(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
F16H61/00
(21)【出願番号】P 2019047426
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武司
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002445(JP,A)
【文献】特開2019-015340(JP,A)
【文献】特開2019-027553(JP,A)
【文献】特開2019-032029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
F16H 59/02-59/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、コントロールバルブユニットと、動力伝達機構と、インヒビタスイッチと、を有する動力伝達装置であって、
前記ケース部材は、
前記コントロールバルブユニットを収容する第1室と、
前記第1室の重力方向上方に位置し且つ前記動力伝達機構を収容する第2室と、を有し、
前記ケース部材には開口部が設けられており、
前記インヒビタスイッチは、前記開口部に臨
むように全部が前記第2室内に配置され、あるいは一部が前記開口部から突出するととも
に一部が前記第2室内に位置するように配置され、
前記開口部には蓋がされ、
前記蓋に前記コントロールバルブユニットに設置された油圧アクチュエータを制御するコントロールユニットが取り付けられていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載された動力伝達装置において、
シフト切替弁と、
前記シフト切替弁の位置を制御するシフトアクチュエータと、をさらに有し、
前記インヒビタスイッチは、前記シフト切替弁の位置を検出し、
前記シフトアクチュエータは、前記ケース部材の外側に配置されることを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マニュアルバルブの弁体とステッピングモータとに取り付けられた作動部材の位置を検出するポジションセンサを、動力伝達機構が収容されるケースの外部に取り付けた動力伝達装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の動力伝達装置のように、インヒビタスイッチ(ポジションセンサ)を動力伝達機構が収容されるケースの外側に配置すると、ケース外側にインヒビタスイッチを配置した分の出っ張りができてしまう。このような構成では、動力伝達装置をコンパクトに駆動源収容ルーム(エンジンルーム)に収めるという観点から好ましくない。
【0005】
また、近年、自動車が歩行者に衝突してしまったときの歩行者の頭部保護の観点から動力伝達装置とボンネットとの間のクリアランスを大きくすることが推奨されており、動力伝達装置の重力方向における寸法の縮小が要求されている。
【0006】
具体的には、コントロールバルブユニットが動力伝達装置下部のコントロールバルブユニット収容室に配置される場合には、コントロールバルブユニット収容室内のスペースの縮小が求められる。このため、動力伝達装置を小型化するうえで、インヒビタスイッチをコントロールバルブユニット収容室内に配置するスペースを確保することは容易ではない。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、動力伝達装置を小型化しつつ、ケース内にインヒビタスイッチを配置するスペースを確保することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、ケース部材と、コントロールバルブユニットと、動力伝達機構と、インヒビタスイッチと、を有する動力伝達装置は、ケース部材が、コントロールバルブユニットを収容する第1室と、第1室の重力方向上方に位置し且つ動力伝達機構を収容する第2室と、を有し、ケース部材には開口部が設けられており、インヒビタスイッチは、開口部に臨むように全部が第2室内に配置され、あるいは一部が開口部から突出するとともに一部が第2室内に位置するように配置され、開口部には蓋がされ、蓋にコントロールバルブユニットに設置された油圧アクチュエータを制御するコントロールユニットが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この態様によれば、動力伝達装置を小型化しつつ、ケース内にインヒビタスイッチを配置するスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る動力伝達装置を備えた車両の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る動力伝達装置のケース部材の部分的な外観図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る動力伝達装置のケース部材の部分的な外観図であり、蓋を取り外した状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る動力伝達装置のケース部材の正面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る前後進切替機構、ディテント機構、及びパークロック機構の概略構成図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る前後進切替機構、ディテント機構、及びパークロック機構の概略構成図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るパークロック機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、車両100の概略構成図である。車両100は、駆動源としてのエンジン1と、動力伝達装置としての自動変速機TMと、オイルポンプ3と、駆動輪4と、制御装置としてのコントローラ50と、を備える。
【0013】
エンジン1は、ガソリン、軽油等を燃料とする内燃機関であり、走行用駆動源として機能する。エンジン1は、コントローラ50からの指令に基づいて、回転速度、トルク等が制御される。
【0014】
自動変速機TMは、トルクコンバータ2と、動力伝達機構としてのベルト式無段変速機構(以下、「CVT」ともいう。)10と、前後進切替機構20と、パークロック機構30と、コントロールバルブユニット40(以下では、単に「バルブユニット40」ともいう。)と、オイル(作動油)を貯留するオイルパン6と、を備える。
【0015】
自動変速機TMは、Dレンジすなわちドライブレンジ、Rレンジすなわちリバースレンジ、Nレンジすなわちニュートラルレンジ、Pレンジすなわち駐車レンジ等のレンジを有する。自動変速機TMのレンジは、シフター9によって選択される。本実施形態では、Dレンジ及びRレンジが走行レンジに相当し、Pレンジ及びNレンジが非走行レンジに相当する。
【0016】
トルクコンバータ2は、エンジン1と駆動輪4の間の動力伝達経路上に設けられる。トルクコンバータ2は、流体を介して動力を伝達する。また、トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ2aを締結することで、エンジン1からの駆動力の動力伝達効率を高めることができる。
【0017】
前後進切替機構20は、トルクコンバータ2とCVT10の間の動力伝達経路上に配置される。前後進切替機構20は、第1の締結要素としての前進クラッチ21及び第2の締結要素としての後進ブレーキ22を備える。前進クラッチ21及び後進ブレーキ22は、コントローラ50からの指令に基づき、オイルポンプ3からの吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧されたオイルによって制御される。
【0018】
前進クラッチ21及び後進ブレーキ22は、自動変速機TMの選択レンジに応じて締結または解放される。具体的には、前進レンジ(例えば、Dレンジ)が選択されているときには、前進クラッチ21が締結され、トルクコンバータ2からの入力回転がそのまま出力される。これに対し、後進レンジ(例えば、Rレンジ)が選択されているときには、後進ブレーキ22が締結され、トルクコンバータ2からの入力回転を逆転減速して出力する。また、駐車レンジ(Pレンジ)またはニュートラルレンジ(Nレンジ)が選択されているときには、前進クラッチ21及び後進ブレーキ22が解放され、トルクコンバータ2とCVT10との間の動力伝達が遮断される。
【0019】
CVT10は、動力伝達経路上における前後進切替機構20と駆動輪4との間に配置され、車速やアクセル開度等に応じて変速比を無段階に変更する。CVT10は、プライマリプーリ10aと、セカンダリプーリ10bと、両プーリ10a,10bに巻き掛けられたベルト10cと、を備える。プーリ圧によりプライマリプーリ10aの可動プーリとセカンダリプーリ10bの可動プーリとを軸方向に動かし、ベルト10cのプーリ接触半径を変化させることで、変速比を無段階に変更する。なお、プライマリプーリ10aに作用するプーリ圧及びセカンダリプーリ10bに作用するプーリ圧は、オイルポンプ3からの吐出圧を元圧としてバルブユニット40によって調圧される。
【0020】
CVT10のセカンダリプーリ10bの出力軸8には、図示しない終減速ギア機構を介してディファレンシャル5が接続される。ディファレンシャル5には、ドライブシャフト7を介して駆動輪4が接続される。
【0021】
オイルポンプ3は、エンジン1の回転がベルトを介して伝達されることによって駆動される。オイルポンプ3は、例えばベーンポンプによって構成される。オイルポンプ3は、オイルパン6に貯留されるオイルを吸い上げ、バルブユニット40にオイルを供給する。バルブユニット40に供給されたオイルは、バルブユニット40によって調圧され、各プーリ10a,10bの駆動や、前後進切替機構20の駆動、自動変速機TMの各要素の潤滑などに用いられる。
【0022】
コントローラ50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ50は、図示はしないが、複数のマイクロコンピュータで構成される。具体的には、コントローラ50は、自動変速機TMを制御するATCU、シフトレンジを制御するSCU、エンジン1の制御を行うECU等によって構成される。
【0023】
コントローラ50には、エンジン1の回転速度を検出する第1回転速度センサ51、前後進切替機構20の入力回転速度(=トルクコンバータ2の出力回転速度)を検出する第2回転速度センサ52、前後進切替機構20の出力回転速度(=プライマリプーリ10aの回転速度)を検出する第3回転速度センサ53、CVT10の出力回転速度(=セカンダリプーリ10bの回転速度)を検出する第4回転速度センサ54、車速を検出する車速センサ55、CVT10のセレクトレンジ(P、D、N、Rレンジを切り替えるシフター9の状態)を検出するインヒビタスイッチ56、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ57、ブレーキの踏力を検出する踏力センサ58等からの信号が入力される。コントローラ50は、入力されるこれらの信号に基づき、エンジン1、自動変速機TM等の各種動作を制御する。
【0024】
図2、
図3、及び
図4に示すように、自動変速機TMは、ケース部材80を備える。ケース部材80は、バルブユニット40を収容する第1室81と、第1室81の重力方向上方に位置し且つCVT10を収容する第2室82と、第2室82の内部と外部とを接続する開口部83と、開口部83を閉塞する蓋84と、ケース部材80の側面に突出するように設けられた壁部85と、を有する。蓋84は、壁部85に着脱自在に取り付けられる。なお、
図2、
図3及び
図4は、説明のために自動変速機TMにおける部品の一部を取り除いた状態を示している。
【0025】
開口部83は、壁部85によって取り囲まれた領域内に形成される。さらに、壁部85によって取り囲まれた領域内には、開口部83に隣接し、電動オイルポンプ90を収容するための収容空間Sが形成される。
【0026】
収容空間Sには、電動オイルポンプ90の他にコントローラ50(ATCU)等が収容される。コントローラ50(ATCU)は、例えば、蓋84に取り付けられる(
図2参照)。
【0027】
次に、
図5及び
図6を参照しながら、前後進切替機構20について説明する。なお、
図5及び
図6は、前後進切替機構20及びパークロック機構30の構造を説明するための概略構成図である。
【0028】
前後進切替機構20は、コントローラ50からの制御信号に基づいて切り替えられるセレクト用油圧アクチュエータ23(以下、「制御弁23」ともいう。)と、シフトアクチュエータとしての電動モータ70と、選択されたシフトレンジに応じて駆動された電動モータ70によって位置が変更されるシフト切替弁としてのレンジセレクトバルブ24と、レンジセレクトバルブ24を位置決め保持するディテント機構60と、を備える。
【0029】
制御弁23は、バルブユニット40とレンジセレクトバルブ24とを接続する流路25に設けられる。制御弁23は、例えば、3ポート型のソレノイドバルブによって構成される。制御弁23には、バルブユニット40によって調圧されたオイルが供給される。制御弁23は、コントローラ50からの信号によって、バルブユニット40から供給されたオイルを締結要素(前進クラッチ21または後進ブレーキ22)に供給する供給位置と、締結要素(前進クラッチ21または後進ブレーキ22)内のオイルをオイルパン6に排出する排出位置と、に切り替えられる。
【0030】
レンジセレクトバルブ24は、スプール24aを備える。スプール24aの一端は、プレート26を介して電動モータ70の回転軸71に接続される。プレート26の一端は、スプール24aの一端と回転自在に連結され、プレート26の他端は、電動モータ70の回転軸71に固定される。これにより、電動モータ70の回転に応じて、スプール24aの位置が切り替えられる。具体的には、スプール24aは、流路25からのオイルの流れを遮断するとともに、前進クラッチ21とオイルパン6、及び後進ブレーキ22とオイルパン6とが連通する中立位置(
図5に示す位置)と、流路25と前進クラッチ21とが連通するとともに、後進ブレーキ22とオイルパン6とが連通する前進位置(図示せず)と、流路25と後進ブレーキ22とが連通するとともに、前進クラッチ21とオイルパン6とが連通する後進位置(図示せず)と、流路25からのオイルの流れを遮断し、前進クラッチ21とオイルパン6、及び後進ブレーキ22とオイルパン6とが連通する駐車位置(
図6に示す位置)と、に切り替えられる。
【0031】
前後進切替機構20は、スプール24aの位置を検出するためのインヒビタスイッチ56をさらに備える。インヒビタスイッチ56によって検出されたスプール24aの位置の信号は、コントローラ50に送信される。コントローラ50は、インヒビタスイッチ56から送信された信号に基づいて、CVT10のセレクトレンジ(P、D、N、Rレンジを切り替えるシフター9の状態)を判定する。
【0032】
ディテント機構60は、電動モータ70の回転軸71に固定されたディテントプレート61と、ディテントプレート61の外縁に形成された溝62~65と、溝62~65のいずれかに係合する係合部としての保持ピン66と、保持ピン66を保持し、保持ピン66を係合する溝62~65の底部側に向かって付勢するディテントスプリング67と、を備える。ディテントスプリング67は、弾性を有する部材によって構成され、図示しないボディなどに固定される。
【0033】
ディテントプレート61には、略L字型に形成される。L字の屈曲部分には貫通孔69設けられる。貫通孔69には、電動モータ70の回転軸71が挿通され、貫通孔69において回転軸71とディテントプレート61とが固定される。ディテントプレート61の一方の先端には、上述の溝62~65が形成され、他方の先端には孔68が形成される。孔68には、後述するパークロック機構30のパークロッド33が回動可能に連結される。
【0034】
溝62~65は、各シフトレンジの位置に対応するように形成されている。具体的には、溝62がPレンジに、溝63がRレンジに、溝64がNレンジに、溝65がDレンジに対応する。
【0035】
ディテントプレート61は、溝62~65にディテントスプリング67によって付勢された保持ピン66が係合することで、その角度位置に保持される。ディテントプレート61は、電動モータ70の回転軸71を介してレンジセレクトバルブ24のスプール24aに連結しているので、溝62~65に保持ピン66が係合することで、レンジセレクトバルブ24のスプール24aの位置も保持される。つまり、ディテント機構60は、シフター9によって選択されたシフトレンジに対応する位置でレンジセレクトバルブ24のスプール24aの位置を保持する。
【0036】
次に、パークロック機構30の具体的な構成について、
図5、
図6、及び
図7を参照しながら説明する。
図7は、パークロック機構30の斜視図である。
【0037】
パークロック機構30は、Pレンジが選択されたときに、CVT10(セカンダリプーリ10b)の出力軸8を機械的にロックする。コントローラ50は、シフトレンジがPレンジとPレンジ以外のレンジとの間で変更された場合に、パークロック機構30を制御して、出力軸8を機械的にロックするパークロック、または、出力軸8の機械的なロックを解除するパークロック解除を行う。
【0038】
パークロック機構30は、パーキングギア31と、パーキングポール32と、パークロッド33と、カム34と、ブロック35、を備える。
【0039】
パーキングギア31は、CVT10の出力軸8に固定され、出力軸8とともに回転または停止する。パーキングギア31の外縁部には、回転方向に沿って所定間隔をあけて複数の歯部31aが設けられる。パーキングポール32の先端に設けられたパークロック爪としての爪部32aが歯部31aと歯部31aとの間の溝31bに入り込むことで、パーキングギア31とパーキングポール32が係合状態になる。
【0040】
パーキングポール32は、パークロッド33の動きに応じて支点32bを中心にして揺動する。パーキングポール32が揺動すると、パーキングギア31とパーキングポール32の爪部32aとの係合状態が変更される。パーキングポール32は、外力が作用していない状態では、捩りばね32cの付勢力によって、
図5に示す位置(パーキングポール32の爪部32aがパーキングギア31の溝31bから外れた位置)に保持される。なお、本実施形態では捩りばね32cを用いているが、捩りばね32cを用いずにパーキングポール32の自重によって
図5に示す位置に保持されるようにしてもよい。
【0041】
図5に示すパーキングポール32の爪部32aがパーキングギア31の溝31bから外れた状態では、パーキングギア31に固定された出力軸8のロックが解除されており、パーキングギア31及び出力軸19は回転可能となっている。つまり、
図5に示す状態では、パークロック機構30がパークロック解除状態であり、車両100の移動は規制されていない。
【0042】
これに対し、
図6及び
図7に示すパーキングポール32の爪部32aがパーキングギア31の溝31bに入り込んだ状態、つまり、パーキングギア31とパーキングポール32の爪部32aとが係合した状態では、パーキングギア31に固定された出力軸8が機械的にロックされる。これにより、パークロック機構30がパークロック状態になり、車両100の移動が規制される。
【0043】
パークロッド33の一端は、ディテントプレート61に回動可能に連結される。また、パークロッド33の他端には、カム34が取り付けられる。パークロッド33は、ディテントプレート61の移動に伴って、パーキングギア31とパーキングポール32とを係合させるパークロックポジションと、パーキングギア31とパーキングポール32との係合が解除される非パークロックポジションと、に移動する。
【0044】
カム34は、ケース部材80に固定されたブロック35と協働して、パークロッド33の動きに応じてパーキングポール32を揺動させる。カム34が捩りばね32cの付勢力に抗してパーキングポール32を揺動させることで、パーキングギア31とパーキングポール32の爪部32aとが係合する。これに対し、パークロッド33が
図5に示される非パークロックポジションにある場合には、パーキングポール32には、カム34からの押圧力が作用しない。これにより、パーキングポール32は、捩りばね32cの付勢力によって元の位置に戻され、パーキングギア31とパーキングポール32の爪部32aとの係合が解除された状態となる。
【0045】
ところで、近年、自動車が歩行者に衝突してしまったときの歩行者の頭部保護の観点から、自動変速機TMとボンネット(図示せず)との間のクリアランスを大きくすることが推奨されている。このため、自動変速機TMの重力方向における寸法の縮小が要求されている。そこで、本実施形態では、インヒビタスイッチ56の少なくとも一部を、第2室82内に位置するように設けている(
図3及び
図4参照)。このように、インヒビタスイッチ56の少なくとも一部を第2室82内に設けることにより、インヒビタスイッチ56をケース部材80の外側に設けた場合に比べ、その分自動変速機TMを小型化することができる。なお、インヒビタスイッチ56の全体が第2室82内に収容できれば、自動変速機TMをより一層小型化することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、インヒビタスイッチ56は、第2室82の開口部83側、つまり、開口部83に臨む位置に配置される。これにより、開口部83からインヒビタスイッチ56を取り出すことが簡単になるので、例えば、インヒビタスイッチ56が故障した場合に、交換等に係る手間、時間、費用を削減することができる。
【0047】
なお、電動モータ70はケース部材80内設けることが好ましい。しかしながら、電動モータ70はインヒビタスイッチ56よりも大きく、第2室82内にスペースが確保できない、つまり、第2室82内に収まりきらない場合がある。無理に電動モータ70を第2室82内に収めようとすると、第2室82の容積を拡大する必要が出てきてしまい、逆に自動変速機TMが大型化してしまう。このため、電動モータ70がケース部材80内に収まらない場合には、電動モータ70をケース部材80外に設けてもよい。この場合であっても、インヒビタスイッチ56が第2室82内に配置されている分、自動変速機TMを小型化することができる。
【0048】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0049】
動力伝達装置(自動変速機TM)は、ケース部材80と、コントロールバルブユニット40と、動力伝達機構(CVT10)と、インヒビタスイッチ56と、を有する。ケース部材80は、コントロールバルブユニット40を収容する第1室81と、第1室81の重力方向上方に位置し且つ動力伝達機構(CVT10)を収容する第2室82と、を有し、インヒビタスイッチ56の少なくとも一部は、第2室82内に位置する。
【0050】
動力伝達機構(CVT10)は入力軸と出力軸の位置関係がエンジン1と駆動輪4の位置関係により制約を受けるため、いくばくかのスペースが生じることになる。そこで、当該スペースにインヒビタスイッチ56の少なくとも一部を収容することにより、動力伝達装置(自動変速機TM)を小型化しつつ、ケース部材80内にインヒビタスイッチ56を配置するスペースを確保することができる(請求項1に対応する効果)。
【0051】
動力伝達装置(自動変速機TM)では、ケース部材80には開口部83が設けられており、開口部83側にインヒビタスイッチ56が配置されている。
【0052】
ケース部材80が密閉されているとすると、インヒビタスイッチ56を修理又は交換をする際には動力伝達装置(自動変速機TM)を分解する必要があり、さらに、インヒビタスイッチ56のリペア(修理又は交換)をした後に再度の組み立て工程が必要となる。また、第2室82内に動力伝達機構(CVT10)が収容されているので、完全に分解した場合には作動油を新しく入れ替える必要性がある。そこで、ケース部材80に開口部83(修理窓)を形成し、修理窓から直接インヒビタスイッチ56を取り出せるようにすることにより、動力伝達装置(自動変速機TM)を完全に分解を必要がなくなる。これにより、リペアに係る手間、時間、費用を削減することができる(請求項2に対応する効果)。
【0053】
動力伝達装置(自動変速機TM)では、開口部83には蓋84がされている。
【0054】
開口部83を蓋84によって閉塞することにより、リペア時以外の場合に動力伝達機構(CVT10)が収容される第2室82からのオイル漏出、あるいは第2室82内へのコンタミネーションの侵入を防止することができる(請求項3に対応する効果)。
【0055】
動力伝達装置(自動変速機TM)では、蓋84にコントロールバルブユニット40に設置された油圧アクチュエータ(セレクト用油圧アクチュエータ23、レンジセレクトバルブ24)を制御するコントロールユニット(ATCU)が取り付けられる。
【0056】
コントロールバルブユニット40に設置された油圧アクチュエータ(例えば、ソレノイドバルブ等)を制御するコントロールユニットATCUは、乗員が乗り込む車室内に配置されることがある。この場合、ワイヤハーネスが長くなってしまう。また、第1室81内には、コントロールユニットATCUを配置するスペースが取りにくい。そこで、開口部83(修理窓)の蓋84にコントロールユニット(ATCU)を配置することにより、動力伝達装置(自動変速機TM)の大型化も避けることができる。また、コントロールユニットATCUとコントロールバルブユニット40との距離が短くなるので、ワイヤハーネスを短くすることができ、コスト及び重量を削減することができる(請求項4に対応する効果)。
【0057】
動力伝達装置(自動変速機TM)は、シフト切替弁(レンジセレクトバルブ24)と、シフト切替弁(レンジセレクトバルブ24)の位置を制御するシフトアクチュエータ(電動モータ70)と、を有し、インヒビタスイッチ56は、シフト切替弁(レンジセレクトバルブ24)の位置を検出し、シフトアクチュエータ(電動モータ70)は、ケース部材80の外側に配置される。
【0058】
シフトバイワイヤシステムにおいては、シフトアクチュエータ(電動モータ70)はインヒビタスイッチ56よりも大きく、小型化を目的として動力伝達機構(CVT10)を収容する第2室82内に収まりきらない場合がある。無理にシフトアクチュエータ(電動モータ70)を第2室82内に収めようとすると、第2室82の容積を拡大する必要が出てきてしまい、逆に動力伝達装置(自動変速機TM)が大型化してしまうおそれがある。そこで、小さなインヒビタスイッチ56を第2室82内に配置する一方、大きなシフトアクチュエータ(電動モータ70)を第2室82外(ケース外)に配置することでトータルバランスで動力伝達装置(自動変速機TM)の小型化が可能となる(請求項5に対応する効果)。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0060】
上記実施形態では、パークロック機構30に使用するアクチュエータとして電動モータ70を例に説明したが、アクチュエータは、油圧アクチュエータや電動リニアアクチュエータであってもよい。
【0061】
また、動力伝達機構として、ベルト式無段変速機構を例に説明したが、有段変速機構であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、シフトバイワイヤシステムを例に説明したが、メカリンク式のシフトシステムであってもよい。
【0063】
インヒビタスイッチ56は、レンジセレクトバルブ24のスプール24aの位置を検出するものに限らない。インヒビタスイッチ56は、電動モータ70の回転軸71の回転角や、ディテントプレート61の位置であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 エンジン
2 トルクコンバータ
4 駆動輪
9 シフター
10 CVT(動力伝達機構)
20 前後進切替機構
24 レンジセレクトバルブ(シフト切替弁)
24a スプール(弁体)
30 パークロック機構
40 コントロールバルブユニット
50 コントローラ(コントロールユニット)
56 インヒビタスイッチ
60 ディテント機構
70 電動モータ
71 回転軸
73 開口部
80 ケース部材
83 開口部
84 蓋
100 車両
TM 自動変速機(動力伝達装置)