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特許7431487縦型ウエハボート及び縦型ウエハボートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】縦型ウエハボート及び縦型ウエハボートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240207BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20240207BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20240207BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240207BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/22 511B
H01L21/324 Q
H01L21/205
C23C16/44 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020037749
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021141198
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】黒井 茂明
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-328008(JP,A)
【文献】特開2006-005274(JP,A)
【文献】特開平09-082655(JP,A)
【文献】特開2000-269150(JP,A)
【文献】特開2002-043239(JP,A)
【文献】特開2008-108926(JP,A)
【文献】特開2017-017080(JP,A)
【文献】特開2010-034185(JP,A)
【文献】特開平9-306980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/22
H01L 21/324
H01L 21/205
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウエハを上下方向に載置する縦型ウエハボートにおいて、
前記複数のウエハを載置する、上下方向に配置された複数の棚部を有するボート支柱部と、前記ボート支柱を保持する天板と底板とを備え、
ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaよりも大きいことを特徴する縦型ウエハボート。
【請求項2】
ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが10μm以上50μm以下であることを特徴する請求項1記載の縦型ウエハボート。
【請求項3】
製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが0.5μm以上3μm以下であることを特徴する請求項1または請求項2記載の縦型ウエハボート。
【請求項4】
ボート支柱部、天板、底板がSi-SiC複合材あるいはSiC材からなり、その表面にSiC被膜層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の縦型ウエハボート。
【請求項5】
ダミーウエハが搭載される棚部表面に、粒径10μm以上100μm以下の炭化ケイ素粉を内在するSiC被膜層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の縦型ウエハボート。
【請求項6】
複数のウエハを上下方向に載置する縦型ウエハボートの製造方法であって、前記複数のウエハを載置する、上下方向に配置された複数の棚部を有するボート支柱部と、前記ボート支柱を保持する天板と底板とを備え、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaよりも大きい縦型ウエハボートの製造方法において、
ボート支柱部、天板、底板を、Si-SiC複合材あるいはSiC材で形成し、ボートを組立てる組立工程と、
前記組立工程の後、ダミーウエハが搭載される棚部表面に、粒径10μm以上100μm以下の炭化ケイ素粉を付着させる炭化ケイ素粉付着工程と、
前記炭化ケイ素粉付着工程の後、ボート表面に、CVD法により、炭化ケイ素被膜層を形成する被膜層形成工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする縦型ウエハボートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型ウエハボート及び縦型ウエハボートの製造方法に関し、詳しくは、シリコンウエハ等を熱処理する際、シリコンウエハ等を搭載する縦型ウエハボート及び縦型ウエハボートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、単にウエハと称呼する)は、炉芯管等を有する縦型あるいは横型の熱処理炉内で各種の熱処理が施されている。これら熱処理は、一般にウエハボート等の支持載置治具にウエハをセットして、加熱した熱処理炉内に前記支持載置治具を挿入し、更に昇温加熱し、処理ガスを導入することによって行われている。
【0003】
例えば、図5に基づいて、一般的な縦型熱処理炉及びその熱処理の概略について説明すると、縦型熱処理炉50は、炉芯管51と、均熱領域を確保するために前記炉芯管51の外周囲に適宜の間隔を保持して配設された均熱管52と、前記炉芯管51内のウエハWを加熱するために前記均熱管52の外周囲に配設された加熱部材53とを備えている。
また、前記炉芯管51の出入口の温度を均一に保つための保温筒54と、ウエハWに対して処理ガスを炉芯管51の頂部より内部空間に向けて供給するガス供給管56と、炉芯管51内の処理ガスを排出する排気管55とを備えている。
【0004】
そして、前記保温筒54の上面には、熱処理が施される多数のウエハWを積載した縦型ウエハボート10が載置されるように構成されている。この縦型ウエハボート10には、ウエハWを支持載置する棚部10aが複数設けられ、上下方向に複数枚のウエハWを載置できるように構成されている。
【0005】
また、図6に模式的に示すように、前記縦型ウエハボート10に載置されるウエハWは、製品となるウエハ(製品ウエハともいう)PWと、製品ウエハPWの上下部分に、製品ウエハPWを挟んで、載置されるいわゆるダミーウエハDWとからなる。
【0006】
このように構成された縦型熱処理炉50においては、製品ウエハPW、ダミーウエハDWを積載したウエハボート10が炉芯管51に収容された後、炉芯管51内を加熱部材53により加熱すると共に、ガス供給管56によって処理ガスが上方から下方に向けて供給される。
これにより、炉芯管51内では、高温の処理ガス雰囲気とされ、ウエハW(製品ウエハPW、ダミーウエハDW)に所定の熱処理が施される。
【0007】
このとき、ダミーウエハDWは、導入される処理ガスが、熱処理される製品ウエハPWに直接当たらないようにガス流を制御して、製品ウエハPW上に形成される膜厚の均一性を向上させ、またその断熱作用にてガス流を制御して炉内の均熱化を図っている。
【0008】
このような縦型ウエハボートとダミーウエハDWについて、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1では、高品質の基板処理が行え、基板処理の基板面内均一性の向上を図るために、基板保持手段にてウエハ等の基板を保持する間隔は、基板保持手段の中央部分に保持されるプロダクトウエハ等の製品用基板間の間隔よりも、基板保持手段の両端部分に配置されるダミーウエハ等の非製品用基板間の間隔が狭いものすることが提案されている。
【0009】
また、特許文献2では、製品ウエハの面間膜厚均一性の向上を図るため、ボート上に、表面に凹凸が形成された複数の第1の基板(製品ウエハ)を積層保持するとともに第1の基板の上端若しくは下端に第1の基板よりも表面の凹凸が少ない第2の基板(ダミーウエハ)を保持し、処理室内にて第1の基板および第2の基板を処理する際に、第1の基板および第2の基板に向けて処理ガスを供給するとともに、第2の基板に向けて不活性ガスを供給することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-221227号公報
【文献】特開2011-249407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、特許文献1,2のように製品ウエハの膜厚均一性の向上を図るための提案はなされているものの、ダミーウエハが縦型ボートに固着することによって生じる技術的課題を解決する提案はなされていない。
例えば、成膜される製品ウエハは、縦型ウエハボートへ収容され、処理が終了すると、縦型ウエハボートから取出される。
一方、ダミーウエハは、縦型ウエハボートに装着したまま、製品ウエハの成膜処理に繰り返し使用される。そのため、縦型ウエハボートと、縦型ウエハボートに装着されているダミーウエハには、膜が厚く堆積し、ダミーウエハが縦型ウエハボートに固着することがあった。
【0012】
そして、ダミーウエハが縦型ウエハボートに固着した場合、縦型ウエハボートの洗浄等のメンテナンス時に、ダミーウエハは破壊して取り除かれる場合がある。
しかしながら、固着したダミーウエハの破片を完全に除去することは困難であり、未除去の破片が残存した状態で新たなダミーウエハを載置した場合、未除去の破片と新たなダミーウエハとの擦れがパーティクル発生の原因になるという技術的課題があった。
一方、ダミーウエハを連続使用せず、操炉毎に交換するとなると、製造コストや生産性が悪化するという技術的課題があった。
【0013】
本発明者は、ダミーウエハを縦型ウエハボートに装着したまま、連続使用し、縦型ウエハボートとダミーウエハに厚い膜が堆積した場合にも、ダミーウエハが固着し難い、縦型ウエハボート及びそのボートの製造方法を鋭意研究し、本発明を想到した。
【0014】
本発明は、前記したような事情の下になされたものであり、ダミーウエハの縦型ウエハボートに対する固着を抑制した縦型ウエハボート及び縦型ウエハボートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記した課題を解決するためになされた、本発明に係る縦型ウエハボートは、複数のウエハを上下方向に載置する縦型ウエハボートにおいて、前記複数のウエハを載置する、上下方向に配置された複数の棚部を有するボート支柱部と、前記ボート支柱を保持する天板と底板とを備え、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaよりも大きいことを特徴としている。
【0016】
このように、本発明にかかる縦型ウエハボートでは、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaよりも大きいため、ダミーウエハの縦型ウエハボートに対する固着が抑制される。
【0017】
ここで、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが10μm以上50μm以下であることが望ましい。
前記表面粗さが10μm未満の場合、ダミーウエハを連続使用すると、従来のようにダミーウエハが固着する虞がある。
また、前記表面粗さが50μmを超える場合、熱処理時に、棚部におけるダミーウエハの載置位置にズレが発生し易く、棚部表面との擦れによるパーティクルが発生する虞がある。
したがって、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0018】
また、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
このように、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが0.5μm以上3.0μm以下であるため、ウエハの傷やスリップの発生を抑制することができる。
【0019】
また、ボート支柱部、天板、底板がSi-SiC複合材あるいはSiC材からなり、その表面にSiC被膜層が形成されていることが好ましい。
【0020】
また、ダミーウエハが搭載される棚部表面に、粒径10μm以上100μm以下のSiC粉を内在するSiC被膜層が形成されていることが好ましい。
このように、SiC被膜層に、粒径10μm以上100μm以下のSiC粉を内在させることにより、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaを10μm以上50μm以下とすることができる。
【0021】
前記した課題を解決するためになされた、本発明に係る縦型ウエハボートの製造方法は、複数のウエハを上下方向に載置する縦型ウエハボートの製造方法であって、前記複数のウエハを載置する、上下方向に配置された複数の棚部を有するボート支柱部と、前記ボート支柱を保持する天板と底板とを備え、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが、製品ウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaよりも大きい縦型ウエハボートの製造方法において、ボート支柱部、天板、底板を、Si-SiC複合材あるいはSiC材で形成し、ボートを組立てる組立工程と、前記組立工程の後、ダミーウエハが搭載される棚部表面に、粒径10μm以上100μm以下の炭化ケイ素粉を付着させる炭化ケイ素粉付着工程と、前記炭化ケイ素粉付着工程の後、ボート表面に、CVD法により、炭化ケイ素被膜層を形成する被膜層形成工程と、を少なくとも含むことを特徴としている。
【0022】
このように、本発明にかかる縦型ウエハボートの製造方法にあっては、ダミーウエハが搭載される棚部表面に、粒径10μm以上100μm以下のSiC粉(炭化ケイ素粉)を付着させる炭化ケイ素粉付着工程と、前記SiC粉(炭化ケイ素粉)付着工程の後、ボート表面に、CVD法により、SiC(炭化ケイ素)被膜層を形成する被膜層形成工程を備えるため、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaを、10μm以上50μm以下に容易にできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ダミーウエハの縦型ウエハボートに対する固着を抑制した縦型ウエハボート及び縦型ウエハボートの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に係る縦型ウエハボートの概略構成を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した製品ウエハが搭載される棚部の斜視図である。
図3図3は、図1に示したダミーウエハが搭載される棚部の斜視図である。
図4図4は、本発明に係る縦型ウエハボート(ダミーウエハが搭載される棚部)の製造方法を説明するための図である。
図5図5は、縦型ウエハボートを収納した縦型熱処理炉の全体構成を模式的に示す断面図である。
図6図6は、縦型ウエハボートにおけるダミーウエハと製品ウエハの配置状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、図1は本発明の一実施形態にかかる縦型ウエハボートを示す斜視図、図2図1に示した縦型ウエハボートにおける製品ウエハが搭載される棚部の要部拡大図、図3図1に示した縦型ウエハボートにおけるダミーウエハが搭載される棚部の要部拡大図、図4図1に示した縦型ウエハボート(ダミーウエハが搭載される棚部)の製造方法を示す図である。
【0026】
図1に示すように、この縦型ウエハボート1は、成膜処理される製品ウエハPWを搭載するための棚部2a及びダミーウエハDWを搭載するための棚部2bが形成された複数本の支柱2と、前記支柱2の上下端部を固定する天板3及び底板4とを備えている。
なお、前記支柱2、天板3、底板4を構成する基材としては、SiC質基材(SiC材)が好ましく、反応焼結SiCすなわちカーボン成分を含むSiC焼成体にSiを含浸し、前記カーボン成分とSiの一部が反応し、SiC化されたSi-SiC(Si-SiC複合材)であることが好ましく、SiCの成形体を高温で熱処理した再結晶質SiC、焼結助剤を添加し焼結した自焼結SiC等でもよい。
【0027】
また、図2に示すように、前記棚部2aの上面部2a1は、製品ウエハPWを載置するウエハ載置部である。この上面部(ウエハ載置部)2a1の先端部には先端面取り部2a2が形成され、左右側面部には、側部面取り部2a3が形成されている。
尚、図中、この先端面取り部2a2、側部面取り部2a3は平面状に示されているが、これに限定されるものではなく、曲面状、いわゆるR形状に形成されていても良い。
【0028】
また、このウエハ載置部2a1は、製品ウエハPWが搭載される棚部表面(ウエハ当接部表面)であり、その表面粗さRaは0.5μm以上3.0μm以下に形成されている。先端面取り部2a2、側部面取り部2a3についても、ウエハ載置部2a1と同様に、表面粗さRaが0.5μm以上3.0μm以下に形成されている。先端面取り部2a2、側部面取り部2a3に製品ウエハが当接する可能性があるため、表面粗さRaが0.5μm以上3.0μm以下に形成されるのが好ましい。
【0029】
ここで、前記表面の表面粗さRaが0.5μm未満では、ウエハ載置部2a1上にウエハを載置した際に、滑りが生じ、ウエハボート移動時に製品ウエハPWが落下するおそれがあり、あるいは高温環境下で製品ウエハPWを加熱処理した場合に製品ウエハPWがボートの当接部で融着するおそれがあり好ましくない。
また、表面の表面粗さRaが3.0μmを超える場合には、ウエハ搭載時あるいは成膜処理等を行なった際に、製品ウエハPW裏面に傷やスリップが生じることとなり好ましくない。
【0030】
また、図3に示すように、前記棚部2bの上面部2b1は、ダミーウエハDWを載置するウエハ載置部である。この上面部(ウエハ載置部)2b1の先端部には、前記棚部2aと同様に、先端面取り部2b2が形成され、左右側面部には、側部面取り部2b3が形成されている。
尚、図中、この先端面取り部2b2、側部面取り部2b3は平面状に示されているが、前記棚部2aと同様に、曲面状、いわゆるR形状に形成されていても良い。
【0031】
また、このウエハ載置部2b1は、製品ウエハが搭載される棚部表面(ウエハ当接部表面)であり、その表面粗さRaが10μm以上50μm以下になされている。
先端面取り部2b2、側部面取り部2b3についても、ウエハ載置部2b1と同様に、表面粗さRaが10μm以上50μm以下に形成されている。先端面取り部2b2、側部面取り部2b3に製品ウエハが当接する可能性があるため、表面粗さRaが10μm以上50μm以下に形成されるのが好ましい。
【0032】
ここで、前記表面粗さが10μm未満の場合、ダミーウエハDWを連続使用すると、従来のようにダミーウエハDWの固着が発生する虞がある。また、前記表面粗さが50μmを超える場合、熱処理時に、棚部2bにおけるダミーウエハDWの載置位置にズレが発生し易く、棚部表面との擦れによるパーティクルが発生する虞がある。
したがって、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが10μm以上50μm以下であることが好ましい。また、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが10μm以上50μm以下であるため、膜が付着した際、アンカー効果が大きく、膜の剥離をより効果的に抑制することができる。
【0033】
次に、本発明にかかる縦型ウエハボートの製造方法について、図4に基づいて説明する。
先ず、SiC質基材を支柱2、天板3、底板4を所定の形状に機械加工し、またこれら基材の表面を研磨し、所定の表面粗さを有する部材を製作する。例えば支柱2には、図4(a)に示すように、棚部2bが形成される。
【0034】
そして、図4(b)に示すように、ダミーウエハDWが搭載される棚部2b表面に、粒径10μm以上100μm以下のSiC粉5を付着させる。
このSiC粉5は、エタノール溶媒に混合して、塗布あるいは吹き付けによって付着させる。尚、製品ウエハPWが搭載される棚部2a表面には、表面粗さが大きくなるため、前記SiC粉5を付着させない。
【0035】
その後、図4(c)に示すように、縦型ウエハボート表面に、CVD法により、SiC被膜層6を形成する。一般的には、高温減圧の条件のもと、20μm~100μmのSiC被膜層6を成膜する。
このとき、ダミーウエハDWが搭載される棚部2b表面に、粒径10μm以上100μm以下のSiC粉5を付着させているために、ダミーウエハDWが搭載される棚部2b表面の表面粗さRaは10μm以上50μm以下に形成される。
【0036】
一方、製品ウエハPWが搭載される棚部2b表面の表面粗さRaは、粒径10μm以上100μm以下のSiC粉が存在しないため、0.5μm以上3.0μm以下に形成される。尚、SiC被膜層の表面粗さRaが、3.0μmを超える場合には、研磨処理がなされる。
【0037】
更に、本発明にかかる実施例について説明する。
(実施例1)
先ず、反応焼結法によってSi-SiC複合材からなる3本の支柱、天板、底板を製作し、これら基材の表面を研磨し、算術平均表面粗さRa(JIS B0601-2001)が、0.5μmの部材を製作した。そして、これら部材を組立て、6インチ用のボートを製作した。
次に、ダミーウエハが搭載される棚部表面に、平均粒径60μmのSiC粉を、エタノール溶媒に混合して、塗布して付着させた。
尚、製品ウエハが搭載される棚部表面には、表面粗さが大きくなるため、前記SiC粉を付着させなかった。
【0038】
続いて、CVD炉内70torr、1200℃の条件下で、メチルトリクロロシランとHガスを、流量比3:30で適量導入し、前記6インチ用のボートを構成する支柱、天板、底板の表面に、厚さ50μmのSiC被覆膜を形成した。
このときの製品ウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは1.5μmであった。ダミーウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは、30μmであった。
【0039】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同じ条件で製作したボートのダミーウエハが搭載される棚部表面に、平均粒径20μmのSiC粉を、エタノール溶媒に混合して、塗布して付着させた。製品ウエハが搭載される棚部表面には、表面粗さが大きくなるため、前記SiC粉を付着させなかった。
【0040】
続いて、実施例1と同じ条件で前記ボートを構成する支柱、天板、底板の表面に、厚さ50μmのSiC被覆膜を形成した。
このときの製品ウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは2.1μmであった。ダミーウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは、10μmであった。
【0041】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同じ条件で製作したボートのダミーウエハが搭載される棚部表面に、平均粒径100μmのSiC粉を、エタノール溶媒に混合して、塗布して付着させた。製品ウエハが搭載される棚部表面には、表面粗さが大きくなるため、前記SiC粉を付着させなかった。
【0042】
続いて、実施例1と同じ条件で前記ボートを構成する支柱、天板、底板の表面に、厚さ50μmのSiC被覆膜を形成した。
このときの製品ウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは1.2μmであった。ダミーウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは、50μmであった。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ条件で製作したボートのダミーウエハが搭載される棚部表面および製品ウエハが搭載される棚部表面にSiC粉を付着させなかった。
【0044】
続いて、実施例1と同じ条件で前記ボートを構成する支柱、天板、底板の表面に、厚さ50μmのSiC被覆膜を形成した。
このときのダミーウエハが搭載される棚部表面粗さ、および製品ウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは共に1.5μmであった。
【0045】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同じ条件で製作したボートのダミーウエハが搭載される棚部表面に、平均粒径150μmのSiC粉を、エタノール溶媒に混合して、塗布して付着させた。製品ウエハが搭載される棚部表面には、表面粗さが大きくなるため、前記SiC粉を付着させなかった。
【0046】
続いて、実施例1と同じ条件で前記ボートを構成する支柱、天板、底板の表面に、厚さ50μmのSiC被覆膜を形成した。
このときの製品ウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは1.8μmであった。ダミーウエハが搭載される棚部の表面粗さRaは、80μmであった。
【0047】
そして、実施例1~3、比較例1及び比較例2の6インチウエハボートの棚部の全てに製品ウエハ、ダミーウエハを載置し、これをLP-CVD装置内に配置し、SiN膜を5μm積層させた後、ウエハボートをLP-CVD装置から取り出し、ウエハボートから製品ウエハを取り出す。
更に、新たな製品ウエハをウエハボートに載置し、ダミーウエハは連続使用し、SiN膜を5μm積層させた。そして、ダミーウエハは連続50回使用し、ダミーウエハとウエハボートの棚部との固着状況を調べた。
固着状況は、ダミーウエハを取り外した際にウエハボートの棚部にダミーウエハの破片の有無で評価した。
その結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
以上のように、ダミーウエハが搭載される棚部表面の表面粗さRaが10μm以上50μm以下である場合には、ダミーウエハの縦型ウエハボートに対する固着が抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0050】
1 縦型ウエハボート
2 支柱
2a 製品ウエハが搭載される棚部
2b ダミーウエハが搭載される棚部
3 天板
4 底板
5 SiC粉
6 SiC被覆膜
DW ダミーウエハ
PW 製品ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6