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特許7431511運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20240207BHJP
   G01S 19/47 20100101ALI20240207BHJP
【FI】
G01C21/28
G01S19/47
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019087540
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2019194592
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】10 2018 206 786.4
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーロン ラモン エーヴァート
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080460(JP,A)
【文献】特開平11-257982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G01S 5/00- 5/14、19/00-19/55
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する方法であって、
a)前記運動及び位置センサを用いて、入力変数としてGNSSデータを受信するステップと、
b)前記運動及び位置センサを用いて、少なくとも1つの更なる入力変数を受信するステップと、
c)前記運動及び位置センサを用いて、マップデータを使用して前記入力変数のための重み付け係数を決定するステップと、
d)前記運動及び位置センサを用いて、前記ステップa)及びb)で受信された前記入力変数を、前記ステップc)で決定された重み付け係数で重み付けするステップと、
e)前記運動及び位置センサ内において、前記ステップa)及びb)で受信され、前記ステップd)で重み付けされた入力変数を使用して前記車両位置を算出するステップと、
を含み、
前記マップデータは、少なくとも、自車両周囲の所定の最小距離の範囲内にいる更なる道路利用者の姿勢、大きさ又は位置を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップb)において、以下の更なる入力変数、
-GNSS補正データ
-加速度センサ及びヨーレートセンサからのデータ
-慣性センサデータ
-ホイール回転数
-操舵角
-車両速度
-走行方向
のうちの少なくとも1つが、前記運動及び位置センサを用いて受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運動及び位置センサのカルマンフィルタを用いて、予測的重み付けが行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記重み付けは、前記運動及び位置センサのカルマンフィルタを用いて行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マップデータは、前記運動及び位置センサを用いて、前記ステップc)の前に受信される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記マップデータは、少なくとも、道路マップのデータ又は特徴マップのデータを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マップデータは、前処理されて提供される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記重み付け係数は、少なくとも中央又は上位の処理装置によって決定される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記重み付け係数は、車両対X通信リンクを介して車両に伝送される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップa)及びb)で受信され、前記ステップd)で重み付けされた前記入力変数の融合が、前記ステップe)において、前記運動及び位置センサのカルマンフィルタを用いて行われる、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップe)における前記算出は、重み付けを有するニューラルネットワークを用いて行われる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【請求項14】
ニューラルネットワークとして構成されたカルマンフィルタを備え、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された運動及び位置センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する方法、コンピュータプログラム、機械可読記憶媒体、並びに、運動及び位置センサに関する。本発明は、特に、自動運転における使用に適している。
【背景技術】
【0002】
背景技術
自動運転車両は、運転者なしで事足りる車両である。この車両は、例えば、道路経過、他の道路利用者又は障害物を自動的に認識し、対応する制御命令を車両内で計算し、かつ、これらの命令を車両内のアクチュエータに転送することによって自律的に走行しており、これによって、車両の走行経過が適正な影響を受ける。運転者は、完全な自動運転車両の場合、運転には関与しない。
【0003】
特に、自動運転用の車両は、特に航法衛星データ(GPS,GLONASS,Beidou,Galileo)を用いて、高精度な車両位置を算出することができるセンサシステムを必要とする。この目的のために現在、GNSS(独語表記:Globales Navigationssatellitensystem)信号は、車両ルーフ上のGNSSアンテナを介して受信され、GNSSセンサを用いて処理される。この場合は付加的に、GNSS補正データを、測位結果の向上のために考慮することができる。特に好ましくは、GNSSセンサは、いわゆる運動及び位置センサであり、これらはGNSSデータを使用して少なくとも1つの車両位置又は車両方位又は車両運動を算出することができる。
【0004】
運動及び位置センサにおける高精度な車両位置の計算のために、特に、カルマンフィルタが使用される。このフィルタにおいては、これまで以下のような入力変数、即ち、
-GNSSデータ
-GNSS補正データ
-加速度センサ及びヨーレートセンサからのデータ
-慣性センサデータ
-ホイール回転数
-操舵角
-車両速度
-走行方向
が係わってきている。
【0005】
カルマンフィルタ内においては、これらの入力変数は現在の位置計算に対するそれらの影響に関して動的に重み付けされる。カーブ走行時には、例えば加速度センサ及びヨーレートセンサからのデータは、例えばGNSSデータよりも高く重み付けされる。更なるシナリオにおいては、これとは逆に、GNSSデータは加速度センサデータ及びジャイロセンサデータよりも高く評価される。高精度な位置計算のための入力変数のこのような動的重み付けは、位置計算の精度にとって特に有利である。現在の運転操作の推定は、ここでは大きな意味がある。重み付け係数の推定を改善する試みがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
ここでは、請求項1によれば、以下のステップを含む、運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する方法が提案される。即ち、
a)入力変数としてGNSSデータを受信するステップと、
b)少なくとも1つの更なる入力変数を受信するステップと、
c)マップデータを使用して入力変数のための重み付け係数を決定するステップと、
d)ステップa)及びb)で受信された入力変数を、ステップc)で決定された重み付け係数で重み付けするステップと、
e)ステップa)及びb)で受信され、ステップd)で重み付けされた入力変数を使用して車両位置を算出するステップと、を含む。
【0007】
この方法は、特に、運動及び位置センサを用いて自車両の車両位置を衛星に依拠して算出するために用いられる。自車両は、好ましくは自動運転車両、特に自動運転式自動車である。本明細書に提示される解決手段は、特に、車両位置の算出を有利に改善するために、運動及び位置センサのカルマンフィルタにおいてマップデータ(当業者によれば「地図データ」とも称される)を使用するという考察に基礎を置いている。マップデータの使用は、ここでは、特に好ましくは、予測的重み付けを行うことができるようにすることに寄与する。例えば、マップデータから、車両がビルの谷間及び/又はトンネルに接近していることが引き出せる場合には、位置算出に対するGNSSデータの影響は、特に車両がビルの谷間又はトンネル内に存在する又は存在することが予測される(将来的な)時空間に対して、代替的な測位データの影響に比例し得る。
【0008】
GNSSは、全地球航法衛星システムの略である。GNSSは、航法衛星からの信号(本明細書においては、衛星データとも称する)の受信によって、地球上での及び/又は空中での、測位及び/又は航法のためのシステムである。GNSSは、GPS(NAVSTRAR GPS)、GLONASS、Beidou、Galileoなどの既存の及び将来の全地球衛星システムの使用に対する総称である。従って、GNSSセンサは、航法衛星データを受信し、処理、例えば評価するのに適しているセンサシステムである。好ましくは、GNSSセンサは、航法衛星データ(GPS,GLONASS,Beidou,Galileo)を用いて高精度な車両位置を算出する能力がある。GNSSデータは、特に、航法衛星から受信されるデータであり、GNSSデータは、「航法衛星データ」とも称される。
【0009】
ステップa)においては、入力変数としてのGNSSデータの受信が行われる。このことは、換言すれば、特に受信されたGNSSデータが一種の入力変数を表すことを意味する。好ましくは、GNSSデータは、ここでは運動及び位置センサの入力変数である。好ましくは、ステップa)において、GNSS衛星データの受信が行われる。ここでは航法衛星信号の伝搬時間測定を行うことができる。好ましくは、運動及び位置センサは、GNSSデータ又はGNSS衛星データを、特に(車両の)少なくとも1つのGNSS受信ユニット、例えば自身の側から(直接)航法衛星と通信する、又は、衛星信号を(直接)受信するGNSSアンテナから受信する。運動及び位置センサ自体は、GNSSセンサのタイプで実行されてもよいし、あるいはGNSSセンサを含んでいてもよい。代替的又は累積的に、運動及び位置センサは、GNSSデータを、(車両の)GNSSセンサから受信することができる。ここでは、GNSSセンサは、受信されたGNSS衛星信号を評価し、GNSSデータ、例えばGNSS位置データ又はGNSS車両位置を、運動及び位置センサに転送する。
【0010】
ステップb)においては、少なくとも1つの更なる入力変数の受信が行われる。このことは、換言すれば、特にステップb)で受信された入力変数が、ステップa)で受信された入力変数とは異なることを意味する。さらに換言すれば、ステップb)においては、特に入力変数の種類がステップa)とは異なっている。好ましくは、少なくとも1つの更なる入力変数は、(同様に)運動及び位置センサの入力変数であり、又は、これらのセンサによって受信される。
【0011】
ステップc)においては、(ステップa)及びb)で受信された)入力変数のための重み付け係数の決定が、マップデータを使用して行われる。通常、重み付け係数は、その際に又はその後で、入力変数に割り当てられ又は対応付けられる。特に、各入力変数には、(固有の)重み付け係数が決定され、及び/又は、これが割り当てられる。例えば、GNSSデータに対して重み付け係数kを決定することができ、例示的に(更なる入力変数として)慣性センサデータに対して重み付け係数kを決定することができる。次いで、重み付けのために、GNSSデータは重み付け係数kで例示的に乗算され、慣性センサデータは重み付け係数kで例示的に乗算され得る。
【0012】
重み付け係数は、好ましくは車両の運動及び位置センサ内で、又は、それらを用いて決定される。代替的又は累積的に、重み付け係数又は複数の重み付け係数のうちの少なくともいくつかは、少なくとも中央又は上位の処理装置(クラウド)によって決定することができる。好ましくは、重み付け係数は、特にそれが、(通常の)特に(「オンライン」での)自動運転中に、又は、持続的な特に車両の自動走行運転中に決定される場所に依存することなく決定及び/又は変更される。特に好ましくは、重み付け係数は、(通常の)特に自動運転中に、又は、持続的な特に車両の自動走行運転中に予測的に決定及び/又は変更される。
【0013】
重み付け係数はマップデータを使用して決定される。好ましくは、重み付け係数は、マップデータ又はマップデータからの情報に依存して決定される。マップデータとは、ここでは特に、デジタルマップ(から)のデータを意味するものと理解されたい。好ましくは、重み付け係数は、デジタルマップ(から)のマップデータ及び/又はマップの制御機器(MAP制御機)からのマップデータを使用して決定される。デジタルマップは、例えば、街路及び/又はインフラ設備ポイント、例えば建物、信号システム、トンネルなどに関する情報、特にそれらの位置及び空間的拡がり(長さ、幅、高さ)に関する情報を提供することができる。そのようなデジタルマップから重み付け係数の決定のために使用可能な情報は、例えば、車両が接近している位置において、GNSS信号の低レベル、中レベル又は高レベルのシャドーイングが推定し得ることを描写するものであってもよい。それに応じて、GNSSデータに対する重み付け係数k1は、例示的に、低レベルのシャドーイングでは高い値(例えば0.7)に、中レベルのシャドーイングでは中程度の値(例えば0.5)に、また、高レベルのシャドーイングでは低い値(例えば0.1)に選択又は決定され得る。マップデータとは、本明細書においては、周辺環境特有のデータ、特にデジタルマップ上に表示することができる、又は、デジタルマップ上に表示及び/又は提供されているデータを意味するものと理解されたい。デジタルマップ上には、例えば、道路や、例えば建物、信号システム、トンネルなどのインフラ設備ポイント、例えば他の車両などの他の道路利用者、及び気象情報を描写及び/又は提供することができる。
【0014】
マップデータとは、例えば、好ましくは付加的な(追加的入力変数として)特に運動及び位置センサにおいて、例えばマップ制御機器(MAP制御機)及び/又は周囲センサから導入することができる、以下のようなデータのうちの1つ以上であり得る。即ち、
・自動運転車両が現在走行している道路マップの軌道データ。これらのデータは、特に道路経過及び/又は車線の数及び/又は道路タイプ(高速道路、郊外道路、農道など)を含み得る。
・特徴マップ(Feature Map)データ。例えば、建築構造物、建物の高さ、森林地帯など。
・自車両周囲の特に(予め定められた)所定の最小距離の範囲内の更なる道路利用者の姿勢、大きさ、及び位置。これらのデータは、例えば(自動運転)車両の周囲センサの評価から得られる。
【0015】
これらのデータは、(追加的入力変数として)、付加的に運動及び位置センサに生データのまま又は前処理されて導入したり又は読み込んだりすることができる。好ましくは、マップデータは、そこにおいて、カルマンフィルタの内部で、位置計算における入力変数の重み付けを行うために及び/又は改善するために使用される。
【0016】
ステップd)においては、ステップa)及びb)で受信された入力変数を、ステップc)で決定された重み付け係数で重み付けすることが行われる。このことは、換言すれば、特に、ステップc)で決定された重み付け係数が、ステップa)及びb)で受信された入力変数の重み付けに導入されることを意味する。この目的のために、例えば、既に存在する重み付け係数(初期の又は先行する決定から得られる重み付け係数)は、ステップd)における決定に応じて変更又は適合化することができる。この重み付けは、好ましくは、車両の運動及び位置センサ内で、又は、それらを用いて実施される。特に好ましくは、この重み付けは、運動及び位置センサのカルマンフィルタ内で、又は、それを用いて実施される。
【0017】
ステップa)で受信されたGNSSデータ及びステップb)で受信された少なくとも1つの更なる入力変数は、通常は、タイムスタンプを備えている、又は、このタイムスタンプを有利には既に有している。次いで、ステップd)においては、同一のタイムスタンプを有するGNSSデータ及び更なる入力変数が、相互に定期的に重み付けされる。
【0018】
例えば、GNSSセンサの影響は、トンネル走行中、又は、更なる入力変数に比べて高い建築構造物の側を通過する場合、又は、森林地帯を通過する場合に、最小化若しくは低減させることができる。更なる入力変数、例えば加速度センサデータ及びヨーレートセンサデータ、ホイール回転数及び/又は操舵角などは、このケースにおいては、特にカルマンフィルタの内部で、より高い重み付けが付される。その上さらに、例えば、加速度センサ及びヨーレートセンサの影響は、周囲に建築構造物のない高速道路上を直進走行中は、最小化することができ、それに対して、GNSSに依拠するデータの影響は、特に(運動及び位置センサの)カルマンフィルタの内部で増加される。
【0019】
ステップe)においては、ステップa)及びb)で受信され、ステップd)で重み付けされた入力変数を使用した車両位置の算出が行われる。このことは、換言すれば特に、車両位置の算出が、事前に相互に重み付けされていた(同一のタイムスタンプを有する)入力変数を使用して行われることを意味する。この算出は、好ましくは、車両の運動及び位置センサ内で、又は、それらを用いて実施される。好ましくは、ステップa)及びb)で受信され、ステップd)で重み付けされた入力変数の処理は、運動及び位置センサ内で、又は、それらを用いて、車両位置に対して行われる。
【0020】
好ましい実施形態によれば、ステップb)において、以下の更なる入力変数、即ち、
-GNSS補正データ
-加速度センサ及びヨーレートセンサからのデータ
-慣性センサデータ
-ホイール回転数
-操舵角
-車両速度
-走行方向
のうちの少なくとも1つが受信されることが提案される。
【0021】
好ましくは、これらのデータ又は変数は、車両の対応するセンサから運動及び位置センサに提供される。GNSS補正データは、GNSSアンテナから及び/又は車両対X通信リンクを介して提供され得る。慣性センサデータは、慣性測定ユニット(IMU)又は慣性センサから提供され得る。車両速度及び/又は走行方向は、例えば運動及び位置センサの内部において、例えば事前に決定された位置から計算され得る。代替的又は累積的に、車両速度及び/又は走行方向は、ホイール回転数を用いて、運動及び位置センサの内部で決定することができる。次いで、これらは、例えば入力変数として、運動及び位置センサのカルマンフィルタから受信可能又は読み込み可能である。
【0022】
特に好ましくは、少なくとも1つの更なる入力変数は、少なくとも慣性センサ(IMU)データ又は加速度センサ及びヨーレートセンサからのデータを含む。これらのデータは、特に好ましくは、(以下で説明する)予測的重み付け、特にGNSSデータに対する予測的重み付けに適している。このことは、換言すれば特に、GNSSセンサシステム及びIMUセンサシステムの構成部品の予測的重み付けが、特に好ましくは、特にカルマンフィルタ内で行われ得ることを意味する。
【0023】
好ましい実施形態によれば、予測的重み付けが行われることが提案される。好ましくは、重み付け係数は、予測的に決定及び/又は(ステップc)における(予測的)決定に応じて)予測的に変更又は適合化される。特に好ましくは、重み付け係数は、(通常の)特に自動運転中に、又は、持続的な特に車両の自動走行運転中に予測的に決定及び/又は(ステップc)における(予測的)決定に応じて)変更される。予測的重み付けのために、測位の前段階で既に得られる全ての情報が使用可能である。この目的に対しては、例えば、(より近い)将来のある時点で自動車が存在する場所の推定を可能にさせる、操舵角及び速度に関するデータが挙げられる。この目的に対しては、まさに、現在の位置と共に同様の対応する予測を可能にさせるマップデータが挙げられる。
【0024】
好ましくは、(車両の走行運転中の)重み付け係数は、推定すべき周囲シナリオに依存して決定され、特に(当該周囲シナリオ内の)入力変数が受信される前に決定される。このことは、換言すれば特に、重み付け係数が、(予測的に)受信すべき入力変数又は将来的に受信される入力変数に対して決定されることを意味する。推定すべき周囲シナリオは、特に車両が接近している位置に存在するマップデータによって特徴付けられる。
【0025】
好ましくは、重み付け係数は、車両が接近している位置に該当するマップデータを使用して、又は、当該マップデータに依存して、決定される。さらに好ましくは、重み付け係数は、当該位置に、又は、ステップc)での決定にとって重要だったマップ上の点に到達する又はそれらを通過する(直)前に、(ステップc)での決定に応じて)変更又は適合化される。次いで、通常は、重み付け係数は、相応に変更又は適合化されて、当該位置のために受信されていた入力変数及び/又は当該位置において求められていた入力変数の重み付けに導入される。
【0026】
例えば入力変数の重み付け又は重み付け係数の決定は、(自動運転)車両が現在走行途上の道路マップの軌道データを使用して予測的に行うことが可能である。ここでは、例えば(到来する)カーブ走行は、既に事前に認識することができ、従って、加速度センサ及びヨーレートセンサの影響は、(カルマンフィルタの内部で)適時に、例えばカーブ走行自体の直前に高めることができる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、重み付けは、カルマンフィルタを用いて行われることが提案される。好ましくはこのカルマンフィルタは、運動及び位置センサの内部に形成されている又は設けられている。
【0028】
好ましくは、マップデータは、ステップc)の前に受信される。好ましくは車両の運動及び位置センサは、マップデータを受信する。この目的のために、マップデータは、例えば(車両の)マップ制御機器によって、運動及び位置センサに提供又は利用可能にされ得る。代替的又は累積的に、少なくとも中央又は上位の処理装置がマップデータを受信することを想定してもよい。これらの処理装置は、マップデータを、所定の車両若しくは少なくとも1つの車両のマップ制御機器から提供され、及び/又は、車両外部のマップサービスから提供され得る。
【0029】
好ましい実施形態によれば、マップデータは、少なくとも(デジタル)道路マップのデータ又は(デジタル)特徴マップのデータを含むことが提案される。道路マップは、例えば道路経過に関する情報を提供することができる。特徴マップは、例えばインフラ設備ポイント、例えば建物、信号システム、トンネルなどに関する情報、特にそれらの位置及び空間的拡がり(長さ、幅、高さ)に関する情報を提供することができる。
【0030】
さらに好ましい実施形態によれば、マップデータは、少なくとも、自車両周囲の最小距離の範囲内にいる更なる道路利用者の状況、大きさ、又は位置を含むことが提案される。この最小距離とは、好ましくは(予め定められた)所定の最小距離である。この目的のために、例えば隣接する車両は、その姿勢、大きさ(例えば(外)寸法)に関する情報及び/又は車両対X通信リンクに関する位置を、自車両のマップ制御機器に伝送することができる。
【0031】
好ましい実施形態によれば、マップデータは、前処理されて提供されることが提案される。好ましくは、マップデータは、前処理されて(運動及び位置センサの)カルマンフィルタ内に導入される。例えば、マップデータの前処理は、運動及び位置センサの内部で、又は特に計算容量の理由から更なる装置、例えばマップ制御機器上で行うことができる。ここでは、重み付けのための情報(重み付け情報)又は入力データのための重み付け係数は、特にカルマンフィルタ内に導入されてからマップデータに基づいて別個に決定され得る。好ましくは、カルマンフィルタは、重み付け関数又は重み付け係数が外部で決定され、特に計算されるので、それによってスリムに構成することが可能である。特にカルマンフィルタは、このケースにおいては、例えば、対応する重み付け、又は、重み付け係数を有する入力変数の融合に対してのみ権限がある。
【0032】
好ましい実施形態によれば、重み付け係数は、少なくとも中央又は上位の処理装置によって決定されることが提案される。この中央及び/又は上位の処理装置は、いわゆるクラウドのタイプで形成されてもよい。好ましくは、中央及び/又は上位の処理装置への現在の車両位置の伝送は、車両対X通信リンクを介して行われる。ここで十分な計算容量を有するこの処理装置の内部においては、(車両の運動及び位置センサのカルマンフィルタ用の)入力変数に対する重み付け係数を決定することができる。例えば、この決定は、既に述べたマップデータを用いて行うことができる。
【0033】
重み付け係数が中央及び/又は上位の処理装置によって決定された後においては、これらの重み付け係数は、(リアルタイムで)特に、車両対X通信リンクを介して、例えば車両ゲートウェイを介して、運動及び位置センサにフィードバック伝送され得る。ここで運動及び位置センサは、世界においてその(高精度な)位置を、処理装置からのこれらの重み付け係数を使用して算出することができる。これにより、運動及び位置センサのカルマンフィルタを、好ましくは(さらに)スリムに構成することができ、及び/又は、運動及び位置センサ内のリソースを節約することができる。
【0034】
代替的又は累積的に、中央及び/又は上位の処理装置は、いわゆるルックアップテーブルを備えていてもよい。このルックアップテーブルは、好ましくは周期的に(所定の間隔で)更新される。このルックアップテーブルには、所定の車両位置における運動及び位置センサの所定の入力変数が、位置計算のためにどのように重み付けされるべきであるかが格納されていてもよい。この目的のために、ルックアップテーブル内には特に好ましくは、マップデータを使用して決定されていた(位置特有の)重み付け係数が格納されている。このルックアップテーブルは、好ましくは(また)気象データ、建築構造物、及び/又は道路変化(マップデータ及び/又はそれらの変化)に基づいて更新される。
【0035】
ルックアップテーブルは、好ましくは位置に対する比較的粗い重み付け係数(のみ)を含み、及び/又は、静的マップデータ、例えば建物又はトンネルなどの構造物(のみ)を考慮する。このことは、例えば、軌道及び/又は周囲の構造物のみが重み付け算出に使用される限り、十分であり得る。しかしながら、更なる道路利用者も(動的に)考慮するならば、特に好ましくは、ルックアップテーブルの比較的粗い重み付け係数が、自車両周囲の最小距離範囲内の更なる道路利用者の(全ての)車両位置及び/又は空間的車両拡がりを用いてクラウド内で、又は車両上で(車両側の特に運動及び位置センサを用いて)微細化される。この場合、好ましくは、比較的粗い重み付け係数は、クラウドルックアップテーブルから得られる。従って、好ましくは、このルックアップテーブルは、構造物又は特徴などの静的マップデータをカバーする。例えば、これらのルックアップテーブルの重み付け係数に、更なる道路利用者に基づいて算出されていた係数を乗算することによって、最終的な重み付け係数を決定することができる。好ましくは、車両、特に運動及び位置センサは、この乗算を局所的に実施する、又は、クラウドからの最終的な重み付け係数を受け入れる。
【0036】
好ましい実施形態によれば、重み付け係数は、車両対X通信リンクを介して又はこの規格に従って車両に(フィードバック)伝送されることが提案される。好ましくは、運動及び位置センサは、重み付け係数を、車両対X通信リンク(英語表記:Car-to-X Communication)を介して又はこの規格に従って、特に中央及び/又は上位の処理装置から、特に1つ以上の受信ユニット、特に車両のアンテナを介して、及び/又は、他の道路利用者及び/又はインフラ装置を介して受信する。車車間通信(英語表記:Car-to-Car Communication、又は、略記:Car2Car若しくはC2C)とは、(動力)車両間の情報及びデータの交換を意味するものと理解されたい。このデータ交換の目的は、早期時点で運転者に、重大かつ危険な状況を通知することにある。該当する車両は、例えばABS介入、操舵角、位置、方向、速度などのデータを収集し、これらのデータを、無線(WLAN、UMTSなど)を介して他の道路利用者に送信する。その際、運転者の「視野」は、電子的手段を用いて拡張されるべきである。路車間通信(英語表記:Car-to-Infrastructure又は略記:C2I)とは、車両と周囲のインフラ設備(例えば交通信号機)との間のデータの交換を意味するものと理解されたい。前述の技術は、異なる交通パートナーのセンサの相互作用に基づいており、これらの情報を交換するために最新の通信技術方法を使用する。車両対Xとは、ここでは例えば車車間通信及び路車間通信などの様々な通信リンクに対する上位概念である。
【0037】
好ましい実施形態によれば、ステップe)において、ステップa)及びb)で受信され、ステップd)で重み付けされた入力変数の融合が、カルマンフィルタを用いて行われることが提案される。このカルマンフィルタは、好ましくは運動及び位置センサ内に格納されている。
【0038】
好ましい実施形態によれば、ステップe)での算出は、重み付けを有する(人工)ニューラルネットワークを用いて行われることが提案される。このニューラルネットワークは、自動化された適合的アルゴリズム又は自己学習的アルゴリズムのタイプで形成されてもよい。好ましくはここでは、人工知能(独語表記:KI、以下ではAIとも称する)手法に基づく又はそれを使用するアプローチが追求される。このことは、換言すれば、特に、アルゴリズムが、人工知能(AI)の使用により車両位置の算出を提供することを意味する。このニューラルネットワークへの入力データとして、(特に)上述した入力変数及び/又はマップデータのうちの1つ以上を使用することができる。
【0039】
ニューラルネットワーク又はAIは、好ましくは(ステップa)及びb)で受信した)上述の入力変数、及び、マップデータを入力として使用し、ネットワーク又はAIの内部で学習された重み付けを用いて、車両位置を計算する。特に好ましくは、ステップc)において、ニューラルネットワークの少なくとも1つの重み付けが適合化される。ニューラルネットワーク又はAIは、(内的)重み付けの設定又は適合化のために好ましくはマップデータを使用する。特に好ましくは、ニューラルネットワーク又はAIは、マップデータに基づいてその重み付けの少なくともいくつかを学習する。
【0040】
特に好ましい実施形態においては、カルマンフィルタは、人工知能(AI)として、例えばニューラルネットワークとして構成されている。測位は、ここでは好ましくは、マップデータ、並びに、(ステップa)で受信された)GNSSデータ、及び、(ステップb)で受信された)少なくとも1つの更なる入力変数に基づいて行われる。入力変数に対する重み付け係数の別個の及び/又は明示的な決定は、このケースにおいては、必ずしも必要ではない。なぜならAI又はニューラルネットワークは、重み付け自体を内部で、特に学習した重み付けによってマッピングすることができるからである。このことは、換言すれば、特に、AI又はニューラルネットワークは、重み付け係数を潜在的に決定し得る、又は、AI又はニューラルネットワークの内部重み付けは、本明細書で提示される解決手段の趣旨で重み付け係数を表し及び/又は含み得ることを意味する。AIの内部重み付けは、関連する入力データと、可及的に多くのシナリオとで事前に学習することができる。AIは、この目的のために、(関連する)入力データとして、特に以下の変数、即ち、
・(ステップa)で受信した)入力変数としてのGNSSデータ、
・(ステップb)で受信した)少なくとも1つの更なる入力変数、
・マップデータ、
を受け取る。
【0041】
これらの入力データに基づいて、AIは、(正確な)車両位置を、GNSSデータ、少なくとも1つの更なる入力変数、及び(内部重み付けの支援による)マップデータを使用して算出することができる。この実施形態は、重み付け係数の決定が、AI自体の内部でマッピングされ、従って、AIがカルマンフィルタのマッピングのために入力変数の重み付け関数も潜在的に含むという特別な利点を提供する。
【0042】
更なる態様によれば、本明細書に提示された方法を実施するコンピュータプログラムが提案される。このことは、換言すれば、特に、プログラムの実行の際に、本明細書に記載の方法の実行をコンピュータに委ねる命令を含んだコンピュータプログラム(製品)に関する。
【0043】
更なる態様によれば、本明細書に提案されたコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体が提案される。通常は、機械可読記憶媒体は、コンピュータ可読データ担体である。
【0044】
更なる態様によれば、本明細書に提案された方法を実施するために構成された運動及び位置センサが提案される。例えば、前述した記憶媒体は、運動及び位置センサの構成部品であり又はそれに接続し得るものであってもよい。好ましくは、運動及び位置センサは、車両の内部若しくは上部に配置される又はそのような車両の内部若しくは上部への取り付けを想定して構成されている。運動及び位置センサは、さらに好ましくは、車両、特に自動車の自動運転のために設けられ構成されている。運動及び位置センサ、又は、運動及び位置センサの計算ユニット(プロセッサ)は、例えば、本明細書に記載の方法を実行するために、本明細書に記載のコンピュータプログラムにアクセスすることができる。
【0045】
運動及び位置センサは、好ましくはGNSSセンサである。運動及び位置センサは、位置及び配向センサであってもよい。その上さらに、GNSSセンサは、GNSSに依拠する位置及び配向センサとして構成されてもよい。GNSS又は(車両の)運動及び位置センサは、自動化された運転又は自動運転のために必要であり、航法衛星データ(GPS,GLONASS,Beidou,Galileo)を用いて高精度な車両位置を計算する。これらの航法衛星データは、航法衛星システムデータ又はGNSSデータとも称される。計算は、この場合、少なくとも4つの衛星からの(電磁的)GNSS信号の伝搬時間測定に基づいている。その上さらに、センサ内においては、車両の位置をさらにより正確に計算するために、いわゆる補正サービスからの補正データを併用することができる。受信したGNSSデータと共に、センサ内には、高精度の時刻(世界時など)が定期的に読み込まれ、正確な測位のために使用される。位置センサへの更なる入力データは、(特に)ホイール回転数、操舵角、並びに、加速度データ及びヨーレートデータであってもよい。好ましくは、運動及び位置センサは、GNSSデータに基づいて、自己位置、自己測位及び/又は自己速度を算出するために構成されている。
【0046】
車両位置を衛星に依拠して算出する方法に関連して論じられた詳細、特徴及び好ましい実施形態は、対応して本明細書に提示された、衛星に依拠して算出された車両位置の推定精度を向上させる方法、運動及び位置センサ、コンピュータプログラム及び/又は記憶媒体のもとでも起こり得るし、その逆も成り立つ。その限りにおいては、特徴のより詳細な特徴付けについてはそこに記載されている実施形態が十分に参照される。
【0047】
以下においては、本明細書に提示された解決手段及びそれらの技術的周辺環境を、図面に基づいてより詳細に説明する。ここでは、本発明が、図示の実施例によって限定されるべきではないことを示唆しておく。特に、他のことが明示的に示されていない限り、図面において説明される事例の態様の一部を抽出して、それらを他の構成部品と組み合わせることも、及び/又は、他の図面及び/又は本明細書からの知識と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】通常の運転経過において運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する本明細書で提示された方法の経過を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、通常の運転経過において運動及び位置センサを用いて車両位置を衛星に依拠して算出する本明細書で提示された方法の経過を概略的に示す。ブロック110、120、130、140及び150による方法ステップa)、b)、c)、d)及びe)の図示の順序は、例示的なものにすぎない。ブロック110においては、入力変数としてのGNSSデータの受信が行われる。ブロック120においては、少なくとも1つの更なる入力変数の受信が行われる。ブロック130においては、入力変数に対する重み付け係数の決定が、マップデータを使用して行われる。ブロック140においては、ステップa)及びb)で受信された入力変数の、ステップc)で決定された重み付け係数を用いた重み付けが行われる。ブロック150においては、車両位置の算出が、ステップa)及びb)で受信され、ステップd)で重み付けされた入力変数を使用して行われる。
【0050】
特に、方法ステップa)及びb)、又はd)及びe)は、少なくとも部分的に並行して又は同時に実行することもできる。
【0051】
ここに提示された解決手段は、特に、以下の利点のうちの1つ以上を可能にする。即ち、
・運動及び位置センサ内部の高精度な車両位置の計算は、カルマンフィルタ内の前述の追加的変数を用いてさらに正確に行うことができる。
・このようにして、道路交通の安全性が高められる。なぜなら自動運転車両の位置を、運動及び位置センサを用いて、さらに正確にかつ高い信頼性のもとで決定することができるからである。
・追加的入力変数は、自動運転車両の内部でいずれにせよ得られる。従って、運動及び位置センサにおけるこれらの入力データ又は前処理された入力データの導入は、妥当なコストで実現可能である。
・クラウド内での運動及び位置センサのカルマンフィルタの重み付け係数を決定することにより、運動及び位置センサの計算機を、よりスリムでかつ安価に構成することが可能である。
図1