(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
G21K 5/04 20060101AFI20240207BHJP
H05H 5/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G21K5/04 E
H05H5/02 A
(21)【出願番号】P 2022005870
(22)【出願日】2022-01-18
【審査請求日】2023-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】今西 友晴
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-084260(JP,A)
【文献】特開2009-011477(JP,A)
【文献】中国実用新案第215248886(CN,U)
【文献】特開昭58-159657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/04
H05H 5/02
H02M 3/00
H02M 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置本体と、
前記電源装置本体を収容するタンクと、
前記タンクの内部に設けられる冷却器と、
前記タンクの内部に設けられる電動ファンと、
前記電動ファンと前記電源装置本体との間に設けられる磁気シールド部材と、
を備える、
電源装置。
【請求項2】
前記冷却器は、冷却フィンを有し、
前記磁気シールド部材は、前記電源装置本体と前記電動ファンとの間に位置する第1シールド部と、前記電源装置本体と前記冷却フィンとの間に位置する第2シールド部と、を有している、
請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源装置本体と前記電動ファンの対向方向と直交する方向を直交方向として、
前記冷却フィンは、前記電動ファンに対し前記直交方向の側方に位置している、
請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記タンクは、両端が塞がれた円筒状をなし、
前記電源装置本体は、前記タンクの中心軸線と重なる位置に配置され、
前記タンクの径方向において、前記電源装置本体の外側に前記磁気シールド部材が配置され、前記磁気シールド部材の外側に前記電動ファンが配置されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電動ファンは、前記径方向の内側から外側に送風するように配置され、
前記タンクの内部において、前記電動ファンの前記径方向の外側から、前記電源装置本体と前記電動ファンの対向方向と直交する直交方向における前記電動ファンの両側にかけて一対の送風流路がそれぞれ形成され、
前記冷却器は、複数の冷却フィンを有し、
前記冷却フィンは、前記一対の送風流路にそれぞれ設けられている、
請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
電子線照射装置が備える加速管に電力を供給する電源として用いられる、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子線照射装置などに用いられる電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電子線照射装置などに用いられる電源装置は、高電圧を発生させるための電源装置本体と、当該電源装置本体を収容するタンクとを備える。例えば、特許文献1に記載の電源装置では、タンクは内部に密閉空間を形成している。タンク内には、例えば電気絶縁性ガスが充填されている。同電源装置は、例えば電子を加速させて電子線を生じさせる加速管に高電圧を供給する。また、同電源装置は、タンク内の温度を低下させるための冷却機構を備えている。冷却機構は、タンクの外部に冷却器を備えている。タンク内のガスは、配管を通じて冷却器に流入する。冷却器で冷やされたガスは、再びタンク内に流入する。冷却機構によってタンク内の温度が適正に保たれることで、電源装置が安定して動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような電源装置は、タンクの外部に冷却器を備えるため、電源装置全体として大型化する問題がある。そこで、本発明者は、冷却器をタンクの内部に設ける構成を検討した。その場合、タンク内の限られたスペースに冷却器を設けることから、冷却器を小型にする必要がある。しかしながら、冷却器を小型にすると十分な冷却能力を得ることが難しくなるため、その点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、小型化しつつも冷却能力の向上を可能とした電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電源装置は、電源装置本体と、前記電源装置本体を収容するタンクと、前記タンクの内部に設けられる冷却器と、前記タンクの内部に設けられる電動ファンと、前記電動ファンと前記電源装置本体との間に設けられる磁気シールド部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、冷却器をタンクの内部に設けることで、電源装置の小型化を図ることができる。そして、タンクの内部に電動ファンを設けることで、タンク内において電源装置本体が発する熱によって高温となったガスを電動ファンで冷却器に送ることが可能となる。すなわち、電動ファンの駆動による強制対流によって、タンク内の温度を冷却器にて効率的に低下させることが可能となる。また、本構成では、電源装置本体から発せられる磁気を、磁気シールド部材によって電源装置本体と電動ファンとの間で遮蔽することが可能となる。これにより、電源装置本体から発せられる磁気による電動ファンの動作不良を防ぐことが可能となる。したがって、電動ファンによる冷却能力の向上効果を安定して発揮させることが可能となる。このように、本構成によれば、電源装置を小型化しつつも冷却能力を向上させることが可能となる。
【0008】
上記電源装置において、前記冷却器は、冷却フィンを有し、前記磁気シールド部材は、前記電源装置本体と前記電動ファンとの間に位置する第1シールド部と、前記電源装置本体と前記冷却フィンとの間に位置する第2シールド部と、を有している。
【0009】
この構成によれば、電源装置本体の磁気に対して、電動ファンが第1シールド部によってシールドされるとともに、冷却フィンが第2シールド部によってシールドされる。冷却フィンが第2シールド部によってシールドされることによって、冷却フィンが磁気を受けて発熱することを抑制可能となる。したがって、冷却器の冷却能力の低下を抑制することが可能となる。
【0010】
上記電源装置において、前記電源装置本体と前記電動ファンの対向方向と直交する方向を直交方向として、前記冷却フィンは、前記電動ファンに対し前記直交方向の側方に位置している。
【0011】
この構成によれば、磁気シールド部材において、第1シールド部と第2シールド部とが前記直交方向に並ぶ構成とすることが可能となる。したがって、第1シールド部と第2シールド部とを有する磁気シールド部材の形状を簡素化することが可能となる。
【0012】
上記電源装置において、前記タンクは、両端が塞がれた円筒状をなし、前記電源装置本体は、前記タンクの中心軸線と重なる位置に配置され、前記タンクの径方向において、前記電源装置本体の外側に前記磁気シールド部材が配置され、前記磁気シールド部材の外側に前記電動ファンが配置されている。
【0013】
この構成によれば、タンクの中心寄りの位置に配置される電源装置本体に対し、電動ファンがタンクの内周面寄りの位置に配置される。これにより、電動ファンの配置をタンク内のスペースを有効利用した配置とできる。
【0014】
上記電源装置において、前記電動ファンは、前記径方向の内側から外側に送風するように配置され、前記タンクの内部において、前記電動ファンの前記径方向の外側から、前記電源装置本体と前記電動ファンの対向方向と直交する直交方向における前記電動ファンの両側にかけて一対の送風流路がそれぞれ形成され、前記冷却器は、複数の冷却フィンを有し、前記冷却フィンは、前記一対の送風流路にそれぞれ設けられている。
【0015】
この構成によれば、冷却フィンが電動ファンの送風が通る一対の送風流路にそれぞれ設けられる。このため、電動ファンによって電源装置本体側から吸気されたガスを好適に冷却フィンに送風することが可能となる。その結果、冷却器による冷却効率の向上に寄与できる。
【0016】
上記電源装置は、電子線照射装置が備える加速管に電力を供給する電源として用いられる。
この構成によれば、電子線照射装置に用いられる電源装置において、小型化しつつも冷却能力を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電源装置は、小型化しつつも冷却能力を向上させる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態における電子線照射装置の概略構成図である。
【
図2】同形態の電源装置における圧力タンク内の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】同形態の電源装置における圧力タンク内の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】同形態の電源装置における圧力タンク内の構成を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図4における一部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電源装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。また、本明細書における「直交」は、厳密に直交の場合のみでなく、本実施形態における作用ならびに効果を奏する範囲内で概ね直交の場合も含まれる。
【0020】
[電子線照射装置の全体構成]
図1に示すように、本実施形態の電源装置1は、例えば電子線照射装置10に用いられる。電子線照射装置10は、例えば走査型の電子線照射装置である。電子線照射装置10は、熱電子の放出を行う例えばタングステン製のフィラメント11を備えている。フィラメント11は、電源装置本体31に含まれるフィラメント用電源12からの電力供給に基づく自身の加熱により電子を放出する。フィラメント11は、加速管13の上端側に設けられている。
【0021】
加速管13は、フィラメント11が配置される上端側が閉塞された筒状をなしている。加速管13は、自身の管軸方向に並設される複数の加速電極14を有している。加速電極14は、電源装置本体31に含まれる加速電極用電源15からの電力供給に基づき、フィラメント11から放出された電子を収束させつつ下方に向けて加速させるような電界を生じさせる。つまり、加速管13では、加速電極14にて生じる電界にて、管軸方向の下方に向く電子流、すなわち電子線eが生じるようになっている。加速管13は、下端部に走査管16が接続されている。加速管13と走査管16とは互いに内部空間17が連通し、その内部空間17において電子線eが加速管13から走査管16側に進む。
【0022】
走査管16は、上端側が幅狭で、下方に向かうほど拡開する形状をなしている。走査管16は、その幅狭の上端部に走査コイル18が設けられている。走査コイル18は、自身への通電に基づき、加速管13にて生成された電子線eの向きを偏向、すなわち電子線eの走査を行う。走査管16の下端部には例えば略長方形状の開口窓部19が設けられており、開口窓部19には略長方形状の窓箔20が取り付けられている。窓箔20は、電子線eを透過させつつも、開口窓部19を密閉させるものである。つまり、加速管13と走査管16とに跨がる内部空間17は、密閉空間にて構成されている。内部空間17は、例えば走査管16に接続された真空ポンプ21の駆動にて、少なくとも電子線eを生じさせる期間は真空状態とされる。
【0023】
上記したフィラメント用電源12、加速電極用電源15、走査コイル18及び真空ポンプ21は、制御装置22にて制御される。制御装置22は、フィラメント用電源12及び加速電極用電源15を通じた電子線eの出力調整、走査コイル18を通じた電子線eの走査制御、及び真空ポンプ21を通じた加速管13及び走査管16の内部空間17の真空調整等を行う。
【0024】
そして、開口窓部19に装着の窓箔20を介して出射される電子線eは、例えば搬送装置23により搬送方向xに搬送される被照射物24に対して照射される。なおこの場合、電子線照射装置10は、略長方形状の開口窓部19の長手方向が搬送装置23の搬送直交方向yに向くように配置される。搬送方向x及び搬送直交方向yを含めた電子線eの所定走査が行われて、開口窓部19に対応した略長方形状の照射エリアAの照射が行われる。電子線eの被照射物24への照射効果としては、例えば素材の性質改善や機能付加、殺菌・滅菌等が期待できる。
【0025】
[電源装置1の構成]
図2及び
図4に示すように、電源装置1は、電源装置本体31と、電源装置本体31を収容する圧力タンク32とを備えている。本実施形態の圧力タンク32には、例えば、加速管13が収容される。なお、圧力タンク32内に加速管13が設けられる場合、圧力タンク32は、加速管13から放出される電子線eを圧力タンク32の外部に出射するための図示しない出射口を有する。圧力タンク32の内部には、例えばSF6ガスなどの電気絶縁性ガスが充填される。圧力タンク32の内部の気圧は例えば0.5MPa程度の高気圧に設定される。圧力タンク32は、例えば、金属などの導体からなる。なお、圧力タンク32は、例えば、電気的に接地されている。
【0026】
なお、
図2は、圧力タンク32の内部構造を示す断面図であって、圧力タンク32を中心軸線Lに沿って切断した状態を示す図である。また、
図4は、圧力タンク32の内部構造を示す断面図であって、中心軸線Lと直交する断面形状を示す図である。
【0027】
図2に示すように、圧力タンク32は、中心軸線Lを中心とする筒状をなす周壁33と、中心軸線Lに沿う方向における周壁33の両端部にそれぞれ設けられる底壁34と、を備えている。すなわち、圧力タンク32は、筒状をなす周壁33の両端が一対の底壁34によって塞がれた形状をなしている。圧力タンク32は、例えば、周壁33を構成する部位と、一方の底壁34を有する部位と、他方の底壁34を有する部位の少なくとも3つの分割体から構成されている。
【0028】
図4に示すように、周壁33は、中心軸線Lを中心とする例えば円筒状をなしている。すなわち、中心軸線Lに直交する周壁33の断面形状が円形をなすため、圧力タンク32の内部の圧力に耐えるのに適している。電源装置本体31は、周壁33の内側に配置されている。また、電源装置本体31は、圧力タンク32の中心軸線Lと重なる位置に配置されている。
【0029】
[冷却ユニット40の構成]
電子線照射装置10は、冷却ユニット40を圧力タンク32の内部に備えている。冷却ユニット40は、冷却器41と、電動ファン42と、磁気シールド部材43とを有している。すなわち、冷却ユニット40が有する冷却器41、電動ファン42及び磁気シールド部材43は、圧力タンク32の内部に設けられている。また、圧力タンク32の中心軸線L寄りの位置に配置される電源装置本体31に対して、冷却ユニット40は、圧力タンク32の周壁33の内周面寄りの位置に配置される。
【0030】
図4に示すように、冷却器41は、複数の冷却フィン44と、冷却フィン44同士を連結する連結パイプ45とを有している。冷却フィン44は、例えばエロフィンチューブである。エロフィンチューブは、チューブの外周に帯状の放熱板が螺旋状に設けられた構成をなす。また、冷却フィン44は、例えば金属製である。冷却フィン44に用いる金属材料としては、例えばステンレスなどが挙げられる。
【0031】
冷却フィン44は、その長さ方向が中心軸線Lに沿うように設けられている。また、複数の冷却フィン44は、連結パイプ45によって直列的に接続されている。複数の冷却フィン44のうちの1つは、圧力タンク32の外部に延びる流入側パイプ46に接続されている。また、複数の冷却フィン44のうちの1つは、圧力タンク32の外部に延びる流出側パイプ47に接続されている。
【0032】
本実施形態の冷却器41は例えば水冷式である。流入側パイプ46から冷却フィン44に流入した水は、冷却フィン44で熱を受け取り、その後、流出側パイプ47から排出される。なお、冷却器41における冷却媒体は水に限定されるものではなく、他の流体に変更可能である。
【0033】
なお、連結パイプ45、流入側パイプ46及び流出側パイプ47は、例えばステンレスにて形成されている。連結パイプ45、流入側パイプ46及び流出側パイプ47を、ろう付が必要である銅で形成した場合、水漏れのおそれがある。その点、連結パイプ45、流入側パイプ46及び流出側パイプ47を、ろう付ではなく溶接が可能なステンレスとすることで水漏れのおそれを軽減することが可能となる。
【0034】
磁気シールド部材43は、電動ファン42と電源装置本体31との間に設けられている。磁気シールド部材43は、金属材料などの導電性材料にて形成されている。磁気シールド部材43を形成する金属材料としては、熱伝導率の高い例えば銅などを用いる。また、磁気シールド部材43は、例えば薄板状をなしている。
【0035】
磁気シールド部材43は、圧力タンク32の径方向において、電源装置本体31と対向している。なお、以下の説明では、圧力タンク32の径方向を単に「径方向」と称する場合がある。また、径方向において、電源装置本体31と磁気シールド部材43とが対向する方向を、対向方向D1と称する場合がある。
【0036】
圧力タンク32の径方向において、電源装置本体31、磁気シールド部材43及び電動ファン42は並んでいる。すなわち、電動ファン42は、磁気シールド部材43の径方向外側に配置されている。また、電動ファン42は、径方向において、電源装置本体31と冷却器41との間に設けられている。
【0037】
冷却ユニット40は、例えば、複数の電動ファン42を有している。複数の電動ファン42は、中心軸線Lに沿う方向に並んで設けられている。
図5に示すように、電動ファン42は、羽根部51を有するファン本体52と、ファン本体52を回転させる駆動源としてのモータ53とを備えている。電動ファン42の送風は、モータ53の駆動によるファン本体52の回転によりなされる。電動ファン42は、径方向の内側から外側に送風するように配置されている。すなわち、電動ファン42は、電源装置本体31側から吸気して、冷却器41側に送風する。
【0038】
図5に示すように、冷却ユニット40は、一対の送風流路61を有している。送風流路61は、電動ファン42の径方向の外側から、電源装置本体31と電動ファン42の対向方向D1と直交する直交方向D2における電動ファン42の両側にかけて形成されている。詳述すると、冷却ユニット40は、外壁部62と内壁部63とを有している。外壁部62及び内壁部63は、例えば金属からなる薄板状をなす。外壁部62と内壁部63との間に、送風流路61が構成される。また、内壁部63の径方向内側には、電動ファン42が配置される。内壁部63において、電動ファン42と径方向に対向する箇所には、開口64が形成されている。電動ファン42からの送風は、開口64を通じて送風流路61に流入する。
【0039】
外壁部62は、圧力タンク32に支持されている。詳しくは、外壁部62には連結片65が設けられている。連結片65は、周壁33の内周面から延びる第1固定部33aにねじ等によって固定される。これにより、外壁部62が圧力タンク32に固定される。
【0040】
中心軸線Lに沿う方向における外壁部62の両端には、側壁部66がそれぞれ設けられている。側壁部66は、中心軸線Lに沿う方向において、送風流路61及び電動ファン42が収容される空間を閉塞する。内壁部63及び電動ファン42は、側壁部66に支持されている。
【0041】
一対の送風流路61の内部には、複数の冷却フィン44が配置されている。各冷却フィン44は、例えば、側壁部66に支持されている。各送風流路61において、複数の冷却フィン44は、送風流路61に沿って並ぶよう配置されている。また、一対の送風流路61の各々に配置された各冷却フィン44は、電動ファン42に対し直交方向D2の側方に位置している。
【0042】
磁気シールド部材43は、第1シールド部71と第2シールド部72とを有している。第1シールド部71は、対向方向D1において電源装置本体31と電動ファン42との間に位置する。第2シールド部72は、対向方向D1において電源装置本体31と冷却フィン44との間に位置する。第1シールド部71及び第2シールド部72は、板状の磁気シールド部材43に含まれる。すなわち、磁気シールド部材43において、第1シールド部71と第2シールド部72とは直交方向D2に並んでいる。冷却フィン44が第2シールド部72によって磁気的にシールドされることによって、冷却フィン44が磁気を受けて発熱することが抑制される。
【0043】
図3は、圧力タンク32の内部構造を示す断面図であって、電源装置本体31と電動ファン42の対向方向D1から冷却ユニット40を見た図である。
図3に示すように、第1シールド部71は、複数の電動ファン42にそれぞれ対応する複数の吸気孔群73を有している。各吸気孔群73は、対向方向D1において各電動ファン42と対向するように設けられている。各吸気孔群73は、複数の吸気孔74からなる。各吸気孔74は、電源装置本体31側から電動ファン42側にかけて貫通する。また、各吸気孔74は、第1シールド部71を対向方向D1に貫通する。
【0044】
吸気孔74は、対向方向D1において電動ファン42の羽根部51と対向するように設けられている。また、吸気孔74は、電動ファン42の中心部に配置されるモータ53と対向方向D1に対向する位置には設けられていない。すなわち、第1シールド部71は、モータ53と対向方向D1に対向する位置において、吸気孔74を有しないモータシールド部75を有している。
【0045】
第2シールド部72は、冷却フィン44側から電源装置本体31側にかけて貫通する排気孔76を有している。排気孔76は、第2シールド部72を対向方向D1に貫通する。排気孔76は、例えば、中心軸線Lに沿って複数設けられている。なお、各吸気孔74及び各排気孔76のサイズは、磁気の周波数に基づいて算出される電磁場が浸透しないサイズに設定される。
【0046】
図3及び
図5に示すように、冷却ユニット40は、側方シールド部81を備えている。側方シールド部81は、直交方向D2における磁気シールド部材43の両側にそれぞれ設けられている。側方シールド部81は、例えば、磁気シールド部材43に対してねじ等によって固定されるとともに、圧力タンク32の周壁33の内周面から延びる第2固定部33bに固定されている。側方シールド部81は、磁気シールド部材43に対して直交方向D2の側方から回り込んで外壁部62に作用する磁気を遮蔽する。なお、側方シールド部81は、金属材料などの導電性材料にて形成されている。側方シールド部81を形成する金属材料としては、熱伝導率の高い例えば銅などを用いる。また、側方シールド部81は、例えば薄板状をなしている。
【0047】
側方シールド部81は、例えば、中心軸線Lに沿った方向において複数に分割されている。そして、中心軸線Lに沿った方向に分割された2つの側方シールド部81の間には、例えば、圧力タンク32の周壁33の内周面から延びる支持部33cが配置される。支持部33cは、例えば、電源装置本体31を支持するためのものである。
【0048】
次に、本実施形態の作用について説明する。
電動ファン42は、電源装置本体31の周囲のガスを第1シールド部71の吸気孔74から取り込んで一対の送風流路61に送風する。一対の送風流路61に送風されたガスは、各冷却フィン44によって冷却されて、第2シールド部72の排気孔76から電源装置本体31側に排出される。このようにして、磁気シールド部材43が第1シールド部71及び第2シールド部72を有する構成において、電源装置本体31の周囲のガスを好適に冷却することが可能となる。
【0049】
本実施形態の効果について説明する。
(1)冷却器41が圧力タンク32の内部に設けられることで、電子線照射装置10全体として小型化を図ることができる。また、電動ファン42が圧力タンク32の内部に設けられることで、圧力タンク32内において電源装置本体31が発する熱によって高温となったガスを電動ファン42で冷却器41に送ることが可能となる。すなわち、電動ファン42の駆動による強制対流によって、圧力タンク32内の温度を冷却器41にて効率的に低下させることが可能となる。また、本実施形態では、電源装置本体31から発せられる磁気を、磁気シールド部材43によって電源装置本体31と電動ファン42との間で遮蔽することが可能となる。これにより、電源装置本体31から発せられる磁気による電動ファン42の動作不良を防ぐことが可能となる。したがって、電動ファン42による冷却能力の向上効果を安定して発揮させることが可能となる。このように、本実施形態によれば、電子線照射装置10を小型化しつつも冷却能力を向上させることが可能となる。
【0050】
(2)磁気シールド部材43は、電源装置本体31と電動ファン42との間に位置する第1シールド部71と、電源装置本体31と冷却フィン44との間に位置する第2シールド部72と、を有している。この構成によれば、電源装置本体31の磁気に対して、電動ファン42が第1シールド部71によってシールドされるとともに、冷却フィン44が第2シールド部72によってシールドされる。冷却フィン44が第2シールド部72によってシールドされることによって、冷却フィン44が磁気を受けて発熱することを抑制可能となる。したがって、冷却器41の冷却能力の低下を抑制することが可能となる。
【0051】
(3)冷却フィン44は、電動ファン42に対し直交方向D2の側方に位置している。この構成によれば、磁気シールド部材43において、第1シールド部71と第2シールド部72とが直交方向D2に並ぶ構成とすることが可能となる。したがって、第1シールド部71と第2シールド部72とを有する磁気シールド部材43の形状を簡素化することが可能となる。
【0052】
(4)圧力タンク32は、両端が塞がれた円筒状をなしている。電源装置本体31は、圧力タンク32の中心軸線Lと重なる位置に配置されている。圧力タンク32の径方向において、電源装置本体31の外側に磁気シールド部材43が配置されている。そして、磁気シールド部材43の外側に電動ファン42が配置されている。この構成によれば、圧力タンク32の中心寄りの位置に配置される電源装置本体31に対し、電動ファン42が圧力タンク32の内周面寄りの位置に配置される。これにより、電動ファン42の配置を圧力タンク32内のスペースを有効利用した配置とできる。
【0053】
(5)電動ファン42は、径方向の内側から外側に送風するように配置されている。電子線照射装置10には、圧力タンク32の内部において、電動ファン42の径方向の外側から、電源装置本体31と電動ファン42の対向方向D1と直交する直交方向D2における電動ファン42の両側にかけて一対の送風流路61がそれぞれ形成されている。冷却器41は、複数の冷却フィン44を有している。そして、冷却フィン44は、一対の送風流路61にそれぞれ設けられている。この構成によれば、冷却フィン44が電動ファン42の送風が通る一対の送風流路61にそれぞれ設けられる。このため、電動ファン42によって電源装置本体31側から吸気されたガスを好適に冷却フィン44に送風することが可能となる。その結果、冷却器41による冷却効率の向上に寄与できる。
【0054】
(6)第1シールド部71は、モータ53と対向方向D1に対向する位置において、吸気孔74を有しないモータシールド部75を有している。これにより、電動ファン42におけるモータ53をモータシールド部75によって好適にシールドすることが可能となる。
【0055】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の磁気シールド部材43は、金属板などの板状の素材から形成されるが、これに特に限定されるものではない。例えば、磁気シールド部材43を、例えば金属素線が編み込まれてなるメッシュ部材としてもよい。
【0056】
・上記実施形態の側方シールド部81は、金属板などの板状の素材から形成されるが、これに特に限定されるものではない。例えば、側方シールド部81を、例えば金属素線が編み込まれてなるメッシュ部材としてもよい。
【0057】
・冷却器41における冷却フィン44の数は上記実施形態に限定されるものではなく、電子線照射装置10の構成に応じて適宜変更可能である。
・冷却ユニット40における電動ファン42の数は図面を含む上記実施形態に限定されるものではなく、電子線照射装置10の構成に応じて適宜変更可能である。
【0058】
・上記実施形態の磁気シールド部材43は、冷却フィン44をシールドする第2シールド部72を有するが、これに特に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の磁気シールド部材43から第2シールド部72を省略して、磁気シールド部材43が電動ファン42のみをシールドする構成としてもよい。
【0059】
・電源装置本体31、電動ファン42及び冷却フィン44の位置関係は上記実施形態に限定されるものではなく、電子線照射装置10の構成に応じて適宜変更可能である。
・上記実施形態の加速管13は圧力タンク32に収容されるが、これに特に限らず、加速管13が圧力タンク32とは別の収容体に収容される構成としてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、電源装置本体31及び冷却ユニット40が内部に収容されるタンクとして、内部の気圧を標準大気圧よりも大きな気圧にできる圧力タンク32を用いている。しかしながら、特にこれに限定されるものではなく、内部の気圧を標準大気圧よりも大きな気圧にすることができる機能を備えないタンクであってもよい。
【0061】
・上記実施形態では、電子線照射装置10に用いられる電源装置1に具体化しているが、電子線照射装置10以外の装置に用いられる電源装置に適用してもよい。
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1…電源装置
10…電子線照射装置
13…加速管
31…電源装置本体
32…圧力タンク(タンク)
41…冷却器
42…電動ファン
43…磁気シールド部材
44…冷却フィン
61…送風流路
71…第1シールド部
72…第2シールド部
D1…対向方向
D2…直交方向
L…中心軸線