(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両の制御装置及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20240207BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240207BHJP
F16H 59/72 20060101ALI20240207BHJP
F16H 59/78 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H57/04 G
F16H59/72
F16H59/78
(21)【出願番号】P 2019021704
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-12-08
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 チャドル
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 浩明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正樹
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】内田 博之
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-213590(JP,A)
【文献】特開2014-181768(JP,A)
【文献】特開2017-150367(JP,A)
【文献】特開2007-145050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、
電動オイルポンプを有する変速機と、
前記駆動源の冷却液と前記変速機の作動油との熱交換を行う熱交換器と、
を有する車両の制御装置であって、
前記冷却液の温度と前記作動油の温度とに基づき前記電動オイルポンプの駆動を行うことで、前記熱交換器へ供給される前記作動油の流量を増加させる制御を実行する制御部を有し、
前記制御部は、前記作動油の温度が所定油温以上の場合は前記制御を禁止する一方、
前記電動オイルポンプの作動時間が所定時間未満の場合において、前記作動油の温度が前記所定油温以下で、かつ前記作動油の温度上昇率が所定率以上の場合は前記制御を実行し続ける、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記制御部は、前記冷却液の温度と前記作動油の温度との差の絶対値が所定差以上になると、前記電動オイルポンプの駆動を行うことで前記熱交換器へ供給される前記作動油の流量を増加させる、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
前記制御部は、前記電動オイルポンプが
前記所定時間と異なる他の所定時間以上連続運転した場合には前記電動オイルポンプの駆動を禁止する、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
駆動源と、電動オイルポンプを有する変速機と、前記駆動源の冷却液と前記変速機の作動油との熱交換を行う熱交換器とを有する車両の制御方法であって、
前記冷却液の温度と前記作動油の温度とに基づき前記電動オイルポンプの駆動を行うことで、前記熱交換器へ供給される前記作動油の流量を増加させる制御を実行し、
前記作動油の温度が所定油温以上の場合は前記制御を禁止する一方、
前記電動オイルポンプの作動時間が所定時間未満の場合において、前記作動油の温度が前記所定油温以下で、かつ前記作動油の温度上昇率が所定率以上の場合は前記制御を実行し続けること、
を含むことを特徴とする車両の制御方法。
【請求項5】
駆動源と、
電動オイルポンプを有する変速機と、
前記駆動源の冷却液と前記変速機の作動油との熱交換を行う熱交換器と、
を有する車両の制御装置であって、
前記冷却液の温度と前記作動油の温度とに基づき前記電動オイルポンプの駆動を行うことで、前記熱交換器へ供給される前記作動油の流量を増加させる制御を実行する制御部を有し、
前記制御部は、前記作動油の温度が所定油温以上かつ、前記冷却液の温度が所定の温度以上の場合は前記制御を禁止する一方、
前記電動オイルポンプの作動時間が所定時間未満の場合において、前記作動油の温度が前記所定油温以下で、かつ前記作動油の温度上昇率が所定率以上の場合は前記制御を実行し続ける、
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変速機目標入力回転数の規制により回転数を下げ、変速機の油温の上昇を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変速機の作動油の油温には適正油温がある。このため、油温が低い場合は作動油の油温を適正油温に極力早く近づけることが好ましい。また、駆動源の冷却液の液温にも適正液温がある。このため、液温が低い場合は冷却液の液温を適正液温に極力早く近づけることが好ましい。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、油温及び液温の少なくともいずれかを適温に素早く近づけることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の車両の制御装置は、駆動源と、前記駆動源により駆動するメカオイルポンプと電動オイルポンプとを有する変速機と、前記駆動源の冷却液と前記変速機の作動油との熱交換を行う熱交換器と、を有する車両の制御装置であって、前記冷却液の温度と前記作動油の温度とに基づき前記電動オイルポンプの駆動を行うことで、前記熱交換器へ供給される前記作動油の流量を増加させる制御を実行する制御部を有し、前記制御部は、前記作動油の温度が所定油温以上の場合は前記制御を禁止する一方、前記電動オイルポンプの作動時間が所定時間未満の場合において、前記作動油の温度が前記所定油温以下で、かつ前記作動油の温度上昇率が所定率以上の場合は前記制御を実行し続ける。
【0007】
本発明の別の態様によれば、上記車両の制御装置に対応する車両の制御方法が提供される。本発明のさらに別の態様によれば、駆動源と、電動オイルポンプを有する変速機と、前記駆動源の冷却液と前記変速機の作動油との熱交換を行う熱交換器と、を有する車両の制御装置であって、前記冷却液の温度と前記作動油の温度とに基づき前記電動オイルポンプの駆動を行うことで、前記熱交換器へ供給される前記作動油の流量を増加させる制御を実行する制御部を有し、前記制御部は、前記作動油の温度が所定油温以上かつ、前記冷却液の温度が所定の温度以上の場合は前記制御を禁止する一方、前記電動オイルポンプの作動時間が所定時間未満の場合において、前記作動油の温度が前記所定油温以下で、かつ前記作動油の温度上昇率が所定率以上の場合は前記制御を実行し続ける車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、熱交換器へ供給される作動油の流量を増加させることで、作動油と冷却液との熱交換を行う熱交換器の熱交換量を増やすことができる。このため、油温及び液温の少なくともいずれかを適温に素早く近づけることができる。
【0009】
また、これらの態様によれば、非駆動源により駆動する電動オイルポンプを駆動させる。このため、これらの態様によれば、運転性に影響を及ぼすことなく、熱交換器の熱交換量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】コントローラが行う制御の一例をフローチャートで示す図である。
【
図3】電動オイルポンプ22の作動領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は車両の概略構成図である。車両は、エンジンENGと、トルクコンバータTCと、前後進切替機構SWMと、バリエータVAとを備える。車両では、変速機TMが、トルクコンバータTCと、前後進切替機構SWMと、バリエータVAとを有して構成される。変速機TMは自動変速機であり、本実施形態ではベルト式無段変速機とされる。
【0013】
エンジンENGは、車両の駆動源を構成する。エンジンENGの動力は、トルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAを介して駆動輪へと伝達される。換言すれば、トルクコンバータTC、前後進切替機構SWM、バリエータVAは、エンジンENGから駆動輪に至る動力伝達経路に設けられる。
【0014】
トルクコンバータTCは、流体を介して動力を伝達する。トルクコンバータTCでは、ロックアップクラッチLUを締結することで、動力伝達効率が高められる。
【0015】
前後進切替機構SWMは、エンジンENGとバリエータVAとを結ぶ動力伝達経路に設けられる。前後進切替機構SWMは、入力される回転の回転方向を切り替えることで車両の前後進を切り替える。前後進切替機構SWMは、前進レンジ選択の際に係合される前進クラッチFWD/Cと、リバースレンジ選択の際に係合される後進ブレーキREV/Bとを備える。前進クラッチFWD/C及び後進ブレーキREV/Bを解放すると、変速機TMがニュートラル状態、つまり動力遮断状態になる。
【0016】
バリエータVAは、プライマリプーリPRIと、セカンダリプーリSECと、プライマリプーリPRI及びセカンダリプーリSECに巻き掛けられたベルトBLTとを有するベルト式無段変速機構を構成する。プライマリプーリPRIにはプライマリ圧Ppriが、セカンダリプーリSECにはセカンダリ圧Psecが、後述する油圧制御回路11からそれぞれ供給される。
【0017】
変速機TMはさらに、メカオイルポンプ21と電動オイルポンプ22とを有して構成される。
【0018】
メカオイルポンプ21は、油圧制御回路11に油OILを圧送する。メカオイルポンプ21は、エンジンENGの動力により駆動される機械式オイルポンプである。電動オイルポンプ22は、メカオイルポンプ21とともに、或いは単独で油圧制御回路11に油OILを圧送する。電動オイルポンプ22は油圧経路上、油圧制御回路11に対してメカオイルポンプ21と並列に設けられ、また、メカオイルポンプ21に対して補助的に設けられる。メカオイルポンプ21と電動オイルポンプ22とが供給する油OILは変速機TMの作動油を構成する。
【0019】
変速機TMは、油圧制御回路11と、オイルパン12と、オイルクーラ13と、コントローラ50とをさらに有して構成される。
【0020】
油圧制御回路11は、複数の流路、複数の油圧制御弁で構成され、メカオイルポンプ21や電動オイルポンプ22から供給される油OILを調圧して変速機TMの各部位に供給する。変速機TMの各部位に供給された油OILはその後、変速機TMの油貯留部であるオイルパン12とオイルクーラ13とを介して、メカオイルポンプ21や電動オイルポンプ22に戻る。
【0021】
オイルクーラ13は、エンジンENGの冷却液Wと変速機TMの油OILとの熱交換を行う熱交換器である。オイルクーラ13には、エンジンENGから排出された冷却液Wとオイルパン12から排出された油OILとが流入する。オイルクーラ13は、変速機TMの油圧経路上、オイルパン12と、メカオイルポンプ21及び電動オイルポンプ22とを結ぶ油路に設けられる。このため、オイルクーラ13を流通した油OILはその後、メカオイルポンプ21及び電動オイルポンプ22の少なくともいずれかに流入する。オイルクーラ13を流通した冷却液Wはその後、エンジンENGに戻る。
【0022】
オイルクーラ13は、変速機TMの油OILを冷却するクーラとして機能するほか、変速機TMの油OILを加温するウォーマとしても機能する。
【0023】
オイルクーラ13を流通する変速機TMの油OILの油温TOILが、オイルクーラ13を流通するエンジンENGの冷却液Wの液温TWよりも高い場合、オイルクーラ13は、変速機TMの油OILを冷却するクーラとして機能する。
【0024】
オイルクーラ13を流通するエンジンENGの冷却液Wの液温TWが、オイルクーラ13を流通する変速機TMの油OILの油温TOILよりも高い場合、オイルクーラ13は、変速機TMの油OILを加温するウォーマとしても機能する。
【0025】
コントローラ50は、変速機TMを制御するためのコントローラであり、コントローラ50には、各種センサ・スイッチを示すセンサ・スイッチ群40からの信号が入力される。センサ・スイッチ群40は例えば、車速VSPを検出する車速センサ、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ、エンジンENGの回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ、ブレーキ液圧を検出するブレーキセンサを検出する油温センサを含む。
【0026】
センサ・スイッチ群40はさらに例えば、プライマリ圧Ppriを検出するプライマリ圧センサ、セカンダリ圧Psecを検出するセカンダリ圧センサ、プライマリプーリPRIの回転速度Npriを検出する回転速度センサ、セカンダリプーリSECの回転速度Nsecを検出する回転速度センサ、変速レバーの操作位置を検出する位置センサ、車両の外気温TAを検出する外気温センサ、変速機TMの油温TOILを検出する油温センサ、エンジンENGの液温TWを検出する液温センサを含む。油温TOILは例えば、オイルパン12の油出口部における油OILの温度とすることができる。液温TWは例えば、エンジンENGの冷却液出口部における冷却液Wの温度とすることができる。
【0027】
コントローラ50には、これらの信号が直接入力されるか、エンジンコントローラ等を介して入力される。コントローラ50にはさらに例えば、エンジンENGを制御するためのエンジンコントローラからエンジンENGのトルクTqの情報が入力される。コントローラ50は、これらの信号に基づき変速機TMの制御を行う。
【0028】
変速機TMの制御は、これらの信号に基づき油圧制御回路11や電動オイルポンプ22を制御することで行われる。油圧制御回路11は、コントローラ50からの指示に基づき、ロックアップクラッチLU、前進クラッチFWD/C、後進ブレーキREV/B、プライマリプーリPRI、セカンダリプーリSEC等の油圧制御を行う。電動オイルポンプ22の制御は、電動オイルポンプ22の駆動モータに電流を供給するインバータを制御することにより行うことができる。
【0029】
ところで、油温TOILには適正油温がある。このため、油温TOILが低い場合は油温TOILを適正油温に極力早く近づけることが好ましい。また、液温TWにも適正液温がある。このため、液温TWが低い場合は液温TWを適正液温に極力早く近づけることが好ましい。
【0030】
このような事情に鑑み、本実施形態ではコントローラ50が次に説明する制御を行う。
【0031】
図2は、コントローラ50が行う制御の一例をフローチャートで示す図である。コントローラ50は、本フローチャートの処理を行うようにプログラムされることで、制御部を有した構成とされる。
【0032】
ステップS1で、コントローラ50は、外気温TAが所定温度TA1未満か否かを判定する。所定温度TA1は、液温TW及び油温TOILを適温するにあたり、オイルクーラ13の熱交換量の増加要否を規定するための値であり、外気温TAが所定温度TA1未満の場合に熱交換量の増加が必要と判断される。ステップS1で否定判定であれば、処理は一旦終了し、ステップS1で肯定判定であれば、処理はステップS2に進む。
【0033】
ステップS2で、コントローラ50は、電動オイルポンプ22の作動領域Rか否かを判定する。作動領域Rは、電動オイルポンプ22を作動させることによりオイルクーラ13へ供給される油OILの流量を増加させる領域であり、予め次のように設定される。
【0034】
図3は、電動オイルポンプ22の作動領域Rを示す図である。
図3に示すマップでは、車両の使用が想定される外気温TAの最低値TAMINを液温TW及び油温TOILの最低値として、液温TW及び油温TOILに基づき状態点Pが定まる。液温TWは液温センサにより検出でき、油温TOILは油温センサにより検出できる。液温TWと油温TOILとは例えば、これらと相関関係を有するパラメータ等に基づき推定された推定値であってもよい。
【0035】
図3に示すように、作動領域Rは、液温TW及び油温TOILに応じて設定される。作動領域Rは、クーラ領域R1とウォーマ領域R2とを含む。
【0036】
クーラ領域R1は、変速機TMの油OILに対し、オイルクーラ13をクーラとして機能させる領域であり、油温TOILのほうが液温TWよりも高い領域とされる。クーラ領域R1はさらに、油温TOILの適温の下限値である所定油温TOIL1未満の領域とされる。
【0037】
ウォーマ領域R2は、変速機TMの油OILに対し、オイルクーラ13をウォーマとして機能させる領域であり、液温TWのほうが油温TOILよりも高い領域とされる。ウォーマ領域R2はさらに、液温TWの適温の下限値である所定液温TW1未満の領域とされる。
【0038】
一般には、油温TOILが液温TWよりも高くなる場面が圧倒的に多い。但し、冷間時にはエンジンENGの発熱量が多いので、一時的に液温TWが油温TOILよりも高くなる場面が生じる。
【0039】
クーラ領域R1とウォーマ領域R2との間には、禁止領域が設けられる。禁止領域は、液温TWと油温TOILとが等しくなる等温線を高油温低液温側、及び低油温高液温側の両側に等間隔にオフセットさせた2つの境界線に挟まれた領域とされる。禁止領域では、
図3に示すマップに基づき行われる電動オイルポンプ22の作動は禁止される。当該禁止領域は、クーラ領域R1及びウォーマ領域R2間に設けられたヒステリシス領域を兼ねる。
【0040】
状態点Pは、液温TWと油温TOILとの差ΔTの絶対値が所定差ΔT1未満の場合に、禁止領域に含まれることになる。このため、差ΔTの絶対値が所定差ΔT1以上であるという条件により、作動領域Rはさらに、上述のようにして設けられた禁止領域と区分される。禁止領域は、液温TWが所定液温TW1以上の領域と、油温TOILが所定油温TOIL1以上の領域とをさらに含む。
【0041】
図2に戻り、ステップS2では、状態点Pが作動領域Rに含まれる場合に肯定判定され、状態点Pが禁止領域に含まれる場合に否定判定される。ステップS2で肯定判定であれば、処理はステップS3に進む。
【0042】
ステップS3で、コントローラ50は、電動オイルポンプ22の作動を行う。ステップS3で、コントローラ50は、インターバルを設けて電動オイルポンプ22の作動を行う。これについては後述する。
【0043】
ステップS3で、コントローラ50は、
図3に示すマップに基づき電動オイルポンプ22の駆動を行うことにより、液温TWと油温TOILとに基づき電動オイルポンプ22の駆動を行う。コントローラ50は、このように電動オイルポンプ22の駆動を行うことで、オイルクーラ13へ供給される油OILの流量を増加させる制御を実行する。以下では、当該制御を油量増加制御とも称す。
【0044】
油量増加制御を行うことにより、オイルクーラ13を流通する油OILの流量が増加するので、オイルクーラ13における熱交換が促進される。ステップS3では、状態点Pがクーラ領域R1にある場合には、変速機TMの油OILによりエンジンENGの冷却液Wが加温され、状態点Pがウォーマ領域R2にある場合には、エンジンENGの冷却液Wにより変速機TMの油OILが加温される。
【0045】
このため、ステップS3では、油量増加制御を行うことにより、油温TOIL及び液温TWの少なくともいずれかが適温に素早く近づけられる。
【0046】
電動オイルポンプ22の駆動を行うことでオイルクーラ13へ供給される油OILの流量を増加させるためには、変速機TMの作動に必要な流量以上の流量をメカオイルポンプ21と電動オイルポンプ22とにより発生させればよい。このため、ステップS3では、メカオイルポンプ21の現在の流量を考慮して電動オイルポンプ22の流量を決定することになる。
【0047】
ステップS4で、コントローラ50は、油温TOILの上昇率ΔTOILが所定率ΔTOIL1以上か否かを判定する。所定率ΔTOIL1は、油温TOILの急上昇を規定するための値であり、予め設定される。油温TOILの急上昇は例えば、ロックアップクラッチLUが解除された状態でアクセルペダルとブレーキペダルとが同時に踏み込まれた場合に発生する。ステップS4で否定判定であれば、処理は一旦終了する。
【0048】
その後のルーチンで、ステップS1及びステップS2で肯定判定であれば、処理はステップS3に進み、電動オイルポンプ22の作動が継続される。また、続くステップS4で否定判定であれば、処理は一旦終了する。つまり、ステップS1及びステップS2で肯定判定され、ステップS4で否定判定される間は、ステップS3で電動オイルポンプ22の作動が継続される。
【0049】
このような場合において、コントローラ50は、前述したようにインターバルを設けて電動オイルポンプ22を作動させる。インターバルは、電動オイルポンプ22が所定時間SC1以上連続運転した場合に、電動オイルポンプ22の駆動を禁止することにより設けられる。これにより、連続運転可能時間を超えて電動オイルポンプ22が作動されることが回避され、電動オイルポンプ22の保護が図られる。
【0050】
電動オイルポンプ22の連続運転可能時間は、電動オイルポンプ22の設定流量によって異なる。このため、所定時間SC1は例えば、電動オイルポンプ22の設定流量に基づき設定することができる。
【0051】
ステップS4で肯定判定の場合、処理はステップS5に進む。ステップS5で、コントローラ50は、油温TOIL急上昇中の電動オイルポンプ22の作動時間が所定時間SC2以上か否かを判定する。所定時間SC2は、油温TOIL急上昇中の電動オイルポンプ22の作動継続を判定するための判定値であり、予め設定される。所定時間SC2は所定時間SC1よりも短く設定され、所定時間SC1は、連続運転可能時間に対し少なくとも所定時間SC2分の余裕を有するように設定することができる。
【0052】
油温TOIL急上昇中の電動オイルポンプ22の作動時間が所定時間SC2未満の場合、処理は一旦終了する。この場合、ステップS1からステップS5の処理が繰り返し行われる間に、ステップS4で否定判定されれば、オイルクーラ13による熱交換で油温TOILの急上昇が抑えられたことになる。
【0053】
油温TOIL急上昇中の電動オイルポンプ22の作動時間が所定時間SC2以上の場合、オイルクーラ13による熱交換だけでは、油温TOIL急上昇への対応が間に合わないと判断される。この場合、処理はステップS6に進み、コントローラ50は、電動オイルポンプ22の作動を禁止する。つまり、ステップS6では、ステップS3で行われる油量増加制御が禁止される。
【0054】
この場合、エンジンENGのトルク制限制御など、油量増加制御以外の制御により、油温TOILの低下を図ることができる。このためこの場合は、電動オイルポンプ22の作動を禁止することにより、電動オイルポンプ22によるエネルギー消費が抑制される。
【0055】
ステップS2で否定判定の場合も、処理はステップS6に進む。ステップS2では例えば、
図3に示すマップにおいて、油温TOILが所定油温TOIL1以上になったときにも否定判定される。つまり、油温TOILが所定油温TOIL1以上の場合も、油量増加制御は禁止される。この場合、油温TOILは適温なので、必要以上に電動オイルポンプ22を作動させることにより発生するエネルギー消費が抑制される。ステップS6の後には、処理は一旦終了する。
【0056】
次に、本実施形態の主な作用効果について説明する。
【0057】
コントローラ50は、エンジンENGと、エンジンENGにより駆動するメカオイルポンプ21と電動オイルポンプ22とを有する変速機TMと、エンジンENGの冷却液Wと変速機TMの油OILとの熱交換を行うオイルクーラ13とを有する車両の制御装置を構成する。コントローラ50は、液温TWと油温TOILとに基づき電動オイルポンプ22の駆動を行うことで、オイルクーラ13へ供給される油OILの流量を増加させる制御を実行する。
【0058】
このような構成によれば、オイルクーラ13へ供給される油OILの流量を増加させることで、油OILと冷却液Wとの熱交換を行うオイルクーラ13の熱交換量を増やすことができる。このため、油温TOIL及び液温TWの少なくともいずれかを適温に素早く近づけることができる(請求項1、6に対応する効果)。
【0059】
また、メカオイルポンプ21の流量を増やすためにエンジンENGの回転速度Neを増加させると運転性に影響が生じるところ、このような構成によれば、非駆動源により駆動する電動オイルポンプ22を駆動させる。このため、このような構成によれば、運転性に影響を及ぼすことなく、オイルクーラ13の熱交換量を増やすことができる(請求項1、6に対応する効果)。
【0060】
オイルクーラ13では、液温TWと油温TOILの乖離が大きいときほど熱交換の効果が高い。
【0061】
このため、コントローラ50は、液温TWと油温TOILとの差ΔTの絶対値が所定差ΔT1以上になると、電動オイルポンプ22の駆動を行うことで、オイルクーラ13へ供給される油OILの流量を増加させる。
【0062】
このような構成によれば、液温TWと油温TOILの乖離が大きい場合に電動オイルポンプ22を駆動し、当該場合に該当しない時は電動オイルポンプ22を駆動しないことにより、素早い適正温度化を図りつつも、電動オイルポンプ22によるエネルギー消費を抑制することができる(請求項2に対応する効果)。
【0063】
コントローラ50は、電動オイルポンプ22が所定時間SC1以上連続運転した場合には、電動オイルポンプ22の駆動を禁止する。
【0064】
このような構成によれば、電動オイルポンプ22の作動にインターバルを設けることで電動オイルポンプ22の保護が可能となり、また、副次的効果として省エネルギー化を図ることも可能となる(請求項3に対応する効果)。
【0065】
コントローラ50は、油温TOILが所定油温TOIL1以上の場合は、油量増加制御を禁止する。
【0066】
このような構成によれば、油温TOILが適正油温に達した場合は、油量増加制御を禁止して電動オイルポンプ22によるエネルギー消費を抑制できる(請求項4に対応する効果)。
【0067】
コントローラ50は、油温TOILの上昇率ΔTOILが所定率ΔTOIL1以上の場合は、油量増加制御を禁止する。
【0068】
このような構成によれば、油温TOILの急上昇は油量増加制御とは別の制御によりにより抑えられることに鑑み、油量増加制御を禁止するので、電動オイルポンプ22によるエネルギー消費を抑制できる(請求項5に対応する効果)。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0070】
上述した実施形態では、クーラ領域R1とウォーマ領域R2との間に禁止領域を設ける場合について説明した。しかしながら、クーラ領域R1とウォーマ領域R2との間には、禁止領域が特段設けられなくてもよい。この場合、クーラ領域R1とウォーマ領域R2とはともに、液温TWと油温TOILとの等温線まで拡大される。当該等温線は、クーラ領域R1及びウォーマ領域R2のいずれかに含めることができる。
【0071】
上述した実施形態では、電動オイルポンプ22からオイルクーラ13へ油OILを供給する油圧経路が、オイルクーラ13へ油OILを供給するためのバルブを特段含まない場合について説明した。しかしながら、電動オイルポンプ22からオイルクーラ13へ油OILを供給する油圧経路には、オイルクーラ13へ油OILを供給するためのバルブが設けられてもよい。
【0072】
このようなバルブとしては例えば、オイルクーラ13をバイパスさせる一方で、必要以上の油OILの流量がある場合は必要以上の油OILの流量を排出してオイルクーラ13に供給するバイパスバルブを設けることができる。この場合、必要流量以上の流量がメカオイルポンプ21と電動オイルポンプ22とにより発生するように、電動オイルポンプ22により油OILの流量を単純に増やせば、オイルクーラ13に流入する油OILの流量を増やすことができる。
【0073】
電動オイルポンプ22からオイルクーラ13へ油OILを供給する油圧経路には、電動オイルポンプ22からオイルクーラ13に油OILを送る専用の経路及び専用のバルブが設けられてもよい。この場合、油量増加制御により電動オイルポンプ22を駆動するとともに当該専用のバルブを開弁することで、オイルクーラ13に流入する油OILの流量を増やすことができる。
【0074】
上述した実施形態では、制御部がコントローラ50により実現される場合について説明した。しかしながら、制御部は例えば、単一のコントローラにより実現されてもよい。
【符号の説明】
【0075】
13 オイルクーラ(熱交換器)
21 メカオイルポンプ
22 電動オイルポンプ
50 コントローラ(制御部)
ENG エンジン(駆動源)
TM 変速機
W 冷却液
OIL 油(作動油)