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特許7431472スライドフリーな組織学的撮像法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】スライドフリーな組織学的撮像法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20240207BHJP
   G02B 21/16 20060101ALI20240207BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240207BHJP
   G02B 21/36 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
G06T1/00 290Z
G02B21/16
G06T7/00 612
G02B21/36
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022517980
(86)(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2020108454
(87)【国際公開番号】W WO2021052063
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】62/973,101
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506429570
【氏名又は名称】ザ ホンコン ユニヴァーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ツ ワイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カン レイ
(72)【発明者】
【氏名】リ シューフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ヘイ マン
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/154987(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/191697(WO,A1)
【文献】Bevin Lin, Shiro Urayama, Ramez M. G. Saroufeem, Dennis L. Matthews, Stavros G. Demos,Clinical Translation of UV Autofluorescence Microscopy towards Endomicroscopy for Early Detection of Cancer,Asia Communications and Photonics Conference and Exhibition,IEEE,2010年,pp.44-45,URL,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=5682843,DOI: 10.1109/ACP.2010.5682843
【文献】Jun-Yan Zhu, Taesung Park, Phillip Isola, Alexei A. Efros,Unpaired Image-to-Image Translation Using Cycle-Consistent Adversarial Networks,2017 IEEE International Conference on Computer Vision (ICCV),IEEE,2017年,pp.2242-2251,URL,https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=8237506,DOI: 10.1109/ICCV.2017.244
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00- 1/40
G06T 3/00- 5/50
G06T 7/00- 7/90
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色画像を生成するコンピュータ実装方法であって、
無標識試料の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像であってグレースケール画像である入力画像を受け取るステップと、
敵対的生成ネットワークを使用して前記入力画像を前記入力画像の擬似H&E染色画像に変換するステップと、
前記疑似H&E染色画像を出力するステップと、
を含み、
前記UV-AutoM画像の形態で受け取られる前記入力画像は、走査軌道に従って取り込まれた一連のスペックル照射画像から生成された推定UV-AutoM画像であり、前記推定UV-AutoM画像は、前記一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像と比べて高い解像度を有し
前記推定UV-AutoM画像は、
a)前記一連のスペックル照射画像の平均値を補間することに基づいて高解像度画像オブジェクトを初期化し、
b)前記一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像について、
i)前記高解像度画像オブジェクトを前記走査軌道内の特定の位置に計算的にシフトさせることによって推定スペックル照射画像を生成し、
ii)周波数領域における前記推定スペックル照射画像及び光学的伝達関数に基づいて、前記周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドを決定し、
iii)前記周波数領域における前記推定スペックル照射画像と、前記周波数領域におけるそれぞれの取り込まれたスペックル照射画像と、前記周波数領域における前記フィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドと、前記光学的伝達関数とに基づいて、前記周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像を決定し、
iv)前記更新済み推定スペックル照射画像と、空間領域における前記推定スペックル照射画像と、スペックルパターンとに基づいて前記高解像度画像オブジェクトを更新し、
v)前記更新済み推定スペックル照射画像と、前記推定スペックル照射画像と、前記高解像度画像オブジェクトとに基づいて前記スペックルパターンを更新し、
vi)前記高解像度画像オブジェクト及び前記スペックルパターンにネストロフ運動量加速度を適用し、
c)前記高解像度画像オブジェクトを再構成する収束が検出されるまでステップb)を反復的に実行する、
ことによって生成され、前記高解像度画像オブジェクトは、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が強化された前記推定UV-AutoM画像である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記敵対的生成ネットワークは、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークである、
請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記方法は、ペアになっていない入力画像及びH&E染色画像を使用して前記敵対的生成ネットワークを訓練するステップを含む、
請求項1又は2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記敵対的生成ネットワークは、
前記入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、
H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、
訓練セットのH&E画像と、前記第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、
前記訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と、前記第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、
を含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記第1及び第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークは、ResNetベースの又はU-Netベースの生成器ネットワークである、
請求項4に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記UV-PAM画像の形態で受け取られる前記入力画像は、
集束アセンブリのガルボミラースキャナを制御して紫外線を走査軌道に従って試料に集束させ、
少なくとも1つのトランスデューサが前記紫外線に反応して、前記試料によって放出された光音響波を受け取り、
前記光音響波に基づいて前記UV-PAM画像を生成する、
ことによって生成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
擬似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像を生成するように構成されたコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、実行可能命令を記憶した1又は2以上のメモリと、1又は2以上のプロセッサとを含み、前記実行可能命令は、前記プロセッサによって実行されると、
無標識試料の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像であってグレースケール画像である入力画像を受け取り、
敵対的生成ネットワークを使用して前記入力画像を前記入力画像の擬似H&E染色画像に変換し、
前記疑似H&E染色画像を出力する、
ことを前記1又は2以上のプロセッサに行わせ、
前記UV-AutoM画像の形態で受け取られる前記入力画像は、走査軌道に従って取り込まれた一連のスペックル照射画像から生成された推定UV-AutoM画像であり、前記推定UV-AutoM画像は、前記一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像と比べて高い解像度を有し、
前記UV-AutoM画像は、
a)前記一連のスペックル照射画像の平均値を補間することに基づいて高解像度画像オブジェクトを初期化し、
b)前記一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像について、
i)高解像度画像を前記走査軌道内の特定の位置に計算的にシフトさせることによって推定スペックル照射画像を生成し、
ii)周波数領域における前記推定スペックル照射画像及び光学的伝達関数に基づいて、前記周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドを決定し、
iii)前記周波数領域における前記推定スペックル照射画像と、前記周波数領域におけるそれぞれの取り込まれたスペックル照射画像と、前記周波数領域における前記フィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドと、前記光学的伝達関数とに基づいて、前記周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像を決定し、
iv)前記更新済み推定スペックル照射画像と、空間領域における前記推定スペックル照射画像と、スペックルパターンとに基づいて前記高解像度画像オブジェクトを更新し、
v)前記更新済み推定スペックル照射画像と、前記推定スペックル照射画像と、前記高解像度画像オブジェクトとに基づいて前記スペックルパターンを更新し、
vi)前記高解像度画像オブジェクト及び前記スペックルパターンにネストロフ運動量加速度を適用し、
c)前記高解像度画像オブジェクトを再構成する収束が検出されるまでステップb)を反復的に実行する、
ことによって前記1又は2以上のプロセッサよって生成され、前記高解像度画像オブジェクトは、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が強化された前記推定UV-AutoM画像である、
ことを特徴とするコンピュータシステム。
【請求項8】
前記敵対的生成ネットワークは、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークである、
請求項7に記載のコンピュータシステム。
【請求項9】
前記1又は2以上のプロセッサは、ペアになっていない入力グレースケール画像及びH&E染色画像を使用して前記敵対的生成ネットワークを訓練するように構成される、
請求項7又は8に記載のコンピュータシステム。
【請求項10】
前記敵対的生成ネットワークは、
前記入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、
H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、
訓練セットのH&E画像と、前記第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、
前記訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と、前記第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、
を含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される、請求項7から9のいずれか一項に記載のコンピュータシステム。
【請求項11】
前記第1及び第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークは、ResNetベースの又はU-Netベースの生成器ネットワークである、
請求項10に記載のコンピュータシステム。
【請求項12】
前記UV-PAM画像の形態で受け取られる前記入力画像は、
集束アセンブリのガルボミラースキャナを制御して紫外線を走査軌道に従って試料に集束させ、
少なくとも1つのトランスデューサが前記紫外線に反応して、前記試料によって放出された光音響波を受け取り、
前記光音響波に基づいて前記UV-PAM画像を生成する、
ことによって生成される、請求項7から11のいずれか1項に記載のコンピュータシステム。
【請求項13】
擬似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像を生成するようにコンピュータシステムを構成する実行可能命令を含む1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータシステムは1又は2以上のプロセッサを有し、前記実行可能命令は、前記プロセッサによって実行されると、
無標識試料の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像であってグレースケール画像である入力画像を受け取り、
敵対的生成ネットワークを使用して前記入力画像を前記入力画像の擬似H&E染色画像に変換し、
前記疑似H&E染色画像を出力する、
ように前記コンピュータシステムを構成し、
前記UV-AutoM画像の形態で受け取られる前記入力画像は、走査軌道に従って取り込まれた一連のスペックル照射画像から生成された推定UV-AutoM画像であり、前記推定UV-AutoM画像は、前記一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像と比べて高い解像度を有し、
前記UV-AutoM画像は、
a)前記一連のスペックル照射画像の平均値を補間することに基づいて高解像度画像オブジェクトを初期化し、
b)前記一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像について、
i)前記高解像度画像オブジェクトを前記走査軌道内の特定の位置に計算的にシフトさせることによって推定スペックル照射画像を生成し、
ii)周波数領域における前記推定スペックル照射画像及び光学的伝達関数に基づいて、前記周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドを決定し、
iii)前記周波数領域における前記推定スペックル照射画像と、前記周波数領域におけるそれぞれの取り込まれたスペックル照射画像と、前記周波数領域における前記フィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドと、前記光学的伝達関数とに基づいて、前記周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像を決定し、
iv)前記更新済み推定スペックル照射画像と、空間領域における前記推定スペックル照射画像と、スペックルパターンとに基づいて前記高解像度画像オブジェクトを更新し、
v)前記更新済み推定スペックル照射画像と、前記推定スペックル照射画像と、前記高解像度画像オブジェクトとに基づいて前記スペックルパターンを更新し、
vi)前記高解像度画像オブジェクト及び前記スペックルパターンにネストロフ運動量加速度を適用し、
c)前記高解像度画像オブジェクトを再構成する収束が検出されるまでステップb)を反復的に実行する、
ことによって前記1又は2以上のプロセッサよって生成され、前記高解像度画像オブジェクトは、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が強化された前記推定UV-AutoM画像である、
ことを特徴とする1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記敵対的生成ネットワークは、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークである、
請求項13に記載の1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記実行可能命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記コンピュータシステムを、ペアになっていない入力グレースケール画像及びH&E染色画像を使用して前記敵対的生成ネットワークを訓練するように構成する、
請求項13に記載の1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記敵対的生成ネットワークは、
前記入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、
H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、
訓練セットのH&E画像と、前記第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、
前記訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と、前記第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、
を含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される、請求項13から15のいずれか1項に記載の1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記第1及び第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークは、ResNetベースの又はU-Netベースの生成器ネットワークである、
請求項16に記載の1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
前記UV-PAM画像の形態で受け取られる前記入力画像は、
集束アセンブリのガルボミラースキャナを制御して紫外線を走査軌道に従って試料に集束させ、
少なくとも1つのトランスデューサが前記紫外線に反応して、前記試料によって放出された光音響波を受け取り、
前記光音響波に基づいて前記UV-PAM画像を生成する、
ことによって生成される、請求項13から17のいずれか1項に記載の1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、2019年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/973,101号に基づく優先権を主張するものであり、この文献の内容はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、スライドフリーな組織学的撮像法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
組織学的検査は、依然として悪性腫瘍の外科的マージン評価のためのゴールドスタンダードである。しかしながら、試料調製準備に時間及びコストが掛かる日常的な組織学的分析では、有毒な試薬廃棄物が発生し、小試験体(small specimens)が枯渇し、病理組織学的レポートの作成が数時間から数日間に長引いてしまう。この時間及びコストが掛かる手順としては、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)、その後の高品質な切片形成(sectioning)、染色、及びその後のスライドガラス上への試料取り付けが挙げられる。これらの避けられないステップには数日間を要し、従って正確な診断レポートの作成が数時間から数日間遅れてしまう。術中凍結切片形成は、物理的切片形成の前に新鮮な組織を凍結させることによってFFPE組織学のより迅速な代替案を提供するが、術中凍結切片形成でも準備及びターンアラウンドに20~30分掛かる。さらに、凍結切片試料には、特に脂質の多い組織を取り扱う際に特有の凍結アーチファクト(freezing artifacts)が発生し、これが術中の誤判断及び診断的落とし穴の原因となる。
【0004】
病理組織学での大きな需要は、未染色の新鮮な組織の迅速かつ非侵襲的な診断を達成する多くの努力を呼び起こしてきた。紫外線(UV)表面励起による顕微鏡法、共焦点レーザー走査顕微鏡法及びライトシート顕微鏡法を含む、非切片組織を撮像するためのいくつかの顕微鏡法は、従来のFFPE組織学における何百枚ものスライドガラスの準備に伴う困難な作業及び治療費を削減する。しかしながら、これらの方法は全て、分子特異性を高めるために特定の蛍光標識を必要とする。蛍光撮像は、細胞内の異なる生体分子の形態及び動態に関する情報を提供するために強力であることは疑う余地もないが、細胞代謝を妨げる外因性標識又は遺伝子導入の使用を招き、その後の臨床実施に悪影響を及ぼす恐れがある。さらに、蛍光標識法を用いた長期細胞モニタリングは、細胞への光毒性及び蛍光色素分子自体の光退色を引き起こす恐れがある。
【0005】
画像構造が特定の化学結合の固有の分子振動によって特徴付けられる誘導ラマン散乱(SRS)及びコヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)は、脂質の多い構造におけるC-Hストレッチ検査のための無標識な代替案を提供する。さらに、第2高調波発生(SHG)、第3高調波発生(THG)、及びこれらを組み合わせたモダリティを含む、非中心対称界面から発生する非線形プロセスは、コラーゲン及び微小管構造の本質的特性評価のための大きな可能性を示している。しかしながら、これらの方法は全て、検出感度及び分子コントラストを維持するために高出力超高速レーザーを必要とし、ほとんどの環境では容易に利用できないと考えられる。スペクトル共焦点反射顕微鏡法は、有髄軸索の無標識な高解像度インビボ撮像を可能にするが、分子特異性が低いため、波長可変能力を有する共焦点顕微鏡が依然として必要である。定量的位相撮像法も、未染色試料の位相変化の測定を通じて高速屈折率マッピングを可能にする大きな可能性を示す。しかしながら、これらの技術はほとんどが透過型システムに組み込まれ、試料の厚みによって厳しく制限される。また、光コヒーレンストモグラフィーなどの反射率ベースの撮像法は、ヒトの乳房組織を無標識で撮像するための術中診断ツールに姿を変えているが、細胞下解像度(subcellular resolution)を達成するように設計されておらず、標準的臨床病理学において望まれる分子標的のプロービングには適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0356897号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した又は本明細書で説明する1又は2以上の不利点に対処し、或いは少なくとも有用な代替案を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、擬似ヘマトキシリン・エオシン(H&E)染色画像を生成するコンピュータ実装方法であって、無標識試料の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像であってグレースケール画像である入力画像を受け取るステップと、敵対的生成ネットワークを使用して入力画像を入力画像の擬似H&E染色画像に変換するステップと、疑似H&E染色画像を出力するステップとを含む方法を提供する。
【0009】
いくつかの実装では、敵対的生成ネットワークが、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークである。
【0010】
いくつかの実装では、方法が、ペアになっていない入力画像及びH&E染色画像を使用して敵対的生成ネットワークを訓練するステップを含む。
【0011】
いくつかの実装では、敵対的生成ネットワークが、入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、訓練セットのH&E画像と、第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と、第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークとを含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される。
【0012】
いくつかの実装では、第1及び第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークが、ResNetベースの又はU-Netベースの生成器ネットワークである。
【0013】
いくつかの実装では、第1及び第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークが、PatchGAN識別器ネットワークである。
【0014】
いくつかの実装では、UV-PAM画像の形態で受け取られる入力画像が、集束アセンブリのガルボミラースキャナを制御して紫外線を走査軌道に従って試料に集束させ、少なくとも1つのトランスデューサが紫外線に反応して、試料によって放出された光音響波を受け取り、光音響波に基づいてUV-PAM画像を生成することによって生成される。
【0015】
いくつかの実装では、UV-AutoM画像の形態で受け取られる入力画像が、走査軌道に従って取り込まれた一連のスペックル照射画像から生成された推定UV-AutoM画像であり、推定UV-AutoM画像は、一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像と比べて高い解像度を有する。
【0016】
いくつかの実装では、推定UV-AutoM画像が、a)一連のスペックル照射画像の平均値を補間することに基づいて高解像度画像オブジェクトを初期化し、b)一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像について、i)高解像度画像オブジェクトを走査軌道内の特定の位置に計算的にシフトさせることによって推定スペックル照射画像を生成し、ii)周波数領域における推定スペックル照射画像及び光学的伝達関数に基づいて、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドを決定し、iii)周波数領域における推定スペックル照射画像と、周波数領域におけるそれぞれの取り込まれたスペックル照射画像と、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドと、光学的伝達関数とに基づいて、周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像を決定し、iv)更新済み推定スペックル照射画像と、空間領域における推定スペックル照射画像と、スペックルパターンとに基づいて高解像度オブジェクトを更新し、v)更新済み推定スペックル照射画像と、推定スペックル照射画像と、高解像度画像オブジェクトとに基づいてスペックルパターンを更新し、vi)高解像度画像オブジェクト及びスペックルパターンにネストロフ運動量加速度を適用し、c)高解像度画像オブジェクトを再構成する収束が検出されるまでステップb)を反復的に実行することによって生成され、高解像度画像オブジェクトは、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が強化された推定UV-AutoM画像である。
【0017】
第2の態様では、擬似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像を生成するように構成されたコンピュータシステムであって、コンピュータシステムが、実行可能命令を記憶した1又は2以上のメモリと、1又は2以上のプロセッサとを含み、実行可能命令が、プロセッサによって実行されると、無標識試料の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像であってグレースケール画像である入力画像を受け取り、敵対的生成ネットワークを使用して入力画像を入力画像の擬似H&E染色画像に変換し、疑似H&E染色画像を出力することを1又は2以上のプロセッサに行わせる、コンピュータシステムを提供する。
【0018】
いくつかの実装では、敵対的生成ネットワークが、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークである。
【0019】
いくつかの実装では、1又は2以上のプロセッサが、ペアになっていない入力グレースケール画像及びH&E染色画像を使用して敵対的生成ネットワークを訓練するように構成される。
【0020】
いくつかの実装形態では、敵対的生成ネットワークが、入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、訓練セットのH&E画像と、第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と、第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークとを含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークが、ResNetベースの又はU-Netベースの生成器ネットワークである。
【0022】
いくつかの実装では、第1及び第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークは、PatchGAN識別器ネットワークである。
【0023】
いくつかの実装では、UV-PAM画像の形態で受け取られる入力画像が、集束アセンブリのガルボミラースキャナを制御して紫外線を走査軌道に従って試料に集束させ、少なくとも1つのトランスデューサが紫外線に反応して、試料によって放出された光音響波を受け取り、光音響波に基づいてUV-PAM画像を生成することによって生成される。
【0024】
いくつかの実装では、UV-AutoM画像の形態で受け取られる入力画像が、走査軌道に従って取り込まれた一連のスペックル照射画像から生成された推定UV-AutoM画像であり、推定UV-AutoM画像が、一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像と比べて高い解像度を有する。
【0025】
いくつかの実装形態では、推定UV-AutoM画像が、a)一連のスペックル照射画像の平均値を補間することに基づいて高解像度画像オブジェクトを初期化し、b)一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像について、i)高解像度画像を走査軌道内の特定の位置に計算的にシフトさせることによって推定スペックル照射画像を生成し、ii)周波数領域における推定スペックル照射画像及び光学的伝達関数に基づいて、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドを決定し、iii)周波数領域における推定スペックル照射画像と、周波数領域におけるそれぞれの取り込まれたスペックル照射画像と、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドと、光学的伝達関数とに基づいて、周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像を決定し、iv)更新済み推定スペックル照射画像と、空間領域における推定スペックル照射画像と、スペックルパターンとに基づいて高解像度オブジェクトを更新し、v)更新済み推定スペックル照射画像と、推定スペックル照射画像と、高解像度画像オブジェクトとに基づいてスペックルパターンを更新し、vi)高解像度画像オブジェクト及びスペックルパターンにネストロフ運動量加速度を適用し、c)高解像度画像オブジェクトを再構成する収束が検出されるまでステップb)を反復的に実行することによって生成され、高解像度画像オブジェクトが、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が強化された推定UV-AutoM画像である。
【0026】
第3の態様では、擬似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像を生成するようにコンピュータシステムを構成する実行可能命令を含む1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体であって、コンピュータシステムが1又は2以上のプロセッサを有し、実行可能命令が、プロセッサによって実行されると、無標識試料の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像であってグレースケール画像である入力画像を受け取り、敵対的生成ネットワークを使用して入力画像を入力画像の擬似H&E染色画像に変換し、疑似H&E染色画像を出力するようにコンピュータシステムを構成する、1又は2以上の非一時的コンピュータ可読媒体を提供する。
【0027】
いくつかの実装では、敵対的生成ネットワークが、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークである。
【0028】
いくつかの実装では、実行可能命令が、プロセッサによって実行されると、コンピュータシステムを、ペアになっていない入力グレースケール画像及びH&E染色画像を使用して敵対的生成ネットワークを訓練するように構成する。
【0029】
いくつかの実装では、敵対的生成ネットワークが、入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークと、訓練セットのH&E画像と、第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器深層畳み込みニューラルネットワークと、訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と、第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークとを含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークが、ResNetベースの又はU-Netベースの生成器ネットワークである。
【0031】
いくつかの実装形態では、第1及び第2の識別器深層畳み込みニューラルネットワークが、PatchGAN識別器ネットワークである。
【0032】
いくつかの実装では、UV-PAM画像の形態で受け取られる入力画像が、集束アセンブリのガルボミラースキャナを制御して紫外線を走査軌道に従って試料に集束させ、少なくとも1つのトランスデューサが紫外線に反応して、試料によって放出された光音響波を受け取り、光音響波に基づいてUV-PAM画像を生成することによって生成される。
【0033】
いくつかの実装では、UV-AutoM画像の形態で受け取られる入力画像が、走査軌道に従って取り込まれた一連のスペックル照射画像から生成された推定UV-AutoM画像であり、推定UV-AutoM画像が、一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像と比べて高い解像度を有する。
【0034】
いくつかの実装形態では、UV-AutoM画像が、a)一連のスペックル照射画像の平均値を補間することに基づいて高解像度画像オブジェクトを初期化し、b)一連のスペックル照射画像の各スペックル照射画像について、i)高解像度画像を走査軌道内の特定の位置に計算的にシフトさせることによって推定スペックル照射画像を生成し、ii)周波数領域における推定スペックル照射画像及び光学的伝達関数に基づいて、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドを決定し、iii)周波数領域における推定スペックル照射画像と、周波数領域におけるそれぞれの取り込まれたスペックル照射画像と、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドと、光学的伝達関数とに基づいて、周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像を決定し、iv)更新済み推定スペックル照射画像と、空間領域における推定スペックル照射画像と、スペックルパターンとに基づいて高解像度オブジェクトを更新し、v)更新済み推定スペックル照射画像と、推定スペックル照射画像と、高解像度画像オブジェクトとに基づいてスペックルパターンを更新し、vi)高解像度画像オブジェクト及びスペックルパターンにネストロフ運動量加速度を適用し、c)高解像度画像オブジェクトを再構成する収束が検出されるまでステップb)を反復的に実行することによって1又は2以上のプロセッサよって生成され、高解像度画像オブジェクトは、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が強化された推定UV-AutoM画像である。
【0035】
実施形態の説明全体を通じて他の態様及び実施形態が理解されるであろう。
【0036】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態をほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1A】本明細書で説明する様々な構成が実装された汎用コンピュータシステム例の概略図である。
図1B】本明細書で説明する様々な構成が実装された汎用コンピュータシステム例の概略図である。
図2A】本明細書で説明する様々な構成が実装された埋め込みシステム例の概略図である。
図2B】本明細書で説明する様々な構成が実装された埋め込みシステム例の概略図である。
図3】UV-PAMシステム例の概略図である。
図4A】白色破線に沿ったプロファイルが平均化のために抽出される、直径200nmの金ナノ粒子のUV-PAM画像例である。
図4B】ガウスフィッティング(実線)のFWHM(半値全幅)が図3のUV-PAMシステムの横方向分解能を表す約613nmである、4つの金ナノ粒子の線プロファイルを平均化した例である。
図4C】Aライン信号の包絡線のFWHMが図3のUV-PAMシステムの軸方向分解能を表す58μmに相当する38nsである、図4Aの金ナノ粒子の中心位置のAライン信号の例である。
図5A】UV-AutoMシステム例の概略図である。
図5B】一連の低解像度スペックル照射画像を通じてUV-AutoM画像を再構成するコンピュータ実装方法例を表すフローチャートである。
図5C】一連の低解像度スペックル照射画像を通じてUV-AutoM画像を再構成するコンピュータ実装方法例を表すフローチャートである。
図5D】一連の低解像度スペックル照射画像を通じてUV-AutoM画像を再構成するコンピュータ実装方法を表す疑似コードの例である。
図6】UV-AutoM画像を再構成するSI再構成方法及びシステムの例のグラフィック表現を示す図である。
図7A】4X/0.1NAの対物レンズによって取り込まれた低解像度UV-AutoM画像の例である。
図7B図5B及び図5Cの方法によって再構成された高解像度UV-AutoM画像の例である。
図7C図7A及び図7Bにおいてそれぞれマークされる線700及び710の線プロファイルである。
図8A】4X/0.1NA対物レンズによって取り込まれた粗い表面を有する葉試料のUV-AutoM画像の例を示す図である。
図8B】4X/0.1NA対物レンズによって取り込まれた粗い表面を有する別の葉試料のUV-AutoM画像の例を示す図である。
図8C図5B及び図5Cの方法を使用して複数の低解像度スペックル照射画像から再構成された高解像度UV-AutoM画像の例を示す図である。
図8D図5B及び図5Cの方法を使用して複数の低解像度スペックル照射画像から再構成された高解像度UV-AutoM画像の例を示す図である。
図8E】10X/0.3NA対物レンズを使用して取り込まれた図8A及び図8Bの2つの葉試料の高解像度参照画像を示す図である。
図8F】10X/0.3NA対物レンズを使用して取り込まれた図8A及び図8Bの2つの葉試料の高解像度参照画像を示す図である。
図9A】500μmのスケールバーのマウス脳全体(脱パラフィン処理後のFFPE切片、厚さ4μm)のUV-AutoM画像である。
図9B】50μmのスケールバーの図9Aのボックス910の拡大図である。
図9C】50μmのスケールバーの図9Aのボックス920の拡大図である。
図9D】50μmのスケールバーの図9Bに対応する明視野H&E染色画像である。
図9E】50μmのスケールバーの図9Cに対応する明視野H&E染色画像である。
図10A】マウス脳の上面図の画像例である。
図10B図10Aのマウス脳のA-A線を通じた切断面を示す再構成UV-AutoM画像の例である。
図10C図10Aのマウス脳のB-B線を通じた切断面を示す再構成UV-AutoM画像の例である。
図10D図10Cの再構成UV-AutoM画像に示されるマウス脳の機能領域の高スループットサブビューを示す図である。
図10E図10Cの再構成UV-AutoM画像に示されるマウス脳の機能領域の高スループットサブビューを示す図である。
図10F図10Cの再構成UV-AutoM画像に示されるマウス脳の機能領域の高スループットサブビューを示す図である。
図10G図10Cの再構成UV-AutoM画像に示されるマウス脳の機能領域の高スループットサブビューを示す図である。
図10H図10Cの再構成UV-AutoM画像に示されるマウス脳の機能領域の高スループットサブビューを示す図である。
図11A】疑似染色組織画像(すなわち、仮想染色組織画像)を生成するコンピュータ実装システム例を表す機能ブロック図である。
図11B】疑似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像を生成するコンピュータ実施方法例1150を表すフローチャートである。
図12】Cycle-GANの順方向サイクル及び逆方向サイクルの詳細なワークフローを表す機能ブロック図である。
図13図11のCycle-GANの生成器例を表す機能ブロック図である。
図14A図11図13に従って構成された訓練済みCycle-GANへの入力として提供される、図3のシステムを使用して生成されたマウス脳スライスのグレースケールUV-PAM画像の例である。
図14B】グレースケールUV-PAM画像を入力画像として使用してCycle-GANによって出力画像として生成された仮想染色組織画像の例である。
図14C】H&E染色後に明視野顕微鏡を使用して取得された図14Aに示す同じ試料の組織像の例である。
図15A】脱パラフィン処理された厚さ7μmのFFPEマウス脳切片のUV-AutoM画像の例である。
図15B】GANベースのネットワークを利用した図15AのUV-AutoM画像の仮想染色バージョンである。
図15C図15Aに関連して画像化したマウス脳切片の明視野H&E画像である。
図16A】厚さ100μmのマウス脳試料を示す、図5B及び図5Cの方法を使用して生成されたSI再構成高解像度UV-AutoM画像である。
図16B】厚さ200μmのマウス脳試料を示す、図5B及び図5Cの方法を使用して生成されたSI再構成高解像度UV-AutoM画像である。
図16C図11図13のコンピュータ実装方法及びシステムを使用して生成された、仮想的に染色されたH&E画像の例である。
図16D図11図13のコンピュータ実装方法及びシステムを使用して生成された、仮想的に染色されたH&E画像の例である。
図17A図3のシステムを使用して生成された、脱パラフィン処理された厚さ7μmのFFPEマウス脳試料からの海馬領域の無標識UV-PAM画像の例を示す図である。
図17B図17Aに示す海馬領域のUV-AutoM画像の例を示す図である。
図17C図17A及び図17Bに示すマウス脳試料に対応する明視野H&E染色画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
添付図面のうちのいずれか1つ又は2つ以上において同じ参照数字を有するステップ及び/又は特徴を参照している場合、本明細書におけるこれらのステップ及び/又は特徴は、反対の意思が見られない限り同じ機能又は動作を有する。
【0039】
なお、「背景技術」の節に含まれる説明、及び先行技術の構成に関連する上記の説明は、それぞれの公表物及び/又は使用を通じて公知となった文書又は装置の説明に関する。これについては、このような文書又は装置が当業における共通の一般知識の一部を何らかの形で形成することを本発明者(ら)又は特許出願人が表すものであると解釈すべきではない。
【0040】
図1A及び図1Bに、本明細書で説明する様々な構成が実装された汎用コンピュータシステム100の例の概略図を示す。
【0041】
図1Aに示すように、コンピュータシステム100は、コンピュータモジュール101と、キーボード102、マウスポインタデバイス103、スキャナ126、カメラ127及びマイク180などの入力装置と、プリンタ115、ディスプレイ装置114及びスピーカ117などの出力装置とを含む。コンピュータモジュール101は、接続部121を介して通信ネットワーク120と通信するために外部変調復調器(モデム)トランシーバ装置116を使用することができる。通信ネットワーク120は、インターネット、携帯電話通信網又はプライベートWANなどのワイドエリアネットワーク(WAN)とすることができる。接続部121が電話回線である場合、モデム116は従来の「ダイアルアップ」モデムとすることができる。或いは、接続部121が大容量(例えば、ケーブル)接続部である場合、モデム116はブロードバンドモデムとすることができる。また、通信ネットワーク120との無線接続には無線モデムを使用することもできる。
【0042】
通常、コンピュータモジュール101は、少なくとも1つのプロセッサユニット105及びメモリユニット106を含む。例えば、メモリユニット106は、半導体ランダムアクセスメモリ(RAM)及び半導体リードオンリメモリ(ROM)を有することができる。コンピュータモジュール101は、ビデオディスプレイ114、スピーカ117及びマイク180に結合するオーディオビデオインターフェイス107と、キーボード102、マウス103、スキャナ126、カメラ127及び任意にジョイスティック又はその他のヒューマンインターフェイス装置(図示せず)又はプロジェクタに結合するI/Oインターフェイス113と、外部モデム116及びプリンタ115のためのインターフェイス108とを含む複数の入力/出力(I/O)インターフェイスも含む。いくつかの実装では、モデム116をコンピュータモジュール101内、例えばインターフェイス108内に組み込むことができる。コンピュータモジュール101は、ローカルエリアネットワーク(LAN)として知られているローカルエリア通信ネットワーク122に接続部123を介してコンピュータシステム100を結合可能にするローカルネットワークインターフェイス111も有する。図1Aに示すように、ローカル通信ネットワーク122は、通常はいわゆる「ファイアウォール」装置又は同様の機能の装置を含む接続部124を介してワイドエリアネットワーク120に結合することもできる。ローカルネットワークインターフェイス111は、イーサネット回路カード、Bluetooth(登録商標)無線構成、又はIEEE802.11無線構成を含むことができるが、インターフェイス111については他の数多くのタイプのインターフェイスを実施することができる。
【0043】
I/Oインターフェイス108及び113は、シリアル接続及びパラレル接続の一方又は両方を提供することができ、通常、前者はユニバーサルシリアルバス(USB)標準に従って実装され、対応するUSBコネクタ(図示せず)を有する。典型的にはハードディスクドライブ(HDD)110を含む記憶装置109も設けられる。フロッピーディスクドライブ及び磁気テープドライブ(図示せず)などの他の記憶装置を使用することもできる。通常は、不揮発性データソースとして機能する光ディスクドライブ112が設けられる。例えば、システム100への適切なデータ源として、光ディスク(例えば、CD-ROM、DVD、Blu-ray Disc(商標))、USB-RAM、ポータブル、外付けハードドライブ及びフロッピーディスクなどのポータブルメモリデバイスを使用することができる。
【0044】
通常、コンピュータモジュール101のコンポーネント105~113は、相互接続されたバス104を介して、当業者に周知のコンピュータシステム100の従来の動作モードをもたらす形で通信する。例えば、プロセッサ105は、接続部118を使用してシステムバス104に結合される。同様に、メモリ106及び光ディスクドライブ112は、接続部119によってシステムバス104に結合される。説明する構成を実施できるコンピュータの例としては、IBM-PC及び互換機、Sun社のSparcstation、Apple社のMac(商標)又は同様のコンピュータシステムが挙げられる。
【0045】
本明細書で説明する方法は、コンピュータシステム100を使用して実装することができ、本明細書で説明するプロセスは、コンピュータシステム100内で実行可能な1又は2以上のソフトウェアアプリケーションプログラム133として実装することができる。とりわけ、本明細書で説明する方法のステップは、コンピュータシステム100内で実行されるソフトウェア133内の命令131(図1Bを参照)によって達成される。ソフトウェア命令131は、それぞれが1又は2以上の特定のタスクを実行する1又は2以上のコードモジュールとして形成することができる。
【0046】
ソフトウェアは、例えば後述する記憶装置を含むコンピュータ可読媒体に記憶することができる。ソフトウェアは、コンピュータ可読媒体からコンピュータシステム100にロードされた後にコンピュータシステム100によって実行される。このようなソフトウェア又はコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読媒体はコンピュータプログラム製品である。コンピュータシステム100内でコンピュータプログラム製品を使用することで、書き込み動作を検出及び/又は共有する有利な装置が実現されることが好ましい。
【0047】
通常、ソフトウェア133はHDD110又はメモリ106に記憶される。ソフトウェアは、コンピュータ可読媒体からコンピュータシステム100にロードされ、コンピュータシステム100によって実行される。従って、例えば、ソフトウェア133は、光ディスクドライブ112によって読み取られる光学的に読み取り可能なディスク記憶媒体(例えば、CD-ROM)125に記憶することができる。このようなソフトウェア又はコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読媒体はコンピュータプログラム製品である。
【0048】
いくつかの事例では、アプリケーションプログラム133を1又は2以上のCD-ROM125上に符号化してユーザに供給して対応するドライブ112を介して読み取ることができ、或いはユーザがネットワーク120又は122から読み取ることもできる。さらに、ソフトウェアは、他のコンピュータ可読媒体からコンピュータシステム100にロードすることもできる。コンピュータ可読記憶媒体は、記録された命令及び/又はデータを実行及び/又は処理のためにコンピュータシステム100に提供するいずれかの非一時的有形記憶媒体を意味する。このような記憶媒体の例としては、コンピュータモジュール101の内部に存在するか、それとも外部に存在するかにかかわらず、フロッピーディスク、磁気テープ、CD-ROM、DVD、Blu-ray(商標)ディスク、ハードディスクドライブ、ROM又は集積回路、USBメモリ、光磁気ディスク、又はPCMCIAカードなどのコンピュータ可読カードなどが挙げられる。同様にコンピュータモジュール101にソフトウェア、アプリケーションプログラム、命令及び/又はデータを提供することに関与できる一時的又は非有形コンピュータ可読伝送媒体の例としては、無線又は赤外線伝送チャネル、別のコンピュータ又はネットワーク装置へのネットワーク接続、並びに電子メール送信及びウェブサイトなどに記録された情報を含むインターネット又はイントラネットなどが挙げられる。
【0049】
上述したアプリケーションプログラム133及び対応するコードモジュールの第2の部分は、ディスプレイ114上にレンダリング又は別様に表現される1又は2以上のグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を実装するように実行することができる。コンピュータシステム100及びアプリケーションのユーザは、通常はキーボード102及びマウス103の操作を通じて機能的に適合可能な形でインターフェイスを操作して、(単複の)GUIに関連するアプリケーションに制御コマンド及び/又は入力を提供することができる。スピーカ117を介して出力されるスピーチプロンプト及びマイク180を介して入力されるユーザ音声コマンドを利用するオーディオインターフェイスなどの、他の形態の機能的に適合可能なユーザインターフェイスを実装することもできる。
【0050】
図1Bは、プロセッサ105及び「メモリ」134の詳細な概略的ブロック図である。メモリ134は、図1Aのコンピュータモジュール101がアクセスできる(HDD109及び半導体メモリ106を含む)全てのメモリモジュールの論理的集約を表す。
【0051】
コンピュータモジュール101の最初の電源投入時には、パワーオンセルフテスト(POST)プログラム150が実行される。通常、POSTプログラム150は、図1Aの半導体メモリ106のROM149に記憶される。ソフトウェアを記憶するROM149などのハードウェア装置はファームウェアと呼ばれることもある。POSTプログラム150は、コンピュータモジュール101内のハードウェアを検査して正しい機能を確実にし、典型的にはプロセッサ105、メモリ134(109、106)、及びやはり通常はROM149に記憶される基本入力-出力システムソフトウェア(BIOS)モジュール151を正しい動作のためにチェックする。POSTプログラム150が正常に動作すると、BIOS151が図1Aのハードディスクドライブ110を作動させる。ハードディスクドライブ110が作動すると、ハードディスクドライブ110上に存在するブートストラップローダプログラム152がプロセッサ105を介して実行される。これにより、RAMメモリ106にオペレーティングシステム153がロードされてRAMメモリ106上で動作を開始する。オペレーティングシステム153は、プロセッサ管理、メモリ管理、デバイス管理、ストレージ管理、ソフトウェアアプリケーションインターフェイス及び汎用ユーザインターフェイスを含む様々な高水準機能を実行するためにプロセッサ105によって実行可能なシステムレベルアプリケーションである。
【0052】
オペレーティングシステム153は、コンピュータモジュール101上で実行される各プロセス又はアプリケーションが他のプロセスに割り当てられたメモリと衝突することなく実行するのに十分なメモリを有することを確実にするようにメモリ134(109、106)を管理する。さらに、図1Aのシステム100内で利用できる異なるタイプのメモリは、各プロセスが効果的に動作できるように正しく使用されなければならない。従って、集約されたメモリ134は、(特に指定していない限り)メモリの特定のセグメントがどのように割り当てられるかを示すように意図するものではなく、むしろコンピュータシステム100がアクセスできるメモリの一般的概念、及びこれらがどのように使用されるかを示すように意図するものである。
【0053】
図1Bに示すように、プロセッサ105は、制御装置139、算術論理演算ユニット(ALU)140、及びキャッシュメモリと呼ばれることもあるローカル又は内部メモリ148を含む複数の機能モジュールを含む。通常、キャッシュメモリ148は、レジスタ部に複数の記憶レジスタ144~146を含む。これらの機能モジュールは、1又は2以上の内部バス141によって機能的に相互接続される。通常、プロセッサ105は、接続部118を使用してシステムバス104を介して外部装置と通信するための1又は2以上のインターフェイス142も有する。メモリ134は、接続部119を使用してバス104に結合される。
【0054】
アプリケーションプログラム133は、条件付き分岐命令及びループ命令を含むことができる一連の命令131を含む。プログラム133は、プログラム133の実行において使用されるデータ132を含むこともできる。命令131及びデータ132は、メモリ位置128、129、130、及び135、136、137にそれぞれ記憶される。メモリ位置130に示す命令によって示すように、命令131とメモリ位置128~130との相対的サイズに応じて単一のメモリ位置に特定の命令を記憶することができる。或いは、メモリ位置128及び129に示す命令セグメントによって示すように、各部分が別個のメモリ位置に記憶される複数の部分に命令をセグメント化することもできる。
【0055】
一般に、プロセッサ105には、プロセッサ105内で実行される命令セットが与えられる。プロセッサ105は後続の入力を待ち、この入力に対して別の命令セットを実行することによって反応する。各入力は、入力装置102、103の一方又は両方によって生成されたデータ、ネットワーク120、102の一方を介して外部ソースから受け取られたデータ、記憶装置106、109の一方から取り出されたデータ、又は対応するリーダ112に挿入された記憶媒体125から取り出されたデータを含む、全て図1Aに示す複数のソースのうちの1つ又は2つ以上から提供することができる。場合によっては、命令セットを実行するとデータが出力されることもある。実行によってデータ又は変数がメモリ134に記憶されることもある。
【0056】
開示する書き込み検出及び共有構成は、メモリ134の対応するメモリ位置155、156、157に記憶された入力変数154を使用する。書き込み検出及び共有構成は、メモリ134の対応するメモリ位置162、163、164に記憶される出力変数161を生成する。中間変数158は、メモリ位置159、160、166、167に記憶することができる。
【0057】
図1Bのプロセッサ105を参照すると、レジスタ144、145、146、算術論理演算ユニット(ALU)140及び制御装置139は、プログラム133を構成する命令セット内の全ての命令について「フェッチ、復号及び実行」サイクルを実行するのに必要な一連のマイクロ演算を実行するように協働する。各フェッチ、復号及び実行サイクルは、メモリ位置128、129、130から命令131をフェッチし又は読み込むフェッチ動作と、どの命令がフェッチされたかを制御装置139が判定する復号動作と、制御装置139及び/又はALU140が命令を実行する実行動作とを含む。
【0058】
その後に、次の命令のためのさらなるフェッチ、復号及び実行サイクルを実行することができる。同様に、制御装置139がメモリ位置162に値を記憶し又は書き込むストアサイクルを実行することもできる。
【0059】
本明細書で説明するプロセスの各ステップ又はサブプロセスは、プログラム133の1又は2以上のセグメントに関連し、プロセッサ105内のレジスタ部144、145、147、ALU140及び制御装置139が上述したプログラム133のセグメントの命令セット内の全ての命令についてフェッチ、復号及び実行サイクルを実行するように協働することによって実行される。
【0060】
或いは、本明細書で説明する方法は、書き込み検出及び共有方法の機能又は従属機能を実行する1又は2以上の集積回路などの専用ハードウェアに実装することもできる。このような専用ハードウェアは、グラフィックプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、或いは1又は2以上のマイクロプロセッサ及び関連するメモリを含むことができる。
【0061】
図2A及び図2Bは、説明する書き込み検出及び/又は共有方法が実施されることが望ましい、埋め込みコンポーネントを含む汎用電子装置201の概略的ブロック図を集合的に形成する。電子装置201は、例えば処理リソースが限られた携帯電話機、ポータブルメディアプレーヤ、仮想現実メガネ又はデジタルカメラとすることができる。しかしながら、説明する方法は、著しく大きな処理リソースを有するデスクトップコンピュータ、サーバコンピュータなどの上位装置上で実行することもできる。
【0062】
図2Aに示すように、電子装置201は埋め込みコントローラ202を含む。従って、電子装置201は「埋め込み装置」と呼ぶことができる。本実施例では、コントローラ202が、内部記憶モジュール209に双方向に結合された処理装置(又はプロセッサ)205を有する。図2Bに示すように、記憶モジュール209は、不揮発性の半導体リードオンリメモリ(ROM)260及び半導体ランダムアクセスメモリ(RAM)270から形成することができる。RAM270は、揮発性、不揮発性、又は揮発性メモリと不揮発性メモリとの組み合わせとすることができる。
【0063】
電子装置201は、液晶ディスプレイ(LCD)パネルなどのディスプレイ214に接続されたディスプレイコントローラ207を含む。ディスプレイコントローラ207は、ディスプレイコントローラ207が接続された埋め込みコントローラ202から受け取られた命令に従ってディスプレイ214上にグラフィックイメージを表示するように構成される。
【0064】
電子装置201は、典型的にはキー、キーパッド又は同様のコントロールによって形成されるユーザ入力装置213も含む。いくつかの実装では、ユーザ入力装置213が、ディスプレイ214と物理的に関連付けられて集合的にタッチ画面を形成するタッチセンサ式パネルを含むことができる。従って、このようなタッチ画面は、典型的にはキーパッドとディスプレイとの組み合わせと共に使用されるプロンプト又はメニュー駆動式GUIとは対照的に、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)の一形態として動作することができる。音声コマンド用のマイク(図示せず)、又は容易なメニューナビゲーションためのジョイスティック/サムホイール(図示せず)などの他の形態のユーザ入力装置を使用することもできる。
【0065】
図2Aに示すように、電子装置201は、接続部219を介してプロセッサ205に結合されたポータブルメモリインターフェイス206も含む。ポータブルメモリインターフェイス206は、相補的ポータブルメモリデバイス225が電子装置201に結合されてデータのソース又はデスティネーションとして機能し、或いは内部記憶モジュール209を補完することを可能にする。このようなインターフェイスの例は、ユニバーサルシリアスバス(USB)メモリデバイス、セキュアデジタル(SD)カード、パーソナルコンピュータメモリーカード国際協会(PCMIA)カード、光ディスク及び磁気ディスクなどのポータブルメモリデバイスとの結合を可能にする。
【0066】
電子装置201は、接続部221を介して装置201をコンピュータ又は通信ネットワーク220に結合できるようにする通信インターフェイス208も有する。接続部221は、有線又は無線とすることができる。例えば、接続部221は、無線周波数又は光とすることができる。有線接続の例としてはイーサネットが挙げられる。さらに、無線接続の例としては、Bluetooth(商標)型ローカル相互接続、(IEEE802.11ファミリーの標準に基づくプロトコルを含む)Wi-Fi、及び赤外線通信協会(IrDa)などが挙げられる。
【0067】
通常、電子装置201は、何らかの特殊機能を実行するように構成される。埋め込みコントローラ202は、この特殊機能を実行するために、場合によってはさらなる特殊機能コンポーネント210と組み合わせて提供される。例えば、装置201がデジタルカメラである場合、コンポーネント210は、カメラのレンズ、焦点制御及びイメージセンサを表すことができる。特殊機能コンポーネント210は、埋め込みコントローラ202に接続される。別の例として、装置201を携帯電話機ハンドセットとすることもできる。この事例では、コンポーネント210が、携帯電話環境での通信に必要なコンポーネントを表すことができる。装置201がポータブル装置である場合、特殊機能コンポーネント210は、ジョイントフォトグラフエキスパートグループ(JPEG)、(動画エキスパートグループ)MPEG及びMPEG-1オーディオレイヤ3(MP3)などを含むタイプの複数のエンコーダ及びデコーダを表すことができる。
【0068】
後述する方法は、埋め込みコントローラ202を使用して実行することができ、本明細書で説明するプロセスは、埋め込みコントローラ202内で実行可能な1又は2以上のソフトウェアアプリケーションプログラム233として実装することができる。説明する方法は、図2Aの電子装置201によって実行される。具体的には、図2Bを参照すると、説明する方法のステップは、コントローラ202内で実行されるソフトウェア233の命令によって達成される。ソフトウェア命令は、それぞれが1又は2以上の特定のタスクを実行する1又は2以上のコードモジュールとして形成することができる。ソフトウェアは2つの別個の部分に分割することができ、第1の部分及び対応するコードモジュールが説明した方法を実行し、第2の部分及び対応するコードモジュールが第1の部分とユーザとの間のユーザインターフェイスを管理する。
【0069】
通常、埋め込みコントローラ202のソフトウェア233は、内部記憶モジュール209の不揮発性ROM260に記憶される。ROM260に記憶されたソフトウェア233は、コンピュータ可読媒体から必要とされた時に更新することができる。ソフトウェア233は、プロセッサ205によってロードされ実行されることができる。いくつかの例では、プロセッサ205が、RAM270内に位置するソフトウェア命令を実行することができる。ソフトウェア命令は、プロセッサ205がROM260からRAM270に1又は2以上のコードモジュールをコピーし始めることによってRAM270にロードすることができる。或いは、メーカーがRAM270の不揮発性領域に1又は2以上のコードモジュールのソフトウェア命令を予めインストールしておくこともできる。プロセッサ205は、1又は2以上のコードモジュールがRAM270内に配置された後に、1又は2以上のコードモジュールのソフトウェア命令を実行することができる。
【0070】
通常、アプリケーションプログラム233は、電子装置201の流通前にメーカーによってROM260に予めインストールされ記憶される。しかしながら、いくつかの事例では、アプリケーションプログラム233を、内部記憶モジュール209又はポータブルメモリ225に記憶する前に1又は2以上のCD-ROM(図示せず)に符号化してユーザに供給し、図2Aのポータブルメモリインターフェイス206を介して読み取ることもできる。別の代替例では、プロセッサ205がソフトウェアアプリケーションプログラム233をネットワーク220から読み込み、或いは他のコンピュータ可読媒体からコントローラ202又はポータブル記憶媒体225にロードすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、命令及び/又はデータを実行及び/又は処理のためにコントローラ202に提供することに関与するいずれかの非一時的有形記憶媒体を意味する。このような記憶媒体の例としては、コンピュータモジュール101の内部に存在するか、それとも外部に存在するかにかかわらず、フロッピーディスク、磁気テープ、CD-ROM、ハードディスクドライブ、ROM又は集積回路、USBメモリ、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、又はPCMCIAカードなどのコンピュータ可読カードが挙げられる。同様に装置201にソフトウェア、アプリケーションプログラム、命令及び/又はデータを提供することに関与できる一時的又は非有形コンピュータ可読伝送媒体の例としては、無線又は赤外線伝送チャネル、並びに別のコンピュータ又はネットワーク装置へのネットワーク接続、電子メール送信及びウェブサイトなどに記録された情報を含むインターネット又はイントラネットなどが挙げられる。このようなソフトウェア又はコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読媒体はコンピュータプログラム製品である。
【0071】
上述したアプリケーションプログラム233及び対応するコードモジュールの第2の部分は、図2Aのディスプレイ214上にレンダリング又は別様に表される1又は2以上のグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を実装するように実行することができる。装置201及びアプリケーションプログラム233のユーザは、ユーザ入力装置213(例えば、キーパッド)の操作を通じて機能的に適合可能な形でインターフェイスを操作して、(単複の)GUIに関連するアプリケーションに制御コマンド及び/又は入力を提供することができる。スピーカ(図示せず)を介して出力されるスピーチプロンプト及びマイク(図示せず)を介して入力されるユーザ音声コマンドを利用するオーディオインターフェイスなどの、他の形態の機能的に適合可能なユーザインターフェイスを実装することもできる。
【0072】
図2Bに、アプリケーションプログラム233を実行するプロセッサ205と内部ストレージ209とを有する埋め込みコントローラ202を詳細に示す。内部ストレージ209は、リードオンリメモリ(ROM)260及びランダムアクセスメモリ(RAM)270を含む。プロセッサ205は、接続されたメモリ260及び270の一方又は両方に記憶されたアプリケーションプログラム233を実行することができる。電子装置201が最初に電源を投入されると、ROM260内に存在するシステムプログラムが実行される。ROM260に永続的に記憶されるアプリケーションプログラム233は「ファームウェア」と呼ばれることもある。ファームウェアは、プロセッサ205によって実行されると、プロセッサ管理、メモリ管理、デバイス管理、ストレージ管理、ユーザインターフェイスなどの様々な機能を果たすことができる。
【0073】
通常、プロセッサ205は、制御装置(CU)251と、算術論理演算ユニット(ALU)252と、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)253と、典型的には原子データ要素256、257を含む一連のレジスタ254及び内部バッファ又はキャッシュメモリ255を含むローカル又は内部メモリとを含む複数の機能モジュールを含む。これらの機能モジュールは、1又は2以上の内部バス259によって相互接続される。通常、プロセッサ205は、接続部261を使用してシステムバス281を介して外部装置と通信する1又は2以上のインターフェイス258も含む。
【0074】
アプリケーションプログラム233は、条件付き分岐命令及びループ命令を含むことができる一連の命令262~263を含む。プログラム233は、プログラム233の実行において使用されるデータを含むことができる。このデータは、命令の一部として、或いはROM260又はRAM270内の別の位置264に記憶することができる。
【0075】
一般に、プロセッサ205には、プロセッサ205内で実行される命令が与えられる。この命令セットは、電子装置201内で発生する特定のタスクの実行又は特定のイベントの処理を行うブロックに組織化することができる。通常、アプリケーションプログラム233は、イベントを待った後に、このイベントに関連するコードブロックを実行する。イベントは、図2Aのユーザ入力装置213を介したユーザからの入力がプロセッサ205によって検出されたことに応答してトリガすることができる。イベントは、電子装置201内の他のセンサ及びインターフェイスに応答してトリガすることもできる。
【0076】
命令セットの実行は、数値変数の読み取り及び修正を必要とすることがある。このような数値変数は、RAM270に記憶される。開示する方法は、メモリ270の既知の位置272、273に記憶された入力変数271を使用する。入力変数271は処理されて、メモリ270の既知の位置278、279に記憶される出力変数277を生成する。中間変数274は、メモリ270の位置275、276内のさらなるメモリ位置に記憶することができる。或いは、一部の中間変数は、プロセッサ205のレジスタ254内にのみ存在することもできる。
【0077】
一連の命令の実行は、プロセッサ205においてフェッチ-実行サイクルを繰り返し適用することによって達成される。プロセッサ205の制御装置251は、次に実行すべき命令のROM260又はRAM270内アドレスを含むプログラムカウンタと呼ばれるレジスタを維持する。フェッチ実行サイクルが開始すると、プログラムカウンタによってインデックス付けされたメモリアドレスの内容が制御装置251にロードされる。このようにロードされた命令は、プロセッサ205のその後の動作を制御して、例えばROMメモリ260からプロセッサレジスタ254にデータをロードさせたり、レジスタの内容を別のレジスタの内容と算術的に結合させたり、レジスタの内容を別のレジスタに記憶された位置に書き込ませたりする。フェッチ実行サイクルが終了すると、プログラムカウンタはシステムプログラムコード内の次の命令を指し示すように更新される。この動作は、直前に実行された命令に応じて、プログラムカウンタに含まれるアドレスを増分し、又は分岐操作を行うためにプログラムカウンタに新たなアドレスをロードすることを伴うことができる。
【0078】
後述する方法のプロセスにおける各ステップ又はサブプロセスは、アプリケーションプログラム233の1又は2以上のセグメントに関連し、プロセッサ205におけるフェッチ-実行サイクルの反復実行、又は電子装置201内の他の独立したプロセッサブロックの同様のプログラム的動作によって実行される。
【0079】
態様は、組織学的に染色された生体分子を直接プローブするための、紫外光照明下における固有の光吸収コントラストに基づく高スループット、無標識、かつスライドフリーな撮像法及びシステムを提供する。2つの手法、すなわち紫外線ベースの(i)光音響顕微鏡法(UV-PAM)及び(ii)自家蛍光顕微鏡法(UV-AutoM)を開示する。UV-PAMでは、高スループットを達成するために高速な光走査構成を利用することができる。UV-AutoMでは、低倍率対物レンズを用いた高解像度画像の推定を可能にして、センチメートル規模の撮像領域にわたる細胞下解像度の画像を提供すると同時に組織表面形態、スライド配置誤差及び厚みに起因する画像のぼやけに対する高耐性を可能にするスペックル照射(SI)が利用される。
【0080】
UV-PAM及びUV-AutoMの両タイプの画像のために、大きな未処理の新鮮/固定組織の組織学様画像を細胞下解像度で生成するために使用できるディープラーニングベースの仮想染色法及びシステムを開示する。この仮想染色法及びシステムは、ペア/アンペア訓練(paired/unpaired training)例を通じて非標識化組織のUV-PAM又はUV-AutoM画像から組織学的に染色された画像への変換を可能にするように構成された敵対的生成ネットワーク(GAN)を利用する。開示する方法及びシステムは、標準的治療組織病理学のワークフローを数日から10分未満に簡略化し、術中の外科的マージン評価を可能にし、これによって断端陽性(positive margin)に起因する2回目の手術の必要性を低減又は排除することができる。
【0081】
紫外線ベースの光音響顕微鏡法(UV-PAM)
PAMは、従来の光学顕微鏡法とは異なり、高度に特異的な光吸収コントラストを利用する。(波長240~280nmの)UVパルスレーザーを励起ビームとして使用することによって細胞核を強調することができ、従って無標識な組織学様画像を提供することができる。
【0082】
図3に、UV-PAMシステム300の例を示す。具体的には、集束アセンブリ303によってナノ秒パルスUVレーザー302(例えば、Bright Solution Srl社から市販されているWEDGE-HF266nm)が集束する。具体的には、UVレーザー302によって放出された光は、一対のレンズ304、308(例えば、Thorlabs社から市販されているLA4647-UV及びLA4663-UV)によって拡大される。一対のレンズ304、308間に配置されたピンホール306によって、UV光ビームの品質を向上させることができる。ピンホール306のサイズは、直径10μm~100μm(例えば、Thorlabs社から市販されているP25C)とすることができる。その後、ビームは、1Dガルボミラースキャナ310によって反射された後に、対物レンズ310(例えば、Thorlabs社から市販されているMicroSpot(商標)Focusing Objective(LMU-20X-UVB))によって試料312の底面に集束する。試料312は、XYZ並進ステージ318に取り付けられた試料ホルダ315によって保持された水槽314の底部に配置される。水槽314を水で満たして光音響波を上向きに伝搬させて、水に浸した超音波トランスデューサ316(例えば、オリンパスNDT社から市販されているV324-SU)によって検出する。
【0083】
受け取られた音圧は、電気信号に変換された後に増幅器320(例えば、Mini-circuits社から市販されている2つのZFL-500LN-BNC+)によって増幅され、最後にデータ収集システム322(例えば、Alazar Technologies社から市販されているATS9350)を通じてコンピュータシステム100又は201によって受け取られる。二次元画像を生成するために、最初に各Aライン信号の最大振幅投影(MAP)を識別する。その後に、走査プロセスの順序に従って最大振幅投影を再配置してグレースケール画像を生成する。
【0084】
動作時には、集束アセンブリのガルボミラースキャナ310を制御して、走査軌道に従って試料312上に紫外線を集束させることができる。ガルボミラースキャナ310の制御は、コンピュータシステム100又はコンピュータ埋め込み装置201の一部によって実行することができる。トランスデューサ316は、紫外線に反応して試料312が放出する光音響波を受け取るように構成される。コンピュータシステム100又は埋め込み装置201は、この光音響波に基づいてUV-PAM画像を生成する。
【0085】
UV-PAMシステムの横方向及び軸方向分解能を測定するために、金ナノ粒子(直径200nm)をx軸及びy軸の両方において0.15μmのステップサイズで撮像した(図4(a))。4つの金ナノ粒子のデータ点を選択して平均化し、図4(b)に示すようにガウスプロファイルフィッティングによって横方向分解能を測定した。ガウスフィッティングプロファイルの半値全幅は~0.6μmである。軸方向分解能を評価するために、中心位置のA線信号の包絡線を抽出することができる。図4(c)に、図4(a)の金ナノ粒子の中心位置のAライン信号を示す。Aライン信号の包絡線のFWHMは38nsであり、これはUV-PAMシステムの軸方向分解能を表す58μmに相当する。
【0086】
紫外線自家蛍光顕微鏡法(UV-AutoM)
通常、病理組織検査では、細胞形態及び代謝活動観察のための細胞下解像度を達成するために20X~40Xの倍率の対物レンズが必要である。しかしながら、このような倍率では、視野(FOV)が1mm2以内に制限されてしまう。また、高倍率の対物レンズは、空間的に変動する収差の影響が大きく、浅い被写界深度を特徴としているため、顕微鏡スライドの配置誤差及び試料の粗さに対する耐性が低くなる。このような理由で、高倍率の対物レンズを使用して画像ステッチングを介して広い組織面を撮像することは副次的選択肢(sub-optional)となる。
【0087】
デジタル顕微鏡の広いFOVと高い分解能(HR)との間の固有のトレードオフを緩和して異なる関心領域の細胞下解像度での高スループット可視化を可能にするスペックル照射(SI)法を開示する。
【0088】
UV-AutoMシステム例500を示す図5Aに示すように、XYZ電動ステージ318(例えば、PI miCos,GmbH社から市販されている3つのL-509)に接続されたオープントップ型の試料ホルダ上に未染色の新鮮な組織312を配置する。UVレーザー302(例えば、Bright Solution Srl社から市販されているWEDGE-HF 266nm)をコリメート化し、溶融シリカディフューザ(例えば、Thorlabs社から市販されているDGUV10-600)上に投影してスペックルパターンを生成する。結果として得られた波は、集束アセンブリ303の一部である0.69の開口数(NA)を有する非球面UVコンデンサレンズ512(例えば、Edmund Optics社から市販されている#33-957)を通じて集束する。試料312は、(例えば、200nm~1500nmの透過率が90%を上回る)UV透明窓514を通じて斜めに照射される。次に、4X対物レンズ518(例えば、Olympus NDT社から市販されているNA=0.1のプランアクロマート対物レンズ)と無限補正チューブレンズ520(Thorlabs社から市販されているTTL180-A)とを備えた倒立顕微鏡517によって、(主にNADH及びFADからの、ピーク発光が450nmmの)励起された自家蛍光信号が収集され、最終的にモノクロ科学相補型金属酸化膜半導体(sCMOS)カメラ522(例えば、PCO AG社から市販されているPCOエッジ4.2、6.5μmピクセルピッチ)によって撮像される。
【0089】
低倍率対物レンズは、広いFOVにわたって空間変動収差の影響が少なく、大きなDOF及び長い作動距離を特徴としており、これによってスライドの配置誤差に対する高い耐性及び試料ステージ上での柔軟な操作が可能になる。しかしながら、その空間分解能は、レイリー基準による撮像系の到達可能な分解能の決定要因である低NA値によって大きく制限される(撮像系が解像できる最小距離は0.61λ/NAであり、ここでのλは蛍光発光波長であり、NAは対物レンズの開口数である)。このため、この構成では、SI再構成を利用して低NA対物レンズによるこのような解像限界を回避している。
【0090】
自家蛍光顕微鏡法を達成するためのスペックル照射に基づく計算的撮像法を開示する。好ましい実施形態では、この方法が高スループットの顕微鏡検査法を達成する。具体的には、「高スループットの顕微鏡検査法」とは、自動化された顕微鏡法及び画像解析を使用して、細胞の特徴を大規模に視覚化して定量的に取り込むことを意味する。より具体的には、スペックル照射の適用による高スループット出力の空間帯域幅積(すなわち視野/解像度2)は、通常はメガピクセルレベルに制約される従来の蛍光顕微鏡法の約10倍以上である。低倍率対物レンズは、空間変動収差からの影響が小さいので、広い組織面を撮像するのに適している。また、低倍率レンズは被写界深度が大きいため、その実装を通じて、表面の凹凸、組織の厚み又はスライド配置誤差による画像のピンぼけを最小限に抑えることができる。しかしながら、このようなレンズの低い開口数(NA)値は達成可能な解像度を制限し、従って細胞下レベルの撮像を目的とする用途の妨げとなってしまう。提案する方法は、一連のスペックル照射された低解像度自家蛍光画像を通じた反復再構成を実行して、低NA対物レンズによって設定される解像度限界を回避し、任意の表面形状を有する広い撮像領域にわたる高速高解像度撮像を容易にする。
【0091】
図5B及び図5Cに、一連のスペックル照射画像からUV励起自家蛍光画像(UV-AutoM)を再構成するコンピュータ実装方法例530を表すフローチャートを示す。コンピュータ実装方法530は、図1A及び図1Bに関連して説明したようなコンピュータシステム100によって、又は図2A及び図2Bに関連して説明したような埋め込み装置201によって実行することができる。図5Dには、スペックル照射された一連の画像から高スループットUV励起自家蛍光画像(UV-AutoM)を再構成する具体的な実装をさらに表す疑似コードを示す。本明細書では、図5Dの疑似コードを参照しながら図5B及び図5Cのフローチャートについて説明する。
【0092】
具体的には、方法530は、ステップ530-1において、走査軌道に沿って平面内のそれぞれの一連の位置に平行移動した試料の一連のスペックル照射画像Ij(j=1,2,...,N)を記録することを含む。一連のスペックル照射画像Iは、各低解像度スペックル照射画像Ijに比べて方法530の出力の方が高い解像度を有する高解像度画像であるという意味で低解像度画像である。1つの例では、4X/0.1NA対物レンズを使用して一連のスペックル照射画像を取り込むことができる。
【0093】
方法530は、ステップ530-2において、ここでは高解像度画像オブジェクトと呼ぶ画像オブジェクトo(x,y)及びスペックルパターンを初期化することを含む。擬似コードの3行目に示すように、一連のスペックル照射画像を平均化し、平均化されたスペックル照射画像を補間し、高解像度画像オブジェクトo(x,y)を平均化されたスペックル照射画像の補間の結果に設定する。スペックルパターンは、1の行列に初期化される。
【0094】
ステップ530-3において、現在位置を一連の位置からの第1の位置に設定する。図5Dの疑似コードにおける現在位置は(xj、yj)によって表される。
【0095】
ステップ530-4~530-11は、取り込まれた一連のスペックル照射画像内の各スペックル照射画像について、図5B及び図5Cに示すフローチャートの内部ループの形で実行される。図5Dの疑似コードを参照すると、この内部ループは6行目~14行目を表し、5行目~17行目によって外部ループが表される。内部ループでは、現在位置変数が一連の位置内の次の位置に効果的に増分され、高解像度画像オブジェクト及びスペックルパターンを修正する画像処理ステップにおいて、それぞれの現在位置における対応するスペックル照射画像が使用される。
【0096】
より具体的には、方法530は、ステップ530-4において、高解像度オブジェクトを計算的に現在位置o(x-xj,y-yj)にシフトさせ、これにスペックルパターンp(x,y)を乗算することによって推定スペックル照射画像φj(x,y)を生成することを含む。このことを、図5Dの疑似コードの7行目に示す。
【0097】
方法530は、ステップ530-5において、周波数領域における空間座標をkx及びkyとする光学的伝達関数であるOTF(kx、ky)を乗算した周波数領域における推定スペックル照射画像F(φj(x,y))に基づいて、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンド(filtered object-pattern compound)ψj(kx,ky)を決定することを含む。この光学的伝達関数は、試料の一連のスペックル照射画像を取り込むために使用される装置の既知の光学的伝達関数である。
【0098】
なお、ステップ530-4及び530-5におけるシフト操作は、集合的に角度スペクトルの適用である。
【0099】
後述するステップ530-6~530-8は、タイコグラフィック反復エンジン(Ptychographic iterative engine:PIE)と呼ばれる位相検索アルゴリズムに基づく再構成手順である。
【0100】
方法530は、ステップ530-6において、周波数領域における推定スペックル照射画像、周波数領域における現在位置で取り込まれたスペックル照射画像、周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンド、光学的伝達関数、及び適応学習率パラメータαに基づいて、周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像F(φj update)を決定することを含む。より具体的には、図5Dの疑似コードの9行目に、以下の方程式1によって示す、周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像の具体的計算を示す。
方程式1
【0101】
具体的には、周波数領域における更新済み推定スペックル照射画像は、周波数領域における推定スペックル照射画像と、適応学習率パラメータに光学的伝達関数の共役を乗算し、これに周波数領域における現在位置で取り込まれたスペックル照射画像と周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドとの間の差分を乗算し、これを光学的伝達関数の絶対値の二乗で除算したものとの合計に等しくなるように計算される。
【0102】
方法530は、ステップ530-7において、空間領域における更新済み推定スペックル照射画像及びスペックルパターンに基づいて高解像度オブジェクトを更新することを含む。このことを図5Dの疑似コードの10行目に示しており、以下の方程式2によって表す。
方程式2
【0103】
具体的には、高解像度オブジェクトは、高解像度オブジェクトと、スペックルパターンの共役に空間領域における更新済み推定スペックル照射画像と空間領域における推定スペックル照射画像との差分を乗算し、これをスペックルパターンの最大値の絶対値の二乗で除算したものとの合計に等しくなるように設定される。
【0104】
方法530は、ステップ530-8において、更新済み推定スペックル照射画像、推定スペックル照射画像及び高解像度オブジェクトに基づいてスペックルパターンを更新することを含む。このことを図5Dの疑似コードの11行目に示しており、以下の方程式3によって表す。
方程式3
【0105】
具体的には、スペックルパターンは、スペックルパターンと、高解像度オブジェクトの共役に空間領域における更新済み推定スペックル照射画像と空間領域における推定スペックル照射画像との間の差分を乗算し、これを高解像度オブジェクトの最大値の絶対値の二乗で除算したものとの合計に等しくなるように設定される。
【0106】
ステップ530-9において、取り込まれたスペックル照射画像Ijと周波数領域におけるフィルタ済みオブジェクトパターンコンパウンドψjの逆フーリエ変換との間の差分の絶対値に基づいて、現在のループの合計損失(summed loss)パラメータlossjを計算する。このことを図5Dの疑似コードの12行目に示しており、以下の方程式4によって表す。
方程式4
【0107】
方法530は、ステップ530-10において、高解像度オブジェクト及びスペックルパターンにネステロフ運動量加速度(Nesterov momentum acceleration)を適用することを含む。この適用は、再構成プロセスの最急降下法(gradient decent)を加速してより速く収束させるために実行される。
【0108】
方法530は、ステップ530-11において、現在位置が一連の位置における最後の位置であるかどうかを判定することを含む。方法は、肯定的な判定(すなわち、「はい」)に応答してステップ530-13に進む。方法は、否定的な判定(すなわち、「いいえ」)に応答してステップ530-12に進む。
【0109】
方法530は、ステップ530-12において、現在位置を一連の位置における次の位置に設定することを含む。その後、方法530はステップ530-4に戻って、最後のスペックル照射画像が処理されるまで、ステップ530-4~530-11によって表される内部ループの1回又は2回以上のさらなる反復を実行する。
【0110】
方法530は、ステップ530-13において、合計損失パラメータに基づいて収束が検出されたかどうかを判定することを含む。この判定は、内部ループ(すなわち、ステップ530-4~530-11)の前回の反復及び現在の反復について計算された合計損失パラメータ間の差分を内部ループの前回の反復の合計損失パラメータで除算したものに基づいて計算される損失率(loss ratio)を決定することによって行われる。次に、この損失率を、図5Dの擬似コード例では0.01に設定されている損失閾値と比較する。損失率が損失閾値以下である場合、適応学習率パラメータは減少し、この例では適応学習率パラメータが半分になる。再構成画像のアーチファクトを最小化するために、収束点付近での損失関数の変動を抑えるように適応学習率パラメータを調整する。学習率αがゼロまで減少すると再構成処理は終了し、ステップ530-14において高解像度オブジェクトが決定され出力される。出力される高解像度画像オブジェクトは、再構成方法530への入力として提供される各低解像度スペックル照射画像と比べて高い解像度を有する、センチメートル規模の撮像領域にわたって細胞下解像度が向上した高解像度UV-AutoM画像である。最初は方法530の開始時に未知であったスペックルパターンもステップ530-14において決定される。
【0111】
方法530によって表されるこの計算的撮像法は、一連の低解像度スペックル照射画像を合成して高解像度の自家蛍光画像(UV-AutoM)を再構成する。この方法は、空間領域及び周波数領域における一連の更新処理を通じて達成される。この方法は、高解像度オブジェクトの初期推定から開始する。まず、オブジェクトをスペックルパターンで乗算して周波数領域にフーリエ変換し、光学的伝達関数によってローパスフィルタ処理を行う。次に、フィルタ済みスペクトルを空間領域に逆変換し、強度を対応する低解像度スペックル照射画像に置き換える。最後に、この更新された自家蛍光画像を周波数領域に変換してさらに更新する。全ての取り込まれた低解像度画像が関わるまで1回の反復を完了し、勾配降下を高速化するためにネステロフ運動量加速度を実装する。数回の反復後に、センチメートル規模の画像領域にわたって細胞下解像度が向上した高解像度UV-AutoM画像が出力される。スペックルパターンの事前知識は不要であり、各低解像度画像間の相対的シフトのみが分かればよい。
【0112】
数回の反復後に、センチメートル規模の画像領域にわたって細胞下解像度が向上した高解像度UV-AutoM画像が出力される。スペックルパターンの事前知識は不要であり、各撮像画像間の相対的シフト(xj,yj)のみが分かればよい。(-2の低NAの回折限界スポットサイズよりも大きい)十分な走査範囲、及び(目標解像度よりも小さい)より細かな走査ステップによって再構成の歪みを低減することができ、最終的に達成可能なNAは、対物レンズのNAとスペックルのNAとの合計になることが示唆される。
【0113】
図6に、図5A図5Cに関連して上述したSI再構成方法及びシステムの例を示す。図6では、610に、フーリエ空間内で4X/0.1NA対物レンズによって設定される物理的制約と、(厚さ100μmの)対応するマウス脳試料の低解像度未加工画像とを示す。図6に示すようなSIデータセット620は、4X/0.1NA対物レンズを使用して取得され、この例ではX-Y平面内の49個の異なる位置に500nmの走査ステップサイズで試料を平行移動させることによって取得された49個の低解像度スペックル照射測定値で構成される。次に、このSIデータセットを使用して、4X/0.1NA対物レンズを使用して取得された画像と比べて3倍の解像度向上に相当するNA=0.3まで通過域が拡張された高スループットUV-AutoM画像630を再構成することができる。
【0114】
上述したSI再構成法及びシステムの分解能を定量化するために、直径500nmの蛍光ナノ粒子(励起/放出:365nm/445nm、Thermo Fisher社から市販されているB500)を使用することができる。図7Aは、均一照射下において4X/0.1NA対物レンズを使用して取り込まれた低解像度蛍光画像の例であり、図7Bは、500nmのステップサイズでラスター走査された49個の低解像度スペックル照射画像を通じて再構成された高解像度蛍光画像である。図7A及び図7Bは、いずれも266nmUVレーザーを取り込まれたものである。図7Cは、図7A及び図7Bに示す実線700、710に沿った強度プロットであり、開示するSI再構成方法及びシステムによる解像度向上をこのプロットから定量化することができる。
【0115】
SI再構成方法及びシステムは、粗い表面に対する耐性が高いという利点を有することができる。これらのシステムの粗い表面に対する耐性の高さを実証するために、図8A図8Cは、2つの未加工葉試料のUV-AutoM画像である。図8A及び図8Bには、4X/0.1NA対物レンズを使用して取り込んだ低解像度自家蛍光画像を示し、図8C及び図8Dには、500nmのステップサイズで走査した49個の低解像度スペックル照射画像を通じた高解像度SI再構成UV-AutoM画像を示す。図8E及び図8Fには、高NA対物レンズの浅いDOFに起因して図8C及び図8Dと比べて明らかなピンぼけ領域を示す、10X/0.3NA対物レンズを使用して取り込まれた高解像度参照画像を示しており、低NA対物レンズを介してSI法によって再構成された高解像度UV-AutoM画像は、特に粗い表面を取り扱う際に高NA対物レンズをはるかに上回ることが示されている。
【0116】
図9A図9Fに、UV-AutoM画像と明視野H&E染色画像との間の構造的整合を示す。図9Aは、マウス脳全体のスライド(脱パラフィン処理後のFFPE切片、厚さ4μm)のUV-AutoM画像であり、図9B及び図9Cは、それぞれ図9Aのボックス910及び920の拡大画像であり、図9D及び図9Eは、それぞれデジタルスライドスキャナ(NanoZoomer SQ、浜松)によって取り込まれた対応する明視野H&E組織画像である。UV-AutoM画像では、マージン領域(ボックス910)及び海馬領域(ボックス920)に集中している細胞がネガティブコントラストではっきりと解像されており、(細胞形態及び細胞分布の両方が)H&E染色画像との実質的に完全な構造的整合を示すことが分かる。
【0117】
図10A図10Gに、厚いマウスの脳(厚さ100μm、Leica社製vibratomeによって切断)の高スループット、無標識での可視化を示す。励起された自家蛍光は、低い紫外線深達度に起因して表面から数ミクロンの範囲に表面的に局在しており、従って厚い試料の無標識かつスライドフリーな撮像が可能である。さらに、4X対物レンズを介してマウスの脳全体の迅速な高解像度可視化を達成するために、上記で開示したSI再構成方法及びシステムを適用したところ、10X対物レンズと比べて画像収差が少なく、粗い組織表面に対する高い耐性が可能であった。図10Aは、マウス脳を上から見た画像例である。図10B及び図10Cは、図10Aのマウス脳のそれぞれの位置(線A-A及びB-B)を通じた切断面を示す再構成UV-AutoM画像の例であり、各再構成UV-AutoM画像は、441個の低解像度スペックル照射画像を含むSIデータセットを使用して生成される。露光時間は、各低解像度未加工画像では200msであり、合計取得時間が3分以内の高速撮像を可能にしている。図10D図10Hは、(a)脳梁1010、(b)海馬1020、(c)淡蒼球1030、(d)尾状体(caudoputamen)1040及び(e)頭頂葉皮質1050を含む図10Cの5つの機能領域の高スループットサブビューである。
【0118】
擬似染色組織画像の生成
通常、病理学者は、組織学的に染色された組織試料を検査して診断を下すように訓練される。しかしながら、UV-PAM画像及びUV-AutoM画像はいずれもグレースケール画像である。この問題に対処し又はこれを軽減するために、非標識化組織のUV-PAM画像又はUV-AutoM画像を擬似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像に変換する、敵対的生成ネットワーク(GAN)を利用した深層学習ベースの仮想染色法を開示する。
【0119】
GANは、ペアになっていないUV-PAM/UV-AutoM画像及びH&E画像の仮想染色を可能にすることによって、染色プロセス中に組織が回転又は変形し得るため困難である画像前処理手順を大幅に簡略化する。疑似着色(pseudo-coloring)を実行するために、UV-PAM/UV-AutoM画像と対応するH&E染色画像とのペア訓練法を採用することもできる。
【0120】
いくつかの実施形態では、擬似染色組織画像を生成するために、図3に関連して説明した方法及びシステムを使用して生成されたUV-PAM画像、並びに図5A図5B及び図5Cのシステム及び方法を使用して生成されたSI再構成UV-AutoM画像を訓練されたcycle-GANへの入力として提供することができる。これに加えて又はこれに代えて、疑似染色組織画像を生成するために、米国特許出願第2014/0356897号に開示されているシステム及び方法を使用して生成されたUV-PAM画像をGANへの入力として使用することもでき、この文献の内容はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0121】
図11Aに、疑似染色組織画像(すなわち、仮想染色組織画像)を生成するコンピュータ実装システム例を表すブロック図を示す。このコンピュータ実装システムは、コンピュータシステム100又は埋め込みシステム201を使用して実装することができる。
【0122】
コンピュータ実装システムは、サイクル一貫型敵対的生成ネットワーク(Cycle-GAN)の形態で提供できる敵対的生成ネットワーク1100(GAN)を利用する。Cycle-GAN1100は、4つの深層畳み込みニューラルネットワーク、すなわち第1の生成器モジュールG、第2の生成器モジュールF、第1の識別器モジュールX及び第2の識別器モジュールYで構成される。
【0123】
図11Aに示すように、生成器Gは、(UV-PAM画像として例示する)UV-AutoM/UV-PAM入力画像1110を(BR-HE画像として例示する)明視野H&E画像1120に変換するように学習するよう構成され、生成器Fは、明視野H&E画像1120をUV-AutoM/UV-PAM画像1110に変換するように学習するよう構成される。識別器Xは、出力1130に示すように本物のUV-PAM画像と生成器Fによって生成された偽物のUV-PAM画像とを識別するように構成され、同時に識別器Yは、出力1140に示すように本物の明視野H&E画像と生成器Gによって生成された偽物の明視野H&E画像とを識別するように構成される。生成器Gは、識別器Yが本物のH&E入力画像と区別できないH&E画像を生成できるようになると、このUV-AutoM/UV-PAM画像からH&E画像への変換を学習し終えたことになる。同様に、生成器Fは、識別器Xが本物のH&E画像と識別できないUV-AutoM/UV-PAM画像を生成できるようになると、このH&E画像からUV-AutoM/UV-PAM画像への変換を学習し終えたことになる。
【0124】
図11Bに、疑似ヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色画像を生成するコンピュータ実装方法例1150を表すフローチャートを示す。このコンピュータ実装方法は、コンピュータシステム100又は埋め込みシステム201によって実行することができる。
【0125】
ステップ1160において、方法1150は、入力画像を受け取ることを含む。入力画像は、非標識化標本の紫外線ベースの自家蛍光顕微鏡(UV-AutoM)画像又は紫外線ベースの光音響顕微鏡(UV-PAM)画像である。入力画像はグレースケール画像である。
【0126】
方法1150は、ステップ1170において、敵対的生成ネットワークを使用して入力画像を入力画像の擬似H&E染色画像に変換することを含む。
【0127】
方法1150は、ステップ1180において、疑似H&E染色画像を出力することを含む。
【0128】
敵対的生成ネットワークは、サイクル一貫性を有する敵対的生成ネットワークであることが好ましい。
【0129】
いくつかの実装では、方法1150が、ペアになっていない入力画像及びH&E染色画像を使用して敵対的生成ネットワークを訓練することを含む。
【0130】
図12に、図11のサイクル-GAN1100の順方向サイクル1202及び逆方向サイクル1204の詳細なワークフロー1200を表す機能ブロック図を示す。サイクル敵対的生成ネットワークは、入力画像を生成されたH&E画像に変換するように構成された第1の生成器Gと、H&E画像を生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像に変換するように構成された第2の生成器Fと、訓練セットのH&E画像と第1の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたH&E画像とを識別するように構成された第1の識別器Yと、訓練セットのUV-AutoM画像又はUV-PAM画像と第2の生成器深層畳み込みニューラルネットワークによって生成された、生成されたUV-AutoM画像又はUV-PAM画像とを識別するように構成された第2の識別器Xとを含む4つの深層畳み込みニューラルネットワークで構成される。
【0131】
より具体的には、図12に示す概略図の最も上の行に示す順方向サイクル1202では、(本明細書では入力画像と呼ぶ)1つのUV-AutoM/UV-PAM画像1210を生成器Gに入力した後に、生成器Gが生成されたH&E画像1220を出力する。識別器Yは、生成されたH&E画像1220が本物であるか、それとも偽物であるかを判定するように構成される(すなわち、識別器Yは、生成器Gから受け取られたH&E画像が本物のH&E入力画像に由来するものであるか、それとも生成器Gに由来するものであるかを識別するように構成される)。さらに、生成器Gの生成されたH&E画像1220は、生成器Fへの入力として提供されて、循環画像(cyclic image)1230と呼ばれるUV-AutoM/UV-PAM画像1230に逆変換される。サイクル-GANでは、入力画像1210と循環画像1230との間の損失がサイクル一貫性損失(cycle-consistency loss)と呼ばれる。図12の概略図の最も下の行1204に示すように、逆方向サイクルは順方向サイクルと対称的である。逆方向サイクルは、入力H&E画像1240から開始し、逆方向サイクルは、BR-H&E画像1240をUV-AutoM/UV-PAM画像1250に変換するように学習する。同様に、識別器Xは、生成されたUV-AutoM/UV-PAM画像を入力画像と比較することによって、このUV-AutoM/UV-PAM画像が本物であるか、それとも偽物であるかを判定するように構成される。
【0132】
図11AのCycle-GANの生成器例1300を表す機能ブロック図を示す図13を参照する。1つの形態では、第1及び第2の生成器である生成器G及びFをResnetベースの生成器ネットワークとして構成することができる。別の実施形態では、生成器G及びFをU-Netベースの生成器ネットワークとして構成することができる。各Resnetベースの生成器は、複数のダウンサンプリング層1320A、1330A、1330B、13330C、残差ブロック1310A~1310I、並びにアップサンプリング層1330D、1330E及び1320Bで構成することができる。図13に示す例では、9個の残差ブロック1310A~1310Iが、それぞれ256×256の画素数を有するUV-PAM画像及びHE画像を訓練する。それぞれの生成器ニューラルネットワークの入力及び出力が同じサイズを有するように、ニューラルネットワークの最初に空間反射パディング(Spatial reflection padding)(3×3)が加えられる。各Resnetベースの生成器1300は、パディング層1320Aの後に、3つのConvolution-InstanceNorm-ReLU層1330A、1330B及び1330Cを含むダウンサンプリング経路を含む。具体的には、第1のConvolution-InstanceNorm-ReLUダウンサンプリング層1330Aは、カーネルサイズ7×7のより大きな受容野を有するのに対し、他の2つの層1330B、1330Cは、カーネルサイズ3×3のより小さな受容野を有する。第1の層1330Aの後には、画像サイズが元々の画像サイズに回復してチャンネルが64に増加する。他の2つの層1330B、1330Cを通過すると、画像サイズが2倍ダウングレードされてチャンネル数が2倍増加する。ダウンサンプリング層1320A、1330A、1330B、1330Cの後は、9つの残差ブロック1310A~1310Iを含む長い残差ニューラルネットワークである。各残差ブロックを通過しても、画像サイズ及びチャンネル数は変わらない(256×64×64)。生成器1300は、9つの残差ブロック1310A~1310Iの後に、カーネルサイズ3×3の2つのConvolution-InstanceNorm-ReLU層1330D、1330Eと、カーネルサイズ7×7のConvolution-InstanceNorm-ReLU層1340に結合した反射パディング層1320B(3×3)とを含むアップサンプリング経路を含む。各アップサンプリング層の後には、画像サイズが2倍増加してチャンネル数が半分に減少する。2つのアップサンプリング層の後には、画像サイズが元々の画像サイズに回復してチャンネル数が64に減少する。最後の結合層1340は、チャネル数を3に減少させながら画像サイズをそのまま保つように構成される。
【0133】
特定の構成では、4つの4×4Convolution-InstanceNorm-LeakyReLU層を含む70×70のPatchGAN識別器によって識別器ネットワークDx及びDyを提供することができる。PatchGANは、最後の層の後に1次元出力(本物又は偽物)を生成する。
【0134】
説明したGANは、Pythonバージョン3.7.3及びPytorchバージョン1.0.1を使って実装したものである。このソフトウェアは、Ubuntu 18.04.2 LTSオペレーションシステムを実行するCore i7-8700K CPU、3.7GHz、32GB RAMを搭載したデスクトップコンピュータ上に実装したものである。11GB RAM搭載のGeForce GTX 1080Ti GPUを使用してCycle-GANニューラルネットワークの訓練及び試験を行った。しかしながら、他のコンピュータシステム又は埋め込みシステム201を利用することもできると理解されるであろう。
【0135】
本明細書では、上述したCycle-GANを使用して生成された仮想染色組織画像の例について説明する。
【0136】
図14A図14Cを参照して分かるように、上述したUV-PAM法及びシステムを使用してマウス脳スライスのUV-PAM画像の仮想染色画像を生成し、上述したCycle-GAN1100を使用して変換した。UV-PAM画像、及びUV-PAM画像の仮想染色画像を、H&E染色後の同じ試料の組織画像と比較した。具体的には、FFPEマウス脳から切り取った厚さ7μmの試料の断面を撮像し、開示するUV-PAM方法及びシステムを、ラスター走査を使用して0.63μmのステップサイズで動作させた。UV-PAM方法及びシステムはグレースケール画像を生成するように構成されているので、次に図11図13に関連して説明したCycle-GAN1100を使用して、図14Aに示すようなグレースケールUV-PAM画像を図14Bに示すような仮想染色画像に変換する。生成された仮想染色画像が従来の組織画像と同様の情報を提供できるかどうかを評価するために、図14Cに示すように、H&E染色後に明視野顕微鏡法を使用して同じ試料の組織画像を取得した。UV-PAMシステムによって生成された仮想染色画像上の細胞核及び他の結合組織の色を検査すると、UV-PAMシステムによって生成された仮想染色画像は従来の組織画像と実質的に同様であることが判明した。概して、開示するCycle-GAN1100の形態で提供される深層学習システムと組み合わせたUV-PAMシステムは、従来の染色技術を必要とすることなく実質的に正確な仮想染色組織画像を生成する。
【0137】
図15A図15Cに、ペア訓練法を利用したUV-AutoM画像の仮想染色の例を示す。図15Aは、厚さ7μmの脱パラフィン処理したFFPEマウス脳切片のUV-AutoM画像であり、図15Bは、ペアになったpix2pixベースのネットワークの形態のGANモデルを利用したUV-AutoM画像の仮想染色バージョンであり、図15Cは、比較目的を果たす対応する明視野H&E画像である。ペアのデータセットを介した色変換では、正確かつ信頼性の高い組織学様画像が生成された。しかしながら、あらゆるペア訓練手法は、画像の整合及び位置合わせに関する厳密なデータ前処理手順を必要とし、厚い試料の仮想染色時に適用することは困難である。Cycle-GANベースのネットワークは、ペア訓練例を使用しないカラーマッピングを可能にすることが判明し、あらゆる厚みの生体組織に対する大きな可能性を示した。Cycle-GANネットワーク1100には、脱パラフィン処理したFFPEマウス脳切片からのペアになっていないUV-AutoM画像及びH&E画像を供給することができる。十分に訓練されたCycle-GAN1100ネットワークは、無標識組織のUV-AutoM画像から無標識組織の仮想H&E染色バージョンへの変換を可能にし、これによって病理学者がUV-AutoM画像を容易に解釈することを可能にする。
【0138】
図16A及び図16Bは、異なる厚みのマウスの脳試料に対する訓練済みCycle-GANネットワーク1100の試験結果に関する。図16A及び図16Bは、それぞれ100μm及び200μmの厚みを有するマウス脳試料のSI再構成された高解像度UV-AutoM画像であり、図16C及び図16Dは、対応する仮想的に染色したH&E画像である。UV-AutoMコントラストからH&E染色バージョンへのカラーマッピングの成功は、医師及び病理学者が手術室内で使用できる実用的な術中診断ツールとしてのUV-AutoM撮像モダリティの開発を大幅に容易にする。
【0139】
UV-PAM画像とUV-AutoM画像との間には相補的コントラストが存在し、これによってUV-PAM画像及びUV-AutoM画像の両方を生成する方法及びシステムが可能になると理解されるであろう。光子(又は蛍光)は放射緩和を介して生成されるのに対し、熱は非放射緩和によって生成され、熱によって誘導される試料の圧力/温度上昇を介してPA波が放出される。この結果、PA画像及び自家蛍光画像は、エネルギー保存に従って相補的コントラストを示すと予想される。このコントラストを図17A及び図17Bに実験的に示す。図17Aには、UVレーザー(266nm)励起による無標識PAコントラスト(UV-PAM)を示すのに対し、図17Bには、脱パラフィン処理した厚さ7μmのマウス脳試料からの海馬領域の無標識自家蛍光コントラスト(UV-AutoM)を示す。図17Cは、UV-PAM画像及びUV-AutoM画像の両方との構造的類似性を示す、対応する明視野H&E染色画像である。UV範囲では核が強く吸収されるので、UV-PAM画像では海馬に集中した核が明るく見え、UV-AutoM画像では暗く見える。このような相補的撮像コントラスト機構では、デュアルモダリティ無標識撮像施設が未処理の新鮮な組織の構造的及び機能的情報をより多く提供することができる。
【0140】
本説明全体を通じて、脳試料は、Swiss Websterマウスから抽出して10%の中性バッファホルマリン内で24時間にわたって固定したものである。薄いスライス(2~8μm)については、試料をFFPEワークフローによって処理してミクロトームによって切片化した。FFPE組織切片は、キシレンを使用して脱パラフィン化し、説明したUV-PAM及びUV-AutoMシステムによって撮像されるように石英スライド上に取り付けた後にH&E染色手順を行った。厚いスライス(20~200μm)については、ビブラトームによって異なる目標厚で直接試料を切断した。
【0141】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明したが、当業者であれば本発明を他の形態で具現化することもできると理解するであろう。
【0142】
例えば、明らかな依存関係又は矛盾した代替物の場合を除き、上記開示の有利な実施形態及び/又はさらなる展開を個別に又は互いに任意の組み合わせで適用することもできる。
【符号の説明】
【0143】
610 広視野、NA=0.1
620 SIシーケンス
630 SI再構成、NA=0.3
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B-10C】
図10D-10H】
図11A
図11B
図12
図13
図14A-14C】
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C