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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】空調機の空気温度均一化構造
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/153 20060101AFI20240207BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F24F3/153
F24F13/02 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018228893
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020091074
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 俊一
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-070330(JP,A)
【文献】実開昭55-068609(JP,U)
【文献】特開2018-132233(JP,A)
【文献】特開2000-121261(JP,A)
【文献】特開平08-254328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/153
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気取入空調機に用いる空調機の空気温度均一化構造であって、
前記空調機の筐体内に、
外気ダクトを介して導入した外気を加熱するため、チューブに熱媒の過熱蒸気を流して過熱蒸気の保有する熱を外気に与えると過熱蒸気自身は凝縮して液体の水に相変化し下部に重力の作用で溜まる蒸気コイルとする第一の加熱コイルと、
前記加熱コイルの下流側に備えられ、冷水の流通するチューブを備えて外気を冷却する冷却コイルと、
前記加熱コイルと前記冷却コイルの間の外気の流路の上下のみを遮るよう、外気の流れに直交する同一の面に沿って配置された邪魔板と
を備え、
前記邪魔板を構成する上側の邪魔板および下側の邪魔板は、それぞれ下流側から見て第一の加熱コイルの幅方向全域を遮るだけの幅を有し
前記邪魔板を構成する上側の邪魔板および下側の邪魔板の高さは、前記加熱コイルの高さに対してそれぞれ5%以上15%以下であり、
導入した外気は筐体内を入口開口から出口開口へ至る一方向流れをなしながらも、前記第一の加熱コイルと前記冷却コイルの間の外気の流れは、前記邪魔板により上下を遮られ、部分毎に向きを曲げられ、外気が急縮小急拡大の状態を経て気流の乱れから渦が発生し空気全体が激しくかき乱されることにより混合させられることで、
前記第一の加熱コイルの下方におけると外気との熱交換効率の低さにより前記第一の加熱コイルの直後での外気温度が、流路の上側で高く、下側で低いという分布を解消し、均一化された温度の外気は下流の冷却コイルへ流される
ことを特徴とする空調機の空気温度均一化構造。
【請求項2】
前記上側の邪魔板は、前記筐体の天井に設けられた上部補強材に取付ブラケットを介して固定され、
前記下側の邪魔板は、前記筐体の床面に設けられた下部補強材に取付ブラケットを介して固定されることを特徴とする請求項1に記載の空調機の空気温度均一化構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱コイルの下流側に冷却コイルを備えた外気取入空調機において、加熱コイルから冷却コイルに流れる空気の温度分布を均一化するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工場など、室内の温度湿度条件を一定範囲に収める要求がありながら排気が多い建屋用途の空調方式には、室内へ温調した給気を送り込み室内熱負荷を処理した還気を吸い込む循環空調機と、外乱が多く夏期や冬期に熱処理負荷の多い外気と循環空気とを切り離して外気専用に温調を行う外気取入空調機(外気調和機)と、を備える空調方式の場合がある。また、工場などの空調方式では、工程の都合上、室内の外乱にならないよう温度湿度を一定範囲に収めるため、排気と同量の外気を温調して冷却除湿や加熱加湿を行う必要があり、空調機には一年中加熱用蒸気や冷却用冷水を流しておくことが要求される。
【0003】
図5は外気取入空調機(外気調和機)の一例を示している。外気取入空調機1は、筐体2内に、外気取入れガラリから取り入れダクトを介して導入する外気Aを浄化するフィルタ3と、取り込んだ外気Aを予熱するための予熱コイル(第一の加熱コイル)4と、該第一の加熱コイル4の下流で外気Aを冷却する冷却コイル5と、該冷却コイル5の下流で外気Aを加熱するための加熱コイル(第二の加熱コイル)6と、気流を作り出すファン7を備えている。また、ここに示した例の場合、第二の加熱コイル6の下流側且つファン7の上流側の位置に蒸気式の加湿器8を備えている。
【0004】
フィルタ3は、例えば一対のロール間にフィルタが張り渡されたロール式のフィルタであり、外気(空気)Aに含まれる塵や埃の除去を行う。ある程度の稼働時間が経過すると目詰まりが生じるので、一方のロールから所定の長さのフィルタシートを繰り出すと共に、それまで使用していたフィルタシートを他方のロールに巻き取り、これを繰り返すことで長期間にわたり大気から取り入れた外気Aが同伴する塵埃の除塵性能を保つようになっている。
【0005】
第一および第二の加熱コイル4,6は、熱媒を低圧蒸気とする蒸気コイルであって、金属等の熱伝導性の高い素材で形成されたチューブと、該チューブの外側に設けたフィンにより構成されている。前記チューブは、例えば外気Aの通過方向に対して上下あるいは左右に蛇行しつつ、外気Aの通過方向と交差する面を構成するように配置されており、この内部に加熱された高温(例えば、120℃~140℃程度)の蒸気を導入しつつ外面及び該外面に接触して延設されるフィンに外気Aを接触させることで、外気取入空調機1に取り込んだ外気Aを加熱するようになっている。
【0006】
また、冷却コイル5は、金属等により形成されたチューブと、該チューブの外側に設けたフィンにより構成されている。上下あるいは左右に蛇行する前記チューブの内部に冷水である冷媒を通しつつ、チューブおよびフィンの外面に外気Aを接触させることで、外気取入空調機1に取り込んだ外気Aを冷却するようになっている。
【0007】
加湿器8は、流通する外気Aに対し加湿を行う装置であり、第二の加熱コイル6を通過した後の外気Aに対して蒸気を噴射し、外気Aの湿度を上昇させるようになっている。
【0008】
夏季等、外気の乾球温度および絶対湿度が高い外気条件下においては、冷却コイル5に冷水を通して冷却するが、外気Aを導入する先の室内の乾球温度条件によってはさらに第二の加熱コイル6に蒸気を熱媒として通しつつ所定温度まで外気Aを加熱してファン7を作動させる(第一の加熱コイル4の運転は、外気温が十分に高ければ不要である)。ファン7の作動により、外気取入れガラリと外気ダクトを介して接続される筐体2の入口開口2aから導入された外気Aは、フィルタ3により塵や埃を除去されたうえで冷却コイル5を通過し、冷却コイル5のチューブ内を流通する冷水と熱交換して冷却される。そして外気Aは、冷却コイル5により外気Aの露点以下に冷却されて冷却コイル表面に外気Aの水分が凝結し、凝結した水分は冷却コイル5の表面に結露する。飽和水蒸気分圧以上の状態で外の系に凝縮して水分が奪われたことにより絶対湿度を下げられた外気Aは、さらに下流側の第二の加熱コイル6を通過し、第二の加熱コイル6のチューブ内を流通する蒸気と熱交換して再び加熱される。こうして、適当な温度および湿度に調和された外気Aは、ファン7から図示しない空調対象の室内等へ供給される。
【0009】
また、冬季等、外気温が低い条件下においては、第二の加熱コイル6に加え、予熱コイルである第一の加熱コイル4にも蒸気を通しつつ外気Aを加熱し、下流にある冷却コイル5の冷媒の凍結防止を図りながらファン7を作動させる。冷却コイル5の運転は、外気の絶対湿度が十分に低ければ不要である。だが日差により同じ日に外気温度が上昇し冷却が必要になることがままあり、冷却コイル5の冷媒を抜いてしまうことはできない。ファン7の作動により、筐体2の入口開口2aから導入された外気Aは、フィルタ3により塵や埃を除去されたうえで第一の加熱コイル4を通過し、第一の加熱コイル4のチューブ内を流通する蒸気と熱交換して加熱される。さらに、外気Aは下流側の第二の加熱コイル6を通過し、第二の加熱コイル6のチューブ内を流通する蒸気と熱交換して十分な温度まで加熱される。要求される湿度に対して外気温の絶対湿度が不足している場合には、加湿器8を作動させ、外気Aの湿度を上昇させる。適当な温度および湿度に調和された外気Aは、ファン7から図示しない空調対象の室内等へ供給される。
【0010】
尚、この種の空調機に関連する技術を記載した文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-174650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したような外気取入空調機1の運転においては、時季や条件によっては使用されない装置がある。すなわち、十分に外気温が高ければ第一の加熱コイル4の運転は不要であるし、外気温が低い時季は冷却コイル5の運転は行われない。しかしながら、これらの装置は、一日のうちのある時間は使用されない場合があったとしても、天候や低気圧などの移り変わりで一日のうちでも大きく温度湿度が変化する場合がある外気Aを室内の所定の温度湿度に温調する必要上、コイル内の冷媒や熱媒が次の瞬間に流されることがある。これにより時季や条件にかかわらず、たとえ制御弁により流動作動しておらず冷媒や熱媒が停滞していたとしても、第一の加熱コイル4や冷却コイル5を外気Aが通過することになる。
【0013】
ここで、冬季等において、冷却コイル5のチューブ内に冷媒である水が留まったままの状態で外気取入空調機1を運転すると、冷たい外気Aの流れによって熱を奪われた冷却コイル5の内部の水が凍結し、チューブの変形や破損を招く場合がある。こういった事態は無論、冷却コイル5の上流側に位置する第一の加熱コイル4で外気Aを均一に十分に加熱すれば防ぎ得るものではあるが、特に蒸気式の加熱コイルにおいては、過熱蒸気が気体として加熱コイル内に導入されても、過熱蒸気の保有する熱を加熱コイルを介して外気Aに与えると過熱蒸気自身は凝縮して液体の水に相変化する。そして相変化した水は加熱コイル内の下部に重力の作用で溜まることになり、上部には高温の蒸気、下部には低温の水となって相がはっきり分離しがちになる。このため空気の加熱性能に関して部分ごとのばらつきが生じやすいという事情がある。チューブ内を流通する蒸気は、チューブを水平に延長往復させても、鉛直に延長往復させても、ブロック部分を含め熱交換に伴った相変化によって気体の蒸気は密度の大きく異なる液体の水になるので、上下にチューブ内温度差が生じ、また相対温度差の小ささやトラップでの間欠排水により、コイル下部の熱交換率が低下する。とりわけ、チューブが水平左右に蛇行するように配置され、上方から蒸気を導入して下方から抜き出すようになっている場合、加熱コイルの下方における熱交換効率が低くなりがちである。
【0014】
よって、図5に示す如き外気取入空調機1を冬季に運転すると、場合によっては第一の加熱コイル4を運転しても、第一の加熱コイル4の下寄りの位置を通過する外気Aに関しては外気温からあまり上昇せず、低い温度のまま冷却コイル5に到達することになる。第一の加熱コイル4への熱量の供給は、例えば第一の加熱コイル4の下流側における外気Aの温度に基づいて蒸気の供給量を調整することによって制御されるが、ここで制御のパラメータとして用いる空気温度の測定点は、多くの場合、下流側から見て第一の加熱コイル4の上下の中央あたりや下流の筐体上面から差し込まれた位置などに設定される。このため、第一の加熱コイル4の下部を通過する外気Aの温度は、外気Aの温度制御に考慮されない。
【0015】
また、冷却コイル5において凍結の発生が懸念されるほど外気温が低い場合には、第一の加熱コイル4の下流側の測定点にて測定される外気Aの温度によらず、第一の加熱コイル4へ導入される蒸気の制御弁を強制的に開放し、冷却コイル5に流れる外気Aの温度を上昇させる方法もあるが、このような制御を行った場合、要求される外気Aの温度に対して過剰な量の熱を第一の加熱コイル4で供給してしまう状態や、筐体2の出口開口2bで所定の温度湿度にするため冷却コイル5で過剰な熱を打ち消す冷媒の冷熱を供給する状態となり、温熱と冷熱の生成エネルギーが非効率的である。
【0016】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構造でエネルギーの余分な供給を回避しつつ冷却コイルの凍結を効果的に防止し得る空調機内部の予熱セクション後流の空気温度均一化構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、外気取入空調機に用いる空調機の空気温度均一化構造であって、
前記空調機の筐体内に、
外気ダクトを介して導入した外気を加熱するため、チューブに熱媒の過熱蒸気を流して過熱蒸気の保有する熱を外気に与えると過熱蒸気自身は凝縮して液体の水に相変化し下部に重力の作用で溜まる蒸気コイルとする第一の加熱コイルと、
前記加熱コイルの下流側に備えられ、冷水の流通するチューブを備えて外気を冷却する冷却コイルと、
前記加熱コイルと前記冷却コイルの間の外気の流路の上下のみを遮るよう、外気の流れに直交する同一の面に沿って配置された邪魔板と
を備え、
前記邪魔板を構成する上側の邪魔板および下側の邪魔板は、それぞれ下流側から見て第一の加熱コイルの幅方向全域を遮るだけの幅を有し
前記邪魔板を構成する上側の邪魔板および下側の邪魔板の高さは、前記加熱コイルの高さに対してそれぞれ5%以上15%以下であり、
導入した外気は筐体内を入口開口から出口開口へ至る一方向流れをなしながらも、前記第一の加熱コイルと前記冷却コイルの間の外気の流れは、前記邪魔板により上下を遮られ、部分毎に向きを曲げられ、外気が急縮小急拡大の状態を経て気流の乱れから渦が発生し空気全体が激しくかき乱されることにより混合させられることで、
前記第一の加熱コイルの下方におけると外気との熱交換効率の低さにより前記第一の加熱コイルの直後での外気温度が、流路の上側で高く、下側で低いという分布を解消し、均一化された温度の外気は下流の冷却コイルへ流される
ことを特徴とする空調機の空気温度均一化構造にかかるものである。
【0018】
本発明の空調機の空気温度均一化構造において、前記上側の邪魔板は、前記筐体の天井に設けられた上部補強材に取付ブラケットを介して固定され、
前記下側の邪魔板は、前記筐体の床面に設けられた下部補強材に取付ブラケットを介して固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の空調機の空気温度均一化構造によれば、簡単な構造でエネルギーの余分な供給を回避しつつ冷却コイルの凍結を効果的に防止し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施例による空調機の構成を示す概略断面図である。
図2】第一実施例における邪魔板の取付構造を示す分解斜視図である。
図3】第一実施例の空調機の空気温度の均一化性能を実証する試験における空気温度の測定点の配置を説明する斜視図である。
図4】本発明の第二実施例による空調機の構成を示す概略断面図である。
図5】従来の外気取入型の空調機の構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0024】
図1図2は本発明の空調機の空気温度均一化構造を適用した空調機の構成の一例を示しており、図中、図5と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0025】
本第一実施例の基本的な構成は上記従来例(図5参照)と同様であり、図1に示す如く、空調機1の筐体2内に、外気取入れガラリから外気ダクトを介して導入される外気Aを浄化するロール式のフィルタ3、取り込んだ外気Aを予熱するための第一の加熱コイル4、外気Aを冷却する冷却コイル5、外気Aを再加熱するための第二の加熱コイル6、気流を作り出すファン7、蒸気式の加湿器8を備えている。
【0026】
そして、本第一実施例の場合、第一の加熱コイル4の下流側且つ冷却コイル5の上流側の位置に、冷却コイル5へ流れる外気Aの温度を均一化させるための邪魔板9を設置した点を特徴としている。
【0027】
邪魔板9は、図1図2に示す如く、外気Aの流路に対し、上部と下部とをそれぞれ遮る形で配置される。上部の邪魔板9aと下部の邪魔板9bは、それぞれ入口開口2aから出口開口2bへ至る外気Aの流れに直交するように配置され、互いに同一の面に沿って配置されている(尚、ここで「外気Aの流れに直交するような配置」「同一の面に沿った配置」とは、上下の邪魔板9a,9bが外気Aの流れ方向に対し正確に直交していること、また、互いに正確に面一をなしていることを必ずしも意味しない。邪魔板9a,9bは、後述するような外気Aの流れを曲げる作用を好適に発揮できればよく、それぞれのなす面の向きが外気Aの流れに直交する向きから多少ずれていたり、互いのなす面が多少不一致であったりしても問題はない)。筐体2によって形成される外気Aの流路は、図2に示す如く方形の断面形状を有しており、この流路に配置される第一の加熱コイル4は、全体として薄い直方体状の形状をなしている。上部および下部の邪魔板9a,9bは、それぞれ下流側から見て第一の加熱コイル4の幅方向全域を遮るだけの幅を有している。邪魔板9a,9bの高さは、それぞれ第一の加熱コイル4の高さに対して5%以上50%以下であり、より好適には3%以上25%以下、更に好適には5%以上15%以下である。この数値幅が好適であるのは、邪魔板9a,9bの高さ方向の寸法が小さすぎると後述する空気温度の均一化の効果が小さくなる一方、寸法が大きすぎると外気Aの流通にあたって圧力損失が過大になってしまうからである。
【0028】
上側の邪魔板9aは、第一の加熱コイル4の下流側に、下流側から見て第一の加熱コイル4の上端部を覆うように配置され、下側の邪魔板9bは、第一の加熱コイル4の下流側に、下流側から見て第一の加熱コイル4の下端部を覆うように配置される。上側の邪魔板9aの設置にあたっては、例えば図2に示す如く、筐体2の天井に流路方向に沿って設けられた上部補強材10に対し、直角三角形状の取付ブラケット11の底辺にあたる一辺を固定し、別の一辺に上側の邪魔板9aを固定すれば良い。また、下側の邪魔板9bの設置にあたっては、筐体2の床面に流路方向に沿って設けられた下部補強材12に対し、直角三角形状の取付ブラケット11の底辺にあたる一辺を固定し、別の一辺に下側の邪魔板9bを固定すれば良い。上部補強材10や下部補強材12に対する取付ブラケット11の固定や、取付ブラケット11に対する邪魔板9の固定は、例えば図示しないボルト等の締結を用いて行うことができるが、その他にも溶接や接着剤等によって行っても良い。尚、ここに説明した邪魔板9a,9bの固定方式は一例であって、外気Aの流路に対して適当な面をなすよう各邪魔板9を配置できる限り、この他にも種々の固定方式を採用し得ることは勿論である。
【0029】
ここで、一般的な空調機においては、加熱コイルと、その下流側の冷却コイルとの間に、作業員が点検や整備を行うためのスペースが設けられていることが多い。したがって、本第一実施例の如き邪魔板9は、第一の加熱コイル4と冷却コイル5の間に容易に設置することができるし、既存の空調機であっても同様の邪魔板を容易に取り付けることができる。また、邪魔板9や取付ブラケット11といった部材は単純な構造で良いので、設置にあたって点検整備用のスペースを大きく侵食してしまうことはなく、点検や整備の作業に支障を来す心配はない。
【0030】
このように、外気Aの流路に対して上下にそれぞれ邪魔板9a,9bを設置すると、第一の加熱コイル4を通過した外気Aのうち、流路の上側を流れる外気Aは上側の邪魔板9aに衝突して流れの向きを下方に曲げられ、流路の下側を流れる外気Aは下側の邪魔板9bに衝突して流れの向きを上方に曲げられる。上下に向きを変えられた流れ同士は、流路の中央部において衝突し、中央部を流れてきた外気Aと混ざり合うことになる。つまり、邪魔板9a,9bによって空調機1の空気流れ方向の断面で急激に流路面積が狭まりその後急激に拡がる急縮小急拡大の状況が発生する。このような形状の流路では流れる空気流において流路抵抗が発生するが、空気流が筐体の断面積により制限されている面速がある程度の範囲で一定である邪魔板の上流では、動圧がある程度の範囲で一定であり且つ静圧が少ない状況であったところ、邪魔板9a,9bに空気流がぶつかることになる急縮小部分で動圧が静圧に転換されたのち、流路の中央部で面速が上昇して静圧の一部が動圧に転換され、急拡大部分では速くなった動圧が急激に遅くなることで更に動圧(転換圧力)の一部が再度静圧に転換されるという圧力変動が生じる。このとき急縮小急拡大部分では気流の乱れから渦が発生し空気全体が激しくかき乱され、温度差による層を成すような分かれた流れを混合することとなる。この渦の発生エネルギーで全圧は少し消費される代わりに非常に良好に混合されることとなる。
【0031】
上に説明したように、第一の加熱コイル4を稼働させる場合、該第一の加熱コイル4においては、位置によって外気Aとの熱交換効率にばらつきが生じやすく、その結果、加熱コイル4を通過した外気Aに、通過する位置によって温度の不均一が発生する。すなわち、加熱コイル4の直後における外気Aの温度は、おおむね流路の上側で高く、下側で低いという分布を示しがちである。ところが、本第一実施例の如く邪魔板9により部分毎に外気Aの流れの向きを曲げ、混合させれば、均一化された温度の外気Aが下流の冷却コイル5へ流れ込むことになる。
【0032】
ここで、第一の加熱コイル4は、加熱された蒸気の流通するチューブを備えた蒸気コイルとして構成されているので、チューブ内を流通する蒸気は、チューブを水平に延長往復させても、鉛直に延長往復させても、ブロック部分を含め熱交換に伴った相変化によって気体の蒸気とは密度の大きく異なる液体の水になる。そして重力により上下にチューブ内温度差が熱媒の相とともに生じ、熱媒と外気Aとの相対温度差の小ささや、トラップでの間欠排水で熱媒の水が停滞することがあるため、コイル下部の熱交換率が下がって上述の如き温度むらが生じやすい。しかしながら下流側に邪魔板9を備えることで、簡便且つ効果的に外気Aの温度を均一化することができる。
【0033】
本第一実施例の空調機1に関し、冷却コイル5に流れ込む外気Aの温度分布を検証する実証試験を行った。図3は、この実証試験において外気Aの温度を測定した測定点の位置を示している(同じ測定点の位置を、図1にも破線にて示している)。本実証試験では、邪魔板9の下流側且つ冷却コイル5の上流側の合計9箇所に測定点13(13a~13i)を設定した。9箇所の測定点13は、外気Aの流通方向に直交する同一平面上に、流通方向に関して上中下の3段に、それぞれ中央および左右の3箇所ずつ配置した。ファン7と第一の加熱コイル4を作動させ、外気Aの温度を測定した。外気温が9.8℃の条件下において、各測定点13にて測定された外気Aの温度は下記表1の通りである。
【表1】

【0034】
導入された9.8℃の外気は、第一の加熱コイル4を通過することで加温され、下流側の冷却コイル5に流れ込む前の段階で、中段では30℃程度の温度が、上段では33℃前後の温度が、それぞれ測定された。下段においては外気Aの温度は最低でも15.4℃を示し、中段では外気温に対して20℃程度加温されている運転条件において、下段でも外気温に対し5℃以上高い温度が保たれていた。すなわち、邪魔板9の作用により外気Aが撹拌された結果、第一の加熱コイル4の下流側における温度分布が均一化され、外気温で流入した外気Aの一部がほぼ外気温のままで冷却コイル5に流れ込むような事態は改善されたと言える。
【0035】
尚、このような邪魔板による撹拌構造は、本第一実施例に説明したような外気取入空調機1とは異なる構成にも適用することができる。例えば図4に第二実施例として示す如く、第一の加熱コイル4と冷却コイル5の間に加湿器14(ここでは、流路途中に設置したパイプ等の表面に水を滴下し、外気Aの通過に伴って気化させる型式の加湿器を想定している)を配置した構成に対しても、第一の加熱コイル4の下流側に邪魔板9を設置すれば同様の作用効果を得ることができる。すなわち、加熱コイルの下流側に冷却コイルが配置された構成であれば型式を問わず、前記加熱コイルと前記冷却コイルの間に上記邪魔板9の如き邪魔板を設置することで、加熱コイルを通過した空気を撹拌して温度を均一化することが可能である。更に外気取入空調機1を内調機(室内循環型)として、還気の一部を排気し同量を外気として導入する空調機に適用しても良い。
【0036】
以上のように、上記各実施例においては、導入した外気Aを加熱するため、チューブに熱媒の蒸気を流して蒸気コイルとする第一の加熱コイル4と、前記加熱コイル4の下流側に備えられ、冷媒の流通するチューブを備えて外気Aを冷却する冷却コイル5と、前記加熱コイル4と前記冷却コイル5の間の外気Aの流路の上下を遮るよう、外気Aの流れに直交する同一の面に沿って配置された邪魔板9a,9bとを備えている。こうすることで、邪魔板9により部分毎に外気Aの流れの向きを曲げて混合させ、均一化された温度の外気Aを下流の冷却コイル5へ流すことができる。
【0037】
上記各実施例の空調機の空気温度均一化構造において、邪魔板9を構成する上側の邪魔板9aおよび下側の邪魔板9bの高さは、加熱コイル4の高さに対してそれぞれ5%以上50%以下とすることができる。このようにすると、5%の場合外気Aの下方だけを持ち上げるように縮小拡大すると、持ち上げた外気Aが、その上部の暖かい気流にぶつけることができる。一方、50%直近の場合外気Aの面速が急激に2倍速になってすぐに1倍速になることで渦が多数生じるが、この面速差なら圧力損失が数十Paであり、ファン動力に多大な影響を与えることがないと共に、通常の筐体長さで外気Aが急拡大しきらない問題も防止できる速度域なので、特に効果的に外気Aの温度を均一化することができる。
【0038】
上記各実施例の空調機の空気温度均一化構造において、加熱コイル4と冷却コイル5の間の外気Aの流路が邪魔板9a,9bにより上下を遮られ、外気Aが急縮小急拡大の状態を経て渦を多く発生することができ、このようにすると、蒸気コイルである加熱コイル4を備えた外気取入空調機1において、効果的に外気Aの温度を均一化することができる。
【0039】
上記各実施例の空調機の空気温度均一化構造は、外気取入空調機(外気調和機)1に用いると、取り込んだ外気Aの温度を容易且つ好適に均一化することができる。
【0040】
したがって、上記実施例によれば、簡単な構造でエネルギーの余分な供給を回避しつつ冷却コイルの凍結を効果的に防止し得る。
【0041】
尚、本発明の空調機の空気温度均一化構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0042】
4 加熱コイル(第一の加熱コイル)
5 冷却コイル
9 邪魔板
9a 邪魔板(上側の邪魔板)
9b 邪魔板(下側の邪魔板)
A 外気
図1
図2
図3
図4
図5