)などが開発されてきた。しかし、迅速、安価、高感度を兼ね備える核酸検出技術の開発はまだ必要である。
【0003】
近年、CRISPR技術はゲノム編集の分野において大きな利用価値を示してきた。それを実現させたのは主にCas9などのDNA(またはRNA)を標的とするエンドヌクレアーゼである。簡単にガイドRNAを設計するだけで、Cas9などのタンパク質を任意のPAM(たとえば、Cas9のPAM配列はNGGである)を含有する核酸標的配列にターゲッティングし、そして2本鎖DNAの断裂(またはRNAの切断)を引き起こすことができる。
【0004】
ゲノム編集以外、CRISPRは、また、遺伝子調節、エピジェネティクス編集、機能遺伝子スクリーニング、ゲノムイメージングなどにも使用することができる。最近、CRISPRという豊富なツール箱は核酸検出の分野に現れて注目されるようになってきた。
【0005】
最初に現れたCRISPR関連核酸検出技術はdCas9(不活性型Cas9、dead Cas9)タンパク質に基づいた技術である。dCas9はCas9の2つの触媒切断活性部位を突然変異させることで、2本鎖を切断する活性を失ったものであるが、ガイドRNAによってガイドされて特定のDNAと結合する能力を維持する。ChenらはdCas9を利用してEGFP蛍光タンパク質と融合させ、特定のガイドRNAによってガイドし、顕微鏡で標的配列における蛍光を観察することができた。2017年に、Gukらは、dCas9/sgRNA-SGIに基づいたDNA-FISHシステムを報告したが、選択的にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出することができるものである。
【0006】
2013年に、Collinsのチームは、紙シートでジカ(Zika)ウイルスを検出できる方法を確立した。当該方法はRNAの抽出、増幅およびトーホールド(Toehold)反応の検出過程に関わり、設計により、一つのウイルス株がもう一つの株とPAM部位の配列において異なる(すなわち、一方はNGGで、もう一方は異なる)場合、Cas9によってターゲッティングしてPAM含有菌株を切断することで、増幅過程およびトーホールドの検出に影響を与えることができる。
【0007】
最近、もう一つのCas9に基づいた核酸検出方法の原理はCRISPR/Cas9による等温増幅方法で、それも部位特異性核酸検出に使用することができる。この技術はCRISPR/Cas9の切断、ニッカーゼおよびDNAポリメラーゼに関わり、このような方法は0.82 amolの標的濃度まで検出できるだけでなく、核酸分子の一つの塩基の違いを区別することもできる。当該方法の標的の区別は前者の方法よりも一般的に適用できる。
【0008】
もう一つの核酸検出の原理は一部のCasタンパク質が有する「トランス切断」(または「バイパス切断」と呼ばれる)効果に基づいたものである。2016年に、張鋒らはCas13a(旧称C2c2)はバイパス切断活性を有し、すなわち、Cas13aが標的RNA配列と結合したら、無作為にほかのRNAを切断する特性を示すことを見出したため、SHERLOCK(Specific High Sensitivity Enzymatic Reporter UnLOCKing、特定高感度酵素レポーターアンロッキング)と呼ばれる特異性核酸検出技術に使用した。
CRISPRに関連する核酸検出方法は既に多く存在するが、本分野では、より迅速で、より便利で、より安価な核酸検出方法の開発が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、CRISPRに関連するより迅速で、より便利で、より安価な核酸検出方法を開発することである。
本発明の第一の側面では、標的核酸分子を検出するための検出系であって、
(a)Cas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
(b)Cas12bタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、および
(c)1本鎖DNAである核酸プローブを含み、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAである検出系を提供する。
もう一つの好適な例において、前記の検出は、定性検出および/または定量検出を含む。
もう一つの好適な例において、前記の検出系は、さらに、(d)緩衝液を含む。
もう一つの好適な例において、前記の検出方法は、さらに、被験標的核酸分子を含む。
もう一つの好適な例において、前記の検出系は、さらに、
(e1)標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ、
(e2)任意的に逆転写用逆転写酵素、
(e3)増幅反応および/または逆転写反応用dNTPを含む。
もう一つの好適な例において、前記の検出系は、さらに、LAMP反応用試薬を含む。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記の被験標的核酸分子の前記検出系における濃度は1×10-9 nM~1×103 nM、好ましくは1×10-9 nM~1×102 nMである。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記の被験標的核酸分子の前記検出系における濃度は1~100コピー/μLまたは1~1×1015コピー/μL、好ましくは1~10コピー/μL、より好ましくは1~5コピー/μLである。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記の検出系では、前記核酸プローブと前記標的核酸分子のモル比は103:1~1014:1、好ましくは104:1~107:1である。
もう一つの好適な例において、前記のガイドRNAの長さは16~25 nt、好ましくは16~22 nt、より好ましくは16~20 ntである。
もう一つの好適な例において、前記のガイドRNAの長さは18~25 nt、好ましくは18~22 nt、より好ましくは18~20 ntである。
【0013】
もう一つの好適な例において、標的核酸分子がssDNAである場合、前記の標的核酸分子の検出部位は前記ガイドRNAのPAM配列の下流の9番目または10~16番目、より好ましくは10~14番目、好ましくは10~12番目に位置する。
もう一つの好適な例において、前記の検出部位が前記ガイドRNAのPAM配列の下流の9番目に位置する場合、前記の検出部位はGである。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記の検出部位は前記ガイドRNAのPAM配列の下流の9~20番目、好ましくは10~18番目、より好ましくは10~16番目に位置する。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記の標的核酸分子の検出部位は前記ガイドRNAのPAM配列の下流の1~20番目、好ましくは1、3、10番目に位置する。
もう一つの好適な例において、前記のガイドRNAの長さは15~30 nt、好ましくは15~18 ntである。
もう一つの好適な例において、前記の標的DNAは、RNA逆転写によるDNAを含む。
もう一つの好適な例において、前記の標的DNAは、cDNAを含む。
もう一つの好適な例において、前記の標的DNAは、1本鎖DNA、2本鎖DNA、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の核酸プローブは蛍光基および消光基を持つ。
もう一つの好適な例において、前記の蛍光基および消光基はそれぞれ独立に前記核酸プローブの5'末端、3'末端および中間部に位置する。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記の核酸プローブの長さは3~300 nt、好ましくは5~100 nt、より好ましくは6~50 nt、最も好ましくは8~20 ntである。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記標的核酸分子は、植物、動物、昆虫、微生物、ウイルス、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるもの由来の標的核酸分子を含む。
もう一つの好適な例において、前記の標的DNAは、人工的に合成されるDNAまたは天然に存在するDNAである。
もう一つの好適な例において、前記の標的DNAは、野生型または突然変異型のDNAである。
もう一つの好適な例において、前記の標的DNAは、RNA逆転写または増幅によって得られるDNA、たとえばcDNAなどを含む。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記のCas12bタンパク質は、AacCas12b(Alicyclobacillus acidoterrestris)、Aac2Cas12b(Alicyclobacillus acidiphilus)、AkaCas12b(Alicyclobacillus kakegawensis)、AmaCas12b(Alicyclobacillus macrosporangiidus)、AheCas12b(Alicyclobacillus herbarius)、AcoCas12b(Alicyclobacillus contaminans)からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の核酸プローブは検出可能な標識を持つ1本鎖DNAを含む。
もう一つの好適な例において、前記の1本鎖DNAは蛍光およびビオチンで標識された1本鎖DNAである。
もう一つの好適な例において、前記の1本鎖DNAは蛍光で標識された1本鎖DNAである。
もう一つの好適な例において、前記の1本鎖DNAは5'末端に蛍光基HEXでかつ3'末端に消光基BHQ1で標識された蛍光プローブである。
【0019】
本発明の第二の側面では、SNP(一塩基多型)またはヌクレオチド突然変異(一塩基または多塩基突然変異を含む)を検出するための検出系であって、第一の検出系および第二の検出系を含み、
ここで、第一の検出系は、
(a1)Cas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
(b1)Cas12bタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドする第一のガイドRNA、および
(c1)1本鎖DNAである核酸プローブを含み、
第二の検出系は、
(a2)Cas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
(b2)Cas12bタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドする第二のガイドRNA、および
(c2)1本鎖DNAである核酸プローブを含み、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAで、
【0020】
そして、前記の第一のガイドRNAおよび第二のガイドRNAは前記SNP部位を含む同一の核酸配列領域に対するもので、かつ第一のガイドRNAは当該SNP部位の野生型(または無突然変異の)核酸配列に対するもので、前記第二のガイドRNAは当該SNP部位の突然変異型核酸配列に対するものである検出系を提供する。
もう一つの好適な例において、前記系は、さらに、一つのブランク対照系を含む。
もう一つの好適な例において、前記ブランク対照系は、
(a3)Cas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、および
(c3)1本鎖DNAである核酸プローブを含む。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記SNP部位は前記ガイドRNAのPAM配列の下流の9番目または10~16番目、好ましくは10~14番目、より好ましくは10~12番目に位置する。
もう一つの好適な例において、前記SNP部位が前記ガイドRNAのPAM配列の下流の9番目に位置する場合、前記の検出部位はGである。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記SNP部位は前記ガイドRNAのPAM配列の下流の9~20番目、好ましくは10~18番目、より好ましくは10~16番目に位置する。
【0023】
もう一つの好適な例において、前記の第一または第二のガイドRNAの長さは16~25 nt、好ましくは16~22 nt、より好ましくは16~20 ntである。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記の第一または第二のガイドRNAの長さは18~25 nt、好ましくは18~22 nt、より好ましくは18~20 ntである。
【0025】
本発明の第三の側面では、標的核酸分子を検出するためのキットであって、
i)第一の容器および第一の容器内に位置するCas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
ii)任意に第二の容器および第二の容器内に位置する前記Casタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、
iii)第三の容器および第三の容器内に位置する核酸プローブ、
iv)任意に第四の容器および第四の容器内に位置する緩衝液を含み、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAである検出系を提供する。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記の第一の容器、第二の容器、第三の容器および第四の容器のうちの任意の2個、3個、または4個(または全部)は同様か異なる容器である。
もう一つの好適な例において、前記の核酸プローブは蛍光基および消光基を持つ。
もう一つの好適な例において、前記キットは、さらに、緩衝液を含む。
もう一つの好適な例において、前記キットは、さらに、
v)第五の容器および第五の容器内に位置する標的DNAを増幅させるためのポリメラーゼ、
vi)任意に第六の容器および第六の容器内に位置する逆転写用逆転写酵素、
vii)第七の容器および第七の容器内に位置する増幅反応および/または逆転写反応用dNTPを含む。
もう一つの好適な例において、前記の検出系は、さらに、LAMP反応用試薬を含む。
もう一つの好適な例において、前記第五の容器、第六の容器および第七の容器は同様か異なる容器である。
もう一つの好適な例において、前記第一の容器~第七の容器のうちの2個、複数個または全部は同様か異なる容器である。
【0027】
本発明の第四の側面では、検体に標的核酸分子が存在するか検出する方法であって、
(i)本発明の第一の側面に記載の標的核酸分子を検出するための検出系において、さらに被験検体を含む検出系を提供する工程、および
(ii)前記検出系における核酸プローブがCas12bタンパク質によって切断されたか、検出し、前記の切断はバイパス1本鎖DNAのトランス切断である工程を含み、
【0028】
ここで、前記核酸プローブがCas12bタンパク質によって切断された場合、前記検体に標的核酸分子が存在することを表すが、前記核酸プローブがCas12bタンパク質によって切断されない場合、前記検体に標的核酸分子が存在しないことを表す方法を提供する。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記Cas12bタンパク質はCas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質である。
もう一つの好適な例において、前記の被験検体は増幅されていない検体および増幅された(または核酸増幅された)検体を含む。
もう一つの好適な例において、前記の被験検体は増幅して得られた検体である。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記核酸増幅の方法は、PCR増幅、LAMP増幅、RPA増幅、リガーゼ連鎖反応、分岐DNA増幅、NASBA、SDA、転写媒介増幅、ローリングサークル増幅、HDA、SPIA、NEAR、TMAおよびSMAP2からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記のPCRは、高温PCR、常温PCR、または低温PCRを含む。
もう一つの好適な例において、前記方法は、標的部位における核酸にSNP、点突然変異、欠失、および/または挿入が存在するか検出するためのものである。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記の標的部位の上下流(-20 nt~+20 ntの範囲内、好ましく-16 nt~+16 ntの範囲内)にPAM配列が欠けている場合、PAMを導入するプライマーで核酸増幅を行う。
もう一つの好適な例において、前記のPAMを導入するプライマーは、5'-3'の式Iの構造を有する。
P1-P2-P3 (I)
(式中において、
P1は5'末端に位置する標的核酸分子の配列に相補的または非相補的な5'領域配列である。
P2はPAM配列である。
P3は3'末端に位置する標的核酸分子の配列に相補的な3'領域配列である。)
もう一つの好適な例において、前記のPAMプライマーは特異的に標的核酸分子の上流または下流に結合するものである。
もう一つの好適な例において、P1の長さは0~20 ntである。
もう一つの好適な例において、P3の長さは5~20 ntである。
もう一つの好適な例において、前記のPAMプライマーの長さは16~50 nt、好ましくは20~35 ntである。
もう一つの好適な例において、前記の相補は完全相補および一部相補を含む。
もう一つの好適な例において、前記の核酸増幅に使用されるプライマーの少なくとも一つはPAM配列を含む。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記の標的部位の上下流(-20 nt~+20 ntの範囲内、好ましく-15 nt~+15 ntの範囲内、より好ましく-10 nt~+10 ntの範囲内)にPAM配列を含む場合、PAM配列を含むか含まないプライマー使用し、そして増幅された増幅産物は前記PAM配列を含む。
もう一つの好適な例において、工程(ii)における検出は蛍光検出法を含む。
もう一つの好適な例において、前記蛍光検出法はマイクロプレートリーダーまたは蛍光分光光度計によって行われる。
【0033】
本発明の第五の側面では、検体に標的核酸分子が存在するか検出する方法であって、
(i)検出系であって、
(a)Cas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
(b)Cas12bタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、
(c)1本鎖DNAである核酸プローブ、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAで、
(d)緩衝液、
(e1)標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ、
(e2)任意的に逆転写用逆転写酵素、
(e3)増幅反応および/または逆転写反応用dNTP、および
(f)被験検体を含む系を提供する工程、
(ii)前記検出系を逆転写および/または増幅反応させることにより、逆転写および/または増幅した検出系を得る工程、
(iii)上記工程で得られた前記検出系における核酸プローブがCas12bタンパク質によって切断されたか、検出し、前記の切断はバイパス1本鎖DNAのトランス切断である工程を含み、
【0034】
ここで、前記核酸プローブがCas12bタンパク質によって切断された場合、前記検体に標的核酸分子が存在することを表すが、前記核酸プローブがCas12bタンパク質によって切断されない場合、前記検体に標的核酸分子が存在しないことを表す方法を提供する。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記の工程(ii)では、前記検出系の温度を50~70℃、好ましくは50~65℃、より好ましくは55~65℃に維持する。
もう一つの好適な例において、前記の工程(iii)では、前記検出系の温度を25~70℃、好ましくは48~65℃に維持する。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記核酸増幅の方法は、PCR増幅、LAMP増幅、RPA増幅、リガーゼ連鎖反応、分岐DNA増幅、NASBA、SDA、転写媒介増幅、ローリングサークル増幅、HDA、SPIA、NEAR、TMAおよびSMAP2からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記の核酸増幅は、LAMP増幅を含む。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記検出系では、被験検体の核酸濃度は1×10-11~1×10-5 nM、好ましくは1×10-9~1×10-6 nM、より好ましくは1×10-8~1×10-7 nMである。
もう一つの好適な例において、前記の検出は、定性検出および/または定量検出を含む。
もう一つの好適な例において、前記定量検出は絶対定量検出(たとえば、デジタルPCR技術と合わせて行われる定量検出)である。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記工程(ii)と(iii)の合計時間は≦2時間、好ましくは≦1.5時間、より好ましくは≦1時間(たとえば30~60分間)である。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記の標的核酸分子はメチル化核酸配列、または前記メチル化核酸配列が非メチル化Cからウラシルへの変換を経て得られた核酸配列である。
もう一つの好適な例において、前記メチル化核酸配列は亜硫酸水素塩によって処理することにより、非メチル化Cをウラシルへ変換させた。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記の標的核酸分子は直鎖または環状RNA分子が逆転写反応によって生成するDNA分子、あるいはRT-PCRによって生成するDNA分子である。
もう一つの好適な例において、前記のRT-PCRはRT-LAMPを含む。
【0041】
本発明の第六の側面では、Cas12bタンパク質の使用であって、前記Cas12bタンパク質はバイパス1本鎖DNA切断に基づいて標的核酸分子を検出する検出試薬またはキットの製造に使用され、ここで、前記Cas12bタンパク質はCas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質である使用を提供する。
【0042】
もう一つの好適な例において、前記のCas12bタンパク質は、AacCas12b(Alicyclobacillus acidoterrestris)、Aac2Cas12b(Alicyclobacillus acidiphilus)、AkaCas12b(Alicyclobacillus kakegawensis)、AmaCas12b(Alicyclobacillus macrosporangiidus)、AheCas12b(Alicyclobacillus herbarius)、AcoCas12b(Alicyclobacillus contaminans)からなる群から選ばれる。
【0043】
本発明の第七の側面では、検体に標的核酸分子が存在するか検出するための装置であって、
(a) デジタル化された反応系に対して核酸増幅反応およびCas12bタンパク質を介するバイパス切断反応を行うための増幅反応-バイパス切断反応モジュール、および
(b) 各デジタル化された反応系においてCas12bタンパク質を介するバイパス切断反応が生じたか、検出するための信号検出モジュール
を含む装置を提供する。
もう一つの好適な例において、前記の核酸増幅反応とバイパス切断反応は同時に行われる。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記の増幅反応-バイパス切断反応モジュールは、さらに、前記装置におけるデジタル化された反応系の温度を所定の温度に制御するための温度制御ユニットを含む。
もう一つの好適な例において、前記所定の温度は50~70℃、好ましくは50~65℃、より好ましくは55~65℃である。
もう一つの好適な例において、前記所定の温度は25~70℃、好ましくは48~65℃である。
もう一つの好適な例において、前記増幅反応とバイパス切断反応の全過程において、所定の温度はほぼ同様である。
もう一つの好適な例において、前記所定の温度の変動範囲は±5℃以内、好ましくは±3℃以内、より好ましくは±1℃である。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記の核酸増幅は等温増幅、または変性-アニーリング-伸長の温度差が≦10℃(好ましくは≦5℃、より好ましくは≦3℃)の増幅である。
もう一つの好適な例において、前記の核酸増幅は、LAMP増幅を含む。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記のデジタル化された反応系は微小液滴デジタルPCR(ddPCR)反応系またはチップデジタルPCR(cdPCR)反応系である。
もう一つの好適な例において、前記のデジタル化された反応系は複数の独立した反応系ユニットを含み、各反応系ユニットはいずれも
(a)Cas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
(b)Cas12bタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、
(c)1本鎖DNAである核酸プローブ、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAで、
(d)緩衝液、
(e1)標的DNAを増幅するためのポリメラーゼ、
(e2)任意的に逆転写用逆転写酵素、
(e3)増幅反応および/または逆転写反応用dNTP、および
(f)被験検体を含み、
ここで、希釈化処理(すなわち、デジタル化処理)により、各独立した反応系は1コピーの検体由来の核酸、または0コピーの検体由来の核酸を含む。
もう一つの好適な例において、各反応系ユニットは、1コピーまたは0コピーの検体由来の核酸を含む以外、同様である。
もう一つの好適な例において、前記の反応系ユニットは微小液滴である。
もう一つの好適な例において、前記の反応系ユニットはチップのマイクロウェルに位置するマイクロ反応系である。
もう一つの好適な例において、前記の装置は、さらに、仕込みモジュール、および/または制御モジュールを含む。
もう一つの好適な例において、前記の信号検出モジュールはイメージングモジュールを含む。
もう一つの好適な例において、前記のイメージングモジュールは蛍光検出ユニットを含む。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記蛍光検出ユニットは前記デジタル化された反応系を照射することにより、前記反応系を励起して蛍光信号を放出させ、さらに前記蛍光信号をデジタル信号に変換し、そして好ましくは前記制御モジュールに送信する。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記制御モジュールは前記蛍光信号(好ましくは、当該蛍光信号から変換されたデジタル信号)の数および前記反応系ユニットの合計数から計算・分析することにより、標的核酸の定量検出の結果(たとえば濃度またはコピー数)を得る。
もう一つの好適な例において、前記の装置はデジタルPCR検出装置である。
【0049】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組み合わせ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図面の説明
【
図1】
図1は、それぞれdsDNAとssDNAを標的DNAとする場合、異なる濃度のCas12bおよびsgRNAでプローブをトランス切断して生じる蛍光強度を示す。
【
図2】
図2は、それぞれdsDNAとssDNAを標的DNAとする場合、PAM配列における異なる塩基によるトランス切断の蛍光検出強度に対する影響を示す。
【
図3】
図3は、ssDNAまたはdsDNAを標的とする場合、Cas12bのトランス切断速度を示す。
【
図4】
図4は、異なる温度条件において、dsDNAまたはssDNAを標的とするCas12bのトランス切断の蛍光強度を示す。
【
図5】
図5は、標的配列を勾配希釈することにより、Cas12bのdsDNAまたはssDNAを標的とする検出感度(すなわち、トランス切断の蛍光強度)を示す。
【
図6】
図6は、Cas12bにLAMP増幅反応を合わせた場合(すなわち、HOLMES v2.0方法)の標的に対する検出感度を示す。
【
図7-1】
図7-1は、異なる長さのガイド配列のsgRNAを利用し、それぞれ測定されたssDNA標的配列の1-12番目における一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図7-2】
図7-2は、異なる長さのガイド配列のsgRNAを利用し、それぞれ測定されたssDNA標的配列の1-12番目における一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図7-3】
図7-3は、異なる長さのガイド配列のsgRNAを利用し、それぞれ測定されたssDNA標的配列の1-12番目における一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図8】
図8は、ガイド配列の16 ntのsgRNAを利用し、それぞれ測定されたssDNA標的配列の1-16番目における一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図9】
図9は、ガイド配列の16 ntのsgRNAを利用し、それぞれ測定されたssDNA標的配列の1-16番目における一塩基突然変異によって任意のほかの3種類の塩基になった場合のCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図10-1】
図10-1は、ガイド配列の16 ntのsgRNAを利用し、それぞれ測定された2種類の異なるssDNA標的配列(rs5082、rs1467558)の8-16番目における一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図10-2】
図10-2は、ガイド配列の16 ntのsgRNAを利用し、それぞれ測定された種類の異なるssDNA標的配列(rs2952768)の8-16番目における一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図11-1】
図11-1は、異なる長さのガイド配列のsgRNAを利用し、測定されたdsDNA標的配列の1-16番目における任意の一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図11-2】
図11-2は、異なる長さのガイド配列のsgRNAを利用し、測定されたdsDNA標的配列の1-16番目における任意の一塩基突然変異によるCas12bのトランス切断蛍光強度に対する強度を示す。
【
図12】
図12は、50℃、55℃、60℃、65℃の条件において、LAMPをCas12bと合わせて検出してワンステップ反応を実現させたことを示す。
【
図13】
図13は、HOLMES v2.0(LAMPにCas12bを合わせた)によって大腸菌のgyrB部位を測定し、大腸菌の存在の有無を鑑定し、そして勾配希釈によって検出感度を測定したものである。(プレート塗布で測定したところ、ODが0.005の大腸菌が約7000個であった)
【
図14】
図14は、HOLMES v2.0(LAMPにCas12bを合わせた)によってY染色体のsry部位を測定し、唾液検体で性別を鑑定したものである(DNMT1-3部位は染色体における遺伝子部位で、陽性対照である)。
【
図15】
図15は、非対称または対称PCR増幅にCas12bを合わせてSNP部位(rs5082)を検出したものである。rs5082部位の周辺にPAM配列がないため、1本鎖DNAが生成する非対称PCRではSNP部位をより顕著に分別することができることがわかる。
【
図16】
図16は、プライマーを設計し、LAMP増幅によってPAM配列を導入した後、Cas12bを合わせてSNP部位(rs5082)を検出したものである。rs5082部位の周辺にPAM配列がないため、PAMが生成するLAMP増幅方法(プライマーにPAM配列が含まれる)はよりSNP部位を分別することができることがわかる。
【
図17】
図17は、HOLMES v2.0(LAMPにCas12bを合わせた)によるRNAウイルスJEV(Japanese encephalitis virus、日本脳炎ウイルス)に対する検出である。
【
図18】
図18は、HOLMES v2.0(LAMPにCas12bを合わせた)ワンステップ法による微量DNAの定量である。異なる濃度の鋳型DNAに希釈することにより、LAMP-Cas12bワンステップ法で蛍光定量装置においてリアルタイムで蛍光値(55℃における反応)を検出した。
【
図19】
図19は、蛍光値が600,000に達した時点をy軸に(
図18におけるデータを使用する)、濃度のlg絶対値をX軸にブロットし、直線に近い傾向線を得たものである。この方程式で標的配列の定量を行うことができる。
【
図20】
図20は、デジタルHOLMES(LAMPにCas12bとclarityチップを合わせた)方法による核酸検体に対する絶対定量検出である。
【
図21】
図21は、HOLMESv2による標的DNAのメチル化の検出の原理図である。亜硫酸水素塩による変換処理およびPCR増幅を経た後、メチル化されていなかったCpG部位におけるC塩基がTに変換され、メチル化標的部位と完全にマッチするsgRNAガイド配列を設計し、そしてHOLMESv2反応(すなわち、Cas12b、sgRNAおよび一方の末端に蛍光基で標識され、もう一方の末端に消光基で標識された1本鎖DNAプローブを入れた)によって反応系におけるメチル化部位の含有量を検出した。同様に、未メチル化標的部位と完全にマッチするsgRNAガイド配列を設計し、そしてHOLMESv2反応によって反応系における未メチル化部位の含有量を検出し、さらにメチル化部位の比率を算出することができる。
【
図22】
図22は、異なる部位、異なる長さのsgRNAによる標的DNAのメチル化の検出の実験結果である。標的-Cは当該部位がC(メチル化のものを表す)の測定結果で、標的-Tは当該部位がT(亜硫酸水素塩変換処理前の塩基が未メチル化のものを表す)の測定結果である。一つのsgRNA配列は、標的-Cを標的とする時の信号値が高いが、標的-Tを標的とする時の信号値が低い場合、当該部位がメチル化修飾の有無の区別に使用することができる。
【
図23】
図23は、m3-C12-17部位のsgRNAによる標的DNAのメチル化の検出の原理図である。左の図はsgRNA配列が標的配列と完全にマッチするもので、右の図は非メチル化の部位が亜硫酸水素塩変換処理およびPCR増幅を経た後、M3部位がTに変換することで、sgRNA配列が標的配列と完全にマッチしなくなったものである。
【
図24】
図24は、4種類の細胞系のM3 CpG部位(COL1A2)のメチル化レベルの測定結果である。0%、10%、30%および50%の結果は標準曲線の作成の測定結果で、293T、SW480、NCI-N87およびMCF-7は4種類の細胞系における当該部位の実測値で、左から右まで3回の独立した重複実験を示し、かつ毎回の実験は3つの重複測定を行った。
【
図25】
図25は、M3 CpG部位(COL1A2)のメチル化レベルの標準曲線である。
図5の標準曲線の測定結果から標準曲線の図をブロットした。
【
図26】
図26は、4種類の細胞系(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)におけるM3 CpG部位(COL1A2)のメチル化率の測定結果である。図から、HOLMESv2システムの測定結果がNGS(High-throughput sequencing、ハイスループットシークエンシング)のシークエンシング結果に最も近いことがわかる。
【
図27】
図27は、HOLMESv2技術による環状RNAの検出結果を示す。上の図はHOLMESv2によるRNAおよび標的部位の選択の検出の概略図で、左下の図はHOLMESv2による標的GAPDHの検出結果の図で、右下の図はHOLMESv2による標的CDR1asの検出結果の図である。target siteは標的部位で、NTCは実験対照群で、すなわち、検体は無菌水で、targetは実験群で、すなわち、検体はRNA検体で、左下および右下の図における蛍光値は実験背景の蛍光を引いた後の蛍光値である。NTCおよびtarget反応群はいずれもLAMP反応によって増幅され、その増幅産物はCas12b反応の測定に使用され、背景蛍光はCas12b反応系に直接無菌水を入れて測定された蛍光値である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
具体的な実施形態
【0052】
本発明者は幅広く深く研究したところ、Cas12bの切断特性に対する研究から、初めて標的核酸検出の技術方案を開発した。実験結果から、本発明の技術方案によって迅速に、高感度と高正確度で微量の核酸を検出することができ、たとえば唾液検体による性別の迅速鑑定、大腸菌汚染の検出、SNP遺伝子型の迅速鑑定、RNAウイルスの検出および微量DNA検体の濃度測定などの異なる分野に有用である。これに基づき、本発明を完成させた。
用語
【0053】
用語「ガイドRNA」または「gRNA」または「sgRNA」とはCasタンパク質(たとえばCas12bタンパク質)の標的DNA配列との特異的結合をガイドするRNAである。
【0054】
用語「CRISPR」とはクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)で、当該配列は多くの原核生物の免疫系である。
用語「Casタンパク質」とはCRISPR関連タンパク質で、CRISPRシステムにおける関連タンパク質である。
用語「Cas12a」(旧称「Cpf1」)とはcrRNA依存性制限酵素で、CRISPRシステムの分類におけるV-A型の酵素である。
【0055】
用語「Cas12b」、「C2c1」は入れ替えて使用することができ、sgRNA依存性制限酵素で、CRISPRシステムの分類におけるV-B型の酵素である。
【0056】
用語「LAMP」はループ介在等温増幅技術(Loop-mediated isothermal amplification)で、遺伝子診断に適する恒温核酸増幅技術である。
【0057】
用語「PAM」とはプロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer-adjacent motif)で、Cas12bによる2本鎖DNAの切断に必要で、AacCas12bのPAMはTTN配列である。
用語「PCR」とはポリメラーゼ連鎖反応で、標的DNA断片の大量増幅に使用される方法の一つである。
【0058】
HOLMES v2.0とは一時間低コスト多用途高効率システムバージョン2.0(one-HOur Low-cost Multipurpose highly Efficient System version 2.0)で、すなわち、Cas12bに基づいた核酸検出方法である。
検出方法
【0059】
本発明は、標的核酸分子の検出方法であって、被験標的核酸分子を含有する反応系に、ガイドRNA、Casタンパク質、核酸プローブ、緩衝液を入れた後、それに対して蛍光検出を行う方法を公開する。
【0060】
本発明は、高特異的に迅速に標的核酸分子を検出する検出方法を提供する。一旦標的DNA(1本鎖または2本鎖)、sgRNAおよびCas12bタンパク質が三元複合体を形成すると、当該複合体は反応系におけるほかの1本鎖DNA分子を切断する。
【0061】
標的DNA(検出しようとするDNA配列)をターゲッティングするようにsgRNAを設計し、検出系にsgRNAおよびCas12bタンパク質を入れ、標的DNA(1本鎖DNAまたは2本鎖DNA)が存在する場合、Cas12bはsgRNAおよび標的DNAと三元複合体を形成し、同時に当該複合体はそのバイパス切断活性が働いて蛍光信号標識を持つ核酸プローブを切断することで、蛍光を放出する。
【0062】
代表的な核酸プローブは1本鎖DNAで、その両末端にそれぞれ発光基および消光基が連結しているため、一旦当該プローブが切断されると、発光基が発光する。
本発明において、蛍光を検出することによって被験検出系に標的DNA分子が含まれるかどうか、知ることができる。
【0063】
本発明において、適切なCasタンパク質はCas12bで、好ましくは前記のCas12bは好適にAacCas12b(Alicyclobacillus acidoterrestris)、Aac2Cas12b(Alicyclobacillus acidiphilus)、AkaCas12b(Alicyclobacillus kakegawensis)、AmaCas12b(Alicyclobacillus macrosporangiidus)、AheCas12b(Alicyclobacillus herbarius)、AcoCas12b(Alicyclobacillus contaminans)からなる群から選ばれる。
被験標的核酸分子の反応系における被験標的核酸分子は増幅されていないもの、または増幅されたもの、および/または逆転写増幅されたものでもよい。
【0064】
本発明の検出方法は異なる種の核酸分子、たとえば、哺乳動物、植物、または微生物、ウイルスの核酸分子を検出することができる。本発明の方法は特に病原微生物、遺伝子突然変異または特異的な標的DNAかRNAの検出に適する。
【0065】
本発明の方法を使用すれば、被験検体に特異的なDNA配列が含まれるかどうか、迅速に検出することができる。また、増幅技術との組み合わせ(たとえば、LAMP、PCR、非対称PCR、RPAなど)により、当該検出方法の感度を大幅に向上させることができる。
【0066】
好ましくは、Cas12bのバイパス切断を核酸増幅(たとえば、等温増幅、LAMP増幅)およびほかの技術(たとえば、デジタルPCR)などと組み合わせることができる。
【0067】
本発明の一つの好適な例において、Cas12に基づいたバイパス切断の検出を核酸増幅と合わせると、検出感度を10-8 nMまたはそれ以下の濃度に向上させることができる。
【0068】
また、Cas12に基づいたバイパス切断の検出をデジタルPCRと合わせると、検出感度を1コピー/1反応系(たとえば微小液滴)に向上させることができるため、ほとんどの検出感度の要求に満足することが可能である。
【0069】
Cas12bに基づいた核酸検出方法およびHOLMES v2.0 (one-HOur Low-cost Multipurpose highly Efficient System version 2.0)
核酸検出方法の確立
【0070】
本発明では、Cas12bの特性を利用し、特異的に核酸分子を検出する方法を開発し、それをHOLMES v2.0(one-HOur Low-cost Multipurpose highly Efficient System version 2.0、一時間低コスト多用途高効率システムバージョン2.0)と呼ぶ。当該技術の名の通り、その特徴は一時間で、低コストで、多用途で、高効率で、便利な測定法である。
【0071】
反応系全体において、2つの工程に大きく分かれ、1つは鋳型核酸に対する増幅で、もう1つはCas12bタンパク質の特異的な核酸検出である。また、この2つの工程を1つにすることもできる。
【0072】
本発明では、一つの好適な例において、核酸に対する増幅にLAMPの方法または非対称PCRの方法が使用されるが、実際に、何らの増幅方法も工程2の核酸検出と合わせることができ、たとえば等温増幅法RPAなどが挙げられる。
最初の核酸は2本鎖DNAに限らず、1本鎖DNAまたはRNAでもよいため、本方法は様々な種類の核酸分子に適する。
【0073】
核酸検出段階について、3つの成分、それぞれCas12b、sgRNAおよび核酸プローブが実験の鍵になっている。実施例に記載のAacCas12b以外、ほかのCas12bタンパク質も同様に当該方法に適する。また、ほかの種類のCasタンパク質(たとえばCas12cタンパク質)も本発明の保護の範囲に含まれる。
【0074】
ガイド作用を果たすsgRNAについて、人工修飾などの改造を経た後、反応系においてより安定している。核酸プローブの選択において、本発明では、HEXおよびBHQ1で標識された短鎖の1本鎖DNA(FAMおよびEclipseの標識も使用された)が選ばれたが、ほかの検出可能な任意の標識手段もいずれも適用でき、当該核酸プローブが切断されると検出可能な違いが生じればよい。あるいは、核酸プローブは、化合物と結合すると蛍光を放出するように設計することで、当該プローブが切断されたか、検出することもできる。
理解しやすいように、本発明のCas12bに基づいた核酸検出方法(好適な「HOLMES」v2.0方法を含む)の様々な特性についてさらに説明する。
【0075】
Cas12bトランス切断活性の鑑定:配列において、Cas12aとCas12bは大きく異なるが、本発明者の実験結果から、Cas12bもトランス切断活性を有することがわかる。
【0076】
まず、バイパスDNAを蛍光プローブに設計し、その構成は12 ntのランダム配列で、そして5'末端に蛍光基HEXで、3'末端に消光基BHQ1で標識した(HEX-N12-BHQ1)。検出系に標的DNA断片(dsDNAまたはssDNA)が含まれる場合、標的DNA、sgRNAおよびCas12bタンパク質の三元複合体が形成し、この時、当該プローブが切断され、同時に蛍光検出装置によって検出されるHEX蛍光基が蛍光を放出する(励起光535 nm、放出光556 nm)。
【0077】
図1に示すように、Cas12bとsgRNAの濃度が250 nMまたは500 nMの場合、dsDNAおよびssDNAは標的としていずれも高い蛍光強度があり、Cas12bとsgRNAの濃度が50 nMおよび100 nMに下がった場合、ssDNAは標的配列としてまだ高い蛍光強度があった。
【0078】
Cas12bトランス切断のPAM特性:研究から、Cas12bが2本鎖DNAをシス切断するのにPAMという配列が必要で、すなわち、5'末端に隣接するのが5'-TTN- 3'でないとCas12bに切断されない。Cas12bトランス切断の場合、標的配列にPAMの特性が必要か、テストするため、本発明者はPAM部位に異なる配列(TTC、TAC、ATC、AAC、GGCおよびCCC)を設計することにより、トランス切断の場合にPAMが必要か、検証した。
【0079】
図2に示すように、2本鎖DNAを標的とする場合、Cas12bのトランス切断はPAM配列に敏感で、すなわち、TTCでないと、高いトランス切断蛍光強度が得られず(TACになると、発生する蛍光強度がTTCよりもやや低い)、1本鎖DNAを標的とする場合、PAM配列に敏感でなく、常に高いトランス切断蛍光強度を示した。
Cas12bトランス切断の速度:それぞれssDNAまたはdsDNAを標的DNAとする場合、Cas12bのトランス切断速度を測定した。
【0080】
図3に示すように、ssDNAを基質とする場合、Cas12bのトランス切断速度が非常に早く、わずか6分間で、最高値に近かったことがわかる。一方、dsDNAを基質とする場合、切断速度が比較的に遅く、次第に上がる過程があった。これは、迅速検出(たとえば≦10分間)が必要な場合、ssDNAをCas12バイパス切断の基質にしたほうがよいことを示唆する。
【0081】
Cas12bトランス切断に適する温度範囲:Cas12bのトランス切断に非常に広い温度範囲があり、ssDNAとdsDNAのいずれを標的配列としても、温度45~65℃において良い応答値があり、特にssDNAを標的とする場合の温度範囲がより広い25~70℃であった(
図4を参照する)。
【0082】
Cas12b検出感度:本発明者は標的dsDNAまたはssDNAの濃度を希釈することにより、Cas12bの検出感度を測定した。一つの好適な例において、標的ssDNA(DNMT1-3(TTC PAM)-R)またはdsDNA(DNMT1-3(TTC PAM)-F、DNMT1-3(TTC PAM)-Rの2つのオリゴヌクレオチドをアニーリングしてなる)をそれぞれ濃度が100 nM、10 nM、1 nM、…10
-4 nMになるように希釈した。
結果から、DNAの濃度が1 nMの場合、直接Cas12bで検出すると、まだ標的分子が検出できたことがわかる(
図5)。
【0083】
HOLMES v2.0の感度測定:一つの実施例において、Cas12bをLAMP反応と合わせると(すなわち、HOLMES v2.0)、検出された感度が10
-8 nMに達し、大幅に標的核酸配列の検出感度を向上させた(
図6)。
標的ssDNAに対するSNP測定:本発明の方法は核酸の突然変異、SNPを含め、特に標的ssDNAにおけるSNPの検出に非常に適する。
【0084】
標的1本鎖DNAのSNPに対する検出では、sgRNAガイド配列が18 ntまたは20 ntの場合、1~12番目の塩基が突然変異しても、トランス切断による蛍光信号に対する影響が大きくなかった。sgRNAガイド配列が14 ntまたは15 ntの場合、野生型対照を含め、いずれも蛍光値が低かった。sgRNAガイド配列が16 ntの場合、10~12番目が突然変異すると、その蛍光値が対照に対して顕著に低下した(
図7)。
【0085】
さらなる研究では、ガイド配列が16 ntのsgRNAの場合、10~16番目の塩基の突然変異の蛍光値に対する影響が非常に顕著で、特に10~14番目の場合、ほとんど蛍光値が検出されなかったことが見出された(
図8)。
【0086】
また、標的1本鎖DNAの異なる部位が異なる種類の塩基に突然変異した場合、蛍光値に本質的に影響がなく、9番目がGに突然変異した場合のみ、蛍光値の変化が大きかった(
図9)。
【0087】
さらに、本発明者はほかの3種類の標的配列を測定し、異なる配列はある部位の突然変異に対して蛍光値の変化が異なったが、いずれも8~16番目で顕著に変化した部位が見つかり、たとえばrs5082の8、10、11、12番目、rs1467558の11番目、rs2952768の8~15番目であった(
図10)。
標的dsDNAに対するSNP測定:本発明の方法は標的dsDNAにおけるSNPを含む核酸の突然変異に適する。
【0088】
標的2本鎖DNAのSNPに対する検出では、一塩基突然変異のトランス切断に対する蛍光信号がssDNAと異なったことがわかる。たとえば、ガイド配列が18~20 ntのsgRNAの場合、10~16番目の塩基突然変異に対して異なる程度の敏感性があった(1と3番目の塩基が突然変異した後も蛍光信号が異なる程度で低下したが)(
図11)。通常、これらのsgRNAは10と16番目に最も敏感である。
異なる温度におけるワンステップ法の検出:本発明は、また、核酸増幅をCas12bと合わせたワンステップ法による検出を提供する。
【0089】
好適に、LAMP増幅をCas12b検出と合わせ、ワンステップ法による検出を実現することができる。本発明において、異なる温度の場合(それぞれ50℃、55℃、60℃、65℃)、Cas12bのトランス切断の様子を測定した。
図12に示すように、50および55℃の場合、ワンステップ法による検出が実現でき、特に55℃の場合、蛍光値の上昇がより速かった。
【0090】
標的RNAの測定:本発明の方法は標的DNAに対する検出だけでなく、標的RNAに対する検出にも使用することができる。本発明において、まず、RNAを逆転写させてDNAにした後、さらに標的配列の検出を行った。
【0091】
一つの好適な方法は、逆転写酵素を反応系に入れることで、RNAの逆転写を実現し、さらにたとえばBst 2.0 DNAポリメラーゼで増幅し、そしてCas12bでトランス切断を実現する。もう一つの方法は、直接Bst 3.0 DNAポリメラーゼ(この酵素はRNA鋳型に対して増幅してDNAを生成することができる)を使用することで、直接RNAの逆転写と増幅を実現する。(
図17)
微量DNA鋳型の定量測定:本発明の方法は定量検出に使用することができる。
【0092】
一つの実例において、55℃の条件で、LAMP増幅およびCas12bに基づいたワンステップ法を使用し、微量DNAに対して定量測定を行った。鋳型を異なる濃度に希釈することにより、リアルタイムでトランス切断の蛍光値を検出し、標準曲線を作成し、計算することで、標的鋳型配列の濃度が得られた(
図18および19)。
もう一つの定量検出は、本発明のCas12bに基づいた検出方法をデジタルPCR技術と合わせた(後記の「デジタルHOLMES法」を参照する)。
プライマー設計およびsgRNA設計
【0093】
本発明の教示から、当業者は実際の必要により、相応するプライマーおよび/またはsgRNAを合成することで、本発明のCas12bに基づいた核酸検出を行うことができる。本発明において、一部の好適なプライマーおよびsgRNAの設計は以下のアドバイスを参照することができる。
プライマーについて、その設計は以下を参照することができる。
【0094】
場合1.前期増幅反応に、LAMP方法を選ぶ場合、通常の方法によってプライマーの設計を行うことができる(http://primerexplorer.jp/elamp4.0.0/index.html)。プライマーの領域F2/F3とB2/B3の間にLoopFおよびLoopBを増やしたプライマー、すなわち、6対のプライマーを薦める。
場合2.前期増幅反応に、非対称PCR方法を選ぶ場合、いくつかのプライマーの候補を用意し、1本鎖DNAを生成する最適な組み合わせを測定する。
【0095】
場合3.SNP測定の時、部位の周辺に適切なPAM部位がある場合、場合1のものを使用し、適切なPAM部位がない場合、プライマーにPAM部位を導入することにより、産物にPAM部位を持たせる。通常、SNP部位からPAMが8~16塩基離れるのが適切であるが、具体的な標的配列に具体的な測定が必要である。
【0096】
場合4.SNP部位の周辺では適切なLAMP増幅プライマーが見つかりにくいか、適切なPAMが導入できない場合、非対称PCR増幅などによって1本鎖DNAを増幅する方法を使用することができる。
sgRNA設計について、以下の場合を参照することができる。
場合1.標的遺伝子の検出には、一般的に、20 bpの相補的なsgRNAを選択し、そして標的配列にPAM配列がある。
【0097】
場合2.SNP検出には、LAMPなどの2本鎖増幅を増幅工程とする場合、まず、SNPの標的配列における部位を測定する。優先的に長さ18 ntのガイド配列のsgRNAを、10~16番目で測定した。
【0098】
場合3.SNP検出には、非対称PCRなどの1本鎖増幅を増幅工程とする場合、まず、SNPの標的配列における部位を測定する。優先的に長さ16 ntのガイド配列のsgRNAを、10~16番目、特に10~12番目で測定した。
デジタルHOLMES法
本発明では、また、本発明のHOLMES技術をデジタルPCR(dPCR)と合わせた技術を提供するが、「デジタルHOLMES法」と略する。
【0099】
デジタルPCRは、近年、快速に発展してきた核酸分子の絶対定量技術である。現在、主に微小液滴デジタルPCR(ddPCR)とチップデジタルPCR(cdPCR)の2種類があり、すなわち、従来のPCR増幅前に検体を微小液滴化処理するか、チップに入れ、核酸分子を含有する反応系を数千数万のnLスケールの反応系に分ける。通常のPCRと比べ、デジタルPCRは前処理工程および後期の蛍光検出工程が加わる。現在、デジタルPCR検出はいずれも通常のPCR装置で増幅する必要があり、そしてPCR反応の条件は厳格で、かつ所要時間が長い(約3~4時間)。
HOLMES方法で現在のチップデジタルPCRの蛍光読取装置を合わせると(すなわち、デジタルHOLMES方法)、恒温だけで絶対定量検出ができる。
【0100】
また、デジタルHOLMESはLAMPなどの方法によって増幅する場合、広い温度範囲(50~70℃、または50~55℃程度)で増幅することができ、通常のPCR装置のように正確な温度制御が必要ではない。Cas12bは当該温度範囲内でもバイパス切断活性を有するため、有効に組み込めるだけでなく、同時に増幅とバイパス切断を行うことができる。
また、本発明はデジタルHOLMES検出のための装置、特に本発明の第七の側面に記載の装置を提供する。
【0101】
そのため、デジタルHOLMES技術を利用し、前処理、増幅および検出を一台の装置に組み込むと、人為的操作誤差を減少するだけでなく、検出速度を加速させ、装置のコストを低下させることもできる。
キット
【0102】
また、本発明は、ガイドRNA、Cas12bタンパク質、核酸プローブを含むキットを提供する。また、本発明のキットは、さらに、ほかの試薬、たとえば、緩衝液、増幅に必要な試薬、逆転写に必要な試薬、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0103】
典型的に、本発明のキットは、
i)第一の容器および第一の容器内に位置するCas12bまたはCas12bと類似するバイパス1本鎖DNA切断活性を有するCasタンパク質であるCas12bタンパク質、
ii)任意に第二の容器および第二の容器内に位置する前記Casタンパク質の標的核酸分子への特異的結合をガイドするガイドRNA、
iii)第三の容器および第三の容器内に位置する核酸プローブ(好ましくは蛍光プローブ)、
iv)任意に第四の容器および第四の容器内に位置する緩衝液を含み、
ここで、前記の標的核酸分子は標的DNAである。
また、本発明のキットは、さらに、
v)第五の容器および第五の容器内に位置する標的DNAを増幅させるためのポリメラーゼ、
vi)任意に第六の容器および第六の容器内に位置する逆転写用逆転写酵素、
vii)第七の容器および第七の容器内に位置する増幅反応および/または逆転写反応用dNTPを含んでもよい。
本発明において、一つまたは複数または全部の前記容器は同様か異なる容器である。
【0104】
本発明の主な利点は以下の通りである。
本発明者は、Cas12bの特性を利用し、特異的に核酸分子を検出する方法を開発し、それをHOLMES v2.0(one-HOur Low-cost Multipurpose highly Efficient System version 2.0、一時間低コスト多用途高効率システムバージョン2.0)と呼ぶ。その特徴は、迅速で(一時間)、低コストで、多経路で、高効率で、便利である。当該方法は、病原菌の迅速検出、SNP検出などの分野に使用することができる。Cas12aに基づいた第一世代のHOLMESと比べ、高温酵素Cas12bに基づいた第二世代のHOLMESはより多い利点がある。
(1) 迅速:測定条件が揃った場合、検体を受け取ってから、検出結果が得られるまで、約1時間しか必要でない。
(2) 低コスト:実験には特殊な材料または酵素がなく、そして関わる材料、試薬などが少なく、微量化の測定分析が可能である。
(3) 高効率:本発明は非常に高い感度を有し、10aMのDNA濃度を検出できる。
(4) 多用途:DNA検体およびRNA検体を含む、異なる核酸検体を検出することができる。
(5) 簡単:特殊で複雑な工程がなく、キットにしてプログラムをセットすれば、簡単な検体の仕込みなどの操作でよい。
(6) ワンステップ反応:同時に増幅反応と検出反応を行い、ワンステップ法によって測定することができる。
(7) 等温:LAMP増幅とCas12b検出は共に恒温条件であるため、装置に対する要求がより低い。
(8) 広い反応温度範囲:Cas12bの検出は45~65℃のいずれでもできるため、装置に対する要求が低い。
【0105】
(9) 2種類の酵素によるDNAまたはRNAの増幅と検出の実現:Bst 3.0 DNAポリメラーゼはDNAまたはRNAを鋳型とするDNAポリメラーゼ活性を有するため、Bst 3.0とCas12bの2種類の酵素があれば、DNAまたはRNAの増幅から検出まで可能で、生産コストが節約できる。
(10) 高感度のSNP検出:部位およびsgRNAの合理的な設計により、高感度で一塩基の違いを区別することができる。
【0106】
(11) 定量検出の実現:ワンステップ法HOLMESによって蛍光のリアルタイム検出を行い、またはデジタルPCR装置のチップおよび検出システムと合わせることで、検体の定量検出を実現させることができる。
【0107】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0108】
本願において、別途に説明しない限り、Cas12bトランス切断活性の反応系は、sgRNAとCas12bがそれぞれ250 nMで、反応条件が48℃、30 minであった。
【0109】
材料
1.RNA酵素阻害剤はTaKaRa公社から、高正確性DNAポリメラーゼKOD FXはToYoBo社から購入された。プライマー(オリゴヌクレオチド)は上海生工によって合成された。T7 RNAポリメラーゼはThermo社から購入された。RNA精製・濃縮キット(RNA Clean&ConcentratorTM-5)はZymo Researchから購入された。WizardR SV Gel and PCR Clean-Up SystemはPromega社から購入された。培地(たとえば、トリプトン(Tryptone)、酵母エキス(Yeast Extract)など)はいずれもOXOID社から購入された。
2.培地の配合:液体LB(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1% NaCl)で、固体LBを調製する場合、液体LBに2%の寒天を入れればよい。
【0110】
実施例1 Cas12bタンパク質による2本鎖DNA(dsDNA)または1本鎖DNA(ssDNA)の標的の検出
1本鎖DNAまたは2本鎖DNA(target T1)を標的配列として使用し、異なる濃度のCas12bタンパク質およびsgRNAの検出に対する応答値を測定した。
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
【0111】
まず、pUC18をプラスミド骨格としてプラスミドpUC18-sgRNA-T1を構築し、当該プラスミドはpUC18にT7プロモーターおよびsgRNAを転写するための鋳型DNA配列を挿入したものである(注:当該鋳型から転写されるsgRNAは本研究においてT1と呼ばれる配列を標的とする)。方法は、pUC18プラスミドを鋳型とし、pUC18-1-FおよびpUC18-1-Rをプライマーとし、先にPCRを1回行い、T4 DNAリガーゼでPCR産物を連結し、DH10bに形質転換し、シークエンシングによって正確なクローンを得たが、それをpUC18-sgRNA-T1-preと呼ぶ。次に、pUC18-sgRNA-T1-preを鋳型とし、pUC18-2-FおよびpUC18-2-Rをプライマーとし、2回目のPCRを行い、同様な方法によってPCR産物を連結して形質転換し、最後にシークエンシングで正確なプラスミドpUC18-sgRNA-T1を得た。
【0112】
さらに、プラスミドpUC18-sgRNA-T1を鋳型とし、T7-crRNA-FおよびsgRNA-T1-Rをプライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNA(sgRNA-T1と名づける)を合成し、反応は37℃で一晩(12~16h)行われた。
【0113】
最後に、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0114】
2.標的DNAの調製
(1)標的DNAが1本鎖の場合、直接1本のオリゴヌクレオチドtarget DNA(T1-R)を合成し、中にsgRNAに認識される20 bpの標的配列(T1)が含まれる。
【0115】
(2)標的DNAが2本鎖の場合、直接2本の相補なオリゴヌクレオチド(T1-F;T1-R)を合成し、中にsgRNAに認識される20 bpの標的配列(T1)が含まれる。2本のオリゴヌクレオチドをアニーリングし、2本鎖のtarget DNAを得た。具体的に、マッチするオリゴヌクレオチド(2 μM)を1×PCR緩衝液(Transgen Biotech)において混合し、合計体積が20 μLで、さらに、まず、95℃で5分間変性させ、さらに95℃から20℃に、熱循環装置によって1℃/分で冷却するというアニーリング工程を行った。
【0116】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0117】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0118】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも50、100、250または500 nM)、蛍光消光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と0.5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48℃で30 min反応させた。その後、98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0119】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
結果は
図2に示すように、Cas12bとsgRNAの濃度が250 nMまたは500 nMの場合、dsDNAおよびssDNAは標的としていずれも高い蛍光強度があり、Cas12bとsgRNAの濃度が50 nMおよび100 nMに下がった場合、ssDNAは標的配列としてまだ高い蛍光強度があった。
【0120】
実施例2 HOLMES v2.0(LAMPにCas12bを合わせた)による応答感度の測定
蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1)が励起された蛍光強度を検出することにより、Cas12bがバイパス1本鎖DNA切断活性を果たすのに必要な標的DNA濃度、すなわち、Cas12bバイパス1本鎖DNA切断反応の感度を確認した。
【0121】
1.sgRNAの調製
まず、先に構築されたプラスミドpUC18-sgRNA-T1を鋳型とし、sgRNA-DNMT1-3-FおよびsgRNA-DNMT1-3-Rと名付けられたプライマーを設計し、PCRによってDNMT1-3を標的とするsgRNAになるようにsgRNAにおけるT1というtarget DNAの20個の塩基を変換し、もう一つのプラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を得た。
【0122】
さらに、プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-FおよびZLsgRNA-DNMT1-3-Rをプライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNA(sgRNA-DNMT1-3と名づける)を合成し、反応は37℃で一晩(12~16h)行われた。
【0123】
最後に、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNAを除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0124】
2.標的DNAの調製
標的DNAに対し、1つは増幅せず、直接Cas12bの反応系を入れる。方法は以下の通りである。
(1)標的DNAが1本鎖の場合、直接target DNAとして1本の長さ50 bpのオリゴヌクレオチド(DNMT1-3(TTC PAM)-R)を合成し、中にsgRNAに認識される20 bpの標的配列(DNMT1-3)が含まれる。
【0125】
(2)標的DNAが2本鎖の場合、直接2本の相補な長さ50 bpのオリゴヌクレオチド(DNMT1-3(TTC PAM)-F;DNMT1-3(TTC PAM)-R)を合成し、中にsgRNAに認識される20 bpの標的配列(DNMT1-3)が含まれる。2本のオリゴヌクレオチドをアニーリングし、2本鎖のtarget DNAを得た。具体的に、マッチするオリゴヌクレオチド(2 μM)を1×PCR緩衝液(Transgen Biotech)においてアニーリングし、合計体積が20 μLで、さらに、まず、95℃で5分間変性させ、さらに95℃から20℃に、熱循環装置によって1℃/分で冷却するというアニーリング工程を行った。
(3)1本鎖または2本鎖の標的DNAを2 μM、0.2 μM、0.02 μM、0.002 μM、0.0002 μMに勾配希釈して使用に備えた。
【0126】
もう1つは標的配列(DNMT1-3)を含む断片をプラスミドベクターに挿入し、LAMP反応によって増幅した。
(1)Transgen社のpEasy-Blunt Zero Cloning Kitを使用し、標的配列(DNMT1-3)を含む断片をpEasy-Blunt Zero Cloning Vectorに挿入し、シークエンシングによって検証した後、正確なクローンを得た。
【0127】
(2)LAMP増幅反応
上記プラスミドを鋳型とし、LAMP増幅反応を行い、鋳型をそれぞれ0、1 nM、0.1 nM入れ、等10倍勾配で10-11 nMに希釈した。各反応系の合計体積は25 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-DNM-FIPとLAMP-DNM-BIP、0.2 μMのLAMP-DNM-F3とLAMP-DNM-B3、0.4 μMのLAMP-DNM-LoopFとLAMP-DNM-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)であった。LAMP反応の手順は、65℃で30 min反応させた。LAMP完了後、85℃で10 min不活性化させた後、直接Cas12b反応に使用した。
【0128】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0129】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0130】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも250 nM)、1 μlのtarget DNAまたは1 μlのLAMP産物、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48℃で30 min反応させた。その後、98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0131】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
図5に示すように、Cas12bは濃度1 nMの1本鎖または2本鎖DNAを検出することができ、LAMP増幅を合わせると、Cas12b(すなわち、HOLMES v2.0方法)は濃度10
-8nMのDNAを検出することができたことがわかる(
図6)。
【0132】
実施例3 Cas12bによる一塩基突然変異標的の測定
1本鎖DNAまたは2本鎖DNAを標的配列とし、標的DNAに一塩基突然変異が存在する場合、Cas12bトランス切断の蛍光信号の変化を測定することにより、一塩基突然変異を検出した。
【0133】
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、そして異なる標的に相補的なガイド配列を含有するオリゴヌクレオチドを下流プライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)で全長sgRNA(そのうちのガイド配列の長さが20 ntである)または短縮sgRNA(そのうちのガイド配列の長さが20 nt未満である)を合成し、反応は37℃で一晩(12~16h)行われた。
【0134】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、DNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0135】
2.標的DNAの調製
(1)標的DNAが1本鎖の場合、直接target DNAとして1本の長さ50 bpのオリゴヌクレオチドを合成し、中にsgRNAに認識される標的配列が含まれる。
【0136】
(2)標的DNAが2本鎖の場合、直接2本の相補な長さ50 bpのオリゴヌクレオチドを合成し、中にsgRNAに認識される標的配列が含まれる。2本のオリゴヌクレオチドをアニーリングし、2本鎖のtarget DNAを得た。具体的に、マッチするオリゴヌクレオチド(1 μM)を1×PCR緩衝液(Transgen Biotech)においてアニーリングし、合計体積が20 μLで、さらに、まず、95℃で5分間変性させ、さらに95℃から20℃に、熱循環装置によって1℃/分で冷却するというアニーリング工程を行った。
【0137】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0138】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0139】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも250 nM)、target DNA(最終濃度50 nM)、蛍光消光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と0.5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48℃で30 min反応させた。その後、98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0140】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、さらにマイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
【0141】
まず、DNMT1-3という標的配列について、標的1本鎖DNAには、
図7に示すように、sgRNAガイド配列が20 ntの場合、1~12番目の塩基が突然変異しても、トランス切断による蛍光信号に対する影響が大きくなかった。sgRNAガイド配列が14 ntまたは15 ntの場合、対照を含め、いずれも蛍光値が低かった。sgRNAガイド配列が16 ntの場合、10~12番目が突然変異すると、その蛍光値が顕著に低下した。
【0142】
さらなる研究では、10~16番目の塩基の突然変異の蛍光値に対する影響が非常に顕著で、特に10~14番目が突然変異すると、ほとんど蛍光値が検出されなかったことが見出された(
図8)。次に、標的1本鎖DNAの異なる部位を異なる種類の塩基に突然変異させた場合、蛍光値に本質的に影響がなく、9番目がGに突然変異した場合のみ、蛍光値の変化が大きかった(
図9)。
【0143】
さらに、ほかの3種類の標的配列を測定し、異なる配列はある部位の突然変異に対して蛍光値の変化が異なったが、いずれも8~16番目で顕著に変化した部位が見つかり、たとえばrs5082の8、10、11、12番目、rs1467558の11番目、rs2952768の8~15番目であった(
図10)。
【0144】
標的2本鎖DNA(
図11に示すように)では、一塩基突然変異のトランス切断による蛍光信号に対する影響がssDNAと異なったことがわかる。DNMT1-3という標的配列を例とすると、ガイド配列が18~20 ntのsgRNAで、10~16番目の塩基突然変異に対して敏感であった。また、本実施例において、これらのsgRNAは10と16番目に最も敏感であった。
また、50℃、55℃、60℃、65℃の条件において、LAMPをCas12bと合わせて検出してワンステップ反応を実現させた(
図12)。
【0145】
実施例4 環境水における大腸菌などの微生物の測定
大腸菌gyrB遺伝子を検出目標とし、間接的に水中における大腸菌などの微生物を検出し、そして検出限界を測定した。
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、ZL-gyrB-crRNA2-Rを下流プライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37℃で一晩(12~16h)行われた。
【0146】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、DNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0147】
2.LAMP増幅反応
大腸菌MG1655をOD600が1.0になるまで培養すると、一部の菌液を100℃で15 min処理した。その後、LAMP増幅反応を行い、鋳型を異なる希釈度の菌液に入れ、OD600がそれぞれ0、5×10-3、5×10-4、そして5×10-9になるように希釈した。
【0148】
プレートに塗布して測定したところ、5×10-3では、約7000個の細菌であった。反応系の合計体積は25 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-gyrB-FIPとLAMP-gyrB-BIP、0.2 μMのLAMP-gyrB-F3とLAMP-gyrB-B3、0.4 μMのLAMP-gyrB-LoopFとLAMP-gyrB-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)であった。LAMP反応の手順は、65℃で30 min反応させた。LAMP完了後、85℃で10 min不活性化させた後、直接Cas12b反応に使用した。
【0149】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0150】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0151】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも250 nM)、1 μlのLAMP産物、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48℃で30 min反応させた。その後、98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0152】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
図13に示すように、LAMP増幅を合わせると、Cas12b(すなわち、HOLMES v2.0方法)の感度は数個の大腸菌の程度まで検出することができた(プレートに塗布して測定したところ、OD
600=5×10
-6では、約7個の大腸菌であった)。
【0153】
実施例5 唾液の性別測定
本実施例では、Y染色体の特有なsry遺伝子部位を測定標的とし、HOLMES v2.0によって唾液由来検体の性別を鑑定した。
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、ZL-sry-crRNA3-RおよびZLsgRNA-DNMT1-3-Rを下流プライマーとし、PCRでそれぞれ体外における転写に必要な2種類のDNA鋳型を増幅した。その後、PCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37 ℃で一晩(12~16h)行われた。
【0154】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、DNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
2.LAMP増幅反応
【0155】
それぞれ男性と女性の唾液を鋳型とし、LAMP増幅反応を行った。各反応系の合計体積は25 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-sry-FIPとLAMP-sry-BIP、0.2 μMのLAMP-sry-F3とLAMP-sry-B3、0.4 μMのLAMP-sry-LoopFとLAMP-sry-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)であった。LAMP反応の手順は、65℃で30 min反応させた。LAMP完了後、85℃で10 min不活性化させた後、直接Cas12b反応に使用した。
【0156】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0157】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0158】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも250 nM)、1 μlのLAMP産物、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と0.5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48℃で30 min反応させた。その後、98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0159】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
図14に示すように、LAMP増幅を合わせると、Cas12b(すなわち、HOLMES v2.0方法)は効率的に唾液検体に対してヒトの性別検出を行うことができた。
【0160】
実施例6 ヒトSNP測定
本実施例では、ヒトのrs5082部位に対して検出した。非対称PCRまたはLAMP等温増幅方法によって標的DNAを調製し、唾液由来検体のSNP型を鑑定した。
【0161】
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、そして異なる長さのrs5082部位に相補的なガイド配列を含有するオリゴヌクレオチドを下流プライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、PCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)で短縮sgRNAを合成し、反応は37 ℃で一晩(12~16h)行われた。非対称PCRによる標的DNAには、Cas12b反応時、ガイド配列が16 ntの短縮sgRNAを使用し、LAMP増幅による標的DNAには、Cas12b反応時、ガイド配列が18 ntの短縮sgRNAを使用した。
【0162】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0163】
2.増幅反応(非対称PCRまたはLAMP)
非対称PCR増幅反応:ヒト細胞ゲノムHEK293Tを鋳型とし、プライマーASP-primer、ASP-rs5082-F、ASP-rs5082-Rで非対称PCR増幅を行い(通常のPCRはASP-primerを入れない)、KOD FX酵素で増幅反応を行った。
【0164】
LAMP増幅反応:ヒト細胞ゲノムHEK293Tを鋳型とし、LAMP増幅反応を行った。各反応系の合計体積は25 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-rs5082-FIP-10PAM(対称はLAMP-rs5082-FIP)とLAMP-rs5082-BIP、0.2 μMのLAMP-rs5082-F3とLAMP-rs5082-B3、0.4 μMのLAMP-rs5082-LoopFとLAMP-rs5082-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)であった。LAMP反応の手順は、65℃で30 min反応させた。LAMP完了後、85℃で10 min不活性化させた後、直接Cas12b反応に使用した。プライマーLAMP-rs5082-FIP-10PAMにPAM配列が入っているため、増幅後のDNAはPAM配列を持つ。
【0165】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0166】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0167】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも500 nMで、LAMP増幅測定におけるCas12bは250 nM)、1 μlのtarget DNAまたは1 μlのLAMP産物、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48℃で60 min反応させた。その後、PCR装置において98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0168】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
図15に示すように、rs5082部位の周辺にPAM配列がないため、1本鎖DNAが生成する非対称PCRではSNP部位をより顕著に分別することができた。
【0169】
LAMP増幅と合わせると、rs5082部位の周辺にPAM配列がないため、検出部位をPAM配列に導入する必要があり、よりSNP部位を分別することができた(
図16)。
【0170】
実施例7 RNAウイルス測定
本実施例では、RNAウイルスJEV(Japanese encephalitis virus、日本脳炎ウイルス)を使用し、HOLMES v2.0によって検体におけるウイルス感染の有無を鑑定し、使用された部位はE453およびNS170で測定した。
【0171】
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、そして相応する標的に相補的なガイド配列を含有するオリゴヌクレオチドを下流プライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37 ℃で一晩(12~16h)行われた。
【0172】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0173】
2.LAMP増幅反応
JEVウイルスに感染した細胞液を鋳型とし、LAMP増幅反応を行った。各反応系の合計体積は25 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-E453-FIPとLAMP-E453-BIP、0.2 μMのLAMP-E453-F3とLAMP-E453-B3、0.4 μMのLAMP-E453-LoopFとLAMP-E453-LoopB(または1.6 μMのLAMP-NS170-FIPとLAMP-NS170-BIP、0.2 μMのLAMP-NS170-F3とLAMP-NS170-B3、0.4 μMのLAMP-NS170-LoopFとLAMP-NS170-LoopB)を使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)またはBst 3.0 DNAポリメラーゼ(NEB)であった。LAMP反応の手順は、65℃で30 min反応させた。LAMP完了後、85℃で10 min不活性化させた後、直接Cas12b反応に使用した。
【0174】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0175】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0176】
(3)Cas12b反応:20 μl反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも250 nM)、1 μlのLAMP産物、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μlの10×NEB Buffer 3.1と5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、48 ℃で30 min反応させた。その後、PCR装置において98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0177】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
図17に示すように、LAMP増幅を合わせると、Cas12b(すなわち、HOLMES v2.0方法)は高感度でJEVウイルスの有無を検出することができた。
【0178】
実施例8 微量DNAの相対定量検出(リアルタイムHOLMES方法)
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、そして標的に相補的なガイド配列を含有するオリゴヌクレオチドを下流プライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37 ℃で一晩(12~16h)行われた。
【0179】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0180】
2.ワンステップ法LAMP増幅-蛍光検出反応(リアルタイムPCR装置による)
異なる希釈濃度のDNMT1-3プラスミドを鋳型とし、LAMP増幅反応を行った。各反応系の合計体積は20 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-DNM-FIPとLAMP-DNM-BIP、0.2 μMのLAMP-DNM-F3とLAMP-DNM-B3、0.4 μMのLAMP-DNM-LoopFとLAMP-DNM-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)であった。sgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも500 nM)、蛍光プローブ(FAM-N12-Eclipse)(最終濃度500 nM)、および0.5 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)を入れた。均一に混合した後、蛍光定量装置においてリアルタイム蛍光検出を行い、反応条件は55℃で120 min反応させた。
3.結果分析
図18に示すように、異なる希釈濃度の標的DNAのリアルタイム蛍光測定値が示された。
蛍光値が600,000に達した時点をy軸に、濃度のlg絶対値をX軸にブロットし、直線に近い傾向線が得られた(
図19)。
上記結果から、本発明の方法は45 min内で、10
-1~10
-6 nMのDNAに対して正確な定量を行うことができたことがわかる。
【0181】
実施例9 微量DNAの絶対定量検出(デジタルHOLMES方法)
本実施例では、HOLMES方法でチップデジタルPCRを合わせ、一つの反応温度で、絶対定量検出を行った。
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-crRNA-Fを上流プライマーとし、そして異なる長さのrs5082部位に相補的なガイド配列を含有するオリゴヌクレオチドを下流プライマーとし、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μl PCR反応系に1 μl DpnI(10 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37 ℃で一晩(12~16h)行われた。
【0182】
その後、転写系にDNaseI(50 μl転写系に2 μl DNaseI(5 U/μl))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
2.ワンステップ法LAMP増幅-蛍光検出反応(jnmedsysのddPCR装置による)
【0183】
異なる希釈濃度のヒト293T細胞ゲノムを鋳型とし、絶対定量検出を行った。各反応系の合計体積は15 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-rs5082-FIP-10PAMとLAMP-rs5082-BIP、0.2 μMのLAMP-rs5082-F3とLAMP-rs5082-B3、0.4 μMのLAMP-rs5082-LoopFとLAMP-rs5082-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)であった。sgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも500 nM)、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1およびFAM-N12-Eclipse)(両者の最終濃度はいずれも500 nM)、および0.375 μlのRNA酵素阻害剤(40 U/μl)、0.75 μl JN溶液を入れた。
【0184】
均一に混合した後、スライダーで検体をチップに輸送し(チップはPCR管中にある)、反応系を分画した。その後、シーリングエンハンサー(Sealing Enhancer)装置に移して処理した。
【0185】
次に、235ulのブロッキング液を入れ、金属浴において反応させ、条件は55℃で120 min反応させた。0、60、90、120 minの時点で、View Jig装置において蛍光を検出した。
【0186】
3.結果分析
図20に示すように、120分間の反応を経た後、計算して鋳型1から51.75コピーが検出され、10倍希釈後の鋳型2では、計算して6.3コピーあり、鋳型が入っていない対照では、コピー数が検出されなかった。
【0187】
結果から、本発明のデジタルHOLMES法では、定量検出だけでなく、高感度で微検出系における1コピーの鋳型を正確に検出することができ、そして所要時間が大幅に短縮されたことがわかる。
【0188】
実施例10 メチル化部位の検出
本実施例では、NCBI検索により、コラーゲンα2(I)遺伝子(COL1A2)の一部のプロモーター領域(250bp)を選択し、13個のCpG部位(M1~M13)が含まれ、本実施例の標的遺伝子の検出配列とした(NCBI配列番号:AF004877.1)。コラーゲンα2(I)遺伝子(COL1A2)はコラーゲンをコードし、かつ腫瘍発生とある程度関連する。
【0189】
COL1A2(BSP)-Cにおいて、CpG部位はいずれもメチル化修飾され、亜硫酸水素塩変換処理(未メチル化のCがウラシルに変換する)およびPCR増幅を経た後、CpGにおけるメチル化されたC塩基はCのままであった。
【0190】
COL1A2(BSP)-Tにおいて、CpG部位はいずれもメチル化修飾されておらず、亜硫酸水素塩変換処理およびPCR増幅を経た後、CpGにおけるC塩基はTに変換した。
本発明のメチル化部位の検出方法の原理は、
図21を参照する。
【0191】
実験方法:
1.4種類の癌細胞系ゲノム(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)を抽出した。
2.ゲノムに対して亜硫酸水素塩変換処理を行い、M3部位を含むCOL1A2遺伝子のプロモーター領域を選び、相応するBSPプライマー(primer COL1A2(BSP)-F/R)を設計し、亜硫酸水素塩変換後の細胞ゲノムを鋳型としてPCR増幅を行い、ゲル回収で精製して産物を得、Target DNAとして後の検出に使用した。
3.標準曲線に使用される標的核酸の用意
【0192】
(1)プライマー(primer COL1A2-F/R)でSW480-gDNAから遺伝子断片COL1A2を増幅し、そしてそれをpClone007S Tベクター(TSINGKE、TSV-007S)に組み込み、さらにDH10bに形質転換し、37℃の条件において、LB培地に適切な抗生物質を入れて培養した後、プラスミドを抽出してシークエンシングし、最後にプラスミドpClone007-COL1A2を得た。
【0193】
(2)CpGメチル転移酵素(M.SssI)(M0226V、NEB)でプラスミドpClone007-COL1A2を、すべての5'-CG-3'配列におけるシトシンがメチル化されるように処理し、さらにプラスミドpClone007-COL1A2およびCpGメチル転移酵素で処理されたpClone007-COL1A2に対して亜硫酸水素塩変換処理を行い、非メチル化のシトシンをウラシルに変換させ、BSPプライマー対(primer COL1A2(BSP)-F/R)を設計してPCR増幅を行い、増幅断片をゲル回収で精製した後、pClone007S Tベクターに組み込み、プラスミドpClone007-COL1A2(BSP)-CおよびpClone007-COL1A2(BSP)-Tを構築することで、断片COL1A2(BSP)-C(Target C)およびCOL1A2(BSP)-T(Target T)を得た。
【0194】
4.メチル化検出
4種類の癌細胞系gDNA(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)をそれぞれEZ DNA methylation-directTM kit(D5021、Zymo Research)で処理して亜硫酸水素塩変換処理を行った後、BSPプライマー対引物(primer COL1A2(BSP)-F/R)で4種類の癌細胞系のCOL1A2(BSP)(250bp)遺伝子断片を増幅してゲル回収で精製した。
【0195】
亜硫酸水素塩クローニングシークエンシング法
pClone007S Tベクターに、上記4種類のCOL1A2(BSP)遺伝子断片を導入し、さらにDH10bに形質転換し、プラートから10個以上の陽性単一クローンを選んでシークエンシング分析に供し、メチル化率計算ツールQUantification tool for Methylation Analysis(QUMA)によってCOL1A2遺伝子における13個のCpG部位のメチル化度を計算した。
【0196】
亜硫酸水素塩直接シークエンシング法
上記4種類のCOL1A2(BSP)遺伝子断片をSangerシークエンシング法によって分析し、COL1A2遺伝子における13個のCpG部位のピーク値比C/(C+T)を計算することによってメチル化率を得た。
【0197】
亜硫酸水素塩NGSハイスループットシークエンシング法
上記4種類のCOL1A2(BSP)遺伝子断片に対してNGSハイスループットシークエンシングによるライブラリーの構築およびNGSハイスループットシークエンシングと分析を行い(中科普瑞生物技術有限公司によって完成された)、COL1A2遺伝子における13個のCpG部位のメチル化度を分析した。
【0198】
HOLMESv2システムによるメチル化検出
(1)CRISPR-Cas12bタンパク質の抽出
上海吐露港生物科技有限公司によってコドンが最適化されたAacCas12b全長遺伝子が合成され、そしてそれをベクターpET28aにクローニングし、大腸菌BL21(DE3)において発現させてN末端にHis標識付きの組み換えCas12bタンパク質が生成した。菌液のOD600が0.6に達した時点で、0.25 mMのイソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を入れて16℃で14~18 h誘導培養した後、遠心して菌を回収した。菌液を緩衝液A(50 mM Tris-HCl (pH 7.6)、150 mM NaCl、20 mMイミダゾールおよび1/500ベンゼンスルホニルクロリド(v/v))で懸濁させ、高圧ホモジナイザー(Avestin)によって分解させ、15,000 rpmで30 min遠心し、緩衝液Aで予めNiカラム(GE Healthcare)を平衡化させ、上清液をNiカラムに移した後、緩衝液B(50 mM Tris-HCl (pH 7.6), 200 mM NaClおよび30 mMイミダゾール)でNiカラムを溶離させ、緩衝液B(イミダゾール濃度が300 mMになるように調整した)で組み換えタンパク質を溶離させた。限外濾過法によってAacCas12bタンパク質を含む画分を収集し、5 mL程度に濃縮した。その後、緩衝液C(40 mM Tris-HCl (pH 7.6)、200 mM NaCl、2 mM DTTおよび5% グリセロール(v/v))で平衡化されたカラムHiLoad 16/600 Superdex 200 pg column(GE Healthcare)にかけ、AacCas12bタンパク質を含む画分を収集し、そして4 mg/mLに濃縮し、50%グリセロールを入れて-20℃で保存した。
【0199】
(2)sgRNAの調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-sgRNA-Fを上流プライマーとし、そして標的特異的下流プライマーを設計し、PCRでsgRNAの体外における転写に必要な鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μL PCR反応系に1 μL DpnI)を入れ、37℃水浴で30min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37℃で一晩(12~16h)行われた。最後に、転写系にDNaseI(50 μL転写系に2 μL DNaseI)を入れ、37℃水浴で30min置き、DNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キット(Zymo Research)でRNAを精製し、得られたsgRNAをsgRNA-DNMT1-3と名付けた。NanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
【0200】
(3)sgRNAのスクリーニング
COL1A2における各CpG部位の上下流にそれにマッチする異なる長さで、CpG部位が異なる位置に該当する複数のsgRNAを設計した。sgRNA(最終濃度は10 μM)をPCR装置においてアニーリングし、アニーリング手順は、75℃で5 min、そして1 minおきに1℃で、20℃まで下げた。アニーリング終了後、sgRNAをAacCas12bタンパク質(最終濃度5 μM)と等体積で混合して30℃で15~20 minインキュベートした。最終的に、20 μLのCas12b反応系を調製した(氷の上で操作した)。
Cas12b 250 nM
sgRNA 500 nM
標的DNA(COL1A2(BSP)-C/T) 100 nM
HEX-N12-BHQ1(蛍光標識) 500 nM
10 × NEB Buffer 3.1 2 μL
RRI (RNase阻害剤) 0.5 μL
RnaseフリーH2O 20 μLまで追加
【0201】
48℃水浴鍋において1h反応させ、20μLの反応系を96ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダーにおいて励起光の波長を535nmに、放出光の波長を556nmにし、蛍光値を測定し、標的DNA(COL1A2(BSP)-C/T)の蛍光値の差が最も大きい群の反応に使用されたsgRNAを最適なsgRNAとして選出した。
(4)HOLMESv2システムに基づいたメチル化検出
【0202】
断片COL1A2(BSP)-CおよびCOL1A2(BSP)-TをCOL1A2(BSP)-Cの占める比率がそれぞれ0%、10%、30%、50%になるように均一に混合し、メチル化検出の標準曲線の標的DNAとした。4種類の癌細胞系(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)由来の亜硫酸水素塩処理後の検体断片COL1A2(BSP)をそれぞれ断片COL1A2(BSP)-Tと等モル濃度で混合し、実検体のメチル化比率を検出する標的DNAとした。その後、さらにHOLMESv2システムにおいてsgRNA-COL1A2m3-C12-17でそれぞれCOL1A2プロモーター領域M3部位のメチル化標準曲線および4種類の癌細胞系(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)におけるM3部位のメチル化の比率を検出した。
【0203】
sgRNA(最終濃度は10 μM)をPCR装置においてアニーリングし、アニーリング手順は、75℃で5 min、そして1minおきに1℃で、20℃まで下げた。アニーリング終了後、sgRNAをAacCas12bタンパク質(最終濃度5 μM)と等体積で混合して30℃で15~20 minインキュベートした。最終的に、20 μLのCas12b反応系を調製した(氷の上で操作した)。
Cas12b 250 nM
sgRNA 500 nM
標的DNA(M3) 5 nM
FAM-N12-Eclipse(蛍光標識) 500 nM
断片処理済みのサケ精子DNA(sheared salmon sperm DNA) 500 ng
10 × NEB Buffer 3.1 2 μL
RRI(RNase阻害剤) 0.25 μL
RnaseフリーH2O 20 μLまで追加
【0204】
20μLの反応系を96ウェルプレートに移してリアルタイムPCR装置にセットし、プログラム設定は48℃で1h反応させ、そして2minおきに1回蛍光値を測定した。
【0205】
M3部位のメチル化標準曲線はそれぞれ30min、10min反応させた時点の蛍光値を縦座標Yと、COL1A2(BSP)-Cが占める比率0%、10%、30%、50%を横座標Xとし、その方程式のモデルはY=aX+bである。4種類の癌細胞系におけるCOL1A2(BSP)の濃度は標準曲線における標的DNAの1/2であるため、そのメチル化比率の計算モデルはX未知=2(Y未知-b)/aである。
【0206】
実験結果:
1.検出の模式図
メチル化CpG部位を含む遺伝子は亜硫酸水素塩変換処理後、遺伝子におけるすべての非メチル化部位のCGがUGに変換し、すべてのメチル化部位はCGのままである。この変換後の遺伝子を標的DNAとし、AacCas12bタンパク質、sgRNAと三元複合体を形成し、蛍光基と消光基を持つ1本鎖DNAプローブ系(すなわち、HOLMESv2システム)において、48℃で一定の時間反応させ、その蛍光値を検出する。検出部位がメチル化のものである場合、DNAプローブが発光し、かつ蛍光値が高い。検出部位が非メチル化のものである場合、DNAプローブが発光せず、蛍光値が低いか、ゼロである。
2.sgRNAのスクリーニング
【0207】
図22に示すように、各sgRNAと2つの標的(target-C、target-Tは、それぞれすべてのCpG部位のメチル化度が100%と0%である、亜硫酸水素塩処理後のCOL1A2断片を表す)のHOLMESv2-Cas12b反応系における蛍光値を比較すると、最適なsgRNAを選択することができる。中では、m3-C12-17、m4-C1-18、m4-C1-19、m4-C1-20、m5-C14-18、m6m7m8-C7-18、m6m7m8-19、m6m7m8-20、m9m10-C1-18などの9つのsgRNAは2つの標的(target-C、target-T)における蛍光値の差が顕著で、いずれもメチル化検出に使用することができる。本研究では、一つの単独部位のsgRNA(m3-C12-17)を選んで後のメチル化検出に使用したが、そのsgRNAは
図23に示す通りである。
【0208】
3.M3 CpG部位(COL1A2)のメチル化定量検出
断片COL1A2 (BSP)-CとCOL1A2 (BSP)-TをCOL1A2 (BSP)-Cの含有量が0%、10%、30%、50%の比率になるように混合し、sgRNA-COL1A2m3-C12-17でHOLMESv2システムにおいて30 min反応した時点における蛍光値を検出し、データを分析し、0%の蛍光値を零点として正規化し、M3 CpG部位(COL1A2)メチル化の定量標準曲線を作成し、毎回の検出に1回標準曲線を作成し、本発明者は3回検出し、毎回3つの重複を設け、その標準曲線の方程式はそれぞれy=758939x+9320.9(R
2=0.9975)、y=671675x+12415(R
2=0.9943)、y=645621x+8601.7(R
2=0.997)で、3回の標準曲線の線形関連性が非常に良く、R
2が0.99以上に達したため、HOLMESv2システムによって実検体における当該遺伝子部位の蛍光値を検出することで、相応するメチル化度を算出することができる(
図25)。
【0209】
COL1A2は異なる癌において異なるメチル化レベルを示す。HOLMESv2-Cas12bメチル化検出方法の実用性を検証するため、sgRNA-COL1A2m3-C12-17でHOLMESv2システムにおいて4種類の癌細胞(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)におけるM3 CpG部位(COL1A2)の30 min反応した時点における蛍光値を検出したが(
図24)、ここで、癌細胞の検出の標的遺伝子濃度が標準曲線の検出の標的遺伝子濃度の1/2で、上記標準曲線の方程式から、これらのメチル化度を算出したところ、それぞれ63.3%、81.3%、54.8%および77.1%であった。
【0210】
さらに、同時に現在幅広く使用されているメチル化検出方法によって上記4種類の癌細胞におけるCOL1A2遺伝子のメチル化レベルを検出し、本発明の方法と比べることにより、HOLMESv2-Cas12bメチル化検出方法の有効な実行性を検証した(
図26)。
【0211】
亜硫酸水素塩NGSハイスループットシークエンシング法によってメチル化に対して定量検出を行い、4種類の癌細胞(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)におけるM3 CpG部位(COL1A2)のメチル化率を検出したところ、65.26%、81.06%、48.27%および67.3%で、HOLMESv2-Cas12bの検出結果と一致する。
【0212】
亜硫酸水素塩直接シークエンシング法および亜硫酸水素塩クローニングシークエンシング法は現在メチル化に対して半定量検出しかできない。この2種類の方法は上記4種類の癌細胞(293T、SW480、NCI-N87、MCF-7)におけるM3 CpG部位(COL1A2)のメチル化に対する検出結果がそれぞれ63.2%、63.6%、30.4%、20%および92.3%(12/13)、100%(15/15)、78.6%(11/14)、71.4%(10/14)で、亜硫酸水素塩NGSハイスループットシークエンシング法の結果と比べ、差が大きく、前者が低く、後者が高かった。
上記結果から、本発明のHOLMESv2-Cas12b検出方法は定量結果が非常に正確で、かつ迅速で、便利であることが示された。
【0213】
実施例11 選択的スプライシングRNA、環状RNAの検出
Pre-mRNAの選択的スプライシングは高真核生物転写後調節の重要なポイントで、腫瘍の進展などヒト疾患において重要な作用を果たす。一部のpre-mRNAでは、加工して環状RNAになる。
【0214】
本実施例では、HOLMESv2によってスプライシング部位に対して特異的にmRNAスプライシングを標的として検出し、RT-LAMP増幅と合わせ、GAPDH遺伝子の成熟スプライシングmRNAを検出した(
図27)。また、crRNAの設計に類似する策略を使用し、本実施例では、また、HEK293TにおけるCdr1asの環状RNAの検出に成功した(
図27)。
【0215】
1.ガイドRNA(sgRNA)の調製
プラスミドpUC18-sgRNA-DNMT1-3を鋳型とし、T7-sgRNA-Fを上流プライマーとし、そして相応する標的に相補的なガイド配列を含有するオリゴヌクレオチドを下流プライマーとし(表2を参照する)、PCRで体外における転写に必要なDNA鋳型を増幅した。その後、このPCR産物にDpnI(50 μL PCR反応系に1 μL DpnI(10 U/μL))を入れ、37℃水浴で30 min置き、その中のプラスミドDNA鋳型を消化し、そしてゲルとPCR産物カラム回収キット(Promega)によってPCR産物を回収した。このPCR回収産物を鋳型とし、T7高収量転写キット(Thermo)でsgRNAを合成し、反応は37℃で一晩(12~16h)行われた。
【0216】
その後、転写系にDNaseI(50 μL転写系に2 μL DNaseI(5 U/μL))を入れ、37℃水浴で30 min置き、プラスミドDNA鋳型を除去し、そしてRNA精製・濃縮キットでRNAを精製し、さらにNanoDrop 2000Cで定量し、-80℃冷蔵庫で保存して使用に備えた。
2.LAMP増幅反応
【0217】
293T細胞ゲノムに対し、LAMP増幅反応を行った。各反応系の合計体積は25 μLで、プライマーとして1.6 μMのLAMP-FIPとLAMP-BIP、0.2 μMのLAMP-F3とLAMP-B3、0.4 μMのLAMP-LoopFとLAMP-LoopBを使用し、LAMP反応に使用されたキットはWarmStartR LAMP Kit(NEB)またはBst 3.0 DNAポリメラーゼ(NEB)であった。LAMP反応の手順は、65℃で30 min反応させた。LAMP完了後、85℃で10 min不活性化させた後、直接Cas12b反応に使用した。
【0218】
3.Cas12b反応
(1)sgRNAアニーリング:sgRNAを適切な濃度(5 μM)に希釈し、PCR装置においてアニーリングした。アニーリング工程:75℃で5 min変性させ、さらに75℃から20℃に、1℃/分で冷却した。
【0219】
(2)sgRNAとCas12bのインキュベート:アニーリングされたsgRNAを等モル濃度のCas12bと混合し、30℃で20~30 min置いた。
【0220】
(3)Cas12b反応:20 μL反応系において、工程(2)でインキュベートされたsgRNAとCas12bの混合物を入れ(両者の最終濃度はいずれも250 nM)、1 μLのLAMP産物、蛍光プローブ(HEX-N12-BHQ1、最終濃度500 nM)、および2 μLの10×NEB Buffer 3.1と5 μLのRNA酵素阻害剤(40 U/μL)を入れた。均一に混合した後、48℃で30min反応させた。その後、PCR装置において98℃で5 min加熱して不活性化させた。
【0221】
4.蛍光マイクロプレートリーダーによるCas12bのバイパス1本鎖DNA切断活性の検出
不活性化された20μLの反応液を96ウェルプレートに入れ、マイクロプレートリーダーによって検出した(励起光535 nm、放出光556 nm)。
図27に示すように、LAMP増幅を合わせると、Cas12b(すなわち、HOLMES v2.0方法)はRNAが所望のRNAスプライシング状況に合致するか、または環状RNAであるか、検出することができたことがわかる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】
【0222】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【配列表】