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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240207BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61F13/15 141
A61F13/53 300
A61L15/20 200
A61L15/46 200
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019077285
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020174736
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】垣鍔 裕介
(72)【発明者】
【氏名】太田 義久
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184962(JP,A)
【文献】特開2016-187549(JP,A)
【文献】特開2018-071022(JP,A)
【文献】特開2019-043103(JP,A)
【文献】特表2009-530014(JP,A)
【文献】特開2016-010593(JP,A)
【文献】特開2018-068911(JP,A)
【文献】特開2018-166940(JP,A)
【文献】特開2018-166941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを有する吸収性物品であって、
前記吸収体が、吸水性樹脂粉末を含有する吸水層を有し、
前記吸収性物品に吸収された体液と接触し得る位置にフマル酸が配置されており、
前記バックシートよりも肌面側に配置されたシート部材にポリフェノール化合物が配置されており、
前記シート部材が天然セルロース繊維のみから構成されており、
前記ポリフェノール化合物が、前記シート部材とポリフェノール含有水溶液とを接触させた後、水を除去することにより付与されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記ポリフェノール化合物が、縮合型タンニンである請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ポリフェノール化合物が、柿の搾汁液に含まれる縮合型タンニンである請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記フマル酸およびポリフェノール化合物が、前記吸水性樹脂粉末よりも肌面側に配置されている請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ポリフェノール化合物の総使用量と前記フマル酸の総使用量との比(ポリフェノール化合物/フマル酸)が、7.8~388.9である請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ポリフェノール化合物の使用量が、吸収性物品が有する吸水性樹脂粉末100質量部に対して、0.07質量部~3.5質量部である請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記フマル酸の使用量が、吸収性物品が有する吸水性樹脂粉末100質量部に対して、0.0009質量部~0.45質量部である請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記縮合型タンニンは、一部のフェノール性ヒドロキシ基の水素原子が金属原子に置換されており、
前記フマル酸が、前記ポリフェノール化合物よりも肌面側に配置されている請求項2または3に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粉末を有する吸収性物品に関し、特に体液を吸収した後の吸収性物品の消臭に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつ、生理用ナプキン、失禁者用パッド等の吸収性物品は、身体から排泄される尿や経血等の体液を吸収、保持させて使用するが、使用時あるいは使用後に廃棄する時の不快臭に対する対策が求められている。このような不快臭を抑制した吸収性物品が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸収体と、該吸収体の肌面側に配置されたフマル酸担持シートとを備えており、前記フマル酸担持シートが、平均粒子径が30μm以下のフマル酸粒子を担持したシートおよび/または少なくとも一部の構成繊維がフマル酸で被覆されたシートである吸収性物品が記載されている(特許文献1(請求項1、段落0013)参照)。
【0004】
また特許文献2には、吸収体と、前記吸収体の肌側に配されたトップシートと、前記吸収体の外側に配されたバックシートとを有する吸収性物品であって、前記バックシートは、透湿性フィルムの外側に半合成セルロース繊維から形成された不織布が積層されている吸収性物品が記載されている。この特許文献2には、不織布に消臭剤を含ませることが記載され、消臭剤として縮合型タンニンが例示されている(特許文献2(請求項1、3、段落0037)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-204799号公報
【文献】特開2018-68911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の吸収性物品は、体液吸収後の悪臭の発生が低減されているものの、まだ改善の余地があった。本発明は、体液吸収後の悪臭の発生をより抑制できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収性物品は、肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを有し、前記吸収体が吸水性樹脂粉末を含有する吸水層を有し、前記吸収性物品に吸収された体液と接触し得る位置にフマル酸が配置されており、前記バックシートよりも肌面側にポリフェノール化合物が配置されている。
【0008】
吸収性物品における体液等と接触し得る部分にフマル酸を配置することで、体液等を吸収した後の吸収性物品からの悪臭の発生を防止することができる。また、ポリフェノール化合物を配置することで、吸収後の体液から発生した臭気成分を補足することができる。そのため、本発明の吸収性物品は、体液吸収後も悪臭の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、体液吸収後の悪臭の発生をより抑制できる吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の吸収性物品の一例の平面図。
図2図1のV-V線の模式的断面図。
図3】本発明の吸収性物品の他の例の平面図。
図4図3のV-V線の模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の吸収性物品は、肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体とを有し、前記吸収体が吸水性樹脂粉末を含有する吸水層を有している。そして、本発明の吸収性物品は、前記吸収性物品に吸収された体液と接触し得る位置にフマル酸が配置されており、前記バックシートよりも肌面側にポリフェノール化合物が配置されている。
【0012】
フマル酸は、腐敗菌の繁殖を抑制する作用を有する。よって、吸収性物品における体液等と接触し得る部分(例えば、トップシート、吸水性樹脂粉末の周辺)にフマル酸を配置することで、体液等を吸収した後の腐敗菌の繁殖を抑制することができ、吸収性物品からの悪臭の発生を防止することができる。また、ポリフェノール化合物は臭気成分を補足することができる。そのため、バックシートよりも肌面側にポリフェノール化合物を配置することで、吸収後の体液から発生した臭気成分を補足することができる。そのため、本発明の吸収性物品は、フマル酸によって吸収後の体液から発生する臭気成分を低減し、かつ、ポリフェノール化合物によって発生した臭気成分を補足し、吸収性物品外部へ臭気が漏れ出ることを抑制できる。よって、本発明の吸収性物品は、体液吸収後の悪臭の発生を抑制できる。
【0013】
本発明の吸収性物品は、肌面側に配置された透液性のトップシートと、外面側に配置された不透液性のバックシートとを有する。
【0014】
(トップシート)
前記トップシートは、吸収性物品の最も着用者側に配置されるものであり、着用者の体液を速やかに捕捉して吸水性樹脂粉末へと移動させる。前記トップシートは、透液性のシート材料、例えば、親水性繊維により形成された不織布が使用できる。トップシートとして利用される不織布は、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布であり、これらの不織布を形成する親水性繊維としては通常、セルロース、レーヨン、コットン等が用いられる。なお、トップシートとして、表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された透液性の不織布が用いられてもよい。
【0015】
(バックシート)
前記バックシートは、吸収性物品の最も外面側に配置されるものであり、体液等が外部に漏れだすことを防止する。バックシートに使用される不透液性シートとしては、例えば、疎水性繊維(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド)にて形成された撥水性または不透液性の不織布(例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用され、不透液性シートに到達した体液が、吸収性物品の外側にしみ出すのを防止する。不透液性シートにプラスチックフィルムが利用される場合、ムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0016】
(吸収体)
前記吸収性物品は、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体を有する。前記吸収体は、少なくとも一層の吸水層を有し、この吸水層は吸水性樹脂粉末を含有している。なお、吸収性物品が有する吸収体は、一層でもよいし、二層以上でもよい。
【0017】
(吸水性樹脂粉末)
前記吸水性樹脂粉末について説明する。吸水性樹脂粒子は、使用者から排泄された体液を吸収し、保持する。なお、体液としては、尿、血、汗、滲出液、水便、軟便等が挙げられる。本発明で使用する吸水性樹脂粉末は、特に限定されないが、アクリル酸を構成成分とする架橋重合体であって、そのカルボキシ基の少なくとも一部が中和されているものを使用することが好ましい。前記架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。アクリル酸成分の含有率が前記範囲内であれば、得られる吸水性樹脂粉末が、所望の吸収性能を発現しやすくなる。
【0018】
架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオン等を挙げることができる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシ基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシ基を中和するようにしてもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
【0019】
架橋重合体のカルボキシ基の中和度は、55モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合がある。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシ基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシ基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシ基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0020】
前記架橋重合体は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(a2)加水分解性モノマーと、(b)内部架橋剤とを含有する不飽和単量体組成物を重合して得られるものが好ましい。
【0021】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するモノマー等が使用できる。水溶性モノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つモノマーを意味する。また、(a2)加水分解性モノマーは、50℃の水、必要により触媒(酸、塩基等)の作用により加水分解されて、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する。(a2)加水分解性モノマーの加水分解は、架橋重合体の重合中、重合後、および、これらの両方のいずれでもよいが、得られる吸水性樹脂粉末の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0022】
水溶性置換基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、アミノ基、または、これらの塩、並びに、アンモニウム塩が挙げられ、カルボキシ基の塩(カルボキシレート)、スルホ基の塩(スルホネート)、アンモニウム塩が好ましい。また、塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アンモニウム塩は、第1級~第3級アミンの塩または第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらの塩のうち、吸収特性の観点から、アルカリ金属塩およびアンモニウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0023】
前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数3~30の不飽和カルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、クロトン酸および桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸、マレイン酸塩、フマル酸、シトラコン酸およびイタコン酸等の不飽和ジカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル等の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1~8)エステルおよび/またはその塩等が挙げられる。なお、本発明の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
【0024】
(a2)加水分解性モノマーとしては、特に限定されないが、加水分解により水溶性置換基となる加水分解性置換基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーが好ましい。加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基、エステル結合を含む基およびシアノ基等が挙げられる。
【0025】
酸無水物を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数4~20の不飽和ジカルボン酸無水物等が用いられ、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。エステル結合を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のモノエチレン性不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル;および、酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリル等のモノエチレン性不飽和アルコールのエステルが挙げられる。シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、および、5-ヘキセンニトリル等の炭素数3~6のビニル基含有のニトリル化合物が挙げられる。
【0026】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーはそれぞれ、単独で、または、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0027】
不飽和単量体組成物は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの他に、これらと共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーを用いることができる。共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーとしては、疎水性ビニルモノマー等が使用できるが、これらに限定されるわけではない。
【0028】
(a3)その他のビニルモノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0029】
本発明では、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体を得るという観点から、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(a2)加水分解性モノマーとして、(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーを使用することが好ましい。架橋重合体を形成する不飽和単量体組成物中の(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーの含有率は、50質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
【0030】
(b)内部架橋剤としては、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤、(b2)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基および/または(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、かつ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤、および、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基および/または(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を2個以上有する内部架橋剤等を挙げることができる。
【0031】
(b)内部架橋剤としては、吸収性能(特に吸収量、吸収速度)等の観点から、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルがより好ましく、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタンまたはペンタエリスリトールトリアリルエーテルがさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが最も好ましい。
【0032】
(b)内部架橋剤としては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003-165883号公報、特開2005-75982号公報、および、特開2005-95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0033】
架橋重合体の重合形態としては、従来から知られている方法等が使用でき、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法が適応できる。また、重合時の重合液の形状として、薄膜状、噴霧状等であってもよい。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法等が適用できる。重合方法としては、溶液重合法が好ましく、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、水溶液重合法がより好ましい。
【0034】
架橋重合体は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定されず、例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機、シェット気流式粉砕機等の通常の粉砕装置が使用できる。粉砕された架橋重合体は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0035】
必要によりふるい分けした場合の架橋重合体の重量平均粒子径(μm)は、300μm以上が好ましく、より好ましくは350μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、500μm以下が好ましく、より好ましくは480μm以下、さらに好ましくは450μm以下である。架橋重合体の重量平均粒子径(μm)が、前記範囲内であれば、吸収性能がさらに良好となる。
【0036】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機および標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μmおよび45μm、並びに受け皿の順に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるいおよび受け皿上の測定粒子の質量を秤量し、その合計を100質量%として各ふるい上の粒子の質量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が質量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、質量分率が50質量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0037】
架橋重合体は、必要に応じてさらに表面架橋を行うことができる。表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、(b)内部架橋剤と同じものが使用できる。表面架橋剤としては、吸水性樹脂粉末の吸収性能等の観点から、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基および/または(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、より好ましくは多価グリシジル、さらに好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0038】
架橋重合体は、さらに表面改質剤で処理されてもよい。表面改質剤としては、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物等の多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリカチオン化合物;無機微粒子;フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する表面改質剤;ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤等が挙げられる。
【0039】
架橋重合体を表面改質剤で処理する方法としては、表面改質剤が架橋重合体の表面に存在するように処理する方法であれば、特に限定されない。しかし、表面改質剤は、架橋重合体の乾燥体と混合されることが表面の表面改質剤の量をコントロールする観点から好ましい。なお、混合は、均一に行うことが好ましい。
【0040】
吸水性樹脂粉末の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状、米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0041】
前記吸水性樹脂粉末には、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末、有機質繊維状物等の添加剤を含むことができる。添加剤としては、特開2003-225565号公報、特開2006-131767号公報等に例示されているものを挙げることができる。
【0042】
(吸水性繊維)
前記吸水層は、前記吸水性樹脂粉末に加えて、吸水性繊維を含有してもよい。前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維が挙げられる。前記吸水性繊維の使用量は、吸水層に配置される吸水性樹脂粉末100質量部に対して、25質量部以上が好ましく、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは100質量部以上であり、700質量部以下が好ましく、より好ましくは600質量部以下、さらに好ましくは500質量部以下である。なお、前記吸水層は、アセテート繊維を含有しないことが好ましい。前記吸水性繊維としてパルプ繊維のみを使用することも好ましい。
【0043】
(繊維基材)
前記吸水層は、吸水性樹脂粉末に加えて、繊維基材を含有してもよい。前記繊維基材としては、熱融着繊維等を挙げることができる。熱融着性繊維は、保形性を高めるために使用される。熱融着繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維や複合繊維等が用いられる。吸水性材料として、吸水性樹脂粉末のみを含有する吸水層は、薄型化が可能である。繊維基材を含有する吸水層は、体液の分散性に優れる。
【0044】
前記吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粉末を、透液性シートに固定したもの;吸水性樹脂粉末を透液性シートで包んだもの;吸水性樹脂粉末を、透液性の第1シートと第2シートとで挟持したもの;が挙げられる。透液性シートとしては、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ティッシュペーパーが挙げられる。前記吸収体は、吸水層を1層のみ有していてもよいし、2層以上有していてもよい。なお、吸水層を透液性シートで包むとは、吸水層の表面の70%以上を透液性シートで覆った状態をいう。
【0045】
(フマル酸)
前記吸収性物品は、前記吸収性物品に吸収された体液と接触し得る位置にフマル酸が配置されている。
フマル酸が配置される位置は、吸収性物品に吸収された体液と接触し得る位置であれば特に限定されず、トップシート、吸収体、バックシート、トップシートと吸収体との間に配置されるシート、吸収体とバックシートとの間に配置されるシートなどが挙げられる。吸収体に配置する場合、吸水層に配置してもよいし、吸収体を構成する透液性シートに配置してもよい。また、前記フマル酸は、一部材のみに配置してもよいし、二つ以上の部材に配置してもよい。
【0046】
前記フマル酸の使用量は、吸収性物品が有する吸水性樹脂粉末100質量部に対して、0.0009質量部以上が好ましく、より好ましくは0.0018質量部以上、さらに好ましくは0.009質量部以上であり、0.45質量部以下が好ましく、より好ましくは0.09質量部以下、さらに好ましくは0.045質量部以下である。フマル酸の使用量が、0.0009質量部以上であれば消臭効果がより向上し、0.45質量部以下であれば紙おむつの使用期間に対するフマル酸の使用量を低減できる。
【0047】
前記フマル酸が配置される部材は、樹脂繊維を含有することが好ましい。前記樹脂繊維は、表面の少なくとも一部がポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、または、ポリアミド樹脂から構成されている。このような樹脂繊維では、フマル酸含有水溶液と接触させ、乾燥させることによりフマル酸を付与した場合、時間の経過とともにフマル酸の結晶化が進み、より溶解しにくい状態となり、耐久性が一層高まる。
【0048】
前記ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。前記ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。前記ポリアミド樹脂(PA)としては、ポリアミド6、ポリアミド66などが挙げられる。
【0049】
前記樹脂繊維は、単独素材から構成された繊維でもよいし、多種素材から構成された複合繊維でもよい。複合繊維としては、芯鞘型、並列型、偏芯芯鞘型、放射型、中空放射型、海島型、ブレンド型、ブロック型などが挙げられる。前記樹脂繊維が、複合繊維である場合、繊維素材としてポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。単独素材からなる繊維としては、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。複合繊維としては、ポリオレフィン樹脂からなる芯部とポリエステル樹脂からなる鞘部とを有する繊維、ポリアミド樹脂からなる芯部とポリエステル樹脂からなる鞘部とを有する繊維などが挙げられる。
【0050】
前記樹脂繊維が、その表面が2種以上の樹脂から構成される複合繊維である場合、繊維表面全体におけるポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、または、ポリアミド樹脂から構成されている領域の面積率が、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。特定の樹脂から構成されている面積が50%以上であれば、フマル酸被膜の耐久性がより向上する。なお、前記面積率は、複合繊維の構造から求めることができる。
【0051】
前記樹脂繊維としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂の単独素材からなる繊維;鞘部がポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはポリアミド樹脂から構成されている芯鞘型の複合繊維が好ましい。
【0052】
前記フマル酸は、前記部材(樹脂繊維)とフマル酸含有水溶液とを接触させた後、水を除去することにより付与することが好ましい。このようにフマル酸を付与することで、フマル酸が樹脂繊維表面に被覆膜を形成し、また、フマル酸が樹脂繊維表面で結晶化するため、フマル酸が樹脂繊維から脱落しにくくなる。
【0053】
前記樹脂繊維とフマル酸含有水溶液とを接触させる方法としては、フマル酸含有水溶液に樹脂繊維を浸漬する方法、樹脂繊維にフマル酸含有水溶液を散布または塗布する方法が挙げられる。前記フマル酸含有水溶液の溶媒としては、水、水と親水性有機溶剤との混合溶液などを用いることができる。前記親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0054】
前記フマル酸含有水溶液中のフマル酸濃度は、0.03質量%以上が好ましく、より好ましくは0.06質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上であり、0.60質量%以下が好ましく、より好ましくは0.30質量%以下である。フマル酸濃度が0.03質量%以上であれば、フマル酸濃度が低くなり過ぎず、樹脂繊維への付着加工・乾燥が容易となり、0.60質量%以下であれば、水溶液中にフマル酸を容易に完全溶解させることができる。
【0055】
前記フマル酸含有水溶液は、増粘剤を含有することが好ましい。前記増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン、ゼラチン、不飽和カルボン酸(共)重合体(例えば、ポリアクリル酸、イソブチレン-マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)、カルボキシル化多糖体(例えば、カルボキシメチルセルロースなど)、および、これらの塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸、および、これらの塩(例えば、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(共)重合体の無機酸(塩酸、リン酸など)塩または有機酸(ギ酸、酢酸、乳酸など)塩などが挙げられる。
【0056】
前記増粘剤の含有量は、特に規定する必要はないが、フマル酸100質量部に対して、0.0000002質量部以上が好ましく、より好ましくは0.001質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上であり、5質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以下、さらに好ましくは0.04質量部以下である。
【0057】
加工に使用するフマル酸含有水溶液には、増粘剤以外に、クエン酸・リンゴ酸等の有機酸や、抗菌剤、消臭剤、界面活性剤、紡糸に使用する油剤等を配合して、使用することもできる。
【0058】
前記シート部材とフマル酸含有水溶液とを接触させた後、水を除去する方法は、特に限定されず、例えば、自然乾燥が挙げられる。
【0059】
前記樹脂繊維100質量部に対する前記フマル酸の付与量は、0.00045質量部以上が好ましく、より好ましくは0.0009質量部以上であり、0.225質量部以下が好ましく、より好ましくは0.045質量部以下、さらに好ましくは0.0225質量部以下である。フマル酸の付与量が0.00045質量部以上であれば体液等を吸収した後の腐敗菌の繁殖をより抑制することができ、0.225質量部以下であればフマル酸被膜が厚くなり過ぎず、耐久性がより向上する。フマル酸の付与量は、所定の質量のフマル酸被覆繊維を、多量のエタノールを用いたソックスレー抽出を行い、付着しているフマル酸を全て溶解させた後、溶液中のフマル酸の質量を測定することで求められる。
【0060】
なお、フマル酸を配置する時機は特に限定されない。例えば、トップシートにフマル酸を担持させる場合、透液性シートにフマル酸を予め担持させておき、このフマル酸担持シートをトップシートとして使用してもよいし、フマル酸を担持していない透液性シートを用いて吸収性物品を組み立てた後、トップシートにフマル酸含有水溶液を散布してもよい。また、吸水層のパルプにフマル酸を担持させる場合、パルプにフマル酸を予め担持させておき、このフマル酸担持パルプを用いて吸水層を形成してもよいし、フマル酸を担持していないパルプを用いて吸水層を形成した後、この吸水層にフマル酸含有水溶液を散布してもよい。
【0061】
(ポリフェノール化合物)
前記吸収性物品は、前記バックシートよりも肌面側にポリフェノール化合物が配置されている。ポリフェノール化合物が配置される位置は、バックシートよりも肌面側であれば特に限定されず、トップシート、吸収体、バックシート、トップシートと吸収体との間に配置されるシート、吸収体とバックシートとの間に配置されるシートなどが挙げられる。吸収体に配置する場合、吸水層に配置してもよいし、吸収体を構成する透液性シートに配置してもよい。また、ポリフェノールは一部材にのみ配置してもよいし、二つ以上の部材に配置してもよい。
【0062】
前記ポリフェノール化合物の使用量は、吸収性物品が有する吸水性樹脂粉末100質量部に対して、0.07質量部以上が好ましく、より好ましくは0.175質量部以上、さらに好ましくは0.35質量部以上であり、3.5質量部以下が好ましく、より好ましくは1.75質量部以下、さらに好ましくは0.7質量部以下である。ポリフェノール化合物の使用量が、0.07質量部以上であれば消臭効果がより向上し、3.5質量部以下であればコストが低減できる。
【0063】
前記吸収性物品において、前記ポリフェノール化合物の総使用量と前記フマル酸の総使用量との比(ポリフェノール化合物/フマル酸)は、7.8以上が好ましく、より好ましくは19.4以上、さらに好ましくは38.9以上であり、388.9以下が好ましく、より好ましくは194.4以下、さらに好ましくは77.8以下である。前記比が7.8以上であれば初期の消臭効果がより発揮され、388.9以下であればより長時間にわたって消臭効果が発揮される。
【0064】
前記ポリフェノール化合物としては、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子、没食子酸などが挙げられ、ポリフェノール化合物の重合物が好ましく、縮合型タンニンがより好ましい。前記ポリフェノール化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
縮合型タンニンは、柿の実(柿渋)、未熟バナナ、ブドウの果皮や種子、栗皮、紅茶、イナゴマメやタマリンドやタラ等の豆類の種皮やサヤ、オークやケプラチョやミモザ等の樹皮や木質部等に含まれ、圧搾したり、溶媒(例えば、熱水やアルコール)で抽出することにより、濃縮物として得ることができる。
【0066】
縮合型タンニンは、フラバン骨格に複数のヒドロキシ基が結合した構造を有する化合物であることが好ましく、下記式(1)に示すフラバン骨格の構造式中、3位と5位と7位の炭素および2位に結合したフェニル基の3’位と4’位と5’位の炭素から選ばれる少なくとも2つ以上にヒドロキシ基が結合していることが好ましい。特に、縮合型タンニンとしては、少なくとも5位と7位と3’位と4’位の炭素にヒドロキシ基が結合したフラバン骨格を有する化合物であることが好ましく、天然物中にはこのような構造を有する縮合型タンニンが多く知られている。また、縮合型タンニンとして、フラバン骨格の3位の炭素に結合したヒドロキシ基がエステル化されているものも知られており、当該ヒドロキシ基の水素原子がガロイル基(3,4,5-トリヒドロキシベンゾイル基)で置換された構造を有する化合物が知られている。縮合型タンニンは、フラバン骨格に結合した複数のヒドロキシ基によって、臭気の原因分子(臭気分子)と多点的に相互作用して、固定化できるものと考えられる。
【0067】
【化1】
【0068】
縮合型タンニンとしては、複数のヒドロキシ基が結合したフラバン骨格が、炭素-炭素結合を介して複数繋がった構造を有する化合物であることが好ましい。フラバン骨格が複数繋がった構造を有する縮合型タンニンを用いれば、臭気分子を包接固定できるようになると考えられ、消臭効果を高めることができる。例えば天然物中には、上記に示すフラバン骨格の4位の炭素と8位の炭素が結合箇所となって、フラバン骨格が複数繋がった構造を有する縮合型タンニンが知られている。
【0069】
フラバン骨格が複数繋がった構造を有する縮合型タンニンとしては、例えば、下記式(2)で示す繰り返し単位を有するものを用いることが好ましい。なお、下記式(2)において、R1は水素原子またはヒドロキシ基を表し、R2は水素原子またはガロイル基を表す。
【0070】
【化2】
【0071】
縮合型タンニンは、消臭効果を高める点から、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。このような重量平均分子量を持つ縮合型タンニンは、フラバン骨格が複数繋がった構造を有するものとなる。一方、縮合型タンニンの重量平均分子量の上限は特に限定されないが、溶解性を高めて取り扱い性を向上させる点から、当該重量平均分子量は500,000以下が好ましく、300,000以下がより好ましく、150,000以下がさらに好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の値とする。
【0072】
縮合型タンニンとしては、柿渋由来のもの(柿の搾汁液に含まれる縮合型タンニン)を用いることが好ましい。柿渋由来の縮合型タンニンであるカキタンニンは、複数のヒドロキシ基が結合したフラバン骨格が12~30個程度繋がった構造を有し、特に高い消臭効果を示す。柿渋は、例えば、未成熟の渋柿の実を圧搾して得られた搾汁液を発酵させることにより得ることができ、これをそのまま用いてもよく、必要に応じて適宜濃縮、希釈、ろ過、抽出、乾燥等の処理を施してもよい。柿渋は市販品を用いてもよい。
【0073】
前記縮合型タンニンは、一部のフェノール性ヒドロキシ基の水素原子が金属原子に置換されていることが好ましい。このように水素原子の一部を金属原子に置換することで、臭気の原因分子(臭気分子)を補足する性能がより向上する。前記金属原子としては、アルカリ金属原子が好ましく、ナトリウム、カリウムがより好ましい。
【0074】
前記ポリフェノール化合物が配置されるシート部材は、吸水性繊維を含有することが好ましい。前記吸水性繊維は、吸水性を有するものであれば特に限定されない。なお、吸水とは、液体の水が繊維中に毛細管現象などで侵入することである。
【0075】
前記吸水性繊維としては、セルロース繊維、ポリビニルアルコール繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ポリアクリル酸ナトリウム塩繊維などが挙げられる。前記セルロース繊維としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維が挙げられる。天然セルロース繊維としては、綿、麻、木材パルプなどが挙げられる。再生セルロース繊維としては、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセルが挙げられる。これらの中でも、天然セルロース繊維および/または再生セルロース繊維が好ましく、天然セルロース繊維がより好ましい。なお、前記吸水性繊維は、アセテート繊維を含有しないことが好ましい。前記ポリフェノール化合物が配置されるシート部材は、天然セルロース繊維のみからなることも好ましい。
【0076】
前記吸水性繊維は、繊維1g当たりの生理食塩水の吸収量が、0.2g以上が好ましく、より好ましくは0.5g以上、さらに好ましくは1.0g以上であり、5.0g以下が好ましく、より好ましくは3.5g以下、さらに好ましくは2.0g以下である。
【0077】
前記ポリフェノール化合物が配置される部材は、前記吸水性繊維以外の合成繊維を含有してもよい。この場合、前記部材が有する繊維中の前記吸水性繊維の含有率は、20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。また、前記ポリフェノール化合物が配置される部材が、吸水性繊維のみから構成されていてもよい。
【0078】
前記ポリフェノール化合物は、前記部材(吸水性繊維)とポリフェノール含有水溶液とを接触させた後、水を除去することにより付与することが好ましい。吸水性繊維とポリフェノール化合物含有水溶液とを接触させると、吸水性繊維が水を吸収するとともに溶解したポリフェノール化合物も取り込むこととなり、水を除去すると吸水性繊維の内部にポリフェノール化合物が存在することとなる。このように吸水性繊維の内部に存在するポリフェノール化合物は、体液等によって流されることがないため、長期にわたって防臭効果を発揮できる。
【0079】
前記吸水性繊維とポリフェノール化合物含有水溶液とを接触させる方法としては、ポリフェノール化合物含有水溶液に吸水性繊維を浸漬する方法、吸水性繊維にポリフェノール化合物含有水溶液を散布または塗布する方法が挙げられる。前記ポリフェノール化合物含有水溶液の溶媒は、水が使用される。前記溶媒は、有機溶剤(メタノール、エタノール、アセトン、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等)を含有してもよい。
【0080】
前記ポリフェノール化合物含有水溶液中のポリフェノール化合物濃度は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上であり、30.0質量%以下が好ましく、より好ましくは20.0質量%以下である。ポリフェノール化合物濃度が0.5質量%以上であれば製造工程でポリフェノール化合物含有水溶液の噴霧量を低減でき、乾燥が容易となり、30.0質量%以下であればポリフェノール化合物の溶解が容易となる。
【0081】
前記ポリフェノール化合物含有水溶液は、塩基性金属化合物を含有することが好ましい。前記塩基性金属化合物は、水溶液のpHが7超となる化合物である。塩基性金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記塩基性金属化合物としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物が挙げられる。これらの中でも、特にアルカリ金属成分を含有する化合物がより好ましい。また、吸水性樹脂粉末の吸収性能への悪影響を考慮し、前記塩基性金属化合物は、アルカリ土類金属成分を含有しないことが好ましい。
【0083】
前記塩基性化合物の使用量は、ポリフェノール化合物含有水溶液のポリフェノール化合物濃度が0.5質量%~30.0質量%の場合、水溶液(25℃)のpHが9.0~10.0となるように調節することが好ましい。
【0084】
なお、ポリフェノール化合物を配置する時機は特に限定されない。例えば、吸収体を構成する透液性シートにポリフェノール化合物を担持させる場合、透液性シートにポリフェノール化合物を予め担持させておき、このポリフェノール担持シートを用いて吸収体を作製してもよいし、ポリフェノール化合物を担持していない透液性シートを用いて吸収体を作製した後、この吸収体にポリフェノール化合物含有水溶液を散布してもよい。
【0085】
(吸収性物品)
前記吸収性物品は、前記吸収性物品に吸収された体液と接触し得る位置にフマル酸が配置されており、前記バックシートよりも肌面側にポリフェノール化合物が配置されている。前記フマル酸とポリフェノール化合物とは、同じ位置に配置されていてもよいし、異なる位置に配置されていてもよい。前記フマル酸およびポリフェノール化合物は、前記吸水性樹脂粉末よりも肌面側に配置されていることが好ましい。また、前記フマル酸は、前記ポリフェノール化合物よりも肌面側に配置されていることが好ましい。このように配置すれば、ポリフェノール化合物が塩基性金属化合物で処理されている場合でも、肌面側に配置されたフマル酸によって、吸収性物品の使用者に当接する側を弱酸性に維持することができる。
【0086】
吸収性物品の構造としては、例えば、(1)吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、前記吸収体の外面側に配置されたバックシートとを有し、前記吸収体を構成する透湿性シートにポリフェノール化合物が配置されており、前記トップシートにフマル酸が配置されている態様;(2)吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、前記吸収体の外面側に配置されたバックシートとを有し、前記吸収体を構成する透湿性シートにポリフェノール化合物が配置されており、前記吸収体と前記トップシートとの間にフマル酸を担持したシートが配置されている態様;(3)吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、前記吸収体の外面側に配置されたバックシートとを有し、前記吸収体を構成する透湿性シートにポリフェノール化合物が配置されており、前記トップシートおよび吸水層中のパルプにフマル酸が配置されている態様;(4)吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、前記吸収体の外面側に配置されたバックシートとを有し、前記吸収体を構成する透湿性シートにポリフェノール化合物が配置され、吸水層中のパルプにフマル酸が配置されており、前記吸収体と前記トップシートとの間にフマル酸を担持したシートが配置されている態様;などが挙げられる。なお、吸収体が、吸水性樹脂粉末を、第1の透液性シートと第2の透液性シートとで挟持した構成である場合は、吸水性樹脂粉末(吸水層)よりも肌面側に配置される透液性シートにポリフェノール化合物を担持させることが好ましい。
【0087】
(具体例)
本発明の吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ(テープ型、パンツ型、パッド型等)、失禁パッド、生理用ナプキン等の人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品が挙げられる。また、ペットに用いられる使い捨ておむつや、シートタイプの吸収性物品が挙げられる。
【0088】
前記吸収性物品が、失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドである場合、例えば、透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に、吸収体が配置される。失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドの形状としては、砂時計型、ひょうたん型などが挙げられる。また、必要に応じて、前記透液性のトップシートの幅方向両側に不透液性のサイドシートが設けられていてもよい。サイドシートは、トップシートの幅方向両側の上面に接合され、接合点より幅方向内方のサイドシートは、吸収体の両側縁に沿って一対の立ち上がりフラップを形成する。
【0089】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成するテープ型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウエスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつ;などが挙げられる。
【0090】
吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、前記股部に、前記吸水体と拡散シートが配置されていてもよい。また、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置された積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。前記内側シートは、親水性または撥水性であることが好ましく、前記外側シートは、撥水性であることが好ましい。
【0091】
前記使い捨ておむつには、両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップを設けることにより、体液の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【0092】
次に、前記吸収性物品の実施態様の例を、失禁パッドを例に挙げ、図1~4を参照して説明する。図1は、実施態様1の失禁パッドの平面図を表す。図2は、図1の失禁パッドのV-V断面図を表す。図3は、実施態様2の失禁パッドの平面図を表す。図4は、図3の失禁パッドのV-V断面図を表す。なお、図では、矢印Bが幅方向を、矢印Aが長手方向を示す。矢印A,Bにより形成される面上の方向が、平面方向である。
【0093】
実施態様1
図1、2に示した実施態様1の失禁パッド(吸収性物品)1は、透液性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体10を有している。前記実施態様1の失禁パッド1は、吸収体として、吸収体10を有する。前記吸収体10は、第1基材12と第2基材13と、これらの間に配置された吸水層11から構成されている。前記吸水層11は、吸水性樹脂粉末14と吸水性繊維15とから構成されている。
【0094】
そして、トップシート2は、フマル酸(図示しない。)が担持されたフマル酸担持シートである。また、吸収体10を構成する第2基材13がポリフェノール化合物(図示しない。)が担持されたポリフェノール化合物担持シートである。なお、図2では、トップシート2にのみフマル酸を担持しているが、吸水層11にもフマル酸を担持させてもよい。また、図2では、吸収体10を構成する第2基材13にのみポリフェノール化合物を担持させているが、第1基材12にポリフェノール化合物を担持させてもよいし、第1基材12と第2基材13の両方にポリフェノール化合物を担持させてもよい。
【0095】
図1、2では、吸収体として、平面視形状がひょうたん型の吸収体10を配置した例を図示しているが、吸収体の構成はこれに限られるものではない。図1、2では、吸収体10が第1基材12と第2基材13と、これらの間に配置された吸水層11から構成されているが、吸水層11を第1基材12で包み、この第1基材12にポリフェノール化合物を担持させてもよい。
【0096】
トップシート2の幅方向Bの両側縁には、失禁パッド1の長手方向Aに延在するサイドシート4が接合している。サイドシート4は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート4には、失禁パッド1の幅方向内方端に起立用弾性部材5が設けられている。失禁パッド1の使用時には、起立用弾性部材5の収縮力によりサイドシート4の内方端が着用者の肌に向かって立ち上がり、これにより尿等の排泄物の横漏れが防止される。
【0097】
実施態様2
図3、4に示した実施態様2の失禁パッド(吸収性物品)1は、透液性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体10、前記吸収体10と前記トップシート2との間に配置された第1シート20、および、前記第1シート20と前記トップシート2との間に配置された第2シート30を有している。前記失禁パッド1では、矩形状の第1シート20および矩形状の第2シート30が、失禁パッドの長手方向に平行に配置されている。なお、バックシート3、サイドシート4、起立用弾性部材5については、前記実施態様1と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
前記実施態様1の失禁パッド1は、吸収体として、吸収体10を有する。前記吸収体10は、第1基材12と第2基材13と、これらの間に配置された吸水層11から構成されている。前記第1シート20および第2シート30の平面視形状は、前記吸水層11の平面視形状と同じか、それより小さくなっている。前記吸水層11は、吸水性樹脂粉末14と吸水性繊維15とから構成されている。
【0099】
そして、前記第1シート20には、ポリフェノール化合物が担持されている。前記第2シート30にはフマル酸が担持されている。図4では、第1シート20にポリフェノール化合物を、第2シート30にフマル酸を担持させているが、これらは第1シート20にフマル酸を、第2シート30にポリフェノール化合物を担持させてもよい。また、図4では、第1シート20および第2シート30が、いずれもトップシート2と吸収体10との間に配置されているが、これらは両方をバックシート3と吸収体10との間に配置してもよいし、いずれか一方をバックシート3と吸収体10との間に配置し、他方をトップシート2と吸収体10との間に配置してもよい。なお、図3、4では、フマル酸およびポリフェノール化合物を異なるシート材に担持させているが、第1シート20にフマル酸およびポリフェノール化合物の両方を担持させてもよい。この場合、第2シート30は不要である。
【実施例
【0100】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0101】
[評価方法]
(消臭効果(開放系)の評価)
吸収性物品に、混合人尿50mLを吸収させ、40℃恒温槽にて所定時間保管した。所定時間経過後、恒温槽から吸収性物品を取り出し、トップシート側から臭いを官能試験し、6段階評定(「ハンドブック悪臭防止法 第4章」、ぎょうせい発行)で評価した。官能試験は、6人で行い、平均値を求めた。
評価基準
0:無臭である。
1:やっと感知できる。
2:尿のにおいがわかるがにおいが弱い。
3:楽に尿として感知できる。
4:尿臭が強い。
5:強烈な尿臭がする。
【0102】
(消臭効果(閉鎖系)の評価)
吸収性物品に、混合人尿50mLを吸収させ、吸収性物品全体を透湿フィルム(トクヤマ社製、通気フィルム「PM-18」)を用いて覆った後、40℃恒温槽にて所定時間保管した。所定時間経過後、恒温槽から透湿フィルムで覆われた吸収性物品を取り出し、透湿フィルムから漏れ出した臭いを官能試験し、6段階評定(「ハンドブック悪臭防止法 第4章」、ぎょうせい発行)で評価した。官能試験は、6人で行い、平均値を求めた。
評価基準
0:無臭である。
1:やっと感知できる。
2:尿のにおいがわかるがにおいが弱い。
3:楽に尿として感知できる。
4:尿臭が強い。
5:強烈な尿臭がする。
【0103】
(ポリフェノール担持シート)
ポリフェノール担持シートNo.1
ティッシュペーパー(目付け15.0g/m2、天然セルロース繊維100質量%)にタンニン含有溶液No.1を散布し、乾燥させてポリフェノール担持シートNo.1を作製した。前記タンニン含有溶液No.1は、柿の搾汁液に含まれる縮合型タンニンを含有し、pHが5.4~6.4である。また、ポリフェノール担持シートNo.1の縮合型タンニンの担持量は、0.7g/m2となるように調整した。
【0104】
ポリフェノール担持シートNo.2
ティッシュペーパー(目付け15.0g/m2、天然セルロース繊維100質量%)にタンニン含有溶液No.2(リリース科学工業社製、「FG-22」)を散布し、乾燥させてポリフェノール担持シートNo.2を作製した。前記タンニン含有溶液No.2は、柿の搾汁液に含まれる縮合型タンニンと炭酸ナトリウムとを含有し、pHが9.0~10.0である。前記タンニン含有溶液No.2は、縮合型タンニン100質量部に対して炭酸ナトリウムを18.0質量部~180.0質量部含有している。また、ポリフェノール担持シートNo.2の縮合型タンニンの担持量は、0.7g/m2となるように調整した。得られたポリフェノール担持シートに担持されているポリフェノール化合物は、一部のフェノール性ヒドロキシ基の水素原子がナトリウム原子に置換されている。
【0105】
ポリフェノール担持シートNo.3
ティッシュペーパー(目付け15.0g/m2、天然セルロース繊維100質量%)にタンニン含有溶液No.1を散布し、乾燥させてポリフェノール担持シートNo.3を作製した。ポリフェノール担持シートNo.3の縮合型タンニンの担持量は、0.35g/m2となるように調整した。
【0106】
(フマル酸担持シート)
水100質量部に、キサンタンガム水溶液にフマル酸30質量%を分散させたフマル酸分散液(第一製網社製、フマル酸分散液「DF-30」、フマル酸100質量部に対するキサンタンガム含有量は0.01質量部~5質量部)を溶解させて、濃度0.15質量%のフマル酸含有水溶液No.1を調製した。不織布(金星製紙製、サーマルボンド不織布「LD18」、基材繊維;ポリプレピレンを芯、ポリエチレンを鞘とする芯鞘型複合繊維)を、前記フマル酸含有水溶液に浸漬させた後、乾燥させることにより、不織布を構成する基材繊維にフマル酸を付与した。不織布100質量部に対するフマル酸の付与量は、0.0005質量部とした。なお、フマル酸の付着量は、フマル酸水溶液への浸漬前後の質量差から算出した。乾燥雰囲気は、温度23±5℃、湿度65%とし、乾燥時間は7日間とした。
【0107】
(ポリフェノール・フマル酸含有パルプ)
パルプにタンニン含有溶液No.1を散布し、乾燥させた。なお、タンニン含有溶液No.1の散布量は、パルプ100質量部に対する縮合型タンニンの質量部が0.175質量部となるように調整した。次に、このパルプにフマル酸含有水溶液No.1を散布し、乾燥させてポリフェノール・フマル酸含有パルプを作製した。なお、フマル酸含有水溶液No.1の散布量は、パルプ100質量部に対するフマル酸の質量部が0.0045質量部となるように調整した。
【0108】
1.フマル酸の効果確認試験
ポリフェノール化合物およびフマル酸を有しない吸収性物品、ポリフェノール化合物のみ、または、ポリフェノール化合物およびフマル酸を有する吸収性物品を作製し、フマル酸による防臭性能を評価した。
【0109】
(吸収性物品の作製)
吸収性物品No.1
ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にティッシュペーパーを積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に透液性不織布(トップシート)を積層して吸収性物品No.1を作製した。
【0110】
吸収性物品No.2
ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にポリフェノール担持シートNo.1を積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に透液性不織布(トップシート)を積層して吸収性物品No.2を作製した。
【0111】
吸収性物品No.3
トップシートの透液性不織布をフマル酸担持シートに変更したこと以外は吸収性物品No.2の作製方法と同様にして、吸収性物品No.3を作製した。
【0112】
吸収性物品No.4
ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にポリフェノール担持シートNo.2を積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に透液性不織布(トップシート)を積層して吸収性物品No.4を作製した。
【0113】
吸収性物品No.5
トップシートの透液性不織布をフマル酸担持シートに変更したこと以外は吸収性物品No.4の作製方法と同様にして、吸収性物品No.5を作製した。
【0114】
作製した吸収性物品No.1~5について、消臭効果(開放系)の評価を行い、結果を表1に示した。
【0115】
【表1】
【0116】
吸収性物品No.1は、フマル酸およびポリフェノール化合物のいずれも有していない場合である。この吸収性物品No.1では、360分後の臭い評価が4.20であった。吸収性物品No.2および4は、吸収体を構成する透液性シート(ティッシュペーパー)にポリフェノール化合物を配置した場合である。これらの吸収性物品No.2および4は、360分後の臭い評価がそれぞれ3.60、3.20であり、吸収性物品No.1よりも臭気が抑えられていた。
【0117】
吸収性物品No.3および5は、トップシートにフマル酸が配置されており、吸収体を構成する透液性シート(ティッシュペーパー)にポリフェノール化合物が配置されている。これらの吸収性物品No.3および5は、360分後の臭い強度がそれぞれ2.60、2.20であり、吸収性物品No.2および4よりもさらに悪臭の発生を抑制できていた。
【0118】
2.ポリフェノール化合物、フマル酸の配置場所による効果確認試験
ポリフェノール化合物および/またはフマル酸の配置場所を変更した吸収性物品を作製し、配置場所による防臭性能の違いを評価した。
【0119】
(吸収性物品の作製)
吸収性物品No.6
ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にティッシュペーパーを積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に透液性不織布(トップシート)を積層して吸収性物品No.6を作製した。
【0120】
吸収性物品No.7
ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にポリフェノール担持シートNo.1を積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にフマル酸担持シートを積層して吸収性物品No.7を作製した。
【0121】
吸収性物品No.8
ポリフェノール担持シートNo.1上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にティッシュペーパーを積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にフマル酸担持シートを積層して吸収性物品No.8を作製した。
【0122】
吸収性物品No.9
ポリフェノール担持シートNo.3上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にポリフェノール担持シートNo.3を積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にフマル酸担持シートを積層して吸収性物品No.9を作製した。
【0123】
吸収性物品No.10
ティッシュペーパー上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布した後、ポリフェノール・フマル酸含有パルプと吸水性樹脂粉末(サンダイヤポリマー社製、「アクアパール(登録商標)」 DS560)を混合した状態で散布(吸水性樹脂粉末の目付け100g/m2、パルプの目付け200g/m2)し、吸水層を形成した。この吸水層の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上にティッシュペーパーを積層して、吸収体を作製した。吸収体は、幅10cm、長さ10cmとした。
非透液性シート(バックシート)の上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に前記吸収体を積層した。前記吸収体上に合成ゴム系ホットメルト接着剤を塗布し、この上に透液性不織布(トップシート)を積層して吸収性物品No.10を作製した。
【0124】
作製した吸収性物品No.6~10について、消臭効果(開放系、閉鎖系)の評価を行い、結果を表2に示した。
【0125】
【表2】
【0126】
吸収性物品No.6は、フマル酸およびポリフェノール化合物のいずれも有していない場合である。この吸収性物品No.6では、360分後の臭い評価が4.00であった。吸収性物品No.10は、吸水層のパルプにフマル酸およびポリフェノール化合物を配置した場合である。この吸収性物品No.10は、360分後の臭い評価が3.88であり、吸収性物品No.6よりも臭気が抑えられていた。
【0127】
吸収性物品No.7~9は、トップシートにフマル酸が配置されており、吸収体を構成する透液性シート(ティッシュペーパー)にポリフェノール化合物が配置されている。これらの吸収性物品No.7~9は、360分後の臭い強度がそれぞれ3.40、3.44、3.20であり、吸収性物品No.10よりもさらに悪臭の発生を抑制できていた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の吸収性物品としては、例えば、使い捨ておむつ(テープ型、パンツ型、パッド型等)、失禁パッド、生理用ナプキン、靴インソール、汗吸収パッド、絆創膏、傷パッド等の人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品が挙げられる。また、ペットに用いられる使い捨ておむつや、シートタイプの吸収性物品が挙げられる。
【符号の説明】
【0129】
1:使い捨ておむつ(吸収性物品)、2:透液性トップシート、3:不透液性バックシート、4:サイドシート、5:弾性部材、10:吸収体、11:吸水層、12:第1基材、13:第2基材、14:吸水性樹脂粉末、15:吸水性繊維、20:第1シート、30:第2シート
図1
図2
図3
図4