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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】電位治療器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/10 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A61N1/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018228484
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020089564
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】514278197
【氏名又は名称】西田 陸
(72)【発明者】
【氏名】西田 陸
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-214461(JP,A)
【文献】特開2006-130218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力をトランスで変圧して交流信号を出力する交流信号生成回路と、前記電力をトランスで変圧すると共に整流器で整流して直流信号を出力する直流信号生成回路と、前記交流信号生成回路から出力される交流信号と前記直流信号生成回路から出力される直流信号を合成すると共に、交流信号の実効値電圧と直流信号の電圧を一方の電圧を高くすると他方の電圧が低くなり、しかも相互に連動させるべく連動して且つ相反するように調整可能なミクシング回路と、前記交流信号と前記直流信号を合成した治療用電位を被治療者に印加する出力端子と、を備え、前記ミクシング回路は、前記直流信号を前記交流信号に合成する接続点と前記直流信号生成回路との間に配置される抵抗値を0から∞に可変できる回路を備えたことを特徴とする電位治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電位治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
電位治療器は、被治療者である生体に治療用電位を印加する治療機器である。一般的に、電位治療器は、治療用電位として交流出力を被治療者へ印加するタイプと、直流出力を被治療者へ印加するタイプに大別される。
【0003】
交流を出力する電位治療器の中には、出力波形の正電位の波高値と負電位の波高値の比率が1:3となるように、半波整流方式によって正電位側の波高値を小さくするものがある。(特許文献1及び特許文献2)この場合、出力波形に歪みなどが生じ、治療用出力波形としては好ましくないと言われている。
【0004】
他に、交流信号に負電位の直流信号を重畳させて負電位側にオフセットさせることにより、正電位の波高値と負電位の波高値の比率を1:3にするものがある。(特許文献3及び特許文献4)特許文献3の技術は、交流の出力電圧を維持したままオフセットされる回路構成であるため、オフセット量を大きく設定したときに交流波形の負電位側の波高値が高くなり過ぎて、被治療者である生体への影響が懸念される。特許文献4の技術は、特許文献3の問題点を解決するもので、交流電圧成分と直流電圧成分を制御するマイクロコンピュータにより算出し、出力を制御する方式であり、出力電圧が3000Vから9000Vと高く、直接生体に印加するものではなく、電磁誘導作用及び静電誘導作用により生体に印加する方式のため、治療装置の絶縁マットと人体の接触状況により、誘導される電圧が異なってしまう欠点がある。更に、生体にオフセット用の高電圧の直流電圧が静電誘導されるため、生体や身に着けている衣類に静電誘導された電圧が治療後でも静電気として蓄えられるため、身体がアースされたりすると放電し、ショックを受けることが懸念される。他方、直流出力を被治療者へ印加するタイプの電位治療器としては、本願発明者により出願された特許文献5によれば、電源装置に着脱可能な蓄電池により、人体が有する静電容量(本願では、体内コンデンサーと言う)に充電し、蓄電池の出力をON/OFFして、人体が持つ静電容量を充放電させるスイッチを設けた電位治療器が提案されているが、電位治療効果に有効性と即効性にやや弱みがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2609574号公報
【文献】特許第4359278号公報
【文献】特開平7-303706号公報
【文献】特開2006-130218号公報
【文献】特開2018-114097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、直流電位と交流電位の持ち合わせた治療効果を同時に治療用電位として被治療者に与えることのできる電位治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電位治療器は、電源からの電力をトランスで変圧して交流信号を出力する交流信号生成回路と、前記電力をトランスで変圧すると共に整流器で整流して直流信号を出力する直流信号生成回路と、前記交流信号生成回路から出力される交流信号と前記直流信号生成回路から出力される直流信号を合成すると共に、交流信号の実効値電圧と直流信号の電圧を一方の電圧を高くすると他方の電圧が低くなり、しかも相互に連動させるべく連動して且つ相反するように調整可能なミクシング回路と、前記交流信号と前記直流信号を合成した治療用電位を被治療者に印加する出力端子と、前記交流信号と前記直流信号の間に抵抗値を0から∞に可変できる回路と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に従う電位治療器の回路図である。
図2】上記回路における各所の電位を説明する図である。
図3】上記回路から出力される治療用電位を説明する図である。
図4】上記回路の可変抵抗器(ミクシング回路)の構成を説明する図である。
図5】体内コンデンサに蓄えられる電荷の充放電について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に従う電位治療器について、添付図面を参照しながら詳述する。なお、各図において、同一構成は同一の符号を付している。
【0010】
図1は、実施形態に従う電位治療器が備える駆動回路10の回路図である。
電位治療器は、駆動回路10により、例えば交流信号と直流信号を生成し、交流と直流の信号をミクシング回路により合成した治療用電位を生成し、被治療者Pに直接印加する。被治療者Pは生体であり、主として人であるが、動物等であってもよい。直流電位は、一例であるが、生体の抗酸化作用や免疫力の向上、血流の流れの改善などの治療効果があると言われている。交流は、一例であるが、生体のイオンバランスを整え自律神経を刺激することにより、慢性便秘・頭痛・不眠症・肩こり等に効果があると言われている。
【0011】
電位治療器の動力となる電力は、交流電源2から駆動回路10に供給する。電力は、一例として、電圧100V、周波数50Hz又は60Hzの交流電力を用いる。交流電力は、例えば商用電源からの電力である。或いは、自然エネルギー等で自家発電した電力など、他の交流電力を用いてもよい。供給した電力から治療用電位を生成する駆動回路10は、主たる構成として、交流信号生成回路3、直流信号生成回路4、可変抵抗器R3、帰還抵抗R6、交流信号と直流信号が合流する接続点b、治療用電位の出力端子5、および、治療用電位出力をON/OFFする切替えスイッチSW2を備えている。
【0012】
交流信号生成回路3は、交流電源2から供給される電力を変圧(例えば昇圧)して交流信号を生成する。直流信号生成回路4は、交流電源2から供給される電力を変圧(例えば昇圧)及び整流して直流信号を生成する。可変抵抗器R3は、一例として、交流信号生成回路3から出力される交流信号の電圧を調整すると共に、この調整に連動して直流信号生成回路4から出力される直流信号の電圧を調整する。接続点bにおいて、交流信号と直流信号は合成される。帰還抵抗R6は、駆動回路10のアースを大地アース6に接続する。出力端子5は、治療用電位を被治療者Pへ出力する。スイッチSW2は、治療用電位の出力のONとOFFを切り替える。以下、各回路の具体的な構成について詳述する。
【0013】
交流信号生成回路3は、トランスT1、抵抗R1、コンデンサC1、抵抗R2を備えている。トランスT1の一次側には、交流電源2が接続されている。トランスT1の一次側は、タップ切替スイッチSW1により、例えば「高」「中」「低」の3段階で二次側電圧を変えられるようになっている。タップの切り替えは、一例として、電位治療器の操作パネル(不図示)に設けた選択キーで切り替えられるようにする。一例として、「高」「中」「低」は、二次側の直流電圧が夫々500V、250V、125Vとなるように設定され、交流電圧は、直流電圧の変化に追従した値になる。但し、直流電圧は、500V、250V、125Vに限らず、500V以下であれば変更可能である。交流電圧は、波高値のピークツーピークが1000V以下であることが好ましい。
【0014】
トランスT1の二次側には、抵抗R1、コンデンサC1、抵抗R2を順に直列に接続している。トランスT1で昇圧した交流信号の電圧Eaを、抵抗R2及び可変抵抗器R3の合成抵抗と抵抗R1の抵抗とで分圧する。そして詳しくは後述するが、可変抵抗器R3の抵抗値を変えると、可変抵抗器R3と抵抗R2の合成抵抗が変わることによって、交流信号の電圧と直流信号の電圧とが連動して且つ相反するように調整される。ここで、「連動して且つ相反するように調整」とは、一方の電圧を高くすると他方の電圧が低くなり、しかも相互に連動していることを意味する。なお、抵抗R1は、被治療者PがトランスT1と直接接続されるのを防ぐ生体保護用の抵抗でもある。コンデンサC1は、直流電圧をカットするカップリングコンデンサである。抵抗R1及び抵抗R2は、一例として、1MΩ、1MΩの抵抗値のものを用いる。コンデンサC1は、一例として、2μFの容量のものを用いる。
【0015】
直流信号生成回路4は、トランスT2、ダイオードD1、抵抗R4、コンデンサC2を備えている。直流信号生成回路4で生成された直流電圧は、可変抵抗器R3と抵抗R2とで分割する。トランスT2は、交流信号生成回路3のトランスT1と一体であるトランスで、勿論、それぞれ別々のトランスを用いて構成してもよい。
【0016】
トランスT2の二次側には、ダイオードD1、抵抗R4、コンデンサC2を順に直列に接続している。ダイオードD1は、昇圧された交流信号を直流信号に整流する整流素子であり、整流器の一例である。ダイオードD1は、トランスT2の一方のタップにカソードが接続され、半波整流によって交流信号を負電位の直流信号に整流する。勿論、半波整流に限らず、負電位の直流信号を生成できる整流回路であればよい。コンデンサC2は平滑用であり、抵抗R4も平滑用の抵抗である。コンデンサC2は、一例として、2μFの容量のものを用いる。抵抗R4は、一例として、10KΩの抵抗値のものを用いる。
【0017】
交流信号生成回路3で生成した交流信号は、該回路内の抵抗R2とコンデンサC1との接続点aから出力する。直流生成回路4で生成した直流信号は、該回路内のコンデンサC2と抵抗R4との接続点cから出力する。回路3,4から出力される交流信号と直流信号は、接続点bで合成する。交流信号と直流信号は、接続点bで合成され、交流と直流の電圧を合成した治療用電位が生成される。勿論、接続点bに限らず、交流信号と直流信号を合成可能な接続点cなどの回路構成でもよい。
【0018】
可変抵抗器R3は、直流信号生成回路4が直流信号を出力する接続点cと、直流信号を交流信号に合成する接続点bとの間に配置する。既述のとおり、可変抵抗器R3の抵抗値を変えることによって、交流信号の電圧と直流信号の電圧を連動して且つ相反するように調整する。可変抵抗器R3は、一例として、図4(a)の可変抵抗方式で抵抗値が0(図1b-c間をショート)から∞(b-c間オープン)の範囲内で可変なものを用いる。可変抵抗器R3の他の構成例として、図4(b)に示すように、スイッチSW3を用いたスイッチ方式を用いてもよい。すなわち、図1のb-c間の抵抗値を可変にできる回路構成であればよい。
【0019】
駆動回路10における接続点dと接続点eは、交流信号生成回路3のトランスT1の二次側の一方の出力端子と直流信号生成回路4のトランスT2の二次側の一方の出力端子とを、例えば配線を通じて接続する。帰還抵抗器としての帰還抵抗R6は、この接続点d,eと大地アース6との間に接続する。帰還抵抗R6は、駆動回路10の基準アースを大地アース6に接続する。帰還抵抗R6は、一例として、200kΩ~1MΩの抵抗値の抵抗を用いる。
【0020】
ここで、図1の駆動回路10における可変抵抗器R3と接続点bは、ミクシング回路を構成する。すなわち、可変抵抗器R3と接続点bの組み合わせは、ミクシング回路の一例である。ミクシング回路は、詳しくは後述するように、交流信号と直流信号を合成すると共に、交流信号生成回路3から出力される交流信号の電圧と直流信号生成回路4から出力される直流信号の電圧を連動して調整することで、交流信号と直流信号の合成電圧の実効値、すなわち被治療者Pに印加される電位がおよそ同程度になる。さらに、交流分を含まない直流出力又は、直流分を含まない交流出力を得ることも可能にする。
【0021】
スイッチ制御部としてのスイッチSW2は、接続点bと治療用電位の出力端子5との間に配置する。スイッチSW2をON/OFFすると、被治療者Pに治療用電位を印加する状態と印加しない状態に切り替わる。スイッチSW2のON/OFFの切り替えは、治療中、例えば所定のタイミングで、例えば所定の時間連続して行う。一例として、マルチバイブレータを用いて所定の周期でON/OFFを切り替えるようにする。或いは、電位治療器の全体動作を制御するためのCPUを備えた制御部がスイッチ制御部を兼ねるようにしてもよい。スイッチSW2のON/OFFの切り替え周期は、一例として、50~120回/分とする。
【0022】
他の例として、スイッチSW2のON/OFFの切り替えを被治療者Pの生体情報に基づいて行うようにしてもよい。一例として、被治療者Pの脈拍をセンサーで検知し、検知される脈拍に同期してスイッチSW2をON/OFFする。なお、スイッチSW2に直列に接続している抵抗R5は、被治療者Pの生体保護用の抵抗である。抵抗R5は、一例として、1MΩの抵抗値のものを用いる。
【0023】
治療用電位を被治療者Pの生体に直接に印加し、出力端子5は、例えば被治療者Pの生体にあてる導電パッドなどの接続部である。被治療者Pは、例えば絶縁マットなどの絶縁部材7上に横たわるか或いは座るなどして治療を受ける。
【0024】
図2は、図1の駆動回路10における治療実行時の電位を模式的に示している。
すなわち、トランスT1による交流出力電圧Eaの分割された電圧Ebは、Eb=Ea・(R2//R3)/R1+(R2//R3)。(但し、R0が非常に大きく、C0が非常に小さいので、R0とC0を無視している。また、記号//は、並列接続された合成抵抗をあらわす。)トランスT2による直流出力Vaの分割された電圧Vbは、Vb=Va・R2/(R3+R2)。(但し、R2<R0とする。)出力電位EVはEV=Eb+Vcである。絶縁部材7上の被治療者Pは、大地アースとの間に、浮遊容量C0、絶縁抵抗R0がある。浮遊容量C0は、一例として1000pFである。絶縁抵抗R0は、一例として、50MΩである。
【0025】
続いて、上記電位治療器で実行される電位治療の流れについて一例を説明する。まず、図1に模式的に示すように被治療者Pを絶縁部材7上に寝かして電気的に浮遊状態とし、例えば出力端子5に接続された導電パッド等を被治療者Pの生体にあてる。そして、例えば電位治療器の操作パネル(不図示)で治療条件を設定し、治療を開始する。電位治療器の治療条件は、治療時間、タップ切替スイッチSW1の「高」「中」「低」の選択、図3に示すミクシングポジションの設定、SW2のON/OFFタイミングなどを設定する
【0026】
例えば被治療者Pが成人の場合、タップ切替スイッチSW1が「中」でミクシングポジションはC又はDが望ましい。子供の場合は、望ましくは、タップ切替スイッチSW1が「低」でミクシングポジションはAが望ましい。また、衰弱した高齢者の場合は、タップ切替スイッチSW1が「中」でミクシングポジションはAが望ましい。
【0027】
治療を開始すると、電位治療器の駆動回路10内では、交流信号生成回路3で交流信号が生成されると共に、直流信号生成回路4で直流信号が生成される。生成された交流信号と直流信号は、接続点bで合成されて治療用電位となる。治療用電位は、出力端子5を通じて被治療者Pの生体に印加される。
【0028】
ここで、可変抵抗器R3の抵抗値を変えると、治療用電位は、図3に模式的に示すように変化する。具体的には、可変抵抗器R3の抵抗値を大きくしていくと、直流信号の電圧が小さくなり、これに連動して交流信号の電圧が大きくなる。従って、図3のように交流波形の負電位側へのオフセット量が小さくなり、また交流波形の振幅が大きくなっている。図3のミクシングポジションDに調整すると、正電位の波高値と負電位の波高値の比率が1:3となり、生体のイオンバランスを整えることが言われている。さらに可変抵抗器R3の抵抗値を∞(無限大)にすると、すなわち図3のミクシングポジションEにすると、直流分を含まない交流出力となる。
【0029】
反対に、可変抵抗器R3の抵抗値を小さくしていくと、直流信号の電圧は大きくなり、これに連動して交流信号の電圧が小さくなる。従って、図3のように交流波形の負電位側へのオフセット量が大きくなるのにしたがって、交流波形の波高値が小さくなっている。図3のミクシングポジションAに調整すると、交流分を含まない直流出力となる。
【0030】
一般に、交流の治療用電位は、正電位の波高値と負電位の波高値の比率が1:3であることが好ましいと言われている。勿論、本実施形態の電位治療器でもミクシングポジションDで生成可能であるが、本実施形態では、大地のアース電位よりも負電位であって正電位を含まない治療用電位を生成して、被治療者Pの生体に印加する。すなわち、ミクシングポジションAからミクシングポジションCまでの範囲(図3における範囲H)内で調整した治療用電位を生成して印加する方が、治療に効果的である。
【0031】
ミクシングポジションA~Eを調整可能な可変抵抗器R3の構成については、図4に示すような構成が一例として挙げられる。すなわち、図4(a)のように例えば可変抵抗器R3の一端Dがオープンになるように構成し可変抵抗器R3の抵抗値の増減で、ミクシングポジション範囲A~E、すなわち図3で示すGの範囲を連続的にカバーした治療用電位(EV)を生成する。
【0032】
交流電位と直流電位の合成比を上記のようにミクシング回路で調整する一方、例えば成人,子供,性別など被治療者Pの特性に応じて治療用電位の大きさを変える場合は、タップ切替スイッチSW1の「高」「中」「低」で治療用電位が切替えられ、可変抵抗器R3で調整した交流電位と直流電位の合成比を維持したまま、治療用電位の大きさを変えることが可能である。
【0033】
治療用電位の印加は、スイッチSW2の切り替えによりON/OFFされるが、治療によっては、スイッチSW2をON/OFFさせずONのままで印加を続けてもよい。ここで、スイッチSW2をON/OFFさせたときに被治療者Pの体内で起き得る電流の流れについて、図5を参照しながら説明する。なお、図5は、一例としてミクシングポジションAで直流出力のみ与えたときの説明図である。図5(a)は、生体内にある体内コンデンサ(C)と体内負荷を電気回路で模式的に表したものである。治療実行時、スイッチSW2をONにして治療用電位を印加すると、電位治療器と生体との間に図5(a)に示す経路で充電電流が流れ、体内コンデンサ(C)に電荷が蓄えられる。そしてスイッチSW2をOFFにすると、体内コンデンサ(C)に蓄えられた電荷が図5(b)に示すように生体内において放電する。図5(b)の放電電流は図5(a)に示す経路で流れ、体内コンデンサ(C)に蓄えられた電荷を体内で消費させることで治療効果の有効性と即効性を促進させることにつながる。なお、ミクシングポジションの設定を変えて直流出力と交流出力を合成したものを与えてもよい。この場合も、体内コンデンサ(C)に蓄えられた電荷を体内で消費させることで治療効果の有効性と即効性を促進させる効果が期待できる。
【0034】
体内コンデンサ(C)に蓄えられる電荷量(Q)は、体内コンデンサ(C)に電圧(V)を印加すると、Q=CVである。電荷量(Q)から放出される電子の数(N)は、電子1個の電気量が1.6×1019であるので、電子の数NはN=C・V/1.6×10-19である。例えば、体内コンデンサを0.1μFとし、Vを300Vとすれば、(0.1×10-6)×300/1.6×10-19=187兆5000憶個が体内に供給され、その電子により、体内の活性酸素の抑制等の効果が期待できる。
【0035】
上述の実施形態によれば、交流信号を生成する交流信号生成回路、直流信号を生成する直流信号生成回路、交流信号生成回路から出力される交流信号の電圧と直流信号生成回路から出力される直流信号の電圧を連動して調整するミクシング回路を備え、ミクシング回路により交流信号と直流信号を合成した治療用電位を被治療者に印加する構成としたことにより、出力電位が安定で且つ治療に効果的な治療用電位を被治療者に与えることが可能となる。さらに、被治療者Pである生体と大地アース間の浮遊容量、絶縁抵抗の影響を抑えることができる。また、上述のミクシング回路を備えたことにより、少なくとも一つの電位治療器で、直流と交流を合成した出力による治療、直流出力のみの治療或いは交流出力のみの治療を選択して実行することが可能である。しかも簡単な回路構成でミクシング回路を実現しており、可変抵抗器R3の抵抗値を調整する操作だけでミクシングポジションを切替え可能である。
【0036】
また、既述の駆動回路10の構成にあっては、タップ切替スイッチSW1で一次側の供給電圧を切り替えると、可変抵抗器R3で調整した交流電位と直流電位の合成比を維持したまま、治療用電位の大きさの変えることが可能である。スイッチSW2をON/OFFさせることにより、体内コンデンサに蓄えられた電荷量の体内での消費を促進させることができる。ミクシング回路により、交流分を含まない直流出力又は、直流分を含まない交流出力を得ることができる。その他にも、駆動回路10の構成にすると次の利点がある。すなわち、交流波形は半波整流方式でないので波形歪みが抑えられる。周波数50Hz又は60Hzのように電源の周波数が異なっても回路内に容量性インピーダンスがないか或いはあっても小さいので、被治療者P(駆動回路10の負荷)の設置環境に影響を受けないため、出力変動が抑えられる。
【0037】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
【0038】
10 駆動回路
2 交流電源
3 交流信号生成回路
4 直流信号生成回路
5 治療用電位の出力端子
6 大地アース
7 被治療者を大地アースから絶緑するための絶縁部材
T1 交流信号生成回路のトランス
T2 直流信号生成回路のトランス
D1 整流用ダイオード
R3 可変抵抗器
R1、R2、R4、R5、R6 抵抗器
R0 大地アースと被治療者との間の絶縁抵抗
C1、C2 コンデンサ
C0 大地アースと被治療者との間の浮遊容量
SW1 T1及びT2の二次側出力電圧を切替えるタップ切替えスイッチ
SW2 治療用電位出力をON/OFFする切替えスイッチ
SW3 図4(b)に示すミクシングポジションを切替えるスイッチ
P 被治療者
a R2とC1の接続点
b 交流信号と直流信号が合流する接続点
c C2とR4の接続点
d T1の二次出力巻き線のアース接続点
e T2の二次出力巻き線のアース接続点
f T1及びT2のトランスを構成する一次側巻き線のアース接続点
g R6のアース接続点
Ea T1の交流出力電圧
Eb Eaの分割された出力電圧
Va T2の直流出力電圧
Vb 交流電圧Eb直流電圧-EVの合成された出力電圧
EV 被治療者に印加される治療用直流電圧
A、B、C、D、E ミクシングポジション
図1
図2
図3
図4
図5