(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両の駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/02 20060101AFI20240207BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240207BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20240207BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240207BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20240207BHJP
【FI】
B60K1/02
B60K1/00
B60K17/04 Z
B60L3/00 J
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2019147106
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 公伸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】晒野 文明
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直紀
(72)【発明者】
【氏名】森本 陽介
(72)【発明者】
【氏名】出口 善行
(72)【発明者】
【氏名】曽根 満夫
(72)【発明者】
【氏名】安部 直也
(72)【発明者】
【氏名】西 紘史
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184523(JP,A)
【文献】特開2014-011926(JP,A)
【文献】特開2004-328870(JP,A)
【文献】特開2017-203503(JP,A)
【文献】特開2016-180424(JP,A)
【文献】特開2007-210416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00 - 1/02
B60K 17/04 - 17/08
B60K 17/12
B60L 3/00 - 3/12
H02K 5/00 - 5/26
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の左右輪を駆動する左モーター及び右モーターと、
前記左モーター及び前記右モーターのトルクを増幅して前記左右輪の各々に伝達する歯車機構を内蔵し、前記左モーターと前記右モーターとの間に挟装されるギアボックスと、
直流電力を交流電力に変換して前記左モーター及び前記右モーターの双方に給電する電力変換装置と、を備え、
前記ギアボックスは、前記左モーター及び前記右モーターの各々が内装される左右のモーターハウジングに対して、前記ギアボックス内の左右輪軸が前記左モーター及び前記右モーターの軸の下方かつ前後方向にオフセットするように配置され、
前記電力変換装置は、左右の前記モーターハウジングの間に橋架され
て固定される
ベースプレートと、前記ベースプレートの下面に取り付けられるコンデンサーと、前記ベースプレートの上面に取り付けられる半導体モジュールと、を有し、
前記コンデンサーが、左右の前記モーターハウジングと前記ギアボックスとで囲まれた凹部に配置される
とともに、前記凹部の内側にて前記ギアボックスに対し所定の間隔をあけて配置され、
前記所定の間隔は、前記車両の走行時に走行風が通過する空間である
ことを特徴とする、車両の駆動装置。
【請求項2】
前記電力変換装置の一部が、冷却回路を含む
ことを特徴とする、請求項
1記載の車両の駆動装置。
【請求項3】
左右の前記モーターハウジングとその端面を閉塞するモーターカバーとを当接させてなるフランジを有し、
前記電力変換装置が、左右の前記フランジの間にて左右の前記モーターハウジングに固定される
ことを特徴とする、請求項1
または2記載の車両の駆動装置。
【請求項4】
左右の前記モーターハウジングにて外表面から上方に向かって突設されて、前記電力変換装置を固定するための固定具が締結される複数のボスを備える
ことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の左右輪を駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つのモーター(電動機)で車両の左右輪を駆動する駆動装置が知られている。例えば、左右輪の各々に個別のモーターを接続し、左右輪を互いに独立して駆動できるようにしたものが提案されている。このような駆動装置では、左右のモーターの駆動力を相違させることで、左右輪に回転数差やトルク差を生じさせることができる。これにより、車両の旋回性能や旋回時の車体安定性が改善されうる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、モーターに電力を供給するインバーターを減速機やモーターのケースと一体化させた構造を採用している。このような構造は、モーターやインバーターで発生した熱が駆動装置内にこもりやすく、駆動装置の冷却効率を向上させにくいという課題がある。このような課題に対し、インバーターをモーターから離隔した位置に配置し、各々で発生した熱を分散させることで冷却効率を向上させることも考えられる。しかしながら、インバーターとモーターとの間を接続する給電ライン(例えば給電ケーブルやバスバーなど)が長くなり、電気抵抗が増加してしまう。また、装置全体のサイズが大きくなり、空間利用効率が低下してしまう。
【0005】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、コンパクトかつ簡素な構成で冷却効率を改善できるようにした車両の駆動装置を提供することである。なおこの目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)開示の車両の駆動装置は、車両の左右輪を駆動する左モーター及び右モーターとギアボックスと電力変換装置とを備える。ギアボックスは、左モーター及び右モーターのトルクを増幅して左右輪の各々に伝達する歯車機構を内蔵し、左モーターと右モーターとの間に挟装される。電力変換装置は、直流電力を交流電力に変換して左モーター及び右モーターの双方に給電する。また、ギアボックスは、左モーター及び右モーターの各々が内装される左右のモーターハウジングに対して、ギアボックス内の左右輪軸が左モーター及び右モーターの軸の下方かつ前後方向にオフセットするように配置される。さらに、電力変換装置は、左右のモーターハウジングの間に橋架された状態で固定されるベースプレートと、ベースプレートの下面に取り付けられるコンデンサーと、ベースプレートの上面に取り付けられる半導体モジュールと、を有する。コンデンサーは、左右のモーターハウジングとギアボックスとで囲まれた凹部に配置されるとともに、凹部の内側にてギアボックスに対し所定の間隔をあけて配置される。所定の間隔は、車両の走行時に走行風が通過する空間である。
【発明の効果】
【0007】
電力変換装置を左右のモーターハウジング間に橋架された状態で固定することで、コンパクトかつ簡素な構成で冷却効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態としての車両の駆動装置を分解して示す模式的な斜視図である。
【
図3】駆動装置の内部構造を説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.構成]
以下、図面を参照して実施形態としての車両の駆動装置10について説明する。この駆動装置10は、車両の左右輪間に介装される。駆動装置10は、左右輪の駆動/制動力(駆動/制動トルク)の大きさを能動的に制御することでヨーモーメントの大きさを調節し、車両の姿勢を安定させる機能をもつ。
図1~
図3に示すように、駆動装置10には、左モーター1,右モーター2,ギアボックス3,電力変換装置4(インバーター)が含まれる。なお、図中の前後左右上下は、駆動装置10が搭載された車両の運転者を基準にして定められる方向を表す。
【0010】
左モーター1及び右モーター2は車両の左右輪を駆動する電動機である。左モーター1は、少なくとも左輪軸27に繋がる動力伝達経路に接続(または介装)される。同様に、右モーター2は、少なくとも右輪軸28に繋がる動力伝達経路に接続(または介装)される。左モーター1及び右モーター2は、他の駆動用モーターやエンジンが搭載される電気自動車及びハイブリッド自動車においては、少なくとも左右輪の駆動/制動力を増減させることで旋回力を発生させるヨーモーメント生成源として機能する。他の駆動用モーターが搭載されない電気自動車においては、上記の機能に加えて、車両の駆動源としての機能を併せ持つ。
【0011】
以下、左モーター1と右モーター2とを区別する必要がない場合には、単にモーター1,2とも表記する。本実施形態のモーター1,2はシンクロナスモーター(同期型交流電動機)であり、互いに独立して作動しうる。また、モーター1,2は、電動機だけでなく発電機としての機能を併せ持つ。モーター1,2を作動させるための電力は、車両に搭載される走行用バッテリーや車載発電システム(ジェネレーター,燃料電池,ディーゼル発電システムなど)から供給される。なお、同期モーターの代わりに、他の交流モーター(誘導モーター,整流子モーター)や直流モーターを使用してもよい。
【0012】
図2,
図3に示すように、左右のモーター1,2は車両の上面視及び正面視で左右対称な構造を持つ。右モーター2の内部構造は、左モーター1と左右対称であることを除いてほぼ同一である。左モーター1について内部構造を詳述すると、その外装はモーターハウジング11とモーターカバー12との二部材に分割されている。また、左モーター1の内部には、ステーター23,ローター24,モーター軸25が内蔵される。
【0013】
ステーター23は、例えば絶縁鋼板を積層してなる積層鉄心にコイルを巻き付けた構造を持ち、モーターハウジング11に固定される固定子である。ステーター23は、円筒面をなすように、所定の軸を中心として複数箇所に分散して配置される。ローター24は、例えば絶縁鋼板を積層してなる積層鉄心に永久磁石を内挿した円筒状の回転子である。ローター24は、ステーター23の中心軸と同心の状態でその内側に遊挿され、軸状のモーター軸25に固定される。モーター軸25は、モーターハウジング11やモーターカバー12に対してベアリング(不図示)を介して軸支される。ステーター23に通電される交流電力の周波数を変更することで、ステーター23の内側における磁界の回転速度が変化し、ローター24及びモーター軸25の角速度が変更される。モーター軸25の一端は、ギアボックス3に内蔵された歯車機構26に接続される。
【0014】
モーターハウジング11は、ステーター23やローター24など、左モーター1の主要部品を収容するものである。モーターハウジング11の形状は、モーター1,2の主要部品が内装される筒状であって、二つの開口部を有する形状とされる。モーターハウジング11は、二つの開口部が左右を向く姿勢でギアボックス3に取り付けられる。また、モーターハウジング11は、ギアボックス3に取り付けられたときに、ギアボックス3の上端よりも上方に突出する形状とされる。つまり、モーターハウジング11は、ギアボックス3の左右において、左モーター1及び右モーター2の径方向(モーター軸25に直交する方向)にオフセットして配置される。これにより、ギアボックス3の上方には、左右のモーター1,2とギアボックス3とで囲まれた凹部8が形成される。二つの開口部のうち、駆動装置10の左右両端側に位置する片方は、モーターカバー12が取り付けられて閉塞される。もう片方の開口部は、ギアボックス3の内部と連通状態になるようにギアボックス3の側面に接合される。
【0015】
モーターカバー12は、モーターハウジング11の開口部のうち、車幅方向外側の側面(左モーター1の左側面と右モーター2の右側面)を閉塞するものである。モーターカバー12の取付構造には、公知の取付構造を採用することができる。例えば、
図2,
図3に示すようにフランジ19,20を形成し、これらを接合させて固定してもよい。フランジ19,20は、モーターハウジング11及びモーターカバー12の開口端から開口面に沿って外側に延設される。フランジ19,20を面接触させた状態で締結固定(または溶接固定)することで、モーターハウジング11に対するモーターカバー12の取付箇所における、モーター1,2の密封性が向上する。
【0016】
ギアボックス3は、左モーター1と右モーター2との間に挟装される駆動力伝達装置である。ギアボックス3は、外装をなすギアボックスハウジング13とこれに内蔵された歯車機構26とを有する。歯車機構26は、少なくとも左モーター1と右モーター2とのトルクを増幅して左右輪の各々に伝達する機構である。本実施形態の歯車機構26には、左輪軸27と右輪軸28との間に駆動/制動差を生じさせるための機構(例えば差動歯車機構や遊星歯車機構など)が含まれる。また、歯車機構26には、車両の左輪に繋がる左輪軸27と、右輪に繋がる右輪軸28とが接続される。
【0017】
モーターハウジング11及びギアボックスハウジング13の取付構造は、モーターハウジング11及びモーターカバー12と同様の構造を採用することができる。例えば、
図2,
図3に示すようにフランジ21,22を形成し、これらを接合させて固定してもよい。フランジ21,22は、モーターハウジング11及びギアボックスハウジング13の開口端から開口面に沿って外側に延設される。フランジ21,22を面接触させた状態で締結固定(または溶接固定)することで、これらの接合面における密封性が向上する。
【0018】
電力変換装置4(インバーター)は、直流回路の電力(直流電力)とモーター1,2が介装される交流回路の電力(交流電力)とを相互に変換する変換器(DC-ACインバーター)である。電力変換装置4は、直流電力を交流電力に変換して左モーター1及び右モーター2の双方に給電する機能を持つ。モーター1,2の力行時には、直流電力が電力変換装置4で交流電力に変換されて、モーター1,2に供給される。モーター1,2の発電時には、モーター1,2側で生成される交流電力が電力変換装置4で直流電力に変換される。本実施形態では、電力変換装置4とモーター1,2との間が三相交流の給電ライン(給電ケーブルやバスバーなど)で接続される。
【0019】
電力変換装置4には、ベースプレート5,コンデンサー6,半導体モジュール7が含まれる。ベースプレート5は、左モーター1,右モーター2の各々に固定される矩形板状の部材(土台板,base plate)である。ベースプレート5は、熱抵抗の低い素材で形成される。コンデンサー6及び半導体モジュール7は、ベースプレート5に対して取り付けられる。
図1に示す例では、コンデンサー6がベースプレート5の下面側に固定されるとともに、半導体モジュール7がベースプレート5の上面側に固定されている。
【0020】
コンデンサー6は、モーター1,2に供給される電力を平滑化するための電子部品である。電力変換装置4が電流制御型のインバーターである場合、コンデンサー6は、例えば電力変換装置4で変換された交流電力の給電ラインに介装される。コンデンサー6が介装された回路で三相交流の給電ラインの各相を連結することで、それぞれのコンデンサー6が一種のフィルターとして機能し、電流が安定する。電力変換装置4が電圧制御型のインバーターである場合には、直流電力の入力側にコンデンサー6を並列に介装させることで、電圧が安定する。
【0021】
半導体モジュール7は、基板(電子回路用基板,substrate)上に複数のスイッチング素子やダイオードなどを含む三相ブリッジ回路を形成してなるパワーモジュールである。各スイッチング素子の接続状態を断続的に切り替えることで、三相の交流電力が生成される。スイッチング素子には、サイリスタ,IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor),パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体素子が用いられる。
【0022】
ベースプレート5の上面には上面カバー14が取り付けられ、下面には下面カバー15が取り付けられる。半導体モジュール7は、ベースプレート5と上面カバー14とで囲まれる空間内に配置される。また、コンデンサー6は、ベースプレート5と下面カバー15とで囲まれる空間内に配置される。これらの上面カバー14,下面カバー15は、熱抵抗の低い素材で形成される。
【0023】
図3に示すように、上面カバー14は、内部に半導体モジュール7を収容しうる大きさの容器状に形成される。また、下面カバー15は、内部にコンデンサー6を収容しうる大きさの容器状に形成される。下面カバー15の壁体内部には、コンデンサー6を冷却するための冷媒が流通するカバー冷却通路16が形成される。同様に、ベースプレート5の内部には、冷媒が流通するプレート冷却通路17が形成される。これらの冷却通路16,17は連通状態とされる。カバー冷却通路16は、コンデンサー6の左右側方において前後方向に延設されるとともに、プレート冷却通路17に向かって上下方向に延設される。また、プレート冷却通路17は、上面視で半導体モジュール7と重なる大きさの平面状に形成される。
【0024】
電力変換装置4は、左モーター1及び右モーター2の各々が内装される左右のモーターハウジング11の間に橋架された状態で固定される。例えば
図2,
図3に示すように、電力変換装置4は、車幅方向の左端部を左モーター1が内装される左側のモーターハウジング11の上に載置し、かつ、右端部を右モーター2が内装される右側のモーターハウジング11の上に載置した姿勢で取り付けられる。電力変換装置4は、左右のモーターハウジング11間に橋渡しされた状態となる。車幅方向に延在するベースプレート5で左右のモーターハウジング11を固定することで、モーター1,2の制振性や静粛性が向上する。
【0025】
電力変換装置4の一部は、左右のモーターハウジング11とギアボックス3とで囲まれた凹部8に配置される。また、電力変換装置4の一部が、凹部8の内側において、少なくともギアボックス3に対して所定の間隔をあけて配置される。好ましくは、モーターハウジング11との固定箇所以外の部分に対しても間隔をあけて配置される。これにより、電力変換装置4は、ギアボックス3の上方に浮いた状態となる。ギアボックス3と電力変換装置4とに挟まれた空間には、車両の走行時に走行風が通過しうる。したがって、モーター1,2,ギアボックス3,電力変換装置4が空冷されやすくなり、駆動装置10の冷却性能が向上する。
【0026】
図2,
図3に示す例では、凹部8の内側にコンデンサー6とカバー冷却通路16とが配置される。これにより、コンデンサー6が効率よく冷却されることになり、モーター1,2に供給される交流電力の電流や電圧が安定しやすくなる。また、カバー冷却通路16の内部を流れる冷媒が効率的に冷却されることから、ベースプレート5や半導体モジュール7についても効率よく冷却され、モーター1,2に供給される交流電力の電流や電圧が安定しやすくなる。
【0027】
図2,
図3に示すように、電力変換装置4は、正面視において左右のフランジ19,20の間に配置される。左モーター1のフランジ19,20は、左モーター1に内蔵されたステーター23及びローター24の車幅方向の中心位置よりも左側に配置される。同様に、右モーター2のフランジ19,20は、右モーター2に内蔵されたステーター23及びローター24の車幅方向の中心位置よりも右側に配置される。これにより、既存の駆動装置10と比較して、フランジ19,20の位置が車幅方向の外側に移動し、電力変換装置4を取り付けるためのスペースが確保される。また、左右のフランジ19,20間に電力変換装置4を配置することで、駆動装置10の高さ寸法がコンパクトになり、車両搭載性が改善される。
【0028】
本実施形態の電力変換装置4は、モーター1,2の上面に対して複数のボス9を介して固定具(例えばボルト,圧入ピンなど)で締結固定される。ボス9は、モーター1,2の各々において、モーターハウジング11の外表面から上方に向かって突設される。ボス9の概形は上下方向に延在する筒軸を有する円筒状とされ、その頂面には固定具と嵌合する軸穴が設けられる。複数のボス9を設けることで、モーターハウジング11の外表面に載置される電力変換装置4の固定姿勢が安定する。なお、ボス9の数は少なくともモーター1,2の各々に一つ以上設ければよいが、安定性を考慮してモーター1,2の各々に二つ以上設けてもよい。
【0029】
[2.作用・効果]
(1)上述の実施形態では、左右のモーターハウジング11の間に電力変換装置4が橋架された状態で固定されるとともに、電力変換装置4の一部が左右のモーターハウジング11とギアボックス3とで囲まれた凹部8に配置される。このような構造により、モーター1,2よりも上方の空きスペースに電力変換装置4を配置することができ、車両の空間利用効率を高めることができる。また、駆動装置10のサイズをコンパクトにすることができ、駆動装置10の車両搭載性を向上させることができる。加えて、モーター1,2と電力変換装置4とが別体に形成されることから、モーター1,2及び電力変換装置4の各々の放熱性を高めることができ、駆動装置10の冷却効率を向上させることができる。また、電力変換装置4とモーター1,2との距離を短くすることができ、モーター1,2を駆動するための電力線を短縮することができる。さらに、左右のモーター1,2が車幅方向に延在するベースプレート5によって一体的に固定されることから、モーター1,2の制振性や静粛性を向上させることができる。このように、上述の実施形態によれば、コンパクトかつ簡素な構成で冷却効率を改善することができる。
【0030】
(2)上述の実施形態では、電力変換装置4の一部が、凹部8の内側でギアボックス3に対して所定の間隔をあけて配置される。このような構造により、電力変換装置4をギアボックス3の上に浮かせて固定することができ、モーター1,2,ギアボックス3,電力変換装置4のそれぞれを効率よく空冷することができる。したがって、駆動装置10の冷却性能を向上させることができる。
【0031】
(3)
図2,
図3に示すように、上述の実施形態では、ベースプレート5の下面側にコンデンサー6が配置される。コンデンサー6は、凹部8の内部においてベースプレート5から吊り下げられた状態となっている。このように、コンデンサー6をギアボックス3に対して所定の間隔をあけて配置することで、コンデンサー6の冷却効率をさらに向上させることができ、モーター1,2に供給される交流電力の電流や電圧を安定させることができる。
【0032】
(4)上述の実施形態では、カバー冷却通路16が形成された下面カバー15によってコンデンサー6の周囲が覆われている。このような構造により、カバー冷却通路16の内部を流れる冷媒の冷却効率をさらに向上させることができ、駆動装置10の冷却性能をさらに向上させることができる。また、カバー冷却通路16を設けることで、プレート冷却通路17の厚みを小さくすることができ、駆動装置10の高さ寸法をコンパクトにすることができる。
【0033】
(5)
図2,
図3に示すように、上述の実施形態では、左右のフランジ19,20の間に電力変換装置4が配置される。このような構造により、フランジ19,20の上に電力変換装置4を配置した場合と比較して、駆動装置10の高さ寸法をコンパクトにすることができる。これにより、例えば車両のフロア下に駆動装置10を配置する場合に、駆動装置10から路面までの距離を大きくすることができ、路面からの飛び石や路面上の異物などによる駆動装置10の破損,故障を発生しにくくすることができ、製品の信頼性を高めることができる。
【0034】
(6)上述の実施形態では、ベースプレート5の上面側に半導体モジュール7が固定され、下面側にコンデンサー6が固定される。このように、半導体モジュール7とコンデンサー6とをベースプレート5の両面に分けて取り付けることで、ベースプレート5の板面の面積を半減させることができ、上面視における電力変換装置4のサイズを小さくすることができる。したがって、駆動装置10のサイズをさらにコンパクトにすることができ、駆動装置10の車両搭載性を向上させることができる。
【0035】
(7)
図1,
図3に示すように、上述の実施形態では、電力変換装置4が複数のボス9を介してモーターハウジング11に固定される。複数のボス9を設けることで、モーターハウジング11の外表面に載置される電力変換装置4の固定姿勢を安定させることができる。また、例えば車両のフロア下に駆動装置10を配置する場合に、電力変換装置4の上面をフロアパネルに対してほぼ平行にすることが容易となる。したがって、駆動装置10の車両搭載性をさらに向上させることができる。
【0036】
[3.変形例]
上記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、本実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0037】
上述の実施形態では、左右のモーター軸25が歯車機構26に接続された駆動装置10を例示したが、左輪の動力伝達経路と右輪の動力伝達経路とを分離してもよい。少なくとも、歯車機構26を内蔵するギアボックス3が左右のモーター1,2の間に挟装された駆動装置10において、左右のモーターハウジング11の間に電力変換装置4を橋架させるとともに、電力変換装置4の一部が左右のモーターハウジング11とギアボックス3とで囲まれた凹部8に配置されることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0038】
上述の電力変換装置4では、ベースプレート5の下面側にコンデンサー6が配置されているが、コンデンサー6をベースプレート5の上面側に配置してもよいし、半導体モジュール7をベースプレート5の下面側に配置してもよい。半導体モジュール7をベースプレート5の下面側に配置することで、半導体モジュール7の冷却効率をさらに向上させることができ、モーター1,2に供給される交流電力の電流や電圧を安定させることができる。さらにこの場合、コンデンサー6をベースプレート5の上面側に配置すれば、上述の実施形態と同等のサイズで電力変換装置4を構成することも可能であり、駆動装置10の車両搭載性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 左モーター
2 右モーター
3 ギアボックス
4 電力変換装置(インバーター)
5 ベースプレート
6 コンデンサー
7 半導体モジュール
8 凹部
9 ボス
10 駆動装置
11 モーターハウジング
12 モーターカバー
13 ギアボックスハウジング
14 上面カバー
15 下面カバー
16 カバー冷却通路
17 プレート冷却通路