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特許7431501所定の干渉を有するツーウェイクラッチのためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】所定の干渉を有するツーウェイクラッチのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20240207BHJP
   F16D 41/064 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F16D41/08 Z
F16D41/064
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018236666
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2019108983
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】62/607,570
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515138399
【氏名又は名称】フスコ オートモーティブ ホールディングス エル・エル・シー
【氏名又は名称原語表記】HUSCO Automotive Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クジャック
(72)【発明者】
【氏名】アレン テウェス
(72)【発明者】
【氏名】オースティン シュミット
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-169674(JP,A)
【文献】特開2017-025920(JP,A)
【文献】特開2010-001877(JP,A)
【文献】特開2010-014097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14,41/00-47/06
F01L 1/34-1/356,9/00-9/40,
13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部材と、駆動部材と、ロッキング機構と、係合部材と、を備えたツーウェイクラッチであって、
前記ロッキング機構は、前記ロッキング機構に負荷を加えることとなる前記駆動部材に対する外力の印加に応答して、前記被駆動部材と前記駆動部材とに接触するよう動作可能に構成され、
前記係合部材が、前記ロッキング機構を選択的に移動させるよう構成されており、
前記ロッキング機構が、前記駆動部材を回転させる力が印加されていない無負荷状態にあるときに、前記係合部材が前記ロッキング機構に接触し、これにより前記ロッキング機構が前記被駆動部材及び前記駆動部材のうちの少なくとも1つと係合しないように前記ロッキング機構を付勢する所定の干渉を与えるよう構成されている
ことを特徴とするツーウェイクラッチ。
【請求項2】
前記被駆動部材が第1合わせ面を含み、前記駆動部材が第2合わせ面を含むことを特徴とする請求項1に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項3】
前記ロッキング機構が前記第1合わせ面と前記第2合わせ面との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項4】
前記所定の干渉によって、前記ロッキング機構と、前記第1合わせ面及び前記第2合わせ面のうちの少なくとも1つと、の間に間隙が形成されるよう構成されていることを特徴とする請求項3に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項5】
前記被駆動部材が内燃エンジン上のクランク軸に回転可能に連結されており、前記駆動部材が前記内燃エンジン上のカム軸に回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項6】
前記ロッキング機構が1以上の軸受を備えることを特徴とする請求項1に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項7】
前記ロッキング機構が、第1ロッキング部材及び第2ロッキング部材を備え、
前記第1ロッキング部材及び前記第2ロッキング部材が、付勢素子によって互いに離れる方向に付勢されるよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項8】
前記第1ロッキング部材及び前記第2ロッキング部材がころ軸受の形であることを特徴とする請求項7に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項9】
前記ロッキング機構が前記無負荷状態にあるときに、前記係合部材が前記ロッキング機構を移動させることができるよう構成されたことを特徴とする請求項に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項10】
前記ロッキング機構が前記無負荷状態にあって前記係合部材が前記ロッキング機構を移動させたときに、前記駆動部材が前記被駆動部材に対して移動可能であるよう構成されたことを特徴とする請求項に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項11】
第1合わせ面を含む被駆動部材と、
第2合わせ面を含む駆動部材と、
前記第1合わせ面と前記第2合わせ面との間に配置されたロッキング機構と、
係合部材と、を備えたツーウェイクラッチであって、
前記ロッキング機構は、前記ロッキング機構に負荷を加えることとなる前記駆動部材に対する外力の印加に応答して、前記第1合わせ面及び前記第2合わせ面に接触するよう動作可能に構成され、
前記係合部材が、前記ロッキング機構を選択的に移動させるよう構成されており、
前記ロッキング機構が、前記駆動部材を回転させる力が印加されていない無負荷状態にあるときに、前記係合部材によって前記ロッキング機構に所定の干渉が与えられ、これにより前記ロッキング機構が前記第1合わせ面及び前記第2合わせ面のうちの少なくとも1つから外れた状態に保持されるよう構成されていることを特徴とするツーウェイクラッチ。
【請求項12】
前記所定の干渉によって、前記ロッキング機構と、前記第1合わせ面及び前記第2合わせ面のうちの少なくとも1つと、の間に間隙が形成されるよう構成されていることを特徴とする請求項11に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項13】
前記被駆動部材が内燃エンジン上のクランク軸に回転可能に連結されており、前記駆動部材が前記内燃エンジン上のカム軸に回転可能に連結されていることを特徴とする請求項11に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項14】
前記ロッキング機構が1以上の軸受を備えることを特徴とする請求項11に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項15】
前記ロッキング機構が、第1ロッキング部材及び第2ロッキング部材を備え、
前記第1ロッキング部材及び前記第2ロッキング部材が、付勢素子によって互いに離れる方向に付勢されるよう構成されていることを特徴とする請求項11に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項16】
前記第1ロッキング部材及び前記第2ロッキング部材がころ軸受の形であることを特徴
とする請求項15に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項17】
前記ロッキング機構が前記無負荷状態にあるときに、前記係合部材が前記ロッキング機構を移動させることができるよう構成されたことを特徴とする請求項11に記載のツーウェイクラッチ。
【請求項18】
前記ロッキング機構が前記無負荷状態にあって前記係合部材が前記ロッキング機構を移動させたときに、前記駆動部材が前記被駆動部材に対して移動可能であるよう構成されたことを特徴とする請求項17に記載のツーウェイクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年12月19日に出願された「所定の干渉を有するツーウェイクラッチのためのシステム及び方法」と称される米国仮特許出願第62/607,570号に基づくとともにその優先権を主張し、当該仮出願の内容は全てここに引用することにより盛り込まれているものとする。
【0002】
(連邦政府の支援による研究に関する言明)
該当無し。
【0003】
本開示は一般にツーウェイクラッチに関し、特にロッキング機構に与えられる所定の干渉を有するツーウェイクラッチに関する。
【背景技術】
【0004】
従来のツーウェイクラッチは、被駆動部材と、被駆動部材に沿って又は被駆動部材に対して二方向に移動し得る駆動部材と、を含むことができる。一部の応用では、ツーウェイクラッチは、被駆動部材と駆動部材とが一致して移動するモードと、駆動部材が被駆動部材に対して移動することができるモードと、の間を選択的に遷移することができる。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、一側面において、被駆動部材と、駆動部材と、ロッキング機構と、を含むツーウェイクラッチを提供する。前記ロッキング機構は、前記ロッキング機構に負荷を加えることとなる前記駆動部材に対する外力の印加に応答して、前記被駆動部材と前記駆動部材とに接触するよう動作可能に構成されている。ツーウェイクラッチは係合部材をさらに含む。前記ロッキング機構が無負荷状態にあるときに、前記係合部材が前記ロッキング機構に接触し、これにより前記ロッキング機構が前記被駆動部材及び前記駆動部材のうちの少なくとも1つと係合しないように前記ロッキング機構を付勢する所定の干渉を与えるよう構成されている。
【0006】
本開示は、一側面において、第1合わせ面を含む被駆動部材と、第2合わせ面を含む駆動部材と、前記第1合わせ面と前記第2合わせ面との間に配置されたロッキング機構と、を含むツーウェイクラッチを提供する。前記ロッキング機構は、前記ロッキング機構に負荷を加えることとなる前記駆動部材に対する外力の印加に応答して、前記第1合わせ面及び前記第2合わせ面に接触するよう動作可能に構成されている。ツーウェイクラッチは係合部材をさらに含む。前記ロッキング機構が無負荷状態にあるときに、前記係合部材によって前記ロッキング機構に所定の干渉が与えられ、これにより前記ロッキング機構が前記第1合わせ面及び前記第2合わせ面のうちの少なくとも1つから外れた状態に保持されるよう構成されている。
【0007】
本開示は、別の側面において、内燃エンジンのクランク軸とカム軸の間の回転関係を選択的に変化させるよう構成されたカムフェージングシステムを提供する。カムフェージングシステムは、前記クランク軸に回転可能に連結された被駆動コンポーネントと、前記カム軸に回転可能に連結された駆動コンポーネントと、ロッキング機構と、を含み、前記ロッキング機構は、前記ロッキング機構に負荷を加えることとなる前記カム軸に対するトルクパルスの印加に応答して、前記被駆動コンポーネントと前記駆動コンポーネントとに接触するよう動作可能に構成されている。カムフェージングシステムは係合部材をさらに含む。前記ロッキング機構が無負荷状態にあるときに、前記係合部材によって前記ロッキング機構に所定の干渉が与えられ、これにより前記ロッキング機構が前記被駆動コンポーネント及び前記駆動コンポーネントのうちの少なくとも1つから外れた状態に保持されるよう構成されている。
【0008】
本開示は、別の側面において、カムフェージングシステムを作動させるのに必要なインプット力を減少させる方法を提供する。機械カムフェージングシステムは、内燃エンジンのクランク軸とカム軸の間の回転関係を選択的に変化させるよう構成されるとともに、被駆動部材と、駆動部材と、ロッキング機構と、係合部材と、を含む。係合部材はロッキング機構を選択的に移動させるよう構成される。前記方法は、被駆動部材をクランク軸に回転可能に連結することと、駆動部材をカム軸に回転可能に連結することと、無負荷状態においてロッキング機構と被駆動部材及び駆動部材のうちの少なくとも1つとの間に間隙が存在するよう係合部材を介してロッキング機構に所定の干渉を与え、これにより、ロッキング機構を移動させるため及びカムフェージングシステムを作動させるために係合部材に対し作用させなければならないインプット力を減少させることと、を含む。
【0009】
本開示の上記の及び他の側面並びに利点は、以下の記載において明らかとなる。本明細書の以下の記載は、本明細書の一部を構成するとともに本開示の好ましい構成を例示する添付の図面を参照する。しかしながらそのような構成は必ずしも本開示の全範囲を表すものではなく、したがって本開示の範囲の解釈には特許請求の範囲と本明細書を参照すべきである。
【0010】
以下の詳細な説明を考慮するなかで本発明がより深く理解されるとともに上記以外の側面及び利点が明らかとなる。そのような詳細な説明は以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一側面に係わるツーウェイクラッチを説明する図である。
図2A】本開示の一側面に係わる、ロッキング機構に与えられる所定の干渉を有するツーウェイクラッチの概図であり、ロッキング機構が無負荷状態にある様子を示す。
図2B図2Aのツーウェイクラッチの概図であり、外力が第1方向に加えられており、ロッキング機構の第1ロッキング部材が圧縮状態にある様子を示す。
図2C図2Bのツーウェイクラッチの概図であり、第1方向の外力が取り除かれ、ロッキング機構が無負荷状態にある様子を示す。
図2D図2Aのツーウェイクラッチの概図であり、外力が第2方向に加えられており、ロッキング機構の第2部材が圧縮状態にある様子を示す。
図3A】所定の干渉を有さない従来のツーウェイクラッチの概図であり、ロッキング機構が無負荷状態にある様子を示す。
図3B図3Aの従来のツーウェイクラッチの概図であり、外力が第1方向に加えられており、ロッキング機構の第1ロッキング部材が圧縮状態にある様子を示す。
図3C図3Bの従来のツーウェイクラッチの概図であり、第1方向の外力が取り除かれ、ロッキング機構が圧縮状態にある様子を示す。
図3D図3Aの従来のツーウェイクラッチの概図であり、外力が第2方向に加えられており、ロッキング機構の第2ロッキング部材が圧縮状態にある様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示に係わるツーウェイクラッチ100の非限定的な例を示す。ツーウェイクラッチ100は、被駆動部材102、駆動部材104、ロッキング機構106及び係合部材108を含む。いくつかの非限定的な例では、被駆動部材102はエネルギーを被駆動部材102に供給するよう構成された装置に連結されてもよく、これにより被駆動部材102が当該装置と一致して移動するよう構成されてもよい。例えば、被駆動部材102はモータ(例えば、電気モータ、内燃エンジンなど)と連結されて当該モータとともに回転するよう構成されてもよい。駆動部材104は、前記装置に連結された別のコンポーネントに連結されてもよく、当該別のコンポーネントは、被駆動部材102を駆動するが、被駆動部材102とともに移動することができる又は被駆動部材102に対して移動することができてもよい。
【0013】
通常、ロッキング機構106は、被駆動部材102と駆動部材104の間に配置されてもよい。ロッキング機構106は、被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な動きを選択的に許容するよう構成されてもよい。例えば、ロッキング機構106は、ロック位置とロック解除位置の間で可動であってもよい。ロック解除位置において、ロッキング機構106は、駆動部材104が被駆動部材102に対して所定量移動することを許容してもよい。ロック位置において、ロッキング機構106は、被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な動きを阻止してもよい。
【0014】
いくつかの非限定的な例では、係合部材108は、ロッキング機構106と係合しており、被駆動部材102及び駆動部材104とは独立して可動でもよい。例えば、係合部材108は、係合部材108に連結されたインプット機構(例えばアクチュエータ)によって加えられたインプット力に応答して選択的に可動であってもよい。係合部材108は(例えばインプット機構を介して)選択的に移動されてもよく、そして、それに応答して、係合部材108は、ロッキング機構106と係合してロッキング機構106を所望方向に移動させて、ロッキング機構106をロック位置とロック解除位置の間で遷移させる。
【0015】
動作においては、駆動部材104に外力が加えられてもよく、これによりロッキング機構106に負荷が加えられる。例えば、駆動部材104が連結された前記装置のコンポーネントが、駆動部材104に外力を及ぼしてもよい。いくつかの非限定的な例では、外力は2以上の方向に生じてもよい。いくつかの非限定的な例では、外力は、交互の方向及び大きさで周期的に駆動部材104に加えられてもよい。
【0016】
いくつかの非限定的な例では、駆動部材104に外力が加えられると、ロッキング機構106に加えられた対応する負荷によって、ロッキング機構106を被駆動部材102と駆動部材104の間で圧縮することができる。ロッキング機構106が圧縮されることで、ロッキング機構106が例えば係合部材108によってロック位置とロック解除位置の間で遷移することをほぼ阻止することができる。即ち、被駆動部材102と駆動部材104の間でのロッキング機構106の圧縮によって、ロッキング機構106を効率的に「ロック」することができるとともに、ロッキング機構106が係合部材108によって選択的に移動されることをほぼ阻止することができる。したがって、特定の動作状態において、駆動部材104に加えられた外力によってロッキング機構106を負荷状態とすることができ、この状態において係合部材108によってロッキング機構106が選択的に移動されること及びロッキング機構106がロック位置とロック解除位置の間で遷移させられることがほぼ阻止される。
【0017】
いくつかの非限定的な例では、駆動部材104への外力によりもたらされたロッキング機構106の圧縮は、インプット機構によって係合部材108に極めて大きいインプット力を加えることを必要とする場合がある。負荷状態にあるロッキング機構106の圧縮は、ロッキング機構106を移動させるのに必要な力の量を増大させる。一般に、インプット機構に関わる費用は、インプット機構によって与えられるインプット力の量に指数関数的に関係する。そのため、負荷状態にあるロッキング機構106を移動させるのに必要となる力の増量によって、ツーウェイクラッチ100の動作に関連するコストが大幅に増大する可能性がある。
【0018】
一般に、本開示は、負荷状態にあるロッキング機構106の望ましくない「ロック」及び係合部材108のための関連するインプット力必要量の増大に対して対処するために、ロッキング機構106に適用することができる所定の干渉を提供する。いくつかの非限定的な例では、係合部材108がロッキング機構106に所定の干渉を与えるように、係合部材108をロッキング機構106と係合させてもよい。例えば、ロッキング機構106が無負荷状態にあるとき(即ち駆動部材104に外力が加えられていないとき)に、ロッキング機構106上に所定の干渉を与えるよう係合部材108を設計してもよい。いくつかの非限定的な例では、係合部材108によって与えられた所定の干渉によって、ロッキング機構106が被駆動部材102及び駆動部材104のうちの前記少なくとも1つから間隙を有して離れる方向に移動してもよい。いくつかの非限定的な例では、係合部材108によって与えられた所定の干渉によって、ロッキング機構106が被駆動部材102及び駆動部材104の両方から間隙を有して離れるように移動してもよい。
【0019】
ロッキング機構106上に与えられた所定の干渉により、ロッキング機構106を所望の方向に移動させること(例えばロッキング機構106をロック解除位置とロック位置の間で遷移させること)が格段に容易となり、その結果、係合部材108を移動させるのに必要となるインプット力が減少し、これにより被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な動きを達成するためのインプット力が減少する。加えて、所定の干渉によって、ロッキング機構106を、外力プロファイルの大部分について確実に移動可能とすることができる(即ち外力による圧縮によって「ロック」されない)。このようにして、所定の干渉によって、ツーウェイクラッチ100の動作を(例えば必要なインプット力を減少させてロッキング機構106の移動を容易にすることによって)より効率的にすることができる。
【0020】
図2A-2Dは、回転ツーウェイクラッチ応用におけるツーウィークラッチ100の1つの非限定的な構成を示す。図示の非限定的な例では、ツーウェイクラッチ100は、被駆動部材102、駆動部材106、ロッキング機構106及び係合部材108を含む。いくつかの非限定的な例では、ツーウェイクラッチ100は機械カムフェージング応用に適用されてもよい。例えば、被駆動部材102は内燃エンジン上のクランク軸に回転可能に連結されてもよく、駆動部材104は内燃エンジン上のカム軸に回転可能に連結されてもよい。いくつかの非限定的な例では、係合部材108は、係合部材108にインプット力を与えるよう構成されたアクチュエータ(非図示)に連結されてもよい。応用においては、アクチュエータは、係合部材108をロッキング機構106のなかに(例えば被駆動部材102に対して)所定の量又は距離だけ移動させるために係合部材108にインプット力を加えるよう構成されてもよい。結果として得られるロッキング機構106の移動によって、駆動部材104が被駆動部材102に対して所望の方向に回転することが許容され(即ちカム軸がクランク軸に対して回転できる)、所望の量のカムフェージング(即ちカム軸とクランク軸の間の回転オフセット)を達成することができる。
【0021】
本明細書に記載のツーウェイクラッチ100の技法及び性質を他の回転及び線形ツーウェイクラッチ応用に適用してもよいことは明らかであり、本開示は機械カムフェージング応用に限定されない。
【0022】
図示の非限定的な例では、被駆動部材102は、ロッキング機構106に隣接して配置された第1合わせ面110を含んでもよい。駆動部材104はロッキング機構106に隣接して配置された第2合わせ面112を含んでもよい。図示の非限定的な例では、ロッキング機構106を第1合わせ面110と第2合わせ面112との間に配置してもよい。ロッキング機構106は、付勢素子118によって互いに離れる方向に付勢された第1ロッキング部材114及び第2ロッキング部材116を含んでもよい。いくつかの非限定的な例では、第1及び第2ロッキング部材114及び116は軸受の形であってもよい。いくつかの非限定的な例では、第1及び第2ロッキング部材114及び116はころ軸受の形であってもよい。いくつかの非限定的な例では、第1及び第2ロッキング部材114及び116は、第1合わせ面110と第2合わせ面112の間の空洞に適合するよう構成された又は第1合わせ面110と第2合わせ面112の間に押し込むことが可能ないかなる形であってもよい。
【0023】
以下に、機械カムフェージング応用におけるツーウェイクラッチ100の動作の1つの非限定的な例について、図2A-2Dを参照して記載する。通常、動作中に外力を駆動部材104上に及ぼしてもよい。例えば、駆動部材104は、カム軸上に作用する吸気弁及び排気弁から生じるカムトルクパルスにさらされてもよい。駆動部材104上に作用するカムトルクパルスは、内燃エンジンの動作中に方向及び大きさが(例えば周期的に)変化してもよい。
【0024】
図2Aは、無負荷状態にあるロッキング機構106を有するツーウェイクラッチ100を示す。即ち、駆動部材104には外力(例えばカムトルクパルス)は加えられていない。係合部材108は、ロッキング機構106が無負荷状態あるときに、ロッキング機構106に所定の干渉が加えられるようロッキング機構106に係合するように設計される。例えば、係合部材108は、第1ロッキング部材114及び第2ロッキング部材116を、第1合わせ面110及び第2合わせ面112のうちの少なくとも1つから離れる方向に(例えば係合が解かれるよう)移動させることができる。このようにして、例えば、第1及び第2ロッキング部材114及び116の両方が、係合部材108によって移動されること(即ち「ロック」されないこと)が可能である。いくつかの非限定的な例では、所定の干渉によって、第1ロッキング部材114及び第2ロッキング部材116と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112のうちの少なくとも1つと、の間に間隙が与えられてもよい。いくつかの非限定的な例では、所定の干渉によって、第1ロッキング部材114及び第2ロッキング部材116と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112の両方と、の間に間隙が与えられてもよい。
【0025】
何れの場合にも、係合部材108によって与えられる所定の干渉によって、第1ロッキング部材114及び第2ロッキング部材116のうちの1つを移動させるために係合部材108に加える必要があるインプット力を減少させることができる。例えば、第1及び第2ロッキング部材114及び116と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112のうちの少なくとも1つと、の間に間隙を設けることによって、第1及び第2ロッキング部材114及び116と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112のうちの少なくとも1つと、の間の静止摩擦が取り除かれる。したがって、第1及び第2ロッキング部材114及び116のうちの1つを移動させる前に乗り越えなければならない静止摩擦が、所定の干渉によって減少する(例えば、両ロッキング部材(the locking members)が移動前に両方の合わせ面と接触しているような従来のツーウェイクラッチと比較した場合)。
【0026】
図2Bに示すように、動作中に駆動部材104に対し外力が第1の方向に加えられてもよい。図示の非限定的な例では、外力は、駆動部材104に時計回りの方向に作用するトルクパルスであってもよい。外力が駆動部材104に対し第1の方向に加えられると、圧縮力Fによって第1ロッキング部材114に負荷が加えられる。例えば、圧縮力Fは、第1ロッキング部材114と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112の両方と、の間の接触によってもたらされる。駆動部材104への外力の結果として第1ロッキング部材114に加えられた圧縮力によって、第1ロッキング部材114が「ロック」されてもよい。即ち、第1ロッキング部材114が係合部材108によって移動させられることがほぼ阻止されるとともに、被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な回転が第1の方向において阻止される。しかしながら、第2ロッキング部材116は係合部材108によって支持されてもよく、これによって与えられる所定の干渉によって、第2ロッキング部材116と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112のうちの少なくとも1つと、の間のクリアランス又は間隙を維持することができる。したがって、所定の干渉によって、第2ロッキング部材116を「ロック解除」状態に維持することができ、この状態において第2ロッキング部材116は第1及び第2合わせ面110及び112の間で圧縮されておらず、必要に応じて係合部材108によって依然容易に移動させられる。このようにして、例えば、(例えば係合部材108が駆動部材102に対して移動した場合に)被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な回転が第1の方向と逆の第2の方向において許容され得る。
【0027】
図2Cは、駆動部材104に対し第1の方向に加えられた外力が取り除かれた後のツーウェイクラッチ100を示す。外力が取り除かれると、第1ロッキング部材114への圧縮力を取り除くことができ、ロッキング機構106は無負荷状態に戻ってもよい。したがって、第1ロッキング部材114は、係合部材108によって移動可能な状態に戻ることができる。
【0028】
図2Dに示すように、動作中に駆動部材104に対し第2の方向に外力が加えられてもよい。いくつかの非限定的な例では、第2の方向における外力は、第1の方向における外力(図2B)とは異なる時点で生じてもよい。いくつかの非限定的な例では、駆動部材104に加えられた外力は、その大きさ及び方向が周期的であってもよい。図示の非限定的な例では、外力は、駆動部材104に反時計回りの方向に作用するトルクパルスであってもよい。外力が駆動部材104に対し第2の方向に加えられると、圧縮力Fによって第2ロッキング部材116に負荷が加えられる。例えば、圧縮力Fは、第2ロッキング部材116と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112の両方と、の間の接触によってもたらされる。駆動部材104への外力の結果として第2ロッキング部材116に加えられた圧縮力によって、第2ロッキング部材116が「ロック」されてもよい。即ち、第2ロッキング部材116が係合部材108によって移動させられることがほぼ阻止されるとともに、被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な回転が第2の方向において阻止される。しかしながら、第1ロッキング部材114は係合部材108によって支持されてもよく、これによって与えられる所定の干渉によって、第1ロッキング部材114と、第1合わせ面110及び第2合わせ面112のうちの少なくとも1つと、の間のクリアランス又は間隙を維持することができる。したがって、所定の干渉によって、第1ロッキング部材114を「ロック解除」状態に維持することができ、この状態において第1ロッキング部材114は第1及び第2合わせ面110及び112の間で圧縮されておらず、必要に応じて係合部材108によって依然容易に移動させられる。このようにして、例えば、(例えば係合部材108が駆動部材102に対して移動した場合に)被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な回転が第1の方向と逆の第2の方向において許容され得る。
【0029】
図2A-2Dに示されるように、係合部材108によってロッキング機構106に与えられる所定の干渉によって、第1ロッキング部材114及び第2ロッキング部材116の各々を「ロック解除」又は例えば外力の周期の少なくとも半分だけ移動可能とすることができる。即ち、第1ロッキング部材114は外力が第2の方向に加わっている間「ロック解除」状態に維持されてもよく、第2ロッキング部材116は外力が第1の方向に加わっている間「ロック解除」状態に維持されてもよい。このようにして、従来のツーウェイクラッチ又は機械カムフェージングシステムと比較した場合に、例えば被駆動部材102と駆動部材104の間の相対的な回転を許容するための係合部材108のインプット力必要量を大幅に減少させることができる。
【0030】
図3A-3Dは、従来のツーウェイクラッチ200の1つの非限定的な例を示す。ツーウェイクラッチ100と従来のツーウェイクラッチ200とで類似する構成要素には、百の位を2としただけの同様の参照符号を付している。図3A-3Dに示されるように、従来のツーウェイクラッチ200は、ロッキング機構206に所定の干渉を与えない。所定の干渉がないことで、ロッキング機構206が「ロック」される又は外力の周期の大部分について係合部材208によって移動されることがほぼ阻止されることとなる。
【0031】
例えば、ロッキング機構206が無負荷状態(図3A)から駆動部材204に外力が加えられた状態(図3B)に遷移するにつれて、圧縮力Fが第1ロッキング部材114に加えられてもよく、これによって第1ロッキング部材114が第1合わせ面210と第2合わせ面212との間で「ロック」される。ほぼ同じ時に、付勢素子218が第2ロッキング部材216を第1合わせ面210及び第2合わせ面212と接触するよう押す可能性があり、これにより第2ロッキング部材216の位置ずれdがもたらされる。したがって、外力が取り除かれるにつれて(図3C)、第1ロッキング部材214への圧縮力が減少するが、第2ロッキング部材216は圧縮力Fにさらされる位置に移動されている。図3Cに示すように、外力が取り除かれた後、第1ロッキング部材214及び第2ロッキング部材216の両方が圧縮力にさらされ、これにより第1及び第2ロッキング部材214及び216は「ロック」される又は移動がほぼ阻止される。いくらかの圧縮力が第1及び第2ロッキング部材214及び216の両方に加えられている状態では、第1ロッキング部材214又は第2ロッキング部材216を移動させるために大幅に増大したインプット力が必要となるであろう。
【0032】
外力が駆動部材204に対して第2の方向に加えられた場合(図3D)、圧縮力Fによって第2ロッキング部材216を「ロック」することができる。ひいては第1ロッキング部材214が「ロック解除」されるが、これは外力の大きさが極めて大きい場合にのみ起こり、そしてこれは短い期間しか持続しないであろう。特に、カムフェージング応用において、大部分のエンジン応用では最も高いトルクパルスは通常非常に短期間だけ持続する。
【0033】
したがって、ツーウェイクラッチのロッキング機構に所定の干渉を加えることによって、従来のツーウェイクラッチに勝る大きな利点をもたらすことができる。例えば、所定の干渉によって被駆動部材と駆動部材の間の相対的な移動を可能とするのに必要なインプット力を減少させることができる。あるいは又はそれに加えて、所定の干渉によってツーウェイクラッチの動作モード(例えば、駆動部材と被駆動部材の間の相対的な回転が阻止されているロック状態及び駆動部材と被駆動部材の間の相対的な回転が可能なロック解除状態)間の効率的な遷移を促進することができる。ツーウェイクラッチの駆動部材に周期的な外力を加えてもよい応用では、所定の干渉によって、ロッキング機構を外力と反対の方向に確実に移動可能とすることができる。
【0034】
本明細書において、その記載が明確かつ簡潔となるように実施形態が記載されているが、これらの実施形態を本発明から逸脱しない範囲内で様々に組み合わせても又は分離してもよいことは意図されているとともに明らかである。例えば、本明細書に記載の全ての好ましい特徴は本明細書に記載の本発明の全側面に適用可能であることは明らかである。
【0035】
したがって、本発明について特定の実施形態及び例に関連して記載されているものの、本発明はそのように限定される必要はなく、多くの他の実施形態、例及び使用並びに実施形態、例及び使用に対する変形や展開が、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。本明細書に挙げた各特許及び刊行物は、これら特許又は刊行物が各々個別に本明細書において引用することにより盛り込まれているように、引用することにより本明細書に盛り込まれている。
【0036】
本発明の種々の特徴及び利点が添付の特許請求の範囲に示されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D