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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】半導体増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20240207BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H03F1/32
H03F3/45 210
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019146554
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021027549
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】小倉 暁生
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】千葉 輝久
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-157607(JP,A)
【文献】特開2014-171084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に応じたゲート駆動信号を出力するとともに、駆動増強信号が第1論理の間は前記ゲート駆動信号の駆動能力を増強するゲート駆動器と、
前記入力信号が所定の条件を満たしてから所定時間の間は前記駆動増強信号を前記第1論理にし、前記所定時間が経過すると前記駆動増強信号を第2論理に遷移させる増強時間設定部と、
前記ゲート駆動信号が入力されるゲートを有するトランジスタを有し、前記トランジスタから前記入力信号を増幅した増幅信号を出力する出力回路と、を備える、半導体増幅回路。
【請求項2】
前記入力信号は、安定時には同一の電圧レベルで、信号論理が遷移する際に一時的に電圧レベルが相違する第1入力信号及び第2入力信号を含む差動入力信号である、請求項1に記載の半導体増幅回路。
【請求項3】
前記第1入力信号の電圧レベルから前記第2入力信号の電圧レベルを差し引いた第1電圧差が所定の基準電圧より大きいか否かを検出する第1比較器と、
前記第2入力信号の電圧レベルから前記第1入力信号の電圧レベルを差し引いた第2電圧差が前記基準電圧より大きいか否かを検出する第2比較器と、を備え、
前記増強時間設定部は、前記第1電圧差が前記基準電圧より大きいことが前記第1比較器にて検出された場合、又は前記第2電圧差が前記基準電圧より大きいことが前記第2比較器にて検出された場合に、前記所定時間にわたって前記駆動増強信号を前記第1論理に設定する、請求項2に記載の半導体増幅回路。
【請求項4】
前記第1電圧差が前記基準電圧以下になったことが前記第1比較器にて検出された場合、又は前記第2電圧差が前記基準電圧以下になったことが前記第2比較器にて検出された場合に、所定論理の信号を出力する論理演算回路を備え、
前記増強時間設定部は、前記論理演算回路が前記所定論理の信号を出力したときに、前記駆動増強信号を前記第論理にする、請求項3に記載の半導体増幅回路。
【請求項5】
前記増強時間設定部は、前記論理演算回路が前記所定論理の信号を出力すると直ちに電荷を蓄積し、前記論理演算回路が前記所定論理以外の論理の信号を出力すると蓄積電荷を時間をかけて放電するキャパシタを有し、
前記増強時間設定部は、前記キャパシタが所定量以上の電荷を蓄積している場合に前記駆動増強信号を前記第1論理に設定する、請求項4に記載の半導体増幅回路。
【請求項6】
前記第1入力信号と前記第2入力信号との電圧差に応じた電流を出力する、第1導電型の第1トランジスタ対と、
前記第1トランジスタ対から出力された電流に定電流源からの電流を加算した電流に応じた電圧を出力する電流加算器と、を備え、
前記ゲート駆動器は、前記電流加算器から出力された電圧に応じた前記ゲート駆動信号を出力する、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の半導体増幅回路。
【請求項7】
前記第1入力信号と前記第2入力信号との電圧差に応じた電流を出力する、第2導電型の第2トランジスタ対を備え、
前記電流加算器は、前記第1トランジスタ対及び前記第2トランジスタ対から出力された電流に前記定電流源からの電流を加算した電流に応じた電圧を出力する、請求項6に記載の半導体増幅回路。
【請求項8】
前記出力回路から出力される前記増幅信号は、前記第1トランジスタ対のいずれか一方のトランジスタのゲートに負帰還される、請求項6又は7に記載の半導体増幅回路。
【請求項9】
前記駆動増強信号が前記第1論理か前記第2論理かによって、電圧レベルが異なるバイアス電圧を出力するバイアス選択器を備え、
前記ゲート駆動器は、前記バイアス選択器から出力された前記バイアス電圧に応じて前記ゲート駆動信号の駆動能力を切り替える、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の半導体増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電池で駆動するセンサでは、センサの微弱な出力信号を増幅する増幅回路が欠かせない。電池で駆動している以上、増幅回路の消費電流はできるだけ抑制する必要がある。センサの出力信号が高速で変化する場合でも、その信号変化に合わせて、歪みなく増幅を行う低歪み性能が求められる。
【0003】
しかしながら、一般には、増幅回路の低歪み性能を向上させるには、増幅回路に流す電流を増やす必要があり、消費電力が増大してしまう。このように、増幅回路では、低消費電力性能と低歪み性能はトレードオフの関係にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4622499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、消費電力を増やさずに増幅信号の歪みを低減可能な半導体増幅回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、入力信号に応じたゲート駆動信号を出力するとともに、駆動増強信号が第1論理の間は前記ゲート駆動信号の駆動能力を増強するゲート駆動器と、
前記入力信号が所定の条件を満たしてから所定時間の間は前記駆動増強信号を前記第1論理にし、前記所定時間が経過すると前記駆動増強信号を第2論理に遷移させる増強時間設定部と、
前記ゲート駆動信号が入力されるゲートを有するトランジスタを有し、前記トランジスタから前記入力信号を増幅した増幅信号を出力する出力回路と、を備える、半導体増幅回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態による半導体増幅回路のブロック図。
図2図1の差動入力信号を説明する図。
図3図1の電流加算器、ゲート駆動器及び出力回路の詳細な内部構成の一例を示す回路図。
図4】バイアス選択器の内部構成の一例を示す回路図。
図5】一比較例による半導体増幅回路の概略構成を示すブロック図。
図6図5の半導体増幅回路内の各部の電圧波形図。
図7】本実施形態による半導体増幅回路内の各部の電圧波形図。
図8】消費電流と高速性との関係を模式的に表した図。
図9】第2の実施形態による半導体増幅回路の回路図。
図10】同相入力可能電圧範囲を比較した図。
図11】第3の実施形態による半導体増幅回路の回路図。
図12】第3の実施形態の一変形例による半導体増幅回路の回路図。
図13A図3の半導体増幅回路の同相入力可能範囲を示す図。
図13B図12の半導体増幅回路の同相入力可能範囲を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、本件明細書と添付図面においては、理解のしやすさと図示の便宜上、一部の構成部分を省略、変更または簡易化して説明および図示しているが、同様の機能を期待し得る程度の技術内容も、本実施の形態に含めて解釈することとする。また、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物から変更し誇張してある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による半導体増幅回路1のブロック図である。図1の半導体増幅回路1は、半導体基板上に形成される回路である。図1の半導体増幅回路1が形成される半導体基板上に、その他の回路を混載しても構わない。図1の半導体増幅回路1の用途は特に問わないが、例えば各種のセンサが検出した微弱な出力信号を増幅する目的で使用可能である。
【0010】
図1の半導体増幅回路1は、必須の構成部品として、ゲート駆動器2と、増強時間設定部3と、出力回路4とを備えている。
【0011】
ゲート駆動器2は、入力信号に応じたゲート駆動信号を出力するとともに、後述する駆動増強信号が第1論理の間はゲート駆動信号の駆動能力を増強する。第1論理とは例えばハイレベルである。入力信号は、単一の電圧信号でもよいし、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinを含む差動入力信号でもよい。後述するように、入力信号として差動入力信号を用いる場合、ゲート駆動器2は、差動入力信号を構成する第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの電圧差に応じたゲート駆動信号を出力する。駆動増強信号は、ゲート駆動信号の駆動能力を増強するか否かを指定する信号である。ゲート駆動信号の駆動能力を増強するとは、例えば、ゲート駆動信号の電圧レベルを引き上げたり、引き下げることを指す。これにより、ゲート駆動信号がゲートに入力されるトランジスタの動作が高速化して、出力回路4の動作を速くすることができる。
【0012】
増強時間設定部3は、入力信号が所定の条件を満たしてから所定時間の間は駆動増強信号を第1論理にし、所定時間が経過すると駆動増強信号を第2論理にする。所定の条件を満たすとは、例えば入力信号が差動入力信号の場合に、差動入力信号を構成する第1入力信号Vipと第2入力信号Vinとの電圧差の絶対値がオフセット電圧Vofstより大きい場合である。第1入力信号Vipと第2入力信号Vinとの電圧差の絶対値がオフセット電圧Vofst以下の場合には、所定の条件を満たしたことにはならない。ゲート駆動器2は、駆動増強信号が第1論理のときにゲート駆動信号の駆動能力を増強し、駆動増強信号が第2論理のときはゲート駆動信号を通常の駆動能力にする。
【0013】
出力回路4は、ゲート駆動信号が入力されるゲートを有するトランジスタを有し、トランジスタから入力信号を増幅した増幅信号を出力する。より具体的には、出力回路4は、電源電圧ノードと接地ノードとの間にカスコード接続されたPMOSトランジスタQ1及びNMOSトランジスタQ2を有する。PMOSトランジスタQ1のドレインとPMOSトランジスタQ2のドレインは出力端子OUTに接続されている。PMOSトランジスタQ1のゲートには第1ゲート駆動信号が入力され、NMOSトランジスタQ2のゲートには、第2ゲート駆動信号が入力される。これら第1ゲート駆動信号と第2ゲート駆動信号は、ゲート駆動器2で生成される。増強時間設定部3が駆動増強信号を第1論理に設定した場合、第1ゲート駆動信号の電圧レベルがより低くなってPMOSトランジスタQ1が迅速にオンするか、あるいは、第2ゲート駆動信号の電圧レベルがより高くなってNMOSトランジスタQ2が迅速にオンする。
【0014】
この他、図1の半導体増幅回路1は、差動入力回路5と、電流加算器6とを備えていてもよい。
【0015】
差動入力回路5は、定電流源5aと、第1導電型の一対のPMOSトランジスタQ3,Q4を有する。これらPMOSトランジスタQ3,Q4のゲートには、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinからなる差動入力信号が入力される。差動入力回路5は、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの電圧差に応じた電流を出力する。差動入力信号を構成する第1入力信号Vipと第2入力信号Vinは、安定状態では同一電圧レベルであり、信号論理が遷移する過渡状態では第1入力信号Vipと第2入力信号Vinに電圧差が生じる。差動入力回路5は、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの電圧差に応じた電流を出力する。差動入力回路5から出力された電流は、電流加算器6に入力される。
【0016】
第2入力信号Vinが入力されるPMOSトランジスタQ4のゲートには、出力端子OUTが接続されている。これにより、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの電圧差がなくなるように負帰還制御が行われる。
【0017】
電流加算器6は、差動入力回路5から出力された電流に定電流源6aからの電流を加算した電流に応じた電圧を出力する。電流加算器6から出力される電圧は、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの電圧差に応じた電圧レベルを有する。電流加算器6から出力される電圧は、ゲート駆動器2に入力される。
【0018】
このように、電流加算器6は、差動入力回路5から出力された電流に、定電流源6aからの電流を加算することで利得を向上させることができる。また、電流加算器6は、差動入力信号を構成する第1入力信号Vip及び第2入力信号Vinの同相入力可能電圧範囲を広げることができる。電流加算器6の動作については後述する。
【0019】
この他、図1の半導体増幅回路1は、第1比較器7と、第2比較器8と、OR回路9と、バイアス選択器10とを備えていてもよい。
【0020】
第1比較器7は、第1入力信号Vipの電圧レベルから第2入力信号Vinの電圧レベルを差し引いた電圧差がオフセット電圧Vofstより大きいか否かを検出する。第1比較器7は、Vip>Vin+オフセット電圧Vofstを満たすときに、例えばハイ電位になる。
【0021】
第2比較器8は、第2入力信号Vinの電圧レベルから第1入力信号Vipの電圧レベルを差し引いた電圧差がオフセット電圧Vofstより大きいか否かを検出する。第1比較器7は、Vin>Vip+オフセット電圧Vofstを満たすときに、例えばハイ電位になる。
【0022】
OR回路9は、第1比較器7の出力信号と第2比較器8の出力信号との論理和を演算して、その演算結果を出力する論理演算回路である。よって、OR回路9は、第1比較器7がハイ電位を出力した場合か、第2比較器8がハイ電位を出力した場合に、ハイ電位を出力する。より詳細には、OR回路9は、Vip>Vin+オフセット電圧Vofstを満たす場合、又はVin>Vip+オフセット電圧Vofstを満たす場合に、ハイ電位を出力する。
【0023】
OR回路9がハイ電位を出力した場合が、上述した所定の条件を満たした場合に該当する。よって、増強時間設定部3は、OR回路9がハイ電位を出力した場合に、所定時間の間は駆動増強信号を第1論理にし、所定時間が経過すると駆動増強信号を第2論理にする。このように、増強時間設定部3は、OR回路9の出力がロー電位からハイ電位に変化した場合のみ、駆動増強信号を第1論理にする。なお、OR回路9の代わりに、負論理信号を出力するNOR回路等の論理演算回路を用いた場合は、増強時間設定部3は、この論理演算回路の出力がハイ電位からロー電位に変化した場合のみ、駆動増強信号を第1論理にする。
【0024】
上述した増強時間設定部3は、キャパシタを内蔵していてもよい。このキャパシタは、OR回路9が所定論理(例えばハイ電位)の信号を出力すると直ちに電荷を蓄積し、OR回路9が所定論理以外の論理の信号を出力すると蓄積電荷を時間をかけて放電する。増強時間設定部3は、キャパシタが所定量以上の電荷を蓄積している場合に駆動増強信号を第1論理に設定する。
【0025】
バイアス選択器10は、後述するように、増強時間設定部3から出力された駆動増強信号に基づいて、ゲート駆動器2内のバイアス電圧の電圧レベルを選択する。このように、ゲート駆動器2内のバイアス電圧の電圧レベルを切り替えることで、ゲート駆動信号の駆動能力が切り替えられる。
【0026】
図2図1の差動入力信号を説明する図である。図2では、本実施形態による半導体増幅回路1をオペアンプ11に置換した例を示している。図2に示すように、各種のセンサ12から出力された信号は、オペアンプ11の正側入力端子に入力される。オペアンプ11の負側入力端子は出力端子OUTと短絡されている。この場合、オペアンプ11は、正側入力端子と負側入力端子の電圧差がゼロになるように動作する。上述した差動入力信号は、例えば、オペアンプ11の正側入力端子に繋がる第1入力信号Vipと、負側入力端子に繋がる第2入力信号Vinとで構成される。
【0027】
センサ12の出力信号の電圧レベルが急激に上昇した場合、第1入力信号Vipの電圧レベルも急激に上昇するが、オペアンプ11の出力電圧はすぐには上昇しないことから、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinとの間に過渡的な電圧差が生じる。この電圧差はやがて解消され、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinは同電圧になる。センサ12の出力信号の電圧変化に対して、オペアンプ11の出力信号の電圧変化が遅れる理由は、オペアンプ11には位相補償容量や内部寄生容量があるためである。
【0028】
本実施形態による半導体増幅回路1にセンサ12の出力信号を入力する場合にも、図2と同様に、センサ12の出力信号である第1入力信号Vipの論理が変化するときに、差動入力信号を構成する第1入力信号Vipと第2入力信号Vinに過渡的な電圧差が生じる。本実施形態による半導体増幅回路1は、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinに過渡的な電圧差が生じたときに、所定時間の間だけ、ゲート駆動信号の駆動能力を増強するものである。
【0029】
図3図1の電流加算器6、ゲート駆動器2及び出力回路4の詳細な内部構成の一例を示す回路図である。図3では、図1に示した増強時間設定部3、第1比較器7、第2比較器8、OR回路9、バイアス選択器10を省略している。
【0030】
図3の電流加算器6は、定電流源6aと、利得向上回路6bと、電流加算回路6cとを有する。
【0031】
定電流源6aは、一対のPMOSトランジスタQ5,Q6を有する。一対のPMOSトランジスタQ5,Q6のゲートにはバイアス電圧Vbias1が供給され、ソースには電源電圧が供給される。
【0032】
利得向上回路6bは、一対のPMOSトランジスタQ7,Q8と、一対のNMOSトランジスタQ9,Q10とを有する。一対のPMOSトランジスタQ7,Q8のゲートにはバイアス電圧Vbias2が供給され、ソースには一対のPMOSトランジスタQ5,Q6のドレインが接続されている。一対のNMOSトランジスタQ9,Q10のゲートにはバイアス電圧Vbias3が供給され、ドレインには一対のPMOSトランジスタQ7,Q8のドレインが接続されている。
【0033】
電流加算回路6cは、一対のNMOSトランジスタQ11,Q12を有する。一対のNMOSトランジスタQ11,Q12のゲートにはNMOSトランジスタQ9のドレインが接続されている。一対のNMOSトランジスタQ11,Q12のドレインには、差動入力回路5内の一対のPMOSトランジスタQ3,Q4のドレインが接続されている。一対のNMOSトランジスタQ11,Q12のソースは接地されている。
【0034】
定電流源6aを構成する一対のPMOSトランジスタQ5,Q6のソース-ドレイン間には、バイアス電圧Vbias1に応じた定電流が流れる。利得向上回路6b内の一対のPMOSトランジスタQ7,Q8と一対のNMOSトランジスタQ9,Q10は、バイアス電圧Vbias1、Vbias2に応じた抵抗器として作用する。定電流源6aから出力された定電流は、一対のPMOSトランジスタQ7,Q8のソース-ドレイン間と、一対のNMOSトランジスタQ9,Q10のドレイン-ソース間を通って、電流加算回路6cに流れ込む。
【0035】
電流加算回路6cには、差動入力回路5内の一対のPMOSトランジスタQ3,Q4のソース-ドレイン間を流れる電流も流れ込む。よって、電流加算回路6c内の一対のNMOSトランジスタQ11,Q12のドレイン-ソース間には、定電流源6aからの電流と、差動入力回路5からの電流とを加算した電流が流れる。
【0036】
ゲート駆動器2は、第1ゲート信号生成器2aと、利得調整器2bと、第2ゲート信号生成器2cとを有する。
【0037】
第1ゲート信号生成器2aは、一対のPMOSトランジスタQ13,Q14を有する。PMOSトランジスタQ13,Q14のソースには電源電圧が供給され、PMOSトランジスタQ13,Q14のゲートとドレインは短絡されている。
【0038】
利得調整器2bは、一対のNMOSトランジスタQ15,Q16と、一対のPMOSトランジスタQ17,Q18とを有する。NMOSトランジスタQ15,Q16の各ドレインは、PMOSトランジスタQ13,Q14のドレインに接続されている。NMOSトランジスタQ15のソースは、PMOSトランジスタQ18のソースに接続されている。NMOSトランジスタQ16のソースは、PMOSトランジスタQ17のソースに接続されている。NMOSトランジスタQ16のゲートにはバイアス電圧Vbias4が入力され、PMOSトランジスタQ18のゲートにはバイアス電圧Vbias5が入力されている。NMOSトランジスタQ15のゲートとPMOSトランジスタQ17のゲートは、電流加算器6の出力ノードであるPMOSトランジスタQ8のドレインとNMOSトランジスタQ10のドレインに接続されている。
【0039】
第2ゲート信号生成器2cは、一対のNMOSトランジスタQ19,Q20を有する。NMOSトランジスタQ19のドレインは、PMOSトランジスタQ19のゲートとPMOSトランジスタQ17のドレインに接続されている。NMOSトランジスタQ20のドレインは、PMOSトランジスタQ20のゲートとPMOSトランジスタQ18のドレインに接続されている。NMOSトランジスタQ19,Q20の各ソースは接地ノードに接続されている。
【0040】
出力回路4内のPMOSトランジスタQ1のゲートは、PMOSトランジスタQ14のゲートとドレインに接続されている。NMOSトランジスタQ2のゲートは、NMOSトランジスタQ20のゲートとドレインに接続されている。
【0041】
図4はゲート駆動器2内の利得調整器2bに供給されるバイアス電圧Vbias4、Vbias5を生成するバイアス選択器10の内部構成の一例を示す回路図である。図4のバイアス選択器10は、増強時間設定部3から出力された駆動増強信号の論理に基づいて電圧選択を行う第1電圧選択器10a及び第2電圧選択器10bを有する。第1電圧選択器10aは、電圧Vbias4aとVbias4bのいずれかを選択して、バイアス電圧Vbias4として出力する。第2電圧選択器10bは、電圧Vbias5aとVbias5bのいずれかを選択して、バイアス電圧Vbias5として出力する。電圧Vbias4aは電圧Vbias4bよりも例えば1.0V程度高い電圧である。同様に、電圧Vbias5aは電圧Vbias5bよりも例えば1.0V程度低い電圧である。バイアス選択器10内の第1電圧選択器10a及び第2電圧選択器10bは、駆動増強信号が例えばハイ電位の場合、電圧Vbias4a、Vbias5aを選択し、駆動増強信号が例えばロー電位の場合、電圧Vbias4b、Vbias5bを選択する。
【0042】
次に、本実施形態による半導体増幅回路1の動作を説明する。半導体増幅回路1は、差動入力回路5に差動入力信号Vip、Vinが入力されると、動作を開始する。例えば、Vip>Vinの場合、図3のPMOSトランジスタQ4のドレイン電流は、PMOSトランジスタQ3のドレイン電流よりも大きくなる。このため、電流加算器6内のNMOSトランジスタQ11のドレイン-ソース間に流れる電流が増大する。これにより、NMOSトランジスタQ11,Q12の両ゲート電圧は高くなる。PMOSトランジスタQ4のドレイン電流がPMOSトランジスタQ3のドレイン電流よりも増大することにより、PMOSトランジスタQ4のドレイン電圧は、PMOSトランジスタQ3のドレイン電圧よりも高くなる。すなわち、PMOSトランジスタQ4のドレイン電流が増えると、それに伴って、PMOSトランジスタQ3のドレイン電圧は下がる。
【0043】
このため、NMOSトランジスタQ10のゲート-ソース間電圧Vgsが大きくなり、NMOSトランジスタQ10のドレイン電圧、すなわち電流加算器6の出力電圧は低下する。このように、Vip>Vinの場合、電流加算器6の出力電圧は低下する。
【0044】
一方、Vip≦Vinの場合、PMOSトランジスタQ3のドレイン電流はPMOSトランジスタQ4のドレイン電流よりも増大し、PMOSトランジスタQ3のドレイン電圧はPMOSトランジスタQ4のドレイン電圧よりも高くなる。よって、NMOSトランジスタQ10のゲート-ソース間電圧Vgsが小さくなり、NMOSトランジスタQ10のドレイン電圧、すなわち電流加算器6の出力電圧は上昇する。このように、Vip≦Vinの場合、電流加算器6の出力電圧は上昇する。
【0045】
電流加算器6の出力電圧が低下すると、ゲート駆動器2内のPMOSトランジスタQ17のゲート電圧が下がることから、PMOSトランジスタQ17のソース電圧が下がって、NMOSトランジスタQ16のゲート-ソース間電圧Vgsが大きくなり、NMOSトランジスタQ16のドレインに接続された第1ゲート駆動信号の電圧レベルが下がる。これにより、出力回路4内のPMOSトランジスタQ1はオンする方向に動作し、出力端子OUTの電圧が上昇する。このように、Vip>Vinの場合は、電流加算器6の出力電圧が低下して、出力端子OUTが引き上げられる。出力端子OUTは第2入力信号Vinが入力されるPMOSトランジスタQ3のゲートに帰還されるため、出力端子OUTの上昇を抑制するような帰還制御が行われる。
【0046】
逆に、電流加算器6の出力電圧が上がると、ゲート駆動器2内のNMOSトランジスタQ15のゲート電圧が上がることから、NMOSトランジスタQ15のソース電圧が上がり、PMOSトランジスタQ18のドレインに接続された第2ゲート駆動信号の電圧レベルが上がる。このように、Vin>Vipの場合は、電流加算器6の出力電圧が上昇して、出力端子OUTが引き下げられる。出力端子OUTは第2入力信号Vinが入力されるPMOSトランジスタQ3のゲートに接続されるため、出力端子OUTの下降を抑制するような帰還制御が行われる。
【0047】
また、差動入力信号Vip、Vinが過渡的に変動した場合、第1比較器7は、Vip>Vin+オフセット電圧Vofstのときにハイ電位の信号を出力し、第2比較器8は、Vin>Vip+オフセット電圧Vofstのときにハイ電位の信号を出力する。
【0048】
OR回路9は、第1比較器7と第2比較器8のいずれかの出力がハイ電位であれば、ハイ電位の信号を出力する。増強時間設定部3は、OR回路9の出力がハイ電位になると、所定時間の間は駆動増強信号を第1論理(例えばハイレベル)にし、それ以外は第2論理(例えばローレベル)にする。OR回路9の出力がハイ電位になるのは、差動入力信号の入力電圧差がオフセット電圧Vofstを超えてから所定期間である。
【0049】
バイアス選択器10は、駆動増強信号が第1論理であれば、駆動増強信号が第2論理の場合に比べて、バイアス電圧Vbias4の電圧レベルをより大きくし、Vbias5の電圧レベルをより小さくする。このため、ゲート駆動器2内の利得調整器2bを構成するトランジスタQ16、Q18の駆動能力が高くなり、第1ゲート駆動信号Vg1の電圧レベルがより低くなり、あるいは第2ゲート駆動信号Vg2の電圧レベルがより高くなる。よって、出力回路4内のPMOSトランジスタQ1とNMOSトランジスタQ2の動作速度が速くなる。
【0050】
図5は一比較例による半導体増幅回路100の概略構成を示すブロック図である。図5の半導体増幅回路100は、増幅器21と、第1比較器22と、第2比較器23と、第1スイッチ24と、第2スイッチ25とを備えている。
【0051】
増幅器21は、差動入力信号を構成する第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの入力電圧差に応じた電圧信号を出力端子OUTから出力するとともに、この電圧信号を第2入力信号Vinと短絡させて、増幅器21の負入力端子に帰還させる。
【0052】
第1スイッチ24と第2スイッチ25は、電源電圧Vccノードと接地ノードとの間に直列接続されており、図1の出力回路4と同様の構成である。また、第1比較器22及び第2比較器23も、図1の第1比較器22及び第2比較器23と同様の構成である。
【0053】
第1入力信号Vipが変化すると、増幅器21は出力端子OUTの電圧を変化させようとするが、過渡的に出力端子OUTの電圧と第1入力信号Vipとが大きくずれた電圧になることがある。第1比較器22と第2比較器23は、第1入力信号Vipと第2入力信号Vinの電圧差がオフセット電圧Vofst以上の場合に、出力端子OUTを電源電圧ノード又は接地ノードに短絡させる。この短絡によって、出力端子OUTの電圧が迅速に変化し、出力端子OUTの電圧と第1入力信号Vipとの電圧差を小さくすることができる。
【0054】
図6図5の半導体増幅回路1内の各部の電圧波形図である。図6の最上段は第1入力信号Vipの電圧波形、2段目は出力端子OUTの電圧波形、3段目は出力端子OUTを電源電圧ノードに短絡した期間を示すパルス波形、4段目は出力端子OUTを接地ノードに短絡した期間を示すパルス波形をそれぞれ表している。
【0055】
入力信号に矩形波の立ち上がりが生じると、差動入力信号Vip、Vinの入力電圧差がオフセット電圧Vofst以上になったときに、第1比較器22の出力がハイ電位になり、第1スイッチ24がオンして出力端子OUTは電源電圧ノードと短絡し、出力端子OUTの電圧は急激に上昇する。その後、入力電圧差がオフセット電圧Vofst未満になると、第1スイッチ24はオフして、出力端子OUTの電圧上昇の傾きは緩やかになり、最終的に出力端子OUTの電圧は第1入力信号Vipの電圧波形に応じた波形形状になる。入力信号に矩形波の立ち下がりが生じた場合も、同様の動作を行う。
【0056】
一方、第1入力信号Vipの電圧波形がサイン波の場合、差動入力信号Vip、Vinの入力電圧差がオフセット電圧Vofstになるまでは、出力端子OUTの電圧は緩やかに変化する。入力電圧差がオフセット電圧Vofst以上になると、第1スイッチ24がオンして、出力端子OUTの電圧は電源電圧ノードにまで急激に上昇する。その後、入力電圧差がオフセット電圧Vofst未満になると、第1スイッチ24がオフして、出力端子OUTの電圧は緩やかに変化する。第1入力信号Vipの電圧波形がサイン波の場合、入力信号の電圧レベルが絶えず変化するため、第1スイッチ24がオンとオフを交互に繰り返すことになり、出力端子OUTの電圧は階段状に変化する。また、入力信号の電圧レベルがピーク又はボトムに近づいたときに、入力電圧差がオフセット電圧Vofst未満の状態が続くと、入力電圧差が残ったまま緩やかな傾斜で出力端子OUTの電圧が変化し、元の入力信号の電圧波形と出力端子OUTの電圧波形が大きく異なったものになり、出力端子OUTの電圧波形の歪みが大きくなる。
【0057】
図7は本実施形態による半導体増幅回路1内の各部の電圧波形図である。図7の最上段は第1入力信号Vipの電圧波形、二段目は出力端子OUTの電圧波形、三段目はゲート駆動器2の駆動能力を表す波形である。三段目の波形は、駆動能力が高い場合をハイレベル、低い場合をローレベルとしている。
【0058】
本実施形態では、出力端子OUTを電源電圧ノードや接地ノードに短絡することはせず、差動入力信号の入力電圧差が過渡的に変動した場合に一時的にゲート駆動信号の駆動能力を高め、それ以外はゲート駆動信号を低い駆動能力に設定するため、出力端子OUTの電圧を、差動入力信号の電圧変化に追随して変化させることができる。より詳細には、第1入力信号Vipが矩形波形状の立ち上がりエッジを含む場合、ゲート駆動器2は迅速にゲート駆動信号の駆動能力を高めるため、出力端子OUTの電圧波形は、矩形状になる。また、第1入力信号Vipがサイン波の場合、差動入力信号の入力電圧差がオフセット電圧Vofstを超えるまでは出力端子OUTの電圧は緩やかに上昇する。入力電圧差がオフセット電圧Vofstを超えると出力端子OUTの電圧は急激に上昇し、それから所定期間の間は、ゲート駆動器2が駆動能力を高めるため、第1入力信号Vipの波形変化に追従して、出力端子OUTの電圧波形を変化させることができる。これにより、消費電力を抑制しつつ、歪み特性を改善できる。
【0059】
図8は消費電流と高速性との関係を模式的に表した図である。一般に、消費電流と高速性はトレードオフの関係にあり、消費電流が多いほど高速になり(プロットp1)、消費電流が少ないほど低速になる(プロットp2)。これに対して、本実施形態では、差動入力信号の入力電圧差が大きくなった場合のように、高速性が要求される場合だけゲート駆動器2の駆動能力を向上し、特に高速性が要求されない場合はゲート駆動器2の駆動能力を低下させる。よって、本実施形態によれば、図8のプロットp3に示すように、全体的な消費電力を抑制しつつ、高速性能を維持できる。
【0060】
このように、本実施形態では、差動入力信号の入力電圧差がオフセット電圧Vofst以上になったことを検出するとともに、入力電圧差がオフセット電圧Vofst以上になってから所定期間の間は、ゲート駆動器2の駆動能力を増強する。これにより、出力端子OUTの電圧の歪みを抑制できるとともに、差動入力信号の入力電圧差がなくなるように迅速に帰還動作を行うことができる。また、所定期間以外は、ゲート駆動器2の駆動能力を下げるため、消費電力を削減できる。
【0061】
(第2の実施形態)
図9は第2の実施形態による半導体増幅回路1の回路図である。図9の半導体増幅回路1は、図3の半導体増幅回路1の構成に、一対のNMOSトランジスタQ21,Q22と定電流源13aを有するn型差動入力回路13を追加したものである。以下では、図1図3の差動入力回路5をp型差動入力回路5と呼ぶ。
【0062】
図3と同様に、p型差動入力回路5内のPMOSトランジスタQ3,Q4のドレインは、電流加算器6内のトランジスタQ11,Q12のドレインに接続されている。これに対して、図3のn型差動入力回路13内のNMOSトランジスタQ21,Q22のドレインは、電流加算器6内のPMOSトランジスタQ5,Q6のドレインに接続されている。
【0063】
NMOSトランジスタQ21,22の各ソースには定電流源13aが接続されている。NMOSトランジスタQ21,Q22の各ゲートには、差動入力信号Vip、Vinが接続されている。
【0064】
図9の半導体増幅回路1は、それぞれ導電型が異なるp型差動入力回路5とn型差動入力回路13を備えているため、差動入力信号の同相入力可能電圧範囲を広げることができる。ここで、同相入力電圧Vcomとは、差動入力電圧Vip、Vinの平均値=(Vip+Vin)/2である。差動入力電圧Vip、Vinの定常時は、Vip=Vin=Vcomになる。
【0065】
同相入力可能電圧は、ドレイン-ソース間電圧Vdsやゲート-ソース間電圧Vgsを考慮した上で、増幅回路として動作可能な同相入力電圧Vcomの範囲を指す。
【0066】
図10は、半導体増幅回路1内にp型差動入力回路5、n型差動入力回路13、又はp型差動入力回路5+n型差動入力回路13を設けた場合の同相入力可能電圧範囲を比較した図である。p型差動入力回路5のみを設けた場合は、電源電圧に近い電圧範囲の差動入力電圧を入力することができない。また、n型差動入力回路13のみを設けた場合は、接地電圧に近い電圧範囲の差動入力電圧を入力することはできない。これに対して、p型差動入力回路5とn型差動入力回路13を設けた場合には、接地電圧側から電源電圧側まで、広い電圧範囲内の差動入力電圧に対応しており、差動入力電圧の電圧範囲に対する制限を緩和できる。
【0067】
なお、差動入力電圧の電圧範囲が予め決まっている場合には、p型差動入力回路5又はn型差動入力回路13のみを設けることで、図9のように二組の差動入力回路5を設ける場合よりも回路構成を簡略化できる。
【0068】
このように、第2の実施形態では、導電型の異なる二組の差動入力回路5を設けることで、差動入力信号の同相入力可能範囲を広げることができる。
【0069】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、差動入力回路5を流れる電流に定電流からの電流を加算する電流加算器6を設けていたが、電流加算器6を省略した構成も考えられる。
【0070】
図11は第3の実施形態による半導体増幅回路1の回路図である。図11の半導体増幅回路1は、電流加算器6の代わりに電流検出器27を備えている。
【0071】
電流検出器27は、図3の電流加算器6内の一対のNMOSトランジスタQ11,Q12を有する。すなわち、図11の半導体増幅回路1では、図3の電流加算器6内のトランジスタQ5~Q10が省略されている。
【0072】
差動入力回路5内のPMOSトランジスタQ3,Q4のドレイン電流は、NMOSトランジスタQ11,Q12のソース-ドレイン間に流れる。NMOSトランジスタQ12のドレインがゲート駆動器2内のトランジスタQ15,Q17のゲートに接続されている。
【0073】
差動入力回路5は、差動入力信号の入力電圧差に応じた電流を出力する。電流検出器27は、差動入力回路5から出力された電流をそのまま利用して、ゲート駆動器2を制御するための電圧を生成する。このため、電流検出器27を用いた場合は、電流加算器6を用いる場合に比べて、利得が数十倍低くなる。しかしながら、回路構成を大幅に簡略化できるため、利得がそれほど要求されない場合には、図11の半導体増幅回路1を用いることができる。
【0074】
図12は第3の実施形態の一変形例による半導体増幅回路1の回路図である。図12の半導体増幅回路1は、電流検出器27の構成が図11とは異なっている。図12の電流検出器27は、図3の電流加算器6のうち、トランジスタQ7~Q12を有するものであり、定電流源6aを構成するトランジスタQ5,Q6のみを省略している。
【0075】
図12の半導体増幅回路1では、差動入力回路5内のPMOSトランジスタQ1,Q2の各ドレインは、電流検出器27内のPMOSトランジスタQ7,Q8のソースに接続されている。図12の電流検出器27は、トランジスタQ5,Q6が省略されているため、トランジスタQ11,Q12で電流の加算は行われない。しかしながら、トランジスタQ7~Q10で利得を向上させることができる。このため、図12の半導体増幅回路1は、図3の半導体増幅回路1と同等の利得が得られるが、差動入力信号の同相入力可能範囲は図3の半導体増幅回路1よりも狭くなる。
【0076】
図13A図3の半導体増幅回路1の同相入力可能範囲を示す図、図13B図12の半導体増幅回路1の同相入力可能範囲を示す図である。
【0077】
図13Aでは、差動入力回路5内の電流源5aの両端電圧をVds0、PMOSトランジスタQ3、Q4のゲート-ソース間電圧をVgs4、PMOSトランジスタQ3、Q4のドレイン-ソース間電圧をVds4、NMOSトランジスタQ11のドレイン-ソース間電圧をVds11としている。この場合、同相入力可能範囲は、上限が電源電圧Vcc-Vds0-Vgs4となり、下限がVds11+Vds4-Vgs4となる。
【0078】
図13Bでは、PMOSトランジスタQ7のゲート-ソース間電圧をVgs7としている。この場合、同相入力可能範囲は、上限が電源電圧Vcc-Vds0-Vgs4、下限がVbias2+Vgs7+Vds4-Vgs4となる。
【0079】
図13A図13Bから明らかなように、図12の半導体増幅回路1は、図3の半導体増幅回路1に比べて同相入力可能範囲が狭くなる。しかしながら、差動入力電圧の電圧範囲の変動が少ないことが予めわかっている場合は、図12の半導体増幅回路1を用いることで、回路構成を簡略化できる。
【0080】
このように、第3の実施形態では、利得が小さくなったり、同相入力可能範囲が狭くなるという欠点はあるものの、差動入力電圧の変動範囲が狭い場合には、半導体増幅回路1の回路構成を簡略化することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1 半導体増幅回路、2 ゲート駆動器、3 増強時間設定部、4 出力回路、5 差動入力回路、6 電流加算器、7 第1比較器、8 第2比較器、9 OR回路、10 バイアス選択器、11 オペアンプ、12 センサ、21 増幅器、22 第1比較器、23 第2比較器、24 第1スイッチ、25 第2スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B